(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
A61M25/09 516
(21)【出願番号】P 2021191803
(22)【出願日】2021-11-26
(62)【分割の表示】P 2020516995の分割
【原出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】小杉 知輝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 乃基
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05840046(US,A)
【文献】特開2008-012276(JP,A)
【文献】特開2007-082943(JP,A)
【文献】特表2008-511392(JP,A)
【文献】特開2013-192914(JP,A)
【文献】米国特許第03973556(US,A)
【文献】特開2015-062511(JP,A)
【文献】特開2008-011938(JP,A)
【文献】特開2014-076374(JP,A)
【文献】特開2016-059438(JP,A)
【文献】特開2005-278795(JP,A)
【文献】特表2006-519069(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
コアシャフトと、
前記コアシャフトに素線を巻回して形成されたコイル体と、
前記コイル体の少なくとも外周面を被覆する樹脂層と、を備え、
前記コイル体は、隣接する前記素線の間に隙間が形成された疎巻部を有し、
前記コイル体と前記コアシャフトの間には空隙が設けられており、
前記樹脂層は、
前記疎巻部における隣接する前記素線の隙間を通って前記コアシャフトに向かって突出した凸部と、
前記コイル体の外周面を被覆する表層と、を有しており、
前記凸部の厚さは、前記表層の厚さよりも大きく、
前記凸部は、前記樹脂層の縦断面において、前記コアシャフトに向かって円弧形状に形成された突出部を有
しており、前記凸部は、前記コイル体の内周面よりも前記コアシャフト側に伸びている、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記凸部は、前記コアシャフトに接触している、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記凸部は、前記コアシャフトに接合されている、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記コアシャフトの外周面を被覆する樹脂膜を備え、
前記凸部は、前記樹脂膜に接合されている、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記コイル体の内側において、前記コアシャフトに素線を巻回して形成された内側コイル体を備え、
前記内側コイル体は、軸線方向における長さが前記コイル体よりも短く、
前記疎巻部は、前記コイル体が前記内側コイル体を覆わない部分に形成されている、ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管や消化器官等にカテーテルを挿入する際に用いられるガイドワイヤが知られている。金属コイル製のガイドワイヤでは、一般的に、線材を用いたコアシャフトと、コアシャフトの外周に巻回されたコイル体とを備え、コアシャフトの先端とコイル体の先端が接合されている。このようなガイドワイヤにおいて、平滑化による滑り性、血栓付着防止性、操作性の向上等を目的として、コイル体に樹脂層を形成する技術が知られている。例えば、特許文献1及び2には、コイル体の外周に樹脂被覆(樹脂層)が形成されたガイドワイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5526218号公報
【文献】特開2008-237621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のガイドワイヤでは、樹脂層がコイル体とコアシャフトとの間に隙間なく形成されているため、ガイドワイヤの柔軟性が十分でないという課題があった。また、特許文献2に記載のガイドワイヤでは、ガイドワイヤを湾曲させた際に樹脂層の剥がれや破損が生じる虞があるという課題があった。具体的には、ガイドワイヤを湾曲させた際、湾曲の外側ではコイル体の隣接する素線同士の間が拡がる。特許文献2に記載のガイドワイヤでは、樹脂層がコイル体の外周面に形成されているため、拡がった素線間において樹脂層が伸長することで樹脂層の厚さが薄くなり、樹脂層の剥がれや破損に繋がる虞があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、コイル体と樹脂層を備えるガイドワイヤにおいて、柔軟性を確保しつつ樹脂層の剥がれや破損を抑制する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ガイドワイヤが提供される。このガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトに素線を巻回して形成されたコイル体と、前記コイル体の少なくとも外周面を被覆する樹脂層と、を備え、前記コイル体は、隣接する前記素線の間に隙間が形成された疎巻部を有し、前記コイル体と前記コアシャフトの間には空隙が設けられており、前記樹脂層は、前記疎巻部における隣接する前記素線の隙間を通って前記コアシャフトに向かって突出した凸部を有しており、前記凸部は、前記コイル体の内周面よりも前記コアシャフト側に伸びている。
【0008】
