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特許7262568免疫エフェクター細胞を使用して腫瘍を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】免疫エフェクター細胞を使用して腫瘍を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230414BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230414BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230414BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230414BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230414BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230414BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230414BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230414BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20230414BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230414BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K39/395 T
A61K31/675
A61K31/7076
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C12N5/10
C12N15/85 Z
C12P21/08
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021503898
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2019097453
(87)【国際公開番号】W WO2020020210
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】201910267885.4
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810821044.9
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522072507
【氏名又は名称】クレージュ メディカル カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRAGE MEDICAL CO.,LIMITED
【住所又は居所原語表記】RM12,20/F,Ho King Comm CTR,2-16 FaYuen ST,Mongkok Kowloon,Hong Kong,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李宗海
(72)【発明者】
【氏名】王▲華▼茂
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527271(JP,A)
【文献】特表2018-512153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現する、BCMAを特異的に認識する免疫エフェクター細胞を有効成分として含有するBCMA陽性腫瘍治療用医薬組成物であって、各治療コースにおける前記免疫エフェクター細胞の用量が約1×10 細胞/kg対象体重以下、または前記細胞の総量が約1×10 10 細胞以下であり、かつ前記各治療コースにおける前記免疫エフェクター細胞の総用量が約1×10 以上であり、かつ
前記キメラ抗原受容体は、BCMAに特異的に結合する抗体、膜貫通領域、および細胞内領域を含み、前記抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号8に示されるLCDR3;または
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号4に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号9に示されるLCDR3;または
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3;または
配列番号11に示されるHCDR1、配列番号12に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3;または
配列番号13に示されるHCDR1、配列番号14に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3
を有することを特徴とする、BCMA陽性腫瘍治療用医薬組成物
【請求項2】
治療コースにおける前記免疫エフェクター細胞の用量が約1×10細胞/kg対象体重以下、または前記細胞の総量が約1×10以下であり;
あるいは、各治療コースにおける前記免疫エフェクター細胞の用量が約1×10細胞/kg対象体重以下、または前記細胞の総量が約5×10以下であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
記各治療コースにおける前記免疫エフェクター細胞の総用量が約1×10以上であり;
あるいは、前記各治療コースにおける前記免疫エフェクター細胞の総用量が約1×10以上であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
対象に2~5コースの前記免疫エフェクター細胞を投与するための請求項1に記載の医薬組成物であって、
より好ましくは、各治療コースの前記免疫エフェクター細胞が、15日以内にN回の投与に分割して投与されるための請求項1に記載の医薬組成物であって、ここで、Nは、1以上の自然数であり、好ましい形態では、Nは、1、2、3、または4である、医薬組成物。
【請求項5】
先に投与された前記免疫エフェクター細胞が体内で検出できなくなってから、その後の治療コースの前記免疫エフェクター細胞を投与するための;または
先の治療コースの前記免疫エフェクター細胞を投与してから約4~24週間の時点で、後の治療コースの前記免疫エフェクター細胞を投与するための、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
後の治療コースで投与される前記免疫エフェクター細胞の用量は、先の治療コースで投与される前記免疫エフェクター細胞の用量よりも低いか、高いか、または先の治療コースで投与される前記免疫エフェクター細胞の用量に等しく、
あるいは、後の治療コースで投与される前記免疫エフェクター細胞の用量は、先の治療コースで投与される前記免疫エフェクター細胞の用量よりも高く、
あるいは、前記後の治療コースで投与される前記免疫エフェクター細胞の用量は、先に投与される前記免疫エフェクター細胞の用量の2倍、5倍、7倍、または10倍であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
以下の特徴のいずれか1つを有する前記対象に後の治療コースの前記免疫エフェクター細胞を投与するための、請求項4に記載の医薬組成物:
(i)前記対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルは、先の治療コースの前記免疫エフェクター細胞が投与される直前の対象におけるレベルよりも約10倍小さく、約25倍小さく、および/または約50倍小さい;
(ii)グレード3以上の神経毒性を示していない;
(iii)先の治療コースの前記免疫エフェクター細胞の投与後の神経毒性またはCRSレベルのピークレベルと比較して、神経毒性またはCRSレベルが低下している、あるいは、CRSレベルは、先の治療コースの前記免疫エフェクター細胞の投与後のCRSのピークレベルと比較して、少なくとも50%、少なくとも20%、若しくは少なくとも5%低下し、または、CRSレベルは、先の治療コースの前記免疫エフェクター細胞の投与前のCRSレベルに相当する;または
(iv)前記対象は、先の治療コースの細胞によって発現されたCARに対して検出可能な体液または細胞によって媒介される免疫応答を示していない。
【請求項8】
化学療法剤または放射線療法、或いはそれらの組み合わせを含む前処理を受けた対象に前記免疫エフェクター細胞を投与するための、
あるいは、前記免疫エフェクター細胞を投与する2~12日前に前記前処理を受けた対象に前記免疫エフェクター細胞を投与するための、
あるいは、前記免疫エフェクター細胞を投与する2~7日前に前処理を受けた対象に前記免疫エフェクター細胞を投与するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記化学療法剤は、シクロホスファミドおよびフルダラビンのいずれか1つまたはその組み合わせを含み、
好ましくは、フルダラビンを使用する場合、前記フルダラビンの投与量は、約10~50mg/m/日、または約15~40mg/m/日、または約15~35mg/m/日、または約15~30mg/m/日、または約20~30mg/m/日であり;
あるいは、前記フルダラビンの投与量は、約20~30mg/m/日であり;
あるいは、前記フルダラビンの投与量は、約20~26mg/m/日であり;
好ましくは、シクロホスファミドを使用する場合、前記シクロホスファミドの投与量は、約100~700mg/m/日、または約150~600mg/m/日、または約190~600mg/m/日、または約190~560mg/m/日であり;
あるいは、前記シクロホスファミドの投与量は、約150~400mg/m/日であり、あるいは、約190~350mg/m/日であり;
あるいは、前記シクロホスファミドの投与量は、約400~600mg/m/日であり、好ましくは、約450~600mg/m/日であり、あるいは、約450~560mg/m/日であることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記化学療法剤が6日以下連続して投与されるものであり;ここで、シクロスファミドを使用する場合、好ましくは前記シクロホスファミドが1~5日間連続して投与されるものであり、フルダラビンを使用する場合、好ましくは前記フルダラビンが2~4日間連続して投与されるものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記BCMA陽性腫瘍は多発性骨髄腫であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記キメラ抗原受容体は、BCMAに特異的に結合する抗体、膜貫通領域、および細胞内領域を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3を有し、
好ましくは、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号5に示されるHCDR3を有することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号23に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、
好ましくは、前記抗体は、配列番号25、27または29に示されるscFvの配列を有することを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記キメラ抗原受容体が配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または41に示されるアミノ酸配列を有し、
好ましくは、前記キメラ抗原受容体が配列番号36、37、および38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有し、
より好ましくは、前記キメラ抗原受容体が配列番号36に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞またはNKT細胞であり、
好ましくは、前記免疫エフェクター細胞はT細胞であり、より好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は対象自体に由来することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
各治療コースの前記免疫エフェクター細胞の投与間隔は約4週間から24週間であり、
好ましくは、各治療コースの前記免疫エフェクター細胞の数はほぼ同じであり、
好ましくは、後の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の数は、先に投与された後の治療コースの前記免疫エフェクター細胞の数よりも多く、
好ましくは、後の治療コースで投与される前記免疫エフェクター細胞の数は、先に投与された後の治療コースの前記免疫エフェクター細胞の数よりも少ないことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記免疫エフェクター細胞を投与する前に、BCMAを標的とする、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞の治療を受けていない対象;または
前記免疫エフェクター細胞の治療を受ける前に、手術治療、化学療法、または請求項1に記載の免疫治療以外の治療を受けた対象に投与されるための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
各治療コースの前記免疫エフェクター細胞を投与する前に、対象の、CRSを示す因子、神経毒性を示す因子、腫瘍負荷を示す因子、および/または宿主の抗CAR免疫応答を示す因子の血清レベルが評価され、
腫瘍負荷を示す因子は、前記対象の腫瘍細胞の総数、または前記対象の器官の腫瘍細胞の総数、または前記対象の組織の腫瘍細胞の総数、または腫瘍の質量または体積、または腫瘍転移の程度、または腫瘍の数であり、
好ましくは、
i)後の治療コースを実施する前に、腫瘍負荷を示す因子が評価されること;および
ii)前記評価の結果に基づいて、後の治療コースが決定されること、かつ
iii)前記対象の腫瘍の質量または体積が安定しているか減少していると前記評価で判断された場合、先の治療コースでのCAR発現細胞の数より少ないか多い、またはそれとほぼ同じのCAR発現細胞の数を含む後の治療コースを対象に投与するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記免疫エフェクター細胞の投与量が約0.1×10細胞/kg対象体重~5×10細胞/kg、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量が約0.1×10細胞~1×1010細胞であり;
あるいは、前記免疫エフェクター細胞の投与量が約0.5×10細胞/kg~1×10細胞/kg、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量が約0.1×10細胞~1×10細胞であり;
あるいは、前記免疫エフェクター細胞の投与量が約0.9×10細胞/kg~5×10細胞/kg、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量が約0.1×10細胞~9×10細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
対象のBCMAの発現陽性率は50%を上回り、あるいは70%を上回り、または80%を上回り、
あるいは、85%を上回り、
あるいは、90%を上回ることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象の疾患タイプは、IgGκ型、またはIgGλ型、またはIgAλ型、またはIgAκ型、またはλ軽鎖型であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に属し、具体的には、腫瘍抗原を標的として認識し、免疫エフェクター細胞の活性化を誘発し、抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞療法に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(MM)は、すべての癌による死亡の2%を占める悪性形質細胞腫瘍である。主な病状は、骨髄内の形質細胞の無制限の増殖と濃縮であり、骨壊死を引き起こす。現在、主な治療案は化学療法と幹細胞移植であり、化学療法薬は主にステロイド、サリドマイド、レナリドマイド、ボルテゾミブなどである。
【0003】
BCMA(B-cell maturation antigen)はB細胞成熟抗原であり、185個のアミノ酸残基からなるIII型膜貫通タンパク質であり、TNF受容体スーパーファミリーに属し、そのリガンド、例えば、増殖誘導リガンド(APRIL)、Bリンパ球刺激因子(BAFF)などは、TNFスーパーファミリーに属し、BCMAはそのリガンドに結合した後、B細胞の増殖と生存を活性化することができる。BCMAは、形質細胞と多発性骨髄腫細胞で特異的に高度に発現されるが、造血幹細胞とその他の正常な組織細胞では発現されないため、BCMAは、MMの標的療法の理想的な標的とすることができる。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、BCMA陽性腫瘍に対して優れた殺傷効果を有することができる技術手段を提供することである。
【0005】
本発明の第一局面において、少なくとも1つの治療コースの、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する、BCMAを特異的に認識する免疫エフェクター細胞を被験者に投与することを含む、BCMA陽性腫瘍を治療する方法が提供される。
【0006】
具体的な実施形態では、各治療コースにおける免疫エフェクター細胞の用量が約1×10細胞/kg被験者体重以下、または総量が約1×1010以下である。好ましくは、各治療コースにおける免疫エフェクター細胞の用量が約1×10細胞/kg被験者体重以下、または細胞の総量が約1×10以下である。好ましくは、各治療コースにおける免疫エフェクター細胞の用量が約1×10細胞/kg被験者体重以下、または細胞の総量が約5×10以下である。
【0007】
具体的な実施形態では、前記各治療コースにおける免疫エフェクター細胞の総用量が1×10以上である。好ましくは、前記各治療コースにおける免疫エフェクター細胞の総用量が1×10以上である。好ましくは、前記各治療コースにおける免疫エフェクター細胞の総用量が1×10以上である。
【0008】
具体的な実施形態では、被験者に2~5コースの前記免疫エフェクター細胞を投与する。
【0009】
具体的な実施形態では、先に投与された免疫エフェクター細胞が体内で検出できなくなってから、その後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する。
【0010】
具体的な実施形態では、先の治療コースを投与してから約4~24週間の時点で、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する。
【0011】
具体的な実施形態では、後の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の用量は、先の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の用量よりも低いか、高いか、または先の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の用量に等しい。
【0012】
具体的な実施形態では、後の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の用量は、先の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の用量よりも高い。好ましくは、前記後の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の用量は、先に投与される免疫エフェクター細胞の用量の2倍、5倍、7倍、または10倍である。
【0013】
具体的な実施形態では、各治療コースの免疫エフェクター細胞を、15日以内にN回の投与に分割し、Nは、1以上の自然数である。好ましい一形態では、Nは、1、2、3、または4である。
【0014】
具体的な実施形態では、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する時、前記被験者は以下の特徴のいずれか1つを有する:
(i)被験者におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルは、先の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される直前の被験者におけるレベルよりも約10倍小さく、約25倍小さく、および/または約50倍小さい;
(ii)グレード3以上の神経毒性を示していない;
(iii)先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後の神経毒性またはCRSレベルのピークレベルと比較して、神経毒性またはCRSレベルが低下している;または
(iv)前記被験者は、先の治療コースの細胞によって発現されたCARに対して検出可能な体液または細胞によって媒介される免疫応答を示していない。
【0015】
