(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】第1の物体に第2の物体を締結する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/54 20060101AFI20230417BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20230417BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B29C65/54
B29C65/08
F16B11/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021138038
(22)【出願日】2021-08-26
(62)【分割の表示】P 2018553349の分割
【原出願日】2017-04-11
【審査請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】501485227
【氏名又は名称】ウッドウェルディング・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ポシュナー,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】クビスト,ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】モーザー,パトリック
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-132788(JP,A)
【文献】特開平06-031816(JP,A)
【文献】特開平06-252554(JP,A)
【文献】特開平08-142197(JP,A)
【文献】特開平08-150669(JP,A)
【文献】特開平11-021515(JP,A)
【文献】特開2006-346862(JP,A)
【文献】特開2008-240979(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
C09J 5/00-5/10
F16B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物体に第2の物体を締結する方法であって、
- 第1の取付け面を含む前記第1の物体を設けるステップと、
- 前記第2の物体を設けるステップと、
-
振動エネルギを吸収可能な熱可塑性材料を含む補助要素を設けるステップと、
- 前記第1の取付け面と前記第2の物体の第2の取付け面との間に樹脂を介在させた状態で、前記第1の物体に対して相対的に前記第2の物体を配置するステップと、
- 前記樹脂が前記第1の取付け面および前記第2の取付け面に接触している間、機械振動を前記第2の物体に作用させることにより、
少なくとも1つの別個の位置において前記樹脂の一部を架橋するように活性化させるのに対して、前記樹脂のさらに別の一部は前記機械振動によって本質的に影響を受けないままである、ステップと、
を含み、
機械振動を作用させる前記ステップにおいて、前記補助要素は前記第1の物体と前記第2の物体との間の前記少なくとも1つの別個の位置に配置され、機械振動エネルギを吸収し、これにより、前記補助要素の付近において前記樹脂を加熱し、
-
それによって、前記樹脂により前記第2の物体を前記第1の物体に固定す
る、方法。
【請求項2】
前記第2の物体は平面薄板部分を有し、機械振動を前記第2の物体に作用させ
る前記ステップは、機械振動を前記平面薄板部分に作用させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
機械振動を作用させることにより、前記樹脂を架橋するように活性化させるステップは、前記第1の物体、前記第2の物体および前記樹脂を含むアセンブリについての複数の別個の位置のために繰返される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の物体は窪められた部分を有し、機械振動を作用させるステップにおいて、振動工具が前記窪められた部分に接触している、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の物体は波形部分を有し、機械振動を作用させるステップにおいて、振動工具が前記波形部分に接触している、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記補助要素は少なくとも1つのエネルギダイレクタを含む、請求項
1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記補助要素は可撓性のある平面構造である、請求項
1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記可撓性のある平面構造がメッシュである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の物体に対して相対的に前記第2の物体を配置する前記ステップにおいて、前記補助要素が、前記第1および第2の物体の間の距離保持器としての役割を果たし、これにより、前記樹脂の厚さを規定する、請求項
1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1の物体に第2の物体を接着接続によって締結する方法であって、
- 第1の取付け面を含む前記第1の物体を設けるステップと、
- 前記第2の物体を設けるステップと、
-
振動エネルギを吸収可能な熱可塑性材料を含む補助要素を設けるステップと、
- 前記第1の取付け面と前記第2の物体の第2の取付け面との間に樹脂を介在させた状態で、前記第1の物体に対して相対的に前記第2の物体を配置するステップと、
- 前記樹脂が前記第1の取付け面および前記第2の取付け面に接触している間、機械振動を、前記第2の物体もしくは前記第1の物体または前記第2の物体および前記第1の物体の両方の、複数の別個の
位置に作用させ、これにより、前記樹脂の複数の別個の部分を架橋するように活性化させるのに対して、前記樹脂の他の部分は前記機械振動によって本質的に影響を受けないままであり、
- 前記樹脂が前記第1の取付け面および前記第2の取付け面に接触している間、機械振動を前記第2の物体に作用させることにより、
少なくとも1つの別個の位置において前記樹脂の一部を架橋するように活性化させるのに対して、前記樹脂のさらに別の一部は前記機械振動によって本質的に影響を受けないままである、ステップと、
を備え、
機械振動を作用させる前記ステップにおいて、前記補助要素は前記第1の物体と前記第2の物体との間の前記複数の別個の位置に配置され、機械振動エネルギを吸収し、これにより、前記補助要素の付近において前記樹脂を加熱し、
樹脂の前記複数の別個の部分によって第2の物体が第1の物体に対して所定の位置に保持されている間に
前記樹脂の
前記複数の別個の位置以外部分が
固まることを可能にし、それによって樹脂の前記複数の別個の部分が
、前記樹脂の前記複数の別個の位置以外の部分が十分に固まるまで、前記第1の物体および前記第2の物体のアセンブリを予備的に安定化させ、
それによって
、前記樹脂が前記第2の物体を前記第1の物体に固定する、方法。
【請求項11】
前記第2の物体は窪められた部分を有し、機械振動を作用させるステップにおいて、振動工具が前記窪められた部分に接触している、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、機械工学および構造の分野に関し、特に、機械的構造、たとえば、自動車工学、航空機構造、鉄道車両構造、造船、マシン構造、建築工業の構造、おもちゃの構造などに関する。より特定的には、物体同士を互いに対して締結するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自動車産業、航空機産業および他の産業においては、鉄骨構造を使用しなくなってきており、代わりに、繊維複合材などの軽量材料、特に、炭素繊維強化ポリマーを使用する傾向がある。
【0003】
繊維複合材の部分は、繊維含有率が十分に高く平均的な繊維長を有するとともに繊維配向が適切であると想定すると、かなりの機械的強度を有するように製造され得るが、これにコネクタなど(ドエルなど)のさらに別の物体を機械的に締結することは困難な課題となっている。従来のリベット締め技術は、特に繊維複合材料にわずかに延性があるために、限られた範囲にしか適していない。また、このような接続は、さらに別の物体が取付けられることになっている位置に予め穴を空けておくことを必要とするので、特に、互いに接続されるいくつかの部分を繊維複合部分に取付けなければならない場合、位置決めの精度が問題になる可能性がある。接着接続は申し分なく機能し得るが、結合の強度が、最外層の強度およびその他の部分へのその取付け部の強度ほどには高くなり得ないという欠点もある。さらに、硬化可能な接着剤は、常に、架橋結合のために一定の硬化時間を必要とする。これは、工業製造の場合には製造時間を大幅に増やしてしまうこととなる。この問題を解決するために、熱硬化接着剤よりも速やかに硬化する傾向がある紫外線硬化接着剤を用いることが提案されてきた。しかしながら、これら接着剤は、硬化放射線を硬化性接着剤に到達させ得るために少なくとも部分的に透過的なコネクタを必要とする。加えて、グルーラインは、層の厚みおよびグルー分散の均一性のせいで、常に、感度に煩わされることとなる。
【0004】
また板金などの従来の材料を含む繊維複合材以外の材料も、軽量型構造体で用いられることがますます多くなっており、これに対応して機械的強度が低下している。したがって、たとえばボアなどによって必然的に材料が弱化されてしまう締結は、ますます回避されなければならない。
【0005】
UV硬化に加えて、先行技術は、誘導加熱によって接着剤の硬化を加速するアプローチを含む。しかしながら、この方法は、金属部分を伴う接続に限定されている。また、誘導加熱は比較的非特異的なものであり、さらには、制約があるために常に選択肢となるわけではない。
【0006】
したがって、第1の物体に対してさらに別の第2の物体(たとえば、コネクタ)を締結する方法を提供することは有利になるだろう。この方法により、先行技術の方法の欠点が克服されるとともに、特に、強固な信頼性のある機械的結合がもたらされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明の一局面に従うと、第1の物体に対して第2の物体を締結する方法が提供される
