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特許7262942親水性ポリイソシアネート組成物、硬化剤組成物及び水系コーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】親水性ポリイソシアネート組成物、硬化剤組成物及び水系コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230417BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230417BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20230417BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20230417BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20230417BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20230417BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230417BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/28 015
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/78 031
C08G18/79 020
C09D5/02
C09D175/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018147731
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2019031667
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2017152918
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】辻田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】中島 和子
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102196(JP,A)
【文献】米国特許第05200489(US,A)
【文献】特開2016-141783(JP,A)
【文献】特開平11-349805(JP,A)
【文献】特開平09-071720(JP,A)
【文献】特開平11-131016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/28
C08G 18/73
C08G 18/75
C08G 18/78
C08G 18/79
C09D 5/02
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種以上のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートと、親水性化合物との反応により得られる親水性ポリイソシアネートを含み、
前記親水性ポリイソシアネートのうち、前記ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(A)に対する、前記ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物2又は3分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(B)のモル比((B)/(A))が、0/100以上15/85以下であり、
親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量に対する前記親水性化合物の含有量が16.7質量%以上である、親水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートであって前記親水性化合物と反応していないポリイソシアネート(P)、前記親水性ポリイソシアネート(A)、及び、前記親水性ポリイソシアネート(B)の合計モル数に対する、前記ポリイソシアネート(P)のモル数の比率((P)/{(P)+(A)+(B)})が、70%以上98%以下である請求項1に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記親水性化合物が、下記一般式(I)で示される化合物である請求項1又は2に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
【化1】
[一般式(I)中、Rは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基である。nは5以上50以下である。]
【請求項4】
前記一般式(I)中、Rはエチレン基であり、且つ、nは5以上20以下である請求項3に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート基及びビウレット基からなる群から選択される1種以上を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法であって、
前記ポリイソシアネートに前記親水性化合物を60分間以上180分間以下かけて添加する反応工程を含む、製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物とイオン性界面活性剤とを含み、前記親水性ポリイソシアネート組成物及び前記イオン性界面活性剤の総固形分量に対して、前記イオン性界面活性剤を0.1質量%以上20質量%以下含む硬化剤組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物又は請求項7に記載の硬化剤組成物と、水と、活性水素化合物と、を含む水系コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性ポリイソシアネート組成物、硬化剤組成物及び水系コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、溶剤系塗料として利用されている常温架橋型の二液ウレタンコーティング組成物は水系化が望まれている。しかし、二液ウレタンコーティング組成物において、硬化剤として用いられるポリイソシアネートは、水に分散しにくい。そのため、親水基を有するポリイソシアネートの開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリイソシアネートと、該ポリイソシアネートに結合したエチレンオキサイド繰り返し単位を含有するノニオン型の親水基とからなる親水性ポリイソシアネート、及び、実質的に水を含有しないイオン性界面活性剤からなるポリイソシアネート組成物が開示されている。
また、特許文献2では、特定範囲のエチレンオキサイド単位を含む水に分散可能なポリイソシアネート混合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-328654号公報
【文献】特開平5-222150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水系の二液ウレタンコーティング組成物は、家具及び建材、住宅用の木工、スポーツフロア、住宅及び学校施設の木床、電車及び建機、農耕用車等に塗装される。それらの用途では、塗膜としたときの硬化性、硬度及び外観が優れることが求められている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の親水基を有するポリイソシアネート組成物は、塗膜としたときの硬化性、硬度及び外観が低下することがあり、これらの要求を満たすことは困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水に安定的に分散し、且つ、塗膜としたときの硬化性、硬度及び外観に優れる親水性ポリイソシアネート組成物を提供する。前記親水性ポリイソシアネート組成物を含む硬化剤組成物及び水系コーティング組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る親水性ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種以上のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートと、親水性化合物との反応により得られる親水性ポリイソシアネートを含み、前記親水性ポリイソシアネートのうち、前記ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(A)に対する、前記ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物2又は3分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(B)のモル比((B)/(A))が、0/100以上15/85以下であり、親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量に対する前記親水性化合物の含有量が16.7質量%以上である
上記第1態様に係る親水性ポリイソシアネート組成物において、前記ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートであって前記親水性化合物と反応していないポリイソシアネート(P)、前記親水性ポリイソシアネート(A)、及び、前記親水性ポリイソシアネート(B)の合計モル数に対する、前記ポリイソシアネート(P)のモル数の比率((P)/{(P)+(A)+(B)})が、70%以上98%以下であってもよい。
前記親水性化合物が、下記一般式(I)で示される化合物であってもよい。
【0008】
【化1】
【0009】
[一般式(I)中、Rは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基である。nは5以上50以下である。]
【0010】
前記一般式(I)中、Rはエチレン基であり、Rはエチル基であり、且つ、nは5以上20以下であってもよい。
前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート基及びビウレット基からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0011】
本発明の第2態様に係る製造方法は、上記第1態様に係る親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法であって、前記ポリイソシアネートに前記親水性化合物を60分間以上180分間以下かけて添加する反応工程を含む。
本発明の第3態様に係る硬化剤組成物は、上記第1態様に係る親水性ポリイソシアネート組成物とイオン性界面活性剤とを含み、前記親水性ポリイソシアネート組成物及び前記イオン性界面活性剤の総固形分量に対して、前記イオン性界面活性剤を0.1質量%以上20質量%以下含む。
【0012】
本発明の第態様に係る水系コーティング組成物は、上記第1態様に係る親水性ポリイソシアネート組成物又は上記第態様に係る硬化剤組成物と、水と、活性水素化合物と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、水に安定的に分散し、且つ、塗膜としたときの硬化性、硬度及び外観に優れる親水性ポリイソシアネート組成物を提供することができる。前記親水性ポリイソシアネート組成物を含む硬化剤組成物及び水系コーティング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
本明細書中では、組成物又は化合物が有する特定の官能基の量を「モル比」で表すことができる。すなわち、組成物又は化合物が有する特定の官能基の数を、アボガドロ数で除した値の次元をモルとして定義する。これにより、当該特定の官能基の量を他の特定の官能基の量に対して「モル比」として表す。
なお、組成物が有する特定の官能基とは、組成物中に含まれる化合物が有する特定の官能基をいう。
【0016】
≪親水性ポリイソシアネート組成物≫
本発明の一実施形態に係る親水性ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートと親水性化合物との反応により得られる親水性ポリイソシアネートを含む。
前記ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種以上のジイソシアネートから得られるものである。
また、親水性ポリイソシアネートのうち、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(A)に対する、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと親水性化合物2又は3分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(B)のモル比((B)/(A))が、0/100以上20/80以下である。
【0017】
<物性>
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の物性について、以下に詳細を説明する。
【0018】
[(B)/(A)]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物は、親水性ポリイソシアネートのうち、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(A)に対する、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと親水性化合物2又は3分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(B)のモル比((B)/(A))が、0/100以上20/80以下であることが好ましく、5/95以上18/82以下であることがより好ましく、10/90以上17/83以下であることがさらに好ましい。
