(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電流検出装置、モータ制御装置、及び電流検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20230414BHJP
G01R 15/18 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01R19/00 A
G01R15/18 A
(21)【出願番号】P 2021551486
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037574
(87)【国際公開番号】W WO2021066153
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2019183805
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】角本 茂生
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05815391(US,A)
【文献】特開2001-165965(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150726(WO,A1)
【文献】特開2013-231601(JP,A)
【文献】特開2019-138735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 19/00-19/32、
15/00-17/22、
31/327-31/34、
H02M 7/00-7/98、
H02P 21/00-25/03、
25/04、
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子
の複数の組を有し、
前記複数の組のそれぞれに対応した互いに位相の異なる交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出装置であって、
前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイル
であって、前記複数の組のそれぞれに対応した第1のロゴスキーコイルと、
前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイル
であって、前記複数の組のそれぞれに対応した第2のロゴスキーコイルと、
前記第1のロゴスキーコイルの出力を積分した第1検出信号と、前記第2のロゴスキーコイルの出力を積分した第2検出信号とを
前記複数の組のそれぞれごとに加算した合成信号を生成し、
前記複数の組のそれぞれに対応した当該合成信号に基づいて、
前記位相の異なる交流信号
ごとの出力電流を検出する検出処理部と
を備え
、
前記検出処理部は、
前記複数の組のそれぞれに対応した前記第1検出信号を合計した合計値を、前記インバータ部の入力電流として検出する
電流検出装置。
【請求項2】
前記検出処理部は、
前記位相の異なる前記複数の交流信号のうちの、負電流の期間になっている1つの相の交流信号の負電流を、前記複数の交流信号のうちの当該1つの相を除いた他の相の出力電流に基づいて検出する
請求項
1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出装置であって、
前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイルと、
前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイルと、
前記第1のロゴスキーコイルの出力を積分した第1検出信号と、前記第2のロゴスキーコイルの出力を積分した第2検出信号とのうちの、スイッチング素子を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する検出処理部と
を備える電流検出装置。
【請求項4】
前記検出処理部は、前記第1検出信号と前記第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、前記合成信号に対して、前記第1検出信号と前記第2検出信号のうちの、前記デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、前記交流信号の出力電流を検出する
請求項
3に記載の電流検出装置。
【請求項5】
前記検出処理部は、前記第1検出信号と前記第2検出信号とのうちの、前記デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、前記交流信号の出力電流を検出する
請求項
3に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記検出処理部は、
前記第1のロゴスキーコイルの出力を積分する、リセット機能付きの第1の積分回路と、
前記第2のロゴスキーコイルの出力を積分する、リセット機能付きの第2の積分回路と
を備える請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の電流検出装置と、
モータに駆動信号として前記交流信号を供給する前記インバータ部と、
前記電流検出装置が検出した前記出力電流に基づいて、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のスイッチングを制御するモータ制御部と
を備えるモータ制御装置。
【請求項8】
直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子
の複数の組を有し、
前記複数の組のそれぞれに対応した互いに位相の異なる交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出方法であって、
検出処理部が、前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイル
であって、前記複数の組のそれぞれに対応した第1のロゴスキーコイルの出力を積分して、
前記複数の組のそれぞれに対応した第1検出信号を生成する第1の生成ステップと、
前記検出処理部が、前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイル
であって、前記複数の組のそれぞれに対応した第2のロゴスキーコイルの出力を積分して、
前記複数の組のそれぞれに対応した第2検出信号を生成する第2の生成ステップと、
前記検出処理部が、前記第1の生成ステップによって生成された前記第1検出信号と、前記第2の生成ステップによって生成された前記第2検出信号とを
前記複数の組のそれぞれごとに加算した合成信号を生成し、
前記複数の組のそれぞれに対応した当該合成信号に基づいて、
前記位相の異なる交流信号
ごとの出力電流を検出する検出処理ステップと
を含
み、
前記検出処理ステップにおいて、前記検出処理部が、前記複数の組のそれぞれに対応した前記第1検出信号を合計した合計値を、前記インバータ部の入力電流として検出する
電流検出方法。
【請求項9】
直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出方法であって、
検出処理部が、前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイルの出力を積分して、第1検出信号を生成する第1の生成ステップと、
前記検出処理部が、前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイルの出力を積分して、第2検出信号を生成する第2の生成ステップと、
前記検出処理部が、前記第1の生成ステップによって生成された前記第1検出信号と、前記第2の生成ステップによって生成された前記第2検出信号とのうちの、スイッチング素子を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する検出処理ステップと
を含む電流検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置、モータ制御装置、及び電流検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などの車両の駆動では、電池から大電流のモータを駆動する必要があり、モータの駆動制御において、精密な電流検出が必要とされる。