(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/02 20060101AFI20230414BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230414BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230414BHJP
【FI】
G01N33/02
C12Q1/04
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2020524827
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2018078979
(87)【国際公開番号】W WO2019091773
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・ピッキクート
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ・タランティーノ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207005(JP,A)
【文献】特開2008-131927(JP,A)
【文献】特表2015-514356(JP,A)
【文献】国際公開第2017/152137(WO,A2)
【文献】特開2015-144581(JP,A)
【文献】特開2007-120998(JP,A)
【文献】特開2004-008078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00 -33/46
C12Q 1/00 - 3/00
G06Q 10/00 -10/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法(100)であって、
前記サンプルの複数のセットから微生物学的サンプリングデータを得ること(101)、
前記微生物学的サンプリングデータのゼロ過剰二項(ZIB)分布を決定すること(102)
を含み、前記決定すること(102)は、
第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)を含むZIB分布パラメータ(π,p)を決定すること(103)
を含み、前記ZIB分布パラメータを決定することは、
i)サンプルのそれぞれのセットにおける不良品サンプルの発生数(0,1,2,...,x)について累積相対度数(f
0,f
1,f
2,...,f
x)を決定すること(104)であって、良品サンプルの前記累積相対度数は、f
0として決定される、決定すること(104)、
ii)
π=[0,1
*f
0/k,2
*f
0/k,k
*f
0/k]に従って、(k+1)個の要素のゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)のベクトルを計算すること(105)、
iii)
【数1】
に従って、前記ゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)に基づいて第1のパラメータのサブセット(
p)のベクトルを計算すること(106)、
iv)前記第1のパラメータのサブセット及び前記ゼロ過剰パラメータのサブセットにおけるベクトル対(
p,
π)について、前記累積相対度数と、前記それぞれのベクトル対(
p,
π)をパラメータとして有するZIB分布についてN個のサンプルにわたって≦x個の発生を有する理論的累積確率P
xとの間の二乗誤差を決定すること(107)、
v)最小二乗誤差を提供するベクトル対として前記ゼロ過剰パラメータ(π)及び前記第1のパラメータ(p)を決定すること(108)
を含み、前記方法は、
前記第1のパラメータ(p)及び前記ゼロ過剰パラメータ(π)に基づいて前記ZIB分布を決定すること(109)と、
サンプルの後続の食品バッチについて、前記ZIB分布からの偏差を、前記偏差に基づいて前記微生物学的リスクレベルを決定するために検出すること(110)と
を含む、方法(100)。
【請求項2】
前記累積相対度数f
xは、f
x=それぞれ≦x個の発生を有するセットの数(s’)/セットの総数(s)によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二乗誤差(sqe)は、sqe=(f
0-P
0)
2+...+(f
M-P
M)
2によって決定され、式中、Mは、最大発生数(x)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記理論的累積確率P
xは、
- P
0=P’
0
- P
1=P’
0+P’
1
- ...
