(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】椎弓用スクリュおよび椎弓スペーサキット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/86 20060101AFI20230414BHJP
A61B 17/70 20060101ALI20230414BHJP
A61F 2/44 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61B17/86
A61B17/70
A61F2/44
(21)【出願番号】P 2020570356
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2019032216
(87)【国際公開番号】W WO2020161944
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019020336
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050912
【氏名又は名称】オリンパステルモバイオマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】福原 知彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 宏一
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0106157(US,A1)
【文献】特表2012-515038(JP,A)
【文献】特表平08-505549(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168106(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0198291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/86
A61B 17/70
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山を有し、長手軸に沿って延び、基端側から先端側に向かって先細になるテーパ状のねじ部と、
該ねじ部の前記基端側に位置するヘッド部と、
前記ねじ部の前記先端側に位置し、前記長手軸に沿って延び、前記長手軸に直交する径方向の最も外側に、円筒状の外周面を有するシャフト部と、
を備え、
前記シャフト部の前記外周面の直径が、前記ねじ部の最も先端側の谷の直径よりも大きい、椎弓用スクリュ。
【請求項2】
ねじ山を有し、長手軸に沿って延び、基端側から先端側に向かって先細になるテーパ状のねじ部と、
該ねじ部の前記基端側に位置するヘッド部と、
前記ねじ部の前記先端側に位置し、前記長手軸に沿って延び、前記長手軸に直交する径方向の最も外側に、円筒状の外周面を有するシャフト部と、
を備え、
最も先端側の前記ねじ山と前記シャフト部の基端との間の前記ねじ部の外周面が、前記シャフト部の外周面よりも前記長手軸側にオフセットしている、椎弓用スクリュ。
【請求項3】
少なくとも前記ねじ部の先端部の表面を被覆する生体適合性物質の被膜を備える、請求項1
または請求項
2に記載の椎弓用スクリュ。
【請求項4】
前記シャフト部の先端部が、基端側から先端側に向かって先細になり、前記シャフト部の先端面が凸曲面である、請求項1から請求項
3のいずれかに記載の椎弓用スクリュ。
【請求項5】
切断された椎弓の切断端部間に配置される椎弓スペーサと、
前記切断端部にねじ込まれる請求項1から請求項
4のいずれかに記載の椎弓用スクリュと、を備え、
前記椎弓用スクリュの前記ヘッド部が、球状であり、
前記椎弓スペーサが、前記ヘッド部と係合可能である、椎弓スペーサキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎弓用スクリュおよび椎弓スペーサキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、整形外科用のスクリュが知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-512093号公報
【文献】特許第4358726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
