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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】バイポーラ型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/569 20210101AFI20230414BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20230414BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230414BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20230414BHJP
【FI】
H01M50/569
H01M50/50 201Z
H01M50/209
H01M50/284
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022030955
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-197015(JP,A)
【文献】特開2008-160060(JP,A)
【文献】特開2020-061221(JP,A)
【文献】特開2021-111522(JP,A)
【文献】特開2021-163600(JP,A)
【文献】特開2012-054391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/569
H01M 50/50
H01M 50/209
H01M 50/284
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に集電体が配置された単電池を異なる極性の前記集電体が接触するように積層したバイポーラ型電池であって、
絶縁性を有するとともに可撓性を有するプリント基板で形成された接続子を有し、
前記接続子は、
本体部と、
前記本体部から突出するとともに互いに離れて櫛歯状に配列される複数の櫛歯部と、
各前記櫛歯部の先端に設けられて導電性を有するとともに前記櫛歯部の厚み方向の少なくとも片面に露出した複数の接触部と、
前記櫛歯部及び前記本体部に配置され、前記接触部と前記本体部の端部の複数の端子部とを個別電気的に接続するパターン配線と、を有し、
複数の前記接触部が前記集電体の外縁部から一定の長さ以上内側の部分と接触し、
複数の前記接触部のうち、一部は積層方向の両端に配置された前記集電体のそれぞれに接触し、残りは積層方向に隣り合う前記集電体にそれぞれ挟まれ、各前記接触部が前記集電体と電気的に接続され、
前記櫛歯部は、配列方向の一方側に向かって順に長く形成されているバイポーラ型電池。
【請求項2】
前記接触部は、前記櫛歯部に形成された導体の箔を有する請求項1に記載のバイポーラ型電池。
【請求項3】
前記接続子を複数個備え、
複数の前記接続子の前記櫛歯部は、それぞれ異なる位置で、異なる単電池の間に配置される請求項1又は請求項2に記載のバイポーラ型電池。
【請求項4】
前記本体部は、前記櫛歯部と反対側に延びる引出部を有し、
前記櫛歯部の配列方向において、前記引出部から遠くに配置された前記櫛歯部に配線された前記パターン配線は、近くに配置された前記櫛歯部に配線された前記パターン配線よりも幅が広い請求項1から請求項のいずれかに記載のバイポーラ型電池。
【請求項5】
前記接続子は、片面基板である請求項1から請求項のいずれかに記載のバイポーラ型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
単電池を直列に接続した積層型電池が広く採用されている。積層型電池において、単電池の電圧が一定の範囲を超えてばらつくと、電圧が高い単電池に負荷が集中して劣化する。そして、劣化した単電池の電圧は劣化によってさらに上昇し、劣化した単電池に負荷がさらに集中する。これにより、劣化した単電池の劣化が進行する。結果として積層型電池の寿命が短くなる。
【0003】
積層型電池における単電池の電圧のばらつきを測定する構成について、特許文献1等に開示されている。
【0004】
特許文献1には、イオン伝導層を挟み込む正極活物質層および負極活物質層と、対向する集電箔と、対向する集電箔同士を電気的に絶縁する絶縁シール材とからなる単電池を、積層した積層型蓄電デバイスにおいて、櫛歯形状のFPCを有し、積層される単電池の集電箔とシール材の間に各歯が挟まれて熱接着される積層型蓄電デバイスが開示されている。
【0005】
