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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
A63F7/02 304Z
A63F7/02 326Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020211344
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098031
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】菊地 努
(72)【発明者】
【氏名】椿谷 悠
【審査官】佐藤 嘉純
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179411(JP,A)
【文献】特開2016-077428(JP,A)
【文献】特開2018-175355(JP,A)
【文献】特開2018-149100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動役物を第1方向に移動させる第1可動手段を備える遊技機において、
前記可動役物を、前記第1方向と異なる第2方向に原点位置から回転させる第2可動手段を備え、
前記可動役物は、前記第1方向における第1領域に配されているときは、前記第2方向における可動範囲の全域で回転可能である一方、前記第1方向における第2領域に配されているときは、前記原点位置から前記第2方向の第1の向きへ第1所定距離分回転した第1規制位置で回転が規制される構成になっていて、
前記第2可動手段は、
前記可動役物が、前記原点位置から、前記原点位置と前記第1規制位置との間の第1切り替わり位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの一方になり、前記可動役物が、前記第1切り替わり位置から前記第1規制位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの他方になるセンサを備え、
前記第2可動手段は、前記第1切り替わり位置を検出し、前記可動役物を原点位置に戻す原点復帰処理を所定のタイミングで行う遊技機。
【請求項2】
前記可動役物は、前記第1方向における第2領域に配されているときは、前記原点位置から前記第2方向において前記第1の向きと反対の第2の向きへ第2所定距離分回転した第2規制位置で回転が規制される構成になっていて、
前記センサは、前記可動役物が、前記原点位置から前記第2規制位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの前記一方になる請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記第1切り替わり位置と前記原点位置との間は、規定距離離れており、
前記原点復帰処理では、前記センサがオンとオフとの前記他方のときは、前記可動役物を前記第2方向において前記第1の向きと反対の第2の向きに回転し、前記センサがオンとオフとの前記一方になってからさらに前記規定距離分回転させて、前記可動役物を前記原点位置に戻し、前記センサがオンとオフとの前記一方のときは、前記可動役物を前記第1の向きへ、前記センサがオンとオフとの前記他方になるまで回転したのち、前記可動役物を前記第2の向きに回転し、前記センサがオンとオフとの前記一方になってからさらに前記規定距離分回転させて、前記可動役物を前記原点位置に戻す請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記センサは射光部と受光部とを有するフォトセンサであり、前記可動役物には、前記フォトセンサの前記射光部と前記受光部との間に配される遮光リブが設けられている求項1から3の何れか1の請求項に記載の遊技機。
【請求項5】
中央開口を有する遊技板を備え、
前記可動役物は、前記遊技板の前面又は後面に沿った前記第1方向で移動可能であり、かつ、前記第1方向と交差する方向を中心軸として前記第2方向に回転可能となっていて、
前記第1領域では、前記可動役物の全体が前記中央開口と対向する一方、前記第2領域では、前記可動役物の少なくとも1部が、前記遊技板の前記中央開口以外の部分と対向し得るように構成されている請求項1から4の何れか1の請求項に記載の遊技機。
【請求項6】
