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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】超小型高感度磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20230417BHJP
   H10N 50/00 20230101ALI20230417BHJP
【FI】
G01R33/02 D
H10N50/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017141410
(22)【出願日】2017-07-21
(65)【公開番号】P2019020346
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-01-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111523
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 良文
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一恵
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 永喜
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】中塚 直樹
【審判官】濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第5839527(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0202291(US,A1)
【文献】特表2009-503443(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2813859(EP,A1)
【文献】特開2014-153309(JP,A)
【文献】米国特許第9577185(US,B1)
【文献】国際公開第2015/060344(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/061513(WO,A1)
【文献】米国特許第6194897(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定用途向け集積回路( 以下、ASICという。) と前記ASICの配線平面上に形成された絶縁保護被膜と前記保護被膜上に形成された基板皮膜および前記基板皮膜上に形成される磁界検出素子とからなる超小型高感度磁気センサにおいて、
前記磁界検出素子は、前記基板皮膜の上に磁性ワイヤと前記磁性ワイヤを周回する検出コイルと電極とを備えており、
前記磁性ワイヤは、導電性と20G以下の異方性磁界を有し、かつ円周方向スピン配列を持つ表面磁区と軸方向にスピン配列を持つ中央部コア磁区の2 相の磁区構造を有しており、
前記基板皮膜上に溝を形成して前記磁性ワイヤを配列し、
前記電極は、前記基板皮膜及び前記絶縁保護被膜を貫いて前記ASICの素子連結用電極と直接接合することを特徴とする超小型高感度磁気センサ。
【請求項2】
請求項1に記載されている磁気センサにおいて、
前記ASICは、前記サンプルホールド回路に入力された前記誘起電流に対応するコイル電圧を外部磁界Hに比例する電気信号に変換する手段を有することを特徴とする磁気センサ。
【請求項3】
請求項1に記載されている磁気センサにおいて、
前記基板皮膜は、厚み1μm~20μmを有することを特徴とする磁気センサ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されている磁気センサにおいて、
前記基板皮膜に形成される前記溝は上面から深さ1μm~10μmとされ、前記磁界検出素子の前記検出コイルの一部又は全部が前記溝に埋設されていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載されている磁気センサにおいて、
前記検出コイルのコイルピッチは10μm以下であることを特徴とする磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GSR素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)との一体形成によりGSRセンサのサイズや厚みを超小型化する技術に関するものである。
ここで、GSRセンサとは超高速スピン回転効果(英語表記;GHz Spin Rotation effect)を基礎にした高感度マイクロ磁気センサである。
【背景技術】
【0002】
