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特許7262558精度管理検体測定方法および検体分析装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】精度管理検体測定方法および検体分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230414BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N1/38
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021195015
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】生田 純也
(72)【発明者】
【氏名】中西 利志
(72)【発明者】
【氏名】八尾 俊佑
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 淳
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079888(JP,A)
【文献】特開2013-011614(JP,A)
【文献】特開2010-121936(JP,A)
【文献】特開2005-274289(JP,A)
【文献】国際公開第2019/191531(WO,A1)
【文献】特表2021-517248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却保管されていた精度管理検体を測定する精度管理検体測定方法であって、
前記精度管理検体を第1動作モードで攪拌する工程と、
攪拌された前記精度管理検体を測定する工程と、を含み、
前記第1動作モードによる攪拌は、被検者から採取された被検者検体を攪拌するための第2動作モードによる攪拌よりも強化されている、精度管理検体測定方法。
【請求項2】
前記第1動作モードによる攪拌と前記第2動作モードによる攪拌は、攪拌回数、攪拌角度、攪拌速度、衝撃の繰り返し付与の有無、姿勢変更の有無および予備攪拌の有無のうち少なくとも一つにおいて異なる、請求項1に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項3】
前記精度管理検体を収容した容器を保管する保管庫から前記容器を自動的に取り出す工程と、
前記取り出された容器を測定装置に搬送する工程と、をさらに含む、請求項1または2に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項4】
前記保管庫は、前記精度管理検体を収容した容器を冷却保管し、
前記方法は、前記保管庫から取り出された前記容器を昇温させる工程をさらに含む、請求項に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項5】
前記攪拌は、前記精度管理検体または前記被検者検体を収容した容器を、前記容器の底部が頭部より低い第1の角度と、前記底部が前記頭部よりも高い第2の角度との間で、前記容器を振ることを含む、請求項1ないしのいずれか一項に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項6】
前記第1動作モードによる攪拌と前記第2動作モードによる攪拌は、前記容器を振る角度において異なり、
前記第1動作モードにおける前記容器を振る角度が、前記第2動作モードにおける前記容器を振る角度よりも大きい、請求項に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項7】
前記第1動作モードによる攪拌と前記第2動作モードによる攪拌は、前記容器を振る速度において異なり、
前記第1動作モードにおける前記容器を振る速度が、前記第2動作モードにおける前記容器を振る速度よりも速い、請求項またはに記載の精度管理検体測定方法。
【請求項8】
前記第1動作モードと前記第2動作モードは、前記攪拌回数において異なり、
前記第1動作モードにおける前記攪拌回数は、前記第2動作モードにおける前記攪拌回数よりも多い、請求項1ないしの何れか一項に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項9】
前記第1動作モードによる攪拌は、前記容器に衝撃を付与することを含み、
前記第2動作モードによる攪拌は、前記容器に衝撃を付与することを含まない、請求項1ないしの何れか一項に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項10】
前記第1動作モードによる攪拌は、攪拌の途中で、前記容器を周方向に回転させることを含み、
前記第2動作モードによる攪拌は、攪拌の途中で、前記容器を周方向に回転させることを含まない、請求項1ないしの何れか一項に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項11】
前記第1動作モードと第2動作モードは、予備攪拌の有無において異なり、
前記第1動作モードによる攪拌は、前記予備攪拌を含み、
前記第2動作モードによる攪拌は、前記予備攪拌を含まない、請求項1ないし10の何れか一項に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項12】
前記予備攪拌は、前記容器を掴んで振ること、前記容器に振動を付与すること、および前記容器に遠心力を付与すること、の少なくとも一つを含む、請求項11に記載の精度管理検体測定方法。
【請求項13】
容器を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送された前記容器内の検体を攪拌し、攪拌された前記検体を吸引して測定する測定装置と、を備え、
前記測定装置は、
前記搬送装置によって搬送された容器に収容されている前記検体が精度管理検体である場合、前記容器内の前記精度管理検体を第1動作モードで攪拌し、
前記搬送装置によって搬送された容器に収容されている前記検体が被検者検体である場合、前記容器内の前記被検者検体を第2動作モードで攪拌し、
前記第1動作モードによる攪拌は、前記第2動作モードによる攪拌よりも強化されている、検体分析装置。
【請求項14】
前記第1動作モードによる攪拌と前記第2動作モードによる攪拌は、攪拌動作、攪拌回数、攪拌角度、攪拌速度、衝撃付与の有無、姿勢変更の有無方法および予備攪拌の有無のうち少なくとも一つにおいて異なる、請求項13に記載の検体分析装置。
【請求項15】
前記測定装置は、前記容器を掴んで振る攪拌機構を含む、請求項13または14に記載の検体分析装置。
【請求項16】
前記測定装置は、前記容器を周方向に回転させる回転機構と、を備え、
前記回転機構は、前記第1動作モードに基づく前記精度管理検体の攪拌の途中で、前記容器を周方向に回転させる、請求項15に記載の検体分析装置。
【請求項17】
前記回転機構は、前記容器の側面に付された識別情報を読み取る読取部に含まれている、請求項16に記載の検体分析装置。
【請求項18】
前記測定装置は、前記第1動作モードで攪拌済みの前記精度管理検体を再度、測定前に攪拌する場合、前記第1動作モードによる攪拌より弱い攪拌で前記精度管理検体の攪拌を行う、請求項13ないし17の何れか一項に記載の検体分析装置。
【請求項19】
前記測定装置は、前記第1動作モードで攪拌済みの前記精度管理検体を再度、測定前に攪拌する場合、前記第1動作モードによる攪拌からの経過時間に応じた強さで前記精度管理検体の攪拌を行う、請求項13ないし18の何れか一項に記載の検体分析装置。
【請求項20】
前記精度管理検体を収容した前記容器を保管する保管庫を備える供給装置をさらに備え、
前記搬送装置は、前記供給装置によって前記保管庫から取り出された前記容器を前記測定装置に搬送し、
前記測定装置は、前記供給装置から搬送された前記容器内の前記精度管理検体を前記第1動作モードで攪拌する、請求項13ないし19の何れか一項に記載の検体分析装置。
【請求項21】
前記搬送装置は、前記測定装置による測定が行われた前記精度管理検体を収容する前記容器を前記供給装置へ搬送し、
前記供給装置は、前記搬送装置によって前記測定装置から搬送された前記容器を前記保管庫に保管する、請求項20に記載の検体分析装置。
【請求項22】
前記供給装置は、前記保管庫内の前記容器を冷却する保冷部を備える、請求項20または21に記載の検体分析装置。
【請求項23】
前記供給装置は、前記保管庫から取り出された前記容器を加温する加温部を備える、請求項20ないし22の何れか一項に記載の検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精度管理検体測定方法および検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体分析装置では、適正な測定結果が得られるよう、定期的に精度管理検体が測定される。精度管理検体とは既知濃度の成分を含む検体であり、例えば、赤血球、白血球、血小板などの血液成分が既知の濃度となるように人工的に調整された血液である。精度管理の手法の一つである内部精度管理では、同じロットの精度管理検体を繰り返し測定し、測定値の変動が許容範囲内であるか否かを確認することにより、検体分析装置の測定精度が維持される。
【0003】
以下の特許文献1には、保冷庫に保管されているコントロール検体(精度管理検体)を、搬送装置により分析装置に搬送し、分析装置によって測定する血液検体搬送分析システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-274289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、精度管理検体の測定結果を正しく得るための精度管理検体の攪拌については記載されていない。冷却ユニットに保管されていた精度管理検体を適切に攪拌せずに測定すると、精度管理検体の測定結果を正常に取得できない可能性がある。
【0006】
本発明は、精度管理検体の測定結果を正常に取得可能な精度管理検体測定方法および検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の精度管理検体測定方法は、冷却保管されていた精度管理検体を測定する精度管理検体測定方法に関する。本発明の精度管理検体測定方法は、精度管理検体を第1動作モードで攪拌する工程(ステップS2)と、攪拌された精度管理検体を測定する工程(ステップS3)と、を含む。第1動作モードによる攪拌は、被検者から採取された被検者検体を攪拌するための第2動作モードによる攪拌よりも強化されている
【0008】
精度管理検体とは、既知の成分を既知の濃度で含む検体であり、被検者から採取された被検者検体の測定精度を管理するために用いられる。
【0009】
精度管理検体が被検者検体と同じ動作で攪拌されると、例えば精度管理検体に含まれる疑似成分の影響や低温での長期間保管による影響によって、精度管理検体の攪拌が不十分となり、容器内で血球成分が均一に分散されない状態で測定されることがある。血球成分が分散されない状態で測定されると、例えば特定の血球成分が偽高値となることがあり、精度管理検体の測定結果が正常に得られない。そこで、本発明者らは、被検者検体を攪拌するための第2動作モードとは異なる第1動作モードによって精度管理検体を攪拌して測定を行うことにより、上記の課題を解決した。本発明の精度管理検体測定方法によれば、精度管理検体の攪拌不良を回避でき、精度管理検体の測定結果を正常に取得できる。
【0010】
本発明の検体分析装置(1a)は、容器(110、T1、T2)を搬送する搬送装置(20)と、搬送装置(20)によって搬送された容器(110、T1、T2)内の検体を攪拌し、攪拌された検体を吸引して測定する測定装置(10)と、を備える。測定装置(10)は、搬送装置(20)によって搬送された容器(110、T1)に収容されている検体が精度管理検体である場合、容器(110、T1)内の精度管理検体を第1動作モードで攪拌し、搬送装置(20)によって搬送された容器(110、T2)に収容されている検体が被検者検体である場合、容器(110、T2)内の被検者検体を第2動作モードで攪拌する。第1動作モードによる攪拌は、第2動作モードによる攪拌よりも強化されている
【0011】
本発明の検体分析装置によれば、上記精度管理検体測定方法と同様、精度管理検体の攪拌不良を回避でき、精度管理検体の測定結果を正常に取得できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、精度管理検体の攪拌不良を回避し、精度管理検体の測定結果を正常に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態1に係る、検体分析システムの構成を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る、ラックおよび容器の構成を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る、検体分析システムの各装置における相互の接続関係を模式的に示す図である。
図4図4は、実施形態1に係る、供給装置の詳細な構成を模式的に示す平面図である。
図5図5は、実施形態1に係る、搬送装置の詳細な構成を模式的に示す平面図である。
図6図6は、実施形態1に係る、測定装置の内部の構成を模式的に示す平面図である。
図7図7は、実施形態1に係る、攪拌機構の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
図8図8は、実施形態1に係る、攪拌機構の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
図9図9は、実施形態1に係る、容器に対して行われる転倒攪拌を模式的に示す側面図である。
図10図10は、実施形態1に係る、読取部の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
図11図11は、実施形態1に係る、供給装置の構成を示すブロック図である。
図12図12は、実施形態1に係る、測定装置の構成を示すブロック図である。
図13図13は、実施形態1に係る、検体分析装置による精度管理検体の測定の流れを説明したフローチャートである。
図14図14は、実施形態1に係る、容器の底部に血球成分が残っている場合に、容器の姿勢が変更されることを模式的に示す図である。
図15図15は、実施形態1に係る、第1動作モードによる攪拌および第2動作モードによる攪拌の詳細を示す図である。
図16図16は、実施形態1に係る、精度管理検体を収容した容器の姿勢を変更させる処理を示すフローチャートである。
図17図17は、実施形態1の変更例1に係る、制御装置による検体分析処理を示すフローチャートである。
図18図18は、実施形態1の変更例2に係る、第1動作モード1A、第1動作モード1B、および第2動作モードによる攪拌の詳細を示す図である。
図19図19は、実施形態1の変更例2に係る、制御装置による検体分析処理を示すフローチャートである。
図20図20は、実施形態1の変更例3に係る、制御装置による検体分析処理を示すフローチャートである。
図21図21は、実施形態1の変更例4に係る、制御装置による検体分析処理を示すフローチャートである。
図22図22は、実施形態1の変更例4に係る、攪拌回数を模式的に示すグラフである。
図23図23は、実施形態1の変更例5に係る、制御装置による検体分析処理を示すフローチャートである。
図24図24は、実施形態1の変更例5に係る、攪拌回数を模式的に示すグラフである。
