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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/22 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
A01D57/22 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020108124
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002486
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】征矢 保
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-209934(JP,A)
【文献】特開2019-140951(JP,A)
【文献】特開2010-057461(JP,A)
【文献】特開平07-289058(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108476743(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 41/16
A01D 57/00 - 57/30
A01D 67/00 - 69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に並列配置されると共に、複数の穀稈導入経路を形成する複数の分草具と、
前記複数の穀稈導入経路に対応して設けられると共に、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置と、
前記複数の引起装置の上部に亘る状態で左右方向に延びると共に、前記引起装置へ動力を与える駆動軸と、
前記駆動軸を前方から覆う軸カバーと、を備え、
前記引起装置は、無端回動体及び前記無端回動体に取り付けられた複数の爪部を有する引起機構と、前記軸カバーの下端から下方に延びると共に、前記引起装置の搬送経路を露出させる状態で前記引起装置の戻り経路及び前記無端回動体を前方から覆う引起カバーと、を有しており、
前記軸カバーのうち、前記搬送経路に対応する部分の下端部に、上側へ凹入する凹部が形成されており、
正面視において、前記凹部の凹入長さは、前記軸カバーのうちの前記凹部が形成されていない部分の下端と、前記駆動軸と、の間隔よりも短く、
前記凹部の下端部の左右幅は、前記搬送経路を挟んで互いに隣接する2つの前記引起カバーの間隔よりも広いコンバイン。
【請求項2】
前記凹部のうち、上下方向における中央部の左右幅は、前記搬送経路を挟んで互いに隣接する2つの前記引起カバーの間隔と同等である請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記軸カバーにおいて、複数の前記搬送経路に対応する状態で、複数の前記凹部が形成されており、
左右方向において互いに隣接する2つの前記凹部の間に設けられた1つまたは複数の前記引起カバーの左右幅の合計は、前記2つの凹部の間隔と同等である請求項1または2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記爪部が、前記爪部の移動範囲において最も高い位置に位置しているとき、正面視において、前記爪部は、前記軸カバーの近傍に位置している請求項1から3の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
正面視において、前記凹部の凹入長さは、前記軸カバーのうちの前記凹部が形成されていない部分の下端と、前記駆動軸と、の間隔の半分よりも長い請求項1から4の何れか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右方向に並列配置されると共に、複数の穀稈導入経路を形成する複数の分草具を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンバインとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。このコンバインは、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置(特許文献1では「穀稈引起し装置」)を備えている。