従来の電流を検出する技術として、ロゴスキーコイルを使用する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような従来技術では、ロゴスキーコイルの出力のピーク値の直線近似により電流値を推定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、検出した電流値の誤差が、サンプリング周期に依存するため、例えば、サンプリング周期の分解能不足によって、精密な電流検出が困難な場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、サンプリング周期の分解能不足による電流値の検出誤差を低減することができる電流検出装置、モータ制御装置、及び電流検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の複数の組を有し、前記複数の組のそれぞれに対応した互いに位相の異なる交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出装置であって、前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイルであって、前記複数の組のそれぞれに対応した第1のロゴスキーコイルと、前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイルであって、前記複数の組のそれぞれに対応した第2のロゴスキーコイルと、前記第1のロゴスキーコイルの出力を積分した第1検出信号と、前記第2のロゴスキーコイルの出力を積分した第2検出信号とを前記複数の組のそれぞれごとに加算した合成信号を生成し、前記複数の組のそれぞれに対応した当該合成信号に基づいて、前記位相の異なる交流信号ごとの出力電流を検出する検出処理部とを備え、前記検出処理部は、前記複数の組のそれぞれに対応した前記第1検出信号を合計した合計値を、前記インバータ部の入力電流として検出する電流検出装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記インバータ部が、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との組を複数備え、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との前記複数の組のそれぞれに対応した互いに位相の異なる交流信号を生成し、前記複数の組のそれぞれに対応した前記第1のロゴスキーコイル及び前記第2のロゴスキーコイルを備え、前記検出処理部は、前記複数の組のそれぞれに対応した前記合成信号を生成し、当該合成信号に基づいて、前記位相の異なる交流信号ごとの出力電流を検出するようにしてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記検出処理部は、前記複数の組のそれぞれに対応した前記第1検出信号を合計した合計値を、前記インバータ部の入力電流として検出するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記検出処理部は、前記位相の異なる前記複数の交流信号のうちの、負電流の期間になっている1つの相の交流信号の負電流を、前記複数の交流信号のうちの当該1つの相を除いた他の相の出力電流に基づいて検出するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様は、直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出装置であって、前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイルと、前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイルと、前記第1のロゴスキーコイルの出力を積分した第1検出信号と、前記第2のロゴスキーコイルの出力を積分した第2検出信号とのうちの、スイッチング素子を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する検出処理部とを備える電流検出装置である。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記検出処理部は、前記第1検出信号と前記第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、前記合成信号に対して、前記第1検出信号と前記第2検出信号のうちの、前記デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、前記交流信号の出力電流を検出するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記検出処理部は、前記第1検出信号と前記第2検出信号とのうちの、前記デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、前記交流信号の出力電流を検出するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記の電流検出装置において、前記検出処理部は、前記第1のロゴスキーコイルの出力を積分する、リセット機能付きの第1の積分回路と、前記第2のロゴスキーコイルの出力を積分する、リセット機能付きの第2の積分回路とを備えるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記に記載の電流検出装置と、モータに駆動信号として前記交流信号を供給する前記インバータ部と、前記電流検出装置が検出した前記出力電流に基づいて、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のスイッチングを制御するモータ制御部とを備えるモータ制御装置である。
【0015】
また、本発明の一態様は、直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の複数の組を有し、前記複数の組のそれぞれに対応した互いに位相の異なる交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出方法であって、検出処理部が、前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイルであって、前記複数の組のそれぞれに対応した第1のロゴスキーコイルの出力を積分して、前記複数の組のそれぞれに対応した第1検出信号を生成する第1の生成ステップと、前記検出処理部が、前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイルであって、前記複数の組のそれぞれに対応した第2のロゴスキーコイルの出力を積分して、前記複数の組のそれぞれに対応した第2検出信号を生成する第2の生成ステップと、前記検出処理部が、前記第1の生成ステップによって生成された前記第1検出信号と、前記第2の生成ステップによって生成された前記第2検出信号とを前記複数の組のそれぞれごとに加算した合成信号を生成し、前記複数の組のそれぞれに対応した当該合成信号に基づいて、前記位相の異なる交流信号ごとの出力電流を検出する検出処理ステップとを含み、前記検出処理ステップにおいて、前記検出処理部が、前記複数の組のそれぞれに対応した前記第1検出信号を合計した合計値を、前記インバータ部の入力電流として検出する電流検出方法である。
【0016】
また、本発明の一態様は、直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を有し、交流信号を生成するインバータ部に流れる電流を検出する電流検出方法であって、検出処理部が、前記第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイルの出力を積分して、第1検出信号を生成する第1の生成ステップと、前記検出処理部が、前記第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイルの出力を積分して、第2検出信号を生成する第2の生成ステップと、前記検出処理部が、前記第1の生成ステップによって生成された前記第1検出信号と、前記第2の生成ステップによって生成された前記第2検出信号とのうちの、スイッチング素子を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する検出処理ステップとを含む電流検出方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電流検出装置は、第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する第1のロゴスキーコイルと、第2のスイッチング素子に流れる電流を検出する第2のロゴスキーコイルとを備え、検出処理部が、第1のロゴスキーコイルの出力を積分した第1検出信号と、第2のロゴスキーコイルの出力を積分した第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、当該合成信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する。これにより、電流検出装置は、交流信号の出力電流の実波形に近い合成信号を生成することができるため、サンプリング周期の分解能不足による電流値の検出誤差を低減することができる。よって、電流検出装置は、サンプリング周期の分解能が低い安価な構成により精密な電流検出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態によるモータ制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態における検出処理部の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における積分回路の一例を示す回路図である。
【
図4】第1の実施形態におけるモータ制御部の動作を説明する図である。
【
図5】第1の実施形態におけるモータ駆動の電流波形の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態における合成信号の生成処理を説明する図である。
【
図7】第1の実施形態による電流検出装置の出力電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態による電流検出装置の入力電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施形態による電流検出装置の負電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】検出信号のリンギングの一例を説明する図である。
【