前記所定のタイミングは、電源投入時である請求項1から5の何れか1の請求項に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1方向に移動可能な可動役物を備える遊技機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-82960号公報(段落[0021]、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の遊技機において、演出の趣向性を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の遊技機は、可動役物を第1方向に移動させる第1可動手段を備える遊技機において、前記可動役物を、前記第1方向と異なる第2方向に原点位置から回転させる第2可動手段を備え、前記可動役物は、前記第1方向における第1領域に配されているときは、前記第2方向における可動範囲の全域で回転可能である一方、前記第1方向における第2領域に配されているときは、前記原点位置から前記第2方向の第1の向きへ第1所定距離分回転した第1規制位置で回転が規制される構成になっていて、前記第2可動手段は、前記可動役物が、前記原点位置から、前記原点位置と前記第1規制位置との間の第1切り替わり位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの一方になり、前記可動役物が、前記第1切り替わり位置から前記第1規制位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの他方になるセンサを備え、前記第2可動手段は、前記第1切り替わり位置を検出し、前記可動役物を原点位置に戻す原点復帰処理を所定のタイミングで行う遊技機である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の遊技機によれば、第1方向で移動する可動役物が、さらに第2方向で回転するので、可動役物による演出を斬新にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示に係る遊技機の正面図
図2】遊技板の正面図
図3】遊技板の正面図
図4】遊技板の正面図
図5】機構枠の正面図
図6】遊技板及び機構枠の断面図
図7】(A)可動役物周辺の側面図、(B)可動役物周辺の平面図
図8】機構枠の正面図
図9】機構枠の正面図
図10】機構枠の正面図
図11】可動役物の回転を説明するための図
図12】回転用センサの検出信号を説明するための図
図13】原点回帰処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示されるように、本実施形態の遊技機10は、パチンコ遊技機であって、前面枠10Zを前面に備え、その前面枠10Zに形成されたガラス窓10Wを通して、遊技板11の前面に形成された遊技領域R1が視認可能になっている。
【0009】
前面枠10Zのうちガラス窓10Wより下方には、上皿26と下皿27が上下2段にして設けられ、下皿27の右側には、発射ハンドル28が備えられている。そして、発射ハンドル28が回動操作されると、上皿26に収容された遊技球が遊技領域R1に向けて弾き出される。
【0010】
図2に示されるように、遊技領域R1は全体が略円形状となっていて、ガイドレール12により囲まれている。遊技板11のうち遊技領域R1の中央には、表示開口11Hが貫通形成され、この表示開口11Hを通して、表示装置13の表示画面13Gが前方に臨んでいる。表示装置13の表示画面13Gには、遊技に関する種々の演出が表示される。また、遊技板11は透明なアクリル板の一部に装飾が施されてなり、遊技板11のうち表示開口11Hより外側部分を通しても、遊技板11の裏側が視認可能となっている。
【0011】
表示開口11Hの開口縁には、表示装飾枠23が取り付けられている。詳細には、表示装飾枠23は、遊技板11の前面側から表示開口11Hに嵌め込まれて遊技板11の前面から突出し、遊技領域R1を流下する遊技球が表示装飾枠23の内側に進入することを規制している。
【0012】
表示装飾枠23の下側には、第1始動入賞口14が備えられ、表示装飾枠23の右側には、大入賞口16が備えられている。表示装飾枠23の右下側、即ち、第1始動入賞口14の右側には、始動ゲート18と第2始動入賞口15とが設けられている。また、遊技領域R1には、始動入賞口14,15及び大入賞口16のほかに、複数の一般入賞口17が備えられている。