この積層型蓄電デバイスでは、集電箔の上部に正極活物質層、イオン電導層、負極活物質層及びシール材を配置した後、その上部に集電箔を配置することで積層している。そして、シール材の上部に集電箔を配置するときに、シール材の上部にFPCの歯を配置して積層することで、FPCを積層型蓄電デバイスに組み込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-160060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の積層型蓄電デバイスでは、単電池を単体で取り扱うことができないため、積層する前に予め単電池の電圧のばらつきを測定することができず、製造前に不具合を取り除くことができない。そのため、積層型蓄電デバイスの歩留まりが低下する虞がある。
【0008】
そこで本発明、積層された複数の単電池のそれぞれの電圧を測定でき、製造が容易であり、かつ、歩留まりが高いバイポーラ型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示的なバイポーラ型電池は、両面に集電体が配置された単電池を異なる極性の上記集電体が接触するように積層される。上記バイポーラ型電池は、絶縁性を有するとともに可撓性を有するプリント基板で形成された接続子を有する。上記接続子は、本体部と、上記本体部から突出するとともに互いに離れて櫛歯状に配列される複数の櫛歯部と、各上記櫛歯部の先端に設けられて導電性を有するとともに上記櫛歯部の厚み方向の両面から外部に露出した複数の接触部と、前記櫛歯部及び前記本体部に配置され、前記接触部と前記本体部の端部の複数の端子部とを個別に且つ電気的に接続するパターン配線と、を有する。複数の上記接触部のうち、一部は上記積層方向の両端に配置された上記集電体のそれぞれに接触し、残りは積層方向に隣り合う上記集電体にそれぞれ挟まれ、各上記接触部が上記集電体と電気的に接続される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の例示的なバイポーラ型電池によれば、容易に製造できるとともに高い歩留まりとすることができる。そして、積層された複数の単電池のそれぞれの電圧を測定でき、バイポーラ型電池の部分的な劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかるバイポーラ型電池の一例を模式的に示す一部切欠き斜視図である。
図2】バイポーラ型電池の一例の外装体の一部を切欠いた側面図である。
図3】バイポーラ型電池に含まれる単電池の一例を模式的に示す一部切欠き斜視図である。
図4】単電池の分解斜視図である。
図5】接続子の平面図である。
図6】第1変形例のバイポーラ型電池に用いられる接続子の一例を模式的に示す平面図である。
図7】第1変形例のバイポーラ型電池の一例を模式的に示す一部切欠き斜視図である。
図8】第2変形例のバイポーラ型電池に用いられる接続子の一例を模式的に示す平面図である。
図9】第3変形例のバイポーラ型電池の一例を模式的に示す一部切欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明にかかるバイポーラ型電池10の一例を模式的に示す一部切欠き斜視図である。図2は、バイポーラ型電池10の一例の外装体11の一部を切欠いた側面図である。なお、本明細書の説明において、単電池20は上下方向に積層されるものとする。つまり、単電池20の厚み方向も上下方向である。上述の上下方向は、説明の便宜上設定するものであり、実際の使用状態における上下と異なる場合もある。
【0013】
<バイポーラ型電池10>
図1に示すように、バイポーラ型電池10は、両面に集電体24、26が配置された単電池20を異なる極性の集電体24、26が接触するように積層している。なお、バイポーラ型電池10は、複数の単電池20を直列接続となるように積層した組電池30を有する。ここで、バイポーラ型電池とは、厚み方向の一方の面に正極が配置され、他方に負極が配置された構成を有する電池である。厳密には、厚み方向の端面の一方が正極、他方が負極になっている単電池20もバイポーラ型電池である。そこで、本書では、単電池20を積層して形成された組電池30を有するバッテリーユニットをバイポーラ型電池10とし、単電池20をバイポーラ型単電池として区別する場合がある。
【0014】
バイポーラ型電池10は、外装体11と、組電池30と、正極導電シート12と、負極導電シート13と、接続子40と、を有する。組電池30は、外装体11の内部に収容される。
【0015】
