IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニベルシテイト ゲントの特許一覧

特許7262487熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御
<>
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図1
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図2
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図3
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図4
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図5
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図6
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図7
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図8
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図9
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図10
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図11
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図12
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図13
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図14
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図15
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図16
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図17
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図18
  • 特許-熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】熱水力学的および生物学的なモデルに基づいた制御
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/14 20220101AFI20230414BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230414BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20230414BHJP
   F24H 15/00 20220101ALI20230414BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20230414BHJP
【FI】
F24H15/14
F24F5/00 101Z
F24H15/212
F24H15/00
F24H1/18 H
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020564543
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019062716
(87)【国際公開番号】W WO2019219864
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】18173379.1
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514185611
【氏名又は名称】ユニベルシテイト ゲント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ファン ケンホーフ,エリザ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェーゲ,ジェレ
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/014411(WO,A2)
【文献】特開2006-317105(JP,A)
【文献】特開2011-012886(JP,A)
【文献】米国特許第05168546(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/00
F24F 5/00
F24H 15/212
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体システム(200、210、230)の少なくとも1つの殺菌ユニット(201)を調節するために適合された制御ユニット(100、120、130)であって、前記流体システム(200、210、230)が殺菌ユニット、予め決められた温度に加熱された、加熱流体を産生するための産生ユニット、流体を産生ユニットから少なくとも1つの流体出口まで輸送するための少なくとも1つのパイプ、少なくとも1つの流体出口、および流体システム中の第1の場所における流体の第1の温度を時間の関数として感知するための少なくとも1つのセンシングユニット、制御ユニット(100、120、130)を含み、
- モジュール(101、124)を包含し、モジュールが流体の第1の温度を時間の関数として受信するための入力を包含し、
- モジュールが、流体システムを全体を通した複数の場所における第2の温度を得るために適合されており、該第1の温度を考慮に入れて該第2の温度を得、
- モジュールが、得られた第2の温度、およびモデル化に基づいた予測、少なくとも1つの流体出口での時間による細菌濃度、に基づいて、流体システム全体における流体中の細菌成長を時間の関数としてモデル化するためにプログラムされており、および、
- 予測された細菌濃度に基づいて殺菌ユニットを駆動するために適合されており、
ここで制御ユニットが、モジュール(101、124)によって得られた、時間による、該予測された細菌濃度に基づいて、細菌濃度が流体システム中で予め決められた値に到達する時の時間的な瞬間を決定するように適合されており、
およびそれの返答として、流体システム(200、210、230)中での細菌濃度を低減させるために、これらの瞬間に殺菌ユニット(201)を駆動するように適合されており、
ここでモジュールは、流体システム全体のバイオフィルム中の細菌成長をモデル化するようにさらにプログラムされており、かつ、モジュールは、流体中の細菌成長とバイオフィルム中の細菌成長との間の相互作用をモデル化するようにさらにプログラムされている、
前記制御ユニット。
【請求項2】
複数の場所が、流体システム全体の中で少なくとも2つの異なる流体システム部分の場所を含む、請求項1に記載の制御ユニット
【請求項3】
モジュールが、流体の第1の流速を時間の関数として受信するための入力を包含しており、第1の流速は流体システムの少なくとも1つのセンシングユニットにより感知されており、および該モジュールが、流体システム全体の複数の場所における第2の流速を時間の関数として得るように適合されており、該第1の流速を考慮に入れて該第2の流速を得る、請求項1または2に記載の制御ユニット
【請求項4】
モジュールが、流体システム全体の複数の異なる場所における流体の第2の流速を、時間の関数として感知するための複数のセンシングユニットの入力(121、122、123)を包含する、請求項3に記載の制御ユニット。
【請求項5】
殺菌ユニットが、細菌の濃度を低減させるために流体を加熱するいずれかのヒーター、細菌の濃度を低減させるために化学プロセスを誘発する化学ユニット、細菌濃度を低減させるための電気化学ユニット、またはUV照射またはろ過に基づいて細菌の濃度を低減させるためのユニットを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の制御ユニット
【請求項6】
殺菌ユニットが、加熱された流体を産生するための産生用ヒーターを含み、ヒーターはそれゆえ、一方では、必要な時に流体を少なくとも1つの流体出口において快適な温度に加熱するように配置されており、および他方では、少なくとも1つの流体出口で予測された細菌濃度が、予め決められた値に到達する時、流体システム全体の細菌濃度を低減するために熱衝撃を誘発するように配置されている、請求項1~のいずれか一項に記載の制御ユニット
【請求項7】
モジュールが、流体システム全体の異なる複数の場所における流体の、時間の関数としての第2の温度に基づいて決定するために、熱水力学的に流体システムをモデル化している、請求項1~のいずれか一項に記載の制御ユニット
【請求項8】
モジュール(124)が、流体システム(210)全体の複数の異なる場所での、流体の第1および第2の温度を時間の関数として感知するための、複数のセンシングユニット(221、222、223、241、242、243)の入力(121、122、123)を包含している、請求項1~のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項9】
モジュールが、流体システム全体のレジオネラの細菌成長をモデル化するようにプログラムされている、請求項1~のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項10】
レジオネラ成長のモデル化が、流体中および随意的にまたバイオフィルム中の、少なくともレジオネラ成長に関して20℃と45℃との間の温度での、温度の関数としての濃度の時間変化に関する情報を包含している、請求項に記載の制御ユニット。
【請求項11】
モジュール(101、124)がさらに、使用者の流体消費のふるまいに基づいて流体消費を予測するための予測アルゴリズムを含み、それにより制御ユニットが流体消費を予想し、および殺菌ユニットの調節を調整する、請求項1~10のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項12】
流体中での細菌成長およびバイオフィルム中での細菌成長をモデル化することが、空調システム、換気システム、冷却システムまたは加熱システム、または温水分配システムのいずれかの、流体中およびバイオフィルム中での細菌成長をモデル化することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の制御ユニット、ヒーター、および熱交換器、およびまたは流体循環システム、およびまたは凝縮器、およびまたは冷却塔(203)、およびまたは温水貯蔵タンク(202、212、232)、少なくとも1つのパイプ、および少なくとも1つの流体出口、を包含する流体循環または分配システム(200、210)。
【請求項14】
流体システムの少なくとも1つの殺菌ユニットを、流体からの細菌の濃度を予め決められた値を下回るように制御するために調節する方法であって、その流体システム(200、210、230)は、殺菌ユニット、快適な温度に加熱された温水を産生するための産生ユニット、流体を産生ユニットから少なくとも1つの流体出口まで輸送するための少なくとも1つのパイプ、少なくとも1つの流体出口および制御ユニット(100、120、130)を含み、前記方法は、
-流体システム中の第1の場所での流体の第1の温度を時間の関数として感知すること
-流体システム全体の中の複数の場所での第2の温度を時間の関数として得ること
-システム中の得られた第2の温度に基づいて、時間の関数として流体システム全体の中の流体中の細菌成長をモデル化すること、ここで、モデル化することは、流体システム全体のバイオフィルム中の細菌成長をモデル化すること、および流体中の細菌成長とバイオフィルム中の細菌成長との間の相互作用をモデル化することを含む、
-モデル化に基づいて、少なくとも1つの流体出口における細菌濃度を時間に渡って予測すること
-殺菌ユニットを駆動すること
のステップを包含しており、
ここで前記方法が、モジュール(101、124)によって得られた、該予測された、時間に渡る細菌濃度に基づいて、細菌濃度が流体システム中で予め決められた値に到達する時間上の瞬間を決定すること、およびそれに応えて、時間上のこれらの瞬間に、殺菌ユニット(201)を流体システム(200、210、230)中の細菌濃度を減少させるように駆動すること、を含む前記方法。
【請求項15】
