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▶ リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】緯糸カラー選択装置を備えた織機
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/38 20060101AFI20230414BHJP
   D03D 47/27 20060101ALI20230414BHJP
   D03D 49/50 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
D03D47/38
D03D47/27
D03D49/50
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021537480
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019065011
(87)【国際公開番号】W WO2020052822
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】102018215395.7
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591021578
【氏名又は名称】リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】ラルス、エラー
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ザイフリート
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ラウカンプ
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング、メッツラー
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-131847(JP,A)
【文献】中国特許第101314881(CN,B)
【文献】実開平06-079781(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/38
D03D 47/27
D03D 49/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯糸カラー選択装置(1)を備えた織機であって、前記緯糸カラー選択装置によって、準備された複数の緯糸(2)のうちの個々の緯糸が、選択された順番でグリッパ(3)に供給可能であり、前記緯糸カラー選択装置は糸ガイド(4)を有しており、前記糸ガイドによって、給糸装置から供給された緯糸は、前記糸ガイド(4)を介して前記緯糸カラー選択装置(1)に供給可能であり、前記糸ガイドの第1の駆動装置(8)によって、前記糸ガイドの糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)を各差出し位置(10)へともたらすことができ、前記糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)は、それぞれ少なくとも1本の緯糸(2)を、選択して前記グリッパ(3)に提供し、杼口(11)に緯入れするために収容しており、差し出される前記緯糸は、第2の駆動装置(9)によって駆動される差出しニードル(12)によって、前記差出し位置(10)で前記グリッパ(3)に供給可能である、織機において、
前記緯糸カラー選択装置(1)の各糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)は、少なくとも前記差出し位置(10)で外面(13)に向かって開かれており、前記糸ガイド凹部を介して、選択された各緯糸が前記グリッパ(3)に差出し可能であって、前記グリッパに前記差出しニードル(12)によって引渡し可能であり、前記差出しニードルは前記緯糸を偏向なしに、前記糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)から、前記糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)の開かれた前記外面(13)を介して導出することを特徴とする、織機。
【請求項2】
前記緯糸カラー選択装置(1)はカラーディスク(14)を有しており、前記カラーディスクの糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)は、前記カラーディスクの外周領域に配置されていて、前記外面(13)に向かって半径方向に延在するそれぞれ1つの開口を有していることを特徴とする、請求項1記載の織機。
【請求項3】
前記差出しニードル(12)は、前記カラーディスク(14)に関して、前記カラーディスク(14)に対して半径方向に延びる少なくとも1つの方向成分でもって前記緯糸(2)を前記グリッパ(3)に引き渡すことを特徴とする、請求項2記載の織機。
【請求項4】
前記差出し位置(10)に位置していない前記糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)は、前記各緯糸(2)を前記各糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)内に保持するための、スリット(15)を有する遮蔽体(16)によって閉鎖可能であり、前記カラーディスク(14)は、前記スリット(15)が、前記緯糸(2)を前記差出し位置(10)から前記グリッパ(3)に引き渡すことができる前記糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)のみを常に解放するように、前記第1の駆動装置(8)によって前記遮蔽体(16)に対して回動可能であることを特徴とする、請求項2または3記載の織機。
【請求項5】
前記カラーディスク(14)は少なくとも2つの部分から形成されていて、第1の部分カラーディスク(14.1)と第2の部分カラーディスク(14.2)とを有しており、前記両部分カラーディスクは、制御可能な駆動装置(8.1,8.2)によって、互いに独立して駆動されていて、それぞれ前記外面に向かって開かれた糸ガイド凹部(6,6.1,6.2)を有していることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の織機。
【請求項6】
前記第2の部分カラーディスク(14.2)は、緯糸挿入方向で見て、前記第1の部分カラーディスク(14.1)の平面に対して平行な平面に配置されていることを特徴とする、請求項5記載の織機。
【請求項7】
前記第1の部分カラーディスク(14.1)は、その外周の湾曲に対して平行に形成された細長いスリット(20.1)を有しており、前記細長いスリットは、前記第1の部分カラーディスク(14.1)において、その外周を分離する通路(15.1)を有しており、これにより、前記細長いスリット(20.1)内でガイドされる緯糸(2)は、前記通路(15.1)を介して前記差出しニードル(12)によって前記グリッパ(3)に供給可能であることを特徴とする、請求項5または6記載の織機。
【請求項8】
前記通路(15.1)は、前記第1の部分カラーディスク(14.1)の中間に配置されていることを特徴とする、請求項7記載の織機。
【請求項9】
前記第1の部分カラーディスク(14.1)と前記第2の部分カラーディスク(14.2)とは、前記第2の部分カラーディスク(14.2)の1つの糸ガイド凹部(6.2)から1本の緯糸(2)を供給するために、前記1つの糸ガイド凹部(6.2)を前記通路(15.1)に重ねかつ前記差出しニードル(12)によって前記第2の部分カラーディスク(14.2)から前記第1の部分カラーディスク(14.1)を介して前記グリッパ(3)に供給することができるように、互いに相対的に旋回可能に駆動されていることを特徴とする、請求項7または8記載の織機。
【請求項10】
前記第1の部分カラーディスク(14.1)の1つの糸ガイド凹部(6.1)からの第1の緯糸と、前記第2の部分カラーディスク(14.2)の1つの糸ガイド凹部(6.2)からの第2の緯糸とを、前記差出しニードル(12)によって把持し、前記グリッパ(3)に供給する二重緯入れのために、前記第2の緯糸をガイドする前記糸ガイド凹部(6.2)に隣接して配置されている糸ガイド凹部(6.2)内には緯糸が位置していないことを特徴とする、請求項5から9までのいずれか1項記載の織機。
【請求項11】
前記第1の部分カラーディスク(14.1)と前記第2の部分カラーディスク(14.2)とは1つの平面に配置されていて、それぞれ、緯糸を前記グリッパ(3)に差し出すことができる作動位置から、緯糸(2)を前記グリッパ(3)に差し出さない休止位置へと旋回可能であることを特徴とする、請求項5記載の織機。
【請求項12】
前記緯糸カラー選択装置(1)は、少なくとも1つの細長いエレメント(17)として形成されており、前記細長いエレメントには、それぞれ1本の緯糸(2)をガイドする複数の糸ガイド凹部(6)が互いに隣接して配置されていて、前記グリッパ(3)に面した外面(13)で開かれていることを特徴とする、請求項1記載の織機。
【請求項13】
