(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】熱感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20230417BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
G08B17/06 K
G08B17/00 G
G08B17/06 F
(21)【出願番号】P 2018046248
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】津留見 隼人
(72)【発明者】
【氏名】水野 央士
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-259376(JP,A)
【文献】特開平08-305978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0087218(US,A1)
【文献】特開2011-054214(JP,A)
【文献】特開2003-109142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定される本体部を有する筐体と、前記本体部から高さ方向に突出する熱検出部とを有する熱感知器において、
前記筐体は、前記本体部から高さ方向に離隔した位置に配置される外郭部と、該外郭部から中央側に延びるガード支持部と、該ガード支持部に支持され前記熱検出部を覆う中央ガード部とを有し、前記外郭部は、前記本体部から立ち上がる側柱部の頂部に支持され、前記ガード支持部は前記外郭部と前記中央ガード部とを直接接続し、
前記中央ガード部のうち前記本体部に向かう側の面は、前記外郭部のうち前記本体部から離れる側の面より前記本体部から離れており、
前記ガード支持部の根元部は、前記外郭部から立ち上がる段差部を有することを特徴とする熱感知器。
【請求項2】
設置面に固定される本体部を有する筐体と、前記本体部から高さ方向に突出する熱検出部とを有する熱感知器において、
前記筐体は、前記本体部から高さ方向に離隔した位置に配置される外郭部と、該外郭部から中央側に延びるガード支持部と、該ガード支持部に支持され前記熱検出部を覆う中央ガード部とを有し、前記外郭部は、前記本体部から立ち上がる側柱部の頂部に支持され、前記ガード支持部は前記外郭部と前記中央ガード部とを直接接続し、
前記中央ガード部のうち前記本体部に向かう側の面は、前記外郭部のうち前記本体部から離れる側の面より前記本体部から離れており、
前記中央ガード部は、円環状に形成されると共に、内側の縁部が断面弧状に形成されていることを特徴とする熱感知器。
【請求項3】
前記熱検出部は、前記外郭部のうち前記本体部に向かう側の面よりも前記本体部から離れる側まで突出した位置に先端が配置されることを特徴とする請求項1
または2に記載の熱感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井面などの設置面に固定され、火災による熱を検出する熱感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱感知器は、火災を検出する感知器の一種で、火災による熱を検出する熱検出部を有する。熱検出部として、電気抵抗が温度の変化に応じて変化する半導体であるサーミスタを用いることがある。火災により発生した熱気流がサーミスタに到達することで、熱が検出される。サーミスタは、熱感知器の筐体において本体部より突出するように設けられる。
【0003】
サーミスタを有する熱感知器の筐体は、本体部から立ち上がり状に形成される側柱部と、側柱部に支持される外郭部と、外郭部から中央側に延びる複数のガード支持部で支持される円環状の中央ガード部とを有し、この中央ガード部でサーミスタの先端部を覆っている。この構造を設けているのは、サーミスタに指等が触れることにより感度が変化することを防止するためであり、中央ガード部のうち本体部から離れる側の面とサーミスタの先端は、所定の離隔距離を有している。このようなサーミスタ及び筐体を有する熱感知器としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の熱感知器は、外郭部と中央ガード部とが、同じ平面上に位置している。外郭部は、中央側に向かってやや上り傾斜状となっており、中央ガード部は外郭部より少し高い位置に配置されているが、その差はほとんどない。このため、外郭部に到達した熱気流は、中央ガード部によって筐体の中央部への流動が妨げられやすく、中央ガード部の内側に位置するサーミスタに熱気流が到達しにくいので、熱感知器における感度低下の要因となっている。より詳細には、外郭部と中央ガードとが略同一曲面上に配置されており、外郭部に到達した熱気流は、外郭部から中央ガード部の表面を滑らかに通過して、中央ガードの内側に流入しない流れが生じている。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、熱気流が熱検出部に向かうように誘導できる熱感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係る熱感知器は、設置面に固定される本体部を有する筐体と、前記本体部から高さ方向に突出する熱検出部とを有する熱感知器において、
