(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】紙葉類処理装置および紙葉類処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D   7/12        20160101AFI20230417BHJP        
   G07D   7/00        20160101ALI20230417BHJP        
【FI】
G07D7/12 
G07D7/00 D 
(21)【出願番号】P 2018175210
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久禮  庄太
(72)【発明者】
【氏名】中野  尚久
(72)【発明者】
【氏名】猪狩  精司
【審査官】平野  貴也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-118457(JP,A)      
【文献】特開2015-222463(JP,A)      
【文献】特開2012-093987(JP,A)      
【文献】国際公開第2010/018353(WO,A1)    
【文献】特開2010-039897(JP,A)      
【文献】特開2011-048677(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D      7/00  -    7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  蛍光インク印刷情報が付された紙葉類を搬送路に沿って搬送する搬送機構と、
  前記蛍光インク印刷情報と共通の励起光波長で蛍光発光を示す蛍光材料を含む蛍光基準部材であって、前記紙葉類の通過範囲を包含し前記搬送路に対向して配置された蛍光基準部材と、
  前記蛍光基準部材に励起光を照射する光源装置と、
  前記紙葉類の搬送方向と交差する方向に並んで設けられた複数の受光センサを有し、前記蛍光基準部材の蛍光発光を撮像し、前記蛍光基準部材上を通過する前記紙葉類の輪郭を含む画像および前記蛍光インク印刷情報の画像を取得する撮像装置と、を備え、
  前記蛍光基準部材は、前記撮像装置が1ラインを走査する時間内に蛍光発光強度が安定状態の30%以上
50%程度までに励起される蛍光材料を含んで構成される、
  紙葉類処理装置。
【請求項2】
  前記光源装置は、前記蛍光基準部材に対し前記紙葉類の搬送方向の上流側に配置さ
れ、
            
  前記光源装置は、その光軸が、前記蛍光基準部材に垂直な方向に対して角度θをなすように配設されている請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
  前記蛍光基準部材の蛍光発光の光強度が、前記紙葉類の境界を判定可能な蛍光強度の閾値を越えるところまで立上るのに必要な立上り時間をTx、前記励起光の照射角度を角度θ、境界検出に求める画素精度をP「pix」、画像解像度をR「mm/pix」、前記紙葉類と前記蛍光基準部材との距離をds、前記紙葉類の搬送速度をV、とした場合、
            
              前記蛍光基準部材は、  
            
              Tx=(ds×tanθ+P×R)/(V×10
            
               3
            
            ) [sec]  
            
            の関係を満たす蛍光材料を含んで構成されている請求項2に記載の紙葉類処理装置。
         【請求項4】
  前記搬送機構は、前記搬送路に沿って延在する第1搬送ベルト対と、前記搬送路に沿って延在し、前記第1搬送ベルト対から前記紙葉類の搬送方向にある間隔離間して配置された第2搬送ベルト対と、を備え、
  前記蛍光基準部材は、前記第1搬送ベルト対と第2搬送ベルト対との間で、前記搬送路に対向して配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
  前記搬送機構は、前記搬送路に沿って、かつ、前記撮像装置の撮像範囲を横断して延在する搬送ベルト対を備え、
  前記蛍光基準部材は、それぞれ前記搬送ベルト対から外れた位置で前記搬送路に対向して配置された複数の蛍光基準部材を含んでいる請求項1から3のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
  前記撮像装置により撮像された前記紙葉類の画像および前記蛍光基準部材の画像を取得し、前記取得した前記蛍光基準部材の画像の明るさに応じて前記撮像装置の受光感度を補正する画像取得部と、
  前記紙葉類の画像の輪郭を検出し、前記検出した輪郭と所定の基準位置とを比較して紙葉類の位置ずれ、傾きを検出し、検出した紙葉類画像の位置ずれおよび傾きに応じて取得画像の位置および傾きを前記基準位置に補正する画像処理部と、
  を更に備える請求項1から5のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
  蛍光インク印刷情報が付された紙葉類を処理する紙葉類処理方法であって、
  前記蛍光インク印刷情報と共通の励起光波長で蛍光発光を示す蛍光材料を含む蛍光基準部材に
光源装置から励起光を照射して蛍光発光させた状態で、
搬送機構により、前記蛍光発光の範囲を通して前記紙葉類を搬送し、
  前記紙葉類が前記蛍光発光の範囲を通過する間、前記紙葉類の搬送方向と交差する方向に並んで設けられた複数の受光センサ
を有する撮像装置により前記紙葉類を通して前記蛍光発光の範囲を撮像することにより前記紙葉類の画像および前記蛍光基準部材の画像を取得し、
  前記蛍光基準部材は、前記撮像装置が1ラインを走査する時間内に蛍光発光強度が安定状態の30%以上
50%程度までに励起される蛍光材料を含んで構成され、
  