前記細長いエレメント(17)は、少なくとも1つのリニアモータの形態の前記第1の駆動装置(8)によって、前記グリッパ(3)にちょうど引き渡すべき緯糸(2)をガイドしている糸ガイド凹部(6)を差出し位置(10)へともたらすように、前記細長いエレメントの長手方向の延在において移動可能であることを特徴とする、請求項12記載の織機。
【請求項14】
前記差出し位置(10)に位置していない前記糸ガイド凹部(6)は、前記各緯糸(2)を前記各糸ガイド凹部(6)内に保持するための、スリット(15)を有する細長い遮蔽体(18)によって閉鎖可能であり、前記細長いエレメント(17)は、前記スリット(15)に対して選択された前記差出し位置(10)に位置している前記糸ガイド凹部(6)のみが開かれているように、前記細長い遮蔽体(18)に対して移動可能であることを特徴とする、請求項12または13記載の織機。
【請求項15】
前記細長いエレメント(17)は2つの別個の部材から成っており、両部材は、それぞれ移動のためにリニアモータを有していることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の織機。
【請求項16】
前記差出しニードルは、旋回ブラケット(19)として形成されていて、前記旋回ブラケットを非差出し位置から前記差出し位置(10)を介して、選択された前記緯糸を前記グリッパに引き渡すことができる引渡し位置まで旋回させるための駆動装置を有しており、前記旋回ブラケット(19)は、緯入れのために、前記細長いエレメント(17)内に予め保持された前記緯糸(2)に前記旋回ブラケット(19)が接触なしに上方から係合するようなブラケット高さで形成されていることを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項記載の織機。
【請求項17】
前記差出しニードル(12)は、前記グリッパ(3)への前記緯糸(2)の差出しの際に側方からの前記緯糸(2)の紛失を阻止する少なくとも1つの凹部(21)を有していることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の織機。
【請求項18】
前記差出しニードル(12)は、二重緯入れのために、二股フォークの形態の1つの二重凹部(22)を有していることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の織機。
【請求項19】
それぞれ1本の緯糸(2)の挿入のための2つの差出しニードル(12)が設けられていることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の織機。
【請求項20】
前記差出しニードル(12)は、各緯糸(2)を前記グリッパ(3)にもたらす前記凹部(21)内に、前記緯糸の張力と、緯止め装置として緯糸(2)の存在とを測定することができる緯糸張力測定センサ(23)を有していることを特徴とする、請求項17記載の織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の特徴を有する、緯糸カラー選択装置を備えた織機に関する。
【背景技術】
【0002】
多色の織布を製作する際に、様々な色および/または様々な材料特性の緯糸が使用される場合には、織機のための緯糸カラー選択装置が必要である。しかしながら、例えば緯糸引出しの際にボビンの負荷を減じるために、同じ緯糸材料を有した単色の織布にも、このような装置は使用される。このような形式の緯糸カラー選択装置は公知である。グリッパ織機で行われる緯糸差出しは、部分的には、最大16色に合わせて設定された差出しが可能であることにより優れているが、これによりオペレータにとっては操作上の欠点が生じる。なぜならば特に、糸用穴が見づらいだけでなく、完全に隠されてしまうことが多く、もしくは緯糸の引込みが実際には困難となり、これは誤挿入につながるおそれがあるからである。
【0003】
公知の緯糸差出しにはさらに、緯糸が、差し出されて、例えばグリッパに引き渡されるまでに、糸ガイド凹部内で部分的に著しく偏向されなければならず、これにより緯糸繊維に全体的な損傷が生じるおそれがあるという欠点がある。特にこのような損傷が織布において見えるので、これにより、高品質の織布の製作は制限されている。
【0004】
中国特許第101314881号明細書には、様々な色または種類の緯糸が、1つのカラー選択ディスクに相並んで配置された穴を通してそれぞれガイドされている緯糸カラー選択装置が記載されている。個々の穴を有したカラー選択ディスクにより、カラー選択ディスクの移動の際に、それぞれ挿入すべき緯糸を、差出しニードルが緯糸をグリッパに引き渡すことができる位置へともたらすことができる。グリッパはカラー選択装置の下方で動くので、各緯糸は、グリッパが糸を受け取ることができるように、緯糸がカラー選択ディスクから出た直後に、差出しニードルによって下方に向かってグリッパへと押されなければならないもしくはガイドされなければならない。この場合、緯糸損傷の可能性を伴う緯糸の著しい偏向が余儀なくされる。
【0005】
中国特許出願公開第105274712号明細書には、緯糸カラー選択装置として、カラー選択ディスクが記載されており、このカラー選択ディスクは、その外周に、異なる色および/または異なる種類の緯糸をガイドするガイド穴を有している。この公知の緯糸カラー選択装置では、カラー選択ディスクに対して差出しニードルがすぐ近くに配置されていることが記載されており、これによりグリッパに緯糸を供給する際には、緯糸を幾分丁寧に取り扱うことが保証されてはいるが、それにもかかわらず、各緯糸は、緯糸を杼口に挿入する前に把持するグリッパへ緯糸を引き渡す際に比較的大きく偏向される。カラー選択ディスクにおける閉じられた穴内でのこのような看過できない偏向は、緯糸のガイドのためには最適であるが、緯糸は必ずしも穏やかにガイドされるわけではない。
【0006】
独国特許出願公開第3808777号明細書には、複数本の緯糸のうちの1本をグリッパプロジェクタイルに選択的に供給するための装置が記載されている。各個々の緯糸のためには、この緯糸を保持するためのフィーダクランプが設けられており、これにより各緯糸をグリッパに供給することができる。クランプ装置は、回動可能に取り付けられたリングとして形成されていて、このリングはリングクランプを有し、このリングクランプの円形移動進路においてリングクランプが、フィーダクランプから解放された緯糸をグリッパ通路の仮想延長線を横切る方向に導いている。準備すべき緯糸の数に相応に設けられた複数のフィーダクランプは、各クランプ作用を実施するための相応の装置を備えており、機械的に極めて複雑であり、例えば緯糸交換の際の緯糸に対するアクセス性の問題も、フィーダクランプによるクランプ作用による緯糸損傷も解決していない。
【0007】
さらに、特開2001-131847号公報には、緯糸カラー選択装置が記載されていて、この装置では、緯糸リングに、緯糸をガイドする複数の緯糸ガイド凹部が設けられている。緯糸リングの回動により、選択された緯糸が常に、所定の位置へともたらされ、この位置からこの緯糸は、旋回可能なレバーによって、その先端の鉤で把持され、杼口内に挿入するために引き渡され得る。この公知の緯糸カラー選択装置の欠点は、回動可能な緯糸リングが、不動の緯糸リングに対して回動させられることにある。したがって、1つの所定の緯糸を差し出すもしくは選択する際には、不動の緯糸リングと回動可能な緯糸リングとの間に配置された全ての緯糸が回動させられて、これによりこれらの緯糸は、部分的に、閉じられた糸ガイド凹部内で著しく偏向される。
【0008】
欧州特許第1500731号明細書には、唯1つの送りロッドを備えた織機のための緯糸送り装置が記載されている。緯糸ガイドは、孔付プレートと送りフォークとを有しており、それらの動きは、連結伝動装置を介して互いに連結されている2つの駆動装置によって制御される。一方の駆動装置は、送りフォークの線形運動のために設けられていて、他方の駆動装置は、回転運動もしくは旋回運動のために設けられている。カラー選択装置は、カラー選択ディスクを有しておらず、全ての緯糸ガイド凹部において、閉じられた穴しか設けられていないので、緯糸は、例えばグリッパによって把持されるために差し出されるまで、部分的に、複数回のしかも著しい偏向を受ける。
【0009】
そして最後に、英国特許出願公告第1002093号明細書には、グリッパを備えた織機のための緯糸交換装置が記載されている。緯糸を別の色の緯糸に交換するために、閉じられた穴を有した1つのプレート状のレバーが、引渡し点の方向にグリッパへと移動させられる。しかしながら別の色の各緯糸は、固有のプレート状のレバーを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに対して、本発明の課題は、公知の装置の欠点、例えば定置の糸ガイドとカラー選択ディスクとの間の緯糸のねじれを回避し、緯糸提供の際の偏向に起因する緯糸の損傷を最小限に抑えるかまたは排除する、織機のための緯糸カラー選択装置を提供することである。本発明のさらなる課題は、差出しの際に、オペレータにとって快適な緯糸引抜きが不可能となってしまうほど、糸用穴へのオペレータの視界を遮ることがなく、そして、並設ピッチを著しく小さくする必要なしに、すなわち、並設密度を著しく高める必要なしに、できるだけ多数の挿入のための緯糸を予め保持することができる、織機のための緯糸カラー選択装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する織機により解決される。有利なさらなる構成は、従属請求項に規定されている。