図25図25は、実施形態2に係る、第1動作モードによる攪拌および第2動作モードによる攪拌の詳細を示す図である。
図26図26は、実施形態2に係る、供給装置の詳細な構成を模式的に示す平面図である。
図27図27は、実施形態2に係る、回転機構および攪拌機構の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
図28図28は、実施形態2に係る、供給装置による攪拌および搬送の処理を示すフローチャートである。
図29図29は、実施形態2に係る、予備攪拌において精度管理検体を収容した容器の姿勢を変更させる処理を示すフローチャートである。
図30図30は、実施形態2の変更例1に係る、支持機構および攪拌機構の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
図31図31は、実施形態2の変更例2に係る、加温攪拌機構の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
図32図32は、実施形態2の変更例2に係る、加温攪拌機構の詳細な構成を模式的に示す平面図である。
図33図33は、実施形態2の変更例2に係る、供給装置による攪拌および搬送の処理を示すフローチャートである。
図34図34は、実施形態3に係る、検体分析システムの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
図1は、検体分析システム1の構成を模式的に示す図である。
【0017】
図1には、測定装置10、搬送装置20、供給装置40および回収装置50の平面視の構成が示されており、平面視における上下左右の方向が示されている。また、図1には、装置間で通信を行うための通信ケーブルが、一点鎖線で示されている。また、図1には、ラック100の搬送方向が矢印で示されており、下流方向は左方向であり、上流方向は右方向である。
【0018】
検体分析システム1は、検体分析装置1aと、回収装置50と、搬送制御装置60と、を備える。検体分析装置1aは、2つの測定装置10と、1つの搬送装置20と、1つの制御装置30とを含む組を2つ備える。また、検体分析装置1aは、供給装置40を備える。検体分析システム1は、外部のホストコンピュータ2と通信可能に接続されている。
【0019】
検体分析システム1は、被検者から採取された被検者検体および精度管理検体を自動で測定し、測定データに基づいて分析および解析を行うシステムである。被検者検体は、実施形態1~3では、被検者から採取された全血である。精度管理検体とは、既知の成分を既知の濃度で含む検体であり、被検者検体の測定精度を管理するために用いられる。精度管理検体は、より詳しくは全血に含まれる血球成分、例えば赤血球、白血球および血小板を既知の濃度で含有する、いわゆるコントロール血液である。精度管理検体は、例えばXN-CHECK(登録商標)(シスメックス株式会社製)である。精度管理検体の組成は、例えば米国特許6221668号公報に開示されている。精度管理検体は、含有する血球成分の濃度レベルに応じて3つの種類に分けられ、健常者から採取される検体(健常血)より低濃度の成分を含むレベル1、健常血と同程度の成分を含むレベル2、健常血より高濃度の成分を含むレベル3の3つの濃度レベルに対応する精度管理検体LV1~LV3を種類として含む。以下において、単に「検体」と表記する場合、この検体は、被検者検体および精度管理検体の両方を含む概念である。
【0020】
測定装置10は、供給装置40から搬送された容器110内の検体を攪拌し、攪拌した検体を測定する。測定装置10は、被検者検体中の血球を計数し、精度管理検体中の粒子を計数する。搬送装置20は、供給装置40によって保管庫42から取り出された容器110を保持するラック100を、測定装置10に搬送する。また、搬送装置20は、上流側の装置から搬出されたラック100を下流側の装置に搬送し、測定が終わったラック100を下流側の装置または上流側の装置に搬送する。制御装置30は、検体が測定されるよう対応する2つの測定装置10制御し、対応する2つの測定装置10から測定データを受信して検体の分析を行う。
【0021】
なお、図1では、2つの測定装置10と、1つの搬送装置20と、1つの制御装置30とを含む組が2つ示されているが、検体分析システム1は、このような組を1つだけ含んでもよく、3つ以上含んでもよい。また、図1では、測定装置10と、搬送装置20と、制御装置30とからなる組には、2つの測定装置10が含まれているが、1つの測定装置10が含まれてもよく、3つ以上の測定装置10が含まれてもよい。
【0022】
図2は、ラック100および容器110の構成を示す斜視図である。
【0023】
ラック100は、容器110を鉛直に保持できる10個の保持部101と、バーコードラベル102と、を備える。バーコードラベル102は、ラック100の後方側の面に貼り付けられている。バーコードラベル102には、ラック100を個別に識別可能な識別情報として、ラックIDを示すバーコードが印刷されている。
【0024】
容器110は、胴部111と、バーコードラベル112と、蓋部113と、を備える。胴部111は、上端が開放された管状容器であり、内部に精度管理検体または被検者検体を収容する。バーコードラベル112は、胴部111の側面に貼り付けられている。バーコードラベル112には、内部に収容した精度管理検体または被検者検体を個別に識別可能な識別情報として、検体IDを示すバーコードが印刷されている。蓋部113は、後述するピアサ441が上下に貫通可能となるよう構成されており、胴部111の内部を密封するよう胴部111の上端に設置されている。
【0025】
図1に戻り、ラック100には、精度管理検体を収容する容器110(以下、「容器T1」と称する)および被検者検体を収容する容器110(以下、「容器T2」と称する)の何れか一方のみが保持される。図1では、便宜上、容器T1が黒丸で示されており、容器T2が二重丸で示されている。また、図1には、便宜上、1つのラック100に4本の容器110が保持された状態が図示されている。
【0026】
供給装置40は、検体を測定する測定装置10に精度管理検体および被検者検体を供給する。供給装置40は、最も右側の搬送装置20の上流側に隣接して設置されている。供給装置40は、搬出部41と、保管庫42と、保冷部43と、加温部44と、を備える。
【0027】
搬出部41は、ラック100を供給装置40内で搬送し、搬送したラック100を下流側に隣接する搬送装置20に搬出する。保管庫42は、容器T1を冷却して保管する。精度管理検体は、容器T1に収容された状態で保管庫42に保管されている。保管庫42は、所定数(たとえば9個)の容器T1を保管できる。保冷部43は、保管庫42内の容器T1を冷却する。加温部44は、保管庫42から取り出された容器T1を加温する。精度管理検体を測定する場合、容器T1が、保管庫42から取り出され、加温部44で常温に戻される。
【0028】
加温部44で常温に戻された容器T1は、搬出部41のラック100に移送される。その後、容器T1を保持したラック100は、搬出部41により搬送装置20に搬出される。一方、被検者検体を測定する場合、あらかじめオペレータにより、容器T2がラック100にセットされ、容器T2を保持したラック100が搬出部41に置かれる。その後、容器T2を保持したラック100は、搬出部41により搬送装置20に搬出される。
【0029】
搬出部41、2つの搬送装置20および回収装置50は、ラック100の受け渡しが可能となるように、左右方向に並んで配置されている。搬出部41から搬出されたラック100は、搬送制御装置60の指示に応じて、搬送先となる測定装置10に搬送される。測定装置10は、ラック100に保持された容器110内の検体を測定する。
【0030】
容器T1を保持したラック100に対する測定が終了すると、このラック100は、搬送装置20により右方向に搬送され、搬出部41まで搬送される。その後、ラック100に保持された容器T1は、再び保管庫42に移送され、保冷された状態で保管庫42に保管される。一方、容器T2を保持したラック100に対する測定が終了すると、このラック100は、搬送装置20により左方向に搬送され、回収装置50に搬送される。こうして、測定が完了した被検者検体を収容する容器T2は、回収装置50に回収される。
【0031】
搬送制御装置60は、ラック100の搬送を制御するための装置であり、容器T1を保持するラック100および容器T2を保持するラック100の搬送先を決定する。
【0032】
図3は、検体分析システム1の各装置における相互の接続関係を模式的に示す図である。図3では、便宜上、2つの測定装置10、1つの搬送装置20および1つの制御装置30からなる組が1つだけ図示されている。
【0033】
搬送装置20は、第1搬送機構20aおよび第2搬送機構20bにより構成される。第1搬送機構20aは、搬送制御装置60により制御され、第2搬送機構20bは、制御装置30により制御される。搬送装置20の構成については、追って図5を参照して説明する。
【0034】
制御装置30は、制御部31と記憶部32を備える。制御部31は、たとえば、CPUやFPGAなどのプロセッサにより構成される。記憶部32は、たとえば、SSD、HDD、RAMなどにより構成される。制御装置30は、対応する2つの測定装置10および1つの搬送装置20と通信可能に接続されている。測定装置10の構成については、追って図6、12を参照して説明する。
【0035】
供給装置40は、制御部201と記憶部202を備える。制御部201は、たとえば、CPUやFPGAなどのプロセッサにより構成される。記憶部202は、たとえば、SSD、HDD、RAMなどにより構成される。供給装置40の構成については、追って図4、11を参照して説明する。
【0036】
回収装置50は、制御部51と記憶部52を備える。制御部51は、たとえば、CPUやFPGAなどのプロセッサにより構成される。記憶部52は、たとえば、SSD、HDD、RAMなどにより構成される。
【0037】
搬送制御装置60は、制御部61と記憶部62を備える。制御部61は、たとえば、CPUやFPGAなどのプロセッサにより構成される。記憶部62は、たとえば、SSD、HDD、RAMなどにより構成される。搬送制御装置60の制御部61は、集線装置70を介して、第1搬送機構20a、供給装置40および回収装置50と通信することにより、ラック100の搬送を制御する。
【0038】
集線装置70は、たとえば、スイッチングハブにより構成される。集線装置70は、第1搬送機構20a、供給装置40、回収装置50および搬送制御装置60と通信可能に接続されている。制御装置30および搬送制御装置60は、通信ネットワークを介してホストコンピュータ2と通信可能に接続されている。
【0039】
図4は、供給装置40の詳細な構成を模式的に示す平面図である。
【0040】
供給装置40は、搬出部41と、保管庫42と、保冷部43と、加温部44と、移送部210と、バーコードユニット220と、バーコードリーダ230と、を備える。
【0041】
保冷部43は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子に接続されたヒートシンクと、ペルチェ素子の上面側に設置された熱伝導部材43aと、を備える。熱伝導部材43aは、円形状を有する。熱伝導部材43aには、容器T1を鉛直に保持可能な保持部43bが、周方向に複数形成されている。熱伝導部材43aが冷却されるようペルチェ素子が駆動されることにより、保持部43bに保持された容器T1内の精度管理検体が冷却される。
【0042】
加温部44は、アルミブロックヒータ44aを備える。アルミブロックヒータ44aには、容器T1を鉛直に保持可能な保持部44bが、前後方向に複数形成されている。アルミブロックヒータ44aが加温されるようペルチェ素子が駆動されることにより、保持部44bに保持された容器T1内の精度管理検体が加温される。
【0043】
移送部210は、容器T1を把持する把持部211を備える。また、移送部210は、把持部211を前後方向、左右方向および上下方向に移動させるための機構を備える。保管庫42内の容器T1が測定される場合、移送部210は、保管庫42内の容器T1を、加温部44の保持部44bに移送する。
【0044】
ここで、供給装置40の設置された場所の温度が常温、例えば所定温度(20℃~25℃)以上である場合、保管庫42から加温部44に移送された容器T1は、アルミブロックヒータ44aのペルチェ素子は駆動されない状態で保持部44bにおいて所定時間だけ放置されることにより昇温される。これにより、容器T1内の精度管理検体の温度が常温まで昇温される。他方、供給装置40の設置された場所の温度が所定温度よりも低い場合、アルミブロックヒータ44aのペルチェ素子が駆動され、保管庫42から加温部44に移送された容器T1は、加温部44の熱によって所定時間加温される。こうして、容器T1内の精度管理検体の温度が常温まで昇温される。
【0045】
加温部44において容器T1が常温とされると、移送部210は、この容器T1を、第1ラック貯留部231の前方位置233に位置付けられたラック100に移送する。
【0046】
搬出部41は、第1ラック貯留部231と、搬送アーム232と、第1搬送路241と、ラック送込部242と、第2ラック貯留部251と、ラック送出部252と、第2搬送路261と、第3搬送路271と、ラック送込部272と、第3ラック貯留部281と、ラック送出部282と、を備える。
【0047】
第1ラック貯留部231は、上面が水平面に平行な板部材により構成される。搬送アーム232は、第1搬送路241の右端にあるラック100を第1ラック貯留部231へと引き込むとともに、第1ラック貯留部231上のラック100を第1搬送路241に送り込む。
【0048】
第1搬送路241は、左右方向に移動するコンベアベルトにより構成され、第1ラック貯留部231および第3ラック貯留部281から送り込まれたラック100を左右方向に搬送する。ラック送込部242は、第1搬送路241の左端にあるラック100を第2ラック貯留部251に送り込む。第2ラック貯留部251は、上面が水平面に平行な板部材により構成される。ラック送出部252は、第2ラック貯留部251上のラック100を第2搬送路261に送出する。第2搬送路261は、左右方向に移動するコンベアベルトにより構成され、第2ラック貯留部251から送出されたラック100を、供給装置40の左に接続された搬送装置20の第1搬送路301(図5参照)に搬出する。
【0049】
第3搬送路271は、左右方向に移動するコンベアベルトにより構成され、供給装置40の左に接続された搬送装置20の第3搬送路341(図5参照)から搬送されたラック100を右方向に搬送する。ラック送込部272は、第3搬送路271の右端にあるラック100を第3ラック貯留部281に送り込む。第3ラック貯留部281は、上面が水平面に平行な板部材により構成される。ラック送出部282は、第3ラック貯留部281上のラック100を第1搬送路241に送出する。
【0050】
バーコードユニット220は、第1搬送路241の左端にあるラック100に対して、バーコードラベル102、112を読み取る。バーコードユニット220は、左右方向に移動する2つの読取部221を備える。読取部221は、ラック100に保持された容器110を周方向に回転させる主動ローラ221aと、主動ローラ221aの反対側から容器110を回転可能に押さえる2つの従動ローラ221bと、主動ローラ221aおよび従動ローラ221bにより挟まれた容器110のバーコードラベル112を読み取るバーコードリーダ221cと、を備える。また、左側の読取部221は、ラック100のバーコードラベル102を読み取る。なお、読取部221の構成は、後述する測定装置10に設けられた読取部430と、ほぼ同様である。
【0051】