画像処理部により、前記紙葉類の画像から前記紙葉類の輪郭を検出し、
  前記検出した輪郭と基準位置とを比較して前記紙葉類の画像の位置ずれおよび傾きを算出することを特徴とする紙葉類処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明の実施形態は、紙葉類を処理する紙葉類処理装置および紙葉類処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
  近年、銀行や大規模小売業等では日常的に大量の紙幣が扱われ、これら紙幣を金種や、正損(紙幣の汚損度合い)に応じて分類して整理する業務が存在している。このような紙幣の整理業務を自動化する装置として紙葉類処理装置が用いられている。この紙葉類処理装置は、例えば、紙幣の種類や正損の度合いを鑑別する鑑査部と、紙幣を金種別などに分類して集積する複数の集積部と、などを備えている。  
  鑑査部は、紙幣の画像を所得する画像読取装置、紙幣の蛍光印刷を検知する蛍光検知装置、その他、種々のセンサを備えて構成されている。画像読取装置は、読み取った画像から、紙幣の券種、紙幣の汚れ、紙幣の傾き等を判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
               【文献】特開2007-66059号公報
               【文献】特開2009-199182号公報
             
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  この発明の実施形態の課題は、蛍光発光により紙葉類の蛍光インク印刷情報および紙葉類の位置、傾きを検出可能とした紙葉類処理装置および紙葉類処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
  一実施形態によれば、紙葉類処理装置は、蛍光インク印刷情報が付された紙葉類を搬送路に沿って搬送する搬送機構と、前記蛍光インク印刷情報と共通の励起光波長で蛍光発光を示す蛍光材料を含む蛍光基準部材であって、前記紙葉類の通過範囲を包含し前記搬送路に対向して配置された蛍光基準部材と、前記蛍光基準部材に励起光を照射する光源装置と、前記紙葉類の搬送方向と交差する方向に並んで設けられた複数の受光センサを有し、前記蛍光基準部材の蛍光発光を撮像し、前記蛍光基準部材上を通過する前記紙葉類の輪郭を含む画像および前記蛍光インク印刷情報の画像を取得する撮像装置と、を備えている。前記蛍光基準部材は、前記撮像装置が1ラインを走査する時間内に蛍光発光強度が安定状態の30%以上50%程度までに励起される蛍光材料を含んで構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
            【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る画像読取装置を模式的に示す側面図。
 
            
            【
図3】
図3は、前記画像読取装置の搬送機構および蛍光基準部材を模式的に示す平面図。
 
            【
図4】
図4は、前記画像読取装置の動作状態を示す側面図。
 
            【
図5】
図5は、前記画像読取装置の他の動作状態を示す側面図。
 
            【
図6】
図6は、前記画像読取装置の撮像装置、光源装置、蛍光体の波長分布を模式的に示す図。
 
            【
図7】
図7は、前記画像読取装置で読み取った画像例の模式図。
 
            【
図8】
図8は、励起光照明と蛍光体の発光との関係を示す模式図。
 
            【
図9】
図9は、前記画像読取装置の動作状態を示す側面図。
 
            
            
            【
図11】
図11は、光源装置の配置が変更され前記画像読取装置の動作状態を示す側面図。
 
            【
図12】
図12は、光源装置の配置が変更され前記画像読取装置の動作状態を示す側面図。
 
            【
図13】
図13は、前記画像読取装置の画像取得部、制御部、および画像処理部を機能ブロックとして示すブロック図。
 
            【
図14】
図14は、前記画像読取装置における画像処理工程を示すフロー図。
 
            【
図15】
図15は、前記画像処理工程の各工程に対応する取得画像を模式的に示す図。
 
            【
図16】
図16は、前記画像読取装置を備えた画像処理装置の一例を示す断面図。
 
            【
図17】
図17は、第2の実施形態に係る画像読取装置を模式的に示す側面図。
 
            【
図18】
図18は、第2の実施形態に係る画像読取装置の斜視図。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0007】
  以下、図面を参照しながら実施形態について、詳細に説明する。  
  なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の寸法、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(第1の実施形態)  
  図1は、紙葉類処理装置の一例として、第1の実施形態に係る画像読取装置を概略的に示す側面図、
図2は、上記画像読読取装置の斜視図、
図3は、上記画像読読取装置の一部を模式的に示す平面図である。
  
図1および
図2に示すように、画像読取装置10は、紙葉類の一例である紙幣Pを所定の搬送路に沿って搬送する搬送機構11、搬送路の中途部に対向して配置された蛍光基準部材17、撮像装置12、光源装置13、画像取得部14、制御部15、画像処理部16を備えている。
 
