(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】窒化鉄磁性材料の印加磁場合成及び処理
(51)【国際特許分類】
H01F 1/047 20060101AFI20230417BHJP
B22D 27/04 20060101ALI20230417BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230417BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
H01F1/047 ZNM
B22D27/04 B
C22C38/00 303A
H01F41/02 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020082221
(22)【出願日】2020-05-07
(62)【分割の表示】P 2017539263の分割
【原出願日】2015-07-22
【審査請求日】2020-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2015-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ワーン ジアーン-ピーン
(72)【発明者】
【氏名】ジアーン イエンフオン
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】清水 稔
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-253248(JP,A)
【文献】国際公開第2014/210027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00, H01F41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ窒化鉄を含む複数の異方的形状の鉄基結晶粒と、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインとを含むキャスティングされたワークピースであって、
前記異方的形状の鉄基結晶粒の少なくとも1つが約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比は、前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、前記最長寸法と最短寸法は実質的に直交しており、
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒の前記最長寸法が一軸磁気異方性の方向と平行であり、
前記ワークピースがさらに少なくとも1種のドーパントを含み、
前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含み、
前記ワークピースは、鉄及び窒素を含む溶融材料からキャスティングされたものであることを特徴とする、
ワークピース。
【請求項2】
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、請求項1に記載のワークピース。
【請求項3】
前記窒化鉄がα”-Fe
16N
2を含む、請求項1に記載のワークピース。
【請求項4】
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が前記ドーパントを含む、請求項1に記載のワークピース。
【請求項5】
さらに、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種のドーパントを含む、請求項4に記載のワークピース。
【請求項6】
各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、請求項1に記載のワークピース。
【請求項7】
複数のワークピースを含むバルク永久磁石であって、前記複数のワークピースのうちの少なくとも1つのワークピースが請求項1に記載のワークピースを含む、バルク永久磁石。
【請求項8】
前記複数のワークピースの各々が窒化鉄を含む、請求項7に記載のバルク永久磁石。
【請求項9】
請求項7または8に記載のバルク永久磁石を含む物品。
【請求項10】
前記物品が、電気モーター、発電機、センサー、アクチュエータ、自動車の構成部品、または風力タービンの構成部品を成す、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
請求項1に記載のワークピースを形成する方法であって、印加磁場の存在下で鉄と、窒素と、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む材料をキャスティングして一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む前記ワークピースを形成することを含み、前記ワークピースが複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比は異方的結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、前記最長寸法と最短寸法は実質的に直交しており、前記印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有し、
前記キャスティングが、さらに、
前記印加磁場の存在下で、鉄を含む前記材料を加熱し溶融させて前記鉄を含む溶融材料を得ることを含む、
ワークピースを形成する方法。
【請求項12】
前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒の少なくとも1つが約5nm~約300nmの最短寸法を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が前記印加磁場の方向と実質的に平行に配向され、各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記印加磁場の強度が約0.02Tを超える、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記印加磁場の強度が約2.5Tを超える、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記印加磁場の強度が約9Tを超える、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記印加磁場が、約0.01テスラ/メートル~約1000テスラ/メートルの勾配を有する、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記材料が、さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
キャスティングの前に、前記材料中の窒素の濃度が約8原子パーセント(at.%)~約9at.%である、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
キャスティングが、
鉄を含む混合物を加熱して鉄を含む溶融混合物を形成すること、及び、
鉄を含む前記溶融混合物を冷却してワークピースを形成すること、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記溶融混合物を冷却することが、水、氷水、ブライン、オイル、アンモニア水またはアミドのうちの少なくとも1種の中で前記溶融混合物を急冷することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
鉄を含む前記溶融混合物を冷却することが、鉄を含む前記溶融混合物を冷却ローラーの間で冷却してワークピースを形成することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
鉄を含む前記混合物を加熱することが、印加磁場の存在下で鉄を含む前記混合物を加熱することを含み、鉄を含む前記溶融混合物を冷却することが、鉄を含む前記溶融混合物を
前記印加磁場の存在下で冷却することを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
鉄を含む前記混合物を加熱することが、鉄を含む前記混合物を、高周波炉を使用して、るつぼ内で加熱することを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
鉄を含む前記混合物を加熱することが、鉄を含む前記混合物を冷るつぼ内で加熱することを含み、前記混合物が被覆材内に実質的に封入される、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
さらに、複数のワークピースを圧縮してバルク材料を形成することを含む、請求項11~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記複数のワークピースを圧縮して前記バルク材料を形成することが、印加磁場の存在下で前記複数のワークピースを圧縮して一軸磁気異方性を含む複数の鉄基相ドメインを含むバルク材料を形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
各材料が一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数の材料を印加磁場の存在下で圧縮して一軸磁気異方性を含む複数の鉄基相ドメインを含むバルク材料を形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも0.01テスラ(T)の強度を有し、前記印加磁場が前記バルク材料の磁化方向を定める、請求項11に記載の方法。
【請求項32】
一軸磁気異方性を含む前記少なくとも1つの鉄基相ドメインが少なくとも1つのα”-Fe
16N
2相ドメインを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
一軸磁気異方性を含む前記少なくとも1つの鉄基相ドメインが、体心正方晶系鉄相ドメイン、または、体心正方晶系結晶構造を有し、かつ、鉄とC、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む相ドメイン、のうちの少なくとも1種を含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
一軸磁気異方性を含む前記少なくとも1種の鉄基相ドメインが、少なくとも1種の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記少なくとも1種の異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比が最短寸法の長さに対する最長寸法の長さとの比として定義され、前記最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が印加磁場の方向と実質的に平行に配向され、前記各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記印加磁場の強度が約0.02Tを超える、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記印加磁場の強度が約2.5Tを超える、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記印加磁場の強度が約9Tを超える、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記印加磁場が、約0.01テスラ/メートル~約1000テスラ/メートルの勾配を有する、請求項31~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記複数のワークピースのうちの少なくとも1つが、さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、請求項31~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記印加磁場が、前記複数のワークピースのうちの少なくともいくつかの磁化容易軸を実質的に整列させることを促進する、請求項31~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記複数のワークピースを圧縮することが、複数のワークピースを樹脂、ワックスまたは低融点金属のうちの少なくとも1つと混合して混合物を形成すること、及び、当該混合物をプレスしてバルク材料を形成することを含む、請求項31~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記混合物をプレスすることが、約1MPa~約100GPaの圧力で混合物をプレスすることを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記混合物をプレスすることが、約4.2ケルビン~約295ケルビンの温度で前記混合物をコールドプレスすることを含む、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記混合物をプレスすることが、約295ケルビン~約533ケルビンの温度で前記混合物をホットプレスすることを含む、請求項46または47に記載の方法。
【請求項50】
前記複数のワークピースを、樹脂、ワックスまたは低融点金属のうちの少なくとも1つと混合することが、前記複数のワークピースを低融点材料と混合することを含み、前記低融点金属がZn、Sn、Bi、Ga、NaまたはLiのうちの少なくとも1種を含む、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記複数のワークピースのうちの1つのワークピースが、粉末、リボンまたはワイヤのうちの少なくとも1つを成している、請求項31~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
さらに、請求項11~30のいずれか一項に記載の方法を含み、請求項11~30のいずれか一項に記載の方法によって形成された前記ワークピースが前記複数のワークピースのうちの1つである、請求項31~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
請求項11~52のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された装置。
【請求項54】
ワークピースを形成する方法であって、印加磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングして、少なくとも1つの窒化鉄を含むワークピースを形成することを含み、前記材料は、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの窒化鉄相ドメインを含むワークピースを形成するために、さらにC、B、O、P、Y、Mn
、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種
と、ニッケル及びコバルトのうちの少なくとも1種とを含み、前記印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有し、
前記キャスティングが、さらに、
前記印加磁場の存在下で、前記材料を加熱し溶融させて
、溶融材料を得ることを含む、
ワークピースを形成する方法。
【請求項55】
前記材料が、さらに、少なくとも1種のドーパントを含み、前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
さらに、複数のワークピースを圧縮することを含む、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記印加磁場が、約0.01テスラ/メートル~約1000テスラ/メートルの勾配を有する、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
請求項1に記載のワークピースを含む物品。
【請求項59】
前記物品が、電気モーター、発電機、センサー、アクチュエータ、自動車の構成部品、または風力タービンの構成部品を構成する、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年1月26日に出願された「窒化鉄磁性材料の印加磁場合成及び処理(APPLIED MAGNETIC FIELD SYNTHESIS AND PROCESSING OF IRON NITRIDE MAGNETIC MATERIALS)」という表題の米国仮特許出願第62/107,700号の優先権の利益を主張し、その全内容は引用により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、窒化鉄磁性材料を形成するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
