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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】毛髪化粧料用組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/362 20060101AFI20230417BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20230417BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20230417BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/24
A61Q5/08
A61Q5/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016184672
(22)【出願日】2016-09-21
(65)【公開番号】P2018048091
(43)【公開日】2018-03-29
【審査請求日】2019-08-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽介
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 祐未
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】野田 定文
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-363048(JP,A)
【文献】特開2016-11297(JP,A)
【文献】特開2003-95896(JP,A)
【文献】特開2003-221319(JP,A)
【文献】特開2001-342119(JP,A)
【文献】特表2016-528290(JP,A)
【文献】特表2016-528291(JP,A)
【文献】特表2007-503410(JP,A)
【文献】特開昭50-5539(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2873411(EP,A1)
【文献】特開2001-213737(JP,A)
【文献】特開2003-192540(JP,A)
【文献】特開2000-247850(JP,A)
【文献】特開2003-238371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と別剤として構成され、該毛髪化粧料組成物と混合して使用され、該毛髪化粧料組成物と混合された際のpHが9.2以上である毛髪化粧料用組成物(炭素数2~6の有機酸0.5~10質量%、炭素数2~6の有機酸のアルカリ金属塩、シクロデキストリン、及び非イオン界面活性剤を含み、pHが3~8である毛髪処理用水系液体消臭剤組成物を除き、乳酸4.5質量%又は8質量%含有する直接染毛剤であって、28%アンモニア水、ヒドロキシエチルセルロースジメチルアリルアンモニウムクロリド0.8質量%、ポリオキシエチレン(21)ラウリルエーテル5質量%を含有する1剤、過酸化水素水(35%)を含有する2剤を重量比1:1で混合し、毛髪に塗布した後、続いで塗布される直接染毛剤を除く)であって、
前記毛髪化粧料用組成物中において(A)酸(脂肪酸類を除く)を0.5質量%以上含有し、さらに前記(A)酸が3価の以上の酸の場合、15質量%以下であり、前記(A)酸が2価の酸の場合、10.5質量%以下であり、前記(A)酸が1価の酸の場合、45質量%以下である毛髪化粧料用組成物。
【請求項2】
さらに、前記毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物中において、
(B)カチオン性ポリマーを含有し、
前記混合物中における(B)カチオン性ポリマーの含有量に対する(A)酸の含有量の質量比が、0.2~10である請求項1に記載の毛髪化粧料用組成物。
【請求項3】
さらに、前記毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物中において、(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤を1質量%以上含有する請求項1又は2に記載の毛髪化粧料用組成物。
【請求項4】
前記(A)酸は、三価以上の酸を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料用組成物の使用方法であって、
前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物と、前記毛髪化粧料用組成物を混合した後、毛髪に適用される工程、
前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を毛髪に塗布した後、前記毛髪化粧料用組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料組成物上に重ねて塗布する工程、又は
前記毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布する工程、を含む毛髪化粧料用組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と混合して使用される毛髪化粧料用組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪化粧料組成物として、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤が知られている。そのような毛髪化粧料組成物としては、例えば、アルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される酸化染毛剤が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染毛力を向上させる。
【0003】
かかる染毛処理等を繰り返し受けた毛髪は、ダメージを受けやすくなり、毛髪のハリコシ(弾力性)が次第に低下しやすくなるという問題があった。従来より、特許文献1,2に開示されるようなダメージ毛に対して適用され、トリートメント成分を配合したヘアトリートメント剤が知られている。特許文献1は、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等の油性成分を配合し、複数剤から構成されるヘアトリートメント剤について開示する。特許文献2は、グルコノラクトン等を配合した毛髪処理剤を毛髪に塗布し、熱処理を施す毛髪の改善方法について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-286774号公報
【文献】特開2013-53113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば染毛処理が完了した後、毛髪の弾力性を付与するために、別途ヘアトリートメント剤で改めて毛髪を施術することは煩雑であった。
