(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】車両用シート及びカバー部材
(51)【国際特許分類】
B60N 2/897 20180101AFI20230414BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20230414BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230414BHJP
【FI】
B60N2/897
A47C7/38
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2022031839
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2018564605の分割
【原出願日】2018-01-24
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017011383
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博郁
(72)【発明者】
【氏名】大川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山内 章司
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-087134(JP,A)
【文献】特開2015-003629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/897
A47C 7/38
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストとシートバックを備える車両用シートであって、
前記ヘッドレストのステーが挿通される挿通口を有するガイドと、
前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームに取り付けられ、前記ガイドを保持するホルダと、
前記ガイドと前記ホルダのそれぞれの外表面の少なくとも一部を覆い、前記シートバックフレームに対し着脱可能であるカバー部材と、
を備え
、
前記カバー部材は、前記ホルダのシート前方側の少なくとも上端と下端とを覆っていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記カバー部材が前記ホルダのシート前方側の前記上端を覆う部分と、前記ホルダのシート前方側の前記下端を覆う部分とが同じ幅で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記ホルダのシート幅方向側の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記ホルダのシート幅方向側の両側のそれぞれ少なくとも一部を覆っていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記カバー部材が前記ホルダのシート前方側の前記上端を覆う部分と、前記ホルダのシート前方側の前記下端を覆う部分とは、単一の部材で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記ホルダのシート後方側の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記ホルダのシート後方側の上端を覆っていることを特徴とする請求項6に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記ホルダのシート前方側の一部と後方側の一部とをそれぞれ覆っており、前記カバー部材が覆う前記ホルダのシート前方側の一部は、前記カバー部材が覆う前記ホルダのシート後方側の一部より広いことを特徴とする請求項6に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記カバー部材の上端は、前記ガイドの上端より下側に位置することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項10】
車両用シートに備えられるヘッドレストのステーが挿通される挿通口を有するガイドと、前記車両用シートに備えられるシートバックの骨格をなすシートバックフレームに取り付けられ前記ガイドを保持するホルダと、のそれぞれの外表面の少なくとも一部を覆い、前記シートバックフレームに対し着脱可能であり、前記ホルダのシート前方側の少なくとも上端と下端とを覆っていることを特徴とするカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストのシートバックへの取付部分によるシートバック内部の損傷を低減可能な車両用シート及びカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて乗員の頭部が当接するヘッドレストは、背もたれ面となるシートバックに着脱可能に取り付けられている。