IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 荏原環境プラント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-プロセス管理支援装置および方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】プロセス管理支援装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
G05B23/02 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021183229
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2017046411の分割
【原出願日】2017-03-10
(65)【公開番号】P2022010199
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 慶
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-128800(JP,A)
【文献】特開2000-213724(JP,A)
【文献】特開平6-73414(JP,A)
【文献】特開平10-147804(JP,A)
【文献】特開平5-33906(JP,A)
【文献】特開2012-247855(JP,A)
【文献】特開2000-28123(JP,A)
【文献】特開2000-51816(JP,A)
【文献】特開2005-230810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 -23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとし、前記対象プロセスの性能を示す少なくとも1つの性能管理指標を管理するためのプロセス管理支援装置であって、
対象プロセスの状態量及び/又は操作量を計測データとして収集するデータ収集部と、
前記データ収集部で収集された、複数の第1の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを説明変数として、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第2の時点における前記性能管理指標を目的変数とする回帰モデルを構築するモデル構築部であって、前記説明変数には、前記対象プロセスの制御目標値が含まれる、前記モデル構築部と、
前記モデル構築部で構築された前記回帰モデルに対して、前記データ収集部で収集された、複数の前記第1 の時点のいずれよりも後の第3の時点及び前記第3の時点より前の複数の第4 の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを入力することにより、前記少なくとも1つの性能管理指標の、前記第3の時点より後の第5の時点における予測値を算出する予測部とを有することを特徴とする、プロセス管理支援装置。
【請求項2】
前記予測部で算出された、前記少なくとも1つの性能管理指標の前記第5の時点における予測値の変化に基づいて、前記対象プロセスの制御目標値に関する制御データを出力する出力部を有することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記回帰モデルに対して、仮想的な前記制御目標値の値を前記説明変数の値として入力することにより、前記性能管理指標の仮想的な将来予測値を算出し、
前記出力部は、得られた前記性能管理指標の仮想的な前記将来予測値が、所定の管理範囲内に収まるときに、仮想的な前記制御目標値の値を、指令値として出力することを特徴とする、請求項2に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項4】
前記モデル構築部は、前記計測データのうちの少なくとも1つの計測データについて、非線形変換、微分又は差分変換、積分又は積算変換のうちの少なくとも1つを行うことで得られた少なくとも1つの前記演算データを前記説明変数の少なくとも一部として用いることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項5】
前記モデル構築部は、2つ以上の前記計測データ及び/又は前記計測データから演算される演算データに対して、主成分分析(PCA)に基づく次元削減を行うことで得られた少なくとも1つの変数を、前記回帰モデルの前記説明変数の全部又は一部として用いることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項6】
前記モデル構築部は、線形回帰、主成分回帰、部分最小自乗回帰、一般化線形回帰、サポートベクトル回帰、ランダムフォレスト回帰のうちのいずれかにより前記回帰モデルを構築することを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項7】
前記モデル構築部は、前記複数の第1の時点における前記計測データとして、前記第3の時点を含まない、前記第3の時点より前で前記第3の時点の近傍の所定期間に得られた前記計測データを用いることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項8】
前記モデル構築部は、前記所定期間に得られた前記計測データに加えて、
2つ以上の前記説明変数間の相関関係に関して、前記所定期間における前記相関関係と、前記所定期間より前の複数の別の所定期間における前記相関関係との間の類似度を評価して、評価結果に基づいて前記別の所定期間を選択し、選択された前記別の所定期間における計測データ、及び/又は
1つ以上の前記説明変数と1つ以上の前記目的変数との間の相関関係に関して、前記所定期間における当該相関関係と、前記所定期間より前の複数の別の所定期間における当該相関関係との間の類似度を評価して、評価結果に基づいて当該別の所定期間を選択し、選択された当該別の所定期間における計測データ、
を用いることを特徴とする、請求項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項9】
前記モデル構築部は、主成分分析(PCA)と、前記主成分分析に基づいて計算されるQ統計量及びホテリングのT統計量とを用いて、前記類似度を算出することを特徴とする、請求項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項10】
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、水銀濃度のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項11】
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度であり、前記出力部は、前記排ガス中の酸素濃度の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、請求項2又は3に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項12】
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の窒素酸化物濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける脱硝設備への脱硝薬剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、請求項2又は3に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項13】
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の硫黄酸化物濃度及び/又は塩化水素濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける排ガス処理設備への脱塩薬剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、請求項2又は3のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項14】
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の水銀濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける排ガス処理設備への活性炭及び/又はキレート吸着剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、請求項2又は3のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
【請求項15】
データ収集部と、モデル構築部と、予測部とを有するプロセス管理支援装置を用いて、廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとし、前記対象プロセスの性能を示す少なくとも1つの性能管理指標を管理するためのプロセス管理支援方法であって、
前記データ収集部が、対象プロセスの状態量を計測データとして収集するステップと、
前記モデル構築部が、収集された、複数の第1の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを説明変数として、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第2の時点における前記性能管理指標を目的変数とする回帰モデルを構築し、前記説明変数には、前記対象プロセスの制御目標値が含まれる、ステップと、
