(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】水分散性重袋
(51)【国際特許分類】
B65D 30/02 20060101AFI20230417BHJP
B65D 30/10 20060101ALI20230417BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B65D30/02 BRH
B65D30/10 A BSE
B65D65/46
(21)【出願番号】P 2017193201
(22)【出願日】2017-10-03
【審査請求日】2020-10-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591130870
【氏名又は名称】共栄製袋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】石野 良明
(72)【発明者】
【氏名】服部 順行
(72)【発明者】
【氏名】岸本 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】大木 孝夫
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-085565(JP,A)
【文献】特開平10-258845(JP,A)
【文献】特開平08-052730(JP,A)
【文献】特開2000-006986(JP,A)
【文献】特開2016-053235(JP,A)
【文献】特開2017-171513(JP,A)
【文献】特開昭62-193955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
B65D 30/10
B65D 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性紙からなり、胴貼り部及び底部が酢酸ビニルエマルジョン系接着剤で封止されて
おり、
前記水分散性紙が、含浸塗工されたカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、または、冷水可溶性ポリビニルアルコールである水溶性高分子を含み、
前記水溶性高分子が、20℃4重量%水溶液の粘度が1mPa・s以上25mPa・s以下であることを特徴とする水分散性重袋。
【請求項2】
前記水分散性紙が、紙面pH6.0以上11.0以下であることを特徴とする請求項
1に記載の水分散性重袋。
【請求項3】
コンクリート用粉粒体が収容されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の水分散性重袋。
【請求項4】
前記コンクリート用粉粒体が、15kg以上60kg以下収容されていることを特徴とする請求項
3に記載の水分散性重袋。
【請求項5】
前記コンクリート用粉粒体が、混和材または化学混和剤であることを特徴とする請求項
3または
4に記載の水分散性重袋。
【請求項6】
前記コンクリート用粉粒体が、加熱改質フライアッシュであることを特徴とする請求項
3~
5のいずれかに記載の水分散性重袋。
【請求項7】
請求項
3~
6のいずれかに記載の水分散性重袋をコンクリート用粉粒体を収容したままの状態でミキサに投入して、他のコンクリート構成材料と混練することを特徴とするスラリー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に分散することのできる水分散性重袋に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント、米、小麦粉、飼料等の粉粒体からなる重量物を保管、輸送等する際に、紙製の重袋が広く用いられている。重袋は、一枚または重ね合わせた複数枚の紙が、筒状となるように接着され、底部を補強用テープで封止し、縫着されている(特許文献1,2参照)。また、重袋を形成する紙には、一般的に、強度に優れたクラフト紙が用いられる(特許文献3,4参照)
重袋には、内容物を安定して保管するための防水性、防湿性、また、古紙としてリサイクルするための易離解性が要求される(特許文献5)。ここで、易離解性とは、紙に機械的せん断をかけることによりパルプにほぐせることを意味し、本発明の水分散性とは異なる概念である。そして、水分散性を有する重袋は、本発明者らが調査した限りでは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-183482号公報
【文献】特開2000-289750号公報
【文献】特開平07-070975号公報
【文献】特開2014-055372号公報
【文献】特開平09-286467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水分散性を有する重袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.水分散性紙からなり、胴貼り部及び底部が水溶性または水分散性接着剤で封止されていることを特徴とする水分散性重袋。
