(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】根がらみ金具、枠組み足場、及び、枠組み足場組立て方法
(51)【国際特許分類】
E04G 7/34 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
E04G7/34 304A
(21)【出願番号】P 2022174582
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2022-12-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594082187
【氏名又は名称】岡谷建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】弁理士法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 武史
(72)【発明者】
【氏名】井野 研治
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-038248(JP,Y1)
【文献】実開昭50-062319(JP,U)
【文献】実開昭50-080230(JP,U)
【文献】実開昭54-163526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数有する枠組み足場の最下層に、梁方向に所定距離離間して配置された第1のジャッキベース及び第2のジャッキベース間に配置される根がらみ金具において、
下側において前記第1のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第1支柱の下部に篏合する第1筒体と、
下側において前記第2のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第2支柱の下部に篏合する第2筒体と、
前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、
この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、
前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプと備えていることを特徴とする根がらみ金具。
【請求項2】
互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数有する枠組み足場の最上層に、梁方向に所定距離離間して配置された第1のジャッキベース及び第2のジャッキベース間に配置される根がらみ金具において、
上側において前記第1のジャッキベースの下部に篏合し、下側において前記支柱のうち第1支柱の上部に篏合する第1筒体と、
上側において前記第2のジャッキベースの下部に篏合し、下側において前記支柱のうち第2支柱の上部に篏合する第2筒体と、
前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、
この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、
前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプと備えていることを特徴とする根がらみ金具。
【請求項3】
前記梁方向水平材に取り付けられ、その水平性を計測する計測部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の根がらみ金具。
【請求項4】
互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数具備する枠組み足場において、
最下層に配置さ
れた第1のジャッキベースと、
最下層に配置され、前記第1のジャッキベースに対し、梁方向に所定距離離間して配置された第2のジャッキベースと、
これら第1のジャッキベース及び第2のジャッキベース間に配置された根がらみ金具を具備し、
前記根がらみ金具は、下側において前記第1のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第1支柱の下部に篏合する第1筒体と、
下側において前記第2のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第2支柱の下部に篏合する第2筒体と、
前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、
この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、
前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプと備えていることを特徴とする枠組み足場。
【請求項5】