前記予測部が、構築された前記回帰モデルに対して、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第3の時点及び前記第3の時点より前の第4の時点における前記計測データのうちの少なくとも一つを入力することにより、前記少なくとも1つの性能管理指標の、前記第3の時点より後の第5の時点における予測値を算出するステップとを有することを特徴とする、プロセス管理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス管理支援装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却プラントやバイオマス燃焼プラントなどの燃焼プロセスにおいては、排ガス中の一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物、塩化水素、水銀などの有害物質の発生を極力抑制しつつ、高効率かつ安定して熱回収できる操業管理が求められている。しかしながら、これらのプラントでは雑多なごみやバイオマスを燃料としているため、燃料の特性(材質、形状、水分、発熱量等)の変動が大きく、燃焼状態が変動しやすい。安定して高効率なプラント操業には安定した燃焼が不可欠である。そのために、燃焼前に、ごみや燃料が投入されたピット内でごみや燃料を攪拌して均一化させるなどの操業上の取り組みや、燃焼状態の変動に対応するための様々な運転制御装置の開発がなされている。
【0003】
これらの対象プラントのおける運転制御装置としては、一般に分散型制御システム(DCS:Distributed Control System)が用いられる。分散型制御システムでは、管理すべき性能管理指標が所定の管理範囲から逸脱しないよう、それらの性能管理指標そのものを制御量とした制御ループや、それらの性能管理指標と強い相関のある物理量を制御量とした制御ループを制御システム内に実装する。制御ループにより、制御量に対応する操作量が調節されている。
【0004】
例えば、性能管理指標を排ガス中の一酸化炭素濃度とした場合、一般に排ガス中の一酸化炭素濃度は、プロセスへの燃焼用空気の流量が不足し、プロセスからの排ガス中の酸素濃度が低下した際に上昇するという相関関係がある。排ガス中の酸素濃度を制御量とし、燃焼用空気の流量調節弁の開度を操作量としたフィードバック制御を機能させることで、排ガス中の一酸化炭素濃度が所定の管理基準値を超過しないように運転管理が行われている。
【0005】
また、性能管理指標を排ガス中の窒素酸化物濃度とした場合、排ガス中の窒素酸化物濃度は、焼却炉又は燃焼炉における無触媒脱硝反応の脱硝剤、あるいは排ガス処理設備に設置される脱硝塔における触媒脱硝反応の脱硝剤の流量を増加させることにより低下させることができる。脱硝剤としては、プロセスに供給される尿素水やアンモニア水等がある。排ガス中の窒素酸化物濃度を制御量とし、尿素水やアンモニア水の流量調節弁の開度を操作量としたフィードバック制御を機能させることで、排ガス中の窒素酸化物濃度が所定の管理基準値を超過しないように運転管理が行われている。
【0006】
しかしながら、これらの制御で用いられるフィードバック制御では、対象プロセスにおける焼却炉ないし燃焼炉において、燃料が燃焼した結果として生じる排ガス中の酸素濃度や窒素酸化物濃度の計測値を参照して制御ループを機能させている。すなわち、一酸化炭素濃度や窒素酸化物濃度の変動をもたらす、焼却炉ないし燃焼炉における燃焼変動の根本的な原因である、燃料であるごみやバイオマスそのものの供給量や特性の変動の情報は、フィードバック制御においては通常利用されていない。これは、燃料であるごみあるいはバイオマスの供給量や特性、例えば水分や発熱量を、それらが焼却炉ないし燃焼炉に投入される前に、リアルタイムでかつ高精度に計測できる工業装置が現実的に存在していないことによる。
【0007】
燃料であるごみやバイオマスの供給量や特性が変化した場合、その変化の影響が排ガス中の酸素濃度や窒素酸化物濃度の計測値として検出されるまでには、燃焼プロセスそのも
のの特性や、またそれら濃度の計測装置自体がもつ特性に応じた時間遅れが生じる。したがってこれらのプロセスでは、燃料の供給量や特性が変動した場合、その変動に対応するように燃焼用空気や脱硝剤の供給量を素早く調節することができず、排ガス中の一酸化炭素濃度や窒素酸化物濃度が所定の管理基準値を超過することがあるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-141712号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】URL:http://manabukano.brilliant-future.net/document/text-PCA.pdf
【文献】URL:http://manabukano.brilliant-future.net/lecture/dataanalysis/doc06_PLS.pdf
【文献】URL:http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~kubo/ce/LinksGlm.html
【文献】藤原幸一ほか、相関型Just-In-Timeモデリングによるソフトセンサの設計、計測自動制御学会論文集Vol44, No.4, 317/324 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一形態は、このような問題点を解消すべくなされたものである。その目的は、廃棄物焼却プラントやバイオマス燃焼プラントなどの燃焼プロセスにおいて、プロセスにおける焼却炉や燃焼炉に燃料として供給されるごみやバイオマスの供給量や特性が変動したときに、管理すべき性能管理指標が所定の範囲を逸脱することが無いようなプロセスの運転管理を可能とする、プロセス管理支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1の形態では、廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとし、前記対象プロセスの性能を示す少なくとも1つの性能管理指標を管理するためのプロセス管理支援装置であって、対象プロセスの状態量及び/又は操作量を計測データとして収集するデータ収集部と、前記データ収集部で収集された、複数の第1の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを説明変数として、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第2の時点における前記性能管理指標を目的変数とする回帰モデルを構築するモデル構築部と、前記モデル構築部で構築された前記回帰モデルに対して、前記データ収集部で収集された、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第3の時点及び前記第3の時点より前の複数の第4の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを入力することにより、前記少なくとも1つの性能管理指標の、前記第3の時点より後の第5の時点における予測値を算出する予測部とを有することを特徴とする、プロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0012】
本形態におけるプロセス管理支援装置は、例えば、以下のように構成される。対象プロセスの1つ以上の性能管理指標を所定の範囲内に保つことを目的とした前記対象プロセスの運転管理支援装置は、前記対象プロセスに設けられた複数のセンサにより計測される、対象プロセスの複数の状態量及び/または操作量の計測データを収集又は保存するデータ収集保存部(データ収集部)を有する。
【0013】
モデル構築部では、前記データ収集保存部で収集又は保存された、過去の時点t及び該時点tから一定の0より大きい時間幅Δtごとに遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)(複数の第1の時点)における計測データの全部又は一部及び/又は該計測データから演算される1つ以上の変数(演算データ)を説明変数とし、前記過去の時点tに対して0より大きい時間幅Δtを加えた、時点(t+Δt)(第2の時点)における前記1つ以上の性能管理指標の値を目的変数とする回帰モデルを構築する。
【0014】
予測部では、前記モデル構築部で構築された回帰モデルに対して、前記データ収集保存部で収集又は保存された、現在の時点t(第3の時点)及び該現在の時点tから遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)(第4の時点)における計測データの全部又は一部を入力することにより、前記1つ以上の性能管理指標の将来の時点(t+Δt)(第5の時点)における予測値を算出する。
【0015】
このように構成すると、過去の時点t及び該時点tから遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における前記説明変数と、前記過去の時点tに対して0より大きい時間幅Δtを加えた、時点(t+Δt)における前記性能管理指標との統計的な相関関係に基づいて、現在の時点tに対する、将来の時点(t+Δt)における前記性能管理指標の予測値を、プロセスそのものの時間遅れや、計測装置のもつ時間遅れの影響を受けることなく算出することができる。
【0016】
第2の形態では、前記予測部で算出された、前記少なくとも1つの性能管理指標の前記第5の時点における予測値の変化に基づいて、前記対象プロセスの制御目標値に関する制御データを出力する出力部を有することを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0017】
例えば、プロセス管理支援装置は、前記予測部で算出された、前記1つ以上の性能管理指標の将来の時点(t+Δt)における予測値の変化に基づいて、前記対象プロセスの1つ以上の操作量及び/又は制御目標値を調節する指令値を前記対象プロセスの運転制御装置に対して出力する、指令値出力部(出力部)を有する。
【0018】
このように構成すると、プロセスの時間遅れや、計測装置のもつ時間遅れの影響を受けることなく算出された、将来の時点(t+Δt)における前記性能管理指標の予測値を参照して、前記性能管理指標の値が所定の範囲を逸脱しないようにするための調整操作を、より早い段階で行うことができる。このため、前記性能管理指標の値が所定の範囲を逸脱することを抑制することができる。
【0019】