バーコードリーダ230は、第2搬送路261により左方向に搬出されるラック100のバーコードラベル102を読み取る。
【0052】
ここで、搬出部41によるラック100の搬送動作について説明する。
【0053】
容器T1が、加温部44から、第1ラック貯留部231の前方位置233に位置付けられたラック100の保持部101に移送された後、このラック100の搬送が開始される。これにより、ラック100が、第1搬送路241の右端に送り込まれ、第1搬送路241によってバーコードユニット220の前方に搬送される。バーコードユニット220によってバーコードラベル102、112が読み取られた後、ラック100は、ラック送込部242によって第2ラック貯留部251に送り込まれ、第2ラック貯留部251に沿って第2搬送路261に搬送される。そして、バーコードリーダ230によりバーコードラベル102が読み取られたあと、ラック100は、左側に隣接する搬送装置20に搬出される。
【0054】
ラック100に保持された容器T1の精度管理検体に対して測定動作が完了すると、このラック100は、供給装置40の左側に隣接する搬送装置20から第3搬送路271に搬送される。ラック100は、第3搬送路271により右方向に搬送され、ラック送込部272により第3ラック貯留部281に送り込まれ、第3ラック貯留部281に沿って第1搬送路241に搬送される。ラック100は、第1搬送路241によってバーコードユニット220の前方まで搬送され、再度バーコードラベル102、112が読み取られる。その後、ラック100は第1搬送路241の右端に搬送され、搬送アーム232により第1ラック貯留部231の前方位置233に位置付けられる。
【0055】
その後、移送部210により、前方位置233のラック100に保持された全ての容器T1が保管庫42の保持部43bに移送されると、空になったラック100は、搬送アーム232により第1ラック貯留部231の後方に送られる。
【0056】
被検者検体を収容する容器T2が保持されたラック100は、オペレータにより第3ラック貯留部281に置かれた後、搬送が開始される。これにより、ラック100が、第1搬送路241、第2ラック貯留部251および第2搬送路261を経由して、左側に隣接する搬送装置20に搬出される。このとき、容器T1を保持したラック100と同様、バーコードユニット220とバーコードリーダ230により、バーコードラベル102、112が読み取られる。ラック100に保持された容器T2の被検者検体に対して測定動作が完了すると、このラック100は、上述したように左方向に搬送され回収装置50(図1参照)に回収される。
【0057】
図5は、搬送装置20の詳細な構成を模式的に示す平面図である。
【0058】
搬送装置20は、第1搬送路301と、ラック送込部302と、ラック搬送路303と、第1ラック貯留部311と、ラック送出部312と、第2搬送路321と、読取部322と、ラック送込部324と、第2ラック貯留部331と、ラック送出部332と、第3搬送路341と、を備える。
【0059】
図3の第1搬送機構20aは、第1搬送路301と、ラック送込部302と、ラック搬送路303と、第2ラック貯留部331と、ラック送出部332と、第3搬送路341と、を含む。図3の第2搬送機構20bは、第1ラック貯留部311と、ラック送出部312と、第2搬送路321と、読取部322と、ラック送込部324と、を含む。
【0060】
第1搬送路301は、左右方向に移動するコンベアベルトにより構成され、右側に隣接する供給装置40または搬送装置20から搬出されたラック100を左方向に搬送する。ラック送込部302は、第1搬送路301の右端あるラック100を第1ラック貯留部311に送り込む。第1ラック貯留部311は、水平面に平行な板部材により構成される。ラック送出部312は、第1ラック貯留部311上のラック100を第2搬送路321に搬送する。
【0061】
第2搬送路321は、左右方向に独立して移動する2つのコンベアベルト321a、321bにより構成され、第2搬送路321上のラック100を左右方向に搬送する。読取部322は、主動ローラ322aと、2つの従動ローラ322bと、バーコードリーダ322cと、を備える。読取部322の構成は、後述する測定装置10に設けられた読取部430と、ほぼ同様である。読取部322は、第2搬送路321上のラック100のバーコードラベル102および容器110のバーコードラベル112を読み取る。
【0062】
第2搬送路321上には、2つの測定装置10がラック100から容器110をそれぞれ取り出す2つの取出位置323が設けられている。測定装置10は、ラック100の保持部101に保持された容器110を取出位置323において順次取り出し、取り出した容器110を測定装置10内に取り込んで、容器110内の検体を攪拌して吸引し、容器110内の検体の測定を行う。測定装置10は、取り込んだ容器110について吸引が終了すると、この容器110をラック100の元の保持部101に戻す。
【0063】
ラック100に保持された全ての容器110について、当該第2搬送路321の後方に位置する2つの測定装置10において測定の必要がなくなると、このラック100は、第2搬送路321の左端に搬送され、ラック送込部272により第2ラック貯留部331に送り込まれる。第2ラック貯留部331は、上面が水平面に平行な板部材により構成される。ラック送出部332は、第2ラック貯留部331上のラック100を、第1搬送路301の左に配置されたラック搬送路303、または、第3搬送路341に搬送する。
【0064】
ラック搬送路303は、左右方向に移動するコンベアベルトにより構成される。ラック100に保持された何れかの容器110について、さらに下流側の測定装置10において測定の必要がある場合、ラック搬送路303は、このラック100を左側に隣接する搬送装置20に搬出する。また、ラック100に保持された全ての容器T2について、さらなる測定の必要がない場合も、ラック搬送路303は、このラック100を左側に隣接する搬送装置20または回収装置50に搬出する。
【0065】
第3搬送路341は、左右方向に移動するコンベアベルトにより構成される。ラック100に保持された全ての容器T1について、さらなる測定の必要がない場合、第3搬送路341は、第2ラック貯留部331および左側に隣接する搬送装置20から、容器T1を保持するラック100を受け入れ、受け入れたラック100を右方向に搬送し、右側に隣接する搬送装置20または供給装置40に搬出する。
【0066】
図6は、測定装置10の内部の構成を模式的に示す平面図である。図6には、便宜上、搬送装置20の第2搬送路321が合わせて示されている。
【0067】
測定装置10は、攪拌機構410と、前後移送部420と、読取部430と、ピアサ441と、ピアサ駆動部442と、を備える。
【0068】
攪拌機構410は、前後方向から容器110を挟む一対の把持部514を備える。攪拌機構410は、取出位置323に位置付けられた容器110を一対の把持部514により把持した状態で、一対の把持部514を上下駆動機構411(図7参照)により上方向に移動させ、回転機構413(図7参照)により容器110が傾くように回転させる。これにより、容器110内の検体が攪拌される。
【0069】
前後移送部420は、容器110を鉛直に保持可能な保持部421と、保持部421を支持し前後方向に延びた板部材422と、板部材422を前後方向に移動させるための機構と、を備える。攪拌機構410による攪拌動作が終了すると、平面視において保持部421が取出位置323に重なるよう、板部材422が前方に移送される。この状態で、攪拌機構410は、一対の把持部514を下方向に移動させ、把持した容器110を保持部421にセットする。その後、保持部421が後方に移送され、読取部430の読取位置433に位置付けられる。
【0070】
読取部430は、回転機構431とバーコードリーダ432を備える。回転機構431は、読取位置433の容器110を回転させるための主動ローラ431aと、読取位置433の容器110を主動ローラ431aとの間で挟むための一対の従動ローラ431bと、を備える。容器110が読取位置433に位置付けられると、容器110が回転機構431により回転され、バーコードリーダ432により容器110のバーコードラベル112が読み取られる。
【0071】
その後、保持部421がさらに後方に移送され、保持部421に保持された容器110が、ピアサ441の真下に位置付けられる。ピアサ441は、上下方向に延びた剛性の高い吸引管である。ピアサ駆動部442は、ピアサ441を上下方向に移動させる。容器110がピアサ441の真下に位置付けられると、ピアサ441の下端が容器110の蓋部113を貫通するよう、ピアサ441が下方向に移動される。ピアサ441は、その先端が容器110の底部付近まで下降される。そして、容器110内の検体が、ピアサ441を介して吸引される。
【0072】
容器110に対する検体の吸引が終わると、容器110は、前後移送部420により平面視において取出位置323と重なる位置まで前方に搬送され、この位置で攪拌機構410により把持されて上方向に持ち上げられる。そして、保持部421および板部材422が後方に移送され、攪拌機構410は、ラック100の元の保持部101に容器110を戻す。
【0073】
図7、8は、攪拌機構410の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
【0074】
図7に示すように、攪拌機構410は、上下駆動機構411と、把持機構412と、回転機構413と、を備える。回転機構413は、把持機構412と接触しない位置に設置される。
【0075】
上下駆動機構411は、把持機構412を上下方向に移動させる。上下駆動機構411は、モータ501と、プーリ502、503と、ベルト504と、レール505と、を備える。
【0076】
モータ501は、ステッピングモータにより構成されている。プーリ502は、モータ501の前後方向に延びた軸に設置されている。プーリ503は、プーリ502の下方向に設置されている。ベルト504は、プーリ502、503に接続されており、モータ501の駆動に応じて上下に移動する。レール505は、上下方向に延びている。
【0077】
把持機構412は、接続部材511と、基板512と、軸513と、一対の把持部514と、バネ515と、シリンダ516と、板部材517と、透過型センサ518と、磁石519と、金属部材520と、を備える。
【0078】
接続部材511の左端は、ベルト504に固定されている。ベルト504が上下方向に移動すると、接続部材511は、レール505に支持されながらレール505に沿って上下方向に移動する。接続部材511は、基板512に固定されている。
【0079】
軸513は、前後方向に延び、基板512に固定されている。一対の把持部514は、軸513を中心として回転可能となるよう軸513に設置されている。後方側の把持部514は、前後方向に移動しないよう軸513に設置されており、前方側の把持部514は、前後方向に移動するよう軸513に設置されている。バネ515の両端は、一対の把持部514が対向する2つの面に設置されている。バネ515は、一対の把持部514が互いに離れる方向に一対の把持部514に力を付与している。
【0080】
シリンダ516は、ロッド516aを前後方向に駆動させる。板部材517は、ロッド516aの左端および前方側の把持部514の上端に固定されている。図7の状態からロッド516aが後方に移動することにより、前方側の把持部514が後方に移動し、一対の把持部514によりラック100に保持された容器110が把持される。他方、容器110が把持された状態から、ロッド516aが前方に移動することにより、前方側の把持部514が前方に移動し、図7に示すように、一対の把持部514による容器110の把持状態が解除される。
【0081】
ロッド516aが前後方向に移動すると、板部材517の上端が前後方向に移動する。一対の把持部514の間に容器110がない場合、上記の把持動作が行われると、板部材517の上端が透過型センサ518の間に位置付けられる。これにより、一対の把持部514により容器110が把持されなかったことが検知される。
【0082】
磁石519は、基板512の下端に設置されている。金属部材520は、磁石519に引き寄せられる材料であり、たとえば、鉄により構成される。金属部材520は、後方側の把持部514の左側面(図9参照)に設置されている。図7に示すように、一対の把持部514が上下方向に延びる通常状態において、磁石519と金属部材520とが接触した状態となる。
【0083】
一対の把持部514により容器110が把持された状態で、モータ501が駆動され、把持機構412が上方向に移動されると、図8に示すように、容器110がラック100から取り出される。
【0084】
図8に示すように、回転機構413は、モータ521と当接部材522を備える。モータ521は、ステッピングモータにより構成される。モータ521の軸521aは、前後方向に延びており、把持機構412の軸513の延長上に位置する。当接部材522は、モータ521の軸521aに対して固定されている。モータ521が駆動されることにより、当接部材522が、軸521aを中心として回転する。
【0085】
容器110の攪拌が行われる場合、図8に示すように、一対の把持部514により容器110が把持された状態で上方に移動される。このとき、当接部材522は、容器110の左側に位置付けられている。そして、図8に示す状態で、モータ521が駆動されると、容器110の胴部111が当接部材522により押されることで、容器110が軸513を中心として転倒され、容器110内の検体が攪拌される。
【0086】
図9は、容器110に対して行われる転倒攪拌を模式的に示す側面図である。
【0087】
以下、鉛直状態にある容器110の左側面に当接部材522が接触する場合の当接部材522の位置を、「初期位置」と称する。容器110の長手方向が上下方向に向いている場合の容器110の状態を、「鉛直状態」と称する。容器110が鉛直状態から軸513まわりに回転した状態を、「転倒状態」と称する。
【0088】
容器110が鉛直状態にあるときに、当接部材522が初期位置から軸513まわりに回転すると、金属部材520が磁石519から離れ、当接部材522により胴部111が押される。これにより、容器110は、軸513まわりに回転し、鉛直状態から転倒状態へと変化する。
【0089】
また、容器110が転倒状態にあるときに、当接部材522が初期位置に向かって軸513まわりに回転すると、容器110は当接部材522に支えられながら、鉛直状態に向かって軸513まわりに回転する。容器110が鉛直状態まで戻されると、金属部材520が磁石519の磁力により磁石519に接触する。このとき、金属部材520が磁石519に引き寄せられ、勢いよく磁石519に衝突するため、把持部514を介して容器110に衝撃が付与される。
【0090】
ここで、鉛直状態に対する容器110の角度を、以下「転倒角度」と称する。容器110内の検体の攪拌においては、容器110の転倒角度がθ1となる状態と、容器110の転倒角度がθ2となる状態との間で、容器110が繰り返し回転させられる。転倒角度θ1、θ2は、容器110に収容された検体が、精度管理検体と被検者検体のいずれであるかに基づいて異なっている。転倒角度θ1、θ2については、追って図15を参照して説明する。
【0091】
図10は、読取部430の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
【0092】
読取部430は、上述したように、回転機構431とバーコードリーダ432を備える。回転機構431は、主動ローラ431aと、一対の従動ローラ431bと、モータ601と、プーリ602、603と、ベルト604と、軸605と、モータ611と、プーリ612、613と、ベルト614と、基板615と、軸616と、を備える。
