(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】内装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20230417BHJP
B29B 9/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
E04F15/16 A
B29B9/00
(21)【出願番号】P 2019166032
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森原 將史
(72)【発明者】
【氏名】若本 隆
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-054552(JP,A)
【文献】特開平08-118577(JP,A)
【文献】特開2001-254504(JP,A)
【文献】特開昭57-143059(JP,A)
【文献】特開平08-020097(JP,A)
【文献】特表2007-528337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/16
B29B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む小塊の複数が凝集した部分を表面側に有するシート体を有し、
着色部位と未着色部位又は前記着色部位とは異なる色彩の着色部位とを有し、前記2つの部位が縞を成して表出されている小塊を含み、
前記小塊が、断面視において、前記シート体の表面に対して傾斜しつつ延びる部分を有
し、
前記凝集した部分において、隣接する小塊が融合によって明確な境界を有さない部分を有する、内装材。
【請求項2】
前記小塊が、断面視において、厚み方向中途部から前記シート体の表面に対して傾斜しつつ延びる部分と、前記厚み方向中途部から前記シート体の裏面に対して傾斜しつつ延びる部分と、をそれぞれ有する、請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれに記載の内装材の製造方法であって、
塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む着色された第1原料と、塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む未着色の第2原料又は塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む第1原料の色彩とは異なる色彩に着色された第2原料とを、流れ模様を成した状態で固化させる工程、
前記流れ模様を成した固化物を粉砕して、複数の原料小塊を得る工程、
前記原料小塊を集めて加熱加圧することによってシート体を作製する工程、を有する、内装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、明瞭な模様が表現された内装材などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床材、壁材、天井材などの建築物用の内装材として、いわゆるテラゾー模様を有する樹脂製内装材が知られている。
ここで、内装材におけるテラゾー模様は、大理石などを粉砕した粉をセメントや樹脂と練り混ぜて作製された、研磨大理石のような模様をいい、テラゾー模様を有する樹脂製内装材は、テラゾー模様が樹脂材料で人工的に再現された内装材と言える。
このようなテラゾー模様を有する樹脂製内装材は、着色された塩化ビニル樹脂シートを粉砕し、この粉砕物を集めて圧延又は加圧することによって得られる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
従来のように、着色された塩化ビニル樹脂シートの粉砕物を圧延することによって得られた内装材は、必要な強度を確保するために粉砕物間を十分な強度で接合する必要がある。粉砕物間の接合強度を高める一般的な方法としては、粉砕物を圧延する際の加熱温度と圧力を上げて塩化ビニル樹脂の融合を高めることが考えられる。
しかしながら、塩化ビニル樹脂の融合を高めると、表出される模様が前記樹脂融合によってぼやける或いは無地(無模様)に近くなる。
また、塩化ビニル樹脂製の内装材は、一般に、低温環境下では柔軟性が低下する傾向にあり、施工が困難となる。このような低温時の施工性についても改善することが求められる。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、十分な強度を有し且つ低温時にも柔軟性を有し、明瞭な模様が表された内装材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内装材は、塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む小塊の複数が凝集した部分を表面側に有するシート体を有し、着色部位と未着色部位又は前記着色部位とは異なる色彩の着色部位とを有し、前記2つの部位が縞を成して表出されている小塊を含み、前記小塊が、断面視において、前記シート体の表面に対して傾斜しつつ延びる部分を有し、前記凝集した部分において、隣接する小塊が融合によって明確な境界を有さない部分を有する。
【0007】
本発明の好ましい内装材は、前記小塊が、断面視において、厚み方向中途部から前記シート体の表面に対して傾斜しつつ延びる部分と、前記厚み方向中途部から前記シート体の裏面に対して傾斜しつつ延びる部分と、をそれぞれ有する。
【0008】
本発明の別の局面によれば、内装材の製造方法を提供する。
本発明の内装材の製造方法は、上記構成からなる内装材の製造方法であって、塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む着色された第1原料と、塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む未着色の第2原料又は塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む第1原料の色彩とは異なる色彩に着色された第2原料とを、流れ模様を成した状態で固化させる工程、前記流れ模様を成した固化物を粉砕して、複数の原料小塊を得る工程、前記原料小塊を集めて加熱加圧することによってシート体を作製する工程、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内装材は、表出された模様が明瞭であり、低温時にも柔軟であり、強度及び耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の内装材の一部省略平面図。
【
図6】内装材のシート体の表面を拡大した平面図(
図1のVI部の拡大平面図)。
【
図7】シート体を厚み方向に切断したときの内部構造の一例を示す断面図(
図6のVII-VII線で切断)。
【
図8】シート体を厚み方向に切断したときの内部構造の他例を示す断面図(
図6のVII-VII線で切断)。
【
図9】流れ模様を成した固化物の製造装置を示す参考断面図。
【
図11】流れ模様を成した固化物から切り出した小塊の斜視図。
【
図13】実施例で作製した流れ模様を成した固化物の表面の写真図。
【
図15】折り曲げ試験の手順を示し、(a)は、サンプル片の参考平面図、(b)は、サンプル片の三角部分を折り曲げた際の参考平面図、(c)は、前記(b)に示す矢印方向から見た参考側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、平面視は、シート体(内装材)の表面に対して直交する方向から見ることをいい、平面視形状は、その方向から見たときの形状をいう。また、断面視形状は、シート体(内装材)を厚み方向で切断したときの形状をいう。
本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
【0012】
[内装材の概要]
図1及び
図2において、本発明の内装材1は、塩化ビニル組成物を含むシート体2を有する。
本発明の内装材1は、
図1に示すように、長尺帯状に形成されていてもよく、或いは、特に図示しないが、枚葉状に形成されていてもよい。前記長尺帯状は、1つの方向の長さが他の方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状の内装材1は、例えば、第1方向の長さが1000mm~4000mmで、第2方向の長さが5m以上であり、好ましくは、第2方向の長さが10m以上である。なお、第1方向は、第2方向と直交する方向である。