具体的な実施形態では、上記の後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する時、前記被験者が有する特徴の(iii)において、CRSレベルは、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後のCRSのピークレベルと比較して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも5%低下し、または、CRSレベルは、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与前のCRSレベルに相当する。
【0016】
具体的な実施形態では、その方法は、化学療法剤または放射線療法、或いはそれらの組み合わせを前記被験者に投与することを含む前処理を、免疫エフェクター細胞の投与前に実施することをさらに含む。
【0017】
具体的な実施形態では、免疫エフェクター細胞を投与する2~12日前に前記前処理を実施する。好ましい一形態では、免疫エフェクター細胞を投与する2~7日前に前記前処理を実施する。
【0018】
具体的な実施形態では、前記化学療法剤は、シクロホスファミド、フルダラビンのいずれか1つまたはその組み合わせを含む。
【0019】
具体的な実施形態では、前記フルダラビンの投与量は、約10~50mg/m/日、または約15~40mg/m/日、または約15~35mg/m/日、または約15~30mg/m/日、または約20~36mg/m/日、または約20~30mg/m/日である。
【0020】
好ましい一形態では、前記フルダラビンの投与量は、約20~30mg/m/日である。
【0021】
好ましい一形態では、前記フルダラビンの投与量は、約20~26mg/m/日である。
【0022】
具体的な実施形態では、前記シクロホスファミドの投与量は、約100~700mg/m/日、または約150~600mg/m/日、または約190~600mg/m/日、または約190~560mg/m/日である。
【0023】
具体的な実施形態では、前記シクロホスファミドの投与量は、約150~400mg/m/日であり、好ましくは、約190~350mg/m/日である。
【0024】
好ましい一形態では、前記シクロホスファミドの投与量は、約400~600mg/m/日であり、好ましくは、約450~600mg/m/日であり、より好ましくは、約450~560mg/m/日である。
【0025】
フルダラビンとシクロホスファミドを同時に投与する場合、フルダラビンとシクロホスファミドのそれぞれの投与量も上記通りである。
【0026】
具体的な実施形態では、前記化学療法剤を6日以下連続して使用する。
【0027】
具体的な実施形態では、前記シクロホスファミドを1~5日間連続して使用する。
【0028】
具体的な実施形態では、前記フルダラビンを2~4日間連続して使用する。
【0029】
フルダラビンとシクロホスファミドを同時に投与する場合、フルダラビンとシクロホスファミドのそれぞれの連続使用時間も上記通りである。
【0030】
具体的な実施形態では、前記腫瘍は多発性骨髄腫である。
【0031】
具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、BCMAに特異的に結合する抗体、膜貫通領域、および細胞内領域を含み、前記抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号8に示されるLCDR3;または
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号4に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号9に示されるLCDR3;または
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3;または
配列番号11に示されるHCDR1、配列番号12に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3;または
配列番号13に示されるHCDR1、配列番号14に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3を有する。
【0032】
具体的な実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、配列番号11に示されるHCDR1、配列番号12に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3を有する。
【0033】
具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、BCMAに特異的に結合する抗体、膜貫通領域、および細胞内領域を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3を有する。
【0034】
具体的な実施形態では、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する。
【0035】
具体的な実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号5に示されるHCDR3を有する。
【0036】
具体的な実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する;または
前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する。
【0037】
具体的な実施例では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する。
【0038】
具体的な実施形態では、前記抗体は、配列番号25、27または29に示されるscFvの配列を有する。
【0039】
具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体が配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または41に示されるアミノ酸配列を有する。
【0040】
具体的な実施例では、前記キメラ抗原受容体が配列番号36、37、および38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する。
【0041】
好ましい一例では、前記キメラ抗原受容体が配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する。
【0042】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞またはNKT細胞である;好ましい一形態では、前記免疫エフェクター細胞はT細胞である。
【0043】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞は前記被験者自体に由来する。
【0044】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞は同種異系に由来する。
【0045】
具体的な実施形態では、各治療コースの免疫エフェクター細胞の投与間隔は約4週間から24週間である。
【0046】
好ましい一例では、各治療コースの免疫細胞の数はほぼ同じである。
【0047】
好ましい一例では、後の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の数は、先に投与された後の治療コースの免疫細胞の数よりも多い。
【0048】
好ましい一例では、後の治療コースで投与される免疫エフェクター細胞の数は、先に投与された後の治療コースの免疫細胞の数よりも少ない。
【0049】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞を投与する前に、前記被験者は、BCMAを標的とする、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞の治療を受けていない。
【0050】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞の治療を受ける前に、前記被験者は、手術治療、化学療法、または、BCMAを標的とする、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞の免疫治療以外の治療を受けた。
【0051】
具体的な実施形態では、各治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する前に、前記被験者の、CRSを示す因子、神経毒性を示す因子、腫瘍負荷を示す因子、および/または宿主の抗CAR免疫応答を示す因子の血清レベルを評価する。
【0052】
具体的な実施形態では、前記腫瘍負荷を示す因子は、前記被験者の腫瘍細胞の総数、または前記被験者の器官の腫瘍細胞の総数、または前記被験者の組織の腫瘍細胞の総数、または腫瘍の質量または体積、または腫瘍転移の程度、または腫瘍の数である。
【0053】
具体的な実施形態では、前記腫瘍負荷を示す因子は、
i)後の治療コースを実施する前に、腫瘍負荷を示す因子を評価すること;および
ii)前記評価の結果に基づいて、後の治療コースを決定し、しかも
iii)前記被験者の腫瘍の質量または体積が安定しているか減少していると評価で判断された場合、先の治療コースでのCAR発現細胞の数より少ないか多い、またはそれとほぼ同じのCAR発現細胞の数を含む後の治療コースを前記被験者に投与することを含む。
【0054】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞の投与量が約0.1×10細胞/kg被験者体重~5×10細胞/kg被験者体重であり、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量が約0.1×10細胞~1×1010細胞である。
好ましくは、前記免疫エフェクター細胞の投与量が約0.5×10細胞/kg被験者体重~1×10細胞/kg被験者体重であり、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量が約0.1×10細胞~1×10細胞である。
より好ましくは、前記免疫エフェクター細胞の投与量が約0.9×10細胞/kg被験者体重~5×10細胞/kg被験者体重であり、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量が約0.1×10細胞~9×10細胞である。
【0055】
具体的な実施形態では、前記被験者のBCMAの発現陽性率は50%を上回り、好ましくは70%を上回る、または80%を上回る。より好ましくは、85%を上回る。より好ましくは、90%を上回る。
【0056】
具体的な実施形態では、前記被験者の疾患タイプは、IgGκ型、またはIgGλ型、またはIgAλ型、またはIgAκ型、またはλ軽鎖型である。
【0057】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と後文(例えば、実施例)で具体的に記載される各技術的特徴を互いに組み合わせて新規なまたは好ましい技術構成を形成することができることを理解されたい。紙数に制限があるので、ここでは一々述べない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、異なるグループの患者の治療効果の結果を示す図である。
図2図2は、被験者体内におけるBCMA CAR-T細胞の増殖状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[発明の詳細]
深く掘り下げた臨床研究の結果、本発明者は、BCMAを標的とする、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞を特定の量で被験者に投与すると、免疫エフェクター細胞を利用した腫瘍治療の効果が顕著に改善されたことを見出した。
【0060】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語、符号、およびその他の技術的および科学的用語、または専用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。場合によって、明確化および/または参照を容易にする目的で、従来理解されている意味を有する用語が本明細書でさらに限定され、本明細書に含まれるそのようなさらなる限定は、本分野で従来理解されているものとの実質的な違いを示すと解釈されるべきではない。
【0061】
本明細書に示される定義が、引用された特許、公開された出願、および他の刊行物に示される定義と異なる場合、またはその他の点で一致していない場合、本明細書に示される定義に準ずる。
【0062】
本発明では、範囲の形での説明は、保護を求める主題の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈すべきではない。よって、範囲の説明は、あらゆる可能なサブ範囲、および当該範囲内の個々の値を具体的に開示したと見なすべきである。例えば、具体的な数値範囲について、当該範囲の上限と下限の間の全ての中間値、および当該範囲内の任意の他の、または中間値は、いずれも保護を求める主題の範囲に含まれ、その範囲の上下限も保護を求める主題の範囲に含まれる。それらのより小さい範囲の上下限は、そのより小さい範囲に独立して含まれてもよく、範囲の上下限が明確に除外されない限り、それらはまた、保護を求める主題の範囲に属す。設定範囲に1つまたは2つの制限値が含まれる場合、保護を求める主題も、制限値の1つまたは2つが除外された範囲を含む。この原則は、範囲の広さに関係なく適用される。
【0063】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者に容易に知られている各値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」で修飾されている値またはパラメータは、当該値またはパラメータ自体を指す実施形態を含む。例えば、「約X」という記載は、「X」に関する説明を含む。例えば、「約」は、当該分野での実際の標準偏差に従って、1以内または1を超えることを意味することができる。あるいは、「約」は、最大10%(すなわち、±10%)の範囲を意味することができる。例えば、約5mgは、4.5mgから5.5mgまでの任意の数を含むことができる。特定の値または組成が出願および特許出願の範囲で提供される場合、特に明記しない限り、「約」は、当該特定の値または組成の許容誤差範囲内にあるべきである。
【0064】
本明細書に記載の任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、特に明記しない限り、当該範囲内の任意の整数、および適切な場合、その分数(例えば、整数の10分の1および100分の1)の数値を含むと理解されるべきである。
【0065】
本明細書に記載の「投与間隔」とは、被験者に免疫エフェクター細胞療法を実施する複数の治療コースの間、および前処理薬の投与との間の経過時間を指す。したがって、投与間隔は、範囲として示すことができる。
【0066】
本明細書に記載の「用量」は、重量に基づいて計算された用量または体表面積(BSA)に基づいて計算された用量によって表されることができる。重量に基づいて計算された用量は、例えばmg/kg、免疫エフェクター細胞数/kgなど、患者の体重に基づいて算出された患者への投与量である。BSAに基づいて計算された用量は、例えばmg/m、および免疫エフェクター細胞数/mなど、患者の表面積に基づいて算出された患者への投与量である。
【0067】
本明細書に記載の「投与回数」は、所定の時間内の免疫エフェクター細胞の投与または前処理薬の用量の投与の頻度を指す。投与回数は、所定の時間当たりの用量数として表すことができる。例えば、フルダラビンは、1日1回連続4日間、1日1回連続3日間、1日1回連続2日間、または1日1回投与できる。シクロホスファミドは、1日1回連続4日間、1日1回連続3日間、1日1回連続2日間、または1日1回投与できる。
【0068】
本願は、腫瘍を治療するための養子細胞または免疫エフェクター細胞に関するものであり、1回または複数回の治療コースの細胞の投与、およびその使用方法、組成物、および製品を含む。細胞は一般に、キメラ抗原受容体(CAR)などのキメラ抗原受容体、または、T細胞受容体(TCR)などの他のトランスジェニック受容体を発現する。
【0069】
本発明は、BCMA発現に関連する疾患(腫瘍など)を治療するための治療方法および組成物を提供する。
【0070】
本発明は、遺伝子操作された(組換えられた)キメラ受容体を発現する養子細胞または免疫エフェクター細胞を使用して被験者の腫瘍を治療するための方法を提供する。この方法は、養子細胞または免疫エフェクター細胞の単一治療コースの再注入、または複数治療コースの再注入を含む。本明細書で使用される場合、「用量」とは、1つの治療コースで投与または再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の総量を指す。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法が複数の治療コースを含む場合には、各治療コースの用量は同じである。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法が複数の治療コースを含む場合には、各治療コースの用量は異なる。
【0071】
「分割用量」とは、1つの治療コース内で、治療コース全体の用量を複数回に分けて被験者に投与する場合の1回当たりの投与量を指す。一部の実施形態では、1つの治療コース内の用量を複数回に分けて被験者に投与する場合、各投与の分割用量は同じである。一部の実施形態では、1つの治療コース内の用量を複数回に分けて被験者に投与する場合、各投与の分割用量は異なる。本明細書では、特に明記しない限り、用量とは、1つの治療コース内に投与または再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の総量を指す。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、単一の治療コースにおける前記養子細胞または免疫エフェクター細胞の再注入を含む。単一の治療コースとは、特定の期間内に一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を再注入することを指す。一部の実施形態では、その治療コース内に、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を一度に再注入する。一部の実施形態では、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を2回以上に分けて再注入する。一部の実施形態では、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を3回以上に分けて再注入する。一部の実施形態では、毎回再注入する養子細胞または免疫エフェクター細胞は、再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の等分量である。一部の実施形態では、毎回再注入する養子細胞または免疫エフェクター細胞は、再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の非等分量である。一部の実施形態では、毎回再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の量は、被験者の具体的な状況によって医師は決める。被験者の具体的な状況は、例えば、被験者の全体的な健康状況、疾患の重症度、同じ治療コースの前回の投与量に対する反応、先の治療コースに対する反応、被験者の併用薬、毒性に対する反応程度または可能性、合併症、および被験者に再注入する養子細胞または免疫エフェクター細胞の適切な量に影響を与えると医師が考える他の要因であってもよい。一部の実施形態では、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を複数回に分けて再注入する過程において、毎回再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の量は増加傾向を示している。一部の実施形態では、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を複数回に分けて再注入する過程において、毎回再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の量は減少傾向を示している。一部の実施形態では、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を複数回に分けて再注入する過程において、毎回再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の量は、最初に増加傾向、そして減少傾向を示す。一部の実施形態では、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を複数回に分けて再注入する過程において、毎回再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の量は、最初に減少傾向、そして増加傾向を示す。
【0073】
マルチコース再注入とは、複数の上記の期間があり、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を各期間に再注入することを指す。一部の実施形態では、複数の期間の長さは同じである。一部の実施形態では、前記複数の期間の長さは異なる。一部の実施形態では、マルチコースとは、少なくとも2つの上記期間を有することを指す。一部の実施形態では、マルチコースとは、少なくとも3つ以上の期間を有することを指す。
【0074】