永久磁石は、例えば、代替エネルギーシステムを含む多くの電気機械システムにおいて役割を果たしている。例えば、永久磁石は、センサー、アクチュエータ、電気モーターまたは発電機に使用されており、これらは、輸送機関、風力タービン及び他の代替エネルギー機構で使用できる。現在使用されている多くの永久磁石は、高エネルギー積をもたらす希土類元素、例えばネオジムなどを含む。これらの希土類元素は比較的供給が不足しており、将来、価格の上昇及び/または供給不足に直面するおそれがある。さらに、希土類元素を含むある種の永久磁石は製造するのに費用がかかる。例えば、NdFeB及びフェライト磁石の製造は、一般的に、材料を粉砕し、材料を圧縮し、1000℃を超える温度で焼結することを含み、これらのすべてが磁石の高い製造コストに寄与する。さらに、希土類の採掘は深刻な環境の悪化を招きうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメイン(iron-based phase domain)を含む磁性材料を形成するための技術を記載する。例えば、一軸磁気異方性を含む鉄基相ドメインは、体心正方晶系構造を有する鉄、α”-Fe16N2、α”-Fe16C2、Feまたは他のFe基磁性材料を含んでもよい。本明細書に記載の技術は、印加磁場中で鉄と窒素の混合物をキャスティング(casting)すること、または、複数のワークピースであって、それらのうちの少なくともいくつかが一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースを、当該複数のワークピースを印加磁場に曝しながら統合(consolidating)することのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
キャスティング技術の間、窒化鉄結晶は、鉄と窒素を含む溶融混合物から核生成及び成長することがある。キャスティングプロセス中に磁場を印加することによって、所定の配向を有する結晶の成長がエネルギー的に有利であり得るように、窒化鉄結晶の核生成及び成長に影響を及ぼすことができる。例えば、印加磁場の方向に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))な(002)または(004)結晶面を有する窒化鉄結晶は、異なる配向(例えば、印加磁場の方向に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))な(110)、(112)、(202)または(200)結晶面を有する)の窒化鉄結晶よりもエネルギー的に有利であろう。そのため、印加磁場は、複数の窒化鉄結晶のうちの幾つかまたは全ての窒化鉄結晶が同様の結晶配向を有する可能性を高めることができる。実質的に同様の結晶配向を有する複数の窒化鉄結晶を含む材料は、材料の磁気異方性を増加させることができる。
【0006】
統合の間、例えばα”-Fe16N2などの一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースの磁化容易軸を実質的に整列(例えば整列またはほぼ整列(例えば完全な整列から約5度以内))させるために、統合される材料に磁場を印加してもよい。磁化容易軸は、磁気モーメントの整列がエネルギー的に有利かつ準安定である鉄基相ドメイン結晶セルの方向である。いくつかの例において、一軸磁気異方性単位胞を含む鉄基相ドメインの磁化容易軸は<001>またはc軸である。いくつかの例において、複数のワークピースは、粉末、粒子、リボン、シート、ワイヤ、または他の幾何学的形状物を含んでもよい。圧縮プロセス中に磁場を印加することによって、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースの磁化容易軸は、印加磁場の方向に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))に整列しうる。これは、統合された磁性材料の磁化方向を定めるのに役立ち、また、統合された磁性材料の磁気異方性を増加させることができる。
【0007】
いくつかの例において、本開示は、印加磁場の存在下で鉄を含む材料をキャスティングして一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含むワークピースを形成することを含み、印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する方法を記載する。
【0008】
いくつかの例において、本開示は、印加磁場の存在下で、各ワークピースが一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースを圧縮して一軸磁気異方性を含む複数の鉄基相ドメインを含むバルク材料を形成することを含み、印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有し、印加磁場がバルク材料の磁化方向を定める方法を記載する。
【0009】
いくつかの例において、本開示は、本明細書に記載の技術のいずれかを実施するように構成された装置を記載する。
【0010】
いくつかの例において、本開示は、本明細書に記載の技術のいずれかによって形成されるワークピースを記載する。
【0011】
いくつかの例において、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかによって形成されるバルク材料を記載する。
【0012】
いくつかの例において、本開示は、印加磁場の存在下で、ニッケル、鉄及びコバルトのうちの少なくとも1種を含む材料をキャスティングして一軸性磁気異方性を含む少なくとも1つのニッケル、鉄またはコバルトに基づく相ドメインを含むワークピースを形成することを含み、印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する方法を記載する。
【0013】
いくつかの例において、本開示は、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒(iron-based grain)を含むワークピースであって、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、アスペクト比は、異方的結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義される、ワークピースを記載する。最長寸法と最短寸法は実質的に直交していてもよい。
【0014】
いくつかの例において、本開示は、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒を含むバルク永久磁石であって、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、アスペクト比は、異方的結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義される、バルク永久磁石を記載する。最長寸法と最短寸法は実質的に直交していてもよい。
【0015】
1つまたは複数の例の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴、目的及び利点は、当該説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、印加磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングするための例示的技術を示す流れ図である。
【
図2】
図2は、RF炉、るつぼ及び任意に選択可能な急冷媒体を使用して、鉄と窒素を含む混合物に対してキャスティング技術を実施する例示的システムを示す概念図である。
【
図3】
図3は、外部磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングするために使用することのできるるつぼ加熱段階を含む例示的システムを示す概念図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したるつぼ加熱段階の一例のさらなる詳細を示す概念図である。
【
図5】
図5は、外部磁場の存在下での例示的窒化鉄ワークピースをベルトキャスティングするための別の例のシステムを示す概念図である。
【
図6】
図6は、α”-Fe
16N
2単位胞を示す概念図である。
【
図7】
図7は、異方的形状を有する例示的α”-Fe
16N
2結晶または結晶粒を示す概念図である。
【
図8】
図8は、他の材料のマトリックス中に複数のα”-Fe
16N
2結晶または結晶粒を含む例示的ワークピースを示す概念図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した例示的ワークピースの例示的なヒステリシス曲線を示す図である。
【
図10】
図10は、少なくとも1つのα”-Fe
16N
2相ドメインを含む複数のワークピースを統合してバルク磁性材料を形成するための例示的技術を示す流れ図である。
【
図11】
図11は、鉄と窒素を含む原材料からのα”-Fe
16N
2相ドメインを含むバルク磁性材料を形成するための例示的技術を示す流れ図である。
【
図12】
図12は、外部磁場を印加して及び印加せずにキャスティングされた窒化鉄材料からの例示的X線回折スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、本開示の一部を成す添付の図面及び実施例に関連して行われる以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができるであろう。本開示は、本明細書に記載及び/または示される特定のデバイス、方法、アプリケーション、条件、またはパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は特定の例を説明するためのものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。ある範囲の値が表現される場合、別の例は、ある特定の値及び/またはその他の特定の値を含む。同様に、値が接頭辞「約」の使用によって近似値として表される場合、その特定の値が別の例を成すことが理解されるであろう。全ての範囲が包括的であり、組み合わせ可能である。さらに、ある範囲内に記載された値への言及は、その範囲内の各値を含む。
【0018】
明確さのために、本明細書において別々の実施例の文脈に記載されている本開示の特定の特徴は、1つの実施例において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一の実施例の文脈に記載されている本開示の様々な特徴は、別々にまたは任意のサブコンビネーションで提供されてもよい。
【0019】
本開示は、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む磁性材料、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含むバルク永久磁石、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む磁性材料を形成する技術、及び一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含むバルク永久磁石を形成するための技術に関する。一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含むバルク永久磁石は、一軸磁気異方性を含む鉄基相ドメインが高い飽和磁化、高い磁気異方性定数、したがって、高いエネルギー積を有することができるので、希土類元素を含む永久磁石の代替物を提供することができる。一軸磁気異方性を含む鉄基化合物の例は、α”-Fe16N2である。鉄基化合物の他の例としては、体心正方晶系結晶構造を有するもの、例えば歪み鉄などや、鉄とN、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、Al、Znなどのうちの少なくとも1種とを含むいくつかの化合物が挙げられる。
【0020】
α”-Fe16N2は、高い飽和磁化、高い磁気異方性定数を有し、従って高いエネルギー積を有する。高い飽和磁化及び磁気異方性定数は、いくつかの例において、希土類磁石よりも高いことがある磁気エネルギー積をもたらす。本明細書に記載された技術に従って製造されたバルクα”-Fe16N2永久磁石は、当該α”-Fe16N2永久磁石が異方性である場合に、約130MGOeという高いエネルギー積などの望ましい磁気特性を有することができる。α”-Fe16N2磁石が等方的である実施例において、エネルギー積は、約33.5MGOe程度と高いことがある。永久磁石のエネルギー積は、残留保磁力と残留磁化との積に比例する。この永久磁石のエネルギー積は、残留磁化と残留磁化との積に比例する。比較のため、Nd2Fe14B永久磁石のエネルギー積は約60MGOe程度と高いことがある。エネルギー積がより高いほど、センサー、アクチュエータ、モーター、発電機などに使用される場合、永久磁石の効率の向上をもたらすことができる。さらに、Fe16N2相を含む永久磁石は、希土類元素を含まないことがあり、これによって、磁石の材料費を低減し、磁石を製造することによる環境への影響を低減することができる。
【0021】
いかなる作用理論にも限定されないが、α”-Fe16N2は窒化鉄の他の安定相と競合する準安定相であると考えられている。したがって、α”-Fe16N2相ドメインを含むバルク磁性材料及びバルク永久磁石を形成することが困難であることがある。本明細書に記載の様々な技術は、Fe16N2窒化鉄相ドメインを含む磁性材料の形成を容易にすることができる。いくつかの例において、この技術は、Fe16N2窒化鉄相ドメインを含む磁性材料を形成するための他の技術と比べて、α”-Fe16N2窒化鉄相ドメインを含む磁性材料を形成するコストを低減し、磁性材料中のα”-Fe16N2窒化鉄相ドメインの体積分率を増加させ、Fe16N2窒化鉄相ドメインを含む磁性材料の大量生産を容易にし、及び/または、Fe16N2窒化鉄相ドメインを含む磁性材料の磁気特性を改善することができる。
【0022】
例えばα”-Fe16N2などの一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む本明細書に記載のバルク永久磁石は異方的磁気特性を有し得る。かかる異方的磁気特性は、印加された電場または磁場に対して異なる相対的な向きで異なるエネルギー積、保磁力及び磁化モーメントを有するとして特徴付けられる。したがって、開示するバルク窒化鉄磁石は、様々な用途(例えば、電気モーター)のいずれにおいても、かかる用途に低エネルギー損失及び高エネルギー効率を与えるために使用することができる。
【0023】
本開示は、例えば少なくとも1つのα”-Fe16N2相ドメインなどの一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む磁性材料を形成するための技術を記載する。本明細書に記載の技術は、印加磁場中で鉄と窒素の混合物をキャスティングすること、または、その少なくともいくつかが一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメイン、例えば少なくとも1つのα”-Fe16N2相ドメインを含む複数のワークピースを、当該複数のワークピースを印加磁場に曝しながら統合することのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0024】
キャスティング技術の間、窒化鉄結晶は、鉄と窒素を含む溶融混合物から核生成及び成長することがある。キャスティングプロセス中に磁場を印加することによって、所定の配向を有する結晶の成長がエネルギー的に有利であり得るように、窒化鉄の結晶の核生成及び成長に影響を及ぼすことができる。例えば、印加磁場の方向に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))な(002)または(004)結晶面を有する窒化鉄結晶は、異なる配向(例えば、印加磁場の方向に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))な(110)、(112)、(202)または(200)結晶面を有する)の窒化鉄結晶よりもエネルギー的に有利であろう。そのため、印加磁場は、複数の窒化鉄結晶のうちの幾つかまたは全ての窒化鉄結晶が同様の結晶配向を有する可能性を高めることができる。実質的に同様の結晶配向を有する複数の窒化鉄結晶を含む材料は、材料の磁気異方性を増加させることができる。
【0025】
いくつかの例において、一軸磁気異方性を有することに加えて、キャスティング技術は、異方的形状を示す少なくとも1つの窒化鉄結晶または結晶粒を形成することができる。少なくとも1つの異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒は、約1.1~約50、例えば約1.4~約50、もしくは2.2~約50、または約5~約50などのアスペクト比を示すことができる。本明細書では、アスペクト比は、異方性結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、ここで、最短寸法は、最長寸法に対して実質的に直交する方向(例えば直交またはほぼ直交(例えば直交から約5度以内))で測定される。いくつかの例において、少なくとも1つの異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒の最長寸法は、印加磁場の方向に対して、したがって、一軸磁気異方性の方向に対して、実質的に平行(例えば、平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))である。同様に、少なくとも1つの異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒の最長寸法は、異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒の磁気結晶異方性の容易軸に対して平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))であることができる。例えば、体心正方晶(bct)Fe16N2及びFeの場合、(002)組織は、結晶または結晶粒の最長寸法に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))である。このように、異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒が有する形状異方性は、材料の磁気異方性に寄与し得る。他の例において、(bc)Fe16N2の場合、(002)組織は、結晶または結晶粒の最短寸法に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))であり得る。
