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▶ ブリタックス レーマー キンデルジッヒャーハイト ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】チャイルド安全シートの足支柱
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20230417BHJP
   B60N 2/28 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/28
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018170513
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2019073266
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】17001534.1
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518318060
【氏名又は名称】ブリタックス レーマー キンデルジッヒャーハイト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BRITAX ROMER Kindersicherheit GmbH
【住所又は居所原語表記】Theodor-Heuss-Strasse 9 89340 Leipheim Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ベーム
(72)【発明者】
【氏名】ハース マルティン
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02487131(GB,A)
【文献】特開2016-078543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0327281(US,A1)
【文献】特開2001-233093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42
B60N 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャイルド安全シートに取り付けるように適合された足支柱であって、
最小長さと最大長さとの間で長さが伸長可能な細長い部品を備え、前記細長い部品は、
上部と、
下部と、
起動機構と、
前記足支柱または前記チャイルド安全シートの別の部品に加えられる力を感知するように適合された感知手段と、
を含み、
前記下部は、前記細長い部品の長手方向に前記上部に対して摺動可能であり、
前記足支柱は、前記下部に長手方向に加えられる力が所定の閾値を超えるたびに、前記力によって前記下部が前記上部から自動的に離れるように構成され、その結果、前記細長い部品の長さが増加し、
前記足支柱は、前記下部および前記上部が相互に向かう相対移動に対して解放可能に阻止されるように構成され
前記起動機構は、起動時に、前記上部および前記下部を相互に離れる方向の相対的な移動に対して阻止して、前記細長い部品の長さの増加を防止するように構成され、
前記起動機構は、無効の場合、前記下部を前記上部から離れるように動かすことによる前記足支柱の伸長を可能にするように構成され、
前記感知手段は、前記感知手段によって感知された力が車両の後方衝撃で生じる力に対する力特性によって与えられる第2の所定の閾値を上回ると、前記起動機構が無効になるように、前記起動機構に連結される、足支柱。
【請求項2】
前記所定の閾値は、前記下部の重力よりも小さい力に対応する、請求項1に記載の足支柱。
【請求項3】
前記細長い部品の長さを調整するように作動可能なアクチュエータを含む長さ調整機構をさらに備え、
前記長さ調整機構は、前記アクチュエータが作動されていないときに、前記細長い部品の前記下部と前記上部とを相互の相対移動に抗して阻止するように構成される、請求項1または請求項2に記載の足支柱。
【請求項4】
前記長さ調整機構は、前記細長い部品の前記上部または前記下部の何れか一方に連結されたラチェット機構を備え、
前記ラチェット機構は、前記細長い部品の前記下部または前記上部のうちの他方の受容要素と係合するように適合される、請求項3に記載の足支柱。
【請求項5】
前記ラチェット機構は、係合部材を備え、
前記受容要素は、前記係合部材の少なくとも一部を受け入れるように適合され、
前記上部と前記下部を相互に向かって駆動する前記細長い部品の長手方向に力を加えると、前記係合部材が前記受容要素に押し込まれるように、前記長さ調整機構が構成されている、請求項4に記載の足支柱。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれかに記載の足支柱を備える、前記チャイルド安全シート用のシートベース。
【請求項7】
前記細長い部品の前記上部が前記シートベースに旋回可能に取り付けられている、請求項に記載のシートベース。
【請求項8】
前記シートベースから突出する一対の剛性リンクをさらに備え、
各前記剛性リンクは、解放可能なコネクタを有し、車両シートに設けられた各固定部と係合するように適合されて、
前記剛性リンクが前記車両シートの前記固定部と係合するとき、前記起動機構が無効になるように、前記起動機構と前記剛性リンクが連結される、請求項と組み合わせられた請求項または請求項に記載のシートベース。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれかに記載の足支柱を備えるか、または請求項から請求項のいずれかに記載のシートベースを備えるチャイルド安全シート。
【請求項10】
足支柱を有するチャイルド安全シートであって、
前記足支柱は、最小長さと最大長さとの間で長さが伸長可能な細長い部品を備え、前記細長い部品は上部と下部とを含み、
前記下部は、前記細長い部品の長手方向において前記上部に対して摺動可能であり、
前記足支柱は、前記下部が前記上部から自動的に離れるように構成され、その結果、前記チャイルド安全シートが車両のシートに設置されているときに、及び車両衝突時の衝撃により前記チャイルド安全シートが前記車両のシートから上昇するときに、前記細長い部品の長さが増加する、チャイルド安全シート。
【請求項11】
前記足支柱は、前記細長い部品が、衝撃の後にその増加した長さで解放可能に阻止されるようにさらに構成される、請求項10に記載のチャイルド安全シート。
【請求項12】
シートベースをさらに備え、前記足支柱が前記シートベースに連結される、請求項10または11に記載のチャイルド安全シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルド安全シートの足支柱、そのような足支柱を備えるシートベースおよびそのような足支柱またはそのようなシートベースを備えるチャイルド安全シートに関する。特に、本発明は、自己拡張式足支柱と、チャイルド安全シートのシートベースまたはチャイルド安全シートを用いたその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