一部の実施形態では、複数の治療コースのうちの1つの治療コース内で、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を一度に再注入する。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの1つの治療コース内で、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を2回以上に分けて再注入する。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの1つの治療コース内で、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を3回以上に分けて再注入する。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの1つの治療コース内で、毎回再注入する養子細胞または免疫エフェクター細胞は、再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の等分量である。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの1つの治療コース内で、毎回再注入する養子細胞または免疫エフェクター細胞は、再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の非等分量である。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの1つの治療コース内で、毎回再注入される養子細胞または免疫エフェクター細胞の量は、被験者の具体的な状況によって医師は決める。被験者の具体的な状況は、例えば、被験者の全体的な健康状況、疾患の重症度、同じ治療コースの前回の用量に対する反応、先の治療コースに対する反応、被験者の併用薬、毒性に対する反応程度または可能性、合併症、癌転移、および被験者に再注入する養子細胞または免疫エフェクター細胞の適切な量に影響を与えると医師が考える他の要因であってもよい。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コースで、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を同じ回数で再注入する。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コースで、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を異なる回数で再注入する。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コースで、一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を同じ回数で再注入する。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コースで、同じ一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を再注入する。一部の実施形態では、複数の治療コースのうちの各治療コースで、異なる一定の総量の養子細胞または免疫エフェクター細胞を再注入する。
【0075】
一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コース内で、養子細胞または免疫エフェクター細胞の総量は増加傾向を示している。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コース内で、養子細胞または免疫エフェクター細胞の総量は減少傾向を示している。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コース内で、養子細胞または免疫エフェクター細胞の総量は、最初に増加傾向、そして減少傾向を示す。一部の実施形態では、前記複数の治療コースのうちの各治療コース内で、養子細胞または免疫エフェクター細胞の総量は、最初に減少傾向、そして増加傾向を示す。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、前記養子細胞または免疫エフェクター細胞への被験者の曝露程度を監視し、前記曝露程度に基づいて、後続の分割投与または後続の治療コースの投与量および間隔を決定することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、前記養子細胞または免疫エフェクター細胞への被験者の曝露程度を監視し、前記曝露程度が特定の程度に達した、またはそれを超えたことに基づいて、後続の分割投与または後続の治療コースの投与量を維持または低減すること、および/または後続の分割投与または後続の治療コース間の間隔を維持または低減することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、前記養子細胞または免疫エフェクター細胞への被験者の曝露程度を監視し、前記曝露程度が特定の程度を下回ることに基づいて、後続の分割投与または後続の治療コースの投与量を維持または増加させること、および/または後続の分割投与または後続の治療コース間の間隔を維持または短縮することを含む。
【0077】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、前記養子細胞または免疫エフェクター細胞に対する被験者の毒性応答の程度またはリスクを監視し、前記毒性程度またはリスクに基づいて後続の分割投与または後続の治療コースの投与量および間隔を決定することを含む。一部の実施形態では、前記毒性応答の程度またはリスクは、例えば、CRS、神経毒性、マクロファージ活性化症候群、及び腫瘍崩壊症候群などを含むが、これらに限られていない。
【0078】
一部の実施形態では、細胞に対する宿主適応免疫応答が検出されていない、確立されていない、及び/または特定のレベルまたは程度または段階にまだ達していない場合に、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する。
【0079】
いわゆる腫瘍負荷は、分類と病期分類、発症時の骨髄中の異常な形質細胞の割合、細胞遺伝学的変化、髄外浸潤があるか否か、及び治療後の反応を含む。一部の実施形態では、腫瘍負荷は、血清、尿タンパク質電気泳動、骨髄塗抹標本、骨髄生検、MRD、MRIおよび/またはCTによって評価される。
【0080】
一部の実施形態では、各治療コースの免疫エフェクター細胞の投与量は、被験者の腫瘍負荷を低減するのに十分な細胞の用量を含む。後の治療コースの細胞を投与する時に、被験者におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルは、免疫エフェクター細胞療法の実施前の被験者における血清レベルの10倍または25倍を超えず、及び/または、被験者におけるCRS関連のピークレベルは、免疫エフェクター細胞の投与後に低下し始め、被験者は、先の治療コースの免疫エフェクター細胞によって発現されたキメラ抗原受容体に対して特異的に検出可能な適応宿主免疫応答を示していない。
【0081】
一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞の投与量は、約0.5×10細胞/kg被験者体重以上、または総投与量は1×10細胞以上である;好ましくは、約0.1×10細胞/kg体重以上、または総投与量は1×10細胞以上である;好ましくは、約0.5×10細胞/kg被験者体重以上、または総投与量は1×10細胞以上である;好ましくは、約0.9×10細胞/kg被験者体重以上、または総投与量は1×10細胞以上である。
【0082】
具体的な実施形態では、免疫エフェクター細胞の投与量は、約1×10細胞/kg被験者体重以下、または総投与量は約1×1010細胞以下である;好ましくは、約1×10細胞/kg被験者体重以下、または前記細胞の総投与量は約1×10細胞以下である;好ましくは、約1×10細胞/kg被験者体重以下、または前記細胞の総投与量は約1×10細胞以下である;好ましくは、約5×10細胞/kg被験者体重以下、または前記細胞の総投与量は約9×10細胞以下である。
【0083】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞の投与量は、約0.1×10細胞/kg被験者体重~5×10細胞/kg被験者体重、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量は、約0.1×10細胞~1×1010細胞である。好ましくは、約0.5×10細胞/kg被験者体重~1×10細胞/kg被験者体重、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量は約0.1×10細胞~1×10細胞である。より好ましくは、約0.9×10細胞/kg被験者体重~5×10細胞/kg被験者体重、または前記免疫エフェクター細胞の総投与量は約0.1×10細胞~9×10細胞である。
【0084】
免疫エフェクター細胞療法
本発明によって提供される方法は、少なくとも1つの治療コースの、BCMAを認識するキメラ抗原受容体(例えば、CAR、TCR、TFP、TAC)を発現する免疫エフェクター細胞を、BCMAを発現する腫瘍被験者に投与することを含む。
【0085】
本明細書で使用される「被験者」は、ヒトまたは他の動物などの哺乳動物であり、通常はヒトである。一部の実施形態では、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与および/または後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与前に、被験者はすでに化学療法または放射線療法で治療された。いくつかの局面において、被験者は、他の治療薬に対して難治性または非反応性である。
【0086】
一部の実施形態では、腫瘍は持続性または再発性を有する。例えば、別の治療(化学療法や放射線療法を含む)の介入後も、腫瘍は依然として進行する、または制御された後に再発する。
【0087】
一部の実施形態では、被験者は他の治療薬に反応し、腫瘍負荷が軽減される。いくつかの局面において、被験者は最初は治療薬に反応するが、時間が経つにつれて腫瘍の再発を示す。一部の実施形態では、前記被験者は、例えば、再発のリスクが高いなど、再発のリスクがあると測定によって判断され、これによって、再発の可能性を低減するために、または、再発を防止するために、本発明のCAR T細胞を予防的に投与する。
【0088】
一部の実施形態では、用量の多少および再注入の時間は、被験者の最初の腫瘍負荷によって決められる。例えば、場合によっては、被験者に投与される先の治療コースの免疫エフェクター細胞の数は少ない。固形腫瘍などの腫瘍負荷が低い場合、腫瘍マーカーを使用して腫瘍負荷および/または微小な残存病変を評価することができ、初期用量はより高くなる可能性がある。他の場合には、腫瘍負荷が高い被験者において、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回の投与など、治療コースごとの細胞を分割して持続注入することができ、1~5回の投与が好ましく、2~3回の投与がより好ましい。各投与は、1、2、3、4、5、6日以上間隔して実施されてもよく、または間隔なしで実施されてもよい。
【0089】
本明細書で使用される「治療」という用語は、腫瘍またはその関連症状の完全または部分的な緩和または軽減、及び関連する評価の客観的指標の改善を指す。必要な治療効果は、腫瘍の発生または再発の予防、症状の軽減、腫瘍の直接または間接的な病理学的結果の減少、髄外病変の防止、腫瘍の進行速度の低減、腫瘍状態の改善または緩和、及び予後の軽減または改善を含むが、これらに限られていない。本明細書で使用される機能または活性の「阻害」とは、他の状況における同じ症状と比較する場合、または別の症状と比較する場合の、機能または活性の低下を意味する。
【0090】
一部の実施形態では、前記細胞療法は、自体再注入によって治療することができる。そのため、いくつかの局面において、細胞は、治療を必要とする被験者に由来し、単離および処理後に同じ被験者に投与される。
【0091】
一部の実施形態では、前記細胞療法は、同種異系再注入によって治療し、前記細胞は、単離および/または他の状況においてドナーから抽出および調製され、ドナーと細胞を再注入した被験者(レシピエント)とは異なる。一部の実施形態では、前記ドナーと前記レシピエントは遺伝的に同一である。一部の実施形態では、前記ドナーと前記レシピエントは遺伝的に類似している。一部の実施形態では、前記レシピエントと前記ドナーは同じHLAクラスまたはスーパータイプである。
【0092】
前記細胞は、任意の適切な方法によって投与することができる。例えば、静脈内注射、眼内注射、眼底注射、網膜下注射、硝子体内注射、逆中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前室注射、結膜下(subconjectival)注射、結膜下(subconjunctival)注射、強膜上注射、球後注射、眼周囲注射などの注射、または眼球周囲送達によって投与することができる。一部の実施形態では、細胞は点滴注入によって投与される。一部の実施形態では、細胞は、複数回の点滴注入によって投与され、例えば、30日以内に複数回投与されるか、または連続注入によって細胞が投与される。
【0093】
疾患の予防または治療において、投与量は、疾患のタイプ、キメラ抗原受容体または細胞のタイプ、疾患の重症度および疾患の経過、被験者の以前の治療歴、及び投与された細胞の応答、並びに主治医の判断によることができる。
【0094】
一部の実施形態では、前記免疫エフェクター細胞は、併用療法の一部として、例えば、抗体、操作された免疫エフェクター細胞、受容体または試薬、細胞毒性薬または他の治療法などの別の介入療法と組み合わせて、同時にまたは順次に、任意の順序で投与される。一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、1種以上の他の治療法と組み合わせるか、または別の介入治療法と組み合わせて、同時にまたは任意の順序で順次に実施される。場合によっては、前記免疫エフェクター細胞は、上記の免疫エフェクター細胞集団または1種以上の他の治療薬または方法によりも大きな治療効果を生み出すのに十分に近い時間内に別の治療と同時に投与され、逆もまた同様である。一部の実施形態では、1種以上の他の治療薬の前に免疫エフェクター細胞を投与する。一部の実施形態では、1種以上の他の治療薬の後に免疫エフェクター細胞を投与する。一部の実施形態では、1種以上の他の治療薬は、持続性を高めるように、IL-2、IL-12などのサイトカインを含む。
【0095】
一部の実施形態では、その方法は、例えば、化学療法薬(化学療法剤)、全身放射線、局所放射線療法など、或いはそれらの組み合わせの投与を含む前処理を、免疫エフェクター細胞の投与前に実施することを含む。一部の実施形態では、その方法は、1種以上の化学療法剤を使用して被験者に対して前処理を実施することを含む。一部の実施形態では、その方法は、チューブリン阻害剤および1種以上の他の化学療法剤を使用して被験者に対して前処理を実施することを含む。理論によって制限されることなく、前処理の効果は、リンパ球クリアランス、腫瘍負荷の減少などを含むが、これらに限られていないと考えられている。前記化学療法剤は、化学療法で使用される薬物を指し、例えば、シクロホスファミド、フルダラビン、プロテアーゼ阻害剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブなど)、免疫調節剤(サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイドなど)、メルファラン、マイシン、デキサメタゾン、プレドニゾンなどが挙げられる。
【0096】
前処理は、免疫エフェクター細胞療法の効果を改善することができる。各治療コースにおける免疫エフェクター細胞(例えば、CAR T細胞)の最初の注入の日を0日目とする。前処理は、免疫エフェクター細胞の注入前であればいつでも実施できる。一部の実施形態では、前処理として、フルダラビンまたはシクロホスファミドを単独で、または組み合わせて、CAR-T細胞の注入前の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日、好ましくは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日、より好ましくは、少なくとも2、3、4、5、6、7、または8日に被験者に投与する。一部の実施形態では、前処理は、CAR-T細胞の注入の2~12日前にフルダラビンとシクロホスファミドを投与することを含む。一部の実施形態では、前処理は、CAR-T細胞の注入の7日前にフルダラビンとシクロホスファミドを投与することを含む。
【0097】
CAR T治療効果を最大化するように、前処理の成分の投与のタイミングを調整することができる。通常、フルダラビンとシクロホスファミドをを毎日投与することができる。一部の実施形態では、フルダラビンとシクロホスファミドを、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約7日間毎日投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを4日間連続で毎日投与し、シクロホスファミドを2日間連続で毎日投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを2日間連続で毎日投与し、シクロホスファミドを2日間連続で毎日投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを3日間連続で毎日投与し、シクロホスファミドを1回投与するか、またはシクロホスファミドを2日間、または3日間、または5日間連続して投与する。
【0098】
上述のように、各ラウンドでCAR T細胞療法を患者に与える日を0日目として指定する。一部の実施形態では、フルダラビンを、0日目の前の6日目(すなわち、-6日目)、-5日目および-4日目に患者に投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを、-5、-4および-3日目に患者に投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを、-6、-5、-4および-3日目に患者に投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを、-5、-4、-3および-2日目に患者に投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを、-4、-3および-2日目に患者に投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを、-3および-2日目に患者に投与する。一部の実施形態では、フルダラビンを、-3、-2および-1日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-6、-5、-4、-3および-2日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-6および-5日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-4、-3および-2日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-4及び-3日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-5および-4日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-5日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-3および-2日目に患者に投与する。一部の実施形態では、シクロホスファミドを、-3、-2および-1日目に患者に投与する。
【0099】
フルダラビンとシクロホスファミドを、同じ日に、または異なる日に投与することができる。
【0100】
特定の実施形態では、フルダラビンとシクロホスファミドは、同時にまたは順次に投与することができる。
【0101】
フルダラビンとシクロホスファミドを、任意の経路(静脈内点滴(I.V.)を含む)を使用して投与することができる。一部の実施形態では、フルダラビンとシクロホスファミドは、フルダラビンとシクロホスファミドの薬品プロトコルに従って投与することができる。
【0102】
一部の実施形態では、養子細胞または免疫エフェクター細胞療法は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)免疫療法、自己細胞療法、操作された自己細胞療法(eACT)、及び同種異系T細胞移植法からなる群より選ばれる。一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞療法は、腫瘍抗原(例えば、BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体修飾T細胞の投与である。
【0103】
一部の実施形態では、前処理は、フルダラビンを、約50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1mg/m/日以下に投与し、及び/または、シクロホスファミドを、約700、690、680、670、660、650、640、630、620、610、600、595、590、585、580、579、578、576、575、574、573、572、57、570、569、568、567、566、565、564、563、562、561、560、559、558、557、556、555、554、553、552、551、550、549、548、547、546、545、544、543、542、541、540、539、538、537、536、535、534、533、532、531、530、529、528、527、526、525、524、523、522、521、520、519、518、517、516、515、514、513、512、511、510、509、508、507、506、505、504、503、502、501、500、490、480、470、460、450、440、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、または100mg/m/日以下に投与することを含む。
