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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/10 20060101AFI20230417BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F16H57/10
B60T1/06 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019043244
(22)【出願日】2019-03-10
(65)【公開番号】P2020143778
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(72)【発明者】
【氏名】平山 大樹
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027245(JP,A)
【文献】特開2012-040941(JP,A)
【文献】特開平11-171080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/10
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星減速ギアと、前記遊星減速ギアのキャリアの内周側を係止するパークロック機構と、を有し、
前記キャリアは、筒状のインターナルギア部を有し、
前記インターナルギア部の内周において径方向に移動するパーク爪が配置され、
前記パーク爪を複数有し、
パークロック状態において複数の前記パーク爪の一部が前記インターナルギア部に係合すると共に、複数の前記パーク爪の他の一部が前記インターナルギア部に非係合となることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項において、
前記遊星減速ギアは、モータの下流に接続されており、
前記モータと前記遊星減速ギアは軸方向にオーバーラップすることを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動自動車用の動力伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-103676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力伝達装置は、回転軸の径方向の大きさを縮小することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
遊星減速ギアと、前記遊星減速ギアのキャリアの内周側を係止するパークロック機構と、を有し、
前記キャリアは、筒状のインターナルギア部を有し、
前記インターナルギア部の内周において径方向に移動するパーク爪が配置され、
前記パーク爪を複数有し、
パークロック状態において複数の前記パーク爪の一部が前記インターナルギア部に係合すると共に、複数の前記パーク爪の他の一部が前記インターナルギア部に非係合となる構成の動力伝達装置とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、動力伝達装置の径方向の縮小が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図2】動力伝達装置の減速機構周りの拡大図である。
図3】動力伝達装置のパークロック機構を説明する図である。
図4】動力伝達装置のパークロック機構を説明する図である。
図5】変形例にかかるパークロック機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する図である。
図2は、動力伝達装置1の減速機構3(第1遊星減速ギア4、第2遊星減速ギア5)周りの拡大図である。
【0009】
動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動装置6に入力する減速機構3(第1遊星減速ギア4、第2遊星減速ギア5)と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、を有している。
【0010】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、減速機構3(第1遊星減速ギア4、第2遊星減速ギア5)と、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
モータ2の出力回転は、減速機構3で減速されて差動装置6に入力された後、ドライブシャフト8(8A、8B)を介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。図1では、ドライブシャフト8Aが、動力伝達装置1を搭載した車両の左輪に回転伝達可能に接続されていると共に、ドライブシャフト8Bが、右輪に回転伝達可能に接続されている。
【0011】
ここで、第1遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されており、第2遊星減速ギア5は、第1遊星減速ギア4の下流に接続されている。差動装置6は、第2遊星減速ギア5の下流に接続されており、ドライブシャフト8(8A、8B)は、差動装置6の下流に接続されている。
【0012】
本実施形態では、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12と、外側ケース13と、内側ケース14で、動力伝達装置1の本体ケース9を構成している。
そして、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12で、モータ2のケース(第1ケース部材)を構成している。
外側ケース13と内側ケース14で、減速機構3と差動装置6を収容するケース(第2ケース部材)を構成している。
【0013】
ここで、モータハウジング10の内径側で、外側カバー11と内側カバー12との間に形成される空間Saは、モータ2を収容するモータ室となっている。
