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特許7262576注射可能な長時間作用型ナルトレキソン微粒子組成物
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  • 特許-注射可能な長時間作用型ナルトレキソン微粒子組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】注射可能な長時間作用型ナルトレキソン微粒子組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20230414BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230414BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230414BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230414BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230414BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K31/485
A61K47/34
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/44
A61P25/36
A61P25/32
A61P25/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021521011
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2019013535
(87)【国際公開番号】W WO2020080806
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/745,805
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】517417773
【氏名又は名称】パーデュー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,グワンハム
(72)【発明者】
【氏名】ソウ,バンカン
(72)【発明者】
【氏名】オッティ,アンドリュー デビッド
(72)【発明者】
【氏名】パク,キナン
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1415294(CN,A)
【文献】特開2011-225594(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101049288(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101612437(CN,A)
【文献】特開2011-225600(JP,A)
【文献】国際公開第2018/111851(WO,A1)
【文献】特表2003-534366(JP,A)
【文献】特表平08-512288(JP,A)
【文献】DINARVAND, R. et al,Preparation of Biodegradable Microspheres and Matrix Devices Containing Naltrexone,AAPS PharmSciTech,2003年,Vol.4(3) Article 34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナルトレキソンと、乳酸:グリコール酸比が85:15であるポリ(乳酸-co-グリコール酸)とを含む微粒子を含む注射可能な微粒子製剤であって、前記微粒子製剤の微粒子がマイクロ粒子であり、ナルトレキソンが4週間よりも長く、最大100日間持続放出される、微粒子製剤。
【請求項2】
ナルトレキソンは8週間から12週間持続放出される、請求項1に記載の微粒子製剤。
【請求項3】
前記ナルトレキソンが、遊離塩基、塩、溶媒和物、共結晶、又はこれらの組合せの形態である、請求項1又は2に記載の微粒子製剤。
【請求項4】
前記ナルトレキソンが、前記微粒子の20~40%(w/w)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微粒子製剤。
【請求項5】
前記ポリ(乳酸-co-グリコール酸)の数平均分子量が50,000~150,000ダルトンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の微粒子製剤。
【請求項6】
前記微粒子が、水性担体、油性担体、又はこれらの組合せを含む生体適合性担体中で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の微粒子製剤。
【請求項7】
前記水性担体が、等張化剤、粘度向上剤、湿潤剤、又はこれらの組合せを含み、前記等張化剤が塩化ナトリウムであり、前記粘度向上剤がカルボキシメチルセルロースナトリウムであり、前記湿潤剤がポリソルベートである、請求項6に記載の微粒子製剤。
【請求項8】
前記油性担体が、落花生油、ゴマ油、綿実油、又はこれらの組合せを含む、請求項6に記載の微粒子製剤。
【請求項9】
前記微粒子の粒子径が、25~125μmの範囲にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の微粒子製剤。
【請求項10】
オピオイド乱用若しくは過剰摂取、アルコール依存、又は疼痛に関連する疾患を治療又は予防するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の微粒子製剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の注射可能な微粒子製剤を調製するための方法であって:
(a)ポリビニルアルコール及び第1溶媒を含む第1相と、前記乳酸:グリコール酸比が85:15であるポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ナルトレキソン、及び第2溶媒を含む第2相とを混合することにより、混合物を調製することと;
(b)前記混合物に水又は水溶液を用いて抽出処理を実施することにより、微粒子を得ることと;
を含む、方法。
【請求項12】
前記第1溶媒が、水、ジクロロメタン、ベンジルアルコール、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2溶媒が、ジクロロメタン、ベンジルアルコール、及び酢酸エチルから選択される少なくとも1種を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液が、ポリビニルアルコール、ジクロロメタン、ベンジルアルコール、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(b)前記抽出処理、を実施した後に、(c)前記微粒子にエタノール性水溶液を用いて更なる抽出処理を実施すること、を更に含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記微粒子を乾燥させることを更に含み、前記乾燥は、(b)前記抽出処理を実施した後、(c)前記更なる抽出処理を実施した後、又は(b)及び(c)のそれぞれの後に実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載の微粒子製剤を医薬に調整することを含む、オピオイドの乱用や過剰摂取、アルコール依存症や疼痛に関連する疾患を治療または予防するための医薬の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下に、2018年10月15日に出願された米国仮出願第62/745805号明細書の優先権を主張するものであり、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、ナルトレキソンによって改善される疾患を治療するための、ナルトレキソンを持続放出する微粒子送達システムに関する。注射可能なこの微粒子送達システムは、医薬的に許容される担体中で投与される、生分解性を有する微粒子内に封入されたナルトレキソンを含む。
【背景技術】
【0003】
薬物乱用は病気であり、社会の至るところで依然として発生し続けている。1960年代及び1970年代のヘロイン流行時に薬物乱用が発生していたことから、薬物乱用は一般に都市中心部の問題と考えられていたが、オピオイド乱用問題は当時よりも広範囲に、都市中心部から農村部へと広がり、国内全体に蔓延するようになった。特にオピオイド系薬物の乱用者数は、医薬製剤及び違法薬物のどちらに関しても、ここ数十年で劇的に増加している。
【0004】
ナルトレキソンを毎日経口投与することは有効であるが、その主な問題は、服薬遵守率が低いこと又は服薬不遵守にある。月1回の投与を要求した場合、治療開始から60日後の離脱率が高かった(25~36%)ことが分かっている[Garbutt et al.,Efficacy and tolerability of long-acting injectable naltrexone for alcohol dependence;a randomized controlled trial.JAMA.293(13):1617-1625,2005;Hulse Improving clinical outcomes for naltrexone as a management of problem alcohol use.Br.J.Clin.Pharmacol.76(5)632-641,2013]。したがって、より長い時間に亘り作用するナルトレキソン製剤は、患者の服薬遵守率を向上し、再依存を減らし、患者の転帰を長期間に亘りより安定させることが期待される。
