(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】立体駐車装置の安全装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20230417BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/42 Z
(21)【出願番号】P 2018202737
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇太
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-158968(JP,A)
【文献】特開2018-131797(JP,A)
【文献】特開2017-048534(JP,A)
【文献】特開昭56-108186(JP,A)
【文献】特開2018-073024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 - 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の入出庫を行う入出庫室を備えた立体駐車装置において、該立体駐車装置の運転動作を入力する運転操作盤と、該運転操作盤の入力操作により前記立体駐車装置の動作を制御する制御装置と、機械学習済の学習型人工知能の機能を有し前記入出庫室内を撮影して取り込んだ撮像から前記入出庫室内の人及び前記車両を動的に検出する複数のカメラと、を備え、
前記車両の入庫時に前記カメラが前記車両に搭乗していた人の数と、前記入出庫室から退出した人の数とを前記制御装置へ発信して、該制御装置が双方の人の数の比較を行い、前記車両に搭乗していた人の数と、前記入出庫室から退出した人の数とが等しい場合、前記運転操作盤の入力操作を有効になるように制御し、
前記車両に搭乗していた人の数よりも前記入出庫室から退出した人の数が少ない場合、利用者に前記入出庫室における人の有無の再確認を促すように構成されていることを特徴とする立体駐車装置の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車装置内部に人が閉じこめられるのを未然に防止する立体駐車装置の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体駐車装置は、スペースの少ない土地に多数の車両を効率よく駐車できる駐車設備として住宅密集地等において広く利用されており、利用する土地の広狭や経済性などを考慮した種々の構造のものが提供されている。一般的に立体駐車装置には、一箇所または複数箇所に入出庫スペースが設けられており、駐車する車両は自走により入出庫スペースへの出入りを行う。入出庫スペースと駐車スペースとの間には、車両を搬送する搬送装置を備えており、入出庫スペースにおいて搬送装置上に車両を搭載し、所定の駐車スペースへと車両を搬送して格納する。入出庫スペースの入出庫口には、外部との空間を遮断する扉が設けられており、立体駐車装置が動作するときには扉を閉鎖して人が装置内へ進入しないようになっている。立体駐車装置外部の扉近傍には立体駐車装置の運転を操作する運転操作盤が設けられており、これを駐車装置の管理人あるいは車両の運転者自身が操作することにより、扉の開閉や搬送装置の動作が行われる。
【0003】
近年、立体駐車装置は、商業施設での利用に加えてオフィスビルやマンション等の集合住宅に併設されて利用されることも多く、この場合には、駐車装置の管理人が常駐することなく、特定の利用者自身が立体駐車装置の運転操作を行うことが多い。しかしながら、このように専門の管理人の操作によらず、利用者自身の操作により立体駐車装置を動作させる場合には、利用者の注意不足や確認不足により、立体駐車装置内に他の人が取り残された状態で扉が閉じられてしまう可能性がある。例えば、利用者が立体駐車装置内にいるにもかかわらず第三者が誤って運転操作盤を操作してしまう場合や、利用者が車両を装置内に停車させている間に第三者が装置内へ侵入し、利用者がこれを知らずに扉を閉じた場合などである。
【0004】
このようなことから従来、立体駐車装置内の人の存在を確認する方法として、光電センサにより人を検知する技術(例えば、特許文献1参照)、撮像装置により画像を撮像しこれを画像処理して検知する技術(例えば、特許文献2参照)、マイクロ波を照射してドップラーセンサにより検知する技術(例えば、特許文献3参照)、等が知られており、これらにより人の存在が検知されると立体駐車装置の運転ができないようにしている。また、駐車場内で生じる音を集音し、この音を判定することにより駐車場内に人が閉じ込められていることを検知する技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-59839号公報
【文献】特開2002-167996号公報
【文献】特開平9-228679号公報