本発明の目的は、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤等の毛髪化粧料組成物と混合して使用することができ、優れた毛髪の弾力性向上作用を付与することができる毛髪化粧料用組成物及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定量の酸を含有する組成物を染毛剤等の毛髪化粧料組成物に混合することにより、毛髪の弾力性向上作用を付与できることを見出したことに基づくものである。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤も含めた剤型中における数値である。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と混合して使用される毛髪化粧料用組成物であって、前記毛髪化粧料用組成物中において(A)酸を0.5質量%以上含有することを特徴とする。
【0008】
さらに、前記毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物中において、(B)カチオン性ポリマーを含有し、前記混合物中における(B)カチオン性ポリマーの含有量に対する(A)酸の含有量の質量比が、0.2~10であってもよい。さらに、前記毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物中において、(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤を1質量%以上含有してもよい。前記(A)酸は、三価以上の酸を含んでもよい。
【0009】
本発明の別の態様では、前記毛髪化粧料用組成物の使用方法であって、前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物と、前記毛髪化粧料用組成物を混合した後、毛髪に適用される工程、前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を毛髪に塗布した後、前記毛髪化粧料用組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料組成物上に重ねて塗布する工程、又は
前記毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、前記アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布する工程、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、毛髪化粧料用組成物を毛髪に適用することで毛髪の弾力性向上作用を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の毛髪化粧料用組成物を具体化した一実施形態を説明する。本発明の毛髪化粧料用組成物は、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と混合して使用される。毛髪化粧料組成物の具体例としては、例えば2剤式の毛髪脱色・脱染剤、3剤式の毛髪脱色・脱染剤、1剤式の毛髪脱色剤、2剤式の染毛剤、3剤式の染毛剤、1剤式の染毛剤等が挙げられる。各毛髪化粧料組成物は、各剤の混合物が毛髪に適用されることにより、通常の脱色・脱染処理、又は染毛処理の工程においても用いることができる。以下、各毛髪化粧料組成物の成分について例示する。
【0012】
<2剤式の毛髪脱色・脱染剤>
2剤式の毛髪脱色・脱染剤は、例えば、少なくともアルカリ剤を含有する第1剤と、少なくとも酸化剤を含有する第2剤とから構成される。この第1剤と第2剤との混合物は、通常の脱色・脱染処理工程において用いることができる。さらに脱色・脱染剤の混合物が後述する毛髪化粧料用組成物と混合され、特に弾力性が低下した毛髪に対して脱色又は脱染のために用いられる。
【0013】
(2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤)
第1剤は、アルカリ剤を含有し、(B)カチオン性ポリマー等を含有してもよい。第1剤に含有されるアルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進させることにより、毛髪の脱色効果又は脱染効果を向上する働きをする。アルカリ剤としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。ケイ酸塩の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。炭酸水素塩の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩の具体例としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。硫酸塩の具体例としては、例えば硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩化物の具体例としては、例えば塩化アンモニウム等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、例えばリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、脱色等効果の向上の観点から、アンモニア及びアンモニウム塩が好ましく適用される。
【0014】
毛髪化粧料組成物中、すなわち第1剤及び第2剤の混合物中におけるアルカリ剤の含有量は、毛髪脱色・脱染剤が通常の脱色・脱染処理に適用される場合、pHが7.5~12の範囲となる量で配合されることが好ましく、pH9~12の範囲となる量で配合されることがより好ましい。第1剤及び第2剤の混合物のpHを7.5以上とすることにより、第2剤に含まれる酸化剤の作用をより促進することができる。第1剤及び第2剤の混合物のpHを12以下とすることにより、毛髪脱色・脱染剤の塗布による毛髪のダメージをより抑制することができる。なお、毛髪化粧料組成物のpHは、毛髪化粧料組成物を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
【0015】
(B)カチオン性ポリマーは、感触を向上させる。そのため、毛髪化粧料組成物中には、(B)カチオン性ポリマーを含有することが好ましい。(B)カチオン性ポリマーの具体例としては、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0016】
カチオン化セルロース誘導体の具体例としては、例えばヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム-10(INCI名称):例えばレオガードG、同GP(ライオン社製)、ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M(Amerchol社製)、セルコートSC-230M(アクゾノーベル社製))、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(ポリクオタニウム-4:例えばセルコートH-100、同L-200(アクゾノーベル社製))等が挙げられる。
【0017】
ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体の具体例としては、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム)(ポリクオタニウム-6:例えばマーコート100(ルーヴリゾール社製))、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22:例えばマーコート280(ルーヴリゾール社製))、アクリル酸/ジアリル第四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0018】