【0026】
統合の間、例えばα”-Fe16N2などの一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースの磁化容易軸を実質的に整列(例えば整列またはほぼ整列(例えば完全な整列から約5度以内))させるために、統合される材料に磁場を印加してもよい。磁化容易軸は、磁気モーメントの整列がエネルギー的に有利かつ準安定である結晶セルの方向である。いくつかの例において、一軸磁気異方性を含む鉄基相ドメインの単位胞の磁化容易軸は<001>またはc軸である。いくつかの例において、複数のワークピースは、粉末、粒子、リボン、シート、ワイヤ、または他の幾何学的形状物を含んでもよい。圧縮プロセス中に磁場を印加することによって、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースの磁化容易軸は、印加磁場の方向に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))に整列しうる。これは、統合された磁性材料の磁化方向を定めるのに役立ち、また、統合された磁性材料の磁気異方性を増加させることができる。
【0027】
いくつかの例において、キャスティング及び統合技術は、一軸磁気異方性α”-Fe16N2相ドメインを含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含むバルク磁性材料を形成するための大規模技術の一部として併用することができる。いくつかの例において、この大規模技術は、例えば、キャスティングされた磁性材料の急冷、急冷された磁性材料のアニールなどを含む追加の工程を含むことができる。いくつかの例において、これらの他のステップの少なくとも一部の間に外部磁場を印加して、一軸磁気異方性α”-Fe16N2相ドメインを含む少なくとも1つの鉄基相ドメインの形成を促進することができる。例えば、アニール工程中に磁場を印加して、材料中に一軸磁気異方性α”-Fe16N2相ドメインを含む少なくとも1つの鉄基相ドメインの形成を容易にすることができる。以下の説明では、主に、α”-Fe16N2などの窒化鉄材料を説明するが、当業者であれば、以下の説明が、一軸磁気異方性を含む他の鉄基材料、例えば、歪み鉄、または、N、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、Al、Znなどのうちの少なくとも1種を含み、体心正方晶系構造を有する鉄基材料(iron-based materials)にも当てはまることを理解するであろう。
【0028】
図1は、印加磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングするための例示的技術を示す流れ図である。
図1の技術は、鉄と窒素を含む溶融混合物を形成すること(12)を含む。溶融混合物は、多くの技術のうちの任意の1つを使用して形成することができる。例えば、鉄と窒素を含む固体材料を最初に形成し、次に、鉄と窒素を含む固体材料を溶融させて鉄と窒素を含む溶融混合物を形成することができる。他の例として、溶融鉄を窒素源と混合して、鉄と窒素を含む溶融混合物を形成することができる。
【0029】
鉄と窒素を含む固体材料を形成するための例示的技術は、鉄含有ワークピースを窒化することを含む。鉄含有ワークピースとしては、例えば、粉末、粒子、リボン、シート、ワイヤ、または他の幾何学的形状物が挙げられる。いくつかの例において、鉄含有ワークピースを窒化することは、鉄含有ワークピースの実質的に全体にわたって所定の濃度に窒素を拡散させるのに十分な時間、鉄含有ワークピースを加熱することを含むことができる。このように、加熱時間及び温度は関連しており、鉄含有ワークピースの組成及び/または幾何学的形状によっても影響され得る。例えば、鉄ワイヤまたはシート28を、約125℃~約600℃の温度に約2時間~約9時間加熱してもよい。
【0030】
鉄含有ワークピースを加熱することに加えて、鉄含有ワークピースを窒化するステップは、鉄含有ワークピースを、鉄含有ワークピース中に拡散する原子状窒素物質(atomic nitrogen substance)に鉄含有ワークピースを曝すことを含む。いくつかの例において、原子状窒素物質は、二原子窒素(N2)として供給され、これは、その後、個々の窒素原子に分離(分解)される。他の例において、原子状窒素は、例えばアンモニア(NH3)などの他の原子状窒素前駆体から供給されてもよい。他の例において、原子状窒素は、尿素(CO(NH2)2)から供給されてもよい。窒素は、気相のみ(例えば、実質的に純粋なアンモニアまたは二原子窒素ガス)で、またはキャリアガスとの混合物として供給されてもよい。いくつかの例において、キャリアガスはアルゴン(Ar)である。
【0031】
いくつかの例において、鉄含有ワークピースを窒化することは、尿素が窒素源(例えば、二原子窒素またはアンモニアではなく)として利用される尿素拡散プロセスを含んでもよい。尿素(カルバミドとも呼ばれる)は、化学式CO(NH2)2を有する有機化合物である。鉄含有ワークピースを窒化するために、尿素を、例えば鉄含有ワークピースを囲む炉内で加熱して、鉄含有ワークピース中に拡散しうる分解窒素原子を発生させることができる。さらに後述するように、得られる窒化鉄材料の構成は、拡散プロセスの温度、及び当該プロセスのために使用される尿素に対する鉄含有ワークピースの比(例えば、質量比)によりある程度制御することができる。これらの窒化プロセス(尿素拡散を含む)に関するさらなる詳細は、2012年8月17日に出願された国際特許出願第PCT/US12/51382号に見ることができ、その全内容は引用により本明細書に援用する。
【0032】
鉄と窒素を含む固体材料を形成する別の例として、窒素源、例えばガス状窒素源などからのプラズマ、例えばRFプラズマまたはDCプラズマなどを使用して、窒素を生成させてもよい。鉄含有ワークピースは、例えばプラズマチャンバなどのプラズマ環境中に置かれ、プラズマプロセスにより生成された窒素原子は、鉄含有ワークピース中に注入され、鉄含有ワークピース中に拡散することができる。
【0033】
鉄と窒素を含む固体材料を形成する別の例として、イオン注入を使用して鉄含有ワークピース中に窒素原子を注入することができる。例えば、鉄含有ワークピースは箔であってもよい。箔は、数百ナノメートル乃至数ミリメートルのオーダーの厚さを示すことができる。いくつかの例において、箔は、約500ナノメートル(nm)~約1ミリメートル(mm)の厚さを示すことができる。箔の厚さは、後述するように、箔のイオン注入及びアニールに使用されるパラメータに影響を及ぼすことがある。箔の厚さは、箔が取り付けられている基材の表面に対して、実質的に垂直な方向(例えば垂直またはほぼ垂直(例えば垂直から約5度以内など))で測定することができる。
【0034】
鉄含有ワークピース中にN+イオンが注入される平均深さは、N+イオンが加速されるエネルギーに依存し得る。一般的に、N+イオンの平均注入深さは、注入エネルギーの増加と共に増加し得る。
【0035】
N+イオンを注入するのに使用される注入エネルギーは、鉄含有ワークピースの厚さに少なくとも部分的に基づいて選択することができる。注入エネルギーは、鉄含有ワークピース中の鉄結晶の結晶格子を含む、鉄含有ワークピースに、過度に大きな損傷を与えることなく、N+イオンを注入するように選択することもできる。例えば、より高い注入エネルギーは、より大きな平均深さでN+イオンの注入を可能にし得るが、より高い注入エネルギーは、N+イオンの衝撃のために、鉄結晶の結晶格子を損傷し、鉄原子の一部をアブレートすることを含む、鉄ワークピースへの損傷を増加させうる。したがって、いくつかの例において、注入エネルギーは、約180keV未満に制限されてもよい。いくつかの例において、注入の入射角は、約0度(例えば鉄ワークピースの表面に対して実質的に垂直(例えば平行またはほぼ垂直(例えば垂直から約5度以内など)))であってもよい。他の例において、注入の入射角を調整して格子損傷を低減することができる。例えば、注入の入射角は、垂直から約3°~約7°であることができる。
【0036】
一例として、鉄含有ワークピースが約500nmの厚さを示す場合、鉄含有ワークピースにN+イオンを注入するために約100keVの注入エネルギーを使用することができる。他の厚さの鉄含有ワークピースにN+イオンを注入するために、約100keVの注入エネルギーを使用することもできる。他の例において、約500nmの厚さを示す鉄含有ワークピースに対して異なる注入エネルギーを使用することができ、500nmとは異なる厚さを示す鉄含有ワークピースに対して同じまたは異なる注入エネルギーを使用することができる。
【0037】
さらに、N+イオンの流動性は、鉄含有ワークピース中に所望の量のN+イオンを注入するように選択することができる。いくつかの例において、N+イオンの流動性は、鉄含有ワークピース中にほぼ化学量論的数のN+イオンを注入するように選択することができる。Fe16N2中の鉄対窒素の化学量論比は8:1である。したがって、鉄含有ワークピース中の鉄原子のおおよその数を決定することができ、鉄原子の約1/8(12.5%)に等しい数、例えば約8原子%~約15原子%のN+イオンを鉄含有ワークピース中に注入することができる。例えば、約1cm×1cm×500nmの寸法を有する鉄含有ワークピースは、約4.23×1018個の鉄原子を含むことができる。したがって、鉄含有ワークピース内の鉄原子対N+イオンの化学量論比を達成するために、約5.28×1017個のN+イオンを試料に注入することができる。
【0038】
イオン注入の間の鉄含有ワークピースの温度も制御することができる。いくつかの例において、鉄含有ワークピースの温度は、ほぼ室温~約500℃であることができる。鉄含有ワークピース中へのN+イオンのイオン注入に関するさらなる詳細は、2014年2月6日に出願された国際出願第PCT/US14/15104号に見ることができ、その全内容を引用により本明細書に援用する。
【0039】
鉄と窒素を含む固体材料を形成するための別の例の技術は、窒素源の存在下で、例えば粉末などの鉄含有材料を粉砕することを含む。鉄含有材料を粉砕するために使用される粉砕装置としては、圧延モード、攪拌モードまたは振動モードの粉砕装置が挙げられる。粉砕装置としては、鉄含有物質、窒素源及び粉砕媒体を封入するビンが挙げられる。
【0040】
粉砕媒体としては、例えば粉砕球が挙げられる。粉砕媒体は、鉄含有材料に十分な力で接触すると鉄含有材料を摩耗させて、鉄含有材料の粒子を平均してより小さなサイズにするのに十分な硬質材料を含むことができる。いくつかの例において、粉砕媒体は、鋼、ステンレス鋼などで形成されたものであることができる。いくつかの例において、粉砕媒体が形成される材料は、鉄含有材料及び/または窒素源と化学的に反応しない。
【0041】
鉄含有材料は、例えば原子状鉄、酸化鉄、塩化鉄などを含む任意の材料を含んでもよい。いくつかの例において、鉄含有材料は、実質的に純粋な鉄(例えば約10原子パーセント(at.%)未満のドーパントまたは不純物を含む鉄)を含んでもよい。いくつかの例において、ドーパントまたは不純物は、酸素または酸化鉄を含んでもよい。
【0042】
窒素源は、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、または、アミド含有物質、例えば液体アミドまたはアミドを含む溶液、またはヒドラジンまたはヒドラジンを含む溶液などを含み得る。アミドはC-N-H結合を含み、ヒドラジンはN-N結合を含む。硝酸アンモニウム、アミド及びヒドラジンは、窒化鉄を含む粉末を形成するための窒素供与体としての役割を果たす。例のアミドにとしては、カルバミド((NH2)2CO;尿素とも呼ばれる)、メタンアミド、ベンズアミド、及びアセトアミドが含まれるが、任意のアミドを使用することができる。いくつかの例において、アミドはカルボン酸のヒドロキシル基をアミン基で置換することによってカルボン酸から誘導することができる。このタイプのアミドは、酸アミドと呼ぶことができる。
【0043】
いくつかの例において、粉砕装置のビンも触媒を封入することができる。触媒としては、例えばコバルト(Co)粒子及び/またはニッケル(i)粒子が挙げられる。触媒は、鉄含有材料の窒化を触媒する。Co触媒を使用して鉄を窒化するための1つの可能な概念化した反応経路が、以下の反応1~3に示されている。触媒としてNiを使用する場合、同様の反応経路に従うことができる。
【0044】
【0045】
【0046】
したがって、十分なアミド及び触媒22を混合することによって、鉄含有原料18を窒化鉄含有材料に変換することができる。鉄と窒素を含む固体材料を形成するために窒素源の存在下で鉄含有材料を粉砕することに関する更なる詳細は、2014年6月24日に出願された国際出願第PCT/US14/43902号に見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
鉄と窒素を含む固体材料が形成される技術に関係なく、鉄と窒素を含む固体材料は、約8:1の鉄対窒素原子比を含むことができる。例えば、混合物は、約8原子パーセント(at.%)~約15at.%の窒素を含んで、残りは、鉄、他の元素及びドーパントであってもよい。別の例として、混合物は、約10at.%~約13at.%の窒素、または約11.1at.%の窒素を含んでもよい。
【0048】
いくつかの例において、鉄と窒素を含む混合物は、鉄及び/または窒素に加えて、少なくとも1種の窒化鉄、例えばFeN、Fe2N(例えばξ-Fe2N)、Fe3N(例えばε-Fe3N)、Fe4N(例えばγ’-Fe4N及び/またはγ-Fe4N)、Fe2N6、Fe8N、Fe16N2、またはFeNx(ここで、xは約0.05~約0.5である)を含んでもよい。いくつかの例において、鉄と窒素を含む混合物は、少なくとも92原子パーセント(at.%)の純度(例えば、集合的な鉄と窒素の含有量)を有し得る。
【0049】
いくつかの例において、鉄と窒素を含む混合物は、強磁性または非磁性ドーパント及び/または相安定剤などの少なくとも1種のドーパントを含むことができる。いくつかの例において、少なくとも1種の強磁性または非磁性のドーパントを強磁性または非磁性不純物と呼ぶことができ、及び/または相安定化剤を相安定化不純物と呼ぶことができる。強磁性または非磁性のドーパントを使用して、鉄と窒素を含む混合物から形成された磁性材料の磁気モーメント、保磁力または熱安定性の少なくとも1つを増加させることができる。強磁性または非磁性のドーパントの例としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Ca、Pt、Au、Sm、C、Pb、W、Ga、Y、Mg、Hf及びTaからなる群から選択される。例えば、少なくとも1つのFe16N2相ドメインを含む窒化鉄材料中にMnドーパント原子を約5at.%~約15at.%のレベルで含めることによって、Mnドーパント原子を含まない窒化鉄材料と比較して、当該Fe16N2相ドメインの熱安定性及び材料の保磁力を改善することができる。いくつかの例において、鉄と窒素を含む2つ以上の(例えば、少なくとも2つの)強磁性または非磁性ドーパントが混合物中に含まれてもよい。いくつかの例において、強磁性または非磁性ドーパントは、磁壁ピンニングサイトとして機能し、鉄と窒素を含む混合物から形成された磁性材料の保磁力を改善することができる。表1は、鉄と窒素を含む混合物中の強磁性または非磁性のドーパント濃度の例を含む。
【0050】
【0051】
代替的または追加的に、鉄と窒素を含む混合物は、少なくとも1種の相安定剤を含んでもよい。少なくとも1種の相安定剤は、Fe16N2体積比、熱安定性、保磁力及び耐侵食性のうちの少なくとも1つを改善するように選択された元素であってもよい。混合物中に存在する場合、少なくとも1種の相安定剤は、鉄と窒素を含む混合物中に、約0.1at.%~約15at.%の濃度で存在してよい。混合物中に少なくとも2つの相安定剤が存在するいくつかの例において、少なくとも2つの相安定剤の総濃度は、約0.1at.%~約15at.%であることができる。少なくとも1種の相安定剤としては、例えば、B、Al、C、Si、P、O、Co、Cr、Mn及び/またはSが挙げられる。例えば、少なくとも1つのFe16N2相ドメインを含む窒化鉄材料中に約5at.%~約15at.%のレベルでMnドーパント原子を含めることによって、Mnドーパント原子を含まない窒化鉄材料と比較して、Fe16N2相ドメインの熱安定性及び材料の磁気保磁力を改善することができる。
【0052】
あるいは、鉄と窒素を含む固体材料を形成する代わりに、窒素源を溶融鉄と混合して、鉄と窒素を含む溶融混合物を形成してもよい。窒素源と溶融鉄とを混合することに関するさらなる詳細は、