。当該方法は、
- 取付け面を含む第1の物体を設けるステップと、
- 第2の物体を設けるステップと、
- 樹脂を取付け面と第2の物体との間において流動可能にした状態で、第1の物体に対して相対的に第2の物体を配置するステップと(この場合、樹脂は、最初から流動可能であり得るかまたは少なくとも機械振動の作用によって流動可能であり得る。以下を参照)、
- 樹脂を第1の取付け面および第2の取付け面に接触させた状態で、特に、たとえば、振動工具によって第2の物体と第1の物体とを、互いに押当てながら、第2の物体もしくは第1の物体または第2の物体および第1の物体の両方に対して機械振動を作用させ、これにより、樹脂を架橋するように活性化させるステップと、
- 架橋の後、樹脂により第2の物体を第1の物体に固定するステップとを含む。
【0008】
この文脈においては、「樹脂」は、少なくともプロセスのうちの1つの段階中に流動可能となる任意の物質(概して、粘性液体)を表わしており、樹脂の分子間および/または樹脂の分子と他の物質との間に生成された共有結合によって永久的に固めることができる。たとえば、樹脂は、硬化させることによって高分子網目に不可逆的に変化させることができる流動状態の1つのモノマーまたは複数のモノマーまたはプレポリマーを含む組成物であってもよい。
【0009】
本発明に従った締結方法は、実現される結合剤が純粋な接着剤であり得るので、第1の物体および第2の物体を弱化させる必要がないという実質的な利点を特徴とする。また、特に、これらの物体のうちの1つが比較的薄い(たとえば、金属板である)場合、当該方法は、この物体に貫通開口部を設ける必要がないため、封止、電気的絶縁などのための対策を取る必要がないという利点を特徴とする。また、締結は予め規定された構造からは独立しており、これにより、かなり直接的な態様で公差の不整合(x-y位置調整)を補償することが可能となる。
【0010】
機械的振動が2倍の作用をもたらすことが発明者らによって発見された。第一に、これにより、樹脂を十分に分散させ、完全に湿らせて/浸透させて、さらに、適用可能であれば、取付け面上に任意の構造を埋込んでおくことにより、樹脂をこのような構造に比較的深くにまで貫通させる。
【0011】
第二に、機械振動エネルギは、主として、第1の物体と第2の物体との間の界面において吸収され、さらに樹脂において吸収され、これにより、硬化プロセスが促される。より明確には、樹脂は、主として界面においていくぶん効率的に硬化することが判明した。取付け面が相応の構造を備えている場合、固めるプロセスの後、樹脂は、材料を接続させること(すなわち接着結合)に加えて、アンダーカットを含み得る構造に浸透することによって押込み嵌合接続ももたらす。実際には、(たとえば、樹脂として市販されている2成分のエポキシ系接着剤を用いると)少なくとも1桁分だけ超音波振動なしの場合の速さと比べて硬化プロセスが加速されることが判明した。主な役割として、温度が約10°C高くなると、設定時間が50%だけ短くなる。実際には、短期間の超音波誘導による約50°Cまたは100°Cの温度の上昇が観察される可能性もある。いくつかの実施形態においては、第2の物体は、その取付け面において、単なる平面とは異なる構造を有する。むしろ、取付け面における表面は別個の波形を有していてもよい。特に、いくつかの実施形態においては、第2の物体は、アンダーカットを含む構造を有する。これにより、機械振動によって支援されて構造に浸透する樹脂材料は、再び凝固した後、押込み嵌合接続によって第2の物体に固定されることとなる。
【0012】
いくつかの実施形態においては、第1の物体は、マトリックス材料に埋込まれた繊維の
構造体を含む繊維複合部分を含む。実施形態の1グループにおいては、繊維複合部分は、特に、繊維の構造体のうち取付け面において露出された一部分を含むだろう。次いで、流動性樹脂材料を繊維の構造体に浸透させて、材料中に発生する可能性のある空隙を回避する。振動はまた、繊維自体をわずかに動かす可能性があり、これにより、全く浸透しない箇所が生じるのを防ぐ役割を果たす。露出された繊維の構造体は、当然ながら、アンダーカットを規定する構造体を含むこととなり、これにより、如何なる追加措置も必要とすることなく上述の押込み嵌合接続が実現される。
【0013】
特に、当該方法は、特にマトリックスの最も外側の部分を除去することによって、繊維の構造体の部分を露出させるステップを含んでもよい。
【0014】
加えて、または代替例として、第1の物体および/または第2の物体が繊維複合材とは異なる材料でできている実施形態においては、当該方法は、たとえば、機械的剥離、エッチングなどによって、この目的のために既知である方法によって、このような物体の取付け面に表面粗さをもたらすステップを含んでもよい。
【0015】
これらの実施形態において用いられる樹脂は、繊維複合部分のマトリックス材料と同じ化学組成物であってもよく、または、異なる組成物であってもよい。
【0016】
繊維複合部分はそれ自体が、第2の物体が締結されるべき第1の物体を構成していてもよく、または、第1の物体の一部を構成していてもよい。第1の物体は、繊維複合部分に接続された付加的部分を含んでいてもよい。
【0017】
繊維の構造体が取付け面において露出されているということは、構造体において、繊維を十分に埋込んだマトリックス材料が均一に分布されておらず、このため、樹脂材料が繊維同士の間および/または繊維の下において形成された構造体に流れ込み得ることを意味している。
【0018】
繊維の構造体の部分を取付け面において露出させるために、当該方法は、第2の物体を繊維複合部分に対して相対的に配置する前に、繊維の構造体の一部分を露出するようにマトリックス材料を取付け面から除去するステップを含み得る。
【0019】
マトリックス材料を除去するこのようなステップは如何なる好適な材料除去ステップをも含み得る。たとえば、このようなステップは取付け面をサンドブラストするステップを含み得る。付加的には、または代替的には、当該ステップは化学エッチングを含み得る。加えて、またはさらに別の代替例として、当該ステップは研削を含み得る。いずれの場合も、当該ステップは、マスクを設けて、表面のうち、繊維の構造体の露出が望まれる部分だけを材料除去するサブステップを含んでもよい。
【0020】
繊維複合部分の代替例として、他の材料も第1の物体に適した材料である。実施形態のいくつかのグループにおいては、このような材料は、特に、多孔性構造、または他の場合には、不均質な構造を含む。このような材料の一例として金属発泡体がある。加えて、または代替例として、第1の物体が含み得る取付け面における表面には不規則な凹凸がある可能性もある。この表面の不規則な凹凸は、削摩プロセス(機械的、照射によるもの、化学エッチングなど)、またはアディティブ(コーティング)プロセスにおいてもたらされる。
【0021】
露出された繊維の構造体に類似の例として、金属またはセラミックの第1の物体において、露出された構造体は化学的エッチによって露出されるかまたは幾何学的形状をエッチングすることによって生じる粒界であってもよい。
【0022】
要約すると、当該方法は、取付け面における表面の不規則な凹凸を第1の物体にもたらすステップを含んでもよく、この表面の不規則な凹凸は、繊維の構造体の一部分を露出させることによって、不均質な削摩によって、またはアディティブプロセスによって形成されてもよい。
【0023】
加えて、または代替例として、当該方法は、たとえば、OH基またはNH基の表面濃度を十分にするために、たとえば、アディティブプロセスまたは削摩プロセス(コーティング(たとえば、プライマー)、活性化など)によって、第1の物体および/または第2の物体の界面化学に影響を及ぼすステップを含み得る。
【0024】
以下に記載された多くの例においては、第1の物体は繊維複合部分である。しかしながら、この教示はまた、金属発泡体、金属板または他の金属部分(粗面の有無にかかわらず)、多孔性セラミックスもしくは無孔性セラミックス、多孔性プラスチックもしくは無孔性プラスチック、または、たとえば表面に不規則な凹凸がある如何なる物体をも含む、他の第1の物体にも適用される。
【0025】
本発明に従ったアプローチのさらなる利点は、第2の物体を第1の物体に接触させるよりも前のステップが、位置決めに関して如何なる精度も必要としないという点である。繊維の構造体の部分を露出するために取付け面におけるマトリックス材料を除去するステップ(以下を参照)または他の表面準備ステップは、取付けが行なわれるべきおおよその位置においてのみ行なわれるだけでよい。繊維複合部分に対する第2の物体の正確な位置決めが必要である場合、このような精度は、所望の位置において第2の部分を直接配置することによって達成することができる。これは、たとえば、予め穿孔されたボアが相対位置を規定するアプローチとは対照的である。
【0026】
このことは、以下の事実を考慮に入れると、特に有利である。すなわち、本発明に従ったアプローチによってもたらされる迅速な硬化により、当該方法が工業製造プロセスに容易に組込まれ得るという事実であって、この場合、対応する機器が、複数の物体を互いに対して相対的に配置するのに用いられるとともに、公差の問題が直接的に相殺され得る。
【0027】
第2の物体はコネクタであってもよく、これにより、さらに別の物体を第1の物体に締結するための役割を果たし得る。この目的のために、第2の物体は、ネジ部、ナット部、バヨネットの部分もしくはクリップコネクタの部分、または他の任意の接合構造などの接合構造を含んでもよい。代替的には、第2の物体は、第1の物体に締結されるべきフレームまたはハウジングまたは他の如何なる物体であってもよい。
【0028】
実施形態の或るグループにおいては、第2の物体は、適用可能である場合、繊維複合部分と同じ組成物または異なる組成物からなる第2の繊維複合材を含む。これらの実施形態のサブグループにおいては、第2の物体のうち強化繊維の構造体の一部分は、押圧するステップよりも前に露出され、これにより、樹脂は、繊維複合部分についてこの明細書中に記載されたのと同様の作用で、第2の物体の繊維の構造体に浸透する。
【0029】
他の実施形態においては、第2の物体は、第2の取付け面において、繊維複合材とは異なる材料を含む。これはたとえば金属であってもよく、粗面の有無に関わらず、ガラス、セラミック、ポリマーベースの材料などでできていてもよい。実施形態の或る特別のグループにおいては、第2の物体は粗面構造および/または多孔性表面構造を含む。
【0030】
