(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】ボールバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 5/06 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
F16K5/06 A
F16K5/06 C
F16K5/06 D
(21)【出願番号】P 2019124952
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】514079527
【氏名又は名称】QUBLOCK TECHNOLOGY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】山本 謙二
(72)【発明者】
【氏名】太田 敬丈
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 晴樹
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501408(JP,A)
【文献】特開2015-102132(JP,A)
【文献】特開2009-041776(JP,A)
【文献】特開2007-170556(JP,A)
【文献】特開2014-020378(JP,A)
【文献】特開2002-295696(JP,A)
【文献】特開平11-344135(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10315896(DE,A1)
【文献】中国実用新案第210164931(CN,U)
【文献】中国実用新案第209239918(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-2197312(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/06
F16J 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されたボールを回動自在に収容するボデーと、
前記ボデーと前記ボールとの間に介在されて、前記ボールの表面に当接するボールシートを保持する環状のシートリテーナと、
前記ボデーと前記シートリテーナとの間に介在されたUリングとを備えるボールバルブであって、
前記Uリングは、断面U字状に形成された環状の本体と、前記本体の外周から径方向外方に突出する環状の突部とを備え、
前記突部の先端側には、基端側よりも肉厚に形成された係止部が設けられており、
前記ボデーに対して前記係止部の基端側が当接することにより、前記ボデーと前記シートリテーナとの間がシールされるボールバルブ。
【請求項2】
前記突部は、前記本体における断面U字状の開口側と反対側の端部に設けられており、前記開口側に向けて環状に突出するように前記係止部が形成されている請求項1に記載のボールバルブ。
【請求項3】
前記シートリテーナの内周側には、前記ボールシートを保持するインナーリングが圧入によって装着されている請求項1または2に記載のボールバルブ。
【請求項4】
前記ボデーと前記シートリテーナとの間に介在されて前記シートリテーナを前記ボールに向けて押圧するコイルばねを更に備える請求項1から3のいずれかに記載のボールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
液化エチレンや液化天然ガス等の低温流体に使用される低温用ボールバルブとして、特許文献1に開示されたトラニオン型のボールバルブが知られている。
図3に示すように、特許文献1のボールバルブ50は、貫通孔51を有するボール52がボデー53内に回転自在に装着され、ボール52の左右両側に配置された環状のシートリテーナ54とアウターリング55との間に、環状のボールシート56が保持されている。ボデー53には、ボール52の両側に一次側流路57および二次側流路58が形成されており、ステム59の回転駆動によりボール52を回転させることで、貫通孔51を介して一次側流路57と二次側流路58とを連通することができる。シートリテーナ54は、板ばね60により、ボール52に向けて押圧される。
【0003】
図4は、
図3のA部拡大図である。
図3および
図4に示すように、ボール52は、表面がボールシート56に当接可能とされており、これによってボール52とシートリテーナ54との間がシールされる。
【0004】
また、ボール52の両側におけるボデー53とシートリテーナ54との間には、それぞれ断面U字状のUリング61が設けられている。Uリング61は、開口部62を介してスプリング63が装入されており、ボデー53の内周面とシートリテーナ54の外周面との間がシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のボールバルブ50は、低温時において、三フッ化エチレン樹脂(PCTFE)等からなるUリング61の収縮が大きくなることにより、ボデー53の内周面とUリング61の外周面との間における面圧が下がり、ボデー53とシートリテーナ54との間におけるシール性能が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、シール性能を向上させたボールバルブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、貫通孔が形成されたボールを回動自在に収容するボデーと、前記ボデーと前記ボールとの間に介在されて、前記ボールの表面に当接するボールシートを保持する環状のシートリテーナと、前記ボデーと前記シートリテーナとの間に介在されたUリングとを備えるボールバルブであって、前記Uリングは、断面U字状に形成された環状の本体と、前記本体の外周から径方向外方に突出する環状の突部とを備え、前記突部の先端側には、基端側よりも肉厚に形成された係止部が設けられており、前記ボデーに対して前記係止部の基端側が当接することにより、前記ボデーと前記シートリテーナとの間がシールされるボールバルブにより達成される。
【0009】
このボールバルブにおいて、前記突部は、前記本体における断面U字状の開口側と反対側の端部に設けられていることが好ましく、前記開口側に向けて環状に突出するように前記係止部が形成されていることが好ましい。
