(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】付加製造に使用するための焼結可能な金属ペースト
(51)【国際特許分類】
B22F 1/052 20220101AFI20230414BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230414BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20230414BHJP
B22F 1/107 20220101ALI20230414BHJP
B22F 1/12 20220101ALI20230414BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20230414BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20230414BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20230414BHJP
B22F 10/34 20210101ALI20230414BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230414BHJP
C22C 1/05 20230101ALI20230414BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20230414BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B22F1/052
B22F1/00 V
B22F1/102
B22F1/107
B22F1/12
B22F1/14 500
B22F9/00 B
B22F10/20
B22F10/34
B33Y70/00
C22C1/05 Z
C22C19/05 Z
C22C33/02 103Z
(21)【出願番号】P 2021180522
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2019512181の分割
【原出願日】2017-05-12
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518403322
【氏名又は名称】マントル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ティー コナー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ランディ グローブス
(72)【発明者】
【氏名】セオドア ソロム
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505415(JP,A)
【文献】特表2004-504490(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001241(WO,A1)
【文献】特開2015-224363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
C22C 1/00-45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~40μmの範囲にある第1のD50を有する、金属足場粒子である第1の複数の金属粒子と、
該第1のD50より小さい第2のD50を有する、金属足場粒子または金属溶浸材粒子である第2の複数の金属粒子と、
前記第2のD50より小さい第3のD50を有する、金属溶浸材粒子である第3の複数の金属粒子と、
を含み、
第2および第3の複数の金属粒子が、第1の複数の金属粒子の真球度よりも高い真球度を有
し、
前記第2の複数の金属粒子が、クロム、コバルトまたはニッケルを含む抗酸化シェルを有し、
前記金属足場粒子の融点は、前記金属溶浸材粒子の融点よりも1~100℃高いか、または、低い融点を有し、
前記金属溶浸材粒子の材料は、焼結プロセス中に前記金属足場粒子の溶融を支援するように選択され、
前記金属溶浸材粒子が、アルミニウム、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、バナジウムおよび亜鉛、ならびにこれらの混合物、合金または複合材を含む群から選択される材料を含む、
金属ペースト組成物。
【請求項2】
前記第2のD50が1~10μmの範囲にあり、前記第3のD50が0.1~1.0μmの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バインダー、溶媒および分散剤をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
金属部品を形成するための付加製造に使用可能な金属ペーストを形成する方法であって、
1~40μmの範囲にある第1のD50を有し、焼結中に、元素拡散により、異なる金属粒子の中で分布している元素が均一に分布されるように前記金属部品の組成と似ているか、または同一である組成を有する、金属足場粒子である第1の複数の金属粒子を用意するステップと、
前記第1のD50より小さい第2のD50を有する、金属足場粒子または金属溶浸材粒子である第2の複数の金属粒子を用意するステップと、
前記第2のD50よりも小さな第3のD50を有し
、金属溶浸材粒子である第3の複数の金属粒子を用意するステップと、
前記第1、第2および第3の複数の金属粒子を、バインダー、分散剤および溶媒と混合して、前記金属ペーストを形成するステップと、
を含み、
前記第2の複数の金属粒子の組成が、前記第1および第3の複数の金属粒子の組成に関する前記金属部品の
冶金組成と
、前記金属部品の冶金組成とを平衡させる(balance)よう選択され、
前記第1、第2および第3の複数の金属粒子の組成の平均が、前記金属部品の前記冶金組成と等しく、
第2および第3の複数の金属粒子を用意するステップが、第1の複数の金属粒子の真球度よりも高い真球度を有するように第2および第3の複数の金属粒子を選択するステップを含
み、
前記第2の複数の金属粒子が、クロム、コバルトまたはニッケルを含む抗酸化シェルを有し、
前記金属足場粒子の融点は、前記金属溶浸材粒子の融点よりも1~100℃高いか、または、低い融点を有し、
前記金属溶浸材粒子の材料は、焼結プロセス中に前記金属足場粒子の溶融を支援するように選択され、
前記金属溶浸材粒子が、アルミニウム、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、バナジウムおよび亜鉛、ならびにこれらの混合物、合金または複合材を含む群から選択される材料を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属の付加製造に使用する材料に関する。より詳細には、特定の粒度分布および組成を有する金属粒子の混合物を含む、いくつかの金属ペースト配合物が開示される。これらの金属ペーストを使用して、金属の付加製造の加工に実質的に改善をもたらす方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
付加製造は、材料がカスタマイズして組み立てられ、他では不可能であるか、または作製が不便な、要求に応じた部品が生産されるという、急速に成長している分野である。付加製造用の最も一般的な設計(motif)は、一層毎にプラスチックまたは金属を堆積することである。各層は、選択的な物質およびエネルギー投入により、個別に成形される。金属付加製造の下位分野は、特に、試作、航空宇宙構成部品および工業用工具などの用途のための高価値金属片の作製において、かなり有望である。
【0003】
金属の付加製造における技術の現状は、通常、「粉末床溶融」(PBF)と呼ばれる技法で、粗金属粉末をレーザー融解または焼結するものである。この技法では、乾燥金属粉末が構築物表面(または、床)全体に広げられ、薄が均一な層にされる。続いて、高出力レーザーを粉末床全体に移動して、層の所望の形状に融解させる選択領域を励起するだけである。次に、所望の形状が層状に形成され、この形状が非融解金属粉末中に埋まるまで、この粉末を広げてレーザー融解するステップを繰り返す。
【0004】
PBFの大部分の実施は、通常、5~30マイクロメートルの範囲の直径、および50~100マイクロメートルの範囲の層厚さを有する、「粗い」金属粒子を利用する。粒子の層は、2個の粒子分の厚さと同じくらいわずかであり、空隙の不均質なポケットができる可能性、およびその結果として生じる様々な材料特性をもたらす。これまでの熟練者は、このような金属粉末を、レーザーシステムのエネルギーおよび材料選択に応じて、融解または焼結のどちらか一方が行われ得ることを教示している。金属粉末のある領域をある時間の間に液相に変換させる、粗い金属粒子の融解は、通常、多孔度の低い金属片が生じ、高い機械的強度をもたらす。反対に、近傍金属粒子を部分的に溶融するのに十分に、金属粉末のある領域を励起させる、粗い金属粒子の焼結は、通常、機械的強度の低い金属片が生じるが、融解よりも焼結の方が使用され得る電力は少ない。
【0005】
粉末を融解または焼結するために使用されるエネルギーは粒子サイズに依存し、粒子が小さいほど、粒子の表面積が大きくなり、屈曲が大きくなり、かつ移動可能な表面原子が多くなるので、少ないエネルギーしか必要としない。粗い粉末を融解するために、レーザーは、通常、1kW超の出力を有しており、このような高出力レーザービームを収容できるよう、総合的な安全管理を必要とする。この技法に関する変形および改良が知られている(例えば、特許文献1(Deckardに交付)および特許文献2(Philippiに交付)に示されている)。ほとんどすべての金属付加製造技法間の共通性は、前駆体として使用される乾燥金属粉末である。
【0006】
10マイクロメートル未満の直径を有する金属粉末は、表面積および相関する粒子間引力の増加に起因する、固有の粘性および凝集性のために、制御可能に特定の位置に移動させることは難題である。溶媒中の金属粉末の分散液である金属ペーストは、10マイクロメートル未満の直径を有する金属粉末の層を堆積させる手段として当分野で公知である。溶媒の添加は、粒子を粒子間引力から遮断する効果を有する。ポリマーなどの様々な添加物がペーストに含まれて、粒子は互いに滑らかに流れることが可能となる。金属ペーストは、示されている通り、付加製造(例えば、特許文献3(Hinczewskiに交付)を参照)において使用されており、この場合、金属ペーストは層状に堆積されて、多段階プロセスによってさらに焼結される。しかし、金属ペーストの配合および使用に様々な課題があるため、金属ペーストがPBF技法などの金属付加製造に使用されることはほとんどない。
【0007】
レーザー融解および焼結の両方が使用されて、十分に密度の高い、高強度金属片が金属粉末から形成するが、機器が高価で複雑であること、加工時間が長いこと、および生産された金属部品の機械特性が不均質であるなどの、PBFに対して共通した欠点が存在する。それにもかかわらず、融解および焼結を使用するこのような付加製造技法は、金属粉末源から高密度金属部品を生産する手段として考えることができる。金属部品の密度を高める目標を実現する代替的な手段として、他の技法が開発されてきた。
【0008】
これらの開発の1つは、融解金属(溶浸材)が金属粉末の多孔体(足場)を溶浸して、密度が向上して機械特性が改善する、金属溶浸である。Taubenblatにより教示(特許文献4を参照)されているものなどの、より少ない融解溶浸材のインゴッドを外側に配置させることにより、いくつかのタイプの足場を溶浸することができることが知られている。この技法は、粉末冶金分野において一般に使用されている。溶浸における強化機構は、足場が割れ目の開始部位として働く隙間を有し、別の金属によりこれらの隙間が充填されて、この破損機構を軽減するものである。
【0009】
通常、溶浸を成功させるためには、3つの条件:1)溶浸材金属が、足場金属よりも低い融点を有し、その結果、液状溶浸材が、固体の多孔質足場片と接触することができること、2)溶浸材が、多孔質足場片と接触して、この溶浸材料が多孔質足場片に流れ込んで、均質に分布するように加熱されること、および3)溶浸材金属が、細孔を塞ぎ、溶浸材の多孔質足場片への一層深い流入を阻止するか、または不均質な分布をもたらすような異方的に足場金属と反応しないことを満足しなければならない。
【0010】
これらの3つの条件を満足することは、足場/溶浸材の対として使用することができる材料と、多くの労力を要する加工条件をやはりもたらす材料の両方に対して多数の制約を課すことになる。鉄を含む足場金属を含む、最も一般的な例では、融点の差異条件のため、材料選択は、主に700~1100℃の間の融点を有する銅合金に制限される。さらに、溶浸材は、細孔を1mm~10cmの距離で流れることが望ましいことがあり、これは、24~48時間の実現可能な期間で、溶浸過程を完了するよう十分な拡散速度を実現するために、液状金属溶浸材をこの融点よりも十分に高い温度まで加熱することが必要となり得る。
