(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】正極板の製造方法、電池の製造方法およびレーザ切断用正極原反
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230414BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230414BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2020206545
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】片山 晃一
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 勝也
(72)【発明者】
【氏名】中井 晴也
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204184(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208686(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/026649(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021214(WO,A1)
【文献】特開2020-098713(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001716(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208679(WO,A1)
【文献】特開2017-010819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/13
H01M 4/139
H01M 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の表面に第1層と第2層とを配置することにより、正極原反を形成すること、
および、
前記正極原反を切断することにより、正極板を製造すること、
を含み、
平面視において、前記第2層は前記第1層と隣接しており、
前記第2層にレーザが照射されることにより、前記正極原反の一部が切断され、
前記第1層は正極活物質を含み、
前記第2層は無機絶縁材料と導電性炭素材料とを含み、
前記第2層において、前記導電性炭素材料に対する、前記無機絶縁材料の質量比は、3.7から
22である、
正極板の製造方法。
【請求項2】
前記無機絶縁材料は、アルミナ、ベーマイト、チタニア、マグネシアおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記導電性炭素材料は、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェンおよびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項
1に記載の正極板の製造方法。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の正極板の製造方法により、正極板を製造すること、
前記正極板と負極板とを含む電極体を形成すること、
および、
前記電極体を含む電池を製造すること、
を含む、
電池の製造方法。
【請求項4】
金属箔と第1層と第2層とを含み、
前記第1層および前記第2層は、前記金属箔の表面に配置されており、
平面視において、前記第2層は前記第1層と隣接しており、
前記第2層は、レーザ照射位置を含み、
前記第1層は正極活物質を含み、
前記第2層は無機絶縁材料と導電性炭素材料とを含み、
前記第2層において、前記導電性炭素材料に対する、前記無機絶縁材料の質量比は、3.7から
22である、
レーザ切断用正極原反。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、正極板の製造方法、電池の製造方法およびレーザ切断用正極原反に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007-095656号公報(特許文献1)は、正極において金属が露出した部分に、該金属よりも電子伝導性が低く、かつ非絶縁性の材料からなる保護層を形成することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極板は金属箔と正極活物質層とを含む。正極活物質層は金属箔の表面に配置される。金属箔の一部は正極活物質層から露出している。本明細書においては、金属箔が露出した部分が「箔露出部」とも記される。箔露出部は外部端子と接続される。
【0005】
箔露出部の一部に保護層が形成される場合がある。保護層は正極活物質層に隣接して形成される。保護層は無機絶縁材料と導電性炭素材料とを含む。保護層は、適度な大きさの電気抵抗を有する。例えば、内部短絡が発生した際に、保護層を通じて穏やかな放電が起こることにより、エネルギーが穏やかに消費されることが期待される。
【0006】
正極板は、正極原反が所定の平面形状に切断されることにより製造される。保護層を含む正極原反が切断されることにより、保護層を含む正極板が製造され得る。例えば、レーザ、切削工具等により正極原反が切断され得る。例えば、箔露出部の一部が電極タブの形状に切断加工される場合がある。複雑形状の加工においては、レーザ切断が好適である。
【0007】
保護層は、箔露出部と正極活物質層との境界に位置する。そのためレーザにより箔露出部を電極タブの形状に切断する際、保護層が形成された部分もレーザにより切断することが求められる。
【0008】
保護層はその組成に由来して、白色に近い色味を有する。レーザ切断時、保護層にレーザ焼けが生じ得る。レーザ焼けにより、保護層の一部が変色する。変色部が広範囲に及ぶことにより、例えば、正極板の端部位置を光センサが誤検出する場合がある。
【0009】