外側ケース13と内側ケース14の間に形成される空間Sbは、減速機構3と差動装置6を収容するギア室となっている。
【0014】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を所定間隔で囲むステータコア25とを、有している。
【0015】
モータシャフト20は、ドライブシャフト8Bの挿通孔200を有する筒状部材であり、モータシャフト20は、ドライブシャフト8Bに外挿されている。
モータシャフト20は、ドライブシャフト8Bに外挿された状態で、ドライブシャフト8Bに対して相対回転可能に設けられている。
【0016】
モータシャフト20では、長手方向の一端20a側の連結部201と、他端20b側の被支持部202の外周に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
モータシャフト20の一端20a側は、ベアリングB1を介して、後記する内側カバー12の円筒状のモータ支持部121で回転可能に支持されている。
モータシャフト20の他端20b側は、ベアリングB1を介して、外側カバー11の円筒状のモータ支持部111で回転可能に支持されている。
【0017】
モータ2は、ロータコア21の外周を所定間隔で囲むモータハウジング10を有している。本実施形態では、モータハウジング10の一端10aに、内側カバー12が接合されており、モータハウジング10の他端10bに、外側カバー11が接合されている。
【0018】
モータハウジング10の一端10aと他端10bには、シールリングS、Sが設けられている。モータハウジング10の一端10aは、当該一端10aに設けたシールリングSにより、内側カバー12の接合部120に隙間なく接合されている。
モータハウジング10の他端10bは、当該他端10bに設けたシールリングSにより、外側カバー11の環状の接合部110に隙間なく接合されている。
【0019】
本実施形態では、外側カバー11をモータハウジング10の他端10bに固定すると、モータ支持部111が、後記するコイルエンド253bの内径側で、ロータコア21の他端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置される。
内側カバー12をモータハウジング10の一端10aに固定すると、モータ支持部121が、後記するコイルエンド253aの内径側で、ロータコア21の一端部21aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置される。
【0020】
モータハウジング10の内側では、外側カバー11側のモータ支持部111と、内側カバー12側のモータ支持部121との間に、ロータコア21が配置されている。
【0021】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものであり、珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20の連結部201と被支持部202との間の中間領域203に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成しており、珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0022】
回転軸X方向におけるロータコア21の一端部21aは、モータシャフト20の大径部204で位置決めされている。ロータコア21の他端部21bは、モータシャフト20に圧入されたストッパ205で位置決めされている。
【0023】
ステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものであり、電磁鋼板の各々は、モータハウジング10の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252を、有している。
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用しており、ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0024】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線253を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0025】
モータシャフト20では、大径部204よりも一端20a側の領域の外周に、ベアリングB1が圧入されている。
図2に示すように、ベアリングB1のインナレースB1aは、回転軸X方向の一方の側面が、モータシャフト20の外周に設けた段部206に当接している。インナレースB1aは、他方の側面に、モータシャフト20の外周に圧入されたリング状のストッパ207が当接している。
ストッパ207によりベアリングB1は、インナレースB1aを、段部206に当接させた位置で位置決めされている。
【0026】
モータシャフト20の一端20aは、モータ支持部121を回転軸X方向に貫通して、外側ケース13と内側ケース14との間の空間Sb内に位置している。
モータシャフト20の一端20aは、第1遊星減速ギア4のサンギア41の側面41aに、間隔をあけて対向している。
【0027】
モータ支持部121は、モータシャフト20の外周を所定間隔で囲んでいる。モータ支持部121とモータシャフト20との間には、リップシールRSが設置されている。
リップシールRSは、モータ支持部121の内周と、モータシャフト20の外周と隙間を封止している。
【0028】
リップシールRSは、モータハウジング10の内径側の外側カバー11と内側カバー12との間の空間Sa(モータ室)と、外側ケース13と内側ケース14との間の空間Sb(ギア室)とを区画している。
リップシールRSは、空間Sb内のオイルの、空間Sa(モータ室)内の進入を阻止するために設けられている。
【0029】
