(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】無人飛行体の位置測定システムおよび光反射器制御機構
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230417BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230417BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230417BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
G01C15/00 104C
G01C15/00 103A
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64C13/20 Z
(21)【出願番号】P 2021077426
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521190163
【氏名又は名称】空撮サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】掘内 保秀
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119221(JP,A)
【文献】特開2018-44913(JP,A)
【文献】特開2020-8423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0088332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
B64C 39/02
B64C 13/18
B64C 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置されたトータルステーションと、
光反射器を搭載した無人飛行体と、
前記トータルステーションおよび前記無人飛行体と通信可能に接続された情報処理装置と、
を備え、
前記トータルステーション
が、
前記無人飛行体に向けて照射した照射光が前記光反射器で反射されて戻ってくる反射光を受光し、
受光した前記反射光に基づき前記無人飛行体の現在位置であるTS現在位置を測定し、
測定した前記TS現在位置を前記情報処理装置に送信し、
前記情報処理装置
が、
前記トータルステーションから前記TS現在位置を受信し、
受信した前記TS現在位置を前記無人飛行体に送信し、
前記無人飛行体
が、
前記情報処理装置から送られてくる前記TS現在位置を受信し、
受信した前記TS現在位置に基づき飛行制御を行う、
無人飛行体の位置測定システムであって、
前記無人飛行体は、
前記照射光を有効に反射することが可能な前記光反射器への入射角の範囲である有効角の向きを制御する光反射器制御機構を有し、
受信した前記TS現在位置に基づき光反射器の前記有効角の向きの制御量を算出し、
前記制御量に基づき、前記有効角に前記トータルステーションが入るように前記光反射器制御機構を制御し、
前記光反射器は、第1軸の側方に当該第1軸に沿って所定の角度で広がる前記有効角を有するとともに、前記第1軸の方向に所定の角度で広がる死角を有し、
前記光反射器制御機構は、前記無人飛行体の飛行中に前記第1軸が水平になるように前記光反射器を支持する第1機構と、前記光反射器を前記第1軸に垂直な第2軸の周りに回転させて前記第1軸の方向を変化させることにより前記有効角の向きを変化させる第2機構とを有する、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無人飛行体の位置測定システムであって、
前記光反射器は、
入射する照射光を当該照射光が入射してきた方向に向けて反射する柱状のプリズムと、
前記プリズムの両端の夫々に設けられる鍔部と、
を有し、
前記第1軸は、前記プリズムの中心軸であり、
前記死角は、前記光反射器に向けて照射された照射光の前記プリズムへの入射を前記鍔部が遮ることにより形成される、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無人飛行体の位置測定システムであって、
前記プリズムは、360゜プリズムである、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無人飛行体の位置測定システムであって、
前記第2機構は、前記第2軸の周りに前記光反射器を回転させるサーボモータを含む、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無人飛行体の位置測定システムであって、
前記無人飛行体は、自身の機軸が現在向いている方位である機軸方位を取得するセンサを備え、前記TS現在位置と前記機軸方位とに基づき前記制御量を算出する、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項6】