複数の場所での流体の第2の温度を得ることが、第1の温度を考慮に入れて、それに基づいて時間の関数として流体システム全体の複数の異なる場所での流体の第2の温度を決定するための、流体システムの熱水力学的なモデル化のステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複数の場所での流体の第2の温度を得ることが、流体システム全体の複数の異なる場所で、時間の関数として流体の第2の温度を感知するステップを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
流体システムにおける流体の、時間の関数としての第1の流速を感知すること、および、流体システム全体の中で複数の場所における流体の、時間の関数として第2の流速を得ること、のステップをさらに含む、請求項1416のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
細菌成長のモデル化が、使用者の流体消費のふるまいを考慮に入れ、それにより、制御ユニットが流体消費を予想して殺菌ユニットの調節を調整できるようにする、予測的なシミュレーションをすることを含む、請求項1417のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ヒーターを含む流体システムを適合させる方法であって、流体システムに請求項1~12のいずれか一項に記載の制御ユニットを設置するステップを包含する前記方法。
【請求項20】
制御ユニットのモジュールを流体分配システムのパラメータに基づいて調整することをさらに包含する、およびまたは、制御ユニットのモジュールを自動的に調整するためである、およびまたは、自己学習のアルゴリズムに基づいてモジュールを調整するためである、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は細菌の制御の分野に関する。より具体的には、温水分配システム、温度によって制御する環境制御システム、換気および/または空調および空気循環システムなどの、流体分配システムにおける細菌活動の抑制を提供するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
細菌の増殖は、温水供給、貯水、空調および換気システム、冷却塔などのインフラストラクチャーにおける、潜在的なリスクの1つである。これらのインフラストラクチャーは、細菌集落の増殖に多くのケースで寄与する条件で、水、エアロゾル、ガス、または蒸気を、取り扱う。
【0003】
それゆえ、細菌の活動を制御するための効果的な方法を提供することが必要である。家庭内温水(DHW)システムの場合は、熱的な処理が細菌の殺菌に使用され、それはエネルギー要求を増加させる。高いエネルギー要求の主な理由の1つは、家庭用の水は60℃を上回る温度で作られ、貯水され、分配されるからである。このことは、レジオネラ・ニューモフィラなどの細菌でDHWシステムを感染させるリスクを軽減する。暴露されると、すなわちエアロゾルを吸い込むと、急性呼吸器疾患または重大な肺炎を引き起こすのは細菌である。これらの温度においては、L.ニューモフィラの成長は止められ、残った細菌は効果的に殺される。しかしながら、シャワーを浴びたり手を洗ったりといった、ほとんどの家庭用温水用途では、たった30~40℃が要される。この隔たり(60℃と40℃の間の)はDHWシステムと環境との温度差を2倍にし、そしてそれは、システムの熱消失や、ヒートポンプなどのDHW産生ユニットの効率に負の効果を与える。
【0004】
「家庭用温水システムにおけるレジオネラ・ニューモフィラ増殖の熱水力学的および生物学的連動モデリング」Elisa Van Kenhoveら著、Healthy Buildings Conference, Eindhoven, 2015において、家庭用温水システムの設計段階でレオジネラ成長をシミュレーションするための、および、感染したシステムへの消毒の効率をテストするためのシステムが記載されている。それにもかかわらず、システムを感染させるリスクに関して十分な安全をなお提供しつつ、エネルギーの消費を低減できるようにするために、使用中のシステムのエネルギー効率を改善する余地はまだある。
【0005】
エネルギー要求を低減する、ビルディングへのよりエネルギー効率の高い実施は望ましいだろう。このエネルギー低減をトライアンドエラーで実施することは可能ではあるが、この方法は安全ではない。ビルディングおける細菌の汚染を低減することもまた望ましいであろうし、およびまた、概して産業的用途においては、水の分配システムだけではなく、細菌に汚染されがちな、いずれか他のビルディングまたは産業的インフラストラクチャー、とりわけ水や蒸気を使用しているこれらシステムにおいて望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱(熱処理)制御および/または他の種の流体システムの殺菌のための制御ユニット、および、かかる加熱および/または熱処理を提供し、かように流体分配システム中で、エネルギー的に効果的な方法で細菌の活動の効率的で安全な制御を提供する方法、ならびに、エネルギー的に効果的な細菌の抑制または除去、ならびに、よりエネルギー要求が低く、および安全な細菌汚染をもつ安全な流体システム、を得るための分配システムの設置または適用のための方法、を提供することが本発明の態様の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様はそれゆえ、温水および、効果的な細菌制御とエネルギー消費をもつ、凝縮を包含する、加熱および換気システムのための、制御システムに関する。それは循環的なシステムにも、または加熱、換気、または空調、および空気循環または分配システム(DHW、HVAC、加熱等)、冷却塔等、に基づいた、水分配システム、環境制御システム、などの1点から出力点までの分配システムにも応用され得る。
【0008】
ヒーターは温度をセットし得ることと、および、少なくとも使用者の快適のために必要な最低温度を与え、その一方同時にとりわけ、流体分配システム(HVACシステムのドレーントレイのような)の流体交換部において、低エネルギー消費条件のもとで働くという、加熱の統治をセットし得るということは本発明の態様の利点である。使用者の快適温度は、例えば37℃と45℃の間であってよい。
【0009】
1つの態様では、本発明は、流体システムの少なくとも1つの殺菌ユニットを調整するために適合された制御ユニットに関し、該流体システムは、殺菌ユニット、予め決められた温度まで加熱された流体を産生するための産生ユニット、流体を産生ユニットから少なくとも1つの流体出口まで輸送するための少なくとも1つのパイプ、少なくとも1つの流体出口、流体システムの第1の位置にあり、時間の関数として流体の第1の温度をセンシングする、少なくとも1つのセンシングユニット、制御ユニット、を含み、
- モジュールを包含し、該モジュールは時間の関数として流体の第1の温度を受信するための入力を包含する、
- 時間の関数として、流体システム全体の複数の場所において第2の温度を得るために適合されたモジュール、該(第2の温度を)得ることは該第1の温度を考慮する、
- 第2の温度に基づいて、および予測のためには少なくとも1つの流体出口における、時間に渡る細菌濃度のモデリングに基づいて、時間の関数として、流体システム全体の流体中の細菌の成長をモデリングするようにプログラムされたモジュール、
- 予想された細菌濃度に基づいて殺菌ユニットを駆動するために適合されているものであり、
ここで、制御ユニットは、モジュールによる、時間に渡る該予想された細菌濃度に基づいて、流体システム中で細菌濃度が予め決められた値に達する時間の瞬間を決定し、およびそれに対する返答として、これらの時間の瞬間に殺菌ユニットを駆動し、流体システムの細菌濃度を低減するために適合されている。
【0010】
制御ユニットは、細菌の濃度が予め決められた値に近いか、または予め決められた値に到達した時に、信号を生成してもよい。かかる信号は、例えば音響または光の警報、あなたの携帯電話への文章によるメッセージ・・・でもよい。
【0011】
本発明の態様において、流体システム全体の複数の場所というように言及される時、それは例えば、流体システムの少なくとも2つの異なる流体システム部分の場所のような、産生ユニットと流体出口との間の、流体経路に沿った複数の場所を意味している。ここで前記流体システム部分は、産生ユニット、1つ以上のパイプおよび1つ以上の流体出口を少なくとも含む。本発明の態様において、動的なモデリングと表現される場合、時間の関数としてモデリングすることを表現している。
細菌の制御および汚染除去が、流体の加熱を最適化し、ならびに加熱の仕組みおよび順序を、流体システム中での細菌成長のモデルを考慮したうえで最適化することによって、エネルギー消費と浪費を低減しつつ、および/または水浪費を低減しつつ実施されうることは、本発明の態様の利点である。流体の速さが低減されている、またはよどんでいる区域を、細菌成長のモデルの中で考慮に入れることができ、汚染除去の戦略の動的な適応ができるのは、さらなる利点である。
【0012】
モジュールの入力はさらに、時間の関数として流体の第1の流速を受信し、第1の流速は流体システムの少なくとも1つのセンシングユニットによって感知され、および該モジュールは、流体システム全体の複数の場所における第2の流速を時間の関数として得るように適合され、該得ることは該第1の流速を考慮に入れてもよい。好ましくは、流体システムのセンシングユニットは、流体システム全体の中での流体の同じまたは異なった場所での、少なくとも第1の温度および第1の流速を感知する。センシングユニットは、第1の温度を感知するための第1のセンサーおよび、流体システムにおける流体の第1の流速を感知または導出するための第2のセンサーを含んでもよい。第1の温度センサーおよび第2の流速センサーの場所は、互いに同じまたは異なっていてよい。殺菌ユニットは、細菌濃度を減少させるために流体を加熱するヒーター、細菌濃度を減少させるために化学反応を誘発するための化学ユニット、細菌濃度を減少させるための電気化学ユニット、またはUV照明またはろ過に基づいて細菌濃度を減少させるユニットのいずれかであってよい。殺菌ユニットは、陽極酸化によりまたは銅およびまたは銀のイオン化により細菌濃度を低減させるための電気化学ユニットであってもよい。
【0013】
殺菌ユニットは、加熱された流体を産生するための産生ユニットのヒーターを含んでもよく、それゆえヒーターは、一方では、要求された時には、流体を少なくとも1つの流体出口において心地よい温度に加熱するように準備されており、およびもう一方では、予測された細菌濃度が予め決められた値に到達した時には、流体システムの細菌濃度を減少させるために熱衝撃を誘発するように準備されている。
【0014】
モジュールはさらに、流体システムにおけるバイオフィルム中の細菌成長のモデリングのためにプログラムされている。モジュールはさらに、流体中の細菌成長とバイオフィルム中の細菌成長との間の相互作用のモデリングのためにプログラムされている。
コントローラは、全流体システムを通して、すなわち、流体システムを通してどの位置でも、時間上どんな時間でも、温度および随意に流速を得ること/決定することを認めることは、本発明の態様の利点である。コントローラは、流体中の、および随意にバイオフィルム中の、細菌成長を決定するときに、全流体システムを考慮に入れる、すなわち、流体中および随意にバイオフィルム中の細菌成長は、全流体システム、すなわち流体システムを通してどの場所も、を通して決定され得るのは、本発明の態様の利点である。
モジュールは、時間の関数としての、流体システム中の複数の位置での温度に基づいて、決定するための流体システムの熱水力学的なモデリングのためにプログラムされてもよい。あるいは、またはそれに加えて、モジュールは、流体システム中の温度を感知するための複数の温度センサーからの温度情報を得るために適合されてもよい。
モジュールは、流体システム中の少なくとも1つのセンシングユニットからの少なくとも1つの温度を受信するための入力を包含してもよい。モジュールは、流体システム中の少なくとも1つのセンシングユニットからの少なくとも1つの流速を受信するための入力を包含してもよい。それについてのパラメータおよび変更は、測定することができ、モデル内に考慮することができることは、本発明の態様の利点である。好都合なことに、例えば、システム中の流速と一緒に温度は測定されている。
モジュールは、殺菌ユニットへの制御信号を送信するための出力を包含してもよい。例えば流体の温度および/または流速における変化を考慮に入れながら、リアルタイムで流体の温度制御を実施し得るのは、本発明の態様の利点である。
【0015】
モジュールはさらに、バイオフィルムの成長、乱流、流体の速度、流体の圧力、流体システムの熱的な分離のいずれかのモデルを包含してもよい。流体システム中の細菌成長は別にして、他のパラメータ、例えば流体分配システムがあれば、例えば乱流またはバイオフィルムの成長などの動的なパラメータ、ならびに分配システムの熱的な分離などの受動的なパラメータ、を考慮にいれ得ることは、本発明の態様の利点である。