第3の形態では、前記モデル構築部は、前記計測データのうちの少なくとも1つの計測データについて、非線形変換、微分又は差分変換、積分又は積算変換のうちの少なくとも1つを行うことで得られた少なくとも1つの前記演算データを前記説明変数の少なくとも一部として用いることを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0020】
このように構成すると、プロセスの物理的又は化学的特性によって、前記計測データを直接説明変数として用いるよりも、変換された変数を説明変数として用いた方が、プロセスの状態変化や前記性能管理指標の変化をよりよく説明できる場合に、前記性能管理指標の将来の予測値を精度よく算出することができる。変換としては、非線形変換(乗算や除算を含む)、前記計測データの変化率算出(差分又は微分)、あるいは所定時間の積算量算出(積分又は積算)等がある。
【0021】
第4の形態では、前記モデル構築部は、2つ以上の前記計測データ及び/又は前記計測
データから演算される演算データに対して、主成分分析(PCA)に基づく次元削減を行うことで得られた少なくとも1つの変数を、前記回帰モデルの前記説明変数の全部又は一部として用いることを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0022】
このように構成すると、前記計測データ及び/又は前記計測データから演算される演算データの間に相関関係がある場合において、それらを直接に説明変数として用いて前記性能管理指標の将来の予測値を得る回帰モデルを構築した場合に発生する多重共線性の影響を排除することができる。さらに、回帰モデルにおいて用いられる説明変数の数を減らすことができるため、前記性能管理指標の将来の予測値を精度よく、かつ少ない計算負荷で算出することができる。
【0023】
第5の形態では、前記モデル構築部は、線形回帰、主成分回帰、部分最小自乗回帰、一般化線形回帰、サポートベクトル回帰、ランダムフォレスト回帰のうちのいずれかにより前記回帰モデルを構築することを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0024】
このように構成すると、回帰モデルにおいて用いられる説明変数と、目的変数である前記性能管理指標の関係性に応じて適切な回帰モデルの構築手法を選択することにより、前記性能管理指標の将来の予測値を精度よく算出することができる。
【0025】
第6の形態では、前記モデル構築部は、前記複数の第1の時点における前記計測データとして、前記第3の時点を含まない、前記第3の時点より前で前記第3の時点の近傍の所定期間に得られた前記計測データを用いることを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0026】
例えば、プロセス管理支援装置は、前記モデル構築部において、前記過去の時点t及び該時点tから遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における計測データとして、現在時点tを含まない、現在時点tの直前の所定期間に得られた計測データを用いる。
【0027】
このように構成すると、現在時点の直前の所定期間に得られた計測データに基づく説明変数と、目的変数である前記性能管理指標の関係性に基づいた回帰モデルを構築して前記性能管理指標の将来予測値を算出することができる。このため、対象プロセスの特性や、燃料であるごみやバイオマスの供給量や特性の長期的な変化が大きい場合においても、常に最新の状況を反映した前記性能管理指標の将来予測値を精度よく算出することができる。
【0028】
第7の形態では、前記モデル構築部は、前記所定期間に得られた前記計測データに加えて、2つ以上の前記説明変数間の相関関係に関して、前記所定期間における前記相関関係と、前記所定期間より前の複数の別の所定期間における前記相関関係との間の類似度を評価して、評価結果に基づいて前記別の所定期間を選択し、選択された前記別の所定期間における計測データ、及び/又は1つ以上の前記説明変数と1つ以上の前記目的変数との間の相関関係に関して、前記所定期間における当該相関関係と、前記所定期間より前の複数の別の所定期間における当該相関関係との間の類似度を評価して、評価結果に基づいて当該別の所定期間を選択し、選択された当該別の所定期間における計測データ、を用いることを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0029】
例えば、プロセス管理支援装置は、前記モデル構築部において、前記過去の時点t及び該時点tから遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における計測データとして、現在時点tを含まない、現在時点tの直前の所定
期間に得られた計測データに加えて、現在時点tの直前の所定期間における2つ以上の説明変数間の相関関係との類似度の高い、及び/又は1つ以上の説明変数と1つ以上の目的変数との間の相関関係との類似度の高い、過去の複数の所定期間の計測データを用いる。
【0030】
このように構成すると、対象プロセスの特性や、燃料であるごみやバイオマスの供給量や特性の短期的な変化が大きく、現在時点の直前の比較的長い連続する期間に得られた計測データのみを用いて回帰モデルを作成すると、モデル構築に用いる説明変数及び目的変数の統計的性質の変化が大きく、前記性能管理指標の将来予測値を精度よく算出できない場合に利点がある。すなわち、現在時点の直前の比較的短い期間に得られた計測データに加えて、現在時点tの直前の所定期間における2つ以上の説明変数間の相関関係との類似度の高い、及び/又は1つ以上の説明変数と1つ以上の目的変数との間の相関関係との類似度の高い過去の複数の所定期間の計測データを用いることで、プロセスの最新の状況を反映し、かつ統計的に十分な量のモデル構築用データを得ることができる。このため、前記性能管理指標の将来予測値を一層精度よく算出することができる。
【0031】
第8の形態では、前記モデル構築部は、主成分分析(PCA)と、前記主成分分析に基づいて計算されるQ統計量及びホテリングのT統計量とを用いて、前記類似度を算出することを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0032】
このように構成すると、モデル構築に用いる説明変数間及び/又は説明変数と目的変数との間の相関関係の類似度を定量的に考慮して、前記現在時点tの直前の所定期間における計測データとの該相関関係の類似度の高い過去の複数の所定期間の計測データを効率的に抽出できる。このため、前記性能管理指標の将来予測値を一層精度よく算出することができる。
【0033】
第9の形態では、前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、水銀濃度のうちの少なくとも1つであることを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0034】
このように構成すると、対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、水銀濃度の将来予測値を、プロセスそのものの時間遅れや、計測装置のもつ時間遅れの影響を受けることなく算出することができる。そして、それらの将来予測値を参照することで、排ガス中の一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、水銀濃度が所定の範囲を逸脱しないようにするための調整操作を、より早い段階で行うことができる。このため、排ガス中の一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、水銀濃度が所定の範囲を逸脱することを抑制することができる。
【0035】
第10の形態では、前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度であり、前記出力部は、前記排ガス中の酸素濃度の制御目標値を指令値として出力することを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0036】
このように構成すると、対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値に基づいて、対象プロセスにおける排ガス中の酸素濃度の制御目標値を調節することにより、排ガス中の一酸化炭素濃度が所定の範囲を逸脱することを防止することができる。
【0037】
第11の形態では、前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の窒素酸化物濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける脱硝設備(無触媒脱硝
設備又は脱硝設備)への脱硝薬剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0038】
このように構成すると、対象プロセスから排出される排ガス中の窒素酸化物濃度の将来予測値に基づいて、対象プロセスにおける無触媒脱硝設備又は脱硝設備への脱硝薬剤の供給量を調節することにより、排ガス中の窒素酸化物濃度が所定の範囲を逸脱することを防止することができる。
【0039】
第12の形態では、前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の硫黄酸化物濃度及び/又は前記塩化水素濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける排ガス処理設備への脱塩薬剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0040】
このように構成すると、対象プロセスから排出される排ガス中の硫黄酸化物濃度及び/又は塩化水素濃度の将来予測値に基づいて、対象プロセスにおける排ガス処理設備への脱塩薬剤の供給量を調節することにより、排ガス中の硫黄酸化物濃度及び/又は塩化水素濃度が所定の範囲を逸脱することを防止することができる。
【0041】