【0104】
一部の実施形態では、フルダラビンの投与量は、約10~50mg/m/日、または約15~40mg/m/日、または約15~35mg/m/日、または15~30mg/m/日、または約20~30mg/m/日である。
【0105】
一部の実施形態では、シクロホスファミドの投与量は、約100~700mg/m/日、または約150~600mg/m/日、または約190~600mg/m/日、または約190~560mg/m/日である。
【0106】
好ましい一形態では、シクロホスファミドの投与量は、約150~400mg/m/日であり、好ましくは、約190~350mg/m/日である。
【0107】
好ましい一形態では、シクロホスファミドの投与量は、約400~600mg/m/日であり、好ましくは、約450~600mg/m/日であり、より好ましくは、約450~560mg/m/日である。
【0108】
本明細書に記載の方法は、他の様々な介入を含んでもよい。例えば、シクロホスファミドとフルダラビンは、投与後に患者に不良反応を引き起こす可能性がある。本発明の範囲は、これらの不良事象のいくつかを低減するように患者に組成物を投与することを含む。特定の実施形態では、その方法は、生理食塩水を患者に投与することを含む。シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与前または投与後、或いはシクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与前および投与後に生理食塩水を投与することができる。一部の実施形態では、各注入日にシクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与前、およびシクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与後に、生理食塩水を患者に投与する。また、メスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)などのアジュバントおよび賦形剤を患者に投与することもできる。また、外因性サイトカインを患者に投与することもできる。
【0109】
一部の実施形態では、先の治療コースの免疫エフェクター細胞または後の治療コースの免疫エフェクター細胞の注入前に前処理を実施し、治療の効果を改善する。例えば、いくつかの局面において、前処理は、先の治療コースの免疫エフェクター細胞または後の治療コースの免疫エフェクター細胞を使用する治療効果を改善し、または、被験者における免疫エフェクター細胞(例えば、CAR-T細胞)の持続性を増加させる。一部の実施形態では、前処理治療は、疾患の安定期を延長させる。
【0110】
免疫エフェクター細胞を被験者に投与されると、いくつかの局面において、体内の免疫エフェクター細胞集団の持続生存期間およびその生物学的活性を、複数の既知の方法のいずれか1つによって測定する。例えば、体内におけるCAR-T細胞の持続生存期間は、CAR-T細胞が体内に「移植」された後の体内での持続生存期間を指す。CAR-Tの持続生存期間についての測定は、最初の移植が終わった後、任意の2つの連続した検出が陰性になるまで、末梢血に含まれるCAR DNAのコピー数を各訪問ポイントでQ-PCR法を使用して検出し、それをCAR-T細胞の持続生存期間として記録することができる。
【0111】
免疫エフェクター細胞の生物学的活性は、例えば、ELISAまたはフローサイトメトリーなど、操作されたまたは天然のT細胞または他の免疫細胞の抗原への特異的結合によって評価することができる。
【0112】
特定の実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞の細胞殺傷能力は、本分野で知られている任意の適切な方法によって検測することができ、例えば、CD107a、IFNγ、IL-2およびTNFなどの特定のサイトカインの発現及び/または分泌を測定することなどによって、免疫エフェクター細胞の生物学的活性を測定することができる。いくつかの局面において、生物学的活性は、腫瘍負荷または負担の軽減などの臨床結果によって評価される。いくつかの局面において、細胞毒性、持続性および/または増殖、および/または宿主免疫応答の有無を評価する。
【0113】
免疫エフェクター細胞療法の場合、所定の「用量」の投与は、単一組成物として、及び/または単回で持続投与することを含み、例えば、所定の量または所定の数の免疫エフェクター細胞を単回注射または持続注入することを含み、また、所定量または所定の数の免疫エフェクター細胞を、30、29、28、27、26、25、24、23、22、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日以下の特定の時間帯に、分割用量で複数の単独の組成物または注入物に提供することにより投与する。したがって、各治療コースの免疫エフェクター細胞は、単一の時点で与えられる、または開始される特定の数の免疫エフェクター細胞の単回または連続投与である。ただし、場合によっては、各治療コースの免疫エフェクター細胞は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日以下の時間帯に複数回注射または注入され、例えば、1日1回、連続して3日間または2日間注入され、或いは1日以内に複数回注入される。いくつかの局面において、先の治療コースの免疫エフェクター細胞は、単一の医薬組成物として投与される。
【0114】
第1の治療コースの投与に対して、「後の治療コース」という用語は、第1の治療コースの後の期間中に介在する用量(間に挿入される用量)を被験者に与えずに被験者に投与する用量を指す。それにもかかわらず、この用語は、単回の分割用量に含まれる一連の注入または注射における第2、第3、及び/または他の注射または注入を含まない。そのため、特に明記しない限り、1日、2日、または3日以内の第2の注入は、本明細書で使用される「後の治療コース」とは見なされない。同様に、分割用量内の複数の用量シリーズの第2、第3、及び他の用量も、「後の治療コース」の用量の意味での「介在する」用量とは見なされない。そのため、特に明記しない限り、被験者は第1の治療コースが始まった後に第2または後続の治療コースの注入を受けた場合でも、第1の治療コースまたは先の治療コースが始まった後、30日を超える一定期間の投与量は、「後の治療コース」の用量と見なされる。別段説明しない限り、30日間も多くの時間内での同じ免疫エフェクター細胞の複数回の投与は、単一用量と見なされ、最初の投与から30日間(各治療コースの最初の注入(すなわち、最初の投与)の当日は1日目とされる)以内の免疫エフェクター細胞の投与は、後の治療コースでの投与とは見なされず、第2の用量が先の治療コースの免疫エフェクター細胞に「連続する」ことを目的とするかどうかを決定するための介在用量とは見なされない。
【0115】
本明細書で使用されているように、「第1の治療コース」は、本明細書に記載の方法に従う治療で実施される最初の治療コースで投与される総用量を説明するために使用される。この用量は、単一の治療コースで投与される総用量、または複数の治療コースで最初の治療コースで投与される総用量に等しい。この用語は、被験者が以前に免疫エフェクター細胞療法を受けたことがないこと、または被験者が以前に同じ抗原を標的とする免疫エフェクター細胞療法を受けたことがないことを必ずしも意味するとは限らない。
【0116】
通常は、改善された効力および/または低減された毒性リスクを提供するために、先の治療コースの免疫エフェクター細胞および/または1つ以上の後の治療コースの免疫エフェクター細胞の用量は設計される。一部の実施形態では、各治療コースの免疫細胞の用量は、約0.5×10細胞/kg被験者体重~1×10細胞/kg被験者体重よりも高い、低い、またはそれに等しい。例えば、約0.6×10、0.7×10、0.8×10、0.9×10、1.0×10、1.1×10、1.2×10、1.3×10、1.4×10、1.5×10、1.6×10、1.7×10、1.8×10、1.9×10、2.0×10、2.1×10、2.2×10、2.3×10、2.4×10、2.5×10、2.6×10、2.7×10、2.8×10、2.9×10、3.0×10、3.1×10、3.2×10、3.3×10、3.4×10、3.5×10、3.6×10、3.7×10、3.8×10、3.9×10、4.0×10、4.1×10、4.2×10、4.3×10、4.4×10、4.5×10、4.6×10、4.7×10、4.8×10、4.9×10、5.0×10、5.1×10、5.2×10、5.3×10、54.×10、5.5×10、5.6×10、5.7×10、5.8×10、5.9×10、6.0×10、6.1×10、6.2×10、6.3×10、6.4×10、6.5×10、6.6×10、6.7×10、6.8×10、6.9×10、7.0×10、7.1×10、7.2×10、7.3×10、7.4×10、7.5×10、7.6×10、7.7×10、7.8×10、7.9×10、8.0×10、8.1×10、8.2×10、8.3×10、8.4×10、8.5×10、8.6×10、8.7×10、8.8×10、8.9×10、9.0×10、9.1×10、9.2×10、9.3×10、9.4×10、9.5×10、9.6×10、9.7×10、9.8×10、9.9×10、1.0×10細胞/kg被験者体重よりも高い、低い、またはそれに等しい。一部の実施形態では、各治療コースの免疫細胞の総投与量は、約0.1×10細胞~1×1010細胞よりも高い、低い、またはそれに等しい。好ましくは、約1×10細胞/kg被験者体重~1×10細胞/kg被験者体重よりも高い、低い、またはそれに等しく、または、前記免疫エフェクター細胞の総投与量は、約0.5×10細胞~1×10細胞よりも高い、低い、またはそれに等しい。より好ましくは、約1.5×10細胞/kg被験者体重~3×10細胞/kg被験者体重よりも高い、低い、またはそれに等しく、または、前記免疫エフェクター細胞の総投与量は、約0.5×10細胞~5×10細胞である。
【0117】
具体的な実施形態では、免疫エフェクター細胞の数は、キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞の数を指し、例えば、CAR-T細胞の数を指す。他の実施形態では、免疫エフェクター細胞の数はまた、投与されたT細胞またはPBMCまたは総細胞の数を指すことができる。
【0118】
一部の実施形態では、後の治療コースの用量は、腫瘍負荷またはその指標、および/または疾患または病巣の1つ以上の症状を軽減するのに十分である。
【0119】
一部の実施形態では、第1の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与前の時刻と比較して、免疫エフェクター細胞の投与後、骨髄中の形質細胞の割合、血液/尿Mタンパク質、髄外軟部組織形質細胞腫などの腫瘍負荷は、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または100%減少した。
【0120】
Mタンパク質は、形質細胞またはBリンパ球のモノクローナル悪性増殖によって産生される大量の異常な免疫グロブリンである。
【0121】
本発明の教示に基づいて当業者が理解すべきであるように、本発明に開示された特定の用量は、本発明者が研究によって得た安全かつ有効な用量であり、臨床医などの当業者は、患者の腫瘍負荷、患者自身の体調などの要因など、さまざまな実際の状況によって、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の用量を決定することができる;後の治療コースの免疫エフェクター細胞をさらに投与する必要がある場合、当業者は、例えば、免疫エフェクター細胞の投与後の腫瘍負荷の変化に基づいて、後の治療コースの免疫エフェクター細胞の用量を決定することができる。
【0122】
一部の実施形態では、各治療コースの免疫エフェクター細胞の用量は、毒性を引き起こさない、または毒性を低下させる量を含む。前記毒性は、サイトカイン放出症候群(CRS)、重度のCRS(sCRS)、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、3日以上持続した少なくとも38℃または約38℃の発熱、CRP血症レベルが少なくとも約20mg/dLに等しいこと、および/または神経毒性であってもよい。いくつかの局面において、細胞の投与後に被験者が示す毒性または毒性結果の可能性に基づいて、後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与数を決定する。例えば、一部の実施形態では、腫瘍負荷に基づいて被験者において毒性が進行する結果の可能性を予測する。一部の実施形態では、その方法は、免疫エフェクター細胞の投与前に毒性結果および/または腫瘍負荷を検出または評価することを含む。
【0123】
投与時間
一部の実施形態では、後の治療コースの投与時間は、先の治療コースの完了(先の治療コースの総用量の注入完了日を0日目とする)から起算する。
【0124】
一部の実施形態では、被験者におけるCRSを示す因子の血清レベルは、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後の被験者における当該インジケーターの血清レベルの約10倍、25倍、50倍、または100倍を超えない場合、後の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される。
【0125】
一部の実施形態では、被験者において、CRSに関連する結果(例えば、CRSに関連するまたはCRSを示す血清因子)またはその臨床徴候または症状、例えば、発熱、低酸素症、低血圧、または神経障害など、がすでにピークレベルに達しており、免疫エフェクター細胞の投与治療後に低下した場合、後の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される。一部の実施形態では、上記結果が最高レベルと比べて投与後に低下したと観察された場合、または投与後の結果の最大値またはレベルが低下した場合に、後の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される。
【0126】
一部の実施形態では、毒性結果のインジケーター(例えば、CRSの血清インジケーター)のレベルが、先の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する直前のインジケーターのレベルの約25倍を下回ると、後の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される。いくつかの局面において、後の治療コースの免疫エフェクター細胞は、被験者がCRSを示さないか、または重度のCRSを示さない時に投与される。
【0127】
いくつかの局面において、後の治療コースの免疫エフェクター細胞は、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与前の腫瘍負荷と比較して、患者の腫瘍負荷が減少する時点で投与される。一部の実施形態では、後の治療コースの免疫エフェクター細胞は、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後、骨髄中の形質細胞の割合、血液/尿Mタンパク質、髄外軟部組織形質細胞腫などの腫瘍負荷が約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%またはそれ以上減少した場合に投与される。
【0128】
一部の実施形態では、先の治療コースの免疫エフェクター細胞または先の用量への応答が低下した後に、被験者の疾患または病巣が再発しない場合、後の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される。一部の実施形態では、腫瘍負荷の減少は、例えば、分類と病期分類、発症時の骨髄中の異常な形質細胞の割合、細胞遺伝学的変化、髄外浸潤があるか否か、及び治療後の反応など、1つ以上の指標の低下によって示される。一部の実施形態では、宿主適応免疫応答が検出されていない、確立されていない、または特定のレベル、程度または段階にまだ達していない場合に、後の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される。いくつかの局面において、被験者の記憶免疫応答が発達する前に、後の治療コースの免疫エフェクター細胞は投与される。
【0129】
いくつかの局面において、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与と後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与との間の時間は、約4週間から24週間である。
【0130】
一部の実施形態では、後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後に、追加のまたはさらなる後の治療コースの免疫エフェクター細胞は投与される。例えば、第2の後の治療コースの免疫エフェクター細胞(第3の治療コースの用量)、第3の後の治療コースの免疫エフェクター細胞(第4の治療コースの用量)などは投与されることなど。
【0131】
一部の実施形態では、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与または後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する直前と比較して、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与した後、腫瘍負荷は、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%またはそれ以上減少する。一部の実施形態では、腫瘍負荷は、血清、尿タンパク質電気泳動、骨髄塗抹標本、骨髄生検、MRD、MRIおよび/またはCTによって評価することができる。
【0132】
再注入された細胞に対する宿主の免疫応答
一部の実施形態では、1つ以上の用量例えば後の治療コースの免疫エフェクター細胞は、被験者の免疫応答(例えば、トランスジェニック受容体または細胞に対する適応性または特異的免疫応答)が存在しない、検出できない、または一定のレベル以上の検出ができない場合に投与される。トランスジーンに対する特異的免疫応答の存在または程度は、通常、受容体の免疫原性(例えば、細胞によって発現されるCARまたはトランスジェニックTCR)および/または被験者が細胞に曝露される時間に関係する。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体または細胞に対する免疫応答、適応性または特異的免疫応答、検出可能な免疫応答および/または記憶応答が被験者において発達する前に、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する。この点において、他の先または先の治療コースの免疫エフェクター細胞によりも遅い時点で後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する他の方法と比較して、後の治療コースの免疫エフェクター細胞の増殖および/または被験者に持続存在する能力は改善される。一部の実施形態では、後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与時点、および/または投与するかどうかは、被験者がそのような免疫応答を示すか、または細胞またはキメラ抗原受容体に対して特異的に検出可能な特異性または適応性の宿主免疫応答のような検出可能な読み取りによって決定される。例えば、先の治療コースの免疫エフェクター細胞によって発現されるCAR、及び/またはあるレベルでそのような反応が検出されたかどうかによって決定される。一部の実施形態では、そのような反応が検出された場合、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を被験者に投与しない。被験者が受容体(例えば、先の治療コースの免疫エフェクター細胞によって発現されるCAR)に対する特異性または適応性(例えば、体液または細胞によって媒介される)免疫応答を示さない場合、または、検出可能なレベルまたは許容可能なレベルよりも高いレベルでそのような反応またはインジケーターを表さない場合、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する。いくつかの局面において、初期用量が多かった場合と比較して、後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する時、被験者は、先の治療コースの免疫エフェクター細胞によって発現されたCARに対する体液または細胞によって媒介される免疫応答の低下を示す。
【0133】
細胞の持続性
一部の実施形態では、提供される方法は、投与された免疫エフェクター細胞に対する被験者の持続性を増加させ、例えば、経時的な細胞の数または持続時間を増加させ、及び/または免疫細胞療法における効力および治療結果を改善する。いくつかの局面において、その方法の利点は、他の方法と比較して、キメラ抗原受容体を発現する細胞(例えば、CAR-T細胞)が治療結果をより大きく、及び/またはより長く改善できることである。これらの結果は、重度の腫瘍負荷のある被験者であっても、患者の生存と緩和を含むことができる。
【0134】
一部の実施形態では、先の治療コースの免疫エフェクター細胞及び/または後の治療コースの免疫エフェクター細胞の後に、被験者においてキメラ抗原受容体を発現する細胞(例えば、CAR-発現細胞)の存在及び/または量を検出する。いくつかの局面において、定量的PCR(qPCR)を使用して、被験者の血液または血清または器官または組織(例えば、疾患部位)においてキメラ抗原受容体を発現する細胞(例えば、CAR-T)の量を評価する。いくつかの局面において、持続性は、DNA1マイクログラムあたりのコードされた受容体、例えば、CARのDNAまたはプラスミドのコピー、または、サンプルの1マイクロリットルあたりの血液または血清の受容体発現、例えば、CAR発現細胞の数、または、サンプルの1マイクロリットルあたりの末梢血単核細胞(PBMC)または白血球またはT細胞の総数として定量される。