図5に関して以下で例示及び説明する。
【0053】
いくつかの例において、鉄と窒素を含む溶融材料(12)を形成する代わりに、
図1の技術は、鉄のみを含む溶融材料を形成すること、または、鉄とN、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、Al、Znなどのうちの少なくとも1種とを含む溶融材料であって、当該材料の少なくともいくらかがキャスティングによって体心正方晶系構造を形成するような相対的割合で鉄とN、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、Al、Znなどのうちの少なくとも1種とを含む溶融材料を形成することを含んでもよい。
【0054】
図1の技術は、
図1には、印加磁場(14)の存在下で、鉄と窒素を含む材料をキャスティングすることも含む。また、
図2~4は、印加磁場の存在下で、鉄と窒素を含む材料をキャスティングするために使用することのできる例示的装置を示す。
【0055】
図2は、RF炉22、るつぼ26、及び任意選択の急冷媒体28を利用して鉄と窒素を含む混合物にキャスティング技術を行う例示的システム20を示す概念図である。システム20は、るつぼ26を取り囲むRF炉22を含む。るつぼは、鉄と窒素を含む混合物の加熱中のRF炉22内の温度で熱的に安定な材料で形成されてもよい。例えば、るつぼ26は、1又は2種以上の耐火材料、例えばグラファイト、耐火セラミックなどを含むことができる。
【0056】
RF炉22は、RF磁場を生成し、少なくともるつぼ26内の鉄と窒素を含む混合物を加熱するために使用される複数のコイルとして、
図2に示すRF源24も含む。いくつかの例において、RF源24は、いくつかの例において約13.56GHzまたは約900MHzの周波数を有するRFエネルギーを生成することができる。RF源24は、直接的に、鉄と窒素を含む混合物を誘導加熱するか、または、RF炉22内の構造体(例えば、るつぼ26)を加熱し、次いで鉄と窒素を含む混合物を加熱することによって、鉄と窒素を含む混合物を誘導加熱することができる。鉄と窒素を含む溶融混合物を形成するために、鉄と窒素を含む混合物の溶融温度より上にRF炉22内で鉄と窒素を含む混合物を加熱することができる。
【0057】
いくつかの例において、るつぼ26の形状は、鉄と窒素を含む混合物の形状、例えば少なくとも1つのワイヤ、リボン、または、その幅または直径よりも大きい長さを有する他の物品などを規定することができる。いくつかの例において、キャスティングプロセスの間、るつぼ26の温度は、約650℃~約1200℃の温度に維持されてもよい。いくつかの例において、キャスティングプロセスの間、るつぼ26の温度は、約800℃~約1200℃の温度に維持されてもよい。キャスティングプロセスは、空気、窒素環境、不活性環境、部分真空、完全真空、またはそれらの任意の組み合わせで実施することができる。キャスティングプロセスは、任意の圧力、例えば約0.1GPa~約20GPaであることができる。
【0058】
システム20は、RF炉22及びRF炉内の材料(例えば鉄と窒素を含む溶融混合物)が曝される外部磁場32を生成する磁場発生器30も含む。外部磁場32は、鉄と窒素を含む溶融混合物を固体材料に冷却する間に、鉄と窒素を含む材料に印加することができる。いくつかの例において、外部磁場32は、鉄と窒素を含む混合物が溶融している間中ずっと印加されてもよい。いくつかの例において、外部磁場32は、鉄と窒素を含む固体材料が溶融されて鉄と窒素を含む溶融混合物を形成する間に印加されてもよい。
【0059】
外部磁場32は、鉄と窒素の固体混合物への鉄と窒素の溶融混合物の冷却及び固化の間に結晶粒の核生成及び成長に影響を及ぼしうる。例えば、いかなる作用理論にも束縛されることを望まないが、結晶粒のギブス自由エネルギーは、外部磁場32に対するその配向に依存し得る。例えば、(002)面または(004)面が外部磁場32に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))である結晶粒は、(110)面、(112)面、(202)面または(200)面が外部磁場32に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))である結晶粒よりも低いギブス自由エネルギーを有しうる。このため、結晶粒は、(002)面または(004)面が外部磁場32に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))に核生成及び成長する可能性がより高くなる。これは、キャスティングプロセス中に形成された鉄または窒化鉄結晶の結晶軸の実質的な配向(例えば、配向またはほぼ配向)を促進することができ、これによって、α”-Fe16N2が形成される時にα”-Fe16N2の結晶軸を実質的に整列(例えば整列またはほぼ整列(例えば整列から約5度以内))させるのを促進することができる。
【0060】
追加的または代替的に、外部磁場32は、鉄格子内の格子間空間への窒素の拡散を促進することができ、これによって、鉄と窒素を含む材料から窒素が拡散して出るのを低減または実質的に防止することができる。いかなる作用理論にも束縛されることを望まないが、外部磁場32が鉄結晶格子と相互作用し、鉄結晶が核生成及び成長するときに結晶格子を歪ませるおそれがあると現在考えられている。鉄結晶格子の歪みは、鉄格子中の格子間空間に窒素をより容易に拡散させることを可能にするであろう。窒素が鉄格子内の格子間空間に拡散すると、窒素が鉄格子から拡散して出るのがより困難になるであろう。追加的にまたは代替的に、いかなる作用理論にも束縛されることを望まないが、外部磁場32は、溶融窒化鉄混合物中の対流を弱めるおそれがあり、これによって、窒化鉄結晶の成長中の固液界面の前方への窒素原子の移動を減少させることができると現在考えられている。
【0061】
外部磁場32は、核生成及び成長プロセス中の核生成密度及び欠陥密度に影響を及ぼしうるため、外部磁場32は、鉄の結晶粒度、結晶粒度均一性、結晶粒界、結晶粒形状にも影響を及ぼしうる。例えば、外部磁場32の印加のために、一軸磁気異方性を有することに加えて、印加磁場(14)の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングすることにより形成されたワークピースは、異方的形状を示す少なくとも1つの窒化鉄結晶または結晶粒を含みうる。少なくとも1つの異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒は、約1.1~約50、例えば約1.4~約50、または2.2~約50、または約5~約50のアスペクト比を示すことができる。本明細書では、アスペクト比は、異方性結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、ここで、最短寸法は、最長寸法に対して実質的に直交(例えば直交またはほぼ直交(例えば直交から約5度以内))する方向で測定される。いくつかの例において、α”-Fe16N2結晶または結晶粒84の最短寸法は約5nm~約300nmである。
【0062】
いくつかの例において、少なくとも1つの異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒の最長寸法は、印加磁場32の方向、したがって、一軸磁気異方性の方向に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))であることができる。同様に、少なくとも1つの異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒の最長寸法は、異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒の磁気結晶異方性の容易軸に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))であることができる。例えば、体心正方晶系(bct)Fe16N2及びFeの場合、(002)組織は、結晶または結晶粒の最長寸法に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内)であることができる。このように、異方的形状の窒化鉄結晶または結晶粒が有する形状異方性は、材料の磁気異方性に寄与し得る。
【0063】
いくつかの例において、印加磁場は、例えば結晶粒界を硬化させることなど、結晶粒界の特性に影響を及ぼしうる。印加磁場は、キャスティングプロセス(14)の間に結晶粒界またはその近傍に位置するピンニングサイト、例えばドーパント原子または欠陥などの生成を促進することができ、これによって、結晶粒界(例えば結晶粒界の約1nm~約100nmの範囲内の領域)の硬度を増加させることができる。例えば、印加磁場は、結晶粒内のドーパント原子または欠陥の結晶粒界への移動を促進することができる。
【0064】
いくつかの例において、外部磁場32は、DCモード電磁石によって生成された静磁場であってもよい。静磁場は、キャスティング技術の間に時間の関数として変化しなくてもよい。DCモード外部磁場32は、約0.01テスラ(T)~約50Tの磁束密度を有することができる。いくつかの例において、外部磁場32は少なくとも0.2Tであることができる。いくつかの例において、外部磁場32は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、又はそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、外部磁場32は約5T~約10Tである。他の例において、外部磁場32は約8T~約10Tである。他の例において、外部磁場32はACモード電磁石によって生成された変動磁場である。変動磁場は、キャスティング技術の間の時間の関数として変化し得る。ACモード外部磁場32は、約0.01テスラ~約50テスラの磁束密度を有することができる。いくつかの例において、外部磁場32は、少なくとも約0.2Tであることができる。いくつかの例において、外部磁場32は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、外部磁場32は、約5T~約10Tである。他の例において、外部磁場32は、約8T~約10Tである。
【0065】
いくつかの例において、外部磁場32は、RF炉22全体にわたって、または少なくともるつぼ26に占有される容積全体にわたって、実質的に均一(例えば均一またはほぼ均一(例えば約5%以内))であってもよい。他の例において、外部磁場32は、位置の関数として変化してもよい。例えば、外部磁場32は、外部磁場の方向(
図2の矢印の方向によって示される)に沿って変化してもよい。例えば、勾配は、約0.01テスラ/メートル(約0.00001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)、例えば約0.01テスラ/メートル(約0.00001テスラ/ミリメートル)~約50テスラ/メートル(約0.05テスラ/ミリメートル)、または約1テスラ/メートル(約0.001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)であることができる。いくつかの例において、勾配は、外部磁場32の磁束密度で単調増加または減少であることができる。
【0066】
外部磁場32(14)の存在下で鉄と窒素を含む材料のキャスティング中に、鉄と窒素を含む溶融材料を冷却し固化させることができる。いくつかの例において、この冷却プロセスは比較的遅くてもよく、例えば冷却はRF炉22の加熱を停止することによって引き起こされてもよい。他の例において、鉄と窒素を含む溶融材料を急冷媒体中で急冷して、鉄と窒素を含む材料をより迅速に冷却及び固化させることができる。
図2のシステムは、必要に応じて急冷媒体28を含む。いくつかの例において、急冷媒体28は、水(室温、低温または氷水)、オイル、ブライン、アンモニア水またはアミドを含み得る。鉄と窒素を含む溶融材料を急冷媒体中に注ぐか、あるいは、るつぼ26または鉄と窒素を含む固化した(しかし依然として熱い)材料の周りに急冷媒体を循環させてもよい。使用される場合、急冷媒体28の温度は、約-269℃~約210℃であることができる。
【0067】
鉄と窒素を含むキャスティングされた材料は少なくとも1種の窒化鉄を含みうる。鉄及び/または窒素に加えて、当該少なくとも1種の窒化鉄は、例えばFeN、Fe
2N(例えばξ-Fe
2N)、Fe
3N(例えばε-Fe
3N)、Fe
4N(例えばγ’-Fe
4N及び/またはγ-Fe
4N)、Fe
2N
6、α-Fe
8N、α”-Fe
16N
2、またはFeN
x(ここで、xは約0.05~約0.5である)である。次に、キャスティングされた材料を、上記のタイプの窒化鉄の少なくともいくつかをα”-Fe
16N
2に変換するためにさらなる処理にかけてもよい。さらなる処理のいくつかの例は、
図11に関して以下で説明する。
【0068】
いくつかの例において、
図2に示したシステムを使用するというよりも、別のタイプの装置を用いて、外部磁場の存在下で鉄と窒素を含む混合物をキャスティングすることができる。
図3は、外部磁場の存在下で鉄と窒素46を含む材料をキャスティングするために使用できるるつぼ加熱ステージ42を含むシステム40の概念図を示す。
図4は、
図3に示したるつぼ加熱ステージ42の一例をさらに詳細に示す概念図である。
【0069】
図3に最もよく示されているように、鉄と窒素を含む材料46は、被覆材48によって包まれる。被覆材48は、ガラスまたはガラスと同様の融点を有する別の非晶質材料であることができる。被覆材48は、鉄と窒素46を含む材料を実質的に封入する(例えば封入またはほぼ封入する)ことができる。被覆材48は非晶質であるため、材料をしっかりと包み込み、材料に応力を加えることができる。このようにして、被覆材48は、鉄と窒素を含む材料46に歪みを導入することを促進することができ、これによって、高い飽和磁化を有する材料の形成をもたらすことができる。鉄と窒素を含む材料46は、るつぼ加熱ステージ42に入る前に、ワイヤ、リボン、フィルムなどの形状であってもよい。
【0070】
図3及び4に示した例において、鉄と窒素を含む材料46は、るつぼ加熱ステージ42を図の上から下に垂直に通過する。他の例において、鉄と窒素を含む材料46は、るつぼ加熱ステージ42を図の下から上へ垂直に通過してもよい。
【0071】
るつぼ加熱ステージ42は、鉄と窒素を含む材料46が通過する開口56を画定する(例えば、鉄と窒素を含む材料46の一部が配置される)。いくつかの例において、るつぼ加熱ステージ42のどの部分も、鉄と窒素を含む材料46の加熱中に、鉄と窒素を含む材料46と接触しない。いくつかの実施形態において、これは、望ましくない元素または化学種が鉄と窒素を含む材料46に接触して拡散するリスクを低下させるので、有利である。望ましくない元素または化学種は、鉄と窒素を含む材料46の特性に影響を及ぼし得る。したがって、鉄と窒素を含む材料46と他の材料との間の接触を低減または制限することが望ましいであろう。
【0072】
るつぼ加熱ステージ42は、るつぼ加熱ステージ42によって画定された開口56の少なくとも一部を取り囲むインダクタ44も含む。インダクタ44は、電流が流れることができる導電性材料、例えばアルミニウム、銀または銅などを含む。インダクタ44を通過する電流は、交流(AC)によって、鉄と窒素を含む材料46に渦電流を誘導し、鉄と窒素を含む材料46を加熱することができる。
【0073】
鉄と窒素46を含む材料は、渦電流により加熱され、鉄と窒素を含む溶融材料46を形成する。いくつかの例において、
図3及び
図4に示されていないが、溶融プロセス中、鉄と窒素を含む固体材料46に比べて鉄と窒素を含む溶融材料46の厚さまたは直径が減少するように、鉄と窒素を含む溶融材料46が軸方向に延伸される。溶融プロセスの間、鉄と窒素を含む溶融材料46は被覆材48によって実質的に封入され続ける。
【0074】
いくつかの例において、鉄と窒素を含む溶融材料は、鉄と窒素を含むキャスティングされた材料52の断面サイズ及び形状を画定することができるコイル50の開口を通って延伸されてもよい。
【0075】
必要に応じて、鉄と窒素を含むキャスティングされた材料52の冷却を促進するために、鉄と窒素を含むキャスティングされた材料52を、冷却媒体、例えば水(室温水、冷水または氷水)、オイル、ブライン、アンモニア水またはアミドなどに曝してもよい。他の例において、鉄と窒素を含むキャスティングされた材料52を空冷してもよい。
【0076】
当該キャスティング法の溶融及び冷却部分の間、鉄と窒素を含む材料48(固体、溶融、及びキャスティングされた52)は、磁石54によって生成された外部磁場56に曝される。外部磁場56は、
図2に関して記載したように、鉄と窒素を含む溶融材料48の鉄と窒素を含むキャスティングされた材料52への冷却及び固化の間に結晶粒の核生成及び成長に影響を及ぼしうる。追加的または代替的に、外部磁場56は、鉄格子中の格子間空間への窒素の拡散を促進することができ、これによって、鉄と窒素を含む材料から窒素が拡散して出るのを低減または実質的に妨げる(例えば妨げるまたはほぼ妨げる)ことができる。外部磁場56は、核生成及び成長プロセスの間の核生成密度及び欠陥密度に影響を及ぼしうるため、外部磁場56は、鉄の結晶粒度及び結晶粒界にも影響を及ぼしうる。
【0077】
いくつかの例において、外部磁場56は、