高感度マイクロ磁気センサには、横型FGセンサ、縦型FGセンサ、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、MIセンサ、GSRセンサ、高周波キャリアセンサなどがある。現在、これらのセンサは、スマートフォン、自動車、医療、ロボットなどに広く採用されている。その中でもGSRセンサ(特許文献1)は、感度面とサイズ面において優れており、最も注目されている。
【0003】
現在、カテーテルなどのような生体内モーションデバイスに磁気センサを搭載して位置や方位を求めて、その測定値を活用したリモートコントロール治療を実現するための研究(特許文献2、3)が進んでいる。
生体内モーションデバイスに搭載するためには、センササイズは小さいほど好ましいが、それに反比例して検出感度が低下するので、必要な検出感度を保ちながら小型化するのは難しい。例えばカテーテルに搭載する場合には、サイズ面では幅0.1mm、長さ0.3mm、厚み0.05mm程度の超小型サイズで、磁界検出力の面では0.1mGから1mG程度の優れた超高感度性能を兼ね合わせ持つ磁気センサの開発が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第583975号
【文献】特開2015-134166号公報
【文献】特開2017-12840号公報
【文献】特開2014-153309号公報
【文献】再表2014-042055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GSRセンサを小型化するために、GSR素子の小型化、ASICの小型化および両部品の接合方法(特許文献4)など多面的に取り組まれている。しかし、いずれの取り組みも素子とASICを別々に分けて2部品として製造してから、両者を接合しているために小型化、特に厚みの縮小という点で限界があった(特許文献4および5)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ASICとGSR素子との接合について鋭意検討した結果、ASIC本体の絶縁保護被膜上に、GSR素子の基板となる皮膜を形成し、その基板皮膜上に磁性ワイヤを配列する溝を取り付け、磁性ワイヤとその磁性ワイヤを周回する検出コイルからなるGSR素子を一体形成することにより薄型化できることに想到した。
【0007】
GSR素子の基板皮膜としては、SiO2、Al2O3などの酸化物およびSiNなどの窒化物が可能であることを見出した。
すなわち、これらの基板皮膜を用いた場合には、GSR素子をASIC表面上に直接形成する場合に、GSR素子の製造プロセスに含まれているマイクロ溝の加工、CF4ガスプラズマ処理、レジスト加熱キュア処理、酸やアルカリを使う現像処理などの工程があり、ASIC表面の絶縁保護被膜の損傷とその損傷によるGSR素子基板の下のASIC回路の機能性の低下などは認められなかった。
【0008】
さらに、絶縁保護被膜を厚く形成して絶縁保護被膜上に素子を形成する、単層構造とすることも可能であることを見出した。
【0009】
そして、ASICとGSR素子の接合に基板皮膜及び絶縁保護被膜を貫通するスルーホール式接合を採用することにより、電極のサイズを小さくすることでGSR素子全体の面積を小さくできることを想到した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、GSRセンサの薄型化、超小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態および実施例におけるGSRセンサおよびGSR素子の平面図である。
図2図2は、図1のA1-A2線における断面図である。
図3図3は、図1のB1-B2線における断面図である。
図4図4は、実施形態および実施例における電子回路の図である。
図5図5は、素子にパルス電流を通電した時の通電時間の経過とパルス電流の印可との関係図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について、次の通りである。
本発明の超小型高感度磁気センサは、ASICとASICの配線平面上に形成された絶縁保護被膜と保護被膜上に形成された基板皮膜および基板皮膜上に形成される磁界検出素子とからなり、 磁界検出素子は、基板皮膜の上に磁性ワイヤと磁性ワイヤを周回する検出コイルと電極からなっている。
磁性ワイヤは、導電性と20G(20×10 ―4 テスラ(T))以下の異方性磁界を有し、かつ円周方向スピン配列を持つ表面磁区と軸方向にスピン配列を持つ中央部コア磁区の2相の磁区構造を有している。検出コイルは、コイルピッチ10μm以下である。
電極は、基板皮膜及び絶縁保護被膜を貫いてASICの素子連結用電極とスルーホール方式で直接接合する。
【0013】