例えば、下記の特許文献1には、ヘッドレストから垂下する2本のステーが挿通されるガイドを、シートバックの骨格をなすシートバックフレームに固定されたホルダにより保持する機構により、ヘッドレストをシートバックに取り付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の後面衝突時においては、ヘッドレストをシートバックに取り付けるためのガイドやホルダのエッジがシートバック内部のクッション材に強く押し当てられることで、シートバック内部のクッション材を損傷してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドレストのシートバックへの取付部分によるシートバック内部の損傷を低減可能な車両用シート及びカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、ヘッドレストとシートバックを備える車両用シートであって、前記ヘッドレストのステーが挿通される挿通口を有するガイドと、前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームに取り付けられ、前記ガイドを保持するホルダと、前記ガイドと前記ホルダのそれぞれの外表面の少なくとも一部を覆い、前記シートバックフレームに対し着脱可能であるカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記ホルダのシート前方側の少なくとも上端と下端とを覆っていることを特徴とする車両用シートにより解決される。
【0007】
また、前記課題は、車両用シートに備えられるヘッドレストのステーが挿通される挿通口を有するガイドと、前記車両用シートに備えられるシートバックの骨格をなすシートバックフレームに取り付けられ前記ガイドを保持するホルダと、のそれぞれの外表面の少なくとも一部を覆い、前記シートバックフレームに対し着脱可能であり、前記ホルダのシート前方側の少なくとも上端と下端とを覆っていることを特徴とするカバー部材により解決される。
【0008】
上記の車両用シート及びカバー部材によれば、後突時におけるヘッドレストのシートバックへの取付部分によるシートバック内部の損傷を軽減できる。また、後突時における乗員の頸部付近の衝撃吸収性を向上させることができる。また、上記の車両用シート及びカバー部材によれば、ヘッドレストのシートバックへの取付機構が設けられた箇所における乗員の違和感を低減できる。また、上記のカバー部材は、交換が容易であり、メンテナンス性を高めることができる。
【0009】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材が前記ホルダのシート前方側の前記上端を覆う部分と、前記ホルダのシート前方側の前記下端を覆う部分とが同じ幅で構成されていることとしてよい。
【0010】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、前記ホルダのシート幅方向側の側面の少なくとも一部を覆っていることとしてよい。
【0011】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、前記ホルダのシート幅方向側の両側をそれぞれ少なくとも一部を覆っていることとしてよい。
【0012】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材が前記ホルダのシート前方側の前記上端を覆う部分と、前記ホルダのシート前方側の前記下端を覆う部分とは、単一の部材で構成されていることとしてよい。
【0013】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、前記ホルダのシート後方側の少なくとも一部を覆っていることとしてよい。
【0014】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、前記ホルダのシート後方側の上端を覆っていることとしてよい。
【0015】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、前記ホルダのシート前方側の一部と後方側の一部とをそれぞれ覆っており、前記カバー部材が覆う前記ホルダのシート前方側の一部は、前記カバー部材が覆う前記ホルダのシート後方側の一部より広いこととしてよい。
【0016】
上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材の上端は、前記ガイドの上端より下側に位置することとしてよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、後突時におけるヘッドレストのシートバックへの取付部分によるシートバック内部の損傷を低減できる。
本発明の一態様によれば、後突時におけるホルダのシート前方側の端部によるシートバック内部の損傷を軽減できる。
本発明の一態様によれば、後突時におけるガイドの下端によるシートバック内部の損傷を軽減できる。
本発明の一態様によれば、カバー部材のがたつきを抑制できる。
本発明の一態様によれば、カバー部材のホルダへの取付性を向上できる。
本発明の一態様によれば、カバー部材をシートバックフレームに対する所定の位置に配置することが容易となる。
本発明の一態様によれば、カバー部材の装着状態を確認しやすくなる。
本発明の一態様によれば、カバー部材の左右双方の取り付け状態を確認しやすくなる。
本発明の一態様によれば、カバー部材とホルダとの係合状態を確認しやすくなる。