細菌成長のためのモデルは、レジオネラの成長のためのモデルを含み得る。レジオネラ例えばレジオネラ属からの細菌は、流体システム中の例えば流体(例えば水)において、システム中で予め決められたレベルより下回るように制御され得ることは、本発明の態様の利点である。
【0016】
殺菌ユニットは、別のヒーターであってよく、または産生ユニットのヒーターであってもよい。制御ユニットは、50分間またはそれ未満で、4-log減少を得るために液体の温度が55℃かそれを上回るように制御するために、このヒーターを動的に調節するように適応されていてよい。水中の細菌数は明確に標的であり得、それゆえ加熱エネルギーを節約することは、本発明の態様の利点である。
【0017】
レジオネラの成長のモデルの1つまたは両方は、流体中でのおよび随意にバイオフィルム中での、レジオネラの成長のための少なくとも20℃と45℃との間の温度で、温度の関数として時間による濃度の変化についての情報を包含してもよい。レジオネラの活動の抑制のために温度の制御をするために、活性なレジオネラの成長の温度範囲が考慮に入れられるということは、本発明の態様の利点である。情報は、例えば、流体中での細菌の成長曲線およびバイオフィルム中での細菌の成長曲線のような成長曲線であってよいし、または包含してもよい。あるいはまたはそれに加えて情報は、例えば1つ以上の温度、流れ、バイオフィルムの厚さ、使用されているパイプの材質、使用されているパイプの粗度、パイプ毎に計算されるノードの数がいくつかを決定するシミュレーションのパラメータであるnSeg、存在する細菌の初期の量、質量輸送係数、、、などのような、細菌の成長に影響するパラメータをまた含んでいてもよい。
【0018】
モジュールはさらに、使用者の流体消費のふるまいに基づいて、流体消費を予測し、それにより制御ユニットが流体消費を予期し、および殺菌ユニットの加減を調整することができるような、予測アルゴリズムを含んでよい。
流体中の細菌成長およびバイオフィルム中の細菌成長のモデル化は、空調システム、換気システム、冷却システム、または加熱システム、または温水分配システムのいずれかの、流体中およびバイオフィルム中の細菌成長のモデル化を含んでよい。
換気システムにおいては、流体は空気であってよい。HVACシステムは、これらのシステムに適合された細菌成長のモデルを包含すること、例えばこれらのシステムに包含された熱交換器上の細菌成長を包含すること、により、活性な細菌、例えばレジオネラなしに安全に維持され得ることは、本発明の態様の利点である。制御ユニットは、冷却塔を含む、少なくとも1つの流体交換部分を包含する流体分配システムを有してもよい。
【0019】
細菌疾患の原因である冷却塔もまたモデル化され得ることは、本発明の態様の利点である。使用と消費のための温水における細菌濃度が、予め決められた閾値を下回るように制御され得ることは、本発明の態様の利点である。
制御ユニットは、蛇口を含む、少なくとも1つの流体交換部分を包含する、流体分配システムを有していてもよく、流体システムの流体交換部分は、流体が環境、とりわけ流体システムの使用者と接触し得る、流体システムの部分である。人間の使用と消費のための水出口が、モデルにおいて考慮に入れられうるということは、本発明の態様の利点である。
【0020】
1つの様相において、本発明はまた、上に記載した制御ユニット、ヒーター、および熱交換器のいずれか、および/または流体循環システム、および/または凝縮器、および/または冷却塔、および/または温水貯蔵タンク、少なくとも1つのパイプ、および少なくとも1つの水出口、を包含する流体の循環または分配システムに関する。
【0021】
蒸発器および冷却塔を包含し得る、空調システムまたは冷却または加熱システム、または温水分配システムが、低減され抑制された細菌活動をもって提供され得ることは、本発明の態様の利点である。ヒーターは、例えば、熱ポンプ、太陽熱収集器、ガス凝集システム等のような、いずれのタイプのヒーターであってもよい。
【0022】
本発明はまた、流体システムの少なくとも1つの殺菌ユニットを、細菌の濃度を予め決められた値を下回るように制御するために調節する方法であって、該流体システムは、殺菌ユニット、快適な温度に加熱された温水を産生するための産生ユニット、流体を産生ユニットから少なくとも1つの流体出口まで輸送するための少なくとも1つのパイプ、少なくとも1つの流体出口、および制御ユニットを含み、
次のステップを包含する前記方法、に関する
-流体システム中の第1の場所での流体の第1の温度を時間の関数として感知し、
-流体システム中の複数の場所での流体の第2の温度を時間の関数として得、該第2の温度の得ることは、第1の感知された温度を考慮にいれる、
-システム中の得られた第2の温度に基づいて、時間の関数として流体システム中の流体中の細菌成長をモデル化し、
-モデル化に基づいて、少なくとも1つの流体出口における細菌濃度を時間に渡って予測し、
-殺菌ユニットを駆動し、
ここで方法は、モジュールによって得られた、該予測された、時間に渡る細菌濃度に基づいて、細菌濃度が流体システム中で予め決められた値に到達する時間上の瞬間を決定すること、およびそれに応えて、時間上のこれらの瞬間に、殺菌ユニットを流体システム中の細菌濃度を減少させるように駆動すること。
【0023】
細菌濃度が予め決められた閾値を下回って保たれる一方で、エネルギーの要求を減少させることにより流体の加熱は提供され得ることは、本発明の態様の利点である。
細菌成長のモデル化は、使用者の流体消費を考慮にいれた予測シミュレーションを含んでもよく、それにより流体の消費を予期し、殺菌ユニットの加減を調整できるようになる。
方法は流体システムで記載したような、制御ユニットの設置のステップを包含してもよい。既存のHVACシステムまたは水供給システムが、本発明の態様に従うプログラム可能な制御ユニットを包含することにより、適合され得ることは、本発明の態様の利点である。
【0024】
方法は、流体分配システムのパラメータに基づいた制御ユニットのモジュールの校正をさらに包含し得る。流体分配システム中で、制御ユニットは、細菌成長を計算するために適合されプログラムされ得ることは、本発明の態様の利点である。
本発明はまた、プロセッサ上で実行される時、上に記載した方法を実施するためのコンピュータプログラム製品にも関する。コンピュータプログラム製品はコンピュータツールでもあり得る。
発明の特別のおよび好ましい様相は、付随する独立および従属クレームに提示されている。従属クレームの特徴は、独立クレームおよび他の従属クレームの特徴と必要に応じて組み合わされてもよいのであって、単にクレームに明示的に提示されたもののみではない。
【0025】
本発明の、これらのおよびその他の様相は、下に記載される態様に関連して明白になり、説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の態様に従う制御ユニットおよびヒーターを包含する流体分配システムの、代表的な態様を示す。
図2図2は、本発明の態様に従う制御ユニットおよびヒーターを包含する流体分配システムの、センサーを包含する別の態様を説明する。
図3図3は、本発明の態様に従う制御ユニットおよびヒーターを包含する流体分配システムの、ヒーターと別のタンクを包含する別の態様を説明する。
図4図4は、本発明の態様に従う方法を説明する。
図5図5は、水道水におけるレジオネラ・ニューモフィラの平均世代時間(細胞の数が2倍になる時間)の見積もりを説明する。
図6図6は、温度によるデシマル減衰時間(レジオネラ・ニューモフィラにおける90%の減衰)の変化を説明する。
図7図7は、水およびバイオフィルム中での、温度によるレジオネラ・ニューモフィラの増殖速度と死亡率を説明する。
図8図8は、カスタマイズされたパイプモデルをアイコン表示(モデリカ)で示し、レジオネラ・ニューモフィラ成長の等式を付け加え、システムの構成要素中でのモデルの例を説明する。
【0027】
図9図9は、レジオネラ・ニューモフィラ成長の等式を付け加えたパイプモデルを示し(モデリカ図表表示)、システムの構成要素中でのモデルの例を説明する。
図10図10は、L.ニューモフィラ成長の等式を付け加えて、カスタマイズされた「StratifiedEnhancedInternalHex」ボイラーのモデルを、アイコン表示(モデリカ)で説明する。
図11図11は、L.ニューモフィラ成長の等式を付け加えたボイラーのモデルを説明する(モデリカ図表表示)。
図12図12は、カスタマイズされたボイラーとパイプをもった家庭用の水システムを説明する。
図13図13は、水温の関数として、水中でのレジオネラ・ニューモフィラの平均世代時間(細胞の数が2倍になる時間)のシミュレーションを示す。
図14図14は、水温の関数として、デシマル減衰時間(水中のレジオネラ・ニューモフィラが90%減少)のシミュレーションを示す。
図15図15は、温度の関数として、バイオフィルム中のレジオネラ・ニューモフィラの平均世代時間(細胞の数が2倍になる時間)のシミュレーションを示す。
図16図16は、温度の関数として、バイオフィルム中のデシマル減衰時間(レジオネラ・ニューモフィラが90%減少)の変化のシミュレーションを示す。
図17図17は、水分配システムにおけるレジオネラ・ニューモフィラの全体の成長関数のシミュレーションを示す。
図18図18は、仮想ツインシステムを通した制御方法を説明する。
図19図19は、予測される細菌濃度と、時間の関数として、それに対する熱衝撃消毒および蛇口サイクルの影響を示す。
【0028】
図面は概要を示すにすぎず、および非限定的である。図面において、いくつかの要素の大きさは強調されていることもあるし、および説明の目的によっては正しい大きさで描かれていないこともある。
クレーム中のいずれの参照記号も、範囲を限定するために解釈されるべきではない。
異なった図面において、同じ参照記号は、同じまたは類似の要素を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
例示的実施形態の詳細な説明
本発明は特定の態様に関して、およびある図面を参照して記載されるが、しかし発明はこれに限定されることなく、しかしクレームにのみ限定される。寸法および相対的な寸法は、本発明を実施するための実際の縮小とは対応しない。
さらに、クレーム中の記載において、第1の、第2の、およびその他同種類の用語は、同様の要素間を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、等級付け、またはいずれの他の方法における、順序を記載するためではない。このように使用されている用語は適当な環境のもとで交換可能であり、およびここで記載されている発明の態様は、ここで記載または説明されている以外の連鎖において実施することが可能であることは理解されるべきである。
【0030】
さらに、記載およびクレームの中で、上、下およびその他同種類の用語は、説明の目的のための使用されており、必ずしも相対的な位置を記載するためではない。このように使用されている用語は適当な環境のもとで交換可能であり、およびここで記載されている発明の態様は、ここで記載あるいは説明されている以外の適応において実施することも可能であることは理解されるべきである。
【0031】
クレームで使用されている用語「を含む」は、後に列挙された意味に制限されて解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを除外してはいないことは注意されるべきである。それはそれゆえ、述べられた特徴、整数、ステップまたは構成要素が、参照されたように存在することを明示しているとして解釈されるべきであり、しかしそれはそれの1つ以上の特徴、整数、ステップまたは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。それゆえ、表現「方法AとBを含むデバイス」は、構成要素AとBだけからなるデバイスに限定されるべきではない。それは本発明に関しては、デバイスのただ適切な構成要素がAとBであることを意味している。
【0032】
本明細書全体を通して、「1つの態様」または「態様」との記載は、本発明の少なくとも1つの態様に包含されている態様に関連して記載された、特定の特徴、構造、または特色を意味している。それゆえ、本明細書を通して様々な場所での「1つの態様において」または「態様において」という言い回しの出現は、必ずしもすべて同じ態様を参照しているわけではなく、しかしそうであることもある。さらに、特定の特徴、構造、または特色は、1つ以上の態様において本開示から、当業者に明白ないずれか適した方法で組み合わせられてもよい。
【0033】
同様に、発明の代表的実施形態の記載において、発明の様々な特徴は、1つ以上の様々な独創的な様相の、開示と理解を助けることを合理化する目的のために、時には1つだけの態様、図、またはそれの説明、に一緒にまとめられることが理解されるべきである。この開示の方法はしかしながら、クレームされた発明が、各クレームに明確に列挙される技術事項よりもより多くの技術事項を要するとの意図を反映しているように解釈されるべきではない。むしろ、以下のクレームが反映するように、特許性のある態様は、上述の開示された一つの態様のすべての技術事項よりも少ない態様に存する。それゆえ、詳細な説明に続くクレームは、ここでは、この詳細な記載の中に明確に組み込まれており、各クレームは本発明の別々の態様として独立したものである。