2.前記水分散性紙が、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、または、冷水可溶性ポリビニルアルコールを含むことを特徴とする1.に記載の水分散性重袋。
3.前記水分散性紙が、紙面pH6.0以上11.0以下であることを特徴とする1.または2.に記載の水分散性重袋。
4.前記水溶性または水分散性接着剤が、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の水分散性重袋。
5.コンクリート用粉粒体が収容されていることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の水分散性重袋。
6.前記コンクリート用粉粒体が、15kg以上60kg以下収容されていることを特徴とする5.に記載の水分散性重袋。
7.前記コンクリート用粉粒体が、混和材または化学混和剤であることを特徴とする5.または6.に記載の水分散性重袋。
8.前記コンクリート用粉粒体が、加熱改質フライアッシュであることを特徴とする5.~7.のいずれかに記載の水分散性重袋。
9.5.~8.のいずれかに記載の水分散性重袋をコンクリート用粉粒体を収容したままの状態でミキサに投入して、他のコンクリート構成材料と混練することを特徴とするスラリー製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水分散性重袋は、容易に水中に分散することができる。水分散性紙の紙面pHが6.0以上11.0以下である水分散性重袋は、内容物を酸、または、強アルカリによる悪影響をもたらすことなく収容することができる。酢酸ビニルエマルジョン系接着剤は、接着強度と水分散性とに優れており、重袋に要求される強度と迅速な水分散性とを両立することができる。
本発明の水分散性重袋は、容易に水に分散するため、リサイクルが容易である。
【0007】
本発明の水分散性重袋は、コンクリート用粉粒体の収容に好適に利用することができる。本発明の水分散性重袋は、強度に優れているため、一袋あたりコンクリート用粉粒体を15kg以上60kg以下収容することができる。コンクリート用粉粒体は、他のコンクリート構成材料と水と混練してスラリーとなるが、本発明の水分散性重袋は、容易に水に分散するため、コンクリート用粉粒体を収容した重袋ごとミキサに投入することができる。水分散性重袋に収容されているコンクリート用粉粒体の量とスラリー中のコンクリート用粉粒体の組成とを調整することにより、スラリー調製時に本発明の水分散性重袋を1袋、2袋と袋単位で投入することができ、コンクリート用粉粒体の重さを測定する必要がないため、スラリー調製作業が容易である。なお、このスラリーが硬化した水硬性硬化物には、パルプ、水溶性接着剤等の重袋由来物が混入するが、水硬性硬化物全量に対する重袋由来物の量は僅かであるため、これらが水硬性硬化物に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ、パルプによる強度向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、水分散性紙からなり、胴貼り部及び底部が水溶性または水分散性接着剤で封止されている水分散性重袋に関する。重袋の形状としては、水分散性紙を糸でミシン縫いしたものではなく、水溶性または水分散性接着剤で貼合して封かんしたものであれば、特に限定されない。例えば、JIS Z0102に規定されるひだなし開口式底ばり袋(A-1)、ひだなし開口式折りばり袋(A-3)、ひだ付き開口式底ばり袋(A-2)、ひだ付き開口式折りばり袋(A-4)、ひだ付き開口式二重折りばり袋(A-5)、ひだ付き開口式補強紙付き折りばり袋(A-5’)、等が挙げられる。なお、本発明の水分散性重袋は、全体が水に分散または溶解する素材から構成されていればよく、例えば、底部の貼り合わせを、水分散性紙からなる補強紙あるいは化粧紙により補強することができる。また、底部の貼り合わせを、水溶性の糸で縫着して補強することもできる。
【0009】
「水分散性紙」
本発明において、水分散性紙とは、フロック状水分散時間が30秒以内であり、かつ繊維状水分散時間が60秒以内である紙を意味する。フロック状水分散時間とは、脱イオン水300mlを300mlビーカーに入れ、スターラーで650rpmに攪拌しながら、3cm角の試験片を投入し、試験片が2つ以上に千切れる時間である。また、繊維状水分散時間とは、試験片が完全に繊維一本一本にほぐれる時間である。
【0010】
水分散性紙としては、例えば、特許第6010461号公報に記載の精製パルプを全パルプの15重量%以上95重量%以下含有する水分散紙、これに水溶性重合体を含浸または塗工した水分散紙、特許第4917274号公報に記載の水分散性繊維と水溶性繊維であるカルボキシアルキルセルロース塩とを含む水剥離性塗工紙用基紙等を使用することができる。
【0011】
また、水分散性紙として、製紙用繊維と、水分散性や強度向上を目的として添加される水溶性高分子とを含むものを適宜用いることができる。水溶性高分子は、水分散性紙に対して2重量%以上30重量%以下添加することが、水分散性と強度とのバランスの点から好ましい。