本技術の目的は、正極原反において保護層が形成された部分をレーザにより切断する際、レーザ焼けの範囲を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本技術の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、本技術の範囲を限定しない。
【0011】
〔1〕正極板の製造方法は、下記(a1)および(a2)を含む。
(a1)金属箔の表面に第1層と第2層とを配置することにより、正極原反を形成する。
(a2)正極原反を切断することにより、正極板を製造する。
平面視において、第2層は第1層と隣接している。第2層にレーザが照射されることにより、正極原反の一部が切断される。第1層は正極活物質を含む。第2層は無機絶縁材料と導電性炭素材料とを含む。第2層において、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比は、3.7から560である。
【0012】
本技術の製造方法において、第1層は「正極活物質層」に相当し、第2層は「保護層」に相当する。本技術の新知見によると、保護層の組成、すなわち導電性炭素材料に対する無機絶縁材料の質量比により、レーザ焼けの範囲が変化し得る。導電性炭素材料に対する無機絶縁材料の質量比が3.7以上である時、レーザ焼けの範囲が十分小さくなり得る。ただし、導電性炭素材料に対する無機絶縁材料の質量比が560を超えると、第2層(保護層)の電気抵抗が過度に増大し、所望の電気抵抗を維持できない可能性がある。
【0013】
〔2〕第2層において、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比は、例えば28以下であってもよい。
【0014】
〔3〕無機絶縁材料は、例えばアルミナ、ベーマイト、チタニア、マグネシアおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電性炭素材料は、例えば、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェンおよびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0015】
〔4〕電池の製造方法は、下記(A)から(C)を含む。
(A)上記〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載の正極板の製造方法により、正極板を製造する。
(B)正極板と負極板とを含む電極体を形成する。
(C)電極体を含む電池を製造する。
【0016】
電極体の形成時、例えば光センサ等により正極板の端部位置が特定される。本技術においては、保護層(正極板の端部)において、レーザ焼けの範囲が低減され得る。そのため、例えば電極体の形成時、正極板の位置ズレが低減され得る。レーザ焼けの範囲が大きいと、正極板の端部位置が誤検出され、位置ズレが生じる場合がある。なお、電極体は積層型であってもよいし、巻回型であってもよい。
【0017】
〔5〕レーザ切断用正極原反は、金属箔と第1層と第2層とを含む。第1層および第2層は、金属箔の表面に配置されている。平面視において、第2層は第1層と隣接している。第2層はレーザ照射位置を含む。第1層は正極活物質を含む。第2層は無機絶縁材料と導電性炭素材料とを含む。第2層において、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比は、3.7から560である。
【0018】
本明細書においては、レーザ切断用正極原反が「正極原反」と略記され得る。正極原反が所定の平面形状に切断されることにより、正極板が製造される。正極原反において、第2層はレーザ照射位置を含む。すなわち第2層にレーザが照射されることにより、正極原反の一部が切断される。第2層がレーザ照射位置を含む限り、他の手段によって切断される部分があってもよい。例えば、第1層が切削工具(ロータリースリッター等)により切断されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態における電池の製造方法の概略フローチャートである。
【
図2】
図2は、本実施形態における正極原反の一例を示す概略平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における正極原反の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における正極板の一例を示す概略平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における電極体の形成方法の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における電池の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本技術の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0021】
本明細書において、「含む、備える(comprise,include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(emcopass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry,support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含むが、当該構成のみを含むことに限定されない。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に・・・からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。すなわち「実質的に・・・からなる」との記載は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須成分に加えて、追加の成分が含まれ得ることを示す。例えば、本技術の属する分野において通常想定される成分(例えば不可避不純物等)が、追加の成分として含まれていてもよい。
【0022】
