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  • 特許-盛土造成構造 図1
  • 特許-盛土造成構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】盛土造成構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20230417BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
E02D3/10 101
E02D17/18 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022009169
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2022-01-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年7月28日に建設通信新聞第二部にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】597104053
【氏名又は名称】日本建設技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】原 裕
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007225(JP,A)
【文献】登録実用新案第3096492(JP,U)
【文献】特許第4653466(JP,B2)
【文献】特許第3825758(JP,B2)
【文献】特許第3736650(JP,B2)
【文献】特開平07-252818(JP,A)
【文献】特開2011-236679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00- 3/12
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の表層部に比重0.3~0.5の発泡ガラス材により形成された排水層と、
前記排水層上に形成された盛土造成部と、
不透水性パイプと、前記不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材とを含む排水管であり、前記盛土造成部に埋設され、一端部が前記排水層に接続され、前記排水層に導かれた雨水を前記盛土造成部の外まで導く排水管と
を含む盛土造成構造。
【請求項2】
前記地山の基岩に密着させて設置された突起物を含む請求項記載の盛土造成構造。
【請求項3】
前記不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材は、独立間隙を有する多孔質構造である請求項1または2に記載の盛土造成構造
【請求項4】
前記不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材は、比重が0.3~1.5、粒径が10mm~50mmである請求項1から3のいずれか1項に記載の盛土造成構造
【請求項5】
前記不透水性パイプは、ステンレス鋼製の波付管である請求項1からのいずれか1項に記載の盛土造成構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管およびこれを用いた盛土造成構造に関する。
【背景技術】
【0002】
山合の谷部を盛土造成した宅地は、年月が経つにつれて盛土材が粘性土へと風化が進む。また、降雨による雨水は、旧谷部に沿って浸透し、低地へと流下し、水みちを再形成していく。近年、線状降水帯や前線の停滞による非常に発達した積乱雲や雨雲が形成され、広範囲にわたって集中豪雨が頻繁に発生するようになっており、水みちが再形成されることで、地すべりや斜面崩壊が誘発される可能性がある。したがって、盛土造成地においては、排水性の改良が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガラス製発泡体を通気・通水性を有する生分解性の袋内に充填した通気・通水性改良材が開示されている。この通気・通水性改良材では、空気や水は袋を通過することができるので、地盤や土壌に適用したときから直ちに袋を介してガラス製発泡体の優れた通気・通水作用を発揮せしめるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、発泡性ポリスチレンを、直径40~200mmでほぼ球形に成形してなる発泡成形充填材を、透水性を有する袋状体に充填してなる直径が300~1000mm、長さが400~3000mmの円筒形状である土木用軽量埋込材が開示されている。この埋込材を用いた盛土中の水は埋込材を通して速やかに排水されるので、盛土中に雨水等が溜まって崩れたりするといったことがないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3096492号公報
【文献】特許第3736650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載の改良材・埋込材は、いずれも透水性の袋内に充填材を充填したものであり、周囲の水を袋内に集水して排水するものである。したがって、盛土中の水は速やかに排出できるものの、改良材・埋込材は長期間に渡って上部盛土の荷重に耐えうる構造ではない。
【0007】
そこで、本発明においては、盛土荷重に長期間耐えることが可能な排水管およびこれを用いた盛土造成構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排水管は、不透水性パイプと、不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材とを含むものである。本発明の排水管によれば、不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材の間隙を通って排水することができる。また、本発明の排水管では、不透水性パイプ内に充填された発泡ガラスが、不透水性パイプの変形を防止するため、排水管上の盛土荷重に長期間耐えることができる。
【0009】
上記本発明の排水管を用いた盛土造成構造は、地山の表層部に形成された排水層と、排水層上に形成された盛土造成部と、盛土造成部に埋設され、排水層に接続された上記本発明の排水管とを含むものである。本発明の盛土造成構造によれば、地山の表層部に形成された排水層に浸透した雨水が、この排水層に接続された本発明の排水管によって外部へ排水される。
【0010】