【0012】
本発明によれば、織機は、緯糸カラー選択装置を有していて、緯糸カラー選択装置によって、準備された複数の緯糸のうちの個々の緯糸を、選択された順番でグリッパに供給可能である。緯糸カラー選択装置は糸ガイドを有しており、糸ガイドによって、給糸装置から供給された緯糸は、糸ガイドを介して緯糸カラー選択装置に供給可能である。緯糸カラー選択装置は糸ガイド凹部を有しており、この糸ガイド凹部は、カラーディスクのための第1の駆動装置によって、選択された各緯糸を各差出し位置へともたらすことができるように移動可能である。糸ガイド凹部は、それぞれ少なくとも1本の緯糸を、選択してグリッパに提供し、杼口に緯入れするために収容している。緯糸カラー選択装置は、織りたい織布のために必要な様々な色または様々な材料の複数の緯糸を予め保持することができるような数の糸ガイド凹部を有しており、これにより、緯入れのために準備された複数の緯糸から、その都度、織布の織りパターンに必要なものが選択される。
【0013】
差出し位置とは、選択された緯糸のための糸ガイド凹部が、その半径方向に関してグリッパに割り当てられているように、グリッパに供給すべき緯糸を内部でガイドしている糸ガイド凹部が位置決めされる位置を意味している。
【0014】
第2の駆動装置によって駆動される差出しニードルは、いまや、緯入れのために選択された緯糸を、差出し位置からグリッパへと供給し、グリッパでこの緯糸は挟持され、これによりこの緯糸は、杼口を通るグリッパの運動により杼口内に挿入される。予め保持された緯糸の数に関係なく、カラーディスクおよび差出しニードルのこのような配置によって、各緯糸が、同じ位置から、実質的に同じ条件下でグリッパに供給されることが保証される。すなわち各緯糸に対して、グリッパへの引渡しの際に同じ条件が存在している。このような配置のプラスの側面は、提供される緯糸の調整およびグリッパによる収容位置が著しく容易になることにある。例えば緯糸数に相当する数の差出しニードルを備えた公知のシステムでは、最初の差出しニードルと最後の差出しニードルとの間の間隔が大きくなり、これにより、このシステムではエラーが生じ易い。
【0015】
本発明によれば、緯糸カラー選択装置の糸ガイド凹部は、少なくともその差出し位置で外面に向かって開かれているように形成されている。この場合、外面とは、緯糸を杼口内に挿入するグリッパもしくはクランプ機構に面している、糸ガイド凹部の側を意味している。少なくとも、緯糸をちょうどグリッパに差し出す糸ガイド凹部が、グリッパの方向で開かれていることにより、選択された緯糸をグリッパに引き渡すために、緯糸が差出しニードルによって把持されてグリッパに供給される場合に、緯糸は、偏向されることなく、糸ガイド凹部から、その開かれた外面を介して導出される。これは、挿入するために設けられた緯糸を差出しニードルによって引き渡す際に、選択された緯糸はもはや決して偏向されないので、糸ガイド凹部からグリッパへの緯糸の極めて穏やかな引渡しとなる。したがって、そうでない場合に存在していた極めて激しくもある偏向に起因する緯糸の損傷は、本発明によれば排除されている。
【0016】
本発明の第1の実施例によれば、緯糸カラー選択装置は、規定数の糸ガイド凹部を備えたカラーディスクを有しており、これらの糸ガイド凹部は、カラーディスクの外周領域に配置されており、各糸ガイド凹部は、カラーディスクの外面に向かって半径方向に延在するそれぞれ1つの開口を有している。
【0017】
好適には、カラーディスクは第1の駆動装置によって回動するように駆動されていて、これにより、選択された緯糸は、その糸ガイド凹部と共に、もしくは糸ガイド凹部の開口と共に、その開口がグリッパに向いていて、ひいては、グリッパに対する差出し位置をとるように、回動させられることが保証される。これは、本明細書では、糸が、糸ガイド凹部のその開口でグリッパに方向付けられていて、したがって、差出し位置において次のステップで差出しニードルによって把持され、直接グリッパに供給することを意味している。すなわち、差出し位置は、緯糸が、差出しニードルによってグリッパに引き渡されるときに直接とっている位置ではない。グリッパへ向かう方向に差出しニードルが移動することにより、選択された緯糸は、開かれた糸ガイド凹部から導出され、これによりグリッパに供給することができる。これは、糸ガイド凹部の開口部が、グリッパに向いていて、この位置で差出しニードルが好適には、カラーディスクの外面に向かう糸ガイド凹部の開口の方向で緯糸を把持し、グリッパに供給することにより可能である。
【0018】
しかしながら差出しニードルの移動は、カラーディスクの旋回点および緯糸を供給すべき糸ガイド凹部の開口を通って延在する線の半径方向に必ずしも行われなくてもよい。むしろ、差出しニードルが、カラーディスクに関して、カラーディスクに対して半径方向に延びる少なくとも1つの方向成分でもって緯糸をグリッパに引き渡せば十分である。差出しニードルの移動の正確な半径方向からのずれは、構造条件または機能条件に基づいていてよい。
【0019】
好適には、差出し位置に位置していない開かれた糸ガイド凹部は、各緯糸を各糸ガイド凹部内に保持するための遮蔽体によって閉鎖可能であるか、もしくは安全確保されているか、もしくは遮断されているか、もしくは場合によってはカバーもされており、糸ガイド凹部を閉鎖する遮蔽体はスリットを有しており、このスリットは、常に差出し位置に配置されていて、挿入すべき緯糸のためにカラーディスクを糸ガイド凹部の開口でスリットに対して位置決めした後、結果的にグリッパに向いている。これにより、導入すべき緯糸を偏向なしに、開かれた糸ガイド凹部から、遮蔽体のスリットを通ってグリッパへと供給することができる。カラーディスクは、スリットが、緯糸をグリッパに引き渡す糸ガイド凹部のみを常に解放するように、第1の駆動装置によって遮蔽体に対して回動可能である。
【0020】
遮蔽体は、緯糸の供給方向で見て、カラーディスクの手前、カラーディスクの高さ、またはカラーディスクの後方に配置されていてよい。遮蔽体がカラーディスクの手前または後方に配置されている場合には、遮蔽体は、好適にはカラーディスクと同様のディスクまたはディスクセグメントとして、二重のディスク装置の形態で形成されていて、差出し位置に配置されている、外周に向かって半径方向に延在するスリットを有しており、このスリットは、その差出し位置にあるカラーディスクの各糸ガイド凹部のために、グリッパへの緯糸の偏向のない供給を可能にする分離部を成している。遮蔽体は、好適にはカラーディスクに密に、好適にはカラーディスクに接触してさえ、配置されている。
【0021】
カラーディスクの高さにもしくはカラーディスクが延在する平面に遮蔽体が配置されている場合には、遮蔽体は好適にはリングセグメント状の遮蔽体として形成されていてよく、この遮蔽体は、いわばリングもしくはリングセグメントとして、空間的に不動にカラーディスクの周囲に位置し、好適にはカラーディスクを取り囲んでいて、したがって、差出し位置へと回動させられた糸ガイド凹部以外の、カラーディスクの糸ガイド凹部をカバーしており、差出し位置に遮蔽体は、緯糸の偏向のない導出およびグリッパへの供給のためのスリットを有している。好適には、通常、開かれた糸ガイド凹部を有するカラーディスクの外周に、カラーディスクの平滑な外周に形状が一致しているリングセグメント状の遮蔽体が取り付けられている。このリングセグメント状の遮蔽体は、開かれた糸ガイド凹部を閉鎖するために、しかも、差出し位置で差出しニードルによって直接グリッパに引き渡される緯糸の糸ガイド凹部以外を閉鎖するために機能する。外側に向かって開かれたその他の糸ガイド凹部の閉鎖は、それぞれ開かれた糸ガイド凹部から緯糸が脱落しないためにもしくは紛失されないために機能する。
【0022】
グリッパによる緯糸の収容後、杼口内への挿入により引っ張られた糸は、差出しニードルの移動によりスリットを通ってカラーディスクの糸ガイド凹部内へ戻され、したがって偏向なしに挿入される。差出しニードルが出発位置に達するとすぐに、新たに差し出すための差出し位置へと、カラーディスクを回動させることができるか、または挿入すべき色が同じ場合には、カラーディスクの差出し位置は留められる。
【0023】
さらなる実施例によれば、カラーディスクは好適には2つの部分から形成されている。好適には、第1の部分カラーディスクと第2の部分カラーディスクとが設けられており、両部分カラーディスクは、制御可能な駆動装置によって互いに独立して駆動されており、本発明によれば同様にそれぞれ外面に向かって開かれた糸ガイド凹部を有している。カラーディスクが、厳密に2つのカラーディスク、すなわち第1の部分カラーディスクと第2の部分カラーディスクとから成っていて、各部分カラーディスクがそれぞれ他方に依存せずに、制御可能な駆動装置によって駆動されていることにより、2つの部分カラーディスクと差出しニードルとのもとで、いわば少なくとも3つの、好適には互いに独立した駆動装置、つまり、各部分カラーディスクのためのそれぞれ1つの駆動装置と、差出しニードルのための1つの駆動装置とが必要となる。しかしながら、さらなる部分カラーディスクを設けることもでき、この場合、各部分カラーディスクは、別個の駆動装置を有している。2つ以上の差出しニードルを設けることもでき、これにより、1つの差出しニードルにつき、場合によってはそれぞれ1つの駆動装置が設けられている。