【0009】
  搬送機構11は、複数の搬送ローラR1、R2および搬送ローラR1、R2に巻回された複数の無端の搬送ベルトB1、B2、少なくとも搬送ローラR1、R2の一方を回転駆動する図示しない駆動源等を有している。搬送ベルトB1、B2は一対ずつ互いに対向して配置され、これらの搬送ベルト間に紙幣Pを挟んだ状態で、紙幣Pを搬送する。本実施形態において、搬送機構11は、互いに平行に配置された2つの第1搬送ベルト対20a、および互いに平行に配置された2つの第2搬送ベルト対20bを有している。2つの第1搬送ベルト対20aは、それぞれ搬送路と平行に配置されているとともに、紙幣Pの幅よりも狭い間隔を置いて互いに平行に配置されている。2つの第2搬送ベルト対20bは、それぞれ搬送路と平行に配置されているとともに、紙幣Pの幅よりも狭い間隔を置いて互いに平行に配置されている。また、第2搬送ベルト対20bは、第1搬送ベルト対20aに対し、搬送方向Aに所定の間隔Dだけ離間して配置されている。各第2搬送ベルト対20bは、対応する第1搬送ベルト対20aと搬送方向Aに整列して配置されている。
  なお、搬送機構11は、更に複数の搬送ベルト対を備えていてもよい。また、搬送機構11は、各無端ベルトに搬送方向に並ぶ複数の透孔を設け、吸引手段によりこれらの透孔を通して紙幣Pを吸引し搬送ベルトに吸着する構成としてもよい。
【0010】
  蛍光基準部材17は、例えば、表面に蛍光インクが塗布された石英ガラス板で構成され、照射される励起照明の強度に応じた強度で蛍光発光を示すものである。蛍光基準部材17は、例えば、細長い平板状に形成されている。蛍光基準部材17は、搬送機構11の搬送ベルトと干渉しない位置に配設されている。本実施形態では、蛍光基準部材17は、第1搬送ベルト対20aと第2搬送ベルト対20bとの間で、搬送路に対向して配置されている。更に、蛍光基準部材17は、一方の表面が搬送路と平行に対向するように、例えば、一方の表面が鉛直方向上方を向くように、配置されている。
図1に示す例では、蛍光基準部材17は、搬送路の下方に配置されている。
 
【0011】
  図2および
図3に示すように、蛍光基準部材17は、搬送方向Aと交差する方向、例えば、搬送方向Aと直交する方向に延在している。本実施形態によれば、蛍光基準部材17は、紙幣Pの幅よりも充分長い長さに形成されている。蛍光基準部材17の長手方向の両端部は、それぞれ紙幣Pの搬送経路の外側まで延出している。すなわち、蛍光基準部材17の両端部は、搬送される紙幣Pの両側縁PSと対向する位置に設けられている。これにより、紙葉類Pが
図3に破線で示す基準位置にある場合、および、
図3に実線で示すように搬送方向Aに対して傾いて(スキュー)位置している場合、あるいは基準位置に対してずれて(スライド)いる場合のいずれにおいても、蛍光基準部材17は、蛍光基準部材17の上を通過する紙幣Pの両側縁PSを含む全面および側縁PSの外側の一定領域と対向する。
 
【0012】
  図1および
図2に示すように、光源装置
13は、蛍光基準部材17および紙幣Pに蛍光発光を励起する光を照射する励起用の照明装置であり、光源として、例えば、キセノンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、あるいはLED等を備えている。光源装置
13は、搬送路に対して、蛍光基準部材17の反対側に、すなわち、図においては、搬送路の上方に配置されている。また、光源装置
13は、蛍光基準部材17に対して、搬送方向Aの上流側に設けられている。光源装置
13は、その光軸が、蛍光基準部材17に垂直な方向に対して角度θをなすように配設されている。光源装置
13は、蛍光基準部材17の上面全域に励起光を照射して蛍光基準部材17を蛍光発光させるとともに、蛍光基準部材17の上を通過する紙幣Pに励起光を照射して、紙幣Pの蛍光インク印刷領域を蛍光発光させるように機能する。
 