金属溶浸技法は、通常、層状成長を利用しないが、代わりに、鋳型への金属ペーストキャスト法を使用する。付加製造において使用することが意図されている実施の1つは、用語「Keltool」と既に商標化されており、多孔質鉄足場が、金属ペーストの鋳型への注入から作製される多段階過程を含むものであった。続いて、銅合金材料を融解して、24~48時間の過程にわたり、多孔質足場に流し込まれる。このような金属溶浸技法はまた、金属の焼結と連携して使用されて、得られた金属片の機械的特性が劇的に改善され得る。材料および加工の選択に応じて、焼結および溶浸事象を、逐次または同時に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,316,580号明細書
【文献】米国特許第8,784,721号明細書
【文献】米国特許第6,974,656号明細書
【文献】米国特許第3,652,261号明細書
【発明の概要】
【0012】
材料を使用して、乾燥金属ペーストの容易に焼結される層状体を生成することにより、機能性金属種を形成できるような、材料および方法が開示されている。微細構造レベルでは、乾燥時に、金属ペーストは、溶浸材金属粒子を有する多孔質金属足場粒子のマトリックスを生成し、溶浸材金属粒子は、多孔質足場の隙間中の間隙に位置する。この材料が機械的および加工上の有益性を実現するために、足場粒子のパッキングを著しく悪化させない方法で溶浸材粒子が多孔質足場片にパッキングし、その結果、加熱時に、該溶浸材粒子が多孔質足場をやはり溶浸することができるよう、溶浸材粒子が選択される。このペーストを使用する方法は、堆積/除去というハイブリッドプロセスにより、高速および高解像度の金属部品生成を伴う技法を実現する。
【0013】
本開示は、以下の実施形態を対象とする:
1.01 金属構造体の層状成長に使用するための金属ペーストであって、
少なくとも溶媒およびポリマーバインダーを含むビヒクルと、
構造用金属の粒子を含み、D50を有する金属足場粒子と、
金属足場粒子のD50の1/5未満のD50を有し、金属足場粒子間の隙間空間に主に位置するような、金属溶浸材粒子と、
を含む、金属ペースト。
1.02 反応性無機構成成分をさらに含む、1.01の金属ペースト。
1.03 無機強化構成成分をさらに含む、1.01の金属ペースト。
1.04 ビヒクルが、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、テルピネオール、テキサノールブチルエステル、ミネラルスピリット、プロピレンカーボネート、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、エタノールアミンおよびN-メチルピロリドン、ジクロロメタン、ケトン、ジメチルアセトアミド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチルおよび酢酸n-ブチルからなる群から選択される溶媒を含む、1.01の金属ペースト。
1.05 ビヒクルが、ポリ(エチエレンオキシド)(poly(ethyelene oxide));エチルセルロース;メチルセルロース;寒天;ヒドロキシエチルセルロース;ニトロセルロース;ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリルコポリマー、マレイン酸およびマレイン酸エステル;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリビニルブチラール;ポリ(カーボネート)、ポリ(アクリル酸);ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;フェノール樹脂;パラフィンワックス、エチレンビニルアルコール、ポリカプロラクタムおよびこれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つのバインダーを含む、1.01の金属ペースト。
1.06 ビヒクルが、約200~350℃の分解温度を有するバインダーを含み、残留炭素含有量が、総金属ペーストの約0.1重量%~0.5重量%の間である、1.01の金属ペースト。
1.07 ビヒクルが、200~250℃の分解温度を有するバインダーを含み、残留炭素含有量が、総金属ペーストの0.5重量%未満であるか、またはビヒクルが、250~300℃の分解温度を有するバインダーを含み、残留炭素含有量が、総金属ペーストの0.5重量%未満である、1.01の金属ペースト。
1.08 金属ペーストが、50,000~500,000cpsまたは100,000~300,000cpsなどの約10,000~1,000,000cpsの間の粘度を有する、1.01の金属ペースト。
1.09 固体搭載量が、総金属ペーストの75~95重量%または90~95重量%などの約50~95重量%の間である、1.01の金属ペースト。
1.10 金属足場粒子が、1μm~3μmの間のD50および3μm~6μmの間のD90、1μm~5μmの間のD50および5μm~10μmの間のD90、または1μm~8μmの間のD50および8μm~16μmの間のD90などの、1μm~8μmの間のD50および2μm~16μmの間のD90を有する、1.01の金属ペースト。
1.11 金属足場粒子が、オレイン酸、オクタン酸、オクチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、アジピン酸、セバシン酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチエレンオキシド)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびニトロセルロースからなる群から選択される表面配位子を含む、1.01の金属ペースト。
1.12 金属足場粒子が、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、チタン、スズ、タングステン、バナジウムおよび亜鉛、ならびにこれらの混合物、合金または複合材からなる群から選択される材料を含む、1.01の金属ペースト。
1.13 金属足場粒子が、銅、ニッケル、アルミニウムおよびチタンからなる群から選択される材料を含む、1.01の金属ペースト。
1.14
a. 金属足場粒子がコアシェル粒子の形態であり、コアが、鉄、銅またはチタンから選択される金属を含み、シェルが、コバルトまたはニッケルを含み、シェル材料が、約100nm未満の厚さであるか、または
b. 金属足場粒子がコアシェル粒子の形態であり、コアが鉄を含み、シェルがコバルトまたはニッケルを含み、シェル材料が、約25nm未満の厚さである、金属ペースト。
1.15 金属足場粒子が、コアシェル粒子の形態であり、シェルがクロム、コバルトまたはニッケルを含む、1.01の金属ペースト。
1.16 金属溶浸材粒子が、50nm~300nmの間、または50nm~100nmの間などの50nm~1μmの間のD50を有する、1.01の金属ペースト。
1.17 金属溶浸材粒子が、アルミニウム、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、バナジウムおよび亜鉛を含む群から選択される材料を含む、1.01の金属ペースト。
1.18 反応性無機構成成分が、100nm~200nm、25~100nm、または10~50nmの間などの10~200nmの間のD50粒子サイズを有する、1.02の金属ペースト。
1.19 反応性無機構成成分粒子が、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチエレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、グアーガムおよびキサンタンガムを含む群から選択される、反応性を限定する表面配位子を有する、1.02の金属ペースト。
1.20 反応性無機構成成分が、アルミニウム、ホウ素、炭素、鉄、酸素、カリウムまたはナトリウムを含む、1.02の金属ペースト。
1.21 反応性無機構成成分が、還元種および酸化種の両方を含む、1.20の金属ペースト。
1.22 反応性無機構成成分が、ホウ素、鉄および酸素を含む複数の粒子であり、複数の粒子が配位子種によりコーティングされており、こうして、酸化反応、ガス発生反応または除去反応が0.1~1W/mm3または1~10W/mm3などの、約0.1~10W/mm3のレーザー出力により引き起こされる、1.02の金属ペースト。
1.23 金属ペーストが、0.5~5重量%の間の無機強化構成成分を含み、無機強化構成成分が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ、炭化ケイ素および炭化タングステンから選択される、1.03の金属ペースト。
1.24 金属ペーストが、0.5~5重量%の間の無機強化構成成分を含み、無機強化構成成分が、10~50nmの間の直径および500nm~20μmの長さを有する、カーボンナノチューブを含む、1.03の金属ペースト。
2.01
a. バインダーおよび溶媒を含むビヒクルであって、金属ペーストの3~10重量%の濃度である、ビヒクルと、
b. 99.5重量%超の鉄および0.5重量%未満の炭素を含む、金属足場粒子であって、1μm~8μmの間のD50を有しており、かつ金属ペーストの50~70重量%の間の濃度である、金属足場粒子と、
c. ニッケルを含み、かつ金属足場粒子のD50の1/5未満のD50を有し、その結果、金属足場粒子間に形成される隙間空間に主に位置し、金属ペーストの10~30重量%の濃度である、金属溶浸材粒子と
を含む、金属構造体の層状成長に利用する金属ペースト。
2.02 ホウ素、銅および鉄からなる反応性無機構成成分をさらに含み、200nm未満のD50粒子サイズを有する、2.01の金属ペースト。
2.03 炭素ナノ材料からなる無機強化構成成分をさらに含み、100nm未満の直径を有する、2.01の金属ペースト。
2.04 金属足場粒子が、99.5重量%超の鉄および0.5重量%未満の炭素からなり、金属溶浸材粒子がニッケルから本質的になる、2.01の金属ペースト。
3.01 金属ペーストを堆積させて金属部品を生成する付加製造方法であって、
(a)金属ペーストを金属製またはセラミック製基材上に堆積して、湿潤フィルムを形成させるステップであって、金属ペーストが、(i)1μm~5μmの間のD50を有する、金属足場粒子であり、金属ペーストの50~70重量%の間の濃度を有する、金属足場粒子、(ii)金属足場粒子のD50の1/5未満のD50を有し、その結果、金属足場粒子間に形成される隙間空間に主に位置し、金属ペーストの10~30重量%の濃度である、金属溶浸材粒子を含む、ステップ、
(b)エネルギー投入により、溶媒が湿潤層から本質的に除去されて、湿潤フィルムの一部の残留構成成分が、場合により分解するまで湿潤フィルムを乾燥し、これにより、乾燥フィルムを形成させる、ステップ、
(c)1~10Wの間のレーザー出力による光励起によって、乾燥フィルムから材料が選択的に除去されて、層形状を画定する、レーザースクライブを行うステップ、
(d)乾燥フィルムを焼結するステップであって、層が、500~800℃の間の温度まで加熱されて、金属粒子が一緒に、および下位層と溶融するよう、フィルムにエネルギーを施用する、ステップ、
(e)(a)~(d)を繰り返して、金属部品を生成するステップ
を含む、方法。
3.02 乾燥フィルムがある厚さを有し、該乾燥フィルムの厚さが、焼結ステップの間に、層に対して正常な方向に、20~40%の間の線収縮率を受ける、3.01の方法。
3.03 金属ペーストを堆積するステップが、堆積圧、押出成形の開口径およびノズルの移動を変えることにより、10~200mm/sの線速度、50~500μmの線幅で、5μm~250μmの間に制御した厚さのペーストを堆積するステップを含む、3.01の方法。
3.04 組み立てステップおよびポストアニール(post-annealing)ステップをさらに含む、3.01の方法であって、金属片が、(e)を行った後に、600~900℃の間の温度で熱処理される、方法。
3.05 得られた金属部品が、最終ポストアニールステップの後に、全体積の1~15%の間の多孔度を有する、3.04の方法。
3.06 金属部品が、最終ポストアニールステップ中に、1~15%の間の体積収縮を受ける、3.04の方法。
3.07 、金属部品が鉄を含み、最終後アニールステップの後に、500~1,000MPaの間の極限引張強度、100~200BHの間のブリネル硬度、および100~150GPaの間の弾性率を有する、3.01の方法。
3.08 金属部品が、最終ポストアニールステップの後に、0.2μm~2μmの間の平均表面粗さを有する、3.01の方法。
4.01 金属ペースト組成物であって、
第1の粒度分布を含む、第1の複数の金属粒子と、
第1の粒度分布より粒子径が小さい粒子径の第2の粒度分布を含む、第2の複数の金属粒子と、
第2の粒度分布より粒子径が小さい粒子径の第3の粒度分布を含む、第3の複数の金属粒子と、
を含む、金属ペースト。
4.02 第1の粒度分布が10~40μmの範囲にあり、第2の粒度分布が1~10μmの範囲にあり、第3の粒度分布が0.1~1.0μmの範囲にある、4.01の組成物。