【0135】
一部の実施形態では、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日目に、被験者において細胞が検出された。いくつかの局面において、最初または後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後または少なくとも2、4または6週間、または3、6または12、18または24、または30または36か月、または1、2、3、4、5年以上に細胞が検出された。
【0136】
一部の実施形態では、その方法は、被験者の血液または血清または他の体液または器官または組織において、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000、1500、2000、5000、10000または15000のコピーまたは例えば、DNAの1マイクログラムあたりのCARのような受容体をコードする核酸の最大濃度、または少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9の、例えば、CAR発現細胞/末梢血単核細胞(PBMC)の総数、単球の総数、T細胞の総数または総マイクロリットル数のような受容体発現を引き起こす。一部の実施形態では、受容体を発現する細胞は、被験者の血液中の総PBMCの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、または60%として検出され、及び/またはそのレベルは、最初の投与または後続の投与後に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、または52週間持続し、またはそのような投与後に1、2、3、4、または5年以上持続する。
【0137】
いくつかの局面において、その方法は、例えば、被験者の血清においてCARなどのキメラ抗原受容体をコードする核酸のコピーを、DNA1マイクログラムあたり少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも10倍または少なくとも20倍増加させる。
【0138】
一部の実施形態では、受容体を発現する細胞は、被験者の血液または血清において検出でき、例えば、qPCRまたはフローサイトメトリーなどの指定された方法によって、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後または後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60日以上に、または、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後または後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後、少なくともまたは約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24週間以上持続する。
【0139】
いくつかの局面において、免疫組織化学、PCR及び/またはフローサイトメトリーによって測定される100細胞あたりのキメラ抗原受容体をコードする核酸のコピー数、例えば、末梢血または骨髄または他の隔壁チャンバー内でのベクターコピー数は、細胞を投与した後、例えば、先の治療コースの免疫エフェクター細胞または後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与後約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、または少なくとも約6週間、または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月、または少なくとも2または3年に、少なくとも0.01、少なくとも0.1、少なくとも1、または少なくとも10である。
【0140】
キメラ抗原受容体を発現する細胞
前記免疫エフェクター細胞は、BCMAまたはその変異体を認識するキメラ抗原受容体を発現する。キメラ抗原受容体(CAR)は通常、抗体分子の一部など、細胞外抗原結合ドメインを含み、それは通常抗体の可変重(VH)鎖領域及び/または可変軽(VL)鎖領域、例えば、scFv抗体フラグメントである。
【0141】
一部の実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号8に示されるLCDR3、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号4に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号9に示されるLCDR3、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、配列番号11に示されるHCDR1、配列番号12に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、配列番号13に示されるHCDR1、配列番号14に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。具体的な一形態では、前記抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、配列番号11に示されるHCDR1、配列番号12に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、および配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0142】
一部の実施形態では、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい一形態では、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい一形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号5に示されるHCDR3を有し、軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0143】
一部の実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。具体的な実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0144】
一部の実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;または、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。具体的な実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有し、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有し、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0145】
一部の実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または41に示されるアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、配列番号36、37、38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい一例では、前記キメラ抗原受容体は、配列番号36に示されるアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0146】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体(例えば、CAR)の抗体部分は、連結配列をさらに含み、それは、免疫グロブリン定常領域またはその変異体またはその修飾形態の少なくとも一部、例えば、IgG4ヒンジ領域および/またはCH1/CLおよび/またはFc領域などのヒンジ領域であってもよい。一部の実施形態では、前記定常領域または部分は、IgG4またはIgG1などのヒトIgGのものである。
【0147】
その抗原認識ドメインは、一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達部分に接続され、例えば、CARの場合、抗原受容体複合体(例えば、TCR複合体)が活性化されたシグナル伝達部分、および/または別の細胞表面受容体を介したシグナルを模倣する。そのため、一部の実施形態では、抗原結合成分(例えば、抗体)は、1つまたは複数の膜貫通および細胞内シグナル伝達ドメインに接続される。一部の実施形態では、前記膜貫通ドメインは細胞外ドメインに融合される。一実施形態では、天然に関連する受容体(例えば、CAR)のドメインの1つである膜貫通ドメインが使用される。場合によっては、前記膜貫通ドメインは、前記ドメインが同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することを避けるように、アミノ酸置換によって選択または修飾され、これによって、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑える。
【0148】
一部の実施形態では、前記膜貫通ドメインは、天然または合成のものに由来する。天然なものに由来する場合、いくつかの局面において、前記ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体に由来するα、βまたはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154を含み、及び/または膜貫通領域は、その機能的変異体(例えば、その構造部分(例えば、膜貫通構造部分)、性質を実質的に保持するもの)のもの(すなわち、少なくともそれらの膜貫通領域を含む)を含む。一部の実施形態では、前記膜貫通ドメインは、CD4、CD28またはCD8に由来する膜貫通ドメインであり、例えば、CD8αまたはその機能的変異体である。あるいは、一部の実施形態では、前記膜貫通ドメインは合成されるものである。いくつかの局面において、前記合成膜貫通ドメインは、主にロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含む。いくつかの局面において、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンの三量体は、合成された膜貫通ドメインの各末端に現れる。一部の実施形態では、前記接続は、リンカー、スペーサー及び/または膜貫通ドメインを介して起こる。
【0149】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、天然の抗原受容体を介したシグナル、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を介したシグナル、及び/または個々の共刺激受容体を介したシグナルを模倣または近似する物を含む。一部の実施形態では、短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカー、例えば、グリシン-セリンダブレットのリンカーのような、グリシンおよびセリンを含む長さ2~10アミノ酸のリンカーが存在し、CARの細胞質シグナル伝達ドメインと膜貫通ドメイとの間に接続が形成される。
【0150】
前記受容体、例えばCARは、一般に、少なくとも1つまたは複数の細胞内シグナル伝達部分を含む。一部の実施形態では、前記受容体は、例えば、CD3ζ鎖など、T細胞の活性化と細胞毒性を媒介するTCRCD3+鎖のような、TCR複合体の細胞内成分を含む。したがって、いくつかの局面において、抗原結合部分は、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに接続される。一部の実施形態では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/またはその他のCD膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、前記受容体、例えば、CARは、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25またはCD16など、1つまたは複数の他の分子の部分をさらに含む。例えば、いくつかの局面において、CARまたは他のキメラ抗原受容体は、CD3ζ(CD3-ζ)またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25またはCD16との間のキメラ分子を含む。
【0151】
一部の実施形態では、CARまたは他のキメラ抗原受容体の結合時に、受容体の細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化し、例えば、操作されてCARのT細胞を発現する。例えば、場合によって、CARは、細胞溶解活性、または、サイトカインやその他の因子の分泌などのヘルパーT細胞活性のような、T細胞の機能を誘導する。一部の実施形態では、抗原受容体部分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分は、例えば、エフェクター機能シグナルを伝達する場合、完全な免疫刺激鎖を置き換えるために使用される。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含む、しかも、いくつかの局面において、抗原受容体の接合後にシグナル伝達を開始するようにこれらの受容体と一致に作用する、自然に存在する共受容体をも含む。
【0152】
他の実施形態では、CARは、共刺激シグナルを生成するための成分を含まない。いくつかの局面において、他のCARは同じ細胞で発現され、第2のまたは共刺激シグナルを生成するための成分を提供する。
【0153】
いくつかの局面において、T細胞活性化は、TCRにより抗原依存性の最初の活性化を開始するもの(最初の細胞質シグナル伝達配列)と、抗原非依存的に作用して第2のまたは共刺激シグナルを提供するもの(第2の細胞質シグナル伝達配列)との2種類の細胞質シグナル伝達配列によって媒介されると説明される。一部の実施形態では、前記CARは、このようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。
【0154】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体(例えば、CAR)の抗体部分はさらにシグナルペプチドを含み、例えば、CD8またはその変異体を含むシグナルペプチド、例えば、配列番号35に示されるアミノ酸配列、または配列番号35と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0155】
いくつかの局面において、前記CARは、主要な細胞質シグナル伝達配列を含み、それは、TCR複合体の初期活性化を調節する。刺激的に作用する最初の細胞質シグナル伝達配列は、シグナル伝達モチーフを含むことができ、それは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして知られている。ITAMの例として、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものを含む最初の細胞質シグナル伝達配列が挙げられる。一部の実施形態では、CARにおける細胞質シグナル伝達分子は、細胞質シグナル伝達ドメインを含み、その一部はCD3ζの配列に由来する可能性がある。
【0156】
一部の実施形態では、前記CARは、CD28、CD137、OX40、DAP10、及びICOSなどの共刺激受容体の膜貫通部分および/またはシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの局面において、同じCARには、活性化および共刺激部分の両方が含まれている。
【0157】
一部の実施形態では、活性化ドメインは1つのCARに含まれ、共刺激成分は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。一部の実施形態では、前記CARは、活性化または刺激CAR、共刺激CARを含み、それらはいずれも同じ細胞上で発現される(WO2014/055668を参照)。いくつかの局面において、細胞は、1つ以上の刺激または活性化CARおよび/または共刺激CARを含む。一部の実施形態では、細胞は、疾患または病巣に関連するおよび/または特異的なCAR以外のCARを認識するもののような阻害性CAR(iCAR、Fedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,5(215)(2013年12月)を参照)をさらに含み、これによって、疾患を標的とするCARによって送達される活性化シグナルは、阻害性CARとそのリガンドとの結合により、例えば、オフターゲット効果を減らすまたは阻害する。
【0158】
一部の実施形態では、前記キメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達部分、例えば、CARは、CD3ζ細胞内ドメインと共刺激シグナル伝達領域を含む。特定の実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含み、CD3(例えば、CD3-ζ)細胞内ドメインに接続される。一部の実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、キメラCD28および/またはCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインを含み、CD3ζ細胞内ドメインに接続される。
【0159】
一部の実施形態では、前記CARは、1つ以上、例えば、2つ以上の共刺激ドメインと活性化ドメイン、例えば、細胞質部分の初期活性化ドメインを包含する。例示的なCARには、CD3-ζ、CD28、およびCD137の細胞内部分が含まれる。
【0160】
場合によっては、CARは、第1世代、第2世代、および/または第3世代CARと呼ばれる。いくつかの局面において、第1世代CARは、抗原結合時にCD3鎖誘導シグナルのみを提供するCARである;いくつかの局面において、第2世代CARは、このようなシグナルおよび共刺激シグナルを提供するCARであり、例えば、共刺激受容体(例えば、CD28またはCD137)からの細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARである;いくつかの局面において、第3世代CARは、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むCARである。
【0161】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、抗体または抗体フラグメントを有する細胞外部分を含む。いくつかの局面において、キメラ抗原受容体は、抗体またはフラグメントを有する細胞外部分および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、前記抗体またはフラグメントは、scFvを含み、前記細胞内ドメインはITAMを含む。いくつかの局面において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ζ鎖のζ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、膜貫通ドメインを含み、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを接続する。いくつかの局面において、前記膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通部分を含む。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインと膜貫通ドメインは直接にまたは間接的に接続することができる。一部の実施形態では、前記細胞外ドメインと膜貫通ドメインは連結配列を介して接続される。一部の実施形態では、前記受容体は、膜貫通ドメインが由来する分子の細胞外部分、例えば、CD28細胞外部分を含む。一部の実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、例えば、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間の、T細胞共刺激分子またはその機能的変異体に由来する細胞内ドメインを含む。いくつかの局面において、T細胞共刺激分子は、CD28または41BBである。例えば、一部の実施形態では、CARは、抗体フラグメントなどの抗体を含み、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体を含む膜貫通ドメイン、およびCD28のシグナル伝達部分または機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変異体である。一部の実施形態では、CARは、抗体フラグメントなどの抗体を含み、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体を含む膜貫通ドメイン、およびCD137のシグナル伝達部分または機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変異体である。一部の実施形態では、前記受容体はさらに連結配列を含み、連結配列は、Ig分子(例えば、ヒトIg分子)の部分、例えば、Igヒンジ、例えば、IgG4ヒンジ、例えば、ヒンジの連結配列を含む。一部の実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、(i)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζ;または(ii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζ;または(iii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζを有する。
