(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】建物用シャッターとその組立方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/58 20060101AFI20230414BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
E06B9/58 A
E06B9/17 T
(21)【出願番号】P 2022082400
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2021122429の分割
【原出願日】2017-10-31
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】角 和博
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 聡
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 輝道
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218813(JP,A)
【文献】登録実用新案第3116748(JP,U)
【文献】特開2004-162490(JP,A)
【文献】特開2004-52340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッターカーテンの昇降方向に沿う左右の側縁部を案内溝に挿入してガイドする一対のガイドレール本体と、
前記ガイドレール本体に係合される補強部材と、
前記補強部材に連結され、該補強部材と反対側に突出するジョイント固定片を備えるジョイント部材と、
建物に固定される取付アングルと、
を具備し、
前記取付アングルは、
前記建物とは反対側であって前記補強部材方向に延出する水平片を有し、該水平片は、前記ジョイント固定片と重ねた状態で前記ジョイント固定片に固定されていることを特徴とする建物用シャッター。
【請求項2】
前記補強部材は、前記シャッターカーテンを挟む表裏方向となる垂直な方向で、ガイドレール本体を挟むことを特徴とする請求項1に記載の建物用シャッター。
【請求項3】
前記ガイドレール本体の案内溝を挟む少なくとも片側に係合鍔部が設けられ、該係合鍔部には、前記補強部材を貫通した係合部材が挿入されることを特徴とする請求項1または2に記載の建物用シャッター。
【請求項4】
前記ジョイント部材は、前記案内溝の溝開口と反対側の前記ガイドレール本体の背面に配置され、前記補強部材を補強部材固定ボルトにより連結することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の建物用シャッター。
【請求項5】
前記取付アングルの水平片とジョイント部材のジョイント固定片は、頭部が下側を向いたジョイント固定ボルトにより固定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の建物用シャッター。
【請求項6】
前記取付アングルは、垂直片を有し、該垂直片は前記取付アングルの水平片よりも下方で、建物アングル固定ボルトにより固定されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の建物用シャッター。
【請求項7】
前記水平片には、前記案内溝の奥行方向となる水平方向に長い長穴が穿設され、前記取付アングルと前記ジョイント部材との位置ズレを調整可能としてジョイント固定ボルトが設けられることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の建物用シャッター。
【請求項8】
補強部材をガイドレール本体に係合する工程と、
ジョイント部材を補強部材に連結する工程とを有する第一の工程と、
取付アングルを建物に固定する第二の工程と、を含み、
前記第一の工程と前記第二の工程を行った後、
前記ジョイント部材のジョイント固定片を前記取付アングルの水平片に重ねて、前記ジョイント固定片と前記水平片とを固定する第三の工程と、
を備えることを特徴とする建物用シャッターの組立方法。
【請求項9】