【0003】
また、このコンバインは、引起装置へ動力を与える駆動軸(特許文献1では「引起し伝動軸」)を備えている。この駆動軸は、複数の引起装置の上部に亘る状態で左右方向に延びている。また、この駆動軸は、左右方向に延びる引起し伝動筒に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-4841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコンバインにおいて、引起し伝動筒に代えて、駆動軸を前方から覆う軸カバーを設けることが考えられる。これにより、駆動軸が軸カバーにより保護されると共に、軸カバーを取り外すだけで駆動軸に容易にアクセス可能な構成を実現できる。
【0006】
しかしながら、植立穀稈が長稈品種である場合、引起装置により引き起こされた植立穀稈の上部が、軸カバーに干渉する事態が想定される。これにより、植立穀稈の上部が前方に曲がった姿勢となり、穀稈の搬送不良が生じがちとなる。
【0007】
本発明の目的は、駆動軸が確実に保護されると共に、穀稈の搬送不良が生じにくいコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、左右方向に並列配置されると共に、複数の穀稈導入経路を形成する複数の分草具と、前記複数の穀稈導入経路に対応して設けられると共に、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置と、前記複数の引起装置の上部に亘る状態で左右方向に延びると共に、前記引起装置へ動力を与える駆動軸と、前記駆動軸を前方から覆う軸カバーと、を備え、前記引起装置は、無端回動体及び前記無端回動体に取り付けられた複数の爪部を有する引起機構と、前記軸カバーの下端から下方に延びると共に、前記引起装置の搬送経路を露出させる状態で前記引起装置の戻り経路及び前記無端回動体を前方から覆う引起カバーと、を有しており、前記軸カバーのうち、前記搬送経路に対応する部分の下端部に、上側へ凹入する凹部が形成されており、正面視において、前記凹部の凹入長さは、前記軸カバーのうちの前記凹部が形成されていない部分の下端と、前記駆動軸と、の間隔よりも短く、前記凹部の下端部の左右幅は、前記搬送経路を挟んで互いに隣接する2つの前記引起カバーの間隔よりも広いことにある。
【0009】
本発明であれば、軸カバーのうち、搬送経路に対応する部分の下端部に、上側へ凹入する凹部が形成されている。これにより、引起装置により引き起こされた植立穀稈の上部が、軸カバーに干渉しにくい。そのため、植立穀稈の上部が軸カバーに干渉することによって穀稈の搬送不良が生じることを回避しやすい。
【0010】
しかも、本発明であれば、正面視において、凹部の凹入長さは、軸カバーのうちの凹部が形成されていない部分の下端と、駆動軸と、の間隔よりも短い。これにより、正面視において、軸カバーのうちの凹部が形成されている部分の下端は、駆動軸よりも下側に位置することとなる。即ち、正面視において、駆動軸は、軸カバーの左右の全長に亘って、軸カバーにより隠された状態となる。その結果、駆動軸が、軸カバーによって確実に保護される。
【0011】
即ち、本発明であれば、駆動軸が確実に保護されると共に、穀稈の搬送不良が生じにくいコンバインを実現できる。
【0012】
さらに、本発明において、前記凹部のうち、上下方向における中央部の左右幅は、前記搬送経路を挟んで互いに隣接する2つの前記引起カバーの間隔と同等であると好適である。
【0013】
凹部の左右幅が小さいほど、軸カバーの強度が高くなりやすい。
【0014】
そのため、上記の構成によれば、凹部の左右幅が、搬送経路を挟んで互いに隣接する2つの引起カバーの間隔よりも大きい場合に比べて、軸カバーの強度が高くなりやすい。
【0015】
また、凹部の左右幅が、搬送経路を挟んで互いに隣接する2つの引起カバーの間隔よりも小さい場合、引起カバーと、軸カバーと、によって段差が形成されやすい。この段差に穀稈が引っかかると、穀稈の搬送不良が生じがちとなる。
【0016】
ここで、上記の構成によれば、引起カバーと、軸カバーと、によって段差が形成されにくい。そのため、段差に穀稈が引っかかることによって穀稈の搬送不良が生じることを回避しやすい。
