(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレール
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20230414BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20230414BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B60N2/06
H02K7/06 A
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2021510981
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2019101332
(87)【国際公開番号】W WO2020042947
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】201810986307.1
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520167070
【氏名又は名称】▲カイ▼博座椅機械部件有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 川
(72)【発明者】
【氏名】倪 洪斌
(72)【発明者】
【氏名】唐 臻毅
(72)【発明者】
【氏名】王 宏宇
(72)【発明者】
【氏名】張 小明
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-241698(JP,A)
【文献】特開2015-063212(JP,A)
【文献】特開2006-335153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側スライドレール及び右側スライドレールを含む自動車座席用電動スライドレールであって、前記左側スライドレール及び前記右側スライドレールは、それぞれ、
下部レールと、
前記下部レールの上方に配置され、かつ前記下部レールに摺動可能に接続され、両端にそれぞれ第1切り込み及び第2切り込みがさらに配置される上部レールと、
モータブラケットにより前記上部レールの下面に固定される電動モータと、
前記下部レールの上方に平行に配置され、一端が前記電動モータに接続され、他端が前記上部レールの下面に回転可能に固定されるねじ軸と、
底部が前記下部レールの上面に固定接続され、前記ねじ軸により水平に貫通されて螺合されるねじ付きアセンブリと、
前記ねじ軸の前記電動モータに近づく一端に固定され、前記第1切り込み内に位置し、かつ、前記第1切り込みとの間に隙間を有する止めリングと、を
備え、
前記電動モータの回転軸は、前記ねじ軸と軸方向が一致し、前記ねじ軸と直結されており、
前記上部レールは、前記止めリングを上面と長手方向に沿った両側面から囲む形状を有し、前記第1切り込みは、前記上部レールの前記上面および前記両側面にそれぞれ設けられ、前記止めリングの周縁部は、前記上部レールの前記上面および前記両側面の前記第1切り込み内に位置し、かつ、前記第1切り込みとの間に前記隙間を有し、
前記上部レールに固定された電動モータが前記ねじ軸を回転させると、前記ねじ軸に螺合し、前記下部レールに固定されたねじ付きアセンブリが、前記ねじ軸の回転運動を前記上部レールと下部レールとの間の相対的直線運動に変換することにより、前記上部レールと下部レールの相対位置を調節し、
静止状態で、前記上部レールが、当該上部レールに平行な方向の力を受けると、力は前記モータブラケットおよび前記電動モータから前記ねじ軸に伝達され、
前記ねじ付きアセンブリは、前記ねじ軸に相互に螺合しているため係止され、前記上部レールと下部レールの相対位置は変化
せず、
前または後の車両との衝突が発生し、前記上部レールが前記止めリングに対して移動すると、前記第1切り込み内で前記隙間がなくなり、前記止めリングが前記第1切り込みに接触するため、前記ねじ軸は前記上部レールに固定されたままであり、前記上部レールと前記下部レールの相対位置が変化しない
ことを特徴とするモータとねじ軸の直結による
電動スライドレール。
【請求項2】
前記電動モータと前記モータブラケットとの間にはさらにゴム部材が配置され、
前記ゴム部材は前記電動モータの外面に覆設される、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータとねじ軸の直結による
電動スライドレール。
【請求項3】
前記モータブラケットは第1ボルトにより上部レールの下面に固定接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のモータとねじ軸の直結による
電動スライドレール。
【請求項4】
請求項1または2に記載のモータとねじ軸の直結による電動スライドレールであって、中央孔
を備えた後部ブラケットを
さらに含み、
前記後部ブラケットは、前記第2切り込みに固定され
、
前記ねじ軸の
前記他端には、
軸が一体成型され
ており、
前記
軸は前記中央孔に係合
し、前記ねじ軸を回転可能に支持することを特徴とす
るモータとねじ軸の直結による
電動スライドレール。
【請求項5】
前記ねじ付きアセンブリは第2ボルトにより前記下部レールに固定接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のモータとねじ軸の直結による
電動スライドレール。
【請求項6】