内側カバー12では、内径側に位置するモータ支持部121と、外径側に位置する接合部120とが、回転軸X方向に離れて位置している。
動力伝達装置1では、接合部120の内径側の空間を利用して、第1遊星減速ギア4が設けられている。
【0030】
図2に示すように、モータシャフト20の連結部201は、ロータコア21が外挿された中間領域203よりも大きい内径で形成されている。
連結部201の内側には、サンギア41の円筒状の連結部411が挿入されている。この状態において、モータシャフト20の一端20a側の連結部201と、サンギア41の連結部411とが、相対回転不能にスプライン嵌合している。
【0031】
サンギア41は、内径側の側面41aから回転軸X方向に延びる連結部411を有している。連結部411は、サンギア41と一体に形成されており、サンギア41の内径側と連結部411の内径側とに跨がって、貫通孔410が形成されている。
サンギア41は、貫通孔410を貫通したドライブシャフト8Bの外周で回転可能に支持されている。
【0032】
回転軸Xの径方向におけるサンギア41の外径側には、内側カバー12の接合部120の内周に固定されたリングギア42が位置している。回転軸Xの径方向において、サンギア41とリングギア42の間では、ピニオン軸44で回転可能に支持されたピニオンギア43が、サンギア41の外周と、リングギア42の内周に噛合している。
【0033】
ピニオンギア43は、ニードルベアリングNBを介して、ピニオン軸44の外周で回転可能に支持されている。ピニオン軸44は、ピニオンギア43を回転軸Xに沿う軸線X1方向に貫通している。ピニオン軸44の長手方向の一端と他端は、キャリア45の一対の側板部451、452で支持されている。
【0034】
側板部451、452は、回転軸X方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。
側板部451、452の間では、複数のピニオンギア43が回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数(例えば、4つ)設けられている。
【0035】
モータ2側に位置する一方の側板部452には、当該側板部452の外周縁を囲む周壁部454が設けられている。周壁部454は、回転軸Xに対して同心に配置されていると共に、回転軸Xに沿ってモータ支持部121側(図中、右方向)に延びている。
周壁部454は、モータ支持部121の外径側で接合部120との間に設けられた凹部129に、回転軸X方向から挿入されている。
【0036】
差動装置6側に位置する他方の側板部451には、円筒状の連結部453が内径側に設けられている。
側板部451において連結部453は、回転軸Xに対して同心に配置されていると共に、回転軸Xに沿って、差動装置6に近づく方向(図中、左方向)に突出している。
【0037】
内側カバー12から見て差動装置6側には、内側ケース14が位置している。内側ケース14は、回転軸X側に延びる支持壁部141を有している。支持壁部141は、キャリア45の側板部451と回転軸X方向で間隔をあけて配置されている。
【0038】
側板部451の内径側に設けられた連結部453は、支持壁部141の中央の開口140を、モータ2側から差動装置6側の左方に貫通している。
連結部453の先端453aは、内側ケース14に取り付けられた外側ケース13内に位置している。回転軸X方向において連結部453の先端453aは、第2遊星減速ギア5のサンギア51の側面51aに、間隔をあけて対向している。
【0039】
連結部453の内側には、サンギア51から延びる円筒状の連結部511が挿入されてスプライン嵌合しており、第1遊星減速ギア4側の連結部453と、第2遊星減速ギア5側の連結部511とが、相対回転不能に連結されている。
【0040】
サンギア51は、内径側の側面51aから回転軸X方向に延びる連結部511を有している。連結部511は、サンギア51と一体に形成されており、サンギア51の内径側と連結部511の内径側とに跨がって、貫通孔510が形成されている。
サンギア51は、貫通孔510を貫通したドライブシャフト8Bの外周で回転可能に支持されている。
【0041】
サンギア51の差動装置6側の側面51bは、後記するデフケース60の筒状の支持部601に、回転軸X方向の隙間をあけて対向しており、側面51bと支持部601との間には、ニードルベアリングNBが介在している。
【0042】
サンギア51は、前記した第1遊星減速ギア4側の連結部453の延長上で、段付きピニオンギア53の大径歯車部531に噛合している。
【0043】
段付きピニオンギア53は、サンギア51に噛合する大径歯車部531と、大径歯車部531よりも小径の小径歯車部532とを有している。
段付きピニオンギア53は、大径歯車部531と小径歯車部532が、回転軸Xに平行な軸線X2方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
【0044】
段付きピニオンギア53は、大径歯車部531と小径歯車部532の内径側を軸線X2方向に貫通した貫通孔530を有している。
段付きピニオンギア53は、貫通孔530を貫通したピニオン軸54の外周で、ニードルベアリングNBを介して回転可能に支持されている。
ピニオン軸54の長手方向の一端と他端は、デフケース60と一体に形成された側板部651と、この側板部651に間隔をあけて配置された側板部551で支持されている。
【0045】
側板部651、551は、回転軸X方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。
側板部651、551の間では、複数の段付きピニオンギア53が回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数(例えば、3つ)設けられている。
【0046】
小径歯車部532の各々は、リングギア52の内周に噛合している。リングギア52は、外側ケース13の内周にスプライン嵌合しており、リングギア52は、外側ケース13との相対回転が規制されている。
