(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】新規ゼオライト、その製造方法、及び芳香族炭化水素の変換におけるその使用
(51)【国際特許分類】
B01J 29/70 20060101AFI20230414BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20230414BHJP
C01B 39/48 20060101ALI20230414BHJP
C01B 39/36 20060101ALI20230414BHJP
C07C 5/27 20060101ALI20230414BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B01J29/70 Z
B01J29/40 M
C01B39/48
C01B39/36
C07C5/27
C07C15/08
(21)【出願番号】P 2021557908
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 US2020024643
(87)【国際公開番号】W WO2020205357
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-28
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】ポドシアドロ ポール
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー エリック ディー
(72)【発明者】
【氏名】ライ ウェンイ エフ
(72)【発明者】
【氏名】ケイル アリ エイ
(72)【発明者】
【氏名】ズルロ ドミニク エイ
(72)【発明者】
【氏名】ギルクレスト ジョセリン エー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィル キャサリーン エム
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506457(JP,A)
【文献】特表2017-521413(JP,A)
【文献】特表2002-523385(JP,A)
【文献】中国特許第103418422(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第107952472(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 33/20-39/54
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C8芳香族炭化水素を含む供給原料を変換する方法であって、
(I)前記芳香族炭化水素供給原料を変換反応器に供給する工程と、
(II)少なくとも部分的に液相中のC8芳香族炭化水素を、前記変換反応器内で、変換条件下、第1のゼオライトを含む変換触媒組成物と接触させて、C8芳香族炭化水素の少なくとも一部の異性化を起こし、変換生成物流出液を生成する工程であって、前記第1のゼオライトがMELフレームワーク型である、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記変換触媒組成物は、前記MELフレームワーク型ゼオライトを、前記変換触媒組成物中に存在する全ゼオライトの全質量を基準にして少なくとも50質量%の濃度で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のゼオライト材料は複数の結晶子を含み、前記結晶子の少なくとも75%は、透過電子顕微鏡画像解析によって決定したときに、最大でも200nmの結晶子サイズを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶子は、1~5のアスペクト比を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のゼオライト材料は、シリカ対アルミナのモル比が、10~60である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のゼオライト材料は、全表面積の少なくとも15%のメソ細孔表面積を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記変換触媒組成物は、10員環又は12員環構造をその中に有するゼオライトから選択された第2のゼオライト材料を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記変換条件は、前記C8
芳香族炭化水素を液相に維持するのに十分な絶対圧と、
最大でも300℃の温度;及び
0.5~20h
-1のWHSV
のうちの1つ以上と、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
分子水素を前記変換反応器に供給する工程を更に含み、
前記変換反応器に供給される水素の量は、前記芳香族炭化水素供給原料の質量を基準にして、4~250ppmの範囲である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分子水素は、前記変換反応器に供給されない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記供給原料と比較した前記変換生成物流出液中のキシレンの質量減少のパーセンテージとして計算したキシレン損失が、少なくとも2.5h
-1のWHSVにおいて、前記供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、最大でも0.2%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、少なくとも2.5h
-1のWHSVを有し、前記方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも3000ppm、例えば最大でも1600ppm、又は最大でも1000ppmのC9+芳香族炭化水素収率を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/826,317号、及び2019年7月11日に出願された欧州特許出願第19185757.2号の優先権及び利益を主張するものであり、これらの開示を参照により本願に援用する。
【0002】
本開示は、ゼオライト材料、その製造方法、及び芳香族炭化水素の変換におけるその使用に関する。特に、本開示は、MELフレームワーク型ゼオライト材料、その製造方法、及びC8芳香族炭化水素の異性化におけるその使用に関する。本開示は、例えば、キシレン、特にp-キシレンを製造する方法であって、特に液相において、異性化触媒の存在下でC8芳香族炭化水素の混合物を異性化する工程を含む、方法に有用である。
【背景技術】
【0003】
高純度p-キシレン製品は、典型的には、p-キシレン分離/回収システムにおいて、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、及び場合によりEBを含むp-キシレンに富む芳香族炭化水素混合物から、p-キシレンを分離することによって製造される。p-キシレン回収システムは、例えば、先行技術で公知の晶析装置及び/又は吸着クロマトグラフィー分離システムを含み得る。p-キシレン回収システムから生じるp-キシレン-枯渇流(p-キシレン結晶分離時の晶析装置からの「濾液」、又は吸着クロマトグラフィー分離システムからの「抽残液」、本開示では「抽残液」と総称する)は、m-キシレン及びo-キシレンに富み、典型的には、p-キシレンを、m-キシレン、o-キシレン、及びp-キシレンからなる平衡混合物中のp-キシレン濃度よりも低い濃度で含有する。p-キシレンの収率を増大するため、抽残液流を異性化ユニットに供給してもよく、該ユニットで、キシレンは、異性化触媒系と接触して異性化反応を起こし、抽残液と比べてp-キシレンに富む異性化流出液(effluent)を生成する。異性化流出液の少なくとも一部は、異性化ユニット内で生成し得る、より軽い炭化水素を任意で分離及び除去した後、p-キシレン回収システムに再循環して、「キシレンループ」を形成できる。
キシレン異性化は、C8芳香族炭化水素が、異性化触媒の存在下で実質的に蒸気相にある場合に実施できる(気相異性化、又は「VPI」)。
より新しい世代の技術の開発により、C8芳香族炭化水素が実質的に液相にある場合に、異性化触媒の存在下で、大幅に低い温度でのキシレン異性化が可能になっている(液相異性化、又は「LPI」)。LPIの使用は、伝統的なVPIと比べて、C8芳香族供給原料の処理に必要な相変化(液相から気相/気相から液相)の数を低減できる。これは、大幅なエネルギー削減の形で、実質的に有利なプロセスをもたらす。いずれのp-キシレン製造プラントにとっても、VPIに加えて、又はVPIの代わりに、LPIユニットを設置することは、非常に有利となる。LPIがない既存のp-キシレン製造施設にとって、LPIユニットを追加して、VPIユニットを補完する又はVPIと置き換えることは、非常に有利となる。
これに有用な例示のLPIプロセス及び触媒系は、米国特許出願公開第2011/0263918号明細書及び同第2011/0319688号明細書、同第2017/0297977号明細書、同第2016/0257631号明細書、及び米国特許第9,890,094号明細書に記載されており、これらの全ての内容は、参照によりその全体が本願に援用される。上記参考文献に記載のLPIプロセスでは、典型的には、MFIフレームワーク型ゼオライト(例えば、ZSM-5)が触媒として使用される。
LPIプロセスは多数の利点があることと、この技術を設置する必要があることから、この技術、特に使用する触媒の改善も必要である。本開示は、上記及びその他の必要性を満足する。
情報開示陳述書(37CFR 1.97(h))で引用した参照文献:国際公開第2000/010944号明細書;米国特許第5,689,027号明細書;米国特許第6,504,072号明細書;米国特許第6,689,929号明細書;米国特許出願公開第2002/0082462号(A1)明細書;米国特許出願公開第2014/0350316号(A1)明細書;米国特許出願公開第2015/0376086号(A1)明細書;米国特許出願公開第2015/0376087号(A1)明細書;米国特許出願公開第2016/0101405号(A1)明細書;米国特許出願公開第2016/0185686号(A1)明細書;米国特許出願公開第2016/0264495号(A1)明細書;米国特許出願公開第2017/0210683号(A1)明細書;米国特許出願公開第2011/0263918号明細書;同第2011/0319688号明細書;同第2017/0297977号明細書;及び同第2016/0257631号明細書;米国特許第9,738,573号明細書;米国特許第9,708,233号明細書;米国特許第9,434,661号明細書;米国特許第9,321,029号明細書;米国特許第9,302,953号明細書;米国特許第9,295,970号明細書;米国特許第9,249,068号明細書;米国特許第9,227,891号明細書;米国特許第9,205,401号明細書;米国特許第9,156,749号明細書;米国特許第9,012,711号明細書;米国特許第7,915,471号明細書;及び米国特許第9,890,094同明細書及び同第10,010,878号明細書;米国特許第6,448,459号明細書;米国特許出願公開第2017/0204024号(A1)明細書。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、新規分類のMELフレームワーク型ゼオライトを、非常に小さい結晶サイズで作製できることが見出された。この新規分類のMELフレームワーク型ゼオライトは、液相中で操作されるC8芳香族異性化プロセス(「LPI」)で触媒として使用したときに、驚くほど高い性能を示す。かかる高い性能には、特にZSM-5ゼオライトを触媒として用いた類似の液相異性化と比較した場合に、高い異性化活性、低いキシレン損失、低いトルエン収率、低いベンゼン収率、低いC9+芳香族収率、及び高いp-キシレン選択性等がある。非常に驚くべきことに、この新規分類のMELフレームワーク型ゼオライトの高い異性化活性は、5h-1(更には10h-1)以上、例えば、≧10h-1、更には15h-1等の非常に高い質量空間速度(「WHSV」)においてC8芳香族炭化水素の有効かつ効率的なLPIを可能にする。
従って、本開示の第1の態様は、複数の結晶子を含むMELフレームワーク型のゼオライト材料であって、結晶子の少なくとも75%は、透過電子顕微鏡画像解析によって決定したときに、最大でも200ナノメートル(nm)、好ましくは最大でも150nm、好ましくは最大でも100nm、より好ましくは最大でも50nmの結晶子サイズを有する、ゼオライト材料に関する。
本開示の第2の態様は、本開示の第1の態様による任意のゼオライト材料を作製する方法に関し、該方法は、(I)ケイ素源と、アルミニウム源と、アルカリ金属(M)水酸化物と、テトラブチルアンモニウム(「TBA」)化合物、7~12個の炭素原子を有するアルキルジアミン、及びこれらの混合物及び組合せからなる群から選択される構造指向剤(SDA)源と、水と、任意選択で種結晶と、から合成混合物を形成する工程であって、合成混合物は、全体組成が以下のモル比:
SiO2:Al2O3 15~70
OH-:Si 0.05~0.5
M+:Si 0.2~0.4
SDA:Si 0.01~0.1
H2O:Si 20
を有する、工程と;(II)合成混合物を100℃~150℃の範囲の温度で加熱して、固体材料を含む反応混合物を形成することを含む、結晶化条件に合成混合物を供する工程と;(III)反応混合物からゼオライト材料を得る工程と、を含む。
本開示の第3の態様は、本開示の第1の態様による任意のゼオライト材料を含む触媒組成物に関する。
本開示の第4の態様は、C8芳香族炭化水素を含む供給原料を変換する方法に関し、該方法は、(I)芳香族炭化水素供給原料を変換反応器に供給する工程と;(II)少なくとも部分的に液相中のC8芳香族炭化水素を、変換反応器内で、変換条件下、MELフレームワーク型ゼオライトを含む変換触媒組成物と接触させて、C8芳香族炭化水素の少なくとも一部の異性化を起こし、変換生成物流出液を生成する工程と、を含む。
本開示の第5の態様は、C8芳香族炭化水素を含む供給原料を変換する方法に関し、該方法は、(I)芳香族炭化水素供給原料を変換反応器に供給する工程と;(II)実質的に液相中のC8芳香族炭化水素を、変換反応器内で、変換条件下、B1~B9のいずれかの触媒組成物と接触させて、C8芳香族炭化水素の少なくとも一部の異性化を起こし、変換生成物流出液を生成する工程であって、変換条件は、C8炭化水素を液相に維持するのに十分な絶対圧と、150~300℃の範囲の温度と、2.5~15の範囲のWHSVとを含む、工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の実施例A1で合成したZSM-11ゼオライトのX線回折(「XRD」)グラフである。
【
図2】本開示の実施例A1で合成したZSM-11ゼオライトの走査電子顕微鏡(「SEM」)画像である。
【
図3】本開示の実施例A1で合成したZSM-11ゼオライトの透過電子顕微鏡(「TEM」)画像である。
【
図4】本開示の実施例A2で合成したZSM-11ゼオライトのXRDグラフである。
【
図5】本開示の実施例A2で合成したZSM-11ゼオライトのSEM画像である。
【
図6】本開示の実施例A2で合成したZSM-11ゼオライトのTEM画像である。
【
図7】本開示の実施例A3で合成したZSM-11ゼオライトのXRDグラフである。
【
図8】本開示の実施例A3で合成したZSM-11ゼオライトのSEM画像である。
【
図9】本開示の実施例A3で合成したZSM-11ゼオライトのTEM画像である。
【
図10】本開示の例示的方法におけるp-キシレン選択性とWHSVの関係を示すグラフである。
【
図11】
図10に示した方法と同じ例示的方法におけるA9+収率とWHSVの関係を示すグラフである。
【
図12】
図10及び11に示した方法と同じ例示的方法におけるキシレン損失とWHSVの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示において、方法は少なくとも1つの「工程」を含むものとして記載される。各工程は、方法において、連続様式若しくは不連続様式で、1回又は複数回実施され得る作用又は操作であるものと理解すべきである。反対に特定されているか又は文脈が明白に他の意味を示さない限り、方法中の各工程は、1つ以上の他の工程と重複するか否かにかかわらず、それらが列挙されている順序で連続的に行なってよく、或いは場合によっては、いずれの他の順序で行なってもよい。さらに、1つ以上の工程又は全ての工程さえ、材料の同一又は異なるバッチに関して同時に行なってよい。例えば、連続法においては、方法の第1の工程が方法の最初にちょうど供給される原材料に関して行なわれている間に、第2の工程が、第1の工程のより早い時間に方法に供給された原材料の処理の結果として生じる中間材料に関して同時に行なわれることもある。好ましくは、工程は記載順に実施される。
