(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】ロスバスタチンカルシウム製剤及びレーザー照射によるフィルムコーティング錠の印字方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/30 20060101AFI20230417BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230417BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20230417BHJP
A61K 9/44 20060101ALI20230417BHJP
A61P 3/06 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
A61K9/30
A61K47/02
A61K31/505
A61K9/44
A61P3/06
(21)【出願番号】P 2021145236
(22)【出願日】2021-09-07
(62)【分割の表示】P 2020032642の分割
【原出願日】2016-01-20
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2015008205
(32)【優先日】2015-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124822
【氏名又は名称】千草 新一
(72)【発明者】
【氏名】長本 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】牧野 良太
(72)【発明者】
【氏名】谷河 佑城
(72)【発明者】
【氏名】有冨 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英治
(72)【発明者】
【氏名】田代 康正
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-281564(JP,A)
【文献】特開2011-126906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0263475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光分解性の有効成分を含有する素錠に、二重のフィルムコーティング
層を
施してなるフィルムコーティング錠であって、内層のフィルムコーティング
層中に
20~40%の酸化チタンを含有し、外層のフィルムコーティング
層中に
0.1~10%の酸化チタンを含有することを特徴とする
フィルムコーティング錠。
【請求項2】
前記外層のフィルムコーティング層中に0.3~10%の酸化チタンを含有する、請求項1に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項3】
前記外層のフィルムコーティング層中に0.5~5%の酸化チタンを含有する
、請求項1又は2に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項4】
前記有効成分がロスバスタチンまたは薬学的に許容可能なその塩
である、請求項1~3の何れかに記載のフィルムコーティング錠。
【請求項5】
前記素錠がロスバスタチンカルシウム、及び乳酸カルシウム水和物を含有する、請求項4に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項6】
フィルムコーティング層に可塑剤を含有する請求項
1~5の何れかに記載の
フィルムコーティング錠。
【請求項7】
光分解性の有効成分を含有する素錠に、二重のフィルムコーティング
層を
施してなるフィルムコーティング錠であって、内層のフィルムコーティング
層中に
20~40%の酸化チタンを含有し、外層のフィルムコーティング
層中に
0.1~10%の酸化チタンを含有することを特徴とする
フィルムコーティング錠の表面にレーザーを照射することによるマーキング方法。
【請求項8】
前記外層のフィルムコーティング層中に0.3~10%の酸化チタンを含有する、請求項7に記載のマーキング方法。
【請求項9】
光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20~40%の酸化チタンを含有する
内層と層中0.5~5%の酸化チタンを含有する
外層を施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによる
、請求項7又は8に記載のマーキング方法。
【請求項10】
前記有効成分がロスバスタチンまたは薬学的に許容可能なその塩
である、請求項7~9の何れかに記載のマーキング方法。
【請求項11】
前記素錠がロスバスタチンカルシウム、及び乳酸カルシウム水和物を含有する、請求項10に記載のマーキング方法。
【請求項12】
フィルムコーティング層に可塑剤を含有する請求項
7~11の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性が向上したロスバスタチンカルシウム製剤及びレーザー照射によ
るフィルムコーティング錠の印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロスバスタチンカルシウム (モノカルシウム ビス((3R,5S,6E)-7-{
4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メタンスルホニル(メチル)
アミノ]ピリミジン-5-イル}-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エノエート; Mon
ocalcium bis ((3R,5S,6E)-7-{4-(4-fluorophenyl)-6-isopropyl-2-[methanesulfonyl (m
ethyl) amino] pyrimidin-5-yl}-3,5-dihydroxyhept-6-enoate) は、HMG CoAレダ
クターゼ阻害作用を有するスタチン系の脂質異常症治療薬であり、現在、本邦では、塩野
義製薬(株)から「クレストール」(登録商標)の販売名で、「高コレステロール血症、
家族性高コレステロール血症」を効能・効果とする1日1回経口投与の錠剤が市販されて
いる。(非特許文献1)
ロスバスタチンカルシウムは、特許文献1~4に記載の方法で合成されることが報告さ
れている。
また、非晶質ロスバスタチンカルシウムの製造方法は、特許文献5に記載されている。
ところで、非特許文献1には、混入する可能性がある類縁物質(分解生成物)として、
ラクトン体((3R,5S)ラクトン)及びケト誘導体(炭素-炭素二重結合に隣接して
いるヒドロキシ基が酸化されたケトン体)を挙げている。
特許文献6には、通常の貯蔵条件で十分安定な医薬製剤として、ケイ化微結晶セルロー
スとトウモロコシデンプンを含み、アルカリ剤が添加されていないロスバスタチンカルシ
ウム含有医薬組成物が記載されている。
また、特許文献7には、ロスバスタチンカルシウム含有層を含む医薬製剤の製造方法が
報告されており、ロスバスタチンカルシウムを含有するコーティング層には、安定剤を加
えることができ、その安定剤として乳酸カルシウムなどの有機酸の医薬的に許容しうるカ
ルシウム塩を挙げている。しかしながら、特許文献7では、ロスバスタチンカルシウムは