下記で詳述するように、本発明の水分散性重袋は、骨材等の粉粒体を含有するコンクリートスラリーやセメントスラリー中に重袋ごと添加することができる。この際、水分散性重袋は、骨材等の粉粒体の物理的抵抗を受けて分散が抑制される。また、骨材等の粉粒体が含有するカルシウムイオンやマグネシウムイオンにより、水溶性高分子が溶け難くなり、水分散性が低下する。
【0012】
このようなスラリー中の骨材等の粉粒体の粘性抵抗による水分散性の低下を避けるために、水分散性紙に添加する水溶性高分子は、コンクリートスラリー等を増粘させない低粘度のものを用いることが好ましい。好ましい水溶性高分子として、カルボキシメチルセルロース塩等のカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、冷水可溶性ポリビニルアルコールが挙げられる。冷水可溶性ポリビニルアルコールとは、30℃以下の水に溶解するもので、ケン化度が89%以下の部分ケン化ポリビニルアルコール、分子内にスルホン酸基やカルボン酸基を導入した変性ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの水溶性高分子は、20℃における4重量%水溶液の粘度が、1mPa・s以上25mPa・s以下のものが好ましい。この粘度が1mPa・s未満では強度向上効果が乏しく、この粘度が25mPa・sを超えるものは水やコンクリートスラリーへの分散性が低下して好ましくない。
【0013】
水分散性重袋に用いる水分散性紙の坪量は50g/m2以上120g/m2以下の範囲であり、JIS P3401に規定されるクラフト紙1種~4種の坪量に適合したものが好ましい。比引張強さは、縦方向45N・m/g以上、横方向15N・m/g以上であることが好ましく、縦方向60N・m/g以上、横方向20N・m/g以上であることがより好ましい。比引裂強さは、縦方向8mN・m2/g以上、横方向9mN・m2/g以上であることが好ましく、縦方向10mN・m2/g以上、横方向11mN・m2/g以上であることがより好ましい。
【0014】
水分散性は、フロック状水分散時間が30秒以内であり、かつ繊維状水分散時間が60秒以内であることが好ましく、フロック状水分散時間が20秒以内であり、かつ繊維状水分散時間が30秒以内であることがより好ましく、フロック状水分散時間が10秒以内であり、かつ繊維状水分散時間が20秒以内であることが更に好ましい。
【0015】
水分散性紙の紙面pHは、6.0以上11.0以下であることが好ましく、6.2以上10.0以下であることがより好ましい。紙面pHをこの範囲に調整することで、紙中の酸、強アルカリが内容物に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
紙面pHを調整する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、中性領域の材料を主成分として水分散性紙を抄紙する。あるいは、アルカリ性、酸性の水分散性紙を、酸性物質、アルカリ性物質で中和して製造することができる。
【0016】
<水分散性紙の付加加工>
本発明の水分散性紙は、平滑性を向上させて印刷用途等に供するため、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトニップカレンダー等の一般的な製紙用カレンダーを用いてカレンダー加工を施すことができる。
また、湿潤時の強度や透気抵抗度を高めるため、水分散性紙に水溶性樹脂フィルムをラミネート加工してもよい。水溶性樹脂フィルムとしては、水溶性ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド共重合物等の水溶性樹脂をフィルム化したものを使用することができる。ラミネート加工は、可溶性袋状物とした際に、最外層または最内層となる面に施すことが好ましい。最外層にラミネート層を有する可溶性袋状物は、外部からの湿度の影響を抑えられるため、保管性が向上する。一方、最内層にラミネート層を有する可溶性袋状物は、最内層以外にラミネート層を有する可溶性袋状物と比較して、袋ごと投入した際の水分散性に優れる。
【0017】
「水溶性または水分散性接着剤」
本発明の水分散性重袋は、水溶性または水分散性接着剤で封止されることを特徴とする。水溶性または水分散性接着剤としては、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤、アクリルエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、でんぷんのり、セルロース系接着剤、ポリエステルエマルジョン系接着剤、水溶性ウレタン系接着剤等を用いることができる。ここで、本発明の水分散性重袋は、水分散性紙からなるため、水分量が多い接着剤を塗布すると、接着剤に含まれる水により水分散性紙がふやけてしまう。また、水溶性接着剤には水と接触した際に迅速に溶解・分散することが求められる。上記接着剤の中で、高濃度で塗布することができ、乾燥後の水分散性に優れているため、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤を好適に利用することができる。