互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数組み合わせて枠組み足場を組み立てる枠組み足場組立て方法において、
最下層に第1のジャッキベースを配置し、
前記第1のジャッキベースに対し、梁方向に所定距離離間して第2のジャッキベース
を最下層に配置し、
下側において前記第1のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第1支柱の下部に篏合する第1筒体と、下側において前記第2のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第2支柱の下部に篏合する第2筒体と、前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプを有する根がらみ金具を配置し、
前記梁方向水平材の水平を調整し、
前記第1筒体の上側に、前記第1支柱の下部を篏合させ、
前記第2筒体の上側に、前記第2支柱の下部を篏合させることを特徴とする枠組み足場組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠組み足場を構成する建枠の組立工程の初期段階における水平性を高く保ちつつ、枠組み足場全体の歪みを少なく、かつ、素早く簡単な手順で組み立てることができる根がらみ金具、枠組み足場、及び、枠組み足場組立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル、家屋等の建築物や構造物の建設・解体現場では、パイプ材等を組み合わせて枠組み足場を構成する枠組み足場が使用されることが多い(例えば、特許文献1,2参照。)。このような枠組み足場は、例えば、
図17~
図19に示すような工程で組み立てられている。すなわち、
図17に示すように、地面Gに対し、細長形状の敷板100を設置する。次に敷板100の所定位置にジャッキベース110を設置する。ジャッキベース110は、敷板100に釘止めされるベース板111と、下部外周面に雄ネジが形成されたジャッキ支柱112と、このジャッキ支柱112に螺合され、内周面に雌ネジが形成された筒状の回転操作部113と、この回転操作部113を回転させることで回転操作部113自体を上下動させるハンドル114とを備えている。
【0003】
次に、
図18に示すように、建枠130をジャッキベース110上に設置する。建枠130は、一対の建枠支柱131,132と、これら建枠支柱131,132の各上端に掛け渡された建枠水平材133と、建枠支柱131,132及び建枠水平材133の内側に配置された内枠134とを備えている。
【0004】
建枠支柱131,132はパイプ状に構成されており、ジャッキベース110のジャッキ支柱112に差し込まれて下部が固定される。建枠支柱131,132には、内側上部にフック135、内側下部にフック136が設けられている。ここで、筋違い140を建枠支柱131,132のフック135及びフック136に引っ掛けて止める。さらに、建枠支柱131,132の上端に鋼製布板150を取り付け、各建枠130間の間隔を所定寸法にして設置する。また、建枠130の高さ位置及び水平性は、建枠水平材133の上に水準器を置く等してジャッキベース110によって調整される。
【0005】
次に、
図19に示すように、建枠支柱131,132の下端に桁方向水平材120と根がらみ金具300を取り付ける。根がらみ金具300は、パイプ状の水平材310と、この水平材310の両端に取り付けられた一対の直交クランプ311を備えている。直交クランプ311は、建枠支柱131,132に把持する支柱用クランプ部品と、桁方向水平材120を把持する水平材用クランプ部材を備えている。
【0006】
取付手順は、最初に2本の桁方向水平材120を建枠支柱131,132の下端側に位置決めし、根がらみ金具300の直交クランプ311を用いて固定する。これにより、各建枠130間が直線状に補正される。さらに、直交クランプ311を用いて根がらみ金具300を建枠支柱131,132及び桁方向水平材120に取り付けて固定する。これにより、枠組み足場は歪みを最小限にした状態で完成する。なお、解体する際は、この逆の工程で解体することになる。
【0007】
なお、鋼製布板150に作業員が上がる際に便利になるように、階段部材320を用いる場合がある。階段部材320は、一対の平行の棒材から成る階段本体321と、この階段本体321に所定間隔で取り付けられた踏板322を備えている。階段本体321の下端及び上端にはフック321a,321bが取り付けられている。階段部材320を取り付ける際は上端のフック321bを建枠水平材133に引っ掛け、階段本体321を桁方向水平材120間に掛け渡された水平パイプ330の上に載置する。これにより踏板322の上面は水平に保たれる。なお、下端のフック321aはどこにも係合されない。なお、上層に階段部材320を取り付ける場合には、下端のフック321aは水平材310に引っ掛けられる。
【0008】