第13の形態では、前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の水銀濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける排ガス処理設備への活性炭及び/又はキレート吸着剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とするプロセス管理支援装置という構成を採っている。
【0042】
このように構成すると、対象プロセスから排出される排ガス中の水銀濃度の将来予測値に基づいて、対象プロセスにおける排ガス処理設備への活性炭及び/又はキレート吸着剤の供給量を調節することにより、排ガス中の水銀濃度の所定の範囲を逸脱することを防止することができる。
【0043】
第14の形態では、廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとし、前記対象プロセスの性能を示す少なくとも1つの性能管理指標を管理するためのプロセス管理支援方法であって、対象プロセスの状態量を計測データとして収集するステップと、収集された、複数の第1の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを説明変数として、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第2の時点における前記性能管理指標を目的変数とする回帰モデルを構築するステップと、構築された前記回帰モデルに対して、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第3の時点及び前記第3の時点より前の第4の時点における前記計測データのうちの少なくとも一つを入力することにより、前記少なくとも1つの性能管理指標の、前記第3の時点より後の第5の時点における予測値を算出するステップとを有することを特徴とする、プロセス管理支援方法という構成を採っている。
【発明の効果】
【0044】
本発明の実施形態によれば、廃棄物焼却プラントやバイオマス燃焼プラントなどの燃焼プロセスにおいて、当該プロセスにおける焼却炉や燃焼炉に燃料として供給されるごみやバイオマスの供給量や特性が変化したとしても、管理すべき性能管理指標が所定の範囲を逸脱することが無いようなプロセスの運転管理を可能とする、プロセス管理支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとした運転管理支援装置(プロセス管理支援装置)の機能ブロック図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとした運転管理支援装置(プロセス管理支援装置)の機能ブロック図を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る運転管理支援装置10は、データ収集保存部11(データ収集部)と、モデル構築部12と、予測部13と、指令値出力部14(出力部)とを有する。
【0047】
データ収集保存部11は、対象プロセス1に設けられた複数のセンサ・制御器・監視カメラ等2により計測される、対象プロセス1の複数の状態量や操作量の計測データを収集又は保存する。
【0048】
モデル構築部12では、データ収集保存部11で収集又は保存された、過去の時点t及び時点tから一定の0より大きい時間幅Δtごとに遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における計測データの全部又は一部を説明変数とする。もしくは、モデル構築部12では、前記計測データ及び/又は前記計測データから演算される1つ以上の変数を説明変数とする。モデル構築部12は、これらの説明変数を用いて、過去の時点tに対して0より大きい時間幅Δtを加えた、時点(t+Δt)における1つ以上の性能管理指標の値を目的変数とする回帰モデルを構築する。
【0049】
予測部13では、モデル構築部12で構築された回帰モデルに対して、データ収集保存部11で収集又は保存された、現在の時点t及び現在の時点tから遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における計測データの全部又は一部が入力され、1つ以上の性能管理指標の将来の時点(t+Δt)における予測値を算出する。
【0050】
指令値出力部14は、予測部13で算出された、1つ以上の性能管理指標の将来の時点(t+Δt)における予測値の変化に基づいて、対象プロセス1の1つ以上の操作量及び/又は制御目標値を調節する指令値を対象プロセス1の運転監視制御装置3に対して出力する。
【0051】
ここで、運転管理支援装置10は、物理的には、各種の演算を行うCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、補助記憶装置であるHDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)、及びその他の入出力デバイス等のハードウェアを備えている。これらが本装置の機能を適切に発揮するように予め作成されたコンピュータプログラムに従って動作することによって、上記の各ブロックの機能が発揮される。
【0052】
具体的には、例えば、データ収集保存部11は、対象プロセス1の複数の状態量や操作量の計測データを取得する入力デバイス等と、それらの計測データを保存するRAM、ROM、HDD、及び/又はSSD等からなる。
【0053】
同様に、例えば、モデル構築部12及び予測部13は、データ収集保存部11において収集又は保存された計測データを参照して、予め定められた手順に従って回帰モデルの構築あるいは回帰モデルを用いた予測値の算出に必要な演算を行うCPU等と、その演算過程における入出力変数や中間変数の保存に用いられるRAM、ROM、HDD、及び/又はSSD等、及び得られた回帰モデルあるいは予測値の情報を表示する表示デバイス等からなる。
【0054】
同様に、例えば、指令値出力部14は、予測部13において算出された予測値を参照して、予め定められた手順に従って指令値を算出するために必要な演算を行うCPU等と、その演算過程における入出力変数や中間変数の保存に用いられるRAM、ROM、HDD、及び/又はSSD等と、得られた指令値を、操作量を調節する調節デバイスに対して出力する出力デバイス等からなる。
【0055】
なお、これらのハードウェアは、図1に示した運転管理支援装置10の各機能ブロックを構成することを目的とした専用のハードウェアとして構成されてもよい。また、これらのハードウェアは、対象プロセス1の運転監視制御装置3、例えば分散型制御システム(DCS:Distributed Control System)に用いられるハードウェアを利用して構成されてもよい。
【0056】
データ収集保存部11は、対象プロセス1を実施する装置に設置される各種のセンサ・制御器・監視カメラ等2から直接的に、又はプロセスの運転監視制御装置3を経由して間接的に、本運転管理支援装置10の機能を達成する上で必要となる複数の計測データを逐次取得する。なお、ここでいう計測データ(状態量及び/又は操作量)としては、対象プロセス1に設置されたセンサにおいて計測される温度、圧力、流量、濃度などの物理量のデータに加え、プロセスの運転監視制御装置に組み込まれた各種の制御器の入出力データや制御パラメータなどのデータや、プロセスの運転監視に用いられる監視カメラ等により得られる画像情報や、それらの画像情報を加工して得られる数値データなども含めることができる。
【0057】
モデル構築部12は、過去の時点t及び時点tから一定の0より大きい時間幅Δtごとに遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における計測データの全部又は一部、及び/又はそれらの計測データから演算される1つ以上の変数を説明変数として、過去の時点tに対して0より大きい時間幅Δtを加えた、時点(t+Δt)における1つ以上の性能管理指標の値を目的変数とする回帰モデルを構築する。
【0058】
ここで、本実施形態における性能管理指標としては、対象プロセス1が実施された結果として生じる、例えば排出される排ガス中の一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物、塩化水素、水銀などの有害物質の濃度などが含まれうる。また、プロセスから発生し、余熱利用のために用いられる回収蒸気あるいは回収温水の流量や、回収蒸気を熱源とする蒸気タービン発電機にて発生する発電電力量や、対象プロセス1の操業に要する用水・薬剤・燃料・電力等のユーティリティの使用量などが含まれうる。さらに、対象プロセス1の機械的健全性を維持するために管理すべき重要部の温度や圧力などが含まれうる。
【0059】
また、本実施形態におけるモデル構築部12で用いられる説明変数としては、焼却炉又は燃焼炉への燃料供給装置の運転速度やその電流値など、対象プロセス1における燃料であるごみやバイオマスの供給量や特性と関連性の高い計測値などが含まれうる。また、プロセス中の複数個所の温度や圧力、供給される用水や薬剤など、対象プロセス1における反応場の反応条件と関連性の高い計測値などが含まれうる。さらに、プロセスにおける各種の制御目標値と制御量の偏差や比率など、対象プロセス1における制御性能の良否と関連性の高い計測値などが含まれうる。これらの計測値から、着目する性能管理指標との関連性が高い変数を適宜抽出して用いるのがよい。
【0060】
ここで、それらの説明変数と、目的変数である性能管理指標の関係性には、対象プロセス1が有する動特性に基づく時間遅れが存在する場合がある。例えば説明変数として、対象プロセス1における焼却炉又は燃焼炉への燃料供給装置の運転速度に着目し、目的変数
である性能管理指標として、対象プロセス1から排出される排ガス中の一酸化炭素濃度に着目した場合を考える。説明変数である燃料供給装置の運転速度を変化させた際に、その影響が目的変数である排ガス中の一酸化炭素濃度に現れるまでには、プロセスの特性や濃度計測装置が持つ特性に応じた時間遅れが生じる。このような場合、モデル構築部12における説明変数としては、過去の時点tにおける燃料供給装置の運転速度に加えて、時点tから一定の0より大きい時間幅Δtごとに遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における燃料供給装置の運転速度の計測データを用いることが好ましい。