特に指定のない限り、本開示で量を示す全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されているものと理解すべきである。また、本明細書及び特許請求の範囲で用いる数値は、具体的な実施形態を構成するものと理解すべきである。実施例のデータの精度を保証するよう努力した。しかしながら、いずれの測定データも、測定を行なうために用いる技術及び機器の限界のため、ある一定のレベルの誤差を本質的に含むことを理解すべきである。
本明細書で使用するとき、「1つの」(不定冠詞「a」又は「an」)は、反対に特定しているか又は文脈が明白に他の意味を示さない限り、「少なくとも1つ」を意味するものとする。従って、「エーテル」を使用する実施形態は、反対に特定してあるか又は文脈が1種のみのエーテルを使用することを明白に示していない限り、1種、2種又はそれ以上のエーテルを使用する実施形態を含む。
「から本質的になる」は、本明細書で使用するとき、組成物、供給材料、又は流出液が、所与の成分を、組成物、供給材料、又は流出液の全質量を基準にして、少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、更により好ましくは少なくとも95質量%の濃度で含むことを意味する。
「結晶子」は、材料の結晶粒を意味する。ミクロスケール又はナノスケールサイズの結晶子は、透過電子顕微鏡(「TEM」)、走査電子顕微鏡(「SEM」)、反射電子顕微鏡(「REM」)、走査透過電子顕微鏡(「STEM」)等で観察できる。結晶子は、集合して多結晶材料を形成し得る。
本開示の目的で、元素の命名法はChemical and Engineering News,63(5),pg.27(1985)に記載されている版の周期表に従う。
用語「炭化水素」は、(i)水素原子と炭素原子とからなる任意の化合物又は(ii)かかる(i)における化合物の2つ以上の混合物を意味する。
用語「Cn炭化水素」は、nが正の整数の場合、(i)その分子中に総数nの炭素原子を含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)2つ以上のかかる(i)の炭化水素化合物の任意の混合物を意味する。従って、C2炭化水素は、エタン、エチレン、アセチレン、又はこれらのうちの少なくとも2つの任意の割合の混合物である。「CmからCnの炭化水素」又は「Cm~Cn炭化水素」(式中、m及びnは正の整数であり、m<nである)は、Cm、Cm+1、Cm+2、…、Cn-1、Cn炭化水素、又はこれらの2つ以上の任意の混合物を意味する。従って、「C2からC3の炭化水素」又は「C2~C3炭化水素」は、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、プロピン、プロパジエン、シクロプロパン、及びこれらの2つ以上の、任意の成分間の割合の任意の混合物であり得る。「飽和C2~C3炭化水素」は、エタン、プロパン、シクロプロパン、又はこれらのうちの2つ以上の任意の割合の混合物であり得る。「Cn+炭化水素」は、(i)その分子中に少なくともnの総数の炭素原子を含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)2つ以上のかかる(i)の炭化水素化合物の2つ以上の任意の混合物を意味する。「Cn-炭化水素」は、(i)その分子中に最大でnの総数の炭素原子を含む炭化水素化合物、又は(ii)かかる(i)における炭化水素化合物の2つ以上の任意の混合物を意味する。「Cm炭化水素流」は、Cm炭化水素(複数可)から本質的になる炭化水素流を意味する。「Cm~Cn炭化水素流」は、Cm~Cn炭化水素(複数可)から本質的になる炭化水素流を意味する。
【0007】
本開示は、新規分類のMELフレームワーク型ゼオライト材料、その製造方法、及びC8芳香族炭化水素の異性化等の芳香族炭化水素の変換におけるその使用を提供する。本開示は、新規分類のMELフレームワーク型ゼオライト材料の存在下で芳香族炭化水素を変換する方法、例えば、C8芳香族混合物を変換するための異性化方法、特に液相で操作される異性化方法、にも関する。
【0008】
I.本開示の第1の態様の新規分類のMELゼオライト
本開示の第1の態様の新規分類のMELフレームワーク型ゼオライト材料は、複数の一次結晶子を含む。結晶子の少なくとも75%(例えば、≧80%、≧85%、≧90%、又は更には≧95%)は、≦200nm(例えば、≦150、≦100、≦80、≦50、≦30nm)の結晶子サイズを有する。従って、例えば、結晶子の少なくとも75%(例えば、≧80%、≧85%、≧90%、又は更には≧95%)は、cs1~cs2nmの範囲の結晶子サイズを有し、ここでcs1及びcs2は、cs1<cs2である限り、独立して、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、150、160、180、200であり得る。好ましくは、cs1=10及びcs2=150である。より好ましくは、cs1=10であり、cs2=50である。本開示において、結晶子サイズは、透過電子顕微鏡(「TEM」)で観察された結晶子の最大寸法として定義される。結晶子サイズを決定するには、ゼオライト材料の試料をTEM内に置き、試料の画像を撮影する。次いで、画像を解析して、結晶子サイズ及びその分布を決定する。本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料の小さい結晶子サイズは、以下に実証するように、驚くほど高い触媒活性及びその他の性能を示す。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料の結晶子は、実質的に球状、棒状等の様々な形状をとり得る。結晶子は、TEM画像において、不規則形状を有し得る。従って、結晶子は、第1の方向の最長寸法(「一次寸法」)及び第1の方向に垂直な別の方向の幅(「二次寸法」)を示してもよく、この幅はTEM画像解析で決定したときの一次寸法の中央における寸法として定義される。一次寸法の幅に対する比は、結晶子のアスペクト比と呼ばれる。特定の実施形態において、結晶子は、TEM画像解析によって決定された平均アスペクト比が、ar1~ar2の範囲であることができ、ここで、ar1及びar2は、ar1<ar2である限り、独立して、例えば、1、1.2、1.4、1.5、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.5、2.6.2.8、3.0、3.2、3.4、3.5、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、及び5.0であり得る。特定の実施形態において、好ましくはar1=1及びar2=3である。特定の実施形態において、好ましくはar1=1及びar2=2である。
一次結晶子は、数で少なくとも90%の一次結晶子が、TEMで撮影した一次結晶子の画像解析により決定したときに、10~80nmの範囲、好ましくは20~50nmの範囲の一次結晶子サイズを有するような、狭い粒径分布を有し得る。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料の小さい結晶子は、集合して凝集を形成し得る。この凝集は、晶子の境界に空隙を有する多結晶材料である。本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、凝集、典型的には不規則な凝集を含み得る。凝集は、TEM画像解析で決定したときに80nm未満、好ましくは70nm未満、より好ましくは60nm未満、例えば、50nm未満の平均一次結晶子サイズを有し得る。
任意選択で、MELフレームワーク型ゼオライトの一次結晶子は、X線回折によって測定したa、b及びc結晶ベクトルの各々において、80nm未満、好ましくは70nm未満、場合によっては60nm未満の平均一次結晶子サイズを有し得る。一次結晶子は、任意選択で、X線回折によって測定したときに、a、b及びc結晶ベクトルの各々において、20nm超、場合により30nm超の平均一次結晶子サイズを有し得る。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、一次結晶子の凝集と、いくらかの非凝集一次結晶子との混合物を含み得る。MELフレームワーク型ゼオライトの大部分、例えば、50質量%超又は80質量%超が、一次結晶子の凝集として存在できる。凝集は、規則的形又は不規則な形態であり得る。凝集に関する更なる情報は、Walter,D.(2013)Primary Particles-Agglomerates-Aggregates, in Nanomaterials(ed Deutsche Forschungsgemeinschaft(DFG)),Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.KGaA, Weinheim,Germany.doi:10.1002/9783527673919、pages 1-24を参照されたい。
任意選択で、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、≦200nm、好ましくは≦180nm、好ましくは≦150nm、好ましくは≦120nm、好ましくは≦100nm、好ましくは≦80nm、好ましくは≦70nm、好ましくは≦60nm、好ましくは≦50nm、例えば≦30nmの一次結晶子サイズを有する一次結晶子で構成された上記不規則凝集を、≧50質量%、好ましくは≧70質量%、有利には≧80質量%、より好ましくは≧90質量%含むことができ、任意選択で、実質的に上記凝集からなる。好ましくは、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、TEM画像解析により決定したときに>200nmのサイズを有する一次結晶子を10質量%未満含む。好ましくは、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、TEM画像解析により決定したときに>150nmのサイズを有する一次結晶子を10質量%未満含む。好ましくは、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、TEM画像解析により決定したときに>100nmのサイズを有する一次結晶子を10質量%未満含む。好ましくは、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、TEM画像解析により決定したときに>80nmのサイズを有する一次結晶子を10質量%未満含む。
好ましくは、本開示の第1及び第2の態様の上記MELフレームワーク型ゼオライトの上記一次粒子は、3.0未満、より好ましくは2.0未満のアスペクト比を有する。
上記一次結晶子の上記凝集は、典型的にはTEM画像で不規則形態であり、「一次」粒子である結晶子の凝集で形成されることから、「二次」粒子と呼ばれることがある。
【0009】
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料は、特定の実施形態において、r1~r2で変動し得るシリカ対アルミナ比R(s/a)を有し、ここでr1及びr2は、r1<r2である限り、独立して、例えば、10、12、14、15、16、18、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60であり得る。特定の実施形態では、r1=20及びr2=50が好ましい。特定の実施形態では、r1=20及びr2=40が好ましい。特定の実施形態では、r1=20及びr2=30が好ましい。比r(s/a)はICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)又はXRF(蛍光X線)によって決定できる。
【0010】
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料は、特定の実施形態において、a1~a2m2/gで変動し得るBET全比表面積A(st)を有することができ、ここでa1及びa2は、a1<a2である限り、独立して、例えば、300、320、340、350、360、380、400、420、440、450、460、480、500、520、540、550、560、580、600であり得る。特定の実施形態では、a1=400及びa2=500が好ましい。特定の実施形態では、a1=400及びa2=475が好ましい。A(st)はBET法(Brunauer-Emmet-Teller法、窒素吸着法)によって決定できる。本開示のゼオライト材料の高い全表面積A(st)は、この材料が、触媒(例えば芳香族炭化水素変換の触媒)として使用したときに高い触媒活性を示す別の理由である。BET法では、ミクロ細孔比面積成分及びメソ細孔比面積成分を含む、測定した材料の全比面積を得ることができる。メソ細孔比面積は、本開示において、メソ細孔面積、又は外部面積と呼ばれる場合がある。全比面積は、本開示において、全表面積又は全面積と呼ばれる場合がある。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料は、特定の実施形態において、上記の全表面積A(st)の≧15%(例えば、≧16%、≧18%、≧20%、≧22%、≧24%、≧25%)であるメソ細孔面積A(mp)を有し得る。特定の実施形態では、A(mp)≧20%*A(st)が好ましい。特定の実施形態では、A(mp)≦40%*A(st)が好ましい。特定の実施形態では、A(mp)≦30%*A(st)が好ましい。本開示のゼオライト材料の高いメソ細孔面積A(mp)は、この材料が、触媒(例えば芳香族炭化水素変換の触媒)として使用したときに高い触媒活性を示す別の理由である。特定の理論に束縛されるものではないが、本開示のゼオライト材料のメソ細孔領域上に存在する触媒部位は、高いメソ細孔面積から、より多いと考えられ、これはゼオライト材料の内側の深いチャネルに位置する触媒部位よりも触媒活性に寄与する傾向がある。反応物質分子がメソ細孔表面上の触媒部位に達し、生成物分子が当該部位を出るのに要する時間は比較的短い。逆に、反応物質分子が深いチャネル内に拡散し、生成物分子がチャネルから外に拡散するには、はるかに長い時間を要する。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料は、特定の実施形態において、v1~v2mg/gで変動し得るヘキサン吸着値v(hs)を有し、ここでv1及びv2は、v1<v2である限り、独立して、例えば、90、92、94、95、96、98、100、102、104、105、106、108、110であり得る。ヘキサン吸着値は、当該業界で一般的なように、TGA(熱重量分析)により決定できる。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト材料は、特定の実施形態において、a1~a2で変動し得るα値を有することができ、ここでa1及びa2は、a1<a2である限り、独立して、例えば、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1500、1600、1800、2000、2200、2400、2500、2600、2800、3000であり得る。α値は、米国特許第3,354,078号明細書並びにJournal of Catalysis,Vol.4、p.527(1965);vol.6、p.278(1966)及びVol.61、p.395(1980)に記載の方法によって決定できる。
【0011】
II.本開示の第2の態様の新規分類のMELゼオライト材料の製造方法
モレキュラーシーブ材料の合成は、典型的には、モレキュラーシーブ内に存在する全ての元素の供給源を、たいていはpHを調節するための水酸化物源と共に含む合成混合物の調製を伴う。多くの場合、構造指向剤(テンプレート化剤、又はテンプレートとしても知られる)も存在する。構造指向剤は、モレキュラーシーブの形成を促進すると考えられる化合物、特定のモレキュラーシーブ構造をその周囲に形成できるテンプレートとして作用すると考えられる化合物、及びそれによって所望のモレキュラーシーブの形成を促進する化合物である。様々な種類の四級アンモニウムカチオン等、様々な化合物が構造指向剤として使用されている。
モレキュラーシーブの合成は複雑なプロセスである。生成するモレキュラーシーブの純度、収率及び品質に関して、合成を最適化するために制御する必要がある変数が多数存在する。特に重要な変数は、合成テンプレート(構造指向剤)の選択であり、これは通常、どのフレームワーク型が合成から得られるかを決定する。第四級アンモニウムイオンは、典型的に、ゼオライト触媒の調製において構造指向剤として使用される。
「合成したまま」(as-synthesized)のモレキュラーシーブは、その細孔内に構造指向剤を含有しており、通常は、構造指向剤を燃焼して細孔を空にするための焼成工程が施される。多くの触媒用途において、モレキュラーシーブを水素形態(H形態)に変換することが望ましい。これは、最初に空気又は窒素中での焼成によって構造指向剤を除去し、次いでイオン交換によりアルカリ金属カチオン(典型的にはナトリウムカチオン)をアンモニウムカチオンで置き換え、次いでモレキュラーシーブを最終焼成し、アンモニウム形態をH形態に変換することで達成され得る。次いで、H形態に、蒸気処理及び/又は酸処理等の種々の「後処理」を施し、結晶の表面特性を調整してもよい。かかる処理の生成物は、「後処理済みの」(post-treated)と呼ばれることが多い。