建枠130は必要に応じて、上方に継ぎ足していくことで、数階程度の高さまで枠組み足場を設置することができる。
【0009】
このように構成された枠組み足場は、単純な構造をしている頑丈な部材を用いると共に、必要に応じて組み立て、必要がなくなったら解体することで、繰り返し使用することができるというメリットがあり、多くの建設・解体現場等で用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-36706号公報
【文献】特開2019-190007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したような枠組み足場にあっては、次のような問題があった。すなわち、上述したように、建枠130をジャッキベース110上に設置する際に、建枠支柱131,132の下端をジャッキ支柱112に差し込むだけであり、水平方向への支えがないため、倒れる可能性がある。また、水平方向に離間したジャッキベース110によって建枠130の高さ位置調整を行っているため、十分に建枠130(特に建枠水平材133)の水平を維持することが難しかった。建枠130が傾いていると、上方に建枠130を継ぎ足した時に、少しずつ傾きが重畳されていき、鋼製布板150が大きく傾く可能性があった。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建枠の組立工程の初期段階における水平性を高く保ちつつ、枠組み足場全体の歪みを少なく、かつ、素早く簡単な手順で組み立てることができる根がらみ金具、枠組み足場、及び、枠組み足場組立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数有する枠組み足場の最下層に、梁方向に所定距離離間して配置された第1のジャッキベース及び第2のジャッキベース間に配置される根がらみ金具において、下側において前記第1のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第1支柱の下部に篏合する第1筒体と、下側において前記第2のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第2支柱の下部に篏合する第2筒体と、前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプと備えている。
【0014】
本発明は、互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数有する枠組み足場の最上層に、梁方向に所定距離離間して配置された第1のジャッキベース及び第2のジャッキベース間に配置される根がらみ金具において、上側において前記第1のジャッキベースの下部に篏合し、下側において前記支柱のうち第1支柱の上部に篏合する第1筒体と、上側において前記第2のジャッキベースの下部に篏合し、下側において前記支柱のうち第2支柱の上部に篏合する第2筒体と、前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプと備えている。
【0015】
本発明は、互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数具備する枠組み足場において、最下層に配置された第1のジャッキベースと、最下層に配置され、前記第1のジャッキベースに対し、梁方向に所定距離離間して配置された第2のジャッキベースと、これら第1のジャッキベース及び第2のジャッキベース間に配置された根がらみ金具を具備し、前記根がらみ金具は、下側において前記第1のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第1支柱の下部に篏合する第1筒体と、下側において前記第2のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第2支柱の下部に篏合する第2筒体と、前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプと備えている。
【0016】
本発明は、互いに直交する桁方向水平材、梁方向水平材、及び、支柱をそれぞれ複数組み合わせて枠組み足場を組み立てる枠組み足場組立て方法において、最下層に第1のジャッキベースを配置し、前記第1のジャッキベースに対し、梁方向に所定距離離間して第2のジャッキベースを最下層に配置し、下側において前記第1のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第1支柱の下部に篏合する第1筒体と、下側において前記第2のジャッキベースの上部に篏合し、上側において前記支柱のうち第2支柱の下部に篏合する第2筒体と、前記第1筒体と前記第2筒体との間に設けられた梁方向水平材と、この梁方向水平材の前記第1筒体側に設けられ、第1桁方向水平材を把持する第1クランプと、前記梁方向水平材の前記第2筒体側に設けられ、第2桁方向水平材を把持する第2クランプを有する根がらみ金具を配置し、前記梁方向水平材の水平を調整し、前記第1筒体の上側に、前記第1支柱の下部を篏合させ、前記第2筒体の上側に、前記第2支柱の下部を篏合させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の根がらみ金具、枠組み足場、及び、枠組み足場組立て方法によれば、枠組み足場を構成する建枠の組立工程の初期段階における水平性を高く保ちつつ、枠組み足場全体の歪みを少なく、かつ、素早く簡単な手順で組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態である根がらみ金具を示す斜視図である。
