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▶ ラジウス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】癌を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20230414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P35/00
A61P35/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021073337
(22)【出願日】2021-04-23
(62)【分割の表示】P 2018509731の分割
【原出願日】2016-04-29
(65)【公開番号】P2021105064
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】62/154,699
(32)【優先日】2015-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/155,451
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/158,469
(32)【優先日】2015-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/192,940
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/192,944
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/252,085
(32)【優先日】2015-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/252,916
(32)【優先日】2015-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/265,696
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/265,658
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/265,774
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/265,663
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/323,572
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/323,576
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517378016
【氏名又は名称】ラジウス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー,フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】ハタスリー,ガリー
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6926065(JP,B2)
【文献】FDA Accepts IND Application for Radius Health's Investigational Drug RAD1901 Being Developed for Pot,2014年12月19日,https://ir.radiuspharm.com/static-files/a1f4834f-ce20-4045-892b-da963b826cb2
【文献】Breast Cancer Research,2014年,Vol. 16, No. 494
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物耐性エストロゲン受容体アルファ陽性脳転移を有する対象において腫瘍成長を阻害するためのまたは腫瘍退縮を生じさせるための組成物であって、治療上有効量の、構造:
【化1】

を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を前記エストロゲン受容体アルファが、Y537S、Y537N、Y537C、D538GおよびS463Pからなる群から選択される変異を有する、
組成物
【請求項2】
前記乳癌脳転移が、転移性であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記変異が、Y537Sであることを特徴とする、請求項に記載の組成物
【請求項4】
投与後の前記腫瘍中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度の、血漿中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度に対する比(T/P)が、少なくとも約15であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
前記対象が、骨粗鬆症または骨粗鬆症の高いリスクを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項6】
前記対象が、閉経前の女性であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項7】
前記対象が、SERM及び/またはAIによるこれまでの治療後に、再発または進行している閉経後の女性であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項8】
前記治療上有効量が、1日に約150~約1,500mgであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記その塩が、RAD1901二塩酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項10】
前記腫瘍が、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬物に耐性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項11】
前記抗エストロゲンが、タモキシフェンまたはフルベストラントであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物
【請求項12】
前記アロマターゼ阻害剤が、アロマシンであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物
【請求項13】
前記治療上有効量が、150mg~2,000mgであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項14】
前記治療上有効量が、200mg、400mg、または500mgであることを特徴とする、請求項13に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年4月29日に出願された米国仮特許出願第62/154,699号、2015年4月30日に出願された米国仮特許出願第62/155,451号、2015年11月6日に出願された米国仮特許出願第62/252,085号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,696号、2015年5月7日に出願された米国仮特許出願第62/158,469号、2015年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/252,916号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,774号、2015年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/192,940号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,658号、2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/323,572号、2015年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/192,944号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,663号、2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/323,576号の利益を主張するものであり、これらのすべては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、癌を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乳癌は、3つの受容体:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、及びヒト上皮成長因子受容体-2(Her2)の発現に基づいて3つのサブタイプに分類される。ERの過剰発現は、多くの乳癌患者において見出される。ER陽性(ER+)の乳癌は、すべての乳癌の3分の2を含む。エストロゲン及びERは、例えば、乳癌以外の卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、及び子宮内膜癌と関連している。
【0004】
ERは、エストロゲンによって活性化し、DNAに結合する細胞核へ移行し、それにより、様々な遺伝子の活性を調節することができる。例えば、非特許文献1、及び非特許文献2を参照されたい。
【0005】
エストロゲン産生を阻害する薬剤、例えば、アロマターゼ阻害剤(AI、例えば、レトロゾール、アナストロゾール、及びアロマシン)、またはER活性を直接遮断するもの、例えば、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM、例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、レボルメロキシフェン、及びEM-652(SCH 57068))ならびに選択的エストロゲン受容体ディグレーダー(SERD、例えば、フルベストラント、TAS-108(SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810(ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927、ICI182782、及びAZD9496)は、すでに使用されているか、またはER陽性乳癌の治療において開発されている。
【0006】
SERM及びAIはまた、ER陽性乳癌のための第1選択のアジュバント全身療法としてよく使用されている。タモキシフェンは、閉経前及び閉経後の女性において早期及び進行性の両方のER陽性乳癌のために現在使用されている。しかしながら、タモキシフェンは、血液凝固及び卒中等の重篤な副作用を有し得る。タモキシフェンは、閉経後の女性において骨喪失を防ぎ得るが、閉経前の女性において骨粗しょうを引き起こし得る。タモキシフェンは、子宮内膜における部分アゴニストとして作用するため、子宮内膜癌のリスクも増大する。
【0007】
AIは、体内でアンドロゲンをエストロゲンに変える、アロマターゼの活性を遮断することによって末梢組織中のエストロゲン産生を抑える。しかしながら、AIは、卵巣がエストロゲンを生成するのを止めることができない。そのため、AIは、主に、閉経後の女性を治療するために使用される。さらに、AIは、重篤な副作用が少なく、タモキシフェンよりもさらに有効であるため、AIは、閉経前の女性を治療するために使用され、卵巣機能を抑えることもできる。例えば非特許文献3を参照されたい。
【0008】
これらの薬剤による初期治療が成功し得るが、多くの患者は、最終的には、薬物耐性乳癌を再発する。ERに影響を及ぼす変異は、この抵抗性の発症のためにある潜在的機序として現れる。例えば、非特許文献4を参照されたい。ERのリガンド結合ドメイン(LBD)における変異は、内分泌療法の少なくとも1つを受けている患者からの転移性ER陽性乳癌試料のうちの21%に見出される。非特許文献5。
【0009】
フルベストラントは、現在、抗エストロゲン療法後の疾患の進行があるER陽性転移性乳癌の治療に承認されている唯一のSERDである。その臨床的有効性にもかかわらず、フルベストラントの効用は、単回投与において投与され得る薬物の量によって、バイオアベイラビリティの低下によって制限されている。18F-フルオロエストラジオール陽電子放出断層撮影法(FES-PET)を用いた画像研究は、500mgの用量レベルでさえ、患者の中には、完全なERの阻害を有さない場合があり、不十分な投与は、治療不全の理由であり得ることを示唆している。
【0010】
エストロゲン標的療法に関連する別の課題は、子宮、骨、及びその他の組織への望ましくない効果を有し得ることである。ERは、多種多様な組織及び細胞型にエストロゲン応答性遺伝子の転写を指示する。これらの効果は、特に、エストロゲン及びその他の卵巣ホルモンの内因性レベルが、更年期中に減退する場合に、顕著であり得る。例えば、タモキシフェンは、子宮内膜における部分アゴニストとして作用するため、閉経前の女性において骨粗しょうを引き起こし、子宮内膜癌のリスクを増大させ得る。閉経後の女性では、AIは、タモキシフェンよりもさらに骨喪失及び骨折を引き起こし得る。フルベストラントで治療された患者はまた、作用機序により、骨粗鬆症のリスクにさらされ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Marino et al.,“Estrogen Signaling Multiple Pathways to Impact Gene Transcription,” Curr.Genomics 7(8):497-508(2006)
【文献】Heldring et al.,“Estrogen Receptors:How Do They Signal and What Are Their Targets,”Physiol.Rev.87(3):905-931(2007)
【文献】Francis et al.,“Adjuvant Ovarian Suppression in Premenopausal Breast Cancer,”the N.Engl.J.Med.,372:436-446(2015)
【文献】Robinson et al.,“Activating ESR1 mutations in hormone-resistant metastatic breast cancer,” Nat Genet.45:1446-51(2013)
【文献】Jeselsohn,et al.,“ESR1 mutations-a mechanism for acquired endocrine resistance in breast cancer,”Nat.Rev.Clin.Oncol.,12:573-83(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、現在の内分泌療法と関連する課題のいくつかを克服し、耐性発現に有効であるようなより持続的かつ有効なER標的療法の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様では、本開示は、薬物耐性エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において腫瘍成長を阻害するまたは腫瘍退縮を生じさせる方法に関する。本方法は、対象に、治療上有効量の、構造:
【化1】
を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、変異体エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において腫瘍成長を阻害するまたは腫瘍退縮を生じさせる方法に関する。本方法は、対象に、治療上有効量の、構造:
【化2】
を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、子宮癌、卵巣癌、及び下垂体癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、転移性癌である。いくつかの実施形態では、癌は、Y537X、L536X、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の変異を含む変異体エストロゲン受容体アルファに対して陽性であり、式中、Xが、S、N、またはC、D538Gであり、XがRまたはQである。例えば、変異は、Y537Sである。
【0016】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬物に耐性を示す。例えば、抗エストロゲンは、タモキシフェンまたはフルベストラントであり、アロマターゼ阻害剤は、アロマシンである。
【0017】
即ち、本発明の要旨は、
[1]薬物耐性エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において腫瘍成長を阻害するまたは腫瘍退縮を生じさせる方法であって、前記対象に、治療上有効量の、構造:
【化A-1】

を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、方法、
[2]変異体エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において腫瘍成長を阻害するまたは腫瘍退縮を生じさせる方法であって、前記対象に、治療上有効量の、構造:
【化A-2】

を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、方法、
[3]前記癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、及び下垂体癌からなる群から選択される、[1]または[2]に記載の方法、
[4]前記癌が、転移性癌である、[1]または[2]に記載の方法、
[5]前記癌が、Y537X、L536X、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の変異を含む変異体エストロゲン受容体アルファに対して陽性であり、式中、
が、S、N、またはC、D538Gであり、XがRまたはQである、[1]または[2]に記載の方法、
[6]前記変異が、Y537Sである、[5]に記載の方法、