(B)/(A)が、上記範囲であることにより、塗膜としたときの硬化性、外観、硬度、耐水性及び耐薬品性をより良好なものとすることができる。
(B)/(A)は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0019】
[(P)/{(P)+(A)+(B)}]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物において、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートであって親水性化合物と反応していないポリイソシアネート(P)、親水性ポリイソシアネート(A)、及び、親水性ポリイソシアネート(B)の合計モル数に対する、上記ポリイソシアネート(P)のモル数の比((P)/{(P)+(A)+(B)})は、特に制限されないが、70以上98以下であることが好ましく、75以上97以下であることがより好ましく、80以上96以下であることがさらに好ましい。
(P)/{(P)+(A)+(B)}が、上記範囲であることにより、水分散性、並びに、塗膜としたときの硬化性、外観、硬度、耐水性及び耐薬品性をより良好なものとすることができる。
(P)/{(P)+(A)+(B)}は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
また、(P)/{(P)+(A)+(B)}を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネートに親水性化合物を反応させて得られる方法や、ポリイソシアネートに親水性化合物を反応させた後、さらに、ポリイソシアネートを添加する方法等が挙げられる。
【0020】
[総固形分量に対する親水性化合物の含有量]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物において、親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量に対する親水性化合物の含有量は、2.0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
総固形分量に対する親水性化合物の含有量が上記下限値以上であることにより、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の水分散性及び水分散安定性をより良好にできる。
一方、総固形分量に対する親水性化合物の含有量が上記上限値以下であることにより、塗膜としたときの硬化性、外観、硬度及び耐水性をより良好にできる。
親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量に対する親水性化合物の含有量は、親水性化合物の質量を親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量で除して得られた値に100を乗ずることで算出することができる。
【0021】
[粘度]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の25℃における粘度は、当該親水性ポリイソシアネート組成物が25℃において実質的に固形分のみからなる場合において、通常50mPa・s以上20000mPa・s以下であり、300mPa・s以上10000mPa・s以下であることが好ましい。
25℃における粘度が上記下限値以上であることにより、塗膜としたときの硬化性をより良好にでき、一方、上記上限値以下であることにより、水分散性及び塗膜としたときの外観をより良好にできる。
なお、ここでいう「実質的に固形分のみからなる」とは、固形分のみからなる、又は、固形分以外の成分(液体成分及び揮発成分等)を検出限界未満の極微量しか含まないことを意味する。
親水性ポリイソシアネート組成物の25℃における粘度は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0022】
25℃における粘度を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネートと親水性化合物との配合比を調整する方法等が挙げられる。
【0023】
[イソシアネート基含有量]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量は、当該親水性ポリイソシアネート組成物が実質的に固形分のみからなる場合において、通常3.0質量%以上25質量%以下であり、7.0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、13質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
イソシアネート基含有量が上記範囲にあることで、塗膜としたときの硬化性、耐水性及び耐薬品性をより向上させることができる。
ここでいう「イソシアネート基」は、未反応ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と親水性ポリイソシアネートが有するイソシアネート基とを併せたものをいう。
親水性ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有量は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0024】
イソシアネート基含有量を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネートと親水性化合物との配合比を調整する方法等が挙げられる。
【0025】
[数平均分子量]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は、塗膜としたときの硬化性の観点から300以上であることが好ましく、水分散性の観点から10000以下であることが好ましい。
親水性ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0026】
[イソシアネート官能基の平均数]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物のイソシアネート官能基の平均数(以下、「平均イソシアネート官能基数」と称する場合がある)は、塗膜としたときの硬化性、耐水性、耐薬品性の観点から2.0以上であることが好ましく、水分散安定性の観点から20.0以下であることが好ましい。
親水性ポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート官能基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0027】
<構成成分>
次いで、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0028】
[親水性ポリイソシアネート]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物に含まれる親水性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと親水性化合物との反応により得られる反応物である。すなわち、親水性ポリイソシアネートは、親水性化合物とイソシアネート基とが反応することで、親水性化合物由来の親水性基が付加された反応物である。
【0029】
○ポリイソシアネート
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する化合物が複数結合した反応物を意味する。なお、ポリイソシアネートを構成する1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する化合物1分子を単量体と称する場合がある。
【0030】
(物性)
本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートの物性について、以下に詳細を説明する。
【0031】
・粘度
本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートの25℃における粘度は、特に限定されないが、100mPa・s以上30000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以上10000mPa・s以下であることがより好ましい。
25℃における粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0032】
・イソシアネート基含有量
本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートのイソシアネート基含有量は、特に限定されないが、ポリイソシアネートの総質量に対して、5.0質量%以上25質量%以下であることが好ましく、10質量%以上24質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上24質量%以下であることがさらに好ましい。
イソシアネート基含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0033】
・ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートの含有量
本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートは、特に限定されないが、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートを、塗膜としたときの硬化性、外観及び硬度の観点から、ポリイソシアネートの総質量に対して、20質量%以上75質量%以下含むことが好ましく、30質量%以上70質量%以下含むことがより好ましい。
ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートの含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0034】
(構成成分)
本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物である。
ここでいう「脂肪族ジイソシアネート」及び「脂環族ジイソシアネート」とは、当該ジイソシアネートの構造の中にベンゼン環等の芳香環を含まない化合物を意味する。
【0035】
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、炭素数4以上30以下のものが好ましい。脂肪族ジイソシアネートとして具体的には、例えば、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(以下、「MPDI」と称する場合がある)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、炭素数8以上30以下のものが好ましい。脂環族ジイソシアネートとして具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
中でも、ジイソシアネートとしては、工業的に入手し易いため、HDI、IPDI、水添キシリレンジイソシアネート又は水添ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、HDIがより好ましい。本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートがHDIを反応させて得られるものであることにより、親水性ポリイソシアネート組成物を塗膜としたときの外観及び耐候性がより優れる傾向にある。
【0037】
本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートは、上記のジイソシアネートと、1価以上6価以下のアルコールとを反応させて得られる反応物であってもよい。
1価以上6価以下のアルコールとしては、非重合アルコール及び重合アルコールが挙げられる。非重合アルコールとは、重合性基を有さないアルコールであり、重合アルコールとは、重合性基及びヒドロキシ基を有する単量体を重合して得られるアルコールである。
【0038】
非重合アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等が挙げられる。
モノアルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i―ブタノール、s-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0039】
重合アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0040】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類;多価アルコールを用いて、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0041】
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0042】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)触媒を用いて、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物をランダム付加及びブロック付加からなる群の少なくともいずれかの反応により得られるポリエーテルポリオール類又はポリテトラメチレングリコール類。