頚椎脊椎症性脊髄症や、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、椎間板ヘルニア等の治療法として、椎弓形成術が知られている。椎弓形成術は、棘突起を切除し、椎弓板を切断し、椎弓板の切断面間にスペーサを挿入する方法である。椎弓板の切断面間に配置されたスペーサによって、脊柱管の直径を拡大することができる。
【0005】
切断面間へのスペーサの挿入に先立ち、スペーサを椎弓板に取り付けるためのスクリュが椎弓板にねじ込まれる。すなわち、椎弓板の切断面間が開大され、椎弓板に下穴が形成され、下穴内に切断面側からスクリュがねじ込まれる。このとき、術者は、体内の椎弓板の切断面を患者の背側から、すなわち切断面に略平行な方向または斜め方向から見る。また、椎弓板の切断面上に血液等が付着していることもある。さらに、切断された椎弓板の切断端部は、椎弓根のみで支持されているためグラグラする。このように、術者にとって切断面の下穴の視認性が悪く、さらに切断端部の位置が安定しないため、切断面の下穴に対してスクリュの位置および角度を正確に合わせ下穴内に真っすぐにスクリュを挿入することが難しい。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、椎弓形成術において椎弓の下穴内への挿入性および直進性を向上することができる椎弓用スクリュおよびこれを備える椎弓スペーサキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ねじ山を有し、長手軸に沿って延び、基端側から先端側に向かって先細になるテーパ状のねじ部と、該ねじ部の前記基端側に位置するヘッド部と、前記ねじ部の前記先端側に位置し、前記長手軸に沿って延び、前記長手軸に直交する径方向の最も外側に、略円筒状の外周面を有するシャフト部と、を備える椎弓用スクリュである。
【0008】
本発明の他の態様は、切断された椎弓の切断端部間に配置される椎弓スペーサと、前記切断端部にねじ込まれる上記椎弓用スクリュと、を備え、前記椎弓用スクリュの前記ヘッド部が、略球状であり、前記椎弓スペーサが、前記ヘッド部と係合可能である、椎弓スペーサキットである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、椎弓形成術において椎弓の下穴内へのスクリュの挿入性および直進性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る椎弓スペーサキットの使用方法を説明する図であり、椎弓板の切断端部に椎弓用スクリュを挿入した状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る椎弓スペーサキットの使用方法を説明する図であり、
図1の椎弓用スクリュに椎弓スペーサを取り付けた状態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る椎弓用スクリュの側面図である。
【
図4】
図3の椎弓用スクリュの使用方法を説明する図であり、シャフト部を椎弓板の下穴内に挿入した状態を示す図である。
【
図5】
図3の椎弓用スクリュの使用方法を説明する図であり、フランジ部が切断面に突き当たるまでねじ部を椎弓板の下穴内にねじ込んだ状態を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る椎弓スペーサの斜視図である。
【
図9】
図2の椎弓用スクリュの変形例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る椎弓用スクリュ1およびこれを備える椎弓スペーサキットについて図面を参照して説明する。
本実施形態に係る椎弓スペーサキットは、
図1および
図2に示されるように、椎弓形成術に使用されるものである。椎弓スペーサキットは、2本の椎弓用スクリュ1(
図3参照。)と、椎弓スペーサ10(
図7および
図8参照。)と、を備える。
【0012】
椎弓形成術において、
図1に示されるように、椎弓の棘突起が切除され、椎弓板Bが2つの切断端部C1,C2に切断され、切断端部C1,C2の各々に椎弓用スクリュ1がねじ込まれる。椎弓スペーサ10は、
図2に示されるように、切断端部C1,C2間に挿入され、椎弓用スクリュ1のヘッド部3と係合することによって切断端部C1,C2に取り付けられる。椎弓用スクリュ1および椎弓スペーサ10は、患者の椎弓板Bに留置され、椎弓板Bとの骨癒合によって椎弓板Bに固定される。
【0013】
椎弓用スクリュ1(以下、単に「スクリュ1」という。)は、
図3に示されるように、基端と先端とを結ぶ長手軸Aを有する。また、スクリュ1は、長手軸Aに沿って延びるねじ部2と、ねじ部2の基端側に位置するヘッド部3と、ねじ部2の先端側に位置し長手軸Aに沿って延びるシャフト部4と、を備える。スクリュ1は、