本明細書において、方法に含まれる2個以上のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その記載された順序に限定されない。
【0023】
本明細書において、単数形(「a」、「an」および「the」)は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も含み得る。
【0024】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「平行」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。
【0025】
各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0026】
本明細書の「平面視」は、正極板等の厚さ方向と平行な視線で、正極板等を見ることを示す。本明細書の「断面視」は、正極板等の厚さ方向と直交する視線で、正極板等を見ることを示す。
【0027】
本明細書において、例えば「3.7から560」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。例えば「3.7から560」は、「3.7以上560以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0028】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は、代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。
【0029】
<電池の製造方法>
図1は、本実施形態における電池の製造方法の概略フローチャートである。本実施形態において、電池の製造方法は、「(A)正極板の製造」、「(B)電極体の形成」および「(C)電池の製造」を含む。本実施形態においては、例えば非水電解質二次電池が製造され得る。ただし非水電解質二次電池は一例に過ぎない。本実施形態の電池は任意の電池であり得る。
【0030】
<(A)正極板の製造>
本実施形態において、正極板の製造方法は「(a1)正極原反の形成」および「(a2)切断」を含む。
【0031】
《(a1)正極原反の形成》
図2は、本実施形態における正極原反の一例を示す概略平面図である。
図3は、本実施形態における正極原反の一例を示す概略断面図である。正極板の製造方法は、金属箔13の表面に第1層11と第2層12とを配置することにより、正極原反15を形成することを含む。
【0032】
金属箔13が準備される。金属箔13は集電体として機能する。金属箔13は、例えば、アルミニウム(Al)、Al合金等を含んでいてもよい。金属箔13は、例えば炭素材料等により被覆されていてもよい。金属箔13は、例えば帯状の平面形状を有していてもよい。金属箔13は、例えば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。本明細書における各部材の厚さは、定圧厚さ測定器(厚さゲージ)によって測定され得る。
【0033】
金属箔13の表面に第1層11および第2層12が形成される。第1層11および第2層12は、金属箔13の片面のみに形成されてもよい。第1層11および第2層12は、金属箔13の表裏両面に形成されてもよい。第1層11と第2層12とは、順次形成されてもよいし、実質的に同時に形成されてもよい。第1層11と第2層12とが順次形成される場合、形成順序は任意である。
【0034】
第1層11および第2層12は、任意の方法により形成され得る。例えば、スラリーの塗布により、第1層11および第2層12が形成されてもよい。塗布方法は任意である。例えば、スロットダイコータ、ロールコータ等が使用されてもよい。
【0035】
(第1層)
第1層11は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。第1層11は、正極活物質層として機能する。すなわち第1層11は正極活物質を含む。第1層11は正極活物質に加えて、例えば導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。例えば、正極活物質、導電材、バインダおよび分散媒が混合されることにより、第1スラリーが調製されてもよい。金属箔13の表面において、第1スラリーが所定の位置に塗布されることにより、塗膜が形成される。塗膜が乾燥されることにより第1層11が形成され得る。第1層11の乾燥後、第1層11が圧縮されてもよい。例えば圧延機等により、第1層11が圧縮され得る。
【0036】
正極活物質は任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えばLiCoO2等を含んでいてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばカーボンブラック等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0037】
(第2層)
第2層12は、第1層11と隣接している。第2層12は、第1層11(正極活物質層)と箔露出部との境界に位置する。第2層12は、第1層11と接触していてもよい。第1層11の一部が第2層12により被覆されていてもよい。第2層12と第1層11との間に隙間があってもよい。
【0038】
第2層12は、例えば1μmから50μmの厚さを有していてもよい。第2層12は、保護層として機能する。第2層12は、適度な大きさの電気抵抗を有する。第2層12は、無機絶縁材料と導電性炭素材料とを含む。第2層12の電気抵抗は、無機絶縁材料と導電性炭素材料とのバランスにより決定される。本実施形態においては、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比が、3.7から560である。導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比が3.7以上であることにより、レーザ焼けの範囲が低減することが期待される。導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比は、例えば5.5以上であってもよいし、11以上であってもよいし、22以上であってもよい。ただし、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比が560を超えると、第2層12の電気抵抗が過度に増大する可能性がある。導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比は、例えば、224以下であってもよいし、112以下であってもよいし、55以下であってもよいし、28以下であってもよい。なお、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比(除算結果)に小数点以下の桁がある場合、小数第1位までが有効である。小数第2位以下は四捨五入される。