子供は、特定の年齢または身長に達するまで、車両のシートベルトで車両に固定することができない場合がある。このため、車内の子供を安全に運ぶためには、チャイルド安全シートを使用する必要がある。乳幼児のような小児は、一体型ハーネスシステムのような特別な子供拘束システムを備えた車両の助手席に取り付けられた安全シートにしっかりと保持される。この年齢層では、連結装置としてハーネスバックルを使用した3点または5点ハーネスの安全シートが最も安全な移動方法である。安全シートの3点または5点ハーネスは、子供の肩と腰をシートにしっかりと固定する。
【0003】
典型的には、チャイルド安全シートは車両のシートに取り付けられる。チャイルド安全シートは、車両のシートベルトを使用して固定するか、またはIsofixシステムなどの特定の固定機構を使用してチャイルド安全シートを車両シートに固定することによって固定される。
【0004】
Isofixのような固定機構を使用する場合、チャイルド安全シートは、車両に固定されたループ取り付け具のような車両シートの各固定部に剛性リンクまたはラッチによって取り付けられる。これらの固定機構は、一般に、2つの固定部を使用する。したがって、固定部は、車両の横軸を定める。結果として、そのような固定機構、例えば、Isofixシステムによって取り付けられたチャイルド安全シートは、前記横軸を中心に回転する傾向がある。
【0005】
上記の横軸を中心としたチャイルド安全シートの回転は、正面衝突または後方衝突の両方の場合に、チャイルド安全シートに固定される子供にとって重大な危険性および怪我のリスクをもたらし得る。例えば、後方衝突により、チャイルド安全シートが最初に車両シートから上昇し、その後元の位置に跳ね返ることがある。衝撃の力またはエネルギーが大きければ大きいほど、チャイルド安全シートが横軸を中心に一層回転し、反転(fall back)が大きくなる。結果として、子供は、車両シートからの上昇時から車両シートへの反転時の両方において、高い加速度の影響を受ける。正面衝突の場合、チャイルド安全シートもまた、横軸を中心に回転するように強いられ、それによって車両シート内で下方に押される。前方に面したチャイルド安全シートの場合、チャイルド安全シートに座っている子供は、したがって、2つの回転を経験する。第1の回転は、子供の身体がそれに作用する力が原因で傾くことであり、第2の回転は、チャイルド安全シートの横軸を中心とした回転から車両シートに下降することより生じる。このため、子供は、彼/彼女、特に彼/彼女の頭が前部車両シートの後部に当たる程度まで前方に回転する可能性がある。
【0006】
例えば、Isofix固定部によって定められる横軸周りの望ましくない回転に対処するための異なる機構が存在する。そのような機構の1つは、いわゆる上部テザーである。この機構は、車体のテザーと剛性点とからなる。テザーは、剛性点をチャイルド安全シートの上部に連結し、それにより、衝突時にチャイルド安全シートが車両シートに対して前方に移動するのを防止する。
【0007】
回転に対処するための別の機構は、いわゆる「Isofix旋回リンク(Isofix Pivoting Link)」であり、欧州特許第1090804号に開示されている。Isofix旋回リンクを使用する機構は、チャイルド安全シートの動きを制御して、その前方および回転移動が少なくとも部分的にチャイルド安全シートの車両シートへの(並進的な)下方移動に変換されるように作動する。したがって、この機構は、正面衝撃における子供の全体的な傾斜角度を減少させる。
【0008】
チャイルド安全シートの横軸を中心とした回転を抑制する第3の機構は、足支柱によって与えられる。チャイルド安全シートの足支柱または支持脚は、衝撃時にチャイルド安全シートの横軸を中心とした回転を防止する手段である。典型的には、足支柱は、チャイルド安全シートのシートベースの前端部に取り付けられる。シートベースは、その後端部で車両の対応する固定部にIsofixリンクによって取り付けられてもよい。足支柱が取り付けられたシートベースの前端部は、車両シートから外れることがある。足支柱は、正面事故の場合にシートベースが車両シート内に押し下げられないように支持する。
【0009】
しかし、既知の足支柱は、後方衝突の場合にチャイルド安全シートの跳ね返りまたは反転を減衰させることができない。既知の足支柱は、車両内の様々な床の高さに合わせて長さを調整することができる。しかしながら、一般的に、チャイルド安全シートのユーザは、慎重な動作によって足支柱を正しい長さに設定しなければならない。ユーザが足支柱の長さを設定すると、それは固定されたままである。このため、後方衝突の場合の跳ね返りまたは反転の高さは、既知の足支柱の使用によって実質的には減衰されない。また、足支柱の長さをユーザが設定する必要があるため、誤用する可能性がある。例えば、ユーザは足支柱の長さを調整するのを忘れるかもしれないし、ユーザが足支柱の長さを間違って設定するかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、後方衝撃の場合にチャイルド安全シートに固定された子供の怪我のリスクを低減するチャイルド安全シートと共に使用される足支柱を提供することであり、加えて、ユーザによる足支柱の誤用を防止する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の足支柱、請求項8に記載のシートベース、および請求項11と12に記載のチャイルド安全シートによって達成される。本発明のさらなる有利な実施形態は、請求項2~7、9~10、および13、14に示される。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、チャイルド安全シートに取り付けられるように適合された足支柱が提供され、足支柱は最小長さと最大長さとの間で長さが伸長可能な細長い部品を備える。細長い部品は、上部および下部を含み、下部は、細長い部品の長手方向において上部に対して摺動可能である。足支柱は、長手方向に下部に加えられる力によって、力が所定の閾値を超えるたびに下部が自動的に上部から離れるように構成され、その結果、細長い部品の長さが増加する。足支柱は、下部および上部が、細長い部品の長手方向に力を加えると、相互への相対的な動きに対して解放可能に阻止されるようにさらに構成される。
【0013】
足支柱の細長い部品の下部は、所定の閾値を超える力が長手方向に加えられる度に、細長い部品の上部から自動的に離れることができるので、ユーザの介入なしに、細長い部品の長さが増加する可能性がある。細長い部材の長さの増加は、足支柱の長さの増加を意味する。選択された所定の閾値に依存して、細長い部品の長さを増加させるために必要とされ加えられた外力が選択され得る。好ましくは、閾値は、下部の重力よりも小さい力によって与えられる。体に掛かる重力は、体重と呼ばれることもある。また、閾値がゼロに設定されている可能性もある。
【0014】
所定の閾値を下部の重力よりも低い値に設定することは、足支柱がチャイルド安全シートのシートベースに取り付けられ、略鉛直な位置にもたらされるとき、下部が上部から離れるという利点を有する。したがって、シートベースが加速されていないときには、上部に合力が加えられず、すなわち、この場合、上部に作用する総力はゼロである。さらに、前に説明した場合のまま、すなわち、足支柱が略鉛直位置にもたらされてシートベースに取り付けられるとき、下部に加えられる力は重力である。所定の閾値が下部の重力よりも小さい場合、下部は下部の重力の作用により上部から離れる。