図1に示すように、組電池30では、11個の単電池20が、直列接続となるように積層されている。組電池30の電圧は、単電池20の積層数によって決定される。換言すると、バイポーラ型電池10に要求される出力電圧に基づいて、積層される単電池20の数が決定される。なお、単電池20及び組電池30の詳細については、後述する。
【0016】
バイポーラ型電池10において、組電池30の最下部に積層された単電池20の下面には、正極導電シート12が接触して配置される。また、組電池30の最上部に積層された単電池20の上面には、負極導電シート13が接触して配置される。正極導電シート12及び負極導電シート13は、放充電時の電極端子である。
【0017】
正極導電シート12及び負極導電シート13としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等の材料を適宜選択して用いることができる。また、正極導電シート12及び負極導電シート13としては、これらに限定されず、導電性を有する材料を広く採用することができる。なお、正極導電シート12及び負極導電シート13は、同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。
【0018】
図1に示すように、外装体11は、ベース部111と、カバー部112とを有する。ベース部111は、略長方形の板状である。カバー部112は、上部に蓋状部分を有するとともに下部が開口した箱状である。カバー部112の蓋状部分の凹部に組電池30等のバイポーラ型電池10を構成する部材が収容された後、カバー部112の下面の開口をベース部111が覆う。このとき、カバー部112とベース部111とが、密着される。これにより、外装体11の内部には、水、埃、塵等の異物の混入が抑制され、これらの異物によるバイポーラ型電池10の不具合が抑制される。
【0019】
外装体11において、カバー部112の下端部が、ベース部111の外縁部と接触するように配置される。そして、カバー部112とベース部111の少なくとも1辺は、上下方向に加熱加圧することで接着(以下、熱溶着と称する)される熱接着部113である。
【0020】
正極導電シート12及び負極導電シート13は、バイポーラ型電池10の電極端子として用いられる。そのため、正極導電シート12の一部は外装体11から引き出されて、正極引出端子121が形成される。負極導電シート13の一部は外装体11から引き出されて、負極引出端子131が形成される。
【0021】
さらに説明すると、正極導電シート12の正極引出端子121は、外装体11のベース部111とカバー部112との熱溶着される辺より外部に引き出される。負極導電シート13の負極引出端子131は、組電池30の上面から組電池30の側面に沿って配置された後、外装体のベース部111とカバー部112との熱溶着される辺より外部に引き出される。
【0022】
正極引出端子121及び負極引出端子131は、ベース部111とカバー部112とともに熱溶着される。熱溶着時に、隙間が形成されにくくするために正極引出端子121及び負極引出端子131は、なるべく薄く形成されていることが好ましい。なお、組電池30には、後述する接続子40が取り付けられている。
【0023】
外装体11の熱溶着される辺以外の辺は、例えば、圧入によって密着されるようにしてもよい。また、熱溶着される辺と同様に熱溶着によって固定されてもよい。ベース部111とカバー部112との固定方法は、水、埃、塵等の異物が混入しないように密着させて固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0024】
<単電池20>
以下に、単電池20について図面を参照して説明する。図3は、単電池20の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。また、図4は、単電池20の分解斜視図である。図3に示すように、単電池20は、平面視において略長方形の平板状であり、厚み方向の上面が負極、下面が正極である。
【0025】
図3図4に示すように、単電池20は、正極21と、負極22と、セパレータ23と、を有する。正極21と負極22とがセパレータ23を介して積層される。つまり、単電池20は、下から、正極21、セパレータ23、負極22の順に積層して形成される。正極21と負極22とを積層することで、単電池20が形成される。なお、本実施形態において、単電池20は、リチウムイオン電池とする。正極21、負極22及びセパレータ23は、例えば、公知のリチウムイオン電池に用いられる構成と同様の構成を有する。
【0026】