いくつかの実施形態においては、第2の物体は、たとえば、第1の物体に対して相対的に第2の物体を配置するステップにおいて、取付け面同士の間に樹脂を挟んだ状態で、第
1の物体の取付け面(「第1の取付け面」)に当接するように配置された遠位側に対向する第2の取付け面を含む。
【0031】
いくつかの実施形態においては、このような第2の取付け面には、少なくとも1つの窪み(溝/チャネル、穴など)が設けられている。第2の取付け面が第1の取付け面に押当てられると、空隙が形成される。この空隙は余分な樹脂材料のための緩衝用容積としての役割を果たして、樹脂の流れを方向付け得る。特に、少なくとも1つの窪みは、たとえば、流れを有効に方向付ける径方向延在チャネルのチャネル系統を形成してもよい。より一般的には、第2の取付け面には、少なくとも1つの窪みまたは突起が設けられてもよく、結果として、界面において規定された深さの空間を残した巨視的構造が得られる。一例においては、巨視的構造は、規定された厚さの接着隙間をもたらす突起(スペーサ)のパターンによって構成されてもよい。この場合、振動により、分散および湿潤を改善させることに加えて、この隙間が確実に満たされることとなる。
【0032】
加えて、このような構造は表面を増大させる傾向があり、これにより、取付けが改善される。このような構造は、たとえば、接続をさらに強化するために押込み嵌合構造を構成してもよい。
【0033】
実施形態の或る特別なグループにおいては、第1の物体に面する側にある第2の物体は幾何学的に構造化された熱可塑性接触部分を含み得る。機械振動が作用すると、このような幾何学的構造がエネルギダイレクタとしての役割を果たしてもよく、熱可塑性材料の液化プロセスが局所的に始まってもよい。これにより、熱可塑性材料と樹脂との間に相互浸透網目構造が生成される。この網目構造は、一方では、取付け強度をさらに向上させ得るとともに、他方では、幾何学的な不規則な凹凸を可能な限り補償する。さらに付加的な熱は、硬化プロセスをさらに加速させる熱可塑性材料によって振動エネルギを吸収することによって生じる。最後に、相互浸透網目構造は、特に熱可塑性材料の延性により、樹脂を介して接着剤接続の脆さを補償することを可能にする耐衝撃中間層を形成する。
【0034】
この概念は、代替的には、または付加的には、第1の取付け面において熱可塑性材料を含む第1の物体に適用され得る。
【0035】
第2の取付け面の窪みに加えて、または第2の取付け面の窪みの代替例として、少なくとも1つの窪み(チャネル、溝、穴)を含む構造が第1の取付け面の上に設けられてもよい。第1の物体におけるこのような窪みは、(たとえば、繊維複合部分が製造される樹脂トランスファ成形プロセスにおいて)予め製造されていてもよく、および/または、除去するステップ、たとえば、マトリックス材料だけでなく繊維にも影響を及ぼす手段(サンドブラスト、エッチングなど)を用いた材料除去ステップ、によって製造されてもよい。
【0036】
第1の物体(または機械振動が第1の物体に作用する場合には第2の物体)は、押圧するステップの間、支持部、特に非振動支持部に当たるように配置されてもよい。これは、振動を両側から加えるための、すなわち、振動工具を第2の物体および第1の物体の両方に押し当てるためのオプションでもある。
【0037】
この文脈においては、「繊維複合部分」という語は、概して、繊維束の配置、繊維の織物構造または繊維の他の任意の構造、および繊維が埋込まれているマトリックス材料などの繊維の構造体を含む部分を指している。しばしば、このような構造体においては、繊維は、いわゆる「連続繊維」(すなわち、10mmを越える可能性のある長さを有する繊維)である。繊維はたとえば炭素繊維であってもよい。このような繊維複合材は、「炭素繊維複合材」または「炭素繊維強化ポリマー」または「炭素繊維強化プラスチック」と称されることが多く、単に「炭素」と称されることも多い。ガラス繊維、セラミック繊維また
はポリマー繊維などの炭素繊維以外の他の繊維が除外されるものではない。
【0038】
いくつかの実施形態の1グループにおいては、第2の物体は、アンカープレート(または「締結具ヘッド」)と当該アンカープレートに接着される締結要素とを有する締結具である。締結要素は、最先端技術の締結具の如何なる特性をも有し得るとともに、たとえば(外ねじおよび/または内ねじを備えた)ねじ切りされたボルト、ねじ切りされていないがたとえばグルーチャネルを備えたボルト、ピン、ナット、フック、アイレット、バヨネット結合のためのベースなどであり得る。このグループの実施形態における締結具は、「bighead」という商品名で販売されている締結具と本質的に同様に構成されていてもよく
、他の物体の表面に接着されるように意図されていてもよい。
【0039】
このグループの締結具のアンカープレートは、第2の取付け面について上述された任意の構造に加えてまたは任意の構造の代替例として、少なくとも1つの貫通開口部を有する。プロセス中に、樹脂の部分を貫通開口部に浸透させ、これにより、締結効果に寄与させることとなる。
【0040】
このグループの実施形態においては、アンカープレートには、第2の取付け面から突出した少なくとも1つのスペーサが設けられている。このようなスペーサは、第1の取付け面と第2の取付け面との間に最小距離を規定し、これにより、樹脂層の厚さを制御する。一方では、スペーサのサイズと樹脂組成物と取付けの要件(たとえば、熱拡張の不整合の補償)とは互いに適合され得る。
【0041】
スペーサは、特に、たとえば開口部を囲む鍔部を形成する開口部の付近に配置されてもよい。この実施形態においては、スペーサは、押圧力および振動の作用によって近位側に逆流してくる樹脂の量を制御し易くする付加的作用を有する。
【0042】
アセンブリに振動を結合するために用いられる振動工具は、アンカープレートの近位側対向面に直接押し当てられるように工具を結合するために第2の物体(締結具)に適合されてもよい。したがって、特に、振動が縦振動である実施形態を含むがこれら実施形態に限定されない多くの実施形態においては、振動工具は、アンカープレートの近位側対向面に押当てられるように適合されている。
【0043】
この目的のために、振動工具は、締結要素のための収容窪みを含んでもよく、アンカープレートと接触して力および振動を伝達してもよい。
【0044】
振動工具に対して相対的に第2の物体を案内するように締結要素と協働する案内構造となるように、振動工具の収容窪みまたは他の構造が備えられてもよい。このような案内構造は、第2の物体を振動工具に締結するための締結要素と協働する締結構造として構成されてもよい。代替的には、これは、たとえば、軸方向の相対運動に対して分離されつつ締結要素を横方向に案内する緩い案内構造であってもよい。
【0045】
起こり得る問題として樹脂の閉込めがあり得る。この樹脂は、特に機械振動が最初に樹脂の移動性を向上させるので、プロセスにおいて初期の間は比較的流動的であり得る。
【0046】
横方向への閉込めの第1のオプションは、第2の物体および第1の物体を互いに押当てて機械振動を作用させるステップ中に樹脂を閉込める外周閉込め部を第2の物体および/または第1の物体に設けることである。このような外周閉込め部は、たとえば(もしあれば)スペーサと同じまたは同様の延長部分からなる、たとえば第2の物体の遠位側に対向する外周の環状鍔部を含む。このような外周の環状鍔部は、代替的には、スペーサとして(のみ)の役割を果たし得る。また、樹脂の位置において樹脂側から遠ざかるように隆起
する表面形状を第2の物体および/または第1の物体に設けることもできる。すなわち、第2の物体が近位側に隆起し、および/または、第1の物体が遠位側に隆起している。これにより、樹脂のためのポケットが形成される。このような形状により、ポケットが横方向に閉じられるかまたはポケットが開くように、閉込めがなされ得る。これにより、樹脂がポケット外および/またはポケット内に横方向に流れるのをいくらか抑制されたままにすることができる。
【0047】
横方向の閉込めの第2のオプションは、振動工具に外周閉込め部を設けることである。このような外周閉込め部は、第2の物体の外周側において第1の取付け面に向かって突出る環状突起を含み得る。
【0048】
第3のオプションに従うと、樹脂を閉込めるために第2の物体(たとえば、適用可能であれば、アンカープレート)を少なくとも部分的に囲む別個の閉込め要素が用いられてもよい。
【0049】
これらオプションは任意に組合わされてもよい。
取付け面を一緒にまとめる前に樹脂を分配するステップは、分配工具を用いて、第1の取付け面上および/または第2の取付け面上に樹脂を分配するステップを含んでもよい。
【0050】
実施形態の1グループにおいては、当該方法は、第1の物体に対して相対的に第2の物体を配置する前にこれら物体のうちの1物体の表面のうち比較的広い部分に樹脂を施して、機械振動によって架橋するよう樹脂を活性化させるステップを含む。
【0051】
このグループは、第2の物体(たとえば、第1の物体でもよい)が平面かつ薄板状であるか、または、少なくとも平面の薄板状部分を有する実施形態に特に適している。
【0052】
比較的広い共通の表面を有する2つの物体が接着剤によって互いに接着されるべき場合、先行技術に従うと、取付け面同士の間に接着剤を介在させて第1の物体と第2の物体とを一緒にまとめた後の製造プロセスにおいては、接着剤が十分に固まるまでプロセスを待機させなければならなかった。代替的には、接着剤が十分に固まるまで、第1の物体と第2の物体との相対的位置を一時的に安定させるためにリベットが用いられた。リベット接続は、この文書の導入部において簡潔に説明された周知の利点を有する。
【0053】
上述の実施形態のグループに従うと、活性化は、別個の位置または複数の別個の位置のためにのみ選択的に行なわれるものであって、樹脂は、別個の位置とは異なる位置において影響を受けずに残っている。
【0054】
これにより、接着剤材料がたとえば待機時間または加熱ステップの後に十分に固まるまで、別個の位置における樹脂が第1の物体と第2の物体とのアセンブリを一時的に安定させ得る。これにより、実施形態の1グループは、リベットまたは同様の(ねじ締めなどの)接続の不利点を被ることなく一時的に安定化させる(アセンブリをさらに処理することができる)という利点をもたらす。
【0055】
このグループのいくつかの実施形態においては、この場合に起こり得る困難な課題は、第2の物体の剛性に応じて、たとえば、第2の物体の板面に沿って横方向に向かって第2の物体を介してそれほど多くの振動エネルギを消散させることなく、第2の物体を介して所望の箇所内に選択的に振動を結合することが困難になるかもしれないことであり得る。