前記枚葉状は、例えばタイル床材のような平面視で略矩形状などの略多角形状などの所定形状に形成されているものであり、一般に、積み重ねて保管・運搬できる形状をいう。枚葉状の内装材は、例えば、第1方向の長さが200mm~1000mm、第2方向の長さが200mm~1000mmの略矩形状などが挙げられる。
【0013】
図2は、第1実施形態の内装材を示し、
図3は、第2実施形態の内装材を示し、
図4は、第3実施形態の内装材を示し、
図5は、第4実施形態の内装材を示す。
第2乃至第4実施形態の内装材の各平面図は、
図1と同様であるので省略している。
図2において、第1実施形態の内装材1は、シート体2のみから構成されている。換言すると、この内装材1は、シート体2のみからなる単層構造であり、シート体2の表面及び裏面が、内装材1の最表面及び最裏面を成している。
図3において、第2実施形態の内装材1は、シート体2と、前記シート体2の表面に積層された表面保護層3と、から構成されている。この内装材1は、表面保護層3の表面が内装材1の最表面を成し、シート体2の裏面が内装材1の最裏面を成している。
図4において、第3実施形態の内装材1は、シート体2と、前記シート体2の裏面に積層されたバック層4と、から構成されている。この内装材1は、シート体2の表面が内装材1の最表面を成し、バック層4の裏面が内装材1の最裏面を成している。
図5において、第4実施形態の内装材1は、シート体2と、前記シート体2の表面に積層された表面保護層3と、前記シート体2の裏面に積層されたバック層4と、から構成されている。この内装材1は、表面保護層3の表面が内装材1の最表面を成し、バック層4の裏面が内装材1の最裏面を成している。
【0014】
<シート体>
本発明の内装材1を構成するシート体2は、塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む小塊6の複数が凝集した部分を表面側に有し、前記小塊6が、着色部位と未着色部位又は前記着色部位とは異なる色彩の着色部位とを有し、前記2つの部位が縞を成して表出されている小塊を含んでいる。
シート体2は、柔軟性を有する。シート体2は、例えば、直径20cmの芯材にロール状に巻き取ることができるような柔軟性を有する。シート体2は、非発泡体から構成されている。なお、
図4及び
図5に示すようなシート体2にバック層4などが積層されている内装材1も、シート体2と同様な柔軟性を有することが好ましい。
シート体2の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm~8mmであり、好ましくは、1.0mm~5.0mmである。第1及び第2実施形態のように、シート体2の裏面にバック層4が積層されない場合には、シート体2の厚みは、比較的大きいことが好ましく、例えば、1.0mm~8mmであり、好ましくは、1.2mm~5mmである。また、第3及び第4実施形態のように、シート体2の裏面にバック層4が積層される場合には、シート体2の厚みを比較的小さくすることもできる。
【0015】
図6に示すように、シート体2は、その表面側に、塩化ビニル組成物を含む小塊6の複数が凝集した部分を有する。好ましくは、前記小塊6は、断面視において、前記シート体2の表面に対して傾斜しつつ延びる部分を有する。前記塩化ビニル組成物は、塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含むものであり、詳しくは、後述する[内装材の製造方法]の欄を参照するものとする。
前記小塊6は、着色部位と未着色部位又は前記着色部位とは異なる色彩の着色部位とを有し、前記2つの部位が縞を成して表出されている小塊を含んでいる。
なお、「表出」は、視覚的に区別できるように表面に表れていることをいう。「異なる色彩(又は色彩が異なる)」は、標準的な成人の視覚によって同じ色でないと認識される程度に異なっていることをいう。例えば、本明細書において、視覚的に障害のない20才~40才の成人10人のうち8人以上が2つの色を見比べて同じ色でないと認識したときには「異なる色彩」である。
【0016】
好ましくは、前記小塊6は、第1小塊61と、第2小塊62と、を少なくとも含んでいる。第1小塊61は、着色部位と、未着色部位又は前記着色部位とは異なる色彩の着色部位と、を有し、前記2つの部位が縞を成して表出されている。つまり、第1小塊61は、着色部位と未着色部位とを有し、この着色部位と未着色部位とが縞を成して表出されている、又は、第1小塊61は、着色部位とこの着色部位とは異なる色彩の着色部位とを有し、この着色部位と着色部位とが縞を成して表出されている。第2小塊62は、前記第1小塊61の着色部位とは異なる色彩の着色部位と、未着色部位又は前記着色部位とは異なる色彩の着色部位とを有し、前記2つの部位が縞を成して表出されている。つまり、第2小塊62は、前記第1小塊61の着色部位とは異なる色彩の着色部位と未着色部位とを有し、この着色部位と未着色部位とが縞を成して表出されている、又は、第2小塊62は、前記第1小塊61の着色部位とは異なる色彩の着色部位とこの第2小塊62の着色部位とは異なる色彩の着色部位とを有し、この着色部位と着色部位とが縞を成して表出されている。
複数の小塊6が凝集した部分において、前記第1小塊61と第2小塊62がランダムに配置されている。
【0017】
なお、凝集部分には、未着色部位のみからなる小塊6が含まれていてもよく、また、1色の着色部位のみからなる小塊6が含まれていてもよい。未着色部位のみからなる小塊及び1色の着色部位のみからなる小塊は、色彩上、縞を成していない小塊である。
以下、小塊6の複数が凝集した部分を「凝集部分」という。また、各着色部位及び未着色部位を区別するために、第1小塊61の2つの着色部位、未着色部位を、「着色部位C11」、「着色部位C12」、「未着色部位N1」と記し、第2小塊62の2つの着色部位、未着色部位を、「着色部位C21」、「着色部位C22」、「未着色部位N2」と記し、第3小塊63の2つの着色部位、未着色部位を、「着色部位C31」、「着色部位C32」、「未着色部位N3」と記す。
凝集部分はシート体2の表面の一部分に形成されていてもよいが、好ましくは、シート体2の表面全体に亘って凝集部分が形成されている。
【0018】
ここで、形成材料の観点では、着色部位は、着色剤が含有された塩化ビニル組成物から形成され、未着色部位は、着色剤を含まない塩化ビニル組成物から形成されている。色彩の観点では、未着色部位は、塩化ビニル組成物そのものの色彩からなり、着色部位は、着色剤に起因する色彩又は着色剤と塩化ビニル組成物が融合された色彩からなる。後述するように、未着色部位は、透明又は不透明であるが、好ましくは、透明である。
【0019】
着色部位は、小塊6の少なくとも表面の一部分又は小塊6の表面全体に表出されている。着色部位は、小塊6の表面の一部分又は全体から表出されていればよく、その表出した部分から小塊6の内部にまで延在されていてもよい。
未着色部位は、小塊6の少なくとも表面の一部分に表出されている。未着色部位は、小塊6の表面の一部分から表出されていればよく、その表出した部分から小塊6の内部にまで延在されていてもよい。
【0020】
凝集部分においては、複数の小塊6が隣接し、隣接した小塊6が接合されている。なお、
図6乃至
図8では、隣接する小塊6と小塊6の間が、明確な実線で表されているが、隣接する小塊6の境界は、接合(融合)により、明確な境界を有さないことがあることに留意されたい。
各小塊6の平面視形状は、
図6に示すように、不定形である。不定形とは、形状が無秩序であり、特定の形状を認定できない状態である。つまり、それぞれの小塊6の平面視形状は、一様ではなく、小塊6の平面視形状は特定できない。
【0021】
凝集部分は、2種類の小塊6(前記第1小塊61及び第2小塊62)を有していることを条件として、3種類以上の小塊6から形成されていてもよい。3種以上の小塊6は、それぞれ、互いに色彩の異なる着色部位を少なくとも1つ有し、好ましくは、3種以上の小塊6は、それぞれの着色部位が全て互いに色彩が異なる。
好ましくは、凝集部分は、1つ又は色彩の異なる2つ以上の着色部位及び未着色部位を有する小塊6と、色彩の異なる2つ以上の着色部位を有する1種以上の小塊6と、から構成される。
【0022】
図示例では、凝集部分は、隣接して互いに接合された3種類の小塊6(第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63)から構成されている。