図3図4に示すように、正極21は、正極集電体24と、正極活物質層25と、を有する。正極集電体24は、導電性を有する樹脂であり、単電池20の厚み方向から見て略長方形状である。また、正極活物質層25は、正極集電体24の表面(ここでは、上面)に積層される。正極活物質層25は、正極活物質と、導電助剤と、被覆用樹脂と、を含む。正極活物質、導電助剤及び被覆用樹脂には、例えば、公知のリチウムイオン電池に用いられる物質が使用される。
【0027】
また、負極22は、負極集電体26と、負極活物質層27とを有する。負極集電体26は、導電性を有する樹脂であり、単電池20の厚み方向から見て略長方形状である。なお、正極集電体24と負極集電体26とは、同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。なお、正極集電体24及び負極集電体26の少なくとも一方に替えて、金属等によって形成される集電体を利用してもよい。
【0028】
負極活物質層27は、負極集電体26の表面(ここでは、下面)に積層される。負極活物質層27は、負極活物質と、導電助剤と、被覆用樹脂と、を含む。負極活物質、導電助剤及び被覆用樹脂には、例えば、公知のリチウムイオン電池に用いられる物質が使用される。
【0029】
また、正極活物質層25及び負極活物質層27には電解液が含まれる。電解液としては、例えば、公知のリチウムイオン電池に用いられる電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用している。
【0030】
正極21、負極22及びセパレータ23は、環状の枠部材28に取付られる。さらに説明すると、正極活物質層25が枠部材28の内部に配置されて、正極集電体24の周縁部が枠部材28の下面に固定される。また、負極活物質層27が枠部材28の内部に配置されて、負極集電体26の周縁部が枠部材28の上面に固定される。そして、セパレータ23は、正極活物質層25及び負極活物質層27を分離するように配置されて、枠部材28に固定される。つまり、単電池20において、正極活物質層25、セパレータ23及び負極活物質層27は、正極集電体24、負極集電体26及び枠部材28にて封止される。
【0031】
正極集電体24とセパレータ23との間の間隔、及び、負極集電体26とセパレータ23との間の間隔は単電池20の容量に応じて調整される。つまり、正極集電体24、負極集電体26及びセパレータ23の位置は、単電池20が予め決められた容量を有するように定められる。
【0032】
単電池20において、枠部材28は、正極集電体24とセパレータ23との間隔、負極集電体26とセパレータ23との間隔を適切に維持するために用いられる。
【0033】
正極集電体24及び負極集電体26は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体である。樹脂集電体の形状は、特に限定されず、導電性高分子材料からなるシート状の集電体、及び、導電性高分子材料で構成された微粒子からなる堆積層等であってもよい。
【0034】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては、例えば、導電性高分子、樹脂に必要に応じて導電剤を添加したもの等を挙げることができる。また、導電性高分子材料を構成する導電剤としては、正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを採用することができる。
【0035】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0036】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0037】
単電池20は、以上示した構成を有する。なお、本実施形態の単電池20は、厚み方向から見て略長方形状であるが、これに限定されない。例えば、正方形状であってもよい。さらには、円形、楕円形、多角形状(三角形状、四角形状等)であってもよい。単電池20の平面視の形状は、特に限定されないが、後述の組電池30の運搬及び設置等の汎用性を考慮して、略正方形状又は略長方形状であることが好ましい。
【0038】
<組電池30>
次に、複数の単電池20を直列接続になるように積層した組電池30の詳細について、図面を参照して説明する。図5は、接続子40の平面図である。図1図2に示すように、組電池30は、複数個の単電池20と、接続子40と、を有する。複数個の単電池20は、厚み方向に重ねて積層されている。
【0039】
