(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】シュートユニットおよびボイラプラント
(51)【国際特許分類】
B65G 11/20 20060101AFI20230414BHJP
F23C 10/18 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B65G11/20 Z
F23C10/18
(21)【出願番号】P 2021113388
(22)【出願日】2021-07-08
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】立川 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】人見 公太郎
(72)【発明者】
【氏名】海氣 洋三
(72)【発明者】
【氏名】村中 俊彦
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-356211(JP,A)
【文献】特開2002-060060(JP,A)
【文献】実開平02-088909(JP,U)
【文献】特開2009-243833(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103072782(CN,A)
【文献】特開2020-101308(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158326(WO,A1)
【文献】特開2018-020879(JP,A)
【文献】実開昭49-061270(JP,U)
【文献】国際公開第2016/024428(WO,A1)
【文献】特開2016-147744(JP,A)
【文献】国際公開第1993/014248(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 11/00-11/20
F23C 10/18
F23G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を送るためのシュートユニットであって、
水平方向に対して傾斜した床面を有する傾斜流路部と、
前記傾斜流路部の内面に設けられた複数の堰部材と、
を備え、
前記複数の堰部材の各々は、前記床面に接合されており、
前記傾斜流路部の軸線と鉛直線とを含む断面において、前記堰部材の上端と下端とを結ぶ仮想線と前記床面とが前記媒体の流れ方向における前記仮想線の下流側においてなす角度は、水平線と前記床面とのなす傾斜角度よりも大き
く、
前記断面において、前記複数の堰部材における隣り合う2つの堰部材のうち上流側に位置する堰部材の上端から鉛直方向に引いた鉛直方向仮想線と、前記隣り合う2つの堰部材のうち下流側に位置する堰部材の上端から水平方向に引いた水平方向仮想線との交点は、前記傾斜流路部の内側に位置する
とともに、
前記傾斜流路部の上端から鉛直方向に延在する鉛直流路部を更に備え、
前記鉛直流路部の軸線方向に沿って上方から前記シュートユニットを視たときに、前記複数の堰部材は、前記鉛直流路部の内側に位置する少なくとも1つの堰部材を含み、
前記断面において、前記複数の堰部材のうち前記媒体の流れ方向における最も上流側に位置する堰部材の上端は、前記床面と前記鉛直流路部の内面とが接続する位置よりも高い位置にある、
シュートユニット。
【請求項2】
前記傾斜流路部は、前記床面と対向する天井面を含み、
前記断面において、前記天井面と前記鉛直流路部の内面とが接続する位置を通る鉛直線と前記床面との交点を下流側交点と定義すると、
前記複数の堰部材は、前記媒体の流れ方向において前記下流側交点よりも下流側且つ前記下流側交点よりも上方に上端を有する堰部材を含む、請求項
1に記載のシュートユニット。
【請求項3】
媒体を送るためのシュートユニットであって、
水平方向に対して傾斜した床面を有する傾斜流路部と、
前記傾斜流路部の内面に設けられた複数の堰部材と、
を備え、
前記複数の堰部材の各々は、前記床面に接合されており、
前記傾斜流路部の軸線と鉛直線とを含む断面において、前記堰部材の上端と下端とを結ぶ仮想線と前記床面とが前記媒体の流れ方向における前記仮想線の下流側においてなす角度は、水平線と前記床面とのなす傾斜角度よりも大きく、
前記断面において、前記複数の堰部材における隣り合う2つの堰部材のうち上流側に位置する堰部材の上端から鉛直方向に引いた鉛直方向仮想線と、前記隣り合う2つの堰部材のうち下流側に位置する堰部材の上端から水平方向に引いた水平方向仮想線との交点は、前記傾斜流路部の内側に位置し、