【0012】
本発明者らは、非常に小さい結晶サイズを有し、高いメソ細孔表面積を有するMELフレームワーク型ゼオライトを、特に合成混合物組成物の選択によって調製できることを見出した。
構造指向剤(「SDA」)は、TBA、7~12個の炭素原子を有するアルキルジアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される。本明細書で使用するとき、「TBA」は、テトラブチルアンモニウムカチオンを指す。7~12個の炭素原子を有するアルキルジアミンの例としては、限定するものではないが、ヘプタン-1,7-ジアミン、オクタン-1,8-ジアミン、ノナン-1,9-ジアミン、デカン-1,10-ジアミン、及びウンデカン-1,11-ジアミンが挙げられる。好ましくは、構造指向剤はTBAである。TBAは、ハロゲン化物、水酸化物、これらの任意の混合物等として、合成混合物に含まれ得る。TBAの塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物を使用してもよい。TBAの好ましい塩は、TBAの臭化物であり、本明細書でTBABrと略される。好ましくは、モル比SDA:Siは、0.005~0.20、より好ましくは0.01~0.10、とりわけ0.02~0.05の範囲である。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライトのモル比Si:Al2(シリカ対アルミナ又はSiO2/Al2O3比とも呼ばれる)は、好ましくは10より大きく、例えば10~60、好ましくは15~50、好ましくは15~40、好ましくは15~30、例えば20~30、例えば22~28の範囲である。本開示の後処理済みのMELフレームワーク型ゼオライトの比Si:Al2は、好ましくは20~300、より好ましくは20~100の範囲である。
好適なケイ素(Si)源としては、シリカ、シリカのコロイド状懸濁液、沈降シリカ、ケイ酸アルカリ金属塩(ケイ酸カリウム及びケイ酸ナトリウム等)、オルトケイ酸テトラアルキル、及びヒュームドシリカ(Aerosil(商標)及びCabosil(商標)等)が挙げられる。好ましくは、Si源はUltrasil(商標)(Evonik Degussaから入手可能)又はHiSil(商標)(PPG Industriesから入手可能)等の沈降シリカである。
好適なアルミニウム(Al)源としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水和アルミナ(ベーマイト、ギブサイト及び/又は擬ベーマイト等)、アルミン酸ナトリウム及びこれらの混合物が挙げられる。他のアルミニウム源としては、限定するものではないが、他の水溶性アルミニウム塩、又はアルミニウムアルコキシド、例えばアルミニウムイソプロピルオキシド、又はアルミニウム金属、例えば、チップ形態のアルミニウムが挙げられる。好ましくは、アルミニウム源はアルミン酸ナトリウム、例えば40~45%の範囲の濃度のアルミン酸ナトリウムの水溶液、又は硫酸アルミニウム、例えば45~50%の範囲の濃度の硫酸アルミニウム溶液である。
上記のSi及びAl源の代わりに又は加えて、Si及びAlの両方の供給源としてアルミノシリケートも使用してよい。
好ましくは、合成混合物中のSi:Al2比は、15~70、より好ましくは15~50、より好ましくは15~40、例えば20~30の範囲である。
【0013】
合成混合物は、アルカリ金属カチオンM+源も含有する。アルカリ金属カチオンM+は、好ましくはナトリウム、カリウム、並びにナトリウムカチオンとカリウムカチオンの混合物からなる群から選択される。ナトリウムカチオンが好ましい。好適なナトリウム源は、例えば、NaCl、NaBr又はNaNO3、水酸化ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム等のナトリウム塩、好ましくは水酸化ナトリウム又はアルミン酸ナトリウムであってもよい。好適なカリウム源は、例えば、水酸化カリウム又はKCl若しくはKBr等のハロゲン化カリウム、又は硝酸カリウムであってもよい。好ましくは、合成混合物中の比M+:Siは、0.1~0.5、より好ましくは0.2~0.4の範囲である。
合成混合物は、水酸化物イオン源、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物も含有する。水酸化物は、構造指向剤の対イオンとして、又は水酸化アルミニウムをAl源として使用することでも存在し得る。好ましくは、OH-:Siの範囲は、0.05超であり、例えば0.05~0.5の範囲であってもよい。任意選択で、OH-:Si比は0.3未満である。
合成混合物は、任意選択で種を含む。種は、好適なゼオライト種結晶、例えばZSM-5、又はZSM-11種結晶であってもよい。好ましくは、種はメソ細孔ZSM-11結晶である。好ましくは、種結晶子サイズは≦100nmである。かかる小さい結晶子サイズの種は、本開示の小さい結晶子サイズを有するZSM-11結晶子の製造に特に有利である。種は、例えば、合成混合物の約0~20質量%、特に約0~10質量%、好ましくは約0.01~10質量%、例えば約0.1質量%~約5.0質量%の量で存在し得る。好ましい実施形態では、合成混合物は種を含む。
【0014】
本発明者らは、小結晶のMELフレームワーク型ゼオライトの合成は、合成混合物の固形分が比較的高いことで有利になることを見出した。好ましくは、H
2O:Siモル比は20以下、例えば5~20、好ましくは5~15、特に10~15の範囲である。
合成混合物は、例えば、下の表Aに示すように、モル比で表される組成を有し得る。
【表1】
【0015】
結晶化は、例えばポリプロピレンジャー、又はテフロン(登録商標)ライニングされた若しくはステンレス鋼製のオートクレーブ等の適切な反応容器内で静的又は撹拌条件のいずれかで行なうことができる。好適な結晶化条件としては、約100℃~約200℃、例えば約135℃~約160℃の温度が挙げられる。好ましくは、温度は150℃未満である。合成混合物を、使用温度で結晶化が起こるのに十分な時間、例えば、約1日~約100日、任意選択で1~50日、例えば約2日~約40日にわたって上記高温に維持してもよい。合成混合物は、場合によっては、第1の温度で1時間~10日の第1の期間維持され、次いで第2の、より高い温度で、1時間~40日の第2の期間維持されてもよい。結晶化工程の後、合成された結晶を、液体から分離し、洗浄し、次いで回収する。
合成したままの本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、その細孔構造内に構造指向剤を含有することから、生成物は通常、構造指向剤の有機部分(即ち、TBA)が、少なくとも部分的にゼオライトから除去される方法で、使用前に活性化される。
【0016】
焼成された本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、任意選択で、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトを焼成して構造指向剤を除去することによって調製される。MELフレームワーク型ゼオライトにまた、合成したままの生成物中に存在するアルカリ又はアルカリ土類金属イオンを他のカチオンで置き換えるためのイオン交換工程を施してもよい。好ましい交換カチオンとしては、金属イオン、水素イオン、アンモニウムイオン等の水素前駆体及びこれらの混合物、より好ましくは水素イオン又は水素前駆体が挙げられる。例えば、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトに、アルカリ又はアルカリ土類金属イオンをアンモニウムカチオンで置き換えるイオン交換工程を施し、続いて焼成により、アンモニウム形態のゼオライトを水素形態のゼオライトに変換してもよい。一実施形態において、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、最初に、「予備焼成」と呼ばれることもある焼成工程により、MELフレームワーク型ゼオライトの細孔から構造指向剤を除去し、続いてイオン交換処理、その後更に焼成工程を施す。
イオン交換工程は、例えば、MELフレームワーク型ゼオライトをイオン交換水溶液と接触させることを含み得る。かかる接触は、例えば1~5回実施されてもよい。イオン交換溶液との接触は、任意選択で周囲温度で行われ、又は別の方法として高温で行われてもよい。例えば、本開示のゼオライトは、室温で硝酸アンモニウム水溶液と接触することでイオン交換され、その後乾燥及び焼成されてもよい。
好適な焼成条件は、少なくとも約300℃、好ましくは少なくとも約400℃の温度で、少なくとも1分、一般的には20時間以下、例えば1時間~12時間の時間にわたる加熱を含む。大気圧以下も熱処理に用いることができるが、簡便さの理由から大気圧が望ましい。例えば、熱処理は、400~600℃、例えば500~550℃の温度で、酸素含有ガスの存在下で実施できる。
焼成された本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、典型的には、以下のモル関係の化学組成を有する:nSiO2:Al2O3(式中、nは少なくとも10、例えば10~60、より具体的には15~40、より好ましくは20~40、より好ましくは20~30である)。
焼成された本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、更なる処理なしで触媒として又は溶剤として使用されてもよく、又は蒸気処理及び/若しくは酸洗浄等の後処理を施されてもよい。
任意選択で、焼成された本開示のゼオライトは、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも350℃、より好ましくは少なくとも400℃、場合によっては少なくとも500℃の温度で、1~20時間、好ましくは2~10時間の時間にわたり蒸気処理を施される。任意選択で、蒸気処理したゼオライトを、次いで、酸、好ましくは有機酸、例えばカルボン酸の水溶液で処理する。シュウ酸は、好ましい酸である。任意選択で、蒸気処理したゼオライトを、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、例えば5~20時間の範囲の時間にわたって、酸の水溶液で処理する。
好ましくは、この後処理済みのMELフレームワーク型ゼオライトは、以下のモル関係の化学組成を有する:nSiO2:Al2O3(式中、nは少なくとも20、より好ましくは少なくとも50、場合によっては少なくとも100である)。
【0017】
III.第1の態様の新規MELゼオライト材料を含む、本開示の第3の態様の触媒組成物
本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、触媒として直接使用することができ、或いは結合剤及び/又は第2のゼオライト材料のような1種以上の他の成分と化合することができる。MELフレームワーク型ゼオライトは、吸着剤として、又は現在の商業上/産業上重要なプロセスの多くを含む多種多様な有機化合物変換プロセスを触媒する触媒として、使用できる。炭化水素供給原料の変換は、所望のプロセスの種類に応じて、任意の変換モード、例えば、流動床、移動床、又は固定床反応器で実施できる。
本開示の第3の態様は、上記の第1の態様のMELフレームワーク型ゼオライトを含む触媒組成物に関する。触媒組成物は、MELフレームワーク型ゼオライト以外の他の成分を実質的に含まなくてもよい。そのような場合、MELフレームワーク型ゼオライトは、自己支持触媒組成物である。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、有機化合物変換プロセスにおいて吸着剤又は触媒のいずれかとして用いるとき、好ましくは少なくとも部分的に脱水すべきである。脱水は、空気、窒素等の雰囲気中、大気圧、大気圧以下、又は大気圧以上の圧力で、約100℃~約500℃、例えば約200℃~約370℃の範囲の温度で、30分~48時間加熱することによって実施できる。脱水は、室温で、単にMELフレームワーク型ゼオライトを真空中に置くだけでも実施できるが、十分な量の脱水を達成するには、より長い時間を必要とする。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、完成した触媒に硬度又は触媒活性を提供する他の材料、例えば水素化成分、結合剤及び/又はマトリックス材料と組み合せることによって、触媒組成物中に配合できる。これらの他の材料は、不活性材料でも触媒活性材料でもよい。特に、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、例えば10員環又は12員環構造をその結晶子に有するゼオライト等の第2のゼオライトと組み合せてもよい。かかる第2のゼオライトの非限定例としては、MWWフレームワーク型ゼオライト、例えばMCM-22、MCM-49、及びMCM-56;MFIフレームワーク型ゼオライト、例えばZSM-5;MORフレームワーク型ゼオライト、例えばモルデナイト等、並びにこれらの混合物及び組合せが挙げられる。第2のゼオライトは、好ましくは0.5~15の範囲の拘束指数を有し得る。第2のゼオライトが触媒組成物に含まれる場合、MELフレームワーク型ゼオライトは、触媒組成物中の濃度が、MELフレームワーク型ゼオライトと第2のゼオライトとの全質量を基準にして、≧50質量%、例えば≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%、≧95質量%であることが好ましい。
本明細書に記載のMELフレームワーク型ゼオライトは、水素化-脱水素機能を遂行する必要がある場合、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン等の水素化成分、又は白金若しくはパラジウム等の貴金属と密接に化合し得る。かかる成分は、共結晶化によって組成物に組み込むこと、IIIA族元素(例えば、アルミニウム)が構造内に存在する範囲で組成中へ交換すること、組成物中に含浸させること、又は組成物と密接に物理的に混合することができる。そのような成分は、例えば、白金の場合には、白金金属含有イオンを含有する溶液でMELフレームワーク型ゼオライトを処理することによって、MELフレームワーク型ゼオライトの中又は上に含浸させることができる。従って、この目的に適した白金化合物としては、クロロ白金酸、塩化第一白金、並びに白金アミン錯体を含有する種々の化合物が挙げられる。金属の組合せ及びその導入方法も使用できる。
【0018】
多くの触媒の場合と同様に、本開示のMELフレームワーク型を、有機変換方法で採用される温度その他の条件に耐える別の材料と組合せることが望ましい場合がある。かかる材料には、活性及び不活性材料、合成又は天然のゼオライト、並びに無機材料、例えば粘土、シリカ及び/又は金属酸化物、例えばアルミナ等が含まれる。後者は、天然、又はシリカと金属酸化物の混合物を含めたゼラチン状沈降物若しくはゲルの形態のいずれであってもよい。MELフレームワーク型ゼオライトと併用しての、即ち、組み合せての材料の使用、又はMELフレームワーク型ゼオライトの合成中に存在する材料の使用は、特定の有機変換方法における触媒の変換率及び/又は選択性を変える傾向がある。不活性材料は、適宜希釈剤として働いて、所与の方法において変換量を制御し、その結果、反応速度を制御するための他の手段を採用することなく、経済的かつ秩序正しく生成物が得られる。これらの材料は、商業的操作条件下での触媒の破砕強度を向上させるために、天然の粘土、例えば、モンモリロナイ、ベントナイト、サブベントナイト及びカオリン(例えば、Dixie(ディクシー)、McNamee(マクナミー)、Georgia(ジョージア)及びFlorida(フロリダ)粘土として一般に知られるカオリン)、又は主要鉱物構成成分がハロイサイト、カオリナイト、ナクライト、若しくはアナウキサイトであるその他の粘土に組み込まれてもよい。そのような粘土は、当初採鉱されたままの未加工状態で、又は焼成、酸処理若しくは化学修飾が施された後に、使用することができる。これらの結合剤材料は、様々な炭化水素変換プロセスで起こる、温度及びその他の条件(例えば、機械的摩損)に耐える。従って、本開示のMELフレームワーク型ゼオライト又は本開示の手順によって製造されたMELフレームワーク型ゼオライトを、結合剤と共に押出物の形態で使用してもよい。当該ゼオライトは、典型的には、ピル、球、又は押出物を形成することによって結合される。押出物は、通常は、任意選択で結合剤の存在下、モレキュラーシーブを押出し、得られた押出物を乾燥及び焼成することによって形成される。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライト又は本開示の方法によって製造されたMELフレームワーク型ゼオライトと併用しての、即ち、組み合せての、材料の使用、又はゼオライトの合成中に存在する材料の使用は、特定の有機変換方法における触媒の変換率及び/又は選択性を変える傾向がある。不活性な材料は、適宜希釈剤として働いて、所与の方法において変換量を制御し、その結果、反応速度を制御するための他の手段を採用することなく、経済的かつ秩序正しく生成物が得られる。材料は、商業的操作条件下で触媒の破砕強度を向上させるために、天然の粘土、例えば、ベントナイト及びカオリンに組み込まれてもよい。