【0056】
いくつかの実施形態のサブグループにおいては、第2の物体は、樹脂のうち、第2の物体に振動を結合する振動工具の真下にある部分に振動を選択的に結合するために局所的に
十分に柔軟な材料でできている。
【0057】
加えてまたは代替例として、第2の物体は、局所的な変形(たとえば、エネルギ方向付け特性を有するエンボス部分)を含む。たとえば、このような局所的な変形は、波形構造を含んでもよい。波形はエネルギダイレクタとしての役割を果たす。
【0058】
加えて、またはさらなる代替例として、第2の物体は、別個の位置(たとえば、溝)のまわりに(継手のような態様で機能する)振動分離構造を含んでもよい。
【0059】
上述の実現可能性と任意に組合わされ得るさらなる代替例として、補助要素が第1の物体と第2の物体との間の別個の位置に配置される。このような補助要素は、機械振動エネルギのための吸収体としての役割を果たし、これにより、目標とされる態様で周囲の樹脂材料を加熱する。補助要素は、この目的のためのエネルギダイレクタを含んでもよい。このような補助要素は熱可塑性材料を含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態においては、このような補助要素は熱可塑性エラストマーでできていてもよい。さらに、弾性係数は(架橋後)樹脂の相応の係数に調整されてもよい。次いで、機械的特性はせいぜい最小限に影響を受けるのみであるだろう。
【0061】
いくつかの実施形態においては、このような補助要素が樹脂と共に沈殿する可能性がある。たとえば、樹脂が相応の自動化工具によって樹脂ビードとして沈殿する場合、補助要素は工具によってビードと共に沈殿する可能性がある。
【0062】
いくつかの実施形態においては、補助要素は、たとえば、規則的パターンで広い表面上にわたって分散されたエネルギ方向付け構造を形成するメッシュなどの、たとえば可撓性のある平面構造であることによって、第1の物体と第2の物体との間の界面の広い部分にわたって延ばされるように形作られてもよい。この文脈における可撓性のある平面構造は実質的に力を入れることなく、かつ1片の織物、メッシュ、箔などの実質的なスプリングバック効果のない、変形可能な平面構造である。いくつかの実施形態においては、補助要素は、可撓性のある平面構造ではなく、堅い平面構造であってもよい。
【0063】
補助要素を延在させたいくつかの実施形態においては、振動によって急速硬化される接着剤接続の位置を正確に規定する必要がある場合であっても、補助要素の沈殿は、必ずしも正確に位置決めされている必要はない。なぜなら、このような正確な規定は、振動を与える工具の位置によってもたらされ得るからである。
【0064】
或る実現可能性によれば、補助要素の位置は、第1の物体または第2の物体の相応の構造(たとえば、第1の物体/第2の物体のうち、補助要素の対応する突起と協働する案内窪み(案内穴))によって規定されてもよい。
【0065】
補助要素がプロセス中に流動可能にされる熱可塑性材料を含む場合、その流動部分は、加熱作用に加えて、材料に流れをもたらす可能性があり、これにより、樹脂に対する撹拌機能を有することとなり、樹脂の締結作用に寄与する付加的構造をもたらし得る。
【0066】
吸収体として機能することに加えて、補助要素はまたスペーサの機能を有していてもよく、これにより、第1の物体と第2の物体との間の樹脂の厚さを規定する。
【0067】
いくつかの実施形態の1グループにおいては、第1の物体または第2の物体は少なくとも部分的に熱可塑性材料でできており、それらのうち片方(第2の物体または第1の物体)は、押圧力および機械振動を付与するステップ中に、第1の物体または第2の物体の熱
可塑性材料にそれぞれ貫入するように設けられた穿孔部分を有する。
【0068】
穿孔部分は、穿孔先端部を含んでもよく、任意には軸方向に対してアンダーカットを含んでいてもよい。
【0069】
プロセス中、穿孔部分は振動エネルギダイレクタとして機能し、振動エネルギの衝撃によって、熱可塑性材料を局所的に流動可能にする。これは、第一に、穿孔部分が第1の物体に貫入することを可能にする作用をもたらし、これにより、流動可能な熱可塑性材料部分が再凝固した後、(樹脂の作用に加えて)付加的な固定が実現される。また、第1の物体材料において起こる可能性のある分断が流動可能な熱可塑性材料によって平坦にされる(回復効果)。第2の作用として、吸収された機械振動エネルギが、穿孔部分と第1の物体との間の界面のまわりでアセンブリを局所的に加熱し、これにより、上述されたように、樹脂が付加的に局所的に活性化される。
【0070】
樹脂全体が硬化していなくても、上述の理由から穿孔部分は迅速かつ予備的な安定性をもたらす。このことは、次の製造ステップに移るためにアセンブリが十分な安定性を直ちに備える必要のある製造プロセスにおいては重要であり得る。
【0071】
いくつかの実施形態の別のグループにおいては、第2の物体および/または第1の物体は少なくとも部分的に熱可塑性材料でできているとともに、プロセス中に第1の物体または第2の物体と接触させられる先端または端縁を形成する突起などの少なくとも1つのエネルギ方向付け部を含む。振動および押圧力がアセンブリに結合されると、エネルギがエネルギ方向付け部の位置において局所的に吸収されることとなる。これにより、エネルギ方向付け部の熱可塑性材料を局所的に流動可能にして、変形をもたらすこととなる。突起においてエネルギが吸収されるせいで、樹脂は突起のまわりで付加的に局所的に活性化されることとなり、樹全体脂がまだ硬化していなくても、局所的に硬化された区域が形成されて、予備的に安定した箇所が確実にもたらされる。
【0072】
これらの実施形態においては、エネルギ方向付け部のまわりの流動可能な材料は、任意には、たとえば、(材料が対応して選択される場合に)それぞれの他の物体に溶接させて押込み嵌合接続などをもたらすことによって、および/または、たとえば、第1の物体と第2の物体との間における、互いに対抗して移動する際にかかる機械抵抗が高くなる距離を規定することによってプロセス制御に寄与することによって、プロセスおよび/または締結作用に寄与する機能を付加的に有していてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態においては、第2の物体および/または第1の物体は、接着剤に加えて、樹脂が押込み嵌合接続するように形作られる。この目的のために、第2の物体および/または第1の物体には、再凝固の後にアンダーカットが実現される態様で樹脂を流入させるための構造が設けられてもよい。このような実施形態のサブグループにおいては、第2の物体/第1の物体が比較的薄板状の部分を有する場合、このような構造は、この第2の物体/第1の物体に開口部を含んでもよい。この開口部を通って、樹脂の一部が漏れ出して、開口部の向こう側(すなわち、開口部を有する第2の物体部分の近位側および/または開口部を有する第1の物体部分の遠位側)にある空いた空間に流れ込み得る。これにより、樹脂の硬化後、ボタン状の押込み嵌合接続がもたらされる。
【0074】
振動を付与するための工具は振動を生成するための装置に結合されたソノトロードであってもよい。このような装置は、たとえば、振動を生成するために圧電変換器などの適切な手段を含む携帯型の電動装置であってもよい。
【0075】
機械振動は縦振動であってもよい。振動を付与するための工具は、表面部分に対して実
質的に垂直に振動してもよい(工具も縦方向に押圧される)。これは、たとえば、表面部分上にわたって工具を移動させるための工具に対する横方向の力を除外するものではない。
【0076】
他の実施形態においては、振動は横振動であり、すなわち、たとえば近位-遠位方向軸に対して主に垂直な角度での振動であり、このため、たとえば、第1および第2の取付け面に対して平行な振動である。この場合、振動エネルギおよび振幅は縦振動のパラメータと同様であり得る。
【0077】
横振動を含む実施形態のサブグループとして見なされ得る実施形態のさらなるグループにおいては、振動は回転振動であってもよく、すなわち、振動要素は、前後にねじれられる動きで振動する。
【0078】
多くの実施形態における振動工具は、振動が作用している間、第2の物体を第1の物体に対して押し当てるために用いられる。第1の物体に反力を加えるために、非振動支持部が用いられてもよい(すなわち、振動工具が第2の物体および第1の物体を非振動支持部に押当てる)。このような非振動支持部は、たとえば、作業台であってもよく、または、第1の物体などを保持するフレームによって構成されてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態の或るグループにおいては、制御箔がプロセスのために用いられる。このような制御箔(または予備の箔)は、非振動支持部と第1の物体との間に存在していてもよく、および/または工具と第2の物体との間(または、概して工具と、それが押し当てられる物体との間、および/もしくは、非振動支持部とこれに押し当てられる物体との間)に存在していてもよい。
【0080】
このような制御箔は、たとえば、プロセス中に適用される条件下では流動可能にはならないプラスチック(たとえば、ポリテトラフルオロエチレン)(polytetrafluoroethylene:PTFE)であってもよく、または紙であってもよい。
【0081】
箔は以下の実現可能な機能を有する。
- 力衝撃分布:特に第1の物体および/または第2の物体が薄板状である場合、これら物体は、結合された振動の周波数および波長とは概ね等しくない共振周波数および波長を持ったそれら自体の振動挙動を有することとなる。これにより、接触面全体ではなく何らかの接触点においてのみ結合がなされ、損失がもたらされることとなる。比較的柔らかい箔によってこのような不整合が相殺され(インピーダンス不整合が相殺され)、これにより、結合特性を向上させるだろう。
【0082】
- 熱流の防止:しばしば、適用可能なソノトロードおよび/または適用可能な非振動支持部(たとえば、作業台)は金属または他の優れた熱導体でできている。一方ではソノトロード/支持部間、および、他方では第2の物体/第1の物体間における密接な直接接触により、結果として、ソノトロード/支持部内に実質的な熱が流れ込むこととなる。結果としてプロセスの効率が低下する。制御箔は、熱の流れを劇的に低減させる断熱効果を有する。
【0083】
この場合の制御箔は、プロセス後に除去される補助要素として用いられる。この目的のために、制御箔は第2の物体/第1の物体に貼り付かない材料でできている。