また、吸湿による強度低下を抑制するため、水溶性樹脂フィルムをラミネート加工してもよい。水溶性樹脂フィルムとしては、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド共重合物等の水溶性樹脂をフィルム化したものを使用すればよい。水溶性樹脂フィルム層は重袋の外側になるように設けることが好ましい。
【0018】
本発明の水分散性重袋は、セメント、米、小麦粉、飼料等の粉粒体からなる重量物を特に制限することなく収容することができるが、特に、コンクリート用粉粒体の収容に適している。ここで、本明細書においてコンクリート用粉粒体とは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等を水和硬化させてなる水硬性硬化物に配合される粉粒体であれば特に制限されず、ポルトランドセメント、高炉セメント、混合セメント、マグネシアセメント等の水硬性結着剤(セメント)、フライアッシュ、膨張剤、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、石灰石微粉末等の混和材、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、中性化抑制剤、遅延剤、発泡剤、防水剤、着色剤、耐寒剤、早強剤、増粘剤等の化学混和剤、砂利、砂、海砂、砕石、砕砂、各種スラグ骨材、重量骨材、軽量骨材、再生骨材等の細骨材等を挙げることができる。
【0019】
セメントは、水和反応により硬化し、強固な水硬性組成物(モルタル、コンクリート等)となるため、建築土木材料等として広く用いられている。セメントは、混和材、化学混和剤、骨材等とともに混練されてスラリーとされるが、配合するコンクリート用粉粒体の1以上を本発明の水分散性重袋に収容したままの状態で、すなわち、水分散性重袋ごとミキサに投入して混練することができる。本発明の水分散性重袋は、水と接触して分散、溶解するため、内容物は速やかに撹拌されて、均一なスラリーを得ることができる。また、水分散性重袋は、速やかに分散、溶解するため、スラリー中で水分散性重袋の一部が原型を留めることはない。このスラリーが硬化した水硬性硬化物には、パルプ、水溶性接着剤等の重袋由来物が混入するが、水硬性硬化物全量に対する重袋由来物の量は僅かであるため、これらが水硬性硬化物に悪影響を及ぼすことはない。さらに、セルロース繊維は、水硬性硬化物の強度向上効果が知られているが、セルロース繊維であるパルプにより、水硬性硬化物の強度向上が期待できる。
【0020】
ここで、一般的なコンクリートは、1m3当たりポルトランドセメント300kg、細骨材850kg、粗骨材1000kg、水160kg程度である。そして、セメント、細骨材の一部の代替として混和材、必要に応じて少量の化学混和剤が配合される。そして、水硬性組成物を製造するためのスラリーの組成は、硬化物1m3当たりで計算されることが一般的であり、また、スラリーも1m3単位で調製されることが一般的である。
本発明の水分散性重袋は、強度に優れるため、15kg以上60kg程度の内容物を収容して取り扱うことができる。本発明の水分散性重袋に、コンクリートを1m3製造する際に、15kg以上60kg程度配合されるコンクリート用粉粒体を収容すると、袋のまま1袋、2袋とミキサに投入することができ、コンクリート用粉粒体の重さを測定する必要がないため、スラリー調製作業が容易となる。したがって、本発明の水分散性重袋は、混和材、化学混和剤を収容することが好ましく、混和材を収容することがより好ましく、フライアッシュがさらに好ましい。そして、フライアッシュとして、性能が安定している未燃カーボン含有率が1重量%以下である加熱改質フライアッシュが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明は、これらに限定されるものではない。また、実施例において用いた評価方法を次に示す。これは各実施例において共通して用いた。
【0022】
1)保水度
JAPAN TAPPI No.26に準じて測定した。
2)水分散性
3cm角の試験片5枚を用意した。次に300mlビーカーに脱イオン水300mlを入れてスターラーで650rpmに攪拌しながら上記試験片1枚を投入した。試験片が2つ以上に千切れる時間と試験片が完全に繊維一本一本にほぐれる時間をストップウオッチで測定し、5回の測定の平均値をそれぞれフロック状水分散時間、繊維状水分散時間とした。
【0023】
3)坪量
JIS P8124に準じて測定した。
4)比引張強さ
JIS P8113に準じて測定した。
5)比引裂強さ
JIS P8116に準じて測定した。
【0024】
(実施例1)
精製パルプとして針葉樹マーセル化パルプ(αセルロース含有率 97.5%、450mlCSFにおける保水度138%)60重量%と、無精製パルプとして針葉樹晒しクラフトパルプ(以下NBKP、αセルロース含有率 85.6%)40重量%とを配合し、濾水度650mlCSFに混合叩解した抄紙用原料を、円網ヤンキードライヤー式抄紙機で抄紙・乾燥後、サイズプレス式塗工機で低粘度のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(以下CMC-Na、商品名サンローズ、日本製紙ケミカル社製品、4重量%水溶液の粘度が15mPa・s)の水溶液(濃度5質量%)を含浸塗工して、坪量60g/m2の水分散性紙を製造した。なお、CMC-Naの含有量は3g/m2であった。