図11】第2の実施形態によるモータ制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図12】第2の実施形態による電流検出装置の出力電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】第3の実施形態によるモータ制御装置及び電流検出装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態による電流検出装置、モータ制御装置、及び電流検出方法について図面を参照して説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態によるモータ制御装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、モータ制御装置1は、直流電源2と、平滑コンデンサ4と、電流検出装置10と、インバータ部20と、モータ制御部30とを備えている。
また、モータ制御装置1は、モータ3に接続されている。
【0021】
直流電源2は、例えば、バッテリなどであり、モータ制御装置1に直流電力を供給する。
モータ3は、例えば、正弦波駆動の3相ブラシレスモータであり、モータ制御装置1のインバータ部20から駆動信号として供給される交流信号(U相信号、V相信号、W相信号)によって駆動される。
【0022】
平滑コンデンサ4は、直流電源2の正極端子に接続された電源線L1と、直流電源2の負極端子に接続されたグランド線L2との間に接続され、直流電源2から供給された直流電圧を平滑化する。
【0023】
インバータ部20は、モータ制御部30の制御に基づいて、モータ3を駆動する交流信号(U相信号、V相信号、W相信号)を生成する。インバータ部20は、スイッチング素子21-1~21-3と、スイッチング素子22-1~22-3とを備えている。インバータ部20は、スイッチング素子21-1~21-3、及びスイッチング素子22-1~22-3のスイッチングにより、例えば、120度位相のズレた3相の正弦波の電流信号を、駆動信号として生成する。
【0024】
なお、本実施形態において、スイッチング素子21-1~21-3は、上側のスイッチング素子(第1のスイッチング素子)であるハイアームに対応し、インバータ部20が備える任意の上側のスイッチング素子を示す場合、又は特に区別しない場合には、スイッチング素子21として説明する。
また、スイッチング素子22-1~22-3は、下側のスイッチング素子(第2のスイッチング素子)であるロウアームに対応し、インバータ部20が備える任意の下側のスイッチング素子を示す場合、又は特に区別しない場合には、スイッチング素子22として説明する。
【0025】
スイッチング素子21とスイッチング素子22とは、電源線L1とグランド線L2との間に直列に接続され、フルブリッジ回路を構成する。また、スイッチング素子21(21-1~21-3)、及びスイッチング素子22(22-1~22-3)は、例えば、N型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【0026】
スイッチング素子21-1とスイッチング素子22-1とは、電源線L1とグランド線L2との間に直列に接続され、U相の駆動信号であるU相信号を生成するフルブリッジ回路を構成する。スイッチング素子21-1及びスイッチング素子22-1は、モータ制御部30から出力された制御信号(S1、S2)に基づいてスイッチングされ、直列に接続されたスイッチング素子21-1及びスイッチング素子22-1との間のノードN1からU相信号を出力する。
【0027】
スイッチング素子21-2とスイッチング素子22-2とは、電源線L1とグランド線L2との間に直列に接続され、V相の駆動信号であるV相信号を生成するフルブリッジ回路を構成する。スイッチング素子21-2及びスイッチング素子22-2は、モータ制御部30から出力された制御信号(S3、S4)に基づいてスイッチングされ、直列に接続されたスイッチング素子21-2及びスイッチング素子22-2との間のノードN2からV相信号を出力する。
【0028】
スイッチング素子21-3とスイッチング素子22-3とは、電源線L1とグランド線L2との間に直列に接続され、W相の駆動信号であるW相信号を生成するフルブリッジ回路を構成する。スイッチング素子21-3及びスイッチング素子22-3は、モータ制御部30から出力された制御信号(S5、S6)に基づいてスイッチングされ、直列に接続されたスイッチング素子21-3及びスイッチング素子22-3との間のノードN3からW相信号を出力する。
【0029】
このように、インバータ部20は、スイッチング素子21とスイッチング素子22との組を複数備え、スイッチング素子21とスイッチング素子22との複数の組のそれぞれに対応した互いに位相の異なる交流信号(U相信号、V相信号、W相信号)を生成する。
【0030】
電流検出装置10は、インバータ部20に流れる電流を検出する。電流検出装置10は、例えば、インバータ部20が生成する各相の駆動信号(交流信号)の出力電流を検出する。また、電流検出装置10は、直流電源2からの入力電流(インバータ部20の入力電流)を検出する。
電流検出装置10は、ロゴスキーコイル11-1~11-3と、ロゴスキーコイル12-1~12-3と、検出処理部13とを備える。
【0031】
なお、本実施形態において、ロゴスキーコイル11-1~11-3は、スイッチング素子21(21-1~21-3)に流れる電流を検出する空芯コイルであり、電流検出装置10が備える任意のスイッチング素子21用のロゴスキーコイル(第1のロゴスキーコイル)を示す場合、又は特に区別しない場合には、ロゴスキーコイル11として説明する。
また、ロゴスキーコイル12-1~12-3は、スイッチング素子22(22-1~22-3)に流れる電流を検出する空芯コイルであり、電流検出装置10が備える任意のスイッチング素子22用のロゴスキーコイル(第2のロゴスキーコイル)を示す場合、又は特に区別しない場合には、ロゴスキーコイル12として説明する。
【0032】
ロゴスキーコイル11(第1のロゴスキーコイル)は、スイッチング素子21に流れる電流を検出する。例えば、ロゴスキーコイル11-1は、スイッチング素子21-1のドレイン端子と電源線L1とを接続する信号線に配置されており、スイッチング素子21-1に流れる電流を検出する。また、ロゴスキーコイル11-2は、スイッチング素子21-2のドレイン端子と電源線L1とを接続する信号線に配置されており、スイッチング素子21-2に流れる電流を検出する。また、ロゴスキーコイル11-3は、スイッチング素子21-3のドレイン端子と電源線L1とを接続する信号線に配置されており、スイッチング素子21-3に流れる電流を検出する。
【0033】
また、例えば、ロゴスキーコイル12-1は、スイッチング素子22-1のソース端子とグランド線L2とを接続する信号線に配置されており、スイッチング素子22-1に流れる電流を検出する。また、ロゴスキーコイル12-2は、スイッチング素子22-2のソース端子とグランド線L2とを接続する信号線に配置されており、スイッチング素子22-2に流れる電流を検出する。また、ロゴスキーコイル12-3は、スイッチング素子22-3のソース端子とグランド線L2とを接続する信号線に配置されており、スイッチング素子22-3に流れる電流を検出する。
【0034】
このように、電流検出装置10は、スイッチング素子21とスイッチング素子22との複数の組のそれぞれに対応したロゴスキーコイル11及びロゴスキーコイル12を備えている。
【0035】
検出処理部13は、インバータ部20に流れる電流を検出する処理を実行する処理部である。検出処理部13は、例えば、ロゴスキーコイル11の出力を積分した第1検出信号と、ロゴスキーコイル12の出力を積分した第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、当該合成信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する。検出処理部13は、複数の組のそれぞれに対応した合成信号を生成し、当該合成信号に基づいて、位相の異なる交流信号ごとの出力電流を検出する。具体的に、検出処理部13は、生成した合成信号を、モータ3の駆動信号(U相信号、V相信号、W相信号)の出力電流を示す電流信号として、出力する。
【0036】
また、検出処理部13は、スイッチング素子21とスイッチング素子22との複数の組のそれぞれに対応した第1検出信号を合計した合計値を、インバータ部20の入力電流として検出する。具体的に、検出処理部13は、入力電流(インバータ部20の入力電流)を示す入力電流信号を出力する。
【0037】
また、検出処理部13は、位相の異なる複数の駆動信号(U相信号、V相信号、W相信号)のうちの、負電流の期間になっている1つの相の駆動信号(交流信号)の負電流を、複数の駆動信号のうちの当該1つの相を除いた他の相の出力電流に基づいて検出する。検出処理部13は、例えば、U相駆動信号が負電流が流れる期間である場合に、V相の出力電流と、W相の出力電流とを加算することで算出する。検出処理部13は、駆動信号(交流信号)の負電流を示す負電流信号を出力する。
なお、検出処理部13の構成の詳細については、
図2を参照して後述する。
【0038】
モータ制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、モータ制御装置1を統括的に制御する。モータ制御部30は、電流検出装置10が検出した駆動信号(交流信号)の出力電流に基づいて、スイッチング素子21及びスイッチング素子22のスイッチングを制御する。
【0039】
モータ制御部30は、例えば、不図示のADC(Analog to Digital Converter)を備え、電流検出装置10の検出処理部13が出力した各電流信号の電圧を電流値に変換して取得する。モータ制御部30は、例えば、検出処理部13が出力した電流信号の電流値をADCを介して取得して、当該電流信号の電流値に基づいて、電流がゼログロスするポイント(ゼロクロスポイント)を検出する。モータ制御部30は、検出したゼロクロスポイントに基づいて、スイッチング素子21及びスイッチング素子22のスイッチングを制御する。