【文献】特開平6-257315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来提案された技術は、各種センサを極力死角のないように配置して人の存在を検知するようにしたものであるが、センサの故障や検知不良等により人の存在を検知できない状態となる事態も少なからず想定され、この場合には、前述したように人が立体駐車装置内部に閉じ込められてしまう可能性がある。そして、このような場合には、立体駐車装置内部からは立体駐車装置の運転を行うことができないため、次の利用者等が運転操作盤を操作するまでは扉が開かないという事態を生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、立体駐車装置内部に人が閉じ込められることを未然に防止する立体駐車装置の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、車両の入出庫を行う入出庫室を備えた立体駐車装置において、該立体駐車装置の運転動作を入力する運転操作盤と、該運転操作盤の入力操作により前記立体駐車装置の動作を制御する制御装置と、機械学習済の学習型人工知能の機能を有し前記入出庫室内を撮影して取り込んだ撮像から前記入出庫室内の人及び前記車両を動的に検出する複数のカメラと、を備え、前記車両の入庫時に前記カメラが前記車両に搭乗していた人の数と、前記入出庫室から退出した人の数とを前記制御装置へ発信して、該制御装置が双方の人の数の比較を行い、前記車両に搭乗していた人の数と、前記入出庫室から退出した人の数とが等しい場合、前記運転操作盤の入力操作を有効になるように制御し、前記車両に搭乗していた人の数よりも前記入出庫室から退出した人の数が少ない場合、利用者に前記入出庫室における人の有無の再確認を促すように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人工知能の機能を有するカメラにより入出庫室内の人を動的に検出し、入出庫室内に人が存在する場合には立体駐車装置の運転を行うことができないので、立体駐車装置内部に人が閉じ込められることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、立体駐車装置の概略を示す側面図及び正面図であり、本説明においては、具体例としてエレベータ式立体駐車装置を示して説明を行う。立体駐車装置10の内部には、中央を上下に貫通する昇降路11が形成されており、この昇降路11を昇降可能に昇降リフト12を設けている。昇降リフト12は、車両19を搭載する搬器13の四隅にワイヤロープ14を連結し、このワイヤロープ14を立体駐車装置10の上部に設けた巻き上げ装置(図示せず)により、巻き上げ又は繰り出しすることにより搬器13を昇降駆動するようにしたものである。
【0014】
昇降路11の両側方には、複数の駐車室17が上下多段に形成されており、各駐車室17には、それぞれ車両19を搭載するためのパレット18を備えている。この立体駐車装置10においては、地上1階部分を車両19の入出庫室15としており、車両19の入退出方向16は、搬器13の長手方向に対して直交する方向に設定されている。車両19が格納されていない何れかの駐車室17にある空のパレット18は、搬器13上へスライド(横行)させられた後、搬器13とともに入出庫室15に降下して停止する。入出庫室15の下方には、パレット18を旋回して向きを変えるパレット旋回装置20を備えており、入出庫室15に到着したパレット18は、このパレット旋回装置20により90°旋回させられて、その長手方向が車両19の入退出方向16となるように方向転換して待機する。
【0015】
車両19の入庫時には、車両19が自走してパレット18上へと乗り込んだ後、車両19及びパレット18は、パレット旋回装置20により90°旋回させられて搬器13上に載置される。そしてこの後搬器13は、元の駐車室17の位置、すなわち、パレット18を取り出して空になった駐車室17まで車両19及びパレット18を搬送し、この後パレット18ごと車両19を横行させて格納する。車両19の出庫時は、これと逆の動作であり、車両19が格納された駐車室17まで空の搬器13が移動した後、駐車室17からパレット18および車両19を搬器13上へ横行させる。この後、搬器13が下降して入出庫室15に到着すると、車両19及びパレット18がパレット旋回装置20により90°旋回させられ、運転者が車両19に乗り込んで車両19を運転して立体駐車装置10から退出する。
【0016】
図3は、入出庫室15の平面図である。入出庫室15には、車両19が出入りする入出庫口27に引き戸式の入出庫扉22を備えており、入出庫扉22近傍の外壁には、運転操作盤21を備えている。運転操作盤21には、入出庫を選択する釦類やタッチパネル、ディスプレイ、認証装置等を備えており、利用者が運転操作盤21を操作することにより制御装置が立体駐車装置10の動作を制御する。さらに入出庫室15には、入出庫室15内部が撮影でき、かつ、車両19の車内が良好に撮影できる位置に複数のカメラ25を備えている。カメラ25で撮影された撮像は、運転操作盤21のディスプレイに表示される。
【0017】
