(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】双極電極スペーサを有するカテーテル及び関連方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/25 20210101AFI20230417BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61B5/25
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017160034
(22)【出願日】2017-08-23
【審査請求日】2020-07-06
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビシャブ・マナク・シング・アウジラ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0013537(US,A1)
【文献】国際公開第2014/124231(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0075554(US,A1)
【文献】国際公開第2016/130713(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0219551(US,A1)
【文献】特表平10-509338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気生理学的カテーテルであって、
細長い本体と、
前記細長い本体の遠位側の遠位部分であって、前記遠位部分は、複数の電極と、前記複数の電極の間にわたる
延在部を少なくとも有するスペーサ部材と、を有する少なくとも1つのスパインを含む、遠位部分と、を含み、
前記複数の電極のうちの少なくとも2つの電極は、前記
延在部によって前記少なくとも1つのスパインのまわりに周方向に離間して位置付けられており、
前記スペーサ部材が非導電性材料で作製されており、前記
延在部が前記少なくとも2つの電極の間に分離間隙を提供するように構成されている、電気生理学的カテーテル。
【請求項2】
前記分離間隙が軸方向にわたっている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記スペーサ部材が、周方向にわたっている分離間隙を形成する第2の部分を更に有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記スペーサ部材が、中に前記少なくとも1つのスパインを通して受容するように構成された軸方向中心開口部を有するリングとして構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記スペーサ部材が遠位縁部と近位縁部とを有して構成され、前記遠位縁部が遠位環状電極の近位端と当接するように構成され、前記近位縁部が近位環状電極の遠位端と当接するように構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
電気生理学的カテーテルであって、
細長い本体と、
前記細長い本体の遠位側の遠位部分であって、前記遠位部分は、少なくとも4つの電極と、少なくとも前記少なくとも4つの電極の間にわたる
延在部を少なくとも有するスペーサ部材と、を有する少なくとも1つのスパインを含む、遠位部分と、を含み、
前記スペーサ部材が非導電性材料で作製されており、前記
延在部が前記
少なくとも4つの電極のうちの2つの電極の間に分離間隙を提供するように構成されており、
前記スペーサ部材
の前記延在部が、第1の電極対の間に周方向に第1の分離間隙を提供するように構成された軸方向延在部と、第2の電極対の間に軸方向に第2の分離間隙を提供するように構成された周方向延在部とを有する、カテーテル。
【請求項7】
電気生理学的カテーテルであって、
細長い本体と、
前記細長い本体の遠位側の遠位部分であって、前記遠位部分は、少なくとも4つの電極と、少なくとも前記少なくとも4つの電極の間にわたる
延在部を少なくとも有するスペーサ部材と、を有する少なくとも1つのスパインを含む、遠位部分と、を含み、
前記スペーサ部材が非導電性材料で作製されており、前記
延在部が前記
少なくとも4つの電極のうちの2つの電極の間に分離間隙を提供するように構成されており、
前記スペーサ部材
の前記延在部が、第1の電極対の間にわたる、軸方向に延びる軸方向延在部と、第2の電極対の間にわたる、周方向に延びる周方向延在部とを有する、カテーテル。
【請求項8】
前記スペーサ部材が、第1及び第2の軸方向延在部と、前記第1の軸方向延在部と前記第2の軸方向延在部との間に延在する少なくとも1つの周方向延在部とを有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
電気生理学的カテーテルであって、
細長い本体と、
複数のスパインを有する遠位電極組立体と、を含み、各スパインは複数の電極とそれらの間のスペーサ部材とを有し、前記スペーサ部材は、非導電性材料で作製され、かつ軸方向貫通孔を有して構成されており、前記スペーサ部材は、前記電極によって占有される凹状空所を有して構成されて、第1の隣接電極対の間に軸方向分離間隙を提供し、かつ第2の隣接電極対の間に周方向分離間隙を提供し、
前記スペーサ部材は軸方向延在部を有し、前記第2の隣接電極対は、前記軸方向延在部によって前記スパインのまわりに周方向に離間して位置付けられている、電気生理学的カテーテル。
【請求項10】