【0015】
下部は、足支柱の端部停止部に達するまで、上部から自動的に離れることができる。この場合、細長い部品はその最大長まで伸ばされている。さらに、足支柱がシートベースに取り付けられて車両シートに設置されるとき、重力により、上部から離れる際に、下部は車両の床によって止められ得る。この場合、細長い部品は部分的に拡張され、すなわち、最大長にまだ到達していない。従って、下部材の重力よりも小さい所定の閾値を使用することは、足支柱が取り付けられたシートベースが車両シートに設置されるときに足支柱の正確な長さを設定するためにユーザの相互作用が必要でないという利点を有する。したがって、ユーザによる誤用は防止される。
【0016】
所定の閾値は、有利には、静止時に維持された上部に対して下部について決定される。これは、所定の閾値が、足支柱に他の外力が作用しなければ、静止時に保持される上部から下部を動かすのに必要な最小限の力であると言うことと同じである。さらに、下部に一方向に加えられる力は、上部に対して反対方向に加えられるそれぞれの力に等しい。すなわち、閾値は、普遍性を失うことなく下部に関して定義されてもよい。言い換えれば、静止している上部に関して閾値を定義することは、必ずしも、下部に加えられた力が所定の閾値を超える場合にのみ、本発明の足支柱が機能することを意味するものではない。細長い部品の構造のために、対応する効果は、上部にそれぞれの力を加え、上部を下部から引っ張ることによって、または上部と下部の両方に外力を加えることによって達成することができ、その結果生じる所定の閾値よりも大きな力により、上部および下部が互いに離れるように移動する。
【0017】
さらに、下部および上部は、細長い部品の長手方向に力を加えると相互に相対的に移動することに対して解放可能に阻止されるので、足支柱の長さが意図せず短くなることが防止される。足支柱の自動的な短縮は本発明によれば不可能であるので、足支柱は伸長された長さを維持する。これは後方衝撃の場合に特に有利である。足支柱がチャイルド安全シートのシートベースに取り付けられ、所定の閾値が適切に選択された場合、チャイルド安全シートを車両シートに対して上方に回転させる後方衝撃の場合、足支柱の細長い部品は、上向きの回転中にその長さを増加させる。回転中の最大の上昇または高さに達すると、足支柱はそれぞれの長さまたは伸長を維持する。足支柱または長手方向部品に長手方向に加えられる任意の力は、細長い部品の下部に向かって上部を近づけることができない可能性がある。細長い部品、ひいては足支柱は、その伸長を維持する。
【0018】
「任意の力」は、車両の事故の際に起こりうるあらゆる合理的な力を指す。このため、チャイルド安全シートは、例えば後方衝撃によって引き起こされる回転の後に、上昇位置を維持することができる。この上昇位置は、有利には、足支柱の最大可能伸長またはチャイルド安全シートの回転中に到達する足支柱の最大伸長によって与えられる。チャイルド安全シートは、かくして、車両シートに跳ね返ったり、反転したりすることが防止される。
【0019】
上部と下部の相互の相対移動に対する阻止は解放可能であるので、足支柱の長さは、伸長後に意図的に減少させるだけでよいことが保証される。
【0020】
有利なことに、所定の閾値は、下部の重力よりも小さい力に対応する。
【0021】
しかしながら、本発明によれば、所定の閾値は、下部の重力よりも大きな力に対応することも可能である。この設定は、チャイルド安全シートのシートベースに取り付けられた足支柱が一度略鉛直な位置に来ると自動的には伸びないという利点を有する。所定の閾値を下部の重力よりも大きく設定した場合には、上部から離れるように重力に付加的な力を下部に加える必要がある。足支柱がチャイルド安全シートのシートベースに取り付けられて車両シートに設置されるとき、上部にそれぞれの力が加えられると、所定の閾値よりも大きな力を下部に加えることと同等の効果を達成することができる。上部に加えられる力は、下部に作用する慣性力に等しい。このような力は、例えば、車両の衝撃に起因するインパルスの間に生じ得る。
【0022】
好ましくは、足支柱は、細長い部品の長さを調整するように作動可能なアクチュエータを備えた長さ調整機構をさらに含み、長さ調整機構は、アクチュエータが作動していないときに、細長い部品の下部および上部を相互の相対移動に抗して阻止するように構成されている。有利なことに、長さ調整機構の作動時にのみ、足支柱の細長い部品の長さを短くすることが可能である。言い換えれば、アクチュエータの作動時に、下部と上部とが相互に相対移動することに対しての阻止が解除される。好ましくは、作動はユーザによって行われなければならない。アクチュエータが作動されなければ、長さ調整機構が足支柱の長さを短くすることを防止することができる。さらに、作動されなければ、長さ調整機構は、所定の閾値を超える力が細長い部品の下部に長手方向に加えられると、足支柱の長さを伸ばすことを可能にする。
【0023】
有利なことに、長さ調整機構は、細長い部品の上部または下部の何れかに連結されたラチェット機構を備え、ラチェット機構は、細長い部品の下部または上部のうちの他方の受容要素と係合するように適合される。好ましくは、ラチェット機構は係合部材を備え、受容要素は係合部材の少なくとも一部を受け入れるように適合され、長さ調整機構は、上部および下部を相互に向かって駆動する細長い部品の長手方向に力を加えると、係合部材が受容要素内により深く押し込まれるように構成される。好ましくは、ラチェット機構は複数の係合部材を備える。好ましくは、ラチェット機構は上部に連結され、受容要素は下部に連結される。好ましくは、係合部材はラチェットを備える。好ましくは、受容要素は、穴、開口、またはボルトまたは歯などの突出要素を備える。ラチェット機構のおかげで、長さ調整機構は、本発明による足支柱の機能性を満たすことが可能である。ラチェット機構は、上部への下部の移動ができないことを保証する。さらに、ラチェット機構は、所定の閾値を超えて下部に力が加えられた場合に、下部を上部から離れるように動かすことを可能にする。所定の閾値は、好ましくは、ラチェットの適切な係止力を選択することによって決定される。ラチェットの係止力は、ラチェットが下部の受容要素の穴または開口内に押し込まれる力である。
【0024】
有利なことに、足支柱は、起動時に、細長い部品の長さの増加を防ぐように、互いから離れる相対的な動きに対して上部および下部を阻止するように、無効にされたとき、上部から下部への移動を可能にするように構成された起動機構をさらに備える。この起動機構は、どちらか一方の方向の足支柱の長さ調整を阻止するために使用されてもよい。このような阻止は、足支柱がチャイルド安全シートのシートベースに取り付けられる場合、およびチャイルド安全シートを車外に持ち出す、または運ぶ場合に特に有利である。このような状況では、足支柱が自動的に伸びないことが有利である。したがって、起動された起動機構は、チャイルド安全シートが車両シート上に置かれていないときはいつでも、本発明の足支柱を備えたチャイルド安全シートの取り扱いを容易にする。
【0025】