【0017】
さらに、本発明において、前記軸カバーにおいて、複数の前記搬送経路に対応する状態で、複数の前記凹部が形成されており、左右方向において互いに隣接する2つの前記凹部の間に設けられた1つまたは複数の前記引起カバーの左右幅の合計は、前記2つの凹部の間隔と同等であると好適である。
【0018】
軸カバーにおいて、凹部が形成されていない部分の左右幅が大きいほど、軸カバーの強度が高くなりやすい。
【0019】
ここで、上記の構成によれば、軸カバーにおいて凹部が形成されていない部分の左右幅は、左右方向において互いに隣接する2つの凹部の間に設けられた1つまたは複数の引起カバーの左右幅の合計と同等である。そのため、軸カバーにおいて凹部が形成されていない部分の左右幅が、左右方向において互いに隣接する2つの凹部の間に設けられた1つまたは複数の引起カバーの左右幅の合計よりも小さい場合に比べて、軸カバーの強度が高くなりやすい。
【0020】
また、左右方向において互いに隣接する2つの凹部の間に設けられた1つまたは複数の引起カバーの左右幅の合計が、これら2つの凹部の間隔よりも小さい場合、引起カバーと、軸カバーと、によって段差が形成されやすい。この段差に穀稈が引っかかると、穀稈の搬送不良が生じがちとなる。
【0021】
ここで、上記の構成によれば、引起カバーと、軸カバーと、によって段差が形成されにくい。そのため、段差に穀稈が引っかかることによって穀稈の搬送不良が生じることを回避しやすい。
【0022】
さらに、本発明において、前記爪部が、前記爪部の移動範囲において最も高い位置に位置しているとき、正面視において、前記爪部は、前記軸カバーの近傍に位置していると好適である。
【0023】
この構成によれば、軸カバーのうちの凹部が形成されていない部分は、最も高い位置に位置しているときの爪部の近傍まで、下方へ延びていることとなる。これにより、駆動軸は、軸カバーによって確実に保護される。
【0024】
さらに、本発明において、正面視において、前記凹部の凹入長さは、前記軸カバーのうちの前記凹部が形成されていない部分の下端と、前記駆動軸と、の間隔の半分よりも長いと好適である。
【0025】
この構成によれば、正面視において、凹部の凹入長さが、軸カバーのうちの凹部が形成されていない部分の下端と、駆動軸と、の間隔の半分よりも短い場合に比べて、凹部の凹入長さが長くなる。これにより、引起装置により引き起こされた植立穀稈の上部が軸カバーに干渉することを、より確実に回避しやすい。その結果、植立穀稈の上部が軸カバーに干渉することによって穀稈の搬送不良が生じることを、より確実に回避しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】刈取部の側面図である。
図4】刈取部の正面図である。
図5】軸カバー等の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図1から図3に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図2図4図5に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図1図3図4図5に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0028】
〔コンバインの全体構成〕
図1,2に示すように、本発明に係るコンバインは、走行機体1と、7条の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部2とを備えている。走行機体1には、エンジンEが搭載されている。
【0029】
走行機体1は、走行装置としての左右のクローラ走行装置4R,4Lが備えられ、機体前部の右側に運転部5が備えられている。運転部5には、運転座席5aが設けられている。運転部5の後方に、刈取部2にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置6と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク7と、が機体横方向に並ぶ状態で備えられている。
【0030】