前記スペーサ部材が、略中空円筒形状と、第1の周方向延在部とを有する、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記軸方向延在部が第1の軸方向延在部と第2の軸方向延在部とを含み、前記第1の周方向延在部が、前記第1の軸方向延在部と前記第2の軸方向延在部との間に延在する、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記第1の周方向延在部と、前記第1及び第2の軸方向延在部とが、前記スペーサ部材内の凹状空所を画定する、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記スパインの遠位端を、前記スペーサ部材の前記軸方向貫通孔に挿入することと、
前記スペーサ部材を、前記スパイン上の所定位置まで前記スパインに沿ってスライドさせることと、
各電極を対応の凹状空所内に位置決めすることと、を含む、請求項9に記載のカテーテルの組立方法。
【請求項14】
各電極を位置決めすることが、各電極をスライドさせて対応の凹状空所に入れることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電気生理学的カテーテルの組み立て方法であって、
前記電気生理学的カテーテルが、
細長い本体と、
前記細長い本体の遠位側の遠位部分であって、前記遠位部分は、少なくとも2つの電極と、前記少なくとも2つの電極の間の所定距離にわたる部分を少なくとも有するスペーサ部材と、を有する少なくとも1つのスパインを含み、前記スペーサ部材が非導電性材料で作製されており、前記スペーサ部材が少なくとも2つの凹状空所を有する、遠位部分と、
各電極用の対応のリード線と、を含んでおり、
前記電気生理学的カテーテルの組み立て方法が、
各リード線の遠位端を対応の電極に接続することと、
前記スペーサ部材を前記少なくとも1つのスパイン上にスライドさせることと、
各電極を前記スペーサ部材の対応
する前記凹状空所内に位置決めすることと、を含み、
前記スペーサ部材が、2つの軸方向延在部と、1つの周方向延在部とを少なくとも有し、
前記凹状空所が、前記2つの軸方向延在部及び前記1つの周方向延在部によって画定される、電気生理学的カテーテルの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気生理学的カテーテル、特に、より一層正確な個別の感知を提供する電極構成を備える心臓電気生理学的カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルは、長年にわたり医療現場で一般的に使用されている。電極カテーテルは心臓内の電気的活動を刺激及びマッピングし、異常な電気的活動が見られる部位をアブレーションするために用いられる。
【0003】
使用にあたり、電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈、例えば大腿静脈の中に挿入され、次いで対象となる心室の中に案内される。カテーテルが心臓内に配置された後、心臓内の異常な電気的活動の場所が特定される。
【0004】
位置特定の1つの技術は電気生理学的マッピング手順を含み、この手順によって導電性の心臓内組織から生じる電気信号が組織的に監視され、それらの信号のマップが形成される。医師は、そのマップを解析することによって、妨害する電気経路を確認することができる。導電性心組織からの電気信号をマッピングするための従来の方法は、その遠位先端上にマッピング電極が搭載された電気生理学的カテーテル(電極カテーテル)を、経皮的に導入することである。カテーテルは、これらの電極を心内膜に接触させて設置するように操作される。心内膜における電気信号を監視することによって、不整脈の原因である異常な導電性組織部位を正確に示すことができる。
【0005】
カテーテルに搭載された環状電極による感知のために、環状電極からの信号を送信するリード線が、カテーテル制御ハンドルの遠位端において適切なコネクタに電気的に接続され、それは、ECG監視システム及び/又は適切な3-D電気生理学的(EP)マッピングシステム、例えば、カリフォルニア州アーウィンデールのBiosense Webster社から入手可能なCARTO、CARTO XP又はCARTO3等に電気的に接続される。
【0006】
環状電極の寸法及び数にかかわらず、環状電極対は、カテーテルに沿って均等に離間配置される。近接配置された電極対は、心臓の特定領域の治療を試みる際に非常に重要であり得る、遠距離場の信号に対する近距離場の電位のより正確な検出を可能にする。例えば、近距離場の肺静脈電位は小さい/弱い信号であり、一方で心房は、肺静脈に極めて近接する場所にあり、遙かに大きい/強い信号を提供する。したがって、カテーテルが肺静脈の領域内に配置される場合であっても、信号が、小さく、(肺静脈から)近い電位、又はより大きく、(心房から)より遠い電位のいずれであるかを、電気生理学者が判定することは、困難である場合がある。近接配置される双極子により、医師は、近接する信号を検査しているのか、又は遠方の信号を検査しているかを、より正確に判定することが可能になる。したがって、近接配置される電極を有することによって、肺動脈電位を有する心筋組織の場所を、正確に標的とすることが可能であるため、臨床医は、特定の組織に治療を施すことが可能になる。更には、近接配置される電極により、医師は、電気信号によって、心門/複数の心門の正確な解剖学的場所を判定することが可能になる。
【0007】
しかしながら、近接して、かつ正確に配置される環状電極を有するカテーテルの製造及び組み立ては、多くの課題を提起する場合がある。電極対の間の望ましい間隔がミリメートル又は更にはマイクロメートルオーダーの範囲の場合には、間隔の正確さ及び一貫性がカテーテルの製造及び組み立てにとって極めて重要となる。従来の方法では、各環状電極を封止するために、ポリウレタンのような接着剤を用いる場合が多く、そうした接着剤は、隣接する電極又は電極対の間にマージンを作り出し、電極がどの程度近接して互いに離間配置され得るかを制限する。このような従来の方法を用いて、電極対の間隔を1.0mm以上にすることができる。しかし、より小さな間隔、特に0.2又は0.1mmの間隔は達成し難い。このような小さな間隔の場合、2つの電極が、電極の公差規格のために、又はポリウレタンのような医療グレード接着剤が適用される際、若しくは医療エポキシが硬化している際の組み立ての間に電極が移動するために、接触する危険性がある。