[7]投与後の前記腫瘍中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度の、血漿中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度に対する比(T/P)が、少なくとも約15である、[1]または[2]に記載の方法、
[8]前記対象が、骨粗鬆症または骨粗鬆症の高いリスクを有する、[1]または[2]に記載の方法、
[9]前記対象が、閉経前の女性である、[1]または[2]に記載の方法、
[10]前記対象が、SERM及び/またはAIによるこれまでの治療後に、再発または進行している閉経後の女性である、[1]または[2]に記載の方法、
[11]前記治療上有効量が、1日1回約150~約1,500mgである、[1]または[2]に記載の方法、
[12]前記その塩が、RAD1901二塩酸塩である、[1]または[2]に記載の方法、
[13]前記腫瘍が、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬物に耐性を示す、[1]または[2]に記載の方法、
[14]前記抗エストロゲンが、タモキシフェンまたはフルベストラントである、[13]に記載の方法、
[15]前記アロマターゼ阻害剤が、アロマシンである、[13]に記載の方法、
[16]前記治療上有効量が、150mg~2,000mgである、[1]または[2]に記載の方法、
[17]前記治療上有効量が、200mg、400mg、または500mgである、[16]に記載の方法
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、癌を治療するための方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】RAD1901は、ESR1状態及び前内分泌療法にもかかわらず、様々な患者由来の異種移植片(PDx)モデルにおける腫瘍成長を阻害した。RAD1901で治療したPDxモデルにおける腫瘍成長の阻害(TGI)の割合を示す。
図2】RAD1901は、野生型(WT)ERα MCF-7マウス異種移植片モデル(PR+、Her2-)における腫瘍成長及び腫瘍退縮を示した。(図2A):箱ひげ図は、ビヒクル対照、RAD1901(0.3、1、3、10、30、及び60mg/kgの1日1回経口投与)、タモキシフェン(TAM)(1mg/用量、皮下注射、1日毎)、及びフルベストラント(FUL)(0.5mg/用量、皮下注射、1日1回)で治療したMCF-7マウス異種移植片モデルにおける群別の40日目の腫瘍体積を示した;(図2B):ビヒクル対照、RAD1901(60、90、及び120mg/kg、経口投与1日1回)、タモキシフェン(1mg/用量、皮下注射、1日毎)、及びフルベストラント(0.5mg/用量、皮下注射、1日1回)で治療したMCF-7マウス異種移植片モデルにおける経時的な腫瘍体積の中央値(図2C):ビヒクル対照、RAD1901(60、90、及び120mg/kg、1日1回経口投与)、タモキシフェン(1mg/用量、皮下注射、1日毎)、及びフルベストラント(0.5mg/用量、皮下注射、1日1回)で治療したMCF-7マウス異種移植片モデルにおける42日目の個々の動物からの腫瘍体積;(図2D):ビヒクル対照、RAD1901(RAD)(0.3、1、3、10、30、及び60mg/kg 1日1回経口投与)、タモキシフェン(1mg/用量、皮下注射、1日毎)、及びフルベストラント(0.5mg/用量、皮下注射、1日1回)で治療したMCF-7マウス異種移植片モデルにおける経時的な腫瘍体積の中央値;(図2E):ビヒクル対照、RAD1901(RAD)(0.3、1、3、10、30、及び60mg/kg 1日1回経口投与)、タモキシフェン(1mg/用量、皮下注射、1日毎)、及びフルベストラント(0.5mg/用量、皮下注射、1日1回)で治療したMCF-7マウス異種移植片モデルにおける1日目からの群平均体重の変化の割合(%)。
図3】RAD1901は、WT ERα MCF-7異種移植片モデル(PR+、Her2-)における腫瘍成長の阻害及び腫瘍退縮を示した。(図3A):ビヒクル対照、RAD1901(30及び60mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したMCF-7異種移植片モデルの腫瘍成長;(図3B):ビヒクル対照、RAD1901(30及び60mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるベースラインから研究終了までの個々の腫瘍サイズの変化。
図4】RAD1901は、WT ERα PDx-4モデル(PR+、Her2-、治療ナイーブ)における腫瘍成長の阻害及び腫瘍退縮を示した。(図4A):ビヒクル対照、RAD1901(30、60、及び120mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-4モデルの腫瘍成長;(図4B):ビヒクル対照、RAD1901(30、60、120mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-4モデルにおけるベースラインから研究終了までの個々の腫瘍サイズの変化。
図5】RAD1901の有効性は、RAD1901での治療を終了してから少なくとも2カ月持続し、一方、エストラジオール治療は、WT ERα PDx-4モデル(PR+、Her2-、治療ナイーブ)において継続した。ビヒクル対照、RAD1901(30mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(1mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-4モデルの腫瘍成長。
図6】RAD1901は、WT ERα PDx-2モデル(PR+、Her2-、治療ナイーブ)における腫瘍成長の阻害を示した。ビヒクル対照、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)、ならびに(60mg/kg、1日1回経口投与)とフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)との組み合わせで治療したPDx-2モデルの腫瘍成長。n=8~10/群。
図7】WT ERα PDx-11モデル(PR+、Her2+、アロマターゼ阻害剤、フルベストラント、及び化学療法で以前に治療した)におけるRAD1901腫瘍成長の阻害及び腫瘍退縮を示した。(図7A):ビヒクル対照、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-11モデルの腫瘍成長;(図7B):ビヒクル対照、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-11モデルにおけるベースラインから研究終了までの個々の腫瘍サイズの変化。n=8~10/群。
図8】RAD1901は、WT ERα PDx-12モデル(PR+、Her2-、治療ナイーブ)における様々な用量での腫瘍成長の阻害及び腫瘍退縮を示した。ビヒクル対照、RAD1901(30及び60mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(1mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-11モデルの腫瘍成長。
図9】RAD1901は、変異(Y537S)ERα PDx-5モデル(PR+、Her2+、アロマターゼ阻害剤で以前に治療した)における腫瘍成長の阻害を示した。(図9A):ビヒクル対照、RAD1901(60、120mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-11モデルの腫瘍成長;(図9B):ビヒクル対照、RAD1901(60、120mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-5モデルにおけるベースラインから17日目までの個々の腫瘍サイズの変化;(図9C):RAD1901(60、120mg/kg、1日1回経口投与)で治療したPDx-5モデルにおけるベースラインから56日目までの個々の腫瘍サイズの変化。
図10】RAD1901は、変異(Y537S)ERα PDx-6モデル(PR+、Her2:1+、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、及びフルベストラントで以前に治療した)における腫瘍成長の阻害及び腫瘍退縮を示した。(図10A):ビヒクル対照、RAD1901(30、60、及び120mg/kg 1日1回経口投与)、タモキシフェン(1mg/用量、皮下注射、1日毎)、及びフルベストラント(1mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-6モデルの腫瘍成長;(図10B):ビヒクル対照、RAD1901(30、60、及び120mg/kg 1日1回経口投与)、及びフルベストラント(1mg/用量、週1回皮下注射)で治療したPDx-6モデルにおけるベースラインから研究終了までの個々の腫瘍サイズの変化。
図11】ヌードマウスにおけるフルベストラントの薬物動態分析。1mg/用量(黒ひし形)、3mg/用量(黒丸)、及び5mg/用量(黒三角)のフルベストラントの血漿濃度を示す。ヌードマウスに、1日目にフルベストラントを皮下投与し、2回目を8日目に投与した。フルベストラントの血漿濃度を、2回目の投与から168時間まで指示された時点でモニタリングした。
図12】頭蓋内MCF-7腫瘍モデルにおけるマウス生存へのRAD1901及びフルベストラント(Faslodex)の効果。
図13】ER+進行性乳癌のためのRAD1901治療の第1相試験。
図14】ER+進行性乳癌のためのRAD1901治療の第1相試験に登録された対象のこれまでの治療歴及びRAD1901治療。(図14A):これまでの癌治療;(図14B):RAD1901治療。
図15】200及び500mgのRAD1901を1日1回の経口投与で治療を受けた対象の子宮のFES-PETスキャンの代表的な画像、及びRAD1901治療後のER関与の変化。(図15A):200mgのRAD1901での治療前(a)及び治療後(c)の子宮CTスキャンの横断図ならびにRAD1901での治療前(b)及び治療後(d)の子宮FES-PETスキャンの横断図;(図15B):500mgのRAD1901での治療前((a)上パネル)及び治療後((a)下パネル)の子宮CTスキャンの矢状図、RAD1901での治療前((b)上パネル)及び治療後((b)下パネル)の子宮FES-PETスキャンの矢状図、RAD1901での治療前((c)上パネル)及び治療後((c)下パネル)の子宮CTスキャンの横断図、RAD1901での治療前((d)上パネル)及び治療後((d)下パネル)の子宮FES-PETスキャンの横断図;(図15C):ベースライン(RAD1901治療前)と比較した、対象1~3(200mg)及び対象4~7(500mg)のRAD1901での治療後のER関与の変化率(%)。
図16】RAD1901(500mg)での治療前(ベースライン)及びその後(治療後)の子宮(図16A)及び下垂体(図16B)のFES-PETスキャンの代表的な画像。(a)側面断面図、(b)経度断面図、及び(c)経度断面図。
図17】RAD1901治療は、完全なERの低下をもたらし、インビトロでのMCF-7細胞株(図17A)及びT47D細胞株(図17B)におけるERシグナル伝達を阻害した。0.001μM、0.01μM、0.1μM、及び1μMの様々な濃度で、それぞれ、RAD1901及びフルベストラントで治療した両方の細胞株において、ER発現を示した。試験した3つのER標的遺伝子:PGR、GREB1、及びTFF1によって、ERシグナル伝達を示した。
図18】RAD1901での治療は、MCF-7異種移植片モデルにおけるER分解及びERシグナル伝達の廃止をもたらした。(図18A):最後の投与から2時間または8時間後に、ビヒクル対照、30及び60mg/kgのRAD1901、ならびに3mg/用量のフルベストラントで治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR及びER発現を示すウェスタンブロット;(図18B):最後の投与から2時間または8時間後に、ビヒクル対照、30及び60mg/kgのRAD1901、ならびに3mg/用量のフルベストラントで治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるERタンパク質発現;(図18C):最後の投与から8時間後に、ビヒクル対照、30及び60mg/kgのRAD1901、ならびに3mg/用量のフルベストラントで治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPRタンパク質発現。
図19】RAD1901での治療は、MCF-7異種移植片モデルにおけるPRの急激な減少をもたらした。(図19A):単回投与から8時間または12時間後に、ビヒクル対照、30、60、及び90mg/kgのRAD1901で治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR発現を示すウェスタンブロット;(図19B):7回目の投与から4時間または24時間後に、ビヒクル対照、30、60、及び90mg/kgのRAD1901で処置したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR発現を示すウェスタンブロット;(図19C):30、60、及び90mg/kgのRAD1901で治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR発現の用量依存的な減少。
図20】RAD1901での治療は、MCF-7異種移植片モデルにおける増殖の急激な減少をもたらした。(図20A):単回投与から8時間後及び4回目の投与から24時間後に、ビヒクル対照及び90mg/kgのRAD1901で治療し、増殖マーカーKi-67に対して染色した、MCF-7異種移植片モデルから採取した切片腫瘍の代表的な写真;(図20B):単回投与から8時間後及び4回目の投与から24時間後に、ビヒクル対照及び90mg/kgのRAD1901で治療したMCF-7異種移植片モデルにおける増殖マーカーKi-67の減少を示すヒストグラム。
図21】30、60、及び120mg/kgのRAD1901での治療は、56日の有効性研究の最終日において4時間のPDx-4モデルの研究腫瘍の終わりに、フルベストラント(1mg/動物)よりもさらに著しいKi67の減少をもたらした。
図22】60及び120mg/kgのRAD1901での治療は、PR発現の減少に伴って、PDx-5モデルにおけるインビボでのERのシグナル伝達の低下をもたらした。
図23】乳離れしたばかりの雌Sprague-Dawleyラットにおける子宮組織へのRAD1901の効果。(図23A):最終投与から24時間後に殺処分したラットの子宮湿重量;(図23B):子宮の組織切片における上皮重量;(図23C):400倍率のトルイジンブルーO染色した子宮組織の代表的な切片;(図23D):子宮組織から抽出し、18SリボソームRNAハウスキーピング遺伝子と比較して、補体C3発現のレベルに対して定量的RT-PCRによって分析した全RNA。
図24】7日目に200、500、750、及び1000mg/kgのRAD1901を投与した後の血漿薬物動態の結果。
図25】3ERT(I)。
図26】3ERT(II)。
図27】表13に要約されたERα LBD-アンタゴニスト複合体の重ね合わせ。
図28】(図28A)RAD1901-1R5K及び(図28B)GW5-1R5Kのモデリング。
図29】(図29A)RAD1901-1SJ0及び(図29B)E4D-1SJ0のモデリング。
図30】(図30A)RAD1901-2JFA及び(図30B)RAL-2JFAのモデリング。
図31】(図31A)RAD1901-2BJ4及び(図31B)OHT-2BJ4のモデリング。
図32】(図32A)RAD1901-2IOK及び(図32B)IOK-2IOKのモデリング。
図33】1R5K及び2OUZによるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造の重ね合わせ。
図34】2BJ4及び2JFAによるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造の重ね合わせ。
図35】2BJ4、2JFA、及び1SJ0によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造の重ね合わせ。
図36】2BJ4によるRAD1901のIFD。
図37】IFDによって2BJ4にドックされたRAD1901のタンパク質表面相互作用。
図38】2BJ4によるフルベストラントのIFD。
図39】2BJ4によるフルベストラント及びRAD1901のIFD。
図40】2BJ4によるフルベストラント及びRAD1901のIFDの重ね合わせ。
図41】WT及びLBD変異体のERα構築物によるRAD1901のインビトロ結合アッセイ。
図42】エストロゲン受容体。
図43】ER+進行性乳癌の治療のためのRAD1901の第1相試験の重要なベースライン人口統計。
図44】ER+進行性乳癌の治療のためのRAD1901の第1相試験の治療関連AE。
図45】40日間治療した後の、MCF7細胞を移植したマウスの血漿、腫瘍、及び脳におけるRAD1901レベル。*BLQ:定量下限未満。
図46】200mgの用量の経口投与で、1日1回、6日間治療したヒト対象の子宮、筋肉、及び骨のSUV。
図47】500mgの用量の経口投与で、1日1回、6日間治療したヒト対象(n=4)の子宮、筋肉、及び骨のSUV。
図48】卵巣摘出ラットにおけるBMDへのRAD1901の効果。成体雌ラット(治療群当たりn=20)は、ビヒクル、E2(0.01mg/kg)、またはRAD1901(3mg/kg)で1日1回の治療開始の前に、偽手術または卵巣摘出手術のいずれかを施行した。BMDは、ベースライン及び治療から4週間後に、二重放射X線吸光光度法によって測定された。データは、平均±標準偏差で表される。*P<0.05対対応するOVX+Veh対照。BMD、骨ミネラル濃度;E2、ベータエストラジオール;OVX、卵巣摘出した;Veh、ビヒクル。
図49】卵巣摘出ラットにおける大腿マイクロアーキテクチャへのRAD1901の効果。成体雌ラット(治療群当たりn=20)は、ビヒクル、E2(0.01mg/kg)、またはRAD1901(3mg/kg)で1日1回の治療開始の前に、偽手術または卵巣摘出手術のいずれかを施行した。4週間後、骨マイクロアーキテクチャは、マイクロコンピュータ断層撮影法を用いて評価した。データは、平均±標準偏差で表される。*P<0.05対対応するOVX+Veh対照。ABD、見掛け骨密度;BV/TV、骨体積密度;ConnD、連結密度;E2、ベータエストラジオール;OVX、卵巣摘出した;TbN、骨梁数;TbTh、骨梁幅;TbSp、骨梁中心距離;Veh、ビヒクル。