さらに詳しく説明すると、複数の単電池20は、上側の単電池20の下面の正極集電体24と、下側の単電池20の上面の負極集電体26とが、電気的に接続するように積層される。これにより、単電池20は、直列に接続される。つまり、組電池30の出力電圧は、単電池20を直列に接続した電圧となる。
【0040】
接続子40は、単電池20の電圧を測定する。図5に示すように、接続子40は、本体部41と、複数の櫛歯部42と、複数の接触部43と、パターン配線44と、を有する。
【0041】
本体部41は、引出部411と、分岐部412と、複数の端子部413と、を有する。引出部411は、平面視において略長方形状である。本体部41の長手方向の一端には、不図示の電圧測定装置に接続される複数の端子部413が設けられる。各端子部413は、同じ形状を有する。各端子部413は、導電性を有し、少なくとも一部が本体部41の外部に露出している。複数の端子部413は、それぞれ、他の端子部413に対して電気的に絶縁されている。詳細は後述するが、複数の端子部413の個数は、「単電池20の積層数+1」である。本実施形態の接続子40において、「単電池20の積層数+1」は12である。
【0042】
引出部411の長手方向の他端には、分岐部412が一体的に接続される。分岐部412は、引出部411と交差する方向に延びる長尺状である。本実施形態にかかる接続子40において、分岐部412は、長方形状であり、長手方向が引出部411の長手方向と直交する。また、引出部411は、分岐部412の長手方向の中心に接続する。換言すると
分岐部412の長辺の一方の中間部に引出部411が接続される。
【0043】
複数の櫛歯部42は、本体部41から突出するとともに互いに離れて櫛歯状に配列される。詳しくは、複数の櫛歯部42は、分岐部412の長辺の他方に一体的に接続され、分岐部412から外側に延びる。複数の櫛歯部42は、互いに独立している。複数の櫛歯部42の個数は、端子部413と同じ、すなわち、「単電池20の積層数+1」である。
【0044】
複数の接触部43は、各櫛歯部42の先端に設けられて導電性を有するとともに前記櫛歯部42の厚み方向の少なくとも片面に露出している。換言すると、接触部43は、櫛歯部42に形成された導体の箔である。複数の接触部43の個数は、櫛歯部42の個数と同じ、すなわち、「単電池20の積層数+1」である。接触部43は、導電性を有する材料で形成されている。
【0045】
接触部43としては、櫛歯部42に設けられたスルーホールと、櫛歯部42の両面に形成されてスルーホールと電気的に接続するランドと、を有する構成であってもよい。このとき、パターン配線44がスルーホールと接触してもよい。また、接続子40が片面基板である場合、パターン配線44の一部にランドが含まれるようにしてもよい。
【0046】
接続子40において、本体部41と、櫛歯部42とは、一体的に形成される。接続子40の本体部41及び櫛歯部42は、ポリイミド等の可撓性を有するとともに絶縁性を有する樹脂で形成される。可撓性を有するとともに絶縁性を有する材料であれば、ポリイミドに限定されない。
【0047】
パターン配線44は、櫛歯部42及び本体部41に配置された導体である。複数の接触部のそれぞれと本体部41の端部に設けられた複数の端子部413とを電気的に接続する。パターン配線44は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金等の導電性材料で形成された導電性の箔である。パターン配線44によって、接触部43と、端子部413とが、一対一で電気的に接続される。
【0048】
接続子40は、絶縁性を有するとともに可撓性を有するプリント基板で形成される。接続子40は、片面基板であってもよい。なお、接続子40は、本体部41及び櫛歯部42がポリイミドで形成され、パターン配線44が金属箔で形成されている。すなわち、接続子40は、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuit)である。しかしながら、接続子40は、この構成に限定されず、エポキシ樹脂、セラミック等を用いたリジット基板と、フレキシブル基板とを組み合わせた基板を用いてもよい。例えば、本体部41をリジッド基板とし、櫛歯部42をフレキシブル基板として、櫛歯部42が可撓性を有する構成としてもよい。
【0049】
接続子40は、パターン配線44が片面に形成されている。接続子40が片面にパターン配線44が形成される構成とすることで、接続子40を薄く形成することができるため、可撓性が高くなり、接続子40の取り付けが容易である。また、外装体11を封止する熱溶着時に隙間ができにくく、しっかり密閉することが可能である。
【0050】