一般的に、ガイドワイヤを湾曲させた際、湾曲に伴ってコイル体を形成する素線が移動して素線間隔に詰まり(縮小)や拡がり(拡大)が生じる。この構成によれば、コイル体の内周面よりもコアシャフト側に伸びる樹脂層を有するため、例えば樹脂層がコイル体の外周面にのみ形成されている構成と比較して、ガイドワイヤの湾曲に伴い拡がった素線間における樹脂層の厚さを厚く維持することができる。従って、この構成によれば、ガイドワイヤを湾曲させた際における素線間の樹脂層の剥がれや破損を抑制することができる。また、この構成によれば、コイル体とコアシャフトとの間に空隙が設けられているため、例えば樹脂層がコイル体の素線とコアシャフトとの間に隙間なく形成されている場合等の、空隙が無い構成と比較して、コイル体を形成する素線が移動しやすい。従って、この構成によれば、ガイドワイヤを湾曲させるために要する力を小さくでき、ガイドワイヤの柔軟性を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、前記コアシャフトに接触していてもよい。この構成によれば、樹脂層がコアシャフトに接触しているため、ガイドワイヤの湾曲に伴い拡がった素線間における樹脂層の厚さをさらに厚く維持できる。このため、ガイドワイヤを湾曲させた際における樹脂層の剥がれや破損をさらに抑制できる。
【0010】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、前記コアシャフトに接合されていてもよい。この構成によれば、樹脂層がコアシャフトに接合されているため、ガイドワイヤの湾曲に伴い拡がった素線間における樹脂層の厚さをさらに厚く維持できる。このため、ガイドワイヤを湾曲させた際における樹脂層の剥がれや破損をさらに抑制できる。
【0011】
(4)上記形態のガイドワイヤでは、さらに、前記コアシャフトの外周面を被覆する樹脂膜を備え、前記凸部は、前記樹脂膜に接合されていてもよい。この構成によれば、コアシャフトの外周面を被覆する樹脂膜を備えるため、樹脂膜の平滑化作用によって、ガイドワイヤの滑り性をより向上させると共に、コアシャフトの外周面に血栓等の異物が付着することを抑制できる。
【0012】
(5)上記形態のガイドワイヤでは、さらに、前記コイル体の内側において、前記コアシャフトに素線を巻回して形成された内側コイル体を備え、前記内側コイル体は、軸線方向における長さが前記コイル体よりも短く、前記疎巻部は、前記コイル体が前記内側コイル体を覆わない部分に形成されていてもよい。この構成によれば、樹脂層が形成されている疎巻部はコイル体が内側コイル体を覆わない部分に位置するため、樹脂層によって内側コイル体の動きが妨げられない。従って、この構成によれば、内側コイル体を有する構成においてもガイドワイヤの柔軟性を維持することができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤに用いられる樹脂層付きのコイル体、ガイドワイヤの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態のガイドワイヤの全体構成を示す部分断面概要図である。
【
図3】ガイドワイヤを湾曲させた際の樹脂層について説明する図である。
【
図4】比較例のガイドワイヤを湾曲させた際の樹脂層について説明する図である。
【
図5】第2実施形態のガイドワイヤの部分拡大図である。
【
図6】第2実施形態のガイドワイヤを湾曲させた際の樹脂層について説明する図である。
【
図7】第3実施形態におけるガイドワイヤの部分拡大図である。
【
図8】第3実施形態のガイドワイヤを湾曲させた際の樹脂層について説明する図である。
【
図9】第4実施形態のガイドワイヤの全体構成を示す部分断面概要図である。
【
図10】第5実施形態のガイドワイヤの全体構成を示す部分断面概要図である。
【
図11】第6実施形態のガイドワイヤの部分拡大図である。
【
図12】第7実施形態のガイドワイヤの部分拡大図である。
【
図13】第8実施形態のガイドワイヤの部分拡大図である。
【
図14】第9実施形態のガイドワイヤの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の全体構成を示す部分断面概要図である。ガイドワイヤ1は、血管や消化器官にカテーテルを挿入する際に用いられる医療器具であり、コアシャフト10と、コイル体20と、樹脂層30と、先端接合部51と、基端接合部56と、中間固定部61とを備えている。
【0016】
図1では、ガイドワイヤ1の中心に通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。
図1の左側をガイドワイヤ1及び各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側をガイドワイヤ1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、ガイドワイヤ1及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端部」または単に「先端」と呼び、基端側に位置する端部を「基端部」または単に「基端」と呼ぶ。本実施形態において、先端側は「遠位側」に相当し、基端側は「近位側」に相当する。これらの点は、
図1以降の全体構成を示す図においても共通する。
【0017】
コアシャフト10は、基端側が太径で先端側が細径とされた、先細りした長尺形状の部材である。コアシャフト10は、例えば、ステンレス合金(SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の材料で形成できる。コアシャフト10は、上記以外の公知の材料によって形成されていてもよい。コアシャフト10は、先端側から基端側に向かって順に、細径部11、第1テーパー部12、第1太径部13、第2テーパー部14、第2太径部15を有している。コアシャフト10の各部における外径及び長さは、任意に決定できる。