【0013】
一般入賞口17は、遊技球が1つずつ入ることが可能な大きさで上方に開口している。一般入賞口17へ遊技球が入球(入賞)すると、その遊技球は遊技板11の後側に取り込まれ、例えば、1個の入球につき4個の賞球が上皿26に払い出される。
【0014】
始動ゲート18は、遊技球が潜って通過可能な門形構造をなしている。始動ゲート18を遊技球が通過すると、普通図柄当否判定が行われる。普通図柄当否判定の結果は、普通図柄用表示部18Hに表示される。
【0015】
第1始動入賞口14は、遊技球が1つずつ入ることが可能な大きさで上方に開口している。第2始動入賞口15は、開閉扉15Tを有していて通常は閉塞されている。そして、上述した普通図柄当否判定の結果が当りとなったときに、開閉扉15Tが開き、第2始動入賞口15が入球可能となる。
【0016】
始動入賞口14,15に遊技球が入球(入賞)すると、所定個数の賞球が上皿26に払い出されると共に、特別図柄当否判定が行われる。特別図柄当否判定の結果は、表示装置13の表示画面13G等に表示される。そして、特別図柄当否判定の結果が当りであると、大当り遊技が実行される。なお、表示画面13Gにおいては、例えば、数字や文字等で構成される図柄の変動、停止が行われ、停止した図柄の組合せによって特別図柄当否判定の結果が表示される。
【0017】
大入賞口16は、開閉扉16Tを有していて通常は閉塞されている。そして、上述の大当り遊技が実行されると、開閉扉16Tが開き、大入賞口16が入球可能となる。大入賞口16に遊技球が入賞すると、所定個数の賞球が上皿26に払い出される。
【0018】
上述した各入賞口14,15,16,17の何れにも入賞しなかった遊技球は、遊技領域R1の下端部に設けられたアウト口20に全て取り込まれる。アウト口20に取り込まれた遊技球は、図示しない球回収装置に回収される。
【0019】
さて、本実施形態の遊技機10では、遊技を演出するために、遊技板11の裏側に、可動役物30が備えられている。図2に示すように、可動役物30は、左右方向に延びた帯状をなし、通常は、遊技板11のうち表示開口11Hより下方に配されている。以降、図2に示される可動役物30の位置を「待機位置」という。なお、可動役物30は、待機位置に配されている状態でも、透明な遊技板11を通して視認可能になっている。
【0020】
図2図4に示すように、可動役物30は、上下方向に直動可能になっていて、図2に示される待機位置と図4に示される最大出現位置とでストッパ44(図6参照)により位置決めされる。つまり、待機位置から最大出現位置までが直動可能範囲となっている。図2及び図3に示すように、可動役物30の表面には、例えば「ABC」というロゴが描かれる一方、図4に示すように、可動役物30の裏面には、例えば「おめでとう」というメッセージが記載されていて、可動役物30は、左右方向に延びた回転軸30Jを中心に回転可能になっている。
【0021】
上述したように、可動役物30は、通常は、待機位置に配されている。そして、特別図柄当否判定の結果が当りになると、可動役物30が上方へ移動して、表示開口11Hの内側に出現する役物演出が行われる。役物演出では、まず、可動役物30が、表面(「ABC」のロゴ)が前を向いた状態(正面位置)のまま待機位置から上方へ移動して、全体が表示開口11Hと対向する「中間位置」に配される(図3参照)。
【0022】
可動役物30は、中間位置到達後、さらに上方へ移動しながら、上部が後方へ向かうように回転(以降、適宜、「後ろ向きに回転」等という。反対向きの回転は、「前向きに回転」等という)し始める。その後、可動役物30は最大出現位置に到達して直動停止し、ちょうどその頃に、3.5回転し終え、裏面(「おめでとう」のメッセージ)が前を向いた状態で回転停止する(図4参照)。なお、可動役物30は、表面が前を向いた状態の原点位置より僅かに前向きに回転した位置と、原点位置から後ろ向きに3.5回転し、さらに少し後ろ向き回転した位置との間を回転可能範囲とし、それ以上の回転はメカストッパ(図示せず)により規制される構成になっている。
【0023】
このように、役物演出では、表裏にロゴとメッセージが描かれた可動役物30が回転しながら上昇し、一番上で「おめでとう」というメッセージ(裏面)を遊技者に見せることで、特別図柄当否判定の当りを盛り上げる。これにより、単に可動役物が上下動するだけの遊技機よりも可動役物により演出の趣向性が向上する。
【0024】