【0084】
任意には、制御箔は、振動工具/非振動支持部のコーティングとして存在してもよい。
機械振動は、超音波振動、たとえば15kHzから200kHzの間、特に20kHzから60kHzの間の周波数の振動、であってもよい。第2の物体の(たとえば、特徴的
な横方向の寸法が約1cmである)例示的なサイズや、たとえば自動車産業(車体部分)のための複合部品の寸法に対しては、約100W~200Wの電力が十分であることが判明したが、加えられるこの電力は用途に応じて大きく異なる可能性もある。
【0085】
いずれの実施形態においても、押圧力の自動制御を含む工具による方法を実行するオプションが存在する。たとえば、装置は、或る最小の押圧力が加えられる場合にのみ振動をオンに切換えるように、および/または、或る最大の押圧力が達成されると直ちに振動をオフに切換えるように、構成され得る。特に、後者は、いくつかの車体部分などの、所望されない変形を回避しなければならない部分には有益であり得る。
【0086】
この目的のために、第1のオプションに従うと、加えられた圧力を測定するための圧電変換器の能力が用いられてもよい。第2のオプションに従うと、特別なメカニズムが装置内に存在していてもよい。たとえば、変換器を含むとともに工具(ソノトロード)が取付けられるユニットが、ケーシング内でばね力に対抗して摺動可能となるように搭載されてもよい。この装置は、ユニットが或る最小限の変位量だけ変位した場合にのみ、および/または、或る最大限の変位量を越えては変位しなかった場合にのみ、振動をオンに切替えることができように、構成されてもよい。これを実現するために、光バリア、摺動型電気接点、位置感度スイッチまたは他の手段などの当該技術において周知の手段が用いられてもよい。また、折畳み可能なスリーブまたは以下に記載されるタイプの同様の要素が、押圧力を制御するための接点またはスイッチなどを含み得るかまたは動作させ得る。
【0087】
振動周波数は、振動が作用する態様に影響を及ぼす可能性がある。周波数が低ければ低いほど波長がより長くなるだろう。完成すべき部分の寸法に波長を適合させることによって、オペレータはどの深さで振動の作用が最も強くなるか、かつ、エネルギが主に「近距離」レジーム、「遠距離」レジーム、または中距離レジームのいずれで吸収されるかに関して影響を及ぼし得る。
【0088】
本発明は、方法を実行するための部品のキットを含む。当該部品のキットは樹脂材料(正確には、たとえば、樹脂を得るために混合される2つの成分を含み得る樹脂材料のための原材料)を含む。本発明はさらに、第2の物体および振動付与工具(たとえば、ソノトロード)を含む。振動付与工具は、第2の物体のうち近位側対向内結合面に適合された遠位側外結合面を有する。キットはさらに、サンドブラスト装置などの材料除去装置を含み得る。
【0089】
図面の簡単な説明
以下において、本発明および実施形態を実行するための方法を、添付の図面を参照しながら説明する。図面は概略的である。図面においては、同じ参照番号は同じまたは同様の要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1a】第2の物体を繊維複合部分に取付ける方法のうちさまざまなステップ中における繊維複合部分の断面を示す図である。
【
図1b】第2の物体を繊維複合部分に取付ける方法のうちさまざまなステップ中における繊維複合部分の断面を示す図である。
【
図1c】第2の物体を繊維複合部分に取付ける方法のうちさまざまなステップ中における繊維複合部分の断面を示す図である。
【
図1d】第2の物体を繊維複合部分に取付ける方法のうちさまざまなステップ中における繊維複合部分の断面を示す図である。
【
図2】露出された箇所が準備された繊維複合部分を示す図である。
【
図3】第2の物体およびソノトロードを備えた繊維複合部分の代替的な構成を示す図である。
【
図4】さまざまな第2の物体を示す底面図および断面図である。
【
図5】さまざまな第2の物体を示す底面図および断面図である。
【
図6】さまざまな第2の物体を示す底面図および断面図である。
【
図7】複数の構成要素を含む第2の物体を備えた構成を示す図である。
【
図8】第2の物体を構成する締結具を示す図である。
【
図9】
図8に示される種類の締結具のアンカープレートを示す部分断面図である。
【
図16】第1の物体および第2の物体のアセンブリを示す図である。
【
図17】第1の物体と第2の物体との間に樹脂ビードが分配されている、第1の物体、第2の物体およびソノトロードのアセンブリを示す断面図である。
【
図18】第1の物体と第2の物体との間に樹脂ビードが分配されている、第1の物体、第2の物体およびソノトロードのアセンブリを示す断面図である。
【
図24】案内ニップルを備えた補助要素を示す図である。
【
図25】さらに別の第2の物体を示す底面図である。
【
図26】さらに別の第2の物体を示す部分的な底面図である。
【
図27】第1の物体と第2の物体との間に樹脂ビードが分配されている、第1の物体、第2の物体およびソノトロードのアセンブリを示す断面図である。
【
図28】第1の物体および第2の物体の配置の変形例を示す図である。
【
図29】第1の物体と第2の物体との間に樹脂ビードが分配されており補助要素を備えた、第1の物体、第2の物体およびソノトロードのアセンブリを示すさらなる断面図である。
【
図31】プロセス中における、制御箔をさらに備える配置を示す断面図である。
【
図32】第1の物体と第2の物体との間に樹脂が分配されている、第1の物体、第2の物体およびソノトロードのアセンブリを示すさらに別の断面図である。
【
図33】押込み嵌合接続がある配置の断面図である。
【
図34】
図33の配置の場合における第2の物体の部分的な上面図である。
【
図35】第1の物体と第2の物体との間に樹脂が分配されている、第1の物体、第2の物体およびソノトロードのアセンブリを示すさらに別の断面図である。
【
図36】第1の物体と第2の物体との間に樹脂が分配されている、第1の物体、第2の物体およびソノトロードのアセンブリを示すさらに別の断面図である。
【
図37】
図36に示されるプロセス後に結果として生じるアセンブリを示す図である。
【
図38】
図36のアセンブリの変形例をソノトロードなしで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
好ましい実施形態の説明
図1aは、硬化された樹脂のマトリックス12に埋込まれた繊維11の構造体を有する
繊維複合部分1の断面を示す。例示の目的で、図示されたすべての例においては、繊維複合部分は、たとえば、車体部分または航空機の壁などを有するような全体的にやや平坦な形状を有するものと想定されている。しかしながら、本発明の例はすべて、やや平坦ではなく他の形状を有する第1の物体にも適用可能である。
【0092】
図1aは、取付け面(近位側対向面、
図1aに示される向きでは上面)上の箇所からマトリックス材料を除去するステップを概略的に示す。サンドブラスト装置40は、マトリックス材料を除去する研磨粒子の噴出口42を形成しているが、そのエネルギは、繊維11を組織的に傷つけるには不十分である。
【0093】
図1aの構成においては、マスク41を用いて、表面のうちサンドブラストされるべきでない部分を覆う。サンドブラスト装置は、マスクを用いる代わりに、所望の位置においてのみマトリックス材料を除去するように意図されてもよい。
【0094】
図1bは、繊維の構造体の部分を露出するステップの後における繊維複合部分1を示す。露出された繊維11の露出表面部分13に沿って、マトリックス材料が実質的に少なくともいくらかの深さにまで除去される。実際には、この深さは、数10マイクロメートル以上、たとえば50マイクロメートルを越える深さであり得る。
【0095】
その後、樹脂部分3が露出表面部分13上に配置される(
図1c)。樹脂は、たとえば、樹脂の2成分混合物であってもよく、たとえばエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂であってもよい。樹脂部分は、任意には、露出表面部分13を十分に覆ってもよいが、これは必ずしも必要ではない。
【0096】
樹脂部分を繊維複合部分1上に分配することに加えて、またはその代替例として、樹脂が第2の物体の上に分配されてもよい。
【0097】
その後、
図1dに示されるように、繊維複合部分と第2の物体
2とが、(第2の物体2の遠位側対向面と繊維複合部分の近位側対向面とによって構成された)それぞれの取付け面同士の間に樹脂を介在させた状態で、互いに対して押し当てられる。
【0098】
図示された構成においては、第2の物体は、第2の取付け面において複数の窪み(すなわち、チャネル21)を含む。押圧力があるために、樹脂はこれらのチャネル21を少なくとも部分的に満たすこととなる。
【0099】
また(これは、第2の物体が窪みを含むかどうかとは無関係にオプションであるが)、第2の物体2は繊維強化複合材でできており、繊維24は、樹脂と接触するであろう位置において露出されている。
【0100】
押圧するステップにおいて、ソノトロード6は、第2の物体2を繊維複合部分1に押当てる。この後者の繊維複合部分1は非振動支持部(
図1dには図示せず)に寄り掛かっている。同時に、機械振動(特に超音波振動)が第2の物体に結合される。振動の作用によって、樹脂を繊維複合部分の露出された繊維と、適用可能であれば第2の物体とに有効に浸透させる。同時に、吸収された機械振動エネルギが、樹脂を、繊維複合部分と第2の物体との間の界面における箇所において局所的に加熱させることとなる。これにより、これらの位置においては、硬化プロセスが実質的に加速される。これにより、配置するステップと、接続を機械的に安定させるために十分に硬化させるステップと間のタイムスパンが、たとえば、数分(振動なし)から数秒(振動あり)にまで実質的に減じられる。これは、樹脂のうち取付け位置の傍における横方向にある潜在的に余分な部分には影響を与えることがないので、プロセス後に、このような余分な部分は容易に除去され得る。
【0101】
ソノトロード6は、第2の物体の案内窪み26と協働する任意の案内突起65を含む。このような協働する案内部はすべての実施形態の場合においてオプションとなる。
【0102】
図2は、
図1bに示される段階に対応する段階における、複数の別個の層12を有する繊維複合部分を示す。本発明に従ったプロセスは、取付け位置における繊維11の露出の深さが、最も近位側の層の厚さ以下となるように実行されてもよく、または、図示されるように、いくつかの層12の繊維が露出されるように実行されてもよい。