【0010】
前記シートリテーナの内周側には、前記ボールシートを保持するインナーリングが圧入によって装着されていることが好ましい。
【0011】
また、前記ボデーと前記シートリテーナとの間に介在されて前記シートリテーナを前記ボールに向けて押圧するコイルばねを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シール性能を向上させたボールバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボールバルブの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボールバルブの要部断面図である。本実施形態のボールバルブは、
図3および
図4に示す従来のボールバルブと基本的な構成を同じくするものであり、
図1は、
図3のA部に対応している。したがって、
図1において、
図3および
図4と同様の構成部分には同一の符号を付している。
【0015】
図1に示すボールバルブは、貫通孔51が形成されたボール52を回動自在に収容するボデー53と、ボデー53とボール52との間に介在された金属材料等からなる環状のシートリテーナ54とを備えている。以下、従来の構成との相違点を中心に説明する。
【0016】
このボールバルブは、ボデー53とシートリテーナ54との間に介在されたUリング10が、断面U字状に形成された環状の本体11と、本体11の外周から径方向外方に突出する環状の突部13とを備えている。Uリング10は、ボデー53の内周側に切り欠き状に形成された溝部53aに収容されている。保持リング42は、ボルト41によりボデー53に固定されており、保持リング42とUリング押さえ43との間にUリング10が保持される。本体11には、従来の構成と同様に、開口12を介してスプリング63が装入されている。Uリング10の材質は特に限定されないが、低温用として使用する場合には、従来と同様に三フッ化エチレン樹脂(PCTFE)等のフッ素樹脂により形成することができる。
【0017】
突部13は、突出方向の先端側に、基端側よりも肉厚に形成された係止部14が設けられている。係止部14の外表面は、溝部53aの内面に当接している。
【0018】
シートリテーナ54には、ボルト44によりアウターリング55が固定されており、シートリテーナ54とアウターリング55との間に環状のボールシート56が配置されている。ボールシート56は、ボール52の表面に当接するように、シートリテーナ54の収容部54aに収容されている。シートリテーナ54の内周側には、収容部54aに連続する段部54bが形成されており、段部54bにインナーリング20が圧入により固定されている。インナーリング20は、環状に形成されており、ボールシート56の内周面を保持する。インナーリング20の材質は、シートリテーナ54の材質と同じ(例えば、ステンレス)であることが好ましいが、両者は異なる材質であってもよい。
【0019】
ボデー53とシートリテーナ54との間には、コイルばね30が介在されている。コイルばね30は、シートリテーナ54の周方向に沿って等間隔に複数配置されており、それぞれがシートリテーナ54に形成された凹部54cに収容されている。各コイルばね30は、弾性力により、シートリテーナ54をボール52に向けて押圧する。
【0020】
図2に拡大図で示すように、上記の構成を備えるボールバルブは、従来の構成と同様に、Uリング10の本体11の外周側とボデー53の内周側との接触部P1においてシールされる。そして、低温時にUリング10がボデー53よりも大きく収縮すると、接触部P1における面圧が低下する一方、係止部14の基端側とボデー53の溝部53aとの接触部P2における面圧が上昇する。したがって、使用条件に拘らず、接触部P1またはP2において確実にシールすることができるので、ボデー53とシートリテーナ54との間におけるシール性能を良好に維持することができる。
【0021】
また、Uリング10の突部13は、本体11の開口12側と反対側の端部に設けられており、開口12側に向けて環状に突出するように係止部14が形成されているので、Uリング10の収縮時における接触部P2の面圧を容易に確保することができる。但し、本体11に対する突部13の位置は特に限定されるものではなく、例えば、本体11の外周面の中央から径方向外方に突出するように突部13を設けてもよい。また、係止部14の形状も特に限定されるものではなく、肉厚に形成された部分の基端側がボデー53に当接可能であれば、球状や菱形状など種々の形状であってよい。
【0022】
図1において、ボール52とシートリテーナ54との間におけるシール性については、シートリテーナ54の内周側においてボールシート56を保持する内壁部が、シートリテーナ54とは別部材であるインナーリング20の圧入によって形成されているので、インナーリング20の装着前に、ボールシート56が収容される収容部54aの内面に研磨加工等を容易に施すことができる。これにより、シートリテーナ54とボールシート56との間におけるシール性能の向上を図ることができる。
【0023】
また、シートリテーナ54をボール52に向けてコイルばね30により押圧するように構成したことで、従来のように板ばねを使用する場合と比較して、コイルばねのたわみ量の変化に対する荷重の変化を抑制することができるので、低温時における操作トルクの低減を図ることができる。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、
図3に示すようにボール52の両側にシートリテーナ54等が配置されるボールバルブの場合は、流路の一次側(上流側)および二次側(下流側)を区別することなく、左右両側のいずれに対しても本発明を適用することが可能である。また、ボール52の片側のみにシートリテーナ54等が配置されるボールバルブに対して、本発明を適用してもよい。ボールバルブの形式についても特に制限はなく、例えば、ボデーの上部に形成された開口を介してボールを収容可能なトップエントリー型のボールバルブに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 Uリング
11 本体
13 突部
14 係止部
20 インナーリング
30 コイルばね
51 貫通孔
52 ボール
53 ボデー
54 シートリテーナ
55 アウターリング
56 ボールシート