【
図2】同根がらみ金具の要部を拡大して示す正面図である。
【
図3】同根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図4】同根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図5】同根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図6】同根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図7】同根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図8】同根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図9】同根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図10】同根がらみ金具を用いる枠組み足場において階段を取り付けた状態を示す側面図である。
【
図11】同根がらみ金具を用いる枠組み足場において寸法規定治具を取り付けた状態を示す上面図である。
【
図12】同根がらみ金具を用いる枠組み足場において水平規定装置を取り付けた状態を示す側面図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態である根がらみ金具を示す斜視図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態である根がらみ金具を示す斜視図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態である根がらみ金具を示す斜視図である。
【
図16】同根がらみ金具を用いた枠組み足場の使用例を示す正面図である。
【
図17】一般的な根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図18】一般的な根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図19】一般的な根がらみ金具を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図である。
【
図20】一般的な根がらみ金具を用いる枠組み足場において階段を取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は本発明の第1の実施形態である根がらみ金具10を示す斜視図、
図2は根がらみ金具10の要部を拡大して示す正面図、
図3~
図9は根がらみ金具10を用いる枠組み足場の組立工程を示す斜視図、
図10は根がらみ金具10を用いる枠組み足場において階段を取り付けた状態を示す側面図である。なお、本実施形態における各部品は特に示さない限り、原則として金属材製である。
【0021】
図1に示すように、根がらみ金具10は、軸心線を鉛直方向に向けて配置された第1筒体20及び第2筒体30と、これら第1筒体20及び第2筒体30を接続する梁方向水平材40を備えており、梁方向水平材40の第1筒体20及び第2筒体30側にはそれぞれクランプ(第1クランプ、第2クランプ)50が設けられている。
【0022】
第1筒体20は、下部筒21と、この下部筒21よりも僅かに径が大きい上部筒22が同軸的、かつ、一体に形成されている。下部筒21の内部側には、後述するジャッキ支柱112が篏合する寸法に形成されている。上部筒22の内部側には、後述する建枠支柱131が篏合する寸法に形成されている。
【0023】
第2筒体30は、下部筒31と、この下部筒31よりも僅かに径が大きい上部筒32が同軸的、かつ、一体に形成されている。下部筒31の内部側には、ジャッキ支柱112が篏合する寸法に形成されている。上部筒32の内部側には、建枠支柱132が篏合する寸法に形成されている。
【0024】
梁方向水平材40は、水平方向に配置される筒状のパイプ材41を備えている。
【0025】