前記傾斜流路部の上端から鉛直方向に延在する鉛直流路部を更に備え、
前記傾斜流路部の床面は、前記鉛直流路部の真下に平面部を有する
とともに、
前記断面において、前記複数の堰部材のうち前記媒体の流れ方向における最も上流側に位置する堰部材の上端は、前記平面部よりも高い位置にある、
シュートユニット。
【請求項4】
前記複数の堰部材は、前記
平面部よりも前記媒体の流れ方向における下流側に設けられた少なくとも1つの堰部材を含む、請求項
3に記載のシュートユニット。
【請求項5】
流動層ボイラと、請求項1乃至
4の何れか1項に記載のシュートユニットとを備える、ボイラプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シュートユニットおよびボイラプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流動層ボイラのシュート部を流動媒体の落下時の衝撃から保護するためのシュート部保護装置が開示されている。このシュート部保護装置は、シュート部の上方から投下された流動媒体を下方へ導くための上流側落下管と、上流側落下管内から排出された流動媒体が落下される床部を有し、床部に落下後の流動媒体がシュート部へ落下するよう構成された衝撃低減部と、衝撃低減部から落下する流動媒体を衝撃低減部の下方に位置するシュート部の内部に導くための下流側落下管と、を備える。
【0003】
この構成によれば、流動媒体を、シュート部に落下する前に衝撃低減部に落下させるようにすることにより、シュート部に直接落下させる場合よりも、シュート部に発生する衝撃を低減することができ、シュート部を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の構成は、シュート部(傾斜流路部)の床面の摩耗抑制の点で改善の余地がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、傾斜流路部の床面の摩耗を抑制することができるシュートユニットおよびこれを備えるボイラプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るシュートユニットは、
媒体を流すためのシュートユニットであって、
水平方向に対して傾斜した床面を有する傾斜流路部と、
前記傾斜流路部の内面に設けられた複数の堰部材と、
を備え、
前記傾斜流路部の軸線と鉛直線とを含む断面において、前記堰部材の上端と下端とを結ぶ仮想線と前記床面とが前記媒体の流れ方向における前記仮想線の下流側においてなす角度は、水平線と前記床面とのなす傾斜角度よりも大きい。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るボイラプラントは、
流動層ボイラと、上記シュートユニットとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、傾斜流路部の床面の摩耗を抑制することができるシュートユニットおよびこれを備えるボイラプラントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るボイラプラント2の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係るシュートユニット12の正面図である。
【
図3】
図2に示したシュートユニット12の背面図である。
【
図4】
図2に示したシュートユニット12の平面図である。
【
図5】
図2に示したシュートユニット12の右側面図である。
【
図6】
図2に示したシュートユニット12の底面図である。
【
図7】
図2に示したシュートユニット12のA-A断面図である。
【
図8】
図7に示したシュートユニット12のB-B断面図である。
【
図9】
図7に示すシュートユニット12における点検口31から蓋部材35を取り外した状態のC方向視図である。
【
図10】
図7に示した上記A-A断面の一部を拡大した部分拡大断面図であり、傾斜流路部16の軸線と鉛直線とを含む断面の一部を示している。
【
図11】
図7に示した上記A-A断面の一部を拡大した部分拡大断面図であり、傾斜流路部16の軸線と鉛直線とを含む断面の一部(
図10と同一の部分)を示している。
【
図12】鉛直方向仮想線L3と水平方向仮想線L4との交点P1が傾斜流路部16の外側(傾斜流路部16の流路外)に位置する場合について説明するための図である。
【
図13】
図7に示した上記A-A断面の一部を拡大した部分拡大断面図であり、傾斜流路部16の軸線と鉛直線とを含む断面の一部を示している。
【