、素錠中でなく、打錠後のコーティング層にのみ存在し、また具体的に乳酸カルシウムを
安定化剤として使用した実施例等は開示されていない。なお特許文献7では、コア上に水
中にロスバスタチンカルシウムとコーティングポリマーを含む溶液を噴霧コーティングす
ることにより錠剤を得ているので、ロスバスタチンカルシウムは水分で分解が促進される
可能性があることから、製剤中の水分含量の管理が必要となる。
また特許文献8~10にはHMG CoAレダクターゼ阻害剤の安定化剤として、乳酸
カルシウムが例示されているが、HMG CoAレダクターゼ阻害剤としてロスバスタチ
ンカルシウムは例示されておらず、また具体的に乳酸カルシウムを安定化剤として使用し
た実施例等は開示されていない。
一方、特許文献11~13によれば、従来のスタチン系製剤には、安定性向上のため、
組成物の水溶液または水性分散液のpHを少なくとも8にするアルカリ性媒体(炭酸塩、
重炭酸塩)の存在を必要とするが(特許文献14)、ロスバスタチンカルシウムにおいて
は、調剤中のPHを調整することのみによって安定性を改善することは充分ではなく、カ
チオンが多価の無機塩である三塩基リン酸塩等を添加することで安定性が向上する旨、報
告されている。
即ち、ロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する新規な安定な製剤を提供す
る為には、更なる安定化剤に関する鋭意研究を行うことが必要となる。
【0003】
最近、薬剤師等の調剤行為時や患者の服用時におけるミスを防止する観点から、錠剤に
は、包装容器のみならず錠剤自体にも文字等の識別記号等を付すことが要望されている。
従来、錠剤の表面に識別記号等を表示する方法として、刻印や、オフセット印刷、イン
クジェット印刷が行われてきた。しかしながら、刻印では、マーキングできる情報量が少
なく、また打刻不良を生じることがある。一方、オフセット印刷、インクジェット印刷で
は、インク汚れ・文字切れ等の不具合を生じることがある。
最近、錠剤表面にレーザー照射することで、錠剤表面に「識別記号」、「一般名」、「
含量」、「会社名」をマーキングするUVレーザー印刷方法が各種文献等で紹介され、実
際UVレーザー印刷を用いた製品も上市されている。(特許文献15~17)
UVレーザー印刷方法では、変色誘起酸化物(酸化チタン)が錠剤表面に存在することで
識別記号等を灰色にマーキングがすることが可能となる。
そして、印字メカニズムとして、UVレーザー照射を受けた酸化チタンから酸素が脱離
することでチタン原子の存在比率が変化し、酸化チタンは白から灰色に変色することが報
告されている。(非特許文献2)
ところで、有効成分の種類によっては、光に不安定なものがあり、かかる有効成分の製
剤化においては着色剤として酸化チタンを使用することがある。フィルムコーティング錠
において、コーティング層中の酸化チタンの量が少ない場合、光安定化効果が期待できな
いので、フィルムコーティング錠中の酸化チタンの割合が25%を超える場合もあるが、
かかる場合にUVレーザー印刷方法を使用すると印字が不鮮明となり、UVレーザー印刷
方法の使用を断念することもある。
なお特許文献18には、レーザー光の曝露から光に対して不安定な薬物を保護し得るレ
ーザー印刷用錠剤が記載されている。前記の錠剤では、異なる濃度の変色誘起組成物を含
有する2層のコーティング錠を提案している。しかしながら、該文献の印字性評価は光に
対して不安定な薬物を含有しないプラセボを用いて行っており、光に対して不安定な薬物
を用いた場合、鮮明な印字が得られるか不明である。更に、該文献記載の素錠の1錠あた
りの重量の記載がなく、素錠中の添加剤の種類や含有量、類縁物質が何であるか等の記載
は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2648897号
【文献】特許第3400038号
【文献】特許第4130844号
【文献】特許第4588446号
【文献】特許第4099333号
【文献】特許第5235676号
【文献】特表2014-513714
【文献】特表2012-36163
【文献】特開2000-229855
【文献】特開2003-55217
【文献】特許第3267960号
【文献】特許第4800467号
【文献】特許第4800988号
【文献】英国特許第2262229号
【文献】特許第5642100号
【文献】特開2013-155148
【文献】特表2013-40165
【文献】WO 2015/186693
【非特許文献】
【0005】
【文献】2015年1月改定 クレストール(登録商標)錠2.5mg、5mgの医薬品インタビューフォーム
【文献】UVレーザマーキング装置LS-250Dの製品カタログ(クオリカプス株式会社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する安定な製剤に関し、安定化剤とし
ての三塩基リン酸塩を用いずに、製剤製造時及び製剤保存中に類縁物質であるラクトン体
やケトン体の生成が抑制され、しかも良好な硬度を有する新規な錠剤を提供することが望
まれている。
即ち、本発明の目的は、ロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する新規で安
定な錠剤を提供することにある。
UVレーザー印刷方法を用いフィルムコーティング錠にマーキングする方法に関し、光
不安定物質を有効成分として含有するフィルムコーティング錠において、コーティング層
中の酸化チタンの割合が25%を超える場合、かかる場合にUVレーザー印刷方法を使用
すると印字が不鮮明となることがあり、その改善方法の提供が望まれている。
即ち、本発明の目的はフィルムコーティング錠において、コーティング層中の酸化チタ
ンの割合が25%を超える場合でも、UVレーザー印刷を可能とする新規な印刷方法を提
供することにある。
また、本発明の目的は、光分解性の有効成分を含有するレーザー印刷用錠剤を提供する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、安定化剤として乳酸カルシウムを用いることで、類縁物質であるラクト
ン体やケトン体の生成が抑制され、しかも良好な硬度を有するロスバスタチンカルシウム
を有効成分として含有する安定な錠剤を得ることができることを見いだし、本発明を完成
した。
即ち、本発明はロスバスタチンカルシウムと乳酸カルシウムを含有する混合物を打錠し
てなる錠剤に関する。
また、本発明はロスバスタチンカルシウム、乳酸カルシウム、賦形剤、崩壊剤及び滑沢
剤を混合した後、直打法によりロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する錠剤
の製造する方法に関する。
【0008】
一方、本発明者らは、UVレーザー印刷方法を用い、光不安定物質を有効成分として含
有するフィルムコーティング錠のマーキング方法に関し、フィルムコーティング層を複数
とし、素錠に近いフィルムコーティング層の酸化チタンの量は、光不安定物質の光分解を
抑制できる量とし、一方、最も外側のフィルムコーティング層の酸化チタンの量をレーザ
ー印字で鮮明な文字等が表示できる範囲とすることで、光不安定物質を有効成分として含
有するフィルムコーティング錠でも鮮明な文字等の印字が可能となることを見いだし、本
発明を完成した。
即ち、本発明は光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを
含有するアンダーコーティングと層中0.1~10%の酸化チタンを含有するオーバーコ