(2)アルキレンオキサイドにポリアミン化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
【0043】
前記触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物;アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒;金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属シアン化合物錯体等が挙げられる。
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物;アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類;スタキオース等の四糖類等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン類等が挙げられる。
【0044】
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基を有する重合性単量体を重合させる、又は、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、当該重合性単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合させることによって得られる。
【0045】
ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、アクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシエチルが好ましい。
【0046】
前記重合性単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(iv)アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド。
(v)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体。
(vi)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量。
【0047】
ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレンが等挙げられる。
【0048】
(構造)
本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートは、2分子以上のジイソシアネートを反応させて得られる反応物を含むことが好ましく、3分子以上のジイソシアネートを反応させて得られる反応物を含むことがより好ましい。これにより、塗膜としたときの硬化性、硬度、耐水性及び耐薬品性がより優れる傾向にある。
【0049】
2分子以上のジイソシアネートを反応させて得られる反応物を含むポリイソシアネートは、イソシアヌレート基、ビウレット基、ウレトジオン基、オキサジアジントリオン基、イミノオキサジアジンジオン基、アロファネート基、ウレタン基及びウレア基からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0050】
中でも、本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートは、イソシアヌレート基を含むことが好ましい。これにより、ポリイソシアネート組成物を塗膜としたときの硬化性、硬度及び耐候性がより優れる傾向にある。
また、本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートは、ビウレット基を含むことが好ましい。これにより、水分散安定性、塗膜としたときの硬化性、外観及び耐水性がより優れる傾向にある。
【0051】
イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートを製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、触媒等により、ジイソシアネートをイソシアヌレート化する反応を行い、所定の転化率になったときに該反応を停止し、未反応のジイソシアネートを除去する方法等が挙げられる。
【0052】
上記のイソシアヌレート化反応に用いられる触媒としては、特に限定されないが、塩基性を示すものが好ましい。触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、それらの酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩。
(2)トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、それらの酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩。
(3)酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等のアルカリ金属塩。
(4)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
(5)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
(6)マンニッヒ塩基類。
(7)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
(8)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
【0053】
触媒の使用量は、原料であるジイソシアネートの総質量に対して、10ppm以上11000ppm以下が好ましい。
また、イソシアヌレート化反応を終了させるために、触媒を中和するリン酸、酸性リン酸エステル等の酸性物質の添加、熱分解、化学分解等により、触媒を不活性化してもよい。
【0054】
イソシアヌレート化反応の反応温度は、特に限定されないが、50℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより進み易くなる傾向にある。一方、反応温度が上記上限値以下であることで、着色を引き起こすような副反応をより抑制することができる傾向にある。
【0055】
イソシアヌレート化反応の終了後には、未反応のジイソシアネート単量体を薄膜蒸発缶、抽出等により除去することが好ましい。
また、本実施形態の親水性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートが未反応のジイソシアネートを含む場合は、親水性ポリイソシアネートの総質量に対して未反応のジイソシアネートを3.0質量%以下含むことが好ましく、1.0質量%以下含むことがより好ましく、0.5質量%以下含むことがさらに好ましい。残留未反応ジイソシアネート単量体の濃度が上記上限値以下であることにより、硬化性がより優れる傾向にある。
【0056】
ビウレット基を含むポリイソシアネートの製造方法としては、特に限定されないが、以下に示す方法が好ましく例示される。具体的には、まず、特公昭62-41496号公報(参考文献1)で開示されているジイソシアネート単量体とビウレット化剤との反応を撹拌均質下に行う。その後、更に当該反応生成物をパイプリアクターに導き、該パイプリアクター中押出し流れ下で反応を進行させる連続的製造により、ビウレット基を含むポリイソシアネートが得られる。
【0057】
○親水性化合物
本実施形態の親水性ポリイソシアネートは、親水性化合物に由来する構造単位を有する。これは、親水性化合物が、親水基を有する化合物であることに由来する。つまり、親水基とは、親水性化合物がポリイソシアネートと反応することにより得られる親水性ポリイソシアネートが有する(付加される)官能基である。親水性ポリイソシアネートが親水基を有する(付加される)ことにより、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物は安定した水分散性が得られる。
【0058】
親水基としては、特に限定されないが、例えば、ノニオン型親水基、カチオン型親水基及びアニオン型親水基が挙げられる。
中でも、親水基としては、入手容易性及び配合物との電気的な相互作用を受けにくいという観点から、ノニオン型親水基が好ましい。
【0059】
(ノニオン型親水基を有する親水性化合物)
ノニオン型親水基を有する親水性化合物としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のモノアルコール;アルキレングリコール、ジアルキレングリコール等のアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを付加した化合物;下記一般式(I)で示される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある)等が挙げられる。これらのノニオン型親水基を有する親水性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
【0060】
【化2】
【0061】
[一般式(I)中、Rは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基である。nは5以上50以下である。]
【0062】
中でも、ノニオン型親水基を有する親水性化合物としては、少ない使用量で親水性ポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコール又は化合物(I)が好ましく、化合物(I)がより好ましい。
【0063】
・化合物(I)
化合物(I)は、すなわち、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルである。化合物(I)について、以下に詳細を説明する。
【0064】
一般式(I)中、Rは炭素数1以上4以下のアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。アルキレン基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
前記アルキレン基として具体的は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ジメチルメチレン基、シクロトリメチレン基、テトラメチレン基、ジメチルエチレン基、シクロテトラメチレン基等が挙げられる。
中でも、アルキレン基としては、メチレン基又はエチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0065】
一般式(I)中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基である。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。アルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。
中でも、アルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0066】
一般式(I)中、nはアルキレンオキシ基(-R-O-)の繰り返し数である。nとしては、親水性ポリイソシアネート組成物の水分散性、及び、低温貯蔵時の親水性ポリイソシアネート組成物の析出を抑制できることから、5以上50以下が好ましく、5以上30以下がより好ましく、5以上20以下がさらに好ましい。
【0067】
化合物(I)として好ましいものとしては、例えば、下記式(I-1)で示される化合物(すなわち、ポリエチレングリコールモノエーテル)等が挙げられる。
HO(CHCHO)n1CH ・・・(I-1)
【0068】
[式(I-1)中、n1は5以上20以下である。]
【0069】
(カチオン型親水基を有する親水性化合物)
カチオン型親水基を有する親水性化合物としては、特に限定されないが、例えば、カチオン性基と活性水素基とを併せ有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン型親水基を有する化合物とを併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物とを反応させ、グリシジル基等の官能基を付加する。次いで、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。中でも、カチオン型親水基を有する親水性化合物としては、製造の容易性の観点からは、カチオン性基と活性水素基とを併せ有する化合物が好ましい。
【0070】
カチオン性基と活性水素基とを併せ有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等で四級化することもできる。
【0071】
カチオン型親水基を有する親水性化合物とポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。前記溶剤は、特に限定されないが、活性水素基を含まないものが好ましい。溶剤として具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0072】
ポリイソシアネートに付加されたカチオン型親水基は、アニオン基を有する化合物で中和されることが好ましい。前記アニオン基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、特に限定されないが、具体的には、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン基を有する化合物としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
【0073】
(アニオン型親水基を有する親水性化合物)
アニオン型親水基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