前記第三の工程における前記水平片と前記ジョイント固定片との固定は、前記水平片に前記ジョイント固定片を載置し、前記水平片の下側方向からジョイント固定ボルトにて螺合し固定することを特徴とする請求項8記載の建物用シャッターの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用シャッターとその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物用シャッターは、建物の開口部の上部に設けられた下り壁に支持されるのが一般的であった。また、この場合、開口部の左右は、通常、壁となることが多い。つまり、建物用シャッターの取り付けられる建物躯体の開口部は、正面から見れば、下り壁と、左右の壁との三方で囲まれた門形の取付枠状構造を有していた。建物用シャッターは、これら下り壁と、左右の壁とを躯体側取付部分として利用することにより、シャッターカーテンを巻装する水平な巻取軸、シャッターカーテンを収納する収納部、及びシャッターカーテンの昇降を案内する左右一対のガイドレールを建物躯体に固定することができた。この場合、巻取軸、収納部及びガイドレール等の諸部材は、下り壁及び左右の壁の正面に、ブラケットや枠部材等を使用することにより固定されていた。つまり、シャッターカーテンの面と平行な面にのみ諸部材が配置固定されていた。そして、巻取軸を支持するブラケットの固定される面は、巻取軸と平行で、かつ、鉛直な面であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、建築工期短縮、資材削減などのため、下り壁を構築しない物流倉庫などの大規模な建物が増えている。この種の建物では、広い屋内空間に、複数の柱のみが立設される場合が多く、通常、柱間を連続させる壁も構築されない。つまり、巻取軸と平行な面が、柱正面しか存在しない。さらに、通路状となった大空間では、この柱正面も隠れてしまい、従来の支持構造では建物用シャッターを取り付けることができなくなった。すなわち、例えば通路を挟んで対向する壁面や、柱同士の対向面など、「水平な巻取軸に略直交し、かつ、建物内で対向する面(単に「建物内対向面」と言う。)」しか存在しない。一方、このような、取付枠として利用できる下り壁や左右の壁が存在しない建物においても、対向する壁面間や柱間にシャッターを設置することにより、大空間を仕切る例えば間仕切りとして利用したい要請がある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、建物内対向面に設置することのできる建物用シャッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の建物用シャッター11は、シャッターカーテン17の昇降方向に沿う左右の側縁部を案内溝55に挿入してガイドする一対のガイドレール本体29と、
前記ガイドレール本体29に係合される補強部材31と、
前記補強部材31に連結され、該補強部材31と反対側に突出するジョイント固定片71を備えるジョイント部材33と、
建物に固定される取付アングル35と、
を具備し、
前記取付アングル35は、
前記建物とは反対側であって前記補強部材31方向に延出する水平片73を有し、該水平片73は、前記ジョイント固定片71と重ねた状態で前記ジョイント固定片71に固定されていることを特徴とする。
【0007】
この建物用シャッター11では、補強部材31が、ガイドレール本体29に配置される。補強部材31は、ガイドレール本体29の延在方向、すなわち、上下方向に沿って複数設けることができる。補強部材31は、ガイドレール本体29に対しジョイント部材33により一体に連結される。一方、建物には、取付アングル35が所定の位置に固定される。建物に固定された取付アングル35の水平片73は、補強部材31とともにガイドレール本体29を保持したジョイント部材33のジョイント固定片71と固定される。これにより、ガイドレール本体29は、補強部材31、ジョイント部材33及び取付アングル35を介して建物に取り付けられる。
【0008】
本発明の請求項2記載の建物用シャッター11は、請求項1に記載の建物用シャッターであって、
前記補強部材31は、前記シャッターカーテン17を挟む表裏方向となる垂直な方向で、ガイドレール本体29を挟むことを特徴とする。
【0009】
この建物用シャッター11では、補強部材31が、例えば一対となって、ガイドレール本体29を、シャッターカーテン17の表裏方向から挟んで配置される。一対の補強部材31,31は、ガイドレール本体29の延在方向、すなわち、上下方向に沿って複数対を設けることができる。そして、ガイドレール本体29を挟んだ状態でジョイント部材33により一体に連結された一対の補強部材31,31は、ガイドレール本体29を離脱不能に保持する。
【0010】
本発明の請求項3記載の建物用シャッター11は、請求項1または2に記載の建物用シャッターであって、
前記ガイドレール本体29の案内溝55を挟む少なくとも片側に係合鍔部63が設けられ、該係合鍔部63には、前記補強部材31を貫通した係合部材57が挿入されることを特徴とする。
【0011】
この建物用シャッター11では、ガイドレール本体29の少なくとも片側に設けられる係合鍔部63に係合部材57が挿入され、ジョイント部材33によりガイドレール本体29と一体に連結された補強部材31は、係合部材57がガイドレール本体29に係合することにより、ガイドレール本体29の移動を規制して、ガイドレール本体29を支持する。
【0012】
本発明の請求項4記載の建物用シャッター11は、請求項1~3のいずれか1つに記載の建物用シャッターであって、
前記ジョイント部材33は、前記案内溝55の溝開口65と反対側の前記ガイドレール本体29の背面に配置され、前記補強部材31を補強部材固定ボルト67により連結することを特徴とする。
【0013】
この建物用シャッター11では、ジョイント部材33は、案内溝55の溝開口65と反対側のガイドレール本体29の背面に配置される。ジョイント部材33は、補強部材31を補強部材固定ボルト67により連結し、ガイドレール本体29と一体となる。補強部材31が一対で構成される場合には、補強部材固定ボルト67にてガイドレール本体29の溝開口65と反対側である背面側でジョイント部材33により一体に連結され、ガイドレール本体29を離脱不能に保持する。
【0014】
本発明の請求項5記載の建物用シャッター11は、請求項1~4のいずれか1つに記載の建物用シャッターであって、
前記取付アングル35の水平片73とジョイント部材33のジョイント固定片71は、頭部が下側を向いたジョイント固定ボルト77により固定されることを特徴とする。
【0015】
この建物用シャッター11では、取付アングル35の水平片73と、ジョイント部材33のジョイント固定片71とを重ねた状態、例えば、水平片73にジョイント固定片71を載置した状態で、頭部が下側を向いたジョイント固定ボルト77、つまり、下からジョイント固定ボルト77が螺合され固定される。
【0016】
本発明の請求項6記載の建物用シャッター11は、請求項1~5のいずれか1つに記載の建物用シャッターであって、
前記取付アングル35は、垂直片75を有し、該垂直片75は前記取付アングル35の水平片73よりも下方で、建物アングル固定ボルト81により固定されることを特徴とする。
【0017】
この建物用シャッター11では、取付アングル35の垂直片75を、水平片73よりも下方に向けて、建物アングル固定ボルト81により建物側の所定の位置へ固定される。
【0018】
本発明の請求項7記載の建物用シャッター11は、請求項1~6のいずれか1つに記載の建物用シャッターであって、
前記水平片73には、前記案内溝55の奥行方向となる水平方向に長い長穴93が穿設され、前記取付アングル35と前記ジョイント部材33との位置ズレを調整可能としてジョイント固定ボルト77が設けられることを特徴とする。
【0019】
この建物用シャッター11では、水平片73に、ジョイント固定ボルト77が左右方向、例えば巻取軸15の長手方向に沿う方向に移動し、取付アングル35とジョイント部材33との位置ズレを調整可能とする左右長穴93が穿設される。
これにより、締結部分を構成する長穴である左右長穴93によって、必ずしも互いに平行で平滑でない建物躯体側の建物内対向面19に対して、調整して、ガイドレール23の垂直度などを調整可能とし、シャッターカーテン17を柱83間や壁85間の建物内対向面19に設置できる。
【0020】
本発明の請求項8記載の建物用シャッターの組立方法は、補強部材31をガイドレール本体29に係合する工程と、
ジョイント部材33を補強部材31に連結する工程とを有する第一の工程と、
取付アングル35を建物に固定する第二の工程と、を含み、
前記第一の工程と前記第二の工程を行った後、
前記ジョイント部材33のジョイント固定片71を前記取付アングル35の水平片73に重ねて、前記ジョイント固定片71と前記水平片73とを固定する第三の工程と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
この建物用シャッターの組立方法では、補強部材31をガイドレール本体29に係合し、ジョイント部材33を補強部材31に連結する第一の工程及び、取付アングル35を建物に固定する第二の工程の後、ジョイント部材33のジョイント固定片71を取付アングル35の水平片73に重ね、ジョイント固定片71と水平片73とを固定する第三の工程にて建物用シャッターは建物に取り付けられる。
