(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】付加製造組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20230414BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20230414BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230414BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230414BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20230414BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/118
B33Y70/00
B33Y80/00
C08K3/00
C08L77/06
(21)【出願番号】P 2020554910
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 US2019026013
(87)【国際公開番号】W WO2019195694
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-07
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519393129
【氏名又は名称】デュポン ポリマーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベラルディーノ ダチル
(72)【発明者】
【氏名】イエンイエン カオ
(72)【発明者】
【氏名】リンダ カイエ ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー レイ トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】カイ チー
(72)【発明者】
【氏名】ティン ワン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス イー.ラブレース
(72)【発明者】
【氏名】ロバート デスモンド
(72)【発明者】
【氏名】マリオ エー.マルティネス ファリアス
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505409(JP,A)
【文献】特表2019-534393(JP,A)
【文献】国際公開第2018/075319(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0022786(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102952392(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/106,64/118,64/20,64/30,
64/40
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/00,70/00,
80/00
C08K 3/00
C08L 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)100~30重量パーセントのポリアミド組成物であって、
a)
5~54重量パーセントの、融点を有する少なくとも1つの半結晶質コポリアミドであって、前記半結晶質コポリアミドは、
i)5~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、8~20個の炭素原子を含む1つ以上の芳香族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
ii)60~95モルパーセントの脂肪族繰り返し単位であって、6~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジアミンから誘導される、脂肪族繰り返し単位と、を含む、半結晶質コポリアミドと、
b)
46~95重量パーセントの少なくとも1つの非晶質コポリアミドであって、
iii)60~90モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、イソフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
iv)10~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、テレフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、を含む、非晶質コポリアミドと、を含み、
(a)及び(b)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントのポリアミド組成物(A)となる、ポリアミド組成物と、
B)0~70重量パーセントの少なくとも1つの添加剤と、を含み、
(A)及び(B)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントの付加製造組成物となる、付加製造組成物。
【請求項2】
フィラメント又はペレット形態の、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の付加製造組成物を含む3D印刷物品。
【請求項4】
前記組成物は、(B)1~70重量パーセントの少なくとも1つの添加剤を含む、請求項3に記載の3D印刷物品。
【請求項5】
添加剤(B)は、補強剤、強化剤、フィラー、接着促進剤、相溶化剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、流動助剤、潤滑剤、離型剤、染色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工助剤、難燃剤、帯電防止剤、高温コポリアミド、脂肪族ポリアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、又は前記補強剤は、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、グラファイト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、又は前記強化剤は、官能化高分子強化剤、非官能化高分子強化剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3又は4に記載の3D印刷物品。
【請求項6】
室温で測定した湿潤:乾燥引張弾性係数の比は0.85以上であり、湿潤:乾燥最大引張強度の比は0.85以上である、請求項3又は4に記載の3D印刷物品。
【請求項7】
材料押出付加製造プロセスによって調製される、請求項3又は4に記載の3D印刷物品。
【請求項8】
前記材料押出付加製造プロセスは溶融フィラメント製作プロセス又はペレット付加製造プロセスである、請求項7に記載の3D印刷物品。
【請求項9】
0.5以上の垂直:水平引張強度の比を示す、請求項3又は4に記載の3D印刷物品。
【請求項10】
カールバー試験に従って試験したとき
1mm以下の高さ変位を示す、請求項3又は4に記載の3D印刷物品。
【請求項11】
半結晶質コポリアミド(a)は、PA66/6T、PA610/6T、PA612/6T、PA614/6T、PA616/6T及びPA618/6Tからなる群から選択され、且つ前記非晶質コポリアミド(b)は、PA6I/6Tである、請求項3又は4に記載の3D印刷物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
材料押出付加製造プロセスを用いた3D印刷物品の調製に有用な付加製造(AM)組成物が本明細書で開示される。これらのAM組成物は、融着フィラメント製作(fused filament fabrication)及びペレット付加製造(pellet additive manufacturing)プロセスでそれぞれ用いられ得るフィラメント及びペレットを調製するために用いられ得る。こうしたプロセスによって調製される3D印刷物品もまた本明細書で開示される。
【背景技術】
【0002】
3次元(3D)印刷としても知られる付加製造(AM)は、1つ以上の付加製造技術を使用して、3D部品のデジタル表現(例えば、AMF及びSTLフォーマットファイル)から3D部品を印刷又は他の方法で製造するために使用される。組成物の連続する層が堆積されて一体に融着されると、規定の形状を有する物品が作製される。「融着」という用語は、連続する層が互いに接着することを意味する。市販の付加製造技術の例としては、材料押出、噴射、選択的レーザ焼結、粉末/バインダー噴射、電子ビーム溶融、及び光造形プロセスが挙げられる。材料押出AM技術の例としては、融着堆積成形法(fused deposition modeling、FDM)とも称される融着フィラメント製作法(FFF)、並びに大面積付加製造法(BAAM)及び大規模付加製造法(LSAM)を含むペレット付加製造法(PAM)が挙げられる。これらの技術のそれぞれの場合、3D部品のデジタル表現は、最初に複数の水平層へとスライスされる。スライスされた各層に対して、続いてツールパスが生成され、ツールパスは、付加製造システムに対して所与の層を印刷するように指示を与える。
【0003】
一部の付加製造プロセス、特に高出力レーザの使用を伴うレーザ系プロセスは、高価である場合がある。より経済的なプロセスは、FFF及びPAMなどの押出系プロセスである。FFFにおいては、フィラメント、繊維、又はストランドが3D印刷装置内に入り、加熱されたノズルを通してフィラメントを押し出すことによって3D物体が形成され、ここでフィラメントは溶融して層を形成し、各層は押出後に硬化する(すなわち、レイヤーバイレイヤー堆積法(layer-by-layer deposition))。ペレット付加製造プロセスは、溶融、配合、及び押出機能を組み合わせる付加製造システムで、ポリマーペレット及び粉末、繊維補強材、並びにその他のフィラー及び添加剤を原材料として利用し、硬く高度に強化された材料の印刷を可能にする。押出系AMに使用される材料は、広いノズル/ホットエンド温度範囲に適合することが有利である。例えば、一部の場合では、ノズル温度を上昇させると、層間接着力を改善させ、3D印刷された部品の機械的性能を向上させることができる。その他の場合では、機能特性及び審美特性を維持しながらもより低いノズル温度で印刷されることが可能な材料は、多種多様なプリンタとの広範な適合性を示す。融着フィラメント製作法で用いられる材料が、連続的なストランドとして破断せずにスプールに巻き付けられ得ることは有利である。
【0004】
耐湿性材料は、FFF、PAM、及びその他の押出系3D印刷プロセスでの使用に望ましい。3Dプリンタは、多くの場合で高い相対湿度を有する様々な環境で用いられる。原材料が吸湿した場合、過剰に高い温度で印刷することで、巨視的な気泡、粗い表面、及び機械的特性の減損がもたらされる。吸水によって寸法が変化し、のみならず剛性及び強度などの機械的特性も低下させるため、吸水性の低さは印刷された部品の特性を保持する上で重要である。加えて、押出系プロセスによって印刷された部品は、典型的には印刷された部品を水浴に浸漬されることによって除去される溶解性の支持構造体を備えて印刷される場合が多い。
【0005】
PA66及びPA6などのポリアミドは、特に、これらがガラス繊維若しくは炭素繊維補強材を有するか、又は無機フィラーを含む場合、加工が容易であり、且つ高い融点及び高い熱たわみ温度を有する。しかしながら、これらは、典型的には、吸水性が高く、且つ、急速に結晶化するため印刷されると焼結ひずみ又はカールを示す。これらの高結晶質ポリアミドを連続的なストランドとしてスプールに巻き付けることは、特に組成物がガラス又は炭素補強材を組み込んでいる場合に困難となり得る。アミノウンデカン酸(PA11)及びラウロラクタム(PA12)、又はドデカンジアミンとドデカン二酸との組み合わせ(PA1212)で構成されるものなどの長鎖脂肪族ポリアミドは、低い吸水率及び印刷時の比較的低い焼結ひずみを有するが、乾燥している時であっても低い融点、低い係数、及び低い強度を有する。これらは、比較的高温における技術的応用に対して望ましくない。半結晶質の半芳香族ポリアミドは、吸水性が低減されており、吸水後も機械的特性は実質的に保持される。しかしながら、融点が、大半の卓上型FFFプリンタで処理するには高過ぎる場合が多い。
【0006】
多くの半結晶質ポリアミドの結晶化速度が高いことは、層間接着に悪影響を及ぼし、また、物品が印刷される時に物品を変形させ得る収縮を生じさせる。この問題に対処するため、結晶化速度を遅くするために半結晶質ポリアミドと非晶質ポリアミドとのブレンドが印刷されてきた。
【0007】
米国特許出願2014/0141166A1号明細書は、少なくとも1つの半結晶質ポリアミドと少なくとも1つの非晶質ポリアミドとの実質的に混和性のブレンドを含み、好ましい半結晶質ポリアミドがPA6、PA66、及びPA12を含む非芳香族ポリアミドから選択される、融着フィラメント製作法のための組成物を開示している。
【0008】
米国特許第5,391,640号明細書は、従来のポリアミドと非晶質ポリアミドとのブレンドを開示しており、このようなブレンドは、湿度に対して比較的鈍感であり、良好なフィルムバリア特性を示す。
【0009】
国際公開第2017153586A1号パンフレットは、少なくとも0.5重量%の環状モノマーを含む、FFFのための半結晶質コポリアミドを開示している。この出願の代表的なコポリアミドはPA-6/IPDTであり、ここでIPDはイソホロンジアミンであり、Tはテレフタル酸であり、IPDTはコポリアミド中に1重量%存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、得られた物品の調整された特徴及び機械的特性、並びに/又は改善された処理窓(processing window)をもたらす、FFF及びPAMなどの材料押出付加製造プロセスで使用するための半結晶質コポリアミドを含む、改善された、容易に調律されるポリマー組成物に対する必要性が存在する。こうした組成物は、広範な温度範囲にわたって処理可能であり、また、乾燥した部品及び調湿された部品の両方の低いカール/焼結ひずみ、低い吸湿性、及び良好な機械的特性の組み合わせを示す。
【0011】
本明細書で説明され、且つ特許請求される本発明は、本明細書の図面を参照することによってより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書でより詳細に説明される、幾何学的形状の詳細を含み、ASTM引張特性試験に関連する試験片の図である。
【
図2】垂直、エッジ、又は水平を含む様々な方向の試験バーの図である。
【
図3】本明細書でより詳細に説明される、特定のインフィル幾何学形状を有する物品の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
略語
特許請求の範囲及び本明細書は、以下に記載される略語及び定義を用いて解釈されるべきである。
「MI」は、メルトインデックスを意味する。
「MPa」は、メガパスカルを意味する。
「sec」は秒を意味する。
「psi」は、1平方インチ当たりのポンドを意味する。
「%」は、用語パーセントを意味する。
「重量%」は、重量パーセントを意味する。
「mm」は、ミリメートルを意味する。
「mol.%」は、モルパーセントを意味する。
「kN」はキロニュートンを意味する。
「IV」は、固有粘度を意味する。
「RV」は、相対粘度を意味する。
【0014】
定義
本明細書において使用される場合、冠詞「1つの(a)」は、1つだけでなく2つ以上も意味し、その指示対象の名詞を単数の文法上のカテゴリーに必ずしも限定しない。
【0015】