4.03 第1の複数の金属粒子の集団が、第2の複数の金属粒子の集団よりも大きく、かつ第1の複数の金属粒子の集団が、第3の複数の金属粒子の集団よりも大きい、4.01の組成物。
4.04 バインダー、溶媒および分散剤をさらに含む、4.01の組成物。
4.05 第1および第2の複数の金属粒子の形状が球状である、4.01の組成物。
5.01 表1A、1Bまたは1Cに示されている配合物を含む、付加製造において使用することが可能な金属ペースト。
6.01 金属部品を形成するための付加製造において使用可能な金属ペーストを形成する方法であって、
第1の複数の金属粒子を用意するステップであって、第1の複数の金属粒子が、第1の粒度分布を含み、第1の複数の金属粒子の組成が、金属部品の組成と似ているか、または同一である、ステップと、
第2の複数の金属粒子を用意するステップであって、第2の複数の金属粒子が、第1の粒度分布より小さい第2の粒度分布を含む、ステップと、
第3の複数の金属粒子を用意するステップであって、第3の複数の金属粒子が、第2の粒度分布よりも小さな第3の粒度分布を含み、第3の複数の金属粒子の組成物が反応性を最小化する、ステップと、
第1、第2および第3の複数の金属粒子を、バインダー、分散剤および溶媒と混合して、金属ペーストを形成するステップと、
を含み、
第2の複数の金属粒子の組成が、第1および第3の複数の金属粒子の組成に関する金属部品の金属組成と金属部品の冶金組成とを平衡させる(balance)よう選択され、
第1、第2および第3の複数の金属粒子の組成の平均が、金属部品の冶金組成と等しい、
方法。
6.02 第1の複数の金属粒子を用意するステップが、元素欠損を有するように第1の複数の金属粒子を選択するステップを含む、6.01の方法。
6.03 第1の複数の金属粒子を用意するステップが、金属部品と同一の組成を有するように、第1の複数の金属粒子を選択するステップを含む、6.01の方法。
6.04 第3の複数の金属粒子を用意するステップが、酸化に耐性を示すよう、第3の複数の金属粒子を選択するステップを含む、6.01の方法。
6.05 第2および第3の複数の金属粒子を用意するステップが、高い真球度を有するように第2および第3の複数の金属粒子を選択するステップを含む、6.01の方法。
7.01 金属構造体の層状成長に使用するための金属ペーストであって、
少なくとも1種の溶媒および少なくとも1種のポリマーバインダーを含むビヒクルと、
構造用金属を含む金属足場粒子であって、D50粒子サイズを有する、金属足場粒子と、
金属足場粒子間の隙間空間に主に位置するよう、D50粒子サイズを有する金属溶浸材粒子と、
を含む、金属ペースト。
7.02 金属足場粒子が、アルミニウム、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、チタン、スズ、タングステン、バナジウムおよび亜鉛、ならびにこれらの混合物、合金または複合材からなる群から選択される材料を含む、7.01の金属ペースト。
7.03 金属足場粒子が、鉄合金、ニッケル合金、銅合金およびアルミニウム合金からなる群から選択される材料を含む、7.01から7.02のいずれかの金属ペースト。
7.04 金属溶浸材粒子が、アルミニウム、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、バナジウムおよび亜鉛、ならびにこれらの混合物、合金または複合材を含む群から選択される材料を含む、7.01から7.03のいずれかの金属ペースト。
7.05 金属溶浸材粒子が、以下の元素の対:Fe-V、Fe-Mn、Fe-Mo、Fe-Cr、Fe-Ni、Fe-Al、Fe-Cu、Fe-B、Fe-Si、Fe-W、Fe-P、Fe-Ti、Fe-Zr、Ni-Al、Ni-B、Ni-Cr、Ni-Co、Ni-Mn、Ni-Mo、Ni-Si、Ni-Ti、Ni-W、Ni-Zr、Cu-Be、Cu-Cr、Cu-Mn、Cu-P、Cu-B、Cu-Si、Cu-Te、Al-Sn、Al-Si、Al-P、Al-BおよびAl-Tiの間で形成される、1つまたは複数の規則正しい合金相を含む、7.01から7.04のいずれかの金属ペースト。
7.06 金属足場粒子が、2μm~30μmの範囲のD50、または1μm~20μmの範囲のD50などの、1μm~40μmの範囲のD50を有する、7.01~7.05のいずれかの金属ペースト。
7.07 金属溶浸材粒子が、0.1μm~1μmの範囲のD50、または0.2μm~0.8μmの範囲のD50などの、0.05μm~10μmの範囲のD50を有する、7.01~7.06のいずれかの金属ペースト。
7.08 ビヒクルが、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、テルピネオール、テキサノールブチルエステル、ミネラルスピリット、プロピレンカーボネート、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、エタノールアミンおよびN-メチルピロリドン、ジクロロメタン、ケトン、ジメチルアセトアミド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチルおよび酢酸n-ブチルからなる群から選択される溶媒を含む、7.01から7.07のいずれかの金属ペースト。
7.09 ビヒクルが、ポリ(エチエレンオキシド);エチルセルロース;メチルセルロース;寒天;ヒドロキシエチルセルロース;ニトロセルロース;ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリルコポリマー、マレイン酸およびマレイン酸エステル;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリビニルブチラール;ポリ(カーボネート)、ポリ(アクリル酸);ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;フェノール樹脂;パラフィンワックス、エチレンビニルアルコール、ポリカプロラクタムおよびこれらの組合せからなる群から選択される、バインダーを含む、7.01から7.08のいずれかの金属ペースト。
7.10 ビヒクルが、約200~350℃の分解温度を有するバインダーを含み、残留炭素含有量が、総金属ペーストの約0.1重量%~0.5重量%の間である、7.01から7.09のいずれかの金属ペースト。
7.11 ビヒクルが、約200~250℃の分解温度を有するバインダーを含み、残留炭素含有量が、総金属ペーストの0.5重量%未満であるか、またはビヒクルが、約250~300℃の分解温度を有するバインダーを含み、残留炭素含有量が、総金属ペーストの0.5重量%未満である、7.1から7.10のいずれかの金属ペースト。
7.12 金属ペーストが、50,000~500,000cpsまたは100,000~300,000cpsなどの約10,000~1,000,000cpsの間の粘度を有する、7.01から7.11のいずれかの金属ペースト。
7.13 固体搭載量が、総金属ペーストの75~95重量%または90~95重量%などの約50~95重量%の間である、7.01~7.12のいずれかの金属ペースト。
7.14 金属足場粒子が、オレイン酸、オクタン酸、オクチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、アジピン酸、セバシン酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチエレンオキシド)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびニトロセルロースからなる群から選択される表面配位子を含む、7.01から7.13のいずれかの金属ペースト。
7.15 金属足場粒子が、コアシェル粒子の形態である、7.01から7.14のいずれかの金属ペースト。
7.16 反応性無機構成成分をさらに含む、7.01から7.15のいずれかの金属ペースト。
7.17 反応性無機構成成分粒子が、反応性を制限するための表面配位子を含み、表面配位子が、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチエレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、グア-ガムおよびキサンタンガムからなる群から選択される、7.16の金属ペースト。
7.18 反応性無機構成成分が、アルミニウム、ホウ素、炭素、鉄、酸素、カリウムおよびナトリウムから選択される少なくとも1つの化合物を含む、7.16から7.17のいずれかの金属ペースト。
7.19 無機強化構成成分をさらに含む、7.01から7.18のいずれかの金属ペースト。
7.20 金属ペーストが、0.5~5重量%の間の無機強化構成成分を含み、第2の無機強化構成成分が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ、炭化ケイ素および炭化タングステンから選択される、7.19の金属ペースト。
7.21 金属足場粒子が、第1のD50となる、約70重量%~100重量%の濃度で鉄を含む粒子の大集団、および第1のD50よりも小さな第2のD50となる、約70重量%~100重量%の濃度で鉄を含む粒子の小集団を含む、7.01から7.20のいずれかの金属ペースト。
7.22 鉄を含む粒子の大集団が、鉄を含む粒子の小集団よりも低い鉄の濃度を有する、7.21の金属ペースト。
7.23 鉄を含む粒子の大集団と鉄を含む粒子の小集団のどちらも、炭素をさらに含む、7.21から7.22のいずれかの金属ペースト。
7.24 金属足場粒子が、95重量%以上の濃度でニッケルを含む粒子の集団であって、第1のD50のニッケルの粒子サイズを有する、粒子の集団をさらに含む、7.01から7.23のいずれかの金属ペースト。
7.25 金属溶浸材粒子が、95重量%以上の濃度でニッケルを含む第2の粒子集団を含み、第2の粒子集団が、第1のD50のニッケルの粒子サイズよりも小さな、第2のD50のニッケルの粒子サイズを有するニッケルを含む、7.01から7.24のいずれかの金属ペースト。
7.26 金属溶浸材粒子が、銅を含む粒子集団を含み、この粒子集団が、90重量%以上の銅を含む、7.1から7.25のいずれかの金属ペースト。
7.27 金属溶浸材粒子が酸素をさらに含む、7.01から7.26のいずれかの金属ペースト。
7.28 金属溶浸材粒子が、金属足場粒子のD50粒子サイズの約1/5以下となるD50粒子サイズなどの、金属足場粒子のD50粒子サイズの約1/4以下となるD50粒子サイズを有する、7.01から7.27のいずれかの金属ペースト。
8.01 金属ペーストを堆積するための付加製造方法であって、
(a)金属ペーストを金属製またはセラミック製基材上に堆積して、湿潤フィルムを形成させるステップであって、金属ペーストが、(i)鉄を含む、金属足場粒子であり、D50粒子サイズを有する、金属足場粒子、(ii)金属足場粒子のD50粒子サイズの1/5未満のD50粒子サイズを有し、その結果、金属足場粒子間に形成される隙間空間に主に位置し、金属ペーストの10~30重量%の濃度である、金属溶浸材粒子を含む、ステップと、
(b)エネルギー投入により、溶媒が湿潤層から本質的に除去されて、湿潤フィルムの一部の残留構成成分が、場合により分解するまで湿潤フィルムを乾燥し、これにより、乾燥フィルムを形成させる、ステップと、
(c)場合により、1~10Wの間のレーザー出力による光励起によって、乾燥フィルムから材料が選択的に除去されて、層形状を画定する、レーザースクライブを行うステップと、
を含む、方法。
8.02 (a)~(c)を複数回、繰り返して、所望の形状を有する部品を形成するステップをさらに含み、この部品のポストアニールを行うステップをさらに含む、8.01の方法。
【0014】
上述の一般的な説明と以下の詳細説明のどちらも、例示的で、単なる説明に過ぎず、特許請求されている本教示を限定するものではないことを理解すべきである。
【0015】
本明細書の一部に組み込まれ、かつその一部を構成している添付の図面は、本教示の実施形態を例示しており、説明と一緒になって、本教示の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】粒子が、本発明の実施形態による、液体状態で最適に分散している、代表的な金属ペースト中の粒子分布を例示する図である。
【0017】
【
図1B】本発明の実施形態による、金属ペーストを、好ましいパッキング配列を伴って厚いフィルムに乾燥した後の、
図1Aの金属ペーストを例示している図である。
【0018】
【
図2A】本開示の実施形態による、足場材料が、溶浸材よりも高い融点を有しており、反応溶浸が起こらない、代表的な金属ペーストを焼結することにより生成した金属の微細構造を例示する図である。
【0019】
【
図2B】本開示の実施形態による、足場材料および溶浸材料が類似の融点を有しており、反応溶浸が起こる、代表的な金属ペーストを焼結することにより生成した金属の微細構造を例示する図である。
【0020】
【
図3A】代表的な金属ペーストが、ホウ素、炭素、コバルト、鉄およびニッケルを含む、焼結技法によって生成した(30分間の全焼結時間)、例示的な金属部品の断面のSEM顕微鏡写真である。