- P
X=P’
0+P’
1+...+P’
X
に従って決定され、式中、
【数2】
である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
サンプルの後続の食品バッチについて前記ZIB分布からの偏差を検出することは、前記微生物学的リスクレベルを得るための既定の統計的尺度に従って偏差を決定すること(110’)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記既定の統計的尺度は、前記微生物学的リスクレベルとして信頼値を決定するためのカイ二乗検定などの統計的仮説尺度を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
信頼値の既定の閾値と関連付けられた警報レベルのセットを決定すること(111)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の後続の食品バッチについてそれぞれの信頼値を決定すること(112)と、前記信頼値と関連付けられたそれぞれの警報レベルで前記後続の食品バッチにタグ付けすること(113)とを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
既定の一定の時間間隔にわたってサンプルの前記後続の食品バッチの微生物学的サンプリングデータを得ること(101’)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータプログラ
ムであって、プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項1~9のいずれか一項に記載の方
法を前記コンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラ
ム。
【請求項11】
サンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定するためのシステム(200)であって、
前記サンプルの複数のセットから微生物学的サンプリングデータを得る(101)ように構成されたサンプリングデバイス(201)、
プロセッサ(202)であって、
第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)を含むZIB分布パラメータ(π,p)を決定すること(103)
を行うように構成されることにより、前記微生物学的サンプリングデータのゼロ過剰二項(ZIB)分布を決定する(102)ように構成されたプロセッサ(202)
を含み、前記プロセッサ(202)は、
i)サンプルのそれぞれのセットにおける不良品サンプルの発生数(0,1,2,...,x)について累積相対度数(f
0,f
1,f
2,...,f
x)を決定すること(104)であって、良品サンプルの前記累積相対度数は、f
0として決定される、決定すること(104)、
ii)
π=[0,1
*f
0/k,2
*f
0/k,k
*f
0/k]に従って、(k+1)個の要素のゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)のベクトルを計算すること(105)、
iii)
【数3】
に従って、前記ゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)に基づいて第1のパラメータのサブセット(
p)のベクトルを計算すること(106)、
iv)前記第1のパラメータのサブセット及び前記ゼロ過剰パラメータのサブセットにおけるベクトル対(
p,
π)について、前記累積相対度数と、それぞれのベクトル対(
p,
π)をパラメータとして有するZIB分布についてN個のサンプルにわたって≦x個の発生を有する理論的累積確率P
xとの間の二乗誤差を決定すること(107)、
v)最小二乗誤差を提供するベクトル対として前記ゼロ過剰パラメータ(π)及び前記第1のパラメータ(p)を決定すること(108)
を行うように構成され、前記プロセッサは、
前記第1のパラメータ(p)及び前記ゼロ過剰パラメータ(π)に基づいて前記ZIB分布を決定すること(109)と、
サンプルの後続の食品バッチについて、前記ZIB分布からの偏差を、前記偏差に基づいて前記微生物学的リスクレベルを決定するために検出すること(110)と
を行うように構成される、システム(200)。
【請求項12】
前記プロセッサは、f
x=それぞれ≦x個の発生を有するセットの数(s’)/セットの総数(s)に従って前記累積相対度数f
xを決定するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、sqe=(f
0-P
0)
2+...+(f
M-P
M)
2に従って前記二乗誤差(sqe)を決定するように構成され、式中、Mは、最大発生数(x)である、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、
- P
0=P’
0
- P
1=P’
0+P’
1
- ...
- P
X=P’
0+P’
1+...+P’
X
に従って前記理論的累積確率
P
x
を決定するように構成され、式中、
【数4】
である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記微生物学的リスクレベルを決定するために、カイ二乗検定などの統計的仮説尺度から前記偏差の信頼値を決定するこ
と、