【0039】
第2層12は、無機絶縁材料および導電性炭素材料に加えて、バインダ等をさらに含んでいてもよい。第2層12は、例えば、実質的に無機絶縁材料と導電性炭素材料とバインダとからなっていてもよい。例えば、無機絶縁材料、導電性炭素材料、バインダおよび分散媒が混合されることにより、第2スラリーが調製されてもよい。金属箔13の表面において、第2スラリーが所定の位置に塗布されることにより、塗膜が形成される。第2スラリーは、第1層11に隣接した位置に塗布される。塗膜が乾燥されることにより第2層12が形成され得る。
【0040】
無機絶縁材料は、例えば粒子群であってもよい。無機絶縁材料は、例えば1.5μm以下のD50を有していてもよい。無機絶縁材料は、例えば0.1μm以上のD50を有していてもよい。本明細書の「D50」は、体積基準の粒度分布において小粒径側からの累積体積が全体の50%になる粒子径を示す。体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される。
【0041】
無機絶縁材料は、実質的に無機化合物からなる。無機絶縁材料は、例えばセラミックス等を含んでいてもよい。無機絶縁材料は、例えば、アルミナ、ベーマイト、チタニア、マグネシアおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0042】
導電性炭素材料は、例えば粒子群であってもよい。導電性炭素材料は、例えば4.5μmから10μmのD50を有していてもよい。導電性炭素材料は、無機絶縁材料に比して、低い体積抵抗率を有する。導電性炭素材料は、実質的に炭素からなる。導電性炭素材料は、例えば、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェンおよびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。なおこれらの材料は、いずれも粉末状で使用され得る。
【0043】
バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)およびPVdFからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電性炭素材料に対するバインダの質量比は、例えば4.7から93.4であってもよい。
【0044】
《(a2)切断》
本実施形態において、正極板の製造方法は、正極原反15を切断することにより、正極板10を製造することを含む。
【0045】
例えば、第2切断線L2が設定される(
図2参照)。第2切断線L2は、例えば、箔露出部内および第2層12内に設定される。すなわち第2層12はレーザ切断位置を含む。箔露出部内における第2切断線L2のパターンは、電極タブ(外部端子との接続部)の形状と対応し得る。第2切断線L2に沿ってレーザが照射されることにより、正極原反15の一部が切断される。すなわち、第2層12にレーザが照射されることにより、正極原反15の一部が切断される。
【0046】
本実施形態においてレーザの種類は任意である。例えば、CO2レーザが使用されてもよいし、YAGレーザが使用されてもよい。例えばアシストガスが併用されてもよい。アシストガスは、例えば、空気、窒素等であってもよい。レーザ出力は、例えば100Wから1000Wであってもよい。
【0047】
レーザ以外の手段で切断される部分があってもよい。例えば、第1層11内に第1切断線L1が設定される(
図2参照)。第1切断線L1に沿って、切削工具により正極原反15が切断されてもよい。切削工具は、ロータリースリッター等であってもよい。
【0048】
図4は、本実施形態における正極板の一例を示す概略平面図である。正極板10は、電極体50(
図5、
図7参照)の構造に応じて、所定の平面形状を有する。正極板10の平面形状は、例えば矩形状であってもよいし、帯状であってもよい。正極板10において、第2層12はレーザ切断面14(正極板10の端面)を含む。レーザ切断面14からX軸方向にレーザ焼けが生じ得る。本実施形態において、レーザ焼けの範囲が低減され得る。本実施形態において、レーザ焼けの範囲は、例えば45μm以下であってもよいし、30μm以下であってもよいし、28μm以下であってもよい。レーザ焼けの範囲は、例えば14μm以上であってもよい。レーザ焼けの範囲は、マイクロスコープ画像において測定され得る。
【0049】
第2層12は、通常白色を呈する。レーザ焼けにより第2層12に変色が生じ得る。すなわち第2層12は、白色部と非白色部とを含んでいてもよい。非白色部はレーザ焼けに対応する。白色部と非白色部(レーザ焼け)とは、例えば画像センサの照度により判別され得る。例えば、所定の画像センサにおいて、金属箔13の照度が100と定義される。白色部は、例えば40から50の照度を有していてもよい。非白色部は、例えば20以下の照度を有していてもよい。
【0050】
本実施形態においては、切断バリも低減され得る。
図4中、X軸方向における切断バリの大きさは「横バリ」とも記される。横バリは、例えば35μm以下であってもよい。横バリは、例えば17μm以上であってもよい。
図4中、Z軸方向における切断バリの大きさは、「縦バリ」とも記される。縦バリは、例えば45μm以下であってもよい。縦バリは、例えば32μm以上であってもよい。
【0051】
<(B)電極体の形成>
図5は、本実施形態における電極体の形成方法の一例を示す概略図である。本実施形態において、電池の製造方法は、正極板10および負極板20を含む電極体50を形成することを含む。