4級化ポリビニルピロリドンの具体例としては、例えばビニルピロリドンとメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体と硫酸ジエチルから得られる4級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11:例えばガフコート734、同755(アイエスピー・ジャパン社製))等が挙げられる。
【0019】
毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物の混合物中における(B)カチオン性ポリマーの含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。(B)カチオン性ポリマーの含有量が0.01質量%以上であると、毛髪の感触をより向上させることができる。
【0020】
毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物の混合物中における(B)カチオン性ポリマーの含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。(B)カチオン性ポリマーの含有量が2質量%以下であると、毛髪の感触をより向上させることができる。
【0021】
毛髪脱色・脱染剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば可溶化剤、上記以外の水溶性ポリマー、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、pH調整剤、糖、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、キレート化剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
【0022】
可溶化剤は、例えば、第1剤を液状にする場合に配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルオキシエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第1剤中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。溶媒として水が用いられる場合、第1剤と第2剤の混合物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0023】
水溶性ポリマーは、毛髪脱色・脱染剤に適度な粘度を与える。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性ポリマーを含有してもよい。水溶性ポリマーとしては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物系高分子が挙げられる。天然高分子の具体例としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン、トリグルコ多糖(プルラン)等が挙げられる。
【0024】
半合成高分子の具体例としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。
【0025】
合成高分子の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、イタコン酸とポリオキシエチレン(以下、「POE」という)アルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらの水溶性ポリマーのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0026】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
【0027】
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、ラノリン、オリーブ油(オリブ油)、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油等が挙げられる。ロウの具体例としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリンロウ等が挙げられる。高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0028】
炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0029】
エステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0030】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0031】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0032】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として毛髪脱色・脱染剤を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0033】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、それらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。スルホコハク酸エステルの具体例として、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。N-アルキロイルメチルタウリン塩の具体例として、例えばN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。塩化アルキルトリメチルアンモニウムの具体例としては、例えば塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0035】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0036】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEポリオキシプロピレンセチルエーテル、POEポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。
【0037】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、POE還元ラノリン等が挙げられる。
【0038】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(炭素数8~16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0039】