【0018】
細径部11は、コアシャフト10の先端部に形成されている。細径部11は、コアシャフト10の外径が最小の部分であり、一定の外径を有する略円柱形状である。細径部11の先端部には、先端接合部51が形成されている。第1テーパー部12は、細径部11と第1太径部13との間に形成されている。第1テーパー部12は、先端側から基端側に向かって外径が拡径したテーパー形状である。第1太径部13は、第1テーパー部12と第2テーパー部14との間に形成されている。第1太径部13は、細径部11の外径よりも大きな一定の外径を有する略円柱形状である。第1太径部13の基端部には、基端接合部56が形成されている。細径部11、第1テーパー部12、及び第1太径部13の外周面は、後述するコイル体20によって覆われている。
【0019】
第2テーパー部14は、第1太径部13と第2太径部15との間に形成されている。第2テーパー部14は、先端側から基端側に向かって外径が拡径したテーパー形状である。第2太径部15は、コアシャフト10の基端部に形成されている。第2太径部15は、コアシャフト10の外径が最大の部分であり、一定の外径を有する略円柱形状である。第2テーパー部14及び第2太径部15は、コイル体20によって覆われておらず、術者がガイドワイヤ1を把持する際に用いられる。
【0020】
コイル体20は、コアシャフト10に対して、素線21を螺旋状に巻回した略円筒形状である。本実施形態のコイル体20は、コアシャフト10の細径部11、第1テーパー部12、及び第1太径部13の外周面を覆うように配置され、コアシャフト10の第2テーパー部14及び第2太径部15上には配置されていない。コイル体20を形成する素線21は、1本の素線からなる単線でもよいし、複数の素線を撚り合せた撚線でもよい。素線21を単線とした場合、コイル体20は単コイルとして構成され、素線21を撚線とした場合、コイル体20は中空撚線コイルとして構成される。また、単コイルと中空撚線コイルとを組み合わせてコイル体20を構成してもよい。素線21の線径と、コイル体20におけるコイル平均径(コイル体20の外径と内径の平均径)とは、任意に決定できる。
【0021】
素線21は、例えば、ステンレス合金(SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成することができる。素線21は、上記以外の公知の材料によって形成されてもよい。
【0022】
コイル体20は、先端接合部51、基端接合部56、及び中間固定部61によって、コアシャフト10に固定されている。先端接合部51は、コイル体20の先端部と、コアシャフト10の細径部11の先端部とを接合する部材である。先端接合部51は、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだによって形成され、この金属はんだによりコイル体20の先端と細径部11の先端とが固着されている。先端接合部51は、エポキシ系接着剤などの接着剤によって形成されてもよい。
【0023】
基端接合部56は、コイル体20の基端部と、コアシャフト10の第1太径部13の基端部とを接合する部材である。基端接合部56は、先端接合部51と同じ材料によって形成されてもよいし、異なる材料によって形成されてもよい。中間固定部61は、コイル体20の軸線O方向の中間部近傍において、コイル体20と、コアシャフト10の第1太径部13とを固定する部材である。中間固定部61は、先端接合部51及び基端接合部56と同じ材料によって形成されてもよいし、異なる材料によって形成されてもよい。なお、ガイドワイヤ1には、コイル体20とコアシャフト10とを固定するための固定部が複数形成されてもよい。
【0024】
図2は、ガイドワイヤ1の部分拡大図である。
図2の上段には、ガイドワイヤ1のうち細径部11から第1太径部13にかけての一部分を抜粋して示す。
図2の下段には、上段において破線の矩形で囲んだ部分の拡大図を示す。
図1と同様に、
図2の左側はガイドワイヤ1及び各構成部材の先端側(遠位側)に相当し、
図2の右側はガイドワイヤ1及び各構成部材の基端側(近位側)に相当する。これらの点は、
図2以降の部分拡大図においても共通する。
【0025】
コイル体20は、軸線O方向の全域に亘って、隣接する素線21の間に隙間C1が形成されている(
図1、
図2下段)。本実施形態では、隙間C1を、軸線O方向の任意の断面における、隣接する素線21間の距離が最も近い部分における大きさ(長さ)と規定する。隙間C1の大きさは、任意に決定できる。本実施形態のガイドワイヤ1では、
図2の下段に示すように、各素線21の間に形成されているそれぞれの隙間C1は、素線21の線径に等しい一定の大きさである。なお、各隙間C1は、全てが同一の大きさであってもよく、少なくとも一部分が異なる大きさであってもよく、全てが異なる大きさであってもよい。
【0026】
以降、コイル体20のうち、隣接する素線21間に隙間C1を有する部分を「疎巻部」とも呼び、隣接する素線21間に隙間C1を有さない部分(換言すれば、隣接する素線21が隙間を有さずに接触している部分)を「密巻部」とも呼ぶ。本実施形態のガイドワイヤ1では、コイル体20は、軸線O方向の全域に亘って疎巻部である。
【0027】
コイル体20は、軸線O方向の全域に亘って、コアシャフト10の外周面と、コイル体20の素線21の内周面、(つまり、コイル体20の内周面(内側の表面))との間に空隙C2が形成されている(
図1、
図2下段)。本実施形態では、空隙C2を、軸線O方向の任意の断面における、素線21の内周面とコアシャフト10の外周面との間の距離が最も近い部分における大きさ(長さ)と規定する。空隙C2の大きさは、任意に決定できる。本実施形態のガイドワイヤ1では、コイル体20の内径は一定である一方、コアシャフト10の外径は先端側から基端側に向かって拡径している。このため、