運転部5はキャビン8にて覆われている。脱穀装置6は、図示はしないが、刈取部2から搬送される刈取穀稈の株元を脱穀フィードチェーン9により挟持して搬送しながら、扱室内部で穂先側を扱き処理し、扱室の下部に備えられた選別部にて穀粒と塵埃に選別処理する。穀粒は穀粒タンク7に貯留し、塵埃は機外に排出する。穀粒タンク7に貯留される穀粒を外部に排出可能な穀粒排出装置10と、脱穀処理後の排ワラを細断したのちに機外に排出する細断装置11とが備えられている。
【0031】
刈取部2には、左右方向に並列配置され、かつ、7つの穀稈導入経路Q1~Q7を区画形成する複数(8個)の分草具12と、全ての穀稈導入経路Q1~Q7のそれぞれに対応して設けられ、かつ、植立穀稈を引き起こす7つの引起装置13と、全ての穀稈導入経路Q1~Q7に導入される植立穀稈を切断するバリカン型の刈取装置14と、刈り取った刈取穀稈を刈幅方向に合流させて後方に搬送する搬送装置15とが備えられている。
【0032】
8個の分草具12のうち、最も機体横外側に位置する2個の分草具12は、植立穀稈を刈取対象と対象外とに分草し、刈取対象穀稈をその分草具12に隣接する引起し経路に導入し、対象外の穀稈をその引起し経路の横外側に案内する。その他の分草具12は、2つの植付条に植立する穀稈をその分草具12の両横側に分草して分草具12の両横側の引起し経路に導入する。穀稈導入経路Q1~Q7は、左右両側の分草具12によって区画された幅を有し、1条分の植立穀稈を導入するためのものである。
【0033】
即ち、このコンバインは、左右方向に並列配置されると共に、複数の穀稈導入経路Q1~Q7を形成する複数の分草具12を備えている。また、このコンバインは、複数の穀稈導入経路Q1~Q7に対応して設けられると共に、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置13を備えている。
【0034】
図1及び図3に示すように、搬送装置15は、穀稈掻込み用のパッカー43A、及び、穀稈掻込み用の突起付きベルト43Bを備えている。また、搬送装置15は、株元搬送装置50、64と、穂先搬送装置51、65と、を備えている。株元搬送装置50、64は、刈取穀稈の株元を挟持搬送する。穂先搬送装置51、65は、刈取穀稈の穂先を係止搬送する。搬送装置15は、エンジンEからの動力により駆動する。
【0035】
また、搬送装置15は、扱深さ用搬送装置78、及び、受け渡し供給装置79を備えている。扱深さ用搬送装置78は、株元搬送装置50、64からの刈取穀稈を受け継いで脱穀フィードチェーン9に向けて搬送する。また、受け渡し供給装置79は、扱深さ用搬送装置78からの刈取穀稈を受け継いで、脱穀フィードチェーン9の始端部に刈取穀稈を受け渡す。
【0036】
〔刈取部のフレーム構造〕
次に、刈取部2のフレーム構造について説明する。図1に示すように、刈取部2全体を走行機体1に対して昇降可能に支持する前後向きの円筒状の刈取支持フレーム16が備えられている。この刈取支持フレーム16は、後上部の基端側に備えられた横向きの枢支部17に支持されている。
【0037】
刈取支持フレーム16の前端部に左右方向すなわち刈幅方向に延びる円筒状の下部側横向きフレーム19が連結されている。図1に示すように、下部側横向きフレーム19の機体横幅方向両端部に、機体前方に向けて延びる状態で左右両側の前後向きの分草フレーム20が連結されている。これら左右両端部の分草フレーム20の前後途中部同士に亘って架設される状態で、機体横幅方向に延びる角筒状の刈刃支持フレーム21が連結されている。刈取装置14は、刈刃支持フレーム21に支持されている。
【0038】
図2に示すように、左右両端部の分草フレーム20の間に、間隔をあけて複数の分草フレーム20が備えられている。それら中間部の分草フレーム20は、後端部が刈刃支持フレーム21に連結され、機体前方に向けて片持ち状に延設されている。分草フレーム20は合計8本備えられ、各分草フレーム20の前端部には夫々、分草具12が備えられている。
【0039】
図1に示すように、下部側横向きフレーム19の左側端部から上方に向けて円筒状の左側上下向きフレーム25が延設されている。
【0040】
〔引起装置〕
図1,3に示すように、各引起装置13は、下端側が機体前部側に位置し且つ上端側ほど機体後方側に位置する後倒れ傾斜状態の起立姿勢で備えられている。尚、図3には、運転座席5aに着座している運転者の視線LEが示されている。図3に示すように、刈取部2は、運転者が運転座席5aに着座した状態で分草具12の先端を見ることができるように構成されている。