足支柱の長さの調整は、起動機構を無効にした後にのみ可能である。足支柱付きのチャイルド安全シートが車両シートに設置されると、起動機構は好ましくは無効にされる。起動機構の無効化が自動的に起こる場合、さらに有利である。ただし、起動機構が手動で無効になるように構成することもできる。好ましくは、起動機構は、長さ調整機構の一部である。起動機構が長さ調整機構を制御するように適合されていることも可能である。好ましくは、起動機構は、起動時に、細長い部品の長さ調整ができなくなるように長さ調整機構を係止するように構成され、好ましくは、起動機構は、無効にされたとき、長さ調整機構による足支柱の長さ調整を可能にするように構成される。
【0026】
さらに、起動機構は、起動機構が無効になったときに、下部を上部から離すように適合された排除機構をさらに備えることが好ましい。このために、排除機構は、有利には、バネなどの弾性要素を備える。排除機構は、足支柱がより迅速かつより確実に伸びるようにすることができる。
【0027】
有利なことに、足支柱は、チャイルド安全シートの足支柱または他の部品に加えられる力を感知するように適合された感知手段をさらに備える。感知手段は、感知手段によって感知された力が第2の所定の閾値を上回ると、起動機構が無効になるように、起動機構に連結されている。この場合、足支柱または細長い部品の長さ調整は、感知手段によって制御される。第2の所定の閾値は、下部に加えられる力に関連する所定の閾値と同じであってもよい。しかし、第2の閾値は、下部の所定の閾値と異なることが好ましい。下部の所定の閾値が下部の重力よりも低い値に設定される場合かつ第2の所定の閾値が非ゼロの値に設定される場合、特に有利である。好ましくは、この場合、第2の所定の閾値は、後方衝撃で生じる力に対する力特性によって与えられる。このため、前述の構成では、後方衝撃の場合には、力が第2の所定の閾値を超える限り、起動機構は無効にされる。これにより、下部に及ぼされる重力の下で足支柱の伸長が可能になる。この場合、足支柱の伸長は、感知手段によって能動的に起こされる(トリガされる)。感知手段は、有利には、加速度センサである。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、本発明による足支柱を備えるチャイルド安全シートのシートベースが提供される。シートベースは、チャイルド安全シートの一体部分であってもよいし、チャイルド安全シートの別個の部分であってもよい。有利なことに、細長い部品の上部は、シートベースに旋回可能に取り付けられる。このシートベースの利点は、足支柱に関連して上述したものに対応する。上部がシートベースに旋回可能に取り付けられている場合、足支柱の横方向調整が容易になる。
【0029】
有利なことに、シートベースは、シートベースから突出する一対の剛性リンクをさらに備える。各剛性リンクは、解放可能なコネクタを有し、車両シートに設けられたそれぞれの固定部と係合するように適合される。好ましくは、足支柱は起動機構を備え、起動機構および剛性リンクは、剛性リンクが車両シートの固定部と係合するときに起動機構が無効になるように連結される。起動機構と剛性リンクとの間の連結が、各固定部から剛性リンクが外れると、起動機構が起動されるようなものであるとさらに有利である。好ましくは、剛性リンクは、Isofixコネクタである。好ましくは、起動機構と剛性リンクとの間の連結は、可撓性ケーブル、好ましくはボーデンケーブルを備える。起動機構と剛性リンクとの連結は、シートベースが車両に正しく設置されると足支柱が正しい長さに伸びることができるという利点を有する。しかし、車両に設置する前には、足支柱は自動的に伸びることが防止される。このように、シートベースの設置が容易になり、誤使用を回避するとともに、シートベースの車両外への持ち出しや運搬が容易となる。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、足支柱を備えたチャイルド安全シートが提供され、足支柱は、最小長さと最大長さとの間で長さが伸長可能な細長い部品を備える。細長い部品は、上部および下部を含み、下部は、細長い部品の長手方向において上部に対して摺動可能である。足支柱は、下部が自動的に上部から離れるように構成され、その結果、チャイルド安全シートを車両のシートに設置するときや、車両衝突時の衝撃によりチャイルド安全シートが車両のシートから上昇するときに、細長い部品の長さが長くなる。好ましくは、足支柱は、細長い部品が衝撃の後にその長さが増加するときに解放可能に阻止されるようにさらに構成されている。
【0031】
好ましくは、チャイルド安全シートは、シートベースをさらに備え、足支柱は、シートベースに連結される。
【0032】
チャイルド安全シートの足支柱は、本発明の足支柱および/またはシートベースまたは前記特徴の任意の組み合わせに関連して上述した任意の有利なまたは好ましい特徴を備えることができることが理解される。
【0033】
これらの利点は、足支柱またはシートベースに関して上述した利点と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による足支柱およびその基本的な機能原理を示す。
図2a】長さ調整機構を備える本発明による足支柱のさらなる実施形態を示す。
図2b】長さ調整機構の構造的部品を示す図2aのより詳細な図である。
図3a】足支柱の断面図を示し、足支柱の長さを短くしようとする場合の図2aおよび2bの長さ調整機構の機能の概略を説明する。
図3b】足支柱の断面図を示し、足支柱の長さが増加する場合の図2aおよび2bの長さ調整機構の機能の概略を説明する。
図4a】車両のシート上のチャイルド安全シートの設置プロセス中に取り付けられた足支柱を有するシートベースを備える本発明によるチャイルド安全シートを示す。
図4b】車両のシート上のチャイルド安全シートの設置プロセス中に取り付けられた足支柱を有するシートベースを備える本発明によるチャイルド安全シートを示す。
図5a】車両の後方衝突の場合にチャイルド安全シートに取り付けられた本発明に係る足支柱の機能を示す。
図5b】車両の後方衝突の場合にチャイルド安全シートに取り付けられた本発明に係る足支柱の機能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照して例により説明する。
【0036】
図1は、本発明による足支柱1を示す。より具体的には、図1は、足支柱の細長い部品10と、足部品13と、長さ調整機構2と、取付手段3と、を示す。細長い部品10は、上部11と、下部12と、を備える。下部12は、上部11に摺動可能に取り付けられる。下部12は、細長い部品10の長手方向に沿って摺動可能である。上部11は、外管を備えることができ、下部12は、内管を備えることができる。さらに、上部11は、それぞれのフランジ111を備えている。下部12は、それぞれのフランジ121を備える。フランジ111および121は、上部11から離れるように移動する下部12のための停止部を提供するように働く。すなわち、下部12の最大伸長は、下部のフランジ121が、上部11のフランジ111に当接するときに与えられる。この場合、細長い部品10は、その最大長に達している。次に、足支柱1も最大長に達している。足部品13は、車両に置かれるとき、具体的には車両の床に伸ばされるときに、足支柱1に安定性を提供する。さらに、足部品13は、下部12が上部11に向かって移動するとき、すなわち、細長い部品10の長さ、または、同様に、足支柱1の長さが短縮されるときに、下部12のための停止部も兼ねる。