第1小塊61は、着色部位C11及び未着色部位N1を有し且つそれらが縞を成して表出されている、又は、着色部位C11及び着色部位C11の色彩とは異なる色彩を呈する着色部位C12を有し且つそれらが縞を成して表出されている。なお、第1小塊61は、第2小塊62や第3小塊63などの他の小塊と同一とならない限り、着色部位C11,C12以外の色彩を呈する着色部位を有していてもよい。
縞を成すとは、未着色部位N1又は着色部位C12の中に、線の如き状態を成して着色部位C11が延在すること、或いは、着色部位C11の中に、線の如き状態を成して未着色部位N1又は着色部位C12が延在することをいう。
【0023】
図示例では、第1小塊61は、色彩の観点では、着色部位C11と、未着色部位N1と、からなる。このような第1小塊61は、着色剤を含む塩化ビニル組成物と、着色剤を含まない塩化ビニル組成物と、を両者が完全に混ざらない程度に混合することによって得られる。好ましくは、着色部位C11と未着色部位N1は、前者が着色剤を含んでいることを除いて、同様な塩化ビニル組成物から形成される。
複数の第1小塊61のそれぞれの着色部位C11の平面視形状は、不定形である。
なお、第1小塊61において、着色部位C11と未着色部位N1の色彩上の境界が明確に表れる場合もあれば、両部位の色彩上の境界が曖昧になっている場合もあることに留意されたい。
図6乃至8に表される第1小塊61において、便宜上、着色部位C11に網掛けを付している。
【0024】
第2小塊62は、着色部位C21及び未着色部位N2を有し且つそれらが縞を成して表出されている、又は、着色部位C21及び着色部位C21の色彩とは異なる色彩を呈する着色部位C22を有し且つそれらが縞を成して表出されている。好ましくは、前記着色部位C21の色彩及び着色部位C22の色彩は、前記第1小塊61の着色部位C11の色彩及び着色部位C12の色彩とは異なる。なお、第2小塊62は、第1小塊61や第3小塊63などの他の小塊と同一とならない限り、着色部位C21,C22以外の色彩を呈する着色部位を有していてもよい。
縞を成すとは、未着色部位N2又は着色部位C22の中に、線の如き状態を成して着色部位C21が延在すること、或いは、着色部位C21の中に、線の如き状態を成して未着色部位N2又は着色部位C22が延在することをいう。
【0025】
図示例では、第2小塊62は、色彩の観点では、着色部位C21と、未着色部位N2と、からなる。着色部位C21の色彩は、第1小塊61の着色部位C11とは少なくとも色彩において異なっている。このような第2小塊62は、着色剤を含む塩化ビニル組成物と、着色剤を含まない塩化ビニル組成物と、を両者が完全に混ざらない程度に混合することによって得られる。好ましくは、着色部位C21と未着色部位N2は、前者が着色剤を含んでいることを除いて、同様な塩化ビニル組成物から形成される。
複数の第2小塊62のそれぞれの着色部位C21の平面視形状は、不定形である。
なお、第2小塊62において、着色部位C21と未着色部位N2の色彩上の境界が明確に表れる場合もあれば、両部位の色彩上の境界が曖昧になっている場合もあることに留意されたい。
図6乃至8に表される第2小塊62において、便宜上、着色部位C21に無数のドットを付している。
【0026】
第3小塊63は、着色部位C31及び未着色部位N3を有し且つそれらが縞を成して表出されている、又は、着色部位C31及び着色部位C31の色彩とは異なる色彩を呈する着色部位C32を有し且つそれらが縞を成して表出されている。好ましくは、前記着色部位C31の色彩及び着色部位C32の色彩は、前記第1小塊61の着色部位C11の色彩及び着色部位C12の色彩並びに前記第2小塊62の着色部位C21の色彩及び着色部位C22の色彩とは異なる。なお、第3小塊63は、第1小塊61や第2小塊62などの他の小塊と同一とならない限り、着色部位C31,C32以外の色彩を呈する着色部位を有していてもよい。
縞を成すとは、未着色部位N3又は着色部位C32の中に、線の如き状態を成して着色部位C31が延在すること、或いは、着色部位C31の中に、線の如き状態を成して未着色部位N3又は着色部位C32が延在することをいう。
【0027】
図示例では、第3小塊63は、色彩の観点では、着色部位C31と、着色部位C32と、からなる。着色部位C31,C32のうち少なくとも一方の色彩は、第1小塊61の着色部位C11及び第2小塊62の着色部位C21とは少なくとも色彩において異なっている。このような第3小塊63は、着色剤を含む塩化ビニル組成物と、これと異なる着色剤を含む塩化ビニル組成物と、を両者が完全に混ざらない程度に混合することによって得られる。好ましくは、着色部位C31と着色部位C32は、着色剤が異なることを除いて、同様な塩化ビニル組成物から形成される。
複数の第3小塊63のそれぞれの着色部位C31,C32の平面視形状は、不定形である。
なお、第3小塊63において、着色部位C31と着色部位C32の色彩上の境界が明確に表れる場合もあれば、両部位の色彩上の境界が曖昧になっている場合もあることに留意されたい。
図6乃至8に表される第3小塊63において、便宜上、着色部位C31に縦線を付している。
【0028】
例えば、第1小塊61の着色部位C11は、黒色などの濃色系の色彩などに着色され、第2小塊62の着色部位C21は、黄色などの淡色系の色彩などに着色され、第3小塊63の着色部位C31は、青色などに着色される。
【0029】
第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63は、平面視において、ランダムに配置されている。ランダムは、平面視で、特に決まり無く無秩序に並んでいることをいう。従って、第1小塊61に含まれる着色部位C11の縞の向き、第2小塊62に含まれる着色部位C21の縞の向き、及び、第3小塊63に含まれる着色部位C31の縞の向きは、平面視において、いずれもランダムである。つまり、各小塊6の着色部位の色彩で表された縞状は、互いに方向性がない。
シート体2の厚み方向においても、第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63は、断面視において、ランダムに配置されている。
【0030】
図7は、シート体2の内部構造の1つの例を示す断面図であり、
図8は、シート体2の内部構造のもう1つの例を示す断面図である。
図7及び
図8ともに、
図6のVII-VII線の箇所で切断したときの断面図である。なお、
図7及び
図8は、断面図であるため、本来、各小塊6にハッチングを付すべきであるが、前記各着色部位に網掛け、ドット及び縦線を付加したため、見難くなるためにハッチングは省略している。
【0031】
図7及び
図8に示すように、各小塊6は厚み方向に延在されており、各小塊6は互いに重なって接合されている。
各小塊6(第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63)は、断面視において、シート体2の表面に対して傾斜しつつ延びる部分を有し、特に、
図7に示す例では、シート体2の表面から傾斜しつつ延び、厚み方向中途部にて反転してシート体2の裏面側に傾斜しつつ延びる部分と、を有する。なお、厚み方向中途部とは、厳密な意味で厚み方向の中央部を意味する場合だけでなく、シート体2の厚み方向の中間部から表面側に寄った部分又は中間部から裏面側に寄った部分を含む意味である。
詳しくは、
図7に示す構造では、各小塊6は、断面視で、紙面左側を凸とし且つ紙面右側に開いた二次曲線(放物線)のように湾曲されている。かかる小塊6は、断面視で、厚み方向中途部が紙面左側に位置し、厚み方向表面部及び厚み方向裏面部がそれよりも紙面右側に位置し、前記中途部と表面部及び裏面部とが曲状になって連続している。かかる小塊6の断面視形状は、厚み方向中途部(放物線の底である変曲点)を基準に、その厚み方向中途部から表面側に右斜めに延びる部分と、厚み方向中途部から裏面側に右斜めに延びる部分と、を有する。
前記表面側に斜めに延びる部分は、シート体2の表面に対して略鋭角状を成して延びており、前記裏面側に斜めに延びる部分は、シート体2の裏面に対して略鋭角状を成して延びている。
【0032】
図8に示す構造では、各小塊6は、
図7と同様に、断面視で、シート体の表面に対して傾斜しつつ延びる部分を有する。詳しくは、各小塊6は、断面視で、厚み方向表面部が紙面左側に位置し、厚み方向裏面部がそれよりも紙面右側に位置し、前記表面部と裏面部とが曲状になって連続している。かかる小塊6の断面視形状は、表面側から裏面側に向かって右斜めに延びている。
各小塊6は、断面視では、
図7及び
図8に示すように、斜めに捩れたような筋状であるが、平面視では(シート体2の表面側から見て)、明瞭な塊状となって表出している。
【0033】
<表面保護層>