【0022】
本発明の請求項9記載の建物用シャッターの組立方法は、請求項8記載の建物用シャッターの組立方法であって、
前記第三の工程における前記水平片73と前記ジョイント固定片71との固定は、前記水平片に前記ジョイント固定片を載置し、前記水平片73の下側方向からジョイント固定ボルト77にて螺合し固定することを特徴とする。
【0023】
この建物用シャッターの組立方法では、第三の工程において、水平片にジョイント固定片を載置し、水平片73の下側方向からジョイント固定ボルト77にて螺合し、水平片とジョイント固定片とを固定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る建物用シャッターによれば、柱と柱の間や対向する壁間など建物内対向面にガイドレール本体を設置できる。これにより、例えば物流倉庫などの大型な屋内空間を備える建築物の内部において、従来のような門型の躯体部分を備えない部位、例えば柱と柱の対向面や壁間の対向面など建物内対向面にガイドレールを設置でき、空間を区画形成させるなど仕切る構造を付与でき、また、施工期間の大幅な短縮などを図ることが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る建物用シャッターによれば、溶接によらず、ボルトなどを用いることにより全ての取付固定を行うことができ、これにより、無火気にて施工を行うことができる。また、このことから、施工期間を短縮することができる。
【0026】
また、本発明に係る建物用シャッターによれば、ガイドレール本体を挟むように、例えば補強部材を一対で構成でき、ガイドレール本体を支持することができる。
【0027】
さらに、本発明に係る建物用シャッターによれば、ガイドレール本体の少なくとも片側に設けられる係合鍔部に係合部材が挿入され、ジョイント部材によりガイドレール本体と一体に連結された補強部材は、係合部材がガイドレール本体に係合することにより、ガイドレール本体の移動を規制して、ガイドレール本体を支持することができる。
【0028】
また、本発明に係る建物用シャッターによれば、ジョイント部材は、案内溝の溝開口と反対側のガイドレール本体の背面に配置され、このジョイント部材は、補強部材を補強部材固定ボルトにより連結し、ガイドレール本体と一体となるが、補強部材が一対で構成される場合に、補強部材固定ボルトにて溝開口と反対側である背面側でジョイント部材により一体に連結することができ、ガイドレール本体を離脱不能に保持することができる。
【0029】
さらに、本発明に係る建物用シャッターによれば、取付アングルの水平片と、ジョイント部材のジョイント固定片とを重ねた状態、例えば、水平片にジョイント固定片を載置した状態で、頭部が下側を向いたジョイント固定ボルト、つまり、下からジョイント固定ボルトが螺合され、下方から固定することができる。
【0030】
また、本発明に係る建物用シャッターによれば、ジョイント部材の水平片に、ジョイント固定ボルトが左右方向、例えば巻取軸の長手方向に沿う方向に移動可能とする左右長穴として穿設することができることから、取付アングルとジョイント部材との位置ズレを調整することが可能となる。
従って、この建物用シャッターとその組立方法によれば、締結部分を構成する各長穴である左右長穴によって、必ずしも互いに平行で平滑でない建物躯体側の建物内対向面に対して、それぞれを調整して、巻取軸の水平度、ガイドレールの垂直度などを調整可能とし、シャッターカーテンを柱間や壁間の建物内対向面に設置することができる。
【0031】
本発明に係る建物用シャッターの組立方法によれば、柱と柱の間や対向する壁間など建物内対向面にガイドレール本体を設置できる。これにより、例えば物流倉庫などの大型な屋内空間を備える建築物の内部において、従来のような門型の躯体部分を備えない部位、例えば柱と柱の対向面や壁間の対向面など建物内対向面にガイドレールを設置でき、空間を区画形成させるなど仕切る構造を付与でき、また、施工期間の大幅な短縮などを図ることが可能となる。
【0032】
また、本発明に係る建物用シャッターの組立方法によれば、溶接によらず、ボルトなどを用いることにより全ての取付固定を行うことができ、これにより、無火気にて施工を行うことができる。また、このことから、施工期間を短縮することができる。
【0033】
さらに、本発明に係る建物用シャッターの組立方法によれば、水平片にジョイント固定片を載置した状態で、下側方向からジョイント固定ボルトが螺合され、水平片の下方から固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係る建物用シャッターの正面図である。