【0034】
さらに、ここで記載された態様のいくつかは、他の態様に包含されたいくつかの態様を含み、しかしそれ以外は含まない一方で、当業者によって理解されるであろう通り、別々の態様の特徴の組み合わせは、発明の範囲の中にあり、別々の態様を形成することを意味している。例えば、下記のクレームにおいて、クレームされた態様のいずれかは、いずれかの組み合わせにおいても使用することができる。
【0035】
ここで提供された記載において、多数の特定の詳細が明らかにされる。しかしながら、発明の態様は、これらの特定の詳細なしに実践されることもあることは理解される。この他に、周知の方法、構造、および手法は、本説明の理解を妨げることがないようにするために、詳細には記述されていない。
【0036】
流体システム、とりわけ、加熱された水を使用するものは、細菌の汚染を発現させ、およびシステムの外部と交換される水を介して、例えば蛇口を介してまたはエアサスペンションにおける水粒子を介して、広がり得る病気のもとになりがちである。普通、これらのシステムは使用にあたり、流体が外部と接触する、またはし得る、1つまたはそれ以上の使用する点、または1つまたはそれ以上の部分、例えば、加熱の冷却器、換気および空調(HVAC)システム、または家庭用温水システム(DHW)の蛇口を包含しており、流体システムのかかる部分は、以後流体出口、または流体交換部分と称する。これらの部分は、もしシステム中の流体が汚染された場合、感染の焦点である。
【0037】
本発明はかかる流体分配システムにおける、例えば温度制御などの細菌活動を制御する方法およびデバイスに関する。本発明の態様において、参照が細菌活動に対して行われる場合、参照は細菌の数の繁殖状態に対して行われる。細菌の活動は繁殖している時に高く、細菌が休眠あるいは死んでいる時に低いかまたは抑制されている。例えば殺菌により例えば細菌を殺すことにより、流体の浄化することで、低い細菌活動を得ることは通常望ましい。
【0038】
流体分配システムの流体における細菌活動は、システムの設計、ならびに流体輸送管の熱伝導度、菅の寸法、分岐、よどんでいる領域、流体の温度等、などの、それの幾何学的、物理的パラメータを考慮に入れてモデル化し得る。該モデルに基づき、ヒーター上で熱的調節を設定し、それにより、例えば細菌を殺し、および有害でない閾値未満に細菌の活動を維持するために、時間上の予め決められた瞬間において、流体を加熱することは可能である。しかしながら、高温に加熱することだけに基づいた熱的調節は、エネルギー消費が大きいという観点で最適ではない。加熱は増加させるべきだが、それは普通、エネルギ―の無駄をもたらす。
【0039】
エネルギー効率と浄化との間の均衡を保ちながら、有効な熱的殺菌手段を得て、さらにシミュレーションモデルは開発され得る。モデルは流体(例えば水)中での細菌の成長に関する、しかし流体システム中に存在するバイオフィルム中での細菌の成長にも関する等式を、包含する。
【0040】
バイオフィルムは、流体分配システムの少なくともある部分の表面へ付着した菌の細胞の集合体を包含する。水があるところ、例えば貯蔵タンク、パイプ、膨張容器、加湿器、および冷却塔など、どこでもバイオフィルムの成長は生じ得る。家庭用温水パイプにおいては、バイオフィルムが栄えるための、湿っぽくおよび暖かい環境を提供するので、とても簡単にバイオフィルムが成長し得る。バイオフィルムは一緒に仲間となり、水和された細胞外アニオン高分子マトリックスを形成し、およびそれは主に、菌体外多糖、生物学的巨大分子(タンパク質、脂質、DNA、RNA)、細胞の溶解産物、栄養物、代謝物、および無機化合物、および粒子、等を含む。細菌細胞のミクロコロニーは、マトリックス中で包まれていてもよく、および、栄養物や酸素等の輸送ができるように、間質性の水路によって互いから分離されていてもよい。バイオフィルムの集団は、動的であり、および仲間の微生物の生存と成長を提供する。レジオネラ・ニューモフィラ菌などの細菌は、バイオフィルムへ、またはそこに生きており、成熟しおよびそれから流体中で散逸する他の有機体、へ付着することができる。
【0041】
細菌の流体中での活動は、バイオフィルム中での活動と非常に異なっており、というのも、バイオフィルム中のアメーバの中では、細菌、例えばレジオネラは、より高い温度に耐え得るように、成長するからである。それゆえ、両方の環境を考慮に入れたシミュレーションは、流体分配システム中での細菌の実際のふるまい、活動、および広がり、を綿密に反映している。これらの改善されたモデルはシステム自体、例えば、それの幾何学的形状、流体ダクトの幾何学的形状、貯水槽の存在および大きさ、等を包含し、これを考慮にいれており、従って、そこでのバイオフィルム分布の正確なモデルを使用することができる。本発明により、熱処理が、変動しやすい条件下においてさえ有効で、エネルギの無駄も少ないことを確実にするような、特定の流体分配システムに適した熱処理を選択することができるようになる。
【0042】
これらのモデルは、バイオフィルムと流体との間(流体からバイオフィルム、およびその逆)の細菌の輸送を表す数学的関係、ならびにバイオフィルムの成長、およびバイオフィルムの粗度、酸素および栄養物へのアクセス等、などの他のパラメータを包含してもよい。さらなる関係は、流れの条件、乱流、流体のpH、熱伝導度、および分配システムの損失(例えばパイプの)等を包含してもよい。
【0043】
さらに、1つまたはそれ以上の関連するパラメータの測定、例えば温度、単位面積あたり単位時間あたりの流体の体積、圧力、使用されているチューブのサイズ、流れの水位、等の測定が流体およびまたはシステムについて実施されてもよく、それはモデルにおいて考慮されてもよい。
【0044】
本発明は、例えば、家庭用温水(DHW)システム、または暖房/冷房または、空気換気システムに適用することができ、それゆえ、よりエネルギー効率が高く、および健康的な建物を得る。本発明はまた、医療機関および病院にも、および冷却塔のような産業環境にも応用され得る。
【0045】
第1の様相において、流体システムの少なくとも1つの殺菌ユニットを調節るように適応された制御ユニットについて記載される。典型的な流体システムは、殺菌ユニット、予め決められた温度に加熱された暖かい流体を産生するための産生ユニット、流体を産生ユニットと少なくとも1つの流体出口との間で輸送するための少なくとも1つのパイプ、少なくとも1つの流体出口、および流体システム中の第1の場所で、時間の関数として流体の第1の温度およびまたは第1の流速を感知するための少なくとも1つのセンサーを含む。殺菌ユニットは、1つまたはそれ以上の原理、例えば、熱的殺菌、電気化学的殺菌、物理的殺菌、または化学的殺菌に基づいていてもよい。本発明のいくつかの態様において殺菌ユニットは、熱的殺菌に基づく場合、暖かい流体を産生するための産生ユニットのヒーターと同一であってもよく、または別であってもよい。殺菌は細菌の減少に関するものであり、例えばある閾値を下回れば、すべての細菌が除去されることを意味する必要はない、ということは特筆されるべきである。少なくとも1つのセンサーは流体システムの産生ユニットに提供され得る。好ましくは、少なくとも1つのセンサーは、流体を産生ユニットから少なくとも1つの流体出口まで輸送する少なくとも1つのパイプの一部、好ましくは産生ユニットに近い少なくとも1つのパイプの位置に提供される。循環的なシステムにおいては、少なくとも1つのセンサーは、少なくとも1つのパイプ、例えば流体を少なくとも1つの流体出口から産生ユニットまで輸送するための循環パイプ、の一部に提供されてよい。制御ユニットは、流体システム全体の複数の場所における温度およびまたは流速を時間の関数として得るように適応され、得られたシステム中の流体の第1の温度およびまたは第1の流速に基づいて、時間の関数として流体システム中の流体における細菌の成長をモデリングするようにプログラムされている、モジュールを包含している。モジュールはまた、モデリングに基づいて、時間に対して少なくとも1つの流体出口での細菌濃度を予測するようにプログラムされている。制御ユニットはさらに、殺菌ユニットを駆動するように適応されている。制御ユニットはまた、モジュールによって得られた、時間に対する該予測された細菌濃度に基づいて、流体システム中、好ましくは流体システム中の少なくとも1つの流体出口、で細菌濃度が予め決められた値に到達する時間的な瞬間を決定するように適応されており、およびその返答として、これらの時間的な瞬間に、殺菌ユニットを、流体システム中の、好ましくは流体システム中の少なくとも1つの流体出口における、細菌濃度を減少させるように駆動するように適応されている。第2の温度および第2の流速を得るための複数の場所は、好ましくは流体システム全体の少なくとも2つの流体システム部分の場所、例えば、流体システム中の少なくとも1つのパイプおよび少なくとも1つの流体出口、を含む。好ましくは、温度およびまたは流速は、流体システムのすべての部分について知られており、さらに好ましくは、流体システム全体のすべての場所について知られている。複数の場所での温度と流速を得ることは、例えば流体システム全体に、温度およびまたは流速を感知するための複数のセンシングユニットを提供して測定することでなされ得る。あるいは、またはそれに加えて、複数の場所での温度と流速を得ることは、流体システムの異なった部分の熱水力学的なモデルを利用して、第1の温度および第1の流速に基づいて温度と流速を予測することでなされ得る。熱水力学的モデルは、例えばパイプの直径、パイプの長さ、パイプの流れプロファイル、、、などのN個の入力パラメータを要するモデルであることもある。好ましくは、N個の入力パラメータの数は、例えばパイプの長さおよび直径を、流体システムの部屋の数に基づいて導き出すなどにより、以前の入力パラメータを考慮に入れて減少させ得る。
【0046】
図を用いて、本発明の実施の態様、制御装置の標準的および任意選択的な特徴を、代表的な態様について限定されることなしにさらに記述する。
【0047】
図1に示す制御ユニット100は、例えば制御装置とも表記され得る。制御ユニット100は、モデリングモジュール101、および殺菌ユニットを制御するための駆動システム、および産生ユニットを包含するシステムとして表される。それはそれゆえ、産生ユニットを時間にわたり制御するのに適している。モジュール101は流体システム中での流体中の細菌成長のモデルを包含しており、および有利な態様においてはまた、流体システム200中に存在するバイオフィルム中の細菌成長のモデルを包含している。モデルはメモリ-モジュール111に実装され得る。
【0048】
少なくともいくつかの態様に従うと、制御ユニットは、それを下回ると細菌は休眠状態になる温度と、それを上回ると細菌が殺され始める温度との間の範囲にある温度、例えばレジオネラに対しては20℃と45℃との間の温度のような、例えば25℃と35℃との間にある温度において、細菌の成長および細菌の量を、考慮にいれ、および積極的にモデルを使用するように適応されていてもよい。この中間的な温度範囲を使用することにより、システム中の流体中およびバイオフィルム中の両方における細菌成長の正確なモデリングが可能であり、例えば時間の関数としての正確なモデリングができるようになる。これは、モデリング情報を使用して、システム中で動的な方法で細菌濃度を制御するための、正確な情報を提供する。
【0049】
制御ユニット100はいくつかの態様において、ヒーター201(DHWシステムにおいては、随意にボイラー202の一部であってよい)の活性化および非活性化を制御または調節するための手段102を包含してもよい。例えばモジュールは、制御信号を送り、殺菌ユニット例えばヒーター201を活性化/非活性化するための出力103を包含してもよい。例えばいくつかの態様において、手段102は、モジュールからの信号を受信し、この信号に従ってヒーターを調節するように、モジュールの出力103に接続された温度調節器を包含してもよい。図2は、調節器が制御ユニット100ではなく、ボイラーに包含されている代案を示す。ヒーター201に電力を供給するための電源のような、さらなる特徴は、当業者にとって既知であるように、包含されてもよい。例えば、本発明の制御ユニットは電源投入により、例えば、順に、パルスで、または加熱期間でヒーターの活性化を制御する。いくつかの態様において、活性化/非活性化を制御する手段102は、スイッチである。上で示した通り、他の態様においては、非活性化ユニットはヒーターとは異なっていてもよく、例えば、細菌を減少させるための化学的、電気化学的、または物理的原理に基づいていてよい。
【0050】