【0008】
更に、リード線を環状電極に取り付ける従来方法はまた、隣接する環状電極の間に間隔公差を通常必要とする。そのような取付方法では、鋭角となることが多く、リード線が環状電極に達するために延びなければならず、このことがリード線にストレスを与えて分離又は破損が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、取り付けられるリード線に与えられるストレス及び張力を最小化した状態で非常に密接して離間配置された電極を提供する環状電極構成を備える電気生理学的カテーテルに対するニーズが存在する。また、電極間の非常に近い間隔が精度及び正確さの向上と共に容易に、かつ一貫して達成され得る、このようなカテーテルの製造及び組み立ての方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、を有する電極を備えた電気生理学的カテーテルを目的とする。カテーテル構成体は、その長さが予め決められている/予め測定されている、生体適合性非導電性材料で作製されたスペーサリングを採用することによって、環状電極の組み立て及び配線を簡略化し、それにより、製造及び組立工程は、精度及び一貫性を向上させながら簡略化される。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の電気生理学的カテーテルは、細長い本体と、細長い本体の遠位側の遠位部分であって、該遠位部分は、2つの電極と、少なくとも2つの電極の間にわたる部分を有するスペーサ部材とを有する1つのスパインを含む、遠位部分と、を含み、スペーサ部材は非導電性材料で作製されており、上記部分は2つの電極の間に分離間隙を提供するように構成されている。いくつかの実施形態では、分離間隙は軸方向にわたっている。いくつかの実施形態では、分離間隙は周方向にわたっている。
【0012】
いくつかの実施形態では、スペーサ部材は、中にスパインを通して受容するように構成された軸方向中心開口部を有するリングとして概ね構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、スペーサ部材は遠位縁部と近位縁部とを有して構成され、遠位縁部は遠位環状電極の近位端と当接するように構成され、近位縁部は近位環状電極の遠位端と当接するように構成されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、スペーサ部材は、第1の電極対の間に周方向に第1の分離間隙を提供するように構成された軸方向延在部と、第2の電極対の間に軸方向に第2の分離間隙を提供するように構成された周方向延在部とを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、スペーサ部材は、第1の電極対の間で周方向にわたる軸方向延在部と、第2の電極対の間にわたる周方向延在部とを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、スペーサ部材は、第1及び第2の軸方向延在部と、第1の軸方向延在部と第2の軸方向延在部との間に延在する少なくとも1つの周方向延在部とを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明の電気生理学的カテーテルは、細長い本体と、複数のスパインを有する遠位電極組立体と、を含み、各スパインは複数の電極とそれらの間のスペーサ部材とを有し、スペーサ部材は、非導電性材料で作製され、かつ軸方向貫通孔を有して構成されており、スペーサ部材は、電極によって占有される凹状空所を有して構成されて、第1の隣接電極対の間に軸方向分離間隙を提供し、かつ第2の隣接電極対の間に周方向分離間隙を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、スペーサ部材は、略中空円筒形状と、第1の周方向延在部と、第1の軸方向延在部とを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の周方向延在部は、第1の軸方向延在部と第2の軸方向延在部との間に延在する。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の周方向延在部と、第1及び第2の軸方向延在部とは、スペーサ部材内の凹状空所を画定する。
【0021】
いくつかの実施形態では、細長い本体と、複数のスパインを有する遠位電極組立体とを有する電気生理学的カテーテルであって、各スパインは複数の電極とそれらの間のスペーサ部材とを有し、スペーサ部材は、非導電性材料で作製され、かつ軸方向貫通孔を有して構成されており、スペーサ部材は、電極によって占有される凹状空所を有して構成されて、第1の隣接電極対の間に軸方向分離間隙を提供し、かつ第2の隣接電極対の間に周方向分離間隙を提供する、電気生理学的カテーテル、に関して、方法は、スパインの遠位端を、スペーサ部材の軸方向貫通孔に挿入することと、スペーサ部材を、スパイン上の所定位置までスパインに沿ってスライドさせることと、各電極を対応の凹状空所内に位置決めすること、を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、細長い本体と、細長い本体の遠位側の遠位部分であって、遠位部分は、2つの電極と、少となくとも2つの電極の間の所定距離にわたる部分を有するスペーサ部材とを有する1つのスパインを含み、スペーサ部材が非導電性材料で作製されており、スペーサ部材が少なくとも2つの凹状空所を有する、遠位部分と、各電極用の対応のリードと、を含む、電気生理学的カテーテル、に関して、組立方法は、各リード線の遠位端を対応の環状電極に接続することと、第1の環状電極をスパイン上でスライドさせることと、スペーサ部材をスパイン上でスライドさせることと、第2の環状電極を前記スパイン上でスライドさせることと、第1及び第2の環状電極をスペーサ部材に当接させることと、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、各リード線の遠位端を対応の環状電極に接続することと、スペーサ部材をスパイン上にスライドさせることと、各電極をスペーサ部材の対応の空所内に位置決めすることと、を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のこれらの特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することによってより充分な理解がなされるであろう。選択された構造及び特徴が、残りの構造及び特徴をより見やすくするために、特定の図面では示されていないことを理解されたい。
【
図1】一実施形態による、本発明のカテーテルの側面図である。
【
図2】
図1のカテーテルのカテーテル本体の端部断面図である。
【
図3】
図1のカテーテルの中間偏向部分の端部断面図である。
【
図4】
図1のカテーテルの中間偏向部分と遠位電極組立体の接合部の斜視図である。
【
図5】一実施形態による、本発明の遠位電極組立体の斜視図である。
【
図6】
図5の遠位電極組立体のスパインの詳細斜視図である。
【
図7】一実施形態による、本発明のスペーサの斜視図である。
【
図9】他の実施形態による、本発明の遠位電極組立体のスパインの詳細斜視図である。
【
図10】他の実施形態による、本発明のスペーサの詳細斜視図である。
【
図11】組織と接触している、
図9のスパインの端部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、本発明のいくつかの実施形態では、カテーテル10は、カテーテル本体12、中間偏向部分14、遠位電極組立体15、及びカテーテル本体12の近位の制御ハンドル16を含む。遠位電極組立体15は、複数のスパイン42を含み、各スパインは、少なくとも一対の近接配置された電極13を担持し、一対の電極は、約50マイクロメートル~200マイクロメートル、好ましくは約50~100マイクロメートルの範囲の分離空間間隙距離を画定するスペーサを有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、カテーテル本体12は、
図2に示されるように、単一の、軸性すなわち中心内腔18を有する、細長い管状の構造を含む。カテーテル本体12は、可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造を有していてもよく、任意の好適な材料で作製することができる。本発明において好ましい構造の1つは、ポリウレタン又はPEBAXで作製された外壁17を備える。外壁17には高強度鋼、ステンレス鋼等の編組メッシュが埋め込まれていることによってカテーテル本体12のねじり剛性が高められているため、制御ハンドル16が回転させられると、カテーテル10の偏向部分14がこれに応じて回転する。
【0027】
カテーテル本体12の外径は、重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは約7フレンチである。同様に、外壁17の厚さは、重要ではないが、中心内腔18が、例えば、1つ又は2つ以上の牽引ワイヤ、電極リード線、灌流管材、並びに任意の他のワイヤ及び/又はケーブルなどのコンポーネントを収容できるように、十分に薄い。外壁17の内面は、ポリイミド又はナイロンなどの任意の好適な材料から作製され得る補強管20で裏打ちされる。補強管20は、編組された外壁17とともに高いねじれ安定性を提供すると同時に、カテーテルの壁厚を最小化し、したがって中心内腔18の直径を最大化する。補強管20の外径は、外壁17の内径とほぼ同じか、又はそれよりも僅かに小さい。いくつかの実施形態では、ポリイミド管材は、非常に薄い壁を形成し得る一方で、非常に良好な剛性を提供するため、補強管20用に使用され得る。これにより、強度及び剛性を犠牲にすることなく中心内腔18の直径が最大化される。当業者に理解されるように、カテーテル本体の構造は、所望に応じて変更され得る。例えば、補強管は排除されてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、中間偏向部分は、
図3に示すように、例えば、軸外内腔21、22、23、及び24、並びに軸上内腔25等の複数の内腔を有する、管材19のより短い部分を含む。いくつかの実施形態では、管材19は、カテーテル本体12よりも可撓性である、適切な非毒性材料で作製される。管材19に適した材料は、編組ポリウレタン、すなわち編組の高強度鋼、ステンレス鋼等のメッシュが埋め込まれたポリウレタンである。偏向部分14の外径は、カテーテル本体12の外径と同様である。内腔のサイズは重要ではなく、特定の用途に応じて変更できる。
【0029】
様々なコンポーネントは、カテーテル10を通って延在する。いくつかの実施形態では、コンポーネントは、
図4に示すように、遠位電極組立体15上の電極用のリード線30、偏向部分14を偏向させるための1つ又は2つ以上の牽引ワイヤ32A及び32B、偏向部分14の遠位端又はその近傍に収納される電磁位置センサ36用のケーブル34、並びにガイドワイヤ管材38を含む。これらのコンポーネントは、