【0093】
モータ601は、ステッピングモータにより構成されている。プーリ602は、モータ601の上下方向に延びた軸に設置されている。プーリ603は、プーリ602の右方向に設置されている。ベルト604は、プーリ602、603に接続されている。軸605は、上下方向に延びており、プーリ603に接続されている。軸605の下端には主動ローラ431aが固定されている。モータ601が駆動されると、ベルト604が左右に移動し、プーリ603、軸605および主動ローラ431aが上下方向を回転軸として回転する。
【0094】
モータ611は、ステッピングモータにより構成されている。プーリ612は、モータ611の上下方向に延びた軸に設置されている。プーリ613は、プーリ612の右方向に設置されている。ベルト614は、プーリ612、613に接続されている。基板615は、ベルト614に固定されている。軸616は、上下方向を回転軸として回転可能となるよう、基板615の下端に設置されている。従動ローラ431bは、軸616に設置されている。モータ611が駆動されると、ベルト614が左右に移動し、従動ローラ431bが左右に移動する。
【0095】
保持部421に保持された容器110が、読取位置433(図6参照)に位置付けられると、モータ611が駆動され、一対の従動ローラ431bが容器110に向かって右方向に移動される。これにより、主動ローラ431aと一対の従動ローラ431bとにより、容器110の胴部111が挟まれる。この状態で、モータ601が駆動されると、主動ローラ431aが回転する。これにより、容器110が、保持部421に保持されながら周方向に回転する。そして、バーコードリーダ432が、容器110のバーコードラベル112を読み取る。
【0096】
このように容器110が周方向に回転すると、バーコードラベル112がバーコードリーダ432の正面に位置付けられるため、バーコードリーダ432により確実にバーコードラベル112を読み取ることができる。
【0097】
図11は、供給装置40の構成を示すブロック図である。
【0098】
供給装置40は、制御部201と、記憶部202と、搬出部41と、保冷部43と、加温部44と、移送部210と、バーコードユニット220と、バーコードリーダ230と、通信部203と、を備える。
【0099】
搬出部41は、搬出部41においてラック100を移送するための機構のステッピングモータ等を含む。通信部203は、たとえば、イーサネットにより集線装置70に接続される。
【0100】
制御部201は、例えばCPUによって構成されている。制御部201は、記憶部202に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、ハードウェアの各部を制御する。記憶部202には、精度管理測定を自動的に実行するスケジュールが登録されている。スケジュールは、例えば曜日ごとに時間を指定して登録したり、特定の日時を指定して登録したりすることができる。スケジュールは、さらに、測定装置10によって測定する精度管理検体の種類の指定を含む。
【0101】
制御部201は、記憶部202に登録されたスケジュールにしたがって、指定された日時に精度管理測定が自動的に開始されるように精度管理検体を測定装置10に供給するよう各部を制御する。具体的には、制御部201は、スケジュールとして登録された指定日時の所定時間前(例えば30分前)になると、移送部210を制御して、保冷部43に保管されている容器T1のうち指定された種類の精度管理検体の容器T1を移送部210によって取り出す。移送部210は、制御部201の制御の下、取り出した容器T1を加温部44にセットし、所定時間昇温したのち、ラック100にセットする。搬出部41は、制御部201の制御の下、ラック100を測定装置10に向けて搬送する。ラック100は、搬送制御装置60の制御下で搬送装置20によって測定装置10に搬送され、ラック100にセットされた精度管理検体が測定される。このようにして精度管理検体の自動測定が実行される。
【0102】
図12は、測定装置10の構成を示すブロック図である。
【0103】
測定装置10は、攪拌機構410と、前後移送部420と、読取部430と、液体移送部401と、試料調製部402と、測定部403と、通信部404と、を備える。
【0104】
液体移送部401は、測定装置10内において、流路に圧力を付与して流路内の液体を移送するためのポンプやバルブなどを含む。液体移送部401は、容器110内に挿入されたピアサ441を介して検体を吸引し、吸引した検体を試料調製部402に移送する。試料調製部402は、検体および試薬を混合するためのチャンバを含む。液体移送部401は、試料調製部402において検体および試薬を混合して得られた測定試料を測定部403に送る。
【0105】
測定部403は、電気抵抗式検出部と、ヘモグロビン検出部と、光学式検出部と、を含む。電気抵抗式検出部は、シースフローDC検出法により血球の測定を行う。ヘモグロビン検出部は、SLS-ヘモグロビン法によりヘモグロビンの測定を行う。光学式検出部は、フローサイトメトリー法により血球の測定を行う。測定部403は、測定試料を測定して測定データを取得する。
【0106】
通信部404は、たとえば、USBインターフェースにより構成され、対応する制御装置30に接続される。測定部403で得られた測定データは、通信部404を介して制御装置30に送信される。
【0107】
上述したように、容器110内の検体は、測定装置10において吸引される前に、攪拌機構410により攪拌される。精度管理検体を収容する容器110(容器T1)は、上述したように、供給装置40の保管庫42内で保冷された状態で保管されているため、容器T1内で血球成分が凝集して沈殿していることがある。特に、米国特許6221668号に開示されるような擬似血小板を含む精度管理検体では、擬似血小板が天然の血小板よりも凝集しやすく、ほぐれ難い。精度管理検体が被検者検体と同様に攪拌されると、精度管理検体の攪拌が不十分となり、この容器T1から精度管理検体を吸引して測定が行われると、精度管理検体の測定結果が適正に得られなくなる惧れがある。
【0108】
攪拌不良により測定結果の精度が低下する一例として、例えば、上述したような擬似血小板を含む精度管理検体では、擬似血小板が凝集したまま測定されることにより、それらの擬似血小板が通常の血小板よりも大きい他の細胞、例えば赤血球として検出されてしまい、血小板が低値となることがありえる。攪拌不良により測定結果の精度が低下する他の例は、容器T1内の精度管理検体の濃度が均一でない状態で精度管理検体が吸引されて測定されることにより、精度管理検体の測定結果が表示値と乖離することである。
【0109】
測定装置10は、ピアサ441の先端を容器T1の底部付近まで下降させてから精度管理検体を吸引する。容器T1内の濃度が不均一である場合、容器T1の底部側は血球成分の濃度が高く、液面側は血球成分の濃度が低い。そのため、底部付近にピアサ441の先端が位置付けられた状態で吸引されると、表示値に比べて血球成分の濃度が高くなり、正しい測定結果が得られない。
【0110】
そこで、実施形態1では、被検者検体を攪拌するための第2動作モードと異なる第1動作モードによって精度管理検体を攪拌する。精度管理検体を攪拌するための第1動作モードとして、被検者検体に比べて混ざりにくい精度管理検体を十分に混合できるような条件を設定することができる。より詳しくは、実施形態1では、第1動作モードは第2動作モードと比較して、攪拌が強化されている。強化とは、例えば、同じロットの2つの精度管理検体を用意し、第1動作モードおよび第2動作モードによってそれぞれ攪拌したとき、第1動作モードで攪拌した方が第2動作モードで攪拌した方に比べて、攪拌後の容器内の成分濃度がより均一に近い状態となることをいう。これにより、精度管理検体を十分に攪拌でき、精度管理検体の測定結果を正常に取得できる。第1動作モードおよび第2動作モードについては、追って図15を参照して説明する。
【0111】
以下、精度管理検体を、被検者検体を攪拌するための第2動作モードと異なる第1動作モードで攪拌して測定する一連の流れについて説明する。
【0112】
図13は、実施形態1の検体分析装置1aによる精度管理検体の測定の流れを説明したフローチャートである。
【0113】
ステップS1において、搬送装置20は、精度管理検体の容器T1を保持したラック100を受け入れる。具体的には、供給装置40によって精度管理検体の容器T1がセットされたラック100が第1搬送路301を介して搬送装置20に送り込まれると、搬送装置20は、このラック100を第1ラック貯留部311に受け入れる。
【0114】
ステップS2において、測定装置10は、精度管理検体を収容した容器T1を第1動作モードにより攪拌する。具体的には、第1ラック貯留部311に受け入れたラック100が搬送装置20によって搬送され、精度管理検体を収容した容器T1が取出位置323に位置付けられる。測定装置10は、攪拌機構410を駆動して、取出位置323にある容器T1をラック100から取り出す。測定装置10は、攪拌機構410を駆動して、取り出した容器T1に対して第1動作モードで攪拌を行う。
【0115】
ステップS3において、測定装置10は、第1動作モードで攪拌された精度管理検体をピアサ441によって吸引し、測定する。具体的には、測定装置10は、液体移送部401を駆動して、吸引した精度管理検体と所定の試薬とを混合して測定試料を調製する。測定装置10は、測定部403を駆動して、調製した測定試料を測定する。そして、制御装置30が、測定データを解析する。
【0116】
<攪拌のパラメータ>
精度管理検体を収容する容器T1を攪拌するための第1動作モードは、被検者検体を収容する容器T2を攪拌するための第2動作モードに比べて、攪拌が強化されるようなパラメータが設定される。攪拌のパラメータは、(1)攪拌回数、(2)転倒速度、(3)転倒角度、(4)衝撃の繰り返し付与の有無、(5)姿勢変更の有無、の5つの要素を含む。
【0117】
(1)攪拌回数
攪拌回数は、攪拌機構410によって容器110を転倒攪拌する回数をいう。転倒角度がθ1からθ2に上昇し、再びθ1まで戻るまでの転倒動作が攪拌1回にあたる。容器110がθ2の転倒状態まで回転すると、容器110内の検体が底部から蓋部113側に移動する。一般的に、血液検体は静置されると血球成分(赤血球、白血球、血小板)が沈降して、血球成分と液体成分(血漿)とに上下方向に分離する。転倒攪拌することによって、沈降した血球成分が血漿と混和され、検体内の血球成分の濃度が均一化される。第1動作モードでは、第2動作モードよりも攪拌回数を多くすることができる。攪拌回数が多いと、液体成分が底部に沈降した血球成分を繰り返し押し流すように動くため、血球成分が底部からはがれやすくなり、液体成分と血球成分の混和が促進される。さらに、液体成分に混ざった血球成分に繰り返し外力が加わるため、凝集した血球成分が解れ、混和が促進される。そのため、第1動作モードでは、攪拌回数を多くすることにより、精度管理検体であっても適切に混和できる。好ましくは、被検者検体を攪拌するための第2動作モードにおける攪拌回数は10回以下(好ましくは6~10回)であるのに対して、第1動作モードにおける攪拌回数は第2動作モードの攪拌回数の少なくとも2倍であり、より好ましくは3倍以上であり、さらに好ましくは5倍以上である。
【0118】
(2)転倒速度
転倒速度は、攪拌機構410によって容器110が回転するときの回転移動の速度をいう。速度は、θ1とθ2の間での最大速度であってもよいし、平均速度であってもよい。転倒速度は、モータ521の軸521aの回転速度によって制御される。転倒速度は、容器110の上昇時すなわち転倒角度が大きくなる方向に容器110を回転させる場合と、容器110の下降時すなわち転倒角度が小さくなる方向に容器110を回転させる場合とで、異なる速度に設定されてもよい。第1動作モードでは、第2動作モードよりも転倒速度を高くすることができる。転倒速度が高いと、液体成分の容器110内での移動速度が速くなり、液体成分が底部に沈降した血球成分を押し流しやすくなる。また、液体成分の液面の揺れにより、凝集した血球成分が解れやすくなる。好ましくは、第1動作モードにおける転倒速度は、被検者検体を攪拌するための第2動作モードにおける転倒速度の少なくとも1.2倍であり、より好ましくは少なくとも1.4倍である。
【0119】
(3)転倒角度
転倒角度は、攪拌機構410によって容器110が回転したときの最も高い角度θ1と、最も低い角度θ2を意味する。第1動作モードでは、第2動作モードよりもθ2を低くすることで、振り幅を大きくすることができる。振り幅が大きいと、液体成分の容器内での移動量が大きくなり、混和が促進される。好ましくは、第1動作モードにおける転倒角度は、第2動作モードにおける転倒角度の少なくとも1.2倍であり、より好ましくは1.4倍である。後述の例では、第2動作モードの転倒角度が97.2°(θ1=47.8°、θ2=145°)であるのに対して、第1動作モードの転倒角度は140°(θ1=0°、θ2=145°)である。
【0120】
(4)衝撃の繰り返し付与
衝撃の付与とは、容器110を鉛直状態まで下げることにより、磁石519と金属部材520を接触させて容器110に衝撃を与えることをいう。容器110に衝撃が加わることにより、底部に沈降した血球成分がはがれやすくなる。また、凝集した血球成分に衝撃が加わることによりほぐれやすくなる。好ましくは、第1動作モードでは容器110に衝撃を繰り返し付与し、第2動作モードでは衝撃を繰り返して付与しない。
【0121】
具体的には、第2動作モードでは、8回の転倒攪拌の最後のサイクルにおいて、容器110を鉛直状態に戻すときに、磁石519と金属部材520を接触させて容器110に衝撃を与える。これにより、蓋部113の内側に付着した血液を落とし、ピアサ441が蓋部113を穿刺するときに血液が飛び出すことを抑制できる。一方、第1動作モードでは、50回の転倒攪拌のすべてのサイクルにおいて、容器110を鉛直状態に戻すことにより、繰り返し磁石519と金属部材520を接触させる。これにより、底部に沈降した血球成分がはがれ、凝集した血球成分がほぐされる。なお、第1動作モードにおける衝撃の付与回数は限定されず、少なくとも複数回衝撃が付与されればよい。また、第2動作モードにおける衝撃の付与は必須ではない。
【0122】
(5)姿勢変更
姿勢変更とは、攪拌処理中に容器110を周方向に回転することをいう。第1動作モードは、攪拌の途中で、容器110を周方向に回転させることを含み、第2動作モードは、攪拌の途中で、容器110を周方向に回転させることを含まない。図9に示すような転倒攪拌方式では、図14に模式的に示すように、上に持ち上げられたときに容器110の底部の下側に来る部分の血球成分が攪拌されずに残ってしまうことがある。そこで、攪拌処理の途中に容器110を周方向に180°回転させることで、図14に示すように、姿勢変更前において容器110の底部の下側に位置づけられていた血球成分を、容器110の底部の上側に位置づけることができる。姿勢変更後に再び転倒攪拌が行われることにより、容器110内において軸周りの偏った位置に、精度管理検体の成分が凝集して沈殿したままになることを抑制できる。なお、回転させる角度は180°でなくてもよく、他の角度、例えば、90°~270°の範囲内で任意に決定してもよい。
【0123】
図15は、第1および第2動作モードの攪拌パラメータの第1の設定例を示した表である。第1動作モード(精度管理検体)および第2動作モード(被検者検体)の攪拌パラメータは、以下のとおりである。
【0124】
(1)攪拌回数
・第1動作モード(精度管理検体):50回
・第2動作モード(被検者検体):8回