【0040】
また、モータ制御部30は、例えば、検出処理部13が出力した入力電流信号の電流値をADCを介して取得して、当該入力電流信号の電流値の最大値を検出する。モータ制御部30は、検出した電流値の最大値を過電流検出に利用する。すなわち、モータ制御部30は、検出した電流値の最大値が所定の閾値以上になった場合に、過電流異常が発生していると判定して、モータ3の駆動を停止させる等の異常処理を実行する。
【0041】
また、モータ制御部30は、例えば、検出処理部13が出力した負電流信号の電流値をADCを介して取得して、当該負電流信号の電流値の最大値(負電流最大値)を検出する。モータ制御部30は、検出した負電流最大値を過電流検出に利用する。すなわち、モータ制御部30は、検出した負電流最大値が所定の閾値以上になった場合に、過電流異常が発生していると判定して、モータ3の駆動を停止させる等の異常処理を実行する。
【0042】
次に、
図2を参照して、上述した検出処理部13の構成の詳細について説明する。
図2は、本実施形態における検出処理部13の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、検出処理部13は、積分回路40-1~40-6と、加算器50-1~50-6及び加算器51とを備えている。
【0043】
なお、本実施形態において、積分回路40-1~40-6は、同一の構成であり、検出処理部13が備える任意の積分回路を示す場合、又は特に区別しない場合には、積分回路40として説明する。
また、加算器50-1~50-6は、同一の構成であり、検出処理部13が備える任意の加算器を示す場合、又は特に区別しない場合には、加算器50として説明する。
【0044】
積分回路40-1は、ロゴスキーコイル11-1に接続されており、ロゴスキーコイル11-1の出力を積分した検出信号UHを出力する。また、積分回路40-2は、ロゴスキーコイル12-1に接続されており、ロゴスキーコイル12-1の出力を積分した検出信号ULを出力する。
【0045】
また、積分回路40-3は、ロゴスキーコイル11-2に接続されており、ロゴスキーコイル11-2の出力を積分した検出信号VHを出力する。また、積分回路40-4は、ロゴスキーコイル12-2に接続されており、ロゴスキーコイル12-2の出力を積分した検出信号VLを出力する。
【0046】
また、積分回路40-5は、ロゴスキーコイル11-3に接続されており、ロゴスキーコイル11-3の出力を積分した検出信号WHを出力する。また、積分回路40-6は、ロゴスキーコイル12-3に接続されており、ロゴスキーコイル12-3の出力を積分した検出信号WLを出力する。
【0047】
積分回路40(40-1~40-6)は、リセット機能を有し、ロゴスキーコイル(11、12)の出力を積分する。ここで、
図3を参照して、積分回路40の詳細な構成について説明する。
図3は、本実施形態における積分回路40の一例を示す回路図である。
【0048】
図3に示すように、積分回路40は、抵抗41と、オペアンプ42と、コンデンサ43と、リセットスイッチ44とを備えている。
抵抗41は、ロゴスキーコイル11(12)の一端とオペアンプ42の反転入力端子との間に接続されている。また、コンデンサ43は、オペアンプ42の反転入力端子(ノードN
4)と、オペアンプ42の出力端子(ノードN5)との間に接続されている。
【0049】
オペアンプ42は、抵抗41及びコンデンサ43が接続されることにより、積分回路として機能する。オペアンプ42は、反転入力端子に抵抗41を介してロゴスキーコイル11(12)の一端が接続され、非反転入力にロゴスキーコイル11(12)の他端が接続されている。オペアンプ42は、ロゴスキーコイル11(12)の出力を入力信号(IN)とし、ロゴスキーコイル11(12)の出力を積分した出力信号(OUT)を出力する。
【0050】
リセットスイッチ44は、コンデンサ43と並列に、オペアンプ42の反転入力端子(ノードN4)と、オペアンプ42の出力端子(ノードN5)との間に接続されている。リセットスイッチ44は、積分回路40の出力電位をリセットするスイッチであり、例えば、制御信号Sによるパルス信号により導通状態が制御される。なお、リセットスイッチ44は、積分回路40をリセットする際に、導通状態(オン状態)に制御される。
【0051】
なお、積分回路40は、制御信号Sにより、リセットスイッチ44が非導通状態(オフ状態)に制御されると、積分回路として機能する。
また、制御信号Sは、例えば、上述したスイッチング素子21及びスイッチング素子22のスイッチングが停止している際に、積分回路40をリセットし、スイッチング素子21及びスイッチング素子22のスイッチングされている際に、積分回路40が動作するように、モータ制御部30によって制御される。
【0052】
また、
図2において、積分回路40-1、積分回路40-3、及び積分回路40-5は、第1の積分回路に対応し、検出信号UH、検出信号VH、及び検出信号WHは、第1の検出信号に対応する。また、積分回路40-2、積分回路40-4、及び積分回路40-6は、第2の積分回路に対応し、検出信号UL、検出信号VL、及び検出信号WLは、第2の検出信号に対応する。
【0053】
加算器50は、2入力のアナログ加算器であり、例えば、オペアンプを使用した加算回路により実現される。加算器50は、2つの入力信号を加算した合成信号を出力する。
例えば、加算器50-1には、検出信号UHと検出信号ULとが2つの入力信号として入力され、加算器50-1は、検出信号UHと検出信号ULとを加算した合成信号を、U相電流信号UCとして出力する。
【0054】
また、加算器50-2には、検出信号VHと検出信号VLとが2つの入力信号として入力され、加算器50-2は、検出信号VHと検出信号VLとを加算した合成信号を、V相電流信号VCとして出力する。
また、加算器50-3には、検出信号WHと検出信号WLとが2つの入力信号として入力され、加算器50-3は、検出信号WHと検出信号WLとを加算した合成信号を、W相電流信号WCとして出力する。
【0055】
このように、検出処理部13は、スイッチング素子21及びスイッチング素子22の複数の組のそれぞれに対応した合成信号(U相電流信号UC、V相電流信号VC、W相電流信号WC)を生成し、当該合成信号に基づいて、位相の異なる駆動信号(交流信号)ごとの出力電流を検出する。すなわち、検出処理部13は、生成した合成信号(U相電流信号UC、V相電流信号VC、W相電流信号WC)を駆動信号(U相信号、V相信号、W相信号)ごとの出力電流を示す電流信号として出力する。
【0056】
また、加算器50-4には、V相電流信号VCとW相電流信号WCとが2つの入力信号として入力され、加算器50-4は、V相電流信号VCとW相電流信号WCとを加算した合成信号を、U相負電流信号UMCとして出力する。すなわち、加算器50-4は、負電流の期間になっているU相信号の負電流を、当該U相を除いた他の相の出力電流(V相電流信号VC及びW相電流信号WC)に基づいて、U相負電流信号UMCとして出力する。
【0057】
また、加算器50-5には、U相電流信号UCとW相電流信号WCとが2つの入力信号として入力され、加算器50-5は、U相電流信号UCとW相電流信号WCとを加算した合成信号を、V相負電流信号VMCとして出力する。すなわち、加算器50-5は、負電流の期間になっているV相信号の負電流を、当該V相を除いた他の相の出力電流(U相電流信号UC及びW相電流信号WC)に基づいて、V相負電流信号VMCとして出力する。
【0058】
また、加算器50-6には、U相電流信号UCとV相電流信号VCとが2つの入力信号として入力され、加算器50-6は、U相電流信号UCとV相電流信号VCとを加算した合成信号を、W相負電流信号WMCとして出力する。すなわち、加算器50-6は、負電流の期間になっているW相信号の負電流を、当該W相を除いた他の相の出力電流(U相電流信号UC及びV相電流信号VC)に基づいて、W相負電流信号WMCとして出力する。
【0059】
このように、検出処理部13は、3相の駆動信号(U相信号、V相信号、W相信号)のうちの、負電流の期間になっている1つの相の駆動信号の負電流を、複数の駆動信号のうちの当該1つの相を除いた他の相の出力電流(電流信号)に基づいて検出する。検出処理部13は、生成した負電流信号(U相負電流信号UMC、V相負電流信号VMC、W相負電流信号WMC)を駆動信号ごとの負電流を示す電流信号として出力する。
【0060】
加算器51は、3入力のアナログ加算器であり、例えば、オペアンプを使用した加算回路により実現される。加算器51は、3つの入力信号を加算した合成信号を出力する。加算器51には、検出信号UHと検出信号VHと検出信号WHとが3つの入力信号として入力され、加算器51は、検出信号UHと検出信号VHと検出信号WHとを加算した合成信号を、入力電流信号BTCとして出力する。
【0061】
このように、検出処理部13は、3つの第1検出信号(検出信号UH、検出信号VH、及び検出信号WH)を合計した合計値を、インバータ部20の入力電流として検出する。すなわち、検出処理部13は、入力電流を示す電流信号として、入力電流信号BTCを出力する。
【0062】
次に、図面を参照して、本実施形態によるモータ制御装置1及び電流検出装置10の動作について説明する。
まず、
図4及び
図5を参照して、モータ制御部30によるスイッチング動作について説明する。
【0063】
図4は、本実施形態におけるモータ制御部30の動作を説明する図である。また、
図5は、本実施形態におけるモータ駆動の電流波形の一例を示す図である。
図4において、「駆動状態」は、1周を360度とした場合の駆動信号の状態を示し、状態ST1~状態ST6の6つの状態に分けられている。モータ制御部30は、
図4に示すスイッチング制御を行い、180度通電制御を行う。
【0064】