信頼値の既定の閾値と関連付けられた警報レベルのセットを決定すること(111)を行うように構成され、前記システムは、ディスプレイ(203)であって、前記微生物学的リスクレベルに関してユーザに警報を出すために、前記ディスプレイ上のグラフ又は数値表現として前記警報レベルを表示するように構成されたディスプレイ(203)を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌包装のための統計的品質管理の分野に関する。より具体的には、本発明は、食品バッチ(food batch)の微生物学的リスクレベルを決定する方法、微生物学的リスクレベルを決定するための関連するコンピュータプログラム製品及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
品質監視システムは、生産性能のアセスメント及び最適化を行うためにすべての産業分野において使用されている。食品包装産業では、常温保存可能な食品パッケージを充填する機械の性能は、無菌性能と呼ばれ、商業的無菌状態ではないパッケージの数と、機械によって充填されたパッケージの総数との間の長期比率によって定義される。無菌データのサンプリングは、経時的に微生物学的サンプリングデータを回収することによって行われる。例えば、充填機が顧客サイトに設置される際、顧客の要求に応じて無菌包装品質水準を提供できることを証明するために検認試験が行われる。一定の閾値を下回る非無菌パッケージパーセンテージを維持する一定の数のパッケージを充填機が生産できることが示されると、充填機は、検認試験を通過する。食品パッケージ検査は、典型的には、パッケージ無菌性を損なう恐れがある機械の問題を特定できるようにするためにサンプリング計画に従って実施される。この点に関し、生産のためのサンプリング及び検査活動は、破壊的且つ高価であるため、品質管理のための効率的なツール及び手順を開発することが望ましい。充填機は、非常に高い品質を提供するため、無菌生産は、高収率プロセス(すなわち欠陥率が非常に低い)と見なすことができる。また、これにより、プロセスのモデリングに対する特定の要求も必要とされる。従って、以前の品質管理ツールにおける問題は、適合統計的分布において十分な精度で無菌品質データをモデル化することである。従って、問題は、生産に与える影響を最小限に抑えながら、信頼できる品質管理ツール及び戦略をどのように実装するかである。
【0003】
従って、食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法の改善、特に上記で言及した問題及び支障をより多く回避できるもの(無菌品質データのモデリングの改善、予測及びリスク評価分析の精度の改善並びに生産検査ツールの改善を提供することを含む)が有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の例は、好ましくは、添付の特許請求項によるデバイスを提供することにより、単独又は任意の組合せにおいて、上記で特定される等の当技術分野における1つ又は複数の欠陥、不利又は問題を緩和、軽減又は排除することを求めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、サンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法が提供される。方法は、サンプルの複数のセットから微生物学的サンプリングデータを得ること、微生物学的サンプリングデータのゼロ過剰二項(ZIB)分布を決定することを含み、決定することは、第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)を含むZIB分布パラメータ(π,p)を決定することを含み、ZIB分布パラメータを決定することは、
i)サンプルのそれぞれのセットにおける不良品サンプルの発生数(0,1,2,...,x)について累積相対度数(f
0,f
1,f
2,...,f
x)を決定することであって、良品サンプルの累積相対度数は、f
0として決定される、決定すること、
ii)
π=[0,1
*f
0/k,2
*f
0/k,k
*f
0/k]に従って、(k+1)個の要素のゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)のベクトルを計算すること、
iii)
【数1】
に従って、ゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)に基づいて第1のパラメータのサブセット(
p)のベクトルを計算すること、
iv)第1のパラメータのサブセット及びゼロ過剰パラメータのサブセットにおけるベクトル対(
p,
π)について、前記累積相対度数と、それぞれのベクトル対(
p,
π)をパラメータとして有するZIB分布についてN個のサンプルにわたって≦x個の発生を有する理論的累積確率P
xとの間の二乗誤差を決定すること、
v)最小二乗誤差を提供するベクトル対としてゼロ過剰パラメータ(π)及び第1のパラメータ(p)を決定することを含む。方法は、第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)に基づいてZIB分布を決定することと、サンプルの後続の食品バッチについて、ZIB分布からの偏差を、前記偏差に基づいて微生物学的リスクレベルを決定するために検出することとを含む。
【0006】
第2の態様によれば、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行されると、第1の態様による方法のステップをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品である。
【0007】