前記ねじ軸は、前記電動モータの回転子軸に一体成型される、ことを特徴とする請求項1に記載のモータとねじ軸の直結による
電動スライドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車座席用スライドレールの技術分野に関し、特に、モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市販の電動スライドレールは、
図1及び
図2に示すように、前部に取り付けられる電動スライドレール及び中央部に取り付けられる電動スライドレールに分けられた。
【0003】
前部に取り付けられる電動スライドレール及び中央部に取り付けられる電動スライドレールは、いずれもモータ(1a)、モータブラケット(2a)、可撓性シャフトアセンブリ(3a)、左側スライドレール(4a)及び右側スライドレール(5a)から構成されている。従来の電動スライドレールには、下記の不足がある。いずれの構成も、将来のより多様な電動車車体環境の要件を満たさない可能性がある(モータブラケットが車体または車体の付属品に干渉する)。異なる車体に合わせてモータブラケット(2a)の長さを設計する必要があるため、モジュール化可能性及び汎用性に欠けている。モータブラケット(2a)が乗客または運転者に接触される可能性があるため、安定性に欠けている。モータ(1a)は、可撓性シャフトアセンブリ(3a)及び減速機による多段トランスミッションを介して動力をねじ軸に伝達するため、部品の点数が多く、音質及びその安定性に欠け、エネルギー伝達効率が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術の課題を解決するためのものであり、より多様な電動車車体環境に適合し、かつ汎用性及び安定性に優れるモータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールを提供することを目的とする。
本発明は、主に下記の技術案により上記課題を解決する。
本発明が提供するモータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールは、
下部レールと、
【0005】
前記下部レールの上方に配置され、かつ前記下部レールに摺動可能に接続され、さらに両端にそれぞれ第1切り込み及び第2切り込みが配置される上部レールと、
モータブラケットにより前記上部レールの下面に固定される電動モータと、
前記下部レールの上方に平行に配置され、一端が前記電動モータに接続され、他端が前記上部レールの下面に回転可能に固定されるねじ軸と、
底部が前記下部レールの上面に固定接続され、前記ねじ軸により水平に貫通されて螺合されるねじ付きアセンブリと、
【0006】
前記ねじ軸の前記電動モータに近づく一端に固定され、前記第1切り込み内に位置し、かつ前記第1切り込みとの間に隙間を有する止めリングと、を備える、左側スライドレール及び右側スライドレールを含む。
さらに、前記電動モータと前記モータブラケットとの間にはさらにゴム部材が配置され、前記ゴム部材は前記電動モータの外面に覆設される。
さらに、前記モータブラケットは第1ボルトにより上部レールの下面に固定接続される。
【0007】
さらに、前記第2切り込みに固定され、中央孔が配置される後部ブラケットをさらに含み、前記ねじ軸の他端には、軸が一体成型されて配置され、前記軸は前記中央孔に係合する。
さらに、前記ねじ付きアセンブリは第2ボルトにより前記下部レールに固定接続される。
さらに、前記ねじ軸は、前記電動モータの回転子軸に一体成型される。
【0008】
本発明の有益な効果は下記のとおりである。電動スライドレールの位置を調節する必要がある場合、電動モータは軸継手を介してねじ軸を駆動して回転させ、ねじ軸は中央にあるねじ付きアセンブリに螺合されることにより、ねじ軸の回転運動を下部レールの直線運動に変換し、電動モータはモータブラケットにより上部レールに接続され、電動モータは上部レールに対して固定され、ねじ軸の回転運動を上部レールと下部レールとの間の相対的直線運動に変換することにより、上部レール及び下部レールの相対位置の調節を実現することができる。本発明は、可撓性シャフトなどの部品を不要とし、部品の点数を削減し、より多様な電動車車体環境に適合させ、汎用性及び安定性により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の実施例または従来技術の技術案をより明瞭に説明するために、以下では、実施例または従来技術の説明に使用される図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は本発明の実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力をせず、これらの図面に基づいて、他の図面を得ることができる。
【
図1】従来技術における、電動スライドレールが前部に取り付けられた構造を示す図である。
【
図2】従来技術における、電動スライドレールが中央部に取り付けられた構造を示す図である。
【
図3】本発明の、モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールの構造を示す図である。
【
図4】本発明の、モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールの断面図である。
【
図5】本発明の、モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールの分解図である。