図2に関して記載した外部磁場32と同様または実質的に同じ(例えば同じまたはほぼ同じ)であってもよい。例えば、外部磁場56は、DCモード電磁石によって生成された静磁場であってもよく、約0.01テスラ~約50テスラの磁束密度を有してもよい。他の例において、外部磁場56は、ACモードの電磁石によって生成された変動磁場であってもよく、約0.01テスラ~約50テスラの磁束密度を有してもよい。いくつかの例において、外部磁場56は、少なくとも0.2Tであることができる。いくつかの例において、外部磁場56は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、外部磁場56は約5T~約10Tである。他の例において、外部磁場56は約8T~約10Tである。いくつかの例において、外部磁場56は、るつぼ加熱ステージ42全体にわたって、または、少なくとも、鉄と窒素を含む材料48の容積全体にわたって実質的に均一(例えば均一またはほぼ均一(例えば約5%以内))であることができる。他の例において、外部磁場56は、位置の関数として変化してもよい。例えば、外部磁場56は、外部磁場の方向(
図3の矢印の方向によって示される)に沿って変化してもよい。例えば、勾配は、約0.01テスラ/メートル(約0.00001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)、例えば約0.01テスラ/メートル(約0.00001テスラ/ミリメートル)~約50テスラ/メートル(約0.05テスラ/ミリメートル)、または約1テスラ/メートル(約0.001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)であることができる。いくつかの例において、勾配は、外部磁場56の磁束密度の単調増加または減少であることができる。
【0078】
鉄と窒素を含むキャスティングされた材料52は少なくとも1種の窒化鉄を含んでもよい。鉄及び/または窒素に加えて、当該少なくとも1種の窒化鉄は、例えばFeN、Fe
2N(例えばξ-Fe
2N)、Fe
3N(例えばε-Fe
3N)、Fe
4N(例えばγ’-Fe
4N及び/またはγ-Fe
4N)、Fe
2N
6、α-Fe
8N、α”-Fe
16N
2、またはFeN
x(ここで、xは約0.05~約0.5である)である。次いで、キャスティングされた材料を、上記のタイプの窒化鉄の少なくともいくつかをα”-Fe
16N
2に変換するためにさらなる処理にかけてもよい。さらなる処理のいくつかの例は、
図11に関して以下で説明する。
【0079】
図5は、外部磁場の存在下で例示的な窒化鉄のワークピースをベルトキャスティング(belt casting)するための別の例示的なシステム60を示す概念図である。ベルトキャスティングシステム60は、溶融鉄インゴット64を収容するインゴットチャンバ62を含んでもよく、例えば加熱コイル66の形態にある加熱源により加熱される。いくつかの例において、インゴットチャンバ62内の溶融鉄インゴット64の温度は約1800ケルビン(K;約1526.85℃)より高くてもよい。インゴット室62内の鉄インゴット64の圧力は約0.06MPa~約0.12MPaであることができる。
【0080】
インゴット室62は窒素入口68を含み、窒素入口68を通じて窒素源が溶融鉄インゴット64内に導入され、溶融窒化鉄混合物70を形成する。窒素は、様々な形態で窒素入口68を通じて、または、様々な供給源から供給されてもよい。例えば、窒素は、アンモニア、アジ化アンモニウム、または尿素の形態で供給されてもよく、窒素入口68を通じて導入され、次いで、溶融窒化鉄混合物70中の溶融鉄との混合時に分解して窒素原子を放出する。
【0081】
いくつかの例において、窒化鉄混合物70中にほぼ化学量論的な数の窒素原子をもたらすように窒素源を用意してもよい。Fe16N2中の鉄と窒素の化学量論比は8:1である。したがって、窒化鉄混合物70中の鉄原子のおおよその数を決定することができ、鉄原子の約1/8(12.5%)に等しい数、例えば約8at.%~約15at.%の窒素原子を窒素入口68から窒化鉄混合物70に供給することができる。
【0082】
溶融窒化鉄混合物70は、ノズルヘッド72を介してインゴットチャンバ62から流出し、窒化鉄ストリップ74を形成する。窒化鉄ストリップ74は、反対方向に回転する第1のピンチローラー76aと第2のピンチローラー76b(集合的に「ピンチローラー76」)の表面間のギャップ領域に供給される。いくつかの例において、ノズルヘッド72からピンチローラー76の表面までの距離は、約1mm~約50mm、例えば約4mmであってもよい。
【0083】
いくつかの例において、第1のピンチローラー76a及び第2のピンチローラー76bの回転速度は、毎分約10回転(rpm)から5000rpmまでの値をとることができ、ローラー76の回転速度はほぼ同じであってもよい。いくつかの例において、ピンチローラー76は、例えば水冷を使用して積極的に冷却され、これによって、ローラー76の表面を窒化鉄ストリップ74の温度よりも低い温度に維持し、窒化鉄ストリップ74を冷却及びキャスティングするのを助ける。例えば、ピンチローラー76の温度は、約300K(約26.85℃)~約400K(約126.85℃)に維持されてもよい。ピンチローラー76により窒化鉄ストリップ74にかかる圧力は約0.04MPa~約0.1MPaであることができる。
【0084】
窒化鉄ストリップ74がピンチローラー76間でプレスされ冷却された後、窒化鉄ストリップ74は、組織化(textured)窒化鉄シート78a及び78bを形成する。いくつかの例において、組織化窒化鉄シート78a及び78b(集合的に「組織化窒化鉄シート78」)は、約1μm~約10mm、例えば約5μm~約1cmの少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有する組織化窒化鉄リボンを形成してもよい(個々に、または複数の組織化された窒化鉄シート78の圧縮後のいずれか)。組織化窒化鉄シート78の各々は、例えば、(002)または(004)結晶組織を含んでもよい。換言すれば、組織化窒化鉄シート78の各々の主表面は、組織化窒化鉄シート78のそれぞれの中の鉄結晶の全てまたは実質的に全ての(002)または(004)表面と平行であってもよい。鉄結晶の全てまたは実質的に全て(例えば全て又はほぼ全て(例えば95%超))が、その後の工程で実質的に整列(例えば整列またはほぼ整列(例えば整列しているから約5度以内))した結晶軸を有する組織化窒化鉄シート78a及び78bを使用することによって、Fe8N及びFe16N2相ドメインを形成するときに形成された異方性が結晶間で実質的に整列されうる。
【0085】
ベルトキャスティング技術の間、磁石80は、少なくとも溶融した窒化鉄混合物70及び窒化鉄ストリップ74が曝される外部磁場82を発生することができる。外部磁場82は、
図2に関して上記したように、窒化鉄ストリップ74への溶融窒化鉄混合物70の冷却及び固化の間に結晶粒の核生成及び成長に影響を及ぼしうる。追加的または代替的に、外部磁場82は、鉄格子の格子間空間への窒素の拡散を促進することができ、これによって、鉄と窒素を含む材料から窒素が拡散して出るのを低減または実質的に妨げる(例えば妨げるまたはほぼ妨げる)ことができる。外部磁場82は、核生成及び成長プロセスの間の核生成密度及び欠陥密度に影響を及ぼしうるため、外部磁場56は、鉄の結晶粒度及び結晶粒界にも影響を及ぼしうる。
【0086】
いくつかの例において、外部磁場82は、
図2に関して記載した外部磁場32と同様または実質的に同じであってもよい。例えば、外部磁場82は、DCモード電磁石によって生成された静磁場であってもよく、約0.01テスラ~約50テスラの磁束密度を有してもよい。いくつかの例において、外部磁場82は、少なくとも約0.2Tであることができる。いくつかの例において、外部磁場82は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、外部磁場82は、約5T~約10Tであることができる。他の例において、外部磁場82は、約8T~約10Tである。他の例において、外部磁場82は、ACモードの電磁石によって生成された変動磁場であってもよく、約0.01テスラ~約50テスラの磁束密度を有してもよい。いくつかの例において、外部磁場82は、少なくとも約0.2Tであることができる。いくつかの例において、外部磁場82は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、外部磁場82は約5T~約10Tである。他の例において、外部磁場82は約8T~約10Tである。いくつかの例において、外部磁場82は、ベルトキャスティングシステム60全体にわたって、または、少なくとも、溶融窒化鉄混合物70の容積及び窒化鉄ストリップ74の全体にわたって、実質的に均一(例えば均一またはほぼ均一(約5%以内))であることができる。他の例において、外部磁場82は、位置の関数として変化してもよい。例えば、外部磁場82は、外部磁場の方向(
図5の矢印の方向によって示される)に沿って変化してもよい。例えば、勾配は、約0.01テスラ/メートル(約0.00001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)、例えば約0.01テスラ/メートル~約50テスラ/メートル(約0.05テスラ/ミリメートル)、または約1テスラ/メートル(約0.001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)であることができる。いくつかの例において、勾配は、外部磁場82の磁束密度の単調増加または減少であることができる。
【0087】
窒化鉄ストリップ74は、少なくとも1種の窒化鉄を含んでもよい。鉄及び/または窒素に加えて、当該少なくとも1種の窒化鉄は、例えばFeN、Fe
2N(例えばξ-Fe
2N)、Fe
3N(例えばε-Fe
3N)、Fe
4N(例えばγ’-Fe
4N及び/またはγ-Fe
4N)、Fe
2N
6、α-Fe
8N、α”-Fe
16N
2、またはFeN
x(ここで、xは約0.05~約0.5である)である。次いで、窒化鉄ストリップ74を、上記のタイプの窒化鉄の少なくともいくつかをα”-Fe
16N
2に変換するためにさらなる処理にかけてもよい。さらなる処理のいくつかの例は、
図11に関して以下で説明する。
【0088】
上記の例で、鉄と窒素の混合物を含む材料がキャスティング技術の間に磁場に曝されるキャスティング技術を説明した。本開示は、また、外部磁場の存在下でα”-Fe
16N
2相ドメインを含む複数のワークピースを接合するための圧縮技術も説明する。
図6は、α”-Fe
16N
2単位胞を示す概念図である。
図6に示されているように、α”-Fe
16N
2相では、N原子は(002)(鉄)結晶面に沿って整列している。窒化鉄単位胞が歪んでおり、<001>軸に沿う単位胞の長さは約6.28オングストローム(Å)であるのに対し、<010>軸及び<100>軸に沿う単位胞の長さは約5.72Åである。α”-Fe
16N
2単位胞は、歪んだ状態にあるとき、体心正方晶(bct)単位胞と呼ぶことができる。α”-Fe
16N
2単位胞が歪んだ状態にあるとき、<001>軸は単位胞のc軸と呼ぶことができる。このc軸は、α”-Fe
16N
2単位胞の磁化容易軸であることができる。換言すれば、α”-Fe
16N
2結晶は磁気異方性を示す。
【0089】
α”-Fe16N2は高い飽和磁化及び磁気異方性定数を有する。高い飽和磁化及び磁気異方性定数は、希土類磁石よりも高いことがある磁気エネルギー積をもたらす。例えば、薄膜α”-Fe16N2永久磁石から得られた実験的な証拠から、バルクFe16N2永久磁石は、NdFeB(約60MGOeのエネルギー積を有する)のエネルギー積の約2倍である約134メガガウス*エルステッド(MGOe)ほどにもなる高いエネルギー積を含む望ましい磁気特性を有することを示唆している。計算及び実験から、α”-Fe16N2の磁気結晶異方性は、約1.0~2.0×107erg/cm3であり得ることを示す。α”-Fe16N2は約2.9ボーア磁子数毎鉄原子μB/Feの比較的高い理論磁気飽和モーメントも有する。さらに、鉄と窒素は豊富な元素であり、したがって比較的安価で調達が容易である。
【0090】
理論に縛られることを望まないが、3種類の異方性がα”-Fe
16N
2または他の鉄基磁性材料の磁気異方性エネルギーまたは磁気異方性磁場に寄与し得る。これらの3種類の異方性おしては、磁気結晶異方性、形状異方性及び歪異方性が挙げられる。上述したように、磁気結晶異方性は、bcc鉄結晶格子が
図6に示すbct窒化鉄結晶格子に歪むことに関連しているであろう。形状異方性は、窒化鉄の結晶または結晶粒の形状、または窒化鉄ワークピースの形状に関連しているであろう。例えば、
図7に示されているように、α”-Fe
16N
2結晶または結晶粒84は、最長寸法(
図7のz軸に実質的に平行、説明を簡単にするためだけに直交するx-y-z軸が示されている)を示しうる。α”-Fe
16N
2の結晶または結晶粒84は、最短寸法(例えば、
図7のx軸またはy軸に実質的に平行)を示しうる。最短寸法は、α”-Fe
16N
2結晶または結晶粒84の最長軸に直交する方向で測定することができる。
【0091】
いくつかの例において、α”-Fe16N2結晶または結晶粒84は、約1.1~約50、例えば約1.4~約50、もしくは2.2~約50、または約5~約50のアスペクト比を示すことができる。いくつかの例において、α”-Fe16N2結晶または結晶粒84の最短寸法は約5nm~約300nmである。
【0092】
歪異方性は、α”-Fe16N2または他の鉄基磁性材料にかかる歪みに関連するであろう。いくつかの例において、α”-Fe16N2結晶粒は、鉄または他のタイプの窒化鉄(例えばFe4N)の結晶粒を含むマトリックス中に配置または埋め込まれる。α”-Fe16N2結晶粒は、鉄または他のタイプの窒化鉄の結晶粒とは異なる熱膨張係数を有することがある。この差異は、熱加工中に、α”-Fe16N2結晶粒、及び鉄または他のタイプの窒化鉄の結晶粒における示差寸法変化に起因して、α”-Fe16N2結晶粒に歪みを導入するおそれがある。代替的または追加的に、α”-Fe16N2結晶粒を形成する加工中に、材料またはワークピースに、機械的な歪みまたは印加磁場に曝されることによる歪みを加えることができ、かかる歪みの少なくともいくらかが加工後の材料またはワークピースに残留しうる。アニールは、応力状態での磁気弾性エネルギーを減少させるために、試料の内部応力及び局所的微細構造の再分布をもたらすことがある。歪異方性下の磁区構造は、磁気弾性エネルギー、静磁エネルギー及び交換エネルギーに依存する。
【0093】
図8は、他の材料のマトリックス88中に複数のα”-Fe
16N
2結晶または結晶粒84を含む例示的ワークピース86を示す概念図である。
図8に示すように、α”-Fe
16N
2結晶または結晶粒84の各々は異方的形状を示す。さらに、α”-Fe
16N
2結晶または結晶粒84のそれぞれのα”-Fe
16N
2結晶または結晶粒の磁化容易軸は、それぞれのα”-Fe
16N
2結晶または結晶粒のそれぞれの最長寸法と実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))である。いくつかの例において、それぞれのα”-Fe
16N
2結晶または結晶粒の磁化容易軸は、他のそれぞれの磁化容易軸と実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))である(したがって、その他のそれぞれの最長寸法と実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))である)。いくつかの例において、これは、
図1~5に関して説明したように、印加磁場の存在下でワークピース86を形成するために使用される材料をキャスティングすることによって達成することができる。このように、ワークピース86は、磁気結晶異方性、形状異方性及び歪異方性をもたらす構造的特性を有することができ、磁気結晶異方性、形状異方性及び歪異方性は全てワークピース86の異方性磁界に寄与する。
【0094】
図9は、ワークピース86についての例示的なヒステリシス曲線を示す図である。
図9に示すヒステリシス曲線は、
図8のc軸方向と平行に磁場を印加した場合のワークピース86の保磁力(x軸の切片)が
図8のa軸及びb軸方向に平行に磁場を印加した場合のワークピース86の保磁力(x軸切片)とは異なるため、ワークピース86が磁気異方性を有することを示している。
【0095】
α”-Fe
16N
2相ドメインを含むバルク材料を直接製造することは困難なことがある。本明細書に記載されている代替技術は、α”-Fe
16N
2相ドメインを含むより小さい材料を形成し、次いで、当該より小さい材料を接合(または統合)してα”-Fe
16N
2相ドメインを含むバルク磁性材料を形成することを含む。
図10は、バルク磁性材料を形成するために少なくとも1つのα”-Fe
16N
2相ドメインを含む複数のワークピースを統合するための例示的技術を示すフロー図である。
【0096】
いくつかの例において、バルク磁性材料を形成するために少なくとも1つのα”-Fe
16N
2相ドメインを含む複数のワークピースを統合する代わりに、
図10の技術は、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメイン、例えば歪み鉄、Fe
16C
2又は鉄とB、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、Alなどのうちの少なくとも1種とを含む複数のワークピースを統合することを含んでもよい。