請求項
5に記載の無人飛行体の位置測定システムであって、
前記無人飛行体は、前記制御量を、前記TS現在位置と前記機軸方位との差に基づき算出する、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項7】
請求項
5に記載の無人飛行体の位置測定システムであって、
前記センサは、前記機軸方位を検出する地磁気センサである、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項8】
請求項1に記載の無人飛行体の位置測定システムであって、
前記無人飛行体は、前記TS現在位置に基づき、自律飛行又は外部からの遠隔制御による飛行を行う、
無人飛行体の位置測定システム。
【請求項9】
請求項1に記載の無人飛行体の位置測定システムにおける前記光反射器制御機構であって、
前記第1機構及び前記第2機構を備える、
光反射器制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体の位置測定システムおよび光反射器制御機構に関し、とくに飛行中の無人飛行体の位置を精度よく安定して測定できるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無人飛行体(無人航空機、UAV(unmanned aerial vehicle)、ドローン等)は、自律飛行や安全確保等のため、その飛行中に自己の現在位置を把握している必要があるが、この現在位置の取得を通常は自身に搭載されたGPS装置(GPS:Global Positioning System)により行っている。
【0003】
しかしGPS装置は、橋梁の下やビルの屋内のようにGPS衛星から送られてくる信号(以下、「GPS信号」と称する。)が届きにくい環境では、安定して位置情報を提供することができない。そのため、こうした環境で無人飛行体を飛行させる場合には、飛行中に人が無人飛行体を目視で監視する必要があり、また、自律飛行や自動制御が困難になった場合は手動操作に切り換えて遠隔制御する必要があり、監視や操縦にかかる人の負担が大きいことが課題である。そこで、こうした環境下でも無人飛行体の正確な現在位置を安定して取得できるようにするための様々な仕組みが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、トータルステーション、無人飛行機を用いた無人飛行機の飛行制御システム又は地形計測システムであって、トータルステーションで測定した無人飛行機の飛行位置をリアルタイムで無人飛行体に伝送することを目的として構成されたシステムについて記載されている。トータルステーションは、測定データをデータ伝送光に重畳し、無人飛行器(UAV)は、受光信号から測定データを分離して飛行位置を取得する。
【0005】
また例えば、非特許文献1には、無人飛行体を山間域の谷間や堤体のような高い構造物付近を飛行させている際、GPS測位情報の精度が低下すると、測量分野で用いられるトータルステーション(以下、「TS」と表記する。)により測定された無人飛行体の現在位置を利用することが記載されている。
【0006】
また例えば、非特許文献2には、屋内や非GPS環境での測量や点検のため、ドローンに搭載したプリズムにTSからレーザ光を照射してドローンの位置を計測し、ドローからタブレットに計測データを送信し、タブレットのソフトウェアが計測データから目標点とドローンの現在位置との差分を算出し、目標点までの移動指示を、人がドローンを操縦する際に用いられる無線送信機(「プロポ」とも称される。)に送信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】”NEWS トータルステーションを活用したUAVの自律航行によりダム堤体の空撮作業効率および取得画像の品質と再現性を向上させた「DamLook(ダムルック)」を開発”、[online]、2020年09月17日、八千代エンジニヤリング株式会社、[令和3年4月23日検索]、インターネット、〈URL:https://www.yachiyo-eng.co.jp/news/2020/09/post_487.html〉
【文献】”TS Drone Control Software”、[online]、2020年09月17日、株式会社ジツタ、[令和3年4月23日検索]、インターネット、〈URL:https://www.jitsuta.co.jp/service-drone/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1乃至非特許文献1,2に記載されているような、トータルステーション(TS)を用いた無人飛行体の位置測定においては、TSから照射されるレーザ光(照射光)をTSの方向に向けて反射するための光学機器(360度プリズム、レトロリフレクタ、再帰反射器、再帰反射材、コーナーキューブ等。以下、「光反射器」と称する。)を無人飛行体に搭載する必要がある。