【0013】
  撮像装置12は、搬送されている紙幣Pを一次元的に順次撮像するラインイメージセンサ(例えば、モノクロのラインCCDやラインCMOS)、あるいはカメラなどにより構成されている。本実施形態では、撮像装置12としてラインイメージセンサを用いている。このラインイメージセンサは、搬送方向Aと直交する方向に並んで設けられた複数の受光素子(受光センサ)を有している。撮像装置12は、搬送路の上方に配置され、搬送路を挟んで蛍光基準部材17に対向している。また、撮像装置12は、搬送方向Aと直交する方向に延在し、蛍光基準部材17の上面ほぼ全体に対向している。撮像装置12を構成するラインイメージセンサは、それぞれ受光した光を電気信号、すなわち画像に変換する複数の撮像素子(画素)を有し、これらの撮像素子が複数列に並んで配列されている。撮像装置12は、受光素子により、紙幣Pが通過する所定範囲(撮像範囲)を順次撮像し、画像を取得する。
【0014】
  画像取得部14は、撮像装置12により撮像した画像に対して、例えば、AGC補正、A/D変換などの種々の処理を施す。制御部15は、光源装置13、撮像装置12、画像取得部14、画像処理部16、および搬送機構11の動作を総合的に制御する。制御部5は、記憶手段として機能するメモリを備えている。メモリは、例えばROM、RAMあるいは不揮発性メモリ等により構成される。メモリは、制御用のプログラム、制御データ、及び、紙幣Pの判定の基準となる画像などを予め記憶している。また、RAMは、ワーキングメモリとして機能し、制御部15が処理中のデータなどを一時保管する。不揮発性メモリは、本装置により処理した紙幣Pから読み取った画像を蓄積して記憶する。  
  画像処理部16は、撮像装置12により取得した画像に基づいて、紙幣Pの位置及び傾きの検出、補正、画像特徴量の演算、並びに、紙幣Pの種類などの判定を行なう。画像取得部14、制御部15、および画像処理部16のより詳細な構成については後述する。
【0015】
  画像読取装置10による蛍光画像の撮像動作について説明する。  
  図4および
図5は、画像読取装置10の異なる動作状態をそれぞれ概略的に示す側面図である。
図4に示すように、紙幣Pが撮像装置12の撮像範囲に存在していない場合、光源装置13から出射された励起光bは、蛍光基準部材17の全域に照射される。これにより、蛍光基準部材17が励起され蛍光発光を生じる。撮像装置12は、撮像範囲で生じている蛍光発光C(蛍光発光範囲)を受光する。この間、撮像装置12は、受光した蛍光発光の強度を検知し、検知した強度に基づいて、撮像装置12の受光感度を補正するようにしてもよい。
  次に、
図5に示すように、制御部15の制御の下、搬送機構11は、搬送ベルトを駆動することにより紙幣Pを撮像範囲に搬送する。すなわち、搬送機構11により紙幣Pを搬送路に沿って搬送方向Aに搬送し、蛍光基準部材17の上を通過させる、すなわち、蛍光発光範囲を通して紙幣Pを搬送する。同時に、光源装置
13は、紙幣Pが通過する撮像範囲に励起光bを照射する。照射された励起光は、紙幣Pに印刷された蛍光インク領域を励起し、蛍光発光Cを生じる。撮像装置12は、撮像範囲で生
じた蛍光発光を受光する。これにより、画像読取装置10は、蛍光発光範囲を撮像することにより、紙幣Pの蛍光画像を取得することが出来る。
 
【0016】
  図6は、光源装置13が出射する励起光の波長λ1、撮像装置12の感度波長λS、蛍光基準部材17および紙幣Pの蛍光インク印刷領域の蛍光発光波長λfの一例を示す模式図である。図示のように、撮像装置12の感度波長λSは例えば可視光波長(400~800nm)に設定されている。励起光の波長λ1は、例えば紫外線波長(350~390nm)であり、感度波長λSの範囲外に設定されている。蛍光発光波長λfは、例えば、赤色光波長であり、感度波長λSの範囲内に設定されている。  
  励起光の波長λ1、感度波長λS、蛍光発光波長λfを上記のように選択した場合、励起光波長λ1がノイズとして撮像装置12に入ることを抑制することができる。白色紙葉類の蛍光波長を除いた各種波長は、必要に応じて光学フィルタや材料の選定により選択することができる。
 
【0017】
  図7は、画像読取装置10で、読み取った蛍光画像の一例を示している。図示の例は、紙幣Pのスライド、スキューが無い状態で撮像した画像の例を示している。図示のように、蛍光基準部材17の上に紙幣Pが無いときは蛍光基準部材17全体が発光することで、蛍光基準部材17の蛍光発光そのもの(以降、明基準とする)を明画像として読み取られる。紙幣Pが蛍光基準部材17の上を通過している間は、励起光が紙幣Pに遮られるため、蛍光基準部材17の大部分は蛍光発光せず、また、紙幣P自体は蛍光を示さないため、紙幣Pの通過位置は黒色画像として読み取られる。ただし、紙幣Pが通過する間、蛍光基準部材17の両端部は、紙幣Pと重ならないため、継続して蛍光発光し、紙幣Pの側縁PSの外側に位置する明画像として読み取られる。また、紙幣Pに蛍光インクで印刷された
蛍光インク印刷領域EGは、蛍光発光を示し、明情報として読み取られる。
 
