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特許7262442塩化ビニル、酢酸ビニルおよび長鎖ビニルエステルのコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】塩化ビニル、酢酸ビニルおよび長鎖ビニルエステルのコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/06 20060101AFI20230414BHJP
   C08F 218/02 20060101ALI20230414BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20230414BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20230414BHJP
【FI】
C08F214/06
C08F218/02
C09D127/06
C09D11/106
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020506802
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2017069948
(87)【国際公開番号】W WO2019029787
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-03-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】505336080
【氏名又は名称】ヴィノリット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Vinnolit GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carl-Zeiss-Ring 25, D-85737 Ismaning, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ、ラウター
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、バウアーエッガー
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-154316(JP,A)
【文献】特開2000-198821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/00-214/28
C08F 218/00-218/18
C09D 127/00-127/24
C09D 11/00- 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル、酢酸ビニル、3~18個の炭素原子を有する非分岐状または分岐状アルキルカルボン酸の1種以上の長鎖ビニルエステル、および更なる官能性コモノマーを共重合したコポリマーであって、
前記長鎖ビニルエステルは、プロピオン酸ビニル、ブチル酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、酢酸1-メチルビニル、および5~13個の炭素原子を有するα-分岐モノカルボン酸のビニルエステルからなる群から選択され、
前記官能性コモノマーは、エチレン性不飽和のモノカルボン酸およびジカルボン酸、エチレン性不飽和のカルボキサミドおよびカルボニトリル、ならびに、エチレン性不飽和スルホン酸およびそれらの塩からなる群から選択され、
55~75重量%の塩化ビニルモノマー単位、5~25重量%の酢酸ビニルモノマー単位、10~30重量%の長鎖ビニルエステルのモノマー単位、および最大10重量%の官能性コモノマー単位を含んでなり、重量%における数字がコモノマーの総重量に基づくものであり、かつ重量%の数字がそれぞれの場合に合計すると100重量%になる、コポリマー。
【請求項2】
共重合が行われた長鎖ビニルエステルが、ラウリン酸ビニルおよび/または9~10個の炭素原子を有するα-分岐モノカルボン酸のビニルエステルを含んでなる、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
55~75重量%の塩化ビニルモノマー単位、5~25重量%の酢酸ビニルモノマー単位、および10~30重量%のラウリン酸ビニルモノマー単位を含んでなる、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
ラジカル開始重合による、請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマーの製造方法。
【請求項5】
重合が水性媒体中で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマーの、塗料および印刷インク用のバインダーとしての使用。
【請求項7】
紙、カード、織物、不織布、金属、鉱物表面、木材、およびプラスチックを含浸およびコーティングするためのコーティング材料におけるバインダーとしての、請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマーの使用。
【請求項8】
ヒートシール性およびRF溶接性のフィルムを製造するためのコーティング材料としての、請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル、酢酸ビニル、および3~18個の炭素原子を有する非分岐状または分岐状アルキルカルボン酸の1種以上の長鎖ビニルエステルのコポリマー、遊離ラジカル重合によるそれらの調製、ならびにそれに従って得られたコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニルとビニルエステルとのコポリマーは従来技術から公知であり、あらゆる種類の用途:塗料および印刷インク用のバインダーとして;紙、カード、織物、不織布、金属、鉱物表面、木材、およびプラスチックを含浸およびコーティングするため;ヒートシール性およびRF溶接性のフィルムを製造するためのコーティング材料として、使用されている。
【0003】