表面保護層3は、シート体2の表面を保護する目的で、必要に応じて設けられる。
表面保護層3は、有色透明でもよいが、無色透明であることが好ましい。表面保護層3は、非発泡である。
表面保護層3は、主成分樹脂を含み、必要に応じて、主成分樹脂以外の樹脂及び難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤などの添加剤が含まれていてもよい。
ここで、本明細書において、主成分樹脂は、層又は小塊などを構成する樹脂成分中で最も多い樹脂成分(重量比)をいう。
表面保護層3を形成する主成分樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂などが挙げられる。耐傷付き性などの観点から、表面保護層3は、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂から形成されていることが好ましい。
電子線硬化型樹脂としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物などの不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレートなどのメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレートなどの紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
表面保護層3の厚みは、特に限定されず、可及的に小さいことが好ましく、例えば、3μm~50μmであり、好ましくは5μm~40μmである。
【0034】
<バック層>
バック層4は、従来公知の床材、壁材及び天井材に使用されているものを適宜用いることができる。バック層4は、必要に応じて設けられる。前記バック層4としては、公知の床材、壁材及び天井材の中から表層(化粧層を含む)を除いたものを用いることができ、例えば、発泡樹脂層、非発泡樹脂層、ゴム層、人工又は天然石材、木材、布材などが挙げられる。
例えば、
図4及び
図5では、バック層4は、シート体2の裏面に積層された上側樹脂層41及び下側樹脂層43と、前記上側樹脂層41及び下側樹脂層43の間に介在された繊維補強層42と、を有する。
上側樹脂層41及び下側樹脂層43の形成材料としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル樹脂、エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、エステル樹脂などの熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種の熱可塑性エラストマー;イソプレンゴムなどのゴム;などが挙げられる。
シート体2に対して良好に接着することから、少なくとも上側樹脂層41は主成分樹脂として塩化ビニル樹脂を含む材料から形成されていることが好ましく、さらに、上側樹脂層41及び下側樹脂層43が主成分樹脂として塩化ビニル樹脂を含む材料から形成されていることがより好ましい。
繊維補強層42としては、繊維を含んでいれば特に限定されず、不織布、織布などが挙げられる。前記不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。
バック層4の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm~10mmである。
【0035】
[内装材の製造方法]
本発明の内装材は、例えば、次のような方法で得ることができる。ただし、本発明の内装材は、下記製法によって得られるものに限定されるわけではない。
本発明の内装材は、着色された塩化ビニル組成物を含む第1原料と、未着色の塩化ビニル組成物又は前記第1原料の色彩とは異なる色彩に着色された塩化ビニル組成物を含む第2原料と、を準備する工程、前記第1原料と第2原料を、流れ模様を成すように混合し、流れ模様を成した状態で固化させる工程、前記流れ模様を成した固化物を、複数の小塊に粉砕する工程、前記小塊を集めて加熱加圧してシート状に成形してシート体2を作製する工程、を経て得られる。以下、流れ模様を成した固化物を「流れ模様固化物」と記す場合がある。
【0036】
前記シート状に成形してシート体2を作製する工程は、集めた複数の小塊を独立した複数回の加熱加圧によって製造対象物であるシート体2を作製してもよく、或いは、集めた複数の小塊を1回の加熱加圧によって製造対象物であるシート体2を作製してもよい。
前記のように複数回(例えば、2回)の加熱加圧でシート体2を成形する場合、前記小塊を加熱加圧して各小塊を融着させてシート状に成形することによって前駆体を得た後、前記前駆体をさらに加熱加圧してシート状に成形することによってシート体2を作製する。前記のように1回の加熱加圧でシート体2を成形する場合、複数の小塊を加熱加圧してシート状に成形することによってシート体2を作製する。以下、前者を「多段加圧方式」といい、後者を「1回加圧方式」という。
多段加圧方式によれば、多段階で加圧されて段階的に厚みが小さくなるので、平面視で明瞭な模様が表出し易くなるので好ましい。特に、前駆体を形成する過程において、集めた複数の小塊に対する加圧を可能な限り低圧とし且つ主として熱によって小塊を融着接合させると、小塊の平面視形状が筋状(搬送方向に沿って伸びる細長状)にならず、シート体2の表面に明瞭な塊状の模様を表出させることができる。かかるシート体2は、製造時の搬送方向が模様に表れ難く、いわゆる方向性のない模様が表出されているものである。
【0037】
<流れ模様を成した固化物の製造>
小塊6を得るために、流れ模様を成した固化物を準備する。
流れ模様固化物は、小塊6の種類に応じて適宜作製される。
例えば、上述のような、着色部位C11と未着色部位N1を有する第1小塊61を作製する場合には、着色された塩化ビニル組成物を含む第1原料と、未着色の塩化ビニル組成物を含む第2原料と、を準備し、これらから流れ模様固化物を作製する。
第2小塊62を作製する場合も同様に、第2小塊62の着色部位C21に対応する色彩に着色された塩化ビニル組成物を含む第1原料と、未着色の塩化ビニル組成物を含む第2原料と、を準備し、これらから流れ模様固化物を作製する。
第3小塊63を作製する場合も同様に、第3小塊63の着色部位C31に対応する色彩に着色された塩化ビニル組成物を含む第1原料と、第3小塊63の着色部位C32に対応する色彩に着色された塩化ビニル組成物を含む第2原料と、を準備し、これらから流れ模様固化物を作製する。
なお、第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63の作製に当たって、さらに、別の色彩に着色された塩化ビニル組成物を含む原料を準備し、混合して流れ模様固化物を作製することにより、他の色彩の着色部位を有する第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63を作製できる。
【0038】
塩化ビニル組成物は、主成分樹脂として塩化ビニル樹脂を含み且つゴム質材料を含み、必要に応じて、充填剤、可塑剤及び添加剤(ここでの添加剤には、着色剤は含まれない)を含むものである。ゴム質材料を含む塩化ビニル組成物にて小塊6を形成することにより、低温時にも柔軟性を有するシート体2を得ることができる。
前記塩化ビニル樹脂、ゴム質材料、充填剤、可塑剤及び添加剤は、従来公知のものを用いることができる。
塩化ビニル樹脂としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものが挙げられる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル樹脂が好ましい。
ゴム質材料は、室温(25℃)にてゴム弾性を有する材料をいい、代表的にはゴム及び/又はエラストマーを用いることができる。なお、本明細書において、ゴム質材料は、樹脂成分に含まれない。
【0039】
前記ゴムとしては、特に限定されず、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレン(CR)などの合成ゴム;天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などの共重合体ゴム;などが挙げられる。前記ゴムは、それぞれ1種単独で、又は2種以上を併用できる。
前記エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、アクリル系エラストマー、酢酸ビニル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