【0061】
ここで、Δt及びnの値は、対象プロセス1における時間遅れの特性と、モデル構築において許容される計算負荷とを考慮して決めるのが望ましい。具体的には、対象プロセス1における時間遅れτに対して、時間幅(nΔt)がτの1から3倍程度となるように、Δt及びnの値を決めるのが良い。このようなΔt及びnの組み合わせは無数にあるが、一般には、Δtを小さくし、nを大きくした方が、回帰モデルの説明変数としてより多くの変数を参照することになるため、構築される回帰モデルの精度が高まる。しかしながら、過度にnを大きくすると、説明変数の数が多くなりすぎ、モデルの構築及びそれを用いた予測値の算出における演算量が増大してしまう。好ましくはnを1から20の間のいずれかの自然数、より好ましくはnを1から10のいずれかの自然数とした際に、時間幅(nΔt)がプロセスの時間遅れτの1~3倍程度になるように、Δtを決めるのが実用的である。
【0062】
本発明の実施形態における対象プロセス1である廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスにおいては、焼却炉あるいは燃焼装置の形式により、プロセスの時間遅れの特性が大きく異なることが知られている。例えば、対象プロセス1における焼却炉や燃焼炉が、流動床式のごみ焼却炉やバイオマス燃焼炉である場合は、一般に時間遅れは数十秒から数分のオーダーである。例えば時間遅れτがτ=2分である場合、n=5、Δt=1分とすれば、(nΔt)=5分=2.5τとなり、条件をみたすことができる。
【0063】
あるいは、対象プロセス1における焼却炉や燃焼炉が、ストーカ式ごみ焼却炉である場合は、一般に時間遅れは数分から数時間のオーダーである。例えば時間遅れτがτ=30分である場合、n=12、Δt=5分とすれば、(nΔt)=60分=2τとなり、条件をみたすことができる。
【0064】
ここで、時間遅れτについては、着目する説明変数と、目的変数である性能管理指標の時系列データ間の相互相関係数が最も高くなるラグ(時間幅)として予め算出することができる。
【0065】
なお、目的変数である性能管理指標の時系列データが強い自己相関性をもつ場合、例えば時間に対して周期的な振る舞いをする場合を考える。この場合は、モデル構築部12における説明変数として、過去の時点t及び時点tから一定の0より大きい時間幅Δtごとに遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における性能管理指標そのものの値を加えて用いることもできる。この場合は、性能管理指標の時系列データの自己相関係数が最も高くなるラグ(時間幅)を予め算出し、時間幅(nΔt)がその1~3倍となるようにn及びΔtを決定するのがよい。
【0066】
ところで、対象プロセス1の物理的又は化学的特性によっては、説明変数の候補となる計測データを直接説明変数として用いるよりも、それらの計測データに対して非線形変換(乗算や除算を含む)を行って得られる変数や、それらの計測データの変化率(差分又は微分)、あるいは所定時間の積算量(積分又は積算)に対応する変数を説明変数として用いた方が、プロセスの状態変化や性能管理指標の変化をよりよく説明できる場合がある。
【0067】
例えば、特許文献1は、プラントの性能や安定運転に係る管理指標や性能指標をプロセスの計測値に基づいて管理する上で、プロセスの計測変数のデータを直接監視するよりも、計測データに非線形演算を施した値や、計測データの微分値あるいは積分値等を監視する方が、より適切にプロセス状態を把握できることも多いと記載する。そして、下水処理プロセス分野におけるそのような管理指標の例を示している。
【0068】
本発明における対象プロセス1である廃棄物の焼却プロセスやバイオマスの燃焼プロセスにおいても、計測データに非線形演算等を施した値や、計測データの微分値あるいは積分値等を監視する方が、好ましいことがある。例えば排ガス中の一酸化炭素濃度のように、対象プロセス1における短期的な変動の影響によりその値が大きく変化する物理量を性能管理指標とする場合を考える。この場合、性能管理指標である一酸化炭素濃度の短期的な変動の大小に対応する説明変数として、燃料供給装置の運転速度やその電流値、プロセス中の温度や圧力の計測データを直接用いるのみでなく、これらの計測データに対して、差分変換又は微分変換を行った変数を、モデル構築部12における説明変数として用いることで、より適切な回帰モデルを構築することができる。
【0069】
また、複数の計測データ、及び/又はそれらに対して変換を行った変数からなる変数群において、各変数の間に相関関係がある場合、単純にそれらの変数群を説明変数として回帰モデルを構築すると、いわゆる多重共線性の影響が生じることがある。この場合、多重共線性の影響により、回帰モデルを用いた際に得られる目的変数としての性能評価指標の将来予測値の予測精度が大幅に低下するため、実用上十分な予測精度は得られない。
【0070】
したがって、本実施形態におけるモデル構築部12は、変数群の一部又は全部に対して、主成分分析(PCA)に基づく次元削減を行うことで得られる、互いに独立な合成変数からなる変数群を説明変数として回帰モデルを構築できるように構成されている。
【0071】
ここで、主成分分析(PCA)の概念について以下で簡単に説明する。主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)は、主に石油化学プロセスの分野で発展してきた多変量統計的プロセス監視(MSPC:Multi-Variate Statistical Process Control)における、最も基本的であり、かつよく利用される手法である。また、PCAを発展させた方法として、後述する主成分回帰(PCR:Principal Component Regression)や、部分最小二乗回帰(PLS: Partial Least Square)などの回帰手法を用いた監視手法も知られている。
【0072】
主成分分析は、P個の変数Xが持つ情報を、情報の損失を最小限に抑えながら、元の変数Xの一次結合として与えられる互いに独立なM個の主成分Zを用いて表現する手法である。ここで、Zは第m主成分とよばれ、Xの一次結合として表される合成変数のうち、第1、第2、・・・、第(m-1)主成分の全てと無相関な変数のうち、分散が最大となるものとして決定される。すなわち、相関のある多数の変数から、相関のない、少数で全体のばらつきを最もよく表す主成分と呼ばれる変数を合成する手法であり、その詳細については特許文献1や、非特許文献1に詳しい。
【0073】
主成分分析の結果は、主成分得点(因子得点、スコア)と、主成分負荷量(因子負荷量、ローディング)によって評価される。主成分得点とは、あるデータ点を主成分ベクトルで表現した場合の基底ベクトルにかかる係数であり、ある主成分ベクトルのデータ点に対する寄与の大きさを示す。また、主成分負荷量とは、ある主成分得点に対する個々の観測データの重みであり、観測データと主成分の相関係数として与えられる。
【0074】
また、各主成分が元のデータに含まれる特徴をどの程度表現しているのか、あるいはいくつの主成分を採用すれば、元のデータに含まれる特徴を十分に表現できるのかについての指標として、寄与率あるいは累積寄与率が計算される。ここで、寄与率とは第m主成分の分散が分散の総和に占める割合、累積寄与率とは第m主成分までの分散の和が分散の総和に占める割合である。例えば累積寄与率が80%となる主成分数mを採用した場合、元のデータのもつ次元pをmまで小さくしつつ、元のデータが持つ分散(変動特性)の80%を表現できるような次元削減を行ったことになる。
【0075】
本実施形態において主成分分析による変数の次元削減を行うことの利点は主に3つある。1つめは、得られる各主成分は独立であるため、元の変数が多重共線性を有する場合であっても、多重共線性の影響を排除した回帰モデルを生成することができることである。2つ目は、変数の数が少なくなることにより、回帰モデルの構築及び利用に際して計算負荷を低減できることである。3つめは、累積寄与率に基づいてプロセスの本質的な特性のみを抽出することにより、回帰モデルの構築及び利用に際して、プロセスの本質的な特性と関係のない高次のノイズの影響を減らすことができることである。
【0076】
なお、主成分分析の対象とする変数は、変数群に含まれる全ての変数としてもよいが、他の変数とほぼ独立であることが明らかな変数については、主成分分析の対象からあらかじめ除くことで、主成分分析に要する計算負荷を低減することができる。また、プロセス各部の温度など、他の変数と強い相関があることが明らかな変数に対しては、主成分分析を行って、可能な限り次元削減を行うことが望ましい。
【0077】
次元削減の目安としては、好ましくは累積寄与率が80%以上となる主成分数m80、より好ましくは累積寄与率が90%以上となる主成分数m90を採用するのがよい。ただし、m80とm90に大きな差異があって、m90を採用すると、主成分分析を行うための計算負荷や、得られた主成分を説明変数とした回帰モデルの構築に要する計算負荷がシステム上問題となる場合には、例えばm80を採用することで、計算負荷を低減することができる。
【0078】
さらに、本実施形態におけるモデル構築部12では、回帰モデルの構築手法として、線形回帰、主成分回帰、部分最小二乗回帰、一般化線形回帰、サポートベクトル回帰、ランダムフォレスト回帰のいずれかの手法を、説明変数と目的変数である性能管理指標の統計的関係性に応じて適宜選択することができるように構築されている。
【0079】
具体的には、目的変数である性能管理指標が説明変数の一次結合で表現でき、説明変数に対する、性能管理指標の確率分布が正規分布に従うとみなせる場合は、線形回帰が選択される。
【0080】
また、説明変数間の相関性が強く、説明変数をそのまま用いて性能管理指標の回帰モデルを構築した場合に多重共線性の影響が懸念される場合は、前述のようにそれらの説明変数に対して主成分分析を行って得られた主成分を説明変数とした、主成分回帰を選択するのがよい。すなわち、主成分分析では互いに独立な主成分を説明変数として回帰モデルを構築するため、多重共線性の影響を排除することができる。
【0081】