前記筐体は、前記本体部から高さ方向に離隔した位置に配置される外郭部と、該外郭部から中央側に延びるガード支持部と、該ガード支持部に支持され前記熱検出部を覆う中央ガード部とを有し、前記外郭部は、前記本体部から立ち上がる側柱部の頂部に支持され、前記ガード支持部は前記外郭部と前記中央ガード部とを直接接続し、
前記中央ガード部のうち前記本体部に向かう側の面は、前記外郭部のうち前記本体部から離れる側の面より前記本体部から離れており、
前記ガード支持部の根元部は、前記外郭部から立ち上がる段差部を有することを特徴として構成されている。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、外郭部と中央ガード部との間に高さ方向において隙間が形成され、外郭部に到達した熱気流が当該隙間を通じて熱検出部側に誘導されるので、熱気流を熱検出部に対して効率よく到達させることができる。また、外郭部の周方向に沿う熱気流の一部が、段差部によって外郭部と中央ガード部との隙間に誘導され、熱気流を熱検出部側にさらに導くことができる。
【0009】
また、請求項2の発明に係る熱感知器は、設置面に固定される本体部を有する筐体と、前記本体部から高さ方向に突出する熱検出部とを有する熱感知器において、
前記筐体は、前記本体部から高さ方向に離隔した位置に配置される外郭部と、該外郭部から中央側に延びるガード支持部と、該ガード支持部に支持され前記熱検出部を覆う中央ガード部とを有し、前記外郭部は、前記本体部から立ち上がる側柱部の頂部に支持され、前記ガード支持部は前記外郭部と前記中央ガード部とを直接接続し、
前記中央ガード部のうち前記本体部に向かう側の面は、前記外郭部のうち前記本体部から離れる側の面より前記本体部から離れており、
前記中央ガード部は、円環状に形成されると共に、内側の縁部が断面弧状に形成されていることを特徴として構成されている。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、中央ガード部の位置に上昇した熱気流が、中央ガード部の内側の縁部によって中央側に導かれ、中央ガード部によって覆われる熱検出部に対して熱気流をより導くことができる。
【0015】
そして、請求項3の発明に係る熱感知器は、前記熱検出部は、前記外郭部のうち前記本体部に向かう側の面よりも前記本体部から離れる側まで突出した位置に先端が配置されることを特徴として構成されている。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、熱検出部の熱を検出する先端部が、外郭部と中央ガード部との間の高さ方向における隙間に近い位置に配置されるので、より感度よく熱を検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る熱感知器によれば、熱気流を効率よく熱検出部に到達させることができるので、熱検出の感度を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態における熱感知器の正面側から見た斜視図である。
【
図4】
図3のA-A断面図のうち、外郭部より中央側の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。本実施形態の熱感知器10は、建物の天井等の設置面に固定され、火災によって生じた熱を検出するものである。
図1には本実施形態における熱感知器10の正面側から見た斜視図を、
図2には熱感知器10の左側面図を、
図3には熱感知器10の正面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、本実施形態の熱感知器10は、設置面に固定される筐体20と、火災によって生じた熱を検出する熱検出部21とを有している。
【0020】
筐体20は、火災を検出して火災検出信号を送信するための各種部品を配置した基板等を納める本体部30を有する。本体部30は、略円筒状の背面部30aと、背面部30aより径が大きい略円盤形状の正面部30bとを有している。筐体20が設置面に固定されることにより、背面部30aは設置面の奥側に埋設され、正面部30bの正面側のみが露出する。
【0021】
筐体20は、プラスチック等の樹脂材で形成される。ただし、筐体20はそれ以外の材料で形成されていてもよい。
【0022】
熱検出部21は、筐体20の本体部30から高さ方向に突出状に設けられている。熱検出部21は、サーミスタによって構成されており、先端部で熱を検出することができる。
【0023】
本体部30には、正面部30bから高さ方向に立ち上がる側柱部31が、周方向に複数形成されている。側柱部31は、周方向において均等な間隔で配置されている。側柱部31は、頂部において外郭部32を支持している。外郭部32は、一定の幅を有する円環形状を有し、本体部30からは高さ方向に離隔配置される。
【0024】