【0005】
ナルトレキソンを内包する(loaded)様々な徐放性微粒子が特性評価されている。Ehrich(米国特許第7,919,499号明細書、Naltrexone long acting formulation and methods of use)及びBrittainら(米国特許第7,279,579(B2)号明細書、Polymorphic forms of naltrexone)は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)中に約310mg~約480mgのナルトレキソンを含み、ナルトレキソンを約4週間に亘り放出する長時間作用型製剤を教示している。Ticeら(米国特許第6,306,425(B1)号明細書、Injectable naltrexone microsphere compositions and their use in reducing consumption of heroin and alcohol)は、1週間当たり初期含有量の約10~40%のナルトレキソンを4週間に亘り放出する、ポリ(D,L-乳酸)(PDLL)マトリックス中の注射可能な徐放性ナルトレキソン製剤を教示している。Nuwayser(米国特許第7,157,102(B1)号明細書、Multi-layered microcapsules and method of preparing same)は、1ヵ月間送達を行うための、ナルトレキソン内包率の高い(>40%w/w)、多層構造を有する複合カプセ
ル(multicapsule)を教示している。ここに開示されているナルトレキソンをベースとする微粒子製剤はいずれも、放出特性を示す期間は最大で約4週間又は1ヵ月間である。したがって、当該技術分野において、4週間又は1ヵ月間よりも長く送達を行うための長時間作用型微粒子製剤を調製することが求められている。
【0006】
4週間又は1ヵ月間よりも長く送達される徐放性ナルトレキソンを埋め込むことに基づく長時間作用型送達システムが開発されている。Kuo及びKuzma(米国特許第8,343,528号明細書、Long term drug delivery devices with polyurethane based polymers and
their manufacture)、Saxena及びSaxena(国際公開第2017/033208号パンフレット、Implantable naltrexone tablets)、並びにO’Neil及びLiu(米国特許第7,914,804号明細書、Slow release pharmaceutical preparation and method of administering the same)は、いずれも、埋め込み型の長時間作用型ナルトレキソン送達システムを開示している。こうした埋め込み型製剤は、通常、埋め込み剤を留置するために外来外科手術を行う必要がある。このようなシステムは、ナルトレキソンの微粒子型製剤と比較して長時間の放出特性を示すことができる例もあるが、外科手術の必要性及び患者自身が抜去してしまう危険性がその利益を上回る場合もある。
【0007】
ビビトロール(Vivitrol)(登録商標)(アルケルメス・インコーポレーテッド(Alkermes,Inc.))は、現在、約7~10日間のオピオイド解毒後にオピオイド依存症の再発を防止する目的で処方されている。4週間おき又は月1回の筋肉内注射で380mgの用量を送達することが推奨されている。この注射剤は、希釈剤(水性担体)中に懸濁しているポリマー微粒子から構成され、20ゲージ(G)の針で注射される。20Gの針が必要とされる理由は、臀部の筋肉内に注射すること、微粒子及び希釈剤の量、そして最終的には微粒子の粒子径(size)及び粒子径分布(size distribution)にある。微粒子のd50,volumeは108.49μmであり、d50,populationは58.46μmと報告されている(Andhariya et al.,Accelerated in vitro release testing method of naltrexone loaded PLGA microspheres Int.J.Pharm.520(1-2)79-85,2017)。ここでd50,volumeは、粒子の50体積%の直径が108.49μmよりも大きく、粒子の50体積%の直径が108.49μmよりも小さくなる値である。d50,population値が58.46であるとは、粒子の個数の50%の直径が58.46μmよりも大きく、粒子の個数の50%の直径が58.46μmよりも小さいということである。したがって、患者に投与するために使用する針の径を小さく、即ち、針のゲージ数を大きくする試みにおいて、微粒子の粒子径が小さいナルトレキソン内包微粒子を調製することが必要とされている。
【0008】
純粋なジアモルフィンを500mgもの高量で投与しても、血清中ナルトレキソン濃度が2.8ng/mLであれば、その作用を阻害するのに十分であることが2人の患者で示されており(C.Brewer.Serum naltrexone and 6-beta-naltrexol levels from naltrexone implants can block very large amounts of heroin:a report of two cases.Addict.Biol.,7:321-323,2002)、25mgのヘロインに対し2.4ng/mLで完全な拮抗作用を示し(Verebey et al.,Naltrexone:Disposition,metabolism,and effects after acute and chronic dosing.Clin.Pharmacol.Ther.,
20:315-328,1976)、オピオイドの致死的過量投与から保護するのに十分であるとして、1~2ng/mLの濃度が目標とされている(Hulse et al.,Reducing hospital presentations for opioid overdose in patients treated with sustained release naltrexone implants.Drug
Alcohol Depend.,79:351-357,2005及びComer et al.Depot naltrexone:Long-lasting antagonism of the effects of heroin in humans.Psychopharmacology,159:351-360,2002)。ビビトレックス(Vivitrex)(登録商標)のパイロット試験においては、2回目の注射を行う前の血漿中ナルトレキソンのトラフ濃度の平均値は1.23ng/mL(±0.83ng/mL)であり、これは残りの試験期間中比較的安定なままであり;ナルトレキソントラフ濃度平均値の平均(average mean)は1.33ng/mL(±1.74ng/mL)であった(Johnson et al.,A pilot evaluation of the safety and tolerability of repeat dose administration of long-acting injectable naltrexone(Vivitrex(登録商標))in patients with alcohol dependence.Alcohol Clin Exp Res.28:1356-1361,2004)。ラットモデルにおいては、約1~2ng/mLの血漿中ナルトレキソン濃度が「モルヒネ誘発鎮痛ホットプレート試験(morphine induced analgesia hot-plate test」において有効であることが示された(The preclinical development of Medisorb Naltrexone,a once a month long-acting injection for the treatment of alcohol dependence.Frontiers in Bioscience 10:643-655,2005)。したがって、先行技術において、ナルトレキソンを、初期バースト放出を最小限に抑えながら速やかに治療量に到達させ、最大濃度を最小限に抑え、それにより、治療用ナルトレキソンを1ヵ月間よりも長く、より安定な量で提供すると共に、注射可能な様式の剤形とすることが求められている。
【0009】
低用量(low-dose)ナルトレキソン(LDN)(1~5mg/日、経口)、超低用量(very low-dose)ナルトレキソン(VLDN)(1μg~1mg)、及び極低用量(ultra low-dose)ナルトレキソン(ULDN)(1μg未満)と称される、より低いナルトレキソン用量を用いた場合、従来処方されている経口用量である50mg/日とは薬力学的応答が異なることが示された(Toljan and Vrooman,Low-dose naltrexone(LDN)-Review of therapeutic utilization,Med Sci.6,82,2018)。LDNは、グリア細胞のモジュレーター(glial modulator)として作用し、線維筋痛、クローン病、多発性硬化症、複合性局所疼痛症候群、がん等の状態に有益となる可能性がある。ULDNの作用機序には、オピオイドに対する二峰性(bimodal)の細胞応答が関係するようであり、これを術後鎮痛管理に使用することによりオピオイドの総量が低減される。したがって、低用量水準のナルトレキソン(例えば、LDN、VLDN、ULDN等)の治療濃度を安定化させることが先行技術において必要とされている。
【0010】
所望の特性を有する製剤には多くの制約:薬物の放出は長期間に亘らなければならないこと、薬物の内包量は充分でなければならないこと、ポリマーマトリックスは生分解性及び生体適合性を有していなければならないこと、残留化学物質及び溶媒は最大許容水準を下回るべきであること、マイクロスフェアは十分に小さく、且つ患者に使いやすい針を通