【0037】
長さ調整機構2は、2つの歯21を備える。歯21は、下部12の穴22に係合するように適合されている。穴22は、受容要素とみなすことができる。長さ調整機構2の歯21はくさび形状を有する。歯21のくさび形状は、上部11から離れた向きに下部12に一定の力を加えることによって下部12を上部11から離れるように動かすことができるようになっている。歯21は、さらに、細長い部品10に、すなわち上部11または下部12の何れかに力が加えられたとき下部12が上部11に向かって移動することが不可能であるように成形される。下部12を上部11に向かって移動させるためには、長さ調整機構2を作動する必要がある。例えば、作動時に歯21をそれらの伸長位置から引っ込ませる上部11の外側にボタンなどのアクチュエータ(図示せず)を設けることができる。長さ調整機構2が作動すると、下部12は上部11に向かって移動することができる。これにより、足支柱の長さが短くなる。
【0038】
上部11はその上端部に取付手段3を備えている。取付手段3は、足支柱1をチャイルド安全シート、好ましくはチャイルド安全シートのシートベース、特に好ましくはシートベースの前側に取り付けることを可能にする。取付手段3は、足支柱がチャイルド安全シートまたはそのシートベースに旋回可能に取り付けられるように構成されてもよい。
【0039】
図1は、本発明の足支柱の機能に関連する力も示す。Fthは所定の閾値である。これは、上部11と下部12とを一緒に連結する力である。図1では、読みやすさのために一般的な力が示されている。しかしながら、所定の閾値Fthは、いくつかの寄与を有することができる。例えば、図1に示す実施形態では、上部11の内部の下部12の摺動のために、前記寄与の1つが摩擦力となり得る。さらに、下部12の穴22に係合する歯21は、下部12にも力を加える。閾値Fthは、それに応じて閾値Fthに寄与する力に影響を与える因子を選択することによって予め定められていてもよい。例えば、上の所与の例では、上部11と下部12の摩擦係数を変えることができ、歯21の弾性係数を変化させることができる。他の多くの因子が可能である。下部12を上部11から離れるように移動させるには、少なくとも所定の閾値Fthと同じ大きさの長手方向の力Fを下部12に加える必要がある。これに基づいて、所定の閾値Fthは、上部11から離れるように下部12に加える必要がある最小限の力として定義することもできる。
【0040】
所定の閾値Fthの明確な定義を提供するために、前述した最小の力は、上部11が静止しており、重力などの他の外力が足支柱に作用しないという条件の下で決定されることが理解される。しかしながら、これは必ずしも、(図1の力Fによって例示的に示されるように)下部12に加えられる力が所定の閾値を超える場合にのみ、本発明の足支柱が機能することを意味するものではない。細長い部品の構造のために、対応する効果は、上部11にそれぞれの力を加え、上部11を下部12から引っ張ることによって、または上部11と下部12の両方に外力を加えることによって達成することができ、その結果生じる所定の閾値Fthよりも大きな力により、上部11と下部12が互いに離れるように移動する。
【0041】
所定の閾値Fth(の大きさ)は、上述したように、足支柱を構成する際にいくつかの因子を変化させることによって選択または設定することができる。原理的には、所定の閾値は、任意の正の数またはゼロにさえ設定されてもよい。所定の閾値Fthが下部12の重力より小さく設定されている場合、上部11が例えば空間に固定されていれば、下部12は重力の下で上部11から自動的に離れることができる。言い換えれば、下部12の重力よりも小さいFthの場合、略鉛直な位置で使用され、チャイルド安全シートに取り付けられるときの足支柱1は、その最大長さに自動的に伸びるか、車両シートで使用される場合、車両の床に達するまで自動的に伸びる。これについては、図4aおよび図4bに関して、さらに後述する。
【0042】
しかし、所定の閾値Fthは、さらに、下部12の重力よりも大きな大きさに設定されてもよい。この場合、足支柱1が略鉛直位置にあると仮定すると、下部12を上部11から離すために重力に加えて力の寄与が必要であり、これによって足支柱1の長さ、または同様に、細長い部品10の長さを伸ばす。下部12を上部11から離すために(またはその逆に)必要なこのような追加の力は、車両事故の衝撃の間に及ぼされ得る。これについては、図5aおよび図5bに関して、さらに後述する。下部12の重力よりも大きい所定の閾値Fthを選択する利点は、足支柱1が略鉛直に配置されているときに、足支柱1は、単なる重力の下ではなく、例えば車両事故のような例外的な条件下では伸びる。したがって、例外的条件が満たされるときはいつでも、足支柱1は自動的に伸びる。一方、これは、足支柱1がチャイルド安全シートに取り付けられ、運搬、設置されているときに、足支柱1が伸びることを防止する。
【0043】
図2aは、本発明の第2の実施形態による足支柱1を示す。本実施形態の足支柱1は、長さ調整機構2の構造が図1に示すものと異なる。図1と同じで、足支柱1は、上部11と下部12とを有する細長い部品を備える。下部12の下端に連結された足部品13がある。さらに、足支柱1をチャイルド安全シートのシートベースに取り付けるための取付手段3も示されている。図1に関して説明したのと同じ部品の説明に関して、図1の説明を参照する。
【0044】
第2の実施形態の長さ調整機構2は、図2bに詳細に示されている。図2bには、ハウジング23(図2bでは、視認性の事情により後部のみが示されている)と、2つの金属ブラケット24と、2つの係合部材25と、2つのピン26と、2つのアクチュエータ27と、2つの弾性要素28と、を備える長さ調整機構2が示されている。図2bに示す実施形態では、係合部材はラチェット25として形成され、アクチュエータはボタン27として形成され、弾性要素はバネ28、好ましくは脚バネ、圧縮バネまたは引っ張りバネとして形成される。前記部品は、所与の特定の形態に限定されない。係合部材25、ピン26、アクチュエータ27および弾性要素28はラチェット機構の一部である。2つの金属ブラケット24は、長さ調整機構2が上部11に取り付けられるように適合されている。係合部材25は、下部12の各受容要素(図2bには図示せず)と係合するように構成されている。第2の実施形態の長さ調整機構2の機能については、図3aおよび図3bを参照して以下に説明する。
【0045】
図3aは、図2aおよび2bに既に示されている第2の実施形態の長さ調整機構2を正面から見たときの断面図で示す。図3aには、足支柱の細長い部品の上部11と下部12と、下部12に連結された足部品13と、長さ調整機構2が示されている。長さ調整機構2は、細長い部品の上部11に連結される。このために、例えば、図2bを参照して説明したような金属ブラケットを使用することができる(金属ブラケットは図3aには示されていないが、図2bの符号24で示されている)。長さ調整機構2は、ハウジング23と、ラチェット機構と、を備えている。ラチェット機構は、係合部材25と、ピン26と、アクチュエータ27と、弾性要素28と、を備える。これらの部品の詳細は、既に図2bを参照して上述した。細長い部品の上部11は、外管を備える。細長い部品の下部12は、内管を備える。下部12は、係合部材25またはラチェット機構の係合部材25の少なくとも一部を受容し、係合部材25と係合するように適合された受容要素29をさらに備える。図3aにおいて、受容要素が、いくつかの穴29または下部12の開口として形成されている。前記穴29は、下部12の長手方向軸に沿って離間している。