【0018】
  次に、蛍光画像における蛍光基準部材17と紙幣Pとの境界部P1、P2についてより詳しく説明する。始めに、蛍光体の励起と蛍光の時間特性について簡単に述べる。
  図8に示すように、蛍光体は、励起照明が当たり始めてから蛍光発光の強度が安定するまでに時間がかかる(全立上り時間T0)。また、蛍光体は、励起光が当たらなくなってから、蛍光発光が無くなるまでにも時聞がかかり(残光)、ある一定の割合まで蛍光発光が弱くなる時間を蛍光寿命と称する。これらの時間は蛍光体の組成等によって決まる。  
  τ:蛍光寿命、Rr:輯射遷移速度、Rn:無轄射遷移速度とすると、  
  τ= 1/(Rr+Rn)  となる。
  また、一般に励起照明が当たらなくなってから時間t経過後の蛍光強度I(t)は以下で表される。  
  I(t)= I(0)exp[-t/τ]  
  I(0):励起光照射時の蛍光強度
  以上のことから、光源装置13から照射される励起光の変化に対し、蛍光基準部材17の蛍光の変化には遅延があることを踏まえ、上記境界部P1、P2を検討する必要がある。
 
【0019】
  図1に示したように、光源装置13は、蛍光基準部材17に垂直な方向に対してある角度をもって蛍光基準部材17に励起光を照射する。そこで、まず、光源装置13を蛍光基準部材17に対して搬送方向Aの上流側に配置されている場合について説明する。  
  
図9に示すように、励起光bが蛍光基準部材17に垂直な方向に対して角度をもっている場合、紙幣Pが撮像装置12の撮像範囲直下に来る前に、紙幣Pが励起光bを遮る状態が発生する。そのため、撮像された蛍光画像上では、搬送方向Aにおける紙幣Pの先端側の境界P1に、紙幣Pの影が生じる。しかし、蛍光基準部材17は蛍光寿命τを持つことから、残光によって蛍光画像に写る影は低減される。  
  また、紙幣Pの後端側の境界部P2においては、
図10Aに示すように、紙幣Pが撮像装置12の直下を通り過ぎるより以前から蛍光基準部材17に励起光bが当たり始める。そのため、蛍光基準部材17の立上り時間が蛍光画像に与える影響を低減することができる。
 
【0020】
  図10Bは、
図10Aにおける蛍光基準部材17の近傍分を拡大して示す図である。  
  図示のように、励起光bの照射角度:θ[deg]、  
  紙幣Pと蛍光基準部材17との距離:d2[mm]、  
  紙幣Pの搬送速度:V[m/sec]、  
  とした場合、理想的には、紙幣Pが通過後、撮像装置12の撮像範囲に蛍光基準部材17が映り始めるときには、蛍光基準部材17の励起が既に完了していること、すなわち、蛍光基準部材17の蛍光発光の全立上り時間T0が以下の通りであることが望ましい。  
  T0=ds×tanθ/V  
  現実的は、画像処理において、蛍光基準部材17の蛍光発光の光強度が、発光背景と紙幣Pとの境界を判定可能な蛍光強度の閾値I(x)(
図7参照)を越えるところまで立上るのに必要な立上り時間Txが、
  Tx=(ds×tanθ+P×R)/(V×10
3) [sec]
  P「pix」:境界検出に求める画素精度、R「mm/pix」:画像解像度、
  を満たす蛍光基準部材の材料を選定することで対応している。  
  一例では、θ=20deg、ds=5mm、V=5m/sec、P=2pix、  
  R=0.5mm/pix  の時、Tx≒ 5.6×10
4 [sec]=0.56「msec」となる蛍光基準部材17を選択している。
 
【0021】
  一方、
図11に示すように、光源装置13を蛍光基準部材17に対して搬送方向Aの下流側に配置した場合について説明する。この場合、
図11に示すように、励起光bが蛍光基準部材17に垂直な方向に対して角度をもっていることから、紙幣Pが撮像装置12の直下に来ても蛍光基準部材(7)の励起が続いている。また、
図12に示すように、紙幣Pが撮像装置12の直下を通過した後も蛍光基準部材17が励起されない状態が生じる。前者の場合は蛍光画像に大きく影響を与えることは無いが、後者の場合は、紙幣Pによる励起照明の影と、蛍光基準部材17の立上り時間とが加算され、蛍光画像に影響を及ぼすことになる。  
  以上のことから、励起照明として1つの光源装置13を用いる場合、光源装置13を蛍光基準部材17に対して搬送方向Aの上流側に設置することで、紙幣Pと蛍光基準部材17との境界、ひいては紙幣Pの傾き(形状)をより明確に撮像することができる。
 