本開示のMELフレームワーク型ゼオライトは、前述の材料に加えて、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア等の多孔質マトリックス材料、並びにシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニア等の三元組成物と、複合化することができる。
MELフレームワーク型ゼオライトと無機酸化物マトリックスとの相対割合は、広く変動する場合があり、MELフレームワーク型ゼオライトの含有量は約1~約100質量%の範囲であり、より通常は、特に複合材がビーズ又は押出物の形態で調製される場合には、複合材の約50~約80質量%の範囲である。
触媒組成物において好ましい結合剤は、高表面積結合剤、例えば、≧200m2/g、更には≧250m2/gの比面積を有する、高表面積アルミナである。≦150m2/gの比面積を有する低表面積アルミナも有効となり得る。シリカは、触媒組成物において有用な結合剤であることが実証されている。
触媒組成物の製造において、合成したままの又は焼成された、本開示の第1の態様のMELフレームワーク型ゼオライは、水素形態、アルカリ形態、又はその他の形態で、結合剤、第2のゼオライト、及び/又は水素化金属等の他の材料、及び水等の他の成分と混合できる。混合物は、例えば押出、型成形等によって、所望の形状で形成できる。このようにして形成された触媒組成物を、任意選択で、窒素及び/又は空気中で乾燥、焼成して、触媒組成物を得ることができる。触媒組成物は、更に、アンモニウム塩溶液とイオン交換し、続いて乾燥及び焼成して、水素形態の触媒組成物を得ることができる。
本開示の第2の態様の触媒組成物は、円筒、中実球、三葉体、四葉体、卵殻形等の任意の形状をとることができる。触媒組成物は、粉末に粉砕し、粉末として使用してもよい。
【0019】
本開示の第1の態様のMELフレームワーク型ゼオライトから本開示の第2の態様の触媒組成物を製造する方法において、MELフレームワーク型ゼオライト材料中の一次結晶子の一部は、更に凝集して、追加の凝集体を形成するか、又は既存の凝集をより大きいサイズにする場合がある。
【0020】
IV.本開示の第4及び第5の態様のMELゼオライト材料を使用した、芳香族炭化水素の変換方法
特定のMELフレームワーク型ゼオライトが公知である。MELフレームワーク型ゼオライトの例は、例えば、米国特許第3,709,979号明細書;同第3,804,746号明細書;同第4,108,881号明細書;同第4,941,963号明細書;同第5,213,786号明細書;同第6,277,355号明細書に記載されているZSM-11ゼオライトである。ZSM-11は、炭化水素燃焼製品の製造における接触脱蝋への使用が報告されている。例えば、カナダ国特許発明第1281677号(C)明細書を参照されたい。
C8芳香族炭化水素等の芳香族炭化水素を変換するための方法におけるMELフレームワーク型ゼオライトの使用は、それ自体が新規である。従って、本開示の第4の態様は、C8芳香族炭化水素を含む供給原料を変換する方法に関し、該方法は、(I)芳香族炭化水素供給原料を変換反応器に供給する工程と;(II)少なくとも部分的に液相中のC8芳香族炭化水素を、変換反応器内で、変換条件下、MELフレームワーク型ゼオライトを含む変換触媒組成物と接触させて、C8芳香族炭化水素の少なくとも一部の異性化を起こし、変換生成物流出液を生成する工程と、を含む
高純度p-キシレン製品は、典型的には、p-キシレン分離/回収システムにおいて、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、及び場合によりEBを含むp-キシレンに富む芳香族炭化水素混合物から、p-キシレンを分離することによって製造される。p-キシレン回収システムは、例えば、先行技術で公知の晶析装置及び/又は吸着クロマトグラフィー分離システムを含み得る。p-キシレン回収システムから生じるp-キシレン-枯渇流(p-キシレン結晶分離時の晶析装置からの「濾液」、又は吸着クロマトグラフィー分離システムからの「抽残液」、本開示では「抽残液」と総称する)は、m-キシレン及びo-キシレンに富み、典型的には、p-キシレンを、m-キシレン、o-キシレン、及びp-キシレンからなる平衡混合物中のp-キシレン濃度よりも低い濃度で含有する。p-キシレンの収率を増大するため、抽残液流を異性化ユニットに供給してもよく、該ユニットで、キシレンは、異性化触媒系と接触して異性化反応を起こし、抽残液と比べてp-キシレンに富む異性化流出液を生成する。異性化流出液の少なくとも一部は、異性化ユニット内で生成し得る、より軽い炭化水素を任意で分離及び除去した後、p-キシレン回収システムに再循環して、「キシレンループ」を形成できる。
【0021】
キシレン異性化は、C8芳香族炭化水素が、異性化触媒の存在下で実質的に蒸気相にある場合に実施できる(気相異性化、又は「VPI」)。
より新しい世代の技術の開発により、C8芳香族炭化水素が実質的に液相にある場合に、異性化触媒の存在下で、大幅に低い温度でのキシレン異性化が可能になっている(液相異性化、又は「LPI」)。LPIの使用は、伝統的なVPIと比べて、C8芳香族供給原料の処理に必要な相変化(液相から気相/気相から液相)の数を低減できる。これは、大幅なエネルギー削減の形で、実質的に有利なプロセスをもたらす。いずれのp-キシレン製造プラントにとっても、VPIに加えて、又はVPIの代わりに、LPIユニットを設置することは、非常に有利となる。LPIがない既存のp-キシレン製造施設にとって、LPIユニットを追加して、VPIユニットを補完する又はVPIと置き換えることは、非常に有利となる。
これに有用な例示のLPIプロセス及び触媒系は、米国特許出願公開第2011/0263918号明細書及び同第2011/0319688号明細書、同第2017/0297977号明細書、同第2016/0257631号明細書、及び米国特許第9,890,094号明細書に記載されており、これらの全ての内容は、参照によりその全体が本願に援用される。上記参考文献に記載のLPIプロセスでは、典型的には、MFIフレームワーク型ゼオライト(例えば、ZSM-5)が触媒として使用される。
【0022】
本発明者らは、驚くべきことに、ZSM-11ゼオライトをC8芳香族炭化水素のLPIに使用することで、従来のLPIプロセスのWHSV(例えば、2.5及び5h-1)においてZSM-5ゼオライトを触媒として使用したプロセスと比較して、キシレン損失が大幅に低下し得ることを見出した。
更に驚くべきことに、本発明らは、小さい結晶子サイズ及び/又は低いSiO2/Al2O3比を有する本開示のZSM-11ゼオライトを使用することで、LPIプロセスが、並外れて高いp-キシレン選択性を、広い範囲のWHSVで達成することができ、LPIプロセスを2.5及5.0h-1等の従来のWHSVだけでなく、>5h-1、例えば≧10h-1、又は≧15h-1、最大で20h-1という高WHSVでも実施することが有利となることを見出した。かかる高スループットのLPIプロセスは、従来はZSM-5のようなMFIフレームワーク型ゼオライトを使用して実行不可能であったが、本開示のMELフレームワーク型ゼオライトにより可能となったことで、特に魅力的となり得る。
任意のMELフレームワーク型ゼオライトが変換触媒組成物に含まれてもよい。好ましくは、MELフレームワーク型ゼオライトは、少なくとも部分的に水素形態である。好ましくは、MELフレームワーク型ゼオライトは焼成される。
本開示の芳香族炭化水素変換方法において変換触媒組成物に含まれるMELフレームワーク型ゼオライトは、有利には、SiO2/Al2O3モル比が10~60、好ましくは15~50、好ましくは15~40、好ましくは20~40、例えば20~30であり得る。この比が低いほど、芳香族炭化水素の変換の触媒において、ゼオライトがより活性となる傾向がある。
変換触媒組成物に含まれるMELフレームワーク型ゼオライトは、有利には、複数の小さい結晶子、例えばTEM画像解析によって決定したときに≦200nm、好ましくは≦150nm、好ましくは≦100nm、好ましくは≦80nm、好ましくは≦70nm、好ましくは≦60nm、好ましくは≦50nm、例えば≦30nmの結晶子サイズを有する結晶子を含み得る。かかる小さい結晶子サイズにおいて、ゼオライトは、芳香族炭化水素の変換、特にキシレンの異性化の触媒において特に有効かつ効率的である。
変換触媒組成物に含まれるMELフレームワーク型ゼオライトを形成する結晶子は、TEM画像解析によって決定したときに≦200nm、好ましくは≦150nm、好ましくは≦100nm、好ましくは≦80nm、好ましくは≦70nm、好ましくは≦60nm、好ましくは≦50nm、好ましくは≦50nm、例えば≦30nmの結晶子サイズを有する結晶子を、結晶子の総数を基準にして、≧75%、例えば≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、最大で98%含み得る。
変換触媒組成物に含まれるMELフレームワーク型ゼオライトを形成する結晶子は、不規則形状の凝集を多数形成し得る。
【0023】
変換触媒組成物に含まれるMELフレームワーク型ゼオライトは、有利には、a1~a2m2/gで変動し得るBET全表面積A(st)を有し、ここで、a1及びa2は、a1<a2である限り、独立して、例えば、300、320、340、350、360、380、400、420、440、450、460、480、500、520、540、550、560、580、600であり得る。特定の実施形態では、a1=400及びa2=500が好ましい。特定の実施形態では、a1=400及びa2=475が好ましい。
変換触媒組成物に含まれるMELフレームワーク型ゼオライトは、有利には、上記の全表面積A(st)の≧15%(例えば、≧16%、≧18%、≧20%、≧22%、≧24%、≧25%)のメソ細孔表面積A(mp)を有し得る。特定の実施形態では、A(mp)≧20%*A(st)が好ましい。特定の実施形態では、A(mp)≦40%*A(st)が好ましい。特定の実施形態では、A(mp)≦30%*A(st)が好ましい。本開示のゼオライト材料の高いメソ細孔面積A(mp)は、この材料が、触媒(例えば芳香族炭化水素変換の触媒)として使用したときに高い触媒活性を示す別の理由である。
変換触媒組成物は、MELフレームワーク型ゼオライトに加えて、結合剤、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、ジルコン、クロミア、カオリン、及びその他の耐火材料、並びにこれらの混合物及び組合せを含み得る。高表面積シリカ、高表面積シリカ等の高表面積を有する結合剤が好ましい。
変換触媒組成物は、MELフレームワーク型ゼオライトに加えて、第2のゼオライト、例えば、MFIフレームワーク型(例えば、ZSM-5)のゼオライト、MWWフレームワーク型(例えば、MCM-22、MCM-49等)のゼオライト、並びにこれらの混合物及び組合わせを含み得る。第2のゼオライトが含まれる場合、MELフレームワーク型ゼオライトは、MELフレームワーク型ゼオライトと第2のゼオライトとの全質量を基準にして、≧50質量%、例えば≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%、≧95質量%の濃度で含まれることが好ましい。かかる第2のゼオライトは、好ましくは10員環又は12員環のゼオライトの結晶子構造を有する。かかる第2のゼオライトは、好ましくは0.5~15、好ましくは1~10の範囲の拘束指数を有する。
本開示の芳香族炭化水素変換方法に使用される変換触媒組成物に含むことができる特に有利なMELフレームワーク型ゼオライトは、上に詳述した本開示の第1の態様のものである。
【0024】
キシレン分子は、C8芳香族炭化水素、特にキシレンシレン分子と接触すると、異性化反応を起こし得る。典型的には、芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、及びEBを含む。芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレン分離/回収システムからの抽残液の一部であることができる。
芳香族供給原料は、例えば、C8芳香族炭化水素蒸留塔からの流出液、吸着クロマトグラフィーシステムを備えるp-キシレン分離/回収システムから生産されたp-キシレン枯渇抽残液、又はp-キシレン晶析装置を備えるp-キシレン分離/回収システムから生産されたp-キシレン枯渇濾液流、又はこれらの混合物から誘導できる。本開示では、抽残液流及び濾液流を、以下でまとめて抽残液流と呼ぶ。
特定の実施形態では、芳香族炭化水素供給原料は、芳香族炭化水素供給原料中に存在するC8芳香族の全質量を基準にしてc1~c2質量%の範囲の様々な濃度C(pX)でp-キシレンを含むことができ、ここでc1及びc2は、c1<c2である限り、独立して、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり得る。典型的には、C(pX)は、同じ温度における、p-キシレン、m-キシレン、及びo-キシレンからなる平衡混合物中のp-キシレン濃度よりも低い。好ましくは、C(pX)≦15である。より好ましくは、C(pX)≦10である。更により好ましくは、C(pX)≦8である。
特定の実施形態では、芳香族炭化水素供給原料は、芳香族炭化水素供給原料中に存在するC8芳香族の全質量を基準にしてm1~m2質量%の範囲の様々な濃度C(mX)でm-キシレンを含むことができ、ここでm1及びm2は、m1<m2である限り、独立して、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80であり得る。C(mX)は、特に芳香族炭化水素供給原料がキシレンのみから本質的になり、EBを実質的に含まない場合に、同じ温度における、p-キシレン、m-キシレン、及びo-キシレンからなる平衡混合物中のm-キシレン濃度よりもかなり高くなり得る。
特定の実施形態では、芳香族炭化水素供給原料は、芳香族炭化水素供給原料中に存在するC8芳香族の全質量を基準にしてn1~n2質量%の範囲の様々な濃度C(oX)でo-キシレンを含むことができ、ここでn1及びn2は、n1<n2である限り、独立して、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり得る。C(oX)は、特に芳香族炭化水素供給原料がキシレンのみから本質的になり、EBを実質的に含まない場合に、同じ温度における、p-キシレン、m-キシレン、及びo-キシレンからなる平衡混合物中のo-キシレン濃度よりもかなり高くなり得る。
芳香族炭化水素供給原料中に存在する全てのキシレンのうち、m-キシレン及びo-キシレンは、任意の比で存在し得る。従って、m-キシレンのo-キシレンに対する比は、r1~r2の範囲をとることができ、ここでr1及びr2は、r1<r2である限り、独立して、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり得る。
【0025】
特定の実施形態では、変換反応器に供給される芳香族炭化水素供給原料は、キシレンを、芳香族炭化水素供給材料の全質量を基準にしてc3~c4質量%の範囲の濃度C(aX)質量%で含むことができ、ここでc3及びc4は、c3<c4である限り、独立して、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99であり得る。芳香族炭化水素供給原料は、キシレン及びEBから本質的になり得る。
特定の実施形態では、芳香族炭化水素供給原料は、芳香族炭化水素供給材料の全質量を基準にしてc5~c6質量%の範囲の濃度C(EB)質量%でEBを含むことができ、ここでc5及びc6は、c5<c6である限り、独立して、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、16、18、20、22、24、25、26、28、30であり得る。好ましくは、2≦C(EB)≦25である。より好ましくは、3≦C(EB)≦20である。更により好ましくは、5≦C(EB)≦15である。
特定の実施形態では、芳香族炭化水素供給原料は、C8芳香族炭化水素(即ち、キシレン及びEB)を、芳香族炭化水素供給材料の全質量を基準にして.例えば、≧90、又は≧92、又は≧94、又は≧95、又は≧96、又は≧98、又は更には≧99質量%の凝集濃度で含む。
特定の実施形態では、芳香族炭化水素供給原料は、芳香族炭化水素供給材料の全質量を基準にしてc7~c8質量%の範囲の濃度C(C9+A)質量%でC9+芳香族炭化水素を含むことができ、ここでc7及びc8は、c7<c8である限り、独立して、例えば、1、20、40、50、60、80、100、200、400、500、600、800、1000であり得る。