【
図6】本発明の、モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールの第1切り込みの構造を示す図である。
【
図7】本発明の、モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールの第2切り込みの構造を示す図である。
【
図8】本発明の別の実施例の、モータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールの構造を示す図である。
【
図9】本発明のモータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールのねじ軸と電動モータを一体成型した構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に合わせて、本発明の好適な実施形態を詳しく説明することで、本発明の利点及び特徴に対する当業者の理解を容易にして、本発明の保護範囲をさらに明瞭かつ明確に定義する。
【0011】
図3~7に示すように、本発明のモータとねじ軸の直結による新型電動スライドレールは左側スライドレール1及び右側スライドレール2を含む。左側スライドレール1及び右側スライドレール2はいずれも、上部レール11、下部レール12、電動モータ15、ねじ軸16、ねじ付きアセンブリ18及び止めリング19を含む。
【0012】
上部レール11は、下部レール12の上方に配置され、かつ下部レール12に摺動可能に接続され、さらに両端にそれぞれ第1切り込み13と第2切り込み14が開設される。
電動モータ15は、モータブラケット114により上部レール11の下面に固定される。
ねじ軸16は、下部レール12の上方に平行に配置され、一端が電動モータ15に接続され、他端が上部レール11の下面に回転可能に固定される。
なお、ねじ軸16の一端は軸継手17により電動モータ15に接続されてもよい。
ねじ付きアセンブリ18は、底部が下部レール12の上面に固定接続される。
ねじ軸16は、ねじ付きアセンブリ18を水平に貫通し、かつねじ付きアセンブリ18に螺合される。
止めリング19は、ねじ軸16の電動モータ15に近づく一端に固定され、第1切り込み13内に位置し、かつ第1切り込み13との間に隙間を有する。
【0013】
本発明によれば、前後の車両に衝突が発生すると、隙間がなくなった場合、止めリング19は第1切り込み13に接触する。これにより、ねじ軸16は、固定されたままであり、スライドレールの位置が変化しないことを保証し、乗員の安全を確保する。
【0014】
本発明において、電動スライドレールの位置を調節する必要がある場合、電動モータ15は軸継手17を介してねじ軸16を駆動して回転させる。これにより、ねじ軸16は、中央にあるねじ付きアセンブリ18に螺合される。そして、ねじ軸16の回転運動は、下部レール12の直線運動に変換される。電動モータ15は、モータブラケット114を介して上部レール11に接続される。電動モータ15は、上部レール11に対して固定される。そのため、ねじ軸16の回転運動を上部レール11と下部レール12との間の相対的直線運動に変換することにより、上部レール11及び下部レール12の相対位置を調節することができる。本発明によれば、可撓性シャフトなどの部品を不要とし、部品の点数を削減し、より多様な電動車車体環境に適合し、かつ汎用性及び安定性により優れた。
【0015】
好ましくは、電動モータ15とモータブラケット114との間にさらにゴム部材119が配置されることである。ゴム部材119は電動モータ15の外面に覆設される。ゴム部材119は電動モータ15と上部レール11との間の共振を効果的に遮断することで、騒音を低減する。
好ましくは、モータブラケット114は第1ボルト113により上部レール11の下面に固定接続されることである。
【0016】
本発明はさらに後部ブラケット110を含む。後部ブラケット110は第2切り込み14に固定される。後部ブラケット110には中央孔111が配置される。ねじ軸16の他端には、軸112が一体成型されて配置される。軸112は中央孔111に係合する。軸112及び中央孔111は主にねじ軸16の回転を支持するように配置される。
好ましくは、ねじ付きアセンブリ18は第2ボルト115により下部レール12に固定接続されることである。
【0017】
本発明によれば、静止状態では、上部レール11が前後の縦方向力(上部レールに平行である)を受けると、力は、上部レール11からモータブラケット114を介して電動モータ15に伝達され、そして、電動モータ15から軸継手17を介してねじ軸16に伝達される。ねじ軸16とねじ付きアセンブリ18は相互に螺合されるため、自己係止として機能する。そこで、縦方向力を受けても、下部レール12の縦方向への変位が生じないことなく、上部レール11の下部レール12に対する係止を実現することができる。
【0018】
図8~9に示すように、本発明の別の実施例においては、ねじ軸16と電動モータ15の回転子軸とは一体成型されている。電動モータ15は、回転子軸を駆動して回転させると同時に、ねじ軸16を駆動して回転させる。
【0019】
以上の説明は、本発明の具体的な実施方式に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではないため、創造的労力によらず想到し得るあらゆる変更や置換は、本発明の保護範囲に属する。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に限定されている保護範囲に準ずる。