可動役物30が待機位置に戻る際は、最大出現位置から中間位置まで下降し、その間に可動役物30が前向きに3.5回転して原点位置に戻る。その後、可動役物30は、原点位置のまま待機位置まで下降し、役物演出が終了する。
【0025】
次に、上述した役物演出を行うための可動役物30の駆動機構について説明する。図5及び図6に示すように、可動役物30は、機構枠24内に組み付けられている。機構枠24は、前後より上下左右に大きく扁平な筐体構造をなし、前面全体が開口している。そして、機構枠24の前面が遊技板11の後面に重ねられた状態で固定されて、機構枠24内の空間は表示開口11Hより上下左右に広くなっている。また、機構枠24の後面には、表示開口11Hに対する画面用開口24Aが形成され、その画面用開口24Aが表示装置13の表示画面13G(図2参照)によって後方から閉塞されている。
【0026】
図5に示すように、可動役物30は、可動役物30を上下方向に直動するための1対の直動ベース40を有している。図6に示すように、直動ベース40はボールねじ機構のナット(図示せず)を内蔵していて、そのナットは、機構枠24に固定されたボールねじ機構のねじ軸45と螺合している。ねじ軸45は、上下方向に延びていて、上端部に連結されたステッピングモータ45Mにより回転駆動される。このねじ軸45の回転数に応じて、直動ベース40が上下方向に直動する。
【0027】
1対の直動ベース40の前面からは、前方へ突出した役物支持部50がそれぞれ設けられている。可動役物30は、これら役物支持部50の間に回転軸30Jを介して支持されている。なお、図5等では、役物支持部50が省略されている。
【0028】
また、役物支持部50は、直動ベース40のうち上下方向の中央よりも下側に配されていて、可動役物30の上下方向の中心と直動ベース40の上端との間の距離が可動役物30の上下方向の中心と直動ベース40の下端との間の距離より大きくなっている。つまり、直動ベース40は、可動役物30に対して上側に偏って延びている。
【0029】
回転軸30Jは可動役物30に固定されていて、回転軸30Jが回転することによって可動役物30が回転する。役物支持部50には、回転軸30Jを回転するためのステッピングモータ(図示せず)が備えられている。遊技機10の電源がオンになっている間は、可動役物30の上下方向の位置及び回転角は、各ステッピングモータのステップ数により制御されている。
【0030】
ところで、遊技機10は、通常、可動役物30が原点位置及び待機位置に配されている状態で電源が切られるが、電源がオフの間に振動等により可動役物30が回転してしまうことが考えられる。また、可動役物30の作動中に例えば停電等により遊技機10の電源がオフになり、可動役物30が原点位置及び待機位置以外の位置で停止してしまうことが考えられる。この状態で再度電源が投入されて遊技が開始されると、例えば、可動役物30が遊技板11の裏面に当接した状態で上下動し、可動役物30の作動に不具合が生じたり、可動役物30が故障したり、遊技に支障が生じることが懸念される。
【0031】
そのような不具合を防ぐために、本実施形態では、遊技機10の電源投入時に、可動役物30を原点位置及び待機位置に配置するように構成されている。以下、詳細を説明する。
【0032】
機構枠24には、直動ベース40の位置(即ち、可動役物30の上下方向の位置)を検出するために、上側センサ46A、中間センサ46B、下側センサ46Cが備えられている。これらセンサ46A~46Cは、射光部46Lと受光部46Mとを有するフォトセンサであり、図5及び図6に示すように、上側センサ46Aは、機構枠24の上端部に配され、下側センサ46Cは、機構枠24の下端部に配され、中間センサ46Bは、機構枠24の上下方向の中央より上側に配されている。上側センサ46Aと中間センサ46Bとの間の距離は、下側センサ46Cと中間センサ46Bとの間の距離より短くなっている。
【0033】
直動ベース40の後面には、各センサ46A~46Cの射光部46Lと受光部46Mとの間に進入可能な遮光部41が、直動ベース40の上下方向の全体に亘って延びている。この遮光部41がセンサ46A~46Cに検出されることにより、直動ベース40が所定位置に配されたことが検知される。
【0034】
図2及び図5に示すように、可動役物30が待機位置に配された状態では、遮光部41の下端が下側センサ46Cに検出され、図3及び図8に示すように、可動役物30が中間位置に配された状態では、遮光部41の上端が中間センサ46Bに検出される。図4及び図9に示すように、可動役物30が最大出現位置に配された状態では、遮光部41の上端寄り位置が上側センサ46Aに検出される。