pH調整剤は、毛髪脱色・脱染剤のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤は、適宜公知のものから選択される。糖の具体例としては、例えばグルコース、ガラクトース等の単糖、マルトース、スクロース、フルクトース、トレハロース等の二糖、糖アルコール等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸類及び亜硫酸塩等が挙げられる。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。
【0040】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固体状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。噴射剤又は発泡剤の具体例としては、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられる。
【0041】
(2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第2剤)
第2剤は、酸化剤の他、上述した可溶化剤等を配合することもできる。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性をより向上させる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。第2剤中における酸化剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.0質量%以上である。酸化剤の含有量が0.1質量%以上の場合、メラニンの脱色性をより向上することができる。また、第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。酸化剤の含有量が15.0質量%以下の場合、毛髪のダメージ等をより抑制することができる。
【0042】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばスズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、又はその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、毛髪脱色・脱染剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0043】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固体状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。
【0044】
<3剤式の毛髪脱色・脱染剤>
3剤式の毛髪脱色・脱染剤は、例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、上述した2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、上述した2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第3剤とから構成される。このようにして構成される3剤式の毛髪脱色・脱染剤は良好な保存安定性を有する。また、上述した2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第1剤と、上述した2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、過硫酸塩等の酸化助剤又は過炭酸塩等の酸化剤を含む第3剤とから構成されてもよい。
【0045】
<1剤式の毛髪脱色剤>
1剤式の毛髪脱色剤では、粉末状の各成分を含有する。1剤式の毛髪脱色剤は、粉末状の剤型として構成されるため、アルカリ剤及び酸化剤は、好ましくは粉末状のものが用いられる。1剤式の毛髪脱色剤は、毛髪脱色剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。1剤式の毛髪脱色剤は、使用時に上述した溶媒に溶解させることにより使用される。
【0046】
<2剤式の染毛剤>
2剤式の染毛剤は、例えば、少なくともアルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、少なくとも酸化剤を含有する第2剤とから構成される。この染毛剤は、第1剤と第2剤との混合物が通常の染毛処理工程において用いることができる。さらに染毛剤の混合物が後述する毛髪化粧料用組成物と混合され、特に弾力性が低下した毛髪に対して染毛処理のために用いられる。以下、上述した毛髪脱色・脱染剤との相違点を中心に説明する。
【0047】
(2剤式の染毛剤の第1剤)
染毛剤の第1剤は、例えばアルカリ剤、及び酸化染料を含有し、(B)カチオン性ポリマー等を含有してもよい。第1剤に含有されるアルカリ剤及び(B)カチオン性ポリマーの例としては、上述した毛髪脱色・脱染剤において使用されるアルカリ剤及び(B)カチオン性ポリマーの具体例として先に説明したのと同じである。酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類され、酸化染料は好ましくは染料中間体及びカプラーを含んでいる。
【0048】
染料中間体としては、例えばp-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール及びそれらの塩が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの染料中間体の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0049】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、及びそれらの塩が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのカプラーの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。
【0050】
第1剤及び第2剤の混合物中における酸化染料の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。酸化染料の含有量が0.01質量%以上であると、特に色味をより向上させることができる。
【0051】
第1剤及び第2剤の混合物中における酸化染料の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。酸化染料の含有量が10質量%以下であると、特に可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上させることができる。
【0052】
また、第1剤は必要に応じて前述した成分以外の成分、例えば上述した毛髪脱色・脱染剤の第1剤に含まれるアルカリ剤以外の成分をさらに含有してもよい。
(2剤式の染毛剤の第2剤)
染毛剤の第2剤は、例えば、上述した毛髪脱色・脱染剤の第2剤と同じ組成を有する。
【0053】
<1剤式の染毛剤>
1剤式の染毛剤では、粉末状の各成分を含有する。1剤式の染毛剤は、粉末状の剤型として構成されるため、アルカリ剤及び酸化剤は、好ましくは粉末状のものが用いられる。1剤式の染毛剤は、染毛剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。1剤式の染毛剤は、使用時に上述した溶媒に溶解させることにより使用される。