また、「U相ハイアーム」は、U相用の上側のスイッチング素子21-1の制御を示し、「U相ロウアーム」は、U相用の下側のスイッチング素子22-1の制御を示している。また、「V相ハイアーム」は、V相用の上側のスイッチング素子21-2の制御を示し、「V相ロウアーム」は、V相用の下側のスイッチング素子22-2の制御を示している。また、「W相ハイアーム」は、W相用の上側のスイッチング素子21-3の制御を示し、「W相ロウアーム」は、W相用の下側のスイッチング素子22-3の制御を示している。
【0065】
図4に示すように、モータ制御部30は、U相の駆動信号の制御として、状態ST1~状態ST3の期間、制御信号S1及び制御信号S2により、スイッチング素子21-1及びスイッチング素子22-1をスイッチングする。ここで、「SW」は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)によるスイッチング動作を示し、「/SW」は、「SW」によるスイッチングの反転制御を示している。また、モータ制御部30は、U相の駆動信号の制御として、状態ST4~状態ST6の期間、制御信号S1によりスイッチング素子21-1をオフ状態にし、制御信号S2によりスイッチング素子22-1をオン状態にする。
【0066】
また、モータ制御部30は、V相の駆動信号の制御として、状態ST3~状態ST5の期間、制御信号S3及び制御信号S4により、スイッチング素子21-2及びスイッチング素子22-2をスイッチングする。また、モータ制御部30は、V相の駆動信号の制御として、状態ST6、状態ST1、状態ST2の期間、制御信号S3によりスイッチング素子21-2をオフ状態にし、制御信号S4によりスイッチング素子22-2をオン状態にする。
【0067】
また、モータ制御部30は、W相の駆動信号の制御として、状態ST5、状態ST6、状態ST1の期間、制御信号S5及び制御信号S6により、スイッチング素子21-3及びスイッチング素子22-3をスイッチングする。また、モータ制御部30は、W相の駆動信号の制御として、状態ST2~状態ST4の期間、制御信号S5によりスイッチング素子21-3をオフ状態にし、制御信号S6によりスイッチング素子22-3をオン状態にする。
【0068】
また、
図5において、波形W1は、U相の電流波形を示し、波形W2は、W相の電流波形を示し、波形W3は、W相の電流波形を示している。
モータ制御部30は、上述の
図4に示すスイッチング制御を行うことで、
図5の波形W1~波形W3に示すような電流波形の駆動信号をモータ3に供給して、モータ3を駆動する。
【0069】
次に、
図6を参照して、電流検出装置10の検出処理部13による電流信号の生成処理について説明する。
図6は、本実施形態における合成信号の生成処理を説明する図である。
【0070】
図6において、波形W4は、検出信号UHの電圧波形を示し、波形W5は、検出信号ULの電圧波形を示している。また、波形W6は、U相電流信号UCの電圧波形を示している。
【0071】
図6に示すように、検出処理部13の積分回路40-1は、ロゴスキーコイル11-1の出力を積分して、波形W4に示すような検出信号UHを出力する。また、検出処理部13の積分回路40-2は、ロゴスキーコイル12-1の出力を積分して、波形W5に示すような検出信号ULを出力する。
【0072】
次に、加算器50-1は、波形W4に示すような検出信号UHと、波形W5に示すような検出信号ULとを加算した合成信号として、波形W6に示すようなU相電流信号UCを出力する。このU相電流信号UCは、U相の駆動信号の出力電流(正電流)を電圧に変換した信号である。
なお、V相電流信号VC及びW相電流信号WCについても、検出処理部13は、U相電流信号UCと同様に生成して、出力する。すなわち、検出処理部13は、下記の式(1)~式(3)により、U相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WCを生成する。
【0073】
U相電流信号UC=検出信号UH+検出信号UL ・・・ (1)
V相電流信号VC=検出信号VH+検出信号VL ・・・ (2)
W相電流信号WC=検出信号WH+検出信号WL ・・・ (3)
【0074】
モータ制御部30は、検出処理部13が生成したU相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WCを、不図示のADCを介して取得し、各相の出力電流のゼロクロスポイントの検出に利用する。モータ制御部30は、検出したゼロクロスポイントに基づいて、上述した
図4に示すスイッチング制御を行う。
【0075】
また、検出処理部13は、下記の式(4)~式(6)により、U相負電流信号UMC、V相負電流信号VMC、及びW相負電流信号WMCを生成する。
【0076】
U相負電流信号UMC=V相電流信号VC+W相電流信号WC
=検出信号VH+検出信号VL+検出信号WH
+検出信号WL ・・・ (4)
【0077】
V相負電流信号VMC=U相電流信号UC+W相電流信号WC
=検出信号UH+検出信号UL+検出信号WH
+検出信号WL ・・・ (5)
【0078】
W相負電流信号WMC=U相電流信号UC+V相電流信号VC
=検出信号UH+検出信号UL+検出信号VH
+検出信号VL ・・・ (6)
【0079】
例えば、U相負電流信号UMCを生成する場合に、U相負電流信号UMCの電流値(
図5に示す波形W1の電流値Iu)は、
図5に示す波形W2の電流値Ivと、波形W3の電流値Iwとの加算値となる。そのため、検出処理部13は、上述の式(4)により、U相負電流信号UMCを生成する。すなわち、検出処理部13の加算器50-4が、V相電流信号VCと、W相電流信号WCとを加算して、U相負電流信号UMCを生成する。
【0080】
モータ制御部30は、検出処理部13が生成したU相負電流信号UMC、V相負電流信号VMC、及びW相負電流信号WMCを、不図示のADCを介して取得し、各相の負電流信号の最大値を負電流期間の異常検出(例えば、過電流検出)に利用する。
【0081】
また、検出処理部13は、下記の式(7)により、入力電流信号BTCを生成する。すなわち、検出処理部13の加算器51が、検出信号UHと、検出信号VHと、検出信号WHとを加算した合計値を、入力電流信号BTCとして生成する。
【0082】
入力電流信号BTC=検出信号UH+検出信号VH
+検出信号WH ・・・ (7)
【0083】
モータ制御部30は、検出処理部13が生成した入力電流信号BTCを、不図示のADCを介して取得し、入力電流信号BTCの最大値を異常検出(例えば、過電流検出)に利用する。
【0084】
次に、
図7~
図9を参照して、本実施形態による電流検出装置10の電流検出方法について説明する。
図7は、本実施形態による電流検出装置10の出力電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0085】
図7に示すように、電流検出装置10は、インバータ部20の各相の出力電流(正電流)を検出する場合に、まず、上側のロゴスキーコイル11の出力を積分して第1の検出信号を生成する(ステップS101)。例えば、電流検出装置10の検出処理部13において、積分回路40-1が、ロゴスキーコイル11-1の出力を積分して、検出信号UHを生成し、積分回路40-3が、ロゴスキーコイル11-2の出力を積分して、検出信号VHを生成する。また、積分回路40-5が、ロゴスキーコイル11-3の出力を積分して、検出信号WHを生成する。
【0086】
次に、電流検出装置10は、下側のロゴスキーコイル12の出力を積分して第2の検出信号を生成する(ステップS102)。例えば、検出処理部13において、積分回路40-2が、ロゴスキーコイル12-1の出力を積分して、検出信号ULを生成し、積分回路40-4が、ロゴスキーコイル12-2の出力を積分して、検出信号VLを生成する。また、積分回路40-6が、ロゴスキーコイル12-3の出力を積分して、検出信号WLを生成する。
【0087】
なお、検出処理部13は、ステップS101の処理とステップS102の処理とを、逆の順番で実行してもよいし、例えば、
図2に示す構成を用いて並列に実行してもよい。
【0088】
次に、電流検出装置10は、第1の検出信号と、第2の検出信号とを加算して合成信号を生成する(ステップS103)。例えば、検出処理部13において、加算器50-1が、検出信号UHと、検出信号ULとを加算して、合成信号として、U相電流信号UCを生成する。また、加算器50-2が、検出信号VHと、検出信号VLとを加算して、合成信号として、V相電流信号VCを生成する。また、加算器50-3が、検出信号WHと、検出信号WLとを加算して、合成信号として、W相電流信号WCを生成する。
【0089】
次に、電流検出装置10は、合成信号に基づいて、出力電流を検出する(ステップS104)。例えば、検出処理部13が、各相の出力電流を示す電流信号として、U相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WCをモータ制御部30に出力する。ステップS104の処理後に、電流検出装置10は、出力電流の検出処理を終了する。
【0090】
なお、電流検出装置10は、ステップS101からステップS103の処理を繰り返し実行する。また、上記の説明では、検出処理部13は、3相について並列して出力電流を検出しているが、各相の出力電流を独立して検出するようにしてもよい。検出処理部13は、例えば、各相が正電流の期間のみ、上記処理により出力電流を検出するようにしてもよい。
【0091】
次に、
図8を参照して、本実施形態による電流検出装置10の入力電流の検出処理について説明する。
図8は、本実施形態による電流検出装置10の入力電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0092】