また、説明変数間の相関性が強く、説明変数をそのまま用いて性能管理指標の回帰モデルを構築した場合に多重共線性の影響が懸念される場合であっても、それらの説明変数に対して主成分分析を行って得られた主成分と目的変数の相関が小さい場合には、部分最小二乗回帰が選択される。部分最小二乗回帰は、p個の説明変数Xと、q個の目的変数Yとを、ともに新たな空間に射影することにより、その空間上でXの一次結合として与えられる互いに独立な成分と、Yの一次結合として与えられる互いに独立な成分との線
形回帰モデルを構築する手法である。これは、主成分回帰との関連性の強い手法であるが、その詳細については非特許文献2に記載されている。
【0082】
また、目的変数である性能管理指標が、適切な変換を施すことにより説明変数の一次結合で表現でき、説明変数に対する、目的変数である性能管理指標の確率分布が、ベルヌーイ分布、二項分布、ポアソン分布、ガンマ分布等の指数分布族に従うとみなせる場合は、一般化線形回帰が選択される。一般化線形回帰手法の詳細については、非特許文献3に記載されている。
【0083】
また、説明変数と、目的変数である性能管理指標の関係性が上記の線形回帰、主成分回帰、部分最小二乗回帰又は一般化線形回帰を適用できる条件に合致しない場合や、それらの手法を用いた場合に実用上十分な回帰モデルの精度が得られない場合は、サポートベクトル回帰又はランダムフォレスト回帰が選択される。
【0084】
これら2つの手法は、説明変数と目的変数の関係性に強い非線形性がある場合や、説明変数の数が多い場合にも精度の高い回帰モデルを作成できる機械学習手法として近年注目されている。どちらの手法が用いられるべきかは、説明変数と目的変数の性質によるため一概には言えない。一般にはモデル構築に用いられるデータ量が同等の場合、サポートベクトル回帰の方が高い予測精度が得られるといわれている。ただし、サポートベクトル回帰ではデータ量が多くなると計算負荷が増大するため、データ量が十分多い場合は、ランダムフォレスト回帰を用いた方が少ない計算負荷で所望の予測精度が得られることが多いといわれている。
【0085】
そのため、本発明の形態におけるモデル構築部12においては、モデル構築に用いる説明変数の数が少なく、かつモデル構築に用いる計測データの量が少ない場合にはサポートベクトル回帰を、モデル構築に用いる説明変数の数が多いか、あるいはモデル構築に用いる計測データの量が多い場合にはランダムフォレスト回帰が選択されるように構築されている。
【0086】
なお、サポートベクトル回帰や、ランダムフォレスト回帰は、用いる説明変数間の相関関係が強い場合であっても、多重共線性の影響をある程度排除した回帰モデルが構築できるといわれている。ただし、着目する説明変数間の相関関係が強いことが分かっている場合、例えばプロセス各部の温度を説明変数とする場合等には、前述の通り予め主成分分析による次元削減を行うことで、多重共線性の影響を確実に排除することができる。さらに、回帰モデルの構築において用いる説明変数の数を減らすことができるため、より少ない計算負荷で高精度のモデルを構築することができる。
【0087】
以上で述べたように、本実施形態におけるモデル構築部12では、説明変数と目的変数である性能管理指標の統計的関係性に応じて、複数の回帰手法を適宜選択できるように構成されている。このため、事前に説明変数と目的変数の統計的関係性を評価したり、あるいは複数の回帰手法による回帰モデルの精度を比較評価して、どの回帰手法を選択すべきかを決定することが望ましい。
【0088】
例えば、性能管理指標がプロセスからの回収蒸気量など、通常の操業下において突発的なピークを生じることがなく、目標値の値に応じて、その目標値を中心とする正規分布に従うとみなせる物理量である場合には、線形回帰が適している。ただし、それらの説明変数として、例えばプロセス各部の温度のように、変数間の相関が強いものを選択して用いる場合には、主成分回帰又は部分最小二乗回帰を用いることで、多重共線性の影響を排除するのが望ましい。
【0089】
また例えば、性能管理指標が排ガス中の一酸化炭素濃度や、窒素酸化物濃度、あるいは硫黄酸化物濃度や塩化水素濃度などのように、通常はゼロないしゼロに近い非負の値をとるが、プロセスの変動状況により突発的な鋭い正のピークが発生するような物理量である場合、一般にこれらの物理量は正規分布に従わない。このため、線形回帰や主成分回帰、部分最小二乗回帰を直接的に適用することは好ましくない。そこで、これらを性能管理指標とする場合には、それらの計測値に対して非線形変換を行って正規分布に従うようにした上で、線形回帰や主成分回帰、部分最小二乗回帰を用いるか、又はガンマ分布を想定した一般化線形回帰や、サポートベクトル回帰や、ランダムフォレスト回帰など、正規分布に従わない変数のモデル化が可能な回帰手法を用いるのがよい。
【0090】
また、本実施形態におけるモデル構築部12においては、回帰モデルを作成するための計測データとして、現在時点tを含まない、現在時点tの直前の所定期間に得られた計測データに加えて、現在時点tの直前の所定期間における2つ以上の説明変数間の相関関係、及び/又は1つ以上の説明変数と1つ以上の目的変数との間の相関関係との類似度の高い、過去の複数の所定期間の計測データを用いることができるように構成されている。
【0091】
一般に、説明変数と目的変数の関係をうまく説明できる、精度のよい回帰モデルを構築するためには、できるだけ多くの過去の計測データを用いるのがよいとされている。しかしながら、本発明の実施形態における対象プロセス1である廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスの場合、燃料の特性は時間的に一定ではなく、短期的な変動に加えて長期的な変動もある。さらに、プロセスの特性についても、プロセスを構成する機器へのスケールの付着や、プロセスの構成要素の摩耗あるいは劣化などにより、短期的あるいは長期的にその特性が変化することが多い。
【0092】
こうした燃料の特性あるいはプロセスの特性の変化に対応するためには、常に最新の状態を反映した回帰モデルを利用することが望ましい。言い換えれば、その時点で精度のよい予測値を得るための回帰モデルを構築する上で、過度に長期間の計測データを参照することは好ましくない。すなわち、現在時点の直前の所定期間に得られた計測データのみを参照することが好ましい。この場合、着目する説明変数及び目的変数の、ある期間における平均や標準偏差などの統計量を評価し、それらの性質が大きく変化せず、かつできるだけ長い期間として定義される期間を、「所定期間」の時間幅として設定することになる。
【0093】
しかしながら、特に対象プロセス1を廃棄物焼却プロセスとした場合は、説明変数及び目的変数の平均や標準偏差などの統計量が短期的にも大きく変化する。従って、それらの性質が大きく変化しないように「所定期間」の時間幅を設定すると、その時間幅に含まれる計測データ数が少なくなりすぎ、精度のよい回帰モデルが得られないことがある。
【0094】
この問題に対応するための手法として、現在時点の直前の所定期間に得られた計測データに加えて、それらの計測データと類似性の高い過去の計測データを用いて回帰モデルを構築する、ジャストインタイムモデリング(JIT:Just-In-Timeモデリング)と呼ばれる手法がある。特に、非特許文献4に記されているように、プロセス特性の変化に対してより適切に対応するために、変数間の相関関係を考慮してモデル構築用の計測データを選択する、相関型ジャストインタイムモデリングという手法がある。
【0095】
相関型ジャストインタイムモデリングでは、過去の計測データから、新たに得られた計測データにおける説明変数と目的変数の相関関係に最も類似度の高いデータセットを探索して、それらを用いてモデルを構築する。相関関係の類似度を測る指標としては、非特許文献4に記されているように、主成分分析によるQ統計量又はホテリングのT統計量、又はそれらを合成した評価指標J=λT+(1-λ)Q(λは0以上1以下の実数)を用
いることが好ましい。
【0096】
Q統計量は、あるサンプルデータについて、主成分分析によりもとのp個の変数をm個の主成分にて表現した場合に、これらm個の主成分では表現できない部分を表す統計量であり、二乗予測誤差ともよばれる。
【0097】
また、ホテリングのT統計量は、あるサンプルデータについて、これらm個の主成分によって張られる部分空間における原点からの規格化された距離を表す統計量であり、品質工学の分野で用いられるマハラノビス距離と同じ概念の統計量である。
【0098】
本実施形態におけるモデル構築部12では、以下のアルゴリズムによって、新たに得られた計測データにおける説明変数と目的変数の相関関係に最も類似度の高いデータセットを探索し、それらを用いて回帰モデルの構築が行われるように構成されている。なお、説明変数と説明変数との間の相関関係における類似度の高いデータセットを探索する方法も、以下のアルゴリズムと同様に行うことができる。
【0099】
ステップ1:過去の各時点tにおける対象プロセス1の計測データから、対応する各時点における所定の説明変数xを抽出・演算するとともに、対応する各時点tに対して有限の時間幅Δtを加えた時点(t+Δt)における性能管理指標の値yを算
出し、それらをある所定期間に対応するN個のデータごとにまとめたS個のデータセットz=[x , y ](i=1,…,N, j=1,…,S)としてデータベースに保存
する。例えば1日分のデータについて、1分おきに抽出したデータを、所定期間を1時間としてまとめる場合、N=60、S=24となる。
【0100】
ステップ2:現在時点の直近の所定期間について新たなデータセットzS+1が得られたら、これをデータベースに保存するとともに、データベースから順にk番目のデータセットz(k=1,…,S)を取り出し、zに対するzS+1の評価指標J(=λT+(1-λ)Q)を計算して記憶する。
【0101】
ステップ3:Jが小さくなる順にkをr個選び、それらのkに対応するデータセットz(pは1,…,Sのうちから、Jが小さくなる順に選んだr個の数)を抽出し、それらとzS+1とを結合したデータセットZS+1を作成する。
【0102】
ステップ4:上記ZS+1に含まれる全てのx及びy、すなわちx 及びy と、x S+1及びy S+1(pは1,…,Sのうちから、Jが小さくなる順に選んだr個の数。また、i=1,…,N)を説明変数及び目的変数として、回帰モデルfS+1を構築する。