過できなければならないこと等が課せられる。微粒子の物理化学的性質は、薬物の特性、ポリマーマトリックスの特性、放出調整物質の特性に加えて、微粒子を調製する処理工程により影響を受ける。
【0011】
化合物をどのように封入して微粒子形態にするかについては様々な方法が開示されている。これらの方法においては、薬物または他の活性化合物を、一般に、溶媒、通常は有機溶媒中で、撹拌機、ホモジナイザー、又は他の動的混合素子を使用して、溶解、分散、又は乳化することにより、マトリックス材料を含む溶液を形成している。次いで有機溶媒を、抽出工程及び/又は追加の洗浄工程により薬物-マトリックス材料から除去した後、微粒子生成物が得られる。得られる微粒子の特性は、微粒子の調製に用いられる多くのパラメータの影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第7,919,499号
【文献】米国特許第7,279,579(B2)号
【文献】米国特許第6,306,425(B1)号
【文献】米国特許第7,157,102(B1)号
【文献】米国特許第8,343,528号
【文献】国際公開第2017/033208号パンフレット
【文献】米国特許第7,914,804号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Garbutt et al.,Efficacy and tolerability of long-acting injectable naltrexone for alcohol dependence;a randomized controlled trial.JAMA.293(13):1617-1625,2005
【文献】Hulse Improving clinical outcomes for naltrexone as a management of problem alcohol use.Br.J.Clin.Pharmacol.76(5)632-641,2013
【文献】Andhariya et al.,Accelerated in vitro release testing method of naltrexone loaded PLGA microspheres Int.J.Pharm.520(1-2)79-85,2017
【文献】C.Brewer.Serum naltrexone and 6-beta-naltrexol levels from naltrexone implants can block very large amounts of heroin:a report of two cases.Addict.Biol.,7:321-323,2002
【文献】Verebey et al.,Naltrexone:Disposition,metabolism,and effects after acute and chronic dosing.Clin.Pharmacol.Ther.,20:315-328,1976
【文献】Hulse et al.,Reducing hospital presentations for opioid overdose in patients treated with sustained release naltrexone implants.Drug Alcohol Depend.,79:351-357,2005
【文献】Comer et al.Depot naltrexone:Long-lasting antagonism of the effects of heroin in humans.Psychopharmacology,159:351-360,2002
【文献】Johnson et al.,A pilot evaluation of the safety and tolerability of repeat dose administration of long-acting injectable naltrexone(Vivitrex(登録商標))in patients with alcohol dependence.Alcohol Clin Exp Res.28:1356-1361,2004
【文献】The preclinical development of Medisorb Naltrexone,a once a month long-acting injection for the treatment of alcohol dependence.Frontiers in Bioscience 10:643-655,2005
【文献】Toljan and Vrooman,Low-dose naltrexone(LDN)-Review of therapeutic utilization,Med Sci.6,82,2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当該技術分野においては、ナルトレキソンを1ヵ月間よりも長く放出することができる微粒子を調製する方法が必要とされている。以下に充分に説明する本開示は、1ヵ月間よりも長くナルトレキソンを放出する製剤への要求を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の形態
本開示は、ナルトレキソン及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)としても知られるポリ(乳酸-co-グリコール酸)等の生分解性ポリマーを含む、1ヵ月間を超えて放出制御(controlled-release)(又は持続放出)される注射可能なナルトレキソン微粒子製剤に関する。この微粒子(マイクロスフェア)は、皮下又は筋肉内に容易に注射することができる。より詳細には、本開示は、4週間よりも長く、好ましくは約8週間~約12週間、より好ましくは最大100日間に亘り独自のナルトレキソン放出特性を示す注射可能な微粒子の調製方法に関する。この微粒子は、水中油型エマルジョンの溶媒を抽出/蒸発させることにより調製される。分散している油相は、有機溶媒を使用して生成された溶液であり、主としてナルトレキソンと生分解性及び生体適合性を有するポリマーとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】微粒子を調製するための方法の一実施形態を説明するフロー図である。
図2A】実施例1の製剤のin vitro放出プロファイル(図2A)及びin vivo薬物動態特性(図2B)を示すものである。
図2B】実施例1の製剤のin vitro放出プロファイル(図2A)及びin vivo薬物動態特性(図2B)を示すものである。
図3】薬物内包率(drug loading)が37~40%(w/w)の範囲にある実施例5の製剤からのナルトレキソンのin vitro放出を例示するものである。
図4A】実施例12の表10の製剤12-3(図4A)、12-4(図4B)、12-5(図4C)、及び12-7(図4D)のin vivo薬物動態特性を例示するものである。
図4B】実施例12の表10の製剤12-3(図4A)、12-4(図4B)、12-5(図4C)、及び12-7(図4D)のin vivo薬物動態特性を例示するものである。
図4C】実施例12の表10の製剤12-3(図4A)、12-4(図4B)、12-5(図4C)、及び12-7(図4D)のin vivo薬物動態特性を例示するものである。
図4D】実施例12の表10の製剤12-3(図4A)、12-4(図4B)、12-5(図4C)、及び12-7(図4D)のin vivo薬物動態特性を例示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態を、その開示の様々な態様がより充分に理解及び評価されるように、特定の好ましい実施形態及び任意の実施形態を含めて詳細に説明する。本明細書においては、4週間よりも長く、特に約8週間~約12週間(又は100日間)に亘り活性剤を放出制御する注射可能なナルトレキソン微粒子製剤を開示する。
【0018】
長時間作用型製剤は、噴霧乾燥、エマルジョンに基づく技法、押出し、微細加工に基づく技法、コアセルベーション、及び他のプロセスを用いて放出制御特性を有する薬物-ポリマー微粒子を製造することにより調製することができる。
【0019】
一実施形態においては、放出制御送達システムとして使用するための微粒子の形成方法を提供する。注射可能な微粒子製剤を調製するためのこの方法は:(a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)及び第1溶媒を含む第1相と、生分解性ポリマー、ナルトレキソン、及び第2溶媒を含む第2相と、を混合することにより混合物を調製する工程と;(b)この混合物を、水又は水溶液を用いる抽出処理に付すことにより微粒子を得る工程と;を含む。好ましくは、この方法は、抽出処理に付した後の微粒子に施す乾燥処理を含む。他の実施形態において、この方法は、(b)抽出処理、を行った後に、任意選択的に、(c)エタノール性水溶液を用いて微粒子を更なる抽出処理に付すこと、を含む。この方法が更なる抽出処理を含む場合、微粒子の乾燥処理は、該更なる抽出処理の前及び/又は後に行われる。例えば、粒子の乾燥は、(b)抽出処理を行った後、(c)更なる抽出処理を行った後、又は(b)及び(c)のそれぞれの後に行われる。
【0020】
図1を参照しながら本発明の実施形態による方法を詳細に説明する。本開示における「第1」又は「第2」という語は、本開示の説明をより簡潔に行うことのみを目的として使用するものであり、これらの語は、その間に特定の順序又は重要度があることを表したり示唆したりするものではない。更に、違いがあることが文脈から明らかである場合を除いて、本開示全体を通して、単数形による表現は複数の意味も包含する。