【0054】
<3剤式の染毛剤>
3剤式の染毛剤は、例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、上述した2剤式の染毛剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、上述した2剤式の染毛剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第3剤とから構成される。また、上述した2剤式の染毛剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第1剤と、上述した2剤式の染毛剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、過硫酸塩等の酸化助剤又は過炭酸塩等の酸化剤を含む第3剤とから構成されてもよい。
【0055】
<毛髪化粧料用組成物>
本実施形態の毛髪化粧料用組成物は、上述した毛髪化粧料組成物と混合して使用される。毛髪化粧料用組成物は、(A)酸の他、該(A)酸以外のpH調整剤、(B)カチオン性ポリマー、(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、可溶化剤等を含有してもよい。(A)酸としては、毛髪化粧料組成物に配合されるアルカリ剤との反応により、塩を形成するものであれば、いずれも適用することができる。(A)酸は、毛髪化粧料組成物中のアルカリ剤と反応し、塩を生成するとともに、毛髪化粧料組成物と毛髪化粧料用組成物との混合物のpHを低下させる。(A)酸としては、例えば無機酸、有機酸、それらの塩等が挙げられる。無機酸の具体例としては、例えばリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。さらにリン酸の具体例としては、例えばオルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が含まれる。有機酸の具体例は、例えばクエン酸、イソクエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸等が挙げられる。有機酸塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて適用されてもよい。これらの中で、3価以上の酸が好ましく、リン酸がより好ましい。3価以上の酸の適用は、既染毛又は既脱色毛(以下、「既染毛等」という)と新生毛に対する明度の均一性に優れる。また、酸を配合すると仕上がりの色調が変化する場合があるが、1価又は2価の酸を配合した場合に比べて色調の変化を抑制することができる。リン酸の適用は、毛髪の弾力性向上作用により優れ、色調の変化抑制作用により優れるとともに、毛髪の感触に優れる。また、既染毛と新生毛に対する明度の均一性に優れる。
【0056】
毛髪化粧料用組成物中における(A)酸の含有量の下限は、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。(A)酸の含有量が0.5質量%以上であると、特に毛髪の弾力性を向上させ、既染毛等と新生毛に対する明度の均一性を向上させることができる。また、毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断される毛髪の取り扱い性を向上させることができる。
【0057】
毛髪化粧料用組成物中における(A)酸の含有量の上限は、3価以上の酸の場合、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。2価の酸の場合、好ましくは10.5質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。1価の酸の場合、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。(A)酸の含有量を好ましい上限より低下させると、毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断される毛髪の取り扱い性を向上させることができる。
【0058】
毛髪化粧料用組成物に配合されるpH調整剤は、毛髪に塗布される毛髪化粧料組成物を構成する混合物のpHを再調整することにより、特に既染毛等に対する毛髪のダメージをより抑制する。そのため、毛髪化粧料用組成物は、pH調整剤を含有することが好ましい。pH調整剤としては、上述したアルカリ剤を挙げることができる。アルカリ剤は、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて適用されてもよい。
【0059】
毛髪化粧料用組成物は、毛髪化粧料組成物と混合された際、混合物のpHを、混合前の毛髪化粧料組成物のpHと比べて好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上低下させることが好ましい。毛髪化粧料組成物のpHを0.1以上低下させることにより、毛髪のダメージを抑制することができ、既染毛等と新生毛に対する明度の均一性等を向上させることができる。なお、毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物のpHは、混合物を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
【0060】
毛髪化粧料用組成物のpHは、適宜設定されるが、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.2~4.0、さらに好ましくは1.5~3.0である。かかる範囲に規定することにより、毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物とが混合された混合物のpHを、上記混合前の毛髪化粧料組成物のpHと比べて0.1以上低下させる範囲、例えばpH9.2~9.6の範囲に調整しやすくなる。なお、毛髪化粧料用組成物のpHは、毛髪化粧料用組成物を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
【0061】
(B)カチオン性ポリマーは、毛髪の感触を向上させる。(B)カチオン性ポリマーの具体例としては、上述したカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。各成分の具体例として、2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤の欄において列挙した具体例を適宜採用することができる。これらは、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて適用されてもよい。
【0062】
毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物の混合物中における(B)カチオン性ポリマーの含有量に対する(A)酸の含有量の質量比(A/B)の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは1以上である。かかる質量比が0.2以上であると、毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断される毛髪の取り扱い性をより向上させることができる。