ゴム質材料は、低温時に良好な柔軟性を付与できる点から、ゴムが好ましく、特に、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含むことがより好ましい。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカなどの各種の無機充填剤が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ブチルオクチルフタレート(BOP)、ジオクチルイソフタレート(DOIP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)などが挙げられる。
添加剤としては、安定剤、加工助剤、防かび剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0040】
ここで、塩化ビニル樹脂自体は、一般に、無色透明である。塩化ビニル樹脂に充填剤などを配合した塩化ビニル組成物は、充填剤などの塩化ビニル樹脂以外の成分により、透明性が低下する。充填剤を含む塩化ビニル組成物は、その充填剤の量に従い、無色透明から、半透明乃至不透明になり、特に、充填剤が炭酸カルシウムや酸化チタンなどの白色を呈する充填剤を含む塩化ビニル組成物は、その量に従い、無色透明から、白色半透明乃至白色不透明となる。また、透明性の低いゴム質材料もあり、そのようなゴム質材料が配合された塩化ビニル組成物も透明性が低下する。
ここで、本明細書において、単に透明というときは、無色透明又は半透明という意味である。無色透明は、黒色インキで任意の数字(大きさ12ポイント)を印刷した白地の紙の上に、その無色透明な対象物を約1cm離して配置し、その対象物を透かして見たときに、その数字を表面側から識別できる状態をいう。半透明は、前記と同じ条件で裏面側に配置した数字を、半透明な対象物を透かして表面側から見たときに、黒色の何かが存在することを視認できる状態をいい、不透明は、前記と同じ条件で、黒色を視認できない状態をいう。
【0041】
なお、本明細書において、着色剤は、材料を着色することを目的とする成分をいい、炭酸カルシウムなどの充填剤やゴム質材料のような着色を目的としない成分は、着色剤の範疇に含まれない。つまり、着色剤と塩化ビニル組成物は、別の概念である。ただし、上述のように、炭酸カルシウムなどを配合すると、結果的に白色を呈するが、それは、塩化ビニル組成物そのものの色彩であり、「着色された塩化ビニル組成物」と解釈しないものとする。同様に、透明性の低いゴム質材料を含んでいる場合、結果的に白色を呈するが、それは、塩化ビニル組成物そのものの色彩であり、「着色された塩化ビニル組成物」と解釈しないものとする。
なお、実施上の観点では、配合されたゴム質材料又は/及び充填剤に起因して塩化ビニル組成物自体が色彩(例えば、白色)を呈する場合、色彩による縞状の各小塊6を得るために、着色部位は、その充填剤に起因する色彩以外(例えば、白色以外)の色彩となるように設定する必要がある。
【0042】
小塊6を形成する塩化ビニル組成物において、ゴム質材料の配合量は特に限定されないが、低温時にも柔軟性を有し且つ適度な強度を有するシート体2を形成できることから、ゴム質材料は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、0.5重量部~10重量部含まれていることが好ましく、1重量部~5重量部含まれていることがより好ましい。
また、前記小塊6を形成する塩化ビニル組成物に含まれる添加剤の配合量は、特に限定されないが、一般的には、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、炭酸カルシウムなどの充填剤を0重量部~100重量部含み、DOPなどの可塑剤を25重量部~40重量部含む。なお、着色部位を有する小塊6については、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、着色剤を0重量部を越え5重量部以下含む。
可塑剤を添加することによって塩化ビニル組成物に柔軟性を付与できるが、可塑剤の量が多くなるとブリードアウトし易くなるなどの不都合を生じる。本発明では、塩化ビニル組成物にゴム質材料を添加することによって、可塑剤の添加量を少なくしても柔軟性を維持でき、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63などの各小塊を形成する塩化ビニル組成物は、同じ組成でもよく、或いは、異なる組成でもよい。
【0043】
上述のように、着色部位C11と未着色部位N1を有する第1小塊61を作製する場合には、着色された塩化ビニル組成物を含む第1原料と、着色剤を含まない未着色の塩化ビニル組成物を含む第2原料と、を準備する。
この場合の第1原料は、塩化ビニル組成物に着色剤が配合されたものであり、その着色剤の色彩を呈する。第2原料は、着色剤を配合しない、塩化ビニル組成物からなる。
第1原料と第2原料を溶融させ、両者を混合するが、この際、第1原料と第2原料が完全に混ざり合わない程度で緩やかに混ぜ合わせ、流れ模様を成した状態を維持しつつ混合物を固化させる。
第1原料と第2原料の配合比は、特に限定されず、例えば、重量比で9:1~5:5である。
【0044】
例えば、
図9に示すようなカレンダー成形機を用いて、少なくとも2つの原料(第1原料及び第2原料)を混ぜ合わせて流れ模様固化物を作製することができる。
図9(a)及び(b)において、カレンダー成形機8’,8”は、バンバリーミキサー81と、前記ミキサー81の出口側に配置されたミキシングロール82と、カレンダーロール83と、粉砕器84と、を有する。なお、同図(b)に示すカレンダー成形機8”は、カレンダー成形機8’に散布機85が付加されているものである。
【0045】
図9(a)に示すように、第1原料(例えば、塩化ビニル樹脂、ゴム質材料及び着色剤を含む塩化ビニル組成物)を、120℃~160℃に加熱したバンバリーミキサー81によって混合し、これを一対のミキシングロール82,82の間に通して混練することによって、所定厚みのシート状物71を作製する。このシート状物71を、120℃~160℃に加熱したカレンダーロール83,83にて圧延し、自然冷却又は強制冷却することにより、所定厚み(例えば厚み1~3mm程度)の第1シート72を作製した後、そのシート72を粉砕器84で無秩序に粉砕することにより、不定形の第1チップ73を得る。
【0046】
次に、
図9(b)に示すように、第2原料(例えば、着色剤を含まず且つ塩化ビニル樹脂及びゴム質材料を含む塩化ビニル組成物)を、120℃~160℃に加熱したバンバリーミキサー81によって混合し、これを一対のミキシングロール82,82の間に通して混練することによって、所定厚みのシート状物74を作製する。このシート状物74に対して、散布機85を通じて、120℃~160℃程度に加熱した上記第1チップ73(第1原料からなるチップ)を散布する。その後、このシート状物74を、120℃~160℃に加熱したカレンダーロール83,83にて圧延し、自然冷却又は強制冷却することにより、所定厚み(例えば厚み1~3mm程度)の流れ模様固化物7が得られる。前記第1チップ73を含んだシート状物74が圧延によって引き延ばされることによって、第1原料と第2原料が伸ばし方向に縞状に流れるようになる。このようにすることにより、第1原料(又は第2原料)の中に、第2原料(又は第1原料)が任意の複数の縞状を成して混在したシート状の流れ模様固化物7を作製できる。
前記カレンダー加工法としては、例えば、特許第4605928号に記載のものなどを用いることができる。
【0047】
少なくとも2つの原料(第1原料及び第2原料)を混ぜ合わせて流れ模様固化物を作製する方法は、上記カレンダー成形機を用いた方法に限定されない。例えば、流れ模様固化物の製造方法としては、特許第3393588号、特許3970568号、特許5664987号、特許5751562号、特開2000-054552号などに記載された製造技術を適宜改変して用いてもよい。
【0048】
かかる流れ模様固化物7は、
図10に示すように、恰も木目模様或いは墨流し模様のような流れ模様が表出されているものである。
流れ模様固化物7は、第1原料と第2原料が複雑に混ざりあっており、第1原料の色彩部分、第1原料と第2原料の色彩が混ざった色彩部分、第2原料の色彩部分を有する。第1原料と第2原料の色彩が混ざった色彩部分は、第1原料に近い色彩から第2原料に近い色彩まで無段階でグラデーション的であることが多い。