熱的処理の活性化または非活性化は、モジュール101、例えばモジュールのメモリーユニット110、で使用されている動的細菌モデルに基づいて実施される。モジュールは、モデルに基づいて細菌のふるまいのシミュレーションを得るための、プロセッシング手段111を包含してもよい。例えば、プロセッシングユニットまたはプロセッサは、モジュールに包含されたモデルに従い、流体分配システムにおける細菌の活動および成長のシミュレーションを実施するための、ハードウェアおよびまたはソフトウェアを包含してもよい。シミュレーションの結果は、流体中に許容できない量の細菌という結果となり得、それで、モデルによりシミュレートされた生物学的活動を低減するために、該活性化は行われ得る。シミュレーションは連続的に行われても間欠的に行われてもよく、およびまたは、細菌の量の時間に対する動的な成長を考慮にいれてもよい。それゆえ、シミュレーションの結果はまた、時間により動的に変化し、および例えば、もし細菌の成長が予め決められた閾値を超えないことをシミュレーションが示す場合は、加熱は行わないこともありうる。これはエネルギーの節約をできるようにする。例えばモデルは、バイオフィルムの細菌の飽和を考慮にいれた、バイオフィルム中での細菌の動的成長のモデルを包含してもよい。熱的処理の活性化は、成長に依存し動的に適合され得る。バイオフィルム自体の成長および拡大もまた考慮されてもよく、従って、熱的処理の必要性(それゆえ、流体中の殺菌温度を得るためにヒーターを活性化する必要性)は、バイオフィルムの成長および拡大が流体分配システム全体を考慮にいれられるので、新しく設置された分配システムにおいては、1か月または1年の使用の後の同じシステムにおけるものよりも、低いこともある。
【0051】
いくつかの態様においては、システムの外部との接触点、例えばシステムの流体交換位置203での流体(温水分配システムにおける蛇口を通って存在する水、または空調システムにおける冷却塔に存在する蒸気、のような)において、細菌濃度が予め決められた閾値を下回るよう制御するために、流体の加熱の制御をするように適応されている。付け加えて、DHWシステムにおける水温制御のための本発明の態様においては、制御ユニットは、いくつかの態様において、十分な快適さを与える蛇口での温度(例えば、37℃と45℃の間、例えば45℃)となる設定温度を提供するように適合されてもよい。さらなる流体交換位置205は、水の外的源であってもよい。水の取り入れ口は、水供給ネットワーク、川、等からであり得る。水の取り入れ口(例えば、水取り入れ口のための交換部分205の調節)は、制御ユニットのモデルにおいて考慮にいれられてよい。
【0052】
いくつかの態様において、制御ユニットは1つ以上のヒーターを制御するように適合されている。より多くのヒーターは、例えば流体分配システムの加熱部品のように、分配システムに包含されていてもよい。例えば、閉じたパイプの端部、貯水層、およびよどみがちなシステムの一般的な部分などの、バイオフィルムおよび細菌を発達させる、高い傾向のあるシステムの部分は、余分のヒーターを包含してもよい。1つ以上のヒーターはまた、太陽熱収集器、ヒートポンプ等、などのより多くの生産システムと組み合わされていてもよい。
【0053】
いくつかの態様において、少なくとも1つのヒーターは、加熱または冷却システム、熱交換機、およびまたは冷却塔のヒーターを包含している。例えば、ヒーターは冷却塔、またはドリップトレイ、およびまたは空調システムの加湿器に包含されていてよい。これらのケースにおいて、上記の出口およびまたは凝縮水(冷却塔などの)の出口は、モデルにおいては、流体交換部分203として包含されていてよい。
【0054】
モジュール101は、好ましくはプログラム可能なモジュールであり、それは特定の流体分配システムのためにプログラムされ得、およびまたは、好都合に分配システムの変化(例えば修復、代用等による)を考慮に入れて再プログラムされ得る。とりわけ、メモリーユニット110は細菌成長のモデルと一緒にロードされ得る。それは、ROM、EPROM、EEPROM、、、などの再プログラム可能なメモリーであってよい。メモリーユニット110は、再プログラム可能性のためのインターフェースまたはデータ入力を含んでもよい。
【0055】
図2において、感知手段(センサーのような)221、222、223のための、1つ以上の入力121、122、123を包含する代表的な制御ユニット120(例えば制御ユニットのモジュール)が示されている。モジュール124における細菌成長のモデルは、流体分配システム210からのかかる入力を考慮にいれてもよい。感知手段221、222、223は、
ボイラーまたは水タンクの底およびまたは上の部分、1つまたはそれ以上のパイプ、1つまたはそれ以上の流体交換部分、提供されている実際の温度を検出するためのヒーターを取り囲む領域等、などの流体分配システムの異なった部分における、温度、流速等などの様々なパラメータを感知してもよい。流体が交換される体積(システムに入る、およびまたはシステムを出る)もまた、測定され、およびモデルにおいて考慮され得る。
【0056】
この場合においては、先に述べたように、調節器213は外部ボイラー212の一部であり、および制御ユニット120は該調節器を制御する(例えば出力103経由で)ように適合されていてよい。
【0057】
センシング手段221、222、223(例えば温度センサー、流速センサー等)からのフィードバックを包含することは、リアルタイムでの、動的なシステムの変化、システムの温度およびそれの変化、流体の使用(例えば換気システムまたは暖房システムの出口の活性化等)に合わせて、モデルおよびシミュレーションを調節することにより、シミュレーションを改善し得る。さらにモジュールは、浄化のための熱処理を開始するために流体分配システムを制御するための情報を、制御ユニットが用いることができるように、プログラム可能性インターフェースまたはそこからの情報にアクセスできる入力を包含してもよい。例えば、プログラム可能なインターフェースは、加熱システム、HVACシステムまたは同種類のものの活性化をプログラムするのに使用されてもよい。制御ユニットは、かかる情報へのアクセスを持ち、および細菌の濃度が予め決められた閾値を下回っているように、前もってヒーターを活性化させてもよい。あるいは、または付け加えて、モジュールは予測的なアルゴリズムを包含し、例えば行動学習に基づいて、システム使用の行動トレンドを抽出し、および熱処理を適当な時、例えば予測された水を使用するイベントの近くの時に、提供するために、かかる情報を使用してもよい。行動トレンドは、温水使用の典型的な時間的な瞬間、温水が使用される典型的な量、等を包含してもよい。あるいは、またはこれに付け加えて、制御ユニットは、予測アルゴリズムの結果により、または予め決められた時間期間の後に、1つ以上の流体出口、例えば1つ以上の蛇口を活性化してもよい。1つ以上の流体出口を活性化することは、流体を、流体出口および流体出口パイプを包含する流体システムを通して送ることを含んでもよい。蛇口ポイントの例においては、1つ以上の蛇口ポイントを活性化することは、水/流体をそこに予め決められた時間期間の間、例えば1分間送ることにより、出口パイプおよび蛇口ポイントを洗い流すことを含んでも良い。
【0058】
制御ユニットのモジュールは、これらのシステムのいずれにも適合し得る細菌活動および成長のモデルを包含している。それゆえ、モジュールがプログラム可能であり得、それでシミュレーションモデルがモジュールにロードされ得ることは利点である。実際、本発明の制御ユニットは、制御ユニットのモジュールをプログラムし、システムの制御ユニットにインストールし、例えば制御ユニットをシステムのヒーター(例えば、DHWのボイラー、またはヒーター、または加熱システムの凝縮器)に接続することにより、既存の流体分配システムにも包含され得る。
【0059】
第1の様相の態様に従う制御ユニットは、概して、細菌が成長し得る流体を扱ういかなるシステムにも包含され得る。例えば、DHW、水産養殖システム、産業システム、浄化および水処理プラント、および直接消費を意図している水輸送のための他のシステム、などの水分配システムにおいて包含され得る。それは、加熱および冷却システム、例えば、空調システム、換気システム、冷房システム、暖房システム、および温度およびまたは湿度制御のための他のいずれかのシステムのような、流体分配システムに包含され得る。しかしながら、これらのシステムは本発明を制限するものではなく、および他のシステムに包含され得る。
【0060】
さらに、本発明は、本発明の第1の様相の制御ユニット100、120を含む流体分配システム200を包含していてもよい。流体分配システムは、言及したシステム(水分配システム、温度およびまたは湿度制御システム、等)のいずれかであってよく、ヒーターなどの流体温度を制御する手段を含む。
【0061】
図3は、ヒーター231の活性化および非活性化を制御するための制御ユニット130を含む、流体分配システム230の代表的態様を示す。ヒーターは、ヒートポンプなどのヒーター要素300に包含されていてもよい。制御ユニット130は、ヒーター要素300を制御するための信号を送信し得る出力133を包含してもよい。温水は貯水タンク内に貯められ、それは制御ユニットで使用されるモデルの略図232として示されている。他の態様においては、例えば図2のボイラー212の場合は、調節器とヒーターはタンクに一体化されている。4つの蛇口233が、外部に水を排出し得る流体交換部分として示されている。パイプは、システム中でモデル化され得る構成要素である234の略図として示されている。さらに、拡張胴205ならびにボイラーに入る冷水235が示されている。モデルの要素については、下の「パイプモデルのカスタマイズ化」および、「ボイラーモデルのカスタマイズ化」の項で議論されるだろう。
【0062】
ポンプ236、237などの他の要素は、適する場合には加えられ、モデルの考慮に入れられてよい。制御ユニット130は、水を1点、この場合はヒートポンプ、からヒーター要素300に導入し、ヒーター231および232で加熱され得るためのポンプ236、を制御する出力134を包含してもよい。冷水と温水を蛇口で混合するための温度調節バルブも、また包含されていてよい。
【0063】
制御ユニット100は、DHWシステムの、統合された熱水力学的および生物学的モデルを(例えば連続的に)バックグラウンドで走らせ得るモジュールを包含している。モデルは、流体分配システム中の異なった部分における、水中およびバイオフィルム中の両方での、細菌(例えばL.ニューモフィラ)の成長のための生物学的な別々のモデルを包含している。これらは、(例として)モデル化されたパイプ部分234として、およびモデル化されたタンク232として表されている。蛇口の温度(熱水力学モデル)、および蛇口でのL.ニューモフィラ濃度(生物学的モデル)の両方が予測される。設定点温度は、エネルギー消費を低減し、随意に蛇口温度が十分に心地よいことを確保しつつ、一方で蛇口でのL.ニューモフィラ細菌の濃度を最大値、例えば1000CFU/Lの値に制限するように設定される。
【0064】
もし少なくとも1つの蛇口でのシミュレートされた濃度が、予め決められた値、例えば1000CFU/Lを超える場合、制御ユニットは、すべての蛇口での濃度がある値、例えば25CFU/Lを下回る、ことがシミュレートされるまで、ヒーターの設定点をより高い温度(例えば温度を45℃から70℃に)に変更し、随意にポンプを開始(またはもしポンプがすでにONであれば、マスフローの持続時間を延長する)するようにプログラムされていてもよい。
【0065】
制御ユニットのモジュールは、さらにタイマー、予め決められた時間期間を超えた時に、流体システム(200、210、230)中の少なくとも1つの流体出口で、細菌濃度を低減させるために殺菌ユニット(201)を駆動するためにプログラムされたタイマー、を含んでいてよい。
【0066】
随意の温度センサー241、242は、例えばタンクの入り口に置かれてよく、およびまたは、分配システムの別の点にあってもよい。流れセンサー243もまた、例えば蛇口233のような分配システムの別の部分に置かれ得る。これらのセンサーは、制御ユニット130に測定信号を送信してよく、および図2を参照して説明されたように、モデルに考慮に入れられる。
【0067】
モデルに基づいた制御は、実際のシステムの仮想ツインシミュレーションモデルの創造を通して実施されてもよい。システム中の温度と流速は、リアルタイムでモニターされ、このデータは、蛇口での細菌(例えばレジオネラ・ニューモフィラ)の量を予測するために、システムのダイナミクス(熱水力学的および生物学的)を考慮に入れているシミュレーションモデルの中で使用される。これについては図18を参照して解説されるだろう。
【0068】
細菌成長のモデルは、ハードウェア中およびまたはソフトウェア中、例えばモジュールのデータベース中、またはライブラリー中に保存されてよい。プロセッシングユニットは、プロセスをシミュレートするために、および、システム中の流体の温度を制御するための方法の、少なくともいくつかのステップを実行するために、包含されていてもよい。以下においては、モデルとシミュレーションプロセスの詳細が、細菌活動を抑制するために流体の温度を制御する、レジオネラ属にとりわけ適切な(しかし他の場合にも適切である)、かような方法の実施として、議論されるだろう。