【0063】
毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物の混合物中における(B)カチオン性ポリマーの含有量に対する(A)酸の含有量の質量比の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10以下、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは6以下である。かかる質量比が10以下であると、毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断される毛髪の取り扱い性をより向上させることができる。
【0064】
(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤は、粘度を調整する機能に優れ、特に既染毛等に対する塗布性を向上させる。(C)成分において、POEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤のHLB値は、10以上、好ましくは15以上である。HLB値が高くなると、既染毛等に対する塗布性をより向上できる。(C)成分の具体例を以下に列挙する。なお、化合物名POEの括弧中の数値はE.O.の付加モル数を示す。また、ポリオキシプロピレンは、以下「POP」と表記し、括弧中の数字はP.O.の付加モル数を表わす。また、本発明においてHLB値は、後述する実測値により求められる値を採用するが、日光ケミカルズ社カタログ(2014年)記載の数値等を参考値として記載する。
【0065】
(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOE(10)POP(4)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(20)POP(4)セチルエーテル(HLB値16.5)、POE(20)POP(8)セチルエーテル(HLB値12.5)、POE(2)アルキル(炭素数12~15)エーテル(HLB値9.0)、POE(3)アルキル(炭素数12~14)エーテル(HLB値8.0)、POE(4)アルキル(炭素数12~15)エーテル(HLB値10.5)、POE(10)アルキル(炭素数12~15)エーテル(HLB値15.5)、POE(2)ラウリルエーテル(HLB値9.5)、POE(4.2)ラウリルエーテル(HLB値11.5)、POE(9)ラウリルエーテル(HLB値14.5)、POE(10)ラウリルエーテル(HLB値14.5)、POE(21)ラウリルエーテル(HLB値19.0)、POE(25)ラウリルエーテル(HLB値19.5)、POE(2)セチルエーテル(HLB値8.0)、POE(5.5)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(7)セチルエーテル(HLB値11.5)、POE(10)セチルエーテル(HLB値13.5)、POE(15)セチルエーテル(HLB値15.5)、POE(20)セチルエーテル(HLB値17.0)、POE(23)セチルエーテル(HLB値18.0)、POE(25)セチルエーテル(HLB値18.5)、POE(30)セチルエーテル(HLB値19.5)、POE(40)セチルエーテル(HLB値20.0)、POE(2)ステアリルエーテル(HLB値8.0)、POE(4)ステアリルエーテル(HLB値9.0)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB値18.0)、POE(150)ステアリルエーテル(HLB値19.2)、POE(2)オレイルエーテル(HLB値7.5)、POE(7)オレイルエーテル(HLB値10.5)、POE(10)オレイルエーテル(HLB値14.5)、POE(15)オレイルエーテル(HLB値16.0)、POE(20)オレイルエーテル(HLB値17.0)、POE(50)オレイルエーテル(HLB値18.0)、POE(5)ベヘニルエーテル(HLB値7.0)、POE(10)ベヘニルエーテル(HLB値10.0)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB値16.5)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB値18.0)、POE(150)ベヘニルエーテル(HLB値19.1)等が挙げられる。好ましくは、POE(10)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテルが挙げられる。これらは、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて適用されてもよい。
【0066】
尚、HLB(hydrophile-lipophile balance)は、W.C.Griffinによって考えられ、非イオン性界面活性剤に対して与えられた数値であり、非イオン性界面活性剤の親油基(アルキル基)と親水基(酸化エチレン鎖)との強さのバランスを数字で表したものである。HLB値は、乳化法から算出した実測値が用いられる(「ハンドブック-化粧品・製剤原料-」日光ケミカルズ株式会社(昭和52年2月1日改訂版発行)「20・3・1乳化法によるHLB値の実測」欄参照)。実測HLB値の測定には、界面活性剤の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL SS-10、HLB値4.7)とモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL TS-10、HLB値14.9)を組み合わせて使用する。被乳化物には流動パラフィンを使用する。尚、流動パラフィンは種類による又はロットによる変動が考えられる場合は、その都度測定する。流動パラフィンを上記2種類の界面活性剤で乳化し、最適な界面活性剤の割合を求め、流動パラフィンの所要HLB値(乳化されるHLB値)を求める。計算式は数式(1)に示される。
【0067】
【数1】
通常流動パラフィンの所要HLB値は、種類及びロットにもよるが10.1~10.3程度である。次に未知の界面活性剤のHLBの測定は、所要HLB値を求めた流動パラフィンを用いて測定する。未知の界面活性剤が親水性であればモノステアリン酸ソルビタンと組み合わせ、未知の界面活性剤が疎水性であればモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと組み合わせて、上記流動パラフィンを乳化し、安定性のあるところの最適割合を求め、未知の界面活性剤のHLB値をxとして上記数式(1)に当てはめて算出する。
【0068】
毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物中における(C)成分の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上である。かかる範囲に規定することにより、混合物の既染毛等に対する塗布性をより向上させることができる。
【0069】