【0162】
例えば、一部の実施形態では、CARは、scFvを含む抗体フラグメントなどの抗体、ヒンジ領域および1つ以上の重鎖分子定常領域(例えば、Igヒンジを含む連結配列)などの免疫グロブリンの一部を含む連結配列のような連結配列、CD28由来の膜貫通ドメインの全部または一部を含む膜貫通ドメイン、CD28由来の細胞内シグナルドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、scFvなどの抗体またはフラグメント、Igヒンジを含む任意の連結配列のような連結配列、CD28由来の膜貫通ドメイン、CD137由来の細胞内シグナル伝達ドメインおよびCD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含む。
【0163】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、養子細胞または免疫エフェクター細胞を被験者に投与することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、同じ腫瘍抗原に対する2種以上の養子細胞または免疫エフェクター細胞を異なる治療コースで被験者に投与することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、異なる腫瘍抗原に対する2種以上の養子細胞または免疫エフェクター細胞を異なる治療コースで被験者に投与することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、同じ腫瘍抗原の同じエピトープに対する2種以上の養子細胞または免疫エフェクター細胞を異なる治療コースで被験者に投与することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、同じ腫瘍抗原の異なるエピトープに対する2種以上の養子細胞または免疫エフェクター細胞を異なる治療コースで被験者に投与することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、同じ部位の腫瘍を治療するために2種以上の養子細胞または免疫エフェクター細胞を異なる治療コースで被験者に投与することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、異なる部位の腫瘍を治療するために2種以上の養子細胞または免疫エフェクター細胞を異なる治療コースで被験者に投与することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に使用される養子細胞または免疫エフェクター細胞の少なくとも1つは、BCMAを標的とするCAR-T細胞である。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に使用される養子細胞または免疫エフェクター細胞の少なくとも1つは、本明細書に記載のBCMAを標的とするCAR-T細胞である。上記の状況下で、臨床医などの当業者は、先の治療の状況によって、本発明のBCMA-CAR-T細胞の投与回数および投与量を決定することができる。
【0164】
免疫エフェクター細胞
本明細書に記載の方法によって提供される細胞は、キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞である。その細胞は、一般に哺乳動物細胞であり、通常はヒト細胞である。一部の実施形態では、細胞は、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ器官に由来し、骨髄やリンパ球様細胞などの自然免疫または獲得免疫の細胞であり、リンパ球を含み、一般的にはT細胞及び/またはNK細胞である。他の例示的な細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、多能性(multipotent)および多能性(pluripotent)幹細胞のような幹細胞を含む。細胞は一般に、被験者から直接に単離された細胞および/または被験者から単離および凍結された細胞などの初代細胞である。一部の実施形態では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つ以上のサブグループ、例えば、全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞及びその亜集団、を含み、例えば、機能、活性化状態、成熟、分化能、増殖、リサイクル、局在化、および/または持続能力、抗原特異性、抗原受容体タイプ、特定の器官または隔壁チャンバーにおける存在、マーカーまたはサイトカイン分泌、および/または分化の程度によって限定されるものを含む。治療される被験者に関して、細胞は同種異系および/または自体であってもよい。方法は、既存の方法を含む。いくつかの局面において、例えば、既存の技術において、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)などの多能性および/または単能性幹細胞である。一部の実施形態では、その方法は、被験者から細胞を単離し、それを調製、処理、培養、および/または操作し、凍結保存の前または後に同じ患者に再導入することを含む。
【0165】
T細胞及び/またはCD4+及び/またはD8+T細胞のサブタイプおよび亜集団は、初代T(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞及びそのサブタイプ(例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化型エフェクターメモリーT細胞)、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在するおよび養子的に調節されるT(Treg)細胞、ヘルパーT細胞(例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞)、α/βT細胞、および/またはδ/γT細胞を含む。
【0166】
一部の実施形態では、前記細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。一部の実施形態では、細胞は、単球または顆粒球であり、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0167】
一部の実施形態では、前記細胞は、遺伝子操作によって導入される1つまたは複数の核酸を含み、それにより、前記核酸の組換えまたは遺伝子操作された産物を発現する。一部の実施形態では、核酸は異種であり、すなわち、通常、細胞またはその細胞から得られたサンプルに存在せず、例えば、別の生体または細胞から得られたサンプル由来のものであり、例えば、通常は操作された細胞および/またはそのような細胞が由来する生体には見られない。一部の実施形態では、核酸は天然に存在せず、例えば、核酸は自然界に見出されたものではなく、複数の異なる細胞型からの様々なドメインをコードする核酸を含むキメラの組み合わせを含む。
【0168】
遺伝子操作のための方法とベクター
本発明はまた、キメラ抗原受容体を発現する遺伝子操作された細胞を産生するための方法、組成物及びキットを提供する。遺伝子操作は一般に、例えば、ウイルス形質導入、電気的形質導入などを介して細胞に導入するなど、組換え部分または操作された部分をコードする核酸を細胞に導入することを含む。
【0169】
一部の実施形態では、遺伝子導入は、次の方法によって行われる。すなわち、まず、細胞を刺激する。例えば、細胞を刺激物と組み合わせることによって、前記刺激物は、例えば、増殖、生存、および/または活性化などの応答を誘導し、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって検出する。次に、活性化された細胞を形質導入し、臨床応用に十分な数まで培養物で増殖させる。
【0170】
いくつかの局面において、細胞はまた、サイトカインまたは他の因子の発現を促進するように操作される。遺伝子操作された成分、例えば、抗原受容体(CARなど)を導入するための様々な方法はよく知られており、本明細書で提供される方法および組成物を使用することができる。例示的な方法は、受容体をコードする核酸を導入する方法を含み、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどのウイルス、形質導入、トランスボゾン、およびエレクトロポレーションを介する導入方法を含む。
【0171】
一部の実施形態では、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなど、組換え感染性ウイルス粒子を使用して組換え核酸を細胞に導入する。一部の実施形態では、組換えレンチウイルスベクター、またはγ-レトロウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターを使用して、組換え核酸をT細胞に導入する。
【0172】
免疫エフェクター細胞の調製
一部の実施形態では、操作された細胞の調製は、1種以上の培養および/または1つ以上の調製ステップを含む。トランスジェニック受容体(例えば、CAR)をコードする核酸を導入するための細胞は、サンプル(例えば、被験者から得られた、または被験者に由来するサンプルなどの生物学的サンプル)から単離することができる。一部の実施形態では、細胞が単離される被験者は、特定の疾患または病症を有するか、細胞療法を必要とするか、または細胞療法を受ける予定の被験者である。一部の実施形態では、被験者は、特定の治療的介入を必要とするヒト、例えば、養子細胞療法またはエフェクター細胞療法を必要とするヒトであり、その療法に使用される細胞は、単離、加工、および/または操作されたものである。一部の実施形態では、細胞は初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。前記サンプルは、被験者から直接に採取した組織、体液、その他のサンプル、および、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄および/またはインキュベーションなどの1つ以上の処理ステップから得られたサンプルを含む。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接に得られたサンプルまたは処理されたサンプルであってもよい。生物学的サンプルは、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織および器官サンプル、それらに由来する処理済みサンプルを含むが、これらに限られない。
【0173】
例示的なサンプルは、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、生検組織、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ様組織、粘膜関連リンパ様組織、脾臓、その他のリンパ様組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳腺、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、トンシルまたは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞を含む。細胞療法(例えば、養子細胞療法または免疫エフェクター細胞療法)の場合、サンプルには、自体および同種異系の供給源からのサンプルが含まれる。
【0174】
一部の実施形態では、細胞の単離は、1つ以上の調製および/または親和性に基づかない細胞の分離ステップを含む。いくつかの例では、細胞は、1種以上の物質の存在下で、洗浄、遠心分離および/またはインキュベーションされ、例えば、それによって不要な成分を除去し、必要な成分を濃縮し、特定の物質に敏感な細胞を溶解または除去する。いくつかの例では、細胞は、密度、接着特性、サイズ、特定の成分に対する感度および/または耐性などの1つ以上の性質に基づいて単離される。いくつかの例では、例えば、アフェレーシスまたは白血球の枯渇により、被験者の循環血液から細胞が得られる。いくつかの局面において、前記サンプルは、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核血液白血球、赤血球、および/または血小板を含む。
【0175】
一部の実施形態では、前記被験者から収集された血球は、例えば、血漿部分を除去するために洗浄され、細胞は、後続の処理ステップのために適切な緩衝液または培地に入れられる。一部の実施形態では、前記細胞は、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。一部の実施形態では、洗浄液は、カルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または多くまたはすべての二価カチオンを欠いている。いくつかの局面において、洗浄ステップは、メーカーのプロトコルに従って、半自動の「フロースルー」遠心分離法(例えば、COBE2991セルプロセッサ、BaXter社)によって完成される。いくつかの局面において、洗浄ステップは、メーカーのプロトコルに従って、接線流ろ過(Intangible flow filtration、TFF)によって完成される。一部の実施形態では、洗浄後、前記細胞は、様々な生体適合性緩衝液、例えば、Ca++/Mg++フリーPBSに再懸濁される。特定の実施形態では、血球サンプル成分が除去され、細胞が培地に直接に再懸濁される。
【0176】
一部の実施形態では、その方法は、密度に基づいた細胞分離方法を含み、例えば、赤血球を溶解するか、赤血球を溶解せずに、末梢血または単一サンプルまたは白血球アブレーションサンプルをPercollまたはFicoll勾配遠心分離して末梢血単核細胞(PBMC)を調製して獲得する。
【0177】
一部の実施形態では、前記分離方法は、細胞内の1種以上の特定の分子、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸などの表面マーカーの発現または存在に基づいて異なる細胞型を分離することを含む。一部の実施形態では、このようなマーカーに基づいて分離する任意の既知の方法を使用することができる。一部の実施形態では、前記分離は、親和性または免疫親和性に基づいた分離である。例えば、いくつかの局面において、前記分離は、細胞の1種以上のマーカー(通常は細胞表面マーカー)の発現または発現レベルに基づいて細胞及び細胞集団を分離することを含み、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーション、および通常それに続く洗浄ステップを経て、前記抗体または結合パートナーに間だ結合していない細胞から、前記抗体または結合パートナーに結合した細胞を分離する。
【0178】
このような分離ステップは、試薬に結合した細胞がさらなる使用のために保持されるポジティブセレクション、および/または、抗体または結合パートナーにまだ結合していない細胞が保持されるネガティブセレクションに基づくことができる。いくつかの実例では、両方の部分はいずれも更なる使用のために保持される。いくつかの局面において、異種集団において細胞型を特異的に同定するのに使用可能な抗体がない場合、ネガティブセレクションは特に有用であるかもしれないため、分離は、必要とされる集団と異なる細胞によって発現されるマーカーに基づいて行うのが最適である。
【0179】
前記分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞の100%の濃縮または除去を引き起こす必要がない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定のタイプの細胞のポジティブセレクションまたは濃縮とは、前記細胞の数またはパーセンテージを増加させることを指すが、前記マーカーを発現しない細胞の完全な欠如を引き起こす必要はない。同様に、マーカーを発現する細胞など、特定のタイプの細胞のネガティブセレクション、除去または消耗とは、細胞の数またはパーセンテージを減らすことを指すが、そのような細胞の完全な除去を引き起こす必要はない。
【0180】
いくつかの実例では、複数のラウンドの分離ステップが実行され、その中で、1つのステップからのポジティブまたはネガティブセレクションの部分に対して別の分離ステップ、例えば、後続のポジティブまたはネガティブセレクションを行う。いくつかの実例では、単一の分離ステップは、複数のマーカーを発現する細胞を同時に消耗し、例えば、インキュベーションにより、細胞を、ネガティブセレクションの標的となるマーカーにそれぞれ特異的な複数の抗体または結合パートナーとともにインキュベーションする。同様に、細胞を、様々な細胞型で発現される複数の抗体または結合パートナーとインキュベーションすることにより、複数の細胞型に対して同時にポジティブセレクションをすることができる。
【0181】
例えば、いくつかの局面において、T細胞の特定の亜集団、例えば、1種以上の表面マーカー陽性細胞または高いレベルの1つ以上の表面マーカーを発現する細胞、例えば、CD3+、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+および/またはCD45RO+T細胞について、ポジティブまたはネガティブセレクション技術によって分離する。
【0182】
例えば、CD3+、CD28+T細胞は、CD3/CD28に接続された磁気ビーズ(例えば、DYNAビーズM-450 CD3/CD28T細胞エキスパンダー)を使用してポジティブセレクションすることができる。
【0183】
一部の実施形態では、分離は、ポジティブセレクションによって特定の細胞集団を濃縮する、または、ネガティブセレクションによって特定の細胞集団を消耗することによって行われる。一部の実施形態では、ポジティブまたはネガティブセレクションは、細胞を、1種以上の表面マーカーに特異的に結合した1種以上の抗体または他の結合試薬とインキュベーションすることで行われ、その1種以上の表面マーカーは、ポジティブセレクションまたはネガティブセレクションの細胞に発現する(マーカー+)、または比較的に高いレベルで発現する(マーカーが高い)。
【0184】
一部の実施形態では、T細胞は、非T細胞(例えば、B細胞、単球、または他の血液白血球)上で発現されるマーカー(例えば、CD14)に対するネガティブセレクションによって、PBMCサンプルから分離される。いくつかの局面において、CD4+またはCD8+の選択ステップを使用して、ヘルパーCD4+およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離する。1種以上の一次、メモリー、および/またはエフェクターT細胞亜集団上で発現される、または比較的に高度に発現されるマーカーに対してポジティブまたはネガティブセレクションをし、このようなCD4+およびD8+集団をさらに亜集団に選別することができる。
【0185】
一部の実施形態では、CD8+細胞は、例えば、対応する亜集団に関連する表面抗原に対してポジティブまたはネガティブセレクションをすることに基づいて、一次、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞をさらに濃縮または消耗する。一部の実施形態では、セントラルメモリーT(TCM)細胞を濃縮し、これによって、例えば、長期生存、増殖および/または投与後の移植を改善することなどの効果を増強し、いくつかの局面において、それはこのような亜集団で特に強い(Terakura et al.,(2012)Blood.1:72-82;Wang et al.,(2012)J Immunother.35(9):689-701を参照)。一部の実施形態では、TCMに富むCD8+T細胞とCD4+T細胞を組み合わせて効果をさらに増強する。
【0186】
一実施形態では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L亜集団に存在する。PBMCは、例えば、抗CD8および抗CD62L抗体を使用して、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+部分について濃縮または消耗することができる。
【0187】
一部の実施形態では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127陽性または高表面発現に基づく;いくつかの局面において、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現または高度に発現する細胞に対するネガティブセレクションに基づく。いくつかの局面において、TCM細胞の濃縮に対するCD8+集団の分離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞を消耗すること、およびCD62Lを発現する細胞をポジティブセレクションするまたは濃縮することによって実行される。一方では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性部分から始まり、CD14とCD45RAの発現に基づいてネガティブセレクションすること、およびCD62Lに基づいてポジティブセレクションすることによって実行される。いくつかの局面において、このような選択は同時に実行され、しかも他の局面において、このような選択は、特定の順序で順次実行される。いくつかの局面において、CD4発現に基づく同じ選択ステップは、CD8+細胞集団または亜集団の調製に使用され、CD4+細胞集団または亜集団の産生にも使用され、これによって、CD4に基づいた分離からの陽性および陰性部分を保持し、任意選択で1種以上のさらなるポジティブまたはネガティブセレクションステップの後に、その方法の後続ステップに使用される。
【0188】