第3の態様によれば、サンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定するためのシステムが提供される。システムは、サンプルの複数のセットから微生物学的サンプリングデータを得るように構成されたサンプリングデバイス、プロセッサであって、第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)を含むZIB分布パラメータ(π,p)を決定することを行うように構成されることにより、微生物学的サンプリングデータのゼロ過剰二項(ZIB)分布を決定するように構成されたプロセッサを含む。プロセッサは、
i)サンプルのそれぞれのセットにおける不良品サンプルの発生数(0,1,2,...,x)について累積相対度数(f
0,f
1,f
2,...,f
x)を決定することであって、良品サンプルの累積相対度数は、f
0として決定される、決定すること、
ii)
π=[0,1
*f
0/k,2
*f
0/k,k
*f
0/k]に従って、(k+1)個の要素のゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)のベクトルを計算すること、
iii)
【数2】
に従って、ゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)に基づいて第1のパラメータのサブセット(
p)のベクトルを計算すること、
iv)第1のパラメータのサブセット及びゼロ過剰パラメータのサブセットにおけるベクトル対(
p,
π)について、前記累積相対度数と、それぞれのベクトル対(
p,
π)をパラメータとして有するZIB分布についてN個のサンプルにわたって≦x個の発生を有する理論的累積確率P
xとの間の二乗誤差を決定すること、v)最小二乗誤差を提供するベクトル対としてゼロ過剰パラメータ(π)及び第1のパラメータ(p)を決定することを行うように構成される。プロセッサは、第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)に基づいてZIB分布を決定することと、サンプルの後続の食品バッチについて、ZIB分布からの偏差を、前記偏差に基づいて微生物学的リスクレベルを決定するために検出することとを行うように構成される。
【0008】
本発明のさらなる例は、従属請求項において定義され、本開示の第2及び第3の態様の特徴は、第1の態様に必要な変更を加えたものである。
【0009】
本開示のいくつかの例は、無菌品質データのモデリングの改善を提供する。
【0010】
本開示のいくつかの例は、予測及びリスク評価分析の精度の改善を提供する。
【0011】
本開示のいくつかの例は、生産検査ツールの改善を提供する。
【0012】
本開示のいくつかの例は、無菌品質データへのより正確な適合のためのゼロ過剰二項分布のパラメータの推定の改善を提供する。
【0013】
本開示のいくつかの例は、充填機における欠陥のある要素又は機能の促進された且つ時間のかからない特定を提供する。
【0014】
本開示のいくつかの例は、機械における誤った挙動を特定するための資源のより効率的な使用を提供する。
【0015】
本開示のいくつかの例は、機械コンポーネントのより予測可能な且つ効率的な保守スケジュールを提供する。
【0016】
本開示のいくつかの例は、機械の品質を評価するためのより効率的な方法を提供する。
【0017】
「含む/含んでいる」という用語は、本明細書で使用される際、記述される特徴、整数、ステップ又はコンポーネントの存在を指定するために取り入れられるが、1つ若しくは複数の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネント又はそれらのグループの存在又は追加を除外しないことが強調されるべきである。
【0018】
本発明の例が可能であるこれらの及び他の態様、特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明の例の以下の説明から明らかであり且つ解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】本開示の例による、食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法のフローチャートである。
【
図1b】本開示の例による、食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法のフローチャートである。
【
図2】本開示の例による、充填機におけるサンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定するように構成されたシステムの概略図である。
【
図3a-b】本開示の例による、充填機におけるサンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定するように構成されたシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の具体的な例について説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される例に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの例は、本開示が十分且つ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。添付の図面に示される例の詳細な説明において使用される専門用語は、本発明を限定することを意図しない。図面では、同様の番号は、同様の要素を指す。
【0021】