図50】RAD1901の第1相用量漸増試験の重要なベースライン人口統計。
図51】RAD1901の第1相用量漸増試験における最も頻繁に起こる(10%超)治療関連AE。CTCAE v4.0により等級分けされたAE。同じ優先使用語の複数のシナリオを有する任意の患者は、最も重度のグレードまで1回のみ計数した。*任意の関連TEAEを有した全活性群における10%超の患者。n=所与のカテゴリーにおける少なくとも1つの治療関連AEを有する対象の数。
図52】RAD1901の第1相用量漸増試験における薬物動態学的パラメータ(7日目)。
図53】LBD変異の頻度。
図54】残留姿勢対3ERTにおけるER-α LBD-アンタゴニスト複合体の違い。
図55】RMSD計算によるER-α LBD-アンタゴニスト複合体の構造オーバーラップの評価。
図56】ER-α LBD-アンタゴニスト複合体におけるリガンド結合の分析。
図57】RAD1901ドッキングのモデル評価。
図58】1R5K、2IFA、2BJ4、及び2OUZによるRAD1901の誘導適合ドッキングスコア。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施例の項に示されるように、RAD1901(以下の構造)は、ESR1状態及びこれまでの内分泌療法にもかかわらず、乳癌異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を阻害する及び/または腫瘍退縮を生じることが見出された(実施例I(A))。治療された異種移植片モデルは、高いまたは低いHer2の発現を有し、これまでの内分泌療法(例えばタモキシフェン(tam)、AI、化学療法(chemo)、Her2阻害剤(Her2i、例えばトラスツズマブ、ラパチニブ)、ベバシズマブ、及び/またはリツキシマブを有するまたは有さない、WTまたは変異(例えばY537S)ERαを発現する腫瘍を有した(図1)。そして、すべての場合において、RAD1901は、腫瘍成長を阻害した。WT ER PDxモデル及び変異ER PDxモデルは、フルベストラント治療に対して異なるレベルの反応性を有し得る。しかしながら、RAD1901は、PDxモデルが、フルベストラント治療に対して反応性があったにもかかわらず、腫瘍成長を阻害することが見出された。それ故に、RAD1901は、改善された腫瘍成長の阻害を有するフルベストラントに反応する乳癌の反応性を治療するため、及びフルベストラントによってあまり有効に治療されない乳癌を治療するためにもフルベストラント置換として使用され得る。例えば、RAD1901は、フルベストラント治療に対する多様な反応性を有するWT ER+PDxモデル(例えばMCF-7細胞株異種移植片モデル、フルベストラント治療に反応するPDx-4、PDx-2、及びPDx-11モデル、ならびにフルベストラント治療にほとんど反応しないPDx-12モデル)、ならびにフルベストラント治療に対して変化するレベルの反応性を有する変異(例えばY537S)ER+PDxモデル(例えば、フルベストラント治療に反応するPDx-6モデル、及びフルベストラント治療にほとんど反応しないPDx-5モデル)において腫瘍退縮を生じた。RAD1901は、エストラジオール治療は継続したが、治療を終了した後に、腫瘍成長を阻害する際に持続的な有効性を示した(例えばPDx-4モデル)。本明細書に提供される結果はまた、RAD1901が脳に送達され得ることを示し(実施例II)、当該送達は、野生型ERαを発現する頭蓋内腫瘍モデル(MCF-7異種移植片モデル、実施例I(B))においてマウス生存を改善した。RAD1901は、強力な抗ER+乳癌療法である。
【化3】
【0021】
RAD1901はまた、他の内分泌療法(例えば、タモキシフェン等の他のSERM及びフルバストラント等のSERD)と比較してより少ない副作用を生じる可能性が高い。例えば、タモキシフェンは、子宮内膜癌のリスクも増大し得る。タモキシフェンはまた、閉経前の女性において骨粗しょうを引き起こし得る。フルベストラントはまた、治療した患者において骨喪失のリスクを増大し得る。RAD1901は、同様の副作用を有する可能性は低い。RAD1901は、腫瘍中に優先的に蓄積することが見出され、最大約35の腫瘍中のRAD1901レベル対血漿中のRAD1901レベル(T/P比)があった(実施例II)。子宮、筋肉、及び骨に対する標準取り込み値(SUV)は、約200mg~最大約500mgの用量で、1日1回RAD1901で治療したヒト対象について計算された(実施例III(A))。投与後の子宮シグナルは、「非標的組織」(エストロゲン受容体を発現しない組織)からのレベルに近く、RAD1901治療後のFES-PETの取り込みの完全な減衰を示唆している。エストロゲン受容体を有意に発現しなかった組織(例えば筋肉、骨)中の治療前対治療後PETスキャンについては、ほとんど変化が観察されなかった(実施例III(A))。RAD1901治療は、卵巣摘出(OVX)ラットにおける子宮組織のエストラジオール刺激に拮抗し(実施例IV(A))、治療を受けた対象の骨質を大いに保存した。それ故に、RAD1901治療は、他の内分泌療法が患者の骨構造を害し得るように、患者の骨構造を害する可能性が低い。例えば、RAD1901で治療したOVXラットは、維持されたBMD及び大腿マイクロアーキテクチャを示した(実施例IV(A))。それ故に、RAD1901治療は、特に、骨粗鬆症または骨粗鬆症のより高いリスクを有する患者において有用であり得る。
【0022】
さらに、RAD1901は、MCF7細胞株異種移植片モデルにおいてインビボで野生型ERαを分解し、ERシグナル伝達を廃止することが見出され、これらのMCF7細胞株異種移植片モデルにおいて、PRの用量依存的な減少を示した(実施例III(B))。RAD1901は、治療を受けた対象から採取した腫瘍中の増殖マーカーKi67の減少からも明らかなように、MCF-7細胞株異種移植片モデル及びPDx-4モデルにおける増殖を減少した。RAD1901はまた、フルベストラント治療に対してほとんど反応性がなかった変異体ER PDxモデルにおいてインビボでERシグナル伝達を減少した(実施例III(B))。
【0023】
フルベストラント治療に対してほとんど反応性がない腫瘍及び変異体ERαを発現する腫瘍に対するRAD1901の予期せぬ有効性は、RAD1901とERαとの間の固有の相互作用によるものであり得る。RAD1901に結合するERα及び他のERαと結合する化合物の構造モデルは、特定の結合相互作用についての情報を得るために分析した(実施例V)。コンピュータモデリングは、RAD1901-ERαの相互作用が、ERαのLBDの変異体、例えばY537X変異体(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、及びS463Pによって影響を受ける可能性が低いことを示し、これは、内分泌療法のうちの少なくとも1つを施した患者からの転移性ER陽性乳房の腫瘍試料の最近の研究に見出されたLBD変異の約81.7%を占める(表11、実施例V)。これは、結合にとって欠かせない、野生型ERαだけでなく、ある特定の変異及びそれらのバリアントと結合し、拮抗する化合物を発生するために使用することができる情報である、ERαのC末端リガンド結合ドメインにおける特定の残基の特定をもたらした。
【0024】
これらの結果に基づいて、対象に、治療上有効量の、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩を投与することによって、それらを必要とする対象においてERα陽性癌または腫瘍の成長を阻害する、またはその退行を生じるための方法が、本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)の投与は、腫瘍成長を阻害することに加えて、例えば、(例えば、エストラジオール結合を阻害するまたはERαを分解することによって)癌細胞の増殖を阻害するまたはERα活性を阻害することを含む、さらなる治療的有効性を有する。ある特定の実施形態では、本方法は、筋肉、骨、乳部、及び子宮に対する負の効果を生じない。
【0025】
ERα及び変異体ERαを調節する及び分解する方法、ERα及び変異体ERαの活性または発現と関連する状態を治療する方法、これらの方法で用いるための化合物、ならびにERα及び変異体ERαに結合する当該化合物の複合体及び結晶もまた、本明細書に提供される。
【0026】
本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または腫瘍退縮の方法のある特定の実施形態では、対象に、治療上有効量の、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)を投与することによって、それらを必要とする対象においてERα陽性腫瘍の成長を阻害する、またはその退行を生じるための方法が、提供される。ある特定のこれらの実施形態では、その塩は、構造:
【化4】
を有するRAD1901二塩酸塩である。
【0027】
本明細書に使用されるERα陽性腫瘍の「成長を阻害すること」は、腫瘍成長の速度を減速すること、または腫瘍成長を完全に停止することを指し得る。
【0028】
本明細書に使用されるERα陽性腫瘍の「腫瘍退縮」または「退縮」は、最大サイズの腫瘍を軽減することを指し得る。ある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与は、腫瘍のサイズ対ベースライン(すなわち、治療開始前のサイズ)の減少、または腫瘍の根絶もしくは部分的根絶でさえももたらし得る。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に提供される腫瘍退縮の方法は、代替的に、腫瘍のサイズ対ベースラインを減少する方法と特徴付けられ得る。
【0029】
本明細書に使用される「腫瘍」は、悪性腫瘍であり、「癌」と同義に使用される。
【0030】
腫瘍成長の阻害または退縮は、特定の組織または臓器内の単発性腫瘍または一連の腫瘍に限局され得るか、または全身性であり得る(すなわち、すべての組織または臓器における腫瘍に影響を及ぼす)。
【0031】
RAD1901は、ERα対エストロゲン受容体ベータ(ERβ)と優先的に結合することが周知であるため、別段記述がない限り、エストロゲン受容体、エストロゲン受容体アルファ、ERα、ER、野生型ERα、及びESR1は、本明細書において同義に使用される。本明細書に使用される「エストロゲン受容体アルファ」または「ERα」は、遺伝子ESR1によってコードされる、野生型ERαアミノ酸配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる、ポリペプチドを指す。本明細書に使用される「エストロゲン受容体アルファに対して陽性である」、「ERα陽性」、「ER+」、または「ERα+」である腫瘍は、1つ以上の細胞がERαのうちの少なくとも1つのイソ型を発現する腫瘍を指す。ある特定の実施形態では、これらの細胞は、ERαを過剰発現する。ある特定の実施形態では、患者は、エストロゲン受容体ベータのうちの1つ以上の型を発現する腫瘍内に1つ以上の細胞を有する。ある特定の実施形態では、ERα陽性腫瘍及び/または癌は、乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌と関連している。ある特定のこれらの実施形態では、患者は、乳部、子宮、卵巣、または下垂体組織に位置する腫瘍を有する。患者が乳部に位置する腫瘍を有するような実施形態では、腫瘍は、HER2及びHER2+腫瘍に対して陽性であり得るかまたはあり得ない、内腔乳癌と関連し得、腫瘍は、高いまたは低いHER2を発現し得る(例えば図1)。他の実施形態では、患者は、別の組織または臓器(例えば、骨、筋肉、脳)に位置する腫瘍を有するが、それにもかかわらず、乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌(例えば、乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌の移動または転移に由来する腫瘍)とは関連しない。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、標的とされる腫瘍は、転移性腫瘍である、及び/または腫瘍が、他の臓器(例えば、骨及び/または筋肉)におけるERの過剰発現を有する。ある特定の実施形態では、標的とされる腫瘍は、脳腫瘍及び/または癌である。ある特定の実施形態では、標的とされる腫瘍は、別のSERD(例えば、フルベストラント、TAS-108(SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810(ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927、ICI182782、及びAZD9496)、Her2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ラパチニブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、及び/もしくはペルツズマブ)、化学療法(例えば、アブラキサン、アドリアマイシン、カルボプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、ドキシル、エレンス、フルオロウラシル、ジェムザール、ヘラベン、lxempra、メトトレキサート、マイトマイシン、ミコキサントロン(micoxantrone)、ナベルビン、タクソール、タキソテール、チオテパ、ビンクリスチン、及びキセロダ)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、及びレトロゾール)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及び/もしくはトレミフェン)、血管新生阻害剤(例えばベバシズマブ)、ならびに/またはリツキシマブによる治療よりも、RAD1901の治療に対してより感受性がある。
【0032】
本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、本方法は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩を投与する前に、患者がERαを発現する腫瘍を有するかどうかを決定するステップをさらに含む。本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、本方法は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩を投与する前に、患者が変異体ERαを発現する腫瘍を有するかどうかを決定するステップをさらに含む。本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、本方法は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩を投与する前に、患者がフルベストラント治療に応答するまたは応答しないERαを発現する腫瘍を有するかどうかを決定するステップをさらに含む。これらの決定は、当該技術分野で周知である発現の検出のうちのいずれかの方法を用いて行われ得、対象から摘出された腫瘍または組織試料を用いてインビトロで行われ得る。
【0033】
野生型ERαを発現する腫瘍において腫瘍成長を阻害するRAD1901の能力を示すことに加えて、本明細書に提供される結果は、RAD1901がERαの変異型、すなわちY537S ERαを発現する腫瘍の成長を阻害する予期しない能力を示したことを示す(実施例I(A))。ERα変異の例のコンピュータモデリング評価は、例えば、Y537X変異体(式中、Xが、S、N、またはCである)を有するERα、D538G変異体を有するERα、及びS463P変異体を有するERαからなる群から選択される1種以上の変異体を有するERαのような、これらの変異のいずれも、リガンド結合ドメインに影響を与えるか、またはRAD1901結合を特異的に妨げることが期待されなかったことを示した(実施例V(A))。これらの結果に基づいて、対象に、治療上有効量の、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩を投与することによって、癌に罹患している対象において、Y537X(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、L536X(式中、Xが、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、特にY537S ERαからなる群から選択される、リガンド結合ドメイン(LBD)内に1種以上の変異体を有するERαに対して陽性である腫瘍の成長を阻害するか、またはその退縮を生じるための方法が、本明細書に提供される。本明細書に使用される「変異体ERα」は、ERαのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる、1つ以上の置換または欠失を含むERα、及びそれらのバリアントを指す。
【0034】
動物異種移植片モデルにおける乳癌腫瘍成長を阻害することに加えて、本明細書に開示される結果は、RAD1901が、腫瘍細胞内に有意な蓄積を示し、血液脳関門を通過することができることを示す(実施例II)。血液脳関門を通過する能力は、RAD1901の投与が、脳転移異種移植片モデルにおいて有意に生存期間の延長を示すことによって確認された(実施例I(B))。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、標的とされるERα陽性腫瘍は、脳または中枢神経系の他の場所に位置する。ある特定のこれらの実施形態では、ERα陽性腫瘍は、主として脳癌と関連している。他の実施形態では、ERα陽性腫瘍は、主として、別の組織または臓器から遊走してきた乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌等の別のタイプの癌と関連している転移性腫瘍である。ある特定のこれらの実施形態では、腫瘍は、乳癌脳転移(BCBM)等の脳転移である。本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物は、標的腫瘍内の1つ以上の細胞に蓄積する。
【0035】
本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、好ましくは、約15以上、約18以上、約19以上、約20以上、約25以上、約28以上、約30以上、約33以上、約35以上、約40以上のT/P(腫瘍中のRAD1901濃度/血漿中のRAD1901濃度)比で腫瘍に蓄積する。