【
図2】
図1に示した建物用シャッターの側面図である。
【
図4】
図1に示したガイドレールの平断面図である。
【
図5】
図1に示した右方におけるガイドレール近傍の一部分を切り欠いた拡大正面図である。
【
図6】
図1の左方におけるガイドレール本体の取付構造の要部拡大正面図である。
【
図7】ガイドレールの取付例を(a)(b)で表した概略平断面図である。
【
図8】ガイドレール本体、補強部材及びジョイント部材が固定される前の建物用シャッターの組立手順の説明図である。
【
図9】取付アングルが固定される前の建物用シャッターの組立手順の説明図である。
【
図10】化粧板が固定される前の建物用シャッターの組立手順の説明図である。
【
図11】軸端支持ブラケット、ブラケット固定プレートが固定される前の建物用シャッターの組立手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る建物用シャッター11の正面図である。
本実施形態に係る建物用シャッター11は、例えば物流倉庫等の大型建物に取り付けられるいわゆる重量シャッターとして好適に用いられる。
【0036】
建物用シャッター11は、収納部13を上部に備える。収納部13は、水平方向に長い巻取軸15(
図3参照)を有している。巻取軸15は、例えば平行な複数の長尺スラットを巻き取り繰り出し方向に連結したシャッターカーテン17を巻装する。収納部13は、「水平な巻取軸15に略直交し、かつ、建物内で対向する面(以下、単に「建物内対向面」と言う。)」の間に、設置される。この建物内対向面19は、例えば柱面や壁面とすることができる。本実施形態において、建物内対向面19は、床Fと天井Cとの間に立設される一対の柱83,83間の対向面とする。
【0037】
収納部13には、開閉機21が設けられる。建物用シャッター11は、開閉駆動の機構として上部電動式、上部手動式、下部手動式、フック式等がある。
【0038】
上部電動式は、開閉機21を収納部13に設置し、巻取軸15と開閉機21をローラチェーンで連結し、電動で巻き上げる。開ける時は、通常は押しボタンを操作して電動で開ける。閉める時は、通常は押しボタンを操作して電動で閉める。停電時は、下降用のひもを引き制動状態を解除し自重降下で閉める。
【0039】
上部手動式は、開閉機21を収納部13に設置し、巻取軸15と開閉機21で巻き上げる。開ける時は、ハンドルまたはチェーンを用いることで巻き上げる。閉める時は、下降用ひもを引き制動状態を解除し自重降下で閉める。ヒューズ装置、煙(熱)感知器による連動閉鎖も可能とすることができる。
【0040】
下部手動式は、開閉機21を下部に設置し、巻取軸15と開閉機21をワイヤーロープで連結し、ハンドルで巻き上げる。開ける時は、開閉機21のサムピースを所定の位置(例えば90°)まで回転し、ハンドルで巻き上げる。閉める時は、サムピースを所定の位置(例えば180°)まで回転し、自重降下で閉める。ヒューズ装置、煙(熱)感知器による連動閉鎖も可能とすることができる。
【0041】
フック式は、開閉機21を収納部13に設置し、巻取軸15と開閉機21をローラチェーンで連結し、フック操作で巻き上げる。開ける時は、巻き上げ用フックで巻き上げる。閉める時は、降下用フックを一回引き自重降下で閉める。自重降下中巻き上げ用フックを引くと停止する。ヒューズ装置、煙(熱)感知器による連動閉鎖も可能とすることができる。
【0042】
本実施形態の建物用シャッター11では、上部手動式の場合を例に説明する。
【0043】
図2は
図1に示した建物用シャッター11の側面図である。
建物用シャッター11は、収納部13と天井Cとの間に下り壁が設けられていない。すなわち、建物用シャッター11は、建物内対向面19のみの間で取り付けられている。建物内対向面19には、収納部13と床Fとの間に、一対のガイドレール23,23が取り付けられる。
【0044】
図3は
図1の軸端における要部拡大図である。
本実施形態に係る建物用シャッター11は、巻取軸15と、軸端支持ブラケット25と、ブラケット固定プレート27と、ガイドレール本体29(
図4参照)と、補強部材31(
図4参照)と、ジョイント部材33(
図4参照)と、取付アングル35(
図4参照)と、を主要な構成部材として有している。
【0045】
巻取軸15は、シャッターカーテン17を巻き取り繰り出し自在に支持して、建物内において水平に支持される。
【0046】