流れ模様固化物7の厚みは、特に限定されないが、最終的に製造するシート体2の厚みの0.5倍~2倍程度、好ましくは、0.7倍~1.2倍である。流れ模様固化物7の厚みを小さく設定しすぎると、良好な流れ模様が得られないおそれがある。
着色部位C21と未着色部位N2を有する第2小塊62を作製する場合にも同様に、着色された塩化ビニル組成物を含む第1原料と、着色剤を含まない未着色の塩化ビニル組成物を含む第2原料と、を準備し、それらを用いて、流れ模様を成した固化物を作製する。
第3小塊63などを作製する場合も同様にして、流れ模様を成した固化物を作製する。
【0049】
<小塊の製造>
前記のようにして得られた流れ模様固化物7を粉砕することにより、複数の小塊が得られる。
シート体2の製造過程で作製される小塊と、シート体2を構成する小塊6を区別するために、製造過程における小塊を「原料小塊」という。
例えば、
図9(b)に示すように、略平板状の流れ模様固化物7を粉砕器84で無秩序に粉砕することにより、
図11に示すように、不定形の原料小塊Aが得られる。複数の原料小塊Aは、不定形(無秩序な形状)であるので、
図11(a)及び(b)に示す輪郭はあくまで参考であることに留意されたい。
図11(a)は、変形した六面体形状の小塊を、
図11(b)は、平面を有さない立体形状の小塊を参考的に例示している。シート体を作製する際に、原料小塊が様々な角度で接することとなり、縦横斜めに複雑な模様を生じ、良好に方向性のない模様をシート体2に表すことができることから、
図11(b)のような実質的に平面を有さない立体形状の小塊を用いることが好ましい。
なお、流れ模様固化物7を規則的に粉砕して、略立方体状又は略直方体状などの定形の原料小塊を作製してもよいが、良好に方向性のない模様をシート体2に表すことができることから、原料小塊Aは不定形であることが好ましい。
【0050】
原料小塊Aの大きさは特に限定されないが、例えば、その最大縦長、最大横長及び最大高さのいずれもが、1mm~3mmの範囲に含まれていることが好ましく、さらに、1.4mm~2.4mmの範囲に含まれていることがより好ましい。このような大きさの範囲の原料小塊Aを用いることにより、断面視で傾斜しつつ延びる小塊6を有するシート体2を容易に形成できる。
なお、
図11は、第1小塊61となる原料小塊Aを例示しており、対応する着色部位C11に網掛けを付している。
各流れ模様固化物をそれぞれ粉砕することにより、第1小塊61、第2小塊62などに対応した原料小塊Aをそれぞれ得ることができる。
【0051】
<シート体の成形>
原料小塊Aからシート体2を作製する工程においては、上述のように、多段加圧方式と、1回加圧方式とがある。以下、<シート体の成形>において、多段加圧方式と1回加圧方式をそれぞれ分説する。
【0052】
(a)多段加圧方式
多段加圧方式は、例えば、複数の原料小塊を集めて加圧して前駆体を作製し、その前駆体をさらに加圧してシート体を作製する。
・前駆体の製造
第1小塊61に対応した原料小塊A、第2小塊62に対応した原料小塊A、第3小塊63に対応した原料小塊Aなどの中から少なくとも1つの原料小塊A(例えば、少なくとも第1小塊61に対応した原料小塊A)、好ましくは少なくとも2つの原料小塊A(例えば、少なくとも第1小塊61に対応した原料小塊A及び第2小塊62に対応した原料小塊A)を選択する。
【0053】
上述のように、シート体2の製造時において、原料小塊Aの大きさの観点では、その最大縦長、最大横長及び最大高さのいずれもが、1mm~3mmの範囲に含まれている原料小塊Aを用いることが好ましい。上記流れ模様固化物7を粉砕して得られた粉砕物には、様々な大きさの原料小塊が含まれるため、前記好ましい大きさの原料小塊Aを選別するため、前記粉砕物を篩いにかけて選別する。
篩いにかけて大きさが選別された原料小塊Aは、その殆どが前記好ましい大きさの範囲に含まれるが、中には、前記好ましい範囲よりも小さい原料小塊が含まれている可能性がある。この場合、前記好ましい大きさの範囲の原料小塊Aが、篩いで選別されたものの全体を100重量%としたときに、80重量%以上含まれていることが好ましく、90重量%以上含まれていることがより好ましい。
なお、篩いを2段階以上行なって篩い分けをしてもよい。例えば、流れ模様固化物7を粉砕して得られた粉砕物を目の細かい篩いにかけて、比較的小さい粉砕物(例えば、最大縦長、最大横長及び最大高さのいずれもが1mm未満の原料小塊)を選別し、除去する。次に、それよりも目の粗い篩いにかけ、最大縦長、最大横長及び最大高さのいずれもが3mm以下の原料小塊Aを取り出す。
【0054】
前記好ましい大きさの範囲を含む複数の原料小塊Aを、
図12(A)に示すように、散布装置91を用いて一対のロール93の間に入れ、原料小塊Aを例えば200℃~250℃に加熱しつつ前記一対のロール93にて加圧することによって、複数の原料小塊Aを互いに融着させてシート状に成形する。例えば、加熱装置を具備するロール93を用いることにより、ロール93にて原料小塊Aの加熱及び加圧を同時に行なうことができる。
このようにして複数の原料小塊Aの集合からなる所定厚みのシート状の前駆体94を作製する。前駆体94の厚みは、製造対象物であるシート体2の厚みより大きければよく、例えば、得ようとするシート体2の1.05倍~1.3倍であり、好ましくは、1.06倍~1.2倍である。
前記前駆体94は、通常、製造ラインの搬送方向に連続的に製造されていき、得られた前駆体94は、長尺帯状のシート状である。
【0055】
・前駆体からシート体の成形
前記前駆体94を搬送しながら、それを厚み方向に加熱加圧することにより、シート体2を作製する。
例えば、前記前駆体94をエンドレスのシートコンベア92の上に導き、オーブンなどの加熱装置95にて加熱し、原料小塊Aの塩化ビニル樹脂を溶融させる。なお、
図12(A)の白抜き矢印は、シートコンベア92の動く方向を示し、実線矢印は、前駆体94及びシート体2の搬送方向を示す。
前記加熱温度は、塩化ビニル樹脂が溶融する温度以上であればよく、例えば、160℃以上であり、好ましくは、170℃以上であり、より好ましくは、175℃以上である。また、余りに温度が高すぎると、原料小塊Aが溶融し過ぎて着色部位と未着色部位が完全に混ざってしまうおそれがあることから、前記加熱温度は、例えば、210℃以下であり、好ましくは、200℃以下である。
加熱時間は、300秒~3000秒程度が好ましい。
【0056】
加熱後、前記前駆体94を搬送しながら、その搬送途中で前駆体94を厚み方向に加圧する。加圧は、プレス機を用いてもよいが、図示のような連続的にシート体2を製造する装置9を用いる場合には、断面視で傾斜しつつ延びるように原料小塊を容易に変形させることができることから、加圧ロール96を用いることが好ましい。
前駆体94を搬送しながら厚み方向に加圧することにより、前駆体94の内部に剪断力が生じ、原料小塊Aを傾斜しつつ延びるように変形させることができる。
圧力は、特に限定されず、例えば、1.5kgf/cm2~5kgf/cm2であり、好ましくは、2kgf/cm2~4kgf/cm2である。また、前駆体94の搬送速度は、例えば、1m/分~10m/分であり、好ましくは、2m/分~6m/分である。前記圧力及び搬送速度により、小塊に起因する明瞭な塊状の模様が表出されたシート体2を容易に得られる。
また、加圧前の前駆体94の厚みを1とした場合、加圧後の前駆体(すなわち、形成されるシート体2)が0.8倍~0.95倍となるように、前駆体94を圧縮することにより、断面視で小塊6が傾斜しつつ延びるシート体2を容易に形成できる。
【0057】
加熱された原料小塊Aが前記のように搬送されながら加圧されることにより、原料小塊Aが斜めに変形し且つ隣接する原料小塊A間において接合する。その後、自然冷却又は強制冷却を行うことにより、小塊6が凝集した上記シート体2が得られる。
【0058】
(b)1回加圧方式
1回加圧方式は、例えば、複数の原料小塊を集積させ、この集積物を加熱加圧してシート状に成形することにより、シート体を作製する。
上記多段加圧方式と同様に、原料小塊Aを選択する。上述のように、最大縦長、最大横長及び最大高さのいずれもが、1mm~3mmの範囲に含まれている原料小塊Aを用いることが好ましい。
前記複数の原料小塊Aを、
図12(B)に示すように、散布装置91を用いてシートコンベア92の上に散布して堆積させる。シートコンベア92の移動先には、ならし具911が配置されており、堆積された複数の原料小塊Aは、コンベア92上に略均等な厚みで拡がったシート状の集積物941となる。この集積物941は、複数の原料小塊Aが堆積したものであり、隣接する原料小塊Aは結合しておらず接している状態である。前記集積物941の厚みは、製造対象物であるシート体2の厚みより大きければよく、例えば、得ようとするシート体2の2.5倍~4倍であり、好ましくは、3倍~3.75倍である。