【0036】
本明細書に提供される結果は、RAD1901投与が卵巣摘出ラットにおける骨量の減少を防ぐことを示す(実施例IV(A))。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、例えば、治療された対象の骨体積密度、骨表面密度、骨ミネラル濃度、骨梁数、骨梁幅、骨梁中心距離、連結密度、及び/または見掛け骨密度への望ましくない効果を含む、骨への望ましくない効果を有さない。RAD1901は、骨粗鬆症または骨粗鬆症のより高いリスクを有する患者において有用であり得る。タモキシフェンは、閉経前の女性において骨喪失と関連し得、作用機序により骨構造を害し得る。RAD1901は、閉経前の女性及び/またはタモキシフェンもしくは抗エストロゲン療法に耐性を示す腫瘍において特に有用であり得る。
【0037】
本明細書に提供される結果は、RAD1901が卵巣摘出ラットにおける子宮組織のエストラジオール刺激を拮抗することを示す(実施例IV(A))。さらに、200mgまたは最大500mgの用量のRAD1901で1日1回治療したヒト対象において、ERを有意に発現しなかった子宮、筋肉、及び骨組織に対する標準取り込み値(SUV)は、治療前及び治療後のシグナルにおいてほとんど変化を示さなかった(実施例III(A))。したがって、ある特定の実施形態では、かかる投与はまた、例えば、子宮、筋肉、または乳部組織を含む、他の組織への望ましくない効果をもたらさない。
【0038】
本明細書に開示される方法で用いるための治療上有効量のRAD1901は、特定の時間間隔にわたって投与される場合、1つ以上の治療的基準の達成(例えば、腫瘍成長を遅らせるまたは停止すること、腫瘍退縮を生じさせること等)をもたらす量である。理想的には、治療上有効量は、治療を受けた対象の50%以上が吐き気またはさらなる薬物投与を阻む他の毒性反応を経験する最大耐性用量を超えない。治療上有効量は、様々な症状、性別、年齢、体重の範囲、または対象の一般的健康、投与モード及び塩または溶媒和物タイプ、薬物に対する感受性の変動、特定のタイプの疾患等を含む、様々な要因に応じて対象において変動し得る。
【0039】
本明細書に開示される方法で用いるためのRAD1901の治療上有効量の例としては、耐性ER駆動腫瘍または癌に罹患している対象において、1日1回、約150~約1,500mg、約200~約1,500mg、約250~約1,500mg、または約300~約1,500mgの投与量、野生型ER駆動腫瘍及び/または癌ならびに耐性腫瘍及び/または癌の両方を有する対象において、1日1回、約150~約1,500mg、約200~約1,000mg、約250~約1,000mg、または約300~約1,000mgの投与量、主に野生型ER駆動腫瘍及び/または癌を有する対象において、1日1回、約300~約500mg、約300~約550mg、約300~約600mg、約250~約500mg、約250~約550mg、約250~約600mg、約200~約500mg、約200~約550mg、約200~約600mg、約150~約500mg、約150~約550mg、または約150~約600mgの投与量が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、成人対象において、現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはそれらの溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与量は、1日1回、約200mg、400mg、500mg、30mg~2,000mg、100mg~1,500mg、または150mg~1,500mgの経口投与であり得る。この1日投与量は、単回投与または複数回投与を介して達成され得る。
【0040】
耐性株ならびに変異体受容体(複数可)を発現する例を含む乳癌の治療の際のRAD1901の投与量は、1日当たり100mg~1,000mgの範囲内である。例えば、RAD1901は、1日当たり100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1,000mgで投与され得る。特に、1日当たり200mg、400mg、500mg、600mg、800mg、及び1,000mgが、知られている。経口投与後のヒトにおいて、驚くほど半減期が長いRAD1901が、特に実行可能なこの選択肢を作成する。したがって、薬物は、1日2回、200mg(1日当たり合計400mg)、1日2回、250mg(1日当たり合計500mg)、1日2回、300mg(1日当たり合計600mg)、1日2回、400mg(1日当たり800mg)、または1日2回、500mg(1日当たり合計1,000mg)投与され得る。好ましくは、投与は経口である。
【0041】
ある特定の実施形態では、癌または腫瘍は、耐性ER駆動型癌または腫瘍(例えば、変異体ER結合ドメイン(例えば、Y537X(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、L536X(式中、Xが、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1種以上の変異を含むERα)を有する)であり、ERまたは腫瘍及び/もしくは癌の増殖の過剰発現体がリガンド非依存性になるか、またはSERD(例えば、フルベストラント、TAS-108(SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810(ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927、ICI182782、及びAZD9496)、Her2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ラパチニブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、及び/もしくはペルツズマブ)、化学療法(例えば、アブラキサン、アドリアマイシン、カルボプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、ドキシル、エレンス、フルオロウラシル、ジェムザール、ヘラベン、lxempra、メトトレキサート、マイトマイシン、ミコキサントロン(micoxantrone)、ナベルビン、タクソール、タキソテール、チオテパ、ビンクリスチン、及びキセロダ)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、及びレトロゾール)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及び/もしくはトレミフェン)、血管新生阻害剤(例えばベバシズマブ)、ならびに/またはリツキシマブの治療で進行する腫瘍及び/または癌である。
【0042】
現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、対象に1回または複数回投与され得る。化合物が複数回投与されるこれらの実施形態では、それらは、一連の間隔、例えば、毎日、隔日、毎週、または毎月投与され得る。あるいは、それらは、例えば、症状、患者の健康状態等に基づいて、必要に応じて、不規則な間隔で投与され得る。
【0043】
現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、単一剤形に製剤化され得、治療を受けている対象のための単一投与量として好適な物理的に別々の単位を意味し、各単位は、任意に、好適な薬学的担体と関連して、所望の治療効果を生じるように計算された活性材料の予め決定された量を含有する。単位剤形は、単一の1日用量または複数の1日用量(例えば、1日1回、約1~4回またはそれ以上)のうちの1つであり得る。複数の1日用量が使用される場合、単位剤形は、各用量について同じであってもよく、または異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、本化合物は、制御放出のために製剤化され得る。
【0044】
現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、任意の利用可能な従来の方法に従って製剤化され得る。好ましい剤形の例としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等が挙げられる。製剤化には、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、香味剤、及び必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤のような通常用いられる添加剤を使用することができる。加えて、製剤化はまた、従来の方法に従って、一般に薬学的製剤の原料として用いられる成分を混合することによって行われる。これらの組成物の例には、例えば、(1)大豆油、牛脂、及び合成グリセリド等の油、(2)流動パラフィン、スクアラン、及び固形パラフィン等の炭化水素、(3)ミリスチン酸オクチルドデシル及びミリスチン酸イソプロピル等のエステル油、(4)セトステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級アルコール、(5)シリコーン樹脂、(6)シリコーン油、(7)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、固形ポリオキシエチレンヒマシ油、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤、(8)ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びメチルセルロース等の水溶性高分子、(9)エタノール及びイソプロパノール等の低級アルコール、(10)グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトール等の多価アルコール、(11)グルコース及びスクロース等の糖類、(12)無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等の無機粉末、(13)精製水等が含まれる。上の製剤で用いるための添加剤には、例えば、1)希釈剤として、ラクトース、コーンスターチ、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、結晶セルロース、及び二酸化ケイ素、2)結合剤として、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカント、ゼラチン、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール-ポリオキシエチレン-ブロックコポリマー、メグルミン、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン等、3)崩壊剤として、デンプン、寒天、ゼラチン粉末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース/カルシウム等、4)滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等、5)添加が薬学的に許容される着色剤として十分である任意の着色剤、6)香味剤として、ココアパウダー、メントール、アロマタイザー、ハッカ油、及びシナモンパウダー、7)アスコルビン酸またはアルファ-トフェノール等の添加が薬学的に許容される抗酸化剤が含まれ得る。
【0045】
現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、本明細書に記載される活性化合物のうちの任意の1つ以上及び生理学的に許容される担体(薬学的に許容される担体または溶液または希釈剤とも称される)として薬学的組成物に製剤化され得る。かかる担体及び溶液には、本発明の方法で使用されたRAD1901の薬学的に許容される塩及び溶媒和物、ならびにかかる化合物のうちの2つ以上、該化合物の薬学的に許容される塩、及び該化合物の薬学的に許容される溶媒和物を含む混合物が含まれる。かかる組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Eaton,Pa.(1985)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような許容される薬学的手順に従って調製される。
【0046】
「薬学的に許容される担体」という用語は、患者においてアレルギー反応または他の不都合な反応を生じず、該患者に投与され、製剤中の他の材料と混合可能である、担体を指す。薬学的に許容される担体は、例えば、目的の投与形態に対して適当に選択され、かつ従来の薬務と一致する、薬学的希釈剤、賦形剤、または担体を含む。例えば、固体担体/希釈剤としては、ガム、デンプン(例えば、コーンスターチ、アルファ化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース系材料(例えば微結晶性セルロース)、アクリレート(例えばポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体は、湿潤剤または乳化剤、治療剤の貯蔵期間または有効性を増強する保存剤または緩衝剤等の少量の補助物質をさらに含み得る。
【0047】
RAD1901は、遊離形態で、従来の方法によって塩に変換され得る。本明細書に使用される「塩」という用語は、塩がRAD1901で形成され、薬理学的に許容される限り、限定されず、塩の好ましい例には、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等)、無機酸性塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)等が含まれる。加えて、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩等は、本発明に従って化合物の「薬理学的に許容される塩」として好ましい。
【0048】
RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び/または第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)の異性体(例えば、幾何異性体、光学異性体、回転異性体、互変異性体等)は、例えば、再結晶化、ジアステレオマー塩法等の光学的分解能、酵素分画法、様々なクロマトグラフ法(例えば、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガラスクロマトグラフィー等)を含む通常の分離方法を用いて、単一異性体に精製することができる。本明細書において「単一異性体」という用語は、100%の純度を有する異性体だけでなく、従来の精製操作を通してでさえ存在する、標的物以外の異性体を含有する異性体も含む。結晶多形は、時には、RAD1901またはその塩に対して存在し、そのすべての結晶多形は、本発明に含まれる。結晶多形は、時には、単一であり、時には、混合物であり、その両方が、本明細書に含まれる。
【0049】
ある特定の実施形態では、RAD1901は、その活性型を達成するために、いくつかの変化(例えば酸化または加水分解)しなければならないことを意味する、プロドラッグ形態であり得る。あるいは、RAD1901は、親プロドラッグのその活性型への変化によって生成される化合物であり得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害の方法は、対象を遺伝子プロファイリングすることをさらに含み、プロファイリングされた遺伝子は、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2、及びVHLから選択される1つ以上の遺伝子である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、サブ集団の乳癌患者を治療する方法であって、当該サブ集団が、以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現を増加する、治療する方法と、本開示に記載される投与の実施形態に従って、有効用量のRAD1901(または組み合わせ)で当該サブ集団を治療する方法と、を提供する。
【0052】
RAD1901の腫瘍成長を阻害する能力を構築することに加えて、本明細書に提供される結果は、RAD1901が、子宮及び下垂体においてERへのエストラジオール結合を阻害することを示す(実施例III(A))。これらの実験において、子宮及び下垂体組織においてERへのエストラジオール結合は、FES-PET画像化によって評価された。RAD1901による治療後、ER結合の観察されたレベルは、バックグラウンドレベルでまたはそのレベルを下回った。これらの結果は、ER活性へのRAD1901の拮抗効果は、リアルタイムの走査を用いて評価され得る。これらの結果に基づいて、結合の減少または消失が有効性を示す、1つ以上の標的組織においてエストラジオール-ER結合を測定することによって、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物で治療の有効性をモニタリングするための方法が、本明細書に提供される。
【0053】
エストラジオール-ER結合に基づいて、RAD1901または塩もしくは溶媒和物の投与量を調節する方法が、さらに提供される。これらの方法のある特定の実施形態では、結合は、第1の投与量の化合物のうちの1つ以上の投与後のいくつかの時点で測定される。エストラジオール-ER結合が影響を及ぼさないか、または予め決定された閾値を下回る減少(例えば、5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、または50%未満のベースラインに対する結合の減少)を示す場合、第1の投与量は、低すぎると見なされる。ある特定の実施形態では、これらの方法は、増加した第2の投与量の化合物を投与するさらなるステップを含む。これらのステップを繰り返して、エストラジオール-ER結合の所望の低下が達成されるまで、投与量を繰り返し増加させることができる。ある特定の実施形態では、これらのステップは、本明細書に提供される腫瘍成長を阻害する方法に組み込まれ得る。これらの方法において、エストラジオール-ER結合は、腫瘍成長の阻害の代用、または成長の阻害を評価する補助手段としての役割を果たし得る。他の実施形態では、これらの方法は、例えば、癌細胞増殖の阻害を含む、腫瘍成長の阻害以外の目的のために、RAD1901の投与と併用して使用することができる。
【0054】