【0103】
ステップ5:新たなデータセットzS+2が得られるまでの間、予測部13において、現在時点tにおける所定の説明変数xを上記の回帰モデルfS+1に入力して、将来の時点(t+Δt)における性能管理指標の予測値yを得る。
【0104】
ステップ6:新たなデータセットzS+2が得られたら、ステップ2~5の手続きを繰り返す。
【0105】
ここで、上記のアルゴリズムにおけるパラメータS、N、rは、説明変数と目的変数の変動特性や統計的関係性の変化を考慮して、上記回帰モデルの精度がよくなるように適宜選択することが望ましい。
【0106】
まず、データベースに保存されるデータセットの個数Sは、ある程度以上に大きくして
もモデル精度の向上には寄与せず、むしろモデル構築に要する計算負荷やデータ保存に要する記憶装置の容量の増大を招く。従って、対象プロセス1の特性変化や演算装置の能力、記憶装置の容量等を考慮して、実用的に適当な有限の個数Sを選択するのが望ましい。その際は、新たなデータセットが得られるごとに、最も古いデータセットを破棄するなどの操作を行うことで、モデル構築に用いるデータ量やモデル構築に要する計算負荷が増大することを防ぐことができる。
【0107】
また、各データセットの長さNは、そのデータセットに含まれる説明変数間の相関関係、及び/又は説明変数と目的変数の間の相関関係が大きく変化しないような時間幅と対応するように設定するのが望ましい。
【0108】
また、抽出するデータセットの数rは、小さすぎると回帰モデルの構築時に十分な量のデータサンプルが得られず、大きすぎると相関関係の異なるデータセットを抽出してしまうことになるため、対象プロセス1の特性変化に応じた最適な値が存在する。
【0109】
発明者がこれらパラメータS、N、rの望ましい組み合わせについて検討した結果によれば、対象プロセス1が廃棄物焼却プロセスあるいはバイオマス燃焼プロセスである場合、これらのパラメータは以下のように決定するのが好ましい。
【0110】
N(各データセットの長さ):Δtに対して、各データセットの長さが好ましくは30分以上8時間以下、より好ましくは1時間以上4時間以下となるように定める。例えばΔt=1分とする場合、好ましいNの値は30以上480以下、より好ましくは60以上240以下である。
【0111】
S(データセットの総数):Δt及びNに対して、全てのデータセットを合わせた期間が好ましくは10日以上360日以下、より好ましくは20日以上180日以下、さらに好ましくは30日以上90日以下の期間となるように定める。例えばΔt=1分、N=240とする場合、好ましいSの値は60以上2160以下、より好ましくは120以上1080以下、さらに好ましくは180以上540以下である。
【0112】
r(抽出するデータセットの個数):Δt及びNに対して、抽出されたデータセットを合わせた期間が好ましくは8時間以上120時間以下、より好ましくは24時間以上60時間以下となるように定める。例えばΔt=1分、N=240とする場合、好ましいrの値は2以上30以下、より好ましくは6以上15以下である。
【0113】
以上、本実施形態におけるモデル構築部12の構成について説明したが、モデル構築に用いる計測データないし説明変数の選択、それらに対して行う変換や演算、主成分分析による次元削減の対象とする変数の選択及び次元数m、回帰手法の選択、相関性の類似したデータの抽出において用いるパラメータS、N、rについては、目的変数である性能評価指標に応じて柔軟に決定できるように、それらを規定するプログラムあるいはロジックを容易に更新あるいは変更できるように構成しておくことが望ましい。
【0114】
さて、ステップ5に記した通り、本実施形態における予測部13は、データ収集保存部11でリアルタイムに得られた、現在の時点t及び現在の時点tから遡った時点(t-Δt)、(t-2Δt)、・・・、(t-nΔt)における計測データの全部又は一部から、現在時点tにおける所定の説明変数xを抽出・演算し、説明変数xを上記の回帰モデルfS+1に入力して、将来の時点(t+Δt)における性能管理指標の予測値yを得るように構成されている。
【0115】
ここで、予測部13で得られた将来予測値yは、入出力デバイスを通じて、対象プロ
セス1の運転監視制御装置3、例えばDCSへ伝送される。将来予測値yを、運転監視
制御装置3の監視画面に表示したり、又はその値の大小に応じて音声や画面表示による警報を発することにより、オペレータに対して性能管理指標が今後どのように推移していくかを知らせる。こうして性能管理指標が、将来、管理範囲を逸脱する可能性がある場合に、それを防止する運転操作をいち早くとることを促すことができる。
【0116】
さらに、本実施形態では指令値出力部14を具備する。指令値出力部14では、予測部13で得られた前期性能管理指標の将来予測値yの変化に基づいて、性能管理指標が管
理範囲を逸脱しないように、対象プロセス1の1つ以上の操作量及び/又は制御目標値を調節する指令値を、対象プロセス1の運転監視制御装置3、例えばDCSに対して出力する。
【0117】
例えば、対象プロセス1から排出される排ガス中の一酸化炭素濃度を性能管理指標とする場合は、以下のとおりである。予測部13で得られた排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値が過度に高くなった場合には、対象プロセス1における排ガス中の酸素濃度の制御目標値を高めるような指令値を対象プロセス1の運転監視制御装置3に対して出力する。このように、焼却炉あるいは燃焼炉に供給される燃焼用空気の量が不足しないよう前もって増加させることで、排ガス中の一酸化炭素濃度が上昇して管理範囲を逸脱することを未然に防止することができる。
【0118】
逆に、予測部13で得られた排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値が十分に低くなった場合には、対象プロセス1における排ガス中の酸素濃度の制御目標値を低めるような指令値を対象プロセス1の運転監視制御装置3に対して出力する。これにより、焼却炉あるいは燃焼炉に供給される燃焼用空気の量が過剰とならないよう前もって減少させる。この結果、燃焼用空気の量が過剰となることにより引き起こされる焼却炉や燃焼炉の温度低下や、空気供給用ブロワの消費電力の増大など、プロセスの運転管理上好ましくない他の事象が発生することを未然に防止することができる。
【0119】
ここで、予測部13で得られた排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値の増減に対して、指令値としての排ガス中の酸素濃度の制御目標値をどの程度調節すればよいかについては、モデル構築部12において構築する回帰モデルの説明変数として、指令値である排ガス中の酸素濃度の制御目標値をあらかじめ加えておくことで、効率的にその調整量の目安を得ることができる。
【0120】
例えば現在時点の計測データを説明変数の値として入力し、現在時点の排ガス中の酸素濃度の制御目標値を説明変数の値として入力して、回帰モデルから得られた、排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値が所定の管理範囲を超えた場合を考える。その場合、回帰モデルに、現在時点の排ガス中の酸素濃度の制御目標値の代わりに、制御目標値よりも大きい仮想的な制御目標値の値を、説明変数の値として入力する。こうして得られた排ガス中の一酸化炭素濃度の仮想的な将来予測値が、所定の管理範囲内に収まるとすれば、仮想的な制御目標値の値を運転監視制御装置への指令値として出力すればよい。
【0121】
また逆に、例えば現在時点の計測データを説明変数の値として入力し、現在時点の排ガス中の酸素濃度の制御目標値を説明変数の値として入力して、回帰モデルから得られた、排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値が所定の管理範囲を大幅に下回っている場合を考える。その場合、回帰モデルに、現在時点の排ガス中の酸素濃度の制御目標値の代わりに、制御目標値よりも小さい仮想的な制御目標値の値を説明変数の値として入力する。こうして得られた排ガス中の一酸化炭素濃度の仮想的な将来予測値が、所定の管理範囲内に収まるとすれば、仮想的な制御目標値の値を運転監視制御装置への指令値として出力すればよい。
【0122】
また、指令値出力部14においては、予測精度の特性が異なる複数の回帰モデルによる性能管理指標の将来予測値を参照して、運転監視制御装置への指令値を決定することもできる。
【0123】
例えば、排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値に基づいて、排ガス中の酸素濃度の制御目標値を調節する場合、回帰モデルの精度が低いと、排ガス中の一酸化炭素濃度が今後実際には上昇しないにもかかわらず、将来排ガス中の一酸化炭素濃度が高くなるという予測値が得られる場合がある(第一種の過誤)。この場合、単純にその予測値に基づいて排ガス中の酸素濃度の制御目標値を高めると、燃焼用空気の量が過剰となる。この結果、焼却炉や燃焼炉の温度低下や、空気供給用ブロワの消費電力の増大など、他の好ましくない事象を引き起こす可能性がある。
【0124】
逆に、排ガス中の一酸化炭素濃度が今後実際に上昇するにもかかわらず、将来排ガス中の一酸化炭素濃度が低くなるという予測値が得られる場合がある(第二種の過誤)。この場合も、単純にその予測値に基づいて排ガス中の酸素濃度の制御目標値を下げると、燃焼用空気の量が不足してしまい、排ガス中の一酸化炭素濃度の過度な上昇という好ましくない事象を引き起こす可能性がある。
【0125】
こうした回帰に基づく予測モデルを構築する場合、第一種の過誤が発生する確率も、第二種の過誤の発生する確率も許容範囲内となるモデルが選択できればもっとも好ましい。しかし、一般に、第一種の過誤と第二種の過誤が生じる可能性はトレードオフの関係にあるため、実用上は、そのようなモデルが得られないことも多い。そのような場合は、第二種の過誤は生じやすいが第一種の過誤は生じにくいモデル(見逃しはするが、空振りはしないモデル)と、第一種の過誤は生じやすいが第二種の過誤は生じにくいモデル(空振りはするが、見逃しはしないモデル)とを組み合わせる。これにより、これらのモデルによる予測値を用いた運転制御を行う場合において、前記のような好ましくない事象が発生することを防止することができる。