(2)転倒速度
・第1動作モード(精度管理検体):上昇時および下降時105rpm
・第2動作モード(被検者検体):上昇時および下降時73.5rpm
(3)転倒角度
・第1動作モード(精度管理検体):θ1=0°、θ2=145°
・第2動作モード(被検者検体):θ1=47.8°、θ2=145°
(4)衝撃の繰り返し付与
・第1動作モード(精度管理検体):あり
・第2動作モード(被検者検体):なし
(5)姿勢変更
・第1動作モード(精度管理検体):あり
・第2動作モード(被検者検体):なし
【0125】
図15の例では、(1)攪拌回数、(2)転倒速度、(3)転倒角度、(4)衝撃付与の有無、(5)姿勢変更の有無のすべての項目において、第2動作モードよりも第1動作モードの方が、攪拌力が強くなるパラメータが設定されている。このように動作モードを設定することで、被検者検体よりも混ざりにくい精度管理検体であっても適切に検体を混和できる。なお、ここでは(1)~(5)のすべての項目において第1動作モードを第2動作モードよりも攪拌力が強くなるパラメータを設定しているが、(1)~(5)の項目のうち一つ又は複数の項目のみを第1動作モードにおいて強化してもよい。例えば、第1動作モードと第2動作モードとで転倒速度や転倒角度が同じであってもよい。この場合、他のパラメータを強化することによって攪拌力を補ってもよい。例えば、攪拌回数を50回より増やしてもよい。
【0126】
図16は、図13のステップS2の第1動作モードの攪拌工程を示すフローチャートである。ここでは図15の攪拌パラメータが第1動作モードとして設定されている状態で、精度管理検体を攪拌する場合を説明する。
【0127】
ステップS101において、制御部31は、容器T1に対して25回の転倒攪拌が行われるよう攪拌機構410を制御する。まず、制御部31は、鉛直状態にある容器T1が105rpmの速度で145°まで回転するよう回転機構413のモータ521を制御する。容器T1の底部が蓋部113(頭部)よりも高い位置に来ることで、液体成分が底部から蓋部113側に向かって流れる。次に、制御部31は、容器T1が105rpmの速度で0°まで逆回転するよう回転機構413のモータ521を制御する。容器T1の底部が再び蓋部113よりも低い位置に来ることで、蓋部113側に流れた液体成分が再び底部側に流れる。この転倒動作で攪拌1回が完了する。制御部31は、この転倒攪拌の制御を25回繰り返す。
【0128】
続いて、ステップS102において、制御部31は、容器T1の姿勢が変更されるよう回転機構431(図6、10参照)を制御する。
【0129】
具体的には、図6を参照して、制御部31は、保持部421が取出位置323に位置付けられるよう前後移送部420を制御する。続いて、図7を参照して、制御部31は、把持部514により把持した容器T1が下降し、保持部421に容器T1がセットされるよう攪拌機構410のモータ501を制御する。制御部31は、2つの把持部514が離れるようシリンダ516を制御する。これにより容器T1の把持が解除される。制御部31は、把持部514が上方に退避するようモータ501を制御する。
【0130】
制御部31は、容器T1を保持した保持部421が読取位置433に位置付けられるよう前後移送部420を制御する。制御部31は、従動ローラ431bが容器T1に向かって移動し、容器T1の胴部111が主動ローラ431aと従動ローラ431bによって挟まれるよう回転機構431のモータ611を制御する。この状態で、制御部31は、主動ローラ431aが回転し、容器T1が周方向に、すなわち、容器T1の長手方向の軸周りに回転するようモータ601を制御する。周方向の回転角度は、たとえば180°である。回転が完了すると、制御部31は、従動ローラ431bが容器T1から離れるようモータ611を制御する。
【0131】
ステップS103において、制御部31は、容器T1に対して残りの25回の転倒攪拌の制御を行う。具体的には、制御部31は、容器T1を保持した保持部421が取出位置323に位置付けられるよう前後移送部420を制御する。このとき、保持部421に保持された容器T1は、ステップS102において保持部421にセットされたときの向きから180°回転した状態にある。制御部31は、保持部421に保持された容器T1が掴まれて上方に引き上げられ、この容器T1に対して転倒攪拌が25回行われるよう攪拌機構410を制御する。ステップS102において180°回転されたことにより、容器T1は、ステップS101における状態から軸周りの向きが180°回転した状態で攪拌される。攪拌機構410により容器T1を掴む動作と、転倒攪拌の動作については上述のとおりである。攪拌が完了すると、制御部31は処理を図13のメインルーチンに戻す。
【0132】
<実施形態1の変更例1>
図17は、実施形態1の変更例1における処理を示すフローチャートである。図17の例では、図13の例と異なり、ラック100に保持された容器110の種類を検体IDに基づいて判別し、種類に応じて攪拌の動作モードを切り替えている。具体的には、検体IDに基づいて、容器110が精度管理検体を収容した容器T1であると判断した場合には容器T1を第1動作モードによって攪拌し、容器110が被検者検体を収容した容器T2であると判断した場合には容器T2を第2動作モードによって攪拌する。図17のフローチャートは、制御装置30の制御部31が、記憶部32に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、測定装置10および第2搬送機構20bを制御することで実現される。
【0133】
ラック100が第1搬送路301を介して搬送装置20に送り込まれると、ステップS11において、制御部31は、このラック100が第1ラック貯留部311に受け入れられるよう搬送装置20を制御する。ステップS12において、制御部31は、ラック100が第1ラック貯留部311および第2搬送路321上において搬送されるよう搬送装置20を制御し、ラック100のバーコードラベル102と、このラック100に保持された容器110のバーコードラベル112とが順に読み取られるよう読取部322を制御する。これにより、制御部31は、バーコードラベル102からラックIDを取得し、バーコードラベル112から検体IDを取得する。
【0134】
続いて、制御部は、ラック100に保持された全ての容器110に対して、順にステップS13~S21の処理を行う。
【0135】
ステップS13において、制御部31は、ステップS12で取得した検体IDに基づいて容器110の種類を判定する。すなわち、制御部31は、検体IDに基づいて、対象となる容器110が、精度管理検体を収容した容器T1および被検者検体を収容した容器T2のいずれであるかを判定する。なお、制御部31は、検体IDのみに基づいて容器110の種類を判定することに限らず、ラックIDに基づくラック100の種類と、検体IDに基づく容器110の種類とが一致する場合に、当該容器110を容器T1、T2の何れかに判定してもよい。
【0136】
対象となる容器110が精度管理検体を収容する容器110(容器T1)である場合、ステップS14において、制御部31は、取出位置323において、対象となる容器T1がラック100から取り出されるよう攪拌機構410を制御する。そして、ステップS15において、制御部31は、取り出された容器T1に対して第1動作モードで攪拌が行われるよう攪拌機構410を制御する。
【0137】
他方、対象となる容器110が被検者検体を収容する容器110(容器T2)である場合、ステップS16において、制御部31は、取出位置323において、対象となる容器T2がラック100から取り出されるよう攪拌機構410を制御する。そして、ステップS17において、制御部31は、取り出された容器T2に対して第2動作モードで攪拌が行われるよう攪拌機構410を制御する。
【0138】
ステップS15、S17において攪拌機構410による攪拌が終了すると、制御部31は、攪拌を行った容器110がピアサ441の真下まで移送されるよう前後移送部420を制御する。そして、ステップS18において、制御部31は、容器110内の検体が吸引されるようピアサ駆動部442および液体移送部401を制御する。
【0139】
ステップS19において、制御部31は、ステップS18において吸引が終了した容器110が、元のラック100の元の保持部101に戻されるよう前後移送部420および攪拌機構410を制御する。
【0140】
続いて、ステップS20において、制御部31は、ステップS18で吸引された検体と所定の試薬とが混合され測定試料が調製されるよう液体移送部401を制御する。また、ステップS20において、制御部31は、調製した測定試料が測定されるよう測定部403を制御し、測定により得られた測定データを解析する。そして、ステップS21において、制御部31は、ステップS20で行った解析の結果をホストコンピュータ2に送信する。ホストコンピュータ2は、表示端末からの要求に応じて解析結果を表示端末に送信する。表示端末は、精度管理検体の解析結果を一覧画面で表示し、被検者検体の解析結果を一覧画面で表示する。
【0141】
ステップS22において、制御部31は、ラック100に保持された全ての容器110についてステップS13~S19の処理が終了すると、このラック100が第2搬送路321の左端に搬送され、このラック100が第2ラック貯留部331に送り込まれるよう搬送装置20を制御する。こうして、1つのラック100についての制御部31の処理が終了する。
【0142】
なお、第2搬送路321において隣接する2つの測定装置10のうち、右側の測定装置10について上記処理が終了した場合、制御部31は、左側の測定装置10で測定を行う必要があるかを判定する。制御部31は、左側の測定装置10でも測定を行う必要があると判定すると、左側の測定装置10において、上記ステップS13~S19の処理を行う。
【0143】
こうして第2ラック貯留部331に送り込まれたラック100は、さらに測定装置10での測定が必要な場合、左隣りの搬送装置20に搬送される。測定装置10での測定が不要である場合、このラック100が精度管理検体を保持するラックであると、右方向に搬送され、右隣りの搬送装置20または供給装置40に搬送され、このラック100が被検者検体を保持するラックであると、左方向に搬送され、回収装置50に回収される。
【0144】
<実施形態1の変更例2>
図18は、変更例2に係る攪拌パラメータの第2の設定例を示した表である。第2の設定例では、上記実施形態1で示した第1の設定例とは異なり、精度管理検体の種類に応じて異なる攪拌パラメータを設定している。具体的には、第2の設定例では、第1動作モードはレベル1の精度管理検体に適用される第1動作モード1Aと、レベル2及びレベル3の精度管理検体のために設定された第1動作モード1Bとを含む。第1動作モード1Aと第1動作モード1Bは、以下のパラメータを含む。
【0145】
(1)攪拌回数
・動作モード1A、動作モード1B:50回
(2)転倒速度
・動作モード1A:上昇時105rpm、下降時120rpm
・動作モード1B:上昇時および下降時105rpm
(3)転倒角度
・動作モード1A:θ1=0°、θ2=145°
・動作モード1B:θ1=5°、θ2=145°
(4)衝撃の繰り返し付与
・動作モード1A:あり
・動作モード1B:なし
(5)姿勢変更
・動作モード1A、1B:あり
【0146】
上述したとおり、精度管理検体は濃度レベルに応じて3種類あり、精度管理検体の攪拌による混ざりやすさは濃度レベルに応じて異なるため、精度管理検体の種類に応じて最適な攪拌パラメータを設定することが好ましい。発明者らが検討したところ、濃度レベルの最も低いレベル1の精度管理検体が最も混ざりにくいことがわかった。そこで、第2の設定例では、レベル1の精度管理検体については転倒速度のうち下降時の速度を105rpmから120rpmに高めて、より急激な力が加わるようにして攪拌力を高めている。また、第2の設定例では、レベル1の精度管理検体については図15と同様に衝撃を付与する一方、レベル2とレベル3の精度管理検体については衝撃を付与していない。衝撃を付与することは特に血小板凝集を生じやすいレベル1の精度管理検体の攪拌を強化するうえで有効である一方、磁石519と金属部材520が繰り返し衝突することによって金属疲労が蓄積しうる問題がある。そこで、特に混ざりにくい種類であるレベル1の精度管理検体に対してのみ衝撃を付与することで、機械的な疲労を回避しつつ、濃度レベルの異なる複数種類の精度管理検体を適切に攪拌することができる。
【0147】
図19は、変更例2に係る、制御装置30による検体分析処理を示すフローチャートである。図19では、図17と比較して、ステップS13とステップS18の間に、容器110の種類がレベル1の精度管理検体を収容する容器T1の場合の処理を示すステップS31、32が追加され、容器110の種類がレベル2、3の精度管理検体を収容する容器T1の場合の処理を示すステップS33、S34が追加されている。以下、ステップS31~S34について説明する。
【0148】
制御部31は、ステップS13において、対象となる容器110がレベル1の精度管理検体を収容する容器T1であると判定すると、ステップS31において、対象となる容器T1がラック100から取り出されるよう攪拌機構410を制御する。そして、ステップS32において、制御部31は、取り出された容器T1に対して、図18に示した動作モード1Aで攪拌が行われるよう攪拌機構410を制御する。このとき、制御部31は、攪拌途中で姿勢が変更されるよう前後移送部420および回転機構431を制御する。
【0149】
制御部31は、ステップS13において、対象となる容器110がレベル2またはレベル3の精度管理検体を収容する容器T1であると判定すると、ステップS33において、対象となる容器T1がラック100から取り出されるよう攪拌機構410を制御する。そして、ステップS34において、制御部31は、取り出された容器T1に対して、図18に示した動作モード1Bで攪拌が行われるよう攪拌機構410を制御する。この場合も、制御部31は、攪拌途中で姿勢が変更されるよう前後移送部420および回転機構431を制御する。
【0150】
<実施形態1の変更例3>
上記実施形態1では、供給装置40の保管庫42から取り出された容器T1が、複数の測定装置10に順に供給され、各測定装置10で精度管理検体の測定が行われる場合がある。この場合、上記実施形態1によれば、精度管理検体は常に第1動作モードで攪拌される。しかしながら、これに限らず、精度管理検体が保管庫42から取り出された後、最初に搬送される測定装置10では第1動作モードで攪拌が行われ、その後に搬送される測定装置10では第2動作モードで攪拌が行われてもよい。
【0151】
図20は、実施形態1の変更例3に係る、制御装置30による検体分析処理を示すフローチャートである。図20では、図17と比較して、ステップS15に代えて、ステップS111~S113が追加されている。以下、この部分について説明する。
【0152】
ステップS111において、制御部31は、対象となる容器T1について、今回の攪拌が、保管庫42から取り出された後、最初の攪拌であるか否かを判定する。具体的には、制御部31は、ステップS12(図17参照)で読み取った対象となる検体IDに基づいて、搬送制御装置60に、対象となる容器T1が保管庫42から取り出された後にこの容器T1に対して攪拌処理が実行された回数(以下、「攪拌カウント値」という)を問い合わせる。搬送制御装置60への問い合わせは、第1搬送機構20aおよび集線装置70を介して行われる。
【0153】