本発明の一態様によれば、カバー部材のがたつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【
図2】シートバックフレームの上部に関する斜視図である。
【
図3】シートバックフレームへのヘッドレストステーの取り付け状態を説明する図である。
【
図8】カバー部材をホルダに取り付けた状態のVIII-VIII端面図である。
【
図9】カバー部材をホルダに取り付けた状態のIX-IX端面図である。
【
図10】カバー部材をホルダに取り付けた状態のX-X端面図である。
【
図11】カバー部材による乗員頭部とヘッドレストガイド、ホルダの位置関係を説明する断面図である。
【
図12】第1の変形例に係るカバー部材に備えられるリブの形状を説明するIX-IX端面図である。
【
図13】第2の変形例に係るカバー部材をホルダに取り付けた状態の斜視図である。
【
図14】パンフレームの一部についての背面図である。
【
図15】第2の実施形態に係るカバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1乃至
図15に基づいて、本発明の実施の形態(以下、実施形態)に係る車両用シートSについて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る車両用シートSの斜視図である。
図2は、車両用シートSのシートバックS1の骨格をなすシートバックフレーム2の上部に関する斜視図である。そして、
図3は、シートバックフレーム2へのヘッドレストステー12の取り付け状態を説明する図である。
【0022】
図4は、第1の実施形態に係るカバー部材10の正面図、
図5はカバー部材10の背面図、
図6はカバー部材10のVI-VI断面図、
図7はカバー部材10の側面図である。
【0023】
図8は、カバー部材10をホルダ8に取り付けた状態のVIII-VIII端面図であり、
図9はカバー部材10をホルダ8に取り付けた状態のIX-IX端面図であり、
図10は、カバー部材10をホルダ8に取り付けた状態のX-X端面図である。
【0024】
図11は、カバー部材10による当接範囲Hとヘッドレストガイド6、ホルダ8の位置関係を説明する断面図である。なお、
図11においては、ホルダ8と接合するメインパイプ2Aについてその断面形状を示している。
【0025】
図12は、第1の変形例に係るカバー部材10に備えられるリブの形状を説明するIX-IX端面図であり、
図13は第2の変形例に係るカバー部材をホルダに取り付けた状態の斜視図である。
【0026】
図14は、シートバックフレーム2を構成するパンフレーム2Bの一部についての背面図である。そして、
図15は、第2の実施形態に係るカバー部材10Aの斜視図である。
【0027】
図1に示されるように、車両用シートSは、背もたれ部分となるシートバックS1と、着座部分となるシートクッションS2と、シートバックS1の上部に配され乗員の頭部を支持するヘッドレストS3を備える。
【0028】
なお、以下の説明中において、「前後方向」とは、車両用シートSの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートSの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両用シートSの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致する。
【0029】
図2に示されるように、シートバックS1の骨格をなすシートバックフレーム2は、メインパイプ2Aとパンフレーム2Bを主要な構成要素とする。ここで、メインパイプ2Aはシートバックフレーム2の外枠を構成する略コ字型の管状体であり、パンフレーム2Bはメインパイプ2Aの内側に配され、メインパイプ2Aの内周と連結した板状体である。
【0030】
また、ヘッドレストS3には、ヘッドレストS3の下部から垂下する2つのヘッドレストステー12が設けられている。
【0031】
図7及び
図11に示されるように、上部フレームとなるメインパイプ2Aには、ホルダ8が溶接により接合されている。具体的には、メインパイプ2Aの前面と、ホルダ8の後面とが溶接により接合される。なお、ホルダ8は、上下に開口が設けられた管状体であり、ホルダ8内にヘッドレストガイド6が挿通される。これにより、ヘッドレストガイド6がシートバックフレーム2に取り付けられる。
【0032】
また、
図2、
図3及び
図11に示されるように、ヘッドレストガイド6は、ヘッドレストステー12が挿通される挿通口6Aが設けられた管状体である。また、ヘッドレストガイド6の上部には、ホルダ8及びカバー部材10の開口の径よりも大きな外径を有する頭部6Bが設けられている。これにより、ヘッドレストガイド6が、ホルダ8及びカバー部材10の下側へ抜け落ちることが防止される。
【0033】
そして、ヘッドレストS3の各々のヘッドレストステー12は、シートバックフレーム2に取り付けられたヘッドレストガイド6の挿通口6Aに挿通され、シートバックフレーム2に保持される。以上説明した構成により、ヘッドレストS3はシートバックS1に取り付けられている。
【0034】