【0035】
図10に示すように、直動ベース40の遮光部41は、上側センサ46Aと中間センサ46Bとの両方に亘って検出される長さになっている。可動役物30は、センサ46A~46Cにより以下のように検出されながら移動する。
【0036】
まず、可動役物30が待機位置に配された状態(遮光部41の下端が下側センサ46Cに検出される状態)では、下側センサ46Cにのみ検出される(図5参照)。可動役物30が待機位置から上方へ移動し始めると、遮光部41の下端が下側センサ46Cから離れ、どのセンサ46A~46Cにも検出されなくなる。その後、可動役物30が中間位置に到達すると、遮光部41の上端が中間センサ46Bに検出され、可動役物30は中間センサ46Bにのみ検出される(図8参照)。可動役物30がさらに上方へ移動すると、中間センサ46Bに検出されたまま上側センサ46Aにも検出される(図10参照)。そして、可動役物30が、上側センサ46Aのみに検出される状態となったのち、最大出現位置に到達する(図9参照)。
【0037】
つまり、本願発明では、可動役物30は、待機位置に配されているときは、下側センサ46Cにのみ検出され、待機位置と中間位置との間(待機位置と中間位置とは含まず)に配されているときは、どのセンサ46A~46Cにも検出されず、中間位置より上方(中間位置を含む)に配されているときは、上側センサ46Aと中間センサ46Bとの一方又は両方に必ず検出される構成になっている。
【0038】
図11に示すように、可動役物30は、遊技板11の表示開口11Hより下方に配されている状態では、回転可能範囲が狭くなっている。具体的には、可動役物30は、表面が前を向いた状態(正面位置)から前向き又は後ろ向きに45度程回転すると、上端又は下端が遊技板11の裏面に当接する。以降、図11(B)に示すように、可動役物30の上端が遊技板11の裏面に当接する位置を第2回転規制位置とし、図11(C)に示すように、可動役物30の下端が遊技板11の裏面に当接する位置を第1回転規制位置とする。
【0039】
役物支持部50には、可動役物30の回転角度を検出するために回転用センサ55が備えられている。回転用センサ55は、上記センサ46A~46Cと同様にフォトセンサであり、可動役物30に設けられた遮光リブ32を検出する。遮光リブ32は、可動役物30の回転軸を中心とした120度程の扇形状をなしていて、図11(A)に示すように、可動役物30が正面位置に配されている状態では、回転用センサ55は遮光リブ32の一端部を検出する(回転用センサ55がオンになる)。可動役物30が正面位置から前向きに回転すると、第2回転規制位置を超えたのちさらに少し回転する位置まで、回転用センサ55は遮光リブ32を検出し続ける(回転用センサ55がオンであり続ける)。一方、可動役物30が後ろ向きに回転すると、少し回転したところで遮光リブ32が回転用センサ55から外れ(この位置を「第1切り替わり位置」とする)、図11(C)に示すように、第1回転規制位置では、回転用センサ55は遮光リブ32を検出しない(回転用センサ55がオフになる)。つまり、図12に示すように、回転用センサ55は、可動役物30の位置が、正面位置を挟んで第2回転規制位置より遠い位置から第1回転規制位置の手前位置までの範囲でオンになり、その他の範囲でオフになる。なお、回転用センサ55は、オンである場合にHigh信号を出力し、オフである場合にLow信号を出力する。
【0040】
上述したセンサ46A~46C,55を用い、遊技機10は、電源投入時に、可動役物30を原点位置に配置する原点復帰処理(S1)を行う。図13に示すように、原点復帰処理(S1)では、まず、可動役物30が中間位置より上方の回転可能領域に配されているか否か、則ち、中間センサ46Bと上側センサ46Aとの一方又は両方がオンになっているか否かを判定する(S2)。中間センサ46Bと上側センサ46Aとが共にオフになっている場合(可動役物30が中間位置より下方に配されている場合。S2でNo)、回転用センサ55がHighか否かを判定する(S3)。回転用センサ55がHighの場合(S3でYes)、可動役物30を後ろ向きに回転させる(S4)。
【0041】
その後、回転用センサ55がLowになったか否か判定し(S5)、回転用センサ55がLowになった場合(S5でYes)、可動役物30を前向きに回転させる(S6)。そして、回転用センサ55がHighになってから規定ステップ回転させたところで回転を停止する(S7)。