搬送制御装置60は、検体分析システム1内の容器T1について、どの搬送経路上にあるかを示す位置情報と共に、保管庫42から取り出された後、測定装置10で攪拌が行われた回数を保持している。搬送制御装置60は、容器T1に対して1台の測定装置10でステップS15(図17参照)が実行されると、この容器T1について攪拌カウント値を1カウントアップする。また、搬送制御装置60は、容器T1が保管庫42に戻されると、この容器T1の攪拌カウント値を0に設定する。
【0154】
ステップS111において、制御部31は、対象となる容器T1の攪拌カウント値が0である場合、今回の攪拌が、保管庫42から取り出された後、最初の攪拌であると判定する。また、ステップS111において、制御部31は、対象となる容器T1の攪拌カウント値が1以上である場合、今回の攪拌が、保管庫42から取り出された後、最初の攪拌ではないと判定する。
【0155】
今回の攪拌が最初の攪拌である場合、ステップS112において、制御部31は、図17のステップS15と同様、容器T1に対して第1動作モードで攪拌が行われるよう攪拌機構410を制御する。他方、今回の攪拌が最初の攪拌でない場合、ステップS113において、制御部31は、容器T1に対して第2動作モードで攪拌が行われるよう攪拌機構410を制御する。
【0156】
なお、ステップS113において第2動作モードで攪拌することは一例であって、これに限定されない。ステップS113における攪拌は、第2動作モードの攪拌パラメータと同一でなくてもよく、第1動作モードにおける攪拌パラメータよりも弱ければよい。
【0157】
実施形態1の変更例3によれば、測定装置10は、第1動作モードで攪拌済みの精度管理検体を再度、測定前に攪拌する場合、第1動作モードによる攪拌より弱い攪拌(たとえば、第2動作モードによる攪拌)で精度管理検体の攪拌を行う。この構成によれば、第1動作モードによる攪拌が連続的に行われることにより、精度管理検体に過度のダメージが付与されることを回避できる。また、処理効率を高めながら精度管理検体を十分に攪拌できる。たとえば、弱い攪拌として第2動作モードによる攪拌が行われる場合、第1動作モードによる攪拌と比較して、攪拌回数、攪拌速度および攪拌角度が小さく、姿勢変更が行われない。したがって、2回目以降の攪拌が第1動作モードによる攪拌より弱く行われることにより、第1動作モードよりも攪拌に要する時間を短縮でき、かつ、1回目に行われた第1動作モードに基づく攪拌と合わせて、精度管理検体を十分に攪拌できる。
【0158】
<実施形態1の変更例4>
上記実施形態1の変更例3では、対象となる容器T1について、今回の攪拌が最初の攪拌ではない場合、ステップS113において、第1動作モードより弱い固定のパラメータにしたがって攪拌が行われた。しかしながら、これに限らず、今回の攪拌が最初の攪拌でない場合、第1動作モードによる攪拌からの経過時間に応じて、パラメータが変更されてもよい。
【0159】
図21は、実施形態1の変更例4に係る、制御装置30による検体分析処理を示すフローチャートである。図21では、図20と比較して、ステップS113に代えて、ステップS121、S122が追加されている。以下、この部分について説明する。
【0160】
今回の攪拌が最初の攪拌でない場合、ステップS121において、制御部31は、ステップS112において既に行われた第1動作モードによる攪拌からの経過時間を取得し、取得した経過時間に応じたパラメータを決定する。
【0161】
具体的には、制御部31は、ステップS12(図17参照)で読み取った対象となる検体IDに基づいて、搬送制御装置60に、第1動作モードによる攪拌からの経過時間を問い合わせる。搬送制御装置60は、検体分析システム1内の容器T1について、保管庫42から取り出されてからの経過時間とともに、測定装置10で攪拌が行われたタイミングを保持している。測定装置10で攪拌が行われたタイミングとは、測定装置10による測定直前に、読取部322(図5参照)で対象となる容器T1のバーコードラベル112が読み取られたタイミングである。測定装置10は、バーコードラベル112を読み取ったタイミングを、逐一搬送制御装置60に送信している。
【0162】
搬送制御装置60は、制御部31から経過時間の問い合わせを受け付けると、第1動作モードによる攪拌のタイミング(保管庫42から取り出されて最初に行われた攪拌のタイミング)から、今回の攪拌のタイミング(直前に読取部322でバーコードラベル112が読み取られたタイミング)までの時間を算出し、制御部31に送信する。ステップS121において、制御部31は、取得した経過時間に応じた攪拌パラメータを決定する。この場合の攪拌パラメータは、上記第2動作モードと比較して、たとえば、図22に示すように攪拌回数が変更される。
【0163】
図22は、ステップS121で決定される攪拌回数を模式的に示すグラフである。
【0164】
第1動作モードによる攪拌から所定の時間Tthが経過するまでの間、攪拌回数はN1とされる。N1は、たとえば、被検者検体に関する第2動作モードの攪拌回数と同じ8回である。第1動作モードによる攪拌から所定の時間Tthが経過すると、経過時間に応じて決定する攪拌回数が大きくなる。
【0165】
図21に戻り、制御部31は、ステップS121において攪拌パラメータを決定すると、ステップS122において、決定した攪拌パラメータで容器T1内の精度管理検体が攪拌されるよう攪拌機構410を制御する。
【0166】
実施形態1の変更例4によれば、測定装置10は、第1動作モードで攪拌済みの精度管理検体を再度、測定前に攪拌する場合、第1動作モードによる攪拌からの経過時間に応じた攪拌パラメータで精度管理検体の攪拌を行う。容器T1内の精度管理検体は、攪拌が行われた後、時間が経過するに従って沈殿する。したがって、経過時間が短い場合には攪拌の強度を低くし、経過時間が長い場合には攪拌の強度を高めることにより、直前に行う精度管理検体の攪拌を効率よく行うことができ、精度管理検体に過度のダメージが付与されることを回避できる。
【0167】
なお、ステップS121で経過時間に応じて決定される攪拌パラメータは、上記第2動作モードのパラメータと比較して、攪拌回数のみが変更された条件であったが、これに限らず、攪拌回数、攪拌速度、攪拌角度、衝撃の付与および姿勢変更の少なくとも1つ以上のパラメータが変更されてもよい。
【0168】
また、図22では、第1動作モードによる攪拌から所定の時間Tthが経過すると、経過時間に応じて決定される攪拌回数が徐々に大きくなったが、所定の時間Tthが経過すると、N1よりも大きい、所定の攪拌回数N2に設定されてもよい。
【0169】
<実施形態1の変更例5>
上記実施形態1の変更例4では、第1動作モードによる攪拌からの経過時間に応じて攪拌パラメータが変更されたが、これに限らず、容器T1内の精度管理検体の残量に応じて、攪拌パラメータが変更されてもよい。
【0170】
図23は、実施形態1の変更例5に係る、制御装置30による検体分析処理を示すフローチャートである。図23では、図21と比較して、ステップS121に代えて、ステップS131が追加されている。以下、この部分について説明する。
【0171】
今回の攪拌が最初の攪拌でない場合、ステップS131において、制御部31は、対象となる容器T1内の精度管理検体の残量を取得し、取得した残量に応じた攪拌パラメータを決定する。具体的には、制御部31は、ステップS12(図17参照)で読み取った対象となる検体IDに基づいて、搬送制御装置60に、この容器T1の残量を問い合わせる。搬送制御装置60は、供給装置40から搬送された容器T1の残量をあらかじめ取得しており、制御部31から残量の問い合わせを受け付けると、対応する容器T1の残量を制御部31に送信する。
【0172】
ステップS131において、制御部31は、取得した残量に応じた攪拌パラメータを決定する。この場合の攪拌パラメータは、上記第2動作モードの攪拌のパラメータと比較して、たとえば、図24に示すように攪拌回数が変更されている。
【0173】
図24は、ステップS131で決定される攪拌回数を模式的に示すグラフである。
【0174】
残量が閾値R1以上の間、残量の減少に応じて、決定される攪拌回数が少なくなる。残量が閾値R1以下になると、攪拌回数は一定のN1とされる。N1は、たとえば、被検者検体に関する第2動作モードの攪拌回数と同じ8回である。
【0175】
実施形態1の変更例5によれば、測定装置10は、第1動作モードで攪拌済みの精度管理検体を再度、測定前に攪拌する場合、容器T1内の精度管理検体の残量に応じた攪拌パラメータで精度管理検体の攪拌を行う。容器T1内の精度管理検体は、残量が少なくなると、同じ攪拌パラメータでも攪拌が進むようになる。したがって、残量が少ない場合には攪拌の強度を低くし、残量が多い場合には攪拌の強度を高めることにより、直前に行う精度管理検体の攪拌を効率よく行うことができ、精度管理検体に過度のダメージが付与されることを回避できる。
【0176】
なお、ステップS131で残量に応じて決定される攪拌パラメータは、上記第2動作モードの攪拌のパラメータと比較して、攪拌回数のみが変更されていたが、これに限らず、攪拌回数、攪拌速度、攪拌角度、衝撃の付与および姿勢変更の少なくとも1つ以上のパラメータが変更されてもよい。
【0177】
また、容器T1内の精度管理検体の残量は、実際に容器T1内に残った精度管理検体の体積や重さに限らず、残り何回の測定が可能かを示す残テスト数であってもよい。また、ステップS131において、残量に代えて、使用量や既に行われたテスト数に基づいて、攪拌パラメータが決定されてもよい。
【0178】
また、図24では、残量が閾値R1以上の間、残量の減少に応じて、決定される攪拌回数が徐々に少なくなったが、所定の閾値R1以上の間、N1よりも大きい、所定の攪拌回数N2に設定されてもよい。
【0179】
実施形態1の変更例4、5では、経過時間や残量に応じて攪拌回数が変更されたが、これに限らず、測定装置10が設置された場所の温度、すなわち測定装置10の外部温度に応じて、攪拌回数が変更されてもよい。外部温度が低くなると、容器T1内の精度管理検体が凝集し沈殿することが想定される。したがって、外部温度が低い場合には、決定する攪拌回数を大きくし、外部温度が高い場合には、決定する攪拌回数を小さくしてもよい。これにより、直前に行う精度管理検体の攪拌を効率よく行うことができ、精度管理検体に過度のダメージが付与されることを回避できる。また、外部温度に応じて決定される攪拌パラメータも、攪拌回数、攪拌速度、攪拌角度、衝撃の付与、および姿勢変更の少なくとも1つ以上のパラメータが変更されてもよい。
【0180】
<実施形態2>
実施形態1では、第1動作モードに基づく精度管理検体の攪拌は、測定装置10においてのみ行われた。これに対し、実施形態2では、測定装置10において精度管理検体の攪拌が行われることに加えて、精度管理検体の攪拌が供給装置40においても行われる。実施形態2の他の制御および他の構成は、実施形態1と同様である。
【0181】
図25は、実施形態2に係る、第1動作モードおよび第2動作モードを詳細に示す図である。
【0182】
供給装置40の保管庫42から取り出され、最初に行われる攪拌を、以下「予備攪拌」と称する。実施形態2では、予備攪拌は供給装置40で行われる。実施形態2の第1動作モードによる攪拌は、予備攪拌と、予備攪拌のあと測定装置10で測定の直前に行われる攪拌と、を含む。第1動作モードに含まれる供給装置40による予備攪拌のパラメータは、実施形態1の第1動作モードにおける攪拌のパラメータと同様であり、第1動作モードに含まれる測定装置10による攪拌のパラメータは、実施形態1の第2動作モードによる攪拌のパラメータと同様である。すなわち、実施形態2の第1動作モードと第2動作モードは、予備攪拌の有無において異なっている。
【0183】
容器T1が供給装置40から搬出された後、この容器T1内の精度管理検体が2以上の測定装置10で測定される場合、いずれの測定装置10においても、第2動作モードによって攪拌が行われる。これにより、最初に精度管理検体の測定を行った測定装置10、および、その後に精度管理検体の測定を行った測定装置10のいずれにおいても、予備攪拌とともに、測定装置10における測定直前の攪拌が行われることになるため、精度管理検体が十分に攪拌されることになる。
【0184】
図26は、実施形態2に係る、供給装置40の詳細な構成を示す平面図である。
【0185】
実施形態2の供給装置40は、図4に示す構成と比較して、回転機構45と攪拌機構46を追加的に備える。
【0186】
回転機構45は、攪拌機構46による攪拌の途中で、容器T1を周方向に回転させる。回転機構45は、容器T1を鉛直に保持可能な保持部45aと、主動ローラ45bと、一対の従動ローラ45cと、を備える。回転機構45は、図10に示した回転機構431と略同様の構成を有する。攪拌機構46は、保管庫42から取り出された容器T1内の精度管理検体を攪拌する。攪拌機構46は、一対の把持部46aを備える。回転機構45および攪拌機構46の構成については、追って図27を参照して説明する。
【0187】
保管庫42内の容器T1が測定される場合、移送部210は、保管庫42内の容器T1を、加温部44の保持部44bに移送し、加温部44において、容器T1は常温に戻される。続いて、移送部210は、容器T1を回転機構45の保持部45aにセットする。攪拌機構46は、保持部45aにセットされた容器T1を把持して持ち上げ、図9と同様に転倒攪拌を行う。攪拌機構46は、攪拌の途中で、容器T1を保持部45aにセットする。回転機構45は、主動ローラ45bおよび従動ローラ45cにより容器T1を周方向に回転させ、容器T1の周方向の向きを変更する。その後、攪拌機構46は、保持部45aにセットされた容器T1を把持して持ち上げ、再度転倒攪拌を行い、保持部45aにセットする。移送部210は、保持部45aに保持された容器T1を、前方位置233に位置付けられたラック100に移送する。
【0188】
図27は、回転機構45および攪拌機構46の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
【0189】
回転機構45は、モータ701と、主動ローラ45bと、モータ711と、プーリ712、713と、ベルト714と、基板715と、一対の従動ローラ45cと、を備える。
【0190】
モータ701が駆動されると、モータ701の軸に接続された主動ローラ45bが上下方向を回転軸として回転する。モータ711が駆動されると、ベルト714および基板715が左右に移動し、一対の従動ローラ45cが左右に移動する。保持部45aに容器T1が保持された状態で、一対の従動ローラ45cが左方向に移動することにより、主動ローラ45bと一対の従動ローラ45cにより、容器110の胴部111が挟まれる。この状態で主動ローラ45bが回転されることにより、容器T1が周方向に回転される。
【0191】
攪拌機構46は、上下駆動部721と、左右駆動部722と、攪拌部730と、を備える。
【0192】
上下駆動部721は、左右駆動部722を上下方向に移動させるための機構である。左右駆動部722は、攪拌部730を左右方向に移動させるための機構である。
【0193】
攪拌部730は、基板731と、モータ732と、軸733と、把持機構734と、磁石735と、金属部材736と、一対の把持部46aと、を備える。モータ732は、ステッピングモータであり、基板731に設置されている。軸733は、前後方向に延びており、モータ732の軸と一体的に回転する。把持機構734は、軸733に設置されている。把持機構734は、図7、8の把持機構412と同様の構成により、右側の把持部46aを左右方向に移動させる。これにより、一対の把持部46aの間の距離が変化し、一対の把持部46aにより容器T1が把持される。
【0194】
磁石735および金属部材736は、それぞれ、図7の磁石519および金属部材520と同様の構成である。磁石735は、基板731に設置されており、金属部材736は、左側の把持部46aに設置されている。一対の把持部46aが容器T1を鉛直に保持する場合に、磁石735と金属部材736とが接触する。