パターン配線44は、幅は0.3mm以下であることが好ましい。また、引出部411において、パターン配線44の間の間隔は0.3mm以下であることが好ましい。このように構成することで、引出部411が平滑になりやすい。引出部411の一部は、外装体11の外側に配置されるため、外装体11を熱溶着するときに、隙間ができにくい。また、パターン配線44は、0.05mm以上であることが好ましい。このようにすることで、パターン配線44の断線が抑制される。
【0051】
なお、接触部43としては、パターン配線44と同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料であってもよい。例えば、パターン配線44が銅で形成されている場合、接触部43は、銅で形成されてもよい。また、接触部43としては、銅の表面に金メッキを施した構成であってもよい。
【0052】
接続子40は、以上示した構成を有する。次に、接続子40の組電池30への取り付けについて図面を参照して説明する。図1図2等に示すように、組電池30は、11個の単電池20を厚み方向に積層して形成している。なお、図1では、接続子40の本体部41が組電池30から突出しているが、実際のバイポーラ型電池10において、外装体11内に収容されるときに、組電池30に沿って配置されるように折り曲げられる。この場合でも、接続子40をFPCで形成することで、パターン配線44を断線することなく、組電池30に沿って折り曲げられる。特に、パターン配線44を片面に配したFPCを用いることで、折り曲げが容易かつパターン配線44の断線を抑制できる。
【0053】
図1図2に示すように、組電池30の全ての単電池20において、下面が正極21であり上面が負極22である。そして、組電池30には、接続子40が取り付けられている。上述のとおり、櫛歯部42及び接触部43の個数は、それぞれ、単電池20の個数+1、すなわち、12個である。
【0054】
組電池30の説明において、各単電池20及び接続子40の櫛歯部42を区別して説明する場合がある。この場合において、11個の単電池20を、第1単電池20_01~第11単電池20_11とする。そして、最も下の単電池が第1単電池20_01であり、最も上の単電池が第11単電池20_11である。また、12個の櫛歯部42を、第1櫛歯部42_01~第12櫛歯部42_12とする。そして、第1櫛歯部42_01~第12櫛歯部42_12は、順に並んでいる。
【0055】
組電池30では、上側の単電池20の下面に配置された正極集電体24と、下側の単電池20の上面に配置された負極集電体26と、が接触して配置されている。接触して配置される正極集電体24と負極集電体26とは、電気的に接続される、すなわち、互いに導通状態となっている。
【0056】
そして、複数の接触部43のうち、一部は積層方向の両端に配置された集電体24、26のそれぞれに接触し、残りは積層方向に隣り合う集電体24、26にそれぞれ挟まれる。そして、各接触部43は各集電体24、26と電気的に接続される。この構成について、以下に詳細に説明する。
【0057】
接続子40の櫛歯部42に配置された接触部43は、上下に並んで配置された単電池20の間に配置される。櫛歯部42に配置された接触部43は、厚み方向の両面に導電部分が露出している。そのため、接触部43は、正極集電体24及び負極集電体26の両方と電気的に接続される。さらに説明すると、接触部43は集電体24、26の外縁部から一定の長さ以上内側の部分と接触している。このように構成することで、単電池20の外縁部のうねりを避けた部分で、接触部43が、正極集電体24及び負極集電体26と接触する。そのため、接触部43と正極集電体24及び負極集電体26とが安定して電気的に接続される。
【0058】
図1図2に示すように、第1櫛歯部42_01は、第1単電池20_01の下面の正極集電体24と接触して配置される。これにより、第1櫛歯部42_01に配置される接触部43は、第1単電池20_01の正極集電体24と電気的に接続される。なお、第1櫛歯部42_01は、第1単電池20_01の正極集電体24に導電性を有する接着剤、接着テープを用いて固定してもよい。また、ねじ等を用いた固定具を用いて固定されてもよい。第1櫛歯部42_01と第1単電池20_01の正極集電体24とが電気的に確実に接続できる固定方法を広く採用することができる。
【0059】
そして、第2櫛歯部42_02は、第1単電池20_01の上面の負極集電体26と第2単電池20_02の下面の正極集電体24に挟まれて配置される。同様に、第3櫛歯部42_03~第11櫛歯部42_11は、それぞれ、上下に並んで配置された単電池によって挟まれて配置される。単電池20に挟まれる櫛歯部42は、組電池30を積層するときの単電池20同士の圧着力で固定するようにしてもよい。また、導電性を有する接着剤、接着テープ等を用いてもよい。