【0010】
しかし、光反射器の多くは、TSから送られてくる照射光を有効に反射することが可能な領域(例えば、360度プリズムであればプリズム本体の表面。以下、「反射可能域」と称する。)の周囲に、当該反射可能域への照射光の入射を遮る構造、例えば、光反射器を測量技師等が光反射器を手持ち支持するポールに取り付けるための部材や反射器の破損を防ぐための部材等が設けられていることがあり、当該構造によってTSからの照射光が反射可能域に有効に入射することが可能な光反射器の角度範囲(以下、「有効角」と称する。)が制限されてしまう(即ち、「死角」が存在する。)。
【0011】
図8Aに光反射器の一例を示す。例示する光反射器50は、前述したポールの先端に取り付けて用いられるタイプのものであり、中心軸C-C‘の周りに略対称な太鼓型の全体形状を呈する。同図に示すように、例示する光反射器50は、中心軸C-C‘の側方から入射する照射光を、当該照射光が入射してきた方向に向けて反射する略柱状のプリズム本体51と、プリズム本体51の両端に設けられた2つの鍔部52a,52bと、鍔部51aから光反射器50の中心軸C-C‘に沿って外周方向に突出し、光反射器50の前述したポールへの取り付けに際しポールの端部に螺合されるネジ部53と、を有する。
【0012】
図8Bは、
図8Aに示した光反射器50における、反射可能域、有効角、および死角を示した図である。同図に示すように、例示する光反射器50においては、2つの鍔部52a,52bによって有効角が制限されるため、略錐体状の死角が形成される。このように、例示する光反射器50には死角が存在するが、この死角によって、無人飛行体を安定して自律飛行もしくは自動制御することが可能な空域が制限されてしまう。
【0013】
図9は、無人飛行体100(光反射器50)の飛行に死角が与える影響を説明する図であり、TS300および飛行中の無人飛行体100を側方(地面に水平な方向)から眺めた図である。尚、光反射器50は、無人飛行体100が無風時に空中で静止している状態(以下、「安定状態」と称する。)において光反射器50の
図8Aに示した中心軸C-C‘が地面に対して垂直になる向きに無人飛行体100に搭載されている。
【0014】
同図に示すように、無人飛行体100が測定限界角α以下の空域を飛行しているときは、TS300は有効角内に入り、TS300からの照射光が光反射器50の反射可能域に入射するため、TS300により無人飛行体100の現在位置を測定することが可能である。一方、無人飛行体100が同図に示す測定限界角αを超える空域、即ち、TS300からの照射光が光反射器50の死角に入る空域を飛行するときは、TS300は有効角外となり、TS300から光反射器50の反射可能域に照射光を入射させることができず、TS300による無人飛行体100の現在位置を測定することができない。このように、光反射器として死角が形成されてしまう構造を有するものを用いた場合、TS300による位置測定が可能な空域が制限されてしまう。
【0015】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、飛行中の無人飛行体の現在位置を精度よく安定して測定することが可能な、無人飛行体の位置測定システムおよび光反射器制御機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、無人飛行体の位置測定システムであって、地上に設置されたトータルステーションと、光反射器を搭載した無人飛行体と、前記トータルステーションおよび前記無人飛行体と通信可能に接続された情報処理装置と、 を備え、前記トータルステーションが、前記無人飛行体に向けて照射した照射光が前記光反射器で反射されて戻ってくる反射光を受光し、受光した前記反射光に基づき前記無人飛行体の現在位置であるTS現在位置を測定し、測定した前記TS現在位置を前記情報処理装置に送信し、前記情報処理装置が、前記トータルステーションから前記TS現在位置を受信し、受信した前記TS現在位置を前記無人飛行体に送信し、前記無人飛行体が、前記情報処理装置から送られてくる前記TS現在位置を受信し、受信した前記TS現在位置に基づき飛行制御を行う、無人飛行体の位置測定システムであって、前記無人飛行体は、前記照射光を有効に反射することが可能な前記光反射器への入射角の範囲である有効角の向きを制御する光反射器制御機構を有し、受信した前記TS現在位置に基づき光反射器の前記有効角の向きの制御量を算出し、前記制御量に基づき、前記有効角に前記トータルステーションが入るように前記光反射器制御機構を制御し、前記光反射器は、第1軸の周りに前記第1軸に沿って所定の角度で広がる有効角を有するとともに、前記第1軸の方向を中心として前記第1軸の周りに所定の角度で広がる死角を有し、前記光反射器制御機構は、前記無人飛行体が無風時に空中で静止している状態にあるときに前記第1軸が水平になるように前記光反射器を支持する第1機構と、前記第1軸に垂直な第2軸の周りに前記光反射器を回転させることにより前記有効角の方向を変化させる第2機構とを有する。