図2の下段に示すように、各素線21の内周面とコアシャフト10の外周面との間に形成されているそれぞれの空隙C2は、先端側から基端側にかけて、徐々に小さくなる。
【0028】
樹脂層30は、コイル体20の少なくとも外周面(外側の表面)を被覆する樹脂の層である。樹脂層30は、疎水性を有する樹脂材料、親水性を有する樹脂材料、またはこれらの混合物によって形成できる。疎水性を有する樹脂材料の場合、例えば、シリコン樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー等を使用できる。親水性を有する樹脂材料の場合、例えば、カルボキシルメチルデンプンなどのデンプン系、カルボキシルメチルセルロースなどのセルロース系、アルギン酸、キチン、キトサン、ヒアルロン酸などの多糖類、ゼラチンなどの天然水溶性高分子物質やポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ナイロン等の合成水溶性高分子物質を使用できる。親水性を有する樹脂材料は、水を含むと膨潤状態となるため、疎水性を有する樹脂材料と比較して滑り性や血栓付着防止性を向上させることができる。
【0029】
樹脂層30は、表層31と、凸部32と、先端樹脂層38と、基端樹脂層39とを有している。表層31は、樹脂層30の一部であって、コイル体20の外周面を被覆する層状の部分である。
図2に示す断面における表層31の形状は、波状である。表層31の厚さは任意に決定できる。先端樹脂層38は、樹脂層30の一部であって、先端接合部51の外周面を被覆する層状の部分である。基端樹脂層39は、樹脂層30の一部であって、基端接合部56の外周面を被覆する層状の部分である。
【0030】
凸部32は、樹脂層30の一部であって、コイル体20の隣接する素線21の隙間C1を通って、コアシャフト10に向かって突出した部分である。凸部32は、コイル体20の内周面、換言すれば、素線21のコアシャフト10側の面よりも、コアシャフト10側に伸びている。
図2に示す断面における凸部32の突出部の形状は、円弧形状である。本実施形態では、凸部32の突出長さLを、軸線O方向の任意の断面における、素線21のコアシャフト10側の面と、凸部32の突出部先端(コアシャフト10に最も近接した部分)の間の長さと規定する。突出長さLは、任意に決定できる。本実施形態のガイドワイヤ1では、
図2の下段に示すように、各素線21間に形成されているそれぞれの凸部32の突出長さLは、一定(同じ長さ)であり、素線21の線径の約半分とされている。なお、各凸部32の突出長さLは、少なくとも一部または全部が異なっていてもよい。
【0031】
本実施形態では、樹脂層30の厚さTaを、軸線O方向の任意の断面における、隣接する素線21の中央部における樹脂層30の厚さ(長さ)と規定する。本実施形態のガイドワイヤ1では、
図2の下段に示すように、各素線21間におけるそれぞれの樹脂層30の厚さTaは、一定(同じ厚さ)であり、素線21の線径の約1.5倍~約2倍とされている。また、本実施形態では、樹脂層30が有する全ての凸部32について、各凸部32とコアシャフト10との間が離間しており、接触していない。なお、各樹脂層30の厚さは任意に決定でき、少なくとも一部または全部が異なっていてもよい。
【0032】
樹脂層30は、例えば、液状にした樹脂材料をコイル体20の外周面に塗布することにより形成できる。具体的には、コイル体20の外周面に付着した樹脂材料が固まることで表層31が形成される。また、コイル体20の素線21間の隙間C1から、コアシャフト10に向かって垂れ落ちた樹脂材料が固まることで凸部32が形成される。このようにすれば、樹脂層30を容易に形成できる。なお、本実施形態では、表層31と凸部32とを一体的に形成するとしたが、表層31と凸部32とは別体として形成されてもよい。別体として形成する場合、例えば、液状にした樹脂材料を塗布して凸部32を形成し、その後、薄膜状の樹脂材料をコイル体20の外周面に巻き付けることで表層31を形成できる。別体として形成する場合、異なる樹脂材料を用いて表層31と凸部32を形成してもよい。また、押し出し機により樹脂材料を押し出すことによって、押し出された樹脂材料が隙間C1を通って凸部32を形成することとしてもよい。
【0033】
図3は、ガイドワイヤ1を湾曲させた際の樹脂層30について説明する図である。
図3の上段には、湾曲時のガイドワイヤ1の先端側における概略図を示す。
図3の下段には、上段において破線の矩形で囲んだ部分の拡大図を示す。これらの点は、
図3以降の説明図においても共通する。
【0034】
一般的に、ガイドワイヤ1を湾曲させた際、湾曲に伴ってコイル体20を形成する素線21が移動して、素線21の間隔Pに詰まり(縮小)や、拡がり(拡大)が生じる。具体的には、湾曲のない領域A1では素線21の間隔Pに変化はない。このため、素線21間の隙間C1は、
図1、
図2で説明した通りとなる。一方、湾曲のある領域A2では、湾曲に伴い素線21の間隔Pが変化し、素線21に詰まりや拡がりが生じる。この間隔Pの変化に伴って、湾曲部の外側における素線21の隙間C1は拡大し、湾曲部の内側における素線21の隙間C1は縮小する。
【0035】
ここで、本実施形態のガイドワイヤ1は、コイル体20の内周面よりもコアシャフト10側に伸びる樹脂層30(凸部32)を有する。このため、
図3の下段に示すように、湾曲部の外側において素線21の隙間C1が拡大し、この拡大に伴って樹脂層30が伸長されて、樹脂層30の厚さが「通常時の厚さTa」から「伸張時の厚さTb」へと薄く変化した場合であっても、拡がった素線21間における樹脂層30の厚さTbを厚く維持することができる。このため、樹脂層30の表面に対して、併用デバイス2(ガイドワイヤ1と併用されるカテーテル等のデバイス)の先端が引っ掛かり、コイル体20から樹脂層30を引き剥がす方向に力が加わった場合(