前記集積物941を、オーブンなどの加熱装置95にて加熱し、原料小塊Aの塩化ビニル樹脂を溶融させる。なお、
図12(B)の白抜き矢印は、シートコンベア92の動く方向を示し、実線矢印は、集積物941及びシート体2の搬送方向を示す。前記加熱温度及び加熱時間は、上記多段加圧方式の「前駆体からシート体の成形」の欄で記載された前駆体の加熱温度及び加熱時間と同様に設定できる。また、加圧する前に、集積物941を加熱しておくと、シート体2の表面に、小塊に起因する明瞭な塊状の模様を表出させることができるので、好ましい。
【0059】
加熱後、前記集積物941を搬送しながら、その搬送途中で集積物941を厚み方向に加圧する。加圧は、プレス機を用いてもよいが、上記多段加圧方式と同様の理由から、加圧ロール96を用いることが好ましい。
集積物941を搬送しながら厚み方向に加圧することにより、集積物941に剪断力が生じ、原料小塊Aを傾斜しつつ延びるように変形させることができる。
圧力及び集積物941の搬送速度は、上記多段加圧方式の「前駆体からシート体の成形」の欄で記載された圧力及び前駆体の搬送速度間と同様に設定できる。
また、加圧前の集積物941の厚みを1とした場合、加圧後の集積物(すなわち、形成されるシート体2)が0.2倍~0.4倍(好ましくは0.27倍~0.33倍)となるように、集積物941を圧縮することにより、断面視で小塊6が傾斜しつつ延びるシート体2を容易に形成できる。
加熱された原料小塊Aが前記のように加圧されることにより、原料小塊Aが斜めに変形し且つ隣接する原料小塊A間において接合する。その後、自然冷却又は強制冷却を行うことにより、小塊6が凝集した上記シート体2が得られる。
【0060】
多段加圧方式又は1回加圧方式で成形されたシート体2に、必要に応じて、エンボスロール97を用いて、シート体2の表面又は/及び裏面に、エンボス凹凸を形成してもよい。
また、必要に応じて、シート体2の表面に、塗布機98を用いて表面保護層を形成してもよい。塗布機98は、表面保護層形成材料をシート体2の表面に塗布し、この材料を固化させるものであり、例えば、紫外線硬化型樹脂などの電離線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成する場合には、前記電離線硬化型樹脂を塗布する塗布部と、その樹脂を硬化させる紫外線などの光線照射部と、を有する。
得られたシート体2は、回収機99に巻き取られ、製造装置9から分離される。
【0061】
[内装材の効果及び用途]
本発明の内装材1のシート体2は、不定形の着色部位C11及び未着色部位N1を有する第1小塊61、不定形の着色部位C21及び未着色部位N2を有する第2小塊62及び不定形の着色部位C31,C32を有する第3小塊63が、互いに接合し且つランダムに配置されているので、表面側から見た際に、方向性のない模様が明瞭に表されている。
さらに、未着色部位を有する小塊6であってその未着色部位が透明である場合には、シート体2の表面側から未着色部位を通じてその裏面側を視認でき、立体感のあるシート体2を構成できる。特に、各小塊6(第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63)が、断面視において、シート体2の表面に対して傾斜しつつ延びる部分をそれぞれ有する場合には、シート体2の表面側から見ると、階段状に斜めに透けて見える箇所も有する。
さらに、各小塊6(第1小塊61、第2小塊62及び第3小塊63)は、断面視において、シート体2の表面に対して傾斜しつつ延びる部分をそれぞれ有するので、隣接する小塊6の接触面積が大きくなり、各小塊6が強固に接合されている。特に、各小塊6が、変曲点から表面側に斜めに延びる部分と、変曲点から裏面側に斜めに延びる部分と、をそれぞれ有することにより、極めて強固に接合したシート体2を構成できる。
また、小塊6がゴム質材料を含む塩化ビニル組成物にて形成されているので、通常の温度時(例えば、20℃~35℃)及び低温時(例えば、-10℃~10℃)に柔軟性を維持することができ、施工性の悪化を防ぐことができる。また、低温時に搬送などしても、割れ難いシート体2を提供できる。
【0062】
本発明の内装材1は、建築物の床面、壁面及び天井面などの施工面に施工される。内装材の施工面に対する取り付け方法は、特に限定されず、例えば、接着剤を用いて内装材の裏面を施工面に貼り付けることなどが挙げられる。
本発明の内装材1は、新設の施工面に施工してもよく、或いは、リフォームなどの既存の施工面に施工してもよい。
本発明の内装材1は、床材、壁材、天井材などに使用でき、特に、床材、壁材として好適に使用できる。
シート体2は、内装材の意匠を構成するが、所定の厚みを有し、靴底などで摩耗しても同様の柄が現れるので、耐久性に優れ、床材として最も好適に使用できる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるわけではない。
【0064】
[使用材料]
<塩化ビニル樹脂>
懸濁重合法による粒状の塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ株式会社製の商品名「ZEST 800Y」。平均重合度:760~860、K値:60.5~63.1、見掛け密度:0.53~0.63(カタログ値))。塩化ビニル樹脂の粒径は、概ね100μm~300μmのものを使用した。
<ゴム質材料>
アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製の商品名「Nipol 1411」)。
ブタジエン系ゴム(三菱ケミカル(株)製の商品名「メタブレン C-223A」)。
アクリル系ゴム(三菱ケミカル(株)製の商品名「メタブレン W-450A」)。
シリコン-アクリル系ゴム(三菱ケミカル(株)製の商品名「メタブレン SX-005」)。
<充填剤>
粒状の炭酸カルシウム(三共製粉株式会社製の商品名「エスカロン#200」)。
<可塑剤>
DOIP(シージーエスター(株)製)。
DOA(シージーエスター(株)製)。
エポキシ化可塑剤(三和合成化学(株)製の商品名「ケミサイザー T4000」)。
<安定剤>
Ba系安定剤((株)ADEKA製の商品名「アデカスタブ AC-704」)。
Ba-zn系安定剤((株)ADEKA製の商品名「アデカスタブ AC-755」)。
<加工助剤>
アクリル加工助剤(三菱ケミカル(株)製の商品名「メタブレン P-530A」)。
<着色剤>
赤色着色剤(べんがら)。
白色着色剤(酸化チタン)。
【0065】
[実施例1]
<赤色の縞状着色部位を有する原料小塊(1)の作製>
塩化ビニル樹脂の100重量部に対し、1重量部のアクリロニトリルブタジエンゴム、20重量部の炭酸カルシウム、35重量部のDOIP、3重量部のエポキシ化可塑剤、3重量部のBa系安定剤、2.5重量部のBa-Zn系安定剤、1重量部のアクリル加工助剤、及び、3重量部の白色着色剤を、既存のカレンダー成形機のバンバリーミキサーに投入し、140℃で約6分間混合した後、140℃に加熱したミキシングロール及びカレンダーロールで成形し、縦×厚み=600mm×3mmのシート状物を作製した。このシート状物を水槽で20℃まで冷却した後、ペレタイザーで約3mm角程度に粉砕することにより、第1チップ(第1原料。白色に着色された塩化ビニル組成物)を作製した。
【0066】
塩化ビニル樹脂の100重量部に対し、1重量部のアクリロニトリルブタジエンゴム、20重量部の炭酸カルシウム、35重量部のDOIP、3重量部のエポキシ化可塑剤、3重量部のBa系安定剤、2.5重量部のBa-Zn系安定剤、1重量部のアクリル加工助剤、及び、3重量部の赤色着色剤を、カレンダー成形機のバンバリーミキサーに投入し、140℃で約6分間混合した後、140℃に加熱したミキシングロールにて縦×厚み=600mm×3mmのシート状物(第2原料。赤色に着色された塩化ビニル組成物)を作製した。
このシート状物が冷えないうちに、熱風式ヒーターで140℃に加熱した第1チップ(第1原料)を前記シート状物(第2原料)の上に重量比で第1原料:第2原料=1:3の割合で散布した後、140℃に加熱したカレンダーロールにて緩やかに混ぜ合わせながら圧延することにより、縦×横×厚み=約200mm×200mm×2mm程度のシート状の流れ模様固化物を作製した。
図13は、この流れ模様固化物の表面の写真(拡大なし)を示す。なお、
図13は、前記作製した流れ模様固化物のうち縦×横=約120mm×約160mmの範囲の表面写真である。