【0024】
第2の部分カラーディスクは、緯糸挿入方向で見て、第1の部分カラーディスクの手前または後方の平面に、第1の部分カラーディスクに対して実質的に平行に配置されていてよい。第2の部分カラーディスクは、第1の部分カラーディスクに対していわば層状の配置で形成されている。この場合、層状の配置とは、単に空間的な配置を意味する。第1の部分カラーディスクへの接続は、単に、各部分カラーディスクが、それぞれ他方の部分カラーディスクに対して相対的に独立した旋回を行うことができるようにする別個の駆動装置を両部分カラーディスクが有するという観点でのみ行われる。しかしながら、両部分カラーディスクの互いの旋回運動は、各緯糸、しかも、第1の部分カラーディスクの糸ガイド凹部内にガイドされている緯糸と、第2の部分カラーディスクの開かれた糸ガイド凹部内にガイドされている緯糸とをグリッパに差し出し可能とするため、外面に向かって開かれた糸ガイド凹部の位置を互いに合わせることができるように適合させられなければならない。好適には、第2の部分カラーディスクの旋回点から外面までの半径方向の延在は、第1の部分カラーディスクのこのような半径方向の距離よりも小さい。
【0025】
部分カラーディスク相互の実質的に平行な配置には、機能または配置に起因して15°~20°であってよい、平行性からの小さなずれも含まれるべきである。
【0026】
好適には、第1の部分カラーディスクは、外周でかつ外周に向かって開かれた糸ガイド凹部に加えて付加的に、第1の部分カラーディスクの外周の湾曲に対して実質的に平行に形成された細長いスリットを有している。この細長いスリットは、第1の部分カラーディスクのいわば内側にほぼ同じ湾曲で、外側に向かって開かれた糸ガイド凹部に直接接続されることなく延在している。第1の部分カラーディスクの細長いスリットには、細長いスリットの内部から、第1の部分カラーディスクの外面にまで、もしくは外周までを接続する通路もしくはスリットが設けられている。湾曲した細長いスリットの内部でガイドされている緯糸は、この細長いスリットによって、第2の部分カラーディスクの各糸ガイド凹部から誤って脱落することはない。それどころか、そこで細長いスリット内にガイドされているこれらの緯糸は、通路もしくはスリットを介して導出することしかできない。したがって、第2の部分カラーディスクからグリッパに供給される緯糸は、第1の部分カラーディスクを介して導出される。なぜならば、導出が、細長いスリットを第1の部分カラーディスクの外面に接続する通路を介して行われるからである。好適には、通路は第1の部分カラーディスクの中間に配置されている。しかしながら、特定の使用例のためには、この通路を偏心させて設けることも可能である。この場合、中間への通路の配置とは、第1の部分カラーディスクがディスクセグメントとして形成されていて、その角の二等分線が通路の配置に一致することを意味している。
【0027】
第1の部分カラーディスクおよび第2の部分カラーディスクの両方から緯糸を確実に導出し、差出しニードルによってグリッパに供給することができるようにするために、第1の部分カラーディスクと第2の部分カラーディスクとは、第2の部分カラーディスクにおける各糸ガイド凹部から1本の緯糸を供給するために、この糸ガイド凹部を通路に重ね、これにより差出しニードルによって第2の部分カラーディスクからこの通路を介して、すなわち第1の部分カラーディスクを介して、この緯糸をグリッパに供給可能であるように、互いに相対的に旋回可能に駆動されている。第1の部分カラーディスクと第2の部分カラーディスクとはしたがって、第1の部分カラーディスクの通路が緯糸と常に一致し、ひいては、第2の部分カラーディスクの、相応の1本の緯糸をグリッパに供給して杼口に挿入すべき糸ガイド凹部と常に一致するように旋回させられる。
【0028】
二重緯入れの場合には、唯1つの差出しニードルによって2本の緯糸を同時にグリッパヘッドに供給することができるようにするために、二重の収容穴、すなわち、二重凹部を有することができる、2本の緯糸のために設けられた差出しニードルが、第1の緯糸を第1の部分カラーディスクの1つの糸ガイド凹部から、二重凹部によって把持し、グリッパに供給することができ、かつ相応の第2の緯糸を第2の部分カラーディスクの1つの糸ガイド凹部から、二重凹部によって把持し、グリッパに供給することができることに注意する必要がある。このためには、緯糸が、第2の部分カラーディスクの、第2の緯糸をガイドするガイド穴に隣接して位置していてはならない。なぜならば、さもないと、差出しニードルが別の緯糸を把持するおそれがあるからである。しかしながら、この別の緯糸を差出しニードルが糸ガイド凹部から導出して、グリッパに供給することはあり得ない。なぜならば、糸ガイド凹部が第1の部分カラーディスクの細長いスリットの通路のところに位置していないからである。
【0029】
別の実施例によれば、第1の部分カラーディスクと第2の部分カラーディスクは、緯糸供給方向で見て、相前後して配置されておらず、実質的に1つの平面に配置されており、この平面は、緯糸供給方向に対して実質的に垂直に延在している。この実施例によっても、第1の部分カラーディスクと第2の部分カラーディスクとは、それぞれ1つの固有の駆動装置を有しているので、両部分カラーディスクは、実質的に互いに独立して動かすこともできる。
【0030】
この実施例によれば、カラーディスクはディスクセグメントとして形成されていて、好適には、セグメントを二等分する角度の真ん中で分割されている。両部分カラーディスクのための別個の駆動装置により、例えば、一方の部分カラーディスクを作動位置から休止位置へと動かすことができ、これにより、所定の時間の間、少なくとも、作動位置に位置している他方の部分カラーディスクの緯糸のみをグリッパに供給することができる。このような作動形式は、例えば、予め保持すべき緯糸数が比較的多く、したがって、カラーディスクのセグメント角度が全体として比較的大きく、ひいては、例えば、カラーディスクを見る視線方向においてかなり左側に配置されている1本の緯糸を、同じ視線方向においてかなり右側で糸ガイド凹部内に配置されている1本の緯糸と置き換えるために、比較的大きな旋回距離を要する場合に有利である。例えば、挿入すべき緯糸の種類に応じて、部分カラーディスクのうちの一方でその糸ガイド凹部内にガイドされている所定数の緯糸が、予め規定された織り時間中に使用される場合には、この作動位置において、確実な作動と、この一方の部分カラーディスクのみを介した相応の緯糸の確実な提供とを達成することができる。それほど頻繁に使用されるわけではない緯糸を挿入すべき場合に初めて、または緯糸の第2のグループがごくたまに必要とされる場合に、作動位置にあった部分カラーディスクを作動位置から休止位置へと旋回させることができる。その後、他方の部分カラーディスクが、休止位置から、目下所望される作動位置へと戻し旋回させられる。とりわけ、全てが同じ時間で常に同じ頻度で使用されるわけではない多数の緯糸がある場合には、このような形式の分割されたカラーディスクは、カラーディスクが動く移動距離を短縮するという利点を有している。
【0031】
しかしながら、さらに、両部分カラーディスクのための駆動装置は互いに独立して駆動することができるという事実に基づき、挿入される緯糸の使用頻度がそれほど異なってはいないある特定の使用例のためには、両部分カラーディスクのための両駆動装置を、両部分カラーディスクの動きが、統合されたカラーディスクの形式で、あたかもカラーディスクが一体に形成されているかのように行われるように、互いに適合させることもできる。したがって、カラーディスクを2つの部分カラーディスクに分割することにより、1つだけのカラーディスクが、分割されていない構成形式で設けられている場合よりも、相応に挿入すべき緯糸の選択における、全体的に優れた柔軟性が提供される。
【0032】
第2の実施例によれば、緯糸カラー選択装置は、少なくとも細長いエレメントとして形成されており、この細長いエレメントには、複数の糸ガイド凹部が互いに隣接して配置されていて、それぞれ少なくとも1本の緯糸をガイドしている。これらの糸ガイド凹部も、細長いエレメントの、グリッパに面した縁部で開かれている。これにより、差出し位置に位置していてちょうど挿入すべき緯糸のみをグリッパに供給できることが保証される。しかしながら、その他の緯糸が開かれた糸ガイド凹部から、意図せずまたは不都合にも脱落しないように、好適には細長い遮蔽体として形成された、細長いエレメントの差出し位置にスリットを備えた遮蔽体が設けられている。
【0033】
糸ガイド凹部はその縁部において、グリッパが作動する平面に向かう方向に開かれている。これにより、糸ガイド凹部の開かれた縁部を介してその都度杼口に挿入される緯糸が、差出し位置で偏向なくグリッパに供給されることが保証されている。導入すべき緯糸を差し出す際に、緯糸が著しく偏向されることのないように、細長いエレメントひいては糸ガイド凹部もしくは緯糸を杼口内に挿入すべき糸ガイド凹部は、緯糸を、この開かれた糸ガイド凹部から細長い遮蔽体のスリットを介して導出してグリッパへと供給することができるようになるところまで、不動の細長い遮蔽体を基準としてグリッパに向かう方向に対して横方向にスライドもしくは移動させられる。
【0034】