【0017】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、飛行中の無無人飛行体の現在位置を精度よく安定して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】位置測定システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】無人飛行体の外観を示す図であり、無人飛行体を側方から眺めた図である。
【
図3】無人飛行体が備える主な構成を説明するブロック図である。
【
図4A】飛行監視制御装置のハードウェア構成例を説明するブロック図である。
【
図4B】飛行監視制御装置が備える主な機能を示す図である。
【
図5A】トータルステーション(TS)の構成を説明するブロック図である。
【
図5B】トータルステーション(TS)の外観の一例を示す図である。
【
図6】光反射器制御機構の構成を示す部分拡大斜視図である。
【
図7】飛行制御装置によるサーボモータの制御方法を説明する図である。
【
図8A】光反射器の一例を示す図(光反射器の側面図)である。
【
図8B】光反射器の反射可能域、有効角、および死角を説明する図である。
【
図9】無人飛行体の飛行に死角が与える影響を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態について説明する。尚、以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して説明を省略することがある。
【0021】
図1に、本発明の一実施形態として説明する、無人飛行体の現在位置を測定するシステム(以下、「位置測定システム1」と称する。)の概略的な構成を示している。同図に示すように、位置測定システム1は、無人飛行体100、飛行監視制御装置200、およびトータルステーション(以下、「TS300」と称する。)を含む。
【0022】
無人飛行体100は、空中を飛行し、空撮、測量、構造物等の状態診断、荷物の運搬等の様々な用途に多目的に用いられる無人航空機(UAV(unmanned aerial vehicle)、ドローン)である。無人飛行体100の種類は限定されないが、例えば、マルチコプタ(クアッドコプタ(quadcopter)、ヘキサコプタ(hexacopter)、オクトコプタ(octocopter)等)、回転翼航空機(ヘリコプタ)、固定翼機(飛行機)等である。
【0023】
無人飛行体100にはGPS装置(GPS:Global Positioning System)が搭載され、無人飛行体100は、GPS衛星から送られてくる所定数の信号(以下、「GPS信号」と称する。)を受信することにより測定された自身の現在位置(以下、「GPS現在位置」と称する。)を利用して自律飛行を行うことができる。また、無人飛行体100は、TS300によって測定され、飛行監視制御装置200を介して送られてくる自身の現在位置(以下、「TS現在位置」と称する。)を利用して自律飛行を行うことができる。また、無人飛行体100は、飛行監視制御装置200や無線送信器(プロポ)から送られてくる無線信号による遠隔制御で飛行することもできる。尚、GPS現在位置およびTS現在位置は、例えば、無人飛行体100が現場の画像や映像を撮影する目的で使用される場合に撮影位置を特定する情報等として利用する等、自律飛行以外の目的にも利用することができる。
【0024】
図2は、無人飛行体100の外観を示す図であり、無人飛行体100を側方から眺めた図である。同図に示すように、例示する無人飛行体100は、その基本骨格(フレーム)として、各種装置21や各種積載物22を搭載するための台座11(荷台)、台座11から略水平方向に延出し、その端部に推力機構12(プロペラ、動力モータ等)が設けられる複数の支持アーム13、台座11から下方に延出する複数(本例では4つ)の脚部14等を有する。
【0025】
無人飛行体100の下方には、TS300がTS現在位置を測定する際に出射するレーザ光(以下、「照射光」と称する。)を照射光の入射方向に向けて反射する光反射器50や、後述する光反射器制御機構117等が搭載されている。尚、本例では、光反射器50および光反射器制御機構117は、無人飛行体100の脚部14に搭載されているものとするが、光反射器50および光反射器制御機構117の搭載位置や搭載方法は必ずしも限定されない。例えば、無人飛行体100を主にTS300が設置される位置よりも低い空域を飛行させるような場合には、光反射器50を無人飛行体100の上方に設けてもよい。また、無人飛行体100に、光反射器50の搭載位置を自在に変更可能にする機構(自在アーム等)を設け、無人飛行体100の飛行目的や飛行させる空域等に応じて、搭載位置を柔軟に調節できるようにしてもよい。