図14】シュートユニット12の変形例を示す断面図であり、傾斜流路部16の軸線と鉛直線とを含む断面の一部を示している。
【
図15】シュートユニット12の変形例を示す断面図であり、傾斜流路部16の軸線と鉛直線とを含む断面の一部を示している。
【
図16】シュートユニット12の変形例を示す断面図であり、傾斜流路部16の軸線と鉛直線とを含む断面の一部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るボイラプラント2の概略構成を模式的に示す図である。
図1に示すボイラプラント2は、流動層ボイラ4と、流動層ボイラ4の火炉4aに燃料を供給するための燃料ライン6と、流動層ボイラ4用の流動媒体(例えば珪砂等)を送るための流動媒体ライン8と、流動媒体を貯留するための流動媒体貯留槽10と、を備える。
【0013】
流動層ボイラ4は、不図示の空気導入口から火炉4aの内部に供給した空気によって流動媒体を流動化させた流動層が流動層ボイラ4の火炉4aの内部に形成され、この流動層内に燃料を投入して燃焼させ、燃焼により生じた燃焼ガスの熱エネルギを火炉4aの後段に設置された不図示の伝熱管で回収し、発電等に用いるようにした装置である。
【0014】
燃料ライン6は、ボイラで燃焼させるための燃料として、例えば瀝青炭、褐炭、無煙炭、石油コークス、木質バイオマス、製紙スラッジ、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)、若しくは廃タイヤ等、又はこれらを加工した燃料を流動層ボイラ4に供給するように構成されている。
【0015】
流動媒体ライン8は、火炉4aの底部から流動媒体を抜き出して流動媒体貯留槽10に送るための流動媒体抜出ライン8aと、流動媒体貯留槽10から火炉4aに流動媒体を送るための流動媒体再投入ライン8bとを含む。
【0016】
流動媒体抜出ライン8aから流動媒体貯留槽10に送られた流動媒体は、流動媒体貯留槽10で貯留される。流動媒体再投入ライン8bから火炉4aに送られた流動媒体は、流動媒体再投入ライン8bから火炉4aの内部に再投入される。
【0017】
このように、流動媒体ライン8は、火炉4a内の流動媒体の少なくとも一部を流動媒体貯留槽10との間で循環させるように構成されている。
【0018】
次に、
図1に示した流動媒体ライン8における流動媒体抜出ライン8a及び流動媒体再投入ライン8bの各々に適用可能なシュートユニット12について説明する。
【0019】
図2は、一実施形態に係るシュートユニット12の正面図である。
図3は、
図2に示したシュートユニット12の背面図である。
図4は、
図2に示したシュートユニット12の平面図である。
図5は、
図2に示したシュートユニット12の右側面図である。
図6は、
図2に示したシュートユニット12の底面図である。
図7は、
図2に示したシュートユニット12のA-A断面図である。
図8は、
図7に示したシュートユニット12のB-B断面図である。
【0020】
例えば
図2~
図7に示すように、シュートユニット12は、鉛直流路部14及び傾斜流路部16を備える。なお、
図7に示したA-A断面は、傾斜流路部16の軸線La(傾斜流路部16の流路断面積を規定する断面の中心を傾斜流路部16の延在する方向につなぐ直線)と鉛直線(鉛直流路部14の軸線Lb)とを含む断面である。傾斜流路部16の軸線Laとは、傾斜流路部16の流路断面積を規定する断面の中心を傾斜流路部16の延在する方向につなぐ直線であり、傾斜流路部16の延在する方向に沿った直線である。鉛直流路部14の軸線Lbとは、鉛直流路部14の流路断面積を規定する断面の中心を鉛直流路部14の延在する方向につなぐ直線であり、鉛直流路部14の延在する鉛直方向に沿った直線である。
【0021】
鉛直流路部14は矩形断面を有する管状に構成されている。すなわち、鉛直流路部14における鉛直方向と直交する流路断面は矩形形状を有する。例えば
図7に示すように、鉛直流路部14は、傾斜流路部16の上端に接続しており、傾斜流路部16の上端から鉛直方向に沿って上方に向けて延在している。鉛直流路部14の上端には流動媒体が通る開口18が形成されており、開口18の周りにフランジ20が形成されている。
【0022】
傾斜流路部16は矩形断面を有する管状に構成されている。すなわち、傾斜流路部16における傾斜流路部16の軸線Laと直交する流路断面は矩形形状を有する。傾斜流路部16は、鉛直流路部14の下端に接続しており、鉛直流路部14の下端から水平方向に対して下方に傾斜した傾斜方向d1(軸線Laに沿った方向)に沿って延在している。傾斜流路部16における流動媒体の流れ方向の下流端には流動媒体が通る開口22が形成されており、開口22の周りにフランジ24が形成されている。以下、傾斜方向d1に沿った流動媒体の流れ方向を流動媒体の流れ方向d1と記載する。