クランプ50は、パイプ材41に密着配置されたベース材51を備えている。ベース材51は、板金を断面コの字状に折曲して形成され、一対の壁部51aを有している。一対の壁部51a間には、ボルトが差し込まれナット52によって固定されている。ベース材51には、ブラケット51bが形成されている。ブラケット51bには、パイプ固定金具53が取り付けられている。パイプ固定金具53は、円弧状の金具本体53aを有し、この金具本体53aの基端側はブラケット51bに軸支されている軸支部53bと、後述するボルト54に係合する先端部53cを備えている。
【0026】
図2中54は、ボルトを示している。ボルト54は、ボルト本体54aを有し、このボルト本体54aの先端側には軸支部54bによって壁部51aに軸支されている。またボルト本体54aは先端部53cに係止され、上部側は先端部53cよりも大径のナット54cが螺合している。
【0027】
枠組み足場は、根がらみ金具10の他、敷板100、ジャッキベース(梁方向に離間した第1のジャッキベース,第2のジャッキベース)110、桁方向水平材(梁方向に離間した第1桁方向水平材,第2桁方向水平材)120、建枠130、階段部材160等を備えている。
【0028】
ジャッキベース110は、
図4に示すように、敷板100にボルト止めされるベース板111と、下部外周面に雄ネジが形成されたジャッキ支柱112と、このジャッキ支柱112に螺合され、内周面に雌ネジが形成された筒状の回転操作部113と、この回転操作部113を回転させることで回転操作部113自体を上下動させるハンドル114とを備えている。
【0029】
建枠130は、
図7に示すように、一対の建枠支柱(第1支柱、第2支柱)131,132と、これら建枠支柱131,132の各上端に掛け渡された建枠水平材133と、建枠支柱131,132及び建枠水平材133の内側に配置された内枠134とを備えている。建枠支柱131,132はパイプ状に構成されており、ジャッキベース110の上部筒22,32に差し込まれて下部が固定される。建枠支柱131,132には、内側上部にフック135、内側下部にフック136が設けられている。
【0030】
階段部材160は、一対の平行の棒材から成る階段本体161と、この階段本体161に所定間隔で取り付けられた踏板162を備えている。階段本体321の下端及び上端にはフック161a,161bが取り付けられている。
【0031】
このように構成された根がらみ金具10を用いて、次のようにして枠組み足場を組み立てる。すなわち、
図3に示すように、地面Gに対し、細長形状の敷板100を設置する。次に
図4に示すように、敷板100の所定位置にジャッキベース110を設置する。次に、
図5に示すように、根がらみ金具10の下部筒21及び下部筒31をジャッキ支柱112に差し込み、ジャッキベース110上に設置する。次に、ハンドル114によって回転操作部113を上下させ、根がらみ金具10のパイプ材41が水平になるように調整する。
【0032】
次に、
図6に示すように、根がらみ金具10のクランプ50に桁方向水平材120を取り付ける。クランプ50へ桁方向水平材120を取り付ける際には、ボルト54に螺合しているナット54cを緩めて、ボルト本体54aを先端部53cから外し、軸支部53bを中心に金具本体53aを回動させて拡げる。
【0033】
そして、ジャッキベース110のハンドル114によって回転操作部113を上下させ、桁方向水平材120の水平性が出るように調整する。その後、軸支部53bを中心に金具本体53aを回動させて狭めて閉じる。さらに、ボルト本体54aを先端部53c側に倒し、ナット54cを螺合させて固定する。以下、パイプ材を着脱する際には同様な操作を行う。
【0034】
次に、
図7に示すように、建枠130を根がらみ金具10上に設置する。建枠支柱131,132をジャッキベース110の上部筒22,32に差し込んで下部を固定する。
【0035】
次に、
図8に示すように、筋違い140を建枠支柱131,132のフック135及びフック136に引っ掛けて止める。さらに、
図9に示すように、建枠支柱131,132の上端に鋼製布板150を取り付ける。これにより、枠組み足場が完成する。なお、解体する際は、この逆の工程で解体することになる。
【0036】
図10は、鋼製布板150に作業員が上がる際に便利になるように、必要に応じて階段部材160を取り付けた状態を示している。階段部材160は、一対の平行の棒材から成る階段本体161と、この階段本体161に所定間隔で取り付けられた踏板162を備えている。階段本体321の下端及び上端にはフック161a,161bが取り付けられている。階段部材160を取り付ける際は下端のフック161aを根がらみ金具10のパイプ材41に引っ掛け、さらに上端のフック161bを建枠水平材133に引っ掛けて固定する。
【0037】
建枠130は必要に応じて、上方に継ぎ足していくことで、数階程度の高さまで枠組み足場を設置することができる。
【0038】