アニオン型親水基を有する親水性化合物としては、特に限定されないが、例えば、アニオン基と活性水素基とを併せ有する化合物等が挙げられる。アニオン型親水基を有する親水性化合物として具体的には、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等のポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン基として有する化合物等が挙げられる。また、アニオン型親水基を有する親水性化合物としては、スルホン酸基と活性水素とを併せ有する化合物であてもよい。スルホン酸基と活性水素とを併せ有する化合物として具体的には、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン型親水基を有する親水性化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0074】
ポリイソシアネートに付加されたアニオン型親水基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物としては、特に限定されないが、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、第3級アミンであるトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等も挙げられ、これらを用いてもよい。
【0075】
<親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法は、上記ポリイソシアネートと、上記親水性化合物と、を混合反応させて、親水性ポリイソシアネートを含む親水性ポリイソシアネート組成物を得る工程(反応工程)を備える。
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法の工程について、以下に詳細を説明する。
【0076】
[反応工程]
反応工程において、得られる親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量に対する親水性化合物の含有量が、好ましくは2.0質量%以上50質量%以下となるように反応されており、より好ましくは5.0質量%以上30質量%以下となるように反応されており、さらに好ましくは5.0質量%以上20質量%以下となるように反応されている。
得られる親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量に対する親水性化合物の含有量が上記下限値以上となるように反応されていることにより、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の水分散性及び水分散安定性をより良好にできる。
一方、得られる親水性ポリイソシアネート組成物の総固形分量に対する親水性化合物の含有量が上記上限値以下となるように反応されていることにより、塗膜としたときの硬化性、外観、硬度及び耐水性をより良好にできる。
【0077】
反応工程において、反応温度や反応時間は、反応の進行に応じて適宜決められる。
反応温度は0℃以上150℃以下であることが好ましく、反応時間は0.5時間以上48時間以下であることが好ましい。
【0078】
また、反応工程において、場合により公知の触媒を使用してもよい。触媒としては、以下のものに限定されないが、例えば、オクタン酸スズ、2-エチル-1-ヘキサン酸スズ、エチルカプロン酸スズ、ラウリン酸スズ、パルミチン酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物;塩化亜鉛、オクタン酸亜鉛、2-エチル-1-ヘキサン酸亜鉛、2-エチルカプロン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;有機チタン化合物;有機ジルコニウム化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等の三級アミン類;トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のジアミン類が挙げられる。これらは単独又は混合して使用してもよい。
【0079】
また、反応工程において、親水性ポリイソシアネートのうち、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(A)に対する、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと親水性化合物2又は3分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(B)のモル比((B)/(A))を調整するために、上記親水性化合物は、時間をかけて、連続添加することが好ましい。滴下に有する時間としては、5分間以上180分間以下であることが好ましく、15分間以上120分間以下であることがより好ましく、30分間以上90分間以下であることがさらに好ましい。
滴下に有する時間を上記下限値以上とすることによって、親水性ポリイソシアネートのうち、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネートのモル濃度をより高くすることができる。
一方、滴下に有する時間を上記上限値以下とすることによって、未反応の親水性化合物をより低減でき、また反応工程に要する時間をより短縮することができる。
【0080】
≪硬化剤組成物≫
本発明の一実施形態に係る硬化剤組成物は、上述の親水性ポリイソシアネート組成物とイオン性界面活性剤とを含む。また、本実施形態の硬化剤組成物は、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対して、イオン性界面活性剤を0.1質量%以上20質量%以下含む。
【0081】
<物性>
本実施形態の硬化剤組成物の物性について、以下に詳細を説明する。
【0082】
[イオン性界面活性剤の含有量]
本実施形態の硬化剤組成物において、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
イオン性界面活性剤の含有量が上記下限値以上であることで、水に分散させたときに親水性ポリイソシアネート組成物の油滴の表面に疎水基が層を形成する。これにより、親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基と水との接触が少なくなるため、イソシアネート基の保持性をより高くすることができる。
一方、イオン性界面活性剤の含有量が上記上限値以下であることで、水の呼び込み量を少なくすることができるため、塗膜の耐水性がより向上する。
イオン性界面活性剤の含有量は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0083】
<構成成分>
次いで、本実施形態の硬化剤組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0084】
[イオン性界面活性剤]
本実施形態の硬化剤組成物に含まれるイオン性界面活性剤は実質的に水を含有しないことが好ましい。
なお、ここでいう「実質的に水を含有しない」とは、水を全く含有しない、又は、イオン性界面活性剤に含まれる水とイソシアネート基とが反応し発泡、白濁及び粘度上昇が起こらない程度の極微量しか水を含有しないことを意味する。その目安としては、イオン性界面活性剤の総質量に対する水の含有量が1質量%以下であればよい。
【0085】
イオン性界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。親水性ポリイソシアネート組成物の中和方法によって、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のいずれが好ましいかを決められる。即ち、親水性ポリイソシアネート組成物を塩基によって中和した場合はアニオン性界面活性剤を用いることが好ましく、一方、酸によって中和した場合はカチオン性界面活性剤を用いることが好ましい。親水性ポリイソシアネート組成物が中和されていない場合はアニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のいずれを用いてもよく、両性界面活性剤を用いてもよい。
【0086】
アニオン性界面活性剤としては、カルボキシレート型、サルフェート型、スルホネート
型又はホスフェート型が適している。
アニオン性界面活性剤として具体的には、例えば、(C1-C20アルキル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、(C1-C20アルキル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(C1-C20アルキル)ジサルフェートナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホネートナトリウム、ジ(C1-C20アルキル)スルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンC6-C30アリールエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンC6-C30アリールエーテルスルホン酸アンモニウム等が挙げられるが、工業的に入手可能なものならば不都合なく使用可能であり、上記のものに限定されない。
中でも、アニオン性界面活性剤としては、(C1-C20アルキル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、(C1-C20アルキル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム又はジ(C1-C20アルキル)スルホコハク酸ナトリウムであることが好ましい。
【0087】
カチオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩又はイミダゾリニウム塩が適している。
カチオン性界面活性剤として具体的には、例えば、C1-C20アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、C1-C30アルキルピリジニウムブロマイド、イミダゾリニウムラウレート等が挙げられるが、工業的に入手可能なものならば不都合なく使用可能であり、上記のものに限定されない。カチオン性界面活性剤としてより具体的には、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、アルキルピリジニウムブロマイド、イミダゾリニウムラウレート等が挙げられる。
【0088】
両性界面活性剤としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩型等が挙げられる。
【0089】
[その他の成分]
本実施形態の硬化剤組成物は、上述の親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤以外に、さらに、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、以下のものに限定されないが、例えば、溶剤、硬化促進触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、レベリング剤、可塑剤、レオロジーコントロール剤、重合禁止剤等が挙げられる。
【0090】
前記溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、i-プロパノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、エチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、イソ酢酸-3-ヒドロキシ-2、2、4-トリメチルペンチル等のエステル化合物;ブチルグリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルグリコールエーテル等のエーテル類等を挙げることができる。
【0091】
溶剤の含有量は、本実施形態の硬化剤組成物の総質量に対して、0質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0092】
本実施形態の硬化剤組成物が硬化促進触媒、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤を含む場合は、溶剤の含有量は、親水性ポリイソシアネート組成物の総質量に対して、0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0093】
硬化促進触媒としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエート、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ等のスズ系化合物;2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛化合物;2-エチルヘキサン酸チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトナート)等のチタン化合物;2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト等のコバルト化合物;2-エチルヘキサン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等のビスマス化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等のジルコニウム化合物;アミン化合物等が挙げられる。
【0094】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物等が挙げられる。
【0095】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0096】