上記カメラ25は、機械学習済の学習型人工知能の機能を有するカメラ25であって、多量の画像データから人及び車両の形状を学習しており、取り込んだ撮像から人及び車両19を動的に識別して検出することができる。このカメラ25からの信号により、入出庫時の立体駐車装置10の動作が次のように制御される。まず入庫時には、利用者が運転操作盤21で所定の操作を行い、立体駐車装置10の運転を開始する。空のパレット18を搭載した搬器13が入出庫室15で停止すると、入出庫扉22が開くとともに各カメラ25が撮影を開始し、制御装置はこの後の運転操作盤21の操作を無効にして立体駐車装置10の運転を停止したままとする。この後、利用者が車両19を運転して入出庫室15内へ移動するとともに、各カメラ25は車両19内の人を検出し、検出された車両19に乗車している人の数を制御装置へと発信する。なお通常は、運転者のみが乗車して入出庫室15へ移動するので、各カメラ25が検出する人の数は1人であるが、利用者の不注意等により他の搭乗者が乗車していることも想定される。
【0018】
車両19が入出庫室15で停止すると、各カメラ2がこれを検出し信号を制御装置へと送信する。次いで、車両19の搭乗者が降車し、入出庫扉22から退出する。このときに各カメラ25は、入出庫扉22から退出する人を検出し、退出した人の数を制御装置へと発信する。制御装置は、各カメラ25からの信号により車両19の進入時に車両19に搭乗していた人の数と、入出庫扉22から退出した人の数との比較を行う。そして、搭乗していた人の数より退出した人の数とが等しい場合には、運転操作盤21の操作を有効とし、利用者による操作が可能になる。
【0019】
一方、退出した利用者が運転操作盤21において入出庫扉22を閉じる操作をするときに、搭乗していた人の数より退出した人の数が少ない場合には、例えば、運転操作盤21に備えたスピーカー等から「車内又は駐車場内に人が残っている可能性があります。再度駐車場内を確認下さい。」といった音声を発し、利用者に再確認を促す。この後、利用者が入出庫室15内で確認作業を行うと、各カメラ25がこれを検出し信号を制御装置へと送信する。この信号を受けて制御装置は、運転操作盤21に設けた、例えば「安全確認終了」の釦を有効とし、この釦を利用者が押すことにより以降の運転操作盤21の操作が有効になる。続いて、利用者が入出庫扉閉の釦を押すと立体駐車装置10の運転が開始され、入出庫扉22が閉じた後に車両19が所定の駐車室17に格納される。なお、上記のいずれの段階においても、各カメラ25が入出庫室15で人を検出した場合には、立体駐車装置10の運転が開始されないか、または運転が停止される。
【0020】
次に、出庫時には、利用者が運転操作盤21で所定の操作を行い、立体駐車装置10の運転を開始する。車両19を搭載した搬器13が入出庫室15で停止すると、入出庫扉22が開くとともに各カメラ25が撮影を開始し、制御装置はこの後の運転操作盤21の操作を無効にする。次いで、利用者が入出庫扉22から車両19へと移動して車両19に乗車し、この後車両19を運転して入出庫扉22から退出する。各カメラ25は、退出する車両19を検出し、車両19が退出を完了したときに入出庫室15に人の存在を検出しないときには、この信号を制御装置に出力する。この信号により制御装置は運転操作盤21での操作を有効とし、利用者が運転操作盤21を操作して入出庫扉22が閉まる。
【0021】
一方、車両19が退出した後にカメラ25が入出庫室15の人を検出した場合には、例えば、運転操作盤21に備えたスピーカー等から「車内又は駐車場内に人が残っている可能性があります。再度駐車場内を確認下さい。」といった音声を発し、利用者に再確認を促す。この後、利用者が入出庫室15内で確認作業を行うと、各カメラ25がこれを検出し信号を制御装置へと送信する。この信号を受けて制御装置は、運転操作盤21に設けた、例えば「安全確認終了」の釦を有効とし、この釦を利用者が押すことにより以降の運転操作盤21の操作が有効になる。続いて、利用者が入出庫扉閉の釦を押すと立体駐車装置10の入出庫扉22が閉じて出庫作業が終了する。
【0022】
上記の構成によれば、入出庫室15に人が存在するときには、機械学習済の学習型人工知能の機能を有するカメラ25により、より的確に人を動的に検出して運転操作盤21での操作を無効とするので、入出庫室15に人が閉じ込められることを未然に防止できる。また、入庫の場合には、移動する車両19内の搭乗者を検出するようにしており、車両19の移動にともなって車両19に対するカメラ25の相対位置が変化することにより、車両19内の搭乗者をより正確に検出することができる。さらには、入出庫室15に人が取り残されている場合には、利用者に再確認を促した後、利用者が再確認を行ったのをカメラ25が検出して運転操作盤21での操作を有効とすることで、さらなる安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 立体駐車装置
11 昇降路
12 昇降リフト
13 搬器
14 ワイヤロープ
15 入出庫室
16 入退出方向
17 駐車室
18 パレット
19 車両
20 パレット旋回装置
21 運転操作盤
22 入出庫扉
25 カメラ
27 入出庫口