図3Aは、金属ペーストの反応焼結により作製して得られたフィルムの表面を示す。
【
図3B】代表的な金属ペーストが、ホウ素、炭素、コバルト、鉄およびニッケルを含む、焼結技法によって生成した(30分間の全焼結時間)、例示的な金属部品の断面のSEM顕微鏡写真である。
図3Bは、金属ペーストの反応焼結により生成した金属部品の破断面を示している。
【0021】
【
図4】本開示の実施形態による、開示した金属ペーストを使用する例となる方法を例示している、プロセスフロー図である。
【0022】
【
図5】本開示の実施形態による、代表的な金属ペースト中の粒子分布を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図の一部の詳細は、単純化されて、厳密な構造的正確性、詳細およびスケールを維持するよりもむしろ、実施形態の理解を容易にするために図示されていると理解すべきである。
【0024】
これより、本教示の実施形態を詳細に述べ、これらの実施形態の例を、添付の図面に例示する。図面では、参照番号などが、同一元素を指定するため、全体を通して使用されている。以下の説明では、この一部を形成する添付の図面を述べており、本教示が行われ得る、具体的な例示的実施形態が例示により示されている。したがって、以下の説明は、単なる例示に過ぎない。
【0025】
本開示は、同時金属溶浸と組み合わせて、金属ペーストの焼結を使用する、付加製造の改良版を対象としている。この方法は、長い加工時間、高温(1000℃超)および機械特性の不均質性を回避する、層状堆積技法において使用することができる金属源を使用する。本開示の材料およびプロセスは、より少ない電力エネルギー源の使用を実現し、さらにやはり、強度の高い金属部品を生成することができる。この改善は、融解の代わりに焼結することにより、強力な金属部品を生成することができる金属源を用いて実現することができる。この源は、慣用的な「粗い」粉末よりも小さな直径を有する粉末の形態をとることができる。
【0026】
したがって、本開示は、乾燥金属ペーストの容易に焼結される層を生成することにより、機能性金属種を形成するために使用することができる材料を対象としている。金属ペースト構成物は、層状焼結プロセスの間の、金属マトリックスの形成における構成物の役割によって記載される。足場材料と溶浸材料との一対の組成物および粒度分布を、広範囲の添加物および配合物の特性と共に選択すると、開示されているハイブリッド付加製造法によって、開示されているペーストを使用することが可能となる。機械的および加工上の有益性を実現するためのこのような材料の場合、足場粒子のマトリックスの隙間に溶浸材粒子がパッキングするように、および加熱時に多孔質足場粒子体をやはり溶浸するように、溶浸材粒子が選択される。
【0027】
本明細書において開示され、提示されている実施形態は、付加製造技法において、その使用を可能にする元素からなる金属ペーストに関するものである。手短に言えば、金属ペーストは、所望の形状の基材上に堆積されて、乾燥され、場合によりレーザースクライブにより成形され、エネルギー投入により焼結される。最終的な所望の形状が個々の層から形成されるまで、このプロセスが繰り返される。しかし、当業者は、本明細書において開示されている材料および方法は、低エネルギーおよび周囲圧での焼結プロセスにより、金属を任意の形状に作製に有利となるいくつかの他の文脈における用途を有することを容易に理解するであろう。
【0028】
本開示のこのような目的および他の目的、ならびに利点は、添付の図面と連携して、以下の説明から一層十分に明白になろう。
【0029】
本明細書において言及されているすべての刊行物は、あたかも本明細書において十分に説明されているかのごとく、すべての目的のため、その全体が参照により組み込まれている。
【0030】
「金属ペースト」は、液体中に金属粒子を分布させて得られる材料を記載する。「分散液」および「懸濁液」を含めた別の用語は、互換的に使用することができる。金属ペーストは、この含有量、固体搭載量の合計および粘度により、最も典型的に特徴付けられる。「固体の搭載量」は、全質量に対する、ペースト中の液体ではないすべての化学種の合計質量を記載する。「粘度」は、流動に対する物質の抵抗の尺度を記載し、通常、25℃および周囲圧において、ブルックフィールドDV2-HB-5粘度計で、4秒-1のせん断速度で測定される。「ペースト」は、典型的には、高い粘度を有することにより、インクとの対比で説明され、通常、一層高い粘度を有する分散液または懸濁液が約0.1~10秒の時間をかけて、その形状を保持するような10,000cpsにおいて、閾値が定義される。10,000cpsの閾値未満の粘度を有する分散液または懸濁液は、通常、インクと呼ばれ、様々な技法を使用して加工され、様々な材料選択を一般に含む。
【0031】
以下に記載されている金属ペーストは、最終金属部品へと加工されることが意図されている。用語「金属部品」、「金属片」、「得られた部分」および「得られた小片」は、互換的に使用されて、ペーストの焼結層の所望の形状への生成を記載する。複数の金属粒子が焼結される、このプロセスを述べる。「焼結」は、所与の金属の0.6×~0.9×融点の間の温度における、原子の移動による、個々の粒子の溶融を含むプロセスを表す(例えば、1538℃の融点を有する鉄は、通常、922℃~1384℃の間で焼結される)。すべての金属ペーストにおいて、金属粒子は、均一に分布されているか、または完全に分散した状態にあるとみなされる。ペーストおよび層は、溶媒が存在している間、ペーストが「湿潤」状態にあるものとして表され、溶媒の大部分が一旦、除去されると「乾燥した」と表される。
【0032】
本明細書に記載されている固体材料はすべて、粒度分布から、適宜、「粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子」とも呼ばれる、粉末である。用語「D50」および「D90」は、粒子集団の特性を記載する。具体的には、それぞれ、粒子の体積の50%の粒子径よりも大きな粒子径、および粒子の体積の90%の直径よりも大きな直径である。粒度分布に関連する、D50、D90および他の特徴は、Beckman Coulter LS230などの、静的光散乱粒子サイズ分析器を使用して測定される。用語「直径」は、粒子集団を指す場合、「D50」を意味することが理解される。D50はまた、走査型電子顕微鏡(SEM)または動的光散乱法などの技法を使用して測定することもできる。「粉末」および「粒子」はまた、互換的に使用されて、通常、約1nm~100μmのサイズを有する、離散金属片を記載する。
【0033】
金属足場材料
金属足場粒子用の材料は、最終金属部品への骨格構造をもたらすように選択され、こうして、「構造用金属」の群から通常、選択される。この用語は、工学的用途または消費者用途における物品を構築するために使用される金属を記載し、そうして、金属の設計および選択は、硬度、強度および靱性を含めた、その機械特性に依存する。
【0034】
多数の実施形態において使用される粒子は、1~5μmの間のD50および2~10μmの間のD90、または1~3μmの間のD50および2~6μmの間のD90、または1~8μmの間のD50および2~16μmの間のD90、またはこれらの中に含まれる任意の範囲で有するよう設計されるか、分類されるか、または選択される。金属ペーストの湿潤フィルムが、この湿潤フィルムの厚さ、通常、20~200μmに粒子の均質な分布を有するような粒子サイズが選択される。さらに、粒子形状は、ほぼ球形であってもよく、一部の実施形態では、より高い粉末パッキング密度となるために、これが可能となる。
図1Aは、湿潤金属ペーストを含む物品100を示しており、十分に分散した金属足場粒子101が、溶媒106およびバインダー105により取り囲まれている。乾燥時に、物品100は、
図1Bの物品200に変換される。物品200の金属足場粒子201は、乾燥プロセス中に、球形状の粒子であることおよびバインダー105の潤滑作用により、最適な構成にパッキングする。
【0035】
一部の実施形態では、金属足場材料の酸化感度は、焼結中の制限因子であり、抗酸化コーティングが粒子の表面に施用される。シェルを形成するよう、多数の金属が、粒子表面上に化学沈殿によってコーティングされ得ることが当分野において公知である。したがって、金属足場粒子は、例えば、クロム、コバルトまたはニッケルを含む金属の、10~25nmまたは50~100nmの間の厚さを有するシェルを有することができる。
【0036】
金属溶浸材料
金属溶浸材料は、これが、以下の役割を最も効果的に発揮することができるよう、選択される:(1)約700~1100℃もしくはこれらの中に含まれる任意の範囲で、または1100~1400℃もしくは任意の含まれる範囲、または1400~1700℃もしくはこれらの中に含まれる任意の範囲で、足場粒子の隙間細孔中に適合する;足場粒子マトリックスの間を拡散するまたは流動する、(2)乾燥プロセス中に、ある程度の機械的強度を実現する、および(3)焼結プロセス中に、足場粒子の溶融を支援する。一部の実施形態では、より大きな足場粒子が隙間細孔によりよく適合するために、金属溶浸材粒子のD50(およびD90)は、50nm~1μm(D90は2μm)、もしくは50~300nm(D90は600nm)、もしくは50~100nm(D90は200nm)の間、または列挙されている範囲により含まれる任意の範囲にあることができる。したがって、例えば、D90は、200nm~2μmの範囲とすることができる。一実施形態では、金属溶浸材粒子のD50は、金属足場粒子のD50の1/5より小さい。
【0037】
湿潤および乾燥金属ペースト中の溶浸材粒子の位置は、
図1Aおよび1Bにそれぞれ示されている。湿潤金属ペースト100では、溶浸材粒子102は、溶媒106中のより大きな足場粒子101中に分散している。溶浸材粒子202は、物品200に示されている通り、金属ペーストが、一旦、溶媒を実質的に不含となると、足場材料201により形成される細孔に適合するよう最適なサイズにされる。残留バインダー分子203はまた、乾燥フィルムで提供され、焼結ステップ前に、ある程度の機械的強度を実現する。
【0038】
金属足場および溶浸材金属の材料選択
付加製造用の最も望ましい金属は、構造用金属であり、これらは、最も典型的には、鋼などの合金の形態の多数の元素の混合物である。したがって、上記の金属は、得られた合金に特定の特性を付与するために選択される、1種の主要な元素と複数の微量元素を含む。金属足場および金属溶浸材料用の材料として好適な鉄および鉄含有合金は、以下に限定されないが、以下の技法:液体相化学沈殿、ガス相沈殿、火炎噴霧熱分解、不活性ガス噴霧化、水噴霧化、プラズマ噴霧化および機械的摩滅などの任意の数の技法により工業的に生産することができる。
【0039】
一部の実施形態では、金属足場粒子は、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、バナジウムまたは亜鉛、ならびにこれらの混合物、合金および複合材を含む。他の実施形態では、足場は、銅、チタン、ニッケルおよびアルミニウムからなる群から選択される非鉄材料であり、実質的に鉄を含有しない。これらの非鉄足場材料は、D50を有する本質的に球状の粒子として生産することができ、製造および加工は、鉄含有粒子に類似している。
【0040】
一部の実施形態では、金属溶浸材料は、アルミニウム、ホウ素、炭素、クロム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、バナジウムまたは亜鉛を含むことができる。他の実施形態では、溶浸材料の融点は、約700~1100℃もしくはこれらの中に含まれる任意の範囲、または1100~1400℃もしくは任意の含まれる範囲で、または1400~1700℃もしくはこれらの中に含まれる任意の範囲の温度とすることができる。
【0041】
さらなる実施形態では、足場および溶浸材料は、例えば、以下の通り、一対とすることができる:鉄を含む足場合金と銅を含む溶浸材合金;鉄を含む足場合金とニッケルを含む溶浸材合金;鉄を含む足場合金と鉄を含む溶浸材合金;銅を含む足場合金と銅を含む溶浸材合金;ニッケルを含む足場合金と銅を含む溶浸材合金;銅を含む足場合金とニッケルを含む溶浸材合金;チタンを含む足場合金とアルミニウムを含む溶浸材合金;チタンを含む足場合金とニッケルを含む溶浸材合金。列挙されている合金は、簡潔にするためその主要元素により記載されており、機械的特性および化学的特性の強化をもたらすよう、少量の合金元素を含有していてもよい。
【0042】
反応溶浸
従来的な溶浸では、足場材料は、高温で細孔空間中に充填する別の材料を加えることにより改変され、これにより見かけ密度が一層高くなる。見かけ密度は、金属片の質量と外側寸法の測定により測定されるか、または流体の体積による置き換えにより測定される金属片の見かけ体積との比として定義される。高温(1000℃超)および長時間(24時間超)による溶浸により、一層高い見かけ密度および関連する機械特性が可能になる。溶浸材金属が、足場金属(例えば、足場として鉄合金、および溶浸材として銅合金)よりも低い融点を有するよう、一般的な一対の足場/溶浸材が、当分野において教示されている。