ーティングを施してなるフィルムコーティング錠に関する。
また、本発明は光分解性の有効成分を含有する素錠に、最も外側にあるコーティング層
に0.1~10%の酸化チタンを含有する、複数のコーティングを施してなるフィルムコ
ーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
さらにまた本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チ
タンを含有するアンダーコーティングと層中0.1~10%の酸化チタンを含有するオー
バーコーティングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射
することによるマーキング方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する錠剤は、類縁物質である
ラクトン体やケトン体の生成が抑制され、しかも良好な硬度を有し、しかも簡便な方法で
製造することができる。
また、本発明のUVレーザー印刷方法を用いることで、光不安定物質を有効成分として
含有するフィルムコーティング錠についても、鮮明な識別記号等のマーキングが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1はフィルム層中の着色剤の種類、割合を変化させたフィルムコーティング錠(1層)のマーキングの写真である。
【
図2】
図2はフィルム層中の酸化チタンの量を変化させたフィルムコーティング錠(1層)のマーキングの写真である。
【
図3】
図3はフィルム層が2層であるフィルムコーティング錠のマーキングの写真である。
【
図4】
図4はレーザー照射回数を変化させた場合のフィルムコーティング錠のマーキングの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を更に詳細に説明する。
(1)
本発明は、ロスバスタチンまたは薬学的に許容可能なその塩を含有する固形製剤であっ
て、乳酸のアルカリ土類金属塩もしくはアルカリ金属塩を含有することを特徴とする固形
製剤に関する。
(2)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムと乳酸カルシウムを含有する混合物を打錠してな
る錠剤に関する。
(3)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムと乳酸カルシウムを重量比 1:10~5:1の
割合で混合して得られる混合物を用いる上記(2)記載の錠剤に関する。
(4)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムと乳酸カルシウムを重量比 1:1~1:5の割
合で混合して得られる混合物を用いる上記(2)記載の錠剤に関する。
(5)
本発明は、添加剤として、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を含有する上記(2)~(4)の
何れか1項記載の錠剤に関する。
(6)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムを錠剤の1~40重量%含有している上記(5)
記載の錠剤に関する。
(7)
本発明は、賦形剤を錠剤の30~90重量%含有している上記(5)記載の錠剤に関す
る。
(8)
本発明は、崩壊剤を錠剤の2~10重量%含有している上記(5)記載の錠剤に関する
。
(9)
本発明は、滑沢剤を錠剤の0.5~3重量%含有している上記(5)記載の錠剤に関す
る。
(10)
本発明は、賦形剤が乳糖、結晶セルロール、マンニトール、デンプンから選択される1
又は2以上のものである上記(5)記載の錠剤に関する。
(11)
本発明は、崩壊剤がクロスポピドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコ
ール酸ナトリウムから選択される1又は2以上のものである上記(5)記載の錠剤に関す
る。
(12)
本発明は、滑沢剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウ
ム、タルクから選択される1又は2以上のものである上記(5)記載の錠剤に関する。
(13)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムがアモルファスである上記(2)~(12)の何
れか1項記載の錠剤に関する。
(14)
本発明は、素錠にフィルムコーティングが施されている上記(2)~(13)の何れか
1項記載の錠剤に関する。
(15)
本発明は、フィルム層に酸化チタン、三二酸化鉄及び/又は黄色三二酸化鉄を含有する
上記(14)記載の錠剤に関する。
(16)
本発明は、ロスバスタチンカルシウム、乳酸カルシウム、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を
混合した後、直打法によるロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する錠剤の製
造方法に関する。
(17)
本発明は、素錠にフィルムコーティングを施す上記(16)記載の製造方法に関する。
(18)
本発明は、フィルム層に酸化チタン、三二酸化鉄及び/又は黄色三二酸化鉄を含有する
上記(17)記載の製造方法に関する。
【0012】
(19)
本発明は、フィルムコーティングを有する固形製剤であって、素錠部分に光安定化剤を
含有し、フィルムコーティング中に約0.1%~約10%の酸化チタンを含有することを
特徴とする固形製剤に関する。
(20)
本発明は、二重フィルムコーティングを有する固形製剤であって、内層のフィルムコー
ティング中に光安定化剤を含有し、外層のフィルムコーティング中に約0.1%~約10
%の酸化チタンを含有することを特徴とする固形製剤に関する。
(21)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含有
するアンダーコーティングと層中0.1~10%の酸化チタンを含有するオーバーコーテ
ィングを施してなるフィルムコーティング錠に関する。
(22)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20~40%の酸化チタンを含
有するアンダーコーティングと層中0.5~5%の酸化チタンを含有するオーバーコーテ
ィングを施してなるフィルムコーティング錠に関する。
(23)
本発明は、10~500Nの硬度を有する上記(2)~(15)及び(19)~(22
)の何れか1項記載の錠剤に関する。
(24)
本発明は、フィルムコーティングを有する固形製剤であって、素錠部分に光安定化剤を
含有し、フィルムコーティング中に約0.1%~約10%の酸化チタンを含有することを
特徴とする固形製剤の表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
(25)
本発明は、二重フィルムコーティングを有する固形製剤であって、内層のフィルムコー
ティング中に光安定化剤を含有し、外層のフィルムコーティング中に約0.1%~約10
%の酸化チタンを含有することを特徴とする固形製剤の表面にレーザーを照射することに
よるマーキング方法に関する。
(26)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に最も外側にあるコーティング層に0.