【0026】
図1に戻り、飛行監視制御装置200は、例えば、ノートブック型のコンピュータである。飛行監視制御装置200は、無人飛行体100との間で双方向の無線通信を行う。また、飛行監視制御装置200は、TS300との間で双方向の通信(無線通信又は有線通信)を行う。飛行監視制御装置200は、TS300から送られてくるTS現在位置を受信し、受信したTS現在位置を無人飛行体100に送信(転送)する。飛行監視制御装置200は、無人飛行体100から送られてくる無人飛行体100の飛行状態に関する情報(無人飛行体100が把握している自身についての情報(現在位置、姿勢、速度、加速度、角速度、角加速度、ナビゲーションに用いる情報等)。以下、「飛行状態情報」と称する。)や各構成の動作状態に関する情報(印加電圧、消費電流、バッテリ残量、エラーの有無等。以下、「動作状態情報」と称する。)等を受信し、受信した飛行状態情報および動作状態情報の監視や制御(無人飛行体100に搭載されている機器の制御や無人飛行体100の飛行の遠隔制御)を行う。飛行監視制御装置200は、無人飛行体100を目的地まで誘導するナビゲーション機能を備え、例えば、無人飛行体100が、ユーザ等により予め設定されたウェイポイント(Waypoint)に沿って飛行するように無人飛行体100を遠隔制御する。
【0027】
図1に示すTS300は、光波測距儀(electro-optical distance measuring instrument)およびセオドライト(theodolite)を備えた機器であり、光反射器50の距離と角度を計測することにより光反射器50の現在位置を測定する。尚、本実施形態では、TS300は、測量に使用される、移動する光反射器50を自動追尾する機構(以下、「自動追尾機構」と称する。)を備えるタイプのものであるものとする。TS300は、地上の所定位置に固定して用いられる。本例では、TS300は、地上に設置された三脚350に取り付けて用いるものとする。TS300は、無人飛行体100に搭載されている光反射器50に向けて照射光を照射し、当該照射光と当該照射光が光反射器50で反射して戻ってくる反射光とに基づき(例えば、両者を干渉させることにより)、無人飛行体100の現在位置を測定し、測定した現在位置(TS現在位置)を飛行監視制御装置200に送信する。
【0028】
図3は、無人飛行体100が備える主な構成を説明するブロック図である。同図に示すように、無人飛行体100は、飛行制御装置111(FCS:Flight Control System)、各種センサ112、慣性航法装置113、GPS装置114、推力発生装置115、通信装置116、光反射器制御機構117、バッテリ118、および光反射器50を備える。尚、上記構成のうち、飛行制御装置111、各種センサ112、慣性航法装置113、GPS装置114、推力発生装置115、通信装置116、および光反射器制御機構117は、内部バス等により互いに双方向通信が可能な状態で接続されている。
【0029】
飛行制御装置111は、マイクロコンピュータ(マイコン)等の情報処理装置を用いて構成されており、主に無人飛行体100の飛行や各種動作に関する制御を行う。飛行制御装置111は、各種センサ112、慣性航法装置113、GPS装置114、および通信装置116から入力される情報(各種計測値)に基づき推力発生装置115を制御することにより、無人飛行体100の飛行制御や姿勢制御を行う。飛行制御装置111は、例えば、そのファームウェアを更新することにより、飛行制御や飛行制御以外の様々な機能を実装することができる。後述する光反射器制御機構117を制御する機能は、例えば、上記ファームウェアを更新することにより飛行制御装置111に実装される。
【0030】
各種センサ112は、例えば、3軸ジャイロセンサ(角速度センサ)、3軸加速度センサ、気圧センサ、地磁気センサ(2軸、3軸)、超音波センサ等である。尚、無人飛行体100は、必ずしも以上に示した総てのセンサを備えていなくてもよいし、更に別の種類のセンサを備えていてもよい。
【0031】
慣性航法装置113は、各種センサ112により計測される情報(加速度、角速度等)を所定のアルゴリズム(拡張カルマンフィルタ(EKF:Extended Kalman Filter)等)に入力して実行することにより、無人飛行体100の現在位置や現在速度等の情報をリアルタイムに算出し、算出した情報を飛行制御装置111に入力する。飛行制御装置111は、例えば、GPS現在位置やTS現在位置が利用できなくなった際に慣性航法装置113が提供する情報を利用して無人飛行体100の飛行制御を継続する。
【0032】
GPS装置114は、所定数以上のGPS衛星から送られてくるGPS信号を受信して現在位置(GPS現在位置)を算出し、算出した現在位置を飛行制御装置111に入力する。