【0103】
図3は
図1dの構成と同様の構成を示す。以下に追加の特徴を示す。これらの特徴は、互いから独立しており、個々にまたは任意の組合せで実現されてもよい。
【0104】
- 第2の物体2は異種混合したものであり、プラスチック材料(たとえば、繊維強化複合材)の部分25を含み、異なる材料(たとえば金属)でできた部分26をさらに含む。(
図3に示されていないさらなる代替例として)第2の物体は、同種のものであってもよく、または異種混合したものであってもよく、たとえば、(アルミニウム、鋼、圧力ダイカストマグネシウムからなる)金属であってもよく、または、熱可塑性材料、たとえば、射出成型材料またはセラミック材料または他の任意の好適な材料またはこれらの組合せでできていてもよい。
【0105】
- コネクタである第2の物体2は、さらに別の物体を第2の物体に(これにより繊維複合部分1に)締結するための締結構造を含む。具体化するために、図示された実施形態においては、締結構造はナット部分の内ねじによって構成されている。図示された実施形態におけるナット部分は異なる材料からなる部分26を構成している。より概略的には、異種の物体における締結構造は、これら部分のうちのいずれか1つによってまたは組合せによって形成されてもよい。締結構造はまた同種の第2の物体に存在していてもよい。
【0106】
- 第2の物体2は、太い厚さの(中心)部分とより薄い厚さの(
図3においては外周)部分とを有する。これは、(たとえば締結構造のために)一定の深さが必要であるが、全体寸法が最小限にされるべきである場合には、有利であり得る。より薄い厚さの部分があるために、取付け位置のフットプリントは所与の第2の物体の体積に比べてより大きくなる可能性がある。ソノトロード6の形状は第2の物体2の形状に適合されている。特に、図示された構成においては、ソノトロードは中心の窪みおよび外周外結合面を含む。これにより、外結合面だけが、プロセス中に第2の物体に接触することとなる。
【0107】
- チャネル21は、分配された材料の量が正確に選択されていなくても、樹脂材料の材料流れが制御されるように、放射状のチャネルとなっている。
【0108】
図4は、チャネル21が放射状に延びている第2の物体(コネクタ)の例を示す。さらに別の近位-遠位方向チャネル28は、第2の取付け面に限定されず、取付け面から近位側に延びて、貫通する縦方向ボアを構成する。これは、第2の物体を位置決めした後に、樹脂流れを均等にするかまたは樹脂をさらに分配するために用いられてもよい。
【0109】
近位-遠位方向チャネル28と第2の物体(コネクタ)の遠位面のチャネルとは互いから独立している。すなわち、近位-遠位方向チャネル28は、いずれの第2の物体も遠位面にチャネルを備える必要がなく、逆の場合もまた同様である。
【0110】
図5に示される変形例においては、チャネル21は放射状ではなく円周形である。
図25の変形例においては、円周方向チャネル21は放射状の接続121によって接続されており、これにより、せん断流が可能となり、樹脂が空洞形成作用を受けることが、
図5に示されているような非接続の円周方向チャネルを備えた構成と比べて、少なくなっている。
【0111】
図6の実施形態においては、パターンに配置された止まり穴29によって窪みが形成されている。
【0112】
さらに別の代替例として、放射状のチャネルと円周方向チャネルとを組合わせてもよく、結果として、突起のパターン(こぶ状および/または脚状の構造体)が得られる。より概略的には、いずれかの形状の(たとえば等しい厚さを有するスペーサとして作用する)このような突起の配置は、それらの高さによって、樹脂層の最小限の全体厚さを規定し得る。この最小限の厚さは、0.05mmから1mmの間、たとえば0.1mmから0.5mmの間になるように選択されてもよい。
【0113】
概して、第1の物体/第2の物体の形状とは無関係に、かつ、第1の物体が繊維複合材を含むかどうかとは無関係に、上述の構造体に加えてまたはその代替例として、以下のアプローチが選択されてもよい。
【0114】
- 第2の物体および/または第1の物体は、それぞれの取付け面に沿って熱可塑性材料を含む。
【0115】
- 樹脂は、樹脂に加えて熱可塑性粒子(特に樹脂に混合された熱可塑性粉末)を含む調合物の原料として加えられる。これにより、粒径は、最初に結合隙間の厚さを規定することとなる。さらに、硬化プロセスを加速することに加えて、機械振動が熱可塑性粒子を流動可能にし得るとともに、取付け面に沿ったそれぞれの熱可塑性材料に溶接されるようにし得る。また(上述のアプローチと同様に)、構造体に浸透する網目構造が生成され、結果として、耐衝撃性があり強固に固着する中間層が得られる。
【0116】
図7は、複数の取付け位置において第2の物体を同時にまたは連続的に取付ける原理を示す。たとえば、第2の物体は複数の取付け部分を有していてもよく、その互いに対する空間的関係が正確に規定されている。先行技術の(固着させる以外の)アプローチにおいては、これにより、取付け位置に対応する位置において繊維複合部分に極めて正確に孔を空けることが必要となった。本発明に従ったアプローチのために、取付けが行なわれるおおよその箇所においてのみ露出表面部分13を設けていれば十分である。次いで、取付け位置は、同時に(または交互に、またはサブグループにおいては、上述の態様で)取付けられる。
【0117】
図7の実施形態においては、第2の物体2は、繊維複合部分1に対して主部分2.10を締結する複数の第2の物体のアンカー部分2.1、2.2、2.3を含む。図示された実施形態においては、アンカー部分は、たとえばクリップ接続によって主部分2.10に可逆的に取付けられている。主部分2.10を締結するために、本体の接続位置のパターンに適合させるようにアンカー部分を(従来のドエルの場合と同様に)正確に位置決めするのではなく、第2の物体2を、アンカー部分が取付けられた状態で複合材部分1に対して相対的に配置してもよい。その後、締結プロセスが実行されてもよく、主部分が後続の製造ステップを経験しないことが望まれる場合には、必要に応じて、主部分2.10がたとえば可逆的に除去されてもよい。
【0118】
図8は、アンカープレート31(または「締結具ヘッド」)およびそれに接着される締結要素32を有する締結具である第2の物体2を示す。
図9は
図8のアンカープレート31の部分的な断面を示す。締結要素は、(図示されるような)ねじ切りされたボルト、ねじなしボルト、ピン、ナット、フック、アイレット、バヨネット結合ためのベースなどの
最先端技術の締結具についての任意の特性を有し得る。締結具は、この場合、「bighead
」という商品名で販売されている締結具と本質的に同様に構成されていてもよい。
【0119】
本発明に従った方法の実施形態は、特に、接着剤樹脂によっていずれかの物体(ポリマーマトリクスに埋込まれた繊維の構造体を含む物体を含むがこれに限定されない)にこの種の締結具を接着するために用いられてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態の第1のグループにおいては、締結具は、たとえば複数の貫通開口部33を備えた本質的に平面であるアンカープレート31を備えた先行技術の締結具と同様に構成される。
【0121】
いくつかの実施形態のさらなるグループにおいては、締結具は、プロセスに適合された構造体を有する。特に、アンカープレート31は、アンカープレートの遠位側の平面から遠位側に突出る遠位側スペーサ要素35を備えていてもよい。このようなスペーサ要素35は、第1の物体の表面とアンカープレートの遠位面との間の最小距離を規定し得る。これにより、プロセス後に第1の物体と第2の物体との間に、確実に、一定の最小厚さの樹脂層が残されることとなる。
【0122】
スペーサ要素に加えて、またはスペーサ要素の代替例として、アンカープレート31の遠位側対向面は、
図3~
図6または
図1dを参照して説明されたような構造を含んでもよい。
【0123】
いくつかの実施形態においては、機械振動を受けている間に一定の最小厚さの樹脂部分が持続することを確実にする構造は、本発明に従ったアプローチを考慮すると特別な重要性を有する可能性もある。これは、接着剤としての樹脂の従来の用途に比べて、接着剤樹脂の流動性が機械振動によって劇的に高まる可能性があるからである。
【0124】
図示された構成においては、スペーサ要素35は開口部33を囲む鍔状の突起である。しかしながら、アンカープレートの遠位面にわたって分散された別個のスペーサのパターンを含むか、または、アンカープレートの外周に沿って延在し、そこから遠位側に突出ることによって樹脂を閉込める単一の外周鍔部を含む、スペーサ要素35の他の構成も実現可能であり得る。
【0125】
図26は、連続的な鍔部の代わりに、開口部33を囲む別個のスペーサ要素35のオプションを示している。
【0126】
第2の物体がアンカープレートと締結要素とを備えた締結具であるとともに、締結要素がアンカープレートから近位側に突出る部分を有しているいくつかの実施形態においては、機械振動を第2の物体に結合するために用いられる工具が特別に適合され得る。
【0127】
図10は第1の実現可能性を概略的に示す。ソノトロードは、遠位側外結合面において口部を有する収容窪み61を有する。この場合、締結要素32は、遠位側外結合面がアンカープレートに押し当てられるとそこに収容される。これにより、工具(ソノトロード)および第2の物体は、工具がアンカープレートの近位側対向面に直接押し当てられるように互いに対して適合される。
【0128】
工具は、第2の物体が工具に対して相対的に案内されるように、内側に向く案内突起62などの案内構造を備えていてもよい。このような案内構造は、
図10に示される実施形態の概略的に示された案内突起62の場合と同様に、特に締結要素を係合し得る。
【0129】
いくつかの実施形態においては、案内構造は、第2の物体2をソノトロードに一時的に締結するように締結要素と協働する締結構造として構成されてもよい。この実現可能性は
図11に概略的に示されている。
図11の例においては、第2の物体/締結具は、アンカープレートに固定された(たとえば、溶接された)ナット36を有する。このナットは締結構造として機能する。工具6は、ナット36の内ねじに適合されたねじ切り突起65を含む。これにより、プロセスのために、締結具を工具にねじ留めすることができる。
【0130】
同様の構成が他の締結要素に対しても実現可能であり、たとえば、締結具のねじ切りされた棒材と協働するための内ねじを備えた窪みがある。