【0043】
本開示は、この材料選択の制約を回避する方法を提供する。反応溶浸は、溶浸材料の融点未満の温度で行われる、以下の状況のいずれかとして記載することができる:足場および溶浸材料が互いに拡散する;溶浸材が足場に拡散する;足場が、溶浸材に拡散する;足場および溶浸材が、合金、混合物または化合物を形成する;足場および溶浸材が、添加物(すなわち、ホウ素)の存在下で反応して、合金、混合物または化合物を形成する。本開示の一部の実施形態では、金属ペーストは、反応溶浸が、融解の非存在下、低い温度で構造物の合体を促すよう配合され、それにより、得られた金属部品の強度、硬度、耐摩耗性、耐腐食性および靱性が強化される。一部の実施形態では、金属足場は、金属溶浸材の融点よりも約200~400℃高い融点を有する。他の実施形態では、金属足場は、金属溶浸材の融点よりも約200~400℃低い融点を有する。さらに他の実施形態では、金属足場は、金属溶浸材の融点よりも約0~100℃高いか、または低い融点を有する。
【0044】
固体状態の拡散の向上は、第1の材料の原子が、一般に、第1の材料の自己拡散よりもかなり大きな速度で、第2の材料によってまたはこの内部に輸送される、焼結現象である。固体状態の拡散の向上または融解は、
図2Aに例示されている焼結後の物品300において示されているものなどのように、溶浸材料の融点が、足場材料の融点よりも低い、本開示の実施形態において有利である。金属足場粒子301は、移動度の高い金属溶浸材302によってコーティングされている。足場粒子301の融合は、支援された固体状態の拡散事象において、可動性の溶浸材における足場材料の拡散により強化される。溶浸材および足場材料の融点が類似しているか、または溶浸材の融点が足場よりもいくらか高い実施形態では、焼結後の物品400において示されている通り(
図2B)、足場金属粒子401は、反応性金属溶浸材403との反応時にその元の形状を失い、2種の金属種の広範囲にわたる相互拡散によりゆがむ可能性がある。足場と溶浸材料との間の反応の生成物層402は、これまで離散している粒子の架橋化により、金属物品400を強化するよう働くことができる。このように、これまで足場/溶浸材の対として使用することができなかった材料は、足場の隙間に溶浸材粒子を配置させることにより、今や有用になる。
【0045】
約1100~1400℃の間の類似した融点の足場および溶浸材料を有する代表的な金属ペーストのSEM顕微鏡写真が、
図3Aおよび3Bに示されている。上部顕微鏡写真(
図3A)は表面特徴を示しており、反応溶浸によって生じた粒子ゆがみを観察することができる。同様に、底部顕微鏡写真(
図3B)は、構造体に、本発明者の引張力により生じた1mmの破損表面深さがあることを示しており、この場合、約60分間の短い焼結時間であるにも関わらず、低温焼結中の広範囲にわたる相互拡散により、微粒子構造体が生成する。
【0046】
無機反応性材料
材料を逐次、堆積させて、選択的に除去する、ハイブリッド付加製造技法により、金属ペーストを使用することを可能にするため、無機反応性材料(本明細書において、反応性無機構成成分とも称される)が、場合により、金属ペースト配合物中に場合に含まれる。典型的な構造用金属は、レーザー光の吸収率および金属粒子の反応性のどちらも低いので、高いエネルギーのレーザー照射に曝露されるまで蒸発しない。金属ペーストがレーザーに曝露されると、ナノ材料の劇的な反応性の向上およびナノ材料のレーザー吸収により、低いエネルギーアブレーションがもたらされる。光からの投入エネルギーは、アブレーションタイプの反応により、材料自体を除去することができるか、または、空気による金属の迅速な反応に由来する生成物(主にガス)の生成は、一部の実施形態では、材料除去の手段として作用することができる。反応性ナノ材料は、0.1~1mW/mm3の間のレーザー照射、または1~10mW/mm3の間のレーザー照射、またこれらに含まれる任意の範囲のレーザー照射に応答する。この出力が蓄積され得る時間は、励起レーザーのスキャン速度に応じて、励起体積に関して約1ms~1sの間、またはこれを含む任意の範囲とすることができる。この反応性は、反応性材料粒子の大きな表面積と連携している。一部の実施形態では、無機反応性材料は、100~200nmの間のD50、25~100nmの間のD50、または10~50nmの間のD50を有する粒子を含む。
【0047】
反応性材料は、アルミニウム、ホウ素、炭素、銅、鉄、酸素、カリウムまたはナトリウムを含み、一部の実施形態では、安定化用表面配位子によりコーティングされている。安定化用表面配位子は、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチエレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、グアーガムおよびキサンタンガムを含有する群から選択することができる。一部の実施形態では、材料が、レーザー照射により最小エネルギーレベルまで励起されると、その安定化用配位子または空気単独との高い発熱反応を受けるような反応性無機化合物が選択される。別の実施形態では、反応性材料は、発熱反応がレーザー照射により空気の非存在下でさえ起こるよう、酸化鉄シェルを含むアルミニウム粒子または酸化鉄とアルミニウム粒子との混合物などの還元性化学種および酸化性化学種の両方を含む。
図1Aおよび1Bでは、無機反応性材料粒子103および203は、それぞれ、湿潤フィルムと乾燥フィルムの両方で示されている。
【0048】
無機強化材料
機械特性を増強するために、多くの場合、高い硬度を有する二次材料を金属に混合して、金属マトリックス複合材として、当分野で公知の物体を形成する。したがって、本明細書において開示されている金属ペーストは、0.5~5重量%の間の無機強化材料を場合により含む。無機強化材料は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ、炭化ケイ素および炭化タングステンを含む群から選択される。粒子が、球状など等軸である一部の実施形態では、強化粒子(本明細書では、無機強化構成成分などの、強化材料または強化構成成分とも呼ばれる)は、これらが、金属足場の隙間細孔に適合することができるよう、25~100nmの間のD50を有する。他の実施形態では、強化材料は、10~50nmの間の直径、および500nm~20μmの長さを有するカーボンナノチューブを含む。
図1Aおよび1Bでは、無機反応性材料粒子104および204は、それぞれ、湿潤フィルムと乾燥フィルムの両方で示されている。
【0049】
ビヒクル(溶媒およびバインダー)
本明細書に記載されているペーストはすべて、ビヒクルを含み、ビヒクルは、溶媒中のポリマーバインダーの溶液または分散液である。溶媒は、バインダーおよび複数の金属粉末を分散させる溶媒の能力を理由に選択され、溶媒の大部分は、150~300℃の温度で、金属ペーストから除去することができる。一般に、溶媒は、低沸点溶媒の蒸発時に金属ペーストが強化するよう、他の化学種のより大きな溶媒和力を可能にすること、およびやはり2段階蒸発を付与することの両方のために、一緒に混合される高沸点溶媒と低沸点溶媒との混合物として使用される。溶媒は、以下:水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、テルピネオール、テキサノールブチルエステル、ミネラルスピリット、プロピレンカーボネート、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、エタノールアミンおよびN-メチルピロリドン、ジクロロメタン、ケトン、ジメチルアセトアミド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチルおよび酢酸n-ブチルからなる群から選択することができる。
【0050】
さらに、ビヒクルは、ペースト作製および堆積の一助となるポリマーバインダーを含む。バインダーは、ポリ(エチエレンオキシド);エチルセルロース;メチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ニトロセルロース;ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリルコポリマー、マレイン酸およびマレイン酸エステル;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリビニルブチラール;ポリ(カーボネート)、ポリ(アクリル酸);ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;フェノール樹脂;パラフィンワックス、エチレンビニルアルコール、ポリカプロラクタムおよびこれらの組合せから選択される、いくつかのメンバーの1つまたは混合物とすることができる。
【0051】
バインダーは、200℃~350℃の間、または200℃~250℃の間、または250℃~300℃の間の分解温度を有するよう選択される。これらの温度を有する材料の場合、十分に燃焼した後に残る炭素含有量(例えば、材料と空気などの酸化剤との間で、400~600℃の間の温度で行うことができる)は、金属ペーストの0.1重量%~0.5重量%の間、または0.01~0.25重量%の間とすることができる。特に、焼結中に残留したバインダーの残留物が少ないことは、短時間の焼結事象の間に、最終金属片の機械的強度が低下する、過剰の炭素により引き起こされる焼結阻害のために、利点がある。
【0052】
界面活性剤および分散剤
ペーストに、金属足場粒子、金属溶浸材粒子、無機反応性粒子および無機強化粒子を混合する前に、これらの粒子を、分散状態での長期安定性をよりよく可能にするために、表面配位子分子により場合により処理され得る。この処理に使用される分子は、通常、二官能性であり、一方の官能基が粒子表面と強力に相互作用し、もう一方の官能基が、溶媒またはバインダー分子と相互作用する。金属足場粒子および金属溶浸材粒子の場合、典型的な表面分子は、以下の群:オレイン酸、オクタン酸、オクチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、アジピン酸、セバシン酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチエレンオキシド)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースから選択される。
【0053】
ペーストの長期安定性をさらに向上させるため、ならびに保管、堆積および乾燥中の他の有益性を実現するため、他の添加物が、通常、金属ペースト中に少量、含まれる。分散剤が最も一般的な添加物であるが、保湿剤、平滑剤、沈降防止剤および表面張力低下剤を添加することができることが、当分野において公知である。これらの添加物および他の添加物は、商業的に購入することができ、当業者により公知の適切な量で添加され得る。
【0054】
配合物のレオロジー
金属ペーストのレオロジーは、基材上の所望の層形状への堆積に及ぼすレオロジーの影響のために、制御することが重要である。20~200μmの間の厚さの湿潤金属ペースト層を達成するために、様々な固体搭載量を有するペーストが配合され得る。薄い層を形成するほど低い粘度、および厚い層を形成するほど高い粘度を有するペーストを配合することができる。開示した金属ペーストにおいて粘度を制御する主要手段の1つは、固体搭載量による。したがって、開示した金属ペーストの実施形態は、50%~95%、もしくは75%~95%、もしくは90%~95%の間、またはこれらの中に含まれる任意の範囲の固体搭載量で配合される。さらに、金属ペーストの一部の実施形態は、10,000~1,000,000cpsの間、もしくは50,000~500,000cpsの間、もしくは100,000~300,000cpsの間、またはこれらに含まれる任意の範囲の粘度を有するよう配合される。
【0055】
付加製造における使用方法
付加製造における前述のペーストを使用する方法の1つは、以下のステップ:1)ペーストの堆積、(2)溶媒除去、(3)レーザースクライブ、(4)焼結、(5)ポストアニールを含む。最終的な所望の形状が個々の層から形成されるまで、このプロセスが繰り返される。
