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  • 特許-製紙排水の清澄化処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】製紙排水の清澄化処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20230417BHJP
   C02F 1/24 20230101ALI20230417BHJP
   D21F 1/66 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C02F3/12 V
C02F3/12 N
C02F1/24 B
D21F1/66
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019125674
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021010866
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特許第6498342(JP,B1)
【文献】特開平10-219580(JP,A)
【文献】特開2015-017333(JP,A)
【文献】特開2017-110326(JP,A)
【文献】特開2016-121422(JP,A)
【文献】特開2012-210585(JP,A)
【文献】特開昭51-067401(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111320330(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
C02F3/00-3/34
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白水を曝気による強制急速攪拌処理した後、白水中に含まれるパルプ繊維を分離した後、該分離後の白水の一部を製紙排水として分別した後、該製紙排水を、浮上分離処理、活性汚泥処理、クラリファイヤ―処理を順次行うことを特徴とする製紙排水の清澄化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙排水の清澄化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製紙排水の処理方法として種々の方法が提案されている。例えば製紙工程における離解、蒸解廃液に、キレート高分子凝集剤を使用し、中性以下に調整することを特徴とした処理法(特許文献1)。また難分解性有機物を含む製紙排水の処理方法であって、先ず微生物を固定化した担体が添加された流動床式生物反応槽で前記排水を生物処理し、次いで生物処理により得られた処理水に凝結剤を添加混合し、その後カチオン性高分子凝集剤を添加混合することにより、前記難分解性有機物の凝集物を生成させ、得られた凝集物を固液分離することを特徴とする製紙排水の処理方法(特許文献2)等が知られている。
しかしながら、これら従来の処理方法は、いずれもある特定の製紙排水については有効であるが、製紙工程から排出されるすべての製紙排水に有効な方法とは言い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-015267号公報
【文献】特開2014-028365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明者は、製紙排水の水質の如何を問わず処理できる方法について検討を重ねてきた。本発明者は、製紙排水が発生する由来について種々検討を加え製紙工程の全般に亘り、見直しを行い、問題点について検討を加えた。
【0005】
すなわち、一般に紙をつくるためには、木材チップや古紙からつくられたパルプ繊維を水中に分散させ、ウエットパート部で薄いシート状にし、次いでドライヤーパート部でシートを乾燥させて製品を得るのが一般的である。前記ウエットパート部では大量の水を必要とするが、水資源を大切に使うためにウエットパート部で発生する微細なパルプ繊維を含んだ白水と称する水を回収し、この回収した白水を処理設備でパルプ繊維を分離し、パルプ繊維はパルプ調成設備に、水分(白水)はウエットパート部に戻して循環利用されているのが現状である。
【0006】
製紙工場において排出される製紙排水としては、古紙パルプを製造する際に排出される古紙パルプ排水、クラフトパルプを製造する際に排出されるクラフトパルプ排水、機械パルプを製造する際に排出される機械パルプ排水、塗料を紙に塗工する際に排出される塗工液排水、パルプを抄紙する際に排出される抄紙工程排水がある。
これらの排水は、いったん白水サイロに貯蔵され白水処理設備でパルプ繊維と、白水に分離され、パルプ繊維が除去された白水は、ウエットパート部に循環させて再利用すると共に、一部は製紙排水として処理し、清澄化処理して、河川等に放流されている。
【0007】
前記のように、使用するパルプの種類によって、白水中には繊維分、填料、顔料等が種々の割合で含有されているため、白水の水質が多岐にわたる原因となっていた。本発明者は、多岐にわたる白水の水質を簡単な処理を加えて、一定の範囲の水質に調整することによって、いずれの製紙排水でも好適に清澄化処理できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、白水を曝気による強制急速攪拌処理した後、白水中に含まれるパルプ繊維を分離した後、該分離後の白水の一部を製紙排水として分別した後該製紙排水を浮上分離処理、活性汚泥処理、クラリファイヤー処理を順次行う、製紙排水の清澄化処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によれば、製紙排水のBOD値およびCOD値を低下させることができ、製紙排水のBOD値およびCOD値を一定の範囲に調整することができるので一定の処理条件で清澄化処理が可能となる。また、従来法に比べて製紙排水の処理量も大幅に増大することができる。