【0069】
本発明はまた、上で記載したような制御器を含む、循環または分配システムに関する。
【0070】
本発明は、第2の様相において、該流体中での細菌活動を抑制するために、流体分配システム中での流体の温度を制御するという方法を包含している。方法の概要は図4に示されている。本発明の態様はこれに限定されるものではないが、例えば図18に示されているシステムにおいて実行されてもよい。それは、流体分配システム自体および、その要素、そこの流体およびそこの細菌フィルム、を考慮にいれた、流体およびバイオフィルム中での細菌成長のモデルに基づいた、細菌の分布の計算401を包含する。方法は、例えば分配システム中のヒーター402を制御することで、流体分配システム中の流体を加熱することもまた包含する。加熱は、流体中の細菌活動を制御するために、動的なモデリングの結果に基づいて実施される。例えば、ヒーターの活性化は、細菌成長のシミュレーション結果が予め決められた閾値を超えるレベルである場合に提供されてもよい。レベルは例えば、流体中での細菌成長をシミュレーション403することで、バイオフィルム中での成長をシミュレーションすることで、および動的モデルを得ることでシミュレーションされる。随意的に、バイオフィルム中での成長のシミュレーション406も、バイオフィルムと水との間の細菌交換のシミュレーション407と同様に、行い得る。ヒーターの活性化は、細菌を殺すこと、例えば殺菌により、細菌の活動(例えば成長)が抑制されるような、可変の期間の間、ならびに順序および温度において、行ってよい。それゆえ、細菌の制御および除去は効果的な方法で行われ、この時、動的シミュレーションの結果は、時間上の固定の時間間隔で周期的にするのではなく、必要性を明らかにしている。シミュレーションモデルは、制御ユニットが、必要とされる熱的消毒手段を提供できるようにする一方で、エネルギー効率と健康増進の平衡を保つ。
【0071】
いくつかの態様において、シミュレーションは、予測が実施され得るように、システムの使用者のふるまいを考慮にいれてよい。方法は、使用者のふるまいを考慮にいれ、予測された結果に従い、制御システムに適合されてよい。
【0072】
生物学的成長モデルは、水中での細菌(例えばレジオネラ・ニューモフィラ)の成長と輸送、バイオフィルム中での細菌成長、および随意的にバイオフィルムの成長、およびバイオフィルムと水との間の細菌輸送、に関する、いくつかの部分式を包含してもよい。
【0073】
次の代表的なモデルは、DHWシステム中でのレジオネラ・ニューモフィラの成長について示している、しかし当業者はそれを、例えばHVACシステムを包含する他のいずれかの流体分配システム、および他のいずれかの適した細菌または感染性の有機体に対して適合させ得る。
【0074】
水中での細菌成長の代表的モデル
L.ニューモフィラの水中での増殖は、異なった家庭用の温水構成要素、例えばパイプやボイラー、における、可変的なソースタームをもった汚染物質としてモデル化される。先の研究に基づくと、L.ニューモフィラの増殖に効果を持つ主なパラメータは、モデルに等式として選択され、付け加えられている。これは、レジオネラの成長と、水温と、および流れの条件との間の依存関係の等式を包含している。
【0075】
L.ニューモフィラの増殖は、栄養物があるかどうか(Voelker et al., 2015)と同様、水温および流速に依存する。20℃を下回る温度においては、細菌は休眠状態となるが、しかし何か月も生存できる。細菌は、20℃と45℃の間の温度で最も成長し、35℃~41℃付近が最適である。45℃を超えると、殺菌が開始し、およびより高い温度はやがて有機体を殺すだろう(Brundrett, 1992)。これは、YeeおよびWadowsky (1982)の非殺菌の水道水についての実験によるデータに基づいた、L.ニューモフィラの、水道水中で温度の関数としての平均世代時間(細胞の数が2倍になる時間)の見積もりを示している図5で見ることができ、および図6においては、実験室での実験(Sanden et al., 1989, Schulze-Roebbecke et al., 1987, Stout et al., 1986, Dennis et al., 1984)によるデータに基づいた、温度に対するデシマル減衰時間(L.ニューモフィラにおける90%の減少に達するまでの時間)の変化を示しており、これはフィールドでのデータ(Groothuis et al., 1985)とも一致している。図5は、L.ニューモフィラ細胞の数が水中で2倍になる時間は、41℃では半日未満であるが、しかし70℃では、90%の水中のL,ニューモフィラは1分未満で殺される(図6で示される)ことを示す。いずれの温度においても死亡率は、存在する生きた細胞の数に比例する(Reddish, 1957; Sykes, 1965; Allwood and Russell, 1970)(等式(1))。
【数1】
【0076】
バイオフィルムの影響
L.ニューモフィラの危険でない自然な濃度がビルに入ったとしても、もし人工的な環境が細菌成長に最適であるならば、それは危険な濃度に達し得る。もし細菌が水中にのみ現れるならば、それは水の使用中に、成長する時間がなくて、システム外に流され得る。しかしながら、DHWシステムの構成要素は水だけを含有するのではなく、表面へ付着された単細胞ほどに薄い(<5μm)ことも、および1000μmくらい厚い(Murga et al., 1995)こともある、バイオフィルム層もある。水があるところはどこでも、例えば、貯水タンク、加湿器、および冷却塔などで、バイオフィルムは起こり得る。バイオフィルムは家庭用温水パイプ中で、それがバイオフィルムが栄えるための、湿気が多く暖かい環境を提供することから、とても容易に成長し得、95%のレジオネラは表面に関係している(Flemming, 2002)。バイオフィルムは細菌のために保護層を形成し、これは細菌に、バイオフィルム中で成長し増殖させる。数人の著者は、バイオフィルム中に生きているL.ニューモフィラ細菌は、環境のストレスおよび水の浄化処理に対してより抵抗力があることを報告しており(Cervero-Arago, 2015; Fields et al., 1984; Sanderson et al., 1997; Sutherland, 2001; Borella et al., 2004; Russell, 2003; Van Der Kooij et al., 2005)、このことは例えば、L.ニューモフィラがバイオフィルム中にある時、より高い温度に対してもより抵抗力があることを意味している。第2に、L.ニューモフィラは、原生動物内で感染させ、複製を作ることができる。このことは、これらの細菌は、自由に生きるアメーバの細胞内寄生生物として、生き残り得ることを意味している(Farhat et al. 2012, Altschul et al. 1990, Kilvington et al. 1990, Rowbotham 1980, Thomas et al. 2004, Wery et al. 2008)。自由に生きるアメーバは真核微生物であり、飲み水のシステム中でよくみられる。L.ニューモフィラと、家庭用温水システムにおけるバイオフィルム中のアメーバとの間で作られたこの連携は、増加した健康リスクを示している。本発明のモデルは、水またはバイオフィルム中に生きる細菌のみならず、水またはバイオフィルム中で生きる感染性のアメーバもまた考慮にいれてよい。
【0077】
Cervero -Aragoらは(2015)、制御された実験室の条件下で、L.ニューモフィラの負荷および2つのアメーバ負荷に対する温度の効果について試験した。処理の有効性におけるL.ニューモフィラと、Acanthamoeba種のアメーバおよびAcanthamoeba Castellaniとの間の関係の影響を決定するために、細菌と連携したアメーバの非活性モデルが構築され、および自由に生きた細菌状態に対して得られたモデルと比較された。熱処理は4つの実験的温度:50℃、55℃、60℃、および70℃で、可変の暴露時間で試験され、実験室の制御された条件下でL.ニューモフィラに適用された。(表1)は結果およびR2値であり、回帰モデルの頑健性を示している(Cervero-Arago et al., 2015から適用)。
【0078】
環境上Acanthamoeba Castellani CCAP 1534/2および Acanthamoeba species 155と連携し、異なった温度に暴露された後のL.ニューモフィラserogroup 1 の、4-log減少のための計算された時間。
【表1】

L.ニューモフィラの耕作性が4-log減少に到達するまでに要する時間は、serogroup 1の無菌L.ニューモフィラに対しては、50℃で46分、55℃で8分、60℃で4分、および70℃で0.61分である(表1)。L.ニューモフィラがアメーバと連携されると、Acanthamoeba spp.であっても、またはA. Castellaniであっても、これらの時間は50℃で664~825分、55℃で51~45分、60℃で5分、70℃で0.50~0.45分の範囲に、夫々あった。自由形態との比較における熱処理の有効性は、減少していた。50℃において、細菌の耐性は14倍と18倍との間に増加していたし、および55℃においては、5倍と6倍との間に増加していた。それゆえ、Acanthamoeba種およびAcanthamoeba Castellaniは、60℃を下回る温度ではL.ニューモフィラ細菌に対して、保護的な役割を演じるようだが、しかしより高い温度においては、それの保護は劇的に減少する(Cervero-Arago et al., 2015)。
【0079】
図7は、既存の研究およびモデル(Cervero-Arago et al., 2015)に基づいて決定された、水中(実線501)、およびバイオフィルム中(点線502)における、L.ニューモフィラ細菌の温度依存の成長関数を示しており、無菌のL.ニューモフィラserogroup 1、L.ニューモフィラがAcanthamoeba種またはAcanthamoeba Castellani(バイオフィルム中)のどちらかと連携した時、4-log減少に到達するために要する時間を示している。水中での成長の結果は、(表1)において示されている、L,ニューモフィラの水中(無菌)での結果と同等である。レジオネラ-アメーバ連携の、最も否定的なデータ(最も遅い飢餓)は点線でプロットされている。最先端においては、典型的には、細菌が休眠または死滅するこれらの温度範囲に関しての情報のみを使用するが、本発明においては、中間的な温度領域における使用もまたなされる。本発明は、20℃と40℃(またはそれを上回る)との間の活動および成長から得られた情報を使用するが、モデルは、20℃未満または40℃を上回るの活動の情報を包含し得る。
【0080】
流体分配システム中での成長モデル
これらのモデルは、全流体分配システムモデルに拡張され得る。次の議論は、細菌モデル成長の、パイプ中のおよび後ではタンク中の水のレジオネラ成長への拡張に関する。このために、等式が熱水力学モデルに付け加えられる必要がある。水中でのL.ニューモフィラ成長を推測する質量収支の等式が、実施されているモデリング(等式2、等式3)において典型的には考慮に入れられ得る、パイプ構成要素と結び付けられる必要がある。
【数2】
【0081】
成長係数yは水中での細菌の成長と死を予測する時定数[s]である。等式4において、yはパイプ構成要素における水温に依存しており、yはもともとはy1とy2に分割されていた(添付1)。y1は水中での平均世代時間(細胞の数が2倍になる時間)であり、y2は水中でのデシマル減衰時間(レジオネラが90%減少し、10%が残る時間)である。
【0082】
パイプ中の水中での細菌成長の分割モデルは、等式4Aおよび4Bに示されている。
【数3】
【0083】
成長係数y1およびy2はレジオネラ・ニューモフィラ細菌の水中での成長(y1)または死(y2)を予測する時定数[s]である。等式4Aにおけるy1および等式4Bにおけるy2はパイプ構成要素における水の温度Tに依存している。y1は水中での平均世代時間(細胞の数が2倍になる時間)であり、y2は水中でのデシマル減衰時間(レジオネラが90%減少し、10%が残る時間)である。y1は図5の、y2は図6の数学的翻訳である。数式y1およびy2は水中でのレジオネラ・ニューモフィラについて作られている(等式5A)。下に得られた等式は、特定の実験に基づいて決定されており、およびこれらが最適な近似によって得られたものであることは特筆すべきである。当業者にとって、同様のふるまいを表現している等式もまた、例えばより低精度の結果が要されるような時に、使用され得るということは明白であろう。
【0084】
【数4】
水中におけるL.ニューモフィラに対して作られたy非分離の等式は(等式5):
【数5】
パイプ中のバイオフィルムもまたモデルに考慮に入れられる。
【0085】