また、本発明の盛土造成構造は、地山の基岩に密着させて設置された突起物を含むことが望ましい。これにより、盛土造成部の滑りを突起物により抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
(1)不透水性パイプと、不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材とを含む排水管によれば、盛土荷重に長期間耐え、不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材の間隙を通って排水することが可能となる。
【0012】
(2)地山の表層部に形成された排水層と、排水層上に形成された盛土造成部と、盛土造成部に埋設され、排水層に接続された上記排水管とを含む盛土造成構造によれば、地山の表層部に形成された排水層に浸透した雨水が、この排水層に接続された本発明の排水管によって外部へ排水されるので、雨水による水みちの再形成を防止することができ、地すべりや斜面崩壊の誘発を防止することができる。
【0013】
(3)地山の基岩に密着させて設置された突起物を含む盛土造成構造によれば、盛土造成部の滑りを突起物により抑制することができ、高盛土部の脆弱化によるすべりに対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における盛土造成構造の模式図である。
図2図1の排水管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の実施の形態における盛土造成構造の模式図、図2図1の排水管の斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態における盛土造成構造は、地山1の表層部2に形成された排水層3と、排水層3上に形成された盛土造成部4とを有する。排水層3には、盛土造成部4に埋設された排水管5が接続されている。
【0016】
排水層3は、比重0.3~0.5の発泡ガラス材により形成されている。この発泡ガラス材としては、例えば空き瓶などのガラス廃材を再利用したリサイクル製品(発泡廃ガラス材)を使用することができる。排水層3は、粒径10mm~50mmの発泡ガラス材により厚さ5.0cm~30.0cmに形成したものである。発泡ガラス材は独立間隙あるいは連続間隙を有する多孔質構造であり、このような発泡ガラス材により形成された排水層3は盛土造成部4等を浸透してきた雨水を外部へ導く。
【0017】
排水管5は、不透水性パイプ50内に発泡ガラス材51が充填されたものである。不透水性パイプ50は、少なくともパイプの外面に、パイプの延びる方向に対して直角に波付けを施した鋼板製の波付管である。波付管としては例えばシースを使用することができる。シースは、軽量で強度が高いという特徴がある。排水管5は、例えば内径が50~150mm(好ましくは80~120mm)のステンレス鋼製のシースからなる不透水性パイプ50内に発泡ガラス材51を充填したものである。
【0018】
発泡ガラス材51としては、例えば空き瓶などのガラス廃材を再利用したリサイクル製品(発泡廃ガラス材)を使用することができる。発泡ガラス材51は、独立間隙あるいは連続間隙を有する多孔質構造であって、その比重は0.3~1.5、粒径は10mm~50mmである。なお、排水管5内に充填する発泡ガラス材51は、吸水しないように独立間隙を有する多孔質構造であることが好ましい。不透水性パイプ50の端部は、充填された発泡ガラス材51が外に出ないように、例えば鉄鋼製の網などにより形成された透水性蓋52で覆われている。
【0019】
排水管5は、一端部が排水層3に接続された状態で盛土造成部4に埋設される。複数の排水管5を連結する際には、熱収縮チューブを使用して連結する。排水層3に導かれた雨水は、不透水性パイプ50内に充填された発泡ガラス材51の間隙を通ることにより、排水管5を通じて盛土造成部4の外まで導かれ、排水される。また、排水管5は、不透水性パイプ50内に充填された発泡ガラス材51が不透水性パイプ50の変形を防止するため、排水管5上の盛土荷重に長期間耐えることができる。
【0020】
なお、上記発泡ガラス材は、例えば次の製造工程によって製造することができる。
まず、回収された廃ガラス瓶を、金属分離、粗粉砕した後、さらに微粉砕してパウダー状とし、炭酸カルシウム、炭化珪素、ドロマイト、重炭酸ソーダ、ソーダ灰や合成土灰などの添加剤と混合する。次いで、この混合物をベルトコンベア上に一定の厚さに敷き詰め、700~1000℃の特殊反応炉に供給して焼成することにより、溶融、発泡させて、板状発泡ガラス材とした後、急冷する。板状発泡ガラス材は急冷するときに生じるクラックによって自然破砕し、粒径10mm~50mmの発泡廃ガラス材が得られる。
【0021】
なお、発泡ガラス材の比重は、添加剤量、微粉砕ガラスの粒度、ベルトコンベア上に敷き詰める混合物の厚さ、焼成温度や時間等の製造条件により調整することができる。また、発泡ガラス材が独立間隙あるいは連続間隙を有する多孔質構造となるようにするため、発泡剤の種類と添加量を調整する。発泡ガラス材は、素材がガラスであるため、熱、薬品や油脂類などに対して強く、化学的に安定である。また、腐食することもなく、重金属等の有害物質の溶出もないため、周辺の地盤へ与える影響がない。
【0022】
上記構成の盛土造成構造によれば、地山1の表層部2に形成された排水層3に浸透した雨水が、この排水層3に接続された排水管5によって外部へ排水されるので、雨水による水みちの再形成を防止することができ、地すべりや斜面崩壊の誘発を防止することができる。
【0023】
また、本実施形態における盛土造成構造は、のり肩とのり尻の高低差(盛土のり高)が特に大きい(15m以上)の高盛土部に、地山1の基岩に密着させた重力式擁壁等の突起物6を設置した構成とすることができる。この突起物6により盛土造成部4の滑りを抑制し、高盛土部の脆弱化に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、盛土造成構造に使用して盛土荷重に長期間耐えることが可能な排水管およびこれを用いた盛土造成構造として有用である。
【符号の説明】
【0025】
1 地山
2 表層部
3 排水層
4 盛土造成部
5 排水管
6 突起物
50 不透水性パイプ
51 発泡ガラス材
52 透水性蓋
【要約】
【課題】盛土荷重に長期間耐えることが可能な排水管およびこれを用いた盛土造成構造の提供。
【解決手段】地山1の表層部2に形成された排水層3と、排水層3上に形成された盛土造成部4と、盛土造成部4に埋設され、排水層3に接続された排水管5とを含む盛土造成構造である。排水管5は、不透水性パイプと、不透水性パイプ内に充填された発泡ガラス材とを含む。
【選択図】図1
図1
図2