【0021】
第1相及び第2相の混合は任意の順序で行われる。一態様においては、これらに限定されるものではないが、第1相を第2相の上に加えた後、混合することにより混合物を調製してもよい。この処理は乳化であってもよく、混合物は、ポリマー、ナルトレキソン、及び1種又は複数種の溶媒の水中油型エマルジョンである。混合物(エマルジョン)中の油の粒子は、本開示の後続(follow-up)処理を行うことにより微粒子となる。混合は、所望の範囲の粒子径を有する微粒子を形成するための処理とすることもでき、この範囲は、回転速度やパワー等の混合条件に依存し得る。
【0022】
本開示においては第1相を連続相と称することもできる。第1相は、ポリ(ビニルアルコール)及び第1溶媒を含み、第1溶媒は、水、ジクロロメタン(DCM)、ベンジルアルコール(BA)、及び酢酸エチル(EA)からなる群から選択される少なくとも1種を
含む。一態様において、第1溶媒は水を含まなければならない。例えば、第1溶媒は水とすることができ、第1相は、水にPVAを添加することにより形成することができる。
【0023】
他の態様において、第1溶媒は、ジクロロメタン、ベンジルアルコール、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種である有機溶媒を更に含むことができる。第1溶媒が水及び1種以上の有機溶媒を含む場合、第1相を調製する際に有機溶媒をポリ(ビニルアルコール)及び水と一緒に混合してもよい。他の態様において、第1溶媒が水及び1種以上の有機溶媒を含む場合、第1相を調製する際に、ポリ(ビニルアルコール)及び水を混合した直後に、ポリ(ビニルアルコール)及び水を含む溶液を有機溶媒と混合してもよい。他の態様において、第1溶媒が水及び1種以上の有機溶媒を含む場合、第1相及び第2相を混合する直前に、ポリ(ビニルアルコール)及び水を含む溶液を有機溶媒と混合してもよい。好ましくは、第2相と混合する直前に、ポリ(ビニルアルコール)及び水を含む溶液を1種以上の有機溶媒と混合することができる。
【0024】
一態様において、連続相(第1相)は、水中にポリ(ビニルアルコール)(PVA)を約0.1~5%(w/v)含む。他の態様において、連続相は、ジクロロメタン(DCM)を0~1.8%(w/v)及び/又はベンジルアルコールを0~3.3%(w/v)を更に含むことができる。
【0025】
本開示においては、第2相を有機相と称することもできる。第2相は、生分解性ポリマー、ナルトレキソン、及び第2溶媒を含み、第2溶媒は、ジクロロメタン、ベンジルアルコール、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種を含む。一態様において、第2溶媒は、ジクロロメタンと、ベンジルアルコール、酢酸エチル、又はこれらの組合せとを含む。他の態様においては、微粒子を調製するために、第2相は、塩化メチレンとしても知られるジクロロメタン(DCM)等の有機溶媒に溶解させた約1~40%(w/w)の生分解性ポリマーと、ベンジルアルコール等の他の有機溶媒に溶解させた1~50%(w/w)のナルトレキソンと、を含む。ナルトレキソンは、遊離塩基、塩、溶媒和物、共結晶、又はこれらの組合せの形態で本方法に使用することができる。
【0026】
生体適合性及び生分解性を有するポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、若しくはターポリマーとするか、又はエステル基等の基で連結された繰り返しモノマー単位とすることができる。ポリマーは、約1種以上のヒドロキシカルボン酸残基の単位から構成されていてもよいポリエステルであってもよく、単位の分布は、ランダム、ブロック、交互(paired)、又は逐次重合による(sequentially)分布を示し得る。生分解性ポリマーがポリエステルである場合、ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAが挙げられる。一態様において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、PLGA、又はこれらの組合せである。好ましくは、好適な生分解性ポリエステルは、乳酸:グリコール酸(L:G)(モル)比が50:50~100:0、好ましくは65:35~90:10、より好ましくは75:25~85:15である。好ましくは、好適な生分解性ポリエステルは、60:40~95:5 PLGAである。より好ましくは、好適な生分解性ポリエステルは、70:30~90:10 PLGAである。更に好ましくは、生分解性ポリエステルは、75:25~85:15 PLGAである。最も好ましくは、生分解性ポリエステルは、85:15 PLGAである。一態様において、生分解性ポリエステルの平均分子量は50,000~150,000ダルトンである。
【0027】
混合物(エマルジョン)は、微粒子を得るための適切な溶媒抽出処理に付され、溶媒量は、最終的に、許容できる水準まで低減される。本開示における「抽出する(extract)」、「抽出(すること)(extracting)」、及び「抽出(extraction)」、という語は、ポリ(ビニルアルコール)、生分解性ポリマー、ナルトレキソン、及び1種以上の溶媒を含む混合物又はエマルジョンを抽出相と接触させることを指
す。溶媒抽出処理においては、1種以上の有機溶媒が混合物(エマルジョン)の油粒子から除去され、その結果としてポリマー及びナルトレキソンを含む微粒子が得られる。
【0028】
溶媒抽出処理は、少なくとも1回の抽出処理を含む。この抽出処理(1回目)においては、混合物(エマルジョン)に対し水又は水溶液である抽出相を用いて処理を実施することにより、微粒子が得られる。水溶液は、ポリ(ビニルアルコール)、ジクロロメタン、ベンジルアルコール、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。好ましくは、抽出相は、ポリビニルアルコール、ジクロロメタン、ベンジルアルコール、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種を0~3%(w/v)含む水とすることができる。より好ましくは、抽出相は、ポリ(ビニルアルコール)を0~2%(w/v)、ジクロロメタンを0~1.8%(w/v)、ベンジルアルコールを0~2%(w/v)、又は酢酸エチルを0~3%(w/v)を含む水とすることができる。
【0029】
溶媒抽出処理が2回の抽出処理を含む場合、更なる抽出処理(2回目)は、微粒子に対しエタノール性水溶液(本開示においては、エタノール性抽出相又はエタノール溶液とも称する)を用いて処理を実施することができる。エタノール性抽出相は、エタノール約1~50%(v/v)の水溶液である。
【0030】
各抽出処理の温度は約4~30℃の範囲とすることができる。好ましくは、1回目の(水性)抽出処理は、約4~10℃の範囲の温度で行うことができる。好ましくは、2回目の(エタノール性)抽出処理は、約20~30℃の範囲の温度で行うことができる。抽出時間は約2~8時間の範囲とすることができる。
【0031】
一態様においては、溶媒抽出処理を行った後に、任意選択的に微粒子の乾燥を行う。この乾燥は、真空下に約4~30℃の範囲の温度で行うこともできるし、又は凍結乾燥等の他の乾燥処理を行うこともできる。溶媒抽出処理が2回の抽出処理を含む場合、2回の抽出処理の間に任意選択的な更なる乾燥処理を行うことができる。中間の乾燥は、真空下に約4~30℃の範囲の温度で行うことができる。
【0032】
本方法は、各乾燥処理を行う前に、混合物(エマルジョン)、溶液、分散液等から微粒子を回収するための回収処理を含む。回収処理は、様々な孔径(pore size)を有する篩を用いて行われる。篩の孔径は10~200μmの範囲にある。
【0033】
本方法は、溶媒抽出処理の後に、任意選択的な洗浄処理も含むことができる。本方法が回収処理を含む場合、洗浄処理は、回収後の、乾燥を行う前に行うことができる。洗浄処理は、本開示においては、溶媒や未反応物質等の残留物を除去する処理にもなり得る。
【0034】
一実施形態においては、注射可能な微粒子製剤が提供される。一態様においては、本発明の方法に従い、注射可能な微粒子製剤が調製される。
【0035】
本開示の注射可能な微粒子製剤は、ナルトレキソン及び生分解性ポリマーを含む微粒子を含む。この微粒子は、ナルトレキソンの持続放出特性を示す。一態様においては、ナルトレキソンの持続放出は4週間よりも長く、最大100日間持続する。他の態様において、ナルトレキソンは、約8週間~約12週間持続放出される。微粒子は、ナルトレキソンを約20~40%(w/w)含む。ナルトレキソンは、遊離塩基、塩、溶媒和物、共結晶、又はこれらの組合せの形態とすることができる。
【0036】
生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、又はこれらの組合せを含む。好ましくは、生分解性ポリマーの乳酸:グリコール酸(L:G)(モル)比
は、50:50~100:0、好ましくは65:35~90:10、より好ましくは75:25~85:15とすることができる。生分解性ポリマーの分子量は、50,000ダルトン~150,000ダルトンとすることができる。
【0037】
好ましい実施形態において、注射可能なナルトレキソン微粒子は、後述の実施例に記載するもの等の、分子量が少なくとも50,000ダルトンである85:15のPLGA中に、ナルトレキソンを含む。好ましくは、PLGAの分子量は、50,000ダルトン~150,000ダルトンである。
【0038】
好ましい一実施形態において、ナルトレキソンは、長時間作用型製剤中に、製剤の総重量に対するナルトレキソンの量が、少なくとも約20重量%、好ましくは少なくとも約30重量%、より好ましくは少なくとも約35重量%、例えば約40重量%となるように存在する。一態様において、ナルトレキソンは、長時間作用型製剤中に、約20~40%(w/w)の量で存在する。