【0046】
図3aは、係止位置にある長さ調整機構2を示す。この位置では、係合部材25または係合部材25の一部は、受容要素29の少なくとも一部によって受容される。係合部材25は、受容要素29の少なくとも一部と係合する。図3aに示される本発明の第2の実施形態の特定の部品に関して、ラチェット25は2つの穴29に押し込まれる。ラチェット25は、弾性要素、例えばバネ28によって穴29と係合するように駆動される。
【0047】
長さ調整機構2が係止位置にあるときには、異なるシナリオが存在する。
【0048】
1つは以下の条件で与えられる。所定の閾値は、細長い部品の下部12の重力よりも小さくなるように選択される。このような所定の閾値は、例えば、長さ調整機構2の弾性要素28のバネ定数をそれに応じて選択することによって設定することができる。この場合、下部12に加えられる所定の閾値以上の力は、係合部材25を受容要素29との係合から引っ込めさせるのに十分である。したがって、所定の閾値よりも大きな力が下部12に加えられると、足支柱の長さが伸びる。このため、具体的には、足支柱が鉛直位置に置かれるとき、下部12を静止状態に維持するために(上部11が固定され、細長い部品がまだその最大長さまで伸びていないと仮定して)反作用力Aが必要である。このような反作用力Aが下部12に作用していなかった場合、下部12は上部11から離れるように動くことができる。このような反作用力Aは、下部12が車両の床に接触するときに、例えば車両の床によって供給されてもよい。後者の状況については、図4bに関して、より詳細に後述する。反作用力Aは、係合部材25を駆動して、受容要素29のサブセット、例えば2つと係合する。より一般的には、足支柱の長さを短縮しようとする足支柱に何らかの力が加えられると、この力が下部12から係合部材25に伝達され、その結果、係合部材25が駆動されて受容要素29の少なくとも一部と係合する。下部12に向かって上部11を動かそうとする足支柱または細長い部品に働く長手方向の力が大きいほど、係合部材25と前記受容要素29との間の係合が強くなる。これにより、足支柱の長さが自動的に短くなることが防止される。
【0049】
より具体的には、第2の実施形態に係る足支柱の部品に関して、足支柱を短くする方向に加えられる任意の力は、下部12の内管からラチェット25に伝達される。ラチェット25は、ピン26によってそれらの部品上に支持されている。ピン26は、金属ブラケット(図3aには図示されていないが、図2bの符号24で示されている)によって保持されている。金属ブラケットは、上部11の外管にしっかりと取り付けられている。ラチェット25の形状およびピン26の位置は、長手方向の負荷の下で、上部11を下部12に向かって動かそうとするように設計され、ラチェット25が穴29内により深く押し込まれる。
【0050】
長さ調整機構2が係止位置にあるときの第2のシナリオは、以下のように与えられる。所定の閾値は、細長い部品の下部12の重力よりも大きくなるように選択される。このような所定の閾値は、例えば、長さ調整機構2の弾性要素28のバネ定数をそれに応じて選択することによって設定することができる。この場合、下部12に加えられる所定の閾値以上の力は、係合部材25を受容要素29との係合から引っ込めさせるのに十分である。したがって、足支柱の長さは、所定の閾値よりも大きな力が下部12に加えられるときに自動的に伸びる。このため、具体的には、足支柱が鉛直位置に置かれるとき、下部12を静止させておくための反作用力は不要である。したがって、このシナリオでは、長さ調整機構2は、下部12に重力が作用しても係止位置にある。
【0051】
この第2のシナリオでは、第1のシナリオに関連して上述したのと同じであるが、長さ調整機構2は、上部11を下部12の近くに移動させようとする際に、足支柱上の長手方向に力が加えられるときはいつでも、足支柱の長さが短くなることを防止する。
【0052】
どのようなシナリオが考慮されるかは関係なく、第2の実施形態では、一般に、足支柱の長さを短くするために、アクチュエータ27を作動しなければならない。特に、アクチュエータ27の作動時に、細長い部品の下部12を上部11に向かって移動させることができる。下部12の重力よりも大きな値に設定された所定の閾値を有する実施形態の変形例では、足支柱の長さを伸ばすためにアクチュエータ27を作動することも有益であり得る。
【0053】
具体的には、第2の実施形態の部品に関して、足支柱の長さを短縮するために、ユーザは、アクチュエータの2つのボタン27を押して、ラチェット25を解放する必要がある。
【0054】
図3bは、係止解除位置にある長さ調整機構2を示す。構造的部品は、図3aに関連して上で説明したものと同じであり、それを参照するものとする。
【0055】
図3bは、細長い部品の、または同等に、足支柱の長さを伸ばすための長さ調整機構2の機能を示す。足支柱の伸長は、下部12が上部11から離れることによって起こる。このために、所定の閾値以上の力Bが下部12に加えられる必要がある。図3aに関連して上述したように、所定の閾値は、それに応じて弾性要素28、係合部材25および受容要素29の摩擦係数、バネ定数、弾性係数、および寸法などの材料定数を選択することによって設定されてもよい。下部12に加えられた所定の閾値より大きい力Bは、係合部材25を図3bの矢印Cで示すように受容要素29との係合から外れるように動かす。すなわち、下部12に加えられた力Bは、係合部材25が受容要素29から外れた状態で、下部12から係合部材25に伝達され得る。力Bが下部12にかかる限り、下部12は上部11から離れるように動くことができる(場合によっては、細長い部品がその最大長に達するまで)。下部の力の方向が逆になるとすぐに、係合部材25が受容要素29と係合するように戻される。すなわち、長さ調整機構2は再び係止位置に戻る。
【0056】
所定の閾値は、下部12の重力より小さくてもよい(図3aに関して上述したシナリオ1参照)。このシナリオでは、足支柱は自動的に正しい長さに達するまで重力の下で伸びることができる。所定の閾値が重力より大きく選択される場合、重力に加えて足支柱の長さを自動的に伸ばすために寄与が必要である。このような追加の寄与は、例えば、下部12に影響を及ぼす追加の慣性力に等しい車両事故における衝撃の間に足支柱に加えられるインパルスによって提供されてもよい。この追加の慣性力に重力を加えた力は、足支柱の長さの伸長を引き起こす所定の閾値より大きくなる可能性がある。ユーザが、例えば、それぞれの力で引っ張ることによって、下部12に追加の力を与えることも可能である。これらの異なるシナリオについては、図5bに関してさらに後述する。
【0057】
足支柱の上述の実施形態の変形または代替形態は、起動機構(図示せず)を備えてもよい。起動機構は起動または無効化できる。起動されると、起動機構は、互いから離れる相対移動に対して上部および下部を阻止する。すなわち、起動されたときに、細長い部品の、したがって、足支柱の長さ調整はどちらの方向においても不可能である。起動機構が無効にされると、長さ調整機構は、図1図2a、図2b、図3a、および図3bの実施形態に関連して上述したように機能する。すなわち、起動機構が無効にされている場合には、下部に所定の閾値よりも大きな力が加えられると、自動的に足支柱の長さを伸ばすことが可能となるが、アクチュエータが作動しない限り、足支柱の短縮は妨げられる。