特定の例では、PBMCサンプルまたは他の血液白血球サンプルに対してCD4+細胞の選択を行い、陰性および陽性部分を保持する。そして、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づいて陰性部分に対してネガティブセレクションを行い、CD62LまたはCCR7などのセントラルメモリーT細胞の特徴的なマーカーに基づいてポジティブセレクションを行う。ここで、前記ポジティブおよびネガティブセレクションは特定の順序で行われる。
【0189】
細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することにより、ヘルパーCD4+T細胞を、一次、セントラルメモリー、およびエフェクター細胞に選別する。CD4+リンパ球は、標準的な方法で取得できる。一部の実施形態では、一次CD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+T細胞である。一部の実施形態では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。一部の実施形態では、エフェクターCD4+細胞は、CD62LおよびCD45RO-である。
【0190】
一例では、ネガティブセレクションによりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体混合物は通常、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。一部の実施形態では、ポジティブおよび/またはネガティブセレクションのための細胞の分離を可能にするように、前記抗体または結合パートナーを、磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合させる。
【0191】
一部の実施形態では、調製方法は、凍結ステップ、例えば、分離、インキュベーションおよび/または操作の前または後に、前記細胞を凍結、保存することを含む。一部の実施形態では、凍結および後続の解凍ステップでは、顆粒球を除去し、ある程度で、細胞集団中の単球を除去する。一部の実施形態では、例えば、血漿および血小板を除去するための洗浄ステップの後、前記細胞を凍結溶液に懸濁する。いくつかの局面において、任意の既知の凍結溶液およびパラメータを使用できる。一例では、20%DMSOと8%ヒト血清アルブミン(HAS)を含むPBSまたは他の適切な細胞凍結培地の使用が係れる。次に、DMSOとHSAの最終濃度がそれぞれ10%と4%になるように、培地で1:1希釈する。そして、一般に、所定の手順または原理に従ってプログラム可能な冷却装置を使用して、1°/分の速度で細胞を-80℃または-90℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相に貯蔵する。
【0192】
一部の実施形態では、提供される方法は、増殖、インキュベーション、培養、および/または遺伝子操作のステップを含む。例えば、一部の実施形態では、消耗された細胞集団および培養開始組成物をインキュベーションおよび/または操作するための方法が提供される。
【0193】
一部の実施形態では、前記細胞集団は、培養開始組成物中でインキュベーションされる。インキュベーションおよび/または操作は、ユニット、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、チューブセット、バルブ、バイアル、ペトリ皿、バッグ、または細胞の培養または増殖に使用される他の容器などの培養容器で行うことができる。
【0194】
一部の実施形態では、遺伝子操作の前または遺伝子操作と共に細胞をインキュベーションおよび/または培養する。インキュベーションステップは、培養、インキュベーション、刺激、活性化、及び/または増殖を含むことができる。一部の実施形態では、刺激条件または刺激剤の存在下で細胞または組成物をインキュベーションする。このような条件は、集団内で細胞増殖、生殖、活性化、及び/または生存を誘導して抗原接触を模倣し、及び/または組換え抗原受容体を導入するためのものなど、遺伝子操作のための細胞をトリガーするように設計される。
【0195】
前記条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、試薬、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または、サイトカイン、ケモカインなどの刺激因子、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および活性化された細胞状態を維持できるように設計されたその他の物質からなる群より選ばれる1つ以上を含むことができる。
【0196】
一部の実施形態では、刺激条件または試薬は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化できるリガンドなどの1つ以上の物質を含む。いくつかの局面において、その物質は、T細胞中のTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを開始または起動する。そのような物質は、例えば、ビーズなどの固体支持体に結合する抗CD3、抗CD28などの、TCR成分及び/または共刺激受容体に対して特異的なものなどの抗体、及び/または1種以上のサイトカインを含むことができる。任意選択で、増殖方法は、培地に(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)抗CD3及び/または抗CD28抗体を添加するようなステップを含んでもよい。一部の実施形態では、刺激剤は、IL-2及び/またはIL-15及び/またはIL-7及び/またはIL-21を含み、例えば、少なくとも約10単位/mL濃度のIL-2を含む。
【0197】
いくつかの局面において、インキュベーションは、例えば、Riddellらの米国特許6,040,177、Klebanoff et al.,(2012)J Immunother.35(9):651-660、Terakura et al.,(2012)Blood.1:72-82及び/またはWang et al.,(2012)J Immunother.35(9):689-701に記載されたような技術に従って実行される。
【0198】
一部の実施形態では、T細胞集団は次のように増殖される。すなわち、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)などの培養開始組成物フィーダー細胞に添加し(例えば、増殖される初期集団の各Tリンパ球について、得られた細胞集団は少なくとも約5、10、20または40またはそれ以上のPBMCフィーダー細胞を含む)、そして(例えば、前記数のT細胞を増殖するのに十分な時間で)培養物をインキュベーションする。いくつかの局面において、非分裂フィーダー細胞は、γ線照射されたPBMCフィーダー細胞を含むことができる。一部の実施形態では、前記PBMCは、細胞分裂を防ぐように約3000~3600ラド(rad)の範囲のγ線で照射される。いくつかの局面において、前記フィーダー細胞は、T細胞の集団が添加される前に培地に添加される。
【0199】
一部の実施形態では、前記刺激条件は、ヒトTリンパ球の成長に適した温度、例えば、少なくとも約25℃、一般に少なくとも約30℃、しかも一般的には約37℃、を含む。任意選択で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)を添加することをさらに含む。LCLは、約6000~10000ラドの範囲のγ線で照射できる。いくつかの局面において、LCLフィーダー細胞は、任意の適切な量で提供され、例えば、LCLフィーダー細胞と初代Tリンパ球の比率は少なくとも約10:1である。
【0200】
特定の実施形態では、天然または抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することにより、抗原特異的CD4+及び/またはCD8+T細胞などの抗原特異的T細胞を得る。例えば、抗原特異的T細胞株またはクローンは、感染した被験者からT細胞を分離して同じ抗原でインビトロで細胞を刺激することにより、サイトメガロウイルス抗原に対して生成できる。
【0201】
組成物及び製剤
本発明はまた、所定の用量またはその一部で投与するための細胞の数を含む単位剤形からの組成物などの医薬組成物及び製剤を含む、投与用の細胞を含む組成物を提供する。前記医薬組成物及び製剤は、一般に、1種以上の任意の薬学上許容される担体または賦形剤を含む。一部の実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つの他の治療薬を含む。
【0202】
「医薬製剤」という用語は、そこに含まれる有効成分の生物学的活性が有効であり、その製剤が投与される被験者に対して許容できない毒性を有する追加の成分を含まないような製剤を指す。
【0203】
「薬学上許容される担体」とは、有効成分ではなく、被験者に対して毒性のない、医薬製剤の一成分のことである。薬学上許容される担体は、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤を含むが、これらに限られていない。
【0204】
いくつかの局面において、担体の選択は、特定の細胞および/または投与方法によって部分的に決定される。そのため、複数の適切な処方がある。例えば、前記医薬組成物は防腐剤を含むことができる。適切な防腐剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムを含むことができる。いくつかの局面において、2種以上の防腐剤の混合物が使用される。防腐剤またはその混合物は、通常、約0.0001%から約2%(組成物の総重量に基づく)の量で存在する。担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A ed.(1980)に記載されている。使用される投与量及び濃度下において、薬学上許容される担体は通常、レシピエントに対して毒性がなく、リン酸塩、クエン酸塩、およびその他の有機酸緩衝剤などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサアルキル第四級アンモニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール; p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルなどのp-ヒドロキシ安息香酸アルキル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール; 3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(10個くらいより少ない残基を有する)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及び、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含むその他の糖;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤を含む。
【0205】
いくつかの局面において、前記組成物は緩衝剤を含む。適切な緩衝剤は、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、及び他の様々な酸および塩を含む。いくつかの局面において、2つ以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は通常、約0.001%から約4%(組成物の総重量に基づく)の量で存在する。投与可能な医薬組成物を調製するための方法は既知である。例示的な方法は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins,21th edition(2005年5月1日)に具体的に記載されている。
【0206】
その製剤は、水溶液を含むことができる。前記製剤または組成物はまた、前記細胞で治療される特定の適応症、疾患または病巣に使用できる2つ以上の有効成分を含むことができ、前記細胞に対して相補的な活性を有するものが好ましく、対応する活性剤は互いに負に作用しない。このような有効成分は、所望の目的に有効な量で併用して存在することに適する。よって、一部の実施形態では、前記医薬組成物はまた、化学療法剤などの他の薬学的に活性な物質または薬物を含み、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、および/またはビンクリスチンを含む。
【0207】
一部の実施形態では、医薬組成物は、治療有効または予防有効量の細胞など、疾患または病症を治療または予防するのに有効な量の細胞を含む。一部の実施形態では、治療または予防の有効性は、治療される被験者を定期的に評価することによって監視される。必要な用量は、単一の錠剤で前記細胞を投与することができ、複数の錠剤で前記細胞を投与することまたは持続注入によって細胞を投与することで送達することができる。
【0208】
一部の実施形態では、組成物は、疾患または病症の負担を軽減するのに有効な量、及び/または被験者においてCRSまたは重度のCRSを引き起こさない量、及び/または本明細書に記載の方法の任意の他の結果を実現する量を含む。
【0209】
細胞と組成物は、標準的な投与技術、製剤及び/または装置によって投与することができる。前記細胞の投与は、自体同種または異種であってもよい。例えば、免疫抑制細胞または前駆細胞は、同一の被験者から得られ、同じ被験者または異なる適合性のある被験者に投与され得る。末梢血に由来する免疫抑制細胞またはその後代(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロに由来する)は、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注射によって投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫抑制細胞を含む医薬組成物)が投与される場合、それは通常、単位用量の注射可能な形(溶液、懸濁液、乳濁液)で配合される。
【0210】
製剤は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、粘膜、舌下または坐剤投与用のものを含む。一部の実施形態では、前記細胞集団は非経口的に投与される。本明細書で使用される「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣および腹腔内投与を含む。一部の実施形態では、前記細胞は、末梢全身送達を使用する静脈内、腹腔内または皮下注射によって被験者に投与される。
【0211】
一部の実施形態では、組成物は、無菌液体製剤、例えば、等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物の形態で提供され、いくつかの局面において、選択されたpHに緩衝され得る。液体製剤は、一般に、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射によって、投与するのがいくらか容易である。別の局面では、粘性組成物を適切な粘度範囲で配合して、特定の組織とのより長い接触時間を提供することができる。液体または粘性の組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリヒドロキシ化合物(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)及びその適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る担体を含み得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な担体、希釈剤、または無菌の水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの賦形剤などを用いて、前記細胞を溶媒に組み込むことによって調製することができる。組成物は、所望の投与経路及び調製ルートに応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または粘度増強添加剤、防腐剤、矯味剤、および/または顔料などの補助物質を含み得る。いくつかの局面において、標準的な教科書を参考にして適切な調製物を調製することができる。
【0212】
製品
本発明はまた、養子細胞療法または免疫エフェクター細胞療法のために提供された方法に従って細胞を被験者に投与し、その細胞及び組成物を保存及び投与するためのキットと装置などの製品を提供する。
【0213】
製品は、1つ以上の容器、一般に複数の容器、包装材料、及び1つ以上の容器及び/または包装に結合したまたはその上の、一般に被験者への細胞の投与の説明を含むラベルまたはプロトコルを含む。
【0214】
容器は一般に、例えば、1つまたは複数の単位用量を含む、投与される細胞を含む。製品は一般に、それぞれ単一の単位用量の細胞を含む複数の容器を含む。単位用量は、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の、被験者に投与される細胞の量または数、若しくは最初のまたは後の治療コースの免疫エフェクター細胞の投与される細胞の数の2倍(またはそれ以上)であってもよい。それは、投与方法に関連する、被験者に投与される細胞の最低用量または可能な限りの最低用量であってもよい。一部の実施形態では、単位用量は、本発明の方法に従って、任意の被験者または特定の疾患または病症を有する任意の被験者に単位用量で投与される細胞の数または細胞の最小数である。例えば、いくつかの局面において、単位用量は、より低い体重及び/またはより低い疾患負荷を有する被験者に投与される細胞の最小量を含むことができ、例えば、提供された方法に従って、先の治療コースの免疫エフェクター細胞の1つまたは、場合によって、1つを超える単位用量を所定の被験者に投与し、しかも、1つまたは複数の後の治療コースの免疫エフェクター細胞において1つ以上の単位用量を所定の被験者に投与する。一部の実施形態では、単位用量中の細胞数は、所定の被験者に投与する必要のある先の治療コースの免疫エフェクター細胞の、例えば、細胞由来の被験者のキメラ抗原受容体発現またはCAR発現の数または細胞数である。一部の実施形態では、細胞は、本明細書に提供される方法によって治療される被験者に由来する。
【0215】
一部の実施形態では、各容器は、単位用量の細胞を単独に含み、例えば、同じまたは実質的に同じ数の細胞を含む。そのため、一部の実施形態では、各容器は、同じまたはほぼまたは実質的に同じ数の細胞またはキメラ抗原受容体発現細胞を含む。一部の実施形態では、単位用量は、治療される及びまたは細胞由来の被験者の1kgあたり、約1×1010未満、約1×10未満、約1×10未満、または約1×10未満の操作された細胞、全細胞、T細胞またはPBMCを含む。
【0216】
適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器、及び冷凍バッグなどの可撓性バッグを含む。特定の実施形態では、容器は、被験者への細胞の注入に適した可撓性バッグなどのバッグであってもよく、例えば、可撓性プラスチックまたはPVCバッグまたはEVAまたはULPDE、および/またはIV溶液バッグであってもよい。一部の実施形態では、バッグは、無菌溶液および細胞と組成物の送達を提供するように、密封可能および/または滅菌可能なものである。一部の実施形態では、容器、例えば、バッグの容積は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、または1000mlであるか、それに等しいか、またはほぼ等しく、例えば、約10から約100ml、または約10から約500mlである。一部の実施形態では、容器、例えば、バッグは、1つまたは複数の異なる温度で安定である、および/または細胞に安定した貯蔵および/または維持を提供する材料からなり、前記温度は、例えば、低温、例えば、約-20℃、-80℃、-120℃、135℃、-196℃より低いか、それに等しいか、またはほぼ等しい、および/または冷凍保存に適した温度、および/または、例えば、約37℃または-38℃、または-39℃、または-40℃に等しいかまたはほぼ等しいなど、細胞の凍結および解凍に適した温度および体温などの他の温度であり、これによって、例えば、被験者の場所または治療場所で、治療前に凍結および解凍が可能になる。
【0217】
容器は、ガラスやプラスチックなど様々な材料で作ることができる。一部の実施形態では、容器は、例えば、静脈内または他の注入および/または、細胞培養および/または貯蔵バッグまたは他の容器からおよび他の容器に移入する目的で、チューブまたはカテーテルを介して1つ以上のチューブに接続するための1つ以上のポート、例えば、滅菌浸漬ポートを有する。例示的な容器は、冷凍バッグ、静脈内溶液バッグ、バイアルを含み、注射針によって突き刺すことができるストッパーを備えるものを含む。
【0218】
製品はまた、プロトコルまたはラベルを含むことができ、その1つ以上は、使用情報および/または説明を示す。一部の実施形態では、情報または説明は、特定の疾患または病症の治療に使用できる、または使用すべきである内容を示し、および/またはその説明を提供する。ラベルまたはプロトコルは、疾患または病症の治療に使用される製品の内容を示すことができる。一部の実施形態では、ラベルまたはプロトコルは、例えば、提供された方法の実施形態のいずれか1つの方法に従って、最初のおよび1つ以上の後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与することによって、細胞が由来する被験者を治療するための説明を提供する。一部の実施形態では、説明は、先の治療コースの免疫エフェクター細胞において、例えば、製品の単一の容器の内容物を1つの単位用量で投与し、その後、指定された時点または指定された時間帯に、および/または被験者における1つ以上の因子または結果の存在または欠失またはその量または程度を検出した後に、1つ以上の後の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与することを指定している。
【0219】