ここで、ヘッドレストガイド6及びホルダ8は、ヘッドレストS3の保持強度を維持し、がたつきを抑制するため、強度の高い金属製の部材により形成される。こうした場合、ヘッドレストガイド6やホルダ8が、車両用シートSに着座する乗員の頭部や頸部の位置に相当し、シートクッションS2内部に硬質な部材が存在することによる違和感を感じてしまうことがある。また、後面衝突時においては、ヘッドレストガイド6やホルダ8のエッジがシートバックS1内部のクッション材を損傷してしまう虞がある。
【0035】
そこで、本実施形態に係る車両用シートSでは、ヘッドレストガイド6及びホルダ8のそれぞれの外表面の少なくとも一部を覆うカバー部材10を設けるようにしている。
【0036】
すなわち、
図1乃至
図3に示されるように、本実施形態に係る車両用シートSは、ヘッドレストS3のヘッドレストステー12が挿通される挿通口6Aを有するヘッドレストガイド6と、シートバックフレーム2に取り付けられ、ヘッドレストガイド6を保持するホルダ8と、ヘッドレストガイド6とホルダ8のそれぞれの外表面の少なくとも一部を覆い、シートバックフレーム2に対し着脱可能であるカバー部材10と、を備えることを特徴とする。以下においては、カバー部材10の構成及びカバー部材10のシートバックフレーム2への取付構造の詳細について説明する。なお、カバー部材10は、合成樹脂等により一体成形される部材としてよい。
【0037】
図3、
図4及び
図11に示されるように、カバー部材10の前面部100はホルダ8のシート前方側の上端及び下端、さらにはヘッドレストガイド6のシート前方側の下端を覆う領域を有している。
【0038】
また、
図4に示されるように、カバー部材10の前面部100には、2つの開口部102がシート幅方向に並んで形成される。開口部102は、シート後方側に延出した係合部104とシート上下方向において略同じ位置に設けられている。また、開口部102は上下方向においてホルダ8の下端と略同じ高さに設けられている。
【0039】
ここで、
図10に示されるように、開口部102は、中央リブ120の側方から、カバー部材10の前方側の角部に渡って形成されている。このように、開口部102が角部に形成されていることにより、開口部102からホルダ8の取り付け状態の目視が容易となる。また、開口部102が係合部104と上下方向において略同じ位置に設けられ、且つ係合部104のシート前方側の付近に開口部102が形成されていることにより、係合部104の箇所が弾性変形しやすくなっている。これにより、係合部104をホルダ8に取り付けやすくなる。
【0040】
また、
図5、
図6及び
図10に示されるように、係合部104は、鉤状に形成されており、カバー部材10のシート幅方向の側面内側と接続し、シート後方側にかけて幅広の形状となっている。そして、対向する係合部104の間にホルダ8が配置され、係合部104がホルダ8と当接してホルダ8とカバー部材10との左右方向の位置ずれ、がたつきが抑制されるようになっている。
【0041】
また、
図4乃至
図6に示されるように、カバー部材10の上部には環状部110が形成されている。そして、
図2、
図3及び
図11に示されるように、環状部110の内側である上開口部106にヘッドレストガイド6及びホルダ8が通され、カバー部材10がヘッドレストガイド6及びホルダ8の外表面の少なくとも一部を覆うようになっている。
【0042】
また、
図8に示されるように、環状部110のシート後方側にはリブ122が形成されており、リブ122がホルダ8の側部と当接するようになっている。また、環状部110のシート後方側の内面中央にはシート前方に凸状のリブ124が形成されており、リブ124がホルダ8の後部と当接するようになっている。こうすることにより、ホルダ8の上部とカバー部材10との左右方向の位置ずれ、がたつきが抑制されるようになっている。
【0043】
また、
図5及び
図6に示されるように、カバー部材10の内表面にはシート幅方向に延出するリブ112、リブ114、リブ116、リブ118、シート上下方向に延出する中央リブ120が形成されている。
【0044】
リブ112、リブ114、リブ116、リブ118はそれぞれ、前面部100の裏面側(内面側)から凸状に形成されている。ここで、
図9に示すように、リブ112は、ホルダ8の前面及び側面と当接するようになっている。また、リブ116についても同様にホルダ8の前面及び側面と当接するようになっている。また、リブ114及びリブ118についてはホルダ8の前面と当接するようになっている。カバー部材10の内表面に複数のリブを設けることにより、ホルダ8の上部とカバー部材10との位置ずれ、がたつきが抑制されるようになっている。
【0045】
また、
図5及び
図6に示されるように、リブ112、リブ114、リブ116、リブ118はそれぞれシート幅方向における中央部分において中央リブ120と連結している。中央リブ120は、ホルダ8の前面と当接するようになっている。
【0046】
このように、カバー部材10の内表面側に形成された複数のリブ及び係合部104によりホルダ8と当接することにより、ホルダ8とカバー部材10の位置ずれ、カバー部材10のがたつきを抑制することができる。
【0047】
また、
図7に示されるように、カバー部材10の環状部110と係合部104の間にはメインパイプ2Aが配され、環状部110の下端である位置決め部126がメインパイプ2Aと当接するようになっている。これにより、カバー部材10の下方への位置ずれが規制されるようになっており、カバー部材10がホルダ8より下側に脱落することを防止している。