【0067】
この流れ模様固化物を、市販のクラッシャーで無秩序に粉砕し、その粉砕物を、8メッシュの篩いで篩い、最大長が約3mm以下の粉砕物を取り出した後、さらに、これを20メッシュの篩いで篩うことによって、最大長約1mm未満の粉砕物を分離した。このようにして、最大長が約1mm~3mmの原料小塊を準備した(以下、原料小塊(1)という)。
【0068】
<白色の縞状着色部位を有する原料小塊(2)の作製>
塩化ビニル樹脂の100重量部に対し、1重量部のアクリロニトリルブタジエンゴム、20重量部の炭酸カルシウム、35重量部のDOIP、3重量部のエポキシ化可塑剤、3重量部のBa系安定剤、2.5重量部のBa-Zn系安定剤及び1重量部のアクリル加工助剤を、カレンダー成形機のバンバリーミキサーに投入し、140℃で約6分間混合した後、140℃に加熱したミキシングロール及びカレンダーロールで成形し、縦×厚み=600mm×3mmのシート状物を作製した。このシート状物を水槽で20℃まで冷却した後、ペレタイザーで約3mm角程度に粉砕することにより、第3チップ(第3原料。半透明の塩化ビニル組成物)を作製した。
【0069】
塩化ビニル樹脂の100重量部に対し、1重量部のアクリロニトリルブタジエンゴム、20重量部の炭酸カルシウム、35重量部のDOIP、3重量部のエポキシ化可塑剤、3重量部のBa系安定剤、2.5重量部のBa-Zn系安定剤、1重量部のアクリル加工助剤、及び、3重量部の白色着色剤を、カレンダー成形機のバンバリーミキサーに投入し、140℃で約6分間混合した後、140℃に加熱したミキシングロールにて縦×厚み=600mm×3mmのシート状物(第4原料。白色に着色された塩化ビニル組成物)を作製した。
このシート状物が冷えないうちに、熱風式ヒーターで140℃に加熱した第3チップ(第3原料)を前記シート状物(第4原料)の上に重量比で第3原料:第4原料=2:3の割合で散布した後、140℃に加熱したカレンダーロールにて緩やかに混ぜ合わせながら圧延することにより、縦×横×厚み=約200mm×200mm×2mm程度のシート状の流れ模様固化物を作製した。
この流れ模様固化物も、
図13と同様な流れ模様を成していた。
【0070】
この流れ模様固化物を、市販のクラッシャーで無秩序に粉砕し、その粉砕物を、8メッシュの篩いで篩い、最大長が約3mm以下の粉砕物を取り出した後、さらに、これを20メッシュの篩いで篩うことによって、最大長約1mm未満の粉砕物を分離した。このようにして、最大長が約1mm~3mmの原料小塊を準備した(以下、原料小塊(2)という)。
【0071】
<シート体の作製>
原料小塊(1)を十分に攪拌し、既存のシート製造装置(
図12(A)に示すようなもの)の散布装置から一対のロール間に通して概ねシート状に仮成形し、厚み約2.3mmの前駆体を作製した。
前記前駆体をエンドレスシートコンベア上に載せ、200℃の熱風循環オーブンで5分間加熱溶融させた後、室温(約23℃)下の加圧ロールに通して概ね3kgf/cm
2の圧力を加えて圧延することにより、厚み2mmのシート体を作製した。
なお、シートコンベアの速度は、1m/分とした。
図14は、実施例1で得られたシート体の表面の写真(拡大なし)を示す。
【0072】
【0073】
[実施例2乃至11及び比較例]
原料小塊(1)の作製及び原料小塊(2)の作製において、それぞれの原料の組成を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚み2mmのシート体を作製した。
なお、表1の第1乃至第4原料の組成は、原料小塊(1)の作製時の第1原料及び第2原料の組成、並びに、原料小塊(2)の作製時の第3原料及び第4原料の組成を、それぞれ表している。ただし、表1では、全ての原料に着色剤が配合されていると読み取れるが、実際には、各実施例及び比較例の第3原料には、上記実施例1で説明したように着色剤は含まれていない点に留意されたい。
【0074】
[シート体の外観及び断面観察]
各実施例及び比較例で作製したシート体をその表面側から目視で観察したところ、テラゾー模様が明瞭に表出されていた。
各実施例及び比較例で作製したシート体をその表面側から目視で観察したところ、
図14に示すように、テラゾー模様、すなわち小塊の形状が明瞭に表出されていた。また、小塊の平面視形状が、製造地の搬送方向に沿って伸びる細長状になっておらず、柄の方向性のない明瞭な塊状の模様が表出されていた。
また、各シート体を切断し、その切断面を目視で観察したところ、各小塊が
図7又は
図8に示すような形状に曲がりつつ接合していた。
【0075】
[折り曲げ試験]
各実施例及び比較例で作製したシート体を、縦×横=30cm×30cmの正方形に裁断し、サンプル片を作製した。
図15に示すように、温度23℃下で、前記サンプル片の1つの角部から対角線方向へ約5cmの箇所を折り曲げ基準線として、その角部と基準線で区画される三角部分を、シート表面側から裏面側へ、前記角部が裏面に接触するまで、成人男性が人力で折り曲げた。基準線周辺の湾曲部分所の表面状態を目視及び触指にて確認した。
その結果、全ての実施例及び比較例のシート体は、いずれも割れやささくれ立ちが生じず、各小塊が良好に接合していた。
【0076】
[剛性度試験]
剛性度試験は、オルゼン型剛性度試験機(株式会社安田精機製作所製)を用い、下記の手順で測定した。
各実施例及び比較例で作製したシート体を、縦×横=25mm×100mmに裁断し、試料とした。
(1)試料及び試験機を予め23℃(又は5℃)の状態で静置させておく。
(2)試験機を略水平な台に置き、水準器により水平調整ねじを調節して水平にする。
(3)直定規(150mm、JIS C型1級)にて支点間距離を設定し、支点固定ねじにて固定する。
(4)ストッパーを外し、偏位角度目盛板をフリーの状態とし、円盤がどこにでも止まるよう、バランスウエイトにてバランスをとる。
(5)所定の荷重をウエイト掛けに掛け、荷重目盛針が荷重目盛板の0をさすことを確認する。
(6)連続、インチング切換スイッチをインチングして、スタート・リバーススイッチをスタートもしくはリバースに倒し、偏位角度目盛指針が偏位角度目盛0のところでスイッチを離しストップさせる。
(7)表面を上側にして試料をチャックにセットし、連続・インチング切換えスイッチを連続的に切換え、スイッチをスタート方向にONにし、回転盤を右回転させる。
(8)偏位角度目盛指針が所定の偏位角度に達した時の荷重目盛を読み取った後、ストップさせ、リバーススイッチで元に戻し試料を取り出す。
(9)試料をマイクロメーターで厚さを測定する。
(10)測定は、支点間距離(mm):20、荷重(LB):2、読み角度(度):4の条件で行った。
【0077】
[垂下量試験]
各実施例及び比較例で作製したシート体を、縦×横=25mm×300mmに裁断し、サンプル片を作製した。サンプル片を23℃、湿度44%RHで、24時間静置した後、サンプル片の横方向第1端から100mmを固定し、横方向第2端(反対側)から200mmをフリーにした状態で、温度23℃で10秒間放置したときの垂下量を計測した。同様なサンプル片を各実施例及び比較例について作製し、サンプル片を5℃、湿度40%RHで、24時間静置した後、サンプル片の横方向第1端から100mmを固定し、横方向第2端(反対側)から200mmをフリーにした状態で、温度5℃で30秒間放置したときの垂下量を計測した。
サンプル片の試験開始直前の第2端の下面の位置を水平基準線とし、試験終了時に第2端が前記水平基準線から鉛直方向に下がった長さ(mm)を計測し、それを垂下量とした。その結果を表1に示す。
ただし、実施例1乃至7については、23℃での垂下量の測定を行なわなかった。
【0078】
[高温熱安定性試験]
実施例5、実施例6、実施例7及び実施例8で作製したシート体を、縦×横=20mm×50mmに裁断し、サンプル片を作製した。サンプル片を180℃のギアオーブン内で加熱し、10分ごとに変色度合いを目視で評価した。その結果を表2に示す。
○:変色していない。
○△:僅かに変色している。
△:少し変色している。
【0079】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の内装材は、一般住宅、オフィスビル、ホテル、マンション、商業施設などの各種建築物の床材、壁材、天井材などに使用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 内装材
2 シート体
6 小塊
61 第1小塊
62 第2小塊
63 第3小塊
7 流れ模様を成した固化物
C11,C12,C21,C22,C31,C32 着色部位
N1,N2,N3 未着色部位
A 原料小塊