【0047】
側板部551の内径側には、第1遊星減速ギア4側に延びる筒状部552が設けられている。筒状部552は、支持壁部141の中央の開口140を、差動装置6側からモータ2側(図中、右側)に貫通している。回転軸X方向において筒状部552の先端552aは、第1遊星減速ギア4のキャリア45の側板部451に、間隔をあけて対向している。
【0048】
筒状部552は、第1遊星減速ギア4側の連結部453と、第2遊星減速ギア5側の連結部511との噛み合い部分の径方向外側に位置している。筒状部552の外周には、支持壁部141の開口140の内周に固定されたベアリングB2が接触している。側板部551の筒状部552は、ベアリングB2を介して、支持壁部141で回転可能に支持されている。
【0049】
第2遊星減速ギア5では、キャリア55を構成する側板部551と側板部651のうちの一方の側板部651は、差動装置6のデフケース60と一体に形成されている。
【0050】
図1に示すように、デフケース60は、シャフト61と、かさ歯車62A、62Bと、サイドギア63A、63Bとを、内部に収納する中空状に形成されている。
デフケース60では、回転軸X方向(図中、左右方向)の両側部に、筒状の支持部601、602が設けられている。支持部601、602は、シャフト61から離れる方向に、回転軸Xに沿って延出している。
【0051】
デフケース60の支持部602は、ベアリングB2を介して、外側ケース13に設けた円筒状の第1支持部131で回転可能に支持されている。
支持部602には、外側ケース13の開口部130を貫通したドライブシャフト8Aが、回転軸X方向から挿入されており、ドライブシャフト8Aは、支持部602で回転可能に支持されている。
開口部130の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Aの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Aの外周と開口部130の内周との隙間が封止されている。
【0052】
支持部601には、外側カバー11の開口部114を貫通したドライブシャフト8Bが、回転軸X方向から挿入されている。
ドライブシャフト8Bは、モータ2のモータシャフト20と、第1遊星減速ギア4のサンギア41と、第2遊星減速ギア5のサンギア51の内径側を回転軸X方向に横切って設けられており、ドライブシャフト8Bの先端側が、支持部601で回転可能に支持されている。
【0053】
外側カバー11の開口部114の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Bの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Bの外周と開口部114の内周との隙間が封止されている。
【0054】
デフケース60の内部では、ドライブシャフト8A、8Bの先端部の外周に、サイドギア63A、63Bがスプライン嵌合しており、サイドギア63A、63Bとドライブシャフト8(8A、8B)とが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0055】
デフケース60には、回転軸Xに直交する方向に貫通した軸孔60a、60bが、回転軸Xを挟んで対称となる位置に設けられている。
軸孔60a、60bは、回転軸Xに直交する軸線Y上に位置しており、シャフト61の一端61a側および他端61b側が挿入されている。
【0056】
シャフト61の一端61a側および他端61b側は、ピンPでデフケース60に固定されており、シャフト61は、軸線Y周りの自転が禁止されている。
本実施形態では、シャフト61の一端61aまたは他端61bが最も下部側に位置した際に、シャフト61の一端61aまたは他端61bが少なくとも潤滑油内に位置する高さまで、外側ケース13内にオイルOL(潤滑油)が貯留されている。
【0057】
シャフト61は、デフケース60内において、サイドギア63A、63Bの間に位置しており、軸線Yに沿って配置されている。
デフケース60内においてシャフト61には、かさ歯車62A、62Bが外挿して回転可能に支持されている。
かさ歯車62A、62Bは、シャフト61の長手方向(軸線Yの軸方向)で間隔を空けて2つ設けられており、かさ歯車62A、62Bは、互いの歯部を対向させた状態で配置されている。
【0058】
デフケース60内において、回転軸X方向におけるかさ歯車62A、62Bの両側には、サイドギア63A、63Bが位置している。
サイドギア63A、63Bは、互いの歯部を対向させた状態で、回転軸X方向に間隔を空けて2つ設けられており、かさ歯車62A、62Bとサイドギア63A、63Bとは、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0059】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、第1遊星減速ギア4とモータ2との間に、パークロック機構7が設けられている。
パークロック機構7は、第1遊星減速ギア4のキャリア45の周壁部454と、内側カバー12のモータ支持部121を利用して設けられている。
【0060】
図3の(a)は、動力伝達装置1の要部拡大図であって、パークロック機構7を説明する断面図である。図3の(b)は、図3の(a)におけるA-A断面図である。
図3の(b)に示すように、パークロック機構7は、キャリア45の周壁部454に設けた歯部454aおよび歯溝部454bと、モータ支持部121の外周から出没可能な係合部材71と、を有している。
【0061】
回転軸X方向から見て、周壁部454の内周には、回転軸X側(内径側)に突出する歯部454aが設けられている。歯部454aは、回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数設けられており、周壁部454の内周では、歯部454aと、隣接する歯部454a、454aの間の歯溝部454bとが、回転軸X周りの周方向に交互に配置されている。