図4および
図5に示されるように、切断端部C1,C2を貫通する下穴D内に自身でねじ立てしながらねじ込まれる。
図4および
図5において、付号Eは、海綿骨を示し、符号Fは、皮質骨を示す。
【0014】
スクリュ1は、チタン合金(例えば、64チタン(Ti-6AL-4V))から形成されている。スクリュ1の材料は、高い強度および生体適合性を有する他の材料であってもよい。例えば、スクリュ1の主材料は、SUS316L(JIS規格記号)のようなステンレス鋼または純チタンなどの金属材料であってもよく、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のような高分子材料であってもよい。
【0015】
ねじ部2は、ねじ山2aを有する雄ねじであり、基端側から先端側に向かって先細になるテーパ状である。具体的には、ねじ部2の外径および谷2bの径は、基端側から先端側に向かって次第に小さくなっている。ねじ部2の外径は、ねじ山2aの頂に接する仮想的な円錐の直径である。ねじ部2の谷2bの径は、ねじ部2の谷底に接する仮想的な円錐の直径である。
【0016】
ヘッド部3は、円筒状の首部5および円板状のフランジ部6を隔ててねじ部2の基端に固定されている。ヘッド部3は、略球状であり、首部5の直径よりも大きな直径を有する。フランジ部6は、首部5とねじ部2との間に配置され、ねじ部2の最大外径よりも大きな直径を有する。
図5に示されるように、ねじ部2は、フランジ部6の先端側の面が切断端部C1,C2の切断面Gに突き当たるまで、切断端部C1,C2にねじ込まれる。
【0017】
ねじ部2は、フランジ部6が切断端部C1,C2の切断面Gに突き当たるまでねじ部2が下穴D内に挿入された状態で皮質骨Fに到達する長さLtを有する。皮質骨Fの厚さは最大で約3mmであり、切断端部C1,C2における海綿骨Eの厚さは、皮質骨Fと同程度である。また、ねじ部2は、骨E,Fの積層方向に対して斜めに形成された下穴D内に挿入されることもある。このような事情を考慮して、ねじ部2の長さLtは、3mm以上であることが好ましい。
【0018】
シャフト部4は、ねじ部2の先端に固定されている。シャフト部4は、円柱状であり、長手軸Aに直交する径方向の最も外側に長手軸Aと同軸の円筒状の外周面4aを有する。すなわち、シャフト部4は、ねじ山のような径方向外方に突出する凸部を有さず、円筒面に沿う滑らかな外形状を有する。外周面4aは、一定の直径φsを有する。直径φsは、例えば、1.2mm以上3.5mm以下である。直径φsは、ねじ部2の最も先端側の谷2bの径よりも大きく、ねじ部2の最も先端側のねじ山2aの外径よりも小さい。また、下穴Dの直径は、外周面4aの直径φsと略等しい。したがって、シャフト部4は、下穴Dを変形させることなく下穴D内を通り、シャフト部4に続いてねじ部2が、ねじ山2aによってねじ立てしながら下穴D内にねじ込まれる。
【0019】
シャフト部4は、下穴D内においてスクリュ1を下穴Dの長手方向に沿って案内するガイドとして機能する。ガイドとしての機能を高めるために、シャフト部4の長手軸Aに沿う方向の長さLsは、直径φsの1倍以上であることが好ましく、直径φsの1.5倍以上であることがより好ましい。シャフト部4の過剰な長さは、挿入性および直進性の向上に寄与しない。したがって、長さLsは、直径φsの10倍以下であることが好ましい。
【0020】
下穴D内へのシャフト部4の挿入性を向上するために、シャフト部4の先端部4bは、
図3に示されるように、基端側から先端側に向かって先細であり、シャフト部4の先端面は、R面取りによって凸曲面に形成されていることが好ましい。先端部4bがこのような形状を有することによって、シャフト部4による下穴Dの変形をより確実に防ぐことができる。
【0021】
ねじ部2は、最も先端側のねじ山2aとシャフト部4の基端との間に、シャフト部4の基端の外周面4aよりも長手軸A側にオフセットする外周面2cを有する。このような外周面2cが最先端のねじ山2aの先端側に存在することによって、下穴Dの内面の各位置へのねじ部2のねじ立ての開始時および初期段階に必要なトルクが小さくて済む。これにより、切断端部C1,C2、特に硬質の皮質骨Fにかかる負荷を低減し、皮質骨Fを保護することができる。また、シャフト部4の外周面4aよりも凹む外周面2cと下穴Dの内面との間の空間に新生骨が形成されることによって、椎弓板Bに対するスクリュ1の長手軸Aに沿う方向の固定力を高めることができる。
【0022】
シャフト部4の長さLsは、ねじ部2の長さLtよりも短い。シャフト部4の長さLsとねじ部2の長さLtとの比(Ls:Lt)は、1:1.4~1:2.5であることが好ましい。長さLsと長さLtとの比が上記範囲内であることによって、下穴Dからシャフト部4が過剰に突出することを防止しつつ、ガイドとしてのシャフト部4の機能を担保することができる。