本明細書において使用される場合、「約」及び「ちょうど又は約」という用語は、量又は値を修飾するために使用される場合、請求項で列挙されるか又は本明細書に記載される厳密な量又は値よりも多い又は少ない量又は値の近似値を意味する。近似値の厳密な値は、当業者が厳密な値への適切な近似として認識するものによって決定される。本明細書において使用される場合、請求項又は本明細書に記載の正確に列挙されていない同様の値を伝える用語は、請求項又は本明細書に記載の列挙されているものと均等な結果又は作用をもたらすことができ、そのため、当業者は、同様の値によって許容可能にもたらされるものとして認識するであろう。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「物品」は、未完成の若しくは完成した品物、物体、若しくは対象、又は未完成の若しくは完成した品物、物体、若しくは対象の要素若しくは特徴を意味する。本明細書において使用される場合、物品が未完成である場合、用語「物品」は、完成品となるために更なる処理を受け得る形態、形状、構成を有する任意の品物、物体、対象、要素、装置等を指し得る。物品が完成している場合、「物品」という用語は、存在全体又はその一部を更に処理することなしに特定の用途/目的に適した形態、形状、構成である品物、物体、対象、要素、装置等を指す。
【0017】
物品は、部分的に完成して更なる処理を待っているか、又は共に完成品を構成することになる他の要素/組立部品と組み立てられる1つ以上の要素又は組立部品を含むことができる。更に、本明細書において使用される場合、用語「物品」は、物品のシステム又は構成を指し得る。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「付加製造」(AM)は、通常はレイヤーバイレイヤープロセスで材料を一体に接合して物品を形成するプロセスを指す。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「付加製造システム」は、少なくとも部分的に付加製造法を用いて、3D品物及び/若しくは支持構造体を印刷、構築、若しくはその他の方法で作製するユニット若しくは複数のユニットを形成する一式の連結された部品を指し、これは、スタンドアロンのユニット、より大きなユニット若しくは生産ラインのサブユニットであり得、且つ/又は、除去製造(subtractive-manufacturing)機構、ピックアンドプレース機構、及び2次元印刷機構などのその他の非付加製造機構を含み得る。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「材料押出」は、流動性材料をノズル又はオリフィスを通して選択的に分配することによって、レイヤーバイレイヤー方式で3Dモデルのデジタル表現から三次元(3D)モデルを構築するために用いられる製造プロセスを指す。典型的には、熱可塑性材料が流動性状態になるまで溶融又は加熱されて、一連の層として押し出され、これが冷却されると3D部品を形成する。材料押出用の原材料としては、フィラメント、ポリマーペレット及び粉末、繊維補強材、並びにその他のフィラー及び添加剤が挙げられ得る。材料押出技術としては、融着フィラメント製作法、ペレット付加製造法、大面積付加製造法及び大規模付加製造法、並びにASTM F2792-12aによって定められるその他の材料押出技術が挙げられる。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「融着フィラメント製作法(FFF)」及び「融着堆積成形法」(FDM)は、加熱されたノズルを通して熱可塑性材料を含有するフィラメントを押し出して層を形成することによって三次元物品が作製され、各層は前の層の上に押し出され、押出後に固化して物品を形成する、押出系付加製造プロセスを指す。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「相対強度」は、方程式1によって決定される試験試料の引張強度と破断点伸びとの積を指し:
相対強度=(引張強度)×(破断点伸び%/100) (1)
式中、引張強度及び破断点伸びパーセントは、それぞれ試験試料に関してISO527-2:2012に従って測定される。従って、試験試料の相対強度は、部品強度及び延性の測定値を組み合わせたものであり、印刷された3D部品の堅牢性、疲労寿命などの優れた指標である。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「垂直対水平の引張強度の比」は、水平(xy)方向に印刷された引張りバーの引張強度で割られた垂直(zx)方向に印刷された引張りバー(
図2を参照されたい)の引張強度を指し、ここで引張強度はISO527-2:2012に準じて試験試料に関して測定され、水平バー及び垂直バーの両方の印刷は、同じプリンタ、印刷条件、及びパラメータを用いて実施される。したがって、垂直対水平の引張強度の比は、印刷された3D部品の層間接着の強度及び特性の異方性の程度の指標である。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「カール」は、試験試料全体が水平である、すなわち真っ直ぐであって屈曲を有さない水平の試験試料と比較して、3D印刷された試験試料が試料の端部で屈曲する程度を指す。カールは、カールバー試験に準じて測定される。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「温度範囲」は、機能的性能及び人間の裸眼で観察して望ましい審美的表面外観を有する3D印刷部品に有用なノズル又はホットエンド温度の範囲を指す。換言すると、これは、温度範囲試験に準じて印刷された試験シリンダーの表面に観察可能な可視欠陥の存在しない温度範囲である。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「印刷時のままで乾燥した状態(dry-as-printed)」又は「DAP」は、窒素環境下で印刷された試験試料であって、印刷された試験試料が窒素下で保持された後に真空下のアルミニウム袋に封入され、試験されるまで保存される、試験試料を指す。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「調湿された」は、窒素環境下で印刷され、試験前に23℃及び50%RHで少なくとも40時間調湿された物品/試験試料を指す。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「周囲条件」は、約20~25℃の範囲の温度及び約35%~60%の範囲の相対湿度を有する環境を指す。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「脂肪族ポリアミド」は、6~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジアミンから誘導された95モルパーセント超の脂肪族繰り返し単位を含むポリアミドを指す。本明細書では、用語「長鎖脂肪族ポリアミド」は、10炭素原子以上を含む繰り返し単位モノマー長を有する脂肪族ポリアミドを指す。
【0030】
本明細書において使用される場合、分子又はポリマーを記載する用語は、2009年9月7日のIUPAC Compendium of Chemical Terminology version 2.15(International Union of Pure and Applied Chemistry)における専門用語に従う。
【0031】
範囲及び好ましい変形形態
本明細書に記載される任意の範囲は、特に明記されない限り、その端点を明確に包含する。範囲としての量、濃度、又は他の値若しくはパラメータの記載は、このような範囲の上限及び下限の対が本明細書に明示的に開示されるか否かに関わらず、任意の可能な範囲の上限及び任意の可能な範囲の下限から形成される全ての可能な範囲を具体的に開示する。本明細書に記載のポリマー組成物、化合物、プロセス及び物品は、本明細書中での範囲の定義で開示される具体的な値に限定されない。
【0032】
本明細書に記載のプロセス、ポリマー組成物、化合物、混合物及び物品の材料、化学物質、方法、工程、値及び/又は範囲等についての任意の変形形態の本明細書における開示は、好ましい又は好ましくないとして特定されているかどうかに関わらず、材料、方法、工程、値、範囲等の任意の可能な組み合わせを含むことが具体的に意図されている。
【0033】
本明細書において、本明細書に記載される任意の化学種の化学名に関しての命名の誤り又は誤字が存在する場合には、化学構造が化学名に優先する。また、本明細書に記載の任意の化学種の化学構造に誤りが存在する場合、当業者が意図されている記述を理解する化学種の化学構造が優先される。
【0034】
概要
材料押出付加製造プロセスで用いることができ、且つフィラメント、ペレット、及び/又は粉末の形態であってもよいAM組成物が本明細書で開示される。好ましくは、これらのAM組成物を用いることのできる望ましい付加製造プロセスは、上記のAM組成物がフィラメント、特にスプール又はリールに容易に巻き付けられ得るフィラメントの形態である融着フィラメント製作法、及び上記のAM組成物が、PAMプリンタの押出機内に容易に供給され得る適切なサイズのペレットの形態であるペレット付加製造法である。AM組成物は、多くの場合、上記のフィラメント及びペレットを調製する前に、好ましくは十分に混合されたか又は均質な混合物にコンパウンド化される。
【0035】
本明細書で開示される付加製造組成物は、
A)100~30重量パーセントの少なくとも1つのポリアミド組成物であって、
a)95~5重量パーセントの、融点を有する少なくとも1つの半結晶質コポリアミドであって、上記の半結晶質コポリアミドは、
i)5~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、8~20個の炭素原子を含む1つ以上の芳香族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
ii)60~95モルパーセントの脂肪族繰り返し単位であって、6~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジアミンから誘導される、脂肪族繰り返し単位と、を含む、半結晶質コポリアミドと、
b)5~95重量パーセントの少なくとも1つの非晶質コポリアミドであって、
iii)60~90モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、イソフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
iv)10~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、テレフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、を含む、非晶質コポリアミドと、を含み、
(a)及び(b)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントのポリアミド組成物(A)となる、ポリアミド組成物と、
B)0~70重量パーセントの少なくとも1つの添加剤と、を含み、
(A)及び(B)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントの付加製造組成物となる。
【0036】
更に、本明細書では、
A)99~30重量パーセントのポリアミド組成物であって、
a)85~65重量パーセントの、融点を有する少なくとも1つの半結晶質コポリアミドであって、上記の半結晶質コポリアミドは、
i)5~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、8~20個の炭素原子を含む1つ以上の芳香族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
ii)60~95モルパーセントの脂肪族繰り返し単位であって、6~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジアミンから誘導される、脂肪族繰り返し単位と、を含む、半結晶質コポリアミドと、
b)15~35重量パーセントの少なくとも1つの非晶質コポリアミドであって、
iii)60~90モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、イソフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
iv)10~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、テレフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、を含む、非晶質コポリアミドと、を含み、
(a)及び(b)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントのポリアミド組成物(A)となる、ポリアミド組成物と、
B)1~70重量パーセントの少なくとも1つの添加剤と、を含み、
(A)及び(B)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントの3D印刷物品となる、3D印刷物品が開示される。
【0037】
加えて、本明細書では、
A)100~30重量パーセントのポリアミド組成物であって、
a)95~5重量パーセントの、融点を有する少なくとも1つの半結晶質コポリアミドであって、上記の半結晶質コポリアミドは、
i)5~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、8~20個の炭素原子を含む1つ以上の芳香族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
ii)60~95モルパーセントの脂肪族繰り返し単位であって、6~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジカルボン酸及び4~20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジアミンから誘導される、脂肪族繰り返し単位と、を含む、半結晶質コポリアミドと、
b)5~95重量パーセントの少なくとも1つの非晶質コポリアミドであって、
iii)60~90モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、イソフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、
iv)10~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位であって、テレフタル酸及び4~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジアミンから誘導される、芳香族繰り返し単位と、を含む、非晶質コポリアミドと、を含み、
(a)及び(b)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントのポリアミド組成物(A)となる、ポリアミド組成物と、
B)0~70重量パーセントの少なくとも1つの添加剤と、を含み、
(A)及び(B)の重量パーセントを合計すると、100重量パーセントの3D印刷物品となる、3D印刷物品が開示される。
【0038】
上記のAM組成物から調製されるフィラメント及びペレット、並びに材料押出付加製造プロセス、特に融着フィラメント製作及びペレット付加製造プロセスによりこれらのフィラメント及び/又はペレットを用いて調製される物品も本明細書で開示される。
【0039】
加えて、材料押出付加製造プロセスで使用するためにフィラメント及びペレットを作製するためのプロセスが本明細書で開示される。
【0040】
AM組成物
本明細書で開示されるAM組成物は、3D印刷物品を調製するための材料押出付加製造プロセスで使用することができる。特に、融着フィラメント製作プロセスで使用するためのフィラメント、及びペレット付加製造法で使用するためのペレットが本明細書で開示され、上記のフィラメント及びペレットは、少なくとも1つの半結晶質コポリアミドと、少なくとも1つの非晶質コポリアミドと、任意選択的に少なくとも1つの追加的材料と、の混合物を含むポリアミド組成物を含む。本明細書で開示されるAM組成物の利点は、これらの組成物を含む3D印刷物品の物理的特性を変更するために半結晶質コポリアミドと非晶質コポリアミドとの比が変化され得ることである。例えば、非晶質コポリアミドの濃度が半結晶質コポリアミドに対して約50重量パーセント超である場合、こうしたAM組成物を含む3D印刷物品は、半透明又は透明であり、高い強度、低い焼結ひずみ、及び低い吸湿性の組み合わせを示すことができる。
【0041】