毛髪化粧料用組成物に含有する可溶化剤は、毛髪化粧料用組成物を液状にし、毛髪化粧料組成物との混合性向上の観点から配合される。使用される可溶化剤の例としては、上述した水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。これらは、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて適用されてもよい。これらの中で、(A)酸の溶解性に優れる観点から水が好ましく適用される。
【0070】
毛髪化粧料用組成物は、毛髪化粧料組成物に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0071】
なお、例えば2剤式の毛髪化粧料組成物の第1剤及び第2剤、並びに毛髪化粧料用組成物との混合比は、塗布性及び混合性等の観点から適宜設定されるが、好ましくは1:1:0.2~1:3:0.4である。
【0072】
次に、本実施形態の毛髪化粧料用組成物の使用方法を以下に説明する。
まず、上述した複数剤からなる毛髪化粧料組成物の各剤が混合されることにより、又は1剤式の毛髪化粧料組成物に水等の溶媒が配合されることにより、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物の混合物が調製される。次に、かかる毛髪化粧料組成物の混合物と本実施形態の毛髪化粧料用組成物とが混合された後、毛髪に塗布される。毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物は、毛髪全体に塗布してもよいが、1又は2回以上アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物で処理された毛髪(既染毛等)に適用されることが好ましい。かかる既染毛等は、ダメージが蓄積され、毛髪の弾力性が低下しているため、毛髪化粧料用組成物の適用により弾力性を付与することができる。また、毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物は、毛髪化粧料組成物の混合物よりもpHが低下しているため、毛髪へのダメージを抑制することができる。例えば、最初に新生毛を含む生え際の染毛処理工程において、毛髪化粧料用組成物を含まない毛髪化粧料組成物の混合物を塗布し、次に既染毛等の染毛処理工程において、毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物とを混合して得られた混合物を塗布してもよい。毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物との混合物は、毛髪化粧料組成物の混合物よりもpHが低下しているため、最初に毛髪化粧料組成物を用いて染毛等された生え際(新生毛)に対して明度の均一性等の効果を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の毛髪化粧料用組成物と、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物の混合物との混合工程は、毛髪上で行われてもよい。例えば、生え際を含め、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物の混合物を毛髪全体に塗布した後、毛髪化粧料用組成物を、塗布された毛髪化粧料組成物上に重ねて塗布してもよい。また、先に毛髪化粧料用組成物を毛髪に塗布した後、アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物の混合物を、毛髪に塗布された毛髪化粧料用組成物上に重ねて塗布してもよい。かかる場合、毛髪化粧料用組成物は、弾力性の向上の観点及び毛髪へのダメージを抑制する観点から既染毛等を中心に塗布することが好ましい。
【0074】
各組成物の毛髪への塗布は、公知の方法、例えば薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。各組成物が毛髪に塗布された後、所定時間経過後、毛髪に塗布した混合物を洗い流す工程が行われる。
【0075】
本実施形態の毛髪化粧料用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物と混合して使用され、(A)酸を0.5質量%以上含有する毛髪化粧料用組成物を構成した。したがって、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物に対して、優れた毛髪の弾力性向上作用を付与することができる。特に、既染毛等のようなダメージが蓄積され、毛髪の弾力性が低下している箇所においては、毛髪化粧料用組成物の適用により弾力性を付与することができる。
【0076】
(2)従来より、新生毛と既染毛等を、同時にムラなく染毛等するためには、新生毛用の毛髪化粧料組成物と、染毛力等をやや弱くした既染毛等用の毛髪化粧料組成物の2つの種類の毛髪化粧料組成物を用意しておく必要があった。本実施形態の毛髪化粧料用組成物を用いて、新生毛用の毛髪化粧料組成物と混合することにより、新生毛用の毛髪化粧料組成物中に含有されるアルカリ剤が(A)酸により中和され、染毛力等をやや弱くすることができる。そのため、新生毛用の毛髪化粧料組成物から既染毛等用の毛髪化粧料組成物を調製することが可能となった。よって、新生毛用の毛髪化粧料組成物と既染毛等用の毛髪化粧料組成物の2つの種類の毛髪化粧料組成物を用意しておく必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0077】
(3)新生毛用の毛髪化粧料組成物を新生毛に塗布し、本実施形態の毛髪化粧料用組成物と新生毛用の毛髪化粧料組成物との混合物を既染毛等に適用することにより、明度の均一性等を向上させることができる。また、毛髪化粧料用組成物により、毛髪化粧料組成物のpHが低下するため、既染毛等に対するダメージの低下を抑制することができる。よって、新生毛と既染毛等において、毛髪の感触等の毛髪特性も、均一性を図ることができる。また、毛髪化粧料用組成物中の(A)酸が、毛髪化粧料組成物中のアルカリ剤と反応し、塩を生成するため、アルカリ剤としてアンモニアを使用する場合、アンモニア由来の臭気の低減を図ることができる。
【0078】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、(B)カチオン性ポリマー及び(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤は、使用時に毛髪化粧料用組成物と毛髪化粧料組成物の混合物中に配合されていればよく、保存時において毛髪化粧料組成物を構成する各剤、毛髪化粧料用組成物のいずれに配合されてもよい。
【0079】
・上記実施形態において、毛髪化粧料組成物と毛髪化粧料用組成物との混合方法は、特に限定されず、毛髪化粧料組成物と毛髪化粧料用組成物との混合物が毛髪上に存在するよう塗布されていれば、優れた毛髪の弾力性向上作用を得ることができる。例えば、最初に毛髪化粧料組成物の第1剤及び毛髪化粧料用組成物を混ぜて、その後毛髪化粧料組成物の第2剤を混ぜて使用してもよい。また、最初に毛髪化粧料組成物の第2剤及び毛髪化粧料用組成物を混ぜて、その後毛髪化粧料組成物の第1剤を混ぜて使用してもよい。また、混合工程もトレー等の容器内で混合してから毛髪に塗布しても、毛髪上でコーミングしながら混合してもよい。
【0080】
・上記実施形態において、上述した酸化染料以外の染料として、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された直接染料を適宜含有してもよい。