本発明によれば、ASIC表面の絶縁保護被膜上に磁界検出素子の基板としての機能を果たすことができる厚みの皮膜を形成し、その皮膜を基板として用いる。基板皮膜に溝を取り付け、溝に磁性ワイヤを整列させて磁界検出素子を作製する。すなわち、ASICと一体形成した磁界検出素子からなるセンサは薄型化が可能となり、超小型を実現できる。
【0014】
また、本発明の超小型高感度磁気センサのASICは、磁界検出素子の磁性ワイヤに0.2GHz~4.0GHzの換算周波数のパルス電流を流す手段と、磁性ワイヤにパルス電流を流した時に生じるコイル電圧を検知する手段と、コイル電圧を外部磁界Hに比例する電気信号に変換する手段を有する。なお、0.2~4.0GHzのパルス電流を流すことにより高感度化が実現される。
【0015】
また、本発明の超小型高感度磁気センサの基板皮膜の厚みは、1μm~20μmからなる。
本発明によれば、基板皮膜は磁性ワイヤを収める溝を付けられるだけの厚みを必要とする。想定される磁性ワイヤの直径は1μm~10μmである。また、基板皮膜が厚すぎると絶縁保護被膜との密着性に問題が生ずる。従って、基板皮膜の厚みは1μm~20μmが望ましい。また絶縁保護被膜に基板としての機能を有するのに十分な厚さを確保すれば、絶縁保護被膜が基板皮膜を兼ねる単層構造も可能である。
【0016】
さらに、本発明の超小型高感度磁気センサは、磁界検出素子は基板皮膜上面から深さ1μm~10μmの溝を配置し、検出コイルの一部又は全部が埋設されている。
本発明によれば、磁界検出素子の小型化を図ることができる。
【0017】
以下に、GSRセンサとGSRセンサ素子(以下、素子という。)の平面図を図1に示し、その平面図のA1-A2線の断面図を図2に、B1-B2線の断面図を図3に示して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本説明では、磁性ワイヤは2本からなり、絶縁保護被膜と基板皮膜の2層からなる形態について説明する。
本発明の超小型高感度磁気センサ(以下、センサという。)は、GSRセンサ素子1(以下、素子という。)とASIC4およびASIC4からの外部配線用電極(45および46)からなる。
【0018】
<センサ>
センサを構成する素子1は、ASIC4の絶縁保護被膜10aの上に形成される基板皮膜10bの上に2本の磁性ワイヤ2(21および22)とその磁性ワイヤを周回する1個のコイル3およびワイヤ通電用の2個の電極(24および25)とコイル電圧検出用の2個の電極(34および35)ならびに磁性ワイヤとワイヤ通電用電極との接続部(26および27)、コイルとコイル検出電極との接続部および素子側のコイル電極とASIC側のコイル電極とのスルーホール方式の接合部、素子側のワイヤ電極とASIC側のワイヤ電極とのスルーホール方式の接合部(43および44)からなる。
また、素子2には磁性ワイヤ2本に逆向きのパルス電流を流す手段としてワイヤ連結部23からなる。
そして、ASIC4は、素子1との間は2個のコイル電極および2個のワイヤ電極がそれぞれスルーホール方式の電極接合部により接続されて、素子にパルス電流を流したときに検出コイルに生じるコイル電圧を検知し、コイル電圧を外部磁界に変換する電子回路からなる。また、ASICには外部配線用電極(45および46)が配置されている。
【0019】
ここで、GSRセンサにおける検知したコイル電圧から外部磁界を求める方法について説明する。
外部磁界Hとコイル電圧Vsは、次式(1)のような数学的関係で表され、本関係式を使って外部磁界Hに変換するものである。
Vs=V0・2L・πD・p・Nc・f・sin(πH/2Hm) (1)
ここで、Vsはコイル出力電圧、V0は比例定数、Lはワイヤの長さ、Dはワイヤの直径、pはパルス電流の表皮深さ、Ncはコイルの巻き数、fはパルス周波数、Hmはコイル出力電圧が最大値を取る時の外部磁界強度である。
【0020】
<素子の構造>
素子1の構造は、図1図3に示すとおりである。
素子1のサイズは、基板10のサイズである幅0.07mm~0.4mm、長さ0.25mm~1mmである。厚みは10μm~15μmである。よって、ASIC4の厚みが30μm~100μmであることからセンサの厚みは40μm~115μmとなる。
素子1の中央部には、磁性ワイヤ2本(21および22)が平行に整列配置できるように幅20μm~60μm、深さ1μm~10μmの溝11が基板皮膜10bに形成されている。2本の磁性ワイヤ(21および22)は近接しており、2本の磁性ワイヤの間隔は1μm~10μmである。そして、磁性ワイヤ21と磁性ワイヤ22とは絶縁材料で隔離されおり、例えば絶縁性分離壁12による隔離が好ましい。
【0021】
<磁性ワイヤ>
磁性ワイヤ2は、CoFeSiB合金の直径1μm~10μmである。磁性ワイヤ2の周囲は絶縁性材料、例えば絶縁性ガラス材料で被覆されていることが好ましい。長さは0.07mm~1mmである。