ある特定の実施形態では、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)の投与量を調節するために本明細書に提供される方法は、
(1)第1の投与量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩(例えば、約350~約500mg、または約200~約600mg/日)を、3、4、5、6、または7日間投与することと、
(2)エストラジオール-ER結合活性を、例えば、本明細書に開示されるFES-PET画像化を用いて検出することであって、
(i)ER結合活性が、検出不可能である、または予め決定された閾値レベルを下回る場合、第1の投与量を継続して投与する(すなわち、投与量レベルを維持する)こと、または
(ii)ER結合活性が、検出可能である、または予め決定された閾値レベルを上回る場合、第1の投与量よりも多い第2の投与量(例えば、第1の投与量+約50~約200mg)を3、4、5、6、または7日間投与し、次いで、ステップ(3)に進むこと、
(3)エストラジオール-ER結合活性を、例えば、本明細書に開示されるFES-PET画像化を用いて検出することであって、
(i)ER結合活性が、検出不可能である、または予め決定された閾値レベルを下回る場合、第2の投与量を継続して投与する(すなわち、投与量レベルを維持する)こと、または
(ii)ER結合活性が、検出可能である、または予め決定された閾値レベルを上回る場合、第2の投与量よりも多い第3の投与量(例えば、第2の投与量+約50~約200mg)を3、4、5、6、または7日間投与し、次いで、ステップ(4)に進むこと、
(4)ER結合活性が検出されなくなるまで、第4の投与量、第5の投与量等を通して、上のステップを繰り返すこと、を含む。
【0055】
ある特定の実施形態では、本発明は、ER感受性またはER耐性癌を検出及び/または投与するために、PET画像化の使用を含む。
【0056】
本明細書に開示されるRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与経路としては、局所投与、経口投与、皮内投与、筋肉投与、腹腔内投与、静脈内投与、膀胱腔内注入、皮下投与、経皮投与、及び経粘膜投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
RAD1901-ERαの相互作用
(1)内分泌療法のうちの少なくとも1つの方針を受けている患者からのER陽性乳癌腫瘍試料中の変異体ERα
過去2年間に報告された5つの研究において、内分泌療法のうちの少なくとも1つの方針を受けている患者からの合計187の転移性ER陽性乳癌腫瘍試料が、配列決定され、ER LBD変異が、39人の患者(21%)において特定された(Jeselsohn)。39人の患者の中で、6つの最も頻繁なLBD変異を、図42に示される、Jeselsohnから適合されたスキーム1を示す。
【0058】
すべてのLBD変異の頻度を、表11に要約する。
【0059】
コンピュータモデリングは、RAD1901-ERαの相互作用が、ERαのLBDの変異体、例えばY537X変異体(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、及びS463Pによって影響を受ける可能性が低いことを示し、これは、内分泌療法のうちの少なくとも1つを施した患者からの転移性ER陽性乳房の腫瘍試料の最近の研究に見出されたLBD変異の約81.7%を占める(表11、実施例V)。
【0060】
ERα及び/または変異体ERαと結合するRAD1901の複合体及び結晶が、本明細書に提供され、変異体ERαは、Y537X(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、L536X(式中、Xが、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1つ以上の変異を含む。
【0061】
本明細書に提供される方法のある特定の実施形態では、ERα及び変異体ERαのLBDは、AF-2を含む。他の実施形態では、LBDは、ERαのアミノ酸299~554を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。ある特定の実施形態では、変異体ERαのLBDは、Y537X(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、L536X(式中、Xが、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1つ以上の変異を含む。本明細書に使用される「及び/または」という用語は、「及び」の場合と「または」の場合の両方を含む。
【0062】
以下の実施例は、請求された発明をよりよく例証するために提供され、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。特定の材料が言及される程度では、それは、単に例証の目的のためであり、及び本発明を限定することを意図しない。当業者は、発明能力の行使なしで、及び本発明の範囲を逸脱しない範囲で、均等な手段または反応を開発するであろう。多くの変更が、本明細書に記載される手順でなされ得るが、一方、依然として本発明の範囲内で維持されることを理解されよう。かかる変更が、本発明の範囲内に含まれることが本発明者らの意図である。
【実施例
【0063】
材料及び方法
試験化合物
以下の実施例に使用されるRAD1901は、IRIX Pharmaceuticals,Inc.によって製造された(6R)-6-(2-(N-(4-(2-(エチルアミノ)エチル)ベンジル)-N-エチルアミノ)-4-メトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール二塩酸塩であった(Florence,SC)。RAD1901は、乾燥粉末として保存され、脱イオン水中の0.5%(w/v)メチルセルロース中の均一の懸濁液として使用するために製剤化され、動物モデルにおいては、経口投与によって投与された。タモキシフェン、ラロキシフェン、及びエストラジオール(E2)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から得られ、皮下注射によって投与された。フルベストラントは、Tocris Biosciences(Minneapolis,MN)から得られ、皮下注射によって投与された。その他の実験試薬は、別途記述がない限り、Sigma-Aldrichから購入した。
【0064】
細胞株
MCF-7細胞(ヒト乳房転移性腺癌)は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入し、0.01mg/mlのウシインスリン及び10%ウシ胎仔血清(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補充した、2mMのL-グルタミン及びEarleのBSS、0.1mMの非必須アミノ酸、及び1mMのピルビン酸ナトリウムを含有するフェノールレッドフリーの最小必須培地(MEM)中で、通常、5%COで維持した。
【0065】
T47D細胞を、10%FBS及び5μg/mLのヒトインスリンを補充したRPMI増殖培地中で約75%コンフルエントになるまで10cmの皿中で5%COインキュベーターで培養した。
【0066】
インビボでの異種移植片モデル
すべてのマウスを、明暗周期(人工光の12~14時間の概日周期)ならびに制御された室温及び湿度下で、不断で滅菌食及び水へのアクセスする、滅菌した埃のない寝わらの塊(bedding cob)を有する個々に換気したケージの中に無菌ハウジングに収容した。腫瘍は、ノギスで週2回測定し、体積は、式:(L*W)*0.52を用いて計算した。
【0067】
PDxモデル
患者由来の異種移植片モデル(PDxモデル)のいくつかの例を、図1に示す。患者由来の乳癌腫瘍を有するPDxモデルは、腫瘍の不均一性を維持するために、動物(無胸腺ヌードマウス(Nu(NCF)-Foxn1nu))において、限定された回数、連続継代している生存ヒト腫瘍組織または液体から構築された。前試験腫瘍体積は、その推定された開始日より約1週間前に開始する各実験で記録した。腫瘍がおよそ腫瘍体積開始(TVI)の範囲(150~250mm)に達したとき、動物を治療及び対照群にランダム化し、投与を開始し(0日目、各群において8~10匹)、すべての試験における動物は各実験において個々に従った。投与開始は、0日目に開始、すべての群の動物は、体重別に投与した(1グラム当たり0.01mL、10ml/kg)。各群は、0日目から特定されるように、ビヒクル(対照、経口投与/エンドポイントまで1日1回)、タモキシフェン(1mg/対象、皮下注射/エンドポイントまで1日毎)、フルベストラント(Faslodex(登録商標);必要に応じて、1mg/対象または3mg/対象、皮下注射/週×5、必要に応じて延長)、またはRAD1901(30または60または120mg/対象のkg、経口投与/エンドポイントまで1日1回)で治療した。治療期間は、モデルに応じて、56~60日間続いた。これらのPDxモデルのための飲料水に、17β-エストラジオールを補充した。
【0068】
薬剤の有効性
すべての試験において、0日目に開始し、腫瘍寸法を、各群に対して記録された個々の及び平均の推定された腫瘍体積(平均TV±標準誤差)を含むデジタルキャリパーによって測定し、腫瘍体積を、式(Yasui et al.Invasion Metastasis 17:259-269(1997)、これは参照により本明細書に組み込まれる):TV=幅×長さ×0.52を用いて計算した。腫瘍体積(TV)エンドポイントに達したらすぐに、各群または試験を終了し(時間エンドポイントは、60日であり、体積エンドポイントは、群平均2cmであった)、2cm以上の腫瘍体積に達する個々のマウスは、試験から除外し、最終測定は、平均が体積エンドポイントに達するかまたは試験が時間エンドポイントに達するまで群平均に含まれた。
【0069】
有効性の計算及び統計学的分析
腫瘍成長阻害(%)(TGI(%))値は、単一時点で計算し(対照群が腫瘍体積または時間エンドポイントに達したとき)、式によって初期(i)及び最終(f)腫瘍測定を用いて各治療群(T)対対照(C)について報告した(Corbett TH et al.In vivo methods for screening and preclinical testing.In: Teicher B,ed.,Anticancer Drug Development Guide.Totowa,NJ:Humana.2004:99-123.):TGI(%)=1-Tf-Ti/Cf-Ci。
【0070】
統計学
TGI試験-一元配置分散分析+Dunnett多重比較検定(Corbett THら)。
【0071】
試料採集
エンドポイントで、腫瘍を除去した。ある断片を急速冷凍し、一方、別の断片を、10% NBF中に少なくとも24時間入れ、ホルマリン固定パラフィン包埋した(FFPE)。急速冷凍した試料を、-80℃で保存し、FFPEブロックを、室温で保存した。
【0072】
ウェスタンブロット
細胞を採取し、タンパク質発現を、標準的技法を用いて分析した。腫瘍を、投与の最終日後に指示された時点で採取し、Tissuelyser(Qiagen)を用いてプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を有するRIPA緩衝液中で均質化した。等量のタンパク質を、MWによって分離し、ニトロセルロース膜に移し、標準的技法を用いて以下の抗体でブロットした:
●エストロゲン受容体(SantaCruz(HC-20);sc-543)
●プロゲステロン受容体(Cell Signaling Technologies;3153)
●ビンキュリン(Sigma-Aldrich,v9131)
【0073】
qPCR分析を、次のように行った:細胞を採取し、mRNAを抽出し、等量が、プロゲステロン受容体、GREB1、及びTFF1(LifeTech)に特異的なプライマーを有するcDNA合成及びqPCRのために使用した。バンドは、1D Quantソフトウェア(GE)を用いて定量化した。
【0074】
免疫組織化学
腫瘍を採取し、ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。包埋した腫瘍を切断し(6μM)、ER、PR、及びHer2に特異的な抗体で染色した。定量化を以下の通りに行った:5つの分野を、陽性細胞(0~100%)及び染色強度(0~3+)について計数した。Hスコア(0~300)を、以下の式:陽性(%)*強度、を用いて計算した。
【0075】
実施例I.RAD1901は、異なる事前内分泌療法を用いて、WT ERまたは変異体ER(例えばY537S)を発現する腫瘍及び/または癌において腫瘍成長を阻害した。
【0076】
I(A).動物異種移植片モデルにおけるRAD1901の有効性
I(A)(i)RAD1901は、ER状態及び事前内分泌療法にもかかわらず、PDxモデル(PDx-1~PDx-12)において腫瘍成長を阻害した。
【0077】
図1は、RAD1901単独で治療したマウスにおける様々なPDxモデルにおいて腫瘍成長の阻害を実証する。12の患者由来の異種移植片モデルをスクリーニングして、様々なレベルのER、PR、及びHer2を有する様々な遺伝的バッググラウンドにおけるRAD1901反応を試験した。n=8~10を有する、「*」の印が付いたPDxモデル(PDx-1~PDx-4、及びPDx-12)に対して、完全有効性試験を行った。これらのPDxモデルを、60mg/kgの用量のビヒクル(陰性対照)またはRAD1901で、1日1回経口投与で60日間治療した。スクリーニング試験は、90mg/kgの投与量のビヒクル(陰性対照)またはRAD1901を1日1回経口投与で60日間治療した、n=3を有する他のPDxモデル(PDx-5~PDx-11)に対して行われた。図1で示されるように、ER及びさらなるドライバー(例えばPR+及び/またはHer2+)で成長を引き起こしたPDxモデルに対して、RAD1901治療が有効であった。RAD1901は、前治療、ナイーブ(Rx-陰性)、またはアロマターゼ阻害剤、タモキシフェン(tam)、化学療法(chemo)、Her2阻害剤(Her2i、例えばトラスツズマブ、ラパチニブ)、ベバシズマブ、フルベストラント、及び/もしくはリツキシマブのいずれかの治療にもかかわらず、ER変異及び/または高いレベルの発現のHer2(PDx)を有するモデルにおいて腫瘍成長を阻害する際に有効であった。
【0078】
I(A)(ii)RAD1901は、WT ERを発現する異種移植片モデルにおいて退縮を引き起こした。
【0079】
I(A)(ii)(1)RAD1901は、フルベストラント治療に反応したMCF-7異種移植片において、退縮を引き起こした。
【0080】
MCF-7異種移植片モデル-I
RAD1901の抗癌効果は、腫瘍成長を刺激するためにエストラジオール投与を有する雌胸腺欠損ヌードマウス(対照:NU(NCr)-Foxn1nu)における第1のMCF-7異種移植片モデル(MCF-7異種移植片モデル-I)を用いて試験した。腫瘍細胞移植の3日前に、エストロゲンペレット(0.36mgのE2、60日の放出;Innovative Research of America,Sarasota,FL)を、滅菌套管針を用いてすべての試験動物の肩甲骨間に皮下移植した。MCF-7ヒト乳腺癌細胞は、10% ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリンG、100μg/mLの硫酸ストレプトマイシン、2mM グルタミン、10mM HEPES、0.075% 重炭酸ナトリウム、及び25μg/mLのゲンタマイシンを含有するRPMI-1640培地内で中間ログ相まで培養した。腫瘍細胞移植日に、MCF-7細胞をトリプシン化し、ペレット化し、5×10細胞/mLの濃度で、リン酸緩衝生理食塩水中で再懸濁した。各試験マウスは、1×10 MCF-7細胞を右脇腹に皮下移植され、腫瘍成長をモニタリングした。必要に応じて、腫瘍重量は、1mmの腫瘍体積が1mgの腫瘍湿重量に相当するという仮定に基づいて、推定された。体重は、MCF-7細胞移植後に5日間、1日1回測定し、次いで、試験の残りを通じて週2回測定した。
【0081】
腫瘍細胞移植から14日後に(試験の1日目と表される)、マウスは、21.4~32.5グラムの範囲に及ぶ体重を有する9週齢であり、個々の腫瘍体積は、75~144mmの範囲に及び、108mmの群平均腫瘍体積(MTV)であった。マウスを、15匹ずつの動物の9つの群にランダム化し、ビヒクル経口投与、タモキシフェン(1mg/動物、1日毎皮下注射)、フルベストラント(0.5mg/動物、1日1回皮下注射)、またはRAD1901(0.3、1、3、10、30、60、90、及び120mg/kg 1日1回経口投与)で治療した。
【0082】
腫瘍体積は、週2回評価した。腫瘍エンドポイントは、対照群において、1,500mmのMTVとして定義された。体重測定、及び処置に関連した副作用の臨床症候に関する頻繁な観察により、処置耐性を評価した。1回の測定において30%を超える、または3回の測定において25%を超える体重減少を有する動物は、人道的に殺処分し、処置関連死として分類された。許容され得る毒性は、試験期間中で20%未満の群平均体重損失、及び10匹の処置動物当たり多くても1匹の処置関連死、または10%として定義された。試験の終了時に、動物は、イソフルラン麻酔下で末期的心穿刺によって殺処分した。
【0083】
ベースライン(すなわち、1日目)の腫瘍体積と試験終了時(すなわち、42日目)の腫瘍体積との間の割合の差として定義された、腫瘍成長の阻害(TGI)の割合に基づいて、処置成果を評価した。TGI分析に対するデータセットは、各群においてすべての動物を含み、処置に関連したまたは処置に関連しなかった原因により死亡したいかなるものを含まない。潜在的な治療活性の閾値は、60%以上のTGIの処置効果として定義された。結果は、0.05のあらかじめ特定されたアルファを有する、Kruskal-WallisまたはMann-Whitney検定を用いて分析された。
【0084】
30及び60mg/kgの投与量でRAD1901による治療は、有意なTGI(それぞれ、40日目で、66%TGI(P<0.05)及び88%TGI(P<0.001))をもたらした。これらの結果は、タモキシフェン(40日目で、86%TGI)及びフルベストラント(40日目で、88%TGI)で得られたものと同様であった(図2A)。図2Aでは、箱は、25~75パーセンタイルの観察を表し、線は、観察の中央値を表し、ひげは、極限の観察を表す。
【0085】