好適には、細長いエレメントは、好適にはリニアモータである第1の駆動装置を有している。この第1の駆動装置は、細長いエレメントをその長手方向延在の方向で、スライド、引っ張りまたは押圧により動かし、しかも、グリッパに引き渡すべき緯糸をちょうど有している糸ガイド凹部が、遮蔽体のスリットに通じる差出し位置に到るように動かす。しかしながら、この駆動装置は、好適には液圧シリンダまたは空気圧シリンダであってもよく、この場合、この第1の駆動装置は、細長いエレメントをその長手方向延在おいて運動させるための線形の駆動運動を可能にするように形成されている。このことは、カラーディスクのためにも同様に使用可能である、例えば歯付きベルト、カム等のような公知の機械的なシステムを介しても同様に可能である。しかしながら、細長いエレメントは2つの別個の部材から成っていてもよく、これらの部材は、それぞれ長手方向延在で移動するために、固有の第1の駆動装置を有している。これにより、緯糸カラー選択装置の著しいコンパクト性を得るために、細長いエレメントの長さを、例えば半分にできることを保証することができる。
【0035】
好適には、差出し位置に位置していない開かれた糸ガイド凹部は、各緯糸を各糸ガイド凹部内に保持するための細長い遮蔽体によって、糸ガイド凹部の縁部に向かって閉鎖されている、もしくはカバーされている、もしくはカバー可能である、または閉鎖可能である。すなわち、細長いエレメントは、その都度選択された差出し位置に位置している糸ガイド凹部のみが開放維持されるように、細長い遮蔽体に対して移動可能である。なぜならば、そこに細長い遮蔽体がスリットを有しているからである。この糸ガイド凹部からは、杼口内に挿入するために設けられた緯糸が差出しニードルによってグリッパにもたらされる。好適には、差出しニードルは、旋回ブラケットとして形成されていて、旋回ブラケットを非差出し位置から、差出し位置を介して引渡し位置へと旋回させるための第2の駆動装置を有している。各緯糸が細長いエレメントの開かれた糸ガイド凹部と共に差出し位置に位置している場合、旋回ブラケットは、緯入れのために細長いエレメント内に予め保持された緯糸が、差出しニードルによって接触なしに上方から係合するようなブラケット高さで形成されている。細長いエレメントの2つの部分エレメントが互いに重なり合って配置されている場合には、旋回ブラケットのブラケット高さは確かに大きくなるが、このような場合、ブラケット長さは短くなるので、安定性は高くなり、振動に対して敏感な傾向は減じられる。
【0036】
細長い遮蔽体は、その対応する細長いエレメントに対して空間的に不動に、好適にはカラーディスクの形態の緯糸カラー選択装置を有する実施例と同様に、緯糸供給方向で見て、細長いエレメントの手前または後方にまたは細長いエレメントの高さで配置されている。好適には、細長い遮蔽体は、細長いエレメントに可能な限り密に、好適には滑り接触するように配置されている。「細長いエレメントの高さで」とは、細長いエレメントが細長い遮蔽体に沿って滑動するようにまたは細長い遮蔽体に密に配置されていることを意味し、これにより細長いエレメントの動きは、緯糸を挿入すべき糸ガイド凹部をスリットへと、すなわち差出し位置へとガイドするまで行われる。
【0037】
好適には、差出しニードルはその前方領域に、同様に開かれた穴の形態の凹部を有している。この凹部は、差出しニードルによってグリッパへと搬送すべき緯糸が、この緯糸をグリッパに差し出している間に側方から紛失されることを阻止している。当然ながら、凹部を備えた構成の差出しニードルは、カラーディスクのためにも、相応に開かれた糸ガイド凹部を有する細長いエレメントのためにも使用可能である。
【0038】
二重緯入れのために、差出しニードルは好適には、二股フォークの形態の1つの開かれた二重凹部を有している。このような形式の二重凹部によって、隣接する2本の緯糸を同時に1つのグリッパに供給することができる。好適には二重凹部のサイズは、細長いエレメントまたはカラーディスクにおける糸ガイド凹部に、もしくは、細長いエレメントまたはカラーディスクにおける隣接する2つの糸ガイド凹部の間隔に合わせられている。二重緯入れを実現するために、細長い遮蔽体に設けられた、またはカラーディスクのための遮蔽体に設けられた、挿入すべき緯糸を解放するためのスリットは、二重緯入れのために設けられた緯糸を両方とも実質的に同時に差出しニードルによって各糸ガイド凹部から導出してグリッパに引き渡すことができるような幅を有して形成されている。
【0039】
好適には、グリッパへの緯糸の差出しのために、それぞれ1本の緯糸を挿入するための2つの差出しニードルを備えたシステムも設けられている。これにより、緯糸カラー選択装置を備えた本発明による織機の柔軟性が高められる。なぜならば、これにより、構造的な改造をせずに、単に1本の緯糸の差出しだけでなく、2本の緯糸の差出し、しかも、1つのグリッパへの同時の差出しが可能となる。
【0040】
本発明のさらなる実施例によれば、1つまたは複数の差出しニードルはその各凹部内に、緯糸がこのような凹部に存在している場合に緯糸張力と、緯止め装置として緯糸の存在とを測定することができる組み付けられた緯糸張力測定センサを有している。これにより、織り過程の最適化のために必要なもしくは所望の糸張力を調整することができる。
【0041】
本発明の構成のさらなる利点、詳細、ならびに利用可能性を、以下に、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】カラーディスクの形態の緯糸カラー選択装置を示す図であって、この場合、挿入すべき緯糸を備えた糸ガイド凹部は、差出し位置に位置している。
図2図1によるカラーディスクを備えた緯糸カラー選択装置を示す図であって、この場合、差出しニードルは二重緯入れ用に形成されている。
図3】供給すべきではない緯糸のための開かれた糸ガイド凹部を閉鎖しかつ安全確保するための、リングセグメント状の遮蔽体を備えたカラーディスクを、グリッパへの引渡し位置にある緯糸と共に示す図である。
図4】本発明の第2の実施例による細長いエレメントの形態の緯糸カラー選択装置を3次元的に示す図である。
図5図4とは異なる3次元的な図で緯糸カラー選択装置を示す図である。
図6】部分カラーディスクの基本構造、ならびに単一緯入れのためのかつ二重緯入れのための第1および第2の部分カラーディスクによる緯糸差出しの原理を示す図である。
図7図1の基本構造の緯糸カラー選択装置であるが、第1および第2の部分カラーディスクを備えた実施例により示す図である。
図8図7の例を拡大して、緯糸がグリッパに差し出される瞬間で示す図である。
図9図7および図8による実施例を、側方からの視線方向で3次元的に示す図である。
図10図7の実施例であるが、二重緯入れのための実施例を示す図である。
図11図7の実施例を、後方から遮蔽体を見る視線方向で、差出しニードルによって把持された緯糸と共に示す図である。
図12】同じ旋回平面に配置された2つの部分カラーディスクを備えた別の実施例を示す図である。
図13図11の実施例であるが、二重緯入れのための実施例を示す図である。
図14】第2の部分カラーディスクの糸ガイド凹部から単一緯入れのための図7による実施例を示す図である。
図15図14と同様の実施例であるが、二重緯入れのための実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、拡開された杼口11を有した織布区分が示されており、この織布区分の側方には、本発明の第1の実施例によるカラーディスク14の形態の本発明による緯糸カラー選択装置1が示されている。カラーディスク14は、実際の糸ガイド4を成しており、その外周に、給糸装置(図示せず)から緯糸カラー選択装置1に供給される緯糸のための糸ガイド凹部6を有している。通常、各糸ガイド凹部6内には1本の緯糸2が位置している。糸ガイド凹部は、糸ガイド凹部6の外縁もしくは外面13もしくは糸ガイド凹部6の開口からカラーディスク14の内部へと凹設されている。
【0044】
緯糸カラー選択装置1はさらに差出しニードル12を有していて、差出しニードルは、その前端部に、フォーク状に形成されている凹部21を有しており、これにより、カラーディスク14が差出し位置10に到るとすぐに、差出しニードル12の前端部のフォークの先端の間で緯糸2が、グリッパ3の方向への差出しニードル12の下降運動によりグリッパに供給され、このグリッパ内に緯糸は挟持される。通常、緯糸は、再び供給されるまで、織布縁部でタック耳にて保持される。
【0045】
杼口11内に挿入すべき緯糸2を挟むグリッパ3は、グリッパガイドレール26に沿ってガイドされていて、緯糸2の挟込みが行われた後、杼口11を通ってグリッパが移動する際に緯糸2を連れて移動し、これにより、緯糸は杼口11内に挿入される。次いで、ここには図示されていない筬打ち装置の動きによって、緯糸2は接合点に当て付けられ、したがって、織布および縁部もしくはタック耳にて接合される。後続の杼口11の、接合に依存した新たな開口の形成により、緯糸2は織布24内で接合される。
【0046】
カラーディスク14は、第1の駆動装置8を有していて、第1の駆動装置により各糸ガイド凹部6は差出し位置10に回動させられる。これにより、カラーディスク14を、挿入すべき緯糸に関して非差出し位置(図示せず)から差出し位置10へともたらした後で、差出しニードル12を降下させると、差出しニードル12とそのフォーク状の端部とによって、差出しニードル12の降下により、緯糸2は、糸ガイド凹部6から偏向なしに導出され、緯糸を挟むためのグリッパ3に引き渡される。挟み込みが行われた後は、新たな緯入れが実現される。差出しニードル12の移動は、第2の駆動装置9によって行われる。