【0042】
ステップS3でNoの場合(回転用センサ55がLowの場合)、可動役物30を前向きに回転させ(S6)、回転用センサ55がHighになってから規定ステップ回転させたところで回転を停止する(S7)。即ち、原点復帰処理(S1)は、前向き回転方向におけるLowからHighへのエッジを検出し、そこから規定ステップ回転させることで可動役物30を原点位置へ配置する。なお、原点位置以外の正面位置に配されることもあると懸念されるが、可動役物30が中間位置より下方に配されている場合、原点位置に配された後にずれることがほとんどで、電源投入時、可動役物30は原点位置を挟んだ第1回転規制位置と第2回転規制位置との間に配されていると考えられる。
【0043】
ステップS2で中間センサ46Bと上側センサ46Aとの一方又は両方がオンになっている場合(可動役物30が中間位置より上方に配されている場合。S2でYes)、メカストッパにより回転規制されるまで可動役物30を前向きに回転させてから(S8)、回転用センサ55がLowになるまで可動役物30を後ろ向きに回転させたのち、可動役物30を前向きに回転させ、回転用センサ55がHighになってから規定ステップ回転させたところで回転を停止する(S9)。これにより、可動役物30が、原点位置以外の正面位置に近い位置に配されている場合でも、可動役物30が原点位置に配される。
【0044】
原点復帰処理(S1)が行われたあとは、可動役物30が待機位置以外に配されている場合(下側センサ46Cがオフの場合)、可動役物30を下方に移動させ、待機位置に配置する(下側センサ46Cがオンになるまで下方へ移動させる)。これにより、遊技機10の電源投入後、可動役物30が原点位置及び待機位置に配された状態で遊技が開始される。
【0045】
このように、本実施形態の遊技機10によれば、遊技機10の電源投入時に、可動役物30が原点位置及び待機位置に配置されるので、可動役物30の作動に不具合が生じることが防がれる。また、原点復帰処理(S1)では、可動役物30が中間位置より上方の回転可能領域に配されているか否かによって、復帰方法が異なっているので、可動役物30が遊技板11に当接しているのに無理矢理回転し、可動役物30が破損するということが防がれる。
【0046】
また、可動役物30が回転可能領域に配されているか否かの判定を、遮光部41を2つのフォトセンサ(46A,46B)に亘って検出可能な長さにすることにより行っているので、高価な測距センサ等を用いることなく、広範囲に亘って可動役物30を検出することが可能となる。
【0047】
例えば、従来機種で、3つのセンサで上端位置と中間位置と下端位置とをそれぞれ検出する構成のものがあった場合に、遮光部の構成とソフト制御とを変更するだけで、上端位置と中間位置との間に可動役物が配されているか否かを検出することが可能となり、従来機種の部品等を使い回すことが可能となる。
【0048】
また、可動役物30の検出位置を従来機種と異ならせたい場合に、遮光部41(即ち、直動ベース40)を、可動役物30に対し一方(本実施形態では、上方)に偏って延びた構成とすることで、センサの位置を変えずに、可動役物30の検出位置を変えることができる。
【0049】
また、可動役物30が1回転する範囲に、回転用センサ55がHighになる範囲と回転用センサ55がLowになる範囲とを設け、第1回転規制位置と第2回転規制位置との一方を回転用センサ55がHighになる範囲に配し、他方を回転用センサ55がLowになる範囲に配したので、回転用センサ55のHighとLowとの切り替わり点(第1切り替わり位置)を検出することで、第1回転規制位置と第2回転規制位置の間に配されている可動役物30を原点位置に戻すことが可能となる。
【0050】
さらに、回転用センサ55としてフォトセンサを用い、そのフォトセンサが所定の位置でHigh、Lowが切り替わるように遮光リブ32を設計しているので、比較的安価なフォトセンサを用いることが可能となり、コストダウンが図られる。
【0051】
また、従来機種と新機種とで、回転可能範囲(第1回転規制位置と第2回転規制位置の間)が異なる場合、遮光リブ32の長さを変更するだけで、希望する位置に回転用センサ55のHighとLowとの切り替わり点を設定することができ、従来機種の部品等を使い回すことが可能となる。