図3下段:白抜き矢印)であっても、引き剥がす力への抵抗力(
図3下段:斜線ハッチング付矢印)を得ることができる。この結果、本実施形態のガイドワイヤ1では、ガイドワイヤ1を湾曲させた際における素線21間の樹脂層30の剥がれや破損を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態のガイドワイヤ1は、コイル体20の内周面よりもコアシャフト10側に伸びる樹脂層30(凸部32)を有する。このため、例えば、ガイドワイヤ1の使用時において、コアシャフト10がコイル体20内部で屈曲した場合であっても、コアシャフト10は、樹脂層30の凸部32に接触することによって、コイル体20への接触が抑制される。樹脂層30(凸部32)は、上述の通り柔軟性を有する樹脂材料により形成されている。このため、本実施形態のガイドワイヤ1では、コアシャフト10やコイル体20の破損や変形を抑制できる。
【0037】
さらに、本実施形態のガイドワイヤ1では、コイル体20とコアシャフト10との間に空隙C2が設けられている。このため例えば、樹脂層30がコイル体20とコアシャフト10との間に隙間なく形成されている場合等の、空隙C2が無い構成と比較して、コイル体20を形成する素線21が移動しやすい。この結果、本実施形態のガイドワイヤ1では、ガイドワイヤ1を湾曲させるために要する力を小さくでき、ガイドワイヤ1の柔軟性を向上させることができる。さらに、本実施形態のガイドワイヤ1では、コイル体20とコアシャフト10との間に空隙C2を有するため、空隙C2が無い構成と比較して、樹脂層30を容易に形成することができる。
【0038】
<比較例>
図4は、比較例のガイドワイヤ1xを湾曲させた際の樹脂層30xについて説明する図である。比較例のガイドワイヤ1xでは、樹脂層30xが表層31のみからなり、凸部32を有さない。換言すれば、ガイドワイヤ1xは、樹脂層30xがコイル体20の外周面にのみ形成されている。
【0039】
このため、
図4の下段に示すように、ガイドワイヤ1xでは、樹脂層30xの伸張時の厚さTbを十分に厚く維持できず、樹脂層30xの表面に対して併用デバイス2の先端が引っ掛かった場合等に、コイル体20から樹脂層30xを引き剥がす方向の力(
図4下段:白抜き矢印)に対して、十分な抵抗力を得られない。この結果、比較例のガイドワイヤ1xでは、ガイドワイヤ1xを湾曲させた際における素線21間の樹脂層30xの剥がれや破損の虞がある。また、比較例のガイドワイヤ1xでは、コイル体20の内周面よりもコアシャフト10側に伸びる凸部32(
図2、
図3)を有さないため、コアシャフト10がコイル体20内部で屈曲した場合、コアシャフト10がコイル体20に接触して、コアシャフト10やコイル体20が破損、変形する虞がある。
【0040】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のガイドワイヤ1aの部分拡大図である。第2実施形態のガイドワイヤ1aでは、樹脂層30aが凸部32aを備える。凸部32aは、凸部32aの突出部先端(コアシャフト10に最も近接した部分)が、コアシャフト10に接触するように形成されている。
図5に示す断面における凸部32aの突出部の形状は、楕円弧形状である。凸部32aは、第1実施形態の凸部32と同様の材料及び製法で形成できる。
【0041】
ガイドワイヤ1aにおける凸部32aの突出長さLは、素線21とコアシャフト10との間の空隙C2の大きさと等しい。このようにすれば、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、樹脂層30aの厚さTaを、より厚くすることができる。なお、ガイドワイヤ1aが備える各凸部32aのうち、全てがコアシャフト10に接触していてもよく、少なくとも一部はコアシャフト10に接触していなくてもよい。
【0042】
図6は、第2実施形態のガイドワイヤ1aを湾曲させた際の樹脂層30aについて説明する図である。第2実施形態のガイドワイヤ1aは、樹脂層30a(凸部32a)がコアシャフト10に接触するだけの厚さTaとされている(
図5)。このため、
図6に示すように、ガイドワイヤ1aの湾曲に伴い拡がった素線21間における、樹脂層30aの伸張時の厚さTbをさらに厚く維持できる。
【0043】
このため、樹脂層30aの表面に対して併用デバイス2の先端が引っ掛かった場合等に、コイル体20から樹脂層30aを引き剥がす方向の力(
図6下段:白抜き矢印)に対して、より大きな抵抗力(
図6下段:斜線ハッチング付矢印)を得ることができる。この結果、第2実施形態のガイドワイヤ1aでは、ガイドワイヤ1aを湾曲させた際における樹脂層30aの剥がれや破損をさらに抑制できる。また、第2実施形態のガイドワイヤ1aにおいても、第1実施形態と同様に、コアシャフト10がコイル体20に接触することが抑制されるため、コアシャフト10やコイル体20の破損を抑制できる。
【0044】
さらに、第2実施形態のガイドワイヤ1aにおいても、第1実施形態と同様に、コイル体20とコアシャフト10との間に空隙C2が設けられている。このため、空隙C2が無い構成と比較して、コイル体20を形成する素線21が移動しやすく、ガイドワイヤ1aを湾曲させるために要する力を小さくでき、ガイドワイヤ1aの柔軟性を向上させることができる。さらに、第2実施形態のガイドワイヤ1aにおいても、空隙C2が無い構成と比較して、樹脂層30aを容易に形成することができる。