【0131】
図12は、取付け面上における、第1の物体が第2の物体と接触する位置(取付け位置)に樹脂を閉込める場合に起こる可能性のある問題を扱っている。
【0132】
第2の物体に閉込め部(たとえば、外周鍔部)を設けることについての第1の実現可能性が上述されてきた。
【0133】
図27は、この概念の変形例を示す。第1の物体1および/または第2の物体2は、樹脂3側に向かう窪み131(ここでは外側に向かう隆起である)を有する。これにより、樹脂のためにポケット132が形成される。このようなポケットは、横方向に向かって閉じられてもよく、または、
図27に示されるように、横方向に向かって開いていてもよく、これにより、樹脂3の一定の横方向への流れが依然として残される。
【0134】
図27に例示された実施形態においては、第1の物体および第2の物体はともに金属板として示されている。ここでは、それぞれの窪み131は、樹脂側から離れるように、すなわち、第1の物体に対して遠位側に向かうとともに第2の物体に対して近位側に向かう隆起として形成されている。当然ながら、第1の物体/第2の物体の特性に応じて、たとえばダイカスト、成形などによって、例示された種類のポケットを形成する他の方法も存在する。
【0135】
図28は、第1の物体1および第2の物体2の各々がポケットを形成するための窪み131を有している場合に、窪みを任意には互いに対して横方向にずらず/移動させることができ、これにより、空洞形成作用を減らすことができるという原理を極めて概略的に示している。
【0136】
第2の実現可能性を
図12に示す。工具6は、遠位側に突出ることにより樹脂3を閉込める外周鍔部66を有する。このような鍔部の寸法は、適用可能な条件下で、たとえば上述の種類のスペーサ要素を考慮に入れて、鍔部66が、仮に存在するのであれば、プロセス中に第1の物体の表面と直接物理的に接触しないように選択される。
【0137】
第3の実現可能性は、たとえば
図13に例示されるような別個の閉込め要素53である。このような別個の閉込め要素は、たとえば、工具6を取囲んでいる短い管要素であり得るが工具6から震動によって分離されてもよい。このような別個の閉込め要素は、樹脂3を分配する前またはその後に、取付け位置を囲むように位置決めされてもよく、たとえば、第1の物体1の近位側対向面に当接していてもよい。
【0138】
3つの実現可能性は、互いから独立して適用されてもよく、または如何なる副次的組合せで組合わされてもよい。
【0139】
いくつかの実施形態においては、第2の物体は、たとえば、アンカープレート31の貫通穴33としての貫通穴を有する。これらの実施形態においては、樹脂材料は貫通穴を通
って近位側に向かって流れ得る。これは、押込み嵌合の作用を引起こすことによって、取付け特性に寄与する作用をもたらす可能性がある。この場合、第2の物体は、後者の硬化後、樹脂材料に部分的に埋込まれている。
【0140】
第2の物体が貫通穴を有している実施形態においては、プロセス後に樹脂材料が工具の表面に貼付くのを防ぐための対策が取られる。
【0141】
第1のこのような対策は、工具の遠位側対向外結合面に、たとえば、対応する抗接着性コーティングを備えることによってこのような貼付きを妨げる特性を持たせることである。
【0142】
第2のオプションの対策は、
図13に極めて概略的に示されている。工具は、貫通穴の位置に対応する位置に窪み67を有してもよい。このオプションは
図13に示される他の特徴とは無関係であり、特に、閉込め要素53とは無関係に適用可能である。
【0143】
図14は、上述の実施形態とは異なり、振動が縦振動ではなく横振動である構成の例を示す。横振動のために
図14のソノトロード6が搭載される。このソノトロード6は、締結構造32を収容するように構成された収容開口部61を含む。特に、
図14においては、収容開口部は、ねじ切りされた棒材である締結構造のねじに適合された内ねじを有するものとして示されている。この場合、締結具はたとえば
図8に示されるようなものである。ソノトロード6はリング状のスカート68を有する。このリング状のスカート68は、プロセス中にアンカープレート31の外周部に押当てられて、これにより、押圧力と機械振動とを収容開口部と共にアンカープレート31に結合する。対称性があるために、
図14に示されるソノトロード6は、アンカープレートに押当てられている遠位側のリング状のスカート68に加えて、近位側のリング状のスカート68を有する。このために、2つのアセンブリのために並行してプロセスを行なうことが可能であるだろう。この場合、ソノトロードは、両側から差し込まれたそれぞれの第2の物体に押当てられる2つの第1の物体同士の間でクランプされている。さらに2つの結合位置が、
図14における図の平面に対して平行なソノトロードの両側に存在していてもよい。
【0144】
たとえば、「ウェッジリード(wedge-reed)」状の構成における横振動に適した他のソノトロード6が
図15に示されている。ソノトロードは、締結構造(たとえば、ねじ切りされた棒材)を収容するための収容開口部61を含む。
図11および
図14の実施形態と同様に、収容開口部は、締結構造への結合用に任意に搭載されてもよい。ソノトロードは、
図15に概略的に示されるように、横方向から作用してソノトロードの屈曲振動を引起こすカプラによって、たとえば、ソノトロードに結合される振動による遠位端部分の横振動のために装着および搭載される。
【0145】
図示される実施形態におけるソノトロードは、リング状のスカートの代わりに、アンカープレートの横部分に振動を結合するための複数の翼部69を含む。
図14におけるような分離スカートを備えた、または他の結合面を備えたソノトロードには容易に適合され得るだろう。
【0146】
図14および
図15を参照して説明された横振動の概念が、振動工具(ソノトロード)と対応する第2の物体との間において適切な結合手段を用いて、
図14に示される締結具以外に、この文脈において記載された他の第2の物体/コネクタおよび他の締結概念にも転換できることに留意されることが重要である。
【0147】
図16は、本発明の実施形態の実現可能な適用例を極めて概略的に示す。第1の物体1および第2の物体は、接着接続によって互いに接着されることとなっており、第1の物体
および第2の物体はともに比較的大型である。製造プロセスにおいては、さらに他の製造ステップのために結合が十分に強固になるまでのこれら物体間の接着剤の硬化が著しい遅延を引起こす可能性がある。したがって、本発明の実施形態に従ったアプローチは、複数の別個の箇所81においてこの明細書中に記載された締結方法を用いて、これらの箇所において樹脂を活性化させることである。これにより、急速プロセスにおいて接着を十分に安定させる。第1の物体と第2の物体とのアセンブリがさらなる処理ステップを経ている間、別個の箇所81間における樹脂部分が、その後、徐々に固まり得る。
【0148】
図17は、第1の物体1と、第2の物体2と、それらの間にある樹脂部分3との配置を示している。第2の物体2や、
図17と同様に、第1の物体1も、比較的薄板状の物体(たとえば、金属板)である。第1の物体および第2の物体はともに、比較的大きい面内(x-y)延在部を有するものと想定されている。この場合、樹脂部分は、物体のうち少なくとも1つの表面上に広範囲に施されるか、または、たとえば対応するロボットによる、延ばされた接着剤ビードである。
図16に関連付けて例示されたように、樹脂の表面は、接着剤によって覆われている区域全体にわたって広範囲に機械振動を与えるには広すぎる可能性があり、硬化が別個の箇所においてのみ起こる可能性がある。接着剤の残りの部分は、その後、はるかに遅い速度で固まり得、および/または、加熱によって硬化され得る。
【0149】
この場合に起こり得る困難な課題は、膜(金属板)の剛性に応じて、横方向への遠ざかる流れによりそれほど多くの振動エネルギを放散させることなく、振動を第2の物体を介して所望の箇所に選択的に結合することが困難になるおそれがある点であり得る。
【0150】
- いくつかの実施形態においては、第2の物体は、樹脂のうち第2の物体に振動を結合するソノトロードの真下にある部分に振動を選択的に結合するのに局所的に十分に柔軟な材料(たとえば、膜状の薄板材料)でできている。
【0151】
- 他の実施形態においては、第2の物体は、局所的な変形(たとえば、エネルギ方向付け特性を有するエンボス部分)を含む。
【0152】
図17においては、エンボス部分が局所的な窪み/ビード91を形成する。
図17の断面に対して垂直な面に沿った断面における
図17の構成を示している
図18に示されるように、窪みは底部において波形を形成している。これにより、複数の作用が実現され得る。
【0153】
- 全体としての窪みおよび特に波形は、エネルギ方向付け特性を有する端縁などの顕著な構造体をもたらす。これらの構造体において振動エネルギが大幅に吸収される。結果として、
図18における領域95によって示されるように、硬化プロセスがこれらの構造体のまわりで始まる。
【0154】
- 構造体は振動挙動に影響を及ぼし、窪み91内の領域を窪み91のまわりの領域からいくらか分離させ得る。
【0155】
- 構造体を備えた窪みは、樹脂が依然として流動可能である状態で第1の物体と第2の物体とが互いに押し当てられることによりプロセス後に接着部分の厚さを規定することによって、内部の距離保持器としての役割を果たす。
【0156】
第2の物体2を断面図(上方パネル)および上面図(下方パネル)で示す
図19は、(
図18と同様に、付加的な構造体を任意に備え得る)窪みを備えた構造体の変形例を示す。この変形例においては、窪められた領域はエンボス溝97によって囲まれている。この
エンボス溝97は、主に当該溝によって囲まれている部分を振動させることができるようにするための継手状の構造としての役割を果たす。
【0157】
上述の
図27および
図28の実施形態は、実施形態のさらに別の例であって、第2の物体を介して所望の箇所内に選択的に振動を結合することを含んでおり、
図17~
図19の実施形態と同様に、横方向への遠ざかる流れによってそれほど多くの振動エネルギを放散させることなはないが、但し、接着剤が横方向にずらされることなく第2の物体および/または第1の物体の外向きの隆起のせいで適所に保持されるという相違点がある。
【0158】
所望の箇所に選択的に振動エネルギを結合する際の問題に対するさらに別の実現可能な解決策が