芳香族炭化水素供給原料は、その供給源(例えば、キシレン蒸留塔、p-キシレン晶析装置、又は吸着クロマトグラフィー分離システム)に応じて、様々な量であるが、典型的には芳香族炭化水素供給材料の全質量を基準にして1質量%以下の、トルエンを含み得る。
芳香族炭化水素供給原料は、その供給源に応じて、様々な量、例えば、芳香族炭化水素供給材料の全質量を基準にしてc9~c10wppmの範囲で、C7-芳香族炭化水素(トルエンとベンゼンの合計)を含んでもよく、ここでc9及びc10は、c9<c10である限り、独立して、例えば、10、20、40、50、60、80、100、200、400、500、600、800、1000、2000、4000、5000、6000、8000、10000、20000であり得る。
本開示の芳香族炭化水素変換方法における例示的な変換条件は、t1~t2℃の範囲の温度を含むことができ、ここでt1及びt2は、t1<t2である限り、独立して、例えば、100、120、140、150、160、180、200、220、240、250、260、280、300、320、340、350であり得る。好ましくは、t1=150及びt2=300である。好ましくは、t1=180及びt2=300である。好ましくは、t1=200及びt2=280である。好ましくは、t1=220及びt2=260である。好ましくは、t1=240及びt2=260である。この方法の低い操作温度は、大幅に高い温度で通常実施される従来のVPIプロセスと比較して、かなりのエネルギー節約をもたらし得る。
本開示の芳香族炭化水素変換方法における例示的な変換条件は、w1~w2h-1の範囲の、芳香族炭化水素供給原料の流量及び変換触媒組成物の質量に基づくWHSVを含むことができ、ここでw1及びw2は、w1<w2である限り、独立して、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり得る。好ましくは、w1=1.0及びw2=20である。好ましくは、w1=2.0及びw2=20である。好ましくは、w1=5.0及びw2=20である。好ましくは、w1=8.0及びw2=10である。好ましくは、w1=5.0及びw2=15である。好ましくは、w1=10及びw2=15である。w1>5.0、例えばw1≧8.0、w1≧10、w1≧15の場合、かかる高スループットプロセスは、特に有利となり得る。上に記載され、下記の実施例で実証されるように、本開示の第1の態様の特定のMELフレームワーク型ゼオライトを使用することで、かかる高WHSVでZSM-5ベースの触媒を使用する従来プロセスでは実行不可能であった高いp-キシレン選択性を達成できる。
【0026】
本開示の芳香族炭化水素変換方法における例示的な変換条件は、典型的には、液相内の芳香族炭化水素供給原料中のC8芳香族炭化水素の大部分、例えば、≧80モル%、例えば≧85モル%、≧90モル%、≧95モル%、≧98モル%、又は実質的に全部を、変換反応器内で所与の温度に維持するのに十分な、変換反応器の内圧を含む。例えば、240℃のLPI反応温度の場合、圧力は典型的には≧1830kPaである。
本開示の芳香族炭化水素変換方法における例示的な変換条件は、変換反応器への分子水素の供給を含み得る。任意の好適な量の分子水素を変換反応器に供給してもよい。変換反応器に供給される分子水素の例示的な量は、芳香族炭化水素供給材料の全質量を基準にしてh1~h2wppmであることができ、ここでh1及びh2は、h1<h2である限り、例えば、1、2、4、5、6、8、10、20、40、50、60、80、100、200、400、500、600、800、又は1000であり得る。好ましくは、h1=4及びh2=250である。分子水素が変換反応器に供給される場合、変換反応器内の圧力は、芳香族炭化水素供給原料中の分子水素の大部分、例えば、≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、≧98%、又は更には実質的に全部を溶解するのに十分に維持され、変換反応器内の変換反応が実質的に液相となることが非常に望ましい。特定の理論に束縛されるものではないが、ある量の分子水素を変換反応器に同時供給(co-feed)することは、変換触媒組成物上のコークス形成を阻害し、それによって変換触媒組成物の寿命を延ばす場合がある。
【0027】
驚くべきことに、本発明者らは、MELフレームワーク型ゼオライト、特に本開示の第1の態様のMELフレームワーク型ゼオライトを含む変換触媒組成物は、LPI反応器への水素の同時供給がない場合のLPIプロセスにおいて、MFIゼオライトベースの(例えばZSM-5ベースの)触媒組成物と比べて、はるかに低い失活速度を示すことを見出した。触媒組成物の耐用年数を延ばすためには、MFIゼオライトベースの触媒組成物を利用するLPI変換プロセスに分子水素を同時供給することが望ましいが、MELフレームワーク型ゼオライトベースの変換触媒組成物を使用する本開示のプロセスでは、同時供給された分子水素が存在しなくても失活速度が極めて低いことから、必ずしもそうする必要はない。従って、本開示の芳香族炭化水素変換方法の特に有利な実施形態では、分子水素は変換反応器に同時供給されない。このように水素同時供給をなくすと、水素消費、水素供給ライン、水素圧縮器、及び変換反応器からの水再循環ラインがなくなることから、プロセス及びシステム設計が実質的に単純化され、その結果、システム機器のコスト削減、より単純で信頼性の高い変換プロセス及び変換反応器の操作が得られる。
本開示の芳香族炭化水素変換方法におけるキシレン損失(「Lx(1)」)は、Lx(1)=100%*(W1-W2)/W1として計算でき、式中、W1は芳香族炭化水素供給原料中に存在する全キシレンの総質量であり、W2は変換生成物流出液中に存在する全キシレンの総質量である。本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の実施形態では、キシレン損失は、2.5h-1のWHSVにおいて、≦0.2質量%、例えば≦0.15質量%、≦0.10質量%、更には≦0.05質量%のレベルに達することができ、これは、下記の実施例で実証するように、ZSM-5ベースの触媒組成物を使用した比較プロセスよりもかなり低い。
変換反応器からの変換生成物流出液は、有利には、変換及びm-キシレン及び/又はo-キシレンからp-キシレンを生じる異性化反応により、芳香族炭化水素供給原料よりも高濃度のp-キシレンを含む。変換生成物流出液は、C9+芳香族及びC7-芳香族を更に含む可能性があり、該芳香族は、芳香族炭化水素供給原料中の不純物として変換反応器に供給される、又は変換反応器内で副反応から生じる可能性がある。C9+芳香族炭化水素及びC7-芳香族炭化水素の生成は、多くの場合、キシレン損失を伴い、そのため望ましくない。
【0028】
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の実施形態では、方法は少なくとも2.5h-1のWHSVを有し、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも3000ppm、例えば最大でも1600ppm、又は最大でも1000ppmのC9+芳香族炭化水素収率を示す。MELフレームワーク型ゼオライトを変換触媒組成物中に使用することで、特に2.5h-1という低いWHSVにおいて達成できる、かかるC9+芳香族炭化水素収率は、ZSM-5ベースのゼオライトを触媒組成物中に使用する従来方法で実証された収率よりもかなり低い。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の実施形態では、方法は少なくとも5.0h-1のWHSVを有し、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも1000ppm、例えば最大でも800ppm、又は最大でも600ppm、又は最大でも500ppmのC9+芳香族炭化水素収率を示す。MELフレームワーク型ゼオライトを変換触媒組成物中に使用することで、特に5.0h-1という低いWHSVにおいて達成できる、かかるC9+芳香族炭化水素収率は、ZSM-5ベースのゼオライトを触媒組成物中に使用する従来方法で実証された収率よりもかなり低い。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の他の実施形態では、方法は少なくとも10h-1のWHSVを有し、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも1000ppm、例えば最大でも800ppm、又は最大でも700ppm、又は最大でも600ppm、又は最大でも500ppmのC9+芳香族炭化水素収率を示す。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の他の実施形態では、方法は少なくとも2.5h-1のWHSVを有し、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも1000ppm、例えば最大でも800ppm、又は最大でも700ppm、又は最大でも600ppm、又は最大でも500ppmのベンゼン収率を示す。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の他の実施形態では、方法は少なくとも5.0h-1のWHSVを有し、変換生成物流出液を基準にして、質量で最大でも800ppm、例えば最大でも700ppm、又は最大でも600ppm、又は最大でも500ppmのベンゼン収率を示す。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の他の実施形態では、方法は少なくとも10h-1のWHSVを有し、最大でも500ppm、例えば最大でも400ppm、又は最大でも300ppmのベンゼン収率を示す。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の他の実施形態では、方法は少なくとも2.5h-1のWHSVを有し、最大でも800ppm、例えば最大でも600ppm、最大でも500ppm、又は最大でも300ppmのトルエン収率を示す。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の他の実施形態では、方法は少なくとも5.0h-1のWHSVを有し、最大でも200ppm、例えば最大でも100ppm、又は最大でも50ppmのトルエン収率を示す。
本開示の芳香族炭化水素変換方法の特定の他の実施形態では、方法は少なくとも10h-1のWHSVを有し、最大でも200ppm、例えば最大でも100ppm、又は最大でも50ppmのトルエン収率を示す。
【0029】
上述のように、MELフレームワーク型ゼオライトを含む変換触媒組成物を使用する本開示の芳香族炭化水素変換方法の利点は、変換反応器から発生する変換生成物流出液における高いp-キシレン選択性であり、特定の実施形態において>5h-1、例えば≧10h-1更には≧15h-1という高いWHSVである。本開示において、「p-キシレン選択性」は、変換生成物流出液の全キシレン中のp-キシレン濃度として定義される。従って、特定の実施形態において、本開示の芳香族炭化水素変換方法は、芳香族炭化水素供給原料が、芳香族炭化水素供給原料流のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度でp-キシレンを含むときに、2.5h-1のWHSVにおいて、≧20%、又は≧21%、又は≧22%、又は≧23%のp-キシレン選択性を示す。特定の実施形態において、本開示の芳香族炭化水素変換方法は、芳香族炭化水素供給原料が≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度でp-キシレンを含むときに、5.0h-1のWHSVにおいて、≧20%、又は≧21%、又は≧22%、又は≧23%のp-キシレン選択性さえも示す。特定の実施形態において、本開示の芳香族炭化水素変換方法は、芳香族炭化水素供給原料が≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度でp-キシレンを含むときに、10h-1のWHSVにおいて、≧20%、又は≧21%、又は≧22%、又は≧23%のp-キシレン選択性を示す。特定の実施形態において、本開示の芳香族炭化水素変換方法は、芳香族炭化水素供給原料が≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度でp-キシレンを含むときに、15h-1のWHSVにおいて、≧20%、又は≧21%、又は≧22%、又は≧23%のp-キシレン選択性さえも示し得る。かかる高WHSVにおける高いp-キシレン選択性は、ZSM-5ベースの触媒組成物を使用した比較方法では達成不可能であり、特に有利である。触媒組成物中にMELフレームワーク型ゼオライトを使用した本開示の変換方法が、かかる高いp-キシレン選択性を高WHSVで達成できるという事実は、全く予想外であり、非常に驚きである。
【0030】
本開示の芳香族炭化水素変換方法は、MELフレームワーク型ゼオライトを含む触媒組成物を使用したLPIプロセスを特徴とし得る。変換反応器は、LPI反応器又はLPIユニットと呼ばれる場合もある。
LPIプロセスは、VPIプロセスよりもエネルギー効率が高い。一方、VPIプロセスは、エチルベンゼンの変換において、LPIプロセスよりも効率が高くなり得る。従って、異性化変換処理された芳香族炭化水素供給原料が、はっきり検知できる程度の濃度のエチルベンゼンを含む場合、供給原料の一部がパージされない限り、エチルベンゼンは、VPI反応器(又はVPIユニット)を含まずLPIユニットのみを含むキシレンループに蓄積し得る。供給原料又はキシレンループのエチルベンゼン蓄積をパージすることは、いずれも望ましくない。従って、LPIユニットとVPIユニットの両方を、芳香族製造複合設備に維持することが望ましい場合がある。このような場合、LPI及びVPIユニットに、同じ又は異なる組成の芳香族炭化水素供給原料が様々な量で供給され得る。一実施形態では、LPIユニットとVPIユニットとは、実質的に同じ組成を有する共通の供給源から芳香族供給原料を受け取れるように、平行に配置される。別の実施形態では、LPIユニットとVPIユニットとを直列で操作してもよく、その場合、芳香族炭化水素供給原料は最初に第1のLPIユニットに供給されて、少なくともキシレンの部分異性化を達成してLPI流出液を発生し、それが次にVPIユニットに供給され、該ユニットで更なるキシレン異性化とエチルベンゼン変換が起こる。或いは、VPIユニットは芳香族炭化水素供給原料を受け取ってエチルベンゼン枯渇VPI流出液を発生するリードユニットであってもよく、該流出液は、次に、更なるキシレン異性化反応のためLPIユニットに供給される。
本開示を、以下の非限定例によって更に例証する。多数の変更及び変形が可能であり、添付の特許請求の範囲内で、本開示は本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されてもよいことは理解されるべきである。
開示を、以下の非限定例によって更に例証する。
【実施例】
【0031】
以下の実施例において、「TBABr」は臭化テトラブチルアンモニウム(テンプレート剤)、「XRD」はX線回折、「SEM」は走査電子顕微鏡法、「TEM」は透過電子顕微鏡法、「DI水」は脱イオン水、「HSA」は高表面積(即ち、≧200m2/gの比表面積を有すること)、「LSA」は低表面積(即ち、≦150m2/gの比表面積を有すること)を意味し、全ての部数は、特記のない限り質量によるものである。
【0032】
結晶子サイズの測定
結晶子(即ち、一次粒子)サイズの測定は、以下のように実施した。ゼオライト試料のTEM写真を数枚撮影し、一次粒子を識別及び測定した。アスペクト比が1を超える一次粒子の各々について、粒子の縁上の最も離れた2つの点の間に線を引くことで、最長寸法を識別した。次いで、一次粒子の最長寸法に対して45°の対角線に沿い、当該最長寸法の中点を通る長さを粒径として測定した。
【0033】
BETによる全表面積及びメソ細孔表面積の測定
全BET及びt-Plotミクロ細孔表面積を、焼成したゼオライト粉末を350℃で4時間脱気した後、窒素吸着/脱着によって測定した。メソ細孔表面積(即ち、外表面積)は、t-plotマイクロ細孔から全BET表面積を減算することで得た。方法に関する更なる情報は、例えば、「Characterization of Porous Solids and Powders:Surface Area,Pore Size and Density」,S.Lowell et al.,Springer(2004)に見ることができる。
【0034】
α値
α値は、触媒の分解活性の尺度であり、米国特許第3,354,078号明細書並びにJournal of Catalysis,Vol.4,p.527(1965);Vol.6,p.278(1966)及びVol.61,p.395(1980)に記載されており、これらを各々参照により本明細書に援用する。本明細書で使用した実験条件には、538℃の一定温度及びJournal of Catalysis, Vol.61,p.395(1980)に詳細に記載されている可変性流量が含まれる。
【0035】
実施例A1:SiO