1~10%の酸化チタンを含有する、複数のコーティングを施してなるフィルムコーティ
ング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
(27)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含有
するアンダーコーティングと層中0.1~10%の酸化チタンを含有するオーバーコーテ
ィングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することに
よるマーキング方法に関する。
(28)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20~40%の酸化チタンを含
有するアンダーコーティングと層中0.5~5%の酸化チタンを含有するオーバーコーテ
ィングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することに
よるマーキング方法に関する。
(29)
本発明は、UVレーザー光の波長が350~360nmで、出力が0.1~10Wであ
るレーザー出力装置による上記(24)~(28)記載の錠剤のマーキング方法に関する
。
(30)
本発明は、フィルムコーティングを有する固形製剤であって、素錠部分に光安定化剤を
含有し、フィルムコーティング中に約0.1%~約10%の酸化チタンを含有することを
特徴とする上記(14)又は(15)の何れかに記載の製剤に関する。
(31)
本発明は、二重フィルムコーティングを有する固形製剤であって、内層のフィルムコー
ティング中に光安定化剤を含有し、外層のフィルムコーティング中に約0.1%~約10
%の酸化チタンを含有することを特徴とする上記(14)又は(15)の何れかに記載の
製剤に関する。
(32)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含有
するアンダーコーティングと層中0.1~10%の酸化チタンを含有するオーバーコーテ
ィングを施してなるフィルムコーティング錠である、上記(14)又は(15)の何れか
に記載の製剤に関する。
(33)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20~40%の酸化チタンを含
有するアンダーコーティングと層中0.5~5%の酸化チタンを含有するオーバーコーテ
ィングを施してなるフィルムコーティング錠である、上記(14)又は(15)の何れか
に記載の製剤に関する。
(34)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤としてトリアセチンを含有する上記(14)
、(15)又は(30)~(33)の何れかに記載の製剤に関する。
(35)
本発明は、10~500Nの硬度を有する上記(30)~(34)の何れかに記載の製
剤に関する。
(36)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤としてトリアセチンを含有する上記(14
)又は(15)の何れかに記載の製剤に関する。
(37)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤を含有する上記(14)、(15)、(1
9)~(23)又は(30)~(33)の何れかに記載の製剤に関する。
(38)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤を含有する上記(17)、(18)、(2
4)~(29)の何れかに記載の方法に関する。
【0013】
本発明の保存安定性が向上したロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する錠
剤の一般的な製法を次に示す。
(1)ロスバスタチンカルシウム、賦形剤、崩壊剤及び乳酸カルシウム水和物を混合機に
入れ、混合する。
(2)次いで得られた混合物に滑沢剤を入れ、さらに混合する。
(3)得られた混合物を、打錠機を用い打錠する。
(4)得られた錠剤にフィルムコーティングを施す。
【0014】
ロスバスタチンカルシウムは、錠剤(素錠)の1~40重量%、好ましくは2.5~1
0重量%含有する。
安定化剤である乳酸カルシウム水和物は、錠剤(素錠)の3~30重量%、好ましくは
5~20重量%含有する。
賦形剤としては、乳糖、結晶セルロール、マンニトール、デンプンから選択される1又
は2以上のものを用いることができ、好ましくは乳糖、結晶セルロールが挙げられる。
崩壊剤としては、クロスポピドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコー
ル酸ナトリウムから選択される1又は2以上のものを用いることができ、好ましくはクロ
スポピドンが挙がられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム
、タルクからから選択される1又は2以上のものを用いることができ、好ましくはステア
リン酸マグネシウムが挙げられる。
可塑剤としては、PEG、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン等が使用でき
る。
その他、ポビドン等の結合剤、ブチルヒドロキシトルエン等の安定化剤も使用すること
もできる。
光安定化剤としては、酸化チタン、酸化鉄(黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄)、タール系色
素(食用黄色5号、黄色4号、それらのアルミニウムレーキ)等が挙げられる。
光安定化剤の量は、素錠中(例えば、上記(19)、(24)及び(30)~(37)の
素錠中)に含有する場合は、主薬や他の添加剤の種類や含量によるが、素錠中、0.01
~40重量%が好ましく、より好ましくは0.5~30重量%である。例えば、光安定化
剤の量は、素錠中1~3重量%であっても、20~30重量%であってもよい。
光安定化剤が内層(アンダーコーティング)のフィルムコーティング中(例えば、上記
(20)~(22)、(25)~(28)及び(31)~(37)の内層のフィルムコー
ティング中)に含有する場合は、光安定化剤の量は、内層のコーティング層中に存在する
他の添加剤の種類や含量によるが、内層のフィルムコーティング中、5~70重量%が好
ましく、より好ましくは10~40重量%、さらに好ましくは15~25重量%である。
例えば、内層は、酸化チタンと酸化鉄(例えば、黄色三二酸化鉄及び/又は三二酸化鉄)
を10~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~25重量%含
んでもよい。そして、酸化鉄の含量は、酸化チタンの含量に対して、2~20重量%、好
ましくは3~12重量%であってもよい。また、例えば、内層は、酸化チタンを10~4
0重量%、好ましくは15~25重量%、及び/又は酸化鉄(例えば、黄色三二酸化鉄、
三二酸化鉄)を0.1~5重量%、好ましくは1~2重量%含んでもよい。