【0022】
  なお、光源装置13を搬送方向Aの上流側に設置した場合、境界部P1の影響を低減するには蛍光寿命τが長いことが望ましい。また、境界部P2の影響を低減するには、蛍光基準部材17の立上り時間は、撮像装置12が1ラインを走査する時間内であることが望ましい。一般的に、蛍光寿命τが長いほど立上り時間も長くなることから、実用上は、撮像装置12が1ラインを走査する時間内に、蛍光発光強度が安定状態の30~50%程度まで励起されるような立上り時間(蛍光寿命)を選択し、蛍光画像から蛍光基準板17と紙幣Pとの境界を検出する際の関値を適切に設定する構成となる。  
  蛍光基準部材17は、光源装置13の出力変化による影響を、撮像装置12の感度調整等により補正するための基準部材としても機能する。
         
【0023】
  図13は、画像取得部、制御部、および画像処理部の有する機能をブロックとして示すブロック図である。
  図示のように、画像取得部14は、アンプ(増幅器)41、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)42、および補正回路43を備えている。アンプ41は、撮像装置(ラインセンサ)12の出力信号(画像データ)を増幅して出力する。A/D変換回路42は、入力信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力信号として出力する。補正回路43は、予め記憶されている撮像装置12の各撮像素子の特性に基づいて入力信号のムラを補正する。また、補正回路43は、撮像装置12から受信した画像のうちの蛍光基準部材17に対応する画素の明るさと、規定の明るさの値とに基づいて、アンプ41の増幅率を算出し補正する。即ち、補正回路43は、撮像装置12から受信した出力信号のうちの蛍光基準部材17の蛍光発光に対応する画素の明るさが規定の明るさの値になるように撮像装置12の感度補正を行なう。
 
【0024】
  制御部15は、画像メモリ51、判定基準メモリ52、および制御回路53を備えている。画像メモリ51は、画像読取装置10により読み取った画像を蓄積して記憶する。判定基準メモリ52は、紙幣Pの各種の判定の基準となる基準画像を紙幣の種類毎に予め複数記憶している。制御回路53は、撮像装置12、画像取得部14、および画像処理部16の各部を統合的に制御する。例えば、制御回路53は、撮像装置12による撮像範囲の撮像を行なうタイミングを制御する。
【0025】
  画像処理部16は、位置・傾き検出部61、位置・傾き補正部62、画像特徴量演算部63、および判定部64を備えている。  
  図14は、画像処理部16による画像処理動作を示すフローチャート、
図15は、各処理構成に対応する処理画像を示す図である。
  図示のように、画像処理部16は、制御部15の制御の下、画像取得部14から受信した画像、すなわち、撮像装置12により紙幣Pが搬送される撮像範囲(蛍光発光範囲)を連続的に撮像することにより紙幣の画像および蛍光基準部材の画像を取得する(S1)。位置、傾き検出部61は、取得した紙幣画像の境界(輪郭)、すなわち、紙幣画像の側縁(長辺、短辺)を検出し(S2)、検出した輪郭と予め記憶されている基準位置とを比較することにより、紙幣画像の位置ずれ(スライド)、および傾き(スキュー)を検出する(S3)。位置・傾き補正部62は、位置・傾き検出部61により検出した紙幣Pの位置ずれ、および傾きに応じて取得画像の位置および傾きを補正(アファイン変換)する(S4)。すなわち、位置・傾き補正部62は、取得画像中の紙幣Pの長辺(側縁PS)および短辺が基準位置と一致するように紙幣画像を補正する。
 