より高い用量のRAD1901がこのモデルにおいてより強固な効果を誘発したかどうかを調査するために、RAD1901の最大120mg/kgまでの投与量を評価した(図2B~D)。早期の結果と一致して、RAD1901は、60mg/kgの投与量で有意な腫瘍阻害を誘発した(42日目で94%TGI、2/10の部分的退縮を有する)。より高い投与量は、さらに高いTGI(90mg/kgで8/10のPRを有する97%のTGI、120mg/kgで7/10のPRを有する96%のTGI)をもたらした。試験したすべての投与量で、RAD1901は、タモキシフェンまたはフルベストラントのいずれよりも高い程度まで腫瘍成長を阻害した。タモキシフェン治療は、90%のTGI(2/10のPRを有する)を生じたが、フルベストラント治療は、87%のTGI(1/10のPRを有する)をもたらした。90及び120mg/kg群でのRAD1901の阻害は、タモキシフェン(P<0.05)及びフルベストラント(P<0.05)の両方と比較して、有意に高かった。
【0086】
全体的に、これらの結果は、RAD1901が用量依存的様式でエストロゲンで誘発した腫瘍成長を阻害することを示す。RAD1901で処置したマウスにおいて処置終了の腫瘍体積は、ベースラインと同等であるまたはそれより低く、これは、RAD1901が腫瘍成長を阻害するだけでなく、マウス異種移植片モデルにおいて腫瘍サイズの退縮も生じさせることができることを示す。
【0087】
RAD1901は、体重に副作用を伴わずに、すべての投与量レベルで良好な耐性を示した(図2E)。
【0088】
RAD1901の抗癌効果は、以下に記載されるように調製された第2のMCF-7異種移植片(MCF-7異種移植片モデル-II)を用いてさらに試験した。
【0089】
MCF-7異種移植片モデル-II
細胞移植の2日前に、Balb/C-ヌードマウスを、17β-エストラジオールペレットで0.18/90日の放出でインキュベートした。MCF-7細胞(PR+、Her2-)を採取し、1×10細胞を、Balb/C-ヌードマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍は、200mmの平均を達した場合、マウスを、腫瘍体積別に治療群にランダム化し、試験化合物で治療した。各群は、0日目から特定されるように、ビヒクル(対照、エンドポイントまで1日1回経口投与)、フルベストラント(Faslodex(登録商標);3mg/対象、週1回皮下注射×5、必要に応じて延長)、RAD1901(30mg/kgまたは60mg/対象のkg、エンドポイントまで1日1回経口投与)で治療した。治療期間は、28日間続いた。
【0090】
図3A~Bは、MCF-7異種移植片モデル-IIにおいて、RAD1901(30mg/kg及び60mg/kg、1日1回経口投与)は、フルベストラント(3mg/対象、週1回皮下注射)よりもさらに有意な腫瘍成長の阻害をもたらした。意外にも、フルベストラント治療群において10匹の対象のうち1匹のみが、試験終了時にわずかな腫瘍退縮を示したが、30mg/kgのRAD1901治療群において10匹の対象のうち5匹及び60mg/kgのRAD1901治療群において10匹の対象のうち8匹が、様々なレベルの退縮を示した(図3B)。
【0091】
I(A)(ii)(2)RAD1901は、フルベストラント治療に反応したWT ER PDxモデル(例えば、PDx-4、PDx-2、及びPDx-11)において腫瘍退縮を引き起こした。
【0092】
異なるWT ER PDxモデル(PDx-4、PR+、Her2-、及びPDx-2モデル、PR+、Her2+、両方とも、治療ナイーブである;ならびにPDx-11、PR+、Her2+、AI、フルベストラント、及び化学療法で治療した)は、フルベストラント(1mg/用量または3mg/用量、週1回皮下注射)に対して異なった反応を示したが、様々な用量(30mg/kg、60mg/kg、及び/または120mg/kg、1日1回経口投与)でのRAD1901治療は、フルベストラントよりもすべてのPDxモデルにおいて、より有意な腫瘍成長の阻害を生じた(PDx-4モデルについては図4A、PDx-2モデルについては図6、及びPDx-11モデルについては図7)。例えば、フルベストラント治療(1mg/用量)に対して反応したPDx-4モデルにおいて、RAD1901は、意外にも、腫瘍成長を停止した、またはフルベストラント(1mg/対象)よりもさらに対象において腫瘍退縮を引き起こした(図4B)。さらに、フルベストラント治療(3mg/用量)に対して反応したPDx-11モデルにおいて、RAD1901は、意外にも、治療したすべての対象において、腫瘍成長を停止した、または腫瘍退縮を引き起こしたが、一方、フルベストラント(3mg/対象)のみが、治療した10匹の対象のうちの2匹において、退縮を引き起こした(図7B)。
【0093】
60mg/kgのRAD1901の経口投与のみが、PDx-2モデルにおいて、3mg/用量のフルベストラントの皮下注射と同様に、腫瘍成長の阻害を達成した(図6)。さらに、RAD1901とフルベストラントとの組み合わせは、さらなる利益をもたらさなかった。
【0094】
最後に、フルベストラント治療(1mg/用量、週1回皮下注射)に対して反応したPDx-4モデルにおいて、RAD1901の媒介による腫瘍成長の阻害は、RAD1901治療(30mg/kg、1日1回経口投与)期間が終了したが、エストラジオール治療は継続してから少なくとも2カ月間治療の不在下で維持された(図5)。
【0095】
I(A)(ii)(3)RAD1901は、フルベストラント治療に対してほとんど反応しなかったWT ER PDxモデル(例えばPDx-12)において、退縮を引き起こした。
【0096】
フルベストラント(1mg/用量、週1回皮下注射)にほとんど反応しなかったWT ER PDx-12(PR+、Her2-、治療ナイーブ)において、様々な用量(30mg/kgまたは60mg/kg、1日1回経口投与)でのRAD1901治療は、意外にも、PDx-12モデルにおいて腫瘍退縮を生じた(図8)。
【0097】
I(A)(iii)RAD1901は、変異体ER(ERα Y537S)を発現する異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を阻害した、及び/または退縮を引き起こした。
【0098】
I(A)(iii)(1)RAD1901は、フルベストラント治療に対してほとんど反応しなかったPDx-5モデルにおいて、腫瘍成長を阻害した。
【0099】
PDx-5モデルは、PDxモデルについて上述されるように、以下の同様のプロトコルを調製した。各投与群の腫瘍サイズは、ノギスで週2回測定し、体積は、式(L*W2)*0.52を用いて計算した。
【0100】
RAD1901は、フルベストラント治療(3mg/用量、週1回皮下注射)に対してほとんど反応しなかったPDx-5モデルにおいて、フルベストラントよりも腫瘍成長の阻害(60mg/kgまたは120mg/kg、1日1回経口投与)においてより有効であった(図9A~C)。高用量(120mg/kg)によるRAD1901治療が、低用量(60mg/kg)によるRAD1901治療よりもより有効であった(図9A~C)。個々の動物の腫瘍サイズを、それぞれ、17日目(図9B)及び56日目(図9C)に測定した。
【0101】
I(A)(iii)(2)RAD1901は、フルベストラント治療に対して反応したPDx-6モデルにおいて、退縮を引き起こした。
【0102】
変異体ER(例えばY537S)を発現するPDxモデルは、フルベストラント治療(1mg/用量、週1回皮下注射)及びタモキシフェン(1mg/用量、週3回皮下注射)治療、例えばPDx-6(PR+、Her2:1+、タモキシフェン、AI、及びフルベストラントでこれまでに治療を受けた)に反応し得る(図10A~B)。RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、及び120mg/kg、1日1回経口投与)は、フルベストラント及びタモキシフェンよりも腫瘍成長の阻害においてより有効であった(図10A~B)。例えば、PDx-6モデルのRAD1901治療は、腫瘍退縮を示したが、一方、フルベストラント治療(1mg/用量)は、示さなかった(図10B、ベースラインからの試験終了時に個々の腫瘍サイズの変化を示す)。
【0103】
I(A)(iv)非腫瘍担持マウスに対するフルベストラント治療の薬物動態評価。
【0104】
様々な用量のフルベストラントをマウスに投与し、これらは、対象への有意な用量曝露を示した(図11)。
【0105】
フルベストラントを、1、3、または5mg/用量で、ヌードマウスに、1日目(D1 Rx)及び8日目(D8 Rx、n=4/用量レベル)に皮下投与した。血液を、2回目の投与から168時間まで指示された時点で採血し、遠心分離し、血漿を液体クロマトグラフィー質量分析法で分析した。
【0106】
I(B)RAD1901は、脳転移のマウス異種移植片モデル(MCF-7頭蓋内モデル)において生存を助長した。
【0107】
血液脳関門を横断し、腫瘍成長を阻害するRAD1901の潜在能力は、MCF-7頭蓋内腫瘍異種移植片モデルを用いてさらに評価された。
【0108】
雌無胸腺ヌードマウス(Crl:NU(NCr)-Foxn1nu)を、腫瘍異種移植片試験のために使用した。腫瘍細胞移植の3日前に、エストロゲンペレット(0.36mgのE2、60日の放出;Innovative Research of America,Sarasota,FL)を、滅菌套管針を用いてすべての試験動物の肩甲骨間に皮下移植した。MCF-7ヒト乳腺癌細胞は、10%ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリンG、100μg/mLの硫酸ストレプトマイシン、2mM グルタミン、10mM HEPES、0.075% 重炭酸ナトリウム、及び25g/mLのゲンタマイシンを含有するRPMI-1640培地内で中間ログ相まで培養した。腫瘍細胞移植日に、細胞をトリプシン化し、ペレット化し、5×10細胞/mLの濃度で、リン酸緩衝生理食塩水中で再懸濁した。各試験マウスに、1×10 MCF-7細胞を頭蓋内に移植した。
【0109】
腫瘍細胞移植から5日後に(試験の1日目と表される)、マウスを、12匹ずつの動物の3つの群にランダム化し、上述のように、ビヒクル、フルベストラント(0.5mg/動物 1日1回)、またはRAD1901(120mg/kg 1日1回)で治療した。
【0110】
エンドポイントは、死亡率または対照群の3倍の生存率のいずれか早い方として定義された。体重測定、及び処置に関連した副作用の臨床症候に関する頻繁な観察により、処置耐性を評価した。1回の測定において30%を超える、または3回の測定において25%を超える体重減少を有する動物は、人道的に殺処分し、処置関連死として分類された。許容され得る毒性は、試験期間中で20%未満の群平均体重損失、及び10匹の処置動物の中で多くても1匹の処置関連死、または10%として定義された。試験の終了時に、動物は、イソフルラン麻酔下で末期的心穿刺によって殺処分した。血漿及び腫瘍中のRAD1901及びフルベストラント濃度は、LC-MS/MSを用いて決定した。
【0111】
カプランマイヤー生存分析は、RAD1901がフルベストラントと比較して有意に生存を延ばしたことを示した(P<0.0001;図12)。対照またはフルベストラント群の動物は、それぞれ、20日目及び34日目を超えて生存したものはいなかったが、RAD1901で処置した動物のうちの41%(5/12)が、54日目の試験終了まで生存した。
【0112】
血漿中のRAD1901の濃度は、738±471ng/mLであり、頭蓋内腫瘍では、462±105ng/gであり、このことは、RAD1901が血液脳関門を有効に横断することができるという仮説を支持した。対照的に、フルベストラントの濃度は、血漿中(21±10ng/mL)及び頭蓋内腫瘍中(8.3±0.8ng/g)で実質的には低かった。
【0113】
I(C).ER+進行性乳癌のためのRAD1901治療の第1相試験。
【0114】
第1相試験では、安全性、耐性、及び薬物動態が、44人の健常な閉経後の女性において評価された。用量を制限する毒性は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。血漿曝露は、試験した用量範囲にわたって用量比例的よりも増加した。
【0115】
対象
進行性乳腺腺癌(IHCによって1%以上の染色を有するER+腫瘍、0または1のECOG一般状態を有するHER2陰性腫瘍)を有する8人の閉経後の女性を、この第1相試験の対象として登録した。対象は、以下の前治療を受けていなければならない:
●進行性/転移性の設定において2以下の前化学療法レジメン
●6か月の事前内分泌療法及び事前内分泌療法において進行した
●未治療もしくは症候性CNS転移、または以下のウィンドウ内の事前抗癌治療を有する患者は、除外された:
●タモキシフェン<1回目の用量試験処置から14日前
●フルベストラント<1回目の用量試験処置から90日前
●化学療法<1回目の用量試験処置から28日前
●LHRH類似体<1回目の用量試験処置から12か月前
DLT基準
●3以上のいかなるグレードの非血液学的毒性(最適な薬剤で治療されていない脱毛症及び吐き気、嘔吐、または下痢を含まない)
●3以上のいかなるグレードの血液学的毒性
●7日を超える試験薬物中断をもたらすいかなるグレードの毒性
●用量を制限する毒性の観察期間は、周期1のうち1~28日である
【0116】
投与及び腫瘍評価
対象は、200mgまたは400mgの1日1回経口投与で治療し、疾患の進行まで8週毎に評価した(図13)。第1相試験に登録した進行性乳腺腺癌に罹患している8人の閉経後の女性の主なベースライン人口統計を、表1に要約する。
【0117】
対象の前癌治療を図14Aに示し、受容したRAD1901治療を図14Bに示し、対象番号1~3を、200mgのRAD1901の1日1回経口投与で治療し、対象番号4~7を、400mgのRAD1901の1日1回経口投与で治療した。矢印は、継続中の試験を示し、棒は、中断した治療を示す。図14Aにおいて、「AC」は、ドキソルビシン/シクロホスファミドであり、「FAC」は、5-フルオロウラシル/ドキソルビシン/シクロホスファミドである。
【0118】
治療中に発生した有害事象(TEAE)
TEAEは、試験を通して記録された。予備データを表2に要約する。「n」は、所与のカテゴリー中の少なくとも1つの治療に関連したAEを有する対象の数であり、AEは有害事象共通用語規準(CTCAE)v4.0のように等級分けされ、同じ優先使用語の複数のシナリオを有する任意の患者は、最も重度のグレードまで1回のみ計数した。死亡または用量を制限する毒性は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。最もAEは、グレード1または2であった。最も一般的な治療に関連したAEは、消化不良(5/8人の患者)及び吐き気(3/8人の患者)であった。2つの重篤なAE(SAE)が観察され、1つはグレード3の治療に関連した便秘で、その他は、息切れ(胸水)であったが、治療には関連しなかった。
【0119】
この第1相試験の大量にこれまでに治療を受けた対象は、複数の内分泌及び標的薬剤、例えば、CDK4/6、PI3K、及びmTOR阻害剤でこれまでに治療を受けた対象を含んだ。200mgの用量のRAD1901の1日1回経口投与で最長6か月間治療した後、及び400mgの用量のRAD1901の1日1回経口投与で最長2か月間治療した後に、用量を制限する毒性は観察されなかった。それ故に、RAD1901は、特に、CDK4/6、PI3K、及びmTOR阻害剤等の内分泌及び/または標的薬剤でこれまでに治療を受けた対象において、ER+進行性乳癌を治療する可能性を示した。
【0120】
実施例II.RAD1901は、好ましくは腫瘍中で蓄積し、脳に送達され得る。
【0121】
実施例I(A)(i)に記載されるように、MCF-7異種移植片を、LC-MS/MSを用いて、血漿及び腫瘍中のRAD1901濃度についてさらに評価した。試験の終了時に、血漿中のRAD1901の濃度は、344±117ng/mLであり、腫瘍中では、60mg/kgの用量レベルに対して11,118±3,801ng/mLであった。腫瘍濃度が血漿中よりも約20~30倍高かった場合に、同様の腫瘍対血漿の比率も、より低い用量レベルで観察された。40日間処置されたマウスの血漿、腫瘍、及び脳中のRAD1901レベルを、表3に要約する。有意な量のRAD1901が、処置マウスの脳に送達され(例えば、B/P比(脳中のRAD1901濃度/血漿中のRAD1901濃度)を参照のこと)、このことは、RAD1901が血液脳関門(BBB)を横断することができたことを示した。意外にも、RAD1901は、好ましくは腫瘍中で蓄積した。例えば、表3に示されるT/P(腫瘍中のRAD1901濃度/血漿中のRAD1901濃度)比を参照されたい。
【0122】
実施例III.RAD1901は、ER経路を阻害し、ERを分解した。
【0123】
III(A).RAD1901は、健常な閉経後の女性ヒト対象の子宮及び下垂体においてER関与を軽減した。
【0124】
対象は、少なくとも12か月間無月経であり、血清FSHが閉経と一致した。対象は、18.0~30kg/mのBMIを有する、40~75歳であった。対象は、無傷子宮であった。臨床的に関連する病理の証拠を有し、卒中もしくは過去に静脈血栓塞栓事象のリスク増加がある、または臨床研究センターに登録する14日以内に併用薬(パラセタモールは、3日前まで許容された)の使用を有する患者は、除外された。
【0125】
FES-PETは、子宮内のER関与を評価するために、ベースライン及びRAD1901への曝露から6日後に行われた。RAD1901は、それぞれ、200mg(7人の対象)及び500mg(6人の対象)の用量レベルで、子宮内でERが83%及び92%を占めた。
【0126】
FES-PET画像は、200mgまたは500mgのRAD1901による治療(1日1回経口投与、6日)後に、子宮及び下垂体の両方への標識エストラジオールの結合の有意な減少を示した。
【0127】
高いER発現により、子宮は、RAD1901治療前にベースラインで強力なFES-PETシグナル(図15A)、200mgの用量レベルで治療した対象3の子宮FES-PETスキャンにおけるベースラインの横断図;図15B、500mgの用量レベルで治療した対象7のベースラインの子宮FES-PETスキャンにおける、それぞれ、矢状図及び横断図)を示した。しかしながら、試験中の6日目に投与してから4時間後にスキャンした場合、子宮は、ほとんど見えなかった(バックグラウンドFES-PETシグナルでまたはそれの近くに(図15A、対象3の子宮スキャンにおける6日目の横断図;及び図15B、対象7の子宮スキャンにおける、それぞれ、6日目の矢状図及び横断図)。かかるデータは、ERの分解及び/または受容体への結合に対する競合と一致した。図15A及び15Bはまた、RAD1901治療前及び後の子宮の存在を示す、FES-PETによってスキャンされた子宮のCTスキャンも含む。
【0128】