図1aは、食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法100のフローチャートを示す。方法100のステップが説明され且つ示される順番は、限定するものと解釈すべきではなく、様々な順番でステップを実行することができると考えられる。従って、サンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法が提供される。従って、各セット(s)は、N個のサンプルを含み得る。方法100は、サンプルの複数のセット(s)から微生物学的サンプリングデータを得ること(101)と、微生物学的サンプリングデータのゼロ過剰二項(ZIB)分布を決定すること(102)とを含み、決定すること(102)は、ZIB分布パラメータ(π,p)を決定すること(103)を含む。ZIB分布パラメータは、第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)を含む。ZIB分布パラメータを決定することは、i)サンプルのそれぞれのセットにおける不良品サンプルの発生数(0,1,2,...,x)について累積相対度数(f
0,f
1,f
2,...,f
x)を決定すること(104)を含む。良品サンプルの累積相対度数は、f
0として決定される。例えば、13セット(それぞれ1個の不良品サンプルの発生を有する)が存在する場合、相対度数f’
1は、13をセットの総数で除することによって得られるなど、以下同様であり、その後、累積相対度数は、それぞれの相対度数を総和することによって得られる(f
0=f’
0,f
1=f’
0+f’
1,...,f
x=f’
0+f’
1+...+f’
x)。すなわち、累積相対度数f
xは、それぞれ≦x個の発生を有するセットの数(s’)をセットの総数(s)で除することによって決定することができる。
【0022】
方法100は、ii)
π=[0,1
*f
0/k,2
*f
0/k,k
*f
0/k]に従って、(k+1)個の要素のゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)のベクトルを計算すること(105)を含み、ここで、kは、用途に応じて最適化することができる定数である。方法100は、iii)
【数3】
に従って、ゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)に基づいて第1のパラメータのサブセット(
p)のベクトルを計算すること(106)を含む。
【0023】
方法100は、iv)第1のパラメータのサブセット及びゼロ過剰パラメータのサブセットにおけるベクトル対(p,π)について、前述の累積相対度数(f0,f1,f2,...,fx)と、それぞれのベクトル対(p,π)をパラメータとして有するZIB分布についてN個のサンプルにわたって≦x個の発生を有する理論的累積確率Pxとの間の二乗誤差を決定すること(107)をさらに含む。従って、上記で説明されるように、第1のベクトル対(p
1
,π
1
)を計算することができる。次いで、ZIB分布への入力パラメータとして、第1のベクトル対p
1
,π
1
について理論的累積確率Pxを決定することができる。次いで、決定されたPxは、第1のベクトル対p
1
,π
1
と関連付けられた二乗誤差を決定するための基底として使用される。方法100は、v)最小二乗誤差を提供するベクトル対としてゼロ過剰パラメータ(π)及び第1のパラメータ(p)を決定すること(108)を含む。すなわち、すべてのベクトル対p,πを計算することができ、最低値を有する二乗誤差をもたらすベクトル対がZIB分布への入力パラメータとして選択される。従って、方法100は、最小二乗誤差を提供する第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)に基づいてZIB分布を決定すること(109)を含み、サンプルの後続の食品バッチについてZIB分布からの偏差を、前述の偏差に基づいて微生物学的リスクレベルを決定するために検出すること(110)をさらに含む。累積相対度数と理論的確率Pxとの間の二乗誤差最小化に基づいて、ZIB分布について第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)を決定することにより、無菌データ(食品容器用の高収率充填機301からサンプリングされたデータなど)へのZIB分布のより正確な適合が提供される。従って、無菌データのモデリングの改善を達成することができる。微生物学的リスクレベルのより信頼できるアセスメントは、経時的に提供することができ、その理由は、充填機の操作中にさらなるデータが収集され、適合ZIB分布(充填機の既知の制御されている状態又は較正された状態について決定することができる)と比較されるためである。従って、以前のモデリング方法における問題(データを標準化二項分布に適合させる際など)を回避することができる。ZIB分布の精度の改善により、より効率的な生産検査ツールが可能になり、リスクのアセスメントに費やす時間を低減することができ、確認された品質水準の高い信頼区間を維持しながら、生産スループットを増加することができる。また、状態監視及び機械挙動の理解を容易にすることもでき、これを受けて、機械の品質を評価するためのより効率的な方法、機械における誤った挙動の特定及びより予測可能且つ効率的な保守スケジュールが受け入れられる。
【0024】
言及したように、累積相対度数fxは、それぞれ≦x個の発生を有するセットの数(s’)をセットの総数(s)で除することによって決定することができる。二乗誤差(sqe)は、sqe=(f0-P0)2+...+(fM-PM)2によって決定することができ、式中、Mは、サンプルのセット(s)における欠陥の最大発生数(x)であり、fxは、累積相対度数であり、Pxは、理論的累積確率であり、各Pxは、上記で説明されるように、パラメータのサブセットp,πを有する理論的ZIB分布について決定される。例えば、M=2の場合、sqe=(f0-P0)2+(f1-P1)2+(f2-P2)2である。
【0025】
理論的累積確率P
xは、
- P
0=P’
0
- P
1=P’
0+P’
1
- ...