図4は、このプロセスを説明するフローチャートを示している。501では、層は、例えば、押出成形ノズルからペーストを広げることにより堆積される。一部の実施形態では、ペーストは、所望の最終金属片を作製するために、各層のパターンで正確に堆積される。溶媒は、502において湿潤ペースト層から除去される。一部の実施形態では、溶媒は、加熱された構築物表面または加熱された対流式空気流により、または光をベースとする加熱により、または誘導加熱により除去される。503における質問に回答すると、ペーストは、正確に必要とされる場所に堆積され、この場合、余剰材料が存在せず、かつこのプロセスは505に進むと決定することができる。あるいは、他の実施形態では、ペーストは、構築物表面上に、半連続層または連続層で堆積され、次に、このペースト層は、ステップ504において、レーザースクライブステップの間に、光エネルギーによって乾燥ペーストを除去することによりさらに成形される。さらに、これらの最初のステップでは、さらなる不活性な支持ペーストが堆積されて、乾燥され、レーザースクライブされて、機械的支持体が得られるか、または金属ペースト、例えば炭素ペーストもしくはホウ素ペーストの形状をさらに画定するかのどちらかとなり得る。ペーストの堆積システムは、50~500μmの線幅の10~200mm/sの線速度で、5μm~250μmの間の厚さを有する金属ペースト層を堆積することができる。ペーストの堆積および乾燥後、任意選択的なレーザースクライブプロセスは、25~100μmのビーム径に集束されたビームを使用して、ビーム移動速度および出力を制御することにより、乾燥金属ペーストの所与の厚さを制御可能に除去する。典型的なビーム移動速度は、50~500mm/sの間であり、レーザー出力は、一部の実施形態では、1~10Wの間である。レーザースクライブステップは、乾燥金属ペーストを除去することにより、25μmの方位分解能で層形状を画定することができ、これにより、ペーストの堆積の場合に可能となり得るよりも微細なフィーチャを可能にする。
【0056】
焼結ステップ505は、ペースト配合物に依存し、足場および溶浸材粒子は、最適に粒子が成長して、乾燥金属ペースト層から空隙を追い出すように相互作用する。記載した足場、溶浸材、反応性粒子および強化粒子を含む焼結可能な金属ペーストの加工中に、これらの粒子は乾燥されて、繰り返される毎に圧縮した層になる。乾燥金属ペースト層は、入射エネルギーの各繰り返しにより、焼結することができ、一実施形態では、白熱灯または誘導加熱素子の作用により、500~800℃の間の表面温度に到達する。これらの温度では、乾燥金属ペースト層は、層に対して垂直な方向に線収縮を受けて、層表面からの空隙の追い出しにより、厚さが20~40%収縮する。さらなる層が使用されて、所望の形状(506)を完了すると、堆積、乾燥、スクライビングおよび焼結ステップを、必要な場合、何回も繰り返すことができる。小片が十分な層からなる場合、他のこのような堆積済み金属片(507)を用いて、より大きな形状に組み立てることができる。組み立てプロセス508は、小片が1~10μm、または1~100μmの間で離れて空間が設けられるよう、組み立てた小片の間にさらなる金属ペーストを広げるステップを含み、金属ペーストが、間の空間に充填する。次に、組み立てられた部品は、ゆっくりとした加熱および冷却により残留応力が除かれ得るよう、ステップ509において後アニールが行われてもよい。機械特性を増強するために、および加熱中の1~15体積%の間の収縮を受けることによって、1~15体積%の間まで多孔度をさらに低下させるため、最終的な後アニールを場合により行う。一部の実施形態では、典型的な後アニール温度および時間は、不活性雰囲気または周囲雰囲気中、0.5~3時間、600~900℃である。
【0057】
記載した方法を、主に鉄の足場粒子、ならびに銅およびニッケルを含む溶浸材料を含む金属ペーストと共に使用する場合、得られた金属部品は、以下の物理特性:500~1,000MPaの間の極限引張強度、100~200BHの間のブリネル硬度、100~150GPaの間の弾性率および0.2μm~2μmの間の平均表面粗さのうちの1つまたは複数(すべてなど)を有することができる。本方法は、本明細書に記載されていない様々な金属ペーストに合わせることができるが、最も有用な機械特性は、焼結可能な金属ペーストの記載されている実施形態の使用により得ることができる。
【0058】
金属粒子の少なくとも3つの集団を有する実施形態
金属ペーストが、金属粒子の少なくとも3つの集団を含み、バインダー、溶剤および分散剤を場合により含む、いくつかの実施形態をこれから提示する。複数の粒子集団(マルチモーダル)を有する配合物によって得られる利点は、記載されている金属付加製造技法において使用すると、得られる金属部品がより高い強度となり、収縮がより少ないことである。
【0059】
この開示の構成要素の1つは、金属粒子が一旦、プリントされて乾燥および/またはデバインド(debind)されると、測定密度と秤量した真の密度との比を最大化するよう、金属ペースト中で使用される金属粒子の選択である。この金属部品は、この段階では「グリーン」として記載され、その密度は、「グリーン密度」と呼ばれる。「真の密度」は、キャストまたは鍛造により作製されると思われるものなどの、所与の金属構成物を含む、100%固体(多孔度0%)の密度として定義される。当業者は、「測定密度」が、上で定義されている「見かけ密度」と同じであることを理解すると思われる。「乾燥」は、すべての溶媒の沸点近くまたはこれより高い温度により、溶媒を除去することとして定義され、「デバインドする」は、システムにおける、バインダーの大部分の分解点または沸点より高い温度によりすべてのバインダーを実質的に除去することとして定義される。
【0060】
グリーン密度は、付加製造用途における、金属ペースト中の金属粒子の任意の混合物を使用することにより生成する金属部品の密度の重要な決定因子である。具体的には、構成材料の最も高い融点未満の温度において、離散粒子をより大きな塊に焼結または溶融することを使用する付加製造用途(本明細書に記載されている方法など)では、後印刷アニールにより、構成金属の最も高い融点未満の温度で構造用金属部品に金属粒子を変換することが重要である。粒子のグリーン体に対して焼結操作を行った後、測定密度は、「最終密度」または「最終部品密度」として定義され、金属部品の真の密度の百分率として与えられる。
【0061】
プリント部分のグリーン密度がより高いと、いくつかの有益な点を実現する:最終密度が向上し、より少ないエネルギー、より短い時間およびより低い温度を使用して、「グリーン」部分から、所望の最終部分密度を有する最終金属部品への変換を引き起こすことができる。最終部分密度は、引張強度、硬度、耐摩耗性および耐衝撃性などの特性と相関する。最終部分密度が、一旦、真の金属密度の95%超になると、十分な特性が、通常、観察される。
【0062】
付加製造用途に使用される金属ペーストを含む金属粒子の選択により、グリーン密度を向上させる(例えば、最大化する)ために、粒度分布によって測定される、金属粒子の直径(または、D50)間の設定比を有する複数の集団を使用することが有利である。
【0063】
1つの体積中のすべての粒子集団の幾何学的パッキングの最大化は、最高のグリーン密度が生じることと同じであり、この密なパッキングを達成するための戦略の1つは、一層大きな粒子集団の無秩序な密なパッキングにより形成される隙間を充填するために、1つの粒子集団を使用することである。さらに、さらに一層小さな粒子が、無秩序な密にパッキングされた粒子により形成される隙間を充填することができるよう、上記の行為を繰り返すことができ、これにより、粒子自体がより大きな空隙空間を充填する。
【0064】
このパッキングスキームの略図を、
図5中で見ることができる。
図5は、液体状態で最適に分散している粒子を含む、代表的な金属ペースト中の粒子分布を例示している。
図5は、バインダー604および溶媒605により取り囲まれている、良好に分散した大型集団粒子601、中型集団粒子602、小型集団粒子603を含む、湿潤金属ペーストを含む物品600を示している。金属ペーストにおいて使用するために、本明細書に記載されている溶媒およびバインダーのいずれも使用することができる。金属ペーストは、付加製造器具において使用することができ、この器具は、金属ペーストを堆積して、このペーストを層状に加工する。金属ペーストから部品を形成するために、上の
図4に関して例示されて記載されている方法などの、本明細書に記載されている付加製造方法のいずれかを使用することができる。
【0065】
本開示の一部の実施形態では、離散粒子のサイズ分布およびD50を有する3つの粒子集団が存在する。選択した配合物の例となる特徴は、すべての金属に関する、隣接集団のサイズと集団の相対的な部分組成との間の設定比を含む。一般に、「サイズ」という形態の、本明細書に記載されているサイズおよび分率(「すべての金属の画分」、「組成」)は、D50およびペーストの全金属含有量(溶媒およびバインダーなどの非金属構成成分を除外する)の体積百分率により定義される。金属粒子の選択集団を、溶媒および他の有機添加物と混合して、金属ペーストを形成し、このペーストは、次に、本明細書に記載されている付加製造技法に使用することができる。様々な集団は、3つの異なるサイズの集団を含む金属ペーストの場合に、大型、中型および小型と呼ぶことができるよう、集団の相対的なサイズによって、様々な集団が記載される。これは、これらの集団を任意の特定のサイズ範囲に限定することを意図するものではなく、むしろ、1に等しくない各集団のD50間に設定比が存在することを示すものである。
【0066】
一部の実施形態では、大型集団として記載される粒子は、10~40μmまたは15~35μmまたは20~30μmの範囲から選択されるD50を有する。関連実施形態では、中型集団として記載される粒子は、2~10μmまたは3~8μmまたは4~6μmの範囲から選択されるD50を有する。関連実施形態では、小型集団として記載される粒子は、0.1~1μmまたは0.2~0.8μmまたは0.3~0.6μmの範囲から選択されるD50を有する。他の実施形態では、小型:中型:大型として記載される粒子集団のD50間の比は、1:6:30~1:14:100の範囲の任意の比となるよう、約1:6:30もしくは1:8:45もしくは1:10:60もしくは1:14:100、またはこれらの比の間の任意の比である。
【0067】
各集団に対する金属の組成は、最終生成物に著しく影響を及ぼすことができる特性である。例えば、多数の実施形態における金属粒子が選択されて、反応によりまたは熱的に一緒に焼結されて、厳密に定義した範囲の組成を有する、ステンレス鋼グレード316(UNSでは、S31600)などの、特定の所望の合金の中実金属部品を形成する。記載されている付加製造プロセスでは、熱的焼結加工は、一部の実施形態では、部品の金属組成に好適な雰囲気中、1~12時間、2~9時間または3~6時間の間、500℃~1500℃、または700℃~1300℃、または900℃~1100℃の温度への逸脱(excursion)を含むことができる。この熱加工中、焼結は、組成および構成粒子集団の位置により確立される化学的勾配により強化され得るか、または焼結は、自由表面から細孔を追い出すことにより、および付随して起こる全表面領域および曲面の減少により主に推進され得る。
【0068】
金属ペーストは、本明細書に記載されている、粒子サイズおよび材料の様々な異なる組合せを含むことができる。本開示の例では、金属ペーストは、金属粒子の3つの集団:50%が大型粒子(例えば、30μmのD50、合金鋼316の組成)、25%の中型粒子(例えば、5μmのD50、鉄の組成)および25%の小型粒子(例えば、500nmのD50、ニッケルの組成)を含む。他のいくつかの例となる実施形態は、以下に議論されている、表1A~1Cに列挙されている。金属粒子集団サイズ、組成および比率の選択は、加工性能および最終的な部品特性に影響を及ぼす、変数の例である。しかし、有効な配合物は、決まった手順の最適化により見出すことができないように、考えられるパラメータ空間が多数存在する。代わりに、以下の原理が、グリーン体の焼結を含む、付加製造用途における、それらの組合せ性能を最適化する各集団および配合物の各特性の選択を導く。
【0069】
金属粒子集団組成の設計規則
焼結中に、元素拡散により、多孔性が解消されること、および異なる集団の中で分布している元素が一層均一に分布されることの両方が行われ、これにより、特性を強化することができる(例えば、銅およびスズを個別に10μm領域で有する金属部品は、10μmの各領域が、銅およびスズの均一な分布を有する合金ほど機械的に強度が高くはないか、または硬質ではない)。十分に均一な微細構造を達成するため、元素を拡散するために使用することができる時間およびエネルギーは、元素が拡散する所望の距離によって大部分が決まり、したがって、最大集団の組成が、所望の最終部品組成物の組成と近似するよう、最大集団を選択することが有利である。例えば、92%の銅および8%のスズを有する部品を生産するため、20%の中型集団(4μm、純粋な銅)および20%の小型集団(500nm、70%の銅、30%のスズ)を含む、60%の大型集団(20μm、96%銅、4%スズ)を選択するのが有利になると思われる。
【0070】
さらに、最も小型の集団粒子の組成は、この粒子の反応性が所与の所望の全組成物の中で、できる限り低くなるよう選択される。最も小型の集団は、一般に、直径が1μm未満であり、多数の材料は、そのようなサイズ規模では、酸化速度が向上しているので、小型集団中の高い反応性は問題である。さらに、多数の最終金属部品は、1μm未満の良好に分散したクロム領域などの、10μm未満の規模で元素が特定の分布をすることから恩恵を受ける。
【0071】
最後に、中型粒子の組成は、金属配合物の合計の組成のバランスをとるよう選択される。中型粒子は、サイズがより大きいので、酸化を受けにくく、したがって、より大きな粒子に対してより反応性が高い元素源として、および大型集粒子集団および小型粒子集団の間のチャネルとしても働くことができる。
【0072】