【0047】
使用可能な様々な色の数または緯糸のための様々な材料は、カラー選択ディスク14に設けられた糸ガイド凹部6の数により規定される。
【0048】
この実施例では、緯糸カラー選択装置は、2つのディスクセグメントから成る二重の装置として形成されている。緯糸の供給方向における手前側に配置されたディスクセグメントは、緯糸の供給方向における後方側に配置されたディスクセグメント14の、緯糸が杼口に挿入されるべきではない開かれた糸ガイド凹部を閉鎖するために機能する遮蔽体16を成している。遮蔽体16として形成された手前側のディスクセグメントは、不動の位置を有しているのに対し、開かれた糸ガイド凹部を備えて形成されたディスクセグメント14は遮蔽体16に対して回動可能である。各糸ガイド凹部では、少なくとも1本の緯糸がガイドされている。カラーディスク14の形態の、糸ガイド凹部6が設けられたディスクセグメントは目下、規定されたもしくは選択された緯糸2をグリッパ3に引き渡すべきである糸ガイド凹部6がスリット15(図3参照)と一致して、これにより供給すべき緯糸を、偏向させずに、糸ガイド凹部6からグリッパ3へと供給することができるように回動させられている。予め保持された緯糸の望ましくないまたは意図しない脱落を回避するために、差出し位置10に位置していない糸ガイド凹部は、遮蔽体16によって閉鎖される。スリット15が設けられている、遮蔽体16として形成された手前側のディスクセグメントは、このディスクセグメントの外周に対して平行に延在する細長いスリット20を有しており、この細長いスリットは分離部によって、スリット15を形成している。相応の緯糸をグリッパに供給すべきである規定された糸ガイド凹部とスリット15とが一致した場合にだけ、緯糸を差出しニードル12によって、偏向なしにグリッパ3に供給することができる。手前に位置するディスクセグメントにおけるスリット15は、外周に対して半径方向に形成されている。遮蔽体16として形成されているディスクセグメントは、好適にはカラーディスク14に密に、好適にはカラーディスクに接して、配置されている。
【0049】
緯糸2が差出し位置10にあり、差出しニードル12が、緯糸をグリッパ3に引き渡す準備ができている場合には、差出しニードル12の下降により、緯糸2は、外側に向かって開かれている糸ガイド凹部6から、遮蔽体16に設けられたスリット15を通って導出され、いずれにせよ、直接的なカラーディスク14に関してどの縁部においても偏向されないので、緯糸2はその外面に、損傷または破損を受けない。
【0050】
図2には、カラーディスク14の形態の緯糸カラー選択装置1の装置が示されており、この装置は基本的には図1の図面に相当するが、図2の装置では、差出しニードル12はその前端部に、二重の緯入れのために、2本の緯糸を同時に把持するための2つの凹部を、二重凹部22として有していて、この二重凹部にはそれぞれ1本の緯糸2が位置している。差出しニードル12の前端部における両凹部21の間の間隔は、この場合、カラーディスク14に設けられた開かれた糸ガイド凹部6の間隔に実質的に相当するので、差出しニードル12が下方に移動する際には、2本の緯糸2が、各糸ガイド凹部6から導出され、二重緯入れのために共にグリッパ3へと供給される。図示した織布24は、裁断耳または折り込まれた耳25を有する織布の完成した部分と、織布の接合点から図面の右方向に向かっては、拡開された杼口11とを示している。
【0051】
図3には、ディスクセグメント状のカラーディスク14と、同様にディスクセグメント状の遮蔽体16とから成る二重の装置が示されている。図3では、両ディスクセグメントの二重の装置の緯糸挿入方向における手前側に位置する遮蔽体16に続いて、糸ガイド凹部6を有するカラーディスク14が配置されている。ディスクセグメント状に形成されている遮蔽体16は、その円形の周方向で、周面に対して平行に延びる細長いスリット20を有しており、この細長いスリットは、外側に形成されている遮蔽体16のリング状の張り出し部を貫通する分離部としてのスリット15を成している。遮蔽体16は不動の位置に位置しており、そのスリット15は、このスリットを通して、カラーディスク14の開かれた糸ガイド凹部6から導出される緯糸をグリッパに供給することができるように、配置されている。図3には目下、一方の緯糸は、遮蔽体16に設けられた、周の輪郭に沿った細長いスリット20の内側で、意図しない脱落が生じないように保持されており、他方では、杼口11に挿入するために設けられた緯糸2が、既にスリット15を通って、ひいては、スリットに一致する相応のガイド凹部6から導出されており、しかも、前端部に相応のフォーク状の凹部を有した差出しニードル12によってグリッパ3に挟み込むために供給されていることが示されている。差出しニードルがグリッパ3に供給する緯糸をもたらす位置を、引渡し位置と言う。すなわち、図3に示した緯糸の状態は、カラーディスク14の、相応の緯糸2をグリッパ3に供給すべき糸ガイド凹部6が、遮蔽体16のスリット15に重ねられて、差出しニードル12によってこの緯糸が、開かれた糸ガイド凹部6からスリット15を通して、図3に示された引渡し位置にもたらされた後に生じる状態である。引渡し位置では、グリッパ3におけるクランプ装置が、この緯糸を把持し、次いでこの緯糸を杼口内に挿入する。
【0052】
図4には、本発明による第2の実施例が示されており、この実施例では、緯糸カラー選択装置1が、細長いエレメント17として形成されていて、この細長いエレメントには、互いに隣接して、下方に向かって織布24の方向に配置された糸ガイド凹部6が設けられている。細長いエレメント17として形成された糸ガイド4は、第1の駆動装置8によってずらされて、下方に向かって開かれた各糸ガイド凹部6に配置された緯糸2が、第1の駆動装置8によって、非差出し位置(図示せず)から差出し位置10へと長手方向にもたらされるようになっている。緯入れの方向で見て手前に位置する、細長いエレメント17aとして形成された第2の糸ガイド4は、閉じられた糸ガイド凹部を有していてもよく、この場合、緯糸2が、互いに相前後して配置された両細長いエレメント17,17aの間で著しく偏向されることはない。差出しニードル12は、その前端部に凹部21を有している。
【0053】
図4により、細長い遮蔽体18が、閉じられた穴を有する糸ガイド4と、開かれた穴を有する細長いエレメント17との間に配置されていることが明確に示されている。例として、2本だけの緯糸が示されている。図4で右側に示された緯糸は目下、糸ガイド4によってアライメントされて、緯糸2は、不動に配置された細長い遮蔽体18の、細長いエレメント17の糸ガイド凹部6が細長い遮蔽体18のスリット15にアライメントされている位置に正確に配置されているので、次いで、旋回ブラケット19と、旋回ブラケット19として形成された差出しニードルの前方領域に位置する相応の凹部21とによって、緯糸を差出し位置10からグリッパ3への引渡し位置へと糸ガイド凹部6から正確にガイドすることができる。これに対して、図4で左側に配置された緯糸は、スリット15の外側で細長い遮蔽体18に配置されていて、したがって、偏向させずに相応の糸ガイド凹部から導出することはできない。いずれにせよ、開かれた糸ガイド凹部を閉鎖するのは、常に細長い遮蔽体18であり、このことは、目下緯糸の挿入のために設けられてはいない全ての緯糸、もしくは相応に内部に収容される緯糸を含む全ての緯糸ガイド凹部に当てはまる。
【0054】
第2の駆動装置9を備えた旋回ブラケット19として形成された差出しニードル12は、グリッパガイドレール26も含めてグリッパ3に係合し、杼口11内へ挿入すべき緯糸2を、下方に向かって開かれた糸ガイド凹部6から導出し、この緯糸を、偏向なしにグリッパ3へとガイドし、このグリッパは、この緯糸を挟んで、次いで杼口11内へと挿入する。図4の緯糸挿入方向において手前に、すなわち最初に配置されている、糸ガイド4、もしくは、閉じられた穴を有する細長いエレメント17aは、同様にここに配置された第1の駆動装置8によって、実際の糸ガイド4もしくは細長いエレメント17の動きに実質的に同期して動くので、グリッパ3に到る経路での緯糸2の付加的な偏向は回避される。
【0055】
図5には、図4に対して変更された3次元的な図で、緯糸カラー選択装置1が示されており、この場合、図面の視線方向は、図4の場合のように主に上方からのものではなく、むしろ織布の側から示されている。このことは、糸ガイド凹部6を備えた細長いエレメント17,17a、糸ガイド4のための第1の駆動装置8、旋回ブラケット19のための第2の駆動装置9のような様々な構成群の空間的な配置を良好に示すことができるという利点を有している。図5には、旋回ブラケット19が、細長いエレメント17に設けられた外側に向かって開かれた糸ガイド凹部から緯糸2をちょうど導出しているところが示されている。視点に関する理由により、細長い遮蔽体18に設けられたスリット15は、図5によるこの図では見えていない。
【0056】
図1および図2および図3による第1の実施例と図4および図5による第2の実施例との両方で良好な織り条件を得るために、さらに、差出しニードル12のフォーク状の凹部21には、存在している糸張力に関する情報もしくは信号を与える緯糸張力測定センサ23(図3参照)が配置されている。これにより、織り工程全体の間、糸張力を実質的に一定にすること、または良好な織り特性を保証する相応に所望の値に保持することができることを保証することができる。
【0057】