【0023】
例えば
図7又は
図8に示すように、傾斜流路部16の内面26は、水平方向に対して傾斜した床面28と、床面28と対向する天井面30と、床面28と天井面30とを接続するとともに互いに対向する一対の側面32,34とを含む。
【0024】
例えば
図7に示すように、傾斜流路部16の床面28には、複数の堰部材36(図示する例では9つの堰部材36)が設けられている。複数の堰部材36は、傾斜流路部16の軸線方向(傾斜流路部16が延在する方向すなわち上記傾斜方向d1)に間隔を空けて配置されている。堰部材36の各々は、傾斜流路部16の床面28から天井面30側に向けて突出するように設けられている。堰部材36の各々は、傾斜方向d1と交差する平面(図示する例では傾斜方向d1と直交する平面)に沿って板状に構成されている。
【0025】
傾斜流路部16の天井面30には、天井面30を貫通する点検口31が形成されており、傾斜流路部16の外側に点検口31を塞ぐ蓋部材35が取付けられている。蓋部材35の外側には蓋部材35の開閉操作に使用するための取手35aが設けられている。
【0026】
例えば
図8に示すように、堰部材36の各々において、傾斜方向d1と直交する水平方向における堰部材36の一端は側面32に接続しており、傾斜方向d1と直交する水平方向における堰部材36の他端は側面34に接続している。
【0027】
図9は、
図7に示す構成について点検口31から蓋部材35を取り外した状態におけるシュートユニット12のC方向視図である。
図9に示すように、点検口31から蓋部材35を取り外すことにより、傾斜流路部16の床面28を含む内部の状態を点検口31から確認することができる。
【0028】
図10は、
図7に示した上記A-A断面の一部を拡大した部分拡大断面図である。
図10では、堰部材36に堰き止められて堆積した流動媒体をドットハッチングで模式的に示している。
【0029】
例えば
図10に示すように、上記A-A断面において、堰部材36の各々について、堰部材36の上端36a(堰部材36の先端)と堰部材36の下端36b(堰部材36における床面28側の端である基端)とを結ぶ仮想線L1(堰部材36の突出する方向に沿った仮想線)と床面28とが流動媒体の流れ方向d1における仮想線L1の下流側においてなす角度βは、水平線L2と床面28とがなす傾斜角度αよりも大きい。
【0030】
これにより、
図10に示すように、堰部材36によって流動媒体を堰き止めて堰部材36と床面28との間に流動媒体を堆積させて保持することができる。このため、傾斜流路部16を流れる流動媒体は、堆積した流動媒体の上を流れることとなり、運動エネルギーを有する移動中の流動媒体と傾斜流路部16の床面28とが接触することを抑制又は回避することができ、傾斜流路部16の床面28の摩耗を抑制することができる。
【0031】
図11は、
図7に示した上記A-A断面の一部を拡大した部分拡大断面図である。
図11では、堰部材36に堰き止められて堆積した流動媒体をドットハッチングで模式的に示している。
【0032】
例えば
図11に示すように、上記A-A断面において、複数の堰部材36における隣り合う2つの堰部材36のうち上流側に位置する堰部材36Aの上端36aから鉛直方向に引いた鉛直方向仮想線L3と、隣り合う2つの堰部材36のうち下流側に位置する堰部材36Bの上端36aから水平方向に引いた水平方向仮想線L4との交点P1は、傾斜流路部16の内側(傾斜流路部16の流路内)に位置する。
【0033】
ここで、
図11を用いて説明した構成が奏する効果について、
図12に示した構成と対比して説明する。
【0034】
図12に示すように、仮に、上記鉛直方向仮想線L3と水平方向仮想線L4との交点P1が傾斜流路部16の外側(傾斜流路部16の流路外)に位置する場合、隣り合う2つの堰部材36のうち上流側の堰部材36Aを乗り越えて落下した流動媒体は、下流側の堰部材36Bと床面28との間に堆積している流動媒体よりも流動媒体の流れ方向d1における上流側で床面28における流動媒体が堆積していない範囲W1に衝突する可能性がある。
【0035】
これに対し、
図11に示した構成によれば、隣り合う2つの堰部材36のうち上流側の堰部材36Aを乗り越えて落下した流動媒体は、下流側の堰部材36Bと床面28との間に堆積した流動媒体の上に落下することとなる。このため、運動エネルギーを有する移動中の流動媒体と傾斜流路部16の床面28とが接触することを効果的に抑制又は回避することができ、傾斜流路部16の床面28の摩耗を抑制する効果を高めることができる。