【0039】
微粒子は、20Gよりも細い針を用いて皮下及び/又は筋肉内に注射するのに適した範囲の粒子径分布で調製することができる。粒子径、形状、形態(morphology)、及び空隙率は、放出特性が制御されるように、且つシリンジ及び針を通過できるように操作することができる。ナルトレキソンを内包する微粒子は、1~200μmの範囲の粒子径分布を有することができる。より好ましくは、粒子径分布は、約10~125μmの範囲とすることができる。更に好ましくは、粒子径分布は、約25~100μmの範囲とすることができる。一態様において、微粒子の平均粒子径は、25~125μmの範囲とすることができる。
【0040】
一実施形態においては、生分解性微粒子を注射する方法が提供される。この方法は、許容可能な(生体適合性を有する)担体中に生分解性微粒子を含む流動性組成物を注射することを含む。許容可能な(生体適合性を有する)担体としては、水性(aqueous-based)担体、油性(oil-based)担体、又はこれらの組合せが挙げられる。好ましくは、許容可能な担体は、水性系(aqueous based system)である。この水性系は、塩化ナトリウム等の等張化剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の粘度向上剤、ポリソルベート等の湿潤剤、又はこれらの組合せを含む。一態様において、水性系は、ポリソルベート20等の湿潤剤と、カルボキシメチルセルロースナトリウムやヒアルロン酸等の粘度向上剤とから構成することができる。他の許容可能な担体は、吸水速度制限剤(water uptake rate limiter)及び/又は拡散障壁としても作用する油性担体とすることもでき、それにより、初期放出を制限するか又は定常状態の速度を低下させるかのいずれかによって放出速度を変更することができる。生体適合性を有する油担体は、落花生油、ヒマシ油、ゴマ油、ヒマワリ油、大豆油、コーン油、綿実油、又はこれらの任意の組合せを含む。一態様において、好適な許容可能な媒体は、水性担体及び油性担体の組合せとすることもできる。微粒子は皮下又は筋肉内に投与することができる。
【0041】
一実施形態において、放出制御製剤は、治療に有益な量のナルトレキソンを、対象に、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも6週間、より好ましくは少なくとも8週間の期間に亘り提供する。
【0042】
好ましい一実施形態においては、ナルトレキソンをビビトロール(Vivitrol)に使用されている用量と等しい用量(ナルトレキソン380mg)で使用することにより、治療に有益な量のナルトレキソンの作用持続時間が、4週間よりも長く、好ましくは6週間よりも長く、より好ましくは8週間よりも長く、更に好ましくは12週間よりも長くなる。
【0043】
一実施形態においては、オピオイド乱用若しくは過剰摂取、アルコール依存、又は疼痛に関連する疾患を、ナルトレキソン又はその代謝物により治療又は予防する方法が提供される。この方法は、そのような治療又は予防を必要とする患者(対象)に、ナルトレキソンを含む微粒子、この微粒子を含む微粒子製剤、又はこの微粒子若しくは微粒子製剤を含む組成物を有効量投与することを含む。
【0044】
他の実施形態においては、注射可能な微粒子製剤を含む組成物が提供される。この組成物は生体適合性担体を含むことができ、生体適合性担体は、水性担体、油性担体、又はその両方を含む。一態様において、この組成物は、注射剤として製剤化されている。
【0045】
一実施形態においては、オピオイド乱用若しくは過剰摂取、アルコール依存、又は疼痛に関連する疾患の治療又は予防に使用するための、注射可能な微粒子製剤を含む組成物が提供される。この組成物は、生体適合性担体を含むことができ、生体適合性担体は、水性担体、油性担体、又はその両方を含む。一態様において、この組成物は、注射剤として製剤化されている。
【0046】
他の実施形態においては、オピオイド乱用若しくは過剰摂取、アルコール依存、又は疼痛に関連する疾患を治療又は予防するための注射可能な微粒子製剤の使用が提供される。
【0047】
他の実施形態においては、オピオイド乱用若しくは過剰摂取、アルコール依存、又は疼痛に関連する疾患を治療又は予防するための医薬の調製における、注射可能な微粒子製剤の使用が提供される。
【0048】
放出特性は、数ある因子の中でも特に、生分解性及び生体適合性を有するPLGAポリマーの、L:G比、分子量、末端基、及び多分散度、残留溶媒の含有量、製造手法に応じて変化し得る。更に、放出特性は、in vitro及びin vivo実験間の温度の違い、放出される媒体及び間質液の違い、並びに/又は投与に使用される担体等の因子に起因して、in vitro及びin vivoの条件間でも変化し得る。
【0049】
4週間を超える、特に約8~12週間(又は100日間)に亘る放出能力を有する微粒子を提供することにより、対象は、注射回数が減り、通院に必要な回数が減ることになる。本開示の微粒子は、in vivo及びin vitroの両方の条件下で、ナルトレキソンの典型的な持続放出を示す。患者の服薬遵守を向上するために、微粒子の粒子径及び/又はナルトレキソンの量を修正することができる。
【0050】
以下に示す実施例は、説明を目的として提供されるものであって、限定を目的とするものと解釈すべきではない。
【実施例
【0051】
実施例1
PLGA 75:25を処理に用いることの影響
連続相を、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)(モビオール(Mowiol)40-88、シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich,St.Louis,MO))40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でジクロロメタン(DCM)(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher
Scientific,Fair Lawn,NJ))1.333g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))623mg中に溶解さ
せたPLGA 75:25(レソマー(Resomer)RG 756S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))267mgから、又は20mLのシンチレーションバイアル内でジクロロメタン(DCM)(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))1.333g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher
Scientific,Fair Lawn,NJ))623mg中に溶解させたPLGA 75:25(レソマー(Resomer)RG 756S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))294mgから構成されるものとした。連続相10mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000rpmで60秒間均質化した。次いで混合物を、PVA 1%(w/v)を含む水380mLである抽出相に移し、4℃で8時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収した。篩上に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで洗浄した微粒子を25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0052】
これら2種の製剤を、Sprague-Dawley系ラットを用いる薬物動態試験にて、38mg/kgの用量で評価した。
【0053】
結果として得られた薬物内包率及び残留ベンジルアルコール含有量を表1に示す。どちらの製剤も約90%のカプセル化効率を達成したが、約4~5週間しか放出されず、薬物内包率が高い方が速度が速かった。図2中、F.1-1についてはレベルAのin vitro-in vivo相関が認められたが、in vitro試験は、F.1-2で観測されたものよりも速いin vivo反応を予測している。
【0054】
【表1】
【0055】
薬物内包率(%w/w)は、微粒子に含まれるナルトレキソンの量を示し、EE(%)は、微粒子調製におけるナルトレキソンの出発量と比較した、最終的に残存しているナルトレキソンの量を示す。
【0056】
実施例2
PLGA 75:25の分子量及び供給業者の影響
連続相を、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)(モビオール(Mowiol)40-88、シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich,St.Louis,MO))40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でジクロロメタン(DCM)(
フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher
Scientific,Fair Lawn,NJ))1.333g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))623mg中に溶解させたPLGA 75:25を500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))267mgから構成されるものとした。連続相10mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000rpmで60秒間均質化した。次いで混合物を、脱イオン水380mLである抽出相に移し、4℃で8時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収した。篩上に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0057】