旋回ブラケット19および差出しニードル12は、緯糸2をグリッパ3に引き渡した後、それぞれの出発位置へと戻される。
【0058】
図6には、互いに平行な平面に配置された2つの部分カラーディスク、すなわち第1の部分カラーディスク14.1と第2の部分カラーディスク14.2とを備えた実施例のための第1の部分カラーディスクの基本形状が示されている。図6a)には、本発明による第1の部分カラーディスク14.1が、外面13に向かって開かれた糸ガイド凹部6.1を有していることが示されている。部分カラーディスク14.1の外側輪郭の湾曲に対して平行に、内側にずらされて、同じ湾曲で、細長いスリット20.1が延在している。この細長いスリットは、図6b)により配置された第2の部分カラーディスク14.2へ緯糸2をガイドするために設けられており、これによって、外側に向かって開かれた糸ガイド凹部6.2が、この糸ガイド凹部6.2内にガイドされた、供給された緯糸を意図に反して紛失することが回避される。この湾曲した細長いスリット20.1は、細長いスリット20.1を第1の部分カラーディスク14.1の外側に接続する通路15.1を有している。
【0059】
以下の図6b)~図6f)では、挿入される緯糸2は、図面の見やすさの観点から、開かれた糸ガイド凹部6.1および6.2内の小さい数字番号で示されている。
【0060】
図6b)には、第1の部分カラーディスク14.1と第2の部分カラーディスク14.2との二重の配置が示されている。さらに、一方では第1の部分カラーディスク14.1の糸ガイド凹部6.1からの緯糸の供給を、他方では第2の部分カラーディスク14.2の糸ガイド凹部6.2からの緯糸2の供給を、図6b)および図6c)に相応に示すために、差出しニードル12が描かれている。両部分カラーディスク14.1,14.2は、互いに独立して旋回可能であるので、糸ガイド凹部6.1,6.2の並設密度が維持されていれば、より大きな柔軟性およびより多数の緯糸が可能となる。図6b)には、5の番号で示された緯糸2が、第1の部分カラーディスク14.1の糸ガイド凹部6.1から出て、差出しニードル12によって把持され、グリッパに供給される様子が示されている。
【0061】
図6c)には、9の番号で示された緯糸が差出しニードル12に把持された後、この緯糸2が、第2の部分カラーディスク14.2の緯糸ガイド凹部6.2から出て、通路15.1を介してグリッパ3に供給される様子が示されている。
【0062】
図6d)には、2および3の番号で示された2本の緯糸を、二重緯入れのための差出しニードル12によって、第1の部分カラーディスク14.1の糸ガイド凹部6.1から、差出しニードル12によって把持して、グリッパ3に供給することができる様子が示されている。第2の部分カラーディスク14.2は、この場合、側方に旋回させられているので、作用しない。
【0063】
図6e)には、二重緯入れの際の二重の部分カラーディスク14.1,14.2の配置が、さらなる特殊性を有していることが示されている。すなわち、組み合わされた緯糸を挿入すべき場合に、ここでは4の番号の緯糸を第1の部分カラーディスク14.1の糸ガイド凹部6.1から、かつここでは11の番号の緯糸を第2の部分カラーディスク14.2の糸ガイド凹部6.2から、二重緯入れのために1つのグリッパ3に供給すべきである場合に、第2の部分カラーディスク14.2の隣接する糸ガイド凹部6.2を空にしなければならない(xで示す)ことが示されている。
【0064】
類似の例が図6f)に示されており、この場合は、第1の部分カラーディスク14.1の糸ガイド凹部6.1から出る4番の緯糸と、第2の部分カラーディスク14.2から出る9番の緯糸とを、差出しニードル12によって、二重緯入れのために1つのグリッパ3に供給すべきであることが示されている。グリッパ3への供給は、簡素化のために、図6b)~図6f)には示されていない。
【0065】
互いに平行な平面に配置された2つの部分カラーディスク14.1,14.2を備えた実施例は、糸ガイド凹部6.1,6.2の側方の間隔が同じ場合、すなわち、並設密度が一定の場合には、カラー数の豊富さに関する利点を提供する。代替的には、側方の穴間隔の拡大および種々異なる緯糸の同じ本数の維持も可能である。全体として、二重緯入れのためにはより多数の組み合わせ可能性が提供される。原理的には、2つの部分カラーディスク14.1,14.2の配置により、これまで、1つのカラーディスクでしか作動していなかった既存のシステムに、緯糸に対するカラー数または種類数を増やすために後付することすらできる。
【0066】
図7には、図1による基本構造に相当する緯糸カラー選択装置1の原理的な配置が示されているが、この場合、本発明の第2の態様により、2つの部分カラーディスク14.1,14.2が互いに平行な平面に、緯糸挿入方向において相前後して配置されている。主要な基本構造は、図1の基本構造に相当するので、同じ構成エレメントには同じ符号が付与されており、原理的な基本構造についてはここでは再度詳しく説明することはない。図7により、1つの遮蔽体16に、1つの共通の旋回点もしくは1つの共通の旋回軸線によって、第1の部分カラーディスク14.1と第2の部分カラーディスク14.2とが配置されていることがわかる。両部分カラーディスクは、外面13に開かれた糸ガイド凹部6.1,6.2を有していて、これらの糸ガイド凹部内には緯糸がガイドされ、ここから、差出しニードル12によって、グリッパガイドレール26上でガイドされているグリッパ3へと供給される。グリッパに差し出された緯糸2が、グリッパによって挟まれるとすぐに、杼口11への緯糸の挿入が行われる。
【0067】
例として図7には、予め保持された3本の緯糸が示されており、この場合、2本の緯糸は、第1の部分カラーディスク14.1の糸ガイド凹部6.1にガイドされていて、これに対して、第2の部分カラーディスク14.2には、1本の緯糸が糸ガイド凹部6.2でガイドされている。遮蔽体16には、遮蔽体16の外周に対して平行に延在する2つの細長いスリット20が設けられている。差出しニードル12は、緯糸の挿入方向において、両部分カラーディスク14.1,14.2の後方に配置されている。さらに、差出しニードル12が、両部分カラーディスク14.1,14.2の旋回軸線の領域に配置されていて、緯糸を把持しかつ各部分カラーディスクの、外側に向かって開かれて解放されている糸ガイド凹部6.1からグリッパに緯糸を導出するように運動させる方向付けを可能にするように配置されている。
【0068】
原理的な図面には、第1の部分カラーディスク14.1もしくは第2の部分カラーディスク14.2のための2つの第1の駆動装置8.1および8.2が示されており、これらの駆動装置は、両部分カラーディスクを、互いに独立させて駆動するので、部分カラーディスク14.1と14.2とは互いに旋回可能である。互いに相対的な旋回により、緯糸数を増加すべき場合に、第1の部分カラーディスク14.1のセグメント角度を増大させる必要はない。このためには、同様に外側に向かって開かれた糸ガイド凹部6.2を有する、第1の部分カラーディスクに平行に配置された部分カラーディスク14.2が設けられている。第2の部分カラーディスク14.2の糸ガイド凹部6.2でガイドされている緯糸は、原理的に、外側に向かって開かれた糸ガイド凹部6.2から外へ滑り出るおそれがある。これを阻止するために、第1の部分カラーディスク14.1には、第1の部分カラーディスク14.1の外面の湾曲に相応して、この外面に対して平行に部分カラーディスクの内部で延在していて、第2の部分カラーディスク14.2のための緯糸をガイドする細長いスリット20.1が設けられている。第1の部分カラーディスク14.1における細長いスリット20.1から外側に向かって第1の部分カラーディスクの外面13にまで到る通路15.1は、第2の部分カラーディスク14.2によって隠されているので、図7では見えない。差し出される緯糸、もしくはこの緯糸を支持している糸ガイド凹部6.2が、通路15.1と重なるように、第2の部分カラーディスク14.2の供給すべき緯糸が、第1の部分カラーディスク14.1に対して旋回させられている旋回状態では、差出しニードル12が、第2の部分カラーディスク14.2の糸ガイド凹部6.2から、第1の部分カラーディスク14.1の外側領域を通して緯糸を運び、グリッパ3に供給する。差出しニードル12は、別個の第2の駆動装置9を有しているので、全部で3つの互いに独立して制御かつ作動させることができる駆動モータ8.1,8.2および9が設けられている。
【0069】
互いに平行かつ互いに独立して可動な2つの部分カラーディスク14.1,14.2を設けることにより、差出し可能な、好適には異なる緯糸の数を含む、挿入すべき緯糸の柔軟性が高められる。
【0070】
図8には、図7の緯糸カラー選択装置1の原理的な配置が示されているが、拡大された部分図で示されている。外側に向かって開かれた糸ガイド凹部6.1と、外面13から見て、開かれた糸ガイド凹部6.1の後方に、湾曲した長孔装置として延在している細長いスリット20.1とを備えた部分カラーディスク14.1が明示されている。例として、互いに隣接する2つの糸ガイド凹部6.1にガイドされている2本の緯糸2が示されていて、その端部はちょうど織布に接合されている。別の緯糸2は、グリッパ3のクランプ装置に向かってガイドするために、ちょうど差出しニードル12に把持されているので、グリッパはこの緯糸を、次に杼口11に挿入することができる。図示されたこの第3の緯糸は、第2の部分カラーディスク14.2の糸ガイド凹部6.2でガイドされていて、ここから既に差出しニードル12によって導出されており、しかも、外側に向かって開かれた糸ガイド凹部6.2から、第1の部分カラーディスク14.1に設けられた細長いスリット20.1から延びる図示されていない通路を通って導出されている。