【0036】
例えば
図4に示すように、鉛直流路部14の軸線方向に沿って上方からシュートユニット12を視たときに、上記複数の堰部材36は、鉛直流路部14の内側に位置する少なくとも1つの堰部材36を含む。図示する例では、鉛直流路部14の軸線方向に沿って上方からシュートユニット12を視たときに、上記複数の堰部材36は、鉛直流路部14の内側に位置する8つの堰部材36を含む。
【0037】
かかる構成によれば、鉛直流路部14の内側に位置する堰部材36によって鉛直流路部14の真下に流動媒体を堆積させることができるため、鉛直流路部14の内部を落下してきた流動媒体が傾斜流路部16における鉛直流路部14の真下に位置する部分の床面28に衝突することを抑制することができ、該床面28の摩耗を抑制することができる。
【0038】
例えば
図13に示すように、上記A-A断面において、複数の堰部材36のうち流動媒体の流れ方向d1における最も上流側に位置する堰部材36Uの上端36aは、床面28と鉛直流路部14の内面40とが接続する位置P2よりも高い位置にある。
【0039】
これにより、上記A-A断面において、最も上流側に位置する堰部材36Uと傾斜流路部16の床面28と鉛直流路部14の内面40とに囲まれた空間Qに傾斜流路部の床面28の上端である位置P2よりも高い位置まで流動媒体を堆積させることができる。これにより、鉛直流路部14の内面40に沿って落下する流動媒体を堆積した流動媒体によって受けることができ、鉛直流路部14の内面40に沿って落下する流動媒体が傾斜流路部16の床面28に直接衝突することを抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部16の床面28のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。
【0040】
例えば
図13に示すように、上記A-A断面において、天井面30と鉛直流路部14の内面42とが接続する位置P3を通る鉛直線L5と床面28との交点を下流側交点P4と定義すると、複数の堰部材36は、流動媒体の流れ方向d1において下流側交点P4よりも下流側且つ下流側交点P4よりも高い位置に上端36aを有する堰部材36Dを含む。図示する例では、複数の堰部材36のうち流動媒体の流れ方向d1における最も下流側に位置する堰部材36が上記堰部材36Dに相当する。
【0041】
これにより、上記A-A断面において、天井面30と接続する上記内面42に沿って落下する流動媒体の落下位置に堰部材36Dによって流動媒体を堆積させることができる。このため、天井面30と接続する上記内面42に沿って落下する流動媒体を堆積した流動媒体によって受けることができ、鉛直流路部14の内面42に沿って落下する流動媒体が傾斜流路部16の床面28に直接衝突することを抑制又は回避することができる。また、
図13に示す構成によれば、傾斜流路部16の床面28のうち鉛直流路部14の真下に位置する範囲の全体に亘って流動媒体を堆積させることができるため、鉛直流路部14を落下する流動媒体が傾斜流路部16の床面28に直接衝突することを効果的に抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部16の床面28のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。
【0042】
例えば
図13に示すように、傾斜流路部16の底面44における鉛直流路部14の真下に位置する範囲(底面44における上記鉛直線L5よりも上方の範囲)の全体に、補強板46が固定されている。これにより、傾斜流路部16の床面28の変形を抑制するとともに、傾斜流路部16の床面28の摩耗が進んでも流動媒体のリークを補強板46によって防ぐことができる。
【0043】
図14は、シュートユニット12の変形例を示す断面図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図14に示すように、傾斜流路部16の床面28は、鉛直流路部14の真下に凹部50を有する。図示する例では、鉛直流路部14の真下の位置に上方に向けて開口するボックス状の構造部52が設けられ、ボックス状の構造部52の内面が上記凹部50に相当する。また、図示する例では、複数の堰部材36は、凹部50よりも流動媒体の流れ方向における下流側に設けられている。
【0044】