図8に示すように、入力電流の検出処理を行う場合に、まず、電流検出装置10は、各相の上側のロゴスキーコイル11の出力を積分して各相の第1の検出信号を生成する(ステップS201)。例えば、電流検出装置10の検出処理部13において、積分回路40-1が、ロゴスキーコイル11-1の出力を積分して、検出信号UHを生成し、積分回路40-3が、ロゴスキーコイル11-2の出力を積分して、検出信号VHを生成する。また、積分回路40-5が、ロゴスキーコイル11-3の出力を積分して、検出信号WHを生成する。
【0093】
次に、電流検出装置10は、各相の第1の検出信号を加算して入力電流信号を生成する(ステップS202)。例えば、検出処理部13において、加算器51が、検出信号UHと、検出信号VHと、検出信号WHとを加算して、入力電流信号BTCを生成する。
【0094】
次に、電流検出装置10は、入力電流信号に基づいて、入力電流を検出する(ステップS203)。例えば、検出処理部13が、入力電流を示す電流信号として、入力電流信号BTCをモータ制御部30に出力する。
なお、電流検出装置10は、ステップS201からステップS203の処理を繰り返し実行する。
【0095】
次に、
図9を参照して、本実施形態による電流検出装置10の負電流の検出処理について説明する。
図9は、本実施形態による電流検出装置10の負電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0096】
図9に示すように、負電流の検出処理を行う場合に、まず、電流検出装置10は、各相の合成信号を生成する(ステップS301)。電流検出装置10は、上述した
図7に示すステップS101からステップS103の処理により各相の合成信号を生成する。
【0097】
次に、電流検出装置10は、負電流の期間の相の合成信号以外を加算して、負電流信号を生成する(ステップS302)。電流検出装置10の検出処理部13は、上述した式(4)~式(6)を利用して、各相の負電流信号を生成する。検出処理部13において、例えば、加算器50-4が、V相電流信号VCとW相電流信号WCとを加算して、U相負電流信号UMCを生成する。また、加算器50-5が、U相電流信号UCとW相電流信号WCとを加算して、V相負電流信号VMCを生成する。また、加算器50-6が、U相電流信号UCとV相電流信号VCとを加算して、W相負電流信号WMCを生成する。
【0098】
次に、電流検出装置10は、負電流信号に基づいて、交流信号の負電流を検出する(ステップS303)。例えば、検出処理部13が、各相の負電流信号を示す電流信号として、U相負電流信号UMC、V相負電流信号VMC、及びW相負電流信号WMCをモータ制御部30に出力する。ステップS303の処理後に、電流検出装置10は、負電流の検出処理を終了する。
【0099】
なお、電流検出装置10は、ステップS301からステップS303の処理を繰り返し実行する。また、上記の説明では、検出処理部13は、3相について並列して負電流を検出しているが、各相の出力電流を独立して検出するようにしてもよい。検出処理部13は、例えば、各相が負電流の期間のみ、上記処理により負電流を検出するようにしてもよい。
【0100】
以上説明したように、本実施形態による電流検出装置10は、直列に接続されたスイッチング素子21(第1のスイッチング素子)及びスイッチング素子22(第2のスイッチング素子)を有し、交流信号(駆動信号)を生成するインバータ部20に流れる電流を検出する電流検出装置であって、ロゴスキーコイル11(第1のロゴスキーコイル)と、ロゴスキーコイル12(第2のロゴスキーコイル)と、検出処理部13とを備える。ロゴスキーコイル11は、スイッチング素子21に流れる電流を検出する。ロゴスキーコイル12は、スイッチング素子22に流れる電流を検出する。検出処理部13は、ロゴスキーコイル11の出力を積分した第1検出信号と、ロゴスキーコイル12の出力を積分した第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、当該合成信号に基づいて、交流信号(駆動信号)の出力電流を検出する。
【0101】
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、交流信号(駆動信号)の出力電流の実波形に近い合成信号を生成することができるため、サンプリング周期の分解能不足による電流値の検出誤差を低減することができる。よって、本実施形態による電流検出装置10は、サンプリング周期の分解能が低い安価な構成により精密な電流検出を実現することができる。
【0102】
また、本実施形態では、インバータ部20が、スイッチング素子21とスイッチング素子22との組を複数備え、スイッチング素子21とスイッチング素子22との複数の組のそれぞれに対応した互いに位相の異なる交流信号(U相信号、V相信号、W相信号)を生成する。電流検出装置10は、スイッチング素子21とスイッチング素子22との複数の組のそれぞれに対応したロゴスキーコイル11及びロゴスキーコイル12を備える。検出処理部13は、スイッチング素子21とスイッチング素子22との複数の組のそれぞれに対応した合成信号(U相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WC)を生成し、当該合成信号に基づいて、位相の異なる交流信号ごとの出力電流を検出する。
【0103】
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、複数の相(U相、V相、及びW相の3相)の交流信号(駆動信号)ごとの出力電流を、サンプリング周期の分解能が低い安価な構成により精密に検出することができる。
【0104】
また、本実施形態では、検出処理部13は、スイッチング素子21とスイッチング素子22と複数の組のそれぞれに対応した第1検出信号を合計した合計値を、インバータ部20の入力電流として検出する。
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、安価な構成によりさらにインバータ部20の入力電流を精密に検出することができる。また、本実施形態によるモータ制御装置1は、電流検出装置10が検出したインバータ部20の入力電流を利用して、過電流による異常検出を高精度に行うことができる。
【0105】
また、本実施形態では、検出処理部13は、位相の異なる複数の交流信号(駆動信号)のうちの、負電流の期間になっている1つの相の交流信号(駆動信号)の負電流を、複数の交流信号のうちの当該1つの相を除いた他の相の出力電流に基づいて検出する。検出処理部13は、例えば、他の相の出力電流を加算した加算値の最大値を、交流信号(駆動信号)の負電流の最大値として検出する。
【0106】
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、安価な構成により、負電流の期間の交流信号(駆動信号)の電流を検出することができる。また、本実施形態によるモータ制御装置1は、電流検出装置10が検出した交流信号(駆動信号)の負電流を利用して、負電流の期間における過電流による異常検出を高精度に行うことができる。
【0107】
また、本実施形態では、検出処理部13は、ロゴスキーコイル11の出力を積分する、リセット機能付きの第1の積分回路(例えば、積分回路40-1、積分回路40-3、及び積分回路40-5)と、ロゴスキーコイル12の出力を積分する、リセット機能付きの第2の積分回路(例えば、積分回路40-2、積分回路40-4、及び積分回路40-6)とを備える。
【0108】
これにより、本実施形態による電流検出装置10は、検出するごとに積分回路40をリセットすることができるため、ロゴスキーコイル11(12)の出力を正確に積分処理することができる。また、本実施形態による電流検出装置10は、複数の積分回路40を備えることで、並列に処理を行うことができ、リアルタイムに出力電流を検出することができる。
【0109】
また、本実施形態によるモータ制御装置1は、上述した電流検出装置10と、インバータ部20と、モータ制御部30とを備える。インバータ部20は、モータ3に駆動信号として交流信号を供給する。モータ制御部30は、電流検出装置10が検出した出力電流に基づいて、スイッチング素子21及びスイッチング素子22のスイッチングを制御する。
これにより、本実施形態によるモータ制御装置1は、上述した電流検出装置10と同様の効果を奏し、サンプリング周期の分解能不足による電流値の検出誤差を低減することができる。
【0110】
また、本実施形態による電流検出方法は、直列に接続されたスイッチング素子21及びスイッチング素子22を有し、交流信号を生成するインバータ部20に流れる電流を検出する電流検出方法であって、第1の生成ステップと、第2の生成ステップと、検出処理ステップとを含む。第1の生成ステップにおいて、検出処理部13が、スイッチング素子21に流れる電流を検出するロゴスキーコイル11の出力を積分して、第1検出信号を生成する。第2の生成ステップにおいて、検出処理部13が、スイッチング素子22に流れる電流を検出するロゴスキーコイル12の出力を積分して、第2検出信号を生成する。検出処理ステップにおいて、検出処理部13が、第1の生成ステップによって生成された第1検出信号と、第2の生成ステップによって生成された第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、当該合成信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する。
これにより、本実施形態による電流検出方法は、上述した電流検出装置10及びモータ制御装置1と同様の効果を奏し、サンプリング周期の分解能不足による電流値の検出誤差を低減することができる。