【0033】
推力発生装置115は、動力モータおよびモータ制御装置(ESC:Electronic Speed Controller)を備える。モータ制御装置は、飛行制御装置111から送られてくる制御信号に応じて動力モータの回転を制御する。
【0034】
通信装置116は、飛行監視制御装置200や無線送信機(プロポ)との間での所定のプロトコルに従った双方向の無線通信(例えば、2.4GHz帯や5GHz帯の周波数を用いた各種プロトコルに従ったデータ通信、映像信号/音声信号の伝送等)を行う。
【0035】
光反射器制御機構117は、飛行制御装置111から送られてくる制御信号に基づき、光反射器50における、TS300から送られてくる照射光を有効に反射することが可能な領域(以下、「反射可能域」と称する。)に入射することが可能な光反射器50の角度範囲(以下、「有効角」と称する。)の向き(方向)を制御する。光反射器制御機構117の詳細については後述する。
【0036】
バッテリ118は、例えば、リチウムポリマー二次電池であり、無人飛行体100が備える各構成に対し夫々の駆動に必要な電力を供給する。
【0037】
図4Aは、飛行監視制御装置200のハードウェア構成例を示すブロック図である。飛行監視制御装置200は、情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成され、プロセッサ201(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等)、主記憶装置202(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等)、補助記憶装置203(SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等))、入力装置204(キーボード、マウス、タッチパネル、記録媒体の読取装置等)、出力装置205(表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)等)、音声出力装置(スピーカ等)等)、および通信装置206(無線通信モジュール、有線通信モジュール、シリアル通信モジュール等)を備える。通信装置206は、無人飛行体100との間の無線通信、およびトータルステーション300との間の通信(無線通信又は有線通信)を実現する。尚、飛行監視制御装置200には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)、各種アプリケーションソフトウェア等が適宜導入される。
【0038】
図4Bは、飛行監視制御装置200が備える主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、飛行監視制御装置200は、記憶部210、飛行管理部220、飛行監視制御部230、TS現在位置受信部240、およびTS現在位置送信部250の各機能を備える。これらの機能は、プロセッサ201が、主記憶装置202に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、飛行監視制御装置200のハードウェアが本来的に備える機能によって実現される。
【0039】
上記機能のうち、記憶部210は、飛行管理情報211、飛行監視情報212、およびTS現在位置213を記憶する。飛行管理情報211は、無人飛行体100の飛行に関する情報(飛行計画、飛行実績(飛行ログ)等)を含む。飛行監視情報212は、無人飛行体100から送られてくる動作状態情報および飛行状態情報を含む。TS現在位置213は、TS300から受信し無人飛行体100に送信(転送)されるTS現在位置である。
【0040】
飛行管理部220は、無人飛行体100の飛行計画、飛行ルート、飛行実績、飛行中に行う作業や業務(撮影等)に関する情報等を飛行管理情報211として管理する。飛行管理部220は、例えば、飛行計画、飛行ルート、飛行実績、飛行中に無人飛行体100が行う作業に関する機器の制御計画等をユーザが管理(登録、編集、削除等)するためのユーザインタフェースを提供する。
【0041】
飛行監視制御部230は、無人飛行体100から送られてくる、前述の動作状態情報や飛行状態情報を飛行監視情報212として管理し、無人飛行体100の監視や制御、例えば、飛行計画に従った無人飛行体100の遠隔制御や飛行中の安全確保のための遠隔制御を行う。
【0042】
TS現在位置受信部240は、TS300からTS現在位置を受信し、TS現在位置213として記憶する。TS現在位置送信部250は、TS現在位置を無人飛行体100に送信(転送)する。尚、TS現在位置受信部240がTS300からTS現在位置を受信してからTS現在位置送信部250が無人飛行体100にTS現在位置を送信(転送)するまでの時間は、無人飛行体100の飛行に支障が生じない程度に十分に短いものとする。