FES-PETの子宮スキャンの結果は、200mgの用量群及び500mgの用量群の例として、それぞれ、対象1~3及び対象4~7を示す、7人の対象についてベースラインから投与後のER結合の変化を示すためにさらに定量化した(図15C)。RAD1901は、低用量(200mg)で強固なER関与を示した。
【0129】
図16は、500mgのRAD1901の1日1回経口投与で6日間治療する前(ベースライン)及び治療した後(治療後)の子宮(A)及び下垂体(B)のFES-PETスキャンの代表的な画像を示した。図16Aは、(a)側面横断図、(b)縦横断図、及び(c)縦横断図によって子宮のFES-PETスキャンを示した。
【0130】
子宮及び下垂体の対象の投与後のFES-PETスキャンは、それぞれ、子宮(図16A、治療後)及び下垂体(図16B、治療後)でER結合の顕著なシグナルを示さなかった。
【0131】
それ故に、結果は、RAD1901が、200及び500mgの投与量で、1日1回6日間経口投与したヒトにおいてERが有効に関与したことを示した。
【0132】
子宮、筋肉、及び骨に対する標準取り込み値(SUV)を計算し、200mg及び500mgで1日1回経口投与したRAD1901での治療について、それぞれ、表4及び5に要約した。投与後の子宮シグナルは、「非標的組織」からのレベルに非常に近く、RAD1901治療後のFES-PETの取り込みの完全な減衰を示唆している。エストロゲン受容体を有意に発現しなかった組織中の治療前対治療後PETスキャンについては、ほとんど変化が観察されなかった。
【0133】
それ故に、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)は、他の臓器(例えば、骨、筋肉)への悪影響を有さない、ERの過剰発現を有する癌及び/または腫瘍細胞(例えば、乳癌、子宮癌、及び卵巣癌)を治療する際に使用することができる。RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)は、他の臓器(例えば、骨、筋肉)への乳癌、子宮癌、及び/または卵巣癌病巣を治療するために、当該臓器への悪影響を有さない、他の臓器においてER過剰発現を有する転移性癌及び/または腫瘍、例えば、他の臓器(例えば、骨、筋肉)に移動する元の乳癌、子宮癌、及び/または卵巣癌を治療する際に特に有用であり得る。
【0134】
III(B).RAD1901は、ER発現を減少させ、ER経路を阻害した。
【0135】
III(B)(i)(1)MCF-7及びT47D細胞株におけるRAD1901及びフルベストラントの比較
【0136】
RAD1901及びフルベストラントの効果を、MCF7及びT47D細胞株(両方とも、ヒト乳癌細胞株である)を用いて、0.01μM、0.1μM、及び1μMの様々な濃度で比較した(MCF7細胞株アッセイについては図17A、及びT47D細胞株については図17B)。3つのER標的遺伝子、プロゲステロン受容体(PgR)、乳癌1におけるエストロゲンによる成長調節(GREB1)、及びトレフォイル因子1(TFF1)を、マーカーとして使用した。RAD1901は、ほぼ完全にERの分解を引き起こし、ERのシグナル伝達を阻害した(図17A~B)。意外にも、実施例I(A)及び実施例I(B)において、上に開示されるように、RAD1901は、腫瘍成長を阻害し、腫瘍退縮を引き起こす際に、フルベストラントと同等またはフルベストラントよりも有効であった。
【0137】
III(B)(i)(2)RAD1901治療は、実施例I(A)(ii)(1)において上述されるように、MCF-7異種移植片モデル-IIにおいて、ERの分解及びERのシグナル伝達の廃止をもたらした。
【0138】
RAD1901治療は、インビボでERの分解をもたらし(図18A~B、スチューデントのt検定:*p値<0.05、**p値<0.01)、インビボでERのシグナル伝達を阻害した(図19A及び19C、スチューデントのt検定:*p値<0.05、**p値<0.01)。
【0139】
RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、1日1回経口投与)またはフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)の最終投与から2時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、ER及びPRの発現を有意に減少したことを示した(図18A~B)。フルベストラント治療の最終投与から8時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、PR及びERの発現を変化させたことを示した。しかしながら、RAD1901治療の最終投与から8時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、PR及びERの発現を減少したことを示した(図18A及び18C)。
【0140】
RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、または90mg/kg、1日1回経口投与)の単回投与から8時間または12時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、PRの発現を急速に減少したことを示した(図19A)。RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、または90mg/kg、1日1回経口投与)の7回目の投与から4時間または24時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、ERのシグナル伝達の一貫した安定した阻害を示した(図19B)。RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、または90mg/kg、1日1回経口投与)の治療中の様々な時点でMCF-7異種移植片から採取した腫瘍のウェスタンブロット分析の定量化は、PRの用量依存的な減少を示した(図19C)。
【0141】
RAD1901治療は、MCF-7異種移植片モデルにおいて増殖の急速な減少を起こした。例えば、RAD1901(90mg/kg、1日1回経口投与)の単回投与から8時間後及びRAD1901(90mg/kg、1日1回経口投与)の4回目の投与から24時間後に、MCF-7異種移植片モデルから採取した腫瘍を切断し、染色して、増殖マーカーKi67の急速な減少を示した(図20A及び20B)。
【0142】
これらの結果は、RAD1901治療が、WT ER異種移植片において、インビボでERの分解及びERのシグナル伝達の阻害をもたらすことを示唆している。
【0143】
III(B)(i)(3)RAD1901治療は、実施例I(A)(ii)において上述されるように、PDx-4モデルにおいて、ERの分解及びERのシグナル伝達の廃止をもたらした。
【0144】
RAD1901治療は、PDx-4モデルにおいて増殖の急速な減少を起こした。例えば、56日の有効性試験の最終日に最終投与から4時間後に、RAD1901(30、60、または120mg/kg、1日1回経口投与)またはフルベストラント(1mg/動物、週1回)で治療したPDx-4モデルから採取した腫瘍を切断し、これは、フルベストラントで治療したPDx-4モデルと比較して、増殖マーカーKi67の急速な減少を示した(図21)。
【0145】
これらの結果は、RAD1901治療が、WT ER異種移植片において、インビボでERの分解及びERのシグナル伝達の阻害をもたらすことを示唆している。
【0146】
III(B)(ii)RAD1901治療は、実施例I(A)(iii)(1)において上述されるように、変異体ER異種移植片モデル(PDx-5)において、ERのシグナル伝達の低下をもたらした。
【0147】
腫瘍を、投与の最終日後に指示された時点で採取し(別途特定されない限り)、Tissuelyser(Qiagen)を用いてプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を有するRIPA緩衝液中で均質化した。等量のタンパク質を、MWによって分離し、ニトロセルロース膜に移し、材料及び方法の項:プロゲステロン受容体(PR、Cell Signaling Technologies;3153)に記載されるように、以下の抗体でブロットした。
【0148】
バンドを、1D Quantソフトウェア(GE)を用いて定量化し、実施例I(A)(iii)(1)に記載されるように、PDx-5モデルから得られたPR(Allredスコア)を、図22に示す。フルベストラントは、PRの発現に対してほとんど影響を与えなかったが、RAD1901は、60mg/kg及び120mg/kgの両方の投与量で有効性を示した(1日1回経口投与、図22)。
【0149】
これらの結果は、ある特定のERα変異(例えばY537S)を発現する腫瘍については、腫瘍が、フルベストラント/タモキシフェン治療に対して反応したかどうかにかかわらず(PDx-5については図9及びPDx-6については図10)、RAD1901が、腫瘍成長を阻害するときに、フルベストラントよりもさらに有効であり、フルベストラント治療(例えば3mg/用量の投与量で、週1回皮下注射、PDx-5については図9)に対してほとんど反応しなかった腫瘍の成長を阻害する際に特に有効であったことを示す。さらに、フルベストラント治療に対してあまり反応しなかった腫瘍(例えばPDx-5)については、RAD1901は、インビボでPRの発現を減少する際に有効であったが、フルベストラントは有効でなかった(図23)。
【0150】
実施例IV 子宮組織及び/またはBMDに対するRAD1901治療の影響
IV(A(1)):RAD1901は、子宮組織のエストラジオール刺激を拮抗した。
【0151】
RAD1901の子宮向性効果を、未成熟ラットにおいて、子宮重量、組織、及びC3遺伝子発現の変化を評価することによって調査した。代表的な試験からの結果を図23に示す。
【0152】
子宮向性活性の評価
Sprague-Dawley仔ラットを、19日齢で乳離れさせ、群(n=4)にランダム化し、ビヒクル(水性メチルセルロース)、E2(0.01mg/kg)、ラロキシフェン(3mg/kg)、タモキシフェン(1mg/kg)、RAD1901単独(0.3~100mg/kg)、またはE2(0.01mg/kg)と組み合わせたRAD1901(0.01~10mg/kg)を、必要に応じて、皮下注射または経口投与のいずれかで、(上の試薬を参照されたい)1日1回3日間連続で投与した。最終投与から24時間後、すべての動物を、二酸化炭素の吸入によって殺処分した。体重及び湿子宮重量を、各動物について記録した。同様のアッセイも、ラット及びマウス(Charles River Laboratories,Montreal,QC)において、RAD1901(0.03~100mg/kg)で行った。
【0153】
各ラットからの新鮮な子宮組織を、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、エタノールで脱水し、JB4プラスチック製樹脂に包埋した。切片を8μmで切断し、0.1%トルイジンブルーOで染色した。子宮内膜上皮組織の厚さは、Zeiss Axioskop 40顕微鏡及びSpot Advancedプログラムを用いて測定し、標本当たり9つの測定の平均を計算した。
【0154】
子宮成分の成分3(C3)遺伝子発現
処置した子宮組織中のC3の相対的発現レベルを決定するために、RNAを、製造業者の取扱説明書に従って、Micro to Midi Total RNA精製キット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて残りの組織から抽出した。RNAを定量化し、High Capacity cDNAアーカイブキット(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、等量を逆転写した。
【0155】
ABI Prism 7300 System(Applied Biosystems)を用いて、定量的PCRを行った。C3に対して及び参照遺伝子として18SリボソームRNAに対してプローブセットを有するTaqman Universal Master Mixを用いて、PCRを行った。熱サイクル条件は、95℃で10分間の初期変性ステップ、続いて、95℃で15秒、及び60℃で1分間の40サイクルを含んだ。
【0156】
相対遺伝子発現を、内因性対照(18S)に各試料を正規化し、較正器(ビヒクル)で比較することによって決定した。相対遺伝子発現を、等式:2-ΔΔCt(式中、Ct=サイクル閾値またはPCR生成物が最初に検出されたサイクル数、ΔCt=正規化した試料値、及びΔΔCt=投与された対象とビヒクルとの間の正規化差)を用いて決定した。5つの複製遺伝子発現の決定を、各試験内の各投与について行った。
【0157】
E2(0.01mg/kg)、ラロキシフェン(RAL、3mg/kg)、またはタモキシフェン(TAM、1mg/kg)による治療は、ビヒクル単独と比較して、子宮湿重量の有意な増加をもたらし、一方、0.3~100mg/kgの範囲の用量でのRAD1901治療は、子宮湿重量に有意な影響を及ぼさなかった(図23A)。示されたデータ(図23A)は、平均(±平均誤差)、群当たりn=4のラット、P対ビヒクル:*<0.05;対E2:‡<0.05である。さらに、E2(0.01mg/kg)と併用投与された場合に、RAD1901は、用量依存的様式においてE2の媒介による子宮の刺激を拮抗し、0.1mg/kg以上の用量で子宮向性活性の有意な阻害及び3mg/kgで完全な阻害を示した。RAD1901のEC50は、約0.3mg/kgであった。0.03~100mg/kgのRAD1901投与もまた、子宮湿重量または上皮の厚さに影響を及ぼさなかったマウスにおいて、同様の結果を得た(データ示さず)。
【0158】
子宮組織における治療依存的変化を、定量的顕微鏡組織学によってさらに調査した。0.01及び0.3mg/kgの両方でE2による治療後の、子宮内膜上皮の厚さの統計的に有意な増加があった(図23B)。上皮の厚さの有意な増加はまた、タモキシフェン(1mg/kg)またはラロキシフェン(3mg/kg)による治療後にも観察された。対照的に、RAD1901治療は、最も高く評価された用量の100mg/kgまで子宮内膜上皮の厚さを増加しなかった。子宮内膜上皮の代表的な画像を、図23Cに示す。
【0159】
子宮重量及び子宮内膜上皮の厚さの両方の変化と一致して、E2、タモキシフェン、及びラロキシフェンはすべて、エストロゲンを調節した成分遺伝子C3の発現を有意に増加した(図23D)。対照的に、RAD1901は、試験した用量のいずれか(0.3~100mg/kg)でC3遺伝子発現を増加しなかった。さらに、1、3、及び10mg/kgのRAD1901は、E2で刺激されたC3遺伝子発現を有意に抑制した。
【0160】
RAD1901は、未成熟雌ラットの子宮を刺激しなかった
未成熟雌ラットに、ビヒクル(VEH)、エストラジオール(E2)、ラロキシフェン(RAL)、タモキシフェン(TAM)、RAD1901、またはRAD1901+E2で3日間連続して1日1回経口投与を施した。子宮湿重量を測定した。示されたデータ(図23A)は、平均(±平均誤差)、群当たりn=4のラット、P対ビヒクル:*<0.05;対E2:‡<0.05である。
【0161】
実施例II(A)(2).RAD1901による治療は、卵巣摘出ラットにおいて骨量の減少を防いだ。
RAD1901の骨特異的効果を、卵巣摘出ラットにおいて試験した。
【0162】
閉経後骨量減少のモデルとして、麻酔をかけた雌Sprague-Dawleyラットにおいて、卵巣摘出術を行い、対照として偽手術を行った。手術後、群当たり20の動物を有する、卵巣摘出ラットを、ビヒクル、E2(0.01mg/kg)、またはRAD1901(0.1、0.3、1、3mg/kg)で4週間1日1回処置し、上述のように投与した。偽手術群の動物は、ビヒクルで処置した。すべての動物を、最終投与から24時間後に、二酸化炭素の吸入によって殺処分した。PIXImus二重発光X線吸光光度法を用いて、骨ミネラル濃度を、ベースラインさらに処置から4週間後に評価した。
【0163】
剖検時に、各動物の左大腿骨を除去し、軟組織がないように切開し、分析前に70%エタノール中に保存した。マイクロ-CT40システム(Scanco Systems,Wayne,PA)を用いて、詳細な定性的及び定量的3D評価を行った。各標本については、大腿遠位骨幹端の250の画像枚数を必要とした。予め選択された分析領域において直接3Dアプローチを用いて、形態学的パラメータを決定した。骨梁において決定されたパラメータは、骨体積密度、骨表面密度、骨梁数、骨梁幅、骨梁中心距離、連結密度、及び見掛け骨密度を含んだ。
【0164】
卵巣摘出術後、未処置(ビヒクル対照)ラットは、ベースラインと比較して、完全大腿骨全体及び腰椎の両方の骨ミネラル濃度を減少した(表6)。E2による治療は、大腿骨及び脊椎の両方の骨量減少の防止と関連した。RAD1901による治療は、卵巣摘出術で誘発した骨量減少の用量依存的で統計的に有意な抑制をもたらした(3mg/kgの処置群について示されたデータ)。0.1mg/kg~3mg/kgの用量で、RAD1901で処置したラットにおける骨ミネラル濃度は、完全であり、E2で処置した群と統計的に有意差はなかった。
【0165】
大腿遠位のマイクロCT分析(表7)は、卵巣摘出術が、偽手術動物と比較した場合に、多数の主なマイクロアーキテクチャパラメータの有意な変化を誘発したことを示した。これらの変化は、骨量の減少と一致し、骨体積の減少、骨梁数、厚さ、及び密度の減少、ならびに骨梁間隔の増加を含む。RAD1901による処置後に観察された骨ミネラル濃度の保存と一致して、骨梁アーキテクチャの有意な保存が、主なマイクロ構造パラメータにおいて観察された(表7)。
【0166】
実施例IV(B):健常な閉経後の女性におけるRAD101の第1相用量漸増試験
第1相試験では、安全性、耐性、及び薬物動態が、44人の健常な閉経後の女性において評価された。用量を制限する毒性(DLT)は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。血漿曝露は、試験した用量範囲にわたって用量比例的よりも増加した。
【0167】
対象
44人の健常な閉経後の女性を、この第1相試験の対象として登録した。対象は、少なくとも12か月間無月経であり、血清FSHが閉経と一致した。対象は、18.0~30kg/mのBMIを有する、40~75歳であった。臨床的に関連する病理の証拠を有し、卒中もしくは過去に静脈血栓塞栓事象のリスク増加がある、または臨床研究センターに登録する14日以内に併用薬(パラセタモールは、3日前まで許容された)の使用を有する患者は、除外された。
【0168】
投与