【0041】
以下では、各引起装置13の構成について説明する。
【0042】
図4に示すように、引起装置13は、引起機構24と、引起カバー27と、を有している。引起機構24は、上側に位置する駆動スプロケット28と緊張用スプロケット29、及び、下側に位置する従動スプロケット30の夫々にわたって巻回される無端回動チェーン31(本発明に係る「無端回動体」に相当)を有している。
【0043】
また、引起機構24は、複数の爪部32を有している。複数の爪部32は、無端回動チェーン31の長手方向に沿って所定の間隔をあけた状態で、無端回動チェーン31に取り付けられている。
【0044】
また、7個の引起装置13の上部同士に亘って左右方向に延びる駆動軸33が備えられている。エンジンEからの動力が、駆動軸33に伝達される。そして、駆動軸33からの動力が、中継伝動ケース34内に備えられた中継伝動軸35(図3参照)を介して、駆動スプロケット28に伝達される。これにより、駆動軸33は、引起装置13へ動力を与える。駆動軸33は断面形状が六角形であり、角形嵌合状態で動力を伝達するように構成されている。
【0045】
即ち、このコンバインは、複数の引起装置13の上部に亘る状態で左右方向に延びると共に、引起装置13へ動力を与える駆動軸33を備えている。
【0046】
ここで、エンジンEから駆動軸33への動力伝達について詳述する。図3に示すように、このコンバインは、横向き伝動軸111、刈取伝動軸112、横向きの入力軸113を備えている。
【0047】
横向き伝動軸111は、左右方向に延びており、枢支部17の内部に収容されている。刈取伝動軸112は、前下がりの状態で前後方向に延びており、刈取支持フレーム16の内部に収容されている。横向きの入力軸113は、左右方向に延びており、下部側横向きフレーム19の内部に収容されている。
【0048】
エンジンEの動力は、横向き伝動軸111に伝達される。また、動力は、横向き伝動軸111から、刈取伝動軸112を介して、横向きの入力軸113に伝達される。そして、動力は、横向きの入力軸113から、左側上下向きフレーム25に収容された縦向き伝動軸(図示せず)を介して、駆動軸33に伝達される。
【0049】
図4に示すように、引起装置13は、無端回動チェーン31の左右両側の上下移動経路のうちのいずれかが搬送経路T1として設定され、反対側が戻り経路T2として設定されている。図示はしないが、搬送経路T1においては、無端回動チェーン31が通過する箇所に爪部32を起立案内するガイド板が備えられている。
【0050】
図4に示すように、複数の引起装置13のうち右側から5番目の引起装置13以外の引起装置13は、左右に隣り合うもの同士が互いに爪部32が向き合う状態で配置されている。右側から5番目の引起装置13は、爪部32が左方向に突出して起立する状態で配置されている。
【0051】
引起装置13は、搬送経路T1においては、横向きに突出する爪部32が穀稈に梳き上げ作用しながら上昇移動し、搬送経路T1の終端に到達すると、穀稈から外れて引起カバー27の内部に収納されて戻り経路T2を下降して搬送経路T1側に戻っていく。これにより、各引起装置13は、上昇移動する爪部32によって引起し経路に導入された植立穀稈を引起し処理する。
【0052】
引起カバー27は、上下方向に延びている。また、引起カバー27は、引起装置13の搬送経路T1を露出させる状態で引起装置13の戻り経路T2及び無端回動チェーン31を前方から覆うように構成されている。
【0053】
〔軸カバー〕
図4及び図5に示すように、このコンバインは、軸カバー39を備えている。軸カバー39は、7個の引起装置13の上部同士に亘って左右方向に延びており、駆動軸33を前方から覆っている。また、引起カバー27は、軸カバー39の下端から下方に延びている。
【0054】
即ち、このコンバインは、駆動軸33を前方から覆う軸カバー39を備えている。また、引起装置13は、無端回動チェーン31及び無端回動チェーン31に取り付けられた複数の爪部32を有する引起機構24と、軸カバー39の下端から下方に延びると共に、引起装置13の搬送経路T1を露出させる状態で引起装置13の戻り経路T2及び無端回動チェーン31を前方から覆う引起カバー27と、を有している。