特に融着フィラメント製作及びペレット付加製造プロセスを用いた場合の、本明細書で開示されるAM組成物から調製された3D印刷物品は、半結晶質コポリアミドのみ又は非晶質コポリアミドのみを含むAM組成物を用いて調製された物品と比較して、冷却時により低い焼結ひずみ、より少ない変形、及び望ましい印刷適性を示す。
【0042】
半結晶質コポリアミド(a)
本明細書で説明されるポリアミド組成物(A)で使用される半結晶質コポリアミド(a)は、5~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位(i)、好ましくは10~30モルパーセントの(i)、及び60~95モルパーセントの脂肪族繰り返し単位(ii)、好ましくは70~90モルパーセントの(ii)を含むコポリアミドである。芳香族繰り返し単位(i)は、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6-ナフタレン二酸(2,6-napthalenedioic acid)などの8~20個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸を含む。テレフタル酸及びイソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が最も好ましい。
【0043】
脂肪族繰り返し単位(ii)は、6~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸を含み、これとしてはアジピン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、及びオクタデカン二酸が挙げられ得る。ドデカン二酸、デカン二酸、ヘキサデカン二酸、及びオクタデカン二酸が好ましい脂肪族ジカルボン酸であり、ドデカン二酸及びデカン二酸が最も好ましい。
【0044】
芳香族繰り返し単位(i)及び脂肪族繰り返し単位(ii)は、それぞれ4~20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミンを含み、これとしては、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、及び2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミンが挙げることができ、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0045】
AM組成物に有用な半結晶質コポリアミド(i)の非限定的な例としては、(95/5)~(60/40)、好ましくは(90/10)~(70/30)、より好ましくは(85/15)~(75/25)の範囲の66:6Tのモル比を有するポリ(ヘキサメチレンヘキサンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)又はPA66/6T;(95/5)~(60/40)、好ましくは(90/10)~(70/30)、より好ましくは(85/15)~(75/25)の範囲の612:6Tのモル比を有するポリ(ヘキサメチレンドデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)又はPA612/6T;(95/5)~(60/40)、好ましくは(90/10)~(70/30)、より好ましくは(85/15)~(75/25)の範囲の610:6Tのモル比を有するポリ(ヘキサメチレンデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)又はPA610/6T;(95/5)~(60/40)、好ましくは(90/10)~(70/30)、より好ましくは(85/15)~(75/25)の範囲の616:6Tのモル比を有するポリ(ヘキサメチレンヘキサデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)又はPA616/6T;及び(95/5)~(60/40)、好ましくは(90/10)~(70/30)、より好ましくは(85/15)~(75/25)の範囲の618:6Tのモル比を有するポリ(ヘキサメチレンオクタデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)又はPA618/6Tからなる群から選択されるものが挙げられる。好ましくは、半結晶質コポリアミドは、PA610/6T、PA612/6T、PA614/6T、PA616/6T、及びPA618/6Tからなる群から選択される。
【0046】
非晶質コポリアミド(b)
本明細書で説明されるポリアミド組成物(A)中の非晶質コポリアミド(b)は、60~90モルパーセントの芳香族繰り返し単位(iii)、好ましくは70~90モルパーセントの(iii)、及び10~40モルパーセントの芳香族繰り返し単位(iv)、好ましくは10~30モルパーセントの(iv)を含むコポリアミドである。
【0047】
本明細書で説明されるポリアミド組成物(A)中で使用される非晶質コポリアミド(b)は、1つの繰り返し単位がテレフタル酸を含み、第2の繰り返し単位がイソフタル酸を含む、2つ以上のアミド及び/又はジアミド分子繰り返し単位を有するコポリアミドである。
【0048】
非晶質コポリアミド(b)を調製するために使用され得るジアミンとしては、4~20個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状脂肪族ジアミンが挙げられる。適切なジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン及び2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミンが挙げられ、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0049】
AM組成物に有用な非晶質コポリアミドの非限定的な例としては、(60/40)~(95/5)、好ましくは(70/30)~(80/20)の範囲の6I:6Tのモル比を有するポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)又はPA6I/6Tからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0050】
ポリアミド組成物(A)中の半結晶質コポリアミド(a)と非晶質コポリアミド(b)との重量比は、3D印刷物品で望まれる物理的特性に応じて約95:5~5:95、好ましくは90:10~10:90、より好ましくは85:15~65:35の範囲である。
【0051】
或いは、また望まれる特性に応じて、ポリアミド組成物(A)中の半結晶質コポリアミド(a)の濃度は約5~54重量パーセントの範囲であってよく、ポリアミド組成物(A)中の非晶質コポリアミド(b)の濃度は約46~95重量パーセントの範囲であってよく、ポリアミド組成物(A)中の半結晶質コポリアミド(a)と非晶質コポリアミド(b)との総重量パーセントは、ポリアミド組成物(A)の100重量パーセントと等しい。
【0052】
添加剤(B)
3D印刷物品を調製するために付加製造プロセスで使用するための本明細書で開示される組成物は、任意選択的に、補強剤、強化剤、フィラー、接着促進剤又は相溶化剤、結晶化促進剤又は結晶化遅延剤、流動助剤、潤滑剤、離型剤、染色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工助剤、ハロゲンフリー難燃剤及び相乗剤を含む難燃剤、帯電防止剤、高温コポリアミド、脂肪族ポリアミド、並びにこれらの添加剤の任意の混合物などの少なくとも1つの添加剤(B)を含んでもよい。こうした添加剤は、存在する場合、少なくとも1つの添加剤(B)を含まない3D印刷物品と比較して改善された特性を有する3D印刷物品を提供する。望まれる特性に応じて、存在する場合、組成物中の添加剤(B)の濃度は、組成物中の(A)及び(B)の100重量%に基づいて、約0.1重量パーセントから最大約70重量パーセントの範囲であり得る。
【0053】
添加剤(B)として用いられ得る補強剤の例としては、繊維質及び非繊維質材料、並びにこれらの混合物が挙げられる。繊維質材料の例としては、円形及び非円形ガラス繊維、炭素繊維、シリカカーバイド繊維、ホウ素繊維、セルロース繊維、窒化ホウ素繊維、セラミック繊維、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。補強剤としては、サイズ剤若しくは結合剤、又は補強剤とコポリアミド(a)及び(b)との結合を改善する有機若しくは無機材料が挙げられ得る。短繊維(例えばその長さが1~20,000マイクロメートルのチョップド繊維)又は連続フィラメント繊維(粗糸)を補強材に用いることができ、短繊維が好ましい。
【0054】
補強剤として用いられ得るガラス繊維としては、円形断面を有する及び非円形断面を有する、サイジングされた及びサイジングされていないガラス繊維が挙げられる。サイジングされたガラス繊維の例としては、Eガラス、Rガラス、Sガラス、及びS2ガラスが挙げられ、Hexcel(Stamford,CT)及びNippon Electric Glass Co.,Ltd(Schaumburg,IL)などの企業から入手可能である。市販のガラスビーズ及びチョップドガラス繊維の更なる供給元としては、Potter Industries LLC(Valley Forge,PA)、日本硝子繊維株式会社(日本、津市)、Chongqing Polycomp International(CPIC;Albany,New York)、及びDreytek,Inc.(Rockaway,NJ)が挙げられる。
【0055】
非円形断面を有するガラス繊維とは、断面が、ガラス繊維の長手方向に対して垂直に置かれ、且つ断面の最長直線距離に対応する主軸を有する断面を有するガラス繊維を指す。非円形断面は、長軸に垂直な方向の断面の最長直線距離に対応する短軸を有する。繊維の非円形断面は、繭型(8の字型);長方形;楕円形;略三角形;多角形;及び長方形などの様々な形状を有してよい。当業者に理解されるように、断面は他の形状を有していてもよい。主軸の長さとマイナーアクセスの長さとの比は、好ましくは約1.5:1~約6:1である。この比は、より好ましくは約2:1~5:1、更に好ましくは約3:1~約4:1である。好適なガラス繊維は、欧州特許第0 190 001号明細書及び同第0 196 194号明細書に開示される。
【0056】
ガラス繊維の好適な寸法としては、約10~20マイクロメートルの直径、及び約1~20,000マイクロメートル、1~12,000マイクロメートル、1~5000マイクロメートル、1~3000マイクロメートル、1~1000マイクロメートル、1~400マイクロメートル、1~300マイクロメートル、又は1~200マイクロメートルの連続長又は長さを有するガラス繊維が挙げられる。
【0057】
非円形ガラス繊維が用いられる場合は、これらが少なくとも3、より好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも10のアスペクト比(長さ:幅の比)を有することが好ましい。
【0058】
ガラス繊維の重量パーセントは、組成物中に存在する場合、組成物中のポリアミド組成物(A)と添加剤(B)の総重量を基準に、0.1~60重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~50重量%の範囲であり得る。
【0059】
補強剤として用いられる炭素添加剤としては、カーボンブラック、炭素繊維(グラファイト繊維を含む)、又はこれらの混合物が挙げられる。炭素繊維は、例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ、レーヨン、セルロース繊維、及び再生炭素繊維から製造されるものが挙げられる任意の種類であってよい。炭素繊維は、1つ以上のサイズ剤で表面処理されてもよい。好適なサイズ剤の例としては、ポリアミド、ウレタン、及びエポキシが挙げられる。サイジング(sizing)の存在は、長繊維の束が長さ数ミリメートルのチョップド繊維へと切断されるときに繊維を束の形態に維持することに役立ち得る。存在する場合、サイジングは、サイズ剤と炭素繊維との総重量パーセントを基準に約1~約10重量パーセントであってよい。炭素繊維は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を用いてサイズ剤で処理され得る。サイズ剤を含有する好適な炭素繊維は商業的に購入することができる。
【0060】
本明細書で用いられる炭素繊維の好適な寸法としては、直径約5~10マイクロメートル、又は約6~8マイクロメートル、及び連続長又は長さ約1~20,000マイクロメートル、1~12,000マイクロメートル、1~6000マイクロメートル、1~3000マイクロメートル、1~1000マイクロメートル、1~400マイクロメートル、1~300マイクロメートル、又は1~200マイクロメートルが挙げられる。チョップド炭素繊維の供給元としては、DowAksa USA,LLC(Farmington Hills,MI)、Mitsubishi Chemical Carbon Fiber and Composites(Sacramento,CA)、Zoltek(Bridgeton,MO)、及びToho Tenax America,Inc.(Rockwood,TN)が挙げられる。カーボンブラックの供給元としては、Cabot Corporation(Billerica,MA)及びOrion Engineered Carbons S.A.(Luxembourg)が挙げられる。
【0061】
添加剤(B)として存在する場合、炭素及び/又は炭素繊維の重量パーセントは、組成物中のポリアミド組成物(A)と添加剤(B)の総重量を基準に約0.1~50重量%、好ましくは5~30重量%の範囲であり得る。
【0062】
存在する場合、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれらの組み合わせを含む補強性繊維の任意の組み合わせをAM組成物中で用いることができる。
【0063】
非繊維質添加剤としては、固形ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロフレーク、すりガラス、炭酸カルシウム、タルク、雲母、ウォラストナイト、焼成粘土、カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸ナトリウムアルミニウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウム、ナノセルロース、ケイ酸塩、石英、非晶質ケイ酸塩、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウムアルミニウム、酸化アルミニウム、白亜、ライム、長石、永久磁性の又は個々に磁化可能な金属化合物及び/又は合金、導電性材料、熱伝導性材料、並びにこれらの混合物などの材料が挙げられる。繊維と非繊維質材料との任意の組み合わせを添加剤(B)として使用することができる。
【0064】
用いられる場合、固形ガラスビーズの直径は、約1~2000マイクロメートル、1~1000マイクロメートル、又は約1~400マイクロメートルの範囲であり得る。中空ガラスビーズの直径は、約1~100マイクロメートルの範囲であり得る。ガラスフレークの寸法は、厚さ約5マイクロメートル及び幅約10~4000マイクロメートル~約10~2000マイクロメートルの範囲であり得る。ガラスマイクロフレークの寸法は厚さ約2~5マイクロメートル及び幅約600マイクロメートルの範囲であり得、例えば、厚さ約5マイクロメートル~幅約160マイクロメートル、及び厚さ約2マイクロメートル~幅約300マイクロメートルの寸法を有するガラスマイクロフレークを含む。驚くべきことに、本明細書で開示される組成物を含む3D印刷物品中のガラスビーズの存在により、3D印刷物品の異方性が低減され得ることが示された。
【0065】
添加剤(B)として用いるための永久磁性の又は磁化可能な金属化合物の例としては、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、ジスプロシウム、及び鉄又はニッケルなどの特定の強磁性金属を含有する合金鋼などの一般的な強磁性金属が挙げられる。
【0066】
導電性添加剤の例としては、炭素ナノ繊維、カーボンブラック、グラファイトフレーク、グラファイト粉末、グラフェンナノプレートレット、カーボンナノチューブ、金属化鉱物粒子、及びコアシェル粒子を含む導電性マイクロメートル又はナノサイズ金属粒子が挙げられる。好適な導電性金属としては、銀、ニッケル、銅、アルミニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