【0126】
前者のモデル(見逃しはするが空振りはしないモデル)による排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値が上昇した場合は、実際の一酸化炭素濃度が今後上昇する可能性は非常に高いとみなせる。その場合に限って排ガス中の酸素濃度の制御目標値を高めるような制御を行うことで、前記のような好ましくない事象が発生することを防止することができる。
【0127】
また、後者のモデル(空振りはするが見逃しはしないモデル)による排ガス中の一酸化炭素濃度の将来予測値が低下した場合は、実際の一酸化炭素濃度が今後上昇する可能性は非常に低いとみなせる。その場合に限って排ガス中の酸素濃度の制御目標値を低めるような指令値を出力することで、やはり前記のような好ましくない事象が発生することを防止することができる。
【0128】
なお、この場合に用いる複数のモデルとしては、異なる説明変数や異なる回帰手法を用いたモデルを採用してもよい。又は単一のモデルを構築した結果として得られる予測値の確率分布に係る指標、例えば平均値・中央値・四半分値・信頼区間などのうちの複数の指標を参照して用いることもできる。
【0129】
例えば、回帰手法として線形回帰を用いた場合、線形回帰に基づく予測値をそのまま参照するのではなく、予測値の90%信頼区間の上限が所定の閾値を上回った場合と、予測値の90%信頼区間の下限が所定の閾値を下回った場合のみ、上記のように指令値を出力するように構成することができる。
【0130】
あるいは回帰手法としてランダムフォレスト回帰を用いる場合、ランダムフォレスト回帰に基づく予測値、すなわちランダムフォレストを構成する多数の決定木分析により得られた多数の予測値の平均値ないし中央値をそのまま参照するのではなく、それら多数の予測値の分布における90%信頼区間の上限値が所定の閾値を上回った場合と、予測値の90%信頼区間の下限が所定の閾値を下回った場合のみ、上記のように指令値を出力するように構成することができる。
【0131】
上記2つの例においては、90%信頼区間の上限値と下限値を閾値として参照しているが、もちろん90%信頼区間に限らず、95%信頼区間や80%信頼区間など、用いる回帰モデルの精度に応じてそれらの値を設定することができる。
【0132】
以上、本発明の実施形態の例について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
形態1
廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとし、前記対象プロセスの性能を示す少なくとも1つの性能管理指標を管理するためのプロセス管理支援装置であって、
対象プロセスの状態量及び/又は操作量を計測データとして収集するデータ収集部と、
前記データ収集部で収集された、複数の第1の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを説明変数として、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第2の時点における前記性能管理指標を目的変数とする回帰モデルを構築するモデル構築部と、
前記モデル構築部で構築された前記回帰モデルに対して、前記データ収集部で収集された、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第3の時点及び前記第3の時点より前の複数の第4の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを入力することにより、前記少なくとも1つの性能管理指標の、前記第3の時点より後の第5の時点における予測値を算出する予測部とを有することを特徴とする、プロセス管理支援装置。
形態2
前記予測部で算出された、前記少なくとも1つの性能管理指標の前記第5の時点における予測値の変化に基づいて、前記対象プロセスの制御目標値に関する制御データを出力する出力部を有することを特徴とする、形態1に記載のプロセス管理支援装置。
形態3
前記モデル構築部は、前記計測データのうちの少なくとも1つの計測データについて、非線形変換、微分又は差分変換、積分又は積算変換のうちの少なくとも1つを行うことで得られた少なくとも1つの前記演算データを前記説明変数の少なくとも一部として用いることを特徴とする、形態1又は2に記載のプロセス管理支援装置。
形態4
前記モデル構築部は、2つ以上の前記計測データ及び/又は前記計測データから演算される演算データに対して、主成分分析(PCA)に基づく次元削減を行うことで得られた少なくとも1つの変数を、前記回帰モデルの前記説明変数の全部又は一部として用いることを特徴とする、形態1から3のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態5
前記モデル構築部は、線形回帰、主成分回帰、部分最小自乗回帰、一般化線形回帰、サポートベクトル回帰、ランダムフォレスト回帰のうちのいずれかにより前記回帰モデルを構築することを特徴とする、形態1から4のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態6
前記モデル構築部は、前記複数の第1の時点における前記計測データとして、前記第3の時点を含まない、前記第3の時点より前で前記第3の時点の近傍の所定期間に得られた前記計測データを用いることを特徴とする、形態1から5のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態7
前記モデル構築部は、前記所定期間に得られた前記計測データに加えて、
2つ以上の前記説明変数間の相関関係に関して、前記所定期間における前記相関関係と、前記所定期間より前の複数の別の所定期間における前記相関関係との間の類似度を評価して、評価結果に基づいて前記別の所定期間を選択し、選択された前記別の所定期間における計測データ、及び/又は
1つ以上の前記説明変数と1つ以上の前記目的変数との間の相関関係に関して、前記所定期間における当該相関関係と、前記所定期間より前の複数の別の所定期間における当該相関関係との間の類似度を評価して、評価結果に基づいて当該別の所定期間を選択し、選択された当該別の所定期間における計測データ、
を用いることを特徴とする、形態6に記載のプロセス管理支援装置。
形態8
前記モデル構築部は、主成分分析(PCA)と、前記主成分分析に基づいて計算されるQ統計量及びホテリングのT 統計量とを用いて、前記類似度を算出することを特徴とする、形態7に記載のプロセス管理支援装置。
形態9
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、水銀濃度のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、形態1から8のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態10
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の一酸化炭素濃度であり、前記出力部は、前記排ガス中の酸素濃度の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、形態2から8のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態11
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の窒素酸化物濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける脱硝設備への脱硝薬剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、形態2から8のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態12
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の硫黄酸化物濃度及び/又は前記塩化水素濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける排ガス処理設備への脱塩薬剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、形態2から8のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態13
前記性能管理指標は、前記対象プロセスから排出される排ガス中の水銀濃度であり、前記出力部は、前記対象プロセスにおける排ガス処理設備への活性炭及び/又はキレート吸着剤の供給量の制御目標値を指令値として出力することを特徴とする、形態2から8のいずれか1項に記載のプロセス管理支援装置。
形態14
廃棄物焼却プロセス又はバイオマス燃焼プロセスを対象プロセスとし、前記対象プロセスの性能を示す少なくとも1つの性能管理指標を管理するためのプロセス管理支援方法であって、
対象プロセスの状態量を計測データとして収集するステップと、
収集された、複数の第1の時点における前記計測データ及び/又は当該計測データから演算により得られる演算データを説明変数として、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第2の時点における前記性能管理指標を目的変数とする回帰モデルを構築するステップと、
構築された前記回帰モデルに対して、複数の前記第1の時点のいずれよりも後の第3の時点及び前記第3の時点より前の第4の時点における前記計測データのうちの少なくとも一つを入力することにより、前記少なくとも1つの性能管理指標の、前記第3の時点より後の第5の時点における予測値を算出するステップとを有することを特徴とする、プロセス管理支援方法。

【符号の説明】
【0133】
1…対象プロセス
2…センサ・制御器・監視カメラ等
3…運転監視制御装置
10…運転管理支援装置
11…データ収集保存部
12…モデル構築部
13…予測部
14…指令値出力部
図1