2/Al
2O
3モル比が約50である第1のZSM-11ゼオライトの合成
SiO
2/Al
2O
3モル比が50である第1のZSM-11ゼオライト材料を、TBABr水溶液、Ultrasil(商標)沈降シリカ、硫酸アルミニウム溶液、NaOH水溶液、及びZSM-11種結晶を含む合成混合物から合成した。合成混合物は、以下のモル組成であった:
SiO
2/Al
2O
3 約55
H
2O/SiO
2 約14.2
OH
-/SiO
2 約0.14
Na
+/SiO
2 約0.25
TBABr/SiO
2 約0.05
混合物を、オートクレーブ内で撹拌しながら138℃(280°F)で72時間反応させた。生成物を濾過し、DI水で洗浄し、120℃(250°F)で乾燥した。
図1の得られた結晶のXRDダイアグラムは、ZSM-11ゼオライトの典型的なパターンを示す。
図2に示す、得られた結晶のSEM画像は、結晶から形成された不規則形状の凝集を示し、その結晶子は<50nmのサイズを有する。
図3に示す、得られた結晶のTEM画像は、結晶子(一次粒子)の大部分が、≦400オングストロームのサイズ及びアスペクト比≦2を有することを示す。得られた結晶は、約50のシリカ/アルミナモル比を示した。合成したままのゼオライト結晶の一部を、硝酸アンモニウム溶液との3回のイオン交換によって水素形態に変換し、続いて120℃(250°F)で乾燥し、540℃(1000°F)で6時間焼成した。水素形態ゼオライトを測定した結果、α値は800、ヘキサン吸着値は98mg/g、全表面積は490m
2/g、外表面積は134m
2/gであった。
【0036】
実施例A2:SiO
2/Al
2O
3モル比が約25である第2のZSM-11ゼオライトの合成
SiO
2/Al
2O
3モル比が24.7である第2のZSM-11ゼオライト材料を、TBABr水溶液、Ultrasil(商標)沈降シリカ、硫酸アルミニウム溶液、NaOH水溶液、及びZSM-11種結晶を含む合成混合物から合成した。合成混合物は、以下のモル組成であった:
SiO
2/Al
2O
3 約26
H
2O/SiO
2 約14.3
OH
-/SiO
2 約0.1
Na
+/SiO
2 約0.37
TBABr/SiO
2 約0.05
混合物を、オートクレーブ内で撹拌しながら138℃(280°F)で72時間反応させた。生成物を濾過し、DI水で洗浄し、120℃(250°F)で乾燥した。
図4の得られた結晶のXRDグラフは、ZSM-11ゼオライトの典型的なパターンを示す。
図5に示す、得られた結晶のSEM画像は、結晶から形成された不規則形状の凝集を示し、その結晶子は<50nmのサイズを有する。
図6に示す、得られた結晶のTEM画像は、結晶子(一次粒子)の大部分が、≦400オングストロームのサイズ及びアスペクト比≦2を有することを示す。得られた結晶は、24.7のシリカ/アルミナモル比を示した。合成したままのゼオライト結晶の一部を、硝酸アンモニウム溶液との3回のイオン交換によって水素形態に変換し、続いて120℃(250°F)で乾燥し、540℃(1000°F)で6時間焼成した。水素形態ゼオライトを測定した結果、α値は1300、ヘキサン吸着値は100mg/g、全表面積は461m
2/g、外表面積は158m
2/gであった。
【0037】
実施例A3:SiO
2/Al
2O
3比が約28である第3のZSM-11ゼオライトの合成
SiO
2/Al
2O
3モル比が28である第3のZSM-11ゼオライト材料を、TBABr水溶液、Ultrasil(商標)沈降シリカ、硫酸アルミニウム溶液、NaOH水溶液、及びZSM-11種結晶を含む合成混合物から合成した。合成混合物は、以下のモル組成であった:
SiO
2/Al
2O
3 約29
H
2O/SiO
2 約13.6
OH
-/SiO
2 約0.1
Na
+/SiO
2 約0.31
TBABr/SiO
2 約0.08
混合物を、オートクレーブ内で撹拌しながら148.9℃(300°F)で72時間反応させた。生成物を濾過し、DI水で洗浄し、120℃(250°F)で乾燥した。
図7の得られた結晶のXRDグラフは、ZSM-11ゼオライトの典型的なパターンを示す。
図8に示す、得られた結晶のSEM画像は、結晶子から形成された細長い形状の凝集を示し、その結晶子は典型的には>50nmのサイズを有する。
図9に示す、得られた結晶のTEM画像は、結晶子(一次粒子)の大部分が50~200nmの範囲の一次寸法及びアスペクト比≦3を有することを示す。得られた結晶は、約28のシリカ/アルミナモル比を示した。合成したままのゼオライト結晶の一部を、硝酸アンモニウム溶液との3回のイオン交換によって水素形態に変換し、続いて120℃(250°F)で乾燥し、540℃(1000°F)で6時間焼成した。水素形態ゼオライトは、α値は>1200、ヘキサン吸着値は90mg/g、全表面積は446m
2/g、外表面積は90m
2/gであると測定された。
【0038】
実施例A-C1(比較例):ZSM-5ゼオライトの合成
SiO2/Al2O3モル比が約26であり、結晶子サイズが約100nmであるZSM-5ゼオライトを、n-プロピルアミン溶液、シリカ、硫酸アルミニウム溶液、及びNaOH水溶液の混合物から、米国特許第4,526,879号明細書に記載の手順に従って合成した。
【0039】
パートB:触媒組成物の調製
実施例B1:実施例A1のZSM-11ゼオライトとアルミナ結合剤とを含む第1の触媒組成物の調製
80部(基準:538℃焼成物)の実施例A1で作製した第1のZSM-11ゼオライトと、20部の高表面積アルミナ及び水とを、混合装置(muller)内で混合した。アルミナは、250m2/gを超える表面積を有する(基準:538℃焼成物)。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤TBABrを分解及び除去した。次いで、こうした焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換してナトリウムを除去(<500wppm Naのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、次いで、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で3時間焼成して、水素形態ZSM-11とアルミナ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。触媒組成物を測定した結果、全表面積は452m2/g、外面積は178m2/g、ヘキサン吸着値は90.5mg/g、α値は430であった。
【0040】
実施例B2:実施例A3のZSM-11ゼオライトとアルミナ結合剤とを含む第2の触媒組成物の調製
80部(基準:538℃焼成物)の実施例A3からの第3のZSM-11ゼオライト材料と、20部の高表面積HSAアルミナ(基準:538℃焼成物)及び水とを、混合装置内で混合した。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤TBABrを分解及び除去した。次いで、こうした焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換してナトリウムを除去(<500wppm Naのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で3時間焼成して、水素形態ZSM-11とアルミナ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。水素形態の触媒組成物を測定した結果、表面積は430m2/g、外面積は157m2/g、α値は1200であった。
【0041】
実施例B3:実施例A2のZSM-11ゼオライトとアルミナ結合剤とを含む第3の触媒組成物の調製
80部(基準:538℃焼成物)の実施例A2からの第2のZSM-11ゼオライトと、20部の高表面積HSAアルミナ(基準:538℃焼成物)及び水とを、混合装置内で混合した。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、次いで、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤TBABrを分解及び除去した。次いで、こうした焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換してナトリウムを除去(<500wppm Naのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で3時間焼成して、水素形態ZSM-11ゼオライトとアルミナ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。水素形態の触媒組成物を測定した結果、全表面積は432m2/g、外面積は200m2/g、ヘキサン吸着値は85.5mg/g、α値は1000であった。
【0042】
実施例B4:実施例A2のZSM-11ゼオライトとシリカ結合剤とを含む第4の触媒組成物の調製
80部(基準:538℃焼成物)の実施例A2からのZSM-11ゼオライトと、20部のUltrasil(商標)シリカ及びコロイド状シリカ(シリカ基準:538℃焼成物)及び水とを、混合装置内で混合した。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤TBABrを分解及び除去した。次いで、こうした焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換してナトリウムを除去(<500wppm Naのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、次いで、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で焼成して、水素形態ZSM-11ゼオライトとシリカ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。水素形態の触媒組成物を測定した結果、ヘキサン吸着値は80.7mg/g、全表面積は430m2/g、外表面積は181m2/g、α値は1200であった。
【0043】
実施例B5:実施例A2のZSM-11ゼオライトと低表面積アルミナ結合剤とを含む第5の触媒組成物の調製
80部(基準:538℃焼成物)の実施例A2からのZSM-11ゼオライトと、20部の低表面積アルミナ(基準:538℃焼成物)及び水とを、混合装置内で混合した。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤TBABrを分解及び除去した。次いで、こうした焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換してナトリウムを除去(<500wppm Naのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、次いで、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で焼成して、水素形態ZSM-11ゼオライトとアルミナ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。水素形態の触媒組成物を測定した結果、ヘキサン吸着値は80.5mg/g、表面積は396m2/g、外面積は148m2/g、α値は930であった。
【0044】
実施例B6:実施例A2のZSM-11ゼオライトと、MCM-49ゼオライトと、アルミナ結合剤とを含む第6の触媒組成物の調製
40部(基準:538℃焼成物)の実施例A2からのZSM-11ゼオライト及び40部のMCM-49結晶と、20部の高表面積AHSAアルミナ(基準:538℃焼成物)及び水とを、混合装置内で混合した。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤TBABrを分解及び除去した。次いで、こうした焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換してナトリウムを除去(<500wppmNaのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、次いで、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で3時間焼成して、水素形態ZSM-11と、MCM-49と、アルミナ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。水素形態の触媒組成物を測定した結果、全表面積は467m2/g、外面積は170m2/g、ヘキサン吸着値は86.5mg/g、α値は880であった。
【0045】
実施例B7:実施例A2のZSM-11ゼオライトと、実施例A-C1のZSM-5ゼオライトと、アルミナ結合剤とを含む第7の触媒組成物の調製
40部(基準:538℃焼成物)の実施例A2からのZSM-11ゼオライト及び40部の実施例A-C1からのZSM-5ゼオライトと、20部の高表面積AHSAアルミナ(基準:538℃焼成物)及び水とを、混合装置内で混合した。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤TBABrを分解及び除去した。次いで、こうした焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換してナトリウムを除去(<500wppm Naのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、次いで、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で3時間焼成して、水素形態ZSM-11と、ZSM-5と、アルミナ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。水素形態の触媒組成物を測定した結果、全表面積は422m2/g、外面積は182m2/g、ヘキサン吸着値は84.9mg/g、α値は1000であった。
【0046】
実施例B8:実施例B2の第2の触媒組成物の蒸気処理による第8の触媒組成物の調製
実施例B2の第2の触媒組成物を、371℃(700°F)で3時間蒸気処理した結果、次の特性を示した:ヘキサン吸着値は84.1mg/g、全表面積は350m2/g、α値は800。
【0047】
実施例B9:実施例B3の第3の触媒組成物の蒸気処理による第9の触媒組成物の調製
実施例B3の第3の触媒組成物を、371℃(700°F)で3時間蒸気処理した結果、次の特性を示した:ヘキサン吸着値は78.5mg/g、全表面積は415m2/g、α値は720。
【0048】
実施例B-C1(比較):ZSM-5ゼオライトとアルミナ結合剤とを含む比較用触媒組成物の調製
80部(基準:538℃焼成物)の実施例A-C1からのZSM-5ゼオライトと、20部のHSAアルミナ(基準:538℃焼成物)及び水とを、混合装置内で混合した。混合物を押出し、次いで121℃で終夜乾燥した。乾燥した押出物を、窒素中、538℃で3時間焼成して、テンプレート剤n-プロピルアミンを分解及び除去した。こうして焼成した押出物を、飽和空気で加湿し、1N硝酸アンモニウムで交換して、触媒中のナトリウムを除去(<500wppmNaのレベルまで)した。硝酸アンモニウム交換後、押出物をDI水で洗浄して、乾燥前に残留硝酸イオンを除去した。アンモニウム交換した押出物を、次いで、121℃で終夜乾燥し、空気中、538℃で3時間焼成して、水素形態ZSM-5とアルミナ結合剤とを含む水素形態の触媒組成物を得た。水素形態の触媒組成物を測定した結果、全表面積は450m2/g、ヘキサン吸着値は90mg/g、α値は900であった。
【0049】
パートC:触媒組成物存在下でのLPIプロセス
パートBの上記実施例で調製された、同程度の押出物サイズを有する一連の触媒組成物を、下記の実施例C1~C6及びC-C1の液相異性化プロセスで試験した。試験した触媒組成物は各々、最初に10/20メッシュに粉砕した。次いで、1gの粉砕触媒組成物を、アップフロー管状反応器に充填した。水分を除去するため、充填した触媒組成物を、次いで、窒素気流下、室温から240℃まで毎分2℃で昇温した後、240℃で1時間保持して乾燥した。その後、異性化供給原料を、底部入口から反応器に供給し、充填した触媒組成物と接触させた。異性化条件は、1827kPa(ゲージ)(265psig)及び240℃に設定し、WHSVは2.5~15h-1で変動させた。分子水素は反応器に供給されなかった。異性化供給原料は、異性化供給原料の全質量を基準にして、以下の組成であった:13質量%のエチルベンゼン、1.5質量%のC8~C9非芳香族、1.5質量%のp-キシレン、19質量%のo-キシレン、及び66質量%のm-キシレン。反応器の上部から出た異性化生成物混合物を回収し、その組成を分析した。報告された結果において、生成物のp-キシレン選択性は、異性化生成物混合物流出液における全キシレン中のp-キシレン濃度として定義される。キシレン損失(Lx(%))は以下のように計算される:Lx=100%*(W1-W2)/W1(式中、W1は異性化供給原料中のキシレンの全質量であり、W2は異性化生成物混合物流出液中のキシレンの全質量である)。