DE1745555の公開された明細書は、塩化ビニル、酢酸ビニルおよび長鎖ビニルエステルのコポリマーの水性分散液の製造方法に関するものである。これらのコポリマーを用いて得られる水性分散液およびポリマーフィルムの安定性を改善するために、保護コロイド、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなる三元分散剤混合物を用いて調製を行うことが提案されている。DE1745563の公開された明細書では、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロースおよび非イオン性乳化剤から構成される三元分散剤混合物を用いてこのようなコポリマーを調製することが推奨されている。
【0004】
DE2206593の公開された明細書では、特定の分散剤、すなわちエステルまたはケトンと組み合わせたセルロースエーテルを使用することによって、同様に塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーの特性を改善することが推奨されている。DE2409800の公開された明細書では、不飽和カルボン酸の共重合による塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーの場合における金属接着性の改善が記載されている。
【0005】
DE2364057の公開された明細書の主題は、例えば酢酸ビニルなどのビニルエステルの共重合による塩化ビニルおよび無水マレイン酸のバルクポリマーの溶解性および熱安定性の改善である。EP0177956A2には、長鎖ビニルエステルの共重合による塩化ビニルポリマーの加工性の改善が記載されており、ここで、ビニルエステルは溶融粘度を低下させるために共重合させ、メルカプタン連鎖移動剤を使用して分子量を低下させる。塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーの熱安定性は、酢酸ビニルをバーサチック酸のビニルエステルに置き換えることによって改善されることがEP0391398A1から知られている。
【0006】
EP1599515B1の特許では、エポキシド含有コモノマーとヒドロキシ-カルボン酸の存在での共重合による熱安定性塩化ビニルコポリマーの製造が記載されている。
【0007】
現在得られる塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーは、処理を行う際に、芳香族、グリコールエステルまたはグリコールエーテルなどの比較的極性が低い溶媒中で溶解性が十分でないことを示す。金属表面、例えばアルミニウム、またはプラスチック表面に対する接着性の改善がさらに望ましい。現在入手可能な塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーを用いて得られる複合材料のコーティングの耐水性およびシールシーム強度も同様に改善の必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の主題は、塩化ビニル-酢酸ビニル、および3~18個の炭素原子を有する非分岐状または分岐状アルキルカルボン酸の1種以上の長鎖ビニルエステルのコポリマーであって、35~80重量%の塩化ビニルモノマー単位、1~30重量%の酢酸ビニルモノマー単位、および10~64重量%の長鎖ビニルエステルのモノマー単位を含むこと、重量%の数値がコモノマーの総重量に基づくものであること、および重量%の数値がいずれの場合も合計すると100重量%になることを特徴とするコポリマーである。
【0009】
好ましいのは50~75重量%の塩化ビニルモノマー単位、5~25重量%の酢酸ビニルモノマー単位、および10~55重量%の長鎖ビニルエステルのモノマー単位を有するコポリマーである。特に好ましいのは、55~75重量%の塩化ビニルモノマー単位、5~25重量%の酢酸ビニルモノマー単位、および10~30重量%のラウリン酸ビニルを有するコポリマーである。
【0010】
3~18個の炭素原子を有する非分岐または分岐アルキルカルボン酸の好ましい長鎖ビニルエステルは、プロピオン酸ビニル、ブチル酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、酢酸1-メチルビニル、および5~13個の炭素原子を有するα-分岐モノカルボン酸のビニルエステル、例えばピバル酸ビニル、VeoVa9(商標)、VeoVa10(商標)またはVeoVa11(商標)(商品名Hexion)である。特に好ましいのは、ラウリン酸ビニル(Wacker Chemieの商品名はVersa(商標)12)および9~10個の炭素原子を有するα-分岐モノカルボン酸のビニルエステル(VeoVa9(商標)およびVeoVa10(商標))である。最も好ましいのは、ラウリン酸ビニル(ドデカン酸ビニル)である。
【0011】
場合により最大10重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.1~2.0重量%の官能性コモノマーをさらに共重合することが可能である。官能性コモノマーの例は、エチレン性不飽和のモノカルボン酸およびジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸およびマレイン酸、ならびに無水マレイン酸;エチレン性不飽和のカルボキサミドおよびカルボニトリル、好ましくはアクリルアミドおよびアクリロニトリル;エチレン性不飽和のスルホン酸および/またはそれらの塩、好ましくはビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸;エポキシド含有コモノマー、例えばメタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、好ましくはメタクリル酸グリシジルである。
【0012】
ここで、重量%中の数値は、コモノマーの総重量に基づくものであって、いずれの場合も合計すると100重量%になる。
【0013】
コポリマーは、バルクでラジカル開始重合によって調製するか、あるいは懸濁重合、乳化重合、マイクロ懸濁重合またはミニエマルション重合によって、非水性溶媒中または水性媒体中で調製する。溶液重合の場合、酢酸エチルまたはアセトンなどの有機溶媒を使用する。好ましいのは水性媒体中での重合方法であり、特に好ましいのは懸濁重合および乳化重合である。重合温度は一般に20℃~85℃である。重合は、水溶性もしくはモノマー可溶性の開始剤、またはレドックス開始剤の組合せを用いて開始することができ、これらは、特定の重合プロセスでは常套である。これらの開始剤/組み合わせは、当業者に公知である。これらの開始剤は、一般に、それぞれコモノマーの全重量に対して0.01~1.0重量%、好ましくは0.1~0.5重量%の量で使用される。