図2に示すように、カテーテル本体12の中心内腔18を通過する。
【0030】
偏向部分14では、異なるコンポーネントが、
図3に示すように管材19の異なる内腔を通過する。いくつかの実施形態では、リード線30は第1の内腔21を通過し、第1の牽引ワイヤ32Aは第2の内腔32を通過し、ガイドワイヤ管材38は第3の内腔23を通過し、ケーブル34は第4の内腔24を通過し、第2の引張り34Bは第5の内腔25を通過する。第2の内腔22及び第4の内腔24は、互いに半径方向に対向し、中間偏向部分14の両方向の偏向を供給する。
【0031】
図4を参照すると、偏向部分14の遠位は、遠位電極組立体15であり、遠位電極組立体15は、中間偏向部分14の管材19の遠位端に取り付けられた短い管材の形態である取付ステム46を含む。(これに関し、カテーテル10が偏向部分14を有していない場合、取付ステム46が、カテーテル本体12の遠位端に取り付けられることを理解されたい。)ステム46は、様々な部品を収納する中心内腔48を有する。中間部14とステム46は、接着剤などにより取り付けられる。ステム46は、ニチノールを含む、任意の好適な材料から構成されてよい。ステム46は、電磁位置センサ36、及び牽引ワイヤ32A及び32Bのための遠位固定具などの、様々なコンポーネントを収納する。
【0032】
開示された実施形態において、遠位固定具は、1つ又は2つ以上のワッシャ、例えば、遠位ワッシャ50D及び近位ワッシャ50Pを備え、それぞれのワッシャが、複数の貫通孔を有し、この貫通孔は、偏向部分14とステム46との間のコンポーネントの通過を可能にし、カテーテル10の長手方向軸40に対するこれらのコンポーネントの軸方向の位置合わせを維持する。貫通孔は、管材19の第2の内腔22及び第4の内腔24とそれぞれ軸方向に位置合わせし、牽引ワイヤ32A及び32Bの遠位端をそれぞれ受容している、孔52及び54を含む。牽引ワイヤは、孔52及び54を通過する遠位Uベンド部分とともに単一の引張部材として形成されてもよいことが理解される。牽引ワイヤのUベンド部分によって及ぼされるワッシャ50D及び50Pの張力によって、ワッシャは、偏向部分14の管材19の遠位端に対して強固かつ不動に当接され、Uベンド部分を遠位に固定する。
【0033】
各ワッシャは、第1の内腔21と軸方向に位置合わせされ、偏向部分14からステム46の内腔48内へのリード線30の通過を可能にする貫通孔51を含む。各ワッシャはまた、管材19の第5の内腔25と軸方向に位置合わせされ、偏向部分14から、電磁位置センサ36が収納されているステム46の内腔48へのセンサケーブル34の通過を可能にする貫通孔55も含む。各ワッシャは、第3の内腔23と軸方向に位置合わせされ、偏向部分14からステム46の内腔48内へのガイドワイヤ管材38の通過を可能にする軸上貫通孔53を更に含む。マーカーバンド又は環状電極27は、当該技術分野において周知のように、中間偏向部分14の遠位端又はその近傍でカテーテルの外面に担持されてもよい。
【0034】
各牽引ワイヤ32A及び32Bは、制御ハンドル16内のその近位端に固定されている(
図1)。いくつかの実施形態では、牽引ワイヤは、少なくとも任意の好適な金属(例えばステンレス鋼又はニチノール)で形成されている部分を有し、該部分は、好ましくはテフロンRTM等によってコーティングされている。コーティングによって牽引ワイヤに潤滑性が付与される。
【0035】
圧縮コイル66は、
図2に示されるように、各牽引ワイヤを包囲する関係でカテーテル本体12内に配置されている。各圧縮コイル66は、カテーテル本体12の近位端からおよそ偏向部分14の近位端まで延在する。圧縮コイルは、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼で作製される。各圧縮コイルはそれ自体に密に巻かれて、柔軟性(曲げ)をもたらしているが、圧縮には耐える。圧縮コイルの内径は、牽引ワイヤの直径よりも僅かに大きいことが好ましい。引込線上のテフロンRTMの被覆によって、引込線は圧縮コイル内で自由に摺動することができる。牽引ワイヤ32Aは管材19の内腔22を通って延在し、牽引ワイヤ32Bは管材19の内腔24を通って延在している。これらの内腔内で、各牽引ワイヤは、対応するプラスチック(好ましくはテフロンRTM)製のシース39(
図3を参照)を通って延在しており、このシース39によって、偏向部分14が偏向されたときに牽引ワイヤが管材19の壁内に切り込むことが防止されている。
【0036】
カテーテル本体12に対する牽引ワイヤの長手方向の動きは、先端部分14の偏向を引き起こし、この動きは、制御ハンドル16の適切な操作によって行われる。本発明とともに用いる好適な制御ハンドルデザインは米国特許第8,287,532号に記載されている。なおこの文献の開示内容全体は本明細書において参照により取り入れられている。必要に応じて、カテーテルは一方向偏向(すなわち、1本の牽引ワイヤのみを有する)とすることができる。
【0037】
図4に示すように、ステム46の遠位端から、遠位電極組立体15の細長いスパイン42が延在する。各スパインは、支持部材43と、各スパイン42に沿って延在する非導電性被覆44とを有する。各スパインは、ステム46の内腔48の中へ近位に延在する近位部分を有する。スパインの非導電性被覆44はまた、内腔48に近位に延在してもよい。各スパイン42は、隣接するスパイン42から等半径方向距離でステム46の遠位開口部の周りに均等に配置されてもよい。例えば、5つのスパインの場合、各スパインは、隣接するスパインから約72°で離間してもよい。ポリウレタンなどの適切な接着剤は、スパイン42及びそれらの非導電性被覆44の近位端をポットして固定するのに用いられてもよい。適切な接着剤は、ガイドワイヤ管材38の遠位端を開放したままとするように形成されるステム46の遠位端を封止する。