【0060】
このように、組電池30の単電池20で挟んで、櫛歯部42を配置することで、単電池20それぞれの電圧を取得することができる。組電池30は、接続子40が取り付けられた状態で、外装体11の内部に配置される。このとき、接続子40の本体部41の引出部411が、正極引出端子121及び負極引出端子131とともに外装体11の熱溶着される辺から外部に引き出される。そして、引出部411は、正極引出端子121及び負極引出端子131と並んで配置され、外装体11のベース部111とカバー部112とともに溶着される。隙間の発生を抑制するため、引出部411も薄く形成されていることが好ましい。
【0061】
上述のとおり、接続子40の引出部411に配置された端子部413は、不図示の電圧測定装置に接続されている。電圧測定装置によって、第1櫛歯部42_01~第12櫛歯部42_12それぞれに配置されている接触部43の電圧が取得される。そして、隣り合う櫛歯部42の電圧差が、単電池20の電圧となる。例えば、第4櫛歯部42_04の接触部43の電圧と、第5櫛歯部42_05の接触部43の電圧との差が、第4単電池20_04の電圧として算出される。
【0062】
このように、本実施形態のバイポーラ型電池10では、充電時及び放電時に、各単電池20の電圧を確認することができる。このような構成を有することで、単電池20の部分的な短絡、抵抗値の上昇等の不具合の早期発見が可能であり、不具合のある組電池30に対して、素早い対応が可能になる。すなわち、バイポーラ型電池10の充放電制御を効率よく行うことができる。
【0063】
なお、接触部43の形状は、2mm×5mm矩形以上の面積を有することが好ましい。或いは、接触部43の各辺が単電池20の最も短い辺の長さの1/200以上の矩形状以上の面積を有することが好ましい。このようにすることで、単電池20の正極集電体24又は負極集電体26の表面がうねっている場合でも、接触部43を確実に接触させることができる。
【0064】
<第1変形例>
図6は、第1変形例のバイポーラ型電池に用いられる接続子40aの一例を模式的に示す平面図である。図7は、第2変形例のバイポーラ型電池10aの一例を模式的に示す一部切欠き斜視図である。図6に示す接続子40aは、櫛歯部42の長さがそれぞれ異なる構成となっている点で、図5に示す接続子40と異なる。接続子40aのこれ以外の点は、接続子40と同じであり、実質上同じ部分には同じ符号を付すととともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0065】
櫛歯部42は、配列方向の一方側に向かって順に長く形成されている。さらに詳しく説明すると、図6に示すように、接続子40aは、12個の櫛歯部42を有する。そして、12個の櫛歯部42を上述と同様、第1櫛歯部42_01~第12櫛歯部42_12とすると、第1櫛歯部42_01が最も短く、徐々に長くなっている。そして、第12櫛歯部42_12が最も長い。
【0066】
図7に示すように、各櫛歯部42は、それぞれ、厚み方向に重ねられた単電池20に挟まれる。そのため、櫛歯部42が取り付けられる位置は、それぞれ異なる。接続子40aにおいて、櫛歯部42の長さは、接触部43が配置される高さによって決められる。さらに詳しく説明すると、分岐部412がベース部111に接触した状態を維持しつつ、櫛歯部42のみ上方に配線されるように長さが決められている。
【0067】
分岐部412の全体がベース部111を配置するための空間を減らして外装体11を小さくすることができ、結果として、バイポーラ型電池10aを小型化することができる。また、接続子40aをこのように構成することで、櫛歯部42の配線時の本体部41のベース部111に対するねじれを抑制できる。その結果、外装体11の熱溶着時に、外装体11と接続子40aとの間に隙間ができにくく、バイポーラ型電池10aの内部への水、埃、塵等の異物の混入が抑制される。
【0068】
<第2変形例>
図8は、第2変形例のバイポーラ型電池に用いられる接続子40bの一例を模式的に示す平面図である。図8に示す接続子40bは、櫛歯部42bの幅及び櫛歯部42bに配置されているパターン配線44bがそれぞれ異なる構成となっている点で、図5に示す接続子40と異なる。接続子40bのこれ以外の点は、接続子40と同じであり、実質上同じ部分には同じ符号を付すととともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0069】