【0045】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態におけるガイドワイヤ1bの部分拡大図である。第3実施形態のガイドワイヤ1bでは、樹脂層30bが凸部32bを備える。凸部32bは、凸部32bの突出部先端がコアシャフト10に接合されている。
図7に示す断面における凸部32bの突出部の形状は、中央部分が縮径した略矩形形状である。凸部32bは、第1実施形態の凸部32と同様の材料で形成できる。凸部32bは、例えば、コアシャフト10の外周面にエポキシ系接着剤などの接着剤を塗布した後、液状にした樹脂材料をコイル体20の外周面から塗布することにより形成できる。樹脂材料を塗布する際、コイル体20の隙間C1から樹脂材料を流し込むようにして、樹脂材料をコアシャフト10の接着剤層まで到達させる。これにより、コアシャフト10に接合された凸部32bを形成できる。また、コアシャフト10の外表面に微細な凹凸を設けて、溶融した樹脂材料を流し込み、物理的にコアシャフト10に接合させることにより凸部32bを形成してもよい。
【0046】
ガイドワイヤ1bにおける凸部32bの突出長さLは、素線21とコアシャフト10との間の空隙C2の大きさと等しい。このようにすれば、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、樹脂層30bの厚さTaを、より厚くすることができる。なお、ガイドワイヤ1bが備える各凸部32bのうち、全てがコアシャフト10に接合されていてもよく、少なくとも一部はコアシャフト10に接合されていなくてもよい。
【0047】
図8は、第3実施形態のガイドワイヤ1bを湾曲させた際の樹脂層30bについて説明する図である。第3実施形態のガイドワイヤ1bは、樹脂層30b(凸部32b)がコアシャフト10に接合されている。このため、
図8に示すように、ガイドワイヤ1bの湾曲に伴い拡がった素線21間における、樹脂層30bの伸張時の厚さTbを、通常時の厚さTaと等しくすることができる(すなわち、伸張時の厚さTbをさらに厚く維持できる)。
【0048】
このため、樹脂層30bの表面に対して併用デバイス2の先端が引っ掛かった場合等に、コイル体20から樹脂層30bを引き剥がす方向の力(
図8下段:白抜き矢印)に対して、より大きな抵抗力(
図8下段:斜線ハッチング付矢印)を得ることができる。この結果、第3実施形態のガイドワイヤ1bでは、ガイドワイヤ1bを湾曲させた際における樹脂層30bの剥がれや破損をさらに抑制できる。また、第3実施形態のガイドワイヤ1bにおいても、第1実施形態と同様に、コアシャフト10がコイル体20に接触することが抑制されるため、コアシャフト10やコイル体20の破損を抑制できる。
【0049】
また、第3実施形態のガイドワイヤ1bにおいても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、コイル体20とコアシャフト10との間に空隙C2が設けられているため、空隙C2が無い構成と比較して、ガイドワイヤ1bの柔軟性を向上させることができると共に、樹脂層30bを容易に形成することができる。
【0050】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態のガイドワイヤ1cの全体構成を示す部分断面概要図である。第4実施形態のガイドワイヤ1cでは、コイル体20cが、先端側の範囲P1において、隣接する素線21が隙間C1(
図2)を有さず接触した密巻部として形成され、範囲P1より基端側の範囲P2において、隣接する素線21が隙間C1を有する疎巻部として形成されている。また、ガイドワイヤ1cは、コイル体20cが密巻部の部分(範囲P1)において、コイル体20cの内側に、コアシャフト10に素線41を螺旋状に巻回して形成された内側コイル体40を備える。内側コイル体40は、軸線O方向における長さが、コイル体20cよりも短い。
【0051】
内側コイル体40は、素線41の巻き方向がコイル体20cとは逆方向である。なお、内側コイル体における素線41の巻き方向は、コイル体20cと同じであってもよく、逆方向以外の異なる方向であってもよい。素線41は、素線21と同様に、単線でもよく、撚線でもよい。単コイルと中空撚線コイルとを組み合わせて内側コイル体40を構成してもよい。素線41の線径と、内側コイル体40におけるコイル平均径とは、任意に決定できる。素線41は、第1実施形態で説明した素線21と同様の材料で形成することができる。素線41に採用される材料は、素線21と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0052】
内側コイル体40は、先端接合部51c及び内側固定部62によって、コアシャフト10に固定されている。先端接合部51cは、コイル体20cの先端部と、内側コイル体40の先端部と、コアシャフト10の細径部11の先端部とを接合する。先端接合部51cは、第1実施形態で説明した先端接合部51と同様の材料で形成することができる。先端接合部51cに採用される材料は、先端接合部51と同じでもよく、異なっていてもよい。内側固定部62は、内側コイル体40の基端部と、コアシャフト10の第1テーパー部12の一部とを接合する。内側固定部62は、第1実施形態で説明した先端接合部51と同様の材料で形成することができる。内側固定部62に採用される材料は、先端接合部51と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0053】
樹脂層30cは、コイル体20cが疎巻部の部分(範囲P2)においては、第1実施形態と同様に、表層31と、凸部32とを有している。一方、樹脂層30cは、コイル体20cが密巻部の部分(範囲P1)においては、表層31のみを有し、凸部32を有さない。このように、ガイドワイヤ1cは、軸線O方向の一部分において、隣接する素線21が隙間C1(