一部の実施形態では、説明は、最初の投与および連続投与で被験者に複数の単位用量を投与することを指定している。一部の実施形態では、最初の投与は、被験者に前記単位用量の1つを投与することを含み、後続投与は、被験者に前記単位用量の1つ以上を投与することを含む。
【0220】
一部の実施形態では、ラベルまたはプロトコルまたは包装は、細胞が由来する被験者および/または投与される被験者のアイデンティティを示すための識別子を含む。自家移植の場合、細胞は、細胞が投与される被験者に由来する。そのため、識別情報は、細胞を特定の患者に投与することを指定することができ、そのような情報は、バーコードまたは他のコード化された識別子の形で包装材料および/またはラベルに存在することができ、または被験者の名前および/または他の識別特徴を示すことができる。
【0221】
一部の実施形態では、製品は、1つ以上、通常、例えば、単独の単位用量の形の、細胞を含む組成物を含む複数の容器を含み、さらに、組成物を含む1つ以上の他の容器をも含み、その組成物は、他の試薬、例えば、細胞毒性または他の治療薬を含み、例えば、細胞と組み合わせて、例えば、同時にまたは任意の順序で一度に投与する。あるいは、またはさらに、前記製品は、薬学上許容される緩衝剤を含む別のまたは同じ容器をさらに含むことができる。また、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、チューブ、針および/または注射器などの他の材料を含んでもよい。
【0222】
「プロトコル」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通常含まれている説明書を指す。前記説明書は、そのような治療用製品の使用に関する説明、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌および/または警告などの情報を含む。
【0223】
本発明の方法は以下のようにまとめることができる。
「単核細胞除去分離術」に基づき、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターを使用して、癌に罹患しているヒト被験者の末梢血単核細胞(PBMC)またはT細胞を培養して細胞を形質導入し、前記キメラ抗原受容体(CAR)は、被験者において癌によって発現される抗原に特異的に結合し、それは、腫瘍関連または腫瘍特異的抗原である。細胞は、それぞれが約1×10細胞から1×10細胞である単一の単位用量の細胞を含む単独の可撓性冷凍バッグ内の注入媒質に凍結保存される。注入前に、細胞は、約-130℃未満または約-175℃未満の温度に維持される。
細胞療法を開始する前に、被験者から血液を採取し、血清においてサイトカイン放出症候群(CRS)を示す1つ以上の血清因子のレベル、例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ(IFNγ)、IL-10およびIL-6、をELISAおよび/またはMSDおよび/またはCBAによって任意選択で評価する。治療を開始する前に、例えば、PETまたはCTスキャンによって固形腫瘍のサイズまたは質量を測定することにより、腫瘍負荷を任意選択で評価することができる。
温度を約38℃に上げることによって蘇生させ、被験者は、複数回の注入によって先の治療コースの免疫エフェクター細胞が投与される。注入は、約1~20ml/分以内の持続静脈内(IV)投与である。
先の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与した後、被験者は身体検査を受け、発熱、低血圧、低酸素症、神経障害、または炎症性サイトカインまたはC反応タンパク質(CRP)の血清レベルの上昇などの毒性または毒性結果の症状が監視される。任意選択で、先の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与した後、1回または複数回で、患者から血液を取得し、CRSを示す血清因子のレベルをELISAおよび/またはMSDおよび/またはCBAの方法によって評価する。血清因子のレベルを、先の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与する直前に得られた血清因子のレベルと比較する。必要に応じて、CRSの症状を軽減するように抗IL-6または他のCRS治療を行う。
先の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与した後、例えば、投与開始後1、2、3、および/または4週間、任意選択で、例えば、qPCR、ELISA、ELISPOT、細胞に基づいた抗体アッセイおよび/または混合リンパ球反応によって、被験者における抗CAR免疫応答の有無を検出する。
先の治療コースの免疫エフェクター細胞によって達成された腫瘍負荷の減少率(%)は、任意選択で、固形腫瘍患者に先の治療コースの免疫エフェクター細胞を投与した後にスキャンする(例えば、PETとCTスキャン)こと、及び/または血液または腫瘍部位の疾患陽性細胞を定量化することによって、1回以上測定することができる。
免疫エフェクター細胞による治療の最初のコースから数年間継続して、被験者を定期的に監視する。フォローアップ期間中に、腫瘍負荷を測定し、及び/またはフローサイトメトリーおよび定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によってCAR発現細胞を検出して、投与された細胞のインビボ増殖および持続性を測定し、及び/または抗CAR免疫応答の発達を評価する。
【0224】
本発明は、具体的な実施例と併せて以下でさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。下記の実施例では、具体的な条件を示していない実験方法は、通常、J. Sambrook et al., eds. Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Third Edition、科学出版社、2002に記載されている条件などの従来の条件に従うか、製造元に勧められた条件に従う。
【0225】
材料および方法:
試薬を含む本発明で使用される様々な材料は、商業的チャネルから購入することができる。
キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞の調製方法について、例えば、中国特許出願公開番号CN107058354A、CN107460201A、 CN105194661A、CN105315375A、CN105713881A、CN106146666A、CN106519037A、CN106554414A、CN105331585A、CN106397593A、CN106467573A、国際特許出願公開番号WO2018006882A1、WO2015172339A8に開示された全文内容を参照できる。
本発明の下記例示的な実施例において、キメラ抗原受容体のscFv部分のアミノ酸配列は、配列番号27に示され、ヌクレオチド配列は、配列番号26に示され、scFvは、配列番号21に示される重鎖可変領域および配列番号20に示される軽鎖可変領域を有し、キメラ抗原受容体は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する。上記scFvを含むCARはさらに他の細胞内領域を有してもよいため、CARの配列は、配列番号37または38に示される配列であってもよいことを理解されたい。
配列番号27に示されるscFvは、配列番号11に示されるHCDR1、配列番号12に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、及び配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3を有する。
【0226】
[実施例1]
多発性骨髄腫患者の治療
抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を発現する自己T細胞をBCMA陽性多発性骨髄腫瘍の患者に投与した。細胞を投与する前に、患者は、「単核細胞除去分離術」のアフェレーシス分離技術を受け、前処理治療を受けた。自己CAR-T細胞を得るために、被験者の末梢血からPBMCを分離してT細胞を取得し、BCMAを標的とするCARをコードするウイルスベクターで形質導入し、大量の増幅をした後に、凍結媒質製剤によってBCMAを標的とするCAR-T細胞を得てから、冷凍バッグに入れ分け、-175℃未満の液体窒素条件下で保存し、注入前に解凍蘇生した後に被験者に自己注入した。
【0227】
細胞療法を開始する前に、被験者から血液を取得し、血清においてサイトカイン放出症候群(CRS)を示す1つ以上の血清因子のレベル、例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ(IFNγ)、IL-10およびIL-6、をELISAおよび/またはMSDおよび/またはCBAによって任意選択で評価した。治療を開始する前に、癌に関連する、例えば、患者の骨髄または末梢血中の細胞数を評価することにより、腫瘍負荷を評価することができる。骨髄を評価したことによって治療前の腫瘍負荷を評価し、骨髄芽球の割合を確定した。骨髄には芽球が5%以上である被験者は、形態学的疾患(MD)を患っていると見なされる。
【0228】
凍結保存された抗BCMA CAR-T細胞は、約38℃まで昇温することによって蘇生され、約2~30分間以内の単回注入、持続静脈内(I.V.)点滴注入によって患者に投与し、注入の持続時間の中央値は5分間であった。
【0229】
BCMA CAR-T細胞の投与後、被験者は身体検査を受け、発熱、低血圧、低酸素症、神経障害、または炎症性サイトカインまたはC反応タンパク質(CRP)の血清レベルの上昇などの毒性または毒性結果の症状が監視された。任意選択で、抗BCMA CAR-T細胞の投与後、1回または複数回で、患者から血液を取得し、CRSを示す血清因子のレベルをELISAおよび/またはMSDおよび/またはCBAの方法によって評価した。血清因子のレベルを、最初の投与が行われる直前に得られた血清因子のレベルと比較した。必要に応じて、CRSの症状を軽減するように抗IL-6または他のCRS治療を行った。
【0230】
BCMA CAR-T細胞を投与してから数年間継続して、被験者を定期的に監視した。フォローアップ期間中に、腫瘍負荷を測定し、及び/またはフローサイトメトリーおよび定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によってBCMA CAR発現細胞を検出して、投与された細胞のインビボ増殖および持続性を測定し、及び/または抗CAR免疫応答の発達を評価した。
【0231】
再発/難治性骨髄腫に対する抗BCMA CAR-T細胞の応答(IMWG2016版を参照、治療評価はCR、sCR、ICR、MCRまたはVGPRである):
a.治療効果の評価は、『多発性骨髄腫の診断基準』(IMWG2016版)の応答基準を参照して行われる;
b.治療効果評価のための統計的指標:
無増悪生存期間(PFS)、病勢コントロール率(DCR)および客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)。
【0232】
本発明において、被検者は、BCMA発現が陽性であり、再発性または難治性の多発性骨髄腫患者であり、4つのグループに分けられて参加した。被験者はいずれも高レベルのBCMAを発現し(BCMA発現陽性率は53%~100%である)、多発性骨髄腫の期間の中央値は0.3~10.7年であり、ほとんどは約5.2年(範囲:0.4~10.7年)であり、以前に化学療法を受けた回数の中央値は6回(3~20回)であり、一部の被験者は以前に幹細胞移植を受けたこともある。被験者の骨髄中の形質細胞の平均比率は約25%であった(範囲:<5%~85%)。被験者の疾患タイプは、IgGκ型、IgAλ型、IgGλ型、λ軽鎖型、IgAκ型であった。これまでのところ、被験者のフォローアップ時間の中央値は約135日(範囲:11~260日)であった。
第1のグループは低用量のシクロホスファミドグループであり、前処理で投与されたシクロホスファミドの用量は、400mg/m/日以下(約190~310mg/m/日)であり、さらにフルダラビン20mg/m/日が投与された。前処理剤の投与後、各被験者にBCMA CAR-T細胞を約2×10~2.7×10細胞/kg投与した。
第2のグループは高用量のシクロホスファミドグループであり、前処理で投与されたシクロホスファミドの用量は、400mg/m/日を上回り(約450~560mg/m/日)、さらにフルダラビン20~30mg/m/日が投与された。前処理剤の投与後、各被験者にBCMA CAR-T細胞を約2×10~2.5×10細胞/kg投与した。
第3のグループは低用量のCAR-Tグループであり、1.5×10細胞/kg未満の抗BCMA CAR-T細胞を注入投与し、約0.9×10細胞/kgの抗BCMA CAR-T細胞を被験者に注入投与した。
第4のグループは高用量のCAR-Tグループであり、3人の患者を含み、約2.7×10細胞/kgから3.3×10細胞/kgの抗BCMA CAR-T細胞を被験者に注入投与した。
【0233】
CAR T細胞療法を被験者に与える日を0日目として指定した。フルダラビンとシクロホスファミドは、同じ日に、または異なる日に投与することができる。第1のグループでは、フルダラビンを-6、-5および-4日目に被験者に投与し、シクロホスファミドを-6、-5、-4、-3およびー2日目に被験者に投与した;または、フルダラビンとシクロホスファミドを-4、-3およびー2日目に被験者に投与した;または、フルダラビンとシクロホスファミドを-3、-2およびー1日目に被験者に投与した;または、フルダラビンとシクロホスファミドを-3およびー2日目に被験者に投与した。第2のグループでは、フルダラビンを-5、-4、-3およびー2日目に被験者に投与し、シクロホスファミドを-5および-4日目に被験者に投与した;または、フルダラビンを-5、-4およびー3日目に被験者に投与し、シクロホスファミドを-5および-4日目に被験者に投与した;または、フルダラビンを-5、-4およびー3日目に被験者に投与し、シクロホスファミドを-5日目に被験者に投与した;または、フルダラビンを-4、-3およびー2日目に被験者に投与し、シクロホスファミドを-4およびー3日目に被験者に投与した;または、フルダラビンとシクロホスファミドを-3およびー2日目に被験者に投与した。第3のグループでは、フルダラビンを-5、-4およびー3日目に被験者に投与し、シクロホスファミドを-5および-4日目に被験者に投与した。第4のグループでは、フルダラビンを-6、-5、-4およびー3日目に被験者に投与し、シクロホスファミドを-6および-5日目に被験者に投与した;または、フルダラビンとシクロホスファミドを-3およびー2日目に被験者に投与した;または、フルダラビンとシクロホスファミドを-3、-2および-1日目に被験者に投与した。
各グループの投与状況を表1に示す。表に示されているフルダラビン、シクロホスファミド、CAR-T細胞の投与量は、総投与量である。
【0234】
【表1】
【0235】
各グループの患者の治療効果を図1に示す。ORRは100%、CR8例(約50%)であった。その中で、第2のグループのCR率は75%であった。抗BCMA CAR-T細胞を投与した有効性をさらに評価するために、抗BCMA CAR-T細胞のインビボ持続生存期間、すなわち、体内へ「移植」されたCAR-T細胞の持続生存期間を検出した。最初の注入(0日目)が終わった後、任意の2つの連続した検出が陰性になるまで、末梢血に含まれる抗BCMA CAR DNAのコピー数を各訪問ポイントでQ-PCR法を使用して検出し、それを抗BCMA CAR-T細胞の持続生存期間として記録した。使用したプローブはProbe783-P1(ヌクレオチド配列については配列番号42を参照);上流のプライマー配列はPrimer783P1-F1(ヌクレオチド配列については配列番号43を参照);下流プライマー配列はPrimer783P1-R3(ヌクレオチド配列については配列番号44を参照)であった。
【0236】
1号患者~13号患者を測定した結果、表2および図2に示されるように、BCMA CAR-T細胞は、すべての被験者で増殖し、約3日目に細胞コピー数が検出され、ピーク時間は約7~21日目であり、第2~3ヶ月まで維持された。
14号、15号、16号患者の末梢血に含まれる抗BCMA CAR DNAのコピー数を測定した結果、14号患者のCAR-T細胞数は、CAR-T投与後の14日目にピークに達し、56日目に検出されなかった;15号患者のCAR-T細胞数は、CAR-T投与後の14日目にピークに達し、56日目に検出されなかった;16号患者のCAR-T細胞数は、CAR-T投与後の7日目にピークに達し、6か月後に検出されなかった。
【0237】
【表2】
【0238】
抗BCMA CAR-T細胞の投与後、被験者の病状を評価して、治療に対する反応を評価した。治療後、被験者を評価して神経毒性(混乱、失語症、てんかん発作、けいれん、嗜眠、および/または精神状態の変化を含む神経学的合併症)を監視し、重症度に応じて分級し(1~5のグレードを使用、例えば、Guido Cavaletti & Paola Marmiroli Nature Reviews Neurology 6,657-666(2010年12月))、その中で、グレード3(重度の症状)、4(生命を脅かす症状)または5(死亡)は、重度の神経毒性と見なされる。
(一)サイトカイン放出症候群(CRS)の確定と監視:
グレード1(軽度)―生命を脅かすことなく、解熱剤や制吐剤などの全身治療のみが必要である(例えば、発熱、吐き気、疲労、頭痛、筋肉痛、不快感);
グレード2(中程度)―中程度の介入が必要であり、それに対応する必要がある:
酸素需要は40%未満、または対応する体液または低用量の単剤昇圧薬が必要である低血圧、またはグレード2の臓器毒性(CTCAE v4.0による);
グレード3(重度)―積極的な介入が必要であり、それに対応する必要がある:
酸素需要は40%以上、または高用量の単剤昇圧薬(例えば、ノルエピネフリンが20ug/kg/min以上、ドーパミンが10ug/kg/min以上、フェニレフリンが200ug/kg/min以上、またはアドレナリンが10ug/kg/min以上)が必要である低血圧、または複数の昇圧薬(例えば、抗利尿薬+上記の薬剤の1つ、またはノルエピネフリンが20ug/kg/min以上の昇圧薬の組み合わせ)が必要である低血圧、またはグレード3の臓器毒性、またはグレード4のトランスアミナーゼ炎症(CTCAE v4.0による);
グレード4(生命を脅かす)―人口呼吸器の支援が必要であるか、またはグレード4の臓器毒性(トランスアミナーゼ炎症を除く);
グレード5(致命的)―死亡。
(二)神経毒性の例示的な分類基準:
グレード1(臨床症状なしまたは軽度)―軽度または臨床症状無し;
グレード2(中程度)―料理、買い物、電話の使用、お金の管理等、アクティブな日常活動(ADL)を制限する症状がある;
グレード3(重度)―入浴、着替え、食事、トイレの使用、薬の服用など、制限的な自己管理ADLの症状がある;
グレード4(生命を脅かす)―緊急の介入を必要とする、生命を脅かす症状;
グレード5(致命的)―死亡。
【0239】
被験者はいずれも重度の神経毒性を有しなかったが、少なくとも1回の有害事象があった;本発明の抗BCMA CAR-T細胞に関連する最も一般的な有害事象は発熱であり、次いでは血小板減少症および白血球の減少であり、対症療法および支持治療を経て、いずれも緩和されたか、または緩和中である。例えば、第2のグループでは、1人の被験者はグレード2のCRSを持ち、1人の被験者はグレード3のCRSを持ち、いずれも、解熱剤、IL-6Rモノクローナル抗体(トシリズマブ)、及び抗生物質の抗感染治療によって治療されてからすでに回復した;1人の被験者はグレード4の血小板減少症SAEを患っており、対症療法および支持療法を経て回復した。
【0240】
上記の実施例では、配列番号36に示さエルCARが例として選択されたが、BCMAを標的とする他のCAR、例えば、配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または41に示されるCARなども、本願に記載の技術構成に適用できることを理解されたい。
【0241】
その中で、配列番号30、31、32に示されるCARのscFvは、配列番号15に示されるVH、及び配列番号16に示されるVLを有し、CDR領域はそれぞれ、配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、及び配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号8に示されるLCDR3である。
【0242】
その中で、配列番号33、34、35に示されるCARのscFvは、配列番号17に示されるVH、及び配列番号18に示されるVLを有し、CDR領域はそれぞれ、配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号4に示されるHCDR3、及び配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号9に示されるLCDR3である。
【0243】
その中で、配列番号39、40、41に示されるCARのscFv(アミノ酸配列は、配列番号29に示され、ヌクレオチド配列は、配列番号28に示される)は、配列番号23に示されるVH、及び配列番号20に示されるVLを有し、CDR領域はそれぞれ、配列番号13に示されるHCDR1、配列番号14に示されるHCDR2、配列番号5に示されるHCDR3、及び配列番号6に示されるLCDR1、配列番号7に示されるLCDR2、配列番号10に示されるLCDR3である。
【0244】
本発明で言及されたすべての文献は、あたかも各文献が個別に参照として引用されたように、本願において参照として引用されている。また、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態もまた、本願の添付の特許請求の範囲によって限定される範囲内にあることを理解されたい。
【0245】
以下は、本特許テキストに係る配列である:
【0246】
【表3】
図1
図2
【配列表】
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