光安定化剤が外層(オーバーコーティング)中(例えば、上記(20)~(22)、(
25)~(28)及び(31)~(37)の外層中)に含まれる場合は、光安定化剤の量
は、外層のコーティング層中に存在する他の添加剤の種類や含量によるが、外層のフィル
ムコーティング中、1~15重量%が好ましく、より好ましくは1~10重量%、さらに
好ましくは3~10重量%である。例えば、外層は、酸化チタンと酸化鉄(例えば、黄色
三二酸化鉄及び/又は三二酸化鉄)を1~15重量%、好ましくは3~10重量%、より
好ましくは4~6重量%含んでもよい。そして、酸化鉄の含量は、酸化チタンの含量に対
して、1~40重量%、好ましくは3~40重量%、例えば、3~10重量%又は15~
40重量%であってもよい。また、例えば、外層は、酸化チタンを1~10重量%、好ま
しくは2~5重量%、より好ましくは3~5重量%、及び/又は酸化鉄(例えば、黄色三
二酸化鉄及び/又は三二酸化鉄)を0.1~3重量%、好ましくは1~2重量%含んでも
よい。
外層が黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄を含む場合、錠剤内部の黄変が分かりにくく、酸化
チタンを用いたレーザー印刷時に印字が見えやすくなる。この目的で、外層は1~3重量
%、好ましくは1~2重量%の黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄を含んでもよい。
フィルムコーティング層の量は当業者が適宜設定でき、素錠中の光分解性の有効成分の光
安定性を高めることができる。例えば、フェイルコーティング層の量は、錠剤の2.5重
量%~20重量%、好ましくは3重量%~10重量%、より好ましくは3.2重量%~6
.3重量%であり得る。フィルムコーティングが多層の場合、各層の重量は同じであって
も異なってもよく、例えば2層の場合、外層と内層の重量は同じであっても異なってもよ
い。外層と内層の膜厚は特に限定されず、例えば、1μm以上100μm以下であり得る
。錠剤中の有効成分がロスバスタチンの場合、コーティング層が錠剤の2.0%では12
0万luxの光暴露により光分解物が見られたが、コーティング層が錠剤の3.2%及び
6.3%では光分解物は検出されなかった。
上記の素錠は湿式造粒、直打法等で製造できるが、直打法で製造することが好ましい。
得られた素錠には、ロスバスタチンカルシウムが光に対し不安定であることから着色料
を含有したフィルムコーティングを施すことが好ましい。
かかるフィルムコーティング層には、HPC、ヒプロメロース等のコーティング剤、P
EG、トリアセチン等の可塑剤、タルク、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等の
着色剤、カルナウバロウ等の光沢剤を含有することができる。
次に本発明の保存安定性試験の結果を示す。
実施例1,2、3(表1~3参照)で得られた本発明の錠剤は、実施例4及び参考例1
記載のように類縁物質であるケトン体、ラクトン体の生成が抑制された優れた保存安定性
を有することが明らかになった。(表5~8参照)
なお、参考例1で、炭酸水素ナトリウムも比較的良好な保存安定性を有することが明ら
かになった。
また、本発明の錠剤(2層のフィルムコーティング錠)に関し、各種pHにおいて溶出
試験を行った結果、市販製剤と同様な溶出パターンを示した。
更に、本発明の錠剤(2層のフィルムコーティング錠)に関し光安定試験を行った結果
、市販製剤と同等又はそれ以上の光安定化効果を示した。
本発明の錠剤において、素錠を直打法により製造する場合、水を用いる湿式造粒法や特
許文献7のような水分含量の慎重な管理を必要としない。
実施例12から明らかなようにロスバスタチンを素錠中に含むフィルムコーティング錠
において、酸化チタンの量は、10%では遮光の効果が低く、30%では錠剤の表面が荒
れ、約20%が好ましい。
実施例13から明らかなようにロスバスタチンを素錠中に含むフィルムコーティング錠
において、可塑剤としては、PEGは好ましくなく、トリアセチンを用いることが好まし
い。
【0015】
次に本発明のレーザー照射によるフィルムコーティング錠の印字方法について述べる。
通常のフィルムコーティング錠のマーキングに関しては、酸化チタンがフィルム組成中
の0.5~5%程度が最も発色が良く、25%以上になると、ヒュームが発生し、発色が
悪くなる傾向にある。しかしながら、光に弱い製剤では、酸化チタンが20%を超える、
例えば、25~35%加えることもあり、配合割合が多い製剤においてもレーザー照射によ
るフィルムコーティング錠のマーキングを行うことができる印字方法は有用である。
本発明では、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含
有するアンダーコーティングと層中0.~10%の酸化チタンを含有するオーバーコーテ
ィングを施してなるフィルムコーティング錠、好ましくは光分解性の有効成分を含有する
素錠に、層中15~30%の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中1~5%
の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなるフィルムコーティング錠に対
し、レーザー照射することでマーキングすることができる。
また、本発明では、(1)光分解性の有効成分を含有する素錠に最も外側にあるコーテ
ィング層に0.3~10%の酸化チタンを含有する、複数のコーティングを施してなるフ
ィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射すること、好ましくは、(2)光分解
性の有効成分を含有する素錠に、層中13%以上の酸化チタンを含有するアンダーコーテ
ィングと層中0.3~10%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施し、次い
で該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射すること、更に好ましくは、(
3)光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中15~30%の酸化チタンを含有するア
ンダーコーティングと層中1~5%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施し
、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキン
グすることができる。
なお、素錠中の有効成分や添加剤、コーティング層中の添加剤の種類やレーザー照射に
よるマーキング方法等を調整することで、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中2
0%を超える酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.1~20%の酸化チ