【0062】
本実施形態では、合計7つの歯部454aが設けられている。
各歯部454aの回転軸X周りの周方向の中心と、回転軸Xを通る直線La~Lg(周壁部454の直径線に相当)では、回転軸Xを挟んだ一方側に歯部454aが位置すると共に、他方側に歯溝部454bが位置するように、歯部454aと歯溝部454bの位置関係が設定されている。
【0063】
図3の(a)に示すように、内側カバー12のモータ支持部121では、凹部129に対向する領域の外周に、係合部材71の収容穴126が設けられている。
図3の(b)に示すように、収容穴126もまた、回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数設けられており、収容穴126の各々に、係合部材71が収容されている。
【0064】
本実施形態では、合計6つの収容穴126が設けられている。
図4に示すように、各収容穴126の回転軸X周りの周方向の中心と、回転軸Xを通る直線Lx、Ly、Lz(周壁部454の直径線に相当)では、回転軸Xを挟んだ一方側と他方側に、収容穴126が位置するように、収容穴126の位置が設定されている。
【0065】
収容穴126は、円柱形状の収容空間を有しており、各収容穴126に収容された係合部材71の各々は、回転軸Xの径方向に移動可能に設けられている。
図3の(a)に示すように、係合部材71は、収容穴126の内径と整合する外径で形成された基部710と、基部710の外周に設けられた爪部711(パーク爪)と、基部710の内周に設けられたスプリング係合部712と、を有している。
【0066】
回転軸Xの径方向において、爪部711は、基部710の外周面から径方向外側に突出しており、基部710から離れるにつれて外径が小さくなる円錐台形状を有している。爪部711は、前記した周壁部454の内周の歯溝部454bに係合可能な大きさで形成されている。
【0067】
回転軸Xの径方向において、スプリング係合部712は、基部710の内周面から径方向内側(回転軸X側)に突出しており、基部710よりも小さい外径で形成されている。
基部710と爪部711とスプリング係合部712とは一体に形成されており、スプリング係合部712には、収容穴126内に設置されたスプリングSpの一端が接続されている。
【0068】
スプリングSpの他端は、収容穴126の底に固定されている。図3の(a)に示すように、収容穴126の内径側には、モータ支持部121内に設けたオイルOLの供給路121aが開口している。収容穴126の各々には、図示しない油圧制御回路から、パークロック機構7の作動用の油圧が供給されるようになっている。
【0069】
係合部材71に一端が連結されたスプリングSpは、係合部材71を内径側(収容穴126の奥側)に引き込む方向の引張り力を作用させている。そのため、図4に示すように、収容穴126内にオイルOLが供給されていない状態(パークロック機構7の非作動状態)では、係合部材71が収容穴126に収容された位置で保持されるようになっている。
図3の(b)に示すように、収容穴126内にオイルOLが供給されている状態(パークロック機構7の作動状態)では、係合部材71が、爪部711を収容穴126から外径側に突出させた位置まで到達するようになっている。
【0070】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、減速機構3(第1遊星減速ギア4、第2遊星減速ギア5)と、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
【0071】
モータ2の駆動により、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、第1遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0072】
第1遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部、ピニオンギア43を支持するキャリア45が、入力された回転の出力部となっている。
【0073】
サンギア41がモータ2の出力回転で回転軸X回りに回転すると、サンギア41の外周とリングギア42の内周に噛合したピニオンギア43が、軸線X1回りに回転する。
ここで、リングギア42は、内側カバー12(固定側部材)の内周にスプライン嵌合しており、内側カバー12との相対回転が規制されている。
そのため、ピニオンギア43は、軸線X1回りに回転しながら、回転軸X周りに公転する。これにより、ピニオンギア43を支持するキャリア45(側板部451、452)が、モータ2の出力回転よりも低い回転速度で回転軸X周りに回転する。
【0074】
前記したようにキャリア45の連結部453は、第2遊星減速ギア5側のサンギア51の連結部511に連結されており、キャリア45の回転(第1遊星減速ギア4の出力回転)は、第2遊星減速ギア5のサンギア51に入力される。
なお、第1遊星減速ギア4の出力部(キャリア45)が、第2遊星減速ギア5の入力部(サンギア51)とクラッチ、変速機構等の別部材を介さずに連結されている。
即ち、第1遊星減速ギア4の出力部(キャリア45)と、第2遊星減速ギア5の入力部(サンギア51)は、一体回転する(常時、一体回転する)。
よって、別部材が動力伝達経路上にない分だけ、第1遊星減速ギア4と第2遊星減速ギア5の距離を近づけることができるので軸方向の短縮に寄与する。
【0075】
第2遊星減速ギア5では、サンギア51が、第2遊星減速ギア5の出力回転の入力部となっており、段付きピニオンギア53を支持するキャリア55が、入力された回転の出力部となっている。
【0076】
サンギア51が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア53(大径歯車部531、小径歯車部532)が、サンギア51側から入力される回転で、軸線X2回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア53の小径歯車部532は、外側ケース13の内周に固定されたリングギア52に噛合している。そのため、段付きピニオンギア53は、軸線X2回りに自転しながら、回転軸X周りに回転する。