【0038】
各スパイン支持部材43は、形状記憶を有する材料、すなわち、力が行使されると、その本来の形状から離れて一時的に直線状に伸ばすか又は屈曲させることができ、かつ力が行使されないか、又は取り除かれると、実質的に本来の形状に戻ることが可能である材料で作製される。支持部材に好適な材料は、ニッケル/チタン合金である。そのような合金は、典型的には、約55%のニッケル及び約45%のチタンを含むが、約54%~約57%のニッケルを含み、残部をチタンとすることができる。ニッケル/チタン合金は、ニチノールであり、耐久性、強度、耐食性、電気抵抗及び温度安定性とともに、優れた形状記憶性を有する。非導電性被覆44は、任意の好適な材料で製造することが可能であり、好ましくは、ポリウレタン又はPEBAXなどの生体適合性プラスチックから製造される。
【0039】
スパイン42に担持された微小電極用のリード線30は、カテーテル本体12、及び非導電性シース60によって保護された偏向部14分を通って延在する。遠位電極組立体15に向かって、リード線30は、
図4に示すように、ポリチューブ68を通って延在する。リード線30は、ポリチューブ68の遠位端で分岐し、それらの対応のスパイン支持部材43に向かって延びて、それらの対応のスパイン42のそれらの対応の非導電性被覆44内に至る。
【0040】
図5及び
図6を参照すると、複数の双極電極対13が各スパイン上に担持されている。各一対の双極電極内では、遠位電極13D及び近位電極13Pが離間配置されており、該電極の間に配置されたスペーサ部材29によって所定距離だけ相互に隔てられている。スペーサ部材29は、生体適合性非導電性材料、例えば、TEFLON又はPEEKで構成され、電極13D及び13Pと縁部同士が当接しかつ接触した状態で電極対の間に直接挟まれて、これら隣接する一対の近位電極13間に物理的かつ電気的バリアを提供する。双極対の隣接する電極13Pと13Dとの間のスペーサ部材29によって提供される所定の分離間隙は、約1.0mm未満、好ましくは約0.50mm(500マイクロメートル)未満、より好ましくは約0.05mm(50マイクロメートル)である。
【0041】
図7及び
図8を参照すると、スペーサ部材29は中空であり、スペーサ部材がスパインの上にスライドすることができるように、スペーサ部材の内径はスパイン42の外径よりも僅かに大きい。いくつかの実施形態では、スペーサ部材29の内面31と外面33との間の径方向の厚さTは、遠位環状電極13D及び近位環状電極13Pの厚さと同じであり、スペーサ部材29と電極13D及び13Pとがカテーテル上で概ね継ぎ目のない表面及び輪郭(
図6参照)を形成するように、スペーサ部材29は、当接する環状電極13D及び13Pの隣接縁部35を補完しかつそれらと嵌合する隣接縁部35を有する。図の実施形態では、電極13D及び13P並びにスペーサ部材29は、同様に、例えば、それぞれ、周方向に360度にわたる閉環帯形状を有する「リング」のように、また、共に同様の内径及び外径を有するように、形状化され、幅Wを有するスペーサ部材29は、環状電極13Pと13Dとの間に、軸方向又は長手方向にほぼ等しい分離間隙Wを提供する。内径は軸方向貫通孔を画定し、遠位電極組立体を組み立てる際にその中を通してスパインが挿入される。
【0042】
スパイン42の組み立ての際、一実施形態によると、非導電性被覆44内のスパインに沿った所定位置に、相互に所定の空間間隙で離間している開口47が形成される。
図8に示すように、リード線30は、スパイン42内部から通され、対応の開口47から出て、その後すぐにリード線の遠位端は対応の環状電極13P及び13Dに更に挿入され、環状電極に形成された開口45から出る。リード線の遠位端は、Zにおいて、液密シールのための機械的完全性を有して溶接されるか、ないしは別の方法で開口45内に固着され、かつ環状電極の外面と面一になるように不要部分が除去される。
【0043】
次に、
図8に示すように、スパイン42の遠位端は、近位環状電極13Pを通して挿入された後、スペーサ部材29を通して挿入され、更にその後遠位環状電極13Dを通して挿入される。リード線は、リード線の余長がスパイン42の外側に残ることなくスパイン42内に戻ってぴったりと収まるように、必要に応じて、近位に引かれるか、ないしは別の方法で調整される。スペーサ部材及び電極は、好適な接着剤によってスパインの外面に固着される。
【0044】
電極13P及び13D並びにスペーサ部材29は、これらの3つのコンポーネントの各隣接縁部35が互いしっかりと当接し、各開口45が対応の開口47と略同心になるように、スパイン42上に位置付けられる。スペーサ部材29が正確に測定された最小化された幅Wを有し、電極13D及び13Pがスペーサ部材29と直接かつ直に当接することにより、スペーサ部材は、隣接する電極の間の分離間隙距離を正確に最小化し、規定し、かつ物理的に設定及び維持する働きをする。スペーサ部材は、電極を測定して、正確な位置又は相互の離隔距離に電極を固着させるという骨の折れる仕事を有利に排除することによって組立工程を簡略化し、かつ、スペーサ部材を使用しない場合に電極を取り付けて封止するために用いられるエポキシなどの接着剤によって物理的に占有されることになる空間の制限を否認(traversing)しながら、一貫性及び再現性を確実にする。スペーサ部材はまた、有利には、1つ又は2つ以上のスパインの双極電極対がそれぞれ同じ分離間隙距離を有するように、その間にスペーサが配置される各双極電極対の分離間隙距離の均一性を与える。したがって、組み立てにかかる時間及び労働力が大幅に低減され、効率化が図れる。
【0045】