タンを含有するオーバーコーティングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表
面にレーザーを照射することによるマーキングすることができる場合がある。
ところで、変色誘起酸化物(酸化チタン)をフィルムコーティング層に加えることは、
引張強度が低下しコーティング膜が破れることが前記特許文献18に記載されているが、
引張強度を上げるため可塑剤のトリアセチンは有用である。
例えば、コーティング層(例えば、外層及び/又は内層)に遮光目的で酸化チタンを含
ませる場合、15~25重量%含ませることができる。しかしながら、この量の酸化チタ
ンを含ませることによりフィルム工程中に錠剤が割けることや、錠剤表面が荒れることが
あり、それを防ぐために可塑剤を添加する。可塑剤を添加しない遮光目的のコーティング
層を有する錠剤の製造は難しい為、当業者は、素錠中の有効成分(原薬)と相性の良い可
塑剤をコーティング層(例えば、外層及び/又は内層)中に含ませることができる。素錠
中の有効成分がロスバスタチンの場合、可塑剤としてトリアセチンをコーティング層(例
えば、外層及び/又は内層)中に含ませることが好ましい。
本発明方法を使用できる光分解性の有効成分としては、ニフェジピン、ニソルジピン、
アムロジピン、アゼルニジピン等のジヒドロピリジン骨格を有するCa拮抗剤、オフロキ
サシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン等のニューキノロン系抗菌剤、メコバラ
ミン等の各種ビタミン類、シメチジン、ピタバスタチンカルシウム、メキタジン、モンテ
ルカスト、ロスバスタンカルシウム等が挙げられる。
その他、オランザピン、ドネペジル、エバスチン、セレギリン、ファモチジン、イルソ
グラジン、ブロチゾラム、オランザピン、ランソプラゾール、ベポタスチン、ラモセトロ
ン、タムスロシン、ナフトピジル、ポラプレジンク、ボグリボース、リザトリプタン、ミ
ドドリン、リスペリドン、オンダンセトロン、ロラタジン、モンテルカスト、アズレンス
ルホン酸、エチゾラム、エナラプリル、カプトプリル、グリベンクラミド、クロルマジノ
ン酢酸エステル、ドキサゾシン、トリアゾラム、ドンペリドン、ケトチフェン、ブロムペ
リドール、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、ロペ
ラミド、リシノプリル、リルマザホン、アルファカルシドール、ブロモクリプチンおよび
プラミペキソールなどの光分解性の有効成分にも用いることが出来る。
本発明で使用されるUVレーザーとしては、UVレーザーマーキング装置 LIS-2
50D(クオリカプス株式会社)が挙げられる。
UVレーザー光の波長が350~360nmが好ましく、出力が0.1~10Wが好ま
しい。
走査方式としては、ガルバノミラー型、レゾナントスキャン型、ポリゴンミラー型等が
挙げられる。
本発明のレーザー照射によるマーキングにおいて、用いるフィルムコーティング層中の
酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型の何れも用いることが出来る。
次に 素錠にコーティングを施し、フィルコーティング錠(1層)を製造し、これにレ
ーザー照射によるマーキングを行った測定結果を示す。
図1からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得
られることが明らかになった。更にコーティング層中に0.56%の三二酸化鉄または0.56%
の黄色三二酸化鉄を含有していても酸化チタンの量が3%の場合、鮮明なマーキングが得
られることが明らかになった。(実施例7)
次に、素錠に、タルク、PEG-6000を含有し、ヒプロメロースと酸化チタンの量
を変化させた(酸化チタンの量が0%~40%)フィルコーティング層(1層)を有する
フィルコーティング錠を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを行った結果を示
す。
図2からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得
られることが明らかになった。(実施例8)
実施例9でフィルム層が2層であるフィルムコーティング錠について、レーザー照射に
よるマーキングを行ったところ、
図3から明らかなように本発明のレーザー照射によるマ
ーキング方法により、フィルム層が2層であるフィルムコーティング錠の錠剤表面に、レ
ーザー照射により鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。
実施例10では、レーザー照射回数を変化させた場合のフィルムコーティング錠のマー
キングの鮮明度を観察したところ、レーザーを1回照射に比べ、2回照射した場合がより
鮮明なマーキングが得られた。従って、レーザー出力、スキャンスピード、レーザー照射
回数等を調整することにより、より鮮明なマーキングが得られることが期待できる。
【0016】
本発明のUVレーザー印刷方法を用いることで、光不安定物質を有効成分として含有す
るフィルムコーティング錠についても、鮮明な識別記号等のマーキングが可能となる。
次に実施例、参考例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム5mg含有する錠剤(素錠)
乳糖水和物、ロスバスタチンカルシウム、結晶セルロース、クロスポピドン及び乳酸カ
ルシウム水和物をV型混合機に入れ、10分間混合した。次いでステアリン酸マグネシウム
を入れ、さらに混合した。
得られた混合物をロータリー打錠機を用い、硬度30N以上、1錠質量146 mgとなるよう
に打錠した。
有効成分のロスバスタチンカルシウム及び添加物の含有量は表1記載の通りである。
【0018】
【0019】
(実施例2)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム5mg含有する錠剤(素錠)
実施例1と同様にして表2記載の錠剤を得た。
【0020】
【0021】
(実施例3)
1錠中、ロスバスタチン5mg含有する錠剤(フィルムコーティング錠)
実施例1で得られた素錠をコーティング装置に入れ、コーティング液Iを給気温度65
℃でスプレーした後、乾燥した。(錠質量から4.5mg増加。)更にコーティング液I
Iを給気温度65℃でスプレーした後、乾燥した。次いでカルナウバロウで艶だしコーテ
ィングを行った。
【0022】
【0023】
コーティング液I
精製水1296 gに、ヒプロメロース86.4 g、トリアセチン21.6 gを投入し、溶解するまで
撹拌混合し得られた溶液に、精製水324 gに酸化チタン27.0 g及び黄色三二酸化鉄2.16 g
を投入し超音波分散させた液を投入し攪拌混合する。
コーティング液II
精製水1036.8 gに、ヒプロメロース87.5 g、トリアセチン16.2 gを投入し、溶解するま
で撹拌混合し、得られた溶液に、精製水259.2 gに酸化チタン4.3 g及び黄色三二酸化鉄1.