光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
【0097】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インディゴ、キナクリドン、パールマイカ、アルミニウム等が挙げられる。
【0098】
レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0099】
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル類、リン酸系化合物、ポリエステル系化合物等が挙げられる。
【0100】
レオロジーコントロール剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、尿素化合物、マイクロゲル等が挙げられる。
【0101】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、フェノール類、クレゾール類、カテコール類、ベンゾキノン類等が挙げられる。重合禁止剤として具体的には、例えば、 ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、p-トルキノン、p-キシロキノン、ナフトキノン、2,6-ジクロロキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、カテコール、p-t-ブチルカテコール、2,5-ジ-t- ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0102】
<硬化剤組成物の製造方法>
本実施形態の硬化剤組成物は、上述の親水性ポリイソシアネート組成物に、上記イオン性界面活性剤を添加し、混合して、硬化剤組成物を得る工程(添加工程)を備える。
なお、添加工程は、上述の親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法における反応工程の後であってもよく、反応工程と同時に行ってもよい。
本実施形態の硬化剤組成物の製造方法の工程について、以下に詳細を説明する。
【0103】
[添加工程]
添加工程において、イオン性界面活性剤の含有量が、上記親水性ポリイソシアネート組成物及び上記イオン性界面活性剤の総固形分量に対して、0.1質量%以上20質量%以下となるように添加することが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下となるように添加することがより好ましい。
イオン性界面活性剤の含有量が上記下限値以上となるように添加することで、水に分散させたときにポリイソシアネート油滴の表面に疎水基が層を形成する。これにより、ポリイソシアネート中のイソシアネート基と水との接触が少なくなるため、イソシアネート基の保持性がより高くなる。
一方、イオン性界面活性剤の含有量が上記上限値以下となるように添加することで、水の呼び込み量を少なくすることができるため、塗膜の耐水性がより向上する。
【0104】
≪水系コーティング組成物≫
本発明の一実施形態に係る水系コーティング組成物は、上記実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物、又は、上記実施形態の硬化剤組成物と、水と、活性水素化合物と、を含む。
本実施形態の水系コーティング組成物は、活性水素化合物を含むことにより、親水性ポリイソシアネート組成物が有するイソシアネート基と、活性水素化合物が有する活性水素とが、種々の条件にて反応し、塗膜としたときの硬度、耐水性、耐薬品性及び外観に優れる傾向がある。
【0105】
<物性>
本実施形態の水系コーティング組成物の物性について、以下に詳細を説明する。
【0106】
[イソシアネート基/活性水素基]
本実施形態の水系コーティング組成物において、該水系コーティング組成物中の活性水素化合物が有する活性水素基の数に対する、該水系コーティング組成物中の親水性ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の数の比(イソシアネート基/活性水素基)は、特に限定されないが、1/10以上10/1以下であることが好ましく、1/8以上8/1以下であることがより好ましく、1/6以上6/1以下であることがさらに好ましい。
イソシアネート基/活性水素は、後述する実施例に記載の平均イソシアネート官能基数を算出する方法を用いて、平均イソシアネート官能基数を算出する。次いで、得られた平均イソシアネート官能基数を、活性水素基数で除して、100を乗ずることで算出することができる。
【0107】
<構成成分>
次いで、本実施形態の水系コーティング組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0108】
[活性水素化合物]
活性水素化合物としては、分子内に活性水素が2つ以上結合している化合物であれば特に限定されない。活性水素化合物として具体的には、例えば、ポリアミン、アルカノールアミン、ポリチオール、ポリオール等が挙げられる。中でも、活性水素化合物としては、ポリオールが好ましい。
【0109】
○ポリアミン
ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン等のジアミン類;ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチレンヘキサミン、テトラプロピレンペンタミン等の3個以上のアミノ基を有する鎖状ポリアミン類;1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロデカン、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン等の環状ポリアミン類が挙げられる。
【0110】
○アルカノールアミン
アルカノールアミンとしては、特に限定されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、モノ-、ジ-(n-又はイソ-)プロパノールアミン、エチレングリコール-ビス-プロピルアミン、ネオペンタノールアミン、メチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0111】
○ポリチオール
ポリチオールとしては、特に限定されないが、例えば、ビス-(2-ヒドロチオエチロキシ)メタン、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール等が挙げられる。
【0112】
○ポリオール
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール(ポリカプロラクトン類を含む)、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリエステルポリオール(ポリカプロラクトン類を含む)、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオールについては、上述の親水性ポリイソシアネート組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0113】
(フッ素ポリオール)
フッ素ポリオールとは、分子内にフッ素を含むポリオールである。フッ素ポリオールとして具体的には、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献2)、及び、特開昭61-275311号公報(参考文献3)で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体が挙げられる。
【0114】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート等の低分子カーボネート化合物と、上述したポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールと、を縮重合して得られるものが挙げられる。
【0115】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型の脂肪族不飽和化合物、エポキシ型脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、ハロゲン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0116】
○ポリオールの水酸基価
ポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、硬化物の架橋密度及び機械的物性の観点から、本実施形態の水系コーティング組成物1gあたり、10mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0117】
[その他の成分]
本実施形態の水系コーティング組成物は、上述の親水性ポリイソシアネート組成物、又は、上述の硬化剤組成物、水、及び、活性水素化合物以外に、さらに、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、メラミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤等のその他の硬化剤;その他の添加剤等が挙げられる。
【0118】
○その他の硬化剤
(メラミン系硬化剤)
メラミン系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、完全アルキルエーテル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、一部にイミノ基を有するイミノ基型メラミン樹脂等が挙げられる。
【0119】
メラミン系硬化剤を使用する場合は、酸性化合物の添加が有効である。
酸性化合物としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられる。
【0120】
カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、マレイン酸、デカンジカルボン酸等が挙げられる。
スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等が挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート等が挙げられる。
亜リン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、モノエチルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノラウリルホスファイト等が挙げられる。
【0121】
(エポキシ系硬化剤)
エポキシ系硬化剤としは、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体等が挙げられる。
【0122】
○その他の添加剤
その他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、増粘剤、レベリング剤、チキソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、静電防止剤又は帯電調整剤、沈降防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤等の一般的に塗料に加えられる各種添加剤が挙げられる。
【0123】
<水系コーティング組成物の製造方法>
本実施形態の水系コーティング組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上述の親水性ポリイソシアネート組成物又は上述の硬化剤組成物に、水及び活性水素化合物を添加し、混合する方法等が挙げられる。
【0124】
<用途>
本実施形態の水系コーティング組成物は、例えば、塗料組成物、粘着剤組成物、接着剤組成物、注型剤組成物等の硬化性組成物;繊維処理剤等の各種表面処理剤組成物;各種エラストマー組成物;発泡体組成物等の架橋剤;改質剤;添加剤として用いられる。
【0125】
本実施形態の水系コーティング組成物が用いられうる被着体としては、特に限定されないが、例えば、ガラス;アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレス等の各種金属;木材、紙、モルタル、石材等の多孔質部材;フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装等がされた部材;シリコーン系硬化物、変性シリコーン系硬化物、ウレタン系硬化物等のシーリング材硬化物;天然ゴム、合成ゴム等のゴム類;天然皮革、人工皮革等の皮革類;植物系繊維、動物系繊維、炭素繊維、ガラス繊維、不織布等の繊維類;ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等の樹脂類のフィルム及びプレート;紫外線硬化型アクリル樹脂層;印刷インキ層、UVインキ層等のインキ層等が挙げられる。
【実施例
【0126】
以下に、具体的な実施例及び比較例を示して本実施形態をより詳しく説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例4は参考例である。
【0127】
≪試験項目≫
実施例及び比較例で製造された親水性ポリイソシアネート組成物、硬化剤組成物及び塗膜について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0128】
<物性1>粘度
実施例及び比較例で製造された親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物の25℃における粘度を、E型粘度計 RE-80U(東機産業社製)を用いて求めた。
【0129】
<物性2>固形分