【0043】
図5Aに、TS300(トータルステーション)の構成を説明するブロック図を、また
図5Bに、TS300の外観の一例(TS300を正面方向から眺めた図)を示す。
図5Aに示すように、TS300は、マイコン311(CPU、MPU等)、記憶装置312(ROM、RAM、不揮発性メモリ等)、ユーザインタフェース313(キーボード、タッチパネル、表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)等)、音声出力装置(スピーカ等)等)、通信装置314、光波測距儀315、セオドライト316(theodolite)、および自動追尾機構317を備える。
【0044】
通信装置314は、無線通信モジュール、有線通信モジュール、Bluetooth(登録商標)、シリアル通信モジュール(USBモジュール、RS-232Cモジュール等)等を用いて構成され、飛行監視制御部230との間の通信(無線通信又は有線通信)を行う。
【0045】
光波測距儀315は、照射光(レーザ光)を対象物に照射して当該照射光の対象物からの反射光を受光し、照射光と受光した反射光とに基づき光反射器50までの距離を計測する。
【0046】
セオドライト316は、望遠鏡や球心望遠鏡、角度表示器等を用いて構成され、対象物(光反射器50)の水平面並びに垂直面における角度を計測する。
【0047】
マイコン311は、光波測距儀315により計測された対象物までの距離と、セオドライト316により計測された対象物の水平面並びに垂直面における角度に基づき対象物の位置を算出し、算出した位置を示す情報(例えば、絶対座標又は相対座標で表された位置情報)を、ユーザインタフェース313を介してユーザに提供する。また、マイコン311は、位置情報(例えば、TS現在位置)を、通信装置314を介して飛行監視制御装置200に送信する。
【0048】
自動追尾機構317は、光波測距儀315が照射する照射光の方向(もしくは反射光の受光窓(受光レンズ)の光軸の方向が、対象物である飛行中の無人飛行体100(光反射器50)の方向を常に向いているように制御(自動視準および自動追尾)するための回転機構(制御モータ、当該制御モータを制御する電子部品等)を含む。
【0049】
図6は、無人飛行体100に搭載され、光反射器50の支持並びに回転制御を行う光反射器制御機構117の構成を示す部分拡大斜視図である。同図に示すように、光反射器制御機構117は、無人飛行体100の脚部14の一つにボルト/ナット等で締め付け固定される取付具1171、取付具1171から延出し、無人飛行体100が無風時に空中で静止している状態(以下、「安定状態」と称する。)にあるときに水平(地面に平行)になるように支持される平板状のサーボ固定台1172、サーボ固定台1172にそのモータ回転軸11173が下方に向くように固定されたサーボモータ1173、モータ回転軸11731に固定され光反射器50が懸垂支持されるL型部材1174を有する。尚、光反射器50は、
図8Aに示す構造からなり、
図8Bに示す反射可能域、有効角、および死角を有するものとする。
【0050】
L型部材1174は、L型を構成する一方の矩形板1174aの平面内の所定位置においてモータ回転軸11731に固定されている。また、光反射器50は、そのネジ部53を他方の矩形板1174bの面内の所定位置に螺合することによりL型部材1174に取り付けられている。矩形板1174aは、無人飛行体100が安定状態にあるときに地面と水平になるように調節されて設けられている。また、光反射器50の中心軸C-C’は、無人飛行体100が安定状態にあるときに地面と平行になるように調節されて設けられている。
【0051】
サーボモータ1173には、図示しない給電線を介してバッテリ118から駆動電力が供給される。サーボモータ1173の図示しない制御信号線は、飛行制御装置111に接続されている。無人飛行体100の飛行中、サーボモータ1173のモータ回転軸11731の回転は、上記制御信号線を介して飛行制御装置111により制御される。無人飛行体100の飛行中、飛行制御装置111は、光反射器50の有効角の向きが常にTS300の方向を向くように、サーボモータ1173のモータ回転軸11731の回転を制御する。光反射器50は、その中心軸C-C’が、サーボモータ1173のモータ回転軸11731に垂直になるように設けられ、光反射器50は、無人飛行体100が安定状態にあるときにその中心軸C-C’が地面と平行な面内を回転するように1つのサーボモータ1173によって1軸制御される。尚、光反射器50の有効角の向きの制御方法は必ずしも限定されず、光反射器50をより高い自由度(2軸もしくは3軸)で制御するようにしてもよい。
【0052】