外郭部32の周方向3箇所には、当該外郭部32から立ち上がり、その中央側に向かって延びる腕状のガード支持部33が設けられている。ガード支持部33は、外郭部32から立ち上がる根元部に段差部33aを形成している。ガード支持部33は、中央部において中央ガード部34を支持している。中央ガード部34は、小径の円環形状を有している。熱検出部21は、本体部30の中央部に配置されており、先端が中央ガード部34より低い位置に配置されているので、中央ガード部34によって覆われている。
【0025】
図4には、
図3のA-A断面図のうち、外郭部32より中央側の部分拡大図を示している。この図に示すように、段差部33aを有して外郭部32から立ち上がったガード支持部33は、中央側に向かって外郭部32から高さ方向において離れる方向に向かう傾斜状となるように形成されている。このため、ガード支持部33に支持される中央ガード部34は、外郭部32より持ち上げた位置に配置される。中央ガード部34のうち本体部30に向かう側の本体部側面部34aは、外郭部32のうち本体部30から離れる側の外方側面部32aよりも、本体部30から離れている。これにより、外郭部32と中央ガード部34との間には、高さ方向において隙間Pが形成されている。
【0026】
火災の際に発生する熱気流は、下方から上方に向かって流動する。外郭部32に到達した熱気流は、
図4に示す矢印R2のように、一部が中央側に向かって流動する。このとき、中央ガード部34が外郭部32と同等の高さ位置にあると、筐体20の中央部に向かう熱気流の流動が妨げられるが、本実施形態の熱感知器10では、外郭部32と中央ガード部34との間に高さ方向における隙間Pが形成されていることで、熱気流は熱検出部21が配置された中央部に向かって導かれる。
【0027】
また、外郭部32の周方向に沿う熱気流がガード支持部33の段差部33aに到達すると、
図3に示す矢印R1のように、段差部33aによって一部が中央側に誘導される。段差部33aによって中央側に誘導された熱気流は、前述のように、外郭部32と中央ガード部34との間の隙間Pから、筐体20の中央部に向かってさらに導かれる。
【0028】
このように、ガード支持部33により、中央ガード部34が外郭部32から持ち上げられた位置に配置されて高さ方向に置いて隙間Pを有していることにより、熱気流を熱検出部21が配置された筐体20の中央側に導くことができ、熱検出部21に熱気流を効率よく到達させることができる。また、ガード支持部33の段差部33aにより、外郭部32の周方向に沿う熱気流の一部も、熱検出部21側に導くことができるので、より効率よく熱気流を熱検出部21側に導くことができる。このため、熱感知器10の感度を向上させることができる。
【0029】
図4に示すように、中央ガード部34は、本体部30から離れる側の面の内側縁部34bが、断面弧状に形成されている。断面弧状の内側縁部34bにより、中央ガード部34に向かって上昇する熱気流は、矢印R3のように、中央ガード部34の中央部に向かって誘導される。これによって、熱気流を中央ガード部34から熱検出部21に向かって誘導し、熱感知器10の感度をさらに向上させることができる。
【0030】
図4に示すように、熱検出部21の先端は、外郭部32のうち本体部30に向かう本体部側面部32bよりも、本体部30から離れる側まで突出した位置に配置されている。これにより、熱を検出する熱検出部21の先端部が、中央ガード部34の開口や、外郭部32と中央ガード部34との間の高さ方向における隙間Pの近くに配置されるので、熱気流に晒されやすくすることができ、熱の検出をより感度よく行うことができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用され得る。例えば、ガード支持部33は、上述の実施形態では周方向に3本設けられているが、それ以外の本数であってもよい。
【0032】
上述の実施形態における熱感知器10は、小型埋込み型であるが、これ以外のタイプの熱感知器にも、本発明を適用することができる。例えば、設置面に対して取付基部を介して固定される露出型の熱感知器においても、熱検出部と外郭部、ガード支持部及び中央ガード部を有していれば、本発明を適用できる。
【0033】
また、上述の実施形態では、外郭部32は円環形状を有しているが、この形状には限られない。例えば、外郭部の外周を多角形状とし、中空となる内周も多角形状とすることができる。外郭部の外周形状と内周形状は、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、気流の流入特性に応じて、外郭部の形状を選択してもよい。
【0034】
また、外郭部32と中央ガード部34との高さの差は、ガード支持部33の高さによって定まるが、外郭部32の外方側面部32aより中央ガード部34の本体部側面部34aの方が本体部30から離れていればよく、どの程度の差とするかは、必要に応じて適宜設定され得る。
【0035】
また、本体部30や側柱部31の形状等についても、任意に設定できる。
【符号の説明】
【0036】
10 熱感知器
20 筐体
21 熱検出部
30 本体部
30a 背面部
30b 正面部
31 側柱部
32 外郭部
32a 外方側面部
33 ガード支持部
33a 段差部
34 中央ガード部
34a 本体部側面部
34b 内側縁部