熱伝導性添加剤の例としては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、金属粒子、カーボンナノチューブ、及びグラフェンが挙げられる。
【0068】
添加剤(B)として用いるための強化剤の例としては、官能化高分子強化剤、非官能化高分子強化剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。官能化強化剤には、ポリアミドに反応することができる反応性官能基が結合している。こうした官能基は、通常、小分子を既存のポリマー上にグラフト化することによって、又は、高分子強化剤の分子が共重合によって作製されている場合は所望の官能基を含有するモノマーを共重合することによって、高分子強化剤に「結合」している。グラフト化の例として、無水マレイン酸を、フリーラジカルグラフト化技術を用いて炭化水素ゴム(エチレン/α-オレフィン又はエチレン/α-オレフィン/ジエンコポリマーなどであり、α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、又は1-オクテンなどの末端二重結合を有する直鎖オレフィンである)上にグラフト化することができる。得られるグラフト化ポリマーには、カルボン酸無水物及び/又はカルボキシル基が結合している。官能化高分子強化剤の市販の例としては、Fusabond(登録商標)、Surlyn(登録商標)、及びTRX(登録商標)強化剤(E.I.DuPont de Nemours&Co.Inc.,Wilmington,DE)並びにTafmer(商標)強化剤(Mitsui,Rye Brook,NY)が挙げられる。
【0069】
官能基がポリマーに共重合されているエチレンコポリマー、例えば、適切な官能基を含有するエチレンと(メタ)アクリレートモノマーとのコポリマーが高分子強化剤の例である。本明細書では、用語エチレンコポリマーには、エチレンターポリマー及びエチレンマルチポリマー、すなわち、3種より多い異なる繰り返し単位を有するポリマーが含まれる。本明細書では、用語(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタクリレートのいずれか、又は2つの混合物であってもよい化合物を意味する。エチレンとの共重合に有用な官能化コモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、一酸化炭素、二酸化硫黄、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル及びカリウム、上述の酸のナトリウム及び亜鉛塩、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルが挙げられる。エチレン及び官能化コモノマーに加えて、酢酸ビニル、並びに非官能化(メタ)アクリレートエステル、例えばエチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの他のモノマーが、こうしたポリマーに共重合されてもよい。
【0070】
別の官能化強化剤は、カルボン酸金属塩を有するポリマーである。こうしたポリマーは、化合物を含有するカルボキシル又はカルボン酸無水物を、グラフト化又は共重合してポリマーに結合させることによって作製され得る。この種の有用な材料としては、エチレン及びC3~C8α、βエチレン系不飽和カルボン酸を含有する、エチレンコポリマーのSurlyn(登録商標)アイオノマー(E.I.DuPont de Nemours&Co.Inc.,Wilmington,DE)が挙げられ、ここでカルボン酸の官能基は、金属、及び金属中和無水マレイン酸がグラフト化された上記のエチレン/α-オレフィンポリマーによって少なくとも部分的に中和されている。これらのカルボン酸塩のための金属カチオンとしては、Zn、Li、Mg、及びMnが挙げられる。
【0071】
本明細書で開示されるAM組成物中の強化剤として使用するためのアイオノマーは、エチレン、及び少なくとも1つのC3~C8α、βエチレン系不飽和カルボン酸モノマーから調製することができる。カルボン酸の官能基は、亜鉛イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、及びこれらのイオンの組み合わせによって部分的に中和されてアイオノマーを形成する。アイオノマーは、こうしたアイオノマーから調製された3D印刷物品の特性が著しく低下しない限り、追加の金属を限られた量で更に含むことができる。
【0072】
C3~C8α、βエチレン系不飽和カルボン酸は、アイオノマーを調製するのに用いられるエチレン及び少なくとも1つのC3~C8α、βエチレン系不飽和カルボン酸モノマーの総重量に基づいて約2~約30重量パーセントで存在し得る。好適なC3~C8α、βエチレン系不飽和カルボン酸の非限定的な例としては、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
アイオノマー中に存在するカルボン酸官能基は、亜鉛、リチウム、ナトリウム、又はマグネシウムイオンによって約10~99.5パーセント部分的に中和される。ベース樹脂のカルボン酸官能基の中和は、当技術分野で公知のように、ベース樹脂を無機塩基で処理することによって達成され得る。このような塩基の例としては、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド及び酢酸マグネシウムが挙げられる。
【0074】
アイオノマーは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、又はこれらの組み合わせから選択される追加のコモノマーを更に含み得る。コモノマーは、アイオノマーを調製するのに用いられる全モノマーの総重量を基準に0.1重量%~約40重量%の範囲で存在し得る。アクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルのアルキル基は、1~8個の炭素原子を有することができ、適切なアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、並びにn-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルなどのブチルから選択される。
【0075】
これらのアイオノマーは、潜在的にポリアミドと反応することのできる無水マレイン酸モノエチルエステルなどの反応性コモノマーを更に含むことができる。反応性コモノマーは、アイオノマーを調製するのに用いられる全モノマーの総重量を基準に、0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約7重量%の範囲で存在し得る。
【0076】
これらのアイオノマーは、ASTM D1238-13に従って測定して、2.16kgの重りを用いて約0.5g/10分間~50g/10分間の範囲のメルトインデックスによって特性決定され得る。
【0077】
一部の官能化強化剤は、0.5、0.6、又は0.7以上の垂直:水平引張強度の比によって示されるように、これらの物品のz方向特性を改善することも発見された。3D印刷物品の相対的垂直引張強度を改善するのに有用な好ましい官能化高分子強化剤としては、エチレン及びC3~C8α、βエチレン系不飽和カルボン酸を含有するエチレンコポリマーのアイオノマーからなる群から選択されるものが挙げられ、カルボン酸の官能基は、金属、及び不飽和カルボン酸無水物でグラフト化されたエチレン/(メタ)アクリレート、エチレン/α-オレフィン、又はエチレン/α-オレフィン/ジエンコポリマーによって少なくとも部分的に中和される。エチレンコポリマーの好ましいアイオノマーは、反応性コモノマー、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、又はこれらの組み合わせを更に含み、アルキル基は1~8個の炭素原子を含む。好ましいアクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルは4~8個の炭素原子を含む。反応性コモノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、及びグリシジルビニルエーテルからなる群から選択される。好適な反応性コモノマーとしてはマレイン酸モノエステルが挙げられる。中和に好適な金属は亜鉛である。
【0078】
官能化高分子強化剤は、官能基若しくはカルボン酸塩(金属を含む)を含有する最小で約0.5、より好ましくは1.0重量パーセントの繰り返し単位及び/又はグラフト化分子、並びに、官能基又はカルボン酸塩(金属を含む)を含有する最大で約16、より好ましくは約13、非常に好ましくは約10重量パーセントのモノマーを含有することが好ましい。任意の好ましい最小量が、好ましい範囲を形成するために任意の好ましい最大量と組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。押出付加製造のために、高分子強化剤中に2種類以上の官能性モノマーが存在してもよく、且つ/又は、組成物中に2つ以上の高分子強化剤が存在してもよい。例えば、不飽和カルボン酸無水物でグラフト化されたアイオノマー及びエチレン/α-オレフィンコポリマーが存在してもよい。官能化強化剤の量を増やすことで組成物の強靭性が増す場合が多い。しかしながら、これらの量を増やすと、溶融粘度も増える場合があり、溶融粘度は、3D印刷が困難となるほど増やさないことが好ましい。
【0079】
非官能化強化剤もまた存在してよい。非官能化強化剤としては、エチレン/α-オレフィン/ジエン(EPDM)ゴム、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレンを含むポリオレフィン類、並びに、Dow Chemical Company(Midland Michigan)からENGAGE(登録商標)ポリマーとして入手可能なエチレン/1-オクテンコポリマーなどのエチレン/α-オレフィンゴムなどのポリマーが挙げられる。その他の非官能性強化剤としては、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-水素化イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、及びスチレン-水素化ブタジエン-スチレンコポリマーなどのスチレン系ポリマーが挙げられる。例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン又はABSは、ポリブタジエンの存在下でスチレンとアクリロニトリルとを重合することによって製造されるターポリマーである。モノマーの比率は、15~35%アクリロニトリル、5~30%ブタジエン、及び40~60%スチレンで変化してよい。
【0080】
AM組成物中の強化剤の存在により、3D印刷物品の衝撃強さは、強化剤を含んでいない以外は同一の3D印刷物品の衝撃強さの約1.4倍~10倍超に改善され得る。
【0081】
本明細書で開示される組成物は、成分AとBとの総重量に基づいて最大で50重量パーセント、好ましくは0.1重量%~40重量%、より好ましくは約2重量%~30重量%、最も好ましくは5重量%~20重量%の1つ以上の強化剤を含み得る。
【0082】
本明細書で開示されるAM組成物中で添加剤(B)として用いられ得る高温コポリアミドの例としては、例えば、(50/50)~(80/20)、好ましくは(60/40)~(70/30)の範囲の6T:612のモル比を有するポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンドデカンアミド)又はPA6T/612;(50/50)~(80/20)、好ましくは(60/40)~(70/30)の範囲の6T:610のモル比を有するポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンデカンアミド)又はPA6T/610;(55/45)~(80/20)、好ましくは(60/40)~(70/30)の範囲の6T:616のモル比を有するポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサデカンアミド)又はPA6T/616;(55/45)~(80/20)、好ましくは(60/40)~(70/30)の範囲の6T:618のモル比を有するポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンオクタデカンアミド)又はPA6T/618;(40:60)~(70:30)の範囲の66:6Tのモル比を有するポリ(ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)又はPA66/6T;(30:70)~(70:30)の範囲のモル比を有するポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/メチルペンチレンテレフタルアミド)又はPA6T/DT;及び(55:30:15)~(75:20:5)の範囲のモル比を有するポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド/カプロラクタム又はPA6T/6I/6が挙げられる。
【0083】
添加剤(B)は1つ以上の脂肪族ポリアミドも含み得る。添加剤(B)として存在する場合、1つ以上の脂肪族ポリアミドの重量パーセントは、AM組成物中のポリアミド組成物(A)と添加剤(B)の総重量を基準に、0.1~65重量%、好ましくは1~50重量%、より好ましくは1~30重量%の範囲であり得る。添加剤(B)として有用な脂肪族ポリアミドの非限定的な例としては、ポリ(ε-カプロラクタム)(PA6)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/(ε-カプロラクタム)(PA66/6)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA66)、ポリ(ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA610)、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA612)、ポリ(デカメチレンデカンジアミド)(PA1010)、ポリ(11-アミノウンデカンアミド)(PA11)、及びポリ(12-アミノドデカンアミド)(PA12)からなる群から選択されるものが挙げられる。好ましい脂肪族ポリアミドとしては、PA6、PA66/6、PA66、PA610、PA612、PA1010、PA11、及びPA12が挙げられる。一部の実施形態では、添加剤(B)は、1つ以上の長鎖脂肪族ポリアミドを含む。好ましい長鎖ポリアミドとしては、PA610、PA612、PA1010、PA612、PA11、及びPA12が挙げられ、PA1010が最も好ましい。
【0084】
2種類以上の添加剤(B)が組成物中に存在してもよい。2種類以上の添加剤(B)が存在する場合、添加剤(B)の総濃度は、(A)と(B)との総重量に基づいて70重量パーセントを超えない。本明細書で開示される添加剤(B)の任意の組み合わせが、3D印刷物品を調製するために組成物中で用いられ得る。
【0085】
AM組成物中における2種類以上の添加剤(B)の使用例としては、ガラス繊維と炭素繊維との混合物が挙げられる。組み合わせで用いられる場合、ガラス繊維と炭素繊維との重量比(ガラス繊維:炭素繊維)は4:1~1:4の範囲であり得る。こうした組み合わせは、これらのAM組成物の引張特性を改善する。
【0086】
2種類以上の添加剤(B)が存在する添加剤(B)の組み合わせの更なる例としては、炭素繊維及び/又はガラス繊維と、強化剤、酸化防止剤、熱安定剤、及び染色剤との様々な組み合わせが挙げられる。
【0087】
物品
驚くべきことに、フィラメント又はペレット形態の本明細書で開示される組成物が、材料押出付加製造プロセスを用いて3D印刷物品を製造するために用いられる場合、得られる3D印刷物品は、低い吸湿性、低い焼結ひずみ、寸法安定性、機械的特性の望ましいバランス、及びこれらの3D印刷物品を調製するための広い処理窓を有することの様々な組み合わせを示すことが判明した。本明細書で開示される組成物の更なる利点は、これらが、3D印刷物品を調製するためのFFFプロセスで使用するためにスプールに巻き付けられ得るフィラメントの作製を可能にすることである。驚くべきことに、本明細書で開示される組成物から調製され、添加剤(B)として50重量%のガラス繊維を含むフィラメントは、破断することなしに卓上FFF印刷用の標準的なスプールに巻き付けることができる。脆性のために、現行の市販のFFF用ポリアミドフィラメントは、典型的には最大約30重量%のガラス繊維に限定されている。