【0077】
これにより、段付きピニオンギア53を支持するキャリア55(側板部551、651)が、第1遊星減速ギア4側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア53では、小径歯車部532の外径R2が大径歯車部531の外径R1よりも小さくなっている(図2参照)。
そのため、第2遊星減速ギア5のサンギア51に入力された回転は、段付きピニオンギア53により、第1遊星減速ギア4の場合よりも大きく減速されたのちに、キャリア55の側板部651が一体に形成されたデフケース60(差動装置6)に出力される。
【0078】
そして、デフケース60に入力された回転は、ドライブシャフト8(8A、8B)を介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0079】
動力伝達装置1を搭載した車両の停止または駐車時に、パークロック機構7の作動が指示されると、動力伝達装置1の図示しない制御部が、オイルポンプを駆動して、パークロック機構7の作動用の油圧を、図示しない油圧制御回路からモータ支持部121内の収容穴126に供給する。
【0080】
そうすると、係合部材71が、収容穴126に供給されたオイルOLの圧力で、爪部711を収容穴126の外側に突出させる方向(回転軸Xの径方向外側)に向けて変位する。
図3の(b)に示すように、第1遊星減速ギア4の側板部452と一体に形成された周壁部454が、モータ支持部121の外周を囲んでいる。そして、周壁部454の内周には、歯部454aと歯溝部454bとが、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0081】
そのため、外径側に変位した少なくともひとつの係合部材71の爪部711が、歯溝部454bに係合すると、第1遊星減速ギア4のキャリア45の回転が規制される。
キャリア45は、モータ2の回転駆動力の伝達経路上に位置しており、キャリア45の回転が規制されると、同じ動力伝達経路上に位置するドライブシャフト8(8A、8B)と駆動輪の回転もまた規制される。
【0082】
すなわち、係合部材71の爪部711が歯溝部454bに係合することで、パークロック機構7が作動状態になって、動力伝達装置1を搭載した車両の移動が規制される。
【0083】
前記したように、係合部材71は、モータ支持部121の直径線(直線Lx、Ly、Lz)上で、回転軸Xを挟んだ一方側と他方側に位置している。
そして、キャリア45側の周壁部454では、周壁部454の直径線(直線La~Lg)上で、回転軸Xを挟んだ一方側に歯部454a、他方側に歯溝部454bが位置している。
【0084】
ここで、あるひとつの係合部材71の回転軸X回りの位相が、あるひとつの歯部454aの回転軸X回りの位相と一致すると、あるひとつの係合部材71は、歯溝部454bに係合できないことになる。
このような場合であっても、あるひとつの係合部材71と同一の直線上(直径線上)に位置する他の係合部材71の位相と、あるひとつの歯部454aと同一の直線上(直径線上)に位置する他の歯溝部454bの位相とが一致することになる。
すなわち、同一の直線上(直径線上)で一方側に位置する係合部材71が、歯部454aとの衝突により歯溝部454bに係合できなくなっても、他方側に位置する係合部材71が他方側に位置する歯溝部454bと係合できるようになっている。
【0085】
本実施形態では、少なくともひとつの係合部材71の回転軸X回りの位相が、歯溝部454bの回転軸X周りの位相と一致するように、係合部材71が回転軸X周りの周方向に位置(位相)をずらして複数設けられている。
そのため、動力伝達装置1を搭載した車両の停車または駐車時に、係合部材71と歯溝部454bとの回転軸X回りの位相がずれることによって、係合部材71が歯溝部454bに係合できなくなる事態が生じ難くなるように設定されている。
【0086】
本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(1)動力伝達装置1は、第1遊星減速ギア4と、第1遊星減速ギア4のキャリア45の内周側を係止するパークロック機構7と、を有する。
【0087】
キャリア45の内周側の領域を利用して配置したパークロック機構7により、キャリア45の回転を止めることで、動力伝達装置1における回転の伝達を規制する。
これにより、動力伝達装置の径方向の縮小が可能となる。さらに、動力伝達装置1を搭載した車両の移動を適切に規制できる。
【0088】
(2)第1遊星減速ギア4の下流に第2遊星減速ギア5が接続されている。
第2遊星減速ギア5の下流に、差動装置6(デファレンシャルギア)が接続されている。
差動装置6の下流側に、ドライブシャフト8(8A、8B)を介して駆動輪が接続されている。
【0089】
このように構成すると、出力側(駆動輪側)から入力されるトルクが、第2遊星減速ギア5を介して第1遊星減速ギア4のキャリア45に入力される。
そのため、キャリア45の周壁部454を利用して設けたパークロック機構7に入力されるトルクが減殺されることになり好ましい。
さらに、キャリア45の周壁部454内周側の領域を利用して、パークロック機構7を配置するので、動力伝達装置1を回転軸Xの径方向に大型化させずに済む。
すなわち、動力伝達装置1の径方向の縮小が可能となる。
【0090】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(3)第1遊星減速ギア4のキャリア45は、回転軸X方向から見て筒状を成す周壁部454を有している。
周壁部454は、キャリア45の側板部452の外径側からモータ2側に延出している。周壁部454は、内周に歯部454aを有するインターナルギア部である。
周壁部454の内周において、回転軸Xの径方向に移動可能な係合部材71が設けられている。