【0071】
同様の斜視図であっても幾分異なる図9には、図8に示された緯糸カラー選択装置1の構成が、緯糸挿入方向に向かう視線方向から見た3次元的な図で示されている。図を簡単にするために、第1の部分カラーディスク14.1のための第1の駆動装置8.1、および第2の部分カラーディスク14.2のための第1の駆動装置8.2が示されているだけである。第1の部分カラーディスク14.1には、緯糸をガイドするための細長いスリット20.1が示されていて、この緯糸は、杼口に挿入するために第2の部分カラーディスク14.2を介してガイドされている。差出しニードル12は、緯糸2を把持し、第2の部分カラーディスク14.2の糸ガイド凹部6.2から導出することができる位置にはまだない。この緯糸を、差出しニードル12によって第2の部分カラーディスク14.2から導出する前に、第2の部分カラーディスク14.2は、まず、この緯糸をガイドする糸ガイド凹部6.2が、第1の部分カラーディスク14.1に設けられた通路15.1と重なるまで、第2の部分カラーディスク14.2への視線方向で見て右上方に向かって旋回させられなければならず、これにより、差出しニードル12によって、この緯糸を、第2の部分カラーディスク14.2から、第1の部分カラーディスク14.1を通して、いわば通り抜けて、外部へとガイドすることができる。
【0072】
図10には、図7による緯糸カラー選択装置1の基本構造が示されており、図7による緯糸カラー選択装置の基本構造との唯1つの相違点は、二重緯入れのための差出しニードル12が設けられていることである。このために差出しニードル12は、緯糸を把持しかつ外側に向かって開かれた糸ガイド凹部6.1からグリッパ3に供給することができる前端部で差出しニードル12の頭部に二重凹部を有している。図10によるこの例では、2本の緯糸が、第1の部分カラーディスク14.1において互いに隣接する糸ガイド凹部6.1内でガイドされている。第1の部分カラーディスク14.1が遮蔽体16に対して旋回させられて、遮蔽体16における細長いスリット20の通路が、2つの糸ガイド凹部6.1を外側に向かって解放した後、2本の緯糸を、二重緯入れのために設けられた差出しニードル12によってグリッパ3に供給する準備ができている。
【0073】
本発明による緯糸カラー選択装置1のために必要な3つの駆動装置、すなわち、差出しニードル12のための駆動装置9と、第1の部分カラーディスク14.1のための駆動装置8.1と、第2の部分カラーディスク14.2のための駆動装置8.2とが明示されており、これら3つの駆動装置は、各要素の駆動のために互いに独立して設けられている。
【0074】
図11には、図10に示された図面が、後方から緯糸カラー選択装置1を見る視線方向で、すなわち緯入れの方向で示されている。不動に配置されている遮蔽体16は、互いに同心的に、かつ外周に対して同心的に延在する2つの細長いスリット20を有しており、これらのスリットはスリット15を介して、細長いスリット20内にガイドされた緯糸を外部へとガイドするためのそれぞれ1つの開口を外側に向かって有している。これにより緯糸は、図11に示された3本の緯糸のうちの1本の緯糸に例示されるように、最終的に、外側に向かって開かれた糸ガイド凹部6.1,6.2から、差出しニードル12によって導出して、グリッパ3に供給することができる。差出しニードル12からグリッパ3のクランプにちょうど引き渡されているこの緯糸は、既に細長いスリット20からスリット15を介して、そのガイドの外側へと導出され、ひいては、該当する部分カラーディスク14.1の対応する糸ガイド凹部6.1からも導出されている。さらに、第1の部分カラーディスク14.1と第2の部分カラーディスク14.2とが示されており、第2の部分カラーディスク14.2は、視線方向の理由でほんの一部しか見えていない。図11の上方部分に示された破線は旋回軸線を示しており、この旋回軸線を中心として第1および第2の部分カラーディスク14.1,14.2が互いに相対的にかつ互いに独立して旋回可能であり、この場合、遮蔽体16は共に旋回可能であるのではなく、空間的に不動の位置を占めている。
【0075】
図12に示された別の実施例によれば、同じく第1の部分カラーディスク14.1と第2の部分カラーディスク14.2とが示されているが、これらは、図7図11の実施例とは異なり、緯糸挿入方向で互いに平行な異なる平面に配置されているのではなく、これら両者は1つの平面に配置されている。部分カラーディスク14.1と部分カラーディスク14.2とは、遮蔽体16に対して1つの共通の旋回点を有しており、遮蔽体に枢着されている。これらの部分カラーディスクは、互いに独立して旋回することができる。これはつまり、糸ガイド凹部6.1を有する第1の部分カラーディスク14.1は第1の駆動装置8.1を有していて、糸ガイド凹部6.2を有する第2の部分カラーディスク14.2は第1の駆動装置8.2を有しており、これに対して差出しニードル12の駆動のためには別の駆動装置9が設けられていることを意味する。両部分カラーディスク14.1および14.2は、それぞれ1つの作動位置または休止位置をとることができる。この場合、各部分カラーディスク14.1,14.2は、4つの糸ガイド凹部6.1,6.2を有しているので、これは、互いに調整されて一緒に旋回する場合には、8つの糸ガイド凹部を有する1つだけのカラー選択ディスクであるのと同義である。1つの平面でカラー選択ディスクをこのように分割することは、例えば、一定の織り時間中に特定の緯糸が他の緯糸よりも頻繁に使用され、これに対して、別の部分カラーディスクでガイドされている個々の緯糸または別の緯糸はまれにしか使用されない場合に、原理的に有利である。このような場合、部分カラーディスクの移動距離を減じるために、そのとき必要ではない緯糸を有している部分カラーディスクを作動位置から休止位置へと旋回させることができる。これにより、各緯糸の移動距離ひいては各緯糸を準備する時間を減じることができる。その他の構造は、前述した実施例と同様に説明される。
【0076】
図13には、図11と同様の図が示されており、この場合、2本の緯糸を同時に差し出すための、すなわち、二重緯入れのための差出しニードル12が設けられているだけである。その他全ての機能および構造的特徴は、上述したものと同じであり、したがってここではそれ以上説明しない。
【0077】
図14には、緯糸カラー選択装置1の2本の緯糸が、いわば準備はされているが、1本だけの緯糸を差出しニードル12によって挿入すべき、もしくは差出しニードル12によってグリッパ3に供給すべき場合の図が示されている。このために、第2の部分カラーディスク14.2が、通路15.1と重なる位置にもたらされるので、差出しニードル12によってこの緯糸を、第1の部分カラーディスク14.1における細長いスリット20.1から通路15.1を介して、第1の部分カラーディスク14.1からも導出し、把持して杼口11に導入するためにグリッパ3に供給し、引き渡すことができる。
【0078】
最後に、図15には、二重緯入れのための図13に示した図による基本構造が示されている。この基本構造では、二重緯入れのために、どのようにして差出しニードル12が2本の緯糸をちょうど各糸ガイド凹部6.1,6.2から把持し、糸ガイド凹部から導出するのかが示されている。一方の緯糸は、この場合、第1の部分カラーディスク14.1によってガイドされ、第2の緯糸は第2の部分カラーディスク14.2によってガイドされ、第2の緯糸をガイドする第2の部分カラーディスクの糸ガイド凹部6.2はちょうど通路15.1に重ねられている。この場合、第2の部分カラーディスク14.2は、第1の部分カラーディスク14.1に対して、相応の糸ガイド凹部6.2が通路15.1と一致する位置へと旋回させられている。その他の機能およびその他の構造は、既に説明したものに一致する。
【符号の説明】
【0079】
1 緯糸カラー選択装置
2 緯糸
3 グリッパ
4 糸ガイド
糸ガイド凹部
6.1 第1の部分カラーディスクの糸ガイド凹部
6.2 第2の部分カラーディスクの糸ガイド凹部
8 第1の駆動装置
8.1 第1の部分カラーディスクの第1の駆動装置
8.2 第2の部分カラーディスクの第1の駆動装置
9 第2の駆動装置
10 差出し位置
11 杼口
12 差出しニードル
13 外面
14 カラーディスク/ディスクセグメント
14.1 第1の部分カラーディスク
14.2 第2の部分カラーディスク
15 スリット
15.1 第1の部分カラーディスクの通路
16 遮蔽体
17 細長いエレメント
17a 細長いエレメント
18 細長い遮蔽体
19 旋回ブラケット
20 遮蔽体の細長いスリット
20.1 第1の部分カラーディスクの細長いスリット
21 差出しニードルの凹部
22 二重凹部
23 緯糸張力測定センサ
24 織布
25 折り込まれた耳/裁断耳
26 グリッパガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6a)】
図6b)】
図6c)】
図6d)】
図6e)】
図6f)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15