結果として得られた薬物内包率及び残留ベンジルアルコール含有量を表2に示す。
【0058】
レソマー(Resomer)RG 750及び756を用いた場合、結果として得られる薬物内包率及び放出プロファイルが類似しており、これは、RG 750の方が範囲が広いものの、固有粘度が類似していることに起因すると考えられる。固有粘度の規格値が非常に類似しているレソマー(Resomer)RG 755及びラクテル(Lactel)B6007-1に関しても、結果として得られる薬物内包率及び薬物放出プロファイルが類似していた。ラクテル(Lactel)B6007-2は、試験に供した他のPLGAと同程度の薬物内包率が得られたが、放出プロファイルに関しては、放出速度がはるかに速かった。製剤F.2-1~F.2-5の薬物放出プロファイルは約30~35日間持続した。
【0059】
【表2】
【0060】
実施例3
ナルトレキソン微粒子の調製:製剤3
連続相を、ポリビニルアルコール(PVA)(モビオール(Mowiol)40-88、シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich、St.Louis、MO))40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した
。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でジクロロメタン(DCM)(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))2.0g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher
Scientific,Fair Lawn,NJ))467mg中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S、エヴォニク・サイロ、ニュージャージー州パーシッパニー(Evonik Cyro,Parsippany,NJ))500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))294mgから構成されるものとした。連続相を更にDCMと混合し、DCM1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間均質化した。次いで混合物を、DCM0.5%w/vを含む水380mLである抽出相に移し、4℃で8時間撹拌した。微粒子を25μmの篩で回収した。篩上に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0061】
結果として得られた薬物内包率は28.1%(75.9%EE)であり、残留ベンジルアルコールは0.55%であった。in vitroでの薬物放出プロファイルにおいては、約50日間に亘り擬0次放出速度を示した。
【0062】
実施例4
ナルトレキソン微粒子の調製:製剤4
連続相を、PVA40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でDCM2.0g及びベンジルアルコール623mg中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))294mgから構成されるものとした。連続相を更にDCMと混合し、DCM1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間均質化した。次いで混合物を、DCM0.66%(w/v)を含む水380mLである4℃の抽出相に移した。次いで微粒子を8時間撹拌した後、23μmの篩で回収した。篩上に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を125μmの篩を通過させ、23μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0063】
結果として得られた薬物内包率は21.7%(58.6%EE)であり、残留ベンジルアルコールは0.83%であった。抽出相中のDCMの量がより多く(0.66%(w/v))、出発時点の有機相のベンジルアルコール含有量がより多いと、製剤の薬物内包率が大幅に低下する。in vitroでの薬物放出プロファイルにおいては、約60日間に亘り擬0次放出速度を示した。
【0064】
実施例5
ナルトレキソン微粒子の調製:乳化媒体中の溶媒の影響
連続相は、PVA40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でDCM4.0g及びベンジルアルコール1.908g中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG
858S)1.0g及びナルトレキソン遊離塩基(スペックジーエックス・エルエルシー(SpecGx,LLC))818mgから、又は20mLのシンチレーションバイアル内でDCM4.0g及びベンジルアルコール1.04g中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)1.0g及びナルトレキソン遊離塩基(スペックジーエックス・エルエルシー(SpecGx,LLC))818mgから構成されるものとした。連続相又は連続相にDCM若しくはベンジルアルコール(BA)を更に混合したもの(表3に記載)15mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000rpmで60秒間均質化した。次いで混合物を抽出相(表3に記載)760mLに移し、4℃で4時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収した。篩に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液400mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を125μmの篩を通過させ、23μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0065】
結果として得られた薬物内包率及び残留ベンジルアルコール含有量を表3に示す。ベンジルアルコールの出発量がより多いと、残留ベンジルアルコールが増加することが分かる。80~90%のカプセル化効率を達成することができる。この実施例では、抽出媒体がジクロロメタンを含む場合、結果として残留するベンジルアルコール含有量が最も少なくなるが、この処理によってナルトレキソンも失われる。薬物放出曲線は、1%PVA中に3.3%BA(ベンジルアルコール)を含む場合と1%PVAのみの場合とでは放出に差が見られないようである。1%PVA中に1.8%DCMを含む場合は、初期の放出速度がわずかに低下したが、これは薬物内包率がより低いことに起因する可能性がある。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例6
ナルトレキソン微粒子の調製:油/水比の影響
連続相を、PVA40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有
機相は、20mLのシンチレーションバイアル内で酢酸エチル(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))3.15g及びベンジルアルコール1.17g中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)0.630g及びナルトレキソン遊離塩基(スペックジーエックス・エルエルシー(SpecGx,LLC))370mgから構成されるものとした。連続相を更に酢酸エチルと混合し、酢酸エチル6.525%(w/v)を含む連続相20mLを有機相と一緒に、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて4,000又は7,000RPMで30秒間乳化させた。次いで混合物を、酢酸エチル2.5%(w/v)を含む水250mLである抽出相に移し、4℃で2時間又は4時間撹拌した。次いで、10μmの篩で微粒子を回収し、4℃で約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液150mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄し、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を150μmの篩を通過させ、10μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0068】
結果として得られた薬物内包率及び残留ベンジルアルコール含有量を表4に示す。
【0069】
カプセル化効率は、ジクロロメタンを用いて類似の条件で調製した製剤よりも低いようである。3種の製剤のin vitro放出プロファイルには最小限の差しか認められず、全ての製剤が約55日間よりもわずかに長く持続した。
【0070】
【表4】
【0071】
実施例7
ゲル浸透クロマトグラフィーの4つの検出器(Quaternary Detector)によるPLGAの分子量測定