前述の設計規則のように、大型粒子は、最終的な所望の組成(92%銅、8%スズ)に近い組成(96%銅、4%スズ)を有し、小型粒子は、実質的に空気との反応性を低下させるスズが豊富な組成を有する。純粋な銅の中型集団の組成は、チャネルとしてその役割を可能にする。焼結プロセスの間に、スズは、2つの集団における本質的に異なるスズ濃度に由来する高い化学電位のために、小型集団粒子から中型集団粒子へと迅速に拡散することが可能であると思われる。次に、より長い時間規模では、スズは、より大きな集団粒子にさらに拡散し、すべての粒子がより大きな粒子へと融合するので、金属微細構造全体にわたり、最終的に組成が均一になる。
【0073】
大型集団粒子の組成
大型集団粒子は、所望の公知の冶金組成物と類似した組成を有するよう選択されるが、意図的な元素欠陥を伴って生成され得る。3つの粒子集団のすべての平均組成が、所望の冶金組成物の平均組成と等しくなるよう、これらの大集団粒子の組成が選択される。他の実施形態では、大型集団粒子は、正確に所望の組成を有しており、これらの実施形態では、小型集団粒子および中型集団粒子の組成は、大型粒子集団の組成に類似した平均組成を有する。
【0074】
本開示の付加製造用途に最も有用な公知の冶金組成物は、以下に限定されないが、以下(百分率はすべて、質量基準で示されている)を含む:
・ 記載した範囲内の組成を有する以下の合金元素の少なくとも1つを含む、鉄をベースとする合金:0.01~0.4%または0.4~0.6%または0.7~1.5%の範囲の炭素、0.5~1.5%の範囲のアルミニウム、0.0005~0.003%の範囲のホウ素、0.25~20%の範囲のクロム、0.01~8%の範囲のコバルト、0.1~2%の範囲の銅、0.25~1%の範囲のマンガン、0.2~5%の範囲のモリブデン、0.5~20%の範囲のニッケル、0.01~0.4%の範囲のリン、0.01~2%の範囲のケイ素、0.01~0.4%の範囲のチタン、0.01~0.4%の範囲のタングステン、0.1~2%の範囲のバナジウム、および0.01~0.4%の範囲のジルコニウム。
・ 記載した範囲内の組成を有する以下の合金元素の少なくとも1つを含む、ニッケルをベースとする合金:0.01~0.4の範囲の炭素、0.1~8%の範囲のアルミニウム、0.001~0.2%の範囲のホウ素、1~30%の範囲のクロム、0.5~20%の範囲のコバルト、0.1~5%の範囲の銅、0.1~1%の範囲のマンガン、0.1~10%の範囲のモリブデン、0.01~1%の範囲のケイ素、0.1~4%の範囲のチタン、0.1~10%の範囲のタングステン、0.1~6%の範囲のニオブ、0.1~20%の範囲の鉄、0.1~7%の範囲のレニウム、0.01~0.1%の範囲のハフニウム、および0.01~0.1%の範囲のジルコニウム。
・ 記載した範囲内の組成を有する以下の合金元素の少なくとも1つを含む、銅をベースとする合金:0.1~10%の範囲のアルミニウム、0.01~2%の範囲の鉄、0.01~2%の範囲のベリリウム、0.1~5%の範囲のクロム、1~40%の範囲の亜鉛、0.1~20%の範囲のスズ、0.01~1%の範囲のマンガン、0.1~5%の範囲の鉛、0.1~30%の範囲のニッケル、0.01~0.2%の範囲のリン、0.1~5%の範囲のケイ素、0.01~0.5%の範囲のテルル、および0.01~0.4%の範囲のジルコニウム。
・ 記載した範囲内の組成を有する以下の合金元素の少なくとも1つを含む、アルミニウム合金:0.01~5%の範囲の鉄、0.1~10%の範囲のスズ、0.01~0.5%の範囲のビスマス、0.01~0.5%の範囲の鉛、0.01~2%の範囲のクロム、0.1~10%の範囲の銅、0.1~5%の範囲のマンガン、0.1~10%の範囲のマグネシウム、0.5~10%の範囲のニッケル、0.5~14%の範囲のケイ素、0.01~0.4%の範囲のチタン、0.1~1%の範囲のバナジウム、および0.1~10%の範囲の亜鉛。
【0075】
小型および中型集団粒子の組成
酸化に耐性がある小型粒子集団は、「金属間化合物」と呼ばれる材料の群から一般に選択される。金属間化合物は、Cu3Sn、NiAlまたはMgCu2などの、長い範囲にわたる規則性および結晶性をもたらす、単一の特定組成のみが存在する、金属合金のサブクラスである。金属間化合物を含ませることは、金属間化合物が不活性(化学的反応性の欠如)であるために焼結中の酸化物の形成が軽減されるので、付加製造用途において、グリーン体全体にわたり、高い濃度の所望の元素を均一に挿入する有効な手段である。
【0076】
記載されている付加製造技法向けの金属ペースト配合物において加工されて使用され得る金属間化合物は、以下の元素の対:Fe-V、Fe-Mn、Fe-Mo、Fe-Cr、Fe-Ni、Fe-Al、Fe-Cu、Fe-B、Fe-Si、Fe-W、Fe-P、Fe-Ti、Fe-Zr、Ni-Al、Ni-B、Ni-Cr、Ni-Co、Ni-Mn、Ni-Mo、Ni-Si、Ni-Ti、Ni-W、Ni-Zr、Cu-Be、Cu-Cr、Cu-Mn、Cu-P、Cu-B、Cu-Si、Cu-Te、Al-Sn、Al-Si、Al-P、Al-BおよびAl-Tiの間で形成される、規則正しい合金相を含む。金属間化合物の組成物を利用する利点は、具体的には、元素の純粋な形態では一般に反応性が高すぎると思われる合金元素を含ませることが可能な点にあり、やはり、別の、通常は反応性が高いかまたは不活性な合金元素と組み合わせると、これらの元素は、機械的ミル粉砕、細砕または磨砕などの加工により、小型粒子集団に形成することが可能な安定した化合物を形成することができる。
【0077】
さらに、限定的な一式の純粋な元素は、クロム、モリブデン、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、ケイ素、ホウ素およびコバルトなどの、非合金化(純粋な)状態でさえも元素が不活性であるために、小型または中型粒子集団の組成物として特に有利である。
【0078】
最後に、一式の合金を含む小型または中型集団粒子を有する配合物は、この用途に有利であり、合金の大部分は所望の元素であり、合金の小部分は、所望の元素と合金を形成する際に、反応性を低下させる元素となるよう、選択される。この基準を満たす一対の元素の例には、クロムを添加した鉄、銀を添加した銅、およびケイ素を添加したアルミニウムが含まれる。この条件は、より大きなサイズであり、したがって酸化する傾向が低いために、具体的には、中型粒子集団の場合、いくらか緩和され得る。
【0079】
組成に加えて、あるグループにおける粒子の真球度(球が1となる最大真球度を有するよう、粒子の最小寸法と最大寸法との間の比として定義される)は、どのように容易に粒子が互いにすり抜け得るか、および隙間における熱力学的に有利な位置を見出し、密なパッキングに至ることができるか制御する。この特性は、中型および小型サイズの集団粒子はより大きな集団粒子の隙間に効率よくパッキングすることが可能になり得るので、中型および小型サイズの集団に有利である。しかし、より小型および中型の集団は、内部潤滑剤として作用するので、大型集団の真球度は、重要ではなく、このため、様々な粒子形状をこの集団に選択することができる。
【0080】
実施形態では、様々なサイズのグループの相対比は、粒子の形状に依存する。完全な球の幾何学的なモデル化は一部の比を意味するが、異なるサイズのグループの最適量(例えば、重量基準または分布率基準)は、粒子形状にやはり強く依存することが見出されている。特に、より大きなサイズの集団は、理想的な真球度が1となる密にパッキングしたトリモーダル組成物の大部分となる一方、真球度が1未満である場合、大きなサイズの集団の比率が低下し得る。
【0081】
粒子の混合集団の配合物の組成
上記の設計規則に従う金属粒子集団混合物のいくつかの例が、表1A~1C(配合物A~C)に提示されている。これらの混合物の平均組成は、ほぼ公知の金属組成となるよう設計されているが、付加製造用途における最大焼結を行うために特定の混合物が最適化される。所与の目標組成に関すると、上述の設計規則に従う粒子サイズおよび組成物の可能ないくつかの可能な混合物が存在するが、付加製造プロセスにより、このような配合物を用いて生成される部品の機械特性を最適化するために最も有利となるよう、別個の実施形態が1つの規則を別の規則より特に優先することがある。
【表1】
【表2】
【表3】
【0082】
付加製造用ペーストの非金属構成成分
いくつかの実施形態では、金属ペーストの非金属構成物は、全ペースト重量の分率として示される百分率で組み合わされた構成成分の3つのグループを含む。一実施形態では、配合物は、87%超の金属粒子、2重量%未満のバインダー、1重量%未満の分散剤および10重量%未満の溶媒を含むペーストである。別の実施形態では、金属混合物は、86%超の金属粒子、10重量%未満のバインダー、3重量%未満の分散剤、1重量%未満の溶媒を含む、フィラメント状形態に配合される。さらなる実施形態では、金属混合物は、88%超の金属粉末、5重量%未満のバインダー、5重量%未満の溶媒および2重量%未満の分散剤を含む組成物を有する印刷可能な材料に配合される。これらの元素の各々は、純粋な化合物、またはより一般には、付加製造技法の印刷プロセスおよびアニールプロセス中の優れた性能のために選択される化合物の混合物とすることができる。
【0083】
追加の実施形態
実施形態では、本開示の金属ペーストは、ビヒクルおよび金属粉末を含むことができる。ビヒクルは、少なくとも1種の溶媒および少なくとも1種のポリマーバインダーを含む。本明細書に記載されている溶媒およびバインダーのいずれかを含む、いかなる適切な溶媒およびバインダーも使用され得る。金属粉末は、金属足場粒子および金属溶浸材粒子を含む。金属足場粒子は構造用金属を含み、本明細書に記載されている足場粒子、大型粒子または中型粒子のいずれかとすることができる。溶浸材粒子は、本明細書に記載されている溶浸材粒子、小型粒子または中型粒子のいずれかとすることができる。実施形態では、金属溶浸材粒子は、金属溶浸材料粒子が金属足場粒子間の隙間空間に主に位置するよう、金属足場粒子のD50粒子サイズの約1/5以下などの、金属足場粒子のD50粒子サイズの約1/4以下のD50粒子サイズを有する。
【0084】
足場粒子の1つ、2つ、3つまたはそれより多い異なるD50粒子サイズ集団を、溶浸材粒子の1つ、2つ、3つまたはそれより多い異なるD50粒子サイズ集団と組み合わせて使用することができる。足場または溶浸材粒子のどちらか一方、またはこれらの両方に、複数のD50集団サイズを使用する実施形態では、金属溶浸材粒子の最大集団は、金属足場粒子の最大集団のD50粒子サイズの約1/5以下などの、約1/4以下のD50粒子サイズを有することができる。本開示の金属ペーストにおいて使用するため、本明細書に記載されている他の成分のいずれかを、そのような成分について本明細書に記載されている濃度範囲または比のいずれかで使用することもできる。
【0085】
実施形態では、金属粉末は、鉄を含む粒子、ニッケルを含む粒子、および銅を含む粒子を含めた3種以上の材料を含む。鉄を含む粒子が、少なくとも2つの異なるサイズ集団中、すなわち15μmなどの約10μm~約20μmのD50を有する大型集団、および5μmなどの約1μm~約10μmのD50を有する小型集団中に存在する。鉄粒子の小型集団は、5μm~15μm未満などの、大型集団のD50よりも少なくとも5μm小さいD50を有する。
【0086】
小型鉄集団の組成は、約90重量%~100重量%のFeや、約95重量%または約98重量%~約99.99重量%のFe、約99重量%~約99.95%または約99.5重量%~約99.95重量%のFe、約99.8重量%のFeなどといった、約70重量%~100重量%のFeを構成することができる。1つまたは複数の追加材料は、溶浸材、小型粒子または中型粒子において使用するための、本明細書に記載されている材料のいずれかを含む、小型鉄集団の組成物に含まれ得る。一例では、小型鉄集団は、約1重量%~約0.1重量%の炭素や約0.6重量%~約0.2%重量%の炭素などといった、約2重量%~約0.05重量%の炭素を含む。例えば、小型鉄粒子は、約0.2重量%の炭素および約99.8重量%のFeを含むことができる。
【0087】
大型鉄集団の組成は、約90重量%~100重量%のFeや、約95重量%または約98重量%~約99.99重量%のFe、約99重量%~約99.95重量%のFe、約99.3重量%のFeなどといった、約70重量%~100重量%のFeを構成することができる。実施形態では、大型鉄集団は、小型鉄集団よりも低い鉄濃度を有することができる。1つまたは複数の追加材料は、足場材料、中型粒子または大型粒子において使用するための、本明細書に記載されている材料のいずれかを含む、大型鉄集団に含まれ得る。一例において、大型鉄集団は、約99.3重量%のFeおよび約0.7重量%のCからなる組成を有する。
【0088】