【0014】
特に好ましいと述べられている懸濁および乳化重合の方法は、保護コロイドおよび/または乳化剤などの界面活性物質の存在下で水中で重合することを含む。好適な保護コロイドは、例えば、部分鹸化および完全鹸化されたポリビニルアルコール、セルロースおよびそれらのカルボキシメチル、メチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルの誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、アルキル(メタ)アクリレートとOH-アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーである。好ましいポリビニルアルコールは、70~95モル%の加水分解度および4%水溶液中で1~30mPasのヘプラー粘度(20℃でのヘプラー法による、DIN53015)を有する部分鹸化ポリビニルアルコールである。好ましいセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピル-メチルセルロースである。ポリビニルピロリドンは使用されないことが好ましい。好適な乳化剤は、アニオン性、カチオン性および非イオン性の乳化剤であり、例としてアニオン性界面活性剤、例えば8~18個の炭素原子の鎖長を有するアルキルスルフェート、8~18個の炭素原子を有するアルキル-またはアルキルアリールスルホネート、スルホコハク酸と一価アルコールまたはアルキルフェノールとの完全エステルおよびモノエステル、あるいは非イオン性界面活性剤、例えば最大60個のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド単位を有するアルキルポリグリコールエーテルまたはアルキルアリールポリグリコールエーテルである。一般に、コモノマーの全重量に対して0.05~5質量%の保護コロイドおよび/又は乳化剤を使用する。
【0015】
分子量を調節するために、重合中に連鎖移動物質を使用することができる。連鎖移動剤を使用する場合、それらは、典型的には、重合するモノマーに対して0.02~10.0重量%の量で使用し、別々に、または反応成分とのプレミックスとして計量添加する。このような物質の例は、ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化アルケン、例えば四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチル、トリクロロエチレン、並びにアルデヒド、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドおよびイソブチルアルデヒドである。メルカプタンも好適である。プロピオンアルデヒドが好ましい。
【0016】
モノマーは、全体として計量添加することもでき、または最初に少量ずつ投入して残りを重合開始後に計量添加することもできる。計量添加は、(空間的および時間的に)別々に行ってもよい。重合終了後、残留モノマーを公知の技術を用いた後重合によって、例えばレドックス触媒で開始する後重合によって除去することができる。揮発性の残留モノマーは、好ましくは減圧下で、場合により空気、窒素又は水蒸気などの不活性同伴ガスを反応器内容物に通して又は反応器内容物にかけて、蒸留により除去してもよい。
【0017】
コポリマーは、水性分散液または非水性溶液から、例えば沈殿、濾過および後続の乾燥により、またはデカンテーションおよび後続の乾燥による典型的な方法で、固体樹脂の形態に単離することができる。乾燥は当業者に公知の方法で、例えばドラム乾燥機、フローチューブ、流動床、またはサイクロン乾燥機で行うことができる。
【0018】
コポリマーは、塗料および印刷インク用のバインダーとして;紙、カード、織物、不織布、金属、鉱物表面、木材およびプラスチックを含浸およびコーティングするためのコーティング材料中のバインダーとして;ヒートシール性およびRF溶接性のフィルムを製造するためのコーティング材料として好適である。
【0019】
コポリマーは、溶媒として頻繁に使用されるケトンおよびエステルに溶解するだけでなく、室温(23℃)であっても、加熱することなく、芳香族、グリコールエステルまたはグリコールエーテルなどの塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーにあまり適していない溶媒に容易に溶解することができる点を強調すべきである。強調すべきさらなる性質は、比較的低い極性の他のバインダーとの改善された混和性、および比較的低い極性の基材への改善された接着性である。
【0020】
以下の実施例は、本発明のさらなる説明となるものである。
【実施例
【0021】
コポリマーの調製:
比較例1:
40Lのオートクレーブ中に、最初に水12.5kgおよび過酸化ジラウロイル17.5gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル1.25kgおよび酢酸ビニル0.93kgをオートクレーブに入れ、混合物を30分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.93kgを添加した。次いで、反応混合物を74℃の重合温度に加熱した後、塩化ビニル10.3kgおよび酢酸ビニル1.3kgの混合物を一定圧力で計量添加し始めた。4.0barの最終圧力に達した際に重合を終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0022】
比較例2:
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.4kgおよび過酸化ジラウロイル16.2gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル8.24kgおよび酢酸ビニル5.30kgをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.34kgを添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱した。0.5barの最終圧力に達した際に重合を終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0023】