【0097】
図10の技術は、窒化鉄を含む複数のワークピースをバインダー材料と混合すること(92)を含む。窒化鉄を含む複数のワークピースの少なくともいくつかは、少なくとも1つのα”-Fe
16N
2相ドメインを含んでもよい。いくつかの例において、窒化鉄を含む複数のワークピースの各々は、少なくとも1つのα”-Fe
16N
2相ドメインを含んでもよい。さらに、複数のワークピースは、他の窒化鉄相ドメイン(例えば、FeN、Fe
2N(例えばξ-Fe
2N)、Fe
3N(例えばε-Fe
3N)、Fe
4N(例えばγ’-Fe
4N及び/またはγ-Fe
4N)、Fe
2N
6、α-Fe
8NまたはFeN
x(ここで、xは約0.05~約0.5である)のドメイン)、鉄相ドメインなどを含んでもよい。
【0098】
複数のワークピースは、任意の形状及びサイズを含むことができる。いくつかの例において、ワークピースは、それぞれのワークピースの他の寸法よりも長い1つの寸法を含む。他の寸法よりも長い寸法を有するワークピースの例としては、繊維、ワイヤ、フィラメント、ケーブル、フィルム、厚いフィルム、箔、リボン、シートなどが挙げられる。他の例において、ワークピースは、ワークピースの他の寸法よりも長い寸法を有していなくてもよい。例えば、ワークピースは、粒子または粉末、例えば球体、円柱状体、小片状体、薄片状体、正多面体、不規則な多面体、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。適切な正多面体の例としては、四面体、六面体、八面体、十面体、十二面体などが挙げられ、その非限定的な例には、立方体、角柱、角錐などが挙げられる。
【0099】
バインダー材料としては、複数のワークピースとともにプレスされて団結したバルク材料を形成することができる任意の材料が挙げられる。いくつかの例において、バインダーとしては、樹脂、ワックス、または低融点金属が挙げられる。低融点金属としては、例えば、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ナトリウム(Na)、またはリチウム(Li)が挙げられる。例示的な樹脂としては、例えばミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyからアンバーライト(Amberlite)(商標)の商品名で入手可能なものなどのイオン交換樹脂を包含する天然または合成樹脂;エポキシ樹脂、例えばビスマレイミド-トリアジン(BT)-エポキシなど;ポリアクリロニトリル;ポリエステル;シリコーン;プレポリマー;ポリビニルブチラール;尿素-ホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0100】
複数のワークピースとバインダーを含む混合物を次に外部磁場(94)に曝してもよい。外部磁場は、複数のワークピースとバインダーとを含む混合物に対して所定の配向を有してもよい。この所定の配向は、バルク材料の磁化方向を定めるために使用されてもよい。例えば、複数のワークピースとバインダーとを含む混合物を最初に混合するとき、複数のワークピースのそれぞれの各容易軸(例えばα”-Fe16N2のc軸)は実質的にランダムに配向(ランダムに配向またはほぼランダムに配向)していてもよい。複数のワークピースのそれぞれの容易軸が実質的にランダムに配向したバルク材料が形成される場合、バルク材料の磁気異方性は比較的小さいことがあり、これはバルク磁性材料の磁気特性(例えば、エネルギー積)を低下させることがある。
【0101】
外部磁場を使用してワークピースのそれぞれの容易軸の少なくともいくつかを実質的に整列させることによって、バルク磁性材料の磁気異方性を増大させることができ、これによって、バルク磁性材料の磁気特性(例えばエネルギー積)を改善することができる。外部磁場は、例えば、複数のワークピースのそれぞれの磁化容易軸の少なくともいくつかを実質的に整列させることによって、バルク材料の磁化方向を定めることを可能にすることもできる。例えば、バインダーと複数のワークピースとの混合物は、最終磁性材料のニアネットシェイプを画定するモールド内に配置されてもよく、外部磁場をモールドに対して選択された方向に配向させてバルク材料の磁化方向を定めることができる。
【0102】
いくつかの例において、外部磁場は、DCモード電磁石によって生成された静磁場であってもよく、約0.01テスラ~約50テスラの磁束密度を有してもよい。いくつかの例において、外部磁場は、少なくとも0.2Tであることができる。いくつかの例において、外部磁場は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、外部磁場は約5T~約10Tである。他の例において、外部磁場は約8T~約10Tである。
【0103】
他の例において、外部磁場は、ACモード電磁石によって生成された変動磁場であってもよく、約0.01テスラ~約50テスラの磁束密度を有してもよい。いくつかの例において、外部磁場82は、少なくとも約0.2Tであることができる。外部磁場82は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、外部磁場82は約5T~約10Tである。他の例において、外部磁場82は約8T~約10Tである。いくつかの例において、外部磁場82は、ベルトキャスティングシステム60全体にわたって、または、少なくとも、溶融窒化鉄混合物70の容積及び窒化鉄ストリップ74の全体にわたって実質的に均一である。他の例において、外部磁場82は、位置の関数として変化してもよい。例えば、外部磁場82は、外部磁場の方向(
図5の矢印の方向によって示される)に沿って変化してもよい。例えば、勾配は、約0.01テスラ/メートル(約0.00001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)、例えば約0.01テスラ/メートル(約0.00001テスラ/ミリメートル)~約50テスラ/メートル(約0.05テスラ/ミリメートル)、または約1テスラ/メートル(約0.001テスラ/ミリメートル)~約1000テスラ/メートル(約1テスラ/ミリメートル)であることができる。いくつかの例において、勾配は、外部磁場82の磁束密度の単調増加または減少であることができる。
【0104】
バインダーと複数のワークピースとを含む混合物が外部磁場に曝されている間(94)、バインダーと複数のワークピースとを接合してバルク磁性材料を形成するために混合物を圧縮してもよい(96)。バインダーと複数のワークピースを含む混合物を圧縮すること(96)としては、混合物に圧力を加えることが挙げられる。例えば、圧力は、室温で約1メガパスカル(MPa)~約100ギガパスカル(GPa)であることができる。バインダーと複数のワークピースとを含む混合物の圧縮は、比較的低い温度(例えば、約-268.93℃(大気圧における液体ヘリウムの沸点)~ほぼ室温(約23℃))で実施することができる。あるいは、バインダーと複数のワークピースとを含む混合物の圧縮は、比較的高い温度(例えば、ほぼ室温(約23℃)~約210℃)で実施することができる。圧縮工程の生成物は、α”-Fe16N2相ドメインを含むバルク磁性材料であることができる。
【0105】
いくつかの例において、本明細書に記載したキャスティング及び圧縮プロセスは、α”-Fe
16N
2相ドメインを含むバルク磁性材料を形成するのと同一の全体技術で一緒に実施することができる。
図11は、鉄と窒素を含む原料からα”-Fe
16N
2相ドメインを含むバルク磁性材料を形成するための例示的方法を示すフロー図である。
図11の技術は、鉄と窒素を含む溶融混合物を形成すること(102)を含む。このステップは、
図1に関して説明したステップ(12)と実質的に同じである。
図11の技術は、外部磁場(104)の存在下で鉄と窒素を含む溶融混合物をキャスティングすることも含む。このステップは、
図1に関して説明したステップ(14)と同様または実質的に同じであってもよい。
【0106】
図11の技術は、必要に応じて、鉄と窒素を含む材料をプレスすること(106)も含む。鉄と窒素を含む材料は、鉄と窒素を含む所定のサイズの材料を得るためにプレスされてもよい。プレス工程中、鉄と窒素を含む材料の温度は約250℃未満に維持され、鉄と窒素を含む材料は、鉄と窒素を含む材料の所望の最終寸法(例えば、厚さまたは直径)に依存して、約5トン~50トンの圧力にさらされてもよい。いくつかの例において、プレスプロセスが完了したとき、鉄と窒素を含む材料は、1つまたは複数の軸において、約0.001mm~約50mm(例えばワイヤの場合は約0.1mm~約50mmの直径、リボンの場合は約0.001mm~約5mmの厚さ)の寸法を有するワークピースの形状であってもよい。鉄と窒素を含む材料は、プレスが完了した後に少なくとも1つのFe
8N鉄窒化物相ドメインを含んでいてもよい。
【0107】
いくつかの例において、この技術は、必要に応じて、鉄と窒素を含む材料を急冷すること(108)も含む。急冷によって、鉄と窒素を含む材料の結晶構造及び相組成を固定することができる。例えば、急冷は、鉄と窒素を含む材料中でのFe8N相ドメインの形成を促進し得る。いくつかの例において、急冷プロセスの間、鉄と窒素を含む材料は、約0.5時間~約20時間にわたって650℃を超える温度に加熱され得る。いくつかの例において、鉄と窒素を含む材料の温度を、ワークピース合金のマルテンサイト温度(Ms)未満に急激に低下させてもよい。例えば、Fe16N2の場合、マルテンサイト温度(Ms)は約250℃である。急冷に使用される媒体としては、液体、例えば水、ブライン(塩濃度が約1%~約30%)、非水性液体または溶液、例えばオイルなど、または液体窒素が挙げられる。他の例において、急冷媒体は、約1sccm~約1000sccmの流量で窒素ガスなどのガスが挙げられる。他の例において、急冷媒体は、塩、砂などのような固体を含むことができる。いくつかの例において、鉄と窒素を含むワークピースは、急冷プロセス中に毎秒50℃を超える速度で冷却されてもよい。いくつかの例において、急冷プロセスは、磁場及び/または電場によって補助することができる。
【0108】
図11の技術は、さらに、鉄と窒素を含む材料の延伸(または引っ張り)及びアニール(110)、(112)を含むことができる。この引っ張りとアニールのプロセスは、鉄と窒素を含む材料中のFe
8N鉄窒化物相ドメインの少なくともいくつかをFe
16N
2相ドメインに変換することができる。様々な歪み誘発装置を使用して、鉄と窒素を含む材料に歪みを加えることができる。例えば、鉄と窒素を含む材料は、第1の組のローラー及び第2の組のローラーによって受け取られ(例えば、巻き付けられ)、これらの組のローラーを反対方向に回転させて鉄と窒素を含む材料に引っ張り力を加えてもよい。他の例において、鉄と窒素を含む材料の両端を機械的把持具、例えばクランプにより把持し、機械的把持具を互いに離れる方向に移動させて鉄と窒素を含む材料に引っ張り力を加えてもよい。
【0109】
いくつかの例において、鉄と窒素を含む材料は、当該鉄と窒素を含む材料中の少なくとも1つの鉄結晶の<001>軸に対して実質的に平行(例えば平行またはほぼ平行(例えば平行から約5度以内))な方向に沿って引っ張られてもよい。歪み誘発装置は、鉄と窒素を含む材料を特定の伸び率まで引っ張ることができる。例えば、鉄と窒素を含む材料についての歪は約0.3%~約12%であり得る。他の例において、鉄と窒素を含む材料についての歪は、約0.3%未満または約12%超であり得る。いくつかの例において、鉄と窒素を含む材料にある程度の歪みを加えると、鉄(または窒化鉄)の個々の単位胞に実質的に同様の歪みが生じ、その結果、単位胞が約0.3%~約12%である。
【0110】
鉄と窒素を含む材料が歪んでいる間に、鉄と窒素を含む材料を加熱して、鉄と窒素を含む材料をアニールすることができる(112)。鉄と窒素を含む材料は、鉄と窒素を含む材料を約100℃~約250℃、例えば約120℃~約200℃の温度に加熱することによってアニールされてもよい。鉄と窒素を含む材料を歪ませながら当該鉄と窒素を含む材料をアニールすることによって、窒化鉄相ドメインの少なくともいくつかをα”-Fe16N2相ドメインに変換することを促進することができる。
【0111】
アニールプロセスは、適切な格子間空間に窒素原子を拡散させるのに十分な所定の時間継続してもよい。いくつかの例において、アニールプロセスは約20時間~約100時間、例えば約40時間~約60時間継続する。いくつかの例において、アニールプロセスは、鉄の酸化を低減または実質的に妨げるために、例えばArなどの不活性雰囲気下で実施することができる。いくつかの実施形態において、鉄と窒素を含む材料をアニールする間、温度は実質的に一定に保たれる。鉄と窒素を含む材料の延伸(110)及びアニール(112)によって、少なくとも1つのα”-Fe16N2相ドメインを含む磁性材料をもたらすことができる。
【0112】
いくつかの例において、鉄と窒素を含む材料の延伸(110)及びアニール(112)の間、鉄と窒素を含む材料を外部磁場に曝してもよい。印加磁場の存在下で窒化鉄材料をアニールすることによって、窒化鉄材料におけるFe16N2相の形成を促進することができる。Fe16N2相の体積分率の増加は、窒化鉄を含む磁性材料の磁気特性を改善することができる。改善される磁気特性としては、例えば、保磁力、磁化及び磁気配向が挙げられる。いくつかの例において、印加磁場は、少なくとも0.2テスラ(T)であることができる。磁場アニールが行われる温度は、少なくとも部分的に、窒化鉄基組成物へのさらなる元素添加及び窒化鉄基組成物を最初に合成するために使用されるアプローチに依存し得る。いくつかの例において、磁場は、少なくとも約0.2T、少なくとも約2T、少なくとも約2.5T、少なくとも約6T、少なくとも約7T、少なくとも約8T、少なくとも約9T、少なくとも約10T、またはそれよりも高くてもよい。いくつかの例において、磁場は約5T~約10Tである。他の例において、磁場は約8T~約10Tである。鉄と窒素を含む材料をアニールすることに関するさらなる詳細は、2014年6月30日に出願された米国仮出願第62/019,046号に記載されている。
【0113】
図11の技術は、バインダー材料とともに少なくとも1つのα”-Fe
16N
2相ドメインを含む磁性材料の複数のワークピースを圧縮してバルク磁性材料を形成すること(114)を含んでもよい。この工程は、
図10を参照して説明した技術と同様であってもよいし、実質的に同じであってもよい。
【0114】
図11の技術は、さらに、バルク磁性材料を成形すること(116)を含んでもよい(必要に応じて)。この成形プロセスは、例えば、バルク磁性材料の表面をスライスまたは研削してバルク磁性材料を所定の最終形状を形成することを含んでもよい。最後に、
図11の技術は、さらに、バルク磁性材料を着磁すること(118)を含んでもよい(必要に応じて)。このように、
図11の技術は、α”-Fe
16N
2相ドメインを含むバルク磁性材料を形成するための例示的な技術を記載する。
【0115】
第1項:印加磁場の存在下で鉄を含む材料をキャスティングして一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含むワークピースを形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する、方法。
【0116】
第2項:鉄を含む材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングして少なくとも1つの窒化鉄相ドメインを含むワークピースを形成することを含む、第1項に記載の方法。
【0117】
第3項:鉄を含む材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下で、鉄とC、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む材料をキャスティングして一軸磁気異方性を有する少なくとも1つの相ドメインを含むワークピースを形成することを含む、第1項に記載の方法。
【0118】
第4項:印加磁場の存在下で鉄を含む材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下で鉄を含む材料をキャスティングして少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒を含むワークピースを形成することを含み、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、アスペクト比は、異方性結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、第1項~第3項のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
第5項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、第4項に記載の方法。
【0120】
第6項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向される、第4項または第5項に記載の方法。
【0121】
第7項:複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が印加磁場の方向と実質的に平行に配向される、第4項~第6項のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