図2)を有さず接触した密巻部を備えていてもよい。密巻部が形成される範囲は任意に決定できる。本実施形態では、密巻部が、コイル体20c(ガイドワイヤ1c)の先端部に形成されているが、これに限定されることなくコイル体20c(ガイドワイヤ1c)の後端部に形成されてもよい。この場合において、疎巻部が、コイル体20c(ガイドワイヤ1c)の先端部に形成され、コイル体20cの疎巻部の内側に内側コイル体40が配置される構成としてもよい。また、コイル体20cの密巻部には、樹脂層30cの凸部32が形成されていなくてもよい。
【0054】
第4実施形態のガイドワイヤ1cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態のガイドワイヤ1cによれば、樹脂層30cが形成されている疎巻部は、コイル体20cが内側コイル体40を覆わない部分(範囲P2)に位置するため、樹脂層30cの凸部32によって内側コイル体40の動きが妨げられない。このため、本実施形態のガイドワイヤ1cによれば、内側コイル体40を有する構成においてもガイドワイヤ1cの柔軟性を維持することができる。
【0055】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態のガイドワイヤ1dの全体構成を示す部分断面概要図である。第5実施形態のガイドワイヤ1dでは、全体が疎巻部として形成されたコイル体20の内側であって、先端側の範囲P1に内側コイル体40を備える。内側コイル体40は、軸線O方向における長さが、コイル体20よりも短い。なお、内側コイル体40の構成は、第4実施形態と同様である。
図10では、コイル体20(ガイドワイヤ1d)の先端部に内側コイル体40を備えるとしたが、内側コイル体40は、軸線O方向における任意の位置に配置され得る。例えば、内側コイル体40は、コイル体20の中央部に配置されてもよく、コイル体20の後端部に配置されてもよい。
【0056】
このように、樹脂層30が形成されている疎巻部は、コイル体20が内側コイル体40を覆う部分(範囲P1)に位置してもよい。第5実施形態のガイドワイヤ1dによっても、上述した第1実施形態や第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0057】
<第6実施形態>
図11は、第6実施形態のガイドワイヤ1eの部分拡大図である。上述した
図2と同様に、
図11の左側はガイドワイヤ1e及び各構成部材の先端側(遠位側)に相当し、
図11の右側はガイドワイヤ1e及び各構成部材の基端側(近位側)に相当する。これらの点は、以降の図においても同様である。
【0058】
第6実施形態のガイドワイヤ1eでは、樹脂層30eが、凸部32eと樹脂膜34を備える。樹脂膜34は、コアシャフト10の外周面(外側の表面)を被覆する樹脂の層である。樹脂膜34は、第1実施形態の樹脂層30において列挙した樹脂材料から任意に選択された材料により形成できる。樹脂膜34は、例えば、液状にした樹脂材料をコアシャフト10の外周面に塗布することにより形成できる。樹脂膜34は、薄膜状にした樹脂材料をコアシャフト10の外周面に接合して形成してもよい。接合には、例えば、エポキシ系接着剤などの接着剤を利用できる。樹脂膜34の厚さは任意に決定できる。
【0059】
凸部32eは、凸部32eの突出部先端が樹脂膜34に接合されている。
図11に示す断面における凸部32eの突出部の形状は、中央部分が縮径した略矩形形状である。凸部32eは、第1実施形態の凸部32と同様の材料で形成できる。凸部32eは、例えば、樹脂膜34の表面にエポキシ系接着剤などの接着剤を塗布した後、液状にした樹脂材料をコイル体20の外周面から塗布することにより形成できる。樹脂材料を塗布する際、コイル体20の隙間C1から樹脂材料を流し込むようにして、樹脂材料を樹脂膜34の接着剤層まで到達させる。これにより、樹脂膜34に接合された凸部32eを形成できる。ガイドワイヤ1eにおける凸部32eの突出長さLは、素線21とコアシャフト10との間の空隙C2の大きさから、樹脂膜34の厚さを減じた長さとなる。
【0060】
このようにしても、第1実施形態と比較して、樹脂層30eの厚さTaを、より厚くすることができる。なお、ガイドワイヤ1eが備える各凸部32eのうち、全てが樹脂膜34に接合されていてもよく、少なくとも一部は樹脂膜34に接合されていなくてもよい。
【0061】
第6実施形態のガイドワイヤ1eによっても、上述した第1実施形態や第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
<第7実施形態>
図12は、第7実施形態のガイドワイヤ1fの部分拡大図である。第7実施形態のガイドワイヤ1fでは、樹脂層30fが、凸部32fを備える。
図12に示す断面における凸部32fの形状は、略矩形形状である。凸部32fは、第1実施形態の凸部32と同様の材料で形成できる。凸部32fは、例えば、次のようにして形成できる。即ち、まず、コイル体20の内側にコアシャフト10の外径よりも太い外径を持つ円筒状のフッ素系樹脂から成る芯材を配置し、この状態で柔軟性を有する薄膜状の樹脂材料をコイル体20の外周面に巻き付ける。次に、この樹脂材料を熱収縮チューブで被覆して加熱する。この結果、溶融した樹脂材料が隙間C1からコアシャフト10側へ流入し、芯材に接触する。次に、コイル体20から芯材を抜去することにより、略矩形形状の凸部32fが形成される。最後に、略矩形形状の凸部32fが形成されたコイル体20をコアシャフト10に組み付ける。ガイドワイヤ1fにおける凸部32fの突出長さLは、第1実施形態の凸部32と同様に、任意に決定できる。
【0063】
このように、凸部32fは、コイル体20の隣接する素線21の隙間C1を通ってコアシャフト10に延伸し、コイル体20の内周面よりもコアシャフト10側に伸びている限りにおいて、種々の形状を採用できる。第7実施形態のガイドワイヤ1fによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0064】