【0195】
モータ732が駆動されると、把持機構734が軸733を中心として回転し、一対の把持部46aに把持された容器T1が軸733を中心として回転する。これにより、図7、8の攪拌機構410と同様、容器T1の攪拌が行われる。なお、モータ732に代えて、図7、8と同様の回転機構413が設けられてもよい。
【0196】
図28は、供給装置40による容器T1に対する攪拌および搬送の処理を示すフローチャートである。
【0197】
ステップS201において、供給装置40の制御部201は、保管庫42から精度管理検体を収容した容器T1が取り出され、加温部44にセットされるよう移送部210を制御する。ステップS202において、制御部201は、供給装置40の設置温度が常温である場合、加温部44による加温を行うことなく、加温部44の保持部44bに容器T1が保持された状態を一定時間だけ維持する。また、ステップS202において、制御部201は、供給装置40の設置温度が常温より低い場合、容器T1が常温まで温められるよう加温部44を制御する。こうして、容器T1内の精度管理検体の温度が常温とされる。
【0198】
ステップS203において、制御部201は、加温部44から回転機構45に容器T1が移送されるよう移送部210を制御し、容器T1内の精度管理検体が攪拌されるよう回転機構45および攪拌機構46を制御する。ステップS203の攪拌は、図25を参照して説明した予備攪拌である。
【0199】
ステップS204において、制御部201は、攪拌が終了した容器T1が、前方位置233に位置付けられたラック100の保持部101にセットされるよう移送部210を制御する。その後、このラック100にセットすべき容器T1が全てセットされると、ステップS205において、制御部201は、前方位置233のラック100が、供給装置40の左側に隣接する搬送装置20の第1搬送路301に搬出されるよう搬出部41を制御する。搬出部41内でラック100が搬送される際、実施形態1において説明したように、バーコードユニット220により、ラック100のラックIDおよび容器T1の検体IDが読み取られ、バーコードリーダ230によりラック100のラックIDが読み取られる。
【0200】
図29は、ステップS203で行われる予備攪拌において、精度管理検体を収容した容器110(容器T1)の姿勢を変更させる処理を示すフローチャートである。予備攪拌では、図25に示したように50回の転倒攪拌が行われる。
【0201】
ステップS211において、制御部201は、容器T1に対して25回の転倒攪拌が行われるよう攪拌機構46を制御する。続いて、ステップS212において、制御部201は、容器T1の姿勢が変更されるよう回転機構45を制御する。これにより、容器T1の周方向の位置が変更される。続いて、ステップS213において、制御部201は、容器T1に対して残りの25回の転倒攪拌が行われるよう攪拌機構46を制御する。
【0202】
<実施形態2の変更例1>
実施形態2では、供給装置40において容器T1に対して転倒攪拌を行うことにより、精度管理検体の予備攪拌が行われた。しかしながら、これに限らず、供給装置40において容器T1に対してボルテクス振動を付与することにより、精度管理検体の予備攪拌が行われてもよい。
【0203】
図30は、実施形態2の変更例1に係る、支持機構47および攪拌機構48の詳細な構成を模式的に示す側面図である。
【0204】
実施形態2の変更例1では、供給装置40において、図26に示した回転機構45および攪拌機構46に代えて、支持機構47および攪拌機構48が配置される。なお、移送部210と支持機構47との間で容器T1を受け渡すために、容器T1を鉛直な状態で保持する保持部831が設けられる。
【0205】
支持機構47は、上下駆動部801と、左右駆動部802と、基板811と、軸812と、基板813と、軸814と、把持機構821と、一対の把持部822と、を備える。
【0206】
上下駆動部801は、左右駆動部802を上下方向に移動させるための機構である。左右駆動部802は、基板811を左右方向に移動させるための機構である。軸812は、左右方向に延びており、左右方向を回転の中心として回転可能となるよう基板811に保持されている。基板813は軸812に固定されている。軸814は、前後方向に延びており、前後方向を回転の中心として回転可能となるよう基板813に保持されている。把持機構821は、軸814に固定されている。把持機構821は、図7、8の把持機構412と同様の構成により、一対の把持部822の間の距離を変化させ、容器T1を把持する。
【0207】
攪拌機構48は、モータ841と、ギア842と、シャフト843と、複数のローラ844と、ゴム板845と、を備える。
【0208】
モータ841は、ステッピングモータである。モータ841の軸は、上下方向に延びており、平面視において円形状のギア842の中心に接続されている。シャフト843の下端は、平面視においてギア842の中心から外れた位置で、ギア842の上面に接続されている。シャフト843の上端は、平面視において円形状のゴム板845の中心から外れた位置で、ゴム板845の下面に接続されている。このように、モータ841の軸とシャフト843とが、平面視において異なる位置で接続される。複数のローラ844は、ゴム板845の外縁に沿って配置されており、ゴム板845の下面を支持している。
【0209】
実施形態2の変更例1では、図28のステップS203の具体的な攪拌処理は異なるものの、図28と同様に、供給装置40による容器T1に対する攪拌および搬送の処理が行われる。以下、ステップS203の攪拌処理について説明する。
【0210】
ステップS203において、制御部201は、容器T1が加温部44から保持部831に移送されるよう移送部210を制御する。制御部201は、保持部831に保持された容器T1が把持され上方向に引き上げられ、図30に示すように、容器T1の胴部111の下端が攪拌機構48のゴム板845の上面に接地するよう支持機構47を制御する。この状態で、制御部201は、攪拌機構48のモータ841を駆動させる。
【0211】
このとき、シャフト843が、平面視においてモータ841の軸からずれた位置で、ギア842とゴム板845とを接続しているため、ゴム板845が偏心回転する。これにより、ゴム板845の上面に置かれた容器T1が、ゴム板845の動きに合わせて水平方向に振動され、容器T1内に渦が発生する。容器T1内に発生した渦により、容器T1内の精度管理検体が攪拌される。
【0212】
実施形態2の変更例1によれば、実施形態2と同様、攪拌機構48の予備攪拌により、あらかじめ精度管理検体が攪拌されているため、測定装置10における測定前の攪拌により、精度管理検体を十分な攪拌状態にできる。また、実施形態2とは異なり、容器T1内に渦を発生させて精度管理検体が攪拌されるため、実施形態2と比較して、攪拌のために必要なスペースを小さくできる。
【0213】
<実施形態2の変更例2>
実施形態2の変更例1では、供給装置40において容器T1に対してボルテクス振動を付与することにより、精度管理検体の予備攪拌が行われた。しかしながら、これに限らず、供給装置40において容器T1に対して遠心力を付与することにより、精度管理検体の予備攪拌が行われてもよい。
【0214】
図31、32は、それぞれ、実施形態2の変更例2に係る、加温攪拌機構49の詳細な構成を模式的に示す側面図および平面図である。図31の側面図では、便宜上、回転部材910の内部が示されている。
【0215】
実施形態2の変更例2では、供給装置40において、図26に示した加温部44、回転機構45および攪拌機構46に代えて、加温攪拌機構49が配置される。
【0216】
加温攪拌機構49は、基板901と、モータ902と、プーリ903、904と、ベルト905と、軸906と、ギア907と、軸908と、ギア909と、回転部材910と、複数のペルチェ素子921と、を備える。
【0217】
モータ902は、ステッピングモータであり、基板901に設置されている。モータ902の軸902aは、プーリ903に接続されている。ベルト905は、プーリ903、904に接続されている。プーリ904は、軸906に接続されている。
【0218】
軸906、908は、上下方向を中心軸として回転可能となるように基板901に接続されている。ギア907、909は、それぞれ、軸906、908に固定されており、互いに接続されている。回転部材910は、円筒形状を有し、ギア909の上面に設置されている。回転部材910の上面側には、複数の保持部911が形成されている。複数の保持部911は、回転部材910の周方向に沿って設けられている。保持部911は、回転部材910の上面側に設けられた凹部であり、容器T1を鉛直な状態で保持する。ペルチェ素子921は、保持部911の内側面に設けられており、保持部911に保持された容器T1を加温する。
【0219】
図33は、実施形態2の変更例2に係る、供給装置40による容器T1に対する攪拌および搬送の処理を示すフローチャートである。
【0220】
図33では、図28と比較して、ステップS203、S204に代えて、ステップS203、S204が1つにまとめられたステップS221が追加されている。以下、ステップS221の処理について説明する。
【0221】
ステップS221において、供給装置40の制御部201は、保管庫42から精度管理検体を収容した容器T1が取り出され、加温攪拌機構49の保持部911にセットされるよう移送部210を制御する。そして、制御部201は、軸902a、906、908が連動して回転することにより、軸908を回転軸として回転部材910が回転するようモータ902を制御する。これにより、保持部911にセットされた容器T1内の精度管理検体が攪拌される。また、回転部材910の回転と同時に、制御部201は、保持部911にセットされた容器T1内の精度管理検体が加温されるようペルチェ素子921を制御する。
【0222】
なお、上記の加温部44の場合と同様、ペルチェ素子921による精度管理検体の加温は、供給装置40の設置温度が常温より低い場合にのみ行われる。供給装置40の設置温度が常温である場合、ペルチェ素子921による加温が行われることなく、回転部材910の回転による攪拌が行われながら、所定時間だけ保持部911に容器T1が保持された状態が維持される。
【0223】
実施形態2の変更例2によれば、実施形態2と同様、加温攪拌機構49の予備攪拌により、あらかじめ精度管理検体が攪拌されているため、測定装置10における測定前の攪拌により、精度管理検体を十分な攪拌状態にできる。また、実施形態2のように容器T1を転倒することなく、容器T1に遠心力を付与して精度管理検体が攪拌されるため、実施形態2と比較して、攪拌のために必要なスペースを小さくできる。さらに、容器T1内の精度管理検体を常温に戻しながら攪拌できるため、精度管理検体に対する加温および攪拌を効率良く行うことができる。
【0224】
<実施形態3>
実施形態2では、保管庫42から取り出された精度管理検体を収容する容器T1に対して最初に行われる予備攪拌が、供給装置40で行われた。これに対し、実施形態3では、供給装置40と測定装置10との間に配置された攪拌装置80により予備攪拌が行われる。実施形態3の他の制御および他の構成は、実施形態2と同様である。
【0225】
図34は、実施形態3に係る、検体分析システム1の構成を模式的に示す図である。
【0226】
実施形態3では、図1の実施形態1と比較して、供給装置40と搬送装置20との間に配置されている。図34では、便宜上、測定装置10、搬送装置20および制御装置30の組が1つだけ設けられているが、実施形態1と同様、この組が2つ以上設けられてもよい。
【0227】
攪拌装置80は、搬送部81と、攪拌機構82と、回転機構83と、を備える。搬送部81は、搬送路81a、81bを含む。搬送路81aは、供給装置40から搬出されたラック100を左方向に搬送し、左側に隣接する搬送装置20に搬出する。搬送路81bは、左側に隣接する搬送装置20から搬出されたラック100を右方向に搬送し、供給装置40に搬出する。攪拌機構82および回転機構83は、それぞれ、図26に示した実施形態2の攪拌機構46および回転機構45と同様に構成される。
【0228】
保管庫42から取り出され、供給装置40から搬送路81aに搬出されたラック100は、攪拌機構82の前方に位置付けられる。攪拌機構82は、ラック100から容器T1を取り出し、この容器T1に対して転倒攪拌を行う。攪拌機構82の攪拌の途中で、容器T1は回転機構83にセットされ、回転機構83により周方向に回転される。攪拌機構82は、回転機構83に保持された容器T1を取り出し、転倒攪拌を再開する。攪拌機構82は、攪拌が終了した容器T1を、搬送路81a上のラック100の元の保持部101に戻す。ラック100に保持された全ての容器T1に対して予備攪拌が終了すると、このラック100は、左側に隣接する搬送装置20に搬出される。
【0229】
<実施形態の効果>
実施形態1~3によれば、精度管理検体は、被検者検体を攪拌するための第2動作モードと異なる第1動作モードで攪拌され、攪拌された精度管理検体が測定される。
【0230】
実施形態1~3によれば、精度管理検体を被検者検体と同様に攪拌した場合に生じる、成分の違いや精度管理検体の長期保管の影響による攪拌不良の問題を回避でき、精度管理検体の測定結果を正常に取得できる。
【0231】
保管庫42から精度管理検体を収容した容器T1が自動的に取り出され、取り出された容器T1が測定装置10に搬送される。これにより、オペレータにかかる手間を減らして、精度管理検体の測定を円滑に行うことができる。
【0232】
保管庫42により、精度管理検体を収容した容器T1が冷却保管され、加温部44または加温攪拌機構49により、保管庫42から取り出された容器T1が昇温される。これにより、精度管理検体を精度良く保管できるとともに、測定時には精度管理検体を円滑に常温に戻すことができる。
【0233】
実施形態1~3で行われる攪拌動作は、精度管理検体または被検者検体を収容した容器110を、前記容器の底部が頭部より低い第1の角度と、前記底部が前記頭部よりも高い第2の角度との間で、前記容器を転倒方向に振る動作を含む。この攪拌方式によれば、容器110の底部に沈降した血球成分を確実に底部から剥がすことができる。
【0234】
第1動作モードによる攪拌と第2動作モードによる攪拌は、容器110を振る角度(攪拌角度)において異なり、第1動作モードにおける容器110を振る角度は、第2動作モードにおける容器110を振る角度よりも大きい。振る角度が大きいと、液体成分の容器110内での移動量が大きくなり、混和が促進される。
【0235】
第1動作モードによる攪拌と第2動作モードによる攪拌は、容器110を振る速度(攪拌速度)において異なり、第1動作モードにおける容器110を振る速度は、第2動作モードにおける容器110を振る速度よりも速い。転倒速度が高いと、液体成分の容器110内での移動速度が速くなり、液体成分が底部に沈降した血球成分を押し流しやすくなる。また、液体成分の液面の揺れにより、凝集した血球成分が解れやすくなる。
【0236】
第1動作モードによる攪拌と第2動作モードによる攪拌は、攪拌回数において異なり、第1動作モードにおける攪拌回数は、第2動作モードにおける攪拌回数よりも多い。攪拌回数が多いと、液体成分が容器110の底部に沈降した血球成分を繰り返し押し流すように動くため、血球成分が底部からはがれやすくなり、液体成分と血球成分の混和が促進される。さらに、液体成分に混ざった血球成分に繰り返し外力が加わるため、凝集した血球成分が解れ、混和が促進される。
【0237】