ニッケルを含む粒子は、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%または100%Niなどといった、95重量%以上のニッケルとなるニッケル濃度を有することができ、2つの集団、すなわち大型集団および小型集団にも存在する。ニッケル粒子の小型集団は、約500nm~約700nm、または約600nmなどといった、約400nm~約800nmの範囲のD50を有する。ニッケル粒子の大型集団は、約2μm~約4μmまたは約3μmなどといった、約1μm~約5μmのD50を有する。実施形態では、ニッケル粒子の大型集団の形態は、「フィラメント状」として記載することができる。このようなフィラメント状粒子は、一般に、当分野で公知である。本明細書に記載されている通り、D50は、Beckman Coulter LS230によって測定される通りとすることができる。
【0089】
銅粒子は、約95重量%、98重量%、99重量%、99.5重量%または約99.7重量%の銅などといった、銅が約90重量%以上の範囲となる銅濃度を有することができる。1つまたは複数の追加材料は、溶浸材、小型粒子または中型粒子において使用するための、本明細書に記載されている材料のいずれかを含む、銅粒子に含まれ得る。一例では、酸素は、約0.5重量%以下など、例えば1重量%以下の濃度で銅粒子中に含まれ得る。例えば、銅粒子は、約0.3重量%のOおよび約99.7重量%のCuを含むことができる。銅粒子のD50は、約300nm~約500nmなど、約400nmなどといった、約200nm~約600nmの範囲とすることができる。
【0090】
具体例では、本開示のペースト組成物は、以下の通り、鉄、ニッケルおよび銅粒子を含む、金属粉末を含むことができる:大型鉄粒子は、約15μmのD50、および約99.8重量%のFeおよび約0.2重量%のCからなる組成を有し、小型鉄粒子は、約5μmのD50、および約99.3重量%のFeおよび約0.7重量%のCからなる組成を有する。大きなニッケル粒子と小さなニッケル粒子のどちらも、99.9重量%超のNi(例えば、100%のNi)を含み、2つの集団、すなわち約600nmのD50を有する小型集団および約3μmのD50を有する大型集団中にも存在する。大きなNi集団は、フィラメント状形態を有する。銅粒子は、約400nmのD50を有し、約99.7重量%のCuおよび約0.3重量%のOである。
【0091】
粒子相対重量比(大型鉄:小型鉄:大型ニッケル:小型ニッケル:銅)は、例えば、約5:10:2:1:1または約10:5:2:1:1または約3:12:1:2:4または約3:12:1:2:1または約3:12:1:2:2とすることができる。重量百分率として、相対量は、例えば、約25%~約55%といった約15%~約60%の大型鉄粒子、約55%~約25%などといった約60%~約15%の小型鉄粒子、約5%~12%などの約2%~約20%の大型ニッケル、約5%~12%などといった約2%~20%の小型ニッケル、および約5%~約12%などといった約2%~20%の銅の範囲とすることができる。他の好適な重量比または百分率も使用することができる。各タイプの粒子の相対量は、所望に応じて、好適な硬度を実現するよう、かつ/または焼結温度の低下を可能にするよう修正することができる。大型鉄、小型鉄および大型ニッケル粒子は、金属足場粒子とみなすことができ、小型ニッケルおよび銅粒子は、溶浸材粒子と見なすことができる。しかし、大型ニッケル粒子は、大型鉄粒子に対する溶浸材として働くことが可能となり得る。実施形態では、小型鉄粒子は、これらの粒子が含む他の元素は何か、および足場粒子に対するその相対サイズに応じて、溶浸材とみなされることもやはり可能となり得る。
【0092】
焼結される組成物の硬度をさらに向上するため、超硬質構成成分を加えることができる。実施形態では、超硬質構成成分は、ペーストの混合中に加えられる。例えば、超硬質構成成分は、混合物の約1体積%~約5体積%で、金属ペースト混合物に添加することができる。超硬質構成成分は、ホウ化チタン、炭化チタン、炭化タングステン、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化バナジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化イットリウムおよびこれらの組合せから選択することができる。超硬質化合物のD50は、約10nm~約100nm、または約10nm~約50nmなどといった、約10nm~約500nmの範囲とすることができる。
【0093】
ペーストの混合中に超硬質構成成分を添加することに加え、またはその代わりに、超硬質構成成分を混合前に大型鉄粒子に添加することができる。実施形態では、大型鉄粒子の内側または大型鉄粒子全体に均一に分布することによるなどの、超硬質構成成分の混合前に、超硬質構成成分を大型鉄粒子に加えることができる。一例として、超硬質粒子は、高エネルギーボールミル法により大型鉄粒子に混合されて、超硬質粒子-大きな軟質粒子の凝集体を形成することができる。本明細書に記載されている大型鉄粒子のいずれも、または他の足場粒子のいずれかも、約0.5重量%~約10重量%の範囲の量で超硬質粒子を含むことができる。一例では、大型粒子は、約95重量%のFeおよび約5重量%の超硬質構成成分を含むことができる。本明細書に記載されている超硬質構成成分のいずれも、鉄粒子または他の足場粒子に含まれ得る。この実施形態の場合の超硬質化合物のD50は、約10nm~約100nm、または約10nm~約50nmなどの約10nm~約500nmの範囲とすることができる。
【0094】
本明細書に記載されている任意の好適な方法を使用して、これらの追加の実施形態に記載されているペーストを作製することができる。例えば、本明細書に記載されている通り、金属ペーストの層は、所望の形状の基材上に堆積されて、乾燥され、場合によりレーザースクライブにより成形されて、エネルギー投入により焼結され得る。最終的な所望の形状が、複数の個々の層の積み重ねにより形成されるまで、このプロセスを繰り返すことができる。実施形態では、焼結は、層の堆積、層の乾燥および成形の各繰り返し後に行うことができる。あるいは、焼結プロセスを延期することができ、その結果、いくつかの層が堆積されて、乾燥され、場合により成形された後だけ行われる。例えば、焼結プロセスは、部品のすべての層を堆積させて、乾燥し、場合により成形した後だけに行うことができる。組み立てプロセスおよび後アニールプロセスもまた、本明細書に記載されている通り、実施することができる。
【実施例】
【0095】
以下の実施例において使用される材料は、以下を含む:
・ 「テルピネオール」は、Sigma-Aldrichからの99%より高い純度のアルファ-テルピネオール溶媒である。
・ 「MS」は、Sigma-Aldrichからの99%より高い純度のミネラルスピリット溶媒である。
・ 「PC」は、Sigma-Aldrichからの99%より高い純度のプロピレンカーボネート溶媒である。
・ 「OA」は、Sigma-Aldrichからの95%より高い純度のオレイン酸潤滑剤である。
・ 「S54k」は、Lubrizolからの分散剤Solsperse9000である。
・ 「PAA」は、Fisher Scientificからのポリマーであるポリ(アクリル酸)、MW=5,000である。
・ 「EC10」は、Dow Chemicalからの工業グレードのバインダーであるエチルセルロース10である。
・ 「QPAC40」は、Empower Materialsからの工業グレードのバインダーであるポリ(プロピレンカーボネート)40である。
・ 「Cu1」粒子は、D50=800nmおよびD90=2μmを有する、銅粒子である。
・ 「Cu2」粒子は、D50=200nmおよびD90=500nmを有する、化学沈殿により生成した、銅ナノ粒子である。
・ 「Fe1」粒子は、D50=4μmおよびD90=8μmを有する、低炭素鋼粒子である。
・ 「Fe2」粒子は、D50=250nmおよびD90=400nmを有する、化学沈殿により生成した、鉄ナノ粒子である。
・ 「Ni1」粒子は、D50=500nmおよびD90=1μmを有する、化学沈殿により生成した、ニッケル粒子である。
・ 「Ni2」粒子は、D50=100nmおよびD90=400nmを有する、化学沈殿により生成した、ニッケル粒子である。
・ 「FeCo1」粒子は、D50=4μmおよびD90=8μmを有する、低炭素鋼粒子である。これらの粒子は、化学沈殿によって生成したコバルトを含む、25nmの厚さのシェルを有する。
・ 「MWCNT」は、30nmのチューブ径および20μmの平均長さを有する、多層カーボンナノチューブである。
【実施例1】
【0096】
Thinky ARE-310プラネタリーミキサーにおいて、5gのテルピネオール溶媒を、0.5gの潤滑剤OA、0.1gのPAAポリマーおよび0.4gのバインダーEC10と混合する。この溶液に、以下の金属粉末:67gのFe1、2gのFe2および25gのNi2を加える。次に、Exakt Technologiesの3本ロールミルを使用して、分散する前に、上記のペーストをプラネタリーミキサー中で湿潤させる。
【実施例2】
【0097】
Thinky ARE-310プラネタリーミキサーにおいて、9gのテルピネオール溶媒を、0.5gの潤滑剤OA、0.1gのPAAポリマーおよび0.4gのバインダーEC10と混合する。この溶液に、以下の金属粉末:60gのFe1、15gのCu2および15gのNi2を加える。次に、Exakt Technologiesの3本ロールミルを使用して、分散する前に、上記のペーストをプラネタリーミキサー中で湿潤させる。
【実施例3】
【0098】
Thinky ARE-310プラネタリーミキサーにおいて、9gのPC溶媒を、0.5gの分散剤S54k、0.1gのPAAポリマーおよび0.4gのバインダーQPAC40と混合する。この溶液に、以下の金属粉末:60gのCu1、14gのCu2および15gのNi2を加える。さらに、1gのMWCNTを上記の混合物に加える。次に、Exakt Technologiesの3本ロールミルを使用して、分散する前に、上記のペーストをプラネタリーミキサー中で湿潤させる。
【実施例4】
【0099】
Thinky ARE-310プラネタリーミキサーにおいて、7gのテルピネオール溶媒を、0.5gの潤滑剤OA、0.1gのPAAポリマーおよび0.4gのバインダーEC10と混合する。この溶液に、以下の金属粉末:62gのNi1、14gのFe2、10gのCu2および5gのNi2を加える。さらに、1gのMWCNTを上記の混合物に加える。次に、Exakt Technologiesの3本ロールミルを使用して、分散する前に、上記のペーストをプラネタリーミキサー中で湿潤させる。
【実施例5】
【0100】
Thinky ARE-310プラネタリーミキサーにおいて、7gのテルピネオール溶媒を、0.5gの潤滑剤OA、0.1gのPAAポリマーおよび0.4gのバインダーEC10と混合する。この溶液に、以下の金属粉末:63gのFeCo1、5gのFe2、5gのCu2、5gのNi1および13gのNi2を加える。さらに、1gのMWCNTを上記の混合物に加える。次に、Exakt Technologiesの3本ロールミルを使用して、分散する前に、上記のペーストをプラネタリーミキサー中で湿潤させる。
【0101】
本開示の幅広い範囲を説明する数値範囲およびパラメータ設定が概数である場合にかかわらず、具体例中に説明されている数値は、できる限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、これらの個々の試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因するある種の誤差を、本質的に含んでいる。さらに、本明細書において開示されている範囲はすべて、任意の部分範囲、およびこの中に含まれるすべての部分範囲を包含することを理解されたい。
【0102】
本教示は、1つまたは複数の実施に関して例示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、例示的な例に変形および/または修正を行うことができる。さらに、本教示の特定の特徴は、いくつかの実施の1つに関してしか開示されていないことがあるが、このような特徴は、任意の所与の機能または特定の機能に対して望ましく、かつ利点となり得る、他の実施の1つまたは複数の他の特徴と組み合わされてもよい。さらに、用語「含むこと(including)」、「含む(includes)」、「有すること(having)」、「有する(has)」、「を伴う(with)」またはこれらの変化形は、詳細説明および特許請求の範囲のどちらかに使用されている程度に、このような用語は、用語「含む(comprising)」と同様に含まれることが意図されている。さらに、本明細書における議論および特許請求の範囲では、用語「約(about)」は、変形が、例示されている実施形態に対するプロセスまたは構造と不適合にならない限り、列挙されている値がいくらか改変されていてもよいことを示す。最後に、「例示的な」は、説明が、理想的であることを意味しているというよりも、一例として使用されていることを示している。
【0103】
本教示の他の実施形態は、本明細書の熟慮、および本明細書において開示されている本教示の実施から当業者には明白となろう。本明細書および実施例は、例示に過ぎないものと見なされ、本教示の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されていることが意図される。