【0088】
本明細書で開示される半結晶質及び非晶質コポリアミドの特定の組み合わせは、広範囲の濃度にわたる互いに対する広い適合性を示して、印刷プロセスの最適化、並びに得られた3D印刷物品の機械的、化学的、及び視覚的特性の調整を可能にする。半結晶質及び非晶質コポリアミドの適合性は、半結晶質コポリアミド又は非晶質コポリアミドのいずれかのみを含むAM組成物から作製された物品と比較して、低減した焼結ひずみ、優れた印刷能力、高い寸法精度、及び改善された表面外観などの望ましい特性を有する3D印刷物品を得るのに重要である。
【0089】
本明細書で開示される組成物から3D印刷された物品は、乾燥及び調湿された物品の両方に類似する機械的特性を示し、望ましい相対強度及び高い熱たわみ温度を示す。驚くべきことに、こうした3D印刷物品の目に見える表面品質は、補強剤が50重量%の高さであっても良好である。本明細書で開示される組成物を含む3D印刷物品は、特にガラス及び/又は炭素繊維で補強されている場合に低い吸湿性、高い弾性係数、高い引張強度、高い相対強度、及び比較的高いHDTを示す。ポリアミド組成物(A)中の半結晶質及び非晶質コポリアミドの相対的濃度、並びに添加剤(B)の性質に応じて、室温で測定した3D印刷物品の湿潤:乾燥引張弾性係数の比は、0.85、好ましくは0.90、より好ましくは0.95、最も好ましくは0.98以上であり、湿潤:乾燥最大引張強度の比は、0.85、好ましくは0.90、より好ましくは0.95、最も好ましくは0.98以上である。
【0090】
更に、カールバー試験に従って測定したとき、本明細書で開示される組成物を含む3D印刷物品は、2mm未満、好ましくは1mm未満、より好ましくは0.5mm未満の高さ変位を示す。低い程度のカールを示す組成物は、FFF及びPAMプロセスなどの押出系付加製造システムで大きく複雑な幾何学的形状を3D印刷するのに使用することができる。
【0091】
組成物を調製するためのプロセス
本明細書で開示されるAM組成物は、少なくとも1つの半結晶質コポリアミドと、少なくとも1つの非晶質コポリアミドと、任意の任意選択的な添加剤と、を、一軸若しくは二軸押出機、Banbury(登録商標)ミキサ、Farrel連続ミキサ(FCM(商標))、又は二本ロール機などの溶融熱可塑性プラスチックを混合するように設計された装置に供給することによって作製することができる。材料は混合装置内に供給され、ここで熱可塑性ポリマーは溶融状態になるまで加熱され、補強剤及び/又はその他の添加剤などの任意の任意選択的な添加剤と混合され、混合装置から押し出されるか又は取り出され、冷却されてAM組成物を形成する。ポリアミド組成物は、ペレット化、粒状化、及び/又は押し出してフィラメント化されてもよい。これらのプロセスは、当技術分野でよく知られている。
【0092】
フィラメント及びペレットを作製するためのプロセス
付加製造プロセス、特にFFFプロセスで使用するためのフィラメント、ストランド、又は繊維は、当該技術分野で既知の任意の方法によって形成され得る。例えば、本明細書で開示されるフィラメントは、以下のプロセス工程によって調製することができる。
1)半結晶質コポリアミド、非晶質コポリアミド、及び任意の追加の添加剤を含むポリアミド組成物のペレットを押出機内に供給する工程であって、押出機の温度は溶融混合物を形成するのに十分である、工程、並びに
2)ダイを通して溶融混合物を押し出し、押出物を冷却してフィラメントを形成する工程。
【0093】
或いは、本明細書で開示されるフィラメントは、以下のプロセス工程によって調製され得る。
1)溶融混合物を形成するのに十分な温度で、半結晶質コポリアミドと、非晶質コポリアミドと、任意の追加の添加剤を混合し、ダイを通して溶融混合物を押し出し、押出物を冷却してフィラメントを形成する工程。
【0094】
物品を作製するためのプロセス
本明細書で説明されるAM組成物は、付加製造又は3次元(3D)印刷技術によって、特に好ましくはスプールから供給されるフィラメントを用いる融着フィラメント製作プロセスによって、且つ好ましくはペレットを用いるペレット付加製造プロセスによって、物品を調製するのに用いることができる。
【0095】
融着フィラメント製作は、フィラメントから物品を調製ために一般的に使用されるプロセスである。一般的に、融着フィラメント製作において、本明細書で開示されるAM組成物を含むフィラメントは、加熱されたダイ又はノズルを通して供給され、ダイの温度は、フィラメントを溶融するのに十分に高い。融着フィラメントは、ダイから出てレイヤーバイレイヤー式に堆積され、所望の物品を形成する。堆積速度の制御は、フィラメントの供給速度を変更することによって変化させることができる。
【0096】
FFFプロセスの一例は以下の通りである。フィラメントをスプールから繰り出して(unwound)加熱されたノズルに供給し、このノズルは、必要に応じて変更されるノズルの流れ及び温度を制御するためにオン又はオフにすることができる。ワーム駆動装置(worm-drive)、又は一対の輪郭付けされたホイールは、フィラメントを制御された速度でノズルに押し込む。ノズルは、フィラメントを、その溶融温度及び/又はガラス転移温度を超えて加熱し、溶融材料/フィラメントは、印刷ヘッドによって基材上に堆積されて層を形成する。後続の層が前の層の上に堆積される。それぞれの層が堆積された後、続いて基材に対する印刷ヘッドの位置が(xy平面に対して垂直な)z軸に沿ってインクリメントされ、続いてデジタル表現に類似する3D部品を形成するためにプロセスが繰り返される。溶融物の温度は、3Dプリンタの基部上の層が形成されるとほぼ即座に(数秒以内に)、溶融材料が固化して所望の三次元対象を形成するための複数層の積み重ねを含むように制御される。
「ペレット付加製造法」(PAM)及び「大面積付加製造法」(BAAM)を含むその他の押出系AMプロセスは、溶融、配合、及び押出機能を組み合わせる付加製造システムで、フィラメントの代わりに、ポリマーペレット及び粉末、繊維補強材、並びにその他のフィラー及び添加剤を原材料として利用し、硬く高度に強化された物品の印刷を可能にする。
【0097】
当該技術分野では、3D印刷物品の調製中に使用されるベッド温度、ノズル温度、及びその他のパラメータは、3D印刷物品の特性に影響を及ぼし得ることが知られている。したがって、実施例及び比較実施例の両方に対して同一の印刷条件を使用して、本明細書で開示される3D印刷物品の物理的特性の比較を実施したが、一部の商業的に購入されたフィラメントの試験は例外であり、ここでは生産者が推奨する印刷条件のうちの最適条件を用いた。
【0098】
より具体的には、本明細書で開示される3D印刷物品は、以下のFFF用のプロセス工程によって調製することができる。
1)溶融混合物を形成するのに十分な温度で、加熱されたダイを通して組成物を含むフィラメントを供給する工程、
2)溶融混合物をレイヤーバイレイヤー式に堆積させて、所望の物品を形成する工程。
より具体的には、本明細書で開示される3D印刷物品は、以下のPAM用のプロセス工程によって調製することができる。
1)溶融混合物を形成するのに十分な温度で、組成物を含むペレットをプリンタの押出機内に、且つ加熱されたダイを通して供給する工程、
2)溶融混合物をレイヤーバイレイヤー式に堆積させて、所望の物品を形成する工程。
【実施例】
【0099】
以下の表で「E」として識別される例示的な化合物は、本明細書に記載され列挙される化合物、プロセス、及び物品の範囲を更に明らかにすることのみを意図し、限定するものではない。比較実施例は、以下の表で「C」として識別される。
【0100】
材料
PA1 DuPontから入手可能である、1.25~1.40dl/gの固有粘度を有するPA612/6T(85/15)。
PA2 DuPontから入手可能である、0.79~0.85dl/gの固有粘度を有するPA6I/6T(70/30)。
PA3 DuPontから入手可能である、1.25~1.40dl/gの固有粘度を有するPA610/6T(80/20)。
PA4 BASF(Florham Park,NJ)からUltramid B27 E 01として入手可能である、1.42~1.58dl/gの固有粘度を有するNylon6。
PA5 DuPontから入手可能である、0.80~0.90dl/gの固有粘度を有するPA10/10。
T1 DuPontから入手可能である、エチレン及び15重量%のメタクリル酸を含有するエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーであって、2.16kgの重りを使用しASTM D1238-13に従って測定して、カルボン酸部分の22%が亜鉛イオンによって14g/10分のMIで中和される、アイオノマー。
T2 DuPontから入手可能である、エチレン及び15重量%のメタクリル酸を含有するエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーであって、2.16kgの重りを使用しASTM D1238-13に従って測定して、カルボン酸部分の56%がナトリウムイオンによって0.9g/10分のMIで中和される、アイオノマー。
T3 DuPontから入手可能である、エチレン、11重量%のメタクリル酸、及び6重量%の無水マレイン酸モノエチルエステルを含む、エチレン/メタクリル酸/無水マレイン酸モノエチルエステルコポリマーのアイオノマーであって、カルボン酸部分の40~60%が亜鉛イオンによって中和される、アイオノマー。
T4 DuPontから入手可能である、エチレン、23.5重量%のn-ブチルアクリレート、及び9重量%のメタクリル酸を含有するエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーであって、2.16kgの重りを使用しASTM D1238-13に従って測定して、カルボン酸部分の51%が亜鉛イオンによって0.6g/10分のMIで中和される、アイオノマー。
T5 DuPontから入手可能である、エチレン及び15重量%のメタクリル酸を含有するエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーであって、2.16kgの重りを使用しASTM D1238-13に従って測定して、カルボン酸部分の53%が亜鉛イオンによって4.0g/10分のMIで中和される、アイオノマー。
T6 DuPontから入手可能である、エチレン及び10.5重量%のメタクリル酸を含有するエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーであって、2.16kgの重りを使用しASTM D1238-13に従って測定して、カルボン酸部分の68%が亜鉛イオンによって1.1g/10分のMIで中和される、アイオノマー。
T7 DuPontから入手可能である、エチレン及び11重量%のメタクリル酸を含有するエチレン/メタクリル酸コポリマーのアイオノマーであって、2.16kgの重りを使用しASTM D1238-13に従って測定して、カルボン酸部分の57%が亜鉛イオンによって5.0g/10分のMIで中和される、アイオノマー。
B1 LTL Color Compounders,Inc.(Morrisville,PA)によりSurlyn Reflection Series(登録商標)SURSG201UNとして販売される、ナイロン6とエチレンコポリマーの無水物含有アイオノマーとの市販のブレンド。ナイロンとアイオノマーとの比は約58~42重量パーセントである。
GF1 Nippon Electric Glass Co.,Ltd(NEG;Schaumburg,IL)よりNEG T262Hとして入手可能である、3mmの平均長さを有するチョップドガラス繊維。
GF2 Potters Industries LLC(Valley Forge,PA)からSpheriglass5000 CP-3として入手可能である、ASTM D1483に従って測定して11マイクロメートルの平均粒径及び60lbs./立方フィートの未開封嵩密度を有する固形ガラスビーズ。
CF1 Toray Group(Bridgeton,MO)からZoltek(商標)PX35 Chopped Fiber(Type-45)として入手可能である、6mmの平均長さを有するチョップド炭素繊維。
CF2 Toray Group(Bridgeton,MO)から入手可能である、6mmの平均長さを有するリサイクルされた航空宇宙グレードのチョップド炭素繊維。
AO1 フェノール系酸化防止剤。
AO2 酸化防止剤混合物。
AO3 UV安定剤。
MB1 ナイロン6担体中25重量%カーボンブラックであるマスターバッチ染色剤。
MB2 EMA (エチレン/メタクリレート)コポリマー担体中35重量%カーボンブラックであるマスターバッチ染色剤。
HS1 銅系熱安定剤。
HS2 銅系熱安定剤。
HS3 銅系熱安定剤。
AD1 Dandong Chemical Engineering Institute Co.,Ltd.(DCEI;Dandong,China)からHS30として入手可能である、30マイクロメートルの平均粒径を有する窒化ホウ素。
AD2 Imerys Graphite&Carbon(Westlake,OH)からTimRex KS 15 P1として入手可能である合成グラファイト。
PC Stratasys Ltdから入手可能であるポリカーボネート。
F1 Owens CorningからXstrand(商標)GF30-PA6として市販されている、直径2.85及び1.75mmの、30重量%のガラス充填ナイロン6系フィラメント。
F2 EU Makersから市販されている、ガラス充填ナイロン12系フィラメント。
F3 3DXTechからCarbonX(商標)として市販されている、炭素繊維充填半芳香族ポリアミド系フィラメント。
F4 Airwolf 3DからCarbonite(登録商標)として市販されている、炭素繊維充填ナイロン6系フィラメント。
F5 MatterHackersから市販されている炭素繊維充填ナイロン12系フィラメント。
F6 DuPontからZytel(登録商標)70G50HSLA BK039Bとして入手可能である、熱安定化且つ50%ガラス繊維補強されたナイロン6,6系樹脂。
T8 DuPontから入手可能である1.8重量%の無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン/1-オクテンコポリマー。
T9 Dow Chemical Company(Midland,MI)からEngage(登録商標)8180として入手可能である、2.16kgの重りを使用しASTM D1238に従って測定して0.5g/10分のMIを有するエチレン/1-オクテンコポリマー。
T10 Mitsui Chemicals Inc.(Rye Brook,NY)からTafmer(登録商標)MH5040として入手可能である、無水マレイン酸改質エチレン/1-ブテンコポリマー。
T11 DuPontからFusabond(登録商標)A560として入手可能である、5.6g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有する無水マレイン酸官能化エチレンブチルアクリレートコポリマー。
T12 DuPontからFusabond(登録商標)N493として入手可能である、無水マレイン酸改質エチレン/1-オクテンコポリマー。
T13 米国特許出願公開2016/0264777A1号明細書で開示される、無水マレイン酸改質共グラフト化ポリプロピレン及びエチレン/1-オクテンコポリマー。
【0101】
試験方法
引張強度、引張係数、及び破断点ひずみをISO527-2:2012に従って測定した。実施例では、全ての3D印刷された引張りバーは、特に断りのない限りISO5Aバーであった。引張特性は、1mm/分の初期試験速度で測定し、続いて充填されていないバーを50mm/分の2次試験速度で測定し、充填されたバーを5mm/分の2次試験速度で測定した。全ての射出成形された引張りバーはISO1Aバーであり、充填されていないバーは50mm/分の2次試験速度で測定し、充填されたバーは5mm/分の2次試験速度で測定した。全ての3D印刷された試験バーは、窒素パージ下で印刷された。「調湿された」バーは、3D印刷されたもの及び射出成形されたもののいずれも、試験される少なくとも40時間前に23℃、50%RHで調湿された。印刷時のままで乾燥した状態(DAP)のバーは、真空下のアルミニウム袋に封入される前に窒素下で保管した。「成形時のままで乾燥した状態(dry-as-molded、DAM)」で試験される射出成形されたバーは、成形されてから20~30分以内に真空下のアルミニウム袋に封入して湿度を0.2%未満に維持する。DAP及びDAMバーの両方の場合で、袋は試験直前に開封し、バーは一切の調湿なしで試験した。