【0050】
実施例C-C1(比較):実施例B-C1の触媒組成物の存在下でのLPI
HSAアルミナ結合剤と、中サイズの結晶子及び約26のSiO
2/Al
2O
3モル比を有するZSM-5ゼオライトとを含む、上記実施例B-C1の触媒組成物を試験した。WHSV及び結果を表C-C1に示す。
【表2】
【0051】
実施例C1:実施例B3の触媒組成物の存在下でのLPI
HSAアルミナ結合剤と、小サイズの結晶子及び約25のSiO
2/Al
2O
3モル比を有するZSM-11ゼオライトとを含む、上記実施例B3の触媒組成物を試験した。結果及び反応条件を表Iに示す。
【表3】
【0052】
HSAアルミナ結合剤と、小サイズの結晶子及び約25のSiO2/Al2O3モル比を有するZSM-11ゼオライトとを含む、上記実施例B3の触媒組成物を試験した。WHSV及び結果を表Iに示す。
表C-C1及び表Iのデータから、実施例B3の発明的触媒組成物を実施例B-C1の比較用触媒組成物と比べたときの利点は、数多く、非常に重要である:(i)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B3の発明的触媒組成物は、はるかに低いキシレン損失を生じた;(ii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B3の発明的触媒組成物は、はるかに低いA9+収率を生じた;(iii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B3の発明的触媒組成物は、はるかに低いトルエン収率も生じた;(iv)≧5h-1の高WHSVにおいて、実施例B3の発明的触媒組成物は、生成物混合物流出液中のp-キシレン選択性がはるかに高く、実施例B-C1の比較用触媒組成物よりもはるかに高い異性化活性を示した。特に、実施例B3の発明的ZSM-11含有触媒組成物は、WHSV≧5h-1において実施例B-C1のZSM-5ベースの比較用触媒組成物よりもはるかに優れ、WHSV≧10、最大15h-1でもより優れており、これは主に、高WHSVにおいてp-キシレン選択性がはるかに高いことによる。
実施例B3及び比較例B-C1の触媒組成物は両方ともHSAアルミナを結合剤として含有することから、この例は、特に2.5~5h-1の比較的低いWSVHで、LPIプロセスの触媒においてZSM-11ゼオライトがZSM-5ゼオライトよりも有利であることを明らかに示す。
【0053】
実施例C2:実施例B2の触媒組成物の存在下でのLPI
HSAアルミナ結合剤と、中サイズの結晶子及び約28のSiO
2/Al
2O
3モル比を有するZSM-11ゼオライトとを含む、上記実施例B2の触媒組成物を試験した。WHSV及び結果を表IIに示す。
【表4】
【0054】
表C-C1及び表IIのデータから、実施例B2の発明的触媒組成物を実施例B-C1の比較用触媒組成物と比べたときの以下の利点が観察できる:(i)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B2の発明的触媒組成物は、はるかに低いキシレン損失を生じた;(ii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B2の発明的触媒組成物は、はるかに低いA9+収率を生じた;(iii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B2の発明的触媒組成物は、はるかに低いトルエン収率も生じた;(iv)≧5h-1の高WHSVにおいて、実施例B2の発明的触媒組成物は、生成物混合物流出液中のp-キシレン選択性がわずかに高く、実施例B-C1の比較用触媒組成物よりもわずかに高い異性化活性を示した。従って、実施例B2の発明的触媒組成物は、比較例B-C1のZSM-5ベースの触媒組成物よりも優れる。
表I及び表IIから、実施例B2の発明的触媒組成物は、2.5h-1のWHSVにおいて、より高いキシレン損失、2.5及び5.0h-1の両方のWHSVにおいて、はるかに高いA9+収率、5及び10h-1の高WHSVで、はるかに低いp-キシレン選択性を生じることがわかる。従って、実施例B3の触媒組成物は、実施例B2の触媒組成物よりも優れる。実施例B3の触媒組成物中のZSM-11ゼオライトの結晶子サイズが小さいほど、触媒組成物の性能が高くなると考えられる。いずれの触媒中のZSM-11ゼオライトも、同程度のSiO2/Al2O3モル比を有している。従って、ZSM-11ゼオライトは、≦80nm、より好ましくは≦50nm、更により好ましくは≦30nmの結晶子サイズを有することが、特にLPI異性化触媒組成物の製造の目的で好ましい。
【0055】
実施例C3:実施例B1の触媒組成物の存在下でのLPI
HSAアルミナ結合剤と、小サイズの結晶子及び50のSiO2/Al2O3モル比を有するZSM-11ゼオライトとを含む、上記実施例B1の触媒組成物を試験した。WHSV及び結果を表IIIに示す。
【表5】
【0056】
表C-C1及び表IIIのデータから、実施例B1の発明的触媒組成物を実施例B-C1の比較用触媒組成物と比べたときの以下の利点が観察できる:(i)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B1の発明的触媒組成物は、はるかに低いキシレン損失を生じた;(ii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B1の発明的触媒組成物は、はるかに低いA9+収率を生じた;(iii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B1の発明的触媒組成物は、はるかに低いトルエン収率も生じた。従って、実施例B1の発明的触媒組成物は、比較例B-C1のZSM-5ベースの触媒組成物よりも優れる。
表I及び表IVのデータから、実施例B1の発明的触媒組成物は、5及び10h-1の高WHSVにおいて、実施例B3の発明的触媒組成物よりもはるかに低いp-キシレン選択性を生じることがわかる。従って、実施例B3の触媒組成物は、実施例B1の触媒組成物よりも優れる。特定の理論に束縛されるものではないが、実施例B1の触媒組成物のZSM-11ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比がはるかに高いことで、実施例B3の触媒組成物よりも異性化活性が低くなると考えられる。両方の触媒組成物中のZSM-11ゼオライトは、同程度の結晶子サイズを有する。従って、ZSM-11ゼオライトは、ZSM-11ゼオライト中のSiO2/Al2O3モル比が20~40、好ましくは20~30の範囲であることが、特にLPI異性化触媒組成物を製造する目的で好ましい。
【0057】
実施例C4:実施例B4の触媒組成物の存在下でのLPI
シリカ結合剤と、小サイズの結晶子及び約25のSiO
2/Al
2O
3モル比を有するZSM-11ゼオライトとを含む、上記実施例B4の触媒組成物を試験した。WHSV及び結果を下の表IVに示す。
【表6】
【0058】
表C-C1及び表IVのデータから、実施例B4の発明的触媒組成物を実施例B-C1の比較用触媒組成物と比べたときの以下の利点が観察できる:(i)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B4の発明的触媒組成物は、はるかに低いキシレン損失を生じた;(ii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B4の発明的触媒組成物は、はるかに低いA9+収率を生じた;(iii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B2の発明的触媒組成物は、はるかに低いトルエン収率も生じた;(iv)≧5h-1の高WHSVにおいて、実施例B4の発明的触媒組成物は、生成物混合物流出液中のp-キシレン選択性がかなり高く、実施例B-C1の比較用触媒組成物よりもかなり高い異性化活性を示した。従って、実施例B4の発明的触媒組成物は、比較例B-C1のZSM-5ベースの触媒組成物よりもはるかに優れる。特に、実施例B4の発明的ZSM-11含有触媒組成物は、WHSV≧5h-1において実施例B-C1のZSM-5ベースの比較用触媒組成物よりもはるかに優れ、WHSV≧10、最大15h-1でもより優れており、これは主に、高WHSVにおいてp-キシレン選択性がはるかに高いことによる。
表I及び表IVのデータから、実施例B3及びB4の発明的触媒組成物は、LPIプロセス試験において非常に近い性能であったことがわかる。これは、約25のSiO2/Al2O3モル比を有する、同じ小結晶子のZSM-11ゼオライトは、HSAアルミナ又はシリカのいずれかに結合され、高活性、高性能の開示の触媒組成物を製造できることを示す。
【0059】
実施例C5:実施例B5の触媒組成物の存在下でのLPI
LSAアルミナ結合剤と、小サイズの結晶子及び約25のSiO
2/Al
2O
3モル比を有するZSM-11ゼオライトとを含む、上記実施例B5の触媒組成物を試験した。WHSV及び結果を下の表Vに示す。
【表7】
【0060】
表C-C1及び表Vのデータから、実施例B5の発明的触媒組成物を実施例B-C1の比較用触媒組成物と比べたときの以下の利点が観察できる:(i)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B5の発明的触媒組成物は、はるかに低いキシレン損失を生じた;(ii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B5の発明的触媒組成物は、はるかに低いA9+収率を生じた;(iii)2.5及び5h-1の両方のWHSVにおいて、実施例B5の発明的触媒組成物は、はるかに低いトルエン収率も生じた;(iv)≧5h-1の高WHSVにおいて、実施例B5の発明的触媒組成物は、生成物混合物流出液中のp-キシレン選択性がかなり高く、実施例B-C1の比較用触媒組成物よりもかなり高い異性化活性を示した。従って、実施例B5の発明的触媒組成物は、比較例B-C1のZSM-5ベースの触媒組成物よりもはるかに優れる。特に、実施例B5の発明的ZSM-11含有触媒組成物は、WHSV≧5h-1において実施例B-C1のZSM-5ベースの比較用触媒組成物よりもはるかに優れ、WHSV≧10、最大15h-1でもより優れており、これは主に、高WHSVにおいてp-キシレン選択性がはるかに高いことによる。
表I及び表Vのデータから、実施例B3及びB5の発明的触媒組成物は、LPIプロセス試験において非常に近い性能であったことがわかる。これは、約25のSiO2/Al2O3モル比を有する、同じ小結晶子のZSM-11ゼオライトは、HSAアルミナ又はLSAアルミナのいずれかに結合され、高活性、高性能の開示の触媒組成物を製造できることを示す。それでもなお、実施例B3の触媒組成物は、特に全てのWHSVにおけるキシレン選択性、2.5及び5h-1のWHSVにおけるベンゼン収率、及び2.5及び5h-1におけるA9+収率に関して、実施例B5の触媒組成物と比べて、わずかに高い性能を示し、これはおそらく実施例B3の触媒組成物に使用したアルミナ結合剤の表面積がより大きいためである。
【0061】
実施例C6:実施例B6の触媒組成物の存在下でのLPI
HSAアルミナ結合剤と、小サイズの結晶子及び約25のSiO
2/Al
2O
3モル比を有するZSM-11ゼオライトと、MCM-49ゼオライトとを含む上記実施例B6の触媒組成物を試験した。WHSV及び結果を下の表VIに示す。
【表8】
【0062】
表C-C1及び表VIのデータから、実施例B6の発明的触媒組成物を実施例B-C1の比較用触媒組成物と比べたときの以下の利点が観察できる:(i)2.5及び5h
-1の両方のWHSVにおいて、実施例B6の発明的触媒組成物は、はるかに低いキシレン損失を生じた;(ii)2.5及び5h
-1の両方のWHSVにおいて、実施例B6の発明的触媒組成物は、はるかに低いA9+収率を生じた;(iii)≧5h
-1の高WHSVにおいて、実施例B5の発明的触媒組成物は、生成物混合物流出液中のp-キシレン選択性がわずかに高く、実施例B-C1の比較用触媒組成物よりもわずかに高い異性化活性を示した。従って、実施例B5の発明的触媒組成物は、実施例B-C1のZSM-5ベースの比較用触媒組成物よりも優れる。
表I及び表VIのデータから、実施例B3の発明的触媒組成物は、キシレン損失、トルエン収率、A9+収率、ベンゼン収率、及びp-キシレン選択性、特に2.5及び5h
-1のWHSVにおけるA9+収率及び特に≧5h
-1、特に10及び15h
-1のWHSVにおけるp-キシレン選択性に関して、実施例B6の触媒組成物よりも優れることがわかる。ゼオライト混合物にMCM-49が50質量%で存在することで、実施例B3の触媒組成物と比べて、キシレン損失、トルエン収率、A9+収率、ベンゼン収率、及びp-キシレン選択性が低下し得るが、EB変換率は改善するように見える。
上記実施例におけるゼオライト及び触媒組成物の組成と、上記実施例の関係を、下の表VIIに示す。
表C-C1及びI~VIのデータの一部を更に、
図10、11、及び12のグラフにプロットしている。
図10は、全てのプロセス実施例C-C1及びC1~C6におけるp-キシレン選択性とWHSVの関係を示す。この図から、はっきりとわかるように、実施例C1(実施例B3の触媒組成物を使用)、C2(実施例B2の触媒組成物を使用)、C4(実施例B4の触媒組成物を使用)、C5(実施例B5の触媒組成物を使用)、及びC6(実施例B6の触媒組成物を使用)の発明的プロセスは、2.5~15h
-1の試験した全WHSV範囲において、実施例C-C1(ZSM-5ベースの触媒組成物を使用)の比較プロセスよりも一貫して高いp-キシレン選択性を示した。実施例C3(実施例B1の触媒組成物を使用)のプロセスのみが、≧5h
-1のWHSVにおいて、実施例C-C1の比較プロセスよりも低いp-キシレン選択性を示した。具体的には、実施例C1、C4、及びC5のプロセスは、2.5~15h
-1の全WHSV試験範囲において、非常に高いp-キシレン選択性を一貫して示した。これらの実施例で使用される触媒組成物、即ち、実施例B3、B4、及びB5の触媒組成物は、それぞれ、キシレン変換のための高スループット、高WHSVの液相異性化プロセスにおいて、非常に有利である。
図11は、全てのプロセス実施例C-C1及びC1~C6におけるA9+(即ち、C9+芳香族炭化水素)収率とWHSVとの関係を示す。C8芳香族異性化プロセスでは、副反応によるA9+の生成は非常に望ましくない。この図からはっきりわかるように、実施例C1~C6の発明的プロセスは全て、2.5~5.0h
-1の低WHSV範囲において、実施例C-C1の比較プロセスよりも一貫して低いA9+収率を示した。プロセスC1、C4、及びC5は、WHSVの試験範囲全体、特に≧10h
-1における高いp-キシレン選択性が
図10で顕著であり、
図11でも、2.5及び5.0h
-1の低いWHSVにおいて非常に低いA9+収率を顕著に示していることも注目すべきである。明らかに、上記の例示的プロセスで使用した実施例B3、B4、及びB5の触媒組成物は、≦5.0h
-1という比較的低いWHSVでも有利である。
図12は、全てのプロセス実施例C-C1及びC1~C6におけるキレン損失性とWHSVの関係を示す。副反応によるキシレン損失は、C8芳香族異性化プロセスにおいて非常に望ましくない。この図からはっきりわかるように、実施例C1~C6の発明的プロセスは全て、2.5~5.0h
-1の低WHSV範囲において、実施例C-C1の比較プロセスよりもかなり低いキシレン損失を示した。
図10及び11で顕著なプロセスC1、C4、及びC5は、
図12でも顕著であり、2.5及び5.0h
-1という低WHSVで非常に低いキシレン損失を示していることにも注目すべきである。明らかに、上記の例示的プロセスで使用した実施例B3、B4、及びB5の触媒組成物は、この追加の観点から、5.0h
-1の比較的低いWHSVでも有利である。
【0063】
【0064】
実施例C7:LPIプロセスにおける触媒エージングの評価
触媒エージングを評価するため、上記実施例B3に対応するZSM-11ゼオライトとアルミナ結合剤とから本質的になる発明的触媒組成物を、以下の点を除いて、上記実施例C1~C6と同じ手順で試験した:(i)より大きいダウンフロー管状反応器を使用し、約30~40gの触媒組成物をその中に充填した;(ii)異性化供給原料を、反応器の上部から供給した;(iii)異性化生成物混合物流出液を反応器の底から出した;及び(iv)WHSVを5h
-1で固定した。試験反応を、20日にわたって進行させた。比較のため、実施例B-C1に対応するZSM-5ゼオライトとアルミナ結合剤とから本質的になる比較用触媒組成物を、WHSVを4h
-1に固定したことを除き、同じ試験条件下で、同程度の期間にわたって評価した。両方の触媒の触媒失活速度を試験データから計算し、下の表VIIIに報告した。触媒失活は、p-キシレン選択性の変化(即ち、S(pX)1-S(pX)2、式中、S(pX)1は、初期のp-キシレン選択であり、S(pX)2は、流れ上の1カ月後の生成物混合物流出液における最終的なp-キシレン選択である)として計算した。従って、1カ月当たりの(S(pX)1-S(pX)2)が高いほど、1カ月でのp-キシレン選択性の低下が大きく、触媒失活がより速い。