既に述べたように、各電極は、その側壁に形成された開口45を有している。概して、対応する開口47が、スパイン42の非導電性被覆44に形成される。電極13の各開口45は、非導電性被覆44の内腔から対応の開口47を通過する対応のード線30の遠位端を受容するような寸法、形状、構成とされる。その関連で、リード線30は、生体適合性導電性材料(例えば、MP35N)で作製される。開口47は、リード線30の寸法及び形状とぴったり合う寸法及び形状とすることができる。
【0046】
他の実施形態では、電極13は、
図9、
図10、及び
図11に示すように、周方向に360度未満にわたる、「個別」のものであり、その場合、スペーサ部材29’は、隣接する電極の間の軸方向/長手方向L及び周方向Cの両方に、分離間隙を提供する。その関連で、スペーサ部材29’は、外径と内径とを有する略中空円筒形状を有し、内径は、遠位電極組立体を組み立てる際にその中を通してスパインが挿入される軸方向貫通孔を画定する。スペーサ部材29’は軸方向及び周方向にわたり、スペーサ部材は軸方向延在部Aを有し、その中央部分CAは周方向延在部Cによって接続され、その末端部分EAは、スペーサ部材の凹状空所Vによって分離される。スペーサ部材29’の各空所Vは、対応の個別の電極によって占有され、各個別の電極の3辺は、2つの対向する軸方向延在部Aと1つの周方向延在部Cとによって概ね取り囲まれている。
図9に示すように、周方向空所Vを画定する縁部Eと電極13の外周縁部13Eとは相補的であり、互いに嵌め合わさることで、スペーサ部材29’及び電極13は、スパイン42上に概ね継ぎ目のない表面及び輪郭を形成する。電極13の外面13Sとスペーサ部材29’の外面33とは、一緒になって、スパイン42の外面を取り巻いて囲む、360度の外周面を形成する。注目すべき点としては、電極13が軸方向に(近位又は遠位に)好都合にスライドしてスペーサ部材29と係合し、それぞれの空所Vを占有することができるように、各周方向空所Vは、開口した遠位端又は開口した近位端を有することである。
【0047】
図9、
図10、及び
図11に示す実施形態では、スペーサ部材29’は、4つの「個別の」電極13a、13b、13c、及び13d(13dは図示せず)のための所定の軸方向及び周方向分離間隙を提供する。電極13a及び13cは、1つの周方向延在部Cによって軸方向に分離され(かつこの分離構造内に固定的に維持される)。電極13b及び13dは、別の周方向延在部Cによって軸方向に分離され(かつこの分離構造内に固定的に維持される)。電極13a及び13bは、1つの周方向延在部Aによって周方向に分離され(かつこの分離構造内に固定的に維持される)。電極13c及び13dは、別の周方向延在部Aによって周方向に分離され(かつこの分離構造内に固定的に維持される)。スペーサ部材29’は、遠位電極13a及び13bを(スパインの反対側に)正反対に対向した配置で受容するように、また、近位電極13c及び13dを(スパインの反対側に)正反対に対向した配置で受容するように構成されている。また、スペーサ部材29’は、電極13a及び13cを、スパイン42の同じ側に長手方向配置で位置付けるように、また、電極13b及び13dを、スパイン42の同じ反対側に長手方向配置で位置付けるように構成されている。更に、スペーサ部材29’は、各個別の電極が周方向に約90度にわたり、スペーサ部材29’の軸方向延在部Aのそれぞれが、電極13aと13bとの間及び電極13cと13dとの間に約90度にわたるように構成されている(
図11でよりよく分かる)。電極が、スパイン42上のスペーサ部材29’によって画定された個別の分割された構成にある状態で、オペレータは、感知及び/又はアブレーション用に1つ又は2つ以上の選択された電極を作動させることができ、選択されなかった残りの電極は作動させない。例えば、スパイン42は、
図11に示すやり方で標的組織表面T上に定置されることができ、オペレータは、標的組織表面Tと接触する、スパイン42の同じ側にある電極のみ(すなわち、電極13b及び13d)を選択的に作動させて電気信号を感知する。したがって、スパイン42の反対側にあり、かつ組織表面と接触していない電極(すなわち、
図11の電極13a及び13c)は、検出された場合に電極13b及び13dによって検出された信号に干渉する場合があるノイズ又は非近接場の信号をこれらの電極が検出するのを避けるために、オペレータによって選択的に動作停止にされる。他の実施形態では、選択された電極(例えば、組織と接触していない電極)から受信した信号は、フィルタリングして除去されるか、ないしは別の方法で処理されて、組織と接触している選択された電極から受信した信号から分離又は区別され得る。
【0048】
スパインの同じ側の電極(すなわち、
図11の電極13b及び13d)によって検出された信号に関しては、周方向延在部Cの幅がこれら電極間に所定の最小化された空間間隙を有利に提供するので、これら電極を、上述のように小さい/弱い信号を検出する方法で、双極電極対として使用することができる。
【0049】
スペーサ部材29’の構成は、4つを超える追加電極を受容するように変化させることができることが理解される。例えば、スペーサ29’は、各遠位電極が約45度にわたり、各近位電極が約45度にわたっている、8つの電極を受容してもよい。更に、必要に応じて又は適切な場合には、異なる構成のスペーサ部材を1つのスパイン上で使用してもよい。スペーサ部材の各個別の電極の形状は、円形、楕円形、正方形、矩形、多角形等などの任意の好適な形状であり得る。
【0050】