また製紙工程においても白水のBOD値およびCOD値が低いことから、硫化水素ガスの発生がないことから悪臭の発生がなく、設備の腐蝕も防止できる。また有機酸の生成が実質的にないので、填料の炭酸カルシウムが溶けて、カルシウムイオンリッチの白水となることもなく、従ってカルシウムイオンが脂肪酸等と反応して不溶化物の生成がないのでピッチトラブルや損紙発生のトラブルを防止することができる。またカルシウムイオンが少ないために紙力剤や歩留り剤の定着を阻害することが少ないために抄紙薬剤の使用量を節減することができる。さらに白水が好気性であることから澱粉が分解されることがないため、澱粉濃度が低下し、紙力アップ機能が失われることがないので、必要量以上の澱粉を添加する必要もないので製紙排水処理の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】抄紙工程および製紙排水処理工程を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明を図1を参照しながら説明する。
図1は、紙の抄紙ライン及び製紙排水の処理工程を示す概略フロー図である。
パルプ繊維原料である古紙パルプ1、化学パルプ2、機械パルプ3から目的とする紙の性質を考慮してパルプ繊維を選択する。選択された繊維は、パルプ調整設備4によって、パルプの叩解を行い、填料、サイズ剤、染料等の薬品を添加して原料濃度やぺーハーの調節を行う。
次にこのものを抄紙工程に移送しウエットパート部5において繊維をシート状に抄紙する。ウエットパート部5で発生する繊細なパルプ繊維を含んだ白水は回収され、白水サイロ6に導入される。
前記ウエットパート部5で抄紙された薄いシートはドライヤーパート部7によって乾燥される。乾燥された紙は製品8として出荷される。
【0012】
一方白水サイロ6に留められた白水は、白水サイロ6に設けられた散気装置9から空気を気泡状として噴出させ、白水サイロ6の白水を散気により急速攪拌を行う。この急速攪拌は白水中に含まれるパルプ繊維も白水中に均一に分散する状態になるように攪拌することが必要である。そのためには白水量にもよるが1000~10000リットル/分、好ましくは3000~5000リットル/分の散気量が好適である。また気泡も10~500μm程度のものが好ましい。
【0013】
白水サイロ6で曝気処理された白水は、白水処理設備10によってパルプ繊維と白水に分別され、パルプ繊維はウエットパート部5に送られ利用される。
一方白水処理設備10によって分別された白水は、パルプ繊維設備4に戻され再利用される。また分別された白水の一部は製紙排水として廃水処理施設に移送される。
【0014】
この製紙排水は白水サイロ6によって曝気処理されているためにCOD値BOD値共に未処理の白水に比べて極めて低い値になっている。一般的にCOD値40~150、BOD値50~200の範囲内である。
【0015】
製紙排水は、浮上分離槽11に導入され、ここで凝集剤が添加され、浮上分離により脱インク処理等が行なわれる。
次にクラリファイヤー槽12に導入し、ここで製紙排水中に含有されるSSの固液分離を行う。次に活性汚濁槽13に移送し、活性汚濁処理を行う。活性汚濁処理を行った製紙排水は、クラリファイヤー槽14によってさらにSS等の固液分離を行い、得られた清澄水は河川等に放流する。なお前記クラリファイヤー槽12におけるクラリファイヤー処理は省略することもできる。
【0016】
浮上分離処理に用いられる凝集剤としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄等の無機凝集剤、ポリアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアルキルアミノアルキルメタクリレートのアルキルクロライド四級塩、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレートのアルキルクロライド四級塩―アクリルアミド)、カチオン性界面活性剤、ポリアミジン等の有機凝集剤を使用することができる。
【0017】
本発明の白水サイロ6の白水を散気により急速攪拌を行うほかに、浮上分離槽11および/または活性汚濁槽13の製紙排水に槽底に設けられた散気装置から気泡を発生させて急速攪拌を行うことにより、COD値およびBOD値を低下させることができる。
【0018】
次に本発明を実施例を揚げて説明する。
実施例1
白水サイロ6で白水(BOD値823、COD値718)に2000リットル/分の空気を散気処理から気泡として発生させ、曝気処理された白水の一部を分別し、製紙排水として廃水処理施設に移送する。この製紙排水のBOD値は164であり、COD値は143であった。この製紙排水を浮上分離槽11に移送し、凝集剤を300mg/L添加し浮上分離処理を行う。次いで活性汚泥槽13に移送し、活性汚泥処理を行う。次いでクラリファイヤー槽14に移送し、固液分離を行い、清澄化された清澄水(BOD値25、COD値21)を河川に放流する。
【符号の説明】
【0019】

6・・・白水サイロ
9・・・散気装置





図1