かかる構成によれば、鉛直流路部14の内部を落下する流動媒体を凹部50に堆積させることができる。これにより、鉛直流路部14の内面に沿って落下する流動媒体を凹部50に堆積した流動媒体によって受けることができ、鉛直流路部14の内部を落下する流動媒体が傾斜流路部16の床面28に直接衝突することを抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部16の床面28のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。また、例えば傾斜流路部16が円形の流路断面を有している場合には、堰部材36を傾斜流路部16の床面28に溶接等で接合することが難しくなりやすいが、上記凹部50は傾斜流路部16の断面形状によらずに設けることができる。
【0045】
また、例えばレイアウト上の制約によって凹部50を形成できる範囲が限られている場合に、凹部50よりも流動媒体の流れ方向における下流側に複数の堰部材36を設けて流動媒体を堆積させてもよく、これにより傾斜流路部16の床面28における広範囲において流動媒体との衝突に起因する摩耗を抑制することができる。また、後述する
図16に示す実施形態のように平面部54を設ける場合と比較して、凹部50内に確実に流動媒体を堆積させることができ、床面28の摩耗を効果的に抑制することができる。
【0046】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0047】
例えば、上述した幾つかの実施形態に係るシュートユニット12は、流動媒体ライン8に限らず、例えば
図1に示した燃料ライン6に適用してもよい。この場合、燃料ライン6によって流動層ボイラ4に供給する燃料が例えば木質系バイオマスや廃棄物系バイオマス等のペレット又はチップ等の流動媒体を含む場合において、燃料ライン6における傾斜流路部16の床面28の摩耗を抑制することができる。
【0048】
また、上述したシュートユニット12は、鉛直流路部14と傾斜流路部16とを備えていたが、シュートユニットは、鉛直流路部を備えていなくてもよく、傾斜流路部16の上端に流動媒体の入口となる開口が形成されていてもよい。
【0049】
また、鉛直流路部14における鉛直方向と直交する断面は矩形形状に限らず、円形形状であってもよい。また、傾斜流路部16における傾斜方向d1と直交する断面は矩形形状に限らず、円形形状であってもよい。この場合、傾斜流路部における「床面」とは、傾斜流路部の内面のうち、円形形状における下側の半円に対応する面であり、傾斜流路部の軸線と該軸線に直交する水平線とを含む平面に対して下側に位置する面である。
【0050】
また、例えば
図15に示すように、上述したA-A断面において、床面28と水平線L2とのなす角度αと、仮想線L1と床面28とのなす角度βとは、α<β<90°を満たしてもよい。
【0051】
これにより、少ない堰部材36の枚数で床面28流動媒体を効果的に堆積させることができ、簡素な構成で傾斜流路部16の床面28の摩耗を抑制することができる。
【0052】
また、例えば
図16に示すように、傾斜流路部16の床面28は、鉛直流路部14の真下に鉛直方向と直交する平面部54を有する。図示する例では、複数の堰部材36は、平面部54よりも流動媒体の流れ方向における下流側に設けられている。
【0053】
かかる構成によれば、鉛直流路部14の内部を落下する流動媒体を平面部54に堆積させることができる。これにより、鉛直流路部14の内面に沿って落下する流動媒体を平面部54に堆積した流動媒体によって受けることができ、鉛直流路部14の内部を落下する流動媒体が傾斜流路部16の床面28に直接衝突することを抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部16の床面28のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。また、例えば傾斜流路部16が円形の流路断面を有している場合には、堰部材36を傾斜流路部16の床面28に溶接等で接合することが難しくなりやすいが、上記平面部54は傾斜流路部16の断面形状によらずに設けることができる。
【0054】
また、例えばレイアウト上の制約によって平面部54を形成できる範囲が限られている場合に、平面部54よりも流動媒体の流れ方向における下流側に複数の堰部材36を設けて流動媒体を堆積させてもよく、これにより傾斜流路部16の床面28における広範囲において流動媒体との衝突に起因する摩耗を抑制することができる。
【0055】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るシュートユニットは、
流動層ボイラ用の流動媒体を送るためのシュートユニットであって、
水平方向に対して傾斜した床面を有する傾斜流路部と、
前記傾斜流路部の内面に設けられた複数の堰部材と、
を備え、