実施例及び比較例で製造された親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物を試料として用いて、溶剤希釈をした場合には、以下に示す方法に従い、固形分を算出した。
具体的には、まず、アルミニウム製カップの質量(W1)[g]を精秤し、試料約1gを入れて、加熱乾燥前のカップ質量(W2)[g]を精秤した。次いで、上記試料を入れたカップを105℃の乾燥機中で3時間加熱した。次いで、上記加熱後のカップを室温まで冷却した後、再度カップの質量(W3)[g]を精秤した。試料中の乾燥残分の質量%を固形分(C)とした。固形分は、以下に示す式(a)を用いて算出した。
なお、溶剤希釈なしの場合には、固形分は実質的に100%であるとして扱った。
固形分(C)[質量%]=(W-W1)/(W-W1)×100 ・・・(a)
【0130】
<物性3>親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量
1.硬化剤組成物中のイオン性界面活性剤の含有量(D1)[質量%]
実施例及び比較例で製造された硬化剤組成物を試料として、硬化剤組成物中のイオン性界面活性剤の含有量(D1)[質量%]を、液体クロマトグラフィーにより分離した後に、質量分析装置を用いて、測定した。用いた装置及び条件は以下のとおりである。
【0131】
(測定条件)
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 C18、1.8μm、内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:a=10mM酢酸アンモニウム水溶液、b=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成比はa/b=98/2で、試料注入後bの比率を直線的に上昇させ、10分後にa/b=0/100とした。
検出方法1:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
検出方法2:質量分析装置、Waters社製、Synapt G2(商品名)
イオン化モード:エレクトロスプレーイオン化、正イオン検出
スキャンレンジ:m/z 100~2000
【0132】
2.親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量
次いで、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量(D2)[質量%]は、「物性2」で測定した固形分(C)[質量%]と、「1.」で測定した硬化剤組成物中のイオン性界面活性剤の含有量(D1)[質量%]とから、以下に示す式(b1)を用いて算出した。
親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量(D2)[質量%]
=D1/C×100 ・・・(b1)
【0133】
ただし、固形分(C)の中に親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤以外のその他成分(C1)[質量%]が含まれる場合は、以下に示す式(b2)を用いて算出した。
親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量(D2)[質量%]
=D1/(C-C1)×100 ・・・(b2)
【0134】
<物性4>親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量
1.硬化剤組成物中のイソシアネート基含有量
実施例及び比較例で製造された硬化剤組成物を試料として、イソシアネート基含有量(E1)をJIS K7301-1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って、測定した。以下に、より具体的な測定方法を示す。
【0135】
(1)試料1g((W4)[g])を200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させた。
(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ-n-ブチルアミン含有トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置した。
(3)上記フラスコに2-プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得た。
(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/Lの塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量(V1)を求めた。
(5)試料を添加しない場合にも、上記(1)~(3)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量(V2)を求めた。
試料の質量(W4)、並びに、上記で求めた試料滴定量(V1)及びブランク滴定量(V2)から、イソシアネート基含有量を以下に示す式(c1)を用いて算出した。
硬化剤組成物中のイソシアネート基含有量(E1)[質量%]
=(V2-V1)×42/(W4×1,000)×100 ・・・(c1)
【0136】
2.親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量
親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量(E2)[質量%]は、「物性2」で測定した固形分(C)と、「物性3」の「2.」で測定したイオン性界面活性剤の含有量(D2)と、上記「1.」で測定した硬化剤組成物中のイソシアネート基含有量(E1)とから、以下に示す式(c2)を用いて算出した。
親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量(E2)[質量%]
=E1/(C/100)/(100-D2)×100 ・・・(c2)
【0137】
ただし、固形分(C)の中に親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤以外のその他成分(C1)[質量%]が含まれる場合は、以下に示す式(c3)を用いて算出した。
親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量(E2)[質量%]
=E1/(C/100)/(100-D2-C1)×100 ・・・(c3)
【0138】
なお、イオン性界面活性剤も溶剤も含んでいない親水性ポリイソシアネート組成物の場合は、上記「1.」に記載の測定方法と同様の方法を用いて、親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量(E2)[質量%]を算出した。
【0139】
<物性5>数平均分子量及び重量平均分子量
実施例及び比較例で製造された親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物を試料として、親水性ポリイソシアネートと未反応ポリイソシアネートとを含む親水性ポリイソシアネート組成物の数平均分子量(F1)及び重量平均分子量(F2)を測定した。具体的には、以下の装置及び条件を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、ポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量を測定した。なお、硬化剤組成物を試料とする場合は、イオン性界面活性剤の感度は下記測定条件では低いことから、得られた重量平均分子量の値を、硬化剤組成物中の親水性ポリイソシアネートの数平均分子量及び重量平均分子量の値とした。
【0140】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)製、TSKgelSuperH1000(商品名)×1本、TSKgelSuperH2000(商品名)×1本、TSKgelSuperH3000(商品名)×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0141】
<物性6>平均イソシアネート官能基数
平均イソシアネート官能基数(G)は、親水性ポリイソシアネート1分子が統計的に有するイソシアネート官能基の数である。上記「物性5」で測定した親水性ポリイソシアネートの数平均分子量(F1)と、上記「物性4」の「2.」で測定した親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有量(E2)[質量%]とから、以下に示す式(d)を用いて算出した。
平均イソシアネート官能基数(G)=F1×E2/100/42 ・・・(d)
【0142】
<物性7>(B)/(A)
親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物を試料として、組成物中のジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(A)に対する、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと親水性化合物2又は3分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネート(B)のモル比((B)/(A))を算出した。具体的には、まず、試料を液体クロマトグラフィーにより分離した後に、質量分析装置を用いて測定し、当該モル比((B)/(A))を算出した。なお、硬化剤組成物を試料とする場合は、イオン性界面活性剤の感度は下記測定条件では低いことから、得られたモル比を、硬化剤組成物中での当該モル比の値とした。用いた装置及び条件は以下のとおりである。
【0143】
(測定条件)
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 C18、1.8μm、内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:a=10mM酢酸アンモニウム水溶液、b=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成比はa/b=98/2で、試料注入後bの比率を直線的に上昇させ、10分後にa/b=0/100とした。
検出方法1:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
検出方法2:質量分析装置、Waters社製、Synapt G2(商品名)
イオン化モード:エレクトロスプレーイオン化、負イオン検出
スキャンレンジ:m/z 100~2000
【0144】
<物性8>(P)/{(P)+(A)+(B)}
親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物を試料として、上記物性7と同じ分析方法により、モル比((P)/{(P)+(A)+(B)})を定量した。
ここで、(P)は、組成物中の、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートであって、親水性化合物が反応していないポリイソシアネートである。
(A)は、上述のとおり、組成物中の、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物1分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネートである。
(B)は、上述のとおり、組成物中の、ジイソシアネート3分子から得られるポリイソシアネートと前記親水性化合物2又は3分子との反応により得られる親水性ポリイソシアネートである。
【0145】
<評価1>親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物の水分散性
(1)100mLフラスコ及び吉野紙の合計質量(W5)を測定した。
(2)実施例及び比較例で製造された親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物を、固形分換算で16g((W6)[g])となるように100mLフラスコに採取し、脱イオン水24gを添加した。
(3)プロペラ羽を使用し、200rpmで3分間、100mLフラスコ内の溶液を撹拌した後、(1)で秤量した吉野紙で濾過した。
(4)吉野紙に残った濾過残渣と、100mLフラスコに残った残渣とを合わせて105℃の乾燥機中で1時間加熱し、質量((W7)[g])を求めた。
(5)以下に示す式(e)を用いて、親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物が水へ分散した割合(H)を算出した。
水へ分散した割合(H)[質量%]
=100-(W7-W5)/(W6×C)×100 ・・・(e)
【0146】
(6)(5)で算出した親水性ポリイソシアネート組成物が水へ分散した割合(H)から、以下の評価基準に従い、親水性ポリイソシアネート組成物の水分散性を評価した。
(評価基準)
○:(H)が80質量%以上、水分散安定性が良い。
△:(H)が60質量%以上80質量%未満、水分散安定性が良い。
×:(H)が60質量%未満、水分散安定性に劣る。
【0147】
<評価2>親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物の水分散安定性
200mLフラスコに、親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物0.1gと、脱イオン水100gを量り取った。次いで、プロペラ羽を使用し、600rpmで5分間、200mLフラスコ内の溶液を撹拌し、親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物の水分散液を得た。その後、50mLのガラス瓶に移し替え、分散状態を肉眼で観察した。以下の評価基準に従い、親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化剤組成物の水分散安定性を評価した。