【0048】
以上説明したように、車両用シートSがカバー部材10を備えるようにしたことで、
図11に示すように、乗員の当接範囲Hとヘッドレストガイド6及びホルダ8との距離が一定以上保たれるようになる。こうすることで、ヘッドレストガイド6の頭部6B及び下部のエッジや、ホルダ8の上部及び下部のエッジと、当接範囲Hが当たらないように制御可能となる。
【0049】
また、カバー部材10を備える車両用シートSでは、後突時におけるヘッドレストS3のシートバックS1への取付部であるヘッドレストガイド6及びホルダ8によるシートバックS1内部の損傷を軽減できる。また、上記の車両用シートSでは、ヘッドレストステー12が設けられたシートバックS1に当接する乗員の頭部や頸部の違和感を低減できる。
【0050】
また、カバー部材10は、シートバックフレーム2に対して着脱可能であるため、カバー部材10の交換が容易性を向上させることができる。
【0051】
また、カバー部材10には、ホルダ8と当接する複数のリブや係合部104を設けたことにより、カバー部材10のがたつきを抑制することができる。
【0052】
本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、種々の変形が可能である。ここでは一例として、カバー部材10の第1及び第2の変形例について説明する。カバー部材10の第1の変形例では、カバー部材10の内表面に設けられるリブの形状が上記の実施形態と相違する。
【0053】
図12には、第1の変形例に係るカバー部材10の内表面に設けられるリブ形状を示した。なお、上記の実施形態においては、リブ112がカバー部材10の後端まで延出している例を示したが、第1の変形例においては、
図12に示されるように、リブ112Aはカバー部材10の後端まで延出せずに、ホルダ8の前方角部と当接する程度の位置まで延出する形状としてよい。もちろん、
図12に示すリブ形状は、リブ114、リブ116、リブ118等にも同様に適用してよい。
【0054】
次に、カバー部材10の第2の変形例について説明する。
図13には、第2の変形例に係るカバー部材10Aをシートバックフレーム2に取り付けた状態の斜視図を示した。
図13に示されるように、第2の変形例に係るカバー部材10Aにおいては、前面部100の下端から係合部104に向かう縁部において、切欠き部130が形成されている点で、カバー部材10と相違する。
【0055】
第2の変形例に係るカバー部材10Aでは、切欠き部130が設けられていることにより、ホルダ8の爪部8Aをカバー部材10から露出させることができる。爪部8Aは、ヘッドレストガイド6の下端と係合しており、爪部8Aをヘッドレストガイド6の内部に押し込むことにより、ホルダ8をヘッドレストガイド6から取り外すことができる。このように、第2の変形例に係るカバー部材10Aでは、爪部8Aをカバー部材10Aから露出するようにしているため、爪部8Aの押し込みが容易となる。
【0056】
また、爪部8Aは、カバー部材10Aの前面部100に設けられた開口部102を通じて押すようにすることもできる。
【0057】
また、
図14に示すように、パンフレーム2Bに開口部2C及び開口部2Dを設け、開口部2C及び開口部2Dを通じて爪部8Aを押すようにすることもできる。
【0058】
また、
図15には、第3の変形例に係るカバー部材10Bの斜視図を示した。第3の変形例に係るカバー部材10Bは、前面部100に開口を6つ設けた点でカバー部材10と相違する。すなわち、カバー部材10Bでは、開口部102に加えて、4つの開口部102Aを設けた点でカバー部材10と相違する。なお、一対の開口部102Aは、それぞれリブ112とリブ114の間、リブ114とリブ116の間にそれぞれ形成されることとしてよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、環状部110は連続した環形状としたが、環状部110の一部が切れていてもよい。すなわち、環状部110を略コ字型、略C字型等の形状としてもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、左右のカバー部材10(カバー部材10A、カバー部材10Bを含む)を別体として構成した例について説明したが、左右のカバー部材10を一体に構成してもよい。また、カバー部材10をヘッドレストステー12の下端まで覆うように、カバー部材10の前面部100を延出させた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
H 当接範囲
S 車両用シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
S3 ヘッドレスト
2 シートバックフレーム
2A メインパイプ
2B パンフレーム
2C 開口部
2D 開口部
6 ヘッドレストガイド
6A 挿通口
6B 頭部
8 ホルダ
8A 爪部
10 カバー部材
10A カバー部材(第2変形例)
10B カバー部材(第3変形例)
12 ヘッドレストステー
100 前面部
102 開口部
102A 開口部
104 係合部
106 上開口部
110 環状部
112 リブ
112A リブ
114 リブ
116 リブ
118 リブ
120 中央リブ
122 リブ
124 リブ
126 位置決め部
130 切欠き部