なお、
図5において、シャフト部4の一部が下穴Dから突出しているが、シャフト部4の全体が下穴Dから突出するように、またはシャフト部4の全体が下穴D内に配置されるように、ねじ部2およびシャフト部4の各々の長さが設計されていてもよい。
【0023】
スクリュ1は、
図6に示されるように、少なくともねじ部2の先端部(
図3において破線の矩形内の部分)の表面を被覆する生体適合性物質の被膜7を備えることが好ましい。生体適合性物質は、骨伝導性を有する物質であり、例えば、酸化チタンである。ねじ部2の先端部の表面を覆う被膜7によって、ねじ部2の先端部の皮質骨Fとの骨癒合を促進することができる。スクリュ1の骨癒合をより促進するために、被膜7は、ねじ部2の先端部以外の部分の表面にも設けられていてもよい。例えば、被膜7は、ねじ部2の全体の表面を被覆していてもよく、スクリュ1の全体の表面を被覆していてもよい。
【0024】
椎弓スペーサ10は、
図7に示されるように、柱状の本体部11を備えている。
図7に示される本体部11は、長手方向の両側の端面が長手方向に対して互いに逆方向に傾斜し、台形状の側面を有する四角柱状である。本体部11の形状は、これに限定されるものではなく、他の形状であってもよい。例えば、本体部11は、互いに平行な端面を有する直方体状であってもよく、円柱状であってもよい。
【0025】
本体部11の材料は、スクリュ1の材料と同様に、高い強度と生体適合性を有するものであれば任意に選択することができる。例えば、本体部11の主材料は、SUS316L(JIS規格記号)のようなステンレス鋼、純チタンまたはチタン合金などの金属材料であってもよく、PEEKのような高分子材料であってもよい。
【0026】
本体部11の内部には、
図8に示されるように、ヘッド部3の直径よりもわずかに大きな直径を有しヘッド部3を収容可能な2つの略球状の収容穴12と、各収容穴12に対して設けられ収容穴12内にヘッド部3が収容されたスクリュ1の首部5が通る導入穴13とが形成されている。2つの収容穴12は、本体部11の長手方向に間隔をあけて設けられている。
【0027】
導入穴13は、収容穴12の内部と本体部11の外部とを連通する略円柱状の穴である。導入穴13の一端は、収容穴12に開口し、導入穴13の他端は、本体部11の端面および側面11aに開口している。側面11aは、椎弓形成術において脊柱管側(腹側)に配置される腹側面である。収容穴12に接続されている導入穴13の一端の開口部13aは、首部5の直径よりも大きくヘッド部3の直径よりも小さい口径を有している。
【0028】
本体部11には、2つの収容穴12および2つの導入穴13を通り本体部11を長手方向に交差する方向に2つの把持片11A,11Bに分割する溝14が形成されている。各収容穴12および各導入穴13は、溝14によって略2等分されている。2つの把持片11A,11Bは、本体部11の背側面(腹側面11aと対向する側面)11bのバネ部15によって相互に連結されている。把持片11A,11Bがバネ部15を中心に相互に揺動することによって、把持片11A,11Bの腹側面11a側が開閉する。バネ部15は、弾性を有する材料から形成され、一対の把持片11A,11Bを閉じる方向に付勢する。これにより、一対の把持片11A,11Bは、クリップ式に開閉する。
【0029】
一対の把持片11A,11Bが開いた状態において、開口部13aの口径は、ヘッド部3の直径よりも大きな寸法まで拡大する。
一方、一対の把持片11A,11Bが閉じた状態において、開口部13aの口径は、ヘッド部3の直径よりも小さい。したがって、収容穴12内のヘッド部3が、長手軸Aに沿う方向および長手軸Aに交差する方向に本体部11と係合し、収容穴12内のヘッド部3が椎弓スペーサ10から抜けないようになっている。
【0030】
次に、本実施形態に係る椎弓スペーサキットの作用について、棘突起を縦割りする棘突起縦割法による椎弓形成術を例に挙げて説明する。なお、棘突起縦割法ではなく、左右一方の椎弓板Bを切断する片開き式の椎弓形成術に椎弓スペーサキットを使用してもよい。
椎弓形成術において、棘突起の端部を切除した後に、
図1に示されるように、棘突起および椎弓板Bを縦割りする。
【0031】
次に、椎弓板Bの切断端部C1,C2にそれぞれ切断面G側からスクリュ1を挿入する。具体的には、各切断端部C1,C2に、ドリルのような器具を使用して、切断面Gに開口する下穴Dを形成する。次に、
図4に示されるように、シャフト部4を下穴D内に切断面G側から挿入する。次に、