図8に示すように、櫛歯部42bは、分岐部412の長手方向に並んでいる。そして、分岐部412の長手方向の中間部の櫛歯部42bと反対側に引出部411が配置される。すなわち、本体部41は、櫛歯部42と反対側に延びる引出部411を有する。そして、櫛歯部42bは、分岐部412の長手方向において、引出部411と接続する部分から離れるにしたがって、幅が広くなるように形成されている。櫛歯部42の配列方向において、引出部411から遠くに配置された櫛歯部42に配線されたパターン配線44bは、近くに配置された櫛歯部42に配線されたパターン配線44bよりも幅が広い。
【0070】
すなわち、接続子40bにおいて、分岐部412及び櫛歯部42bに配置されるパターン配線44bは、引出部411との接続部分から遠い櫛歯部42bにつながるものほど、幅広になっている。このように構成することで、長さの差に基づいたパターン配線44bの抵抗差を抑えることができる。これにより、積層されている単電池20の電圧をより正確に測定することができる。
【0071】
<第3変形例>
図9は、第3変形例のバイポーラ型電池10cの一例を模式的に示す一部切欠き斜視図である。図9に示すバイポーラ型電池10cでは、4個の接続子40cが用いられている。これ以外の点について、バイポーラ型電池10cは、図1に示すバイポーラ型電池10と同じであり、実質上同じ部分には同じ符号を付すととともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0072】
図9に示すように、バイポーラ型電池10cは、接続子40cを複数個有する。なお、バイポーラ型電池10cは、4個の接続子40cを有する。接続子40cは、いずれも、3個の櫛歯部42を有する。各接続子40cの櫛歯部42は、それぞれ異なる位置で、異なる単電池の間に配置される。
【0073】
そして、接続子40cは、4個の単電池20毎に1個ずつ設けられている。そして、接続子40cの本体部41には、端子部413が設けられており、各接続子40cの端子部413は、不図示の電圧測定装置に接続されている。各接続子40cの3個の櫛歯部42は、それぞれ隣り合う正極集電体24と負極集電体26とに挟まれて配置される。また、組電池30の下端の正極集電体24及び上端の負極集電体26にも接続されている。
【0074】
接続子40cは、接続子40に比べて分岐部412の長さが短い。そのため、接続子40cがねじれにくく、接続子40cを組電池30に沿って曲げるときに、無理な力が作用しにくい。そのため、断線等が発生しにくく、単電池20の電圧を安定して測定することができる。
【0075】
なお、バイポーラ型電池10、10a、10cは、組電池30をカバー部112のみで覆う構成であってもよい。換言すると、バイポーラ型電池10、10a、10cにおいて、外装体11は、ベース部111を省略した構成であってもよい。
【0076】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明にかかるバイポーラ型電池は、例えば、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池として有用である。
【符号の説明】
【0078】
10、10a バイポーラ型電池
11 外装体
111 ベース部
112 カバー部
12 正極導電シート
121 正極引出端子
13 負極導電シート
131 負極引出端子
20 単電池
21 正極
22 負極
23 セパレータ
24 正極集電体
25 正極活物質層
26 負極集電体
27 負極活物質層
28 枠部材
30 組電池
40、40a、40b 接続子
41 本体部
411 引出部
412 分岐部
413 端子部
42、42b 櫛歯部
43 接触部
44、44b パターン配線
【要約】
【課題】積層された複数の単電池のそれぞれの電圧を測定でき、容易に製造できるとともに歩留まり高いバイポーラ型電池を提供する。
【解決手段】バイポーラ型電池は、絶縁性を有するとともに可撓性を有するプリント基板で形成された接続子を有する。前記接続子は、本体部と、櫛歯状に配列される複数の櫛歯部と、各前記櫛歯部の先端に設けられて厚み方向の両面から外部に露出した複数の接触部と、前記接触部と本体部の端部の端子部とを電気的に接続するパターン配線と、を有する。複数の前記接触部のうち、一部は積層方向の両端に配置された前記集電体に接触し、残りは積層方向に隣り合う前記集電体にそれぞれ挟まれ、各前記接触部が前記集電体と電気的に接続される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9