対象を、それぞれ、200mg、500mg、750mg、及び1000mgの用量レベルで、軽い朝食後に、プラセボまたは少なくとも1つの経口量で1日1回7日間治療した。第1相試験に登録した44人の閉経後の女性の主なベースライン人口統計を、表8に要約する。
【0169】
治療中に発生した有害事象(TEAE)
TEAEを記録し、最も頻繁に起こる(任意の関連したTEAEを有した全活性群の患者の10%超)有害事象(AE)を表9に要約し、「n」は、所与のカテゴリー中の少なくとも1つの治療に関連したAEを有する対象の数であり、AEは有害事象共通用語規準(CTCAE)v4.0のように等級分けされ、同じ優先使用語の複数のシナリオを有する任意の患者は、最も重度のグレードまで1回のみ計数した。用量を制限する毒性は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。
【0170】
薬物動態評価
血漿中のRAD1901の分析のための試験期間中に、一連の血液試料を採血した。留置IVカテーテルを介して、または抗凝血剤としてK-EDTAを含有するチューブへの直接静脈穿刺によって、5mLの血液試料をそれぞれ、採血した。定常状態は、治療から5日目で達成した。RAD1901の幾何平均(Geo-Mean)血漿濃度-時間プロファイルを評価した。試験において、7日目のRAD1901(200、500、750、または1,000mg)により治療した群(N=35)の血漿薬物動態の結果を、例として、表10及び図24に提供する。中央値t1/2は、37.5~42.3時間であった(表10)。RAD1901の複数回投与後、中央値tmaxは、投与後の3~4時間であった。
【0171】
実施例V(A)-1.選択公開されたER構造を用いたRAD1901-ERα結合のモデリング。
別途記述がない限り、構造をそれらのスティックモデルで示す場合、結合の各末端を、それに結合する原子と同じ色で色付けし、灰色は炭素であり、赤色は酸素であり、青色は窒素であり、白色は水素である。
【0172】
様々なERリガンド複合体形成されたERαリガンド結合ドメイン(LBD)の14の公開された構造(すなわち、モデル)を、慎重な評価によって96の公開されたモデルから選択した。これらの14のモデルのうちの1つは、3ERT(4-ヒドロキシタモキシフェンに結合したヒトERα LBD(OHT))であった。OHTは、タモキシフェンの活性代謝産物で、乳房組織中のアンタゴニストとしての役割を果たす第一世代のSERMである。
【0173】
3ERT(図25及び26)では、ERα結合部位は、らせん3(H3)、らせん5(H5)、及びらせん11(H11)を含む疎水性ポエットを形成する3つの層「らせんサンドイッチ」を導入する(図25)。図26中の点線の箱は、結合部位、及び重要であるまたはOHT結合によって達成される結合部位内の残基を表す。OHTは、LXXLLコアクチベータ(複数可)を結合する部位にH12を置換することによって、アンタゴニストとして役割を果たす。OHTは、L540によって正常に充填したスペースを占有し、らせん11のC末端上に4つの残基(G521、H524、L525、及びM528)の立体構造を修飾する。OHTはまた、D351との塩橋を形成し、電荷中和をもたらす。
【0174】
その他の13のERα LBD-ERリガンドモデルを、3ERTと比較した。それらの残基構造の違いを、表12に要約する。14のモデルのERα構造の重ね合わせ(図27)は、これらの構造が、残基E380、M421、G521、M522、H524、Y526、S527、M528、P535、Y537、L540、及びこれらの様々な組み合わせで有意に異なったことを示す。
【0175】
14のモデルの任意の対の標準偏差(RMSD)の計算を、表13に要約する。構造は、RMSDが2Å未満であった場合に、重なり合うと見なされた。表13は、すべての14のモデルが、1.5Å未満のRMSDを有したことを示す。フォーマット分析の使用は、1R5K及び3UUCが、他のモデルにあまり同様でなかったことを示唆した(分析は示さず)。したがって、1R5K及び3UUCは、試験された固有の別々の構造クラスターであると見なされた。
【0176】
14のモデルにおけるリガンドによって結合されたERα残基を、表14に要約する。表14はまた、ERα LBD-アンタゴニスト複合体におけるEC50を示す。14のモデルのうち、13のモデルは、リガンドとE353との間のH結合相互作用を示し、12のモデルは、リガンドとF404との間のπ相互作用を示し、5つのモデルは、リガンドとD351との間のH結合相互作用を示し、6つのモデルは、リガンドとH524との間のH結合相互作用を示し、4つのモデルは、リガンドとR394との間のH結合相互作用を示し、1つのモデル(3UUC)は、リガンドとT347との間の相互作用を示した。
【0177】
14のモデルの各々は、リガンドに加えて1,000の化合物のランダムライブラリーをドックするために使用し、このモデルは、周知のアンタゴニストを特定し、優先順位を付け得るかどうかを決定するために、(周知のアンタゴニスト)と共に公開された。このモデルが周知のアンタゴニストを特定し得る場合、このモデルは、それ自体が公開されたリガンドの構造を予測することができることが決定された。次いで、EF50を計算して、ランダム選択よりもいかに良好であるかを知るためにモデルの強度を定量化した。RAD1901を、選択したモデルにドッキングした(例えば図28~32)。モデルにおける公開されたリガンド及びRAD1901のドッキングスコアを決定した。また、EC50も決定した。RAD1901の目視検査は、それが、1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、2OUZにおいて公開されたリガンドと共に示される相互作用に「従う」ことを示した。空間不調和は認められなかった。ある特定の実施形態では、例えば、1R5k及び2BJ4において、RAD1901は、公開されたリガンドよりも高いドッキングスコアを有した。
【0178】
9つのモデル(1ERR、3ERT、3UCC、2IOK、1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZ)の評価結果を、表15に要約する。
【0179】
1ERR及び3ERTは、それらの結晶リガンドの正確な構造を予測することができなかった。RAD1901は、3UCCにドッキングされなかった。2IOK-RAD1901においてテトラヒドロナフタアレン非伝統的な様式で結合した。
【0180】
モデル1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZの間の大きな違いは、らせん11のC末端の残基(G521-M528)であった。
【0181】
図28A~Bは、RAD1901-1R5K(A)及びGW5-1R5K(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353、R394、及びL536とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0182】
図29A~Bは、RAD1901-1SJ0(A)及びE4D-1SJ0(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353及びD351とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0183】
図30A~Bは、RAD1901-2JFA(A)及びRAL-2JFA(B)のモデリングを示す。RAD1901は、F404とのp相互作用で結合した。
【0184】
図31A~Bは、RAD1901-2BJ4(A)及びOHT-2BJ4(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353及びR394とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0185】
図32A~Bは、RAD1901-2IOK(A)及びIOK-2IOK(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353、R394、及びD351とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0186】
モデルにおいて公開したリガンドは、以下の構造を有する:
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0187】
実施例V(A)-2.RAD1901及びフルベストラントによるERαの誘導適合ドッキング(IFD)
ERαにおいて、RAD1901の結合立体構造は、5つのERα結晶構造1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZのIFD分析によってさらに最適化された。IFD分析は、その正確な結合立体構造に適合するために(リガンド結合時の)受容体柔軟性を明らかにした。
【0188】
各リガンド(例えばRAD1901及びフルベストラント)に対して異なる立体構造のライブラリーは、回転結合について回転の関数として局所最小値を探すことによって生成した。RAD1901のライブラリーは、25の異なる立体構造を有した。
【0189】
5つのERα結晶構造を調製し、最小化した。公開されたX線構造において対応するリガンドは、ERα結合ポケットを定義するために使用した。
【0190】
RAD1901の立体構造は、調製されたERα構造にドッキングして、結合ポケットに位置する残基への側鎖または骨格運動を誘導することを可能にした。これらの運動は、ERαがその結合部位を変化させることを可能にし、そのため、RAD1901の立体構造の形状及び結合様式にさらに密接に適合した。いくつかの例では、受容体構造における小さな骨格弛緩及び有意な側鎖の立体構造の変化が、IFD分析において可能になった。
【0191】
経験的スコアリング関数は、ドッキングスコアまたはGスコアを提供するために、リガンド結合自由エネルギーを概算するために使用した。Gスコアはまた、GlideScoreとして知られており、この実施例では、ドッキングスコアと同義に使用してもよい。ドッキングスコアは、結合親和性の推定値であった。したがって、ドッキングスコアの値が低いほど、「より良好に」リガンドがその受容体に結合した。-13~-14のドッキングスコアは、非常に良好な結合相互作用に相当した。
【0192】
1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZによるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、それぞれ、それらの違いを示すために重ね合わせた(図33~35、スティックモデルにおいて示される)。各RAD1901の立体構造におけるすべての結合を、図33、34、及び35Aにおいて同じ色で示した。
【0193】
1R5K(青色)及び2OUZ(黄色)によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、前面にRAD1901のN-ベンジル-N-エチルアニリン基を有した(図33)。2BJ4(緑色)及び2JFA(ピンク色)によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、背面にRAD1901のN-ベンジル-N-エチルアニリン基を有した(図34)。2BJ4(緑色)、2JFA(ピンク色)、及び1SJ0(茶色)によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、それらの重ね合わせによって示されるように、ほぼ同様であった(図34A及び34B)。RAD1901のIFDドッキングスコアを表16に要約する。
【0194】
2BJ4によるRAD1901のIFDは、E353及びD351との水素結合相互作用及びF404とのπ相互作用を示した(図36A~36C)。図36Aは、H結合受容体基(赤色)、H結合ドナー基(青色)、及び疎水性基(黄色)に適している結合部位内の領域を示した。図36A~36Bでは、薄青色は、RAD1901の炭素に対するものであった。図37A~37Cは、RAD1901と2BJ4とのIFDのタンパク質表面の相互作用を示す。図37A及び37Bは、正面図であり、図37Cは、側面図である。RAD1901の分子表面は、図37A中では青色であり、図37C中では緑色であった。図37B及び37Cは、ERαの溶媒接触可能性のある表面の静電気を示し、赤色は陰性を示し、青色は陽性を示した。
【0195】
上述のように、2BJ4とのフルベストラントに対して、同様のIFD分析を行った。フルベストラント-2BJ4のIFDは、-14.945のGスコアをもたらし、E353、Y526、及びH524との水素結合相互作用、ならびにF404とのπ相互作用を示した(図38A~38C)。図38Aは、H結合受容体基(赤色)、H結合ドナー基(青色)、及び疎水性基(黄色)に適している結合部位内の領域を示した。図38Aでは、薄青色は、RAD1901において炭素に対するものであった。
【0196】
図39A及び39Bは、IFDによって2BJ4にドックされたRAD1901及びフルベストラントがF404とのπ相互作用及びE353との水素結合相互作用の両方を有したことを示した。さらに、RAD1901は、D351との水素結合相互作用を有した(青色は、RAD1901分子表面を表す、図39B)が、一方、フルベストラントは、Y526及びH524との水素結合相互作用を有した(緑色は、フルベストラント分子表面を表す、図39C)。RAD1901及びフルベストラントでドッキングされた2BJ4の重ね合わせを、図40A及び40Bに示す。図40Aでは、緑色は、フルベストラント分子表面を表し、青色は、RAD1901分子表面を表す。図40Bでは、茶色構造は、フルベストラントであり、青色構造は、RAD1901である。
【0197】
実施例V(A)-3.選択ERα変異のモデリング評価。
C末端リガンド結合ドメイン上の様々なERα変異の効果を評価した。評価した特定のERα変異は、Y537X変異体(式中、Xは、S、N、またはCである)、D538G、及びS463Pであった。
【0198】
らせん12中のY537残基。それは、一旦リン酸化されると、リガンド結合、ホモ二量体化、及びDNA結合を調節し得、ERαがリン酸化によって媒介された対照を逃れ、潜在的に選択的な腫瘍形成の利点を有する細胞を提供することを可能にし得る。加えて、それは、受容体を構造的に活性にする立体構造を変化させ得る。
【0199】
Y537S変異は、リガンドによって占有されているかどうかにかかわらず、転写活性のある閉鎖したポケット構造が好ましい。閉鎖しているが、占有されていないポケットは、ERαの構成的活性を説明し得る(Carlson et al.Biochemistry 36:14897-14905(1997))。Ser537は、Asp351との水素結合相互作用を構築し、らせん11~12のループの変化した構造及び溶媒が到達しにくい位置のLeu536の埋設をもたらす。これは、Y537S変異体タンパク質の構成的活性の一因となり得る。Y537S表面変異は、LBDポケットの表面上に影響を及ぼさない。
【0200】
Y537Nは、ERα陰性転移性乳癌でよく見られる。この部位の変異は、ERαがリン酸化によって媒介された対照を逃れ、潜在的に選択的な腫瘍形成の利点を有する細胞を提供することを可能にし得る。具体的には、Y537N置換は、ホルモン結合を模倣し得るERαにおいて構造変化を誘導し、受容体の二量化する能力に影響を及ぼさないが、受容体への構成的トランス活性化機能を与える(Zhang et al.Cancer Res 57:1244-1249(1997))。
【0201】
Y537Cは、Y537Nと同様の効果を有する。
【0202】
D538Gは、より好ましくは活性構造であるが、活性及び不活性の両方の構造を安定化させることによって全エネルギー景観を変え得る。これは、ホルモン耐性乳癌において観察されるように、ホルモンの不在下でこの変異体の構成的活性をもたらし得る(Huang et al.,“A newfound cancer activating mutation reshapes the energy landscape of estrogen-binding domain,”J.Chem.Theory Comput.10:2897-2900(2014))。
【0203】
これらの変異のいずれも、リガンド結合ドメインに影響を及ぼすまたは具体的には、RAD1901結合を妨げることを期待されない。Y537及びD538は、リガンド結合と無関係である構成的受容体の活性化をもたらす立体構造を変化させ得る。
【0204】
実施例V(B).RAD1901及び他の化合物による野生型及びLBD変異体のERα構築物のインビトロ結合アッセイ。
RAD1901による野生型(WT)及びLBD変異体のERα構築物のインビトロ結合アッセイは、RAD1901がWT ERαと同様の親和性を有する変異体ERαと結合したことを示した。
【0205】
WT及びLBD変異体のERα構築物は、発現し、N末端チオレドキシン及びTEVプロテアーゼによって切断された6xHisタグで対応するLBD残基302~552を精製することによって調製した。
【0206】
蛍光偏光(FP)は、製造業者の取扱説明書(Polar Screen,Invitrogen)のように、2nM フルオロモン、100nM WTまたはLBD変異体のERα構築物を用いて、ERαへの試験化合物(RAD1901、フルベストラント、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、及びAZD9496)の結合を決定するために使用した。各セットは、二重に行われ、異なるERα構築物に対するIC50を決定するためにある試験化合物を試験した(RAD1901結合アッセイについては図41)。
【0207】
上記のように、前述は、本発明の様々な実施形態を例示することを単に意図するものである。上に論じられる特定の改変は、本発明の範囲の限定と解釈されるべきではない。様々な同等物、変更、及び改変が本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、当業者にとって明らかであろうから、かかる同等の実施形態が、本明細書中に含まれるべきことも理解されるべきである。本明細書中に引用されたすべての参考文献は、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2C-2】
図2C-3】
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
図32A
図32B
図33
図34
図35A
図35B
図36A
図36B
図36C
図37A
図37B
図37C
図38A
図38B
図38C
図39A
図39B
図40A
図40B
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58