図20に示される。第1の物体1と第2の物体2との間に補助要素101が位置決めされている。補助要素は距離保持器としての役割を果たしており、これにより、樹脂部分3の厚さを規定する。補助要素は、機械振動エネルギによって液化可能な熱可塑性材料を含む。第2の物体2および第1の物体1が互いに対して押当てられている間に機械振動エネルギがたとえば補助要素101の位置において第2の物体に局所的に付与されると、補助要素の熱可塑性材料が、特に外部摩擦および/または内部摩擦のせいで振動エネルギを吸収し、これにより局所的に加熱される。結果として、熱が樹脂材料3を囲むように伝達される。
【0159】
いくつかの実施形態においては、
図20におけるように、補助要素101は、たとえば、隆起部、先端部または他の突起であるエネルギダイレクタ102、103を有する。
図20は、図示された実施形態における振動が第2の物体に結合され得るものであって第1の物体に直接結合され得るものではないことから生じる非対称性を補償するために、第2の物体との界面における第2のエネルギダイレクタ103よりも目立って顕著にされた第1の物体1との界面における第1のエネルギダイレクタ102を示す。
【0160】
図20は、エネルギダイレクタの周りであって樹脂材料の活性化が優位である領域を示す。
【0161】
図21~
図23は、さまざまな補助要素の上面図を示しており、これにより、実現可能な補助要素の形状を例示している。概して、いくつかの実施形態においては、外側面がより大きく、そのために、樹脂に対する界面がより大きくなるように、補助要素が単なる円盤とは異なる形状を有してれば、有利であり得る。
【0162】
断面を示す
図24はまた、第1の物体に対する補助要素の正確な位置を規定するために、第1の物体1の案内穴111と協働する案内ニップル112を補助要素101に設けるオプションを示している。
【0163】
熱可塑性材料に加えて、または熱可塑性材料の代替例として、補助要素はまた他の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、たとえば、補助要素はエラストマー材料を含んでもよい。エラストマー材料は通常熱可塑性ではないが、振動エネルギを吸収し、そのため、内部摩擦によって加熱される。
【0164】
図29は、メッシュ(たとえば、エラストマーメッシュ)の形状の補助要素101を示す。このようなメッシュは、配置するのに如何なる精度も必要とすることなく、プロセスのために第1の物体と第2の物体との間に配置することができるという利点を有する。たとえば、補助要素101は、たとえば、対応するノズルからの接着ビードの塗布直前または塗布直後に、すなわち同様のシステムによって、グルーラインに沿ってストリップとして配置されてもよい。
【0165】
メッシュは、自由体積(すなわち、筋141間に残っている体積)(
図30を参照)が実質的な体積となるとともにたとえば体積全体の少なくとも70%または少なくとも80%に対応するように、選択されてもよい。
【0166】
樹脂3は、たとえば分配工具によって、大きな表面にわたって分配されてもよく、または、
図29に示されるように、第1の物体および/または第2の物体の形状に適合された所望の位置において選択的に分配されてもよい。樹脂が選択的に配置される場合、樹脂は、メッシュ上にわたって配置されてもよく、または筋141間の空間142内にのみ選択的に配置されてもよい。
【0167】
図29の実施形態は、さらに、
図27および
図28を参照して記載された機能および/または
図17~
図19を参照して記載された機能(分離および/または規定された厚さ)を有する、第1の物体および/または第2の物体(
図29における第2の物体)の(任意の)窪み131を有する。
【0168】
図31は、制御箔153および155において用いられる原理を示す。このような箔153および155は、振動工具(ソノトロード6)と第2の物体2との間に、またはプロセスのためにアセンブリが配置されている非振動支持部151と第1の物体1との間に、またはこれら両方の間に、配置されてもよい。
【0169】
図31は、ソノトロード6と第2の物体との間における第1の制御箔153と、非振動支持部151と第1の物体1との間における第2制御箔155とをともに示している。
【0170】
このような制御箔は、プロセス中に適用される条件下で流動可能とはならないプラスチックを含む可能性がある。このような箔材料の一例としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がある。さらに適切な材料は紙である。
【0171】
図31に示される種類の制御箔は、特に硬質の非振動支持部があれば、実験中に効率性を実質的に高めるものとして示された。
【0172】
第1の制御箔153および/または第2の制御箔155の代わりに、ソノトロード6および/または支持部151のコーティングがそれぞれ用いられてもよい。
【0173】
図32は、少なくとも部分的に熱可塑性である第1の物体1と、プロセス中に第1の物体に貫入させるように設けられた遠位側の穿孔部分161を含む第2の物体2との配置を示す。
【0174】
いくつかの実施形態においては、
図32の実施形態と同様に、少なくとも1つの遠位側の穿孔部分161は、アンカープレート31または他の遠位側に向く停止面から遠位方向に突出している。
【0175】
遠位側の穿孔部分は、たとえば、アンダーカットの有無に関わらず先細の先端部を備えてもよい(
図32は軸方向に対するアンダーカットを示す)。
【0176】
プロセス中に穿孔部分が振動エネルギダイレクタとして作用して、穿孔部分によって貫入された熱可塑性材料を局所的に液化させる。振動エネルギが局所的に吸収されることにより、穿孔部分と第1の物体との間の界面のまわりのアセンブリが局所的に加熱されることとなる。これにより、上述のように、樹脂が付加的に局所的に活性化される。
【0177】
上述の理由から、穿孔部分は、樹脂全体が硬化していなくても、迅速かつ予備的な安定
性をもたらす。これは、次の製造ステップに移るために、アセンブリが十分な安定性を直ちに有する必要のある製造プロセスにおいては重要であり得る。
【0178】
少なくとも部分的に熱可塑性である第1の物体と、第1の物体が熱可塑性である位置において穿孔部分を有する第2の物体との代替例として、この概念は以下の代替的な構成において用いられてもよい。
【0179】
- (これらの実施形態において振動が結合されている)第2の物体は、少なくとも部分的に熱可塑性であり、第1の物体は、第2の物体が熱可塑性である位置において穿孔部分を含む。
【0180】
- 第1の物体または第2の物体は、多孔性であるか、または静水圧下で孔を発生させることができ、第2の物体または第1の物体はそれぞれ熱可塑性材料でできた穿孔部分を含む。機械振動エネルギがあるために、熱可塑性材料は液化して、他のそれぞれの物体の孔に浸透し、これにより、再凝固の後、押込み嵌合接続が実現される。また、これにより、直ちに安定した接続がもたらされて予備的な安定性が得られる。
【0181】
図33は、接着剤に加えて押込み嵌合接続のために樹脂3を用いる原理を示す。この目的のために、第2の物体および/または第1の物体には、再凝固の後にアンダーカットが実現されるように樹脂を流入させるための構造が設けられている。
図33の実施形態においては、この構造は、第2の物体2のうち適切に配置された貫通開口部33によって構成される。この貫通開口部33を通って、樹脂が近位方向に逆流するように押込まれて、凝固の後にボタン状の部分171を形成する。
【0182】
図34に示されるように、このような開口部33のパターンが存在してもよい。第2の物体2に加えて、または第2の物体2の代替例として、このような開口部のうち少なくとも1つが第1の物体1に存在してもよい。
【0183】
図35は、第2の物体の近位側にあるグルー貯留部と、オプションの圧力解放穴173とを備えたソノトロードを示す。開口部が第1の物体に存在している場合、非振動支持部(
図35に図示せず)は、グルー貯留部およびオプションの圧力解放穴を備えた対応する構造を備えてもよい。
【0184】
特別な実施形態においては、
図33~
図35を参照して説明された逆流についての概念は、任意には、
図11および
図12を参照して説明された概念に従った構成に適用され得る。
【0185】
図36は、グルー接着箇所において接続を迅速かつ予備的に安定させるように第2の物体2が形作られているアセンブリのさらなるオプションを示す。しかしながら、
図32の実施形態とは対照的に、第2の物体は第1の物体に貫入しない。
【0186】
図36における第2の物体は熱可塑性であって、複数の突起181は、たとえば、先端または端縁において遠位側において終端している。振動および押圧力が第2の物体2に結合されると、(金属または繊維強化複合材などの硬質材料であり得る)第1の物体を備えたこれらの突起の界面において、エネルギが吸収されて、突起181を局所的に溶融させることとなるだろう。結果として突起が変形し(
図37)、距離保持スペーサ構造182がもたらされ、さらに、第1の物体1に向かう第2の物体2のさらなる移動に対抗する機械抵抗が徐々に増加することとなる。また、突起においてエネルギが吸収されるせいで、樹脂3は突起のまわりでさらに局所的に活性化されて、局所的に硬化されたゾーン183が生じ、これにより、樹脂全体がまだ硬化していなくても、予備的に安定した箇所が確実
に得られる。
【0187】
図38は、
図36および
図37を参照して説明された原理を実現する実施形態においても、任意には
図33~
図35を参照して記載された機能を用いる場合には、貫通開口部33がオプションとなることを示している。
【0188】
加えて、または代替例として、穿孔部分161を第1の物体1に追加する、および/または、たとえば第2の物体が熱可塑性材料の区域を有する場合には第2の物体2に追加する、というオプションもある。
【0189】
図39は、先端または端縁を備えた第1の種類の突起181に加えて(
図39においては、突起は遠位端縁を備えた細長いものとして示されている)、第1の種類の突起が存在し得るほどまでには遠位側には延在しない平坦な距離保持突起185も示している。
図39においては、これらは、星形を有し、かつ表面上に別個に分散されるように図示されている。たとえば、第1の種類の別個の突起および/または細長い距離保持突起を備えた他の配置も可能である。要約すると、突起は以下のすべてを最適化するように分散されてもよい。
【0190】
- プロセス中に樹脂が直ちに活性化される位置の配置および分布(予備的安定点)。
- プロセス中における樹脂流れの制御。
【0191】
- プロセス中における均等な機械的支持および距離の規定。