係合部材71の回転軸Xの径方向の移動により、係合部材71の外周側の爪部711(パーク爪)が周壁部454の内周に係脱して、キャリア45(周壁部454)の回転の規制/解除を行う。
【0091】
回転軸X方向に移動する係合部材(パーク爪)によりキャリアの回転を規制する場合に比べて、回転軸Xの径方向に移動する係合部材71の爪部(パーク爪)により、キャリア45の回転を規制する構成のほうが、動力伝達装置1の回転軸X方向の短縮化が可能になる。
【0092】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(4)パークロック機構7は、爪部711を有する係合部材71を複数有している。
パークロック機構7が作動状態(パークロック状態)になると、複数の係合部材71のうちの一部の係合部材71の爪部711が、周壁部454の内周(歯溝部454b)に係合すると共に、残りの一部の係合部材71の爪部711が、周壁部454の内周(歯溝部454b)に非係合状態になる。
【0093】
係合部材71の爪部711が、周壁部454側の歯溝部454bに係合して、パークロック機構7が作動状態になる確率を、以下のようにすることで高めることができる。
(a)爪部711を外周に持つ係合部材71を、軸方向中心(回転軸X)に対して対称配置する一方で、周壁部454の内周の歯部454aを軸方向中心(回転軸X)に対して非対称配置とする
(b)係合部材71を軸方向中心(回転軸X)に対して非対称配置する一方で、周壁部454の内周の歯部454aを軸方向中心(回転軸X)に対して対称配置とする。
これにより、係合部材71の爪部711が、周壁部454の歯溝部454bに噛み合わないことに起因するショックの発生頻度を低減できる。
【0094】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(5)第1遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。
モータ2と第1遊星減速ギア4は回転軸X方向にオーバーラップしており、回転軸X方向から見て、モータ2と第1遊星減速ギア4が重なる位置関係で設けられている。
【0095】
モータ2と第1遊星減速ギア4を回転軸X方向にオーバーラップして配置すると、動力伝達装置1の回転軸Xの径方向への大型化を抑制して、径方向の縮小が可能になる。
そして、上記のように、パークロック機構7が、第1遊星減速ギア4のキャリア45の内周側を係止する構成としたことで、動力伝達装置の径方向への拡大を抑制できる。これにより、動力伝達装置1全体として回転軸Xの径方向の縮小化が可能になる。
【0096】
図5は、変形例にかかるパークロック機構7Aを説明する図である。図5の(a)は、パークロック機構7Aが作動状態である場合を示しており、図5の(b)は、パークロック機構7Aが非作動状態である場合を示している。
【0097】
前記した実施形態のパークロック機構7Aでは、回転軸Xの径方向に移動可能な係合部材71を用いて、キャリア45(周壁部454)の回転を規制する場合を例示した。
変形例にかかるパークロック機構7では、回転軸X方向に移動可能な係合部材71Aを用いて、キャリア45(周壁部454)の回転を規制する構成を採用している。
【0098】
図5の(a)に示すように、パークロック機構7Aは、第1遊星減速ギア4とモータ2との間に設けられている。
パークロック機構7Aは、第1遊星減速ギア4のキャリア45の周壁部454と、内側カバー12のモータ支持部121を利用して設けられている。
パークロック機構7は、キャリア45の周壁部454に設けた歯部454aおよび歯溝部454bと、モータ支持部121から回転軸X方向に出没可能な係合部材71Aと、を有している。
【0099】
内側カバー12では、接合部120とモータ支持部121との間に、凹部129が設けられており、凹部129におけるモータ支持部121との境界部には、リングギア42側(図中、左側)に突出した突出部128が設けられている。突出部128の先端面128aは、回転軸Xに直交する平坦面である。先端面128aは、係合部材71Aが係合解消方向(図中、右方向)に変位した際に、爪部711の裏面711a(図中、右側の面)が当接するストッパ面となっている。
【0100】
図5の(b)に示すように、突出部128では、リングギア42側(図中、左側)に開口する収容穴126が設けられている。収容穴126は、回転軸Xに沿って、突出部128からモータ支持部121の内部まで及んで形成されている。
回転軸X方向から見て収容穴126は、モータ支持部121の外周121bを囲むリング状を成している。
【0101】
収容穴126には、係合部材71Aが、回転軸X方向から挿入されている。
係合部材71Aは、回転軸X方向から見てリング状を成す基部710と、基部710の先端710a側の外周に設けられた爪部711(パーク爪)と、基部710の基端710bに設けられたスプリング係合部712と、基部710の基端710b側の外周に設けられた係止部713と、から一体に形成されている。
【0102】
係合部材71Aの係止部713は、収容穴126の内径に整合する外径で形成されている。収容穴126の開口には、係合部材71Aの収容穴126からの脱落を阻止するためのストッパ127が設けられている。ストッパ127は、収容穴126の内周と、係合部材71Aの基部710の外周との間の隙間を封止している。ストッパ127に、係合部材71Aの係止部713が係止されることで、係合部材71Aの収容穴126からの脱落が阻止される。
【0103】
爪部711は、回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数設けられている。爪部711は、周壁部454側の歯溝部454bに係合可能な間隔で設けられている。
【0104】
スプリング係合部712は、基部710の基端710bから回転軸X方向に突出しており、基部710よりも小さい外径で形成されている。スプリング係合部712には、収容穴126内に設置されたスプリングSpの一端が接続されている。