レソマー(Resomer)RG 858S及びラクテル(Lactel)B6006-2Pを試料として用いて、濃度が約2.5mg/mLとなるようにアセトンに溶解し、0.22μmのPTFEフィルターで濾過し、注入用のHPLCオートサンプラーバイアルに回収した。試料をGPC-4Dを用いて分析した。GPC-4Dシステムは、ダイナプロ・ナノスター(Dynapro Nanostar)DLSに光ケーブルを介して連結されたドーン・ヘレオス(Dawn Heleos)II(MALLS)、オプティラボ(Optilab)T-rEX(RI検出器)、及びビスコスター(Viscostar)III粘度計をアジレント1260インフィニティ(Agilent 1260 Infinity)II HPLCに接続したものから構成されるものとし、Astra7ソフトウェアで操作した。GPC分析を、ポリマー溶液50.0μLを注入することにより実施した。リニアグラジアントカラム(東ソー・バイオサイエンス(Tosoh Bioscience)LLC、TSKgel GMHHR-L、7.8mm×30cm)を用いて、アセトンの流速を0.6mL/分とし、運転時間を60分間として実施した。ポリマー試料の分子量を表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
実施例8
ナルトレキソン微粒子の調製:85:15の分子量及び抽出時間の影響
連続相を、PVA40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でDCM2.0g及びベンジルアルコール623mgに溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S(IV 1.3~1.7dL/g、ロット番号D161000568、エヴォニク・サイロ、ニュージャージー州パーシッパニー(Evonik Cyro,Parsippany,NJ))又はラクテル(Lactel)B6006-2P(IV 0.76~0.85dL/g、ロット番号A17-068、デュレクト、カリフォルニア州クパチーノ(Durect,Cupertino,CA))500mg及びナルトレキソン遊離塩基(スペックジーエックス・エルエルシー(SpecGx,LLC))267mgから構成されるものとした。連続相を更にDCMと混合し、DCM1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間乳化した。次いで混合物を、抽出相(ジクロロメタン0.5%(w/v)を含む水380mL)に移し、4℃で2、4、又は7時間撹拌した。次いで25μmの篩で微粒子を回収し、4℃で約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子からPVA及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を125μmの篩を通過させ、25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0074】
結果として得られた薬物内包率、残留ベンジルアルコール含有量、及びカプセル化効率を表6に示す。2種類のPLGA間及びそれぞれの薬剤内包率における抽出時間の影響は最小限であった。ラクテル(Lactel)のバッチはレソマー(Resomer)のバッチと比較して、残留ベンジルアルコールが僅かに多いようである。抽出時間は放出速度に影響を与えないようであるが、その一方で、放出プロファイルは2種のポリマー間で明らかに異なる。レソマー(Resomer)のバッチはラクテル(Lactel)のバッチを用いた場合よりも停滞期間(lag phase)が短く、その結果、in vitroにおいては、ラクテル(Lactel)のバッチと比較して、60日間に亘りより安定した状態で放出されるようである。
【0075】
【表6】
【0076】
実施例9
ナルトレキソン微粒子の調製:エタノール洗浄なしvs25%エタノール洗浄
連続相を、PVA40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でDCM2.0g及びベンジルアルコール623mgに溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(スペックジーエックス・エルエルシー(SpecGx,LLC))267mgから構成されるものとした。連続相を更にDCMと混合し、DCM1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるホモジナイザーIKA T25(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間乳化した。次いで、混合物を抽出相(0.5%(w/v)DCMを含む水380mL)に移し、4℃で2時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収し、4℃で約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することによって、微粒子からPVA及び残留溶媒を除去するか、又は125μmの篩を通過させて、48時間真空乾燥させた。次いで、洗浄した微粒子を125μmの篩を通過させ、25μmの篩で回収して、48時間真空乾燥させた。
【0077】
結果として得られた薬物内包率、残留ベンジルアルコール含有量、及びカプセル化効率を表7に示す。エタノール洗浄を行った結果、微粒子の残留ベンジルアルコール含有量が低下すると共に、薬物内包率が高くなった。これはベンジルアルコールが抽出されたことに起因するようである。最初の10日間の放出は、洗浄した粒子及び未洗浄の粒子で同程度であるが、10日よりも後の放出速度は、未洗浄の粒子の方が洗浄した粒子よりも速い。
【0078】
【表7】
【0079】
実施例10
ナルトレキソン微粒子の調製:洗浄エタノール濃度の影響
連続相を、PVA40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有
機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でDCM2.0g及びベンジルアルコール467mg中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(スペックジーエックス・エルエルシー(SpecGx,LLC))305mgから構成されるものとした。連続相を更にDCMと混合し、DCM1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるホモジナイザーIKA T25(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間乳化した。次いで、混合物を抽出相(DCM0.33%(w/v)を含む水380mL)に移し、4℃で8時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収し、4℃で約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を、6.25、12.5、25、又は50%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子からPVA及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を125μmの篩を通過させ、25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0080】
結果として得られた薬物内包率、残留ベンジルアルコール含有量、及びカプセル化効率を表8に示す。6.25、12.5、25%(v/v)を用いた場合、薬物内包率には有意差も傾向も見られなかった。残留ベンジルアルコール含有量は、この条件下では、洗浄エタノール濃度の増加と共に減少する。50%(v/v)を用いた場合、洗浄中にかなりの量のナルトレキソンが失われ、ナルトレキソンの放出速度は、6.25、12.5、25%の条件に比べて非常に速かった。
【0081】
【表8】
【0082】
実施例11
ナルトレキソン微粒子の調製:エタノール洗浄温度の影響
連続相を、PVA40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でDCM2.0g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))467mgに溶解した、PLGA85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(スペックジーエックス・エルエルシー(SpecGx,LLC))294mgから構成されるものとした。この連続相を更にジクロロメタンと混合し、ジクロロメタン1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるホモジナイザーIKA T25(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間乳化した。次いで、混合物を抽出相(PVA 1%(w/v)を含む水380mL)に移し、4℃で8時間撹拌した。次いで、25μmの篩で微粒子を回収し、4℃で約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、4℃又は22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。
次いで、洗浄した微粒子を125μmの篩を通過させ、25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。結果として得られた薬物内包率、残留ベンジルアルコール含有量、及びカプセル化効率を表9に示す。
【0083】