【0026】
  画像特徴量演算部63は、位置および傾きを補正した画像と、判定基準メモリ52に記憶されている紙葉類の各基準画像とを比較し、例えば、画像中の紙幣P上に、所定の蛍光情報EGが印刷されているかを検出する(S5)。すなわち、画像特徴量演算部63は、基準画像の各画素に比べて輝度の低い画素に対応する紙幣P上の領域は、所定の蛍光印刷が存在しないものと判定する。
  判定部64は、画像特徴量演算部63により得られた特徴量と判定基準メモリ52に記憶されている判定の基準量との比較により、蛍光印刷情報EGの有無および正しい位置にあるかを最終判定し、判定結果を出力する(S6)。  
  なお、上述した画像を取得した後の処理は、画像読取装置10で行なわれる紙幣Pの検査内容に応じて変わるものであり、上記した処理に限定されない。
【0027】
  以上のように構成された紙葉類処理装置の画像読取装置によれば、照射される励起光の出力に応じて蛍光発光を示す蛍光基準部材を、紙葉類が搬送される範囲を包含するように設置することで、紙葉類が搬送される位置および傾きの補正と、撮像装置の感度補正とを簡易な構成で実現することが可能となる。また、蛍光基準部材17を搬送機構11と干渉しない位置に配置することにより、搬送機構に影響されない紙葉類画像を取得することが可能となる。更に、撮像装置の走査速度などを鑑みた蛍光発光励起特性に基づいて蛍光基準部材の蛍光材料を選定することにより、紙葉類画像の境界をより明確に取得し、搬送される紙葉類の位置および傾き補正を高精度に実現することができる。以上により、本実施形態によれば、蛍光検知により、紙葉類の位置、傾きを検出および補正することが可能な簡易な構成の紙葉類処理装置および紙葉類処理方法を提供することができる。
【0028】
  次に、上述した画像読取装置10を備える紙葉類処理装置の一例について説明する。
  図16は、実施形態に係る紙葉類処理装置の概略構成を示す断面図である。  
  図示のように、紙葉類処理装置は、処理装置本体100と処理装置本体100を操作及び制御するための制御装置200とから構成されている。制御装置200が制御する処理装置本体100は、1台であっても、複数台であっても良い。処理装置本体100は、紙葉類としての紙幣Pを券種、正損等の種類に応じて区分し、区分した紙幣Pを種類毎に集積する区分集積装置100Aと所定数毎に紙幣Pを施封する施封装置100Bとを有している。処理装置本体100は、1つの区分集積装置100Aに対して任意の数の施封装置100Bが接続可能な構成となっている。  
  制御装置200は、処理装置本体100の制御、処理装置本体100に対する動作設定、あるいは処理装置本体100による処理データの管理などを行う。制御装置200は、例えば、パーソナルコンビュータにより構成される。制御装置200は、表示部、操作部および記憶部などを有している。
 
【0029】
  次に、処理装置本体100の内部の構成について説明する。  
  図16に示すように、処理装置本体100の区分集積装置100Aは、複数の紙幣Pが投入される投入部104を有している。投入部104には、複数の種類が混在する複数の紙幣Pが一括して投入される。投入部104は、ステージ105、バックアッププレート106)、および、取込手段としての取出しローラ110を有している。投入部104に投入された複数の紙幣Pは、ステージ105に載置され、パックアッププレート106およびバネ108によって取出しローラ110に押し付けられる。取出しローラの後段に、搬送路112が設けられている。搬送路112には、取出しローラ110により1枚ずつ取り出された紙幣Pが順に供給される。  
  搬送路112上に、前述した画像読取装置10が設けられている。上記したように、画像読取装置10は、搬送路112で搬送される紙幣Pの画像を読み取り、且つ、紙幣Pの位置および傾きを検出する鑑査装置として機能する。読取装置10は、読み取った画像に基づいて、搬送路112を搬送される紙幣Pの向きを判定する。また、画像読取装置10は、読み取った画像に基づいて、搬送路112を搬送される紙幣Pに対して後段の処理が可能か否かを判定する。
 
【0030】
  画像読取装置10の後段に延設された搬送路112上に、画像読取装置10の処理結果に基づいて紙幣Pの搬送方向を選択的に切換えるための複数のゲートG1~G9が設けられている。また、画像読取装置10の後段に搬送路112に沿って表裏反転機構(表裏反転部)134が設けられている。更に、表裏反転機構134の後端に、搬送路112に沿って複数の集積庫141~146が並んで配置されている。
  表裏反転機構134は、2組の搬送ベルト133、135により構成される。搬送ベルト133、135は、その入口から出口に向けて中心軸の回りで180°回転されたねじり搬送路を形成している。画像読取装置10により裏面と反転された紙幣Pは、表裏反転機構134へ振り分けられ、搬送ベルト133、135により表裏反転される。  
  表裏反転機構134により反転された紙幣Pおよび表裏反転機構134を通過することなく搬送される紙幣Pは、表裏を取り揃えられた状態で集積庫に送られる。送られている紙幣Pは、ゲートG5~G9により券種毎に振り分けられ、対応する集積庫141~146のいずれかに券種毎に集積される。また、送られた紙幣Pの一部は、ゲートG3により集積装置100Bに振分けられる。
【0031】
  図16に示すように、施封装置100Bは、集積庫151、集積庫152、供給部153、施封機構154、印刷機構155、帯供給部156を有している。集積庫151、152は、それぞれゲートG4を介して送り込まれた紙幣Pを集積する。各集積庫151、152には、それぞれ紙幣の有無を検知するセンサが設けられている。  
  供給部153は、集積庫151あるいは152に集積された所定枚数(例えば、100枚)の紙幣Pを施封機構154に供給する。施封機構154は、供給された100枚の紙幣束を紙帯で施封する施封機構である。印刷機構155は、施封機構154で使用する紙帯に所望の印刷データを印刷する。帯供給部156は、施封機構154に紙帯を供給する。所定枚数毎に施封された紙幣Pの束は、図示しないコンベアを介して装置外へ搬出される。  
  以上のように構成された紙葉類処理装置100によれば、画像読取装置10によって紙葉類の傾きを検出し、且つ、紙葉類の画像を読み取ることにより、紙葉類を安定して処理することが可能な紙葉類処理装置を提供することができる。  
  なお、上記した実施形態では、画像読取装置10が制御部15および画像処理部16を備えている構成としているが、これに限らず、例えば、処理装置本体100あるいは制御装置200に制御部15および画像処理部16を設ける構成としてもよい。
 