【0111】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態のモータ制御装置1では、インバータ部20にスナバ回路(不図示)及びスイッチング素子(21、22)の寄生容量があることの影響や、スイッチング素子(21、22)のスイッチングのノイズがあることの影響により、ロゴスキーコイル(11、12)の出力を積分した検出信号には、立上りでリンギングが発生することがある。
【0112】
図10は、検出信号のリンギングの一例を説明する図である。
図10において、波形W7は、ロゴスキーコイル12-1による検出信号LUの電圧波形を示している。第1の実施形態のモータ制御装置1では、波形W7に示す期間TR1のように、立上りでリンギングが発生することがある。
【0113】
そのため、上述した第1の実施形態では、例えば、スイッチング素子(21、22)を導通状態にするデューティ比が小さい場合に、検出信号の検出タイミングが、リンギングの発生期間(例えば、期間TR1)と重なるため、精密な電流検出が困難であった。
そこで、本実施形態では、このリンギングの影響を低減して、精密な電流検出を実現する変形例について説明する。
【0114】
図11は、第2の実施形態によるモータ制御装置1aの一例を示すブロック図である。
【0115】
図11に示すように、モータ制御装置1aは、直流電源2と、平滑コンデンサ4と、電流検出装置10aと、インバータ部20と、モータ制御部30aとを備えている。
なお、
図11において、
図1と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0116】
電流検出装置10aは、インバータ部20に流れる電流を検出し、ロゴスキーコイル11-1~11-3と、ロゴスキーコイル12-1~12-3と、検出処理部13aとを備える。
本実施形態では、検出処理部13a及びモータ制御部30aの構成が異なり、以下、これらの構成について説明する。
【0117】
検出処理部13aは、基本的な機能は、第1の実施形態の検出処理部13と同様であるが、上述したリンギングを低減するための検出処理を行っている点がことなる。検出処理部13aは、ロゴスキーコイル11の出力を積分した第1検出信号と、ロゴスキーコイル12の出力を積分した第2検出信号とのうちの、スイッチング素子(21、22)を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する。
【0118】
検出処理部13aは、第1検出信号と第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、合成信号に対して、第1検出信号と第2検出信号のうちの、デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、交流信号の出力電流を検出する。
検出処理部13aは、検出前処理部131と、検出部132とを備える。
【0119】
検出前処理部131は、ロゴスキーコイル11(11-1、11-2、11-3の出力から第1検出信号を生成し、ロゴスキーコイル12(12-1、12-2、12-3の出力から第2検出信号を生成し、第1検出信号と第2検出信号とを加算した合成信号を生成する。検出前処理部131は、例えば、
図2に示す第1の実施形態の検出処理部13と同一の回路である。
【0120】
検出部132は、モータ制御部30aの一部であり、例えば、不図示のADCを含み、ADCを介して電流値を取得する。ここで、電流波形を電圧に変換した信号には、U相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WC、入力電流信号BTC、U相負電流信号UMC、V相負電流信号VMC、及びW相負電流信号WMCなどが含まれる。
【0121】
検出部132は、例えば、U相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WCの電流値を取得する際(検出する際)に、合成信号を生成前の第1検出信号の期間の電圧と、第2検出信号の期間の電圧とのうちの、スイッチング素子(21、22)を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号の期間の電圧を、電流値として取得する。すなわち、検出部132は、合成信号を生成前の第1検出信号の期間の電圧と、第2検出信号の期間の電圧とを、ADCを介して取得し、第1検出信号の期間のデューティ比と、第2検出信号の期間のデューティ比とを比較して、大きい方の電圧値を電流値として採用する。
【0122】
なお、検出部132は、第1検出信号の期間の電圧及び第2検出信号の期間の電圧を取得する際に、リンギングの影響を低減するために、それぞれのスイッチング素子(21、22)の導通状態の期間の中央部分で、電圧値を取得する。
【0123】
モータ制御部30aは、例えば、CPUなどを含むプロセッサであり、モータ制御装置1aを統括的に制御する。モータ制御部30aは、電流検出装置10aが検出した駆動信号(交流信号)の出力電流に基づいて、スイッチング素子21及びスイッチング素子22のスイッチングを制御する。モータ制御部30aは、第1の実施形態のモータ制御部30と同様の制御を行う。
また、モータ制御部30aは、上述した検出処理部13aの一部である検出部132を含んでいる。
【0124】
次に、図面を参照して、本実施形態による電流検出装置10a及びモータ制御装置1aの動作について説明する。
【0125】
本実施形態による電流検出装置10a及びモータ制御装置1aの基本的な動作は、上述した
図7~
図9に示す第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態では、
図7に示すステップS104の処理が異なるため、
図12を参照して、この処理の詳細について説明する。
【0126】
図12は、本実施形態による電流検出装置10aの出力電流の検出処理の一例を示すフローチャートである。この図に示す処理は、
図7に示すステップS104の処理に対応する。
【0127】
図12に示すように、電流検出装置10aの検出処理部13aは、まず、ロゴスキーコイル11(High側)の検出信号を検出する(ステップS401)。すなわち、検出処理部13aの検出部132は、不図示のADCを介して、合成信号の第1の検出信号の期間の中央部分の電圧値を取得する。
【0128】
次に、検出処理部13aは、まず、ロゴスキーコイル12(Low側)の検出信号を検出する(ステップS402)。すなわち、検出部132は、不図示のADCを介して、合成信号の第2の検出信号の期間の中央部分の電圧値を取得する。
【0129】
次に、検出部132は、Low側のDuty(デューティ比)が、High側のDuty(デューティ比)より大きいか否かを判定する(ステップS403)。検出部132は、Low側のDuty(スイッチング素子22の導通期間の幅)がHigh側のDuty(スイッチング素子21の導通期間の幅)より大きい場合(ステップS403:YES)に、処理をステップS404に進める。また、検出部132は、Low側のDuty(スイッチング素子22の導通期間の幅)がHigh側のDuty(スイッチング素子21の導通期間の幅)以下である場合(ステップS403:NO)に、処理をステップS405に進める。
【0130】
ステップS404において、検出部132は、ロゴスキーコイル12(Low側)の検出信号を検出を、出力電流の検出値として採用する。検出部132は、合成信号の第2の検出信号の期間の中央部分の電圧値を出力電流の検出値として採用する。ステップS404の処理後に、電流検出装置10aは、検出処理を終了する。
【0131】
また、ステップS405において、検出部132は、ロゴスキーコイル11(High側)の検出信号を検出を、出力電流の検出値として採用する。検出部132は、合成信号の第1の検出信号の期間の中央部分の電圧値を出力電流の検出値として採用する。ステップS405の処理後に、電流検出装置10aは、検出処理を終了する。
【0132】
なお、電流検出装置10aは、上述した
図12に示す処理を、各相の出力電流を示す電流信号として、U相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WCに対して実行する。
【0133】
以上説明したように、本実施形態による電流検出装置10aは、直列に接続されたスイッチング素子21(第1のスイッチング素子)及びスイッチング素子22(第2のスイッチング素子)を有し、交流信号を生成するインバータ部20に流れる電流を検出する電流検出装置であって、ロゴスキーコイル11(第1のロゴスキーコイル)と、ロゴスキーコイル12(第2のロゴスキーコイル)と、検出処理部13aとを備える。ロゴスキーコイル11は、スイッチング素子21に流れる電流を検出する。ロゴスキーコイル12は、スイッチング素子22に流れる電流を検出する。検出処理部13aは、ロゴスキーコイル11の出力を積分した第1検出信号と、ロゴスキーコイル12の出力を積分した第2検出信号とのうちの、スイッチング素子(21、22)を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する。
【0134】
これにより、本実施形態による電流検出装置10aは、第1検出信号と第2検出信号とのうちの、デューティ比が大きい方(検出信号の幅が広い方)の検出信号を用いて、出力電流を検出するため、リンギングの発生期間を避けて、出力電流を検出することができる。よって、本実施形態による電流検出装置10aは、リンギングの影響を低減して、精密な電流検出を実現することができる。
【0135】
また、本実施形態では、検出処理部13aは、第1検出信号と第2検出信号とを加算した合成信号を生成し、合成信号に対して、第1検出信号と第2検出信号のうちの、デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、交流信号の出力電流を検出する。
【0136】