軸端支持ブラケット25は、巻取軸15の端部が直径方向で挿入可能なU字状の支持溝37(
図11参照)を、巻取軸15に略直交するブラケット本体板39に有する。軸端支持ブラケット25は、このブラケット本体板39の支持溝37を上下で挟む上端縁及び下端縁に、巻取軸中央部と反対側(
図3の右側)となる外方向に突出した平行な上下一対のブラケット固定片41を有する。この軸端支持ブラケット25は、一つの建物用シャッター11の取り付けに際し、左右一対とされる。
【0047】
巻取軸15の左右の端部には、転動体を有した軸受(図示略)の内輪が固定される。この軸受は、巻取軸15が支持溝37に挿入された後、外輪がブラケット本体板39に軸受固定ボルト43で固定される。ブラケット本体板39の外側に突出した巻取軸15の一方の端部には、スプロケット45が固定される。巻取軸15は、このスプロケット45と開閉機21とに掛け渡されたローラチェーン(図示略)により回転される。
【0048】
ブラケット固定プレート27は、一対の軸端支持ブラケット25のそれぞれに対となって組み合わされる。つまり、ブラケット固定プレート27は、一つの建物用シャッター11の取り付けに際し、一対のものが使用される。ブラケット固定プレート27は、上下一対のブラケット固定片41のそれぞれの下面を上面に載置して一対のブラケット固定片41が固定される一対の載置片47を有する。ブラケット固定片41と載置片47とは、載置片固定ボルト49とナットNとにより締結される。
【0049】
ブラケット固定プレート27は、巻取軸15に略直交して、この一対の載置片47を上端縁及び下端縁に接続するとともに建物内対向面19に固定されるプレート本体板51を有する。プレート本体板51は、プレート固定ボルト53により建物内対向面19に固定される。建物内対向面19には、このプレート固定ボルト53と螺合するインサートナット、或いは、アンカーが予め埋設されている。
【0050】
図4は
図1に示したガイドレール23の平断面図である。
ガイドレール本体29は、シャッターカーテン17の昇降方向に沿う左右の側縁部を案内溝55に挿入してガイドする。ガイドレール本体29は、一つの建物用シャッター11の取り付けに際し、左右一対のものが使用される。
【0051】
補強部材31は、一つの取付箇所ごとに一対のものが用いられ、昇降するシャッターカーテン17を挟む表裏方向となる垂直な方向(
図4の上下方向)で、ガイドレール本体29を挟む。補強部材31は、昇降するシャッターカーテン17の表裏方向と同方向に突出する係合部材57をガイドレール本体29に係合する。
【0052】
係合部材57は、係合ボルト59と、この係合ボルト59に螺合する係合筒61とからなる。係合筒61は、ガイドレール本体29の案内溝55を挟む少なくとも片側に設けられた係合鍔部63(
図8参照)に挿入される。一対の補強部材31,31は、ガイドレール本体29を挟んだ状態で、後述のジョイント部材33により一体に連結固定される。ガイドレール本体29を挟持した少なくとも一方の補強部材31には、係合ボルト59が貫通される。補強部材31を貫通した係合ボルト59は、係合鍔部63に挿入された係合筒61に螺合する。その結果、一体となってガイドレール本体29を挟持した一対の補強部材31,31は、係合筒61を介して係合筒61の半径方向に対するガイドレール本体29の移動を規制して、ガイドレール本体29を支持する。
【0053】
図5は
図1に示した右方におけるガイドレール近傍の一部分を切り欠いた拡大正面図である。
補強部材31は、建物内対向面19に対するガイドレール本体29の取り付け箇所ごとに、ガイドレール本体29を挟む左右一対のものが使用される。左右一対の補強部材31は、共通のものとすることができる。補強部材31の取り付け箇所は、ガイドレール本体29の長手方向に沿って例えば250mm間隔のピッチPで設けられる。これにより、シャッターカーテン17の側縁部からガイドレール本体29に加わる風圧による大きな外力を建物内対向面19に支持することができる。
【0054】
図6は
図1の左方におけるガイドレール本体29の取付構造の要部拡大正面図である。
ジョイント部材33は、案内溝55の溝開口65と反対側(
図6の左側)のガイドレール本体29の背面に配置される。ジョイント部材33は、一対の補強部材31,31を補強部材固定ボルト67,67により連結する。このため、補強部材31には、補強部材固定ボルト67の螺合するネジ穴69(
図8参照)が形成されている。また、ジョイント部材33は、補強部材31と反対側に突出した平行な一対のジョイント固定片71,71を、上端縁及び下端縁に有し、略コ字状に形成される。