【0052】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、役物演出が、特別図柄当否判定の結果が当りになったときに行われていたが、例えば、特別図柄当否判定の図柄変動でリーチ(あと1つ図柄が揃えば当りになる状態)になったときに行われてもよいし、所謂確変状態になったときに行われてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、可動役物30が表裏共に帯状をなした構成であったが、例えば、表側にボール状の装飾体を配し、裏側にミット状の装飾体を配する等、表裏で異なる形状になっていてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、回転用センサ55が、正面位置を挟んで第2回転規制位置より遠い位置から第1回転規制位置の手前位置までの範囲でHighになり、その他の範囲でLowになる構成であったが、逆であってもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、可動役物30が左右方向を中心に回転する構成であったが、左右方向に移動する構成であってもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、「第1方向」が上下方向であったが、水平方向であってもよい。また、可動役物30が直動ではなく回動する構成でああってもよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、「第2状態」が、回転であったが、水平方向への移動、発光等であってもよい。
【0058】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【0059】
<付記>
以下、上述した実施形態から抽出される発明群A~Bについて、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0060】
(発明群A)
発明群Aは、遊技機に関し、「従来、第1方向に移動可能な可動役物を備える遊技機が知られている(例えば、特開2018-82960号公報(段落[0021]、図2等)参照)。」という背景技術について、「上述した従来の遊技機において、演出の趣向性を向上することが求められている。」という課題をもってなされたものと考えることができる。
【0061】
[発明A1]
可動役物を第1方向(上下方向)に移動させる第1可動手段を備える遊技機において、
前記可動役物を、前記第1方向と異なる第2方向(回転方向)に原点位置から移動させる又は回転させる第2可動手段を備え、
前記可動役物は、前記第1方向における第1領域に配されているときは、前記第2方向における可動範囲の全域で移動又は回転可能である一方、前記第1方向における第2領域に配されているときは、前記原点位置から前記第2方向の第1の向きへ第1所定距離分移動又は回転した第1規制位置で移動又は回転が規制される構成になっていて、
前記第2可動手段は、
前記可動役物が、前記原点位置から、前記原点位置と前記第1規制位置との間の第1切り替わり位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの一方になり、前記可動役物が、前記第1切り替わり位置から前記第1規制位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの他方になるセンサ(55)を備え、
前記第2可動手段は、前記第1切り替わり位置を検出し、前記可動役物を原点位置に戻す原点復帰処理を所定のタイミングで行う遊技機。
【0062】
発明A1の遊技機によれば、第1方向で移動する可動役物が、さらに第2方向で移動又は回転するので、可動役物による演出を斬新にすることができる。
【0063】
[発明A2]
前記可動役物は、前記第1方向における第2領域に配されているときは、前記原点位置から前記第2方向において前記第1の向きと反対の第2の向きへ第2所定距離分移動又は回転した第2規制位置で移動又は回転が規制される構成になっていて、
前記センサは、前記可動役物が、前記原点位置から前記第2規制位置までの範囲に配されているときにオンとオフとの前記一方になる発明A1に記載の遊技機。
【0064】
[発明A3]
前記第1切り替わり位置と前記原点位置との間は、規定距離離れており、