【0032】
  次に、他の実施形態に係るHDDについて説明する。以下に説明する他の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。  
(第2の実施形態)  
  
図17は、第2の実施形態に係る画像読取装置を概略的に示す側面図、
図18は、第2の実施形態に係る画像読取装置を概略的に示す斜視図である。
  図示のように、第2の実施形態によれば、画像読取装置10の搬送機構11は、一対の第1搬送ベルト対20aを有している。これらの第1搬送ベルト対20aは、搬送路に沿って互いに平行に並んで設けられているとともに、撮像装置12の撮像範囲を横切って延在している。
 
【0033】
  蛍光基準部材17は、複数、例えば、3つに分割され、第1蛍光基準部材17a、第2蛍光基準部材17b、および第3蛍光基準部材17cを有している。第1、第2、第3蛍光基準部材17a、17b、17cは、それぞれ表面に蛍光インクが塗布された石英ガラス板で構成され、それぞれ細長い平板状に形成されている。そして、第1、第2、第3蛍光基準部材17a、17b、17cは、撮像装置12の撮像範囲内で、第1搬送ベルト対20aと干渉しない位置に配設されている。すなわち、第1蛍光基準部材17aは、一対の第1搬送ベルト対20aの間で、搬送路に対向して配置されている。第2および第3蛍光基準部材17b、17cは、それぞれ第1搬送ベルト対20aの外側に外れて配置され、搬送方向Aと直交する方向に沿って第1蛍光基準部材17aと並んで配置されている。第2および第3蛍光基準部材17b、17cは、それぞれ第1搬送ベルト対20aの近傍から紙葉類Pの搬送経路範囲の外側まで延在している。すなわち、第2および第3蛍光基準部材17b、17cは、搬送される紙幣Pの両側縁PSと対向する位置に設けられている。  
  更に、第1、第2、第3蛍光基準部材17a、17b、17cは、一方の表面が搬送路と平行に対向するように、例えば、一方の表面が鉛直方向上方を向くように、配置されている。図示の例では、蛍光基準部材17は、搬送路の下方に配置されている。  
  撮像装置12および光源装置13は、前述した第1の実施形態と同様に構成されている。
【0034】
  上記のように構成された第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、搬送機構11と干渉することなく、安定して紙幣Pを撮像し、紙幣Pの画像を取得することができる。すなわち、第1、第2、第3蛍光基準部材17a、17b、17cからの蛍光発光を用いて、両側縁PSを含む紙幣Pの輪郭を撮像することができ、紙幣Pの位置および傾きを正確に検出することが可能となる。同時に、第1、第2、第3蛍光基準部材17a~17cからの蛍光発光を用いて、撮像装置12の感度補正をできるとともに、紙幣P上の蛍光インク印刷情報を読み取ることができる。これにより、取得画像に応じて、紙幣Pの位置、傾きを補正し、蛍光インク印刷情報の有無および正しい位置にあるかを容易に判定することが可能となる。  
  以上により、第2の実施形態によれば、蛍光検知により、紙葉類の位置、傾きを検出および補正することが可能な簡易な構成の紙葉類処理装置を提供することができる。
【0035】
  本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。  
  例えば、処理対象となる紙葉類は、紙幣に限らず、有価証券等の他の紙葉類にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
  10…画像読取装置、11…搬送機構、12…撮像装置、13…光源装置、  
  14…画像取得部、15…制御部、16…、画像処理部、17…蛍光基準部材、  
  17a…第1蛍光基準部材、17b…第2蛍光基準部材、17c…第3蛍光基準部材、
  20a…第1搬送ベルト対、20b…第2搬送ベルト対、P…紙葉類、PS…側縁、  
  EG…蛍光インク印刷領域