【0102】
相対強度を方程式1に従って計算し、ここで、破断点の引張強度及び伸びパーセントをそれぞれISO527-2:2012に従って測定した。
【0103】
熱たわみ温度(HDT)値を、実施例で指定されるように、66psi(0.45MPa)又は261psi(1.8MPa)のいずれかの曲げ応力を用いて、ISO75-2:2013の方法Bに従って決定した。寸法が80mm×10mm×4mmのバーは、3D印刷されているか、又は射出成形されたISO1AのMPBから調製されているかのいずれかであった。特に指定のない限り、全てのバーは「印刷時のままで乾燥した状態」又は「成形時のままで乾燥した状態」のいずれかで試験された。
【0104】
衝撃強さ及び衝撃エネルギーは、ISO180:2000の方法A(ISO180/A、ノッチ付きアイゾッド)又はU(ISO180/U、ノッチなしアイゾッド)に従い決定した。寸法が80mm×10mm×4mmのバーは、3D印刷されているか、又は射出成形されたISO1AのMPBから調製されているかのいずれかであった。全てのバーは、実施例で指定されるように「印刷時のままで乾燥した状態」又は「成形時のままで乾燥した状態」で調製し、特に指定のない限り調湿なしで測定した。
【0105】
カールバー試験:この試験は、米国特許出願公開第20140141166A1号明細書から採用したものであり、3D印刷された試験試料中のカールの量を測定するために使用される。試験試料の印刷は、指定されるとおりに押出系付加製造システムを用いてレイヤーバイレイヤー式で実施される。FFFの場合、試験は、3Dプリンタのベッド全体をAleph Objects,Inc.から市販されているポリエーテルイミド(PEI)のシート(Loveland,CO;Lulzbot(登録商標)TAZ PEIシート;部品番号817752016438)で処理することと、続いて、以下のプリンタ設定:ノズル0.35~0.5mm、層高さ0.20mm、45/-45度インフィル100%、シート1つ、及び流れ100%を使用して、ツールパス命令から試験バーを印刷して、理想的には長さ270mm、幅10mm、及び垂直高さ10mmにすることと、を伴う。印刷する材料に応じて、ノズル及びベッドの温度、印刷速度、並びに冷却を調節することができる。本明細書で、本発明の組成物の場合、冷却ファンなしで、特に指定のない限り、ノズル温度275℃、ベッド温度85℃、及び印刷速度30mm/秒を用いた。スティック接着剤の薄層(Elmer製Washable Glue Stick)を印刷前に塗布した。試験バーを印刷した後にこれをシステムから取り除き、室温(25℃)でカールに関して測定した。材料のカールは、試験バーの端が丸まり、その結果、試験バーが曲がるか又はカールすることで現れる。カール測定は、最も長い寸法で試験バーの端を結ぶ線を識別し、端間の試験バーの長さに沿って中点を位置決めすることを伴う。続いて、カールの量を、試験バーの2つの端間の線から試験バーの表面の中点まで測定した試験バーの端の変位の高さとして測定する。変位のこの高さは、マイクロメーターを用いて測定され、mm単位で記録され得る。換言すれば、試験バーの長さ方向(最長方向)の2つの端の縁間に線が引かれる。長さ方向の試験バーの中点と、試験バーの2つの端によって作られる線との間の距離又は高さは、mm単位のカールの度合いである。
【0106】
温度範囲試験:この試験は、様々なノズル温度でインフィル0%及び層高さ0.2mmの単壁シリンダーを印刷することを伴う。ノズル温度の範囲は、高さによって温度を変動させることによって検証することができる。Cura又はSimplify3Dからのソフトウェアを用いてこれらの試験を実行することができ、この試験に対するこのソフトウェアの使用は、容易に当業者の能力の範囲内である。単壁シリンダーは、直径40mm及び総垂直高さ120mmを有するが、例えば、より広い温度範囲を試験するか、又は温度のより細かい段階変化(step-changes)に適応するために高さが変化してもよい。温度範囲は、例えば290℃~235℃で指定され、温度は最高試験温度で開始して、高さが10mm増加する度に5℃低下する。特に指定のない限り、冷却ファンなしで30mm/秒の印刷速度を用いた。シリンダーが印刷されると、シリンダーは、人間の裸眼を用いて不良検査される。一般的な不良としては、湿気の放出による気泡、シリンダー壁部の亀裂、特に低温での劣った層間接着に起因する印刷されたストランドのざらつき、たるみ、及びほつれが挙げられる。押出付加製造用の材料が、目に見える気泡、亀裂、層間剥離、又はその他の不良なしに3Dシリンダー試験試料へと印刷され得る温度領域を、印刷温度範囲として記録する。不良が観察された全ての温度領域は温度範囲から除外され、温度範囲は、方程式3で計算されるように不良が観察されない最大の連続領域として定義され、T1はこの領域内に含まれる最高温度であり、T2はこの領域内に含まれる最低温度であり、温度はセルシウス度の単位で測定される。シリンダーが最高の試行温度で不良のない壁を含んで印刷する場合、T1は、その温度として割り当てられる。シリンダーが最低の試行温度で不良のない壁を含んで印刷する場合、T2は、その温度として定義される。
温度範囲=T1-T2 (3)
【0107】
ペレット及び成形物品を製造するための手順
比較実施例C12~C18及び実施例E1~E80の組成物は、溶融ブレンディングプロセスによって作製された。表1~5に開示される組成物は、Coperion製26mm二軸押出機内に原材料を共に供給することによって作製された。溶融及び適切な混合を確実にするために、バレル温度を220~280℃に設定した。溶融混合物を、ダイを通して押し出し、温度5~60℃の水浴内で急冷し、ペレットに切り分け、窒素掃引下、80℃の真空オーブン内で終夜乾燥させた。乾燥したペレットを、続いてパッケージ化又は成形して物品にした。
【0108】
乾燥したペレットを、続いてArburg製1.5oz射出成形機内に供給した。バレル温度を220~280℃に設定して最適な溶融物を得、続いて、25~80℃に維持された金型キャビティ内に溶融物を射出することによって、これをISO1Aバーに成形した。整形したバーをキャビティから取り出し、続いて真空下のアルミニウム袋内に封入し、試験するまで「成形時のままで乾燥した状態」で保管した。
【0109】
ペレット押出成形プロセス
乾燥したペレットを大規模付加製造(LSAM(登録商標))機(Thermwood;Dale,IN)のホッパ内に投入した。表面に対する押し出されたビーズの接着を準備するために、ビルド面をペレットでコーティングした。バレル温度を270~310℃に設定し、温度は、第1のバレルから320℃に設定されたノズルにかけて漸進的に増加した。1層ごとに3分間の印刷時間をかけて60個の層を印刷して、大型(直径20インチ、高さ12インチ、壁厚0.75インチ)の六角形を作製した。
【0110】
マシニング及び水噴射切断により六角形の壁部から試験片を調製し、試験クーポンを製作した。試験クーポンに目に見えるひび、擦り傷、又は欠陥がないことを確実にするため、各試験片を検査した。平均条件が22℃/50%RHの温度及び湿度が制御された環境内で引張り試験を実施した。引張特性の判定は、ASTM D638:2014、Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsによって提案されるガイドラインに従い、
図1に示すように非標準試験片形状に置き換えた。5000kNの容量、サーボ液圧、負荷フレーム、Instron(Norwood,MA)製を用いて、0.2インチ/分(~5mm/分)の一定速度の延伸を提供して、引張特性を決定した。一組の鋸歯状のグリップ面と共に最大容量250kNの液圧グリップを用いて、材料の滑り又はグリップ破壊の開始を防ぐ。グリップ及び負荷ストリングを試験前に位置合わせした。レーザ伸縮計(モデルLE-05、Electronic Instrument Research Ltd.(Irwin,PA))を用いて、2.0インチ(50.8mm)の公称開始ゲージ長さにわたる変位を測定した。市販の画像相関ソフトウェア及びハードウェア(gom.com)で、ポアソン比の決定に必要な横断方向の変位を測定した。
【0111】
図1の試験片の形状は以下の通りである(寸法単位:mm)。
W 1.50(38.1)
L 4.50(114.3)
WO 2.25(57.15)
LO 12.00(304.8)
G 4.00(101.6)
D 8.25(209.5)
【0112】
フィラメントを作製するための手順
比較実施例C4~C10で用いられるフィラメントを、フィラメント供給者より購入した。比較実施例C12、C14~C18、及び実施例E1~E80で用いられるフィラメントを、2工程プロセスによって作製し、ここでは最初に原材料を配合し、続いて第1の工程で作製された配合ペレットを出発原料として用いてフィラメントを作成した。配合は、Coperion製26mm二軸押出機内に原材料を共に供給することによって実施された。溶融及び適切な混合を確実にするために、バレル温度を220~280℃に設定した。溶融混合物を、ダイを通して押し出し、温度5~60℃の水浴内で急冷し、ペレットに切り分け、窒素掃引下、80℃の真空オーブン内で終夜乾燥させた。乾燥したペレットを、フィラメントを作製するために使用する前に真空下のアルミニウム袋内に封入した。続いて、乾燥したペレットを1.25インチ(32mm)のBrabender製一軸押出機内に供給した。処理される特定のポリマー組成物に応じて最適なフィラメント品質を達成するために、バレル温度を220~280℃に設定した。ダイから出た溶融混合物を5~60℃の温度の水浴中で急冷してフィラメントを形成した。得られたフィラメントを、ストランド引張装置を用いて、破断を防ぐような速度でスプールに巻き付けた。引張り速度を調節することにより、2.85mm及び1.75mmの2つの直径のフィラメントを作製した。フィラメントを形成するための、バレル温度220~280℃の1.25インチ(32mm)Brabender製一軸押出機、温度5~60℃の水急冷浴、続いて直径2.85mm及び1.75mmの両方のフィラメントを作製するための巻き付けプロセスを用いる同様のプロセスによって、比較実施例C1、C2、及びC11を作製した。これらのフィラメントを用いて、実施例の3D物品を印刷した。
【0113】
融着フィラメント製作プロセス
本明細書に記載の実施例では、指定された通り以下のプリンタを使用した。(a)それぞれ六角ホットエンド及び0.5mmの六角スタイルノズルを備え、公称2.85mmのフィラメントを利用する、Lulzbot(登録商標)Mini及びLulzbot(登録商標)TAZ6(Aleph Objects,Inc.(Loveland,CO))。(b)それぞれアエロストルーダ(aerostruder)ホットエンド及び0.5mmのE3Dノズルを備え、公称2.85mmのフィラメントを利用する、Lulzbot(登録商標)Mini及びLulzbot(登録商標)TAZ6(Aleph Objects,Inc.(Loveland,CO))。(c)直接駆動ホットエンド及び、0.35mm、0.4mm、又は0.5mmノズルを装備し、公称1.75mmのフィラメントを利用する、Makergear M2及びMakergear M3(Makergear,LLC(Beachwood,OH))。特に指定のない限り、同一の表内の全ての実施例及び比較実施例にわたる特性は、同一のプリンタ/ホットエンド/ノズルの組み合わせを用いて比較する。フィラーを含有する任意の組成物を印刷する場合は硬化鋼又は耐摩耗性ノズルを用いた。
【0114】
ナイロン試験バーの標準印刷条件は、特に断りのない限り、層高さ0.2mm及び冷却ファンなしで30mm/秒であった。試験バーは、
図2に示すように垂直方向、エッジ方向、又は水平方向を含む様々な方向で試験することができ、バー種類として表中で列挙される。
【0115】
図3は、本明細書で説明される2つのインフィル形状を例示する。層の輪郭が印刷された後に、物品のインフィルを、物品全体にわたり45度の角度で千鳥状に印刷して45/-45度のインフィルを提供するか、又は部品全体にわたり長手方向に前後して印刷して0/180度のインフィルを提供することができる。特に断りのない限り、全ての部品は45/-45度のインフィルで印刷される。
【0116】
表1は、本明細書で開示される半結晶質ポリアミドと45重量%超の非晶質ポリアミドとのブレンドを含むAM組成物から調製された様々な3D印刷試験試料の特性を示す。表1の実施例及び比較実施例の全ての試験バーは、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで、六角押出機及び0.5mmノズルを装備するLulzbot Mini、又は0.35mmノズルを装備するMakergear M2上に印刷された。DAPバーの引張特性を測定した。カールバー試験に従い、0.35mmノズルを装備するMakergear M2上に印刷されたバーのカールを測定した。温度範囲試験の場合、温度範囲試験に従い、印刷温度は295~220℃の範囲であり、中空シリンダーを印刷する間、10mmの増加ごとに温度を5℃逓減させた。印刷速度はファン無しで30mm/秒であり、六角押出機及び0.5mmノズルを装備するLulzbot TAZ6又はLulzbot Miniをプリンタとして用いた。外観は、不透明、半透明、又は透明に設計した。不透明とは、光の透過を遮断して、その結果、対象が、印刷された物品を通して見ることを試みた時に目に見ることができないものとして定義される。半透明とは、例えば、それを光が通過することを可能にするが光の透過を拡散させる準透明(semitransparent)であり、その結果、印刷された物品を通して見た対象がはっきりと目に見ることができないものとして定義される。透明とは、光が通過することを可能にし、その結果、印刷された物品を通して見た対象がはっきりと目に見えるものとして定義される。
【0117】
比較実施例C1及びC2は、半結晶質ポリアミドPA1及びPA3であり、非晶質コポリアミドPA2を含まない。実施例E1~E4は、PA1又はPA3のいずれかと、50重量%~90重量%の非晶質コポリアミドPA2とのブレンドである。比較実施例C3はポリカーボネート3D印刷フィラメントである。実施例E2~E4の非晶質材料を組み込むことで、PA2を含まないC1~C2と比較して高い係数(>1800MPa)を維持しながらも、引張強度が改善される(28%超、最大60%)。E2~E4における高いレベルの非晶質コポリアミドは、更に、20重量%の非晶質コポリアミドPA2及び80重量%の半結晶質コポリミド(copolyimide)PA1だけを含むC14(表10)及びC18(表11)と比較してより高い係数及び相対強度を提供し、不透明な3D印刷物品を作製する。実施例E1~E4は、高性能エンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート(C3)よりも高い破断点ひずみ値を有する。実施例E1~E4は、広い印刷窓を示す(50℃超)。カールバー試験は、10mm超のカールを示すC1及びC2と比較して低い焼結ひずみを示す(E1で2mm未満、及びE2~E4で0.5mm未満)。実施例E2~E4から印刷された物品は、半透明から透明の外観を有し、これは、3D印刷された部品において審美的及び機能的の両方で望ましい場合がある。半結晶質コポリアミドと45重量%超の非晶質コポリアミドとのブレンドは、改善された機械的特性と印刷効果との組み合わせを提供し、低い焼結ひずみ及び調律可能な光学的透明度などの3D印刷された物品における望ましい特質を付与する。
【0118】
【0119】
表2及び3は、本明細書で開示されるAM組成物から調製され、様々な補強剤を含む、様々な3D印刷試験試料の特性を示す。表2及び3における実施例及び比較実施例の全ての試験バーは、窒素パージ雰囲気下で、2.85mmのフィラメントを用いて六角押出機及び0.5mmのノズルを装備するLulzbot Mini上で印刷されたが、1.75mmのフィラメントを用いて0.35mmのノズルを装備するMakergear M2上で印刷された比較実施例C6は除く。引張特性をDAPバーに関して報告するが、調湿されたE13は除く。