第8項:各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、第4項~第7項のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
第9項:印加磁場の強度が約0.02Tを超える、第1項~第8項のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
第10項:印加磁場の強度が約2.5Tを超える、第1項~第8項のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
第11項:印加磁場の強度が約9Tを超える、第1項~第8項のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
第12項:印加磁場の強度が約50T未満である、第1項~第11項のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
第13項:前記材料が、さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、第1項~第12項のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
第14項:前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、第13項に記載の方法。
【0129】
第15項:前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、第13項に記載の方法。
【0130】
第16項:キャスティング前に、前記材料中の窒素の濃度が約8原子パーセント(at.%)~約9at.%である、第2項に記載の方法。
【0131】
第17項:キャスティングが、
鉄を含む混合物を加熱して鉄を含む溶融混合物を形成すること、及び、
鉄を含む溶融混合物を冷却してワークピースを形成すること、
を含む、第1項~第16項のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
第18項:溶融混合物を冷却することが、溶融混合物を急冷媒体中で急冷することを含む、第17項に記載の方法。
【0133】
第19項:急冷媒体が、水、氷水、ブライン、オイル、アンモニア水またはアミドのうちの少なくとも1種を含む、第18項に記載の方法。
【0134】
第20項:鉄を含む混合物を加熱することが、鉄を含む混合物を印加磁場の存在下で加熱することを含み、鉄を含む溶融混合物を冷却することが、鉄を含む溶融混合物を印加磁場の存在下で冷却することを含む、第17項~第19項のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
第21項:鉄を含む混合物を加熱することが、鉄を含む混合物を、高周波炉を使用してるつぼ内で加熱することを含む、第17項~第20項のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
第22項:鉄を含む混合物を加熱することが、鉄を含む混合物を冷るつぼ内で加熱することを含み、前記混合物が被覆材内に実質的に封入される、第17項~第20項のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
第23項:鉄を含む溶融混合物を冷却することが、鉄を含む溶融混合物を冷却ローラーの間で冷却してワークピースを形成することを含む、第17項~第20項のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
第24項:各ワークピースが一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースを印加磁場の存在下で圧縮して一軸磁気異方性を含む複数の鉄基相ドメインを含むバルク材料を形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも0.01テスラ(T)の強度を有し、前記印加磁場がバルク材料の磁化方向を定める、方法。
【0139】
第25項:一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインが少なくとも1つのα”-Fe16N2相ドメインを含む、第24項に記載の方法。
【0140】
第26項:一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインが、体心正方晶系鉄相ドメイン、または、体心正方晶系結晶構造を有し、かつ、鉄とC、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、AlもしくはZnのうちの少なくとも1種とを含む相ドメイン、のうちの少なくとも1種を含む、第24項または第25項に記載の方法。
【0141】
第27項:各ワークピースが、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメイン及び少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒を含み、少なくとも1種の異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、アスペクト比が最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、第24~26項に記載の方法。
【0142】
第28項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、第27項に記載の方法。
【0143】
第29項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向される、第27項または第28項に記載の方法。
【0144】
第30項:複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が印加磁場の方向と実質的に平行に配向される、第27項~第29項のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
第31項:各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、第27項~第30項のいずれか一項に記載の方法。
【0146】
第32項:印加磁場の強度が約0.02Tを超える、第24項~第31項のいずれか一項に記載の方法。
【0147】
第33項:印加磁場の強度が約2.5Tを超える、第24項~第31項のいずれか一項に記載の方法。
【0148】
第34項:印加磁場の強度が約9Tを超える、第24項~第31項のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
第35項:印加磁場の強度が約50T未満である、第24項~第34項のいずれか一項に記載の方法。
【0150】
第36項:複数のワークピースのうちの少なくとも1つが、さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、第24項~第35項のいずれか一項に記載の方法。
【0151】
第37項:少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、第36項に記載の方法。
【0152】
第38項:少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、第36項に記載の方法。
【0153】
第39項:印加磁場が、複数のワークピースのうちの少なくともいくつかの磁化容易軸を実質的に整列させることを促進する、第24項~第38項のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
第40項:複数のワークピースを圧縮することが、複数のワークピースを樹脂、ワックスまたは低融点金属のうちの少なくとも1つと混合して混合物を形成すること、及び、当該混合物をプレスしてバルク材料を形成することを含む、第24項~第39項のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
第41項:混合物をプレスすることが、約1MPa~約100GPaの圧力で混合物をプレスすることを含む、第40項に記載の方法。
【0156】
第42項:混合物をプレスすることが、約4.2ケルビン~約295ケルビンの温度で混合物をコールドプレスすることを含む、第40項または第41項に記載の方法。
【0157】
第43項:混合物をプレスすることが、約295ケルビン~約533ケルビンの温度で混合物をホットプレスすることを含む、第40項または第41項に記載の方法。
【0158】
第44項:複数のワークピースを、樹脂、ワックスまたは低融点金属のうちの少なくとも1つと混合することが、複数のワークピースを低融点金属材料と混合することを含み、低融点金属がZn、Sn、Bi、Ga、NaまたはLiのうちの少なくとも1種を含む、第40項~第43項のいずれか一項に記載の方法。
【0159】
第45項:複数のワークピースのうちの1つのワークピースが、粉末、リボンまたはワイヤのうちの少なくとも1つを成している、第24項~第44項のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
第46項:さらに、第1項~第22項のいずれか一項に記載の方法を含み、ワークピースが複数のワークピースのうちの1つである、第24項~第43項のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
第47項:第1項~第46項のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された装置。
【0162】
第48項:第1項~第23項のいずれか一項に記載の方法によって形成されたワークピース。
【0163】
第49項:第24項~第46項のいずれか一項に記載の方法によって形成されたバルク材料。
【0164】
第50項:バルク材料がバルク永久磁石である、第49項に記載のバルク材料。
【0165】
第51項:印加磁場の存在下でニッケル、鉄及びコバルトのうちの少なくとも1種を含む材料をキャスティングして、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つのニッケル、鉄またはコバルトに基づく相ドメインを含むワークピースを形成することを含み、印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する、方法。
【0166】
第52項:金属が鉄を含む、第51項に記載の方法。
【0167】
第53項:鉄を含む材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングして少なくとも1つの窒化鉄相ドメインを含むワークピースを形成することを含む、第52項に記載の方法。
【0168】
第54項:ニッケル、鉄またはコバルトのうちの少なくとも1種を含む前記材料が、さらに、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種を含む、第51項~第53項のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
第55項:前記材料が、さらに、少なくとも1種のドーパントを含み、前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、第51項~第54項のいずれか一項に記載の方法。
【0170】
第56項:さらに、複数のワークピースを圧縮することを含む、第51項~第55項のいずれか一項に記載の方法。
【0171】
第57項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比は異方的結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、ワークピース。
【0172】
第58項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、第57項に記載のワークピース。
【0173】
第59項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向している、第57項または第58項に記載のワークピース。
【0174】
第60項:さらに、一軸磁気異方性を含む少なくとも一つの鉄基相ドメインを含み、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒の最長寸法が一軸磁気異方性の方向と実質的に平行である、第57項~第59項のいずれか一項に記載のワークピース。
【0175】
第61項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が窒化鉄を含む、第57項~第60項のいずれか一項に記載のワークピース。
【0176】
第62項:窒化鉄がα”-Fe16N2を含む、第61項に記載のワークピース。
【0177】
第63項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が、鉄と、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む、第57項~第60項のいずれか一項に記載のワークピース。
【0178】
第64項:さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、第57項~第63項のいずれか一項に記載のワークピース。
【0179】
第65項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が前記ドーパントを含む、第64項に記載のワークピース。
【0180】
第66項:前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、第64項または第65項に記載のワークピース。
【0181】
第67項:前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、第64項または第65項に記載のワークピース。
【0182】
第68項:各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、第57項~第67項のいずれか一項に記載のワークピース。
【0183】
第69項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒を含み、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比が異方的結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、バルク永久磁石。
【0184】
第70項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、第69項に記載のバルク永久磁石。
【0185】
第71項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含む、複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向している、第69項または第70項に記載のバルク永久磁石。
【0186】
第72項:さらに、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含み、少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒の最長寸法が一軸磁気異方性の方向と実質的に平行である、第69項~第71項のいずれか一項に記載のバルク永久磁石。
【0187】
第73項:前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が窒化鉄を含む、第69項~第72項のいずれか一項に記載のバルク永久磁石。
【0188】
第74項:前記窒化鉄がα”-Fe16N2を含む、第73項に記載のバルク永久磁石。
【0189】
第75項:前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が、鉄とC、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む、第69項~第72項のいずれか一項に記載のバルク永久磁石。
【0190】
第76項:さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、第69項~第75項のいずれか一項に記載のバルク永久磁石。
【0191】
第77項:少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が前記ドーパントを含む、第76項に記載のバルク永久磁石。
【0192】
第78項:前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、第76項または第77項に記載のバルク永久磁石。
【0193】
第79項:前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、第76項または第77項に記載のバルク永久磁石。
【0194】
第80項:各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、第69項~第79項のいずれか一項に記載のバルク永久磁石。
【実施例】
【0195】