磁性ワイヤ2の異方性磁界は20G(20×10 ―4 T)以下で、円周方向スピン配列を持つ表面磁区と軸方向にスピン配列を持つ中央部コア磁区の2相の磁区構造を有する。
【0022】
<コイル>
コイル3は、コイル巻き数は6回~180回、コイルピッチは0.2μm~10μmである。コイル3と磁性ワイヤ2との間隔は0.2μm~3μmである。コイル平均内径は2μm~35μmである。
【0023】
<素子の製造方法>
ASICの表面の絶縁保護被膜10a上に基板皮膜10bを形成し、その基板皮膜10bに深さ1μm~10μmの溝を取り付け、溝面に沿ってコイルの一部~全部を埋設するように素子を形成することによってASIC表面から素子部1の厚みを20μm以下にすることができる。さらにASICの厚みを30μm程度とすることによりセンサ全体の厚みを50μm程度とすることができる。
【0024】
ASIC上面の絶縁保護被膜10aの上に基板皮膜10bを形成して素子1を形成できる。絶縁保護被膜と基板皮膜の2層の膜を形成するが、絶縁保護被膜に基板としての機能を有するのに十分な厚さを確保すれば1層の膜でも可能である。2層の膜の例として、SiO2(二酸化珪素)膜を0.5μm~2μmの厚みでASIC表面上に真空蒸着法などにより形成し、その膜の上面にさらにSiN(窒化珪素)膜を1μm~10μmの厚みで形成する。SiN膜に深さ1μm~10μmの溝を取り付け、溝面に沿ってコイルの一部あるいは全部を埋設するように素子を形成する。
【0025】
基板皮膜10bに形成されている溝11に沿って下コイル31と基板皮膜面上に電極配線を行う。その後、溝11の中央部に絶縁性分離壁12を形成して2つの溝形状とし、そこに2本のガラス被覆した磁性ワイヤ(21および22)をそれぞれ整列配置する。
次いで、基板皮膜全面に絶縁性レジストを塗布する。こうして磁性ワイヤ(21および22)は溝11内に固定される。この塗布の際に磁性ワイヤ(21および22)の上部は薄く塗布する。そこに上コイル32をフォトリソ技術で形成する。
【0026】
ここで、基板皮膜および絶縁保護被膜の特性として、素子1の製造プロセスにおけるマイクロ溝加工、CF4ガスプラズマ処理、レジスト加熱キュア処理、酸やアルカリを使う現像処理などの工程における耐性とASIC回路の機能性低下の防止が求められる。従って、ここで求められる特性を満たせば、基板皮膜の材質は酸化物及び窒化物に限るものではない。
なお、ガラス被覆していない磁性ワイヤ2を用いる場合には、下コイル31と磁性ワイヤ(21および22)とが電気的な接触が生じないように予め絶縁性材料を塗布する。
【0027】
コイルの作製は、基板皮膜10bに形成された溝11の溝面および溝11の両側に沿って凹形状の下コイル31が形成される。凸形状の上コイル32はジョイント部33を介して下コイル31と電気的接合がされ、らせん状のコイル3となる。
【0028】
2本の磁性ワイヤ(21および22)の端部については、絶縁性被膜材のガラスを除去して金属蒸着による電気的接続をできるようにする。
【0029】
<磁性ワイヤとコイルの配線構造>
磁性ワイヤ2とコイル3の配線構造について、図1を用いて説明する。
磁性ワイヤ2の配線構造は、ワイヤ入力電極(+)24は上部の磁性ワイヤ21と接続され、ワイヤ連結部23を介して下部の磁性ワイヤ22に接続されている。下部の磁性ワイヤ22はワイヤ出力電極(-)25に接続されている。
このワイヤ連結部により、磁性ワイヤ21では右部から左部への左向きのパルス電流が流れ、磁性ワイヤ22では左部から右部への右向き(磁性ワイヤ21とは逆向きになる。)のパルス電流を流すことができる。
【0030】
コイル3の配線構造は、コイル出力電極(+)34はコイル3の上端部と接続され、コイルグランド電極(-)はコイル3の下端部と接続されている。
【0031】
素子側の電極とASIC側の電極とは、図3の例に示すように絶縁保護被膜10aおよび基板皮膜10bを貫通するスルーホール方式の接合部(43および44)を介して電気的に接続される。
図3は、素子側の磁性ワイヤ入力電極(+)24は絶縁保護被膜10aおよび基板皮膜10bを貫通するスルーホール方式の電極接合部(+)43を介してASIC側のワイヤ電極(+)41と接続され、素子側の磁性ワイヤ出力電極(-)25は絶縁性保護被膜10aおよび基板皮膜10bを貫通するスルーホール方式の電極接合部(-)44を介してASIC側のワイヤ電極(-)42に接続されていること示している。
同様に、素子側のコイル電極とASIC側のコイル電極とは絶縁保護被膜10aおよび基板皮膜10bを貫通する電極接合部を介して接続されている。
【0032】
<電子回路>
電子回路5は、特許文献1に記載のパルス対応型バッファー回路を参照し、図4に示す。