これにより、本実施形態による電流検出装置10aは、交流信号(駆動信号)の出力電流の実波形に近い合成信号を生成することができるため、サンプリング周期の分解能不足による電流値の検出誤差を低減することができる。よって、本実施形態による電流検出装置10aは、第1の実施形態と同様に、サンプリング周期の分解能が低い安価な構成により精密な電流検出を実現することができる。
【0137】
また、本実施形態によるモータ制御装置1aは、上述した電流検出装置10aと、インバータ部20と、モータ制御部30aとを備える。インバータ部20は、モータ3に駆動信号として交流信号を供給する。モータ制御部30aは、電流検出装置10aが検出した出力電流に基づいて、スイッチング素子21及びスイッチング素子22のスイッチングを制御する。
これにより、本実施形態によるモータ制御装置1aは、上述した電流検出装置10aと同様の効果を奏し、リンギングの影響を低減して、精密な電流検出を実現することができる。
【0138】
また、本実施形態による電流検出方法は、直列に接続されたスイッチング素子21及びスイッチング素子22を有し、交流信号を生成するインバータ部20に流れる電流を検出する電流検出方法であって、第1の生成ステップと、第2の生成ステップと、検出処理ステップとを含む。第1の生成ステップにおいて、検出処理部13aが、スイッチング素子21に流れる電流を検出するロゴスキーコイル11の出力を積分して、第1検出信号を生成する。第2の生成ステップにおいて、検出処理部13aが、スイッチング素子22に流れる電流を検出するロゴスキーコイル12の出力を積分して、第2検出信号を生成する。検出処理ステップにおいて、検出処理部13aが、第1の生成ステップによって生成された第1検出信号と、第2の生成ステップによって生成された第2検出信号とのうちの、スイッチング素子を導通状態にするデューティ比が大きい方の検出信号に基づいて、交流信号の出力電流を検出する。
【0139】
これにより、本実施形態による電流検出方法は、上述した電流検出装置10a及びモータ制御装置1aと同様の効果を奏し、リンギングの影響を低減して、精密な電流検出を実現することができる。
【0140】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照して、第3の実施形態による電流検出装置10b及びモータ制御装置1bについて説明する。
本実施形態では、上述した第2の実施形態による電流検出装置10a及びモータ制御装置1aの変形例について説明する。本実施形態は、合成信号の生成を行わずに、第1の検出信号と第2の検出信号とを用いる場合の変形例である。
【0141】
図13は、第3の実施形態によるモータ制御装置1b及び電流検出装置10bの一例を示すブロック図である。
【0142】
図13に示すように、モータ制御装置1bは、電流検出装置10bを備える。また、電流検出装置10bは、検出処理部13bを備える。なお、
図13において、図示を省略するが、モータ制御装置1bは、上述した第2の実施形態と同様のモータ制御部30a、直流電源2、平滑コンデンサ4、及びインバータ部20を備え、モータ制御部30aは、検出部132aを含むものとする。
【0143】
検出処理部13bは、第1検出信号と第2検出信号とのうちの、デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、交流信号の出力電流を検出する。検出処理部13bは、検出前処理部131aと、検出部132aとを備える。
【0144】
検出前処理部131aは、積分回路40-1~積分回路40-6を備え、ロゴスキーコイル11(11-1、11-2、11-3)の出力から第1の検出信号(検出信号UH、検出信号VH、及び検出信号WH)を生成する。また、検出前処理部131aは、ロゴスキーコイル12(12-1、12-2、12-3)の出力から第2の検出信号(検出信号UL、検出信号VL、及び検出信号WL)を生成する。
【0145】
検出部132aは、第2の実施形態の合成信号(U相電流信号UC、V相電流信号VC、W相電流信号WC)の代わりに、検出信号(検出信号UH、検出信号VH、検出信号WH、検出信号UL、検出信号VL、及び検出信号WL)を用いて、検出部132と同様の処理を実行する。検出部132aは、第1検出信号と第2検出信号とのうちの、デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、交流信号の出力電流を検出する。
【0146】
すなわち、検出部132aは、第1検出信号の電圧と、第2検出信号の電圧とを、ADCを介して取得し、第1検出信号のデューティ比と、第2検出信号のデューティ比とを比較して、大きい方の電圧値を電流値として採用する。
【0147】
なお、本実施形態による電流検出装置10bの動作は、合成信号(U相電流信号UC、V相電流信号VC、W相電流信号WC)の代わりに、第1の検出信号(検出信号UH、検出信号VH、及び検出信号WH)と、第2の検出信号(検出信号UL、検出信号VL、及び検出信号WL)とを直接使用する点を除いて、
図12に示す第2の実施形態の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0148】
以上説明したように、本実施形態による電流検出装置10b及びモータ制御装置1bでは、検出処理部13bは、第1検出信号と第2検出信号とのうちの、デューティ比が大きい方の検出信号の期間のタイミングで、交流信号の出力電流を検出する。
これにより、本実施形態による電流検出装置10b及びモータ制御装置1bは、第2の実施形態と同様の効果を奏し、リンギングの影響を低減して、精密な電流検出を実現することができる。
【0149】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、電流検出装置10(10a、10b)は、モータ制御装置1(1a、1b)に含まれ、モータ3の駆動を制御するための電流検出に適用する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電流検出装置10(10a、10b)は、電源装置などのモータ制御装置1(1a、1b)以外に使用するインバータ部の電流検出に適用してもよい。
【0150】
また、上記の第1の実施形態において、検出処理部13は、電流波形を電圧に変換した信号を出力し、モータ制御部30が、不図示のADCを介して電流値を取得する例を説明したが、これに限定されるものではない。ここで、電流波形を電圧に変換した信号には、U相電流信号UC、V相電流信号VC、及びW相電流信号WC、入力電流信号BTC、U相負電流信号UMC、V相負電流信号VMC、及びW相負電流信号WMCなどが含まれる。例えば、検出処理部13が、ADCを含むようにしてもよい。すなわち、検出処理部13が、モータ制御部30の一部機能を備えるようにしてもよい。また、モータ制御部30が、検出処理部13の一部又は全部の機能を備えるようにしてもよい。
【0151】
また、上記の第2及び第3の実施形態において、検出処理部13a(13b)は、モータ制御部30aが備える検出部132(132a)を含む例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検出部132(132a)が、モータ制御部30aの外部に備えられるようにしてもよい。すなわち、検出処理部13a(13b)が、モータ制御部30aの一部機能を備えるようにしてもよい。また、モータ制御部30aが、検出処理部13a(13b)の一部又は全部の機能を備えるようにしてもよい。
【0152】
また、上記の各実施形態において、電流検出装置10(10a、10b)は、3相の交流信号に対応して電流を検出する例を説明したが、これに限定されるものではなく、3相未満、又は4相以上の用途に適用してもよい。
【0153】
また、上記の各実施形態において、検出処理部13(13a、13b)は、積分回路40及び加算器(50、51)などの回路によるハードウェア処理により実現する例を説明したが、これに限定されるものではなく、検出処理部13(13a、13b)の機能の一部、又は全部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0154】
なお、上述したモータ制御装置1(1a、1b)が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したモータ制御装置1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述したモータ制御装置1(1a、1b)が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0155】
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0156】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後にモータ制御装置1(1a、1b)が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0157】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0158】
1、1a、1b モータ制御装置
2 直流電源
3 モータ
4 平滑コンデンサ
10、10a、10b 電流検出装置
11、11-1、11-2、11-3、12、12-1、12-2、12-3 ロゴスキーコイル
13、13a、13b 検出処理部
20 インバータ部
21、21-1、21-2、21-3、22、22-1、22-2、22-3 スイッチング素子
30、30a モータ制御部
40、40-1、40-2、40-3、40-4、40-5、40-6 積分回路
41 抵抗
42 オペアンプ
43 コンデンサ
44 リセットスイッチ
50、50-1、50-2、50-3、50-4、50-5、50-6、51 加算器
131、131a 検出前処理部
132、132a 検出部