【0058】
起動機構は、長さ調整機構の一部であってもよい。しかしながら、起動機構は、長さ調整機構とは別個の、または部分的にのみ長さ調整機構に一体化された部品であってもよい。
【0059】
例えば、第2の実施形態に関して、起動されると、起動機構はラチェット機構を阻止することができる。これは、具体的には、係合部材25が起動機構によって係止または阻止され得ることである。これにより、所定の閾値より大きい力Bが下部12に加えられる場合であっても、係合部材25が受容要素29から外れるのを防止することができる。所定の閾値より大きい力Bが下部12に加えられると、起動機構の無効化時にのみ、係合部材25が受容要素29から外れる可能性がある。起動機構が無効にされると、長さ調整機構2は、第2の実施形態に関連して上述したように機能する。一変形では、起動機構の無効化は手動で行うことができ、別の変形では、無効化を自動的に行うことができる。
【0060】
自動無効化は、いくつかの事象によって起こされる(トリガされる)可能性がある。
【0061】
起動機構の1つの変形では、チャイルド安全シートのシートベースに設置されたIsofixコネクタなどの剛性リンクと、長さ調整機構との間の連結部を備える。この変形によれば、起動機構は、剛性リンクが車両のそれぞれの固定部に正しく接続されていない限り起動する。剛性リンクがそれぞれの固定部に正しく接続されると、起動機構は無効になる。シートベースの剛性リンクと長さ調整機構との間の連結は、可撓性ケーブル、例えばボーデンケーブルによって提供することができる。
【0062】
第2の変形(第1の変形と組み合わせて、または第1の変形の代替として使用することができる)によれば、起動機構は、チャイルド安全シートの足支柱または他の部品にかかる力を感知するための感知手段、好ましくは加速度センサを備えていてもよい。感知手段が第2の所定の閾値よりも大きい力(または力に関連する量)を検出すると、起動機構が無効にされてもよい。好ましい実施形態では、起動機構は、感知手段に加えて、長さ調整機構を制御するように適合された制御部を備える。制御部は、機械式、または電子式の装置であってもよい。感知手段により第2の所定の閾値よりも大きな力が検出されている限り、制御部は起動機構を無効にする。検出された力が第2の所定の閾値を下回ると、起動機構が再び起動される。制御部は、好ましくは、本発明の第2の実施形態のラチェット機構を制御する。起動機構が起動されている限り、制御部は、足支柱の何れかの方向の長さ調整を防止するようにラチェット機構を阻止する。起動機構が無効にされると、ラチェット機構が解除され、足支柱の伸長が可能となる。これにより、長さ調整機構が感知手段によって能動的に起こされる(トリガされる)。
【0063】
起動機構は、排除機構をさらに備えてもよい。排除機構は、起動機構が無効になると、下部を上部から遠ざけるように適合される。このような排除機構は、上部および下部を連結するバネなどの弾性要素によって実現されてもよく、起動機構が起動される限り圧縮される。起動機構が無効になると、バネが解放されて、膨張することが可能となり、それによって、下部を上部から遠ざける。
【0064】
第2の所定の閾値は、下部の所定の閾値と同じであってもよい。しかしながら、第2の所定の閾値は、下部の所定の閾値とは異なることが好ましい。最も好ましくは、下部の閾値は、下部の重力よりも小さく、第2の所定の閾値は、車両の衝撃に起因する力のために特性値に設定される。このためには、感知手段が足支柱の上部に及ぼされる力を検出し、これにより、足支柱がチャイルド安全シートのシートベースに取り付けられるときに、重力に加えて足支柱に作用する力に敏感であることが好ましい。
【0065】
しかしながら、感知手段が下部に及ぼされる力を検出することも可能である。この設定は、車両衝撃の場合にのみ足の自動伸長を可能にするので特に有利である。別の状況、例えば足支柱の輸送または製造中に、重力の下で望ましくない伸長が抑制される。この変形によれば、足支柱の伸長は感知手段によって能動的に起こされる(トリガされる)ので、例えば、長さ調整機構のアクチュエータを作動することによって、この変形の起動機構を手動で無効にできると有利である。これにより、車両に、足支柱を備えたチャイルド安全シートを正しく設置することが可能になる(図4aおよび4bに関して以下も参照)。
【0066】
図4aおよび図4bは、チャイルド安全シート30を車両シート50に設置する際の、本発明による足支柱1の機能を示している。図4aおよび図4bにおいて、チャイルド安全シート30はシートベース40を備える。シートベース40は、チャイルド安全シート30と一体的に形成されていてもよいし、別部品であってもよい。足支柱1は、シートベース40に取り付けられている。示されている図では、足支柱1は、シートベース40の前側に取り付けられている。好ましくは、足支柱1の上部11は、シートベース40に旋回可能に取り付けられている。シートベース40は、車両シート50上に配置される。シートベース40は、それぞれがコネクタを備える剛性リンク41を備える。コネクタ付き剛性リンク41は、好ましくは、Isofixコネクタを備える。コネクタは、車両のそれぞれの固定部(図示せず)と係合するように適合されている。
【0067】
図4aは、チャイルド安全シート30を車両シート50に設置する初期の段階を示している。この場合、足支柱1はまだ正しい長さまで伸びていない。通常の運転状態では、足支柱1が車両の床51に接触するときに正しい長さが与えられる。しかし、これは図4aの場合ではない。足支柱1の下部12は、足支柱1の下端と車両の床51との間に隙間を作るように、実質的に引っ込められている。
【0068】
図4bは、適正な長さに伸ばされた、チャイルド安全シート30の足支柱1を示す。すなわち、図4bにおいて、足支柱1の下部12は、車両の床51に接触するように伸ばされている。
【0069】
本発明の実施形態に応じて、足支柱1の正しい長さへの伸長はいくつかの条件に左右されることがある。
【0070】
まず、所定の閾値を下部12の重力よりも小さい値に設定し、起動機構を用いない場合を考える。これが最も好ましい実施形態である。この場合、長さ調整機構2は、足支柱が略鉛直な位置に配置されるとすぐに、足支柱の上部11から下部12を離すように動かすことが可能である。この場合、足支柱は自動的に正しい長さ、すなわち車両の床51に接触するまで伸びる。言い換えれば、重力により、下部12は車両の床に達するまで上部11から自動的に離れる。
【0071】
第2に、所定の閾値が、依然として下部12の重力よりも小さな値に設定されているが、シートベース40の剛性リンク41に連結された起動機構が使用されている場合を考える(図3bの説明の後の上記を参照)。この場合、起動機構の無効化の後にのみ、足支柱1を正しい長さに伸ばすことができる。剛性リンク41への連結部を備える起動機構が与えられる場合、剛性リンク41が車両シート50のそれぞれの固定部に正しく接続されると、無効化が生じる。起動機構が無効にされると、下部12は、下部12が車両の床51に接触するまで、重力によって上部11から自動的に離れるように駆動される。