この水分散性紙は、縦方向の比引張強さが67.2N・m/g、縦方向の比引裂強さが15.1mN・m2/g、フロック状水分散時間が2.5秒、繊維状水分散時間が7秒であり、強度と迅速な水分散性を兼備するものであった。
【0025】
この水分散性紙の巻取りを、2枚重ねて自動製袋機に導入した。酢酸ビニルエマルジョン系接着剤(商品名:セビアン-A 22090、ダイセルファインケム社製)を用い、胴貼り部と底部を封止して、横450mm、縦770mmの2重構造の両底糊貼のひだなし開口式底ばり袋の形状の水分散性重袋を製造した。
【0026】
本実施例による水分散性重袋にフライアッシュを収容し、袋ごとモルタルスラリーに投入して硬化させ、硬化物の物性を測定する試験を以下の手順で実施した。
セメントは普通ポルトランドセメントを使用し、フライアッシュは加熱改質フライアッシュ(以下、商品名:CfFA、日本製紙社製、JIS A620l コンクリート用フライアッシュ規格II種準拠品)を用いた。また、細骨材として掛川産陸砂を用いた。
モルタルはJIS A6201(コンクリート用フライアッシュ)に準じて、水粉体比50%として、CfFAをセメント質量に対して25%を内割置換した。また、基準品として、CfFA無配合のものを調合した。各調合品の配合を表1に示す。
【0027】
【0028】
各骨材は、JIS R5201(セメントの物理試験方法)に準じて容量200リットルのモルタルミキサを用いて所定の時間練り混ぜ、40×40×160mmの型枠で成形後、1日間湿空養生を行い、成形後24時間および28日で圧縮強度試験を行った。
CfFA添加品は、CfFAを収容した水分散性重袋を開封せずに重袋ごとミキサに投入して練り混ぜた。
【0029】
CfFA添加品は、所定の練り混ぜ時間内に水分散性重袋が崩壊してモルタルスラリー中へ均一に分散し、基準品と同じように型枠内に打設して試験体を成形することができた。CfFA添加品の試験体圧縮強度は、基準品と同等であり、CfFAを収容した水分散性重袋添加による強度上の欠点は認められなかった。
【0030】
(実施例2)
精製パルプとして針葉樹マーセル化パルプ(αセルロース含有率 97.5%、450mlCSFにおける保水度138%)60重量%と、無精製パルプとして針葉樹晒しクラフトパルプ(以下NBKP、αセルロース含有率 85.6%)40重量%とを配合し、濾水度650mlCSFに混合叩解した抄紙用原料を円網ヤンキードライヤー式抄紙機で抄紙・乾燥後、サイズプレス式塗工機で低重合度のスルホン酸基変性ポリビニルアルコール(商品名ゴーセネックス、日本合成化学工業社製品)の水溶液(濃度5質量%)を含浸塗工して、坪量60g/m2の水分散性紙を製造した。なお、スルホン酸基変性PVAの含有量は3g/m2であった。
この水分散性紙は、縦方向の比引張強さが59.0N・m/g、縦方向の比引裂強さが15.2mN・m2/g、フロック状水分散時間が3.5秒、繊維状水分散時間が29秒であり、強度と迅速な水分散性を兼備するものであった。
【0031】
この水分散性紙を用いた以外は、実施例1と同様にしてCfFAを収容した水分散性袋を製造し、モルタルスラリーに投入・固化させ試験体を作製した。
【0032】
CfFA添加品は、所定の練り混ぜ時間内に水分散性重袋が崩壊してモルタルスラリー中へ均一に分散し、基準品と同じように型枠内に打設して試験体を成形することができた。CfFA添加品の試験体圧縮強度は、基準品と同等であり、CfFAを収容した水分散性重袋添加による強度上の欠点は認められなかった。
【0033】
(実施例3)
針葉樹晒クラフトパルプをカナダろ水度600mlCSFまで叩解したものを80重量部と、繊維状カルボキシメチルセルロース(エーテル化度0.43)20重量部を配合した抄紙用原料を調成し、円網ヤンキードライヤー式抄紙機を用いて坪量55g/m2で水分散性を有さない基紙を製造した。
基紙に、7重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を塗工量が中和当量の1.5倍以上となるようにサイズプレスを用いて含浸塗工・乾燥させ、アルカリ化剤層を基紙に含有させ、繊維状カルボキシメチルセルロースをNa塩とすることにより、坪量60g/m2の水分散性紙を製造した。
この水分散性紙は、縦方向の比引張強さが66.7N・m/g、縦方向の比引裂強さが8.1mN・m2/g、フロック状水分散時間が4.7秒、繊維状水分散時間が18秒であり、強度と迅速な水分散性を兼備するものであった。
【0034】
この水分散性紙を用いた以外は、実施例1と同様にしてCfFAを収容した水分散性袋を製造し、モルタルスラリーに投入・固化させ試験体を作製した。
【0035】
CfFA添加品は、所定の練り混ぜ時間内に水分散性重袋が崩壊してモルタルスラリー中へ均一に分散し、基準品と同じように型枠内に打設して試験体を成形することができた。CfFA添加品の試験体圧縮強度は、基準品と同等であり、CfFAを収容した水分散性重袋添加による強度上の欠点は認められなかった。