(評価基準)
○:3時間経過後も変化が見られなかった。
△:3時間経過後にわずかに沈殿又は分離が見られた。
×:3時間以内に沈殿又は分離が見られた。
【0148】
<評価3>塗膜の外観
実施例及び比較例で製造された各水系コーティング組成物を、ガラス板上に、厚さ40μmになるようにアプリケーター塗装した。次いで、60℃で30分間焼成し、塗膜を得た。得られた塗膜を目視で観察した。以下の評価基準に従い、塗膜の外観を評価した。
(評価基準)
◎:透明、異物なし。
○:やや白濁。
△:白濁、やや異物あり、平滑性やや低い。
×:白濁、異物多数あり、平滑性低い。
【0149】
<評価4>塗膜の硬化性
実施例及び比較例で製造された各水系コーティング組成物を、ポリプロピレン板上に、厚さ40μmになるようにアプリケーター塗装した。次いで、23℃/50%RHの雰囲気下で24時間乾燥させて、塗膜を得た。次いで、得られた塗膜を、アセトンに20℃で24時間浸漬した。次いで、浸漬前質量に対する未溶解部分質量の比[質量%]を算出した。算出された比から、以下の評価基準に従い、塗膜の硬化性を評価した。
(評価基準)
◎:80質量%以上、硬化性が極めて良好である。
○:70質量%以上80質量%未満、硬化性が非常に良好である。
△:60質量%以上70質量%未満、硬化性が良好である。
×:60質量%未満、硬化性に劣る。
【0150】
<評価5>塗膜の硬度
実施例及び比較例で製造された各水系コーティング組成物を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmになるようにアプリケーター塗装した。次いで、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させて、塗膜を得た。次いで、得られた塗膜の硬度を、ケーニッヒ硬度計(BYK Garder社製、「Pendulum hardness tester(商品名)」) を用いて測定した。
【0151】
<評価6>塗膜の耐水性
実施例及び比較例で製造された各水系コーティング組成物を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmになるようにアプリケーター塗装した。次いで、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させて、塗膜を得た。次いで、得られた塗膜上に直径20mmのシリコン製Oリングを載せ、その中に水を0.5g注ぎ入れた。次いで、23℃で24時間置き、表面に残った水を除いた後の塗膜の様子を観察した。以下の評価基準に従い、塗膜の耐水性を評価した。ただし、上記「評価3」での塗膜の外観が×のものは目視評価が不可能のため、測定不可とした。
(評価基準)
○:変化なし。
×:ブリスター発生、白濁又は塗膜溶解。
【0152】
なお、ここでいう「ブリスター」とは、塗膜の表面に生じる水泡や膨れのことを意味する。
【0153】
<評価7>塗膜の耐薬品性
実施例及び比較例で製造された各水系コーティング組成物を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmになるようにアプリケーター塗装した。次いで、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させて、塗膜を得た。次いで、得られた塗膜上にキシレンを1g含ませた直径10mmのコットンボールを5分間置き、表面に残ったキシレンを除いた後の塗膜の様子を観察した。以下の評価基準に従い、塗膜の耐薬品性を評価した。ただし、上記「評価3」での塗膜の外観が×のものは目視評価が不可能のため、測定不可とした。
(評価基準)
○:透明、凹みなし
△:やや白濁又はやや凹みあり
×:白濁又は凹みあり
【0154】
[実施例1]親水性ポリイソシアネート組成物1-1及び水系コーティング組成物1-1の製造
(1)親水性ポリイソシアネート組成物1-1の製造
まず、エチレンオキサイド繰返単位の平均数9.4のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG-130」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」)と、を質量比で17.3:82.7になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数5.1のポリエチレングリコールモノメチルエーテル混合物を得た。次いで、110℃に加熱したヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTPA-100(商品名)」)32.0質量部、及び、HDIのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTSA-100(商品名)」)48.0質量部の混合物に、撹拌下、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル混合物18.0質量部を60分かけて添加した。さらに110℃で1時間撹拌して反応を行い、親水性ポリイソシアネート組成物1-1を得た。
【0155】
得られた親水性ポリイソシアネート組成物1-1は、粘度1400mPa・s、固形分100質量%、イソシアネート基含有量14.6質量%、平均イソシアネート官能基数2.4、数平均分子量690、(B)/(A)は15/85、(P)/{(P)+(A)+(B)}は85.2であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0156】
(2)水系コーティング組成物1-1の製造
(1)で得られた親水性ポリイソシアネート組成物に対し、樹脂あたりの水酸基価60mgKOH/gのアクリルラテックス(旭化成株式会社製、商品名「R-5007」)を、官能基比率(NCO/OH)=1.25となるように配合した。次いで、水で固形分40質量%に希釈して、水系コーティング組成物1-1を得た。得られた水系コーティング組成物1-1を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0157】
[実施例2]硬化剤組成物2-1及び水系コーティング組成物2-1の製造
(1)硬化剤組成物2-1の製造
エチレンオキサイド繰返単位の平均数9.4のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、「MPG-130(商品名)」)と、固形分70質量%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液(日本乳化剤株式会社製、「ニューコール290M(商品名)」)と、を固形分質量比で9:1になるように混合した。次いで、120℃、20Torrで減圧蒸留によって、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液中の揮発成分(水及びメタノール)を除き、イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを得た。次いで、120℃に加熱したHDIのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTPA-100(商品名)」)80.0質量部に、撹拌下、前記イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテル20.0質量部を90分間かけて添加した。さらに120℃で1時間撹拌して反応を行い、硬化剤組成物2-1を得た。
【0158】
得られた硬化剤組成物2-1の粘度は1900mPa・s、固形分100質量%、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量は、2.0質量%であった。
また、得られた硬化剤組成物2-1中の親水性ポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基含有量16.8質量%、平均イソシアネート官能基数2.9、数平均分子量725、(B)/(A)は11/89、(P)/{(P)+(A)+(B)}は91.5であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0159】
(2)水系コーティング組成物2-1の製造
(2)で得られた硬化剤組成物2-1を用いて、実施例1の(2)に記載の方法と同様の方法により、水系コーティング組成物2-1を得た。得られた水系コーティング組成物2-1を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0160】
[実施例3]硬化剤組成物3-1及び水系コーティング組成物3-1の製造
(1)硬化剤組成物3-1の製造
エチレンオキサイド繰返単位の平均数15.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、「MPG-081(商品名)」)と、固形分70質量%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液(日本乳化剤株式会社製、「ニューコール290M(商品名)」)と、を固形分質量比で2:1になるように混合した。次いで、120℃、20Torrで減圧蒸留によって、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液中の揮発成分(水及びメタノール)を除き、イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを得た。次いで、90℃に加熱したHDIのビウレット型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネート24A-100(商品名)」)76.9質量部に、撹拌下、前記イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテル23.1質量部を120分間かけて添加した。さらに90℃で3時間撹拌して反応を行い、硬化剤組成物3-1を得た。
【0161】
得られた硬化剤組成物3-1の粘度は4000mPa・s、固形分100質量%、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量は、7.7質量%であった。
得られた硬化剤組成物3-1中の親水性ポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基含有量17.9質量%、平均イソシアネート官能基数3.1、数平均分子量730、(B)/(A)は13/87、(P)/{(P)+(A)+(B)}は93.6であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0162】
(2)水系コーティング組成物3-1の製造
(2)で得られた硬化剤組成物3-1を用いて、実施例1の(2)に記載の方法と同様の方法により、水系コーティング組成物3-1を得た。得られた水系コーティング組成物3-1を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0163】
[実施例4]親水性ポリイソシアネート組成物4-1及び水系コーティング組成物4-1の製造
(1)親水性ポリイソシアネート組成物4-1の製造
まず、エチレンオキサイド繰返単位の平均数9.4のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG-130」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」)と、を質量比で17.3:82.7になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数5.1のポリエチレングリコールモノメチルエーテル混合物を得た。次いで、110℃に加熱したヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTPA-100(商品名)」)32.0質量部、及び、HDIのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTSA-100(商品名)」)48.0質量部の混合物に、撹拌下、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル混合物18.0質量部を40分かけて添加した。さらに110℃で1時間撹拌して反応を行い、親水性ポリイソシアネート組成物4-1を得た。
【0164】
得られた親水性ポリイソシアネート組成物4-1は、粘度1540mPa・s、固形分100質量%、イソシアネート基含有量14.6質量%、平均イソシアネート官能基数2.4、数平均分子量690、(B)/(A)は19/81、(P)/{(P)+(A)+(B)}は85.6であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0165】
(2)水系コーティング組成物4-1の製造
(1)で得られた親水性ポリイソシアネート組成物を用いて、実施例1の(2)に記載の方法と同様の方法により、水系コーティング組成物4-1を得た。得られた水系コーティング組成物4-1を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0166】
[実施例5]硬化剤組成物5-1及び水系コーティング組成物5-1の製造
(1)硬化剤組成物5-1の製造