【0055】
図5には、最高位置Pに位置している爪部32が示されている。最高位置Pは、爪部32の移動範囲における最も高い位置である。そして、図5に示すように、爪部32が最高位置Pに位置しているとき、正面視において、爪部32は、軸カバー39の近傍に位置している。
【0056】
即ち、爪部32が、爪部32の移動範囲において最も高い位置に位置しているとき、正面視において、爪部32は、軸カバー39の近傍に位置している。
【0057】
図4及び図5に示すように、軸カバー39の下端部には、第1凹部40a、第2凹部40b、第3凹部40c、第4凹部40dが形成されている。第1凹部40a、第2凹部40b、第3凹部40c、第4凹部40dは、何れも、上側へ凹入する凹部40である。
【0058】
第1凹部40aは、軸カバー39のうち、右側から1番目の搬送経路T1及び2番目の搬送経路T1に対応する部分に形成されている。
【0059】
第2凹部40bは、軸カバー39のうち、右側から3番目の搬送経路T1及び4番目の搬送経路T1に対応する部分に形成されている。
【0060】
第3凹部40cは、軸カバー39のうち、右側から5番目の搬送経路T1に対応する部分に形成されている。
【0061】
第4凹部40dは、軸カバー39のうち、右側から6番目の搬送経路T1及び7番目の搬送経路T1に対応する部分に形成されている。
【0062】
即ち、軸カバー39のうち、搬送経路T1に対応する部分の下端部に、上側へ凹入する凹部40が形成されている。また、軸カバー39において、複数の搬送経路T1に対応する状態で、複数の凹部40が形成されている。
【0063】
ここで、図5には、第1位置H1及び第2位置H2が示されている。第1位置H1は、軸カバー39のうちの凹部40が形成されている部分の下端の上下方向における位置である。また、第2位置H2は、軸カバー39のうちの凹部40が形成されていない部分の下端の上下方向における位置である。
【0064】
上下方向における第1位置H1と第2位置H2との間隔は、正面視における凹部40の凹入長さD1に等しい。
【0065】
また、図5には、第3位置H3が示されている。第3位置H3は、上下方向における駆動軸33の下端の位置である。第3位置H3は、第1位置H1よりも高い位置である。
【0066】
そして、上下方向における第2位置H2と第3位置H3との間隔は、所定間隔D2である。所定間隔D2は、軸カバー39のうちの凹部40が形成されていない部分の下端と、駆動軸33と、の正面視における間隔に等しい。図5に示すように、凹入長さD1は、所定間隔D2よりも短い。
【0067】
即ち、正面視において、凹部40の凹入長さD1は、軸カバー39のうちの凹部40が形成されていない部分の下端と、駆動軸33と、の間隔よりも短い。
【0068】
また、図5には、長さD3が示されている。長さD3は、軸カバー39のうちの凹部40が形成されていない部分の下端と、駆動軸33と、の正面視における間隔の半分である。そして、凹入長さD1は、長さD3よりも長い。
【0069】
即ち、正面視において、凹部40の凹入長さD1は、軸カバー39のうちの凹部40が形成されていない部分の下端と、駆動軸33と、の間隔の半分よりも長い。
【0070】
また、図5には、第1幅W1及び第2幅W2が示されている。第1幅W1は、第3凹部40cの左右幅である。また、第2幅W2は、第3凹部40cに対応する搬送経路T1を挟んで互いに隣接する2つの引起カバー27の間隔である。
【0071】
第1幅W1は、第2幅W2と同等である。即ち、凹部40の左右幅は、搬送経路T1を挟んで互いに隣接する2つの引起カバー27の間隔と同等である。
【0072】
尚、本発明に係る「同等である」という文言には、厳密に一致している状態だけではなく、略一致している状態も含まれる。
【0073】
また、図5に示すように、本実施形態における凹部40は、下側ほど広がる形状を有している。そして、第1幅W1は、第3凹部40cのうち、上下方向における中央部の左右幅である。即ち、第3凹部40cのうち、上下方向における中央部の左右幅は、第2幅W2と略一致している。また、第3凹部40cの上端部の左右幅は、第2幅W2よりもやや狭い。また、第3凹部40cの下端部の左右幅は、第2幅W2よりもやや広い。
【0074】