【0052】
負極板20およびセパレータ30が準備される。本実施形態の電極体50は積層型である。例えば、セパレータ30を挟んで、正極板10と負極板20とが交互に積層されることにより、電極体50が形成される。ただし積層型は一例である。電極体は巻回型であってもよい。すなわち、正極板、負極板およびセパレータはいずれも帯状であってもよい。例えば、正極板、セパレータおよび負極板がこの順に積層され、さらに渦巻状に巻回されることにより電極体が形成されてもよい。
【0053】
負極板20は任意の方法により製造され得る。負極板20は負極活物質を含む。負極活物質は例えば黒鉛等を含んでいてもよい。セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は、例えばポリオレフィン系樹脂等を含んでいてもよい。
【0054】
<(C)電池の製造>
図6は、本実施形態における電池の一例を示す概略図である。
図7は、
図6におけるVII-VII断面図である。本実施形態において、電池の製造方法は、電極体50を含む電池100を製造することを含む。
【0055】
例えば、外装体90が準備される。外装体90は、例えば金属製の容器であってもよい。外装体90は、例えば外装缶91と封口板92とを含んでいてもよい。封口板92は、外装缶91の開口部を塞いでいる。封口板92は、正極端子81と負極端子82とを備えている。正極板10の電極タブ(箔露出部)の束が正極端子81と接続される。負極板20の電極タブの束が負極端子82と接続される。電極体50が外装缶91に収納される。外装缶91と封口板92とが接合される。外装缶91に電解液が注入される。外装体90が密閉される。以上より電池100が製造され得る。なお、外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えばAlラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0056】
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、本技術の実施例(以下「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0058】
<試料の作製>
下記材料が準備された。
金属箔:Al箔
無機絶縁材料:アルミナ
導電性炭素材料:カーボンブラック
【0059】
無機絶縁材料、導電性炭素材料、バインダおよび分散媒が混合されることにより、第2スラリーが調製された。第2スラリーが金属箔の表面(表裏両面)に塗布されることにより、第2層が形成された。
【0060】
本実施例においては、下記表1および表2のテストマトリックスに従って、No.1からNo.8の試料が作製された。下記表1中、各セル内の数値は、導電性炭素材料に対する無機絶縁材料の質量比(無機絶縁材料の質量部が導電性炭素材料の質量部で除された値)を示している。例えば、下記表2のNo.5においては、2.2質量部の無機絶縁材料と、0.1質量部の導電性炭素材料と、3.7質量部のバインダと、分散媒とが混合されることにより、第2スラリーが調製された。No.5において、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比は22である(下記表1、2参照)。各試料においてバインダの配合量は一定である。例えば、No.1においては、3.7質量部のバインダと、分散媒とが混合されることにより、第2スラリーが調製された。No.1において、無機絶縁材料および導電性炭素材料の配合量は、いずれもゼロ質量部であった(下記表1、2参照)。
【0061】
【0062】
【0063】
<評価>
《レーザ出力》
第2層にレーザが照射されることにより、試料が切断された。まず400Wの出力のレーザが第2層に照射され、試料が切断されるか否かが確認された。試料が切断されない場合、50W刻みで出力が上げられ、試料が切断される出力が確認された。確認結果は下記表3に示される。下記表3中、例えば「無機絶縁材料/導電性炭素材料=2.2/0.1」である時、700Wを超える出力で試料の切断が可能であった。例えば「絶縁材料/導電性炭素材料=0/0」である時、1000Wを超える出力でも試料が切断できなかった。
【0064】
【0065】
《切断バリ》
レーザ切断面がマイクロスコープで観察されることにより、縦バリおよび横バリの大きさが測定された。測定結果は下記表4に示される。下記表4中、各セル内の数値は、下段が横バリを示し、上段が縦バリを示す。例えば「無機絶縁材料/導電性炭素材料=2.2/0.1」である時、横バリが19μmであり、縦バリが36μmである。「無機絶縁材料/導電性炭素材料=0/0」である時、試料が切断できなかったため、切断バリが測定されていない。
【0066】
【0067】
《レーザ焼け》
レーザ照射後の第2層がマイクロスコープで観察されることにより、レーザ焼けの幅が測定された。測定結果は下記表5に示される。
【0068】
【0069】
「無機絶縁材料/導電性炭素材料=0/0.5」である時、レーザ焼けのばらつきが大きく、幅が特定できなかった。「無機絶縁材料/導電性炭素材料=0/0」である時、レーザ焼けの幅は小さいが、切断不可であった(上記表3参照)。
【0070】
上記表5において、太線で囲まれた範囲において、レーザ焼けの幅が小さい傾向がみられる。太線で囲まれた範囲においては、導電性炭素材料に対する、無機絶縁材料の質量比が3.7から560である(上記表1参照)。
【0071】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。本実施形態および本実施例に複数の作用効果が記載されている場合、本技術の範囲は、全ての作用効果を奏する範囲に限定されない。
【符号の説明】
【0072】
10 正極板、11 第1層、12 第2層、13 金属箔、14 レーザ切断面、15 正極原反、20 負極板、30 セパレータ、50 電極体、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 外装缶、92 封口板、100 電池、L1 第1切断線、L2 第2切断線。