<第8実施形態>
図13は、第8実施形態のガイドワイヤ1gの部分拡大図である。第8実施形態のガイドワイヤ1gでは、樹脂層30gが、表層31gを備える。
図13に示す断面における表層31gの形状は、凹凸がなく直線状である。表層31gは、第1実施形態の表層31と同様の材料で形成できる。断面が直線状の表層31gは、例えば、次のようにして形成できる。即ち、柔軟性を有する樹脂材料をコイル体20の外周面に巻き付ける。次に、この樹脂材料を外側表面が平坦な(凹凸がない)熱収縮チューブで被覆して加熱する。この結果、溶融した樹脂材料が隙間C1からコアシャフト10側へ流入して凸部32が形成されるとともに、断面が直線状の表層31gが形成される。最後に、凸部32及び表層31gが形成されたコイル体20をコアシャフト10に組み付ける。
【0065】
このように、表層31gは、コイル体20の少なくとも外周面を被覆する限りにおいて、種々の形態を作用できる。第8実施形態のガイドワイヤ1gによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
<第9実施形態>
図14は、第9実施形態のガイドワイヤ1hの部分拡大図である。第9実施形態のガイドワイヤ1hでは、樹脂層30hが、凸部32h1、凸部32h2、凸部32h3、凸部32h4を備える。凸部32h1~4はそれぞれ異なる形状である。
図14に示す断面において、凸部32h1の形状は略三角形状であり、凸部32h2の形状は台形状であり、凸部32h3の形状は凸部32h1と高さの異なる略三角形状であり、凸部32h4の形状は凸部32h2と高さの異なる台形状である。凸部32h1と凸部32h2とはコアシャフト10に接触している。一方、凸部32h3と凸部32h4とは、コアシャフト10に接触していない。凸部32h1~4は、第1実施形態の凸部32や、第7実施形態の凸部32fと同様の材料及び製法で形成できる。
【0067】
このように、ガイドワイヤ1hは、コイル体20の隣接する素線21の隙間C1を通ってコアシャフト10に延伸し、コイル体20の内周面よりもコアシャフト10側に伸びている限りにおいて、種々の形状の凸部32h1~4を備えていてよい。また、各凸部32h1~4の形状は、
図14に示すように互いに相違していてもよい。第9実施形態のガイドワイヤ1hによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
[変形例1]
上記第1~9実施形態では、ガイドワイヤ1の構成の一例を示した。しかし、ガイドワイヤ1の構成は種々の変更が可能である。例えば、ガイドワイヤ1は、第2テーパー部14及び第2太径部15を備えない構成(すなわち、コアシャフト10の全てがコイル体20に覆われた構成)であってもよい。例えば、ガイドワイヤ1は、テーパー部を有さず、軸線O方向の全域に亘って同じ径で構成されてもよい。
【0070】
[変形例2]
上記第1~9実施形態では、コイル体20の構成の一例を示した。しかし、コイル体20の構成は種々の変更が可能である。例えば、コイル体20は、上述したコアシャフト10の細径部11~第1太径部13に加えて、コアシャフト10の第2テーパー部14及び第2太径部15を覆うように配置されてもよい。例えば、コイル体20の密巻部と疎巻部の配置は任意に決定でき、ガイドワイヤ1の先端部以外の位置(例えば、軸線O方向の略中央部分)において密巻部が形成されていてもよい。
【0071】
[変形例3]
上記第1~9実施形態では、樹脂層30の構成の一例を示した。しかし、樹脂層30の構成は種々の変更が可能である。例えば、樹脂層30が備える先端樹脂層38と基端樹脂層39とのうち、少なくとも一方は省略してもよい。例えば、コイル体20の密巻部(
図9、第4実施形態)においては、樹脂層30を有さない構成としてもよい。例えば、樹脂層30が、表層31と、コアシャフト10に接触しない態様の凸部32(
図2)と、樹脂膜34(
図11)とを備えていてもよい。
【0072】
[変形例4]
第1~9実施形態のガイドワイヤの構成、及び上記変形例1~3のガイドワイヤの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、軸線O方向の第1領域については第1実施形態の凸部32(
図2、凸部32がコアシャフト10に接触しない構成)を採用し、第2領域については第2実施形態の凸部32a(
図5、凸部32aがコアシャフト10に接触する構成)を採用し、第3領域については第3実施形態の凸部32b(
図7、凸部32bがコアシャフト10に接合されている構成)を採用してもよい。この場合、第1~3領域の位置は、ガイドワイヤ1に求められる性能(滑り性、血栓付着防止性、操作性など)等を考慮して任意に決定できる。また、第1~3領域のうちの一部は省略して、第1及び第2領域でガイドワイヤ1を構成してもよく、第1及び第3領域でガイドワイヤ1を構成してもよく、第2及び第3領域でガイドワイヤ1を構成してもよい。
【0073】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,1a~1h…ガイドワイヤ
1x…比較例のガイドワイヤ
2…併用デバイス
10…コアシャフト
11…細径部
12…第1テーパー部
13…第1太径部
14…第2テーパー部
15…第2太径部
20,20c…コイル体
21…素線
30,30a~30h…樹脂層
31,31g…表層
32,32a~32f,32h1~4…凸部
34…樹脂膜
38…先端樹脂層
39…基端樹脂層
40…内側コイル体
41…素線
51,51c…先端接合部
56…基端接合部
61…中間固定部
62…内側固定部