飛行制御装置111は、各種センサ112(例えば、地磁気センサ)の情報に基づき特定される、無人飛行体100の機軸が現在向いている方位(以下、「機軸方位θd」と称する。)と、飛行監視制御装置200から送られてくるTS現在位置に基づき特定される、無人飛行体100から見たTS30が存在する方位(以下、「TS方位θt」と称する。)とに基づき、サーボモータ1173の回転を制御し、光反射器50の有効角の向きが常にTS30の方向を向くようにする。尚、機軸の設定方法は必ずしも限定されないが、本実施形態では、機軸は、無人飛行体10が安定状態にあるときに無人飛行体10の重心を通り地面に平行な所定の方向(例えば、機首の向きと一致する方向)に延出する直線であるものとする。
【0053】
図7は、飛行制御装置111によるサーボモータ1173の制御方法を説明する図であり、飛行中の無人飛行体100とTS300を上空から見下ろすように眺めた図である。同図に示すように、飛行制御装置111は、TS方位θtと機軸方位θdとの差の角度(θt-θd)(以下、「制御角θp」と称する。)に基づく角度だけ光反射器50を回転させるようにサーボモータ1173を制御し、光反射器50の有効角にTS300が常に入るように(TS300からの照射光が常に有効角に入るように)する。
【0054】
尚、飛行制御装置111は、好ましくは、有効角の向き、即ち、有効角の中央を通り光反射器50の中心軸C-C’に直角の方向(
図8Aにおいて光反射器50のプリズム本体51の中央(中心)を通り、中心軸C-C’に垂直な方向)がTS300の方向に一致するようにサーボモータ1173を制御する。これにより、例えば、飛行中に突風を受けて無人飛行体100の姿勢が急に変化した場合でも、TS300が常に有効角に入るようにすることができる。また、無人飛行体100の飛行中、光反射器50の中心軸C-C’は地面と平行に維持されているので、サーボモータ1173を回転させることで、有効角の向きは地面と平行な面内を360度回転する。そのため、無人飛行体100が高い高度を飛行する場合および低い高度で飛行する場合のいずれにおいても、有効角の向きをTS300の方向に向けることができ、広い空域に亘って無人飛行体100の位置をTS300により測定することができる。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の位置測定システム1は、TS300により測定された無人飛行体100の現在位置であるTS現在位置を飛行監視制御装置200を介して無人飛行体100に通知し、無人飛行体100が、TS現在位置から特定されるTS方位θtと各種センサ(例えば、地磁気センサ)から取得される機軸方位θdとに基づき算出される制御量でサーボモータ1173を制御することにより光反射器50の有効角の向きがTS300の方向を向くように制御するので、広い空域に亘って無人飛行体100の現在位置を精度よく安定して測定することが可能になる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0057】
例えば、TS300によって測定されたTS現在位置を、無人飛行体100が実際に飛行した経路(ルート)の管理や、無人飛行体100が何らかの作業を遂行する際に作業対象が存在する位置を精度よく特定するための情報等として用いてもよい。
【0058】
また以上の実施形態では、光反射器50として太鼓型のものを例示したが、本発明は、太鼓型以外の構成からなる光反射器を用いた場合にも適用することができる。
【0059】
また以上の実施形態では、TS現在位置を飛行監視制御装置200を介して無人飛行体100に転送しているが、例えば、TS300および無人飛行体100を通信可能に接続し、TS300から無人飛行体100にTS現在位置を直接送信するようにしてもよい。
【0060】
また以上の実施形態では、機軸方位θdを地磁気センサを利用して取得しているが、機軸方位θdは、例えば、角速度センサや角加速度センサの値を用いて算出する等、他の方法で取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 位置測定システム、50 光反射器、51 プリズム本体、52a,52b 鍔部、53 ネジ部、100 無人飛行体、111 飛行制御装置、112 各種センサ、113 慣性航法装置、114 GPS装置、115 推力発生装置、116 通信装置、117 光反射器制御機構、1171 取付具、1172 サーボ固定台、1173 サーボモータ、1174 L型部材、1174a,1174b 矩形板、118 バッテリ、150 脚部、200 飛行監視制御装置、201 プロセッサ、202 主記憶装置、203 補助記憶装置、204 入力装置、205 出力装置、210 記憶部、211 飛行管理情報、212 飛行監視情報、213 TS現在位置、220 飛行管理部、230 飛行監視制御部、240 TS現在位置受信部、250 TS現在位置送信部、300 トータルステーション、311 マイコン、313 ユーザインタフェース、314 通信装置、315 光波測距儀、316 セオドライト、317 自動追尾機構