前記傾斜流路部の軸線と鉛直線とを含む断面において、前記堰部材の上端と下端とを結ぶ仮想線と前記床面とのなす角度は、水平線と前記床面とのなす傾斜角度よりも大きい。
【0057】
上記(1)に記載のシュートユニットによれば、傾斜流路部の軸線と鉛直線とを含む断面において、堰部材の上端と下端とを結ぶ仮想線と床面とのなす角度は、床面の傾斜角度よりも大きいため、堰部材によって流動媒体を堰き止めて堰部材と床面との間に流動媒体を堆積させて保持することができる。このため、傾斜流路部を流れる流動媒体は、堆積した流動媒体の上を流れることとなり、運動エネルギーを有する移動中の流動媒体と傾斜流路部の床面とが接触することを抑制又は回避することができ、傾斜流路部の床面の摩耗を抑制することができる。
【0058】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のシュートユニットにおいて、
前記断面において、前記複数の堰部材における隣り合う2つの堰部材のうち上流側に位置する堰部材の上端から鉛直方向に引いた鉛直方向仮想線と、前記隣り合う2つの堰部材のうち下流側に位置する堰部材の上端から水平方向に引いた水平方向仮想線との交点は、前記傾斜流路部の内側に位置する。
【0059】
仮に、上記鉛直方向仮想線と水平方向仮想線との交点が傾斜流路部の外側に位置する場合、隣り合う2つの堰部材のうち上流側の堰部材を乗り越えて落下した流動媒体は、下流側の堰部材と床面との間に堆積している流動媒体よりも上流側で床面における流動媒体が堆積していない範囲に衝突する可能性がある。
これに対し、上記(2)に記載のシュートユニットによれば、隣り合う2つの堰部材のうち上流側の堰部材を乗り越えて落下した流動媒体は、下流側の堰部材と床面との間に堆積した流動媒体の上に落下することとなる。このため、運動エネルギーを有する移動中の流動媒体と傾斜流路部の床面とが接触することを効果的に抑制又は回避することができ、傾斜流路部の床面の摩耗を抑制する効果を高めることができる。
【0060】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のシュートユニットにおいて、
前記傾斜流路部の上端から鉛直方向に延在する鉛直流路部を更に備え、
前記鉛直流路部の軸線方向に沿って上方から前記シュートユニットを視たときに、前記複数の堰部材は、前記鉛直流路部の内側に位置する少なくとも1つの堰部材を含む。
【0061】
上記(3)に記載のシュートユニットによれば、上記少なくとも1つの堰部材によって鉛直流路部の真下に流動媒体を堆積させることができるため、鉛直流路部の内部を落下してきた流動媒体が傾斜流路部における鉛直流路部の真下に位置する部分の床面に衝突することを抑制することができ、該床面の摩耗を抑制することができる。
【0062】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載のシュートユニットにおいて、
前記断面において、前記複数の堰部材のうち前記流動媒体の流れ方向における最も上流側に位置する堰部材の上端は、前記床面と前記鉛直流路部の内面とが接続する位置よりも高い位置にある。
【0063】
上記(4)に記載のシュートユニットによれば、上記最も上流側に位置する堰部材と傾斜流路部の床面と鉛直流路部の内面とに囲まれた空間に傾斜流路部の床面の上端よりも高い位置まで流動媒体を堆積させることができる。これにより、鉛直流路部の内面に沿って落下する流動媒体を堆積した流動媒体によって受けることができ、鉛直流路部の内面に沿って落下する流動媒体が傾斜流路部の床面に直接衝突することを抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部の床面のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。
【0064】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)に記載のシュートユニットにおいて、
前記傾斜流路部は、前記床面と対向する天井面を含み、
前記断面において、前記天井面と前記鉛直流路部の内面とが接続する位置を通る鉛直線と前記床面との交点を下流側交点と定義すると、
前記複数の堰部材は、前記流動媒体の流れ方向において前記下流側交点よりも下流側且つ前記下流側交点よりも上方に上端を有する堰部材を含む。
【0065】