エチレンオキサイド繰返単位の平均数9.4のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、「MPG-130(商品名)」)と、固形分70質量%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液(日本乳化剤株式会社製、「ニューコール290M(商品名)」)と、を固形分質量比で9:1になるように混合した。次いで、120℃、20Torrで減圧蒸留によって、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液中の揮発成分(水及びメタノール)を除き、イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを得た。次いで、室温下でHDIのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTPA-100(商品名)」)93.0質量部と、前記イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテル7.0質量部と、を混合し、120℃に昇温した。その後3時間撹拌して反応を行い、硬化剤組成物5-1を得た。
【0167】
得られた硬化剤組成物5-1の粘度は1500mPa・s、固形分100質量%、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量は、2.0質量%であった。
得られた硬化剤組成物5-1中の親水性ポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基含有量20.8質量%、平均イソシアネート官能基数3.1、数平均分子量630、(B)/(A)は8/92、(P)/{(P)+(A)+(B)}は96.9であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0168】
(2)水系コーティング組成物5-1の製造
(2)で得られた硬化剤組成物5-1を用いて、実施例1の(2)に記載の方法と同様の方法により、水系コーティング組成物5-1を得た。得られた水系コーティング組成物5-1を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0169】
[比較例1]親水性ポリイソシアネート組成物1-2及び水系コーティング組成物1-2の製造
(1)親水性ポリイソシアネート組成物1-2の製造
まず、エチレンオキサイド繰返単位の平均数9.4のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、「MPG-130(商品名)」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、「MPG(商品名)」)と、を質量比で17.3:82.7になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数5.1のポリエチレングリコールモノメチルエーテル混合物を得た。次いで、室温下でHDIのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTPA-100(商品名)」)32.0質量部、及び、HDIのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTSA-100(商品名)」)48.0質量部の混合物と、前記ポリエチレングリコールモノメチルエーテル混合物18.0質量部と、を混合し、110℃に昇温した。その後3時間撹拌して反応を行い、親水性ポリイソシアネート組成物1-2を得た。
【0170】
得られた親水性ポリイソシアネート組成物1-2は、粘度1700mPa・s、固形分100質量%、イソシアネート基含有量14.6質量%、平均イソシアネート官能基数2.4、数平均分子量690、(B)/(A)は22/78、(P)/{(P)+(A)+(B)}は86.1であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0171】
(2)水系コーティング組成物1-2の製造
(1)で得られた親水性ポリイソシアネート組成物1-2に対し、樹脂あたりの水酸基価60mgKOH/gのアクリルラテックス(旭化成株式会社製、商品名「R-5007」)を、官能基比率(NCO/OH)=1.25となるように配合した。次いで、水で固形分40質量%に希釈して、水系コーティング組成物1-2を得た。得られた水系コーティング組成物1-2を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0172】
[比較例2]硬化剤組成物2-2及び水系コーティング組成物2-2の製造
(1)硬化剤組成物2-2の製造
エチレンオキサイド繰返単位の平均数9.4のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、「MPG-130(商品名)」)と、固形分70質量%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液(日本乳化剤株式会社製、「ニューコール290M(商品名)」)と、を固形分質量比で9:1になるように混合した。次いで、120℃、20Torrで減圧蒸留によって、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液中の揮発成分(水及びメタノール)を除き、イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを得た。次いで、室温下でHDIのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネートTPA-100(商品名)」)80.0質量部と、前記イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテル20.0質量部と、を混合し、120℃に昇温した。その後3時間撹拌して反応を行い、硬化剤組成物2-2を得た。
【0173】
得られた硬化剤組成物2-2の粘度は2200mPa・s、固形分100質量%、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量は、2.0質量%であった。
得られた硬化剤組成物2-2中の親水性ポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基含有量16.8質量%、平均イソシアネート官能基数2.9、数平均分子量725、(B)/(A)は24/76、(P)/{(P)+(A)+(B)}は92.4であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0174】
(2)水系コーティング組成物2-2の製造
(2)で得られた硬化剤組成物2-2を用いて、実施例1の(2)に記載の方法と同様の方法により、水系コーティング組成物2-2を得た。得られた水系コーティング組成物2-2を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0175】
[比較例3]硬化剤組成物3-2及び水系コーティング組成物3-2の製造
(1)硬化剤組成物3-2の製造
エチレンオキサイド繰返単位の平均数15.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、「MPG-081(商品名)」)と、固形分70質量%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液(日本乳化剤株式会社製、「ニューコール290M(商品名)」)と、を固形分質量比で2:1になるように混合した。次いで、120℃、20Torrで減圧蒸留によって、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムメタノール溶液中の揮発成分(水及びメタノール)を除き、イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを得た。次いで、室温下でHDIのビウレット型ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、「デュラネート24A-100(商品名)」)76.9質量部と、前記イオン性界面活性剤含有ポリエチレングリコールモノメチルエーテル23.1質量部と、を混合し、90℃に昇温した。その後6時間撹拌して反応を行い、硬化剤組成物3-2を得た。
【0176】
得られた硬化剤組成物3-2の粘度は4500mPa・s、固形分100質量%、親水性ポリイソシアネート組成物及びイオン性界面活性剤の総固形分量に対するイオン性界面活性剤の含有量は、7.7質量%であった。
得られた硬化剤組成物3-2中の親水性ポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基含有量17.9質量%、平均イソシアネート官能基数3.1、数平均分子量730、(B)/(A)は30/70、(P)/{(P)+(A)+(B)}は94.4であった。これらの物性は、以下の表1にも示した。
【0177】
(2)水系コーティング組成物3-2の製造
(2)で得られた硬化剤組成物3-2を用いて、実施例1の(2)に記載の方法と同様の方法により、水系コーティング組成物3-2を得た。得られた水系コーティング組成物3-2を用いて、塗膜を製造し、上記評価項目に従い、塗膜を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0178】
【表1】
【0179】
表1から、実施例1と比較例1とを比較すると、原料が同じであって、物性1、2、4、5及び6が同程度であった。
しかしながら、物性7((B)/(A))が20/80以下である実施例1の親水性ポリイソシアネート組成物は、水分散性及び水安定性が優れていた。また、得られた塗膜は、外観、硬化性、耐水性及び耐薬品性が優れていた。また、HDIのイソシアヌレート型のポリイソシアネートから得られる親水性ポリイソシアネート組成物を含有する実施例1では、得られた塗膜の外観が透明であり、特に優れていた。
一方、物性7((B)/(A))が20/80より大きい比較例1の親水性ポリイソシアネート組成物は、水分散性及び水安定性が優れていた。しかしながら、得られた塗膜において、硬化性及び耐薬品性が劣っていた。また、比較例1では、得られた塗膜について、アセトン浸漬前質量に対するアセトン浸漬後の未溶解部分質量の比が60質量%未満であり、特に硬化性が劣っていた。
さらに、塗膜の硬度について、実施例1では80であったのに対し、比較例1では70であり、実施例1のほうが良好であった。
【0180】
実施例2と比較例2とを比較すると、原料が同じであって、物性1~6が同程度であった。
しかしながら、物性7((B)/(A))が20/80以下である実施例2の硬化剤組成物は、水分散性及び水安定性が優れていた。また、得られた塗膜は、外観、硬化性、耐水性及び耐薬品性が優れていた。また、HDIのイソシアヌレート型のポリイソシアネートから得られる親水性ポリイソシアネート組成物を含有する実施例2では、得られた塗膜の外観が透明であり、特に優れていた。また、イオン性界面活性剤を含有する硬化剤組成物である実施例2では、得られた塗膜について、アセトン浸漬前質量に対するアセトン浸漬後の未溶解部分質量の比が80質量%以上であり、特に硬化性が優れていた。
一方、物性7((B)/(A))が20/80より大きい比較例2の硬化剤組成物は、水分散性及び水安定性が優れていた。しかしながら、得られた塗膜において、硬化性、耐水性及び耐薬品性が劣っていた。また、比較例2では、得られた塗膜について、ブリスターが発生し、白濁及び塗膜の溶解が観察され、特に耐水性が劣っていた。
さらに、塗膜の硬度について、実施例2では105であったのに対し、比較例2では97であり、実施例2のほうが良好であった。
【0181】
実施例3と比較例3とを比較すると、原料が同じであって、物性1~6が同程度であった。
しかしながら、物性7((B)/(A))が20/80以下である実施例3の硬化剤組成物は、水分散性及び水安定性が優れていた。また、得られた塗膜は、外観、硬化性、耐水性及び耐薬品性が優れていた。また、イオン性界面活性剤を含有する硬化剤組成物である実施例3では、得られた塗膜について、アセトン浸漬前質量に対するアセトン浸漬後の未溶解部分質量の比が80質量%以上であり、特に硬化性が優れていた。
一方、物性7((B)/(A))が20/80より大きい比較例3の硬化剤組成物は、水安定性が劣っていた。また、得られた塗膜において、外観、硬化性、耐水性及び耐薬品性が劣っていた。また、比較例3では、得られた塗膜について、白濁及び多数の異物が観察され、平滑性が低く、外観が特に劣っていた。
さらに、塗膜の硬度について、実施例3では72であったのに対し、比較例3では64であり、実施例3のほうが良好であった。
【0182】
実施例1と実施例4とを比較すると、原料が同じであって、物性1~6が同程度であった。
しかしながら、物性7((B)/(A))が15/85である実施例1の親水性ポリイソシアネート組成物のほうが、物性((B)/(A))が19/81である実施例4の親水性ポリイソシアネート組成物よりも、得られた塗膜の外観及び硬化性が特に良好であった。
【0183】
実施例2と実施例5とを比較すると、原料が同じであって、物性1~6が同程度であった。
しかしながら、物性7((B)/(A))が11/89である実施例2の硬化剤組成物のほうが、物性((B)/(A))が8/92である実施例5の硬化剤組成物よりも、水分散性が特に良好であった。また、得られた塗膜において、外観、硬化性、硬度及び耐薬品性が特に優れていた。
一方、塗膜の硬度については、実施例2では105であったのに対し、実施例5では112であり、実施例5のほうが特に良好であった。
【0184】
以上のことから、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化性組成物は、水に安定的に分散することが確かめられた。また、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物又は硬化性組成物から得られる塗膜は、硬化性、硬度及び外観に優れることが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物及び硬化性組成物は、水に安定的に分散することができ、水系コーティング組成物に好適である。前記水系コーティング組成物は、塗料組成物、粘着剤組成物、接着剤組成物、注型剤組成物等の硬化性組成物;繊維処理剤等の各種表面処理剤組成物;各種エラストマー組成物;発泡体組成物等の架橋剤;改質剤;添加剤等として用いられる。