【0072】
第3に、所定の閾値が依然として下部12の重力よりも下に設定されているが、車両衝突の特性値に設定された第2の閾値を有する感知手段を備える起動機構が使用されている場合を考える(図3bの説明の後の上記を参照)。この場合、足支柱1の伸長は感知手段によって起こされる(トリガされる)。すなわち、感知手段が、足支柱1に加えられた外力が第2の所定の閾値を超えていることを検出するときにのみ、下部12は自動的に伸びることができる。このため、下部12を、車両の床51に接触するまで上部11から離すことができるように起動機構を手動で無効にする必要がある。前述したように、この変形の起動機構は、好ましくは、長さ調整機構2のアクチュエータを作動することによって手動で無効にされる。このように、アクチュエータを作動させることによって、下部12は重力により正しい長さまで自動的に駆動される。
【0073】
第4に、所定の閾値は下部12の重力よりも大きな値に設定され、起動機構が使用されない場合を考える。この場合、下部12の重力が所定の閾値を超えるには不十分であるため、通常の状態では足支柱1の伸長が起こらない。この場合、ユーザは、下部12を引っ張ることによって下部12に付加的な力を加えることができる。ユーザが長さ調整機構2のアクチュエータを作動し、足支柱1の長さ調整を可能にすることもできる。
【0074】
図5aは、車両シート50に置かれたシートベース40と、シートベース40に取り付けられた足支柱1と、を備えたチャイルド安全シート30を示す。チャイルド安全シート30は、Isofixコネクタなどのコネクタを備えた剛性リンク41によって、車両に固定され、コネクタは車両のそれぞれの固定部と係合する。足支柱1は、図5aにおいて、正しく設置されており、すなわち、足支柱1が車両の床51に接触している。図5aは、正常な運転状態におけるチャイルド安全シート30の正しい配置を示す。
【0075】
図5bは、車両事故の場合、具体的には後方衝撃の場合の足支柱1の機能を示す。事故の場合の足支柱1の主な機能は、本発明の全ての実施形態において同じである。主要な機能を提供するために、それらは異なるトリガを使用するのみである。このため、主要な機能についてまず説明する。その後、異なる実施形態およびトリガに関係するいくつかの態様について述べる。
【0076】
図5bでは、典型的に車両の後方衝突で生じる力Dがチャイルド安全シート30に加えられる。チャイルド安全シート30は、シートベース40を備える。シートベース40は、Isofixコネクタなどのコネクタを備える剛性リンク41によって車両シート50に固定される。図5bには示されていないが、剛性リンク41のコネクタは、車両シート50のそれぞれの固定部と係合する。さらに、本発明による足支柱1がシートベース40に取り付けられている。後方衝撃で生じ得る力Dは、チャイルド安全シートを剛性リンク41のコネクタと固定部との接続点によって定められる横軸を中心に回転させる。図5bでは、シートベース40の前部が車両シート50に対して上昇/回転していることが示されている。したがって、図5bの後方衝撃シナリオに示されるチャイルド安全シート30の位置および向きは、図5aに示される通常状態シナリオとは大きく異なる。本発明によれば、足支柱1は、足支柱1の下部12に所定の閾値より大きい力が加えられると、その長さを伸ばすことができる。このため、チャイルド安全シート30が上昇し、シートベース40に取り付けられた足支柱1の上部11が上昇するような後方衝撃の場合には、通常の状態での足支柱1の正しい長さと車両の床51との間に生じる隙間は、足支柱1の下部12が後者の上昇/回転に伴って上部11から離れるため、閉じられる。チャイルド安全シート30の上昇/回転の間、下部12は、下部12が端部停止部(細長い部品の最大長さによって与えられる)に達するまで、または下部12が車両の床51に接触するまで、上部11から離れる。さらに、本発明により依然として、足支柱1は、下部12が上部11に向かって移動することに対して阻止される。換言すれば、足支柱1が自動的に短くなることが防止される。このため、後方衝撃時にチャイルド安全シート30、ひいては足支柱1の上部11が最大高さに達すると、足支柱1の長さが維持される。言い換えれば、足支柱1の長さは、引っ込み/短縮に抗して固定される。このため、チャイルド安全シート30は、車両シート50に跳ね返り/反転することが防止される。足支柱1またはそれと同等の細長い部品が最大長に達した場合であっても、チャイルド安全シート30の跳ね返り/反転が依然として劇的に低減される。
【0077】
前述したように、この主要な機能は、本発明による全ての実施形態において同じである。ただし、トリガは異なる場合がある。
【0078】
まず、所定の閾値を下部12の重力よりも小さい値に設定し、起動機構を用いない場合を考える。つまり、この場合のトリガは重力である。この場合、長さ調整機構2は、後方衝撃の場合、チャイルド安全シート30および上部11が上昇/回転を開始するとすぐに、下部12を足支柱の上部11から離れるように自動的に移動させることができる。
【0079】
第2に、所定の閾値は下部12の重力よりも上に設定され、起動機構は使用されない場合を考える。この場合、足支柱1の伸長は、重力のみによっては生じない。この場合、足支柱1を伸ばすためには、重力に加えて寄与が必要である。後方衝撃が十分に強いと、このような追加の寄与がもたらされる可能性がある。後方衝突における衝撃の間に足支柱に作用するインパルスは、下部12に影響を及ぼす追加の慣性力に相当する。そして、この追加の慣性力に重力を加えた力は、足支柱1の長さの伸長を引き起こす所定の閾値よりも大きい可能性がある。この場合のトリガは、したがって、追加の慣性力である。
【0080】
第3に、所定の閾値が、依然として下部12の重力より下に設定されているが、車両衝突のための特性値に設定された第2の閾値を有する感知手段を備える起動機構が使用される場合を考える。この場合、足支柱1の伸長は感知手段によって起こされる(トリガされる)。感知手段が、例えば後方衝撃が第2の所定の閾値を超えることによって生じる外力を検出すると、衝撃の力が第2の所定の閾値を超える限り、下部12は自動的に重力の影響を受けて伸びる。
【符号の説明】
【0081】
1 足支柱
10 細長い部品
11 細長い部品10の上部
12 細長い部品10の下部
13 足支柱1の足部品
2 長さ調整機構
21 長さ調整機構2の歯
22 歯21に係合する下部12の穴
23 長さ調整機構2のハウジング
24 金属ブラケット
25 係合部材/ラチェット
26 ピン
27 アクチュエータ/ボタン
28 弾性要素/バネ
29 ラチェット25に係合する下部12の受容要素/穴
111 上部11のフランジ
121 下部12のフランジ
3 取付手段
30 チャイルド安全シート
40 シートベース
41 シートベースの剛性リンク
50 車両のシート
51 車両の床
F 下部12に加えられる力
Fth 所定の閾値
A 下部12の上部11へ向かう移動を試みたことを示す矢印
B 下部12が上部11から離れるように移動することを示す矢印
C 受容要素29との係合が外れる際の係合部材25の動きを示す矢印
D 後方衝撃時にチャイルド安全シート30に及ぼされる力を示す矢印
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b