【表10】
【0065】
表VIIIのデータは、本発明のアルミナ結合ZSM-11触媒組成物は、触媒失活速度に関して、比較用のZSM-5ベースの触媒組成物よりもはるかに優れた性能を示したことをはっきりと示す。同程度のWHSVにおいて、本発明の触媒組成物は、1カ月当たりのp-キシレン選択性低下が、比較用触媒組成物と比べて2桁近く低かった。これも、ZSM-11ゼオライト含有触媒組成物が、ZSM-5ベースの触媒組成物と比べて、特に液相性化において有利であることをはっきりと示す。
【0066】
本開示は更に、以下の非限定的実施形態を含み得る。
A1.複数の結晶子を含むMELフレームワーク型のゼオライト材料であって、結晶子の少なくとも75%は、透過電子顕微鏡画像解析によって決定したときに、最大でも200nm、好ましくは最大でも180nm、好ましくは最大でも160nm、好ましくは最大でも150nm、好ましくは最大でも140nm、好ましくは最大でも120nm、好ましくは最大でも100nm、好ましくは最大でも80nm、より好ましくは最大でも50nmの結晶子サイズを有する、ゼオライト材料。
A2.結晶子は、1~5、好ましくは1~3、より好ましくは1~2のアスペクト比を有する、A1に記載のゼオライト材料。
A3.シリカ対アルミナのモル比が、10~60、好ましくは15~50、より好ましくは20~30である、A1又はA2に記載のゼオライト材料。
A4.300~600m2/g、好ましくは400~500m2/g、より好ましくは400~475m2/gのBET全表面積を有する、A1~A3のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
A5.全表面積の少なくとも15%、好ましくは全表面積の少なくとも20%、より好ましくは全表面積の少なくとも25%のメソ細孔表面積を有する、A1~A4のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
A6.結晶子の少なくとも一部が凝集して複数の凝集を形成する、A1~A5のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
A7.(I)90~110mg/gのヘキサン吸着値;及び
(II)500~3000のα値
のうちの1つ以上を更に示す、A1~A6のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
A8.結晶子は、実質的に球の形状である、A1~A7のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
A9.結晶子は、実質的に棒状の形状である、1~A6のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
A10.合成したままの状態である、A1~A9のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
A11.焼成されている、A1~A9のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【0067】
B1.A1~A11のいずれか一項に記載のゼオライト材料の製造方法であって、
(I)ケイ素源と、アルミニウム源と、アルカリ金属(M)水酸化物と、テトラブチルアンモニウム(「TBA」)化合物からなる群から選択される構造指向剤(SDA)源と、水と、任意選択で種結晶と、から合成混合物を形成する工程であって、合成混合物は、全体組成が以下のモル比:
SiO2:Al2O3 15~70
OH-:Si 0.05~0.5
M+:Si 0.2~0.4
SDA:Si 0.01~0.1
H2O:Si ≦20
を有する工程と、
(II)100℃~150℃の範囲の温度で合成混合物を加熱して、固体材料を含む反応混合物を形成することを含む、合成混合物を結晶化条件に供する工程と、
(III)反応混合物からゼオライト材料を得る工程と、
を含む、方法。
B2.ケイ素源は、沈降シリカである、B1に記載の方法。
B3.アルミニウム源は、アルミン酸ナトリウム溶液及び/又は硫酸アルミニウム溶液である、B1又はB2に記載の方法。
B4.SDA源が、TBA水酸化物、TBA塩化物、TBAフッ化物、TBA臭化物、7~12個の炭素原子を有するアルキルジアミン、並びにこれらの混合物及び組合せからなる群から選択される、B1~B3のいずれか一項に記載の方法。
B5.工程(III)が、
(IIIa)反応混合物を濾過して固体材料を回収する工程、
(IIIb)固体材料を洗浄する工程、及び
(IIIc)洗浄した固体材料を乾燥する工程
を含む、B1~B4のいずれか一項に記載の方法。
B6.(IIId)工程(Ib)から得られた洗浄したい固体材料又は乾燥及び/若しくは焼成した固体材料に、アンモニウム塩を使用したイオン交換処理を施し、アルカリ金属カチオンM+を少なくとも部分的に除去して、イオン交換した固体材料を得る工程、及び
(IIIe)イオン交換した固体材料を、少なくとも500℃の温度で少なくとも1時間にわたって焼成する工程、
を更に含む、B5に記載の方法。
B7. (IV)工程(III)で得られたゼオライト材料を、結合剤、任意選択で第2のゼオライト材料、任意選択で水素化金属、及び任意選択で水と混合する工程、
(V)工程(IV)で得られた混合物を所望の形状に成形する工程、及び
(VI)工程(V)で得られた成形混合物を乾燥及び/又は焼成して、ゼオライト材料と結合剤とを含む触媒を得る工程
を更に含む、B1~B6のいずれか一項に記載方法。
B8.工程(V)は、混合物を押出することを含む、B7に記載の方法。
B9.工程(V)と(VI)との間に、
(Va)形成された混合物をアンモニウム塩でイオン交換する工程
を更に含む、B7又はB8に記載の方法。
【0068】
C1.A1~A11のいずれか一項に記載のゼオライト材料を含む触媒組成物。
C2.結合剤を実質的に含まない、C1に記載の触媒組成物。
C3.結合剤を更に含む、C1に記載の触媒組成物。
C4.結合剤が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、カオリン、その他の耐火性酸化物及び耐火性混合酸化物、並びにこれらの混合物及び組合せから選択される、C3に記載の触媒組成物。
C5.結合剤がアルミナ及び/又はシリカである、C4に記載の触媒組成物。
C6.円筒、中実球、三葉体、四葉体、及び卵殻形等のうちの1つ以上の形状を有する、C1~C5のいずれか一項に記載の触媒組成物。
C7.10員環又は12員環構造をその結晶子構造に有するゼオライトから選択される第2のゼオライトを更に含む、C1~C6のいずれか一項に記載の触媒組成物。
C8.0.5~15、好ましくは1~10の範囲の拘束指数を有する第2のゼオライトを更に含む、C1~C7のいずれか一項に記載の触媒組成物
C9.MFIフレームワーク型ゼオライトを更に含む、C1~C8のいずれか一項に記載の触媒組成物。
C10.MFIフレームワーク型ゼオライトは、ZSM-5である、C9に記載の触媒組成物。
C11.結合剤は、触媒組成物の全質量を基準にして0~90質量%、例えば20~80質量%、又は20~50質量の濃度を有する、C1~C10のいずれか一項に記載の触媒組成物。
C12.ゼオライト材料は、触媒組成物の全質量を基準にして10~100質量%、例えば20~80質量%、又は50~80質量%の濃度を有する、C1~C11のいずれか一項に記載の触媒組成物。
C13.C8芳香族炭化水素の異性化を触媒するための、C1~C12のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0069】
D1.C8芳香族炭化水素を含む供給原料を変換する方法であって、
(I)芳香族炭化水素供給原料を変換反応器に供給する工程と、
(II)少なくとも部分的に液相中のC8芳香族炭化水素を、変換反応器内で、変換条件下、MELフレームワーク型ゼオライトを含む変換触媒組成物と接触させて、C8芳香族炭化水素の少なくとも一部の異性化を起こし、変換生成物流出液を生成する工程と、
を含む、方法。
D2.ゼオライト変換触媒組成物は、MELフレームワーク型ゼオライトを、変換触媒組成物中に存在する全ゼオライトの全質量を基準にして、少なくとも50質量%の濃度で含む、D1に記載の方法。
D3.MELフレームワーク型ゼオライトは、少なくとも部分的に水素形態である、D1又はD2に記載の方法。
D4.変換触媒組成物は、B1~B9のいずれか一項に記載の触媒組成物である、D1~D3のいずれか一項に記載の方法。
D5.変換条件は、C8炭化水素を液相に維持するのに十分な絶対圧と、
最大でも300℃、好ましくは100~300℃、好ましくは150~300℃、例えば200~300℃、200~280℃、200~260℃、又は240~260℃の範囲の温度;及び
0.5~20h-1、好ましくは2~15h-1、より好ましくは2~10h-1、より好ましくは5~10h-1の範囲のWHSV
のうちの1つ以上と、
を含む、D1~D4のいずれか一項に記載の方法。
D6.分子水素を変換反応器に供給する工程を更に含む、D1~D6のいずれか一項に記載の方法。
D7.変換反応器に供給される水素の量は、芳香族炭化水素供給原料の質量を基準にして、4~250ppmの範囲である、D6に記載の方法。
D8.分子水素が少なくとも部分的に液相に溶解されており、好ましくは実質的に完全に溶解されている、D6又はD7に記載の方法。
D9.分子水素は、変換反応器に供給されない、D1~D5のいずれか一項に記載の方法。
D10.(i)供給原料は、供給原料の全質量を基準にして、最大でも1000ppmのC9+芳香族炭化水素を含む;
(ii)供給原料は、供給原料の全質量を基準にして、最大でも10000ppmのC7-芳香族炭化水素を含む;及び
(iii)供給原料は、供給原料中のC8炭化水素の全質量を基準にして、最大でも15質量%のp-キシレンを含む
のうちの少なくとも1つを満たす、D1~D9のいずれか一項に記載の方法。
D11.供給材料と比較した変換生成物流出液中のキシレンの質量減少のパーセンテージとして計算したキシレン損失が、少なくとも2.5h-1のWHSVにおいて、供給材料中のキシレンの全質量を基準にして、最大でも0.2%である、D1~D10のいずれか一項に記載の方法。
D12.方法は、少なくとも2.5h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも3000ppm、例えば最大でも1600ppm、又は最大でも1000ppmのC9+芳香族炭化水素収率を示す、D1~D11のいずれか一項に記載の方法。
D13.方法は、少なくとも5.0h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、最大でも1600ppm、又は最大でも1000ppmのC9+芳香族炭化水素収率を示す、D1~D12のいずれか一項に記載の方法。
D14.方法は、少なくとも10h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、最大でも1000ppmのC9+芳香族炭化水素収率を示す、D1~D13のいずれか一項に記載の方法。
D15.方法は、少なくとも2.5h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも1000ppm、例えば最大でも700ppm、又は最大でも500ppmのベンゼン収率を示す、D1~D14のいずれか一項に記載の方法。
D16.方法は、少なくとも5.0h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、最大でも700ppm、又は最大でも500ppmのベンゼン収率を示す、D1~D15のいずれか一項に記載の方法。
D17.方法は、少なくとも10h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、最大でも500ppmのベンゼン収率を示す、D1~D16のいずれか一項に記載の方法。
D18.方法は、少なくとも2.5h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、質量で最大でも800ppm、例えば最大でも500ppm、又は最大でも200ppmのトルエン収率を示す、D1~D17のいずれか一項に記載の方法。
D19.方法は、少なくとも5.0h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、最大でも200ppmのトルエン収率を示す、D1~D18のいずれか一項に記載の方法。
D20.方法は、少なくとも10h-1のWHSVを有し、方法は、変換生成物流出液の全質量を基準にして、最大でも200ppmのトルエン収率を示す、D1~D19のいずれか一項に記載の方法。
D21.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、2.5h-1のWHSVにおいて、少なくとも22%、好ましくは≧23%である、D1~D20のいずれか一項に記載の方法。
D22.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、5h-1のWHSVにおいて、少なくとも20%、好ましくは≧21%、好ましくは≧22%、好ましくは≧23%である、D21に記載の方法。
D23.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、10h-1のWHSVにおいて、少なくとも20%、好ましくは≧21%、好ましくは≧22%、好ましくは≧23%である、D22に記載の方法。
D24.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、15h-1のWHSVにおいて、少なくとも20%、好ましくは≧21%である、D23に記載の方法。
D25.供給原料が、供給原料の全質量を基準にして1~15質量%の範囲のエチルベンゼンを含む、D1~D20のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
E1.C8芳香族炭化水素を含む供給原料を変換する方法であって、
(I)芳香族炭化水素供給原料を変換反応器に供給する工程と、
(II)実質的に液相中のC8芳香族炭化水素を、変換反応器内で、変換条件下、B1~B9のいずれかの触媒組成物と接触させて、C8芳香族炭化水素の少なくとも一部の異性化を起こし、変換生成物流出液を生成する工程であって、変換条件は、C8炭化水素を液相に維持するのに十分な絶対圧と、150~300℃の範囲の温度と、2.5~15の範囲のWHSVとを含む、工程と、を含む
方法。
E2.分子水素を、供給原料の全質量を基準にして4~250wppmの量で変換反応器に供給する工程を更に含み、水素は液相に実質的に溶解されている、E1に記載の方法。
E3.分子水素は、変換反応器に供給されない、E1又はE2に記載の方法。
E4.(i)供給原料は、供給原料の全質量を基準にして最大でも1000ppmのC9+芳香族炭化水素を含む;
(ii)供給原料は、供給原料の全質量を基準にして最大でも5000ppmのC7-芳香族炭化水素を含む;及び
(iii)供給原料は、供給原料中のC8炭化水素の全質量を基準にして最大でも15質量%のp-キシレンを含む、
のうちの少なくとも1つを満たす、E1~E3のいずれか一項に記載の方法。
E5.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして2質量%以下の濃度で含み、方法は、供給材料と比較した変換生成物流出液中のキシレンの質量減少のパーセンテージとして計算したキシレン損失が、少なくとも2.5h-1のWHSVにおいて、供給材料中のキシレンの全質量を基準にして、最大でも0.5%である、E1~E4のいずれか一項に記載の方法。
E6.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、2.5h-1のWHSVにおいて、少なくとも22%、好ましくは≧23%である、E1~E5のいずれか一項に記載の方法。
E7.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、5h-1のWHSVにおいて、少なくとも20%、好ましくは≧21%、好ましくは≧22%、好ましくは≧23%である、E6に記載の方法。
E8.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、10h-1のWHSVにおいて、少なくとも20%、好ましくは≧21%、好ましくは≧22%、好ましくは≧23%である、E7に記載の方法。
E9.芳香族炭化水素供給原料は、p-キシレンを、芳香族炭化水素供給原料中のキシレンの全質量を基準にして、≦15質量%(好ましくは≦10質量%、好ましくは≦8質量%、好ましくは≦6質量%、好ましくは≦5質量%、好ましくは≦3質量%、好ましくは≦2質量%)の濃度で含み、方法は、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレンの生成物のうちのp-キシレン選択性が、15h-1のWHSVにおいて、少なくとも20%、好ましくは≧21%、好ましくは≧22%、好ましくは≧23%である、E8に記載の方法。