【0120】
実施例E5~E14は、任意選択的にカーボンブラック染色剤、酸化防止剤、及び熱安定剤などの添加剤を含む、30%ガラス繊維充填AM組成物である。市販の30%GF PA6組成物を含むC4及びC5と比較すると、実施例は、同程度か又はより高い引張強度及び引張係数を示す。実施例は、更に、より高い破断点ひずみ及び衝撃強さを示す。これらの結果は、曲げた時に脆性破壊を示すC4及びC5の脆性の観測結果と相関する。対照的に、実施例E5~E14のフィラメントは、曲げた時に延性破壊を示し、これは印刷及び加工の両方で利点を提供する。購入時状態(as-purchased)のC4(2.85mm)フィラメントのスプールは、フィラメントのスプールの中ほどで破断し、その結果印刷は失敗した。また、購入時状態のC4(1.75mm)フィラメントのスプールは、箱から取り出す時及びスプールの検査時に2回破断した。
【0121】
ナイロン12系フィラメントであるC6と比較して、実施例E5~E14は、有意に高い3D印刷物品の引張強度、引張係数、及び衝撃強さを明確に示す。実施例E13は、乾燥又は未調湿の試料と比較して調湿された試験試料の機械的特性の有意な変化を示さない。実施例E14は、印刷ベッドが85℃であった実施例と比較して、印刷ベッドが23℃に設定された時に同程度の機械的特性を示した。実施例E13及びE12では、湿潤:乾燥引張係数の比は1.13であり、湿潤:乾燥引張強度の比は1.23である。
【0122】
表3の結果は、様々な炭素繊維充填AM組成物の物理的特性を示す。表3の全ての実施例及び比較実施例は、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃で印刷された。
【0123】
実施例E15~E22は、市販の炭素充填フィラメントC7~C10と比較して、高い係数、高い引張強度、及び高い衝撃強さの両方の改善された組み合わせを示した。E18及びE20のHDTは、市販の半結晶質ポリアミド(C8)のHDTよりも少なくとも56パーセント高い。
【0124】
【0125】
【0126】
表4は、本明細書で開示されるAM組成物から調製され、強化剤を含む、様々な3D印刷試験試料の特性を示す。表4の全ての引張り試験バーは、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで、0.35mmのノズルの装備するMakergear M2上で水平に印刷された。カールを判定するために用いられた試験試料は、六角押出機及び0.5mmのノズルを装備するLulzbot TAZ6上に印刷された。射出成形ISO1A試験バー(DAM)及び3D印刷ISO5A試験バー(DAP)(水平に印刷された)の引張りデータ及び相対強度を比較した。
【0127】
温度範囲(非乾燥)結果のため、乾燥されていないが、作製後から20分以下の間真空下のアルミニウム袋に封入されたフィラメントでシリンダーを印刷した。これらのフィラメントに対して、温度範囲試験に従って270~170℃の温度範囲で印刷を実施し、中空のシリンダーを印刷する間、10mmの増加ごとに温度を10℃逓減させた。印刷速度はファン無しで15mm/分であり、六角押出機及び0.5mmのノズルを装備したLulzbot TAZ6を用いた。
【0128】
温度範囲(乾燥)結果のため、フィラメントを真空下で少なくとも24時間90℃で乾燥させた。これらのフィラメントに対して、温度範囲試験に従って290~190℃の温度範囲で印刷を実施し、中空のシリンダーを印刷する間、10mmの増加ごとに温度を10℃逓減させた。印刷速度はファン無しで10mm/分であり、六角押出機及び0.5mmのノズルを装備したLulzbot TAZ6を用いた。
【0129】
比較実施例C11は、ナイロン6と約40重量%の無水物含有アイオノマー強化剤との市販のブレンドである。比較実施例C12は、ナイロン6と、非晶質ポリアミドBと、40重量%の無水物非含有の亜鉛で中和されたアイオノマー強化剤と、のブレンドである。実施例E23及びE24は、半結晶質コポリアミドPA1及び非晶質コポリアミドPA2と、20重量%の無水物非含有の亜鉛で中和されたアイオノマー強化剤と、のブレンドである。実施例E25は、40重量%の無水物含有アイオノマー強化剤を含む、半結晶質コポリアミドPA1及び非晶質コポリアミドPA2のブレンドである。これらのブレンドの射出成形ISO1Aバー及び3D印刷ISO5Aバーの引張りデータ及び相対強度は、C11及びC12と比較して、特に3D印刷された部品の引張特性の改善されたバランスを得る上での本明細書で開示されるポリアミド/アイオノマー強化剤ブレンドを使用する利点を明確に示す。E23、E24、及びE25の全てが、射出成形ISO1Aバーに関して1200MPa超の引張係数と、これと共に、水平方向に印刷された印刷時のままで乾燥した状態のISO5Aバーに関して36MPa超の引張強度、50%超の破断点ひずみ、及び20超の相対強度と、を有する。対照的に、C11及びC12の引張り測定値は、これらの値を下回る。カールは、E23、E24、及びE25で約0.5mmであり、一方C11でカールは1mmであった。非晶質ポリアミドBを含むC12は0.5mmのカール値を有していたが、非晶質ポリアミドBを含まないC12の組成物(60重量%のPA4及び40重量%のT1)は1.5mmのカール値を有していた。
【0130】
無水物非含有アイオノマーを強化剤として用いることの利点は、温度範囲試験によって示され、ここでは、無水物非含有アイオノマー(E23及びE24)を含有するブレンドは、フィラメント(非乾燥)を乾燥させることなく印刷することができ、一方で無水物含有アイオノマーを含むE25は、最初に組成物を乾燥させることなしには数個の層より多くを印刷することができなかった。乾燥させると、E23~E25は、比較的広い温度範囲で印刷した。
【0131】
無水物含有アイオノマーで強化された場合の本発明のAM組成物は、E25によって示されるように、成形時のままで乾燥した状態の試験の部品と比較して、印刷されたものにおいてより優れた特性保存を示した。E25の場合、印刷された水平のバーは、DAM部品の引張強度の98%、破断点ひずみの54%、及び相対強度の52%を保持した。DAMの特性と比較した印刷されたものの保存は、ナイロン6と約40重量%の無水物含有アイオノマー強化剤との市販のブレンドであるC11ではそれほど高くなかった。E25は、表4で報告される実施例及び比較実施例の中では最も高い印刷されたバーの相対強度を示した。
【0132】
表4におけるE23、E24、及びE25の引張強度はDAPである。E23~E25が調湿されていた場合、これらはそれぞれ38MPa、36MPa、及び53MPaの引張強度を有して、それぞれ0.93、0.95、及び1.06の湿潤:乾燥引張強度比を得た。
【0133】
【0134】
高い割合で繊維を含み、且つ高い剛性を示す樹脂は、大規模付加製造法に望ましい。表5は、本明細書で説明される本発明の高いガラス繊維使用量を含む実施例の特性を示し、E26及びE27は30%のGFを含み、実施例E28~E32及びC13は50%のGFを含む。E27及びE32の引張りバーは、0.5mmのノズル及び2.85mmのフィラメントを備える六角押出機を用いて、Lulzbot Mini又はLulzbot TAZ6プリンタ上で印刷された。印刷は、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで実施された。E26~E27のカールバーは、周囲条件下、アエロストルーダ及び0.5mmのノズルを装備するLulzbot TAZ6上で、2.85mmのフィラメントを用いて印刷された。射出成形バーを成形時のままで乾燥した状態で試験し、E27及びE32のバーを印刷時のままで乾燥した状態で試験した。
【0135】
50%のガラス補強ナイロン66組成物を含む比較実施例C13が、大面積付加製造(BAAM)機(Cincinnati Inc.;Harrison,OH)上で印刷された時、3D印刷された部品の始端部及び終端部は印刷の状態が悪く、有意な垂れ落ちが観察され、部品は焼結ひずみを示して、その結果、一方の端部が印刷台から浮き上がっていた。実施例E26、E28、及びE31は、射出成形物品である。全てが同様の相対強度を示しているが(それぞれ7.4~7.6)、ガラス繊維使用量がより高い実施例E28及びE31は、はるかに高い引張係数(E26で約15GPa~8.6GPa)及び高い引張強度(E26で184~191MPaから152MPa)を示す。衝撃強さの改善もまた認められ、ノッチ付きアイゾッド衝撃強さにおいて、実施例E26に対して、実施例E28は13%の改善、また実施例E30は41%の改善を示している。E31からの50%のGFを含有する組成物からフィラメントを製造し、3D印刷のためにスプールに巻き付けた。E28からの組成物も、大型の付加製造機器上で試験した。大型の六角形を大規模付加製造(LSAM(登録商標))機(Thermwood;Dale,IN)上で印刷した。六角形は、良好な層間接着、最小限の焼結ひずみ、及び良好な形状保持を示した。六角形から約幅1.5インチ×厚さ0.5インチのドッグボーンをウォータジェットで切り出し、ASTM D638に基づき非標準の引張り試験法によって試験した。実施例E29は、射出成形バー(E28)で見出された引張係数の90%超を保持し、同様の引張強度を示す。この組成物のZ方向の強度を、実施例E30に示す。垂直対水平の引張強度の比は0.28である。
【0136】
【0137】
表6は、7.5%~22.5%のガラス繊維、及び7.5%~22.5%の炭素繊維の範囲のガラス繊維と炭素繊維との混合物を含む組成物を示す。表6の全ての引張り試験バーは、0.5mmのノズル及び2.85mmのフィラメントを備える六角押出機を用いて、Lulzbot Mini又はLulzbot TAZ6プリンタ上で印刷された。印刷は、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで実施された。バーは、印刷時のままで乾燥した状態で試験された。温度範囲試験を同じプリンタ上で実施した。
【0138】
実施例E37及びE38は、ポリアミドPA1及びPA2からなり、22.5%の炭素繊維及び7.5%のガラス繊維を含む。実施例E37からの印刷された物品は、係数の改善(30%のGFで実施例E9に対して25%の改善、及び20%のCFでE15に対して10%の改善)が、この混合繊維組成物で観察され得ることを示す。同様に、実施例E38は、E10及びE16と比較して改善された係数(それぞれ54%及び24%)を有する。
【0139】
【0140】
熱伝導性及び導電性フィラーを含む様々なフィラーを、表7に示すように様々な特性を達成するために、これらの頑強な3D印刷可能な樹脂組成物と共に使用することができる。表7の全ての引張り試験のバーは、0.5mmのノズルを装備したMakergear M2プリンタ上で、1.75mmのフィラメントを用いて印刷された。印刷は、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで実施された。報告される測定値は、印刷時のままで乾燥した状態のバーのものである。カールを判定するために用いられた試験試料は、アエロストルーダ及び0.5mmのE3Dノズルを装備したLulzbot TAZ6上で印刷され、印刷条件は、冷却ファンなし、ノズル温度275℃、及びベッド温度85℃を含んでいた。温度範囲結果のために、0.4mmのノズルを装備したMakergear M2又はM3を用いた。温度範囲試験に従って290~235℃の温度範囲で印刷を実施し、中空のシリンダーを印刷する間、10mmの増加ごとに温度を5℃逓減させた。印刷速度は、ファンなし、ベッド温度85℃で30mm/秒であった。
【0141】
実施例E39及びE40は、PA1及びPA2、並びに熱伝導性フィラーの窒化ホウ素(AD1)からなる。E39からの印刷された物品は、フィラーを一切含まないC14に対して改善された引張係数(91%改善)を有しながらも、良好な引張強度を保持する。比較実施例C16及びC17は、PA2及びナイロン10,10(PA5)並びに窒化ホウ素からなる。C16及びC17の組成物から印刷されたカールバーは、E39及びE40の組成物と比較して、並びにPA2及びPA5に加えてPA1を含むE41及びE42の組成物と比較して増加したカールを示す。E41からの印刷された物品は、C16からの印刷された物品と同様の引張係数及び引張強度を示すが、E41からの印刷された物品は、より高い相対強度を有する(C16の1.0に対して1.3)。E39、E40、E41、及びE42の組成物を含む引張りバーは、比較実施例C14及びC15の充填されていない組成物と比較して改善された垂直対水平の引張強度の比を有する(それぞれ0.35及び0.39に対して0.30)。実施例E43及びE44はグラファイト(AD2)を含み、これは潤滑性及び熱伝導性フィラーであってもよい。E41と比較すると、E43からの印刷された物品は、わずかに改善された相対強度(1.3に対して1.4)及び改善された引張強度(14%の改善)を示すが、増加したカールを示す。表7の組成物全体で強靭性は同様であった。
【0142】
印刷時のままで乾燥した状態及び調湿されたバーに関して得られた湿潤:乾燥引張係数及び湿潤:乾燥引張強度の比は、全ての場合で0.90を超えており、これは、本発明の組成物の耐湿度性を示す。
【0143】
【0144】
3D印刷された部品においては、様々な方向で印刷された部品の引張強度及び引張係数を測定すると、有意な異方性が観察され得る。表8及び表9は、3D印刷物品の異方性を低減するための取り組みを示す。表8及び9の全ての引張りバーは、0.5mmのノズル及び2.85mmのフィラメントを備える六角押出機を用いて、Lulzbot Mini又はLulzbot TAZ6プリンタ上で印刷された。印刷は、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで実施された。バーは、印刷時のままで乾燥した状態で試験された。カールを判定するために用いられた試験試料は、アエロストルーダ及び0.5mmのE3Dノズルを装備したLulzbot TAZ6上で印刷され、印刷条件は、冷却ファンなし、ノズル温度275℃、及びベッド温度85℃を含んでいた。温度範囲結果のために、0.4mmのノズルを装備したMakergear M2又はM3を用いた。温度範囲試験に従って290~235℃の温度範囲で印刷を実施し、中空のシリンダーを印刷する間、10mmの増加ごとに温度を5℃逓減させた。印刷速度は、ファンなし、ベッド温度85℃で30mm/秒であった。
【0145】
主にPA1、PA2、及びGF1を含むE45、E10、及びE46では、「0/180」度のインフィルを備える水平に印刷された物品(水平0/180)は、「45/-45」度のインフィルを備える水平に印刷された物品(水平45/-45;E9)に対して、引張係数(+67%)及び引張応力(+69%)の有意な改善を示す。エッジ上に印刷されたが、「45/-45」度のインフィルを備える物品(Edge45-/45;E10)は、水平「45/-45」度の物品に対して、引張係数(+17%)及び引張応力(+11%)の軽度の改善を示す。エッジ上に印刷されたが、「0/180」度のインフィルを備える物品(Edge0/180;E46)は、水平「45/-45」度の物品に対して、引張係数の軽度の改善(+10%)及び引張応力の軽度の低下(-11%)を示す。
【0146】
【0147】
GF2などのガラスビーズを組み込んで、この異方性を低減させることができる。実施例E48、E49、及びE50は、30%のガラスビーズを含むポリアミド組成物である。表8及び9に示すように、これらの実施例での引張係数及び引張応力における異方性は、水平45/-45度の値の10%以下まで低減される(E47)。E48からの印刷された試験バー(水平0/180)は、45/-45度で水平に印刷された試験バーと比較して、引張係数の軽度の改善(+7%)及び引張応力の軽度の低減(-8%)を示し、これは標準のガラス繊維充填組成物に対する異方性の有意な低減である。これらの物品は、ガラスビーズGF2(6.5~12.9%の破断点ひずみ)を組み込んだ時に、標準のガラス繊維GF1(2.5~3.4%の破断点ひずみ)と比較して有意に改善された延性も示す。実施例E51、E52、E53、及びE54の組成物は、主にPA1、PA2、GF1、及びGF2を含み、ガラス繊維及びガラスビーズの組み合わせた使用量は、組成物の50%を構成し、機械的特性は、フィラーとしてガラス繊維のみを含む又はガラスビーズのみを含む組成物の特性間のバランスを示す。E51、E52、E53、及びE54の組成物から印刷された物品は、E9と同様の引張特性を保持するが、様々な方向に印刷される際に同様の異方性をその他の場合で示さない。水平45/-45度特性からの最大平均偏差は、水平0/180方向に印刷される時(E52、表9)の引張係数の38%の改善である。