このように、本実施形態においては、各凹部40のうち、上下方向における中央部の左右幅は、搬送経路T1を挟んで互いに隣接する2つの引起カバー27の間隔と略一致している。また、各凹部40の上端部の左右幅は、搬送経路T1を挟んで互いに隣接する2つの引起カバー27の間隔よりもやや狭い。また、各凹部40の下端部の左右幅は、搬送経路T1を挟んで互いに隣接する2つの引起カバー27の間隔よりもやや広い。
【0075】
また、図5には、第3幅W3、第4幅W4、第5幅W5が示されている。第3幅W3は、第2凹部40bと第3凹部40cとの間隔である。第2凹部40bと第3凹部40cとは、左右方向において互いに隣接する2つの凹部40である。
【0076】
第4幅W4は、図4に示す7個の引起装置13のうち、右側から4番目の引起装置13における引起カバー27の左右幅である。また、第5幅W5は、図4に示す7個の引起装置13のうち、右側から5番目の引起装置13における引起カバー27の左右幅である。これら2つの引起カバー27は、左右方向において第2凹部40bと第3凹部40cとの間に設けられている。
【0077】
そして、図5に示すように、第4幅W4と第5幅W5との合計は、第3幅W3と同等である。
【0078】
また、図5には、第6幅W6及び第7幅W7が示されている。第6幅W6は、第3凹部40cと第4凹部40dとの間隔である。第3凹部40cと第4凹部40dとは、左右方向において互いに隣接する2つの凹部40である。
【0079】
第7幅W7は、図4に示す7個の引起装置13のうち、右側から6番目の引起装置13における引起カバー27の左右幅である。この引起カバー27は、左右方向において第3凹部40cと第4凹部40dとの間に設けられている。
【0080】
そして、図5に示すように、第7幅W7は、第6幅W6と同等である。
【0081】
即ち、左右方向において互いに隣接する2つの凹部40の間に設けられた1つまたは複数の引起カバー27の左右幅の合計は、2つの凹部40の間隔と同等である。
【0082】
以上で説明した構成であれば、軸カバー39のうち、搬送経路T1に対応する部分の下端部に、上側へ凹入する凹部40が形成されている。これにより、引起装置13により引き起こされた植立穀稈の上部が、軸カバー39に干渉しにくい。そのため、植立穀稈の上部が軸カバー39に干渉することによって穀稈の搬送不良が生じることを回避しやすい。
【0083】
しかも、以上で説明した構成であれば、正面視において、凹部40の凹入長さD1は、軸カバー39のうちの凹部40が形成されていない部分の下端と、駆動軸33と、の間隔よりも短い。これにより、正面視において、軸カバー39のうちの凹部40が形成されている部分の下端は、駆動軸33よりも下側に位置することとなる。即ち、正面視において、駆動軸33は、軸カバー39の左右の全長に亘って、軸カバー39により隠された状態となる。その結果、駆動軸33が、軸カバー39によって確実に保護される。
【0084】
即ち、以上で説明した構成であれば、駆動軸33が確実に保護されると共に、穀稈の搬送不良が生じにくいコンバインを実現できる。
【0085】
〔その他の実施形態〕
(1)クローラ走行装置4R,4Lに代えて、ホイール式の走行装置が設けられていても良いし、セミクローラ式の走行装置が設けられていても良い。
【0086】
(2)凹部40の左右幅は、搬送経路T1を挟んで互いに隣接する2つの引起カバー27の間隔に比べて、大きくても良いし、小さくても良い。
【0087】
(3)軸カバー39に形成される凹部40の個数は、4つ以外のいかなる個数であっても良い。例えば、凹部40の個数は、1つであっても良い。
【0088】
(4)左右方向において互いに隣接する2つの凹部40の間に設けられた1つまたは複数の引起カバー27の左右幅の合計は、2つの凹部40の間隔に比べて、大きくても良いし、小さくても良い。
【0089】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置を備えるコンバインに利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
12 分草具
13 引起装置
24 引起機構
27 引起カバー
31 無端回動チェーン(無端回動体)
32 爪部
33 駆動軸
39 軸カバー
40 凹部
D1 凹入長さ
Q1~Q7 穀稈導入経路
T1 搬送経路
T2 戻り経路
図1
図2
図3
図4
図5