上記(5)に記載のシュートユニットによれば、上記断面において、天井面と接続する上記内面に沿って落下する流動媒体の落下位置に堰部材によって流動媒体を堆積させることができる。このため、天井面と接続する上記内面に沿って落下する流動媒体を堆積した流動媒体によって受けることができ、天井面と接続する上記内面に沿って落下する流動媒体が傾斜流路部の床面に直接衝突することを抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部の床面のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。特に、上記(1)~(5)に記載の構成を全て有する場合には、傾斜流路部の床面のうち鉛直流路部の真下に位置する範囲に流動媒体が直接落下することを抑制又は回避する効果を一層高めることができ、ことができ、傾斜流路部の床面のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。
【0066】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のシュートユニットにおいて、
前記傾斜流路部の上端から鉛直方向に延在する鉛直流路部を更に備え、
前記傾斜流路部の床面は、前記鉛直流路部の真下に平面部を有する。
【0067】
上記(6)に記載のシュートユニットによれば、鉛直流路部の内部を落下する流動媒体を平面部に堆積させることができる。これにより、鉛直流路部の内面に沿って落下する流動媒体を平面部に堆積した流動媒体によって受けることができ、鉛直流路部の内部を落下する流動媒体が傾斜流路部の床面に直接衝突することを抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部の床面のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。
【0068】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のシュートユニットにおいて、
前記傾斜流路部の上端から鉛直方向に延在する鉛直流路部を更に備え、
前記傾斜流路部の床面は、前記鉛直流路部の真下に凹部を有する。
【0069】
上記(7)に記載のシュートユニットによれば、鉛直流路部の内部を落下する流動媒体を凹部に堆積させることができる。これにより、鉛直流路部の内面に沿って落下する流動媒体を凹部に堆積した流動媒体によって受けることができ、鉛直流路部の内部を落下する流動媒体が傾斜流路部の床面に直接衝突することを抑制又は回避することができる。したがって、傾斜流路部の床面のうち摩耗しやすい部分の摩耗を抑制することができる。また、上記(6)に記載の構成と比較して、凹部内に確実に流動媒体を堆積させることができ、床面の摩耗を効果的に抑制することができる。
【0070】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のシュートユニットにおいて、
前記複数の堰部材は、前記凹部よりも前記流動媒体の流れ方向における下流側に設けられた少なくとも1つの堰部材を含む。
【0071】
上記(8)に記載のシュートユニットによれば、上記(7)の凹部に堆積した流動媒体によって鉛直流路部の真下の床面の摩耗を抑制することができる。また、レイアウト上の制約によって凹を形成できる範囲が限られている場合であっても、上記(8)に記載のように凹部よりも流動媒体の流れ方向における下流側に堰部材を設けて流動媒体を堆積させることにより、傾斜流路部の床面における広範囲において流動媒体との衝突に起因する摩耗を抑制することができる。
【0072】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係るボイラプラントは、
流動層ボイラと、上記(1)乃至(8)の何れかに記載のシュートユニットとを備える。
【0073】
上記(9)に記載のボイラプラントによれば、上記(1)乃至(8)の何れかに記載のシュートユニットを備えるため、傾斜流路部の床面の摩耗を抑制することができる。これにより、傾斜流路部の床面の破損に起因するボイラプラントの運転停止やメンテナンス等を低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 ボイラプラント
4 流動層ボイラ
4a 火炉
6 燃料ライン
8 流動媒体ライン
8a 流動媒体抜出ライン
8b 再投入ライン
10 流動媒体貯留槽
12 シュートユニット
14 鉛直流路部
16 傾斜流路部
18,22 開口
20,24 フランジ
26,40,42 内面
28 床面
30 天井面
31 点検口
32,34 側面
35 蓋部材
35a 取手
36,36A,36B,36D,36U 堰部材
36a 上端
36b 下端
44 底面
46 補強板
50 凹部
52 構造部