上記の説明は、現時点における本発明の好ましい実施形態を参照して示したものである。本発明が関連する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を大きく逸脱することなく、記載される構造に改変及び変更を実施し得る点は認識されるであろう。一実施形態に開示される任意の特徴又は構造は、必要に応じて又は適宜、他の任意の実施形態の他の特徴の代わりに又はそれに加えて援用することができる。当業者には理解されるように、図面は必ずしも縮尺通りではない。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載及び例示される正確な構造のみに関連したものとして読まれるべきではなく、むしろ以下の最も完全で公正な範囲を有するものとされる特許請求の範囲と一致し、かつこれを支持するものとして読まれるべきである。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) 電気生理学的カテーテルであって、
細長い本体と、
前記細長い本体の遠位側の遠位部分であって、前記遠位部分は、2つの電極と、少なくとも前記2つの電極の間にわたる部分を有するスペーサ部材と、を有する1つのスパインを含む、遠位部分と、を含み、前記スペーサ部材が非導電性材料で作製されており、前記部分が前記2つの電極の間に分離間隙を提供するように構成されている、電気生理学的カテーテル。
(2) 前記分離間隙が軸方向にわたっている、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記分離間隙が周方向にわたっている、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記スペーサ部材が、中に前記スパインを通して受容するように構成された軸方向中心開口部を有するリングとして概ね構成されている、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記スペーサ部材が遠位縁部と近位縁部とを有して構成され、前記遠位縁部が遠位環状電極の近位端と当接するように構成され、前記近位縁部が近位環状電極の遠位端と当接するように構成されている、実施態様1に記載のカテーテル。
【0052】
(6) 前記スペーサ部材が、第1の電極対の間に周方向に第1の分離間隙を提供するように構成された軸方向延在部と、第2の電極対の間に軸方向に第2の分離間隙を提供するように構成された周方向延在部とを有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記スペーサ部材が、第1の電極対の間で前記周方向にわたる軸方向延在部と、第2の電極対の間にわたる周方向延在部とを有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(8) 前記スペーサ部材が、第1及び第2の軸方向延在部と、前記第1の軸方向延在部と前記第2の軸方向延在部との間に延在する少なくとも1つの周方向延在部とを有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 電気生理学的カテーテルであって、
細長い本体と、
複数のスパインを有する遠位電極組立体と、を含み、各スパインは複数の電極とそれらの間のスペーサ部材とを有し、前記スペーサ部材は、非導電性材料で作製され、かつ軸方向貫通孔を有して構成されており、前記スペーサ部材は、前記電極によって占有される凹状空所を有して構成されて、第1の隣接電極対の間に軸方向分離間隙を提供し、かつ第2の隣接電極対の間に周方向分離間隙を提供する、電気生理学的カテーテル。
(10) 前記スペーサ部材が、略中空円筒形状と、第1の周方向延在部と、第1の軸方向延在部とを有する、実施態様9に記載のカテーテル。
【0053】
(11) 前記第1の周方向延在部が、前記第1の軸方向延在部と第2の軸方向延在部との間に延在する、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記第1の周方向延在部と、前記第1及び第2の軸方向延在部とが、前記スペーサ部材内の凹状空所を画定する、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記スパインの遠位端を、前記スペーサ部材の前記軸方向貫通孔に挿入することと、
前記スペーサ部材を、前記スパイン上の所定位置まで前記スパインに沿ってスライドさせることと、
各電極を対応の凹状空所内に位置決めすることと、を含む、実施態様9に記載のカテーテルの組立方法。
(14) 各電極を位置決めすることが、各電極をスライドさせて対応の凹状空所に入れることを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 電気生理学的カテーテルであって、
細長い本体と、
前記細長い本体の遠位側の遠位部分であって、前記遠位部分は、2つの電極と、少なくとも前記2つの電極の間の所定距離にわたる部分を有するスペーサ部材と、を有する1つのスパインを含み、前記スペーサ部材が非導電性材料で作製されており、前記スペーサ部材が少なくとも2つの凹状空所を有する、遠位部分と、
各電極用の対応のリード線と、を含む、電気生理学的カテーテル。
【0054】
(16) 各リード線の遠位端を対応の環状電極に接続することと、
第1の環状電極を前記スパイン上でスライドさせることと、
前記スペーサ部材を前記スパイン上でスライドさせることと、
第2の環状電極を前記スパイン上でスライドさせることと、
前記第1及び第2の環状電極を前記スペーサ部材に当接させることと、を含む、実施態様15に記載のカテーテルの組立方法。
(17) 各リード線の遠位端を対応の電極に接続することと、
前記スペーサ部材を前記スパイン上にスライドさせることと、
各電極を前記スペーサ部材の対応の空所内に位置決めすることと、を含む、実施態様15に記載のカテーテルの組立方法。
(18) 前記スペーサ部材が、少なくとも2つの軸方向延在部と、周方向延在部とを有し、1つの空所が、前記少なくとも2つの軸方向延在部及び前記周方向延在部によって画定される、実施態様17に記載のカテーテルの組立方法。