【0055】
取付アングル35は、水平片73と垂直片75とを有して断面L形に形成される。取付アングル35は、水平片73が、ジョイント部材33における上下一対のジョイント固定片71,71のいずれか一方にジョイント固定ボルト77により固定される。ジョイント固定片71には、ジョイント固定ボルト77が螺合するネジ穴79が形成されている。水平片73がジョイント部材33に固定された取付アングル35は、垂直片75が建物内対向面19にアングル固定ボルト81により固定される。アングル固定ボルト81は、建物内対向面19に予め設けたインサートナット、或いは、アンカーに螺合する。
【0056】
図7はガイドレール23の取付例を(a)(b)で表した概略平断面図である。
ガイドレール23は、本実施形態のように、
図7(a)に示す柱83の建物内対向面19に取り付けられる他、
図7(b)に示す対向配置する建物躯体を構成する壁85の建物内対向面19、或いは柱83と壁85の対向面など、互いに向き合う面間に取り付けられる。なお、柱83は、例えば鉄骨やコンクリート等よりなる。
【0057】
次に、上記した構成の作用を説明する。
図8はガイドレール本体29、補強部材31及びジョイント部材33が固定される前の建物用シャッター11の組立手順の説明図である。なお、
図8~
図11において、Nは所定のボルトに螺合するナット、SWは所定のボルトに外挿されるスプリングワッシャー、FWは所定のボルトに外挿される平ワッシャーを表す。
この建物用シャッター11では、一対の補強部材31,31が、ガイドレール本体29を、シャッターカーテン17を挟む表裏方向で挟んで配置される。一対の補強部材31,31は、
図5に示したように、ガイドレール本体29の延在方向、すなわち、上下方向に沿って所定のピッチで複数対となって設けられる。
【0058】
ガイドレール本体29を挟んで配置された一対の補強部材31,31は、ガイドレール本体29の背面側(溝開口65と反対側)でジョイント部材33により、補強部材固定ボルト67を用いて一体に連結される。ジョイント部材33には、補強部材固定ボルト67が前後方向(シャッターカーテン17に対し垂直となる表裏方向)に移動し、ジョイント部材33と補強部材31,31との位置ズレを吸収する調整用の前後長穴87が穿設されている。
【0059】
補強部材固定ボルト67は、補強部材31,31に形成されたネジ穴69に螺合する。ガイドレール本体29を挟んだ状態でジョイント部材33により一体に連結された一対の補強部材31,31は、係合部材57がガイドレール本体29に係合することにより、ガイドレール本体29を離脱不能に保持する。補強部材31,31には、係合ボルト59が上下方向に移動し、補強部材31とガイドレール本体29との位置ズレ等を調整するための上下長穴89が穿設されている。
【0060】
図9は取付アングル35が固定される前の建物用シャッター11の組立手順の説明図である。
一方、建物内対向面19には、取付アングル35の垂直片75が所定の位置にアングル固定ボルト81で固定される。垂直片75には、アングル固定ボルト81が上下方向に移動し、建物内対向面19と取付アングル35との位置ズレを吸収する調整用の上下長穴91が穿設されている。
【0061】
建物内対向面19に固定された取付アングル35の水平片73は、補強部材31,31とともにガイドレール本体29を保持したジョイント部材33の上下いずれか一方のジョイント固定片71とジョイント固定ボルト77で固定される。
【0062】
水平片73には、ジョイント固定ボルト77が左右方向、すなわち巻取軸15の長手方向に沿う方向に移動し、取付アングル35とジョイント部材33との位置ズレを調整可能とする左右長穴93が穿設されている。
【0063】
ジョイント固定ボルト77は、ジョイント固定片71に形成されたネジ穴79に螺合する。これにより、ガイドレール本体29は、補強部材31,31、ジョイント部材33及び取付アングル35を介して建物内対向面19に取り付けられる。
【0064】
なお、取付アングル35は、先に、水平片73が、ジョイント部材33のジョイント固定片71に固定されてもよい。この場合、ガイドレール本体29は、ジョイント部材33に固定された取付アングル35の垂直片75が最後に建物内対向面19にアングル固定ボルト81により固定されて、建物躯体側に取り付けられる。
【0065】
図10は化粧板95が固定される前の建物用シャッター11の組立手順の説明図である。