パイプの中のバイオフィルム中レジオネラ成長をモデル化するために、水中の成長と同様な方法で、等式を熱水力学的モデルに付け加える必要がある。質量収支の等式に従い、バイオフィルム中のレジオネラ・ニューモフィラの成長を予測する等式は、既存のパイプ構成要素と結び付けられる必要がある(等式6、等式7)。
【数6】
【0086】
成長係数yはバイオフィルム中のレジオネラ・ニューモフィラの成長または死を予測する関数である。等式8におけるyは、パイプ構成要素における水温Tに依存している。以前と同様に、パイプ中におけるバイオフィルム中のレジオネラ成長のモデルは、元々等式7A、7B、および7Cに分割されていた。
【数7】
【0087】
成長係数y3、y4、およびy5は、バイオフィルム中のレジオネラ・ニューモフィラの、成長(y3)または死(y4、y5)を予測するための関数である。等式7Aにおけるy3、等式7Bにおけるy4、および等式7Cにおけるy5は、パイプ構成要素における水の温度Tに依存している。y3はバイオフィルム中での平均世代時間(細胞の数が2倍になる時間)、y4はバイオフィルム中でのデシマル減衰時間(レジオネラが90%減少し、10%残る時間)、およびy5はバイオフィルム中での4-log減衰時間(レジオネラが99.99%減少し、0.01%残る時間)である。成長係数y5は、Cervero-Arago (2015)の結果に基づいて、バイオフィルム中でのレジオネラ・ニューモフィラの成長のために付け加えられている。等式8Aは、バイオフィルム中でのレジオネラ・ニューモフィラのためのy3、y4、およびy5の等式である。下で与えられる等式は、特定の実験に基づいて決定され、およびこれらは最適な近似によって得られているということは特筆されるべきである。当業者にとって、同様なふるまいを表現する等式もまた、例えばより低精度な結果が要される時、使用され得ることは明白であろう。
【0088】
【数8】
【0089】
システムは、栄養物と酸素が養い得る細菌だけを維持し得るから、濃度の安定はモデル中で実行しうる。栄養物を考慮にいれるために、パラメータKが質量収支の等式(Verhulst-Pearlの輸送式)に付け加えられる。この個体数成長の等式はシグモイド(S字型)であり、輸送能力Kと呼ばれ、食糧および酸素が養い得るL.ニューモフィラの最大濃度である上限に近づく。それゆえ、モデルとシミュレーションは、そこでの成長のための細菌の存在による非線形性を考慮にいれて、好都合に動的であり得る。さらに、不適切な初期化は、コントローラで使用されるべき予め決められた流体分配システムに適したパラメータKを選択することにより、モデル自体により修正され得る。具体的に言うと、Kよりも大きい濃度で始められた個体数は、唯一の安定平衡を表する、Kに到達するまで指数関数的に減少する(Panikov, 1995)(等式10)。
【0090】
【数9】
【0091】
成長の係数y5は、Cervero-Arago (2015)の結果に基づいて、バイオフィルム中のレジオネラ・ニューモフィラの成長のために付け加えられる。等式9は、レジオネラ・ニューモフィラのためのy3、y4、およびy5の等式である。
【数10】
【数11】
【0092】
DWHシステムは異なった構成要素(熱交換器、貯蔵タンク、膨張容器等)を包含しているが、システムの主な部分は配管からなる。異なった既存のパイプモデルが調査され、DHW中での細菌成長のシミュレーションのために等式で拡張され得る有益なモデルが選択される。適切なパイプモデルを適用することにより、シミュレーションのための適切なパイプが適用され得る。類似して、ボイラーもモデル化され得、シミュレーションに包含され得る。
【0093】
エネルギー性能のシミュレーションのための、ビルディングおよびシステム構成要素を含む適切なライブラリーは、使用され得る。かようなライブラリーの例は、IEAで開発されたEBC Annex 60、および標準的なソフトウェアの既存のパイプおよびボイラーモデル(例えば、Modelica (3.2.1) library、OpenIDEAS (0.3.0) libraryおよびintegrated Buildings (3.0.0) library)である。
【0094】
下で議論される例においては、Modelica Dymolaがレジオネラ成長およびシステムモデルをコンパイルするのに使用されている。Dymola(動的モデリングライブラリー)は、多様な種類の物理システムをモデル化するのに適している。それは、階層的なモデル構成をサポートしており、真に再利用可能な構成要素、接続子、および合成で因果関係のない接続、のライブラリーをサポートしている。モデルライブラリーは、多くの技術ドメインで入手可能である。Modelicaは、オブジェクト指向、および等式に基づいた、新しいモデリング方法論を使用する。等式からブロックダイアグラムへの手動の変換の、通常の必要性は、自動数式処理の使用により除去される。Modelicaの他の重要点は、大きくて複雑で複数工学的なモデルを取り扱うことができること、グラフィックなモデル構成により、より早くモデリング出来ること、より早いシミュレーション、およびシンボリックな前処理、使用者が定義したモデル構成要素に対してオープンであること、他のプログラムへのインターフェースがオープンであること、3Dアニメーションで見ることが可能、およびシミュレーションがリアルタイムで起こることである。Modelicaのライブラリーversion 3.2.2、 IDEAS 1.0.0 およびBuildings 4.0.0が使用される。
【0095】
いくつかの既存のパイプモデルは、DynamicPipe、StaticPipe、HeatedPipe、IsolatedPipe、Short Pipe (Modelica 3.2.1より)、EmbeddedPipe、InsulatedPipe、LosslessPipe、Pipe、Pipe_HeatPort、Pipe_Insulated (OpenIDEAS 0.3.0ライブラリーより)またはLosslessPipeおよびPipe (Buildings 3.0.0ライブラリーより)を包含する。
【0096】
細菌成長をパイプモデルにモデル化することは、異なったシステムのシミュレーションモデルの簡単なコンパイルを、例えば、異なったDHWの構成要素(細菌成長の等式を包含する)をシステムのモデルに、ドラッグ・アンド・ドロップで、出来るようにする。このことは、異なったシステムへの方法の適合性を向上させ、および制御ユニットのプログラム可能性と再プログラム可能性を向上させる。
【0097】
細菌成長のモデル化のためのパラメトリックな範疇のいくつかは、質量収支(等式11)、運動量収支(数式12)、およびエネルギー収支の等式(等式13)を包含する。質量の保存は、微分の連続の等式でモデル化され、一方運動量収支(ニュートンの運動の第2法則)は、非圧縮流体に関するナビエストークスの等式によってモデル化される。
【0098】
【数12】
ここで、
【数13】
は、パラメータ「微量物質」である。質量収支パラメータ「微量物質」は、既存のパイプ構成要素が、水に物質を加えることを可能にするような、ある流れの等式を含有しているかどうかを示唆している。レジオネラの添加は、このパラメータによって表される。
【0099】
【数14】
ここで、
【数15】
は重力を表する。
【数16】
は圧力の低下を表し、および残りの項は、層流/乱流、摩擦および物質の粗度を表する。運動量収支のパラメータ「重力」は、パイプがすべての方向(垂直/水平)において使用し得るか否かを定義している。重力を包含しないパイプモデルは、水平方向においてのみ使用され得る。「圧力低下」の包含は、細菌の成長に見返りで影響する、流体の流れに影響する。運動量収支のパラメータ「流れの状態(層流/乱流)」は、レジオネラの成長の、流れ依存性を表する。「摩擦」、および「物質の粗度」などの運動量収支のパラメータは、バイオフィルムおよびその組成物の影響を表し、およびレジオネラ細菌の成長モデルにおいて使用され得る。
【0100】
【数17】
エネルギー収支の等式は、源からの熱と、熱交換と、隔離と、およびモデルのためにパイプが分割され得る予め決められたセグメントの数(「nNodes」)との間の関係を示す。
【0101】
エネルギー収支のパラメータ(例えば「熱源」、「隔離」)は考慮に入れられることができ、モデルを、多くの流体分配システム配置に適合させるようにすることができる。「熱交換」は熱の環境との交換であり、それは水の温度に影響を与え、レジオネラ細菌の成長または飢餓に影響を及ぼす。
【0102】
運動量およびエネルギー収支のパラメータは、レジオネラがモデルに質量収支の状態で添加された時には不変のままであるが、しかしそれらが他のパラメータ(例えば粗度のような)に影響を及ぼすために、それらは包含されていてもよい。
【0103】
パイプの隔離、パイプのセグメントへの分割、および粗度を考慮にいれるモデル(バイオフィルムの形成および成長を考慮にいれるために)は、好都合に選ばれ得る(例えば、「パイプ」モデルをBuildings (3.0.0)のライブラリーから)。重力または圧力低下などの他のパラメータは、さらなる等式により付け加えられ得る。
【0104】
配管の他に、DHWシステムで最も重要な部品はボイラーである。ボイラーにおけるレジオネラの成長をモデル化するために、等式が熱水力学的モデルに付け加えられる必要がある。水中およびバイオフィルム中でのL.ニューモフィラの成長を予測する、パイプモデルにおけるのと同じ質量収支等式は、既存のボイラーの構成要素にカップリングさせられる必要がある。既存のシミュレーション環境およびライブラリーは、適切なパイプおよびボイラー構成要素を使用することで、細菌成長をモデル化するのに適用され得る。モデルを好適に適合させるさせることにより、それは、他の分配システム、バイオフィルム、および細菌の個体数、に適用され得る。
【0105】
他の既存のボイラーのモデルは、水中での細菌成長のシミュレーションのための等式を使い、拡張され得る。代表的なボイラーのモデルは、OpenTank、DrumBoiler (Modelica 3.2.1より)、Boiler、StorageTank、StorageTank_OneIntHX (OpenIDEAS 0.3.0より)、およびBoilerPolynomialおよびStratifiedEnhanceInternalHex (Buildings 3.0.0より)である。配管のためのパラメータと同じパラメータが考慮に入れられる。
【0106】
ボイラーの隔離、セグメントの分割、熱源、圧力低下、および層流等式、および微量物質の添加の可能性、を包含したモデルは好都合に選択され得る。例えば、「Stratified Enhanced Internal Hex」というボイラーのモデルは用いられ得る。
【0107】
熱交換器、膨張容器、硬水軟化装置のような、他の家庭用温水構成要素もまた、同様の方法でモデル化され得る。
【0108】
パイプモデルのカスタマイズ
Buildings (3.0.0)ライブラリーからのパイプモデルの修正の例を[図8]に見ることが出来る。パイプ800は、バイオフィルムを視覚的に表している平らな長方形801をその壁に包含しており、および黒い円802および矢印は、バイオフィルムと水803との間の細菌の交換を示している。
【0109】
図8は視覚的な添加を示している一方で、図9はダイアグラム表示900を、Buildings (3.0.0)ライブラリーからの維持されたパイプモデルの、熱力学的および生物学的な適合として示している。Buildings (3.0.0)ライブラリーにおける、すべての流体を含有する構成要素は、混合体積901を包含し、これは媒質、この用途においてはレジオネラと栄養物を含んだ水、を含有する流体体積であり、微量物質が質量収支等式に付け加えられていることを意味している。パイプモデル自体は流体接続子(ポート_a)を有しており、パイプ構成要素中の流体に、ある濃度のレジオネラおよび栄養物を添加するためには、同じ論理が後に続けられる。ある濃度のL.ニューモフィラを添加するためのポート902および、ある濃度の栄養物を添加するためのポート903は、パイプダイアグラム表示に付け加えられている。等式2~13はポート内に書かれている。
【0110】
ボイラーモデルのカスタマイズ
保持されたBuildings (3.0.0)のライブラリーによるStratifiedEnhancedInternalHexのモデルの改変は、ボイラー1000について図10に見られる。長方形1001はボイラー1000の壁でのバイオフィルムの付加を視覚的に表し、および黒い丸1002はボイラーにおけるバイオフィルムと水1003との間の細菌交換を表す。
図10が視覚的な付加を示す一方で、図11はカスタマイズされたボイラーモデルの図表表示を示し、図9と同様、Buildings (3.0.0)ライブラリーからのボイラーモデルの熱力学的および生物学的な適合を説明する。ある濃度のL.ニューモフィラを添加するポート1101、およびある濃度の栄養物を添加するポート1102が図表表示に付加されている。等式2~13はポートに書かれている。
【0111】
コンセプトの証明