62 gを投入し超音波分散させた液を投入し,攪拌混合する。
(実施例4)
(安定性試験1)
実施例3で得られた製剤に関し、安定化剤の種類と量代え、40℃75%RH1週間の
保存安定性試験を行った。比較製剤として、市販製剤及びステアリン酸Caを用いた。
その結果を表4及び5に示す。
ケトン体及びラクトン体の量は以下のHPLC条件で測定した。
HPLC条件
・試料溶液(5mg錠):錠剤3錠を取り、アセトニトリル/水混液(1:3)22mlを加える。
・カラム:内径3.0 mm,長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オク
タデシルシリル化シリカゲルを充填する。
・カラム温度:40℃
・移動相
移動相A:1%v/vトリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル:水=1:29:70
移動相B:1%v/vトリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル:水=1:75:24
【0024】
【0025】
・流速:0.75ml/min(ロスバスタチンカルシウムの保持時間が約25分)
・測定波長:242nm
・RRt:ラクトン体 約1,7、ケトン体 約1.5
・含有率の計算方法
それぞれの類縁物質に関して、標準溶液のロスバスタチンを基準とする。
ケトン体は、求めたピーク面積に2.1を乗じた値とする。
(ケトン体の生成量)
【0026】
【0027】
(ラクトン体の生成量)
【0028】
【0029】
(試験結果)
安定化剤として乳酸カルシウムを使用した本発明製剤は、安定化剤なし、比較製剤に比
べ、類縁物質であるケトン体及びラクトン体の生成が少なかった。
(参考例1)
(安定性試験2)
実施例1で得られた素錠に関し、安定化剤の種類を代え、40℃75%RH、1週間、
1ヶ月の保存安定性試験を行った。
その結果を表4及び5に示す。
(ケトン体の生成量)
【0030】
【0031】
(ラクトン体の生成量)
【0032】
【0033】
(試験結果)
炭酸水素ナトリウムは保存安定性試験において、ケトン体及びラクトン体の生成も抑制
され、良好な保存安定性を示した。
炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、メグルミンはopenで錠剤が壊れやすいことが明
らかになった。
(実施例5)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム2.5mg含有する錠剤(素錠)
実施例1と同様にして表8記載の錠剤を製造できる。
【0034】
【0035】
(実施例6)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム2.5mg含有する錠剤(素錠)
実施例1と同様にして表10記載の錠剤を製造できる。
【0036】
【0037】
(実施例7)
タルクを0.36mg、PEG-6000を0.9mg含有し、ヒプロメロース、酸化
チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄の量を変化させ合計9mgのフィルコーティング層
(1層)を有するフィルコーティング錠(235mg)を製造し、これにレーザー照射に
よるマーキングを行った。
レーザー照射は、レーザー照射装置(クオリカプス社性、UVレーザーマーキング装置
LIS―250)を用い、レーザー波長355nm、平均出力3.0W~3.5W、周波数
30kHz、パルスエナジー30%、エキスパンダ位置11~13.0mmの照射条件で
行った。
【0038】
(測定結果)
図1からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得
られることが明らかになった。さらに、0.56%の三二酸化鉄または0.56%の黄色三二酸化
鉄を含有していても酸化チタンの量が3%の場合、鮮明なマーキングが得られることが明
らかになった。
(実施例8)
タルクを0.36mg、PEG-6000を0.9mg含有し、ヒプロメロースと酸化
チタンの量を変化させ合計9mgのフィルコーティング層(1層)を有するフィルコーテ
ィング錠(235mg)を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを行った。
レーザー照射条件は実施例7と同じ。
【0039】
(測定結果)
図2からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得
られることが明らかになった。
(実施例9)
素錠(乳糖98.8%、ステアリン酸マグネシウム1.2%含有)に、表11記載の添
加剤を含有するアンダーコーティングと表12記載の添加剤を含有するオーバーコーティ
ングを施したフィルムコーティング錠を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを
行った。レーザー照射条件は実施例7と同じ。
【0040】
【0041】
【0042】
A:
図3の錠剤において、1.5%黄色三二酸化鉄 4%酸化チタンと表記
B:
図3の錠剤において、1.8%黄色三二酸化鉄 4%酸化チタンと表記
C:
図3の錠剤において、1.8%黄色三二酸化鉄 8%酸化チタンと表記
D:
図3の錠剤において、1.8%黄色三二酸化鉄 1%酸化チタンと表記
【0043】
(測定結果)
図3から明らかなように本発明のレーザー照射によるマーキング方法により、有効成分
を含有するフィルムコーティング錠(フィルム層が2層)の錠剤表面に、レーザー照射に
より鮮明なマーキングが得られた。
(実施例10)
ロスバスタチンを含有する素錠に酸化チタン、黄色三二酸化鉄を含有するフィルムコー
ティングを施したフィルムコーティング錠の錠剤表面に、1回、2回レーザー照射を行い
、照射回数によるマーキングを観察した。レーザー照射条件は照射回数を以外は実施例7
と同じ。
1) フィルム層中、0.8%三二酸化鉄含有製剤
素錠部
【0044】
【0045】
フィルム層
【0046】
【0047】
2) フィルム層中、1.2%三二酸化鉄含有製剤
素錠部
【0048】
【0049】
フィルム層
【0050】
【0051】
(測定結果)
図4から明らかなようにフィルムコーティング錠に1回レーザー照射した場合に比べ、