建物躯体の建物内対向面19に取り付けられたガイドレール本体29は、案内溝55を挟む左右の側面が、一対の化粧板95,95により覆われる。化粧板95は、ガイドレール本体29に沿って上下方向に長い長尺部材となる。化粧板95は、長手方向に直交する断面がL形に形成される。
【0066】
化粧板95は、断面形状における一端側がガイドレール本体29に化粧板固定ビス97により固定される。建物内対向面19には、取付アングル35を挟んで断面L形の一対の取付ベース板99,99がベース板固定ボルト101により固定される。化粧板95の断面形状における他端側は、取付ベース板99の起立片103に、化粧板固定ビス97により固定される。左右のガイドレール23,23は、両建物内対向面19,19にそれぞれの案内溝55を対向させた向きで取り付けられる。これにより、建物内対向面19,19には、化粧板95に覆われて、案内溝55のみを表出させたガイドレール23,23が対向して設置完了となる。
【0067】
図11は軸端支持ブラケット25、ブラケット固定プレート27が固定される前の建物用シャッター11の組立手順の説明図である。
本実施形態に係る建物用シャッター11では、ブラケット固定プレート27のプレート本体板51が、建物内対向面19のそれぞれにプレート固定ボルト53で固定される。
【0068】
プレート本体板51には、プレート固定ボルト53が前後方向に移動し、建物内対向面19とブラケット固定プレート27との位置ズレを吸収する調整用の前後長穴105が穿設されている。ここで、本実施形態のブラケット固定プレート27は、プレート本体板51の下端に略L字形状の補強用支持部材107を延設するよう溶接固定し、この補強用支持部材107に穿設した前後長穴105をプレート固定ボルト53で建物内対向面19に固定している。
【0069】
建物内対向面19に固定される各ブラケット固定プレート27には、互いに接近する方向に、水平な上下一対の載置片47が突出する。これら上下の載置片47の各上面に、軸端支持ブラケット25の上下一対のブラケット固定片41が載置され、すなわち互いにコ字状の軸端支持ブラケット25とブラケット固定プレート27とが組み合わさり、かつ、載置片固定ボルト49で固定される。載置片47には、載置片固定ボルト49が左右方向に移動し、ブラケット固定プレート27と軸端支持ブラケット25との位置ズレを吸収し調整可能な左右長穴109が穿設されている。
【0070】
軸端支持ブラケット25は、ブラケット固定片41が載置片47に固定されることにより、ブラケット本体板39が建物内対向面19と平行となる。このブラケット本体板39には、U字状の支持溝37が形成されている。ブラケット固定プレート27に固定された軸端支持ブラケット25の支持溝37には、シャッターカーテン17を巻装した巻取軸15の両側の端部が、直径方向で挿入される。支持溝37に挿入された巻取軸15は、軸受がブラケット本体板39に軸受固定ボルト43(
図3参照)で固定される。これにより、巻取軸15は、軸端支持ブラケット25及びブラケット固定プレート27を介して建物内対向面19に取り付けられる。
【0071】
なお、上記の実施形態では、ガイドレール本体29が先に建物内対向面19に固定された後、巻取軸15が建物内対向面19に支持される組立手順の例を説明したが、建物用シャッター11は、先に巻取軸15が支持された後に、ガイドレール本体29が固定されてもよい。
【0072】
従って、本実施形態に係る建物用シャッター11によれば、各部の締結部分を構成する各長穴である前後長穴87、上下長穴89,91、左右長穴93、前後長穴105,左右長穴109によって、必ずしも互いに平行で平滑でない建物躯体側の建物内対向面19に対して、それぞれを調整して、巻取軸15の水平度、ガイドレール23の垂直度などを調整可能とし、シャッターカーテン17を柱83間や壁85間の建物内対向面19に設置できる。
【0073】
また、建物用シャッター11は、溶接によらず、各ボルトなどの締結具により全ての取付固定が行えるので、無火気にて施工を行うことができ、施工期間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0074】
11…建物用シャッター
15…巻取軸
17…シャッターカーテン
19…建物内対向面
25…軸端支持ブラケット
27…ブラケット固定プレート
29…ガイドレール本体
31…補強部材
33…ジョイント部材
35…取付アングル
37…支持溝
39…ブラケット本体板
41…ブラケット固定片
47…載置片
51…プレート本体板
55…案内溝
57…係合部材
65…溝開口
71…ジョイント固定片
73…水平片
75…垂直片