このように組み立てられた枠組み足場は、根がらみ金具10を予め水平を十分に調整した状態で建枠130を設置しているので、上方の鋼製布板150上面を水平に維持することができ、作業を安全に行うことができる。さらに、建枠130を上方に継ぎ足しても水平に保たれる。また、根がらみ金具10のクランプ50に桁方向水平材120を取り付けてから、建枠130を立てているため、建枠130が倒れることがなく、安全に作業を行うことができる。したがって、枠組み足場を構成する建枠の組立工程の初期段階における水平性を高く保ちつつ、枠組み足場全体の歪みを少なく、かつ、素早く簡単な手順で組み立てることができる。なお、根がらみ金具10の梁方向水平材40は、その梁方向のパイプ材41の両端にそれぞれ、第1筒体20及び第2筒体30が形成されているため、枠組み足場を狭い場所に設置した場合でも、パイプ材41の両端が作業者に接触することを防止することができ、作業性を向上させることができる。
【0039】
図11は根がらみ金具10を用いる枠組み足場において寸法規定治具(スパン調整枠)170を取り付けた状態を示す上面図である。寸法規定治具170は、梁方向に離間した一対の水平部材171と、これら水平部材171の両端に設けられたフック172と、一対の水平部材171間に掛け渡された補助部材173とを備えている。
【0040】
上述した枠組み足場においては、梁方向の寸法は根がらみ金具10によって規定されているが、桁方向の寸法は特に規定されていない。このため、寸法規定治具170のフック172を、例えば建枠130に引っ掛けることで、建枠130の桁方向の間隔を設計通りに設置することができ、枠組み足場が歪むことを防止することができる。
【0041】
図12は根がらみ金具を用いる枠組み足場において水平規定装置200を取り付けた状態を示す側面図である。水平規定装置200は、鉛直方向に延びる支柱201と、この支柱201の下端に設けられ、ジャッキ支柱112に嵌合する筒部202と、支柱201上部に設けられた雄ネジ部203と、この雄ネジ部203に螺合し、上下の位置を調節できる水平センサ204を備えている。水平センサ204により、ジャッキ支柱112が鉛直方向に設置されているかどうかを確認することができる。これにより、枠組み足場が歪むことを防止することができる。
【0042】
図13は本発明の第2の実施形態である根がらみ金具10Aを示す斜視図である。
図13において、
図1と同一機能部分には同一符号を付した。
【0043】
根がらみ金具10Aは、軸心線を鉛直方向に向けて配置された第1筒体20及び第2筒体30と、これら第1筒体20及び第2筒体30を接続する梁方向水平材40を備えており、梁方向水平材40の第1筒体20及び第2筒体30側にはそれぞれクランプ(第1クランプ、第2クランプ)60が設けられている。
【0044】
第1筒体20は、下部筒21と、この下部筒21よりも僅かに径が大きい上部筒22が同軸的、かつ、一体に形成されている。下部筒21の内部側には、後述するジャッキ支柱112が篏合する寸法に形成されている。上部筒22の内部側には、建枠支柱131が篏合する寸法に形成されている。
【0045】
第2筒体30は、下部筒31と、この下部筒31よりも僅かに径が大きい上部筒32が同軸的、かつ、一体に形成されている。下部筒31の内部側には、ジャッキ支柱112が篏合する寸法に形成されている。上部筒32の内部側には、建枠支柱132が篏合する寸法に形成されている。
【0046】
梁方向水平材40は、水平方向に配置される筒状のパイプ材41を備えている。
【0047】
クランプ60は、パイプ材41の端部に配置されたベース板61を備えている。ベース板61は、板金を断面L字状に折曲して形成され、一対の鍔部62を有している。ベース板61は、U字金具63によって上部筒22,32に固定されている。ベース板61には、一対の壁部64が設けられ、一対の壁部64間には、ボルト(不図示)が差し込まれ固定されている。壁部64には、パイプ固定金具65が取り付けられている。パイプ固定金具65は、円弧状の金具本体65aを有し、この金具本体65aの基端側は壁部64に軸支されている軸支部65bと、後述するボルト66に係合する先端部65cを備えている。
【0048】
図13中66は、ボルトを示している。ボルト66は、ボルト本体66aを有し、このボルト本体66aの先端側には軸支部66bによって壁部64に軸支されている。またボルト本体66aは先端部65cに係止され、上部側は先端部65cよりも大径のナット66cが螺合している。
【0049】
このように構成された根がらみ金具10Aにおいても、上述した根がらみ金具10と同様の効果を得ることができると共に、桁方向水平材120を第1筒体20、第2筒体30の外側で保持することができる。枠組み足場の構造や寸法によって、根がらみ金具10と使い分けることができる。
【0050】
図14は本発明の第3の実施形態である根がらみ金具10Bを示す斜視図である。
図14において、
図1と同一機能部分には同一符号を付した。
【0051】
前述した根がらみ金具10及び根がらみ金具10Aにおいては、クランプ50,60を用いて桁方向水平材120を支持したが、クランプ50,60を用いずに、梁方向水平材40にボルト止めしても良い。なお、