実施例1:
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.7kgおよび過酸化ジラウロイル38.3gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル4.25kg、酢酸ビニル3.54kg、ラウリン酸ビニル0.7kgおよびプロパナール14.2gをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.39kgを添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱し、その後、塩化ビニル5.7kgを一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が3.5bar低下した上で終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0024】
実施例2
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.7kgおよび過酸化ジラウロイル28.4gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル4.96kg、酢酸ビニル2.13kg、およびラウリン酸ビニル1.40kgをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.39kgを添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱した後、塩化ビニル5.62kgを一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が3.5bar低下した上で終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0025】
実施例3
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.7kgおよび過酸化ジラウロイル32.6gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル4.25kg、酢酸ビニル2.13kg、およびラウリン酸ビニル2.13kgをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.39kgを添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱した後、5.6kgの塩化ビニルを一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が3.5bar低下した上で終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0026】
実施例4
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.7kgおよび過酸化ジラウロイル28.4gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル5.6kg、酢酸ビニル2.1kg、およびラウリン酸ビニル2.1kgをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.39kgを添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱した後、塩化ビニル4.3kgを一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が3.5bar低下した上で終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0027】
実施例5
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.7kgおよび過酸化ジラウロイル32.6gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル4.25kg、酢酸ビニル2.13kg、およびラウリン酸ビニル2.13kgをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液を1.39kg添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱した後、塩化ビニル5.6kgを一定圧力で計量添加し始めた。重合は、亜硝酸ナトリウム15gの添加により圧力が3.3bar低下した際に終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0028】
実施例6
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.7kgおよび過酸化ジラウロイル32.6gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル3.9kg、酢酸ビニル1.1kg、ラウリン酸ビニル2.1kgおよびプロパナール14.2gをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.39kgを添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱し、その後、塩化ビニル6.0kgおよび酢酸ビニル1.0kgの混合物を一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が3.5bar低下した上で終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0029】
実施例7