【0081】
・上記実施形態において、毛髪化粧料組成物を構成する第1剤、第2剤、又は第3剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、剤型の数を増やしてもよい。
・上記実施形態において、毛髪化粧料用組成物の配合成分を全て含有する1剤式の毛髪化粧料用組成物として構成した。しかしながら、毛髪化粧料用組成物に含有される各成分の一部を別剤として構成し、複数剤式、例えば2剤式以上に構成してもよい。
【0082】
・上記実施形態において、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物、並びに(A)酸を0.5質量%以上含有する毛髪化粧料用組成物を含む毛髪化粧料セット剤として構成してもよい。
【実施例
【0083】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
<試験例1:毛髪の弾力性等の評価>
表1,2に示す各成分を含有する、酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤をそれぞれ調製した。また、表3に示す各成分を含有する、毛髪化粧料用組成物としての第3剤を調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「成分」欄における(A)~(C)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。
【0084】
まず、新規黒毛の毛束サンプル(ビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)の前処理を行った。実施例1で使用する第1剤と第2剤とを1:1の質量比で混合して酸化染毛剤組成物の混合物を調製した。得られた混合物を、毛束に刷毛を用いて塗布し、室温(30℃)にて10分間放置した。次に、毛束に付着した酸化染毛剤組成物を水で洗い流した後、毛束にシャンプー(ホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(ホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置することにより、前処理が施された毛束を得た。
【0085】
次に、各実施例及び比較例1において、表1,2に示される酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤、並びに毛髪化粧料用組成物としての第3剤を1:1:0.2の比率で混合し、酸化染毛剤組成物と毛髪化粧料用組成物との混合物を調製した。比較例2~4においては、表1,2に示される酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤を1:1の比率で混合し、酸化染毛剤組成物の混合物を調製した。得られた各例の混合物を、前処理が施された毛束に塗布し、室温(30℃)にて10分間放置した。洗浄及び乾燥工程は、前処理工程と同様の方法により行った。得られた各例の毛束について、毛髪の弾力性、取り扱い性、及び明度の均一性(既染部と新生部の明度の差)の各効果を下記基準に従い評価した。
【0086】
(毛髪の弾力性)
上記各例の染毛処理を施した毛束について、パネラー5名が毛髪の弾力性を、以下の基準で判断した。毛髪の弾力性が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表3に示す。
【0087】
(毛髪の取り扱い性)
毛髪の取り扱い性は、上記毛髪の弾力性、毛髪の感触より総合的に判断した。
パネラー5名が、取り扱い性を以下の基準で判断した。取り扱い性が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表3に示す。
【0088】
(明度の均一性)
パネラー5名が標準光源下で目視にて、上記各例の染毛処理後の毛束の明度と、前処理直後の毛束の明度とを比較し、明度の差について、以下の基準で評価することにより、明度の均一性が優れるか否かについて判断した。明度の差がなく、優れる(5点)、明度の差がほとんどなく、良好(4点)、明度の差が小さく、可(3点)、明度の差がやや大きく、やや不良(2点)、及び明度の差が大きく、不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表3に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
表3に示されるように、各実施例は、各評価項目について可以上の結果であることが確認された。表3に示されるように、毛髪化粧料用組成物である第3剤中に(A)酸の含有量が低い比較例1は、各実施例に対して、各評価が劣ることが確認された。第3剤を使用せず、第1剤と第2剤との混合物により処理した比較例2は、各実施例に対して、各評価が劣ることが確認された。第3剤を使用せず、混合物のpHが実施例1と同じである比較例3は、各実施例に対して、特に毛髪の弾力性の評価が劣ることが確認された。第3剤を使用せず、混合物のpHが実施例1より低い比較例4は、各実施例に対して、毛髪の弾力性の評価が劣ることが確認された。つまり、弾力性の向上は、混合物のpHを調整するのみでは足りず、所定量の酸を含有する毛髪化粧料用組成物を適用することが必要であることが確認された。
【0092】
<試験例2:塗布性の評価>
試験例1と同様に、表1,2に示す各成分を含有する、酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤をそれぞれ調製した。また、表4に示す各成分を含有する、毛髪化粧料用組成物としての第3剤を調製した。
【0093】
まず、試験例1と同様の方法により、前処理が施された毛束を得た。次に、各実施例において、表1,2に示される酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤、並びに表4に示される毛髪化粧料用組成物としての第3剤を1:1:0.2~1:3:04の比率で混合し、酸化染毛剤組成物と毛髪化粧料用組成物との混合物を調製した。得られた混合物を、前処理が施された毛束に塗布した。混合物を毛髪に塗布する際の毛先への塗布性について、下記基準に従い評価した。
【0094】
(毛先への塗布性)
毛先への塗布性について、パネラー5名が、以下の基準で判断した。毛先への塗布性が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
表4に示されるように、混合物中において(C)HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤を1質量%以上含有する実施例1,11~13の毛髪化粧料用組成物は、塗布性の評価に優れることが確認された。
【0096】
<毛髪化粧料用組成物の処方例>
下記表5に示される処方例1の毛髪化粧料用組成物を調製した。試験例1と同様の染毛処理方法において、染毛処理を行った。その結果、各実施例と同等の評価が得られることを確認した。
【0097】
【表5】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。(a)1又は2回以上アルカリ剤及び酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物で処理された毛髪に適用される前記毛髪化粧料用組成物の使用方法。