- P
X=P’
0+P’
1+...+P’
X
に従って決定することができ、式中、
【数4】
である。
【0026】
例えば、第1のベクトル対
p
1
,
π
1
をゼロ過剰パラメータ(π)及び第1のパラメータ(p)の候補とし、M=2であると考慮すると、P’
xは、
【数5】
と決定される。
【0027】
従って、Pxは、上記で例示されるように、ZIBパラメータのサブセットの各ベクトル対p,πについて決定し、二乗誤差(sqe)を決定するための基底として使用することができる。最小二乗誤差をもたらすベクトル対がZIB分布への入力パラメータとして選択される。
【0028】
図1bは、食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定する方法100のさらなるフローチャートを示す。方法100のステップが説明され且つ示される順番は、限定するものと解釈すべきではなく、様々な順番でステップを実行することができると考えられる。
【0029】
サンプルの後続の食品バッチについてZIB分布からの偏差を検出することは、微生物学的リスクレベルを得るための既定の統計的尺度に従って偏差を決定すること(110’)を含み得る。従って、その後に得られた無菌データは、ZIB分布が依然としてデータを説明しているかどうか又は統計的に有意な偏差があるかどうかを評価するためにZIB分布と比較することができる。後者の事例では、無菌データは、微生物学的リスクレベルの増加を示し得る。
【0030】
既定の統計的尺度は、微生物学的リスクレベルとして信頼値を決定するためのカイ二乗検定(χ2)などの統計的仮説尺度を含み得る。また、後続の無菌データがどの程度まで初期のZIB分布に適合するかを評価するために、他の統計的検定を利用することもできる。従って、そのような統計的検定の信頼値は、微生物学的リスクレベルを示し得る。
【0031】
方法100は、信頼値の既定の閾値に従って警報レベルのセットを提供すること(111)を含み得る。さらに、そのような閾値及び警報レベルは、品質監視ツールに組み込むことができ、それにより、ユーザは、生産ラインの稼働中、無菌データの異なるレベルの偏差に関する警報を受けることができる。
【0032】
方法100は、複数の後続の食品バッチについてそれぞれの信頼値を決定すること(112)と、信頼値と関連付けられたそれぞれの警報レベルで後続の食品バッチにタグ付けすること(113)とを含み得る。これにより、前述の統計的検定に従って決定された特定の信頼値又は警報レベルと関連付けられたラベル又はタグを介してリリースされたバッチを追跡することができる場合の品質管理の促進が提供される。
【0033】
方法100は、既定の一定の時間間隔にわたってサンプルの後続の食品バッチの微生物学的サンプリングデータを得ること(101’)を含み得る。従って、無菌データが収集される間隔は、特定の用途について最適化することができる既定の時間量の窓であり得る。しかし、時間窓の長さは、ZIB分布適合の結果又はZIB分布からの後続の偏差に応じて連続的に変化し得ると考えられる。例えば、より有意な偏差及びより低い信頼値は、より間欠的な制御及びより短いサンプリング時間をもたらすきっかけとなり得る。
【0034】
コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行されると、
図1a~bに関して上記で説明される方法100のステップをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0035】
図2は、充填機301における
図1a~bに関して上記で説明される方法100を実行するように構成されたプロセッサ202の概略図である。従って、充填機301におけるサンプル(N)の複数のセット(s)の食品バッチの微生物学的リスクレベルを決定するためのシステム200が提供される。システム200は、サンプルの複数のセット(
図2ではセットs
1及びs
2として例示され、サンプルは、サンプリングデバイス201により、充填機301のそれぞれの包装容器から採られる)から微生物学的サンプリングデータを得る(101)ように構成されたサンプリングデバイス201と、プロセッサ202であって、第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)を含むZIB分布パラメータ(π,p)を決定する(103)ように構成されることにより、微生物学的サンプリングデータのゼロ過剰二項(ZIB)分布を決定する(102)ように構成されたプロセッサ202とを含む。プロセッサ202は、i)サンプルのそれぞれのセットにおける不良品サンプルの発生数(0,1,2,...,x)について累積相対度数(f