【0105】
スプリングSpの他端は、収容穴126の底に固定されている。図5の(b)に示すように、収容穴126の内径側には、モータ支持部121内に設けたオイルOLの供給路121aが開口している。収容穴126の各々には、図示しない油圧制御回路から、パークロック機構7Aの作動用の油圧が供給されるようになっている。
【0106】
係合部材71Aに一端が連結されたスプリングSpは、係合部材71Aを収容穴126の奥側(図中、右側)に引き込む方向の引張り力を作用させている。そのため、図5の(b)に示すように、収容穴126内にオイルOLが供給されていない状態(パークロック機構7Aの非作動状態)では、係合部材71Aの爪部711(パーク爪)が、突出部128の先端面128aに当接した位置で保持されるようになっている。
図5の(a)に示すように、収容穴126内にオイルOLが供給されている状態(パークロック機構7Aの作動状態)では、係合部材71Aが、爪部711を、周壁部454側の歯溝部454bに係合させた位置まで到達するようになっている。
【0107】
動力伝達装置1を搭載した車両の停止または駐車時に、パークロック機構7Aの作動が指示されると、動力伝達装置1の図示しない制御部が、オイルポンプを駆動して、パークロック機構7Aの作動用の油圧を、図示しない油圧制御回路からモータ支持部121内の収容穴126に供給する。
【0108】
そうすると、係合部材71Aが、収容穴126に供給されたオイルOLの圧力で、周壁部454側の歯溝部454bに爪部711を係合させる方向(図中、左方向)に変位する。
そして、係合部材71の爪部711が歯溝部454bに係合することで、パークロック機構7が作動状態になって、動力伝達装置1を搭載した車両の移動が規制される。
【0109】
前記したパークロック機構7、7Aでは、パークロック機構7、7Aの作動が指示されると、オイルポンプを駆動して、パークロック機構7、7Aの作動用の油圧をモータ支持部121内の収容穴126に供給してパークロック状態を実現する場合を例示した。
【0110】
ここで、動力伝達装置を搭載した車両の電源オフのときにもパークロック状態を維持できるようにするために、機械的に又は油圧的にパークロック状態を維持する構造を付加することが好ましい。このように構成すると、車両の電源オフ後に、オイルポンプを駆動してパークロック状態を維持する必要が無い。すなわち、バッテリ等のエネルギーを用いることなくパークロック状態を維持できるようになるので好適である。
【0111】
例えば、係合部材71、71Aが、パークロック状態を実現する位置に移動した時点で係合部材71、71Aの移動を規制するロック機構を設けることにより、機械的にパークロック状態を維持できる。
なお、パークロック状態を解除する際には、ロック機構による係合部材71、71Aの移動規制をアクチュエータ(油圧式、電気式を問わない)等により解除すれば良い。
【0112】
例えば、油圧を供給して係合部材71、71Aをパークロック状態を実現する位置に移動させた後に、油圧を密閉できる油圧回路構成とすることにより、油圧的にパークロック状態を維持できる。
例えば、逆止弁等を用いて、少なくとも収容穴126内に油圧を密閉できるように構成すれば良い。
【0113】
なお、パークロック状態を解除する際に逆止弁の下流の油をドレーンできるような切替弁を設けておけば、パークロック状態の解除も容易である。
この場合、逆止弁と、当該逆止弁の下流に位置する切替弁と、切替弁の下流に位置する係合部材への油圧供給室(収容穴126)と、を有し、切替弁に制御信号(制御電流又は制御圧)を供給することにより油圧供給室の油圧がドレーンされ、切換え弁に制御信号が供給されていない時は油圧供給室と逆止弁とが連通する構成とすれば良い。
【0114】
ここで、本明細書における用語「下流に接続」とは、上流に配置された部品から下流に配置された部品へと動力が伝達される接続関係にあることを意味する。
例えば、モータ2の下流に接続された第1遊星減速ギア4という場合は、モータ2から第1遊星減速ギア4へと動力が伝達されることを意味する。
また、本明細書における用語「直接接続」とは、他の減速機構、増速機構、変速機構などの減速比が変換される部材を介さずに部材同士が動力伝達可能に接続されていることを意味する。
【0115】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 動力伝達装置
11 外側カバー
111 モータ支持部
12 内側カバー
121a 供給路
126 収容穴
127 ストッパ
128 突出部
128a 先端面
129 凹部
121 モータ支持部
13 外側ケース
14 内側ケース
2 モータ
20 モータシャフト
200 挿通孔
201 連結部
202 被支持部
203 中間領域
21 ロータコア
25 ステータコア
251 ヨーク部
252 ティース部
253 巻線
253a、253b コイルエンド
3 減速機構
4 第1遊星減速ギア
41 サンギア
42 リングギア
43 ピニオンギア
44 ピニオン軸
45 キャリア
451、452 側板部
453 連結部
454 周壁部
454a 歯部
454b 歯溝部
5 第2遊星減速ギア
51 サンギア
52 リングギア
53 段付きピニオンギア
531 大径歯車部
532 小径歯車部
54 ピニオン軸
55 キャリア
551、651 側板部
552筒状部
6 差動装置
60 デフケース
601、602 支持部
61 シャフト
62A、62B かさ歯車
63A、63B サイドギア
7、7A パークロック機構
71、71A 係合部材
710 基部
710a 先端
710b 基端
711 爪部
712 スプリング係合部
713 係止部
8(8A、8B) ドライブシャフト
9 本体ケース
10 モータハウジング
B1、B2 ベアリング
NB ニードルベアリング
OL オイル
RS リップシール
S シールリング
Sa 空間(モータ室)
Sb 空間(ギア室)
Sp スプリング
X 回転軸
X1、X2、Y 軸線
図1
図2
図3
図4
図5