前記原点復帰処理では、前記センサがオンとオフとの前記他方のときは、前記可動役物を前記第2方向において前記第1の向きと反対の第2の向きに移動又は回転し、前記センサがオンとオフとの前記一方になってからさらに前記規定距離分移動又は回転させて、前記可動役物を前記原点位置に戻し、前記センサがオンとオフとの前記一方のときは、前記可動役物を前記第1の向きへ、前記センサがオンとオフとの前記他方になるまで移動又は回転したのち、前記可動役物を前記第2の向きに移動又は回転し、前記センサがオンとオフとの前記一方になってからさらに前記規定距離分移動又は回転させて、前記可動役物を前記原点位置に戻す発明A1又はA2に記載の遊技機。
【0065】
[発明A4]
前記センサは射光部と受光部とを有するフォトセンサであり、前記可動役物には、前記フォトセンサの前記射光部と前記受光部との間に配される遮光リブ(32)が設けられている発明A1からA3の何れか1の発明に記載の遊技機。
【0066】
[発明A5]
中央開口(11H)を有する遊技板を備え、
前記可動役物は、前記遊技板の前面又は後面に沿った前記第1方向で移動可能であり、かつ、前記第1方向と交差する方向を中心軸として前記第2方向に回転可能となっていて、
前記第1領域では、前記可動役物の全体が前記中央開口と対向する一方、前記第2領域では、前記可動役物の少なくとも1部が、前記遊技板の前記中央開口以外の部分と対向し得るように構成されている発明A1からA4の何れか1の発明に記載の遊技機。
【0067】
[発明A6]
前記所定のタイミングは、電源投入時である発明A1からA5の何れか1の請求項に記載の遊技機。
【0068】
(発明群B)
発明群Bは、遊技機に関し、「従来、第1方向に移動可能な可動役物を備える遊技機が知られている(例えば、特開2018-82960号公報(段落[0021]、図2等)参照)。」という背景技術について、「上述した従来の遊技機において、演出の趣向性を向上することが求められている。」という課題をもってなされたものと考えることができる。
【0069】
[発明B1]
第1位置から第2位置まで第1方向に移動可能な可動役物を備える遊技機において、
前記可動役物は、電力を受けて、第1状態(正面位置に配された状態)から第2状態(回転している状態)に変化し得る構成になっていて、
前記可動役物は、前記第1位置から、前記第1位置と前記第2位置との間の中間位置に到達するまでは、前記第1状態のみになり得る一方、前記中間位置から前記第2位置までは、前記第1状態と前記第2状態との両方になり得り、
前記第1位置から移動して前記中間位置に到達した前記可動役物を、前記第2位置に到達するまでずっと検知可能な検知手段(46A~46C、41)を備える遊技機。
【0070】
発明B1の遊技機によれば、第1方向で移動する可動役物が、さらに第1状態から第2状態に変化するので、可動役物による演出を斬新にすることができ、演出の趣向性が向上する。
【0071】
[発明B2]
前記検知手段は、前記第1位置から移動した前記可動役物が前記中間位置に到達したことを検知可能な中間センサ(46B)と、前記可動役物が前記第2位置又は前記第2位置近傍に到達したことを検知可能な第2センサ(46A)と、を備え、
前記可動役物には、前記中間センサ及び前記第2センサに検知される被検知部(41)が設けられ、
前記被検知部は、前記中間センサと前記第2センサとに跨って検知される長さになっている発明B1に記載の遊技機。
【0072】
[発明B3]
前記可動役物が前記第1位置に配されていることを検知可能であり、前記中間センサから前記被検知部の長さ以上に離れた位置に配された第1センサ(46C)を有している発明B2に記載の遊技機。
【0073】
[発明B4]
前記被検知部は、前記可動役物の前記第1方向の中心に対して前記第1方向のどちらか一方に偏って延びている発明B2又はB3に記載の遊技機。
【0074】
[発明B5]
中央開口(11H)を有する遊技板を備え、
前記可動役物は、前記遊技板の前面又は後面に沿って移動可能であり、
前記第1位置では、前記可動役物の少なくとも1部が、前記遊技板の前記中央開口以外の部分と対向し、前記中間センサから前記第2センサまでの領域では、前記可動役物の全体が前記中央開口と対向し、
前記可動役物の前記第2状態とは、前記可動役物が、前記第1方向と交差する方向を中心軸として回転又は回動している状態である発明B1からB4の何れか1の発明に記載の遊技機。
【符号の説明】
【0075】
10 遊技機
11 遊技板
11H 表示開口
30 可動役物
30J 回転軸
32 遮光リブ
40 直動ベース
41 遮光部
46A 上側センサ
46B 中間センサ
46C 下側センサ
55 回転用センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13