エタノール洗浄を22℃で行った結果、微粒子の残留ベンジルアルコール含有量が低下し、薬物内包率が高くなった。これはベンジルアルコールが抽出されたことに起因するようである。22℃で洗浄した微粒子からのナルトレキソンの放出速度は、10日目まではより速かった。4℃の場合は、微粒子からのin vitroでのナルトレキソンの放出速度は、最初の10日間が経過した後により速くなり、約35日間しか持続しなかった。一方、22℃で洗浄した粒子は約50日間ナルトレキソンを放出した。
【0084】
【表9】
【0085】
実施例12
製剤のin vivo反応
ナルトレキソン(遊離塩基)内包率が約20%~約40%である7種の製剤を、Sprague-Dawleyラットを用いた薬物動態試験にて評価した。7種の製剤の中で、F.12-1、F.12-2、F.12-4、及びF.12-6は、それぞれF.3-5、F.4-1、F.8-6、及びF.5-4と同じ方法で調製し、F.12-3、F.12-5、及びF.12-7は、以下に記載する通りに調製した。
【0086】
F.12-3
連続相を、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)(モビオール(Mowiol)40-88、シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich,St.Louis,MO))40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、ジクロロメタン(DCM)(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))2.0g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))467mg中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))294mgから構成されるものとした。連続相10mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000rpmで60秒間均質化した。次いで、混合物を、PVA 1%(w/v)を含む水380mLである抽出相に移し、4℃で8時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収した。篩上に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで
、洗浄した微粒子を25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0087】
F.12-5
連続相を、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)(モビオール(Mowiol)40-88、シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich,St.Louis,MO))40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でジクロロメタン(DCM)(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher
Scientific,Fair Lawn,NJ))2.0g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))623mgに溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))409mgから構成されるものとした。連続相を更にジクロロメタンと混合し、DCM1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA
T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間均質化した。次いで、混合物を、DCM0.5%(w/v)を含む水380mLである抽出相に移し、4℃で4時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収した。篩上に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を25μmの篩上で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0088】
F.12-7
連続相を、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)(モビオール(Mowiol)40-88、シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich,St.Louis,MO))40gを秤量し、脱イオン水4Lと混合することにより調製した。有機相は、20mLのシンチレーションバイアル内でジクロロメタン(DCM)(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher
Scientific,Fair Lawn,NJ))2.0g及びベンジルアルコール(フィッシャー・サイエンティフィック、ニュージャージー州フェアローン(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ))623mg中に溶解させたPLGA 85:15(レソマー(Resomer)RG 858S)500mg及びナルトレキソン遊離塩基(テコランド・コーポレーション、カリフォルニア州アーバイン(Tecoland Corporation,Irvine,CA))267mgから構成されるものとした。連続相を更にジクロロメタンと混合し、DCM1.8%(w/v)を含む連続相10mLを有機相の上に加え、S25N-10Gジェネレータを備えるIKA T25ホモジナイザー(アイケーエー・ワークス・インコーポレーテッド、ノースカロライナ州ウィルミントン(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC))を用いて7,000RPMで60秒間均質化した。次いで、混合物を、DCM0.5%(w/v)を含む水380mLである抽出相に移し、4℃で7時間撹拌した。次いで微粒子を25μmの篩で回収した。篩上に保持された生成物を22℃で15分間脱水し、約16時間真空乾燥させた。次いで、微粒子を25%(v/v)エタノール溶液200mL中に懸濁させ、22℃で8時間洗浄することにより、微粒子から乳化剤(PVA)及び残留溶媒を除去した。次いで、洗浄した微粒子を25μmの篩で回収し、48時間真空乾燥させた。
【0089】
薬物内包率、溶媒系、及び溶媒濃度がナルトレキソンの放出に与える影響を評価した。薬物内包率が最も低い試料(F.12-2)は、その製剤の定常状態に比べて、最大のバースト放出が見られた。薬物内包率が約28%から約38%へと増加するに従い、2日目頃から20日目までは観測される濃度がより高くなったが、20日目以降から60日目頃までは、観測された定常状態の血漿中濃度は約1.5~4ng/mLと同程度であった。0.5ng/mLのナルトレキソン濃度を約100日間維持した。
【0090】
【表10】
【0091】
薬物内包率(%w/w)は微粒子重量を基準とする。
【0092】
試験手順
in vitroにおける試験製剤からのナルトレキソンの放出
トゥイーン(Tween)20(シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich,St.Louis,MO))0.05%及びアスコルビン酸ナトリウム(シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス(Sigma Aldrich,St.Louis,MO))0.0625%(w/v)を含むpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水20mLを媒体とし、被験物質約5mgと共に50mLの共栓三角フラスコに装入し、37℃、100RPMの湯浴に入れた。様々な時点で試料を採取し、新たな放出媒体に交換した。緩衝液中のナルトレキソン含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
【0093】
ナルトレキソンを定量するための逆相HPLC
HPLCは次に示す条件で行った:移動相:メタノール/リン酸カリウム緩衝液(65:35)、pH6.6;流速:1.0mL/分;オートサンプラー温度:室温;カラム温度:30℃;検出:210nm(UV);総分析時間:7分;注入量:10μL;カラム:ゾルバックス(Zorbax)SB-C18 150×4.6mm、5μm;ナルトレキソンのおおよその保持時間:4.8分。
【0094】
in vivo薬物動態試験
ラット前臨床試験は全てSprague-Dawleyラットを用いて実施した。試験製剤1種につき3~5匹のラットの首筋(scruff behind the neck)又は肩甲骨付近に、塩化ナトリウム0.9%、トゥイーン(Tween)20を0.02%、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム0.5%から構成される水性溶媒1mL中で、ナルトレキソンの投与量が50mg/kg~100mg/kgの範囲となるように皮下注射した。
【0095】
試験期間中、動物を、明白な毒性徴候並びに注射部位の発赤、腫れ、出血、分泌物、及び内出血を含む、被験部位の異常の有無について観察した。また、投与時及び試験期間終了時の体重も測定して記録した。
【0096】
選択された時点において、ラットの尾静脈又は顎下静脈から麻酔下に採血(約250μL)した。血液をラベル付きのエチレンジアミン四酢酸三カリウム入り試験管に回収した。血液を4,000rpmで10分間4℃で遠心分離した。血漿画分をラベル付きの1mLプラスチックチューブに移し、分析時まで-80℃で保管した。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D