第1動作モードによる攪拌と第2動作モードによる攪拌は、衝撃の繰り返し付与の有無において異なる。第1動作モードは、容器110に繰り返し衝撃を付与することを含み、第2動作モードは、容器110に衝撃を繰り返し付与することを含まない。衝撃を繰り返し付与することにより、精度管理検体に含まれる凝集した血球成分の分散が促進される。
【0238】
第1動作モードによる攪拌と第2動作モードによる攪拌は、姿勢変更の有無において異なる。第1動作モードは、攪拌の途中で、容器110を周方向に回転させることを含み、第2動作モードは、攪拌の途中で、容器110を周方向に回転させることを含まない。これにより、容器110内において軸周りの偏った位置に、精度管理検体の成分が凝集して沈殿したままになることを抑制できる。よって、精度管理検体を適切に攪拌できる。
【0239】
実施形態2では、精度管理検体を攪拌するための第1動作モードと、被検者検体を攪拌するための第2動作モードとは、図25に示したように、予備攪拌の有無において異なっており、第1動作モードは予備攪拌を含み、第2動作モードは予備攪拌を含まない。これにより、精度管理検体は、被検者検体に対する第2動作モードの攪拌に先立って予備攪拌が行われるため、混ざりにくい精度管理検体であっても十分に攪拌される。よって、精度管理検体を適正に測定できる。
【0240】
具体的には、精度管理検体では、攪拌機構46によって予備攪拌が行われた後、測定装置10において第2動作モードと同様に攪拌が行われる。一方、被検者検体では、測定装置10において第2動作モードにより攪拌が行われる。このように、精度管理検体に対して予備攪拌を行うことで、精度管理検体を、十分に混和した状態で測定装置10に供給できる。よって、測定装置10は、精度管理検体の攪拌のための特別な前処理を行う必要がない。
【0241】
実施形態1~3によれば、測定装置10は、容器110を掴んで振る攪拌機構410を含む。これにより、ラック100から容器110を取り出すためのハンド機構と攪拌機構を共通化することができ、装置を簡素化することができる。
【0242】
実施形態1~3によれば、回転機構431は、容器110の側面に付されたバーコードラベル112に印刷された識別情報を読み取る読取部430に含まれている。この場合、回転機構431が、識別情報の読み取りと容器110の攪拌の両方で用いられる。これにより、識別情報の読み取りと容器110の攪拌に対して、別々の回転機構を設ける必要がないため、検体分析装置1aを簡素に構成できる。
【0243】
実施形態1~3によれば、検体分析装置1aは、精度管理検体を収容した容器T1を保管する保管庫42を備える供給装置40を備える。測定装置10は、搬送装置20により搬送された容器T1内の精度管理検体を第1動作モードで攪拌する。上述したように、保管庫42から取り出された精度管理検体は、容器T1内で凝集して沈殿していることがある。上記構成によれば、未攪拌の精度管理検体が第1動作モードで攪拌されるため、未攪拌の精度管理検体を十分に攪拌できる。
【0244】
実施形態1~3によれば、搬送装置20は、測定装置10による測定が行われた精度管理検体を収容する容器T1を供給装置40へ搬送し、供給装置40は、搬送装置20によって測定装置10から搬送された容器T1を保管庫42に保管する。この構成によれば、容器T1の搬送だけでなく、容器T1の保管も自動になるため、検体分析装置1aおよび検体分析システム1の利便性がさらに向上する。
【0245】
実施形態1~3によれば、供給装置40は、保管庫42内の容器T1を冷却する保冷部43を備える。これにより、容器T1内の精度管理検体の品質を維持できる。
【0246】
実施形態1~3によれば、供給装置40は、保管庫42から取り出された容器T1を加温する加温部44を備える。こうすると、容器T1が保管庫42で保冷され、且つ、外気温が攪拌に適した温度よりも低い場合に、容器T1を加温することで、容器T1内の精度管理検体の温度を、攪拌に適した温度に迅速に高めることができる。
【0247】
実施形態3によれば、実施形態2と同様、精度管理検体を収容する容器T1に対して、第1動作モードにおける予備攪拌が行われる。この場合も、あらかじめ精度管理検体が攪拌されるため、測定装置10における測定前の攪拌により、精度管理検体を十分な攪拌状態にできる。よって、精度管理検体の測定結果を適正に取得できる。
【0248】
なお、攪拌機構82および回転機構83に代えて、図30の支持機構47および攪拌機構48が設けられてもよく、図31の加温攪拌機構49が設けられてもよい。加温攪拌機構49と同様の攪拌機構が設けられる場合、ペルチェ素子921は省略される。また、上記のように容器T1ごとに検体の攪拌を行う機構に代えて、ラック100を掴んで振ること、ラック100に振動を付与すること、およびラック100に遠心力を付与すること、の少なくとも一つにより、ラック100に保持された容器110の検体が攪拌されてもよい。
【0249】
<その他の変更例>
実施形態1において、第1動作モードおよび第2動作モードは、攪拌回数、攪拌角度、攪拌速度、姿勢変更の有無および衝撃の繰り返し付与の有無の全てのパラメータにおいて異なっていたが、精度管理検体を適正に攪拌できるように第1動作モードのパラメータが設定されていれば、第1動作モードのパラメータとおよび第2動作モードのパラメータは、図15の1つまたは所定の項目の組み合わせにおいて異なっていてもよい。すなわち、第1動作モードは、図15の少なくとも1つの項目において、第2動作モードと異なっていてもよい。また、第1動作モードおよび第2動作モードの項目は、図15に示した項目に限られるものではなく、これらの項目の1つまたは複数の組み合わせであってもよい。
【0250】
実施形態2において、第1動作モードの予備攪拌のパラメータと第2動作モードのパラメータとは、攪拌回数、攪拌角度、攪拌速度、姿勢変更の有無および衝撃の繰り返し付与の有無の全ての項目において異なっていたが、精度管理検体を適正に攪拌できるように第1動作モードのパラメータが設定されていれば、第1動作モードの予備攪拌のパラメータと第2動作モードのパラメータとは、図25の1つまたは所定の項目の組み合わせにおいて異なっていてもよく、同じであってもよい。また、第1動作モードの測定装置10による攪拌のパラメータと第2動作モードの攪拌のパラメータとは同じであったが、精度管理検体を適正に攪拌できるように第1動作モードのパラメータが設定されていれば、第1動作モードの測定装置10による攪拌の動作モードと第2動作モードとは、図25のパラメータのうち1つまたは所定の項目の組み合わせにおいて異なっていてもよい。また、第1動作モードおよび第2動作モードの項目は、図25に示した項目に限られるものではなく、これらの項目の1つまたは複数の組み合わせであってもよい。
【0251】
実施形態2では、図25に示したように、第1動作モードの供給装置40で行われる予備攪拌による強度が、第1動作モードの測定装置10で行われる攪拌による強度よりも強く設定された。しかしながら、これに限らず、精度管理検体を攪拌するための第1動作モードが、被検者検体を攪拌するための第2動作モードよりも攪拌が強化されていれば、第1動作モードの予備攪拌による強度と、第1動作モードの測定装置10の攪拌による強度とが等しくてもよく、第1動作モードの予備攪拌による強度が、第1動作モードの測定装置10の攪拌による強度より弱くてもよい。また、上記条件が満たされれば、第1動作モードの各攪拌の強度が、被検者検体を攪拌するための第2動作モードの攪拌の強度より弱くても強くてもよい。
【0252】
なお、上記実施形態では、第1動作モードによる攪拌は、第2動作モードによる攪拌と比較して強化されていたが、第1動作モードによる攪拌によって精度管理検体を適正に攪拌できる限りにおいて、第1動作モードによる攪拌は、第2動作モードによる攪拌と異なっていればよい。たとえば、第1動作モードによる攪拌によって精度管理検体を適正に攪拌するために、第1動作モードの各攪拌パラメータと第2動作モードの各攪拌パラメータとが同じで、一の転倒攪拌から次の転倒攪拌までの待ち時間が、第2動作モードより第1動作モードの方が長く設定されてもよい。また、攪拌時に精度管理検体の血球成分の破壊が生じないように、第1動作モードによる攪拌は、第2動作モードによる攪拌と比較して弱く設定されてもよい。
【0253】
実施形態2では、図25に示したように、第1動作モードは、供給装置40で行われる予備攪拌と、測定装置10で行われる攪拌の2つの攪拌により構成された。しかしながら、第1動作モードによる攪拌は、3以上の攪拌により構成されてもよい。たとえば、第1動作モードは、供給装置40で行われる予備攪拌と、測定装置10で1回目に行われる攪拌と、測定装置10で2回目以降に行われる攪拌と、により構成されてもよい。
【0254】
実施形態2において、供給装置40で行われる予備攪拌のパラメータが、保管庫42に精度管理検体が保管されていた時間によって変化されてもよい。たとえば、精度管理検体が保管庫42に保管されていた時間が0の場合、容器T1内で沈殿はほぼ進んでいないと考えられるため、予備攪拌のパラメータが、図25の被検者検体に関する第2動作モードと同様に設定される。一方、精度管理検体が保管庫42に保管されていた時間が長くなり所定の時間が経過すると沈殿が完了した状態になると考えられるため、所定の時間が経過するまでは予備攪拌が徐々に強くなるよう設定され、所定の時間が経過すると予備攪拌が図25と同様の強さに設定される。
【0255】
実施形態1、実施形態1の変更例2および実施形態2において、図15、18、25に示したように、第1および第2動作モードの転倒角度θ1は90°より小さく設定され、第1および第2動作モードの転倒角度θ2は、90°より大きく設定された。すなわち、上記第1および第2動作モードによれば、容器110の底部が頭部より低い位置と、容器110の底部が頭部より高い位置との間で、容器110が振られた。しかしながら、精度管理検体を攪拌するための第1動作モードによる攪拌が、被検者検体を攪拌するための第2動作モードによる攪拌よりも強化されていれば、検体の種類に応じて、転倒角度θ1、θ2がいずれも90°より小さく、または、転倒角度θ1、θ2がいずれも90°より大きくてもよい。ただし、上記のようにθ1<90°かつθ2>90°となる場合、容器110内の検体を効果的に攪拌できる。
【0256】
図7の攪拌機構410および図27の攪拌機構46は、容器110を転倒方向に振ることにより、容器110内の検体を攪拌したが、攪拌機構410、46による攪拌は、転倒攪拌であることに限らない。たとえば、攪拌機構410、46は、容器110を長手方向(上下方向)に移動させることにより検体を攪拌してもよく、容器110を短手方向(水平方向)に移動させることにより検体を攪拌してもよく、容器110を容器110の中心を通る長手方向の(上下方向)の軸周りに回転させることにより検体を攪拌してもよい。また、これらの攪拌は、組み合わされてもよい。
【0257】
図7の攪拌機構410は、軸513を中心として容器110を回転させ、図27の攪拌機構46は、軸733を中心として容器110を回転させた。すなわち、攪拌機構410、46は、1つの軸についてのみ容器110を回転させた。しかしながら、これに限らず、攪拌機構410、46は、2以上の複数の軸を中心として容器110を回転させるように構成されてもよい。たとえば、攪拌機構410、46は、容器110を第1の向きで振る第1攪拌と、第1の向きとは異なる第2の向きで振る第2攪拌とを行うように構成されてもよい。こうすると、攪拌の途中で、攪拌機構から回転機構に容器110を移送し、回転機構により容器110を周方向に回転させる必要がなくなる。
【0258】
実施形態1において、検体分析装置1a(図1参照)は、必ずしも供給装置40を備えていなくてもよい。たとえば、オペレータは、容器T1を保持したラック100または容器T2を保持したラック100を、搬送装置20にマニュアルでセットしてもよい。この場合、オペレータは、別途設置された保管庫から精度管理検体を収容した容器T1を取り出し、取り出した容器T1をラック100にセットして、このラック100を搬送装置20にマニュアルでセットする。
【0259】
図17のステップS13では、制御部31は、読取部322のバーコードリーダ322cで読み取った検体IDに基づいて、攪拌対象となる容器110が、容器T1、T2の何れであるかを判定した。しかしながら、これに限らず、制御部31は、ラック100から容器110を取り出したあと、攪拌機構410による攪拌を開始する前に、読取部430のバーコードリーダ432で検体IDを読み取り、読み取ったIDに基づいて対象となる容器110の種類を判別してもよい。あるいは、制御部31は、搬送制御装置60に問い合わせることにより、攪拌対象となる容器110の種類を取得してもよい。
【0260】
精度管理検体を収容する容器T1を保持したラック100は、ラック100に保持された全ての容器T1について処理が終了すると、右方向に搬送され、供給装置40に回収された。しかしながら、これに限らず、容器T1の使用が1回の搬送で終了する場合、全ての容器T1について処理が終了すると、ラック100は、左方向に搬送され、被検者検体を保持するラック100と同様、回収装置50に回収されてもよい。
【0261】
保冷部43は、冷却のためのペルチェ素子を備えたが、コンプレッサを備えた気化圧縮型の冷却装置であってもよい。加温部44は、加温のためのペルチェ素子を備えたが、これに代えてヒーターを備えてもよい。加温攪拌機構49は、加温のためのペルチェ素子921を備えたが、これに代えてヒーターを備えてもよい。
【0262】
図6に示したように、取出位置323から容器110を取り出し、且つ、容器110の攪拌を行う攪拌機構410は、読取部430とは異なる位置に設置された。しかしながら、これに限らず、取出位置323から容器110を取り出す機構と、容器110の攪拌を行う機構とが別々に設けられ、攪拌を行う機構が、読取部430の位置に配置されてもよい。この場合、攪拌を行う機構と回転機構431とが同じ位置に配置されているため、容器110の攪拌と回転とを、迅速に切り替えることができる。
【0263】
ラック100には、バーコードラベル102に代えて、ラックIDを記憶したRFIDタグが貼り付けられてもよく、容器110には、バーコードラベル112に代えて、検体IDを記憶したRFIDタグが貼り付けられてもよい。この場合、バーコードリーダに代えて、RFIDを読み取るためのアンテナが配置される。
【0264】
検体分析装置1aは、被検者検体として、被検者から採取された全血を測定および分析する装置であったが、被検者から採取された他の検体を測定および分析する装置でもよい。他の検体として、たとえば、血漿、脳脊髄液、組織液、尿が挙げられる。この場合も、精度管理検体を用いて、上記のような被検者検体の測定精度が管理される。
【0265】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0266】
1a 検体分析装置
10 測定装置
20 搬送装置
40 供給装置
41 搬出部
42 保管庫
43 保冷部
44 加温部
45 回転機構
46、48 攪拌機構
49 加温攪拌機構(加温部、攪拌機構)
110、T1、T2 容器
301 第1搬送路(搬送路)
410 攪拌機構
430 読取部
431 回転機構
【要約】
【課題】精度管理検体の測定結果を正常に取得可能な精度管理検体測定方法、検体分析装置および供給装置を提供する。
【解決手段】冷却保管されていた精度管理検体を測定する精度管理検体測定方法は、精度管理検体を第1動作モードで攪拌する工程(ステップS2)と、攪拌された精度管理検体を測定する工程(ステップS3)と、を含む。第1動作モードによる攪拌は、被検者から採取された被検者検体を攪拌するための第2動作モードによる攪拌と異なる。。
【選択図】図13
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34