図5に示されるように、フランジ部6が切断面Gに突き当たるまでねじ部2を下穴D内にねじ込む。切断面Gには海綿骨Eが露出しているので、ねじ部2は、海綿骨Eから皮質骨Fへねじ込まれる。
【0032】
次に、一対の把持片11A,11Bを開き、ヘッド部3が収容穴12内に挿入されるように、一対の把持片11A,11Bを2本のスクリュ1にヘッド部3側から被せる。次に、把持片11A,11Bを閉じ、把持片11A,11B間にヘッド部3を把持する。これにより、
図2に示されるように、椎弓板Bの切断端部C1,C2の間に2本のスクリュ1を介して椎弓スペーサ10を取り付け、椎弓スペーサ10によって脊柱管の直径を拡大した状態に維持することができる。
スクリュ1および椎弓スペーサ10は、椎弓板Bに留置される。下穴D内において、スクリュ1の周囲に新生骨が形成され、スクリュ1が周囲の海綿骨Eおよび皮質骨Fと骨癒合し、スクリュ1が骨E,Fに固定される。
【0033】
このように、本実施形態によれば、下穴D内へのねじ部2のねじ込みに先立ち、スクリュ1の先端部のシャフト部4が下穴D内に挿入される。ねじ立てしながら下穴D内に挿入されるねじ部2とは異なり、滑らかな外周面4aを有する円柱状のシャフト部4を下穴Dの長手方向に沿って下穴D内に挿入することは容易である。したがって、切断面Gの下穴Dを視認し難かったり切断端部C1,C2の位置が安定しなかったりする状況においても、術者は、スクリュ1の先端部であるシャフト部4を下穴D内に容易に挿入することができる。すなわち、下穴D内へのスクリュ1の挿入性を向上することができる。また、シャフト部4の先端部4bが先細になっていることによって、スクリュ1の挿入性をさらに向上することができる。
【0034】
また、下穴D内へのシャフト部4の挿入後にねじ部2が下穴D内にねじ込まれる。つまり、ねじ部2の海綿骨Eへのねじ込みの開始時点では、シャフト部4が既に下穴D内に沿って配置されている。そして、下穴D内を真っすぐに進むシャフト部4によって、ねじ部2が下穴D内を真っすぐに案内される。これにより、下穴D内でのスクリュ1の直進性を向上することができる。
また、シャフト部4は、径方向の最も外側に滑らかな外周面4aを有するため、シャフト部4は、下穴Dを広げたり下穴Dの内面に溝を形成したりすることなく、下穴D内を進む。すなわち、シャフト部4がねじ部2の骨E,Fとの締結力に影響を与えることはない。
【0035】
また、皮質骨Fは硬質であるのに対し、スポンジ状の海綿骨Eは柔らかい。したがって、外径が一定であるねじ部の場合、皮質骨Fに対しては高い固定力を得られるが、海綿骨Eに対しては高い固定力を得ることが難しい。本実施形態によれば、ねじ部2は、基端側から先端側に向かって先細になるテーパねじであるため、ねじ部2は、下穴D内を進むにつれて、よりきつく海綿骨Eにねじ込まれる。したがって、海綿骨Eに対するねじ部2の固定力を向上し、下穴D内へのねじ部2のねじ込み直後においても、海綿骨Eおよび皮質骨Fの両方に対してねじ部2の高い固定力を得ることができる。
【0036】
上記実施形態において、シャフト部4が、
図9に示されるように、外周面4aに開口する凹部4cを有してもよい。下穴D内において凹部4c内に新生骨が形成されることによって、椎弓板Bに対するスクリュ1の長手軸Aに沿う方向の骨癒合後の固定力を、より高めることができる。
凹部4cは、長手軸A回りの周方向に延びていてもよく、螺旋状であってもよい。凹部4cが螺旋状である場合には、長手軸Aに沿う方向の固定力をより効果的に高めることができる。
【0037】
上記実施形態において、シャフト部4の直径φsが一定であることとしたが、シャフト部4は、ガイドとしての機能を損なわない限りにおいて、先端に向かって先細になっていてもよい。
また、シャフト部4の先端面の形状は、凸曲面以外の形状であってもよい。例えば、シャフト部4の先端面は、
図9に示されるように、長手軸Aに対して交差する平坦面であってもよい。
【0038】
上記実施形態において、ヘッド部3が、略球状であることとしたが、これに代えて、他の形状であってもよい。例えば、ヘッド部3は、多面体状であってもよく、錐台状であってもよい。
ヘッド部3の形状に応じて、収容穴12の形状を変更してもよい。例えば、収容穴12の内面形状が、多面体形状であってもよく、ヘッド部3の形状に対して相補的な形状であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 椎弓用スクリュ
2 ねじ部
2a ねじ山
2b 谷
2c 外周面
3 ヘッド部
4 シャフト部
4a 外周面
4b 先端部
4c 凹部
5 首部
6 フランジ部
7 被膜
10 椎弓スペーサ
A 長手軸
B 椎弓板
C1,C2 切断端部
E 海綿骨
F 皮質骨
H 下穴