電子回路5は、コイル電圧を出力する素子52が接続されており、その素子52にパルス電流を発信するパルス発振回路51、コイル電圧を入力する入力回路53、パルス対応型バッファー回路54、コイルの立ち上がりパルス出力波形のピーク電圧を検波する電子スイッチ56とピーク電圧を保持する容量4pF~100pFのコンデンサ57からなるサンプルホールド回路55、および増幅器58のプログラミングアンプにて増幅してAD変換を行なう。2本のワイヤにて信号を外部の信号処理装置に転送する。
【0033】
AD変換は14ビット~16ビットである。電子スイッチのon-offを細かくするためにはコンデンサ容量は4pF~8pFが好ましい。
【0034】
パルス電流の換算周波数は0.2GHz~4GHzにて、パルス電流の強度は50mA~200mA、パルス通電時間は2nsec以下である。図5には、素子にパルス電流を通電した時の通電時間の経過とパルス電流の印可との関係を表している。この図5の例では、0.5nsecで立ち上がり、その印可状態で所定のパルス時間0.5nsecを保持し、0.5nsecで立ち下がる。
【0035】
コイル出力は正弦波出力にて測定レンジ3G~100G(3×10 ―4 ~100×10 ―4 T)で、その感度は50mV/G~3V/G(50×10 mV/T~3×10 V/T)である。そのコイル出力の直線性は0.3%以下である。
【実施例
【0036】
実施例に係るGSRセンサとGSRセンサ素子の平面図を図1に示し、その平面図のA1-A2線の断面図を図2に、B1-B2線の断面図を図3に示して、本発明の実施例について説明する。
ここで、GSRセンサの構成および素子の構成、電子回路は上述の実施形態による。
【0037】
素子1のサイズは、幅0.10mm、長さ0.40mmからなる。厚みはASIC4の厚み40が50μm、絶縁保護被膜10aおよび基板皮膜10bの厚み14が8μmで、素子の凸部の厚みが2μm、これらを合計したセンサの厚みは60μmである。
素子1の中央部は、磁性ワイヤ2本(21および22)が平行に整列配置できるように幅20μm、深さ3μmの溝11が基板皮膜10bに形成されている。2本の磁性ワイヤ(21および22)は近接しており磁性ワイヤの間隔は3μmであり、磁性ワイヤ(21および22)同士は厚さ3μmの絶縁性分離壁12で隔離されている。
【0038】
磁性ワイヤ2は、CoFeSiBアモルファス合金の直径5μmである。磁性ワイヤ2の周囲は絶縁性ガラスで被覆されている。長さは0.40mmである。
磁性ワイヤ2の異方性磁界は15Gで、円周方向スピン配列を持つ表面磁区と軸方向にスピン配列を持つ中央部コア磁区の2相の磁区構造を有している。
【0039】
コイル3は、コイル巻き数は100回、コイルピッチは3μmである。コイル3と磁性ワイヤ2との間隔は2μmで、コイル平均内径は8μmである
【0040】
ASIC上面の絶縁保護被膜10aに厚み7μmの基板皮膜10bを形成し、そこに深さ3μmの溝を取り付け、素子1を作製する。
【0041】
電子回路5のコンデンサ57の静電容量は6pFである。パルス電流の換算周波数は0.4GHzにて、パルス電流の強度は50mA、パルス時間は1nsecである。立ち上がりパルスのピーク電圧のタイミングを検波する。電子スイッチはon-offからなりその開閉時間は0.1nsecで繰り返す。電子回路5のAD変換は16ビットである。
【0042】
コイル出力は、測定レンジ3Gで、その感度は1000mV/Gである。直線性は0.3%以下である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、素子とASICとを一体化してGSRセンサの超小型化を実現するもので、生体内のモーションデバイスのように超小型で高性能を要求される用途での使用が期待される。
【0044】
本発明は、自動車用あるいはウェアラブルコンピュータ用などの小型・超高感度GSRセンサに応用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:GSRセンサ素子
10a:絶縁保護被膜a、10b:基板皮膜b、11:溝、12:絶縁性分離壁、13:絶縁性レジスト、14:素子の厚み
2:磁性ワイヤ
21:対をなす磁性ワイヤの一つ、22:対をなす磁性ワイヤの他の一つ、23:ワイヤ連結部、24:ワイヤ入力電極(+)、25:ワイヤ出力電極(-)、26:ワイヤ―電極接続部(+)、27:ワイヤ―電極接続部(-)
3:コイル
31:下コイル、32:上コイル、33:ジョイント部、34:コイル出力電極(+)、35:コイルグランド電極(-)
4:ASIC
40:ASICの厚み、41:ASIC側ワイヤ電極(+)、42:ASIC側ワイヤ電極(-)、43:スルーホール方式電極接合部(+)、44:スルーホール方式電極接合部(-)、45:外部配線用電極、46:外部配線用アース電極、47:外部配線
5:電子回路
51:パルス発信回路(パルス発信器)、52:素子、53:入力回路、54:バッファー回路、55:サンプルホールド回路、56:電子スイッチ、57:コンデンサ、58:増幅器
図1
図2
図3
図4
図5