図12は、外部磁場を印加して及び印加せずにキャスティングされた窒化鉄材料からの例示的X線回折スペクトルを示す。より濃い色のトレースは、磁場の存在下でキャスティングした場合の相組成を示す。より薄い色のトレースは、磁場を印加せずにキャスティングした場合の相組成を示す。試料中の窒素濃度は平均して約5at.%及び約8at.%であった。試料を、約650℃で、9Tの磁場を印加し、及び、印加せず、約4時間加熱した。試料を氷水中にキャストした。冷却速度は約200℃/秒であると推定された。表2は、磁気キャスティング後の
図12に示したピークの変化を示す。
【0196】
【0197】
種々の例が記載されている。これらの例及び他の例は、以下の特許請求の範囲内にある。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒を含むワークピースであって、前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比は、前記異方的結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、前記最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、ワークピース。
[態様2]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、態様1に記載のワークピース。
[態様3]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向している、態様1または2に記載のワークピース。
[態様4]
さらに、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含み、前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒の前記最長寸法が一軸磁気異方性の方向と実質的に平行である、態様1~3のいずれか一項に記載のワークピース。
[態様5]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が窒化鉄を含む、態様1~4のいずれか一項に記載のワークピース。
[態様6]
前記窒化鉄がα”-Fe
16
N
2
を含む、態様5に記載のワークピース。
[態様7]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が、鉄と、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む、態様1~4のいずれか一項に記載のワークピース。
[態様8]
さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、態様1~7のいずれか一項に記載のワークピース。
[態様9]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が前記ドーパントを含む、態様8に記載のワークピース。
[態様10]
前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、態様8または9に記載のワークピース。
[態様11]
前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、態様8または9に記載のワークピース。
[態様12]
各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、態様1~11のいずれか一項に記載のワークピース。
[態様13]
複数のワークピースを含むバルク永久磁石であって、前記複数のワークピースのうちの少なくとも1つのワークピースが態様1~12のいずれか一項に記載のワークピースを含む、バルク永久磁石。
[態様14]
前記複数のワークピースの各々が窒化鉄を含む、態様13に記載のバルク永久磁石。
[態様15]
態様13または14に記載のバルク永久磁石を含む物品。
[態様16]
前記物品が、電気モーター、発電機、センサー、アクチュエータ、自動車の構成部品、または風力タービンの構成部品を成す、態様15に記載の物品。
[態様17]
印加磁場の存在下で鉄を含む材料をキャスティングして一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含むワークピースを形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する、方法。
[態様18]
鉄を含む前記材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングして少なくとも1つの窒化鉄相ドメインを含むワークピースを形成することを含む、態様17に記載の方法。
[態様19]
鉄を含む前記材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下で、鉄と、C、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む材料をキャスティングして一軸磁気異方性を有する少なくとも1つの相ドメインを含むワークピースを形成することを含む、態様17に記載の方法。
[態様20]
前記印加磁場の存在下で鉄を含む前記材料をキャスティングすることが、前記印加磁場の存在下で鉄を含む前記材料をキャスティングして少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒を含むワークピースを形成することを含み、前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比は異方的結晶粒の最短寸法の長さに対する最長寸法の長さの比として定義され、前記最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、態様17~19のいずれか一項に記載の方法。
[態様21]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、態様20に記載の方法。
[態様22]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向される、態様20または21に記載の方法。
[態様23]
前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が前記印加磁場の方向と実質的に平行に配向され、各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、態様20~22のいずれか一項に記載の方法。
[態様24]
前記印加磁場の強度が約0.02Tを超える、態様17~23のいずれか一項に記載の方法。
[態様25]
前記印加磁場の強度が約2.5Tを超える、態様17~23のいずれか一項に記載の方法。
[態様26]
前記印加磁場の強度が約9Tを超える、態様17~23のいずれか一項に記載の方法。
[態様27]
前記印加磁場が、約0.01テスラ/メートル~約1000テスラ/メートルの勾配を有する、態様17~26のいずれか一項に記載の方法。
[態様28]
前記材料が、さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、態様17~27のいずれか一項に記載の方法。
[態様29]
前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、態様28に記載の方法。
[態様30]
前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、態様28に記載の方法。
[態様31]
キャスティングの前に、前記材料中の窒素の濃度が約8原子パーセント(at.%)~約9at.%である、態様18に記載の方法。
[態様32]
キャスティングが、
鉄を含む混合物を加熱して鉄を含む溶融混合物を形成すること、及び、
鉄を含む前記溶融混合物を冷却してワークピースを形成すること、
を含む、態様17~31のいずれか一項に記載の方法。
[態様33]
前記溶融混合物を冷却することが、水、氷水、ブライン、オイル、アンモニア水またはアミドのうちの少なくとも1種の中で前記溶融混合物を急冷することを含む、態様32に記載の方法。
[態様34]
鉄を含む前記溶融混合物を冷却することが、鉄を含む前記溶融混合物を冷却ローラーの間で冷却してワークピースを形成することを含む、態様32に記載の方法。
[態様35]
鉄を含む前記混合物を加熱することが、印加磁場の存在下で鉄を含む前記混合物を加熱することを含み、鉄を含む前記溶融混合物を冷却することが、鉄を含む前記溶融混合物を印加磁場の存在下で冷却することを含む、態様32~34のいずれか一項に記載の方法。
[態様36]
鉄を含む前記混合物を加熱することが、鉄を含む前記混合物を、高周波炉を使用して、るつぼ内で加熱することを含む、態様32~34のいずれか一項に記載の方法。
[態様37]
鉄を含む前記混合物を加熱することが、鉄を含む前記混合物を冷るつぼ内で加熱することを含み、前記混合物が被覆材内に実質的に封入される、態様32~34のいずれか一項に記載の方法。
[態様38]
さらに、複数のワークピースを圧縮してバルク材料を形成することを含む、態様17~37のいずれか一項に記載の方法。
[態様39]
前記複数のワークピースを圧縮して前記バルク材料を形成することが、印加磁場の存在下で前記複数のワークピースを圧縮して一軸磁気異方性を含む複数の鉄基相ドメインを含むバルク材料を形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する、態様38に記載の方法。
[態様40]
各ワークピースが一軸磁気異方性を含む少なくとも1つの鉄基相ドメインを含む複数のワークピースを印加磁場の存在下で圧縮して一軸磁気異方性を含む複数の鉄基相ドメインを含むバルク材料を形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも0.01テスラ(T)の強度を有し、前記印加磁場が前記バルク材料の磁化方向を定める、方法。
[態様41]
一軸磁気異方性を含む前記少なくとも1つの鉄基相ドメインが少なくとも1つのα”-Fe
16
N
2
相ドメインを含む、態様40に記載の方法。
[態様42]
一軸磁気異方性を含む前記少なくとも1つの鉄基相ドメインが、体心正方晶系鉄相ドメイン、または、体心正方晶系結晶構造を有し、かつ、鉄とC、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種とを含む相ドメイン、のうちの少なくとも1種を含む、態様40または41に記載の方法。
[態様43]
一軸磁気異方性を含む前記少なくとも1種の鉄基相ドメインが、少なくとも1種の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記少なくとも1種の異方的形状の鉄基結晶粒が約1.1~約50のアスペクト比を成しており、前記アスペクト比が最短寸法の長さに対する最長寸法の長さとの比として定義され、前記最長寸法と最短寸法は実質的に直交している、態様40~42のいずれか一項に記載の方法。
[態様44]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が約5nm~約300nmの最短寸法を示す、態様43に記載の方法。
[態様45]
前記少なくとも1つの異方的形状の鉄基結晶粒が複数の異方的形状の鉄基結晶粒を含み、前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が互いに実質的に平行に配向される、態様43または44に記載の方法。
[態様46]
前記複数の異方的形状の鉄基結晶粒のそれぞれの長軸が印加磁場の方向と実質的に平行に配向され、前記各異方的形状の鉄基結晶粒について、磁気結晶異方性のそれぞれの容易軸がそれぞれの最長軸と実質的に平行である、態様43~45のいずれか一項に記載の方法。
[態様47]
前記印加磁場の強度が約0.02Tを超える、態様40~46のいずれか一項に記載の方法。
[態様48]
前記印加磁場の強度が約2.5Tを超える、態様40~46のいずれか一項に記載の方法。
[態様49]
前記印加磁場の強度が約9Tを超える、態様40~46のいずれか一項に記載の方法。
[態様50]
前記印加磁場が、約0.01テスラ/メートル~約1000テスラ/メートルの勾配を有する、態様40~49のいずれか一項に記載の方法。
[態様51]
前記複数のワークピースのうちの少なくとも1つが、さらに、少なくとも1種のドーパントを含む、態様40~51のいずれか一項に記載の方法。
[態様52]
前記少なくとも1種のドーパントが、Al、Mn、La、Cr、Co、Ti、Ni、Zn、Zr、Caまたは希土類金属のうちの少なくとも1種を含む、態様51に記載の方法。
[態様53]
前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、態様51に記載の方法。
[態様54]
前記印加磁場が、前記複数のワークピースのうちの少なくともいくつかの磁化容易軸を実質的に整列させることを促進する、態様40~53のいずれか一項に記載の方法。
[態様55]
前記複数のワークピースを圧縮することが、複数のワークピースを樹脂、ワックスまたは低融点金属のうちの少なくとも1つと混合して混合物を形成すること、及び、当該混合物をプレスしてバルク材料を形成することを含む、態様40~54のいずれか一項に記載の方法。
[態様56]
前記混合物をプレスすることが、約1MPa~約100GPaの圧力で混合物をプレスすることを含む、態様55に記載の方法。
[態様57]
前記混合物をプレスすることが、約4.2ケルビン~約295ケルビンの温度で前記混合物をコールドプレスすることを含む、態様55または56に記載の方法。
[態様58]
前記混合物をプレスすることが、約295ケルビン~約533ケルビンの温度で前記混合物をホットプレスすることを含む、態様55または56に記載の方法。
[態様59]
前記複数のワークピースを、樹脂、ワックスまたは低融点金属のうちの少なくとも1つと混合することが、前記複数のワークピースを低融点材料と混合することを含み、前記低融点金属がZn、Sn、Bi、Ga、NaまたはLiのうちの少なくとも1種を含む、態様55~58のいずれか一項に記載の方法。
[態様60]
前記複数のワークピースのうちの1つのワークピースが、粉末、リボンまたはワイヤのうちの少なくとも1つを成している、態様40~59のいずれか一項に記載の方法。
[態様61]
さらに、態様17~39のいずれか一項に記載の方法を含み、態様17~39のいずれか一項に記載の方法によって形成された前記ワークピースが前記複数のワークピースのうちの1つである、態様40~60のいずれか一項に記載の方法。
[態様62]
態様17~61のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された装置。
[態様63]
態様17~39のいずれか一項に記載の方法によって形成されたワークピース。
[態様64]
態様40~61のいずれか一項に記載の方法によって形成されたバルク材料。
[態様65]
前記バルク材料がバルク永久磁石である、態様64に記載のバルク材料。
[態様66]
前記複数のワークピースの各々が窒化鉄を含む、態様65に記載のバルク永久磁石。
[態様67]
態様65または66に記載のバルク永久磁石を含む物品。
[態様68]
前記物品が、電気モーター、発電機、センサー、アクチュエータ、自動車の構成部品、または風力タービンの構成部品を構成する、態様67に記載の物品。
[態様69]
印加磁場の存在下でニッケル、鉄及びコバルトのうちの少なくとも1種を含む材料をキャスティングして、一軸磁気異方性を含む少なくとも1つのニッケル、鉄またはコバルトに基づく相ドメインを含むワークピースを形成することを含み、前記印加磁場が少なくとも約0.01テスラ(T)の強度を有する、方法。
[態様70]
金属が鉄を含む、態様69に記載の方法。
[態様71]
鉄を含む材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下で鉄と窒素を含む材料をキャスティングして少なくとも1つの窒化鉄相ドメインを含むワークピースを形成することを含む、態様70に記載の方法。
[態様72]
ニッケル、鉄またはコバルトのうちの少なくとも1種を含む材料をキャスティングすることが、印加磁場の存在下でC、B、O、P、Y、Mn、Co、Cr、Si、ZnまたはAlのうちの少なくとも1種を含み、一軸磁気異方性を有する少なくとも1つの相ドメインを含むワークピースを形成する、態様69~71のいずれか一項に記載の方法。
[態様73]
前記材料が、さらに、少なくとも1種のドーパントを含み、前記少なくとも1種のドーパントが、B、C、P、SiまたはOのうちの少なくとも1種を含む、態様69~72のいずれか一項に記載の方法。
[態様74]
さらに、複数のワークピースを圧縮することを含む、態様69~73のいずれか一項に記載の方法。
[態様75]
前記印加磁場が、約0.01テスラ/メートル~約1000テスラ/メートルの勾配を有する、態様69~74のいずれか一項に記載の方法。
[態様76]
態様69~75のいずれか一項に記載の方法によって形成されたワークピース。
[態様77]
態様76に記載のワークピースを複数含むバルク材料。
[態様78]
前記バルク材料がバルク永久磁石である、態様77に記載のバルク材料。
[態様79]
態様78に記載のバルク永久磁石を含む物品。
[態様80]
前記物品が、電気モーター、発電機、センサー、アクチュエータ、自動車の構成部品、または風力タービンの構成部品を構成する、態様79に記載の物品。