【0148】
【0149】
強化剤もまた、印刷可能な組成物の機械的特性を改善する。表10は、強化剤として非官能化及び官能化されたエチレン/α-オレフィンコポリマーを含む組成物を示す。表10の全ての引張りバーは、0.5mmのノズルを装備したMakergear M2プリンタ上で、1.75mmのフィラメントを用いて印刷された。印刷は、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度275℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで実施された。結果は、印刷時のままで乾燥した状態のバーに関して報告される。カールを判定するために用いられた試験試料は、アエロストルーダ及び0.5mmのE3Dノズルを装備したLulzbot TAZ6上で印刷され、印刷条件は、冷却ファンなし、ノズル温度275℃、及びベッド温度85℃を含んでいた。温度範囲結果のために、0.4mmのノズルを装備したMakergear M2又はM3を用いた。フィラメントは、使用前に90℃の真空下で少なくとも24時間乾燥された。温度範囲試験に従って290~235℃の温度範囲で印刷を実施し、中空のシリンダーを印刷する間、10mmの増加ごとに温度を5℃逓減させた。印刷速度は、ファンなし、ベッド温度85℃で30mm/秒であった。
【0150】
強化剤として非官能化エチレン/1-オクテンコポリマーT9を含むポリアミド組成物である実施例E55は、強化剤を組み込んでいないC14(相対強度1.9)と比較して改善された相対強度(2.5)を示す。E55の衝撃強さは、C14よりも1.4倍高い。しかしながら、E56は、この強化剤の官能化されていない非極性の性質が、垂直に印刷された物品の引張強度に対する悪影響を有することを示す。無水マレイン酸グラフト化エチレン/1-オクテンコポリマーT8などの第2の官能性衝撃改質剤を、T9と共にポリアミド組成物に添加することにより、C14と比較して相対強度の著しい改善(24.4)を示すE57及びE58の組成物が作製される。更に、垂直対水平の引張強度の比は、C14(0.30)及びE56(0.23)と比較してE58(0.35)で改善される。注目すべきことに、E57の衝撃強さは、C14に対して10倍に増加し、E55より約7.4倍高い。主にPA1、PA2、及び官能性強化剤T8を含むE59及びE60の組成物に変更することにより、衝撃強さに大きな影響を与えることなしに、引張特性が更に増加される。大きく改善された破断点ひずみ(89%)が原因で、E59の相対強度は6.8に増加するが、E58と同じ0.35の垂直対水平の引張強度の比は維持する。無水マレイン酸グラフト化エチレン/1-ブテンコポリマーT10を強化剤として使用することにより、0.37の垂直対水平の引張強度の比を維持しながら、更に高い相対強度(41.6)が可能となる。全体的には、官能化強化剤をポリアミド組成物に添加することは、3D印刷物品の引張強度に対するわずかな不利益を有するが、その他の場合では、強靭性、垂直引張強度、延性、及び層間接着を改善する。
【0151】
官能化強化剤を組み込むことで、湿潤:乾燥引張係数及び引張強度の両方で、C14の強化されていない組成物の比と同様の比をもたらす非官能化強化剤を組み込んだ場合よりも高い比が得られた。表10で報告される全ての組成物で、カールは1mm以下と小さかった。
【0152】
【0153】
表11は、強化剤を含み、表4及び10の強化剤を含む実施例のノズル温度275℃と比較してノズル温度が290℃の、組成物の3D印刷された試験バーの特性を示す。0.5mmのノズルを装備するMakergear M2プリンタ上で、1.75mmのフィラメントを使用して、表11の全ての引張りバーは水平及び垂直方向に印刷され、全ての衝撃バー(impact bars)は水平方向に印刷された。水平バーのデータを、垂直対水平の引張強度の比と共に表11で報告する。印刷は、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ノズル温度290℃及びベッド温度85℃、冷却ファンなしで実施された。結果は、印刷時のままで乾燥した状態のバーに関して報告される。
【0154】
カールを判定するために用いられた試験試料は、アエロストルーダ及び0.5mmのE3Dノズルを装備したLulzbot TAZ6上で印刷され、印刷条件は、冷却ファンなし、ノズル温度275℃、及びベッド温度85℃を含んでいた。温度範囲結果のために、0.4mmのノズルを装備したMakergear M2又はM3を用いた。フィラメントは、使用前に90℃の真空下で少なくとも24時間乾燥された。これらのフィラメントに対して、温度範囲試験に従って290~235℃の温度範囲で印刷を実施し、中空のシリンダーを印刷する間、10mmの増加ごとに温度を5℃逓減させた。印刷速度は、特に指定のない限り、ファンなし、ベッド温度85℃で30mm/秒であった。
【0155】
強化剤として無水物官能化エチレンアクリレートコポリマーT11を5重量パーセントだけ含むE63の組成物から印刷された試験バーは、強化されていない組成物C18の引張特性を保持するが、垂直対水平の引張強度の比を改善し(E63で0.55に対してC18で0.50)、衝撃強さを7倍超と大きく改善する(18kJ/m2から127kJ/m2)。E63は、C18の低いカール(<0.5mm)を保持する。
【0156】
E64において、30重量%の無水マレイン酸グラフト化エチレン/1-オクテンコポリマーT8を強化剤として使用することによって相対強度及び衝撃強さが改善される。優れた破断点ひずみ(114.4%)が原因で、E64は、C18(4.8)よりもはるかに高い相対強度(41.3)、のみならず、0.55の改善された垂直対水平の引張強度の比を有する。衝撃強さは、C18と比較して6倍超に増加する(114対18kJ/m2)。しかしながら、30重量%のT8を含むE64のカールは、C18を超えて増加し(3.5mm対<0.5mm)、20重量%のT8を含むE59(0.8mm)を超えて増加する。更に、E64では、引張係数はC18及びE59と比較して低下する(840対1574及び1110MPa)。それぞれ30重量%及び20重量%のT8、並びにそれぞれ290℃及び275℃のノズル温度を有するE64及びE59の引張及びカールの結果は、T8の強化剤濃度を30重量%未満に、ノズル温度を275℃超に調律することによって、引張及びカール特性の最適化が達成され得ることを示す。
【0157】
相溶化剤として作用する強化剤も、AM組成物に組み込まれてよい。これらの剤は、ポリアミドとアイオノマー強化剤とのブレンド中の界面接着を改善する役割を果たすことができる。実施例E70は、20重量%の組み合わせ濃度でアイオノマー強化剤T1及び相溶化強化剤T12を備えるAM組成物を含む。この組成物は、T1のみを20重量%で含むAM組成物(E69)と同様の引張係数及び応力を保持する。実施例E70はより低い相対強度を有するが(E69の24.5に対して11)、この主な原因は、より低い破断点ひずみ(E69の60.9%に対して26%)及び増加したカール(<0.5mmに対して2.8mm)である。垂直対水平の引張強度の比におけるわずかな上昇(E70の0.40対E69の0.39)が観察される。この相溶化剤の効果は、E69(168kJ/m2)に対するE70(179 kJ/m2)の衝撃強さの上昇によって最も良く証明される。いずれの組成物もC18と比較して強靭性が劇的に改善しており、E70は衝撃強さの9.9倍超の向上を示す。実施例E71は、アイオノマー強化剤T1及び相溶化強化剤T13を含む。この組成物は、T1のみを含む組成物と比較してより低い相対強度も有する(5.2)。ここでも、より低い破断点ひずみ(12.7%)がこの効果の原因である。衝撃強さはE69と同様であり、カールはわずかに増加している(1mm対<0.5mm)。それでもなお、相溶化強化剤T13を使用することで、E69の0.39と比較して、垂直対水平の引張強度の比が0.47の大きな改善がもたらされる。179及び171kJ/m2においては、E70及びE71の衝撃強さが相溶化強化剤なしのE69の衝撃強さ(168kJ/m2)を上回るだけでなく、これらの値は表11で報告される最高の衝撃強さである。168kJ/m2の衝撃強さ及び0.5mm未満のカールにおいては、T1が20重量%のみのE69は、40重量%の(E67、E68、E72、E73)無水物非含有アイオノマー強化剤を含む表11の実施例と比較して改善された衝撃強さ及びカールのバランスを有する。E69の衝撃強さ、及び引張特性は、30重量%の同じアイオノマー強化剤T1を含むE74のそれを超えて改善されている。これらの結果は、印刷された試験バーの衝撃、引張、及びカール特性の最適化は、アイオノマー強化剤の濃度を30重量%未満に調律することによって達成され得ることを示唆する。
【0158】
比較実施例C19で報告されるように、ナイロン6と無水物含有アイオノマーとの市販のブレンドであるB1からなる水平試験バーは、良好な相対強度(26.8)及び衝撃強さ(180kJ/m2)を示すが、垂直に印刷された物品は、非常に劣った層間接着を有し、引張り試験において速やかに層間剥離する。C19からの印刷された垂直物品の相対強度はわずか0.05であるが、これは、低い破断点ひずみ(0.8%)及び低い引張強度(6MPa)に起因する。C19と比較すると、本発明のポリアミド組成物、及び無水マレイン酸メチルエステルで改質したアイオノマー強化剤T3を含む実施例E66は、より高い引張強度及び破断点ひずみのためにより優れた相対強度(34.9)を有する。E66とC19とを比較すると、垂直対水平の引張強度の比は2倍超である(0.16から0.36)。E66はC19より有意に低いカールを有する(<0.5mm対2.5mm)。強靭性は悪影響を受け、E66の衝撃強さはC19の76%である。両方の組成物が、ほぼ同じ重量%の構造的に同様の官能化アイオノマーを有するにもかかわらず、特性のバランスを考慮すると、ポリアミドPA1及びPA2とT3とのブレンドが明らかに優れている。アイオノマー強化剤T6を含むE67などの、この追加の官能性を有さないアイオノマー強化剤と比較すると、E67はE66よりもわずかに低い相対強度(32.6対34.9)、及びより低い垂直対水平の引張強度の比(0.28対0.36)を有するが、より優れた衝撃強さ(166対137kJ/m2)を有する。同様に、無水物官能性を有さない、アイオノマー強化剤T7を含むE68は、より低いが相対的な強度(23.2)、より低い垂直対水平の引張強度(0.28)、及びより低い衝撃強さ(127kJ/m2)を示す。E67及びE68は、E66よりも高いカールを有する(2.8mm及び1.8mm対<0.5mm)。
【0159】
ブチルエステルターアイオノマー強化剤T4を含む組成物は、特に有望である。20重量%のT4を備える実施例E65は、C18に十分匹敵する、適度な引張特性(37MPaの引張応力及び9.5の相対強度)及び衝撃強さ(153kJ/m2)を有する。しかしながら、T4によって追加された層間接着力が、この組成物を比類のないものにしている。E65の組成物は、垂直方向に印刷された際に水平引張強度の保持が並外れている(30MPa;0.81の垂直対水平の引張強度の比)。
【0160】
E72の組成物は、ナトリウムアイオノマー強化剤T2を含み、これはE73の亜鉛アイオノマー強化剤T5と同様の組成である。E72のナトリウム含有組成物の垂直対水平の引張強度の比は、E73の亜鉛含有組成物と比較してより低い。更に、これらの強化剤により組成物に与えられる衝撃強さは劇的に異なるものとなる。E73は、実施例E72(100 kJ/m2)の2倍近い衝撃強さ(171kJ/m2)を有し、亜鉛中和アイオノマーの利点を示す。
【0161】
比較実施例C20は、焼結ひずみを低減することにおける本発明のポリアミド組成物の利点を示す。非晶質コポリアミドPA2の不在下で、C20は表11で報告される最も高いカール(4mm)を示した。表11の実施例の全ての場合において、湿潤:乾燥引張係数及び湿潤:乾燥引張強度の比は0.90を超えていた。
【0162】
【0163】
【0164】
本明細書で説明される組成物は、湿潤環境に曝露された後でその引張特性を保持する。表12は、任意選択的に、カーボンブラック、染色剤、酸化防止剤、及び熱安定剤などの添加剤を含む30%のガラス繊維からなるポリアミド組成物(E75)、並びに20%の炭素繊維からなるポリアミド組成物(E76)からの、射出成形ISO1Aバーの成形時のままで乾燥した状態、及び調湿された状態の引張特性を示す。引張り試験前に少なくとも48時間、成形時のままで乾燥した状態の物品を50%相対湿度環境に曝露することによってバーを調湿した。E75における調湿では、引張特性はわずかにのみ変動し、係数は8,975MPaから8,838MPaへとごくわずかに変化し、引張応力は150MPaから137MPaへと10%未満下落し、破断点伸びは4.5%から4.8%へとわずかに増加する。E76における炭素繊維組成物は、わずかに優れた湿潤効果を示すが、特性の変化はわずかなままである。引張係数のわずかに高い下落が認められ(13,296MPaから12,846MPa)、可塑化による破断点伸びの適度な増加が起こり(3.4%から3.6%)、引張応力は156MPaから141MPaまで約10%低下する。E75及びE76の両方で、湿潤:乾燥引張係数の比は0.97以上であり、湿潤:乾燥引張応力の比は0.90以上である。
【0165】
【0166】
強化されたAM組成物は、ガラス繊維などのフィラーで補強されて、引張強度を改善することができる。表13は、熱安定剤、染色剤、及び添加剤を含む、30%のガラス繊維で補強されたポリアミド組成物に強化剤を添加することの効果を示す。E55及びE79の試験バーは、0.5mmのノズルを装備したMakergear M2プリンタ上で、1.75mmのフィラメントを用いて印刷された。ノズル温度は275℃であった。E77、E78、及びE80の試験バーを、0.5mmのノズル及び六角押出機を装備したLulzbot Mini又はTAZ6プリンタ上で、2.85mmのフィラメントを用いて印刷した。ノズル温度は、E77で275℃、E78及びE80で285℃であった。水平バーのデータを、垂直対水平の引張強度の比と共に表13で報告する。印刷は、窒素パージ雰囲気下、30mm/秒、ベッド温度85℃、冷却ファンなしで実施された。結果は、印刷時のままで乾燥した状態のバーに関して報告される。
【0167】
カールを判定するために用いられた試験試料は、アエロストルーダ及び0.5mmのE3Dノズルを装備したLulzbot TAZ6上で印刷され、印刷条件は、冷却ファンなし、ノズル温度275℃、及びベッド温度85℃を含んでいた。温度範囲結果のために、E55及びE79には、0.4mmのノズルを装備したMakergear M2又はM3が、290~235℃の範囲のノズル温度、及び30mm/秒の印刷速度で用いられ、E77、E78、及びE80には、0.5mmのノズル及び六角押出機を装備したLulzbot Miniが、285~230℃の範囲のノズル温度、及び15mm/秒の印刷速度で用いられた。温度範囲試験に従って中空シリンダーを印刷する間、10mmの増分ごとに温度は5℃逓減した。ファンなし、及び85℃のベッド温度が用いられた。
【0168】
実施例E77は、100MPaの引張応力及び3.5の相対強度を有する。非官能化強化剤は含むが補強剤は含まない実施例E55は、E77と同様の垂直:水平引張強度比(0.2)を示すが、より低い引張強度を示す(38MPa)。E78におけるようにGF1を組成物に添加しても、垂直:水平引張強度の比も衝撃強さ(21kJ/m2)も影響を受けないが、引張強度は62MPaに改善される。同様に、官能化強化剤及び非官能化強化剤の両方を含む補強剤なし強化ポリアミド組成物であるE79は、良好な衝撃強さ(87kJ/m2)及び垂直:水平引張強度(0.3)を有するが、低い引張応力(40MPa)を有する。E80によって示されるように、引張特性はGF1を添加することによって改善され得る。衝撃強さの有意な下落(42kJ/m2まで)にも関わらず、引張応力は70MPaに増加し、垂直:水平引張強度は保持される(0.3)。かくして、補強剤を添加することによって、強化樹脂の特性は、両方な層間接着を保持しながら衝撃強さと引張特性とのバランスを保つように調律され得る。
【0169】