0,f
1,f
2,...,f
x)を決定すること(104)であって、良品サンプルの累積相対度数は、f
0として決定される、決定すること(104)、ii)
π=[0,1
*f
0/k,2
*f
0/k,k
*f
0/k]に従って、(k+1)個の要素のゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)のベクトルを計算すること(105)、iii)
【数6】
に従って、ゼロ過剰パラメータのサブセット(
π)に基づいて第1のパラメータのサブセット(
p)のベクトルを計算すること(106)を行うように構成される。
【0036】
プロセッサ202は、iv)第1のパラメータのサブセット及びゼロ過剰パラメータのサブセットにおけるベクトル対(
p,
π)について、前記累積相対度数と、それぞれのベクトル対(
p,
π)をパラメータとして有するZIB分布についてN個のサンプルにわたって≦x個の発生を有する理論的累積確率P
xとの間の二乗誤差を決定すること(107)を行うように構成される。プロセッサ202は、v)最小二乗誤差を提供するベクトル対としてゼロ過剰パラメータ(π)及び第1のパラメータ(p)を決定すること(108)を行うように構成される。プロセッサ202は、第1のパラメータ(p)及びゼロ過剰パラメータ(π)に基づいてZIB分布を決定すること(109)と、サンプルの後続の食品バッチについてZIB分布からの偏差を、前記偏差に基づいて微生物学的リスクレベルを決定するために検出すること(110)とを行うように構成される。従って、システム200は、方法100及び
図1a~bに関連して上記で説明されるように、有利な利益を提供する。
【0037】
プロセッサ202は、fx=それぞれ≦x個の発生を有するセットの数(s’)/セットの総数(s)に従って累積相対度数fxを決定するように構成することができる。プロセッサ202は、sqe=(f0-P0)2+...+(fM-PM)2(式中、Mは、最大発生数(x)である)に従って二乗誤差(sqe)を決定するように構成することができる。
【0038】
プロセッサ202は、
- P
0=P’
0
- P
1=P’
0+P’
1
- ...
- P
X=P’
0+P’
1+...+P’
X
に従って理論的累積確率P
xを決定するように構成することができ、式中、
【数7】
である。
【0039】
方法100は、本明細書で説明されるシステム200によって実施することができる。いくつかの実施形態では、方法100は、システム200により、プロセッサ202及びサンプリングデバイス201を使用して実施される。
図3a~bは、
図1a~bのそれぞれに関連して説明されるように、方法100を実行するように構成されたシステム200のプロセッサ202のさらなる図である。
【0040】
プロセッサ202は、微生物学的リスクレベルを決定するために、カイ二乗検定などの統計的仮説尺度から前記偏差の信頼値を決定すること、信頼値の既定の閾値と関連付けられた警報レベルのセットを決定すること(111)とを行うように構成することができる。システムは、ディスプレイ203であって、微生物学的リスクレベルに関してユーザに警報を出すために、ディスプレイ203上のグラフ又は数値表現として警報レベルを表示するように構成されたディスプレイ203を含み得る。システム200は、プロセッサ201と連通する制御ユニット204をさらに含み得る。制御ユニットは、言及した微生物学的サンプリングデータ又は警報レベルに応じて充填機301を制御するために充填機301と通信するように構成することができる。制御ユニット204は、例えば、一定の信頼値閾値と関連付けられた警報レベルに達した場合(すなわち微生物学的リスクレベルが高過ぎる場合)に充填機301を停止させるために、制御命令を充填機301に送信することができる。上記では、特定の例を参照して、本発明について説明してきた。しかし、上記で説明されるもの以外の他の例も本発明の範囲内で等しく可能である。本発明の異なる特徴及びステップは、説明されるもの以外の他の組合せで組み合わせることができる。本発明の範囲は、添付の特許請求項によってのみ限定される。
【0041】
より一般的には、当業者であれば、本明細書で説明されるすべてのパラメータ、寸法、材料及び構成は、例示であることを意図すること、及び実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は、本発明の教示が使用される1つ又は複数の特定の用途次第であることを容易に理解するであろう。