図14中42,43は、パイプ材41に設けられた貫通穴である。
【0052】
図15は本発明の第4の実施形態である根がらみ金具10Cを示す斜視図、
図16は同根がらみ金具10Cを用いた枠組み足場の使用例を示す正面図である。
図15,16において、
図9,14と同一機能部分には同一符号を付した。
【0053】
根がらみ金具10Cは、軸心線を鉛直方向に向けて配置された第1筒体70及び第2筒体80と、これら第1筒体70及び第2筒体80を接続する梁方向水平材40を備えている。パイプ材41には、桁方向水平材120を固定するための貫通穴42,43が形成されている。
【0054】
第1筒体70は、上部筒71と、この上部筒71よりも僅かに径が大きい下部筒72が同軸的、かつ、一体に形成されている。
図16に示すように、上部筒71の内部側には、ジャッキ支柱112が篏合する寸法に形成されている。下部筒72の内部側には、建枠支柱131が篏合する寸法に形成されていると共に、建枠水平材133との干渉を避けるための切欠部72aが形成されている。
【0055】
第2筒体80は、上部筒81と、この上部筒81よりも僅かに径が大きい下部筒82が同軸的、かつ、一体に形成されている。
図16に示すように、上部筒81の内部側には、ジャッキ支柱112が篏合する寸法に形成されている。下部筒82の内部側には、建枠支柱132が篏合する寸法に形成されていると共に、建枠水平材133との干渉を避けるための切欠部82aが形成されている。
【0056】
このような根がらみ金具10Cは、枠組み足場の最下層ではなく、最上層に設置される。すなわち、
図16に示すように、ジャッキベース110は、断面コの字状の金属板115を有している。金属板115は桁方向に延びる棟木210を支持し、その上に天板220を設置することができる。このように構成されていると、建枠130の上に根がらみ金具10Cを介してジャッキベース110を設置でき、ジャッキベース110を調整することで、天板220の水平を調整することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、建築現場等に用いられる枠組み足場を構成する建枠の組立工程の初期段階における水平性を高く保ちつつ、枠組み足場全体の歪みを少なく、かつ、素早く簡単な手順で組み立てることができる根がらみ金具、枠組み足場、及び、枠組み足場組立て方法として有効である。
【符号の説明】
【0059】
10,10A,10B,10C…根がらみ金具、20…第1筒体、21…下部筒、22…上部筒、30…第2筒体、31…下部筒、32…上部筒、40…梁方向水平材、41…パイプ材、42…貫通穴、43…貫通穴、50…クランプ、51…ベース材、51a…壁部、51b…ブラケット、52…ナット、53…パイプ固定金具、53a…金具本体、53b…軸支部、53c…先端部、54…ボルト、54a…ボルト本体、54b…軸支部、54c…ナット、60…クランプ、61…ベース板、62…鍔部、63…U字金具、64…壁部、65…パイプ固定金具、65a…金具本体、65b…軸支部、65c…先端部、66…ボルト、66a…ボルト本体、66b…軸支部、66c…ナット、70…第1筒体、71…上部筒、72…下部筒、72a…切欠部、80…第2筒体、81…上部筒、82…下部筒、82a…切欠部、100…敷板、110…ジャッキベース、111…ベース板、112…ジャッキ支柱、113…回転操作部、114…ハンドル、115…金属板、120…桁方向水平材、130…建枠、131…建枠支柱、132…建枠支柱、133…建枠水平材、134…内枠、135…フック、136…フック、150…鋼製布板、160…階段部材、161…階段本体、161a…フック、161b…フック、162…踏板、170…寸法規定治具、171…水平部材、172…フック、173…補助部材、200…水平規定装置、201…支柱、202…筒部、203…雄ネジ部、204…水平センサ、210…棟木、220…天板、300…金具、310…水平材、311…直交クランプ、320…階段部材、321…階段本体、321a…フック、321b…フック、322…踏板、330…水平パイプ。
【要約】
【課題】枠組み足場を構成する建枠の組立工程の初期段階における水平性を高く保ちつつ、枠組み足場全体の歪みを少なく、かつ、素早く簡単な手順で組み立てることができる。
【解決手段】直交する桁方向水平材120、梁方向水平材40、及び、建枠支柱131,132をそれぞれ複数有する枠組み足場の最下層に、梁方向に所定距離離間して配置されたジャッキベース110間に配置される根がらみ金具10において、ジャッキベース110の上部に篏合し、建枠支柱131の下部に篏合する第1筒体20と、ジャッキベース110の上部に篏合し、建枠支柱132の下部に篏合する第2筒体30と、第1筒体20と第2筒体30との間に設けられた梁方向水平材40と、梁方向水平材40の第1筒体20側に設けられ、桁方向水平材120を把持するクランプ50と、梁方向水平材40の第2筒体30側に設けられ、桁方向水平材120を把持するクランプ50と備えている。
【選択図】
図1