水中およびバイオフィルム中におけるL.ニューモフィラ成長の等式を付加したパイプおよびボイラーのモデルは、今や異なったDHWシステム構成を作るのに使用し得る。代表的で簡単なシステム構成が図12に表される。図表1200は、1つのカスタマイズされたボイラー1100と、配管を表する1つのパイプ800をもつDHWシステムを示し、両方はモデルを包含している。それらはポンプ1201により繋がっている。
【0112】
図12のシステムをシミュレーションすることにより証明されるように、図13および図14での結果は、シミュレーションにより、水中でのL.ニューモフィラの図5および図6のカーブ、ならびに(表1)の結果に基づいたバイオフィルム中の同じ曲線、と類似の成長/飢餓カーブを達成することが可能であることを実証している。水温は、バイオフィルム中の温度と同一であると考慮される。
【0113】
水中における細菌の全体の成長曲線(図5における実線501)は、図17で示されているように、シミュレーションでもまた達成され得る。図5におけるY軸が任意単位であり、目盛りに影響を及ぼすことに注意すべきである。
【0114】
上では基本的なモデルにおける、レジオネラ・ニューモフィラの成長の等式のシミュレーションを説明する。この基本的なモデルは、必要な場合には、カスタマイズされたパイプおよびボイラーのモデルを、より複雑なDHWシステムのモデルにさらに実装することにより拡張され、およびシミュレーションの結果は、感染のリスクを増加させることなく、エネルギーを節約し得ることを示す。とりわけ、感染リスクを増加させることなく、および快適さの要求との妥協をすることなく、温度の必要条件を下げ、それゆえDHWのエネルギー要求を低減することが可能である。
【0115】
たとえば、動的なシミュレーションの結果に基づいて、バイオフィルムの発現、水の利用等を考慮に入れて、制御ユニットは、臨界的なL.ニューモフィラの濃度未満で居続け、およびシミュレーションが細菌の量は有害ではないと決定している場合に不必要なパルスを避けるために、可変の温度(例えば50~70℃、正確な温度はシミュレーションの結果により決定される)において、予め決められた、または可変の時間の間(例えば数分間の間、何分かはシミュレーションの結果により決定される)、可変の周期性(例えば数日おきに、この数字はシミュレーションの結果により決定される)で、熱衝撃をプログラムしてもよい。例えば、要求はレジオネラの濃度が1000CFU/L(コロニー形成単位1リットル当たり)未満であってもよく、の境界条件として与えられる。校正のための特定のケースのこれらのパラメータを決定するために第1のシミュレーションが必要であり、およびそしてシミュレーションは、周期的にまたは連続的に、または使用者の入力またはセンサー入力のような入力でトリガーされて、繰り返され得る。流体分配システムの、前の使用および、前の熱処理は、シミュレーションの考慮に入れられ得る。
【0116】
適合されたパイプモデルを、このケーススタディを構築するDHW再循環システムに実装する場合、シミュレーションの結果は、DHW産生温度を61~64℃(現在使用されている温度状態)から、衝撃消毒を加えて、49~51℃に下げることが可能であることを示している。例えば、この衝撃は12日ごとに70℃で3分間実施し得る。この方法は感染リスクを増加させることはなく、およびエネルギーの使用を34%低減させる。シミュレーションに従うと、この方法は、DHWのための全体の1次的なエネルギー消費を238000kWh/yearから157254kWh/yearに低減する。1次的なエネルギー消費とは、DHW産生のための全体エネルギー消費に、エネルギーを使用するデバイスの、1次的なエネルギーへの通常の変換因子(例えば、電力を使用する場合は2.5倍)を掛けたものと定義される。シミュレーションはまた、数か月後に、例えばバイオフィルムの発育または、センサーによって感知された使用または温度の変化に起因して、衝撃はより少ない日ごとに実施され得ることを示し得る。
【0117】
それゆえ、本発明は、温水システムにおける温水の温度を20℃と40℃との間に制御し、エネルギーの使用を低減し、一方で同時に、動的な方法で熱処理を適合させることにより、細菌の存在を低減させることができるようにする。
【0118】
これはHVACシステムにも適用され得、およびシミュレーションモデルは該システムに適合され得る。シミュレーションモデルはまた、設計段階において、レジオネラ・ニューモフィラの感染リスクを査定することもできるようにする。付け加えてシミュレーションは、エネルギーの要求を低減し、効果的な熱処理および温水循環式の制御を選択するのに役に立つ。付け加えて、これらの動的なモデル(随意的にセンサーからのフィードバックを包含する)のシミュレーションは、これらの熱処理を、システム中の変化やそれの使用に、動的に適合させることをできるようにする。
【0119】
方法はさらに、温度測定およびまたは流速測定を提供することおよび測定に動的に従いシミュレーションを適合させること、を含んでよい。例えば温度は、水タンク中で、ボイラー中で、または水輸送システム(例えばDHWシステム)中のパイプ中またはパイプに沿って、またはHVACシステムのドリップトレイ中で例えば、測定され得る。流れは、蛇口、分配ネットワークからの水入口、冷却塔出口等の、流体交換部分において測定され得る。
【0120】
方法はさらに、システムの使用の情報を包含して熱処理を実施することを含む。これは例えばシステムの、プログラムされスケジュール化された活性化(例えば、スケジュール化された加熱システムまたはHVACシステムの活性化)によって、プログラムにより直接提供され得る。例えば、家庭用温水システムのエネルギーの使用および水の使用は、熱衝撃を水使用イベント(例えば入浴などの)に可能な限り近づけた時間にすることでさらに最適化され得る。家庭用温水使用の予測的モデルが使用され得る。例えば、外因性入力を持った自己回帰型モデル(ARX-モデル)は、1日のまたは週ごとの温水使用パターンをリアルタイムで予測する目的でうまく適用され得る。これらは、出力の前の時間ステップを、モデルの入力として包含してよい。このアプローチは、1日より細かい使用などの、より高い周波数のデータをもったモデリングも改善し得る。
【0121】
図18は、実際のシステムの仮想ツインシミュレーションモデル1801を介した制御の例を示す。ポンプとボイラー(それはまた、タンクまたは貯水槽のモデルであってもよく、さらにヒーターを包含してもよい)のモデルのシミュレーションから、流体分配システムの特定の設計のために、仮想ツインシステムは、細菌(例えばレジオネラ・ニューモフィラ)の存在を予測する。これは境界を設定する。それに基づいて、流体を加熱するために費やされるエネルギーは最適化され得る。例えば、細菌の量が閾値に到達しない限りは、温度は快適な温度に低減され得る。そうして、分配される温度と予測されるエネルギーの結果は、ポンプとボイラーのモデルに包含され得る。システム中の温度および流速は、リアルタイムでモニターされ得る。データは、モデルの動的なシミュレーション中で、システムの力学(例えば、流動などの熱水力学の力学、および栄養物の存在などの生物学的力学)を考慮にいれて、流体交換部分(例えば蛇口)での細菌(L.ニューモフィラ)の量を予測するために使用され得る。データとシミュレーションの結果は、制御ユニットにより、細菌活動を制御する熱処理を設定するために使用され得る。
【0122】
図19は、蛇口の時間と熱衝撃に関して、端のパイプ(例えばシャワーへの最後のパイプ)における予測されたL.ニューモフィラ濃度と共に、3つのグラフを示す。上のグラフ1900は、熱衝撃の瞬間をピーク1901として示しており、ここで、水は70℃に短い期間設定されている。残りの時間は、水は60℃に保持されるのではなく、40℃に保持されており、それゆえ加熱のために、より少ないエネルギーの使用が必要とされる。中央のグラフ1910は、異なった3つの蛇口サイクルを示す:衝撃後直ぐに使用される第1のサイクル1911、衝撃後2日のちに使用される第2のサイクル1912(第1のサイクルとは異なる蛇口)、および衝撃後6日まで使用されないでいる第3のサイクル1913(最初の2つとは異なる蛇口)。下のグラフ1920は、第1のサイクル1911のための端のパイプにおける細菌濃度をもつ第1のライン1921、第2のサイクルのための濃度の第2のライン1922、および熱衝撃の6日後の第3のサイクル1913のための端のパイプにおける細菌濃度のための第3のライン1923を示す。3つのグラフについて時間軸は同じであり、1つのグラフを他と比較し得ることは特筆すべきである。衝撃の直後に、細菌濃度は予め決められた水準を下回り低減され、および成長を開始する。与えられた例において、熱衝撃に近い第1の濃度1921は、非常に低く、それから蛇口を通して細菌が除去されることに起因して再び下がり、およびそれからゆっくり成長し、第2のサイクル1922においては、衝撃の2日後に濃度は危険な値に到達する。水の使用は細菌の量を低減し、およびそれから、指数関数的な成長の振る舞いに起因して、成長は最初の濃度に依存するため、第1のケースよりもより速い割合で成長する。蛇口が6日間使用されないケースにおいては、濃度はK水準(環境収容力)で飽和し、および水の使用は、蛇口が2日後に使用されたかのような程度の細菌の量の低減をせず、また蛇口のサイクル後に、他の2つのケースよりもより早く成長する。それゆえ、端のパイプにおける細菌(この特定の例においては、レジオネラ・ニューモフィラ)の濃度は、蛇口の時期に強く関係することがわかり得る。
【0123】
蛇口が熱衝撃の直後に使用される場合、それぞれの蛇口を洗い流す必要はないことは特筆される。このようにして水およびエネルギーは節約され得、例えば、水使用の予測的なモデルおよび適応的なパターンに従って、熱衝撃の時期を決めることで節約され得る。付け加えて、やけどの予防を考慮にいれ得る。
【0124】
1つの様相において、本発明は、プロセッサに実装された場合、上で記載された方法の異なるステップを実施する、コンピュータブログラム製品にも関する。換言すれば、本発明はまた、例えば上の方法のために、上で記載された方法のステップを実施するソフトウェアプログラムに関する。
【0125】
まだ他の様相において、本発明はまた、既存の分配システムを適合させるための方法に関する。かかる方法は例えば、既存の分配システムに第1の様相で記載したコントローラを設置し、およびコントローラを既存の分配システムのパラメータに調整することを包含してもよい。かかる調整は、典型的には校正のステップで実施されてよく、および既存の分配システムの状態の正確なモデル化を得るように、モデル化は既存の分配システムのパラメータを考慮にいれる、という事実に帰着する。本発明はそれゆえ、次の例に従い、既存の流体分配システムに実装され得る。流体分配システムは例えば適合され得、第1の様相の態様に従う制御ユニット(例えばコントローラ)は、加熱手段またはヒーターを包含して、流体分配システムに設置されてもよく、およびまたは、ヒーターはまた制御ユニットと組み合わせて使用されるために設置されてよい。それはDHWシステムの中に設置されていてもよく、それゆえ制御ユニットおよびヒーター(例えば、DHWシステムのボイラー中のヒーター)の適合を包含し、それで制御ユニットの出力信号に従い、加熱を実施する。それはまた、冷却/加熱ユニット、熱交換器、およびまたはHVACシステムに設置されてもよい。汚染され得る流体(例えば、凝縮からの水、ドリップトレイ等)との接触がある部分において、さらなるヒーターが包含され得る。
【0126】
制御ユニットがプログラム可能であるため、そのモジュールは、制御ユニットが設置される必要がある特定の流体分配システムに対して、流体分配システム中での細菌成長の必要なモデルと、一緒にロードされてもよい。また、それと異なる細菌または属のために、他のまたは異なるモデルが使用され得る。他の細菌に対しては同様なモデルが適用できるのに、例で示したモデルはレジオネラに対してであることは特筆されるべきである。一般的なふるまいは典型的には同様であるが、実際の濃度(y値)は、異なる細菌のタイプにより異なることもある。
【0127】
とりわけ、本発明はそれゆえ、流体分配システムのパラメータに基づいて、制御ユニットのモジュールを校正する方法をまた包含しており、細菌成長の熱水力学的および生物学的なモデルを包含する。このことは、制御ユニットをプログラムすること、または再プログラムすることの一部としてなされ得る。例えば、これらのパラメータは、下の表で与えられるパラメータを包含してもよい。パラメータは、レジオネラの最初の濃度、バイオフィルムの体積、粗度、セグメントの数、物質輸送係数、栄養物、バイオフィルム中でのレジオネラの成長等式、および流体中でのレジオネラの成長等式である。
【表2】
【0128】
シミュレーションのためのモデルを適合させ、動的なシミュレーションを実施し、必要な時に熱処理を適合させる、この最適化されたアプローチは、流体システムにおいて、より低いエネルギー消費で、エネルギーおよび水の無駄を避ける、効果的な細菌制御をもたらす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19