2回レーザー照射した場合はより鮮明なマーキングが得られた。
(実施例11)
実施例3記載のロスバスタチンカルシウムのフィルムコーティング錠の錠剤表面に、実
施例7記載のレーザー照射条件でレーザー照射でマーキングを行うことで、鮮明なマーキ
ングが得られる。
従って、実施例3記載のロスバスタチンカルシウムのフィルムコーティング錠は、製造
時及び保存時に類縁物質の生成が抑制でき、しかも優れた光安定性を有し、更にレーザー
照射でマーキングを行うことで、鮮明なマーキングが得られる。
【0052】
(実施例12)
ロスバスタチンを含有する素錠に酸化チタンの含有量が10,20,30%含有する1
層のコーティング層を有する錠剤と、2層のコーティング層を有する錠剤について、光安
定性試験を行った。
1.試験製剤
素錠部は表15と同じ。
A:フィルム層が1層のフィルム層の処方
【0053】
【0054】
B;フィルム層が2層のフィルム層の処方
【0055】
【0056】
(測定結果)
表17及び表18記載の錠剤について、120万lux・hr曝露後の類縁物質量(R
T41.3)を測定した。
類縁物質量は実施例4記載のHPLC条件(RRt:約1,5)で同様な方法で行った。
その試験結果を表19に示す。
【0057】
【0058】
表中の数字は光分解物量(RT41.3)を示す。(単位は%)
表19から明らかなように1層で酸化チタンの含量が10%の場合、120万lux・
hr曝光後の類縁物質の量が多く、1層で酸化チタンの含量が30%及び2層の場合、類
縁物質の量は少なかった。
また、上記の錠剤についてレーザー印字を行ったところ1層で酸化チタンの含量が10%
の場合、印刷は薄く、一方、2層は鮮明な印字が得られる。
また、フィルム層の量が1.5mg(素錠は75mg 表15と同じ)の1層のフィル
ムコーティング錠について、光安定性試験を実施したところ、開始時の光分解物量は、開
始時が0.035であったが、120万lux・hrs曝光後は0.562と光遮光効果
が低いことが明らかになった。
【0059】
(実施例13) 可塑剤の検討
A:配合変化試験
ロスバスタチン(以下、原薬ということもある)とPEG6000及びHPCとの配合変
化試験(ラクトン体)を行い、結果を表20に示す。
試験は、4.5gの原薬と4.5gの可塑剤を乳鉢で混ぜて試験を行った。
加速試験は40℃75%で行った。
ラクトン量は、実施例4記載のHPLC条件と同様な方法で測定した。
【0060】
【0061】
表中の数字はラクトン体の生成量を示す。(単位は%)
表20から、ロスバスタチンは、PEG6000により配合変化を起こすことが明らか
になった。特に60℃、4週間では、HPCでは僅かに配合変化を起こすが、PEGは著
しく分解物量が増大した。
B:フィルム処方の検討(ケト体の生成量)
素錠中にロスバスタチンを含有し、フィルムコーティング層中に可塑剤として、トリア
セチン、PEGを含む1層錠と2層錠について、加速試験を行った。
素錠は表15記載のものを使用し、フィルム層の1層錠(トリアセチン)のフィルムコー
ティング層は表16記載のものを使用し、PEGはトリアセチンに代えて製造した。2層
錠のフィルムコーティング層は、表11及び表12記載のものを使用した。
ケト体量は、実施例4記載のHPLC条件と同様な方法で測定した。
類縁物質(ケト体)を測定し、その結果を表21に示す。
【0062】
【0063】
表中の数字はケト体の生成量を示す。(単位は%)
PEGを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング錠は、加速試
験で分解物量(ケト体)が増大した。(表21参照)
一方、トリアセチンを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング
錠、並びに2層錠は2週間後の分解物量の増加量は極めて少量であった。
C:フィルム処方の検討(ラクトン体の生成量)
素錠中にロスバスタチンを含有し、フィルムコーティング層中に可塑剤として、トリア
セチン、PEGを含む1層錠と2層錠について、加速試験を行った。
素錠は表15記載のものを使用し、フィルム層の1層錠(トリアセチン)のフィルムコー
ティング層は表16記載のものを使用し、PEGはトリアセチンに代えて製造した。2層
錠のフィルムコーティング層は、表11及び表12記載のものを使用した。
ラクトン量は、実施例4記載のHPLC条件と同様な方法で測定した。
類縁物質(ラクトン体)を測定し、その結果を表22に示す。
【0064】
【0065】
表中の数字はラクトン体の生成量を示す。(単位は%)
表22からPEGを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング錠
は、加速試験で分解物量(ラクトン体)が増大した。
一方、トリアセチンを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング
錠、並びに2層錠は2週間後の分解物量の増加量は極めて少量であった。
上記のA,B,Cからロスバスタチン原薬はPEGと配合変化を起こし、またPEGを
可塑剤として含有するフィルムコーティング錠は加速試験で分解物量が増大した。
一方、トリアセチンを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング
錠、並びに2層錠は加速試験で比較的安定であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する錠剤は、優れた保存安定
を有し、また簡便な方法で製造できることから、本発明は製薬業分野において有効に利用
される。
また、本発明のフィルムコーティング錠のマーキング方法によれば、光分解性の有効成
分を含有するフィルムコーティング錠に鮮明性に優れたマークを施すことができ、しかも
生産性にも優れており、本発明は製薬業分野等において有効に利用される。
【符号の説明】
【0067】
図1中の%はフィルムコーティング層中の酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、
の濃度を示す。
図2中の%はフィルムコーティング層中の酸化チタンの濃度を示す。
図3中の%はオーバーコーティング層中の酸化チタン、黄色三二酸化鉄の濃度を示す。
図4中の%はコーティング層中の黄色三二酸化鉄の濃度を示し、また回数はレーザー照
射回数を表す。