40Lのオートクレーブ中に、最初に水15.7kgおよび過酸化ジラウロイル49.6gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル3.54kg、酢酸ビニル2.13kg、およびラウリン酸ビニル2.8kgをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液1.39kgを添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱した後、塩化ビニル5.6kgを一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が3.5bar低下した上で終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0030】
実施例8
40Lのオートクレーブ中に、最初に水20.9kgおよび過硫酸カリウム4.84gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル1.3kg、酢酸ビニル354.4g、ラウリン酸ビニル708.8gおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム6.41gをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。次いで、反応混合物を70℃の重合温度に加熱し、その後、塩化ビニル6.96kg、酢酸ビニル1.42kg、ラウリン酸ビニル0.92kgおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム90.90gの混合物を一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が1.0bar低下した上で終了した。ラテックスを処理(脱気、沈殿、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0031】
実施例9
40Lのオートクレーブに、最初に水15.7kg、過酸化ジラウロイル42.5gおよびマレイン酸425gを投入した。オートクレーブを窒素で不活性化した後、塩化ビニル4.25kg、酢酸ビニル2.13kg、およびラウリン酸ビニル2.1kgをオートクレーブに入れ、混合物を20分間撹拌した。液滴を安定化させるために、3.05重量%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液を1.39kg添加した。次いで、反応混合物を71℃の重合温度に加熱した後、塩化ビニル5.7kgを一定圧力で計量添加し始めた。重合は、初期圧力と比較して圧力が3.5bar低下した上で終了した。懸濁液を後処理(脱気、洗浄および乾燥)した後に白色粉末を単離した。
【0032】
測定方法:
表1に示したポリマー組成は、1H NMR分光法によって確認したものである。
【0033】
K値:
K値は、ポリマーの粘度測定平均モル質量と相関する測定基準である。K値は、DIN EN ISO1628-2の方法を用いて決定した。
【0034】
ガラス転移温度Tg:
ガラス転移温度Tgは、DSC(動的走査熱量測定、DIN EN ISO11357-1/2)により、Mettler-Toledo製のDSC1動的走査熱量計を用いて、開放るつぼ中で10K/分の加熱速度で測定した。ガラス転移温度として評価した温度は、熱流図における第二の加熱曲線の段差の中点(中点=熱流段差の半分の段差)の温度であった。
【0035】
実施例で得られたコポリマーを表1にまとめる。
【0036】
【表1】
【0037】
性能試験:
ワニス溶液の調製および溶液ヘイズの測定(方法A):
キシレン120gを250mlのガラス瓶に入れ、溶解を行うコポリマー30gを、高速撹拌機(溶解機)を用いて2000回転/分で撹拌しながらゆっくりと計量添加した。2000rpmで20分間撹拌した後、溶液を水浴中でわずか50回転にて30分間撹拌しながら50℃に加熱し、その後、撹拌せずに23℃に冷却した。
溶解度は、視覚的に透明度を測定することによって評価した。
【0038】
視覚的な透明度を測定する評価基準[評点]:
1=透明な溶液である
2=ほぼ透明な溶液である
3=若干の濁りがある
4=濁りがある
5=大変濁りがある
6=不溶性である
【0039】
キシレン中での透明度の測定結果を表2にまとめる。
【0040】
【表2】
【0041】
表2は、無極性溶媒の重要な代表例であるキシレン中での本発明のポリマーの改善された溶解度を示すものである。
【0042】
アルミニウム上のコーティングのシールシーム強度の測定
A法と同様にして、20重量%溶液をメチルエチルケトン120g中、それぞれ6gのターポリマーVinnol(商標)H15/45M(84重量%VCおよび15重量%VAおよび1重量%不飽和ジカルボキシル酸のカルボキシル官能性ターポリマー;Wacker Chemie AGからのフィルム形成性樹脂)およびの本発明の実施例および比較例からのサンプル24gから調製した。
【0043】
これらの溶液を、24μmのワイヤードクターを使用して、それぞれ延伸して、軟質アルミニウムホイル(38μm厚)上に気泡のないフィルムを形成した。室温で10分間の排気時間後にコーティングされたアルミニウムホイルを乾燥キャビネット内で180℃にて15秒間乾燥させた。
【0044】
コーティングしたホイルを中央で折り畳み、次いで、ホイルのそれぞれ光沢された側を、熱接触ヒートシーラーを用いて互いにシーリングした。
【0045】
シール条件:
a)時間:0.5秒
b)シーリングジョー(寸法15×1cm)2個の温度:180℃
c)圧力:30N/cm
5つのストリップ(それぞれ1.5cm幅)をそれぞれのシーリングしたホイルから切断した。シールシーム強度は、引張試験装置を用いて、90°の除去角度および100mm/分の速度で測定した。平均値は、5回の試験(それぞれシーリングを1回)からなり、結果はN/15mmとして報告された。
【0046】
濡れシールシーム強度の値は、シーリングしたストリップを23℃の水中で24時間にわたって湿潤貯蔵した後にそれぞれ確認した。N/15mmの値が高いほど、シールシーム強度は良好であった。
【0047】
結果を表3に要約する:
【表3】
【0048】
表3から、本発明のポリマーは、複合材料(例えば、食品または薬品を包装するための、例えば、コーティングされたアルミニウムなど)のシールシーム強度の増加を可能にすることが分かる。これはまた、コーティング(例えば、アルミニウム上)の耐水性を増加させる1つの方法を示す。