(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】橋形荷役装置
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20230417BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20230417BHJP
B66C 19/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B66C15/00 E
B66C13/48 A
B66C19/00 A
(21)【出願番号】P 2018191505
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 健
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178470(JP,A)
【文献】特開2017-178581(JP,A)
【文献】特開2017-178580(JP,A)
【文献】特開2002-234618(JP,A)
【文献】特開2001-122586(JP,A)
【文献】米国特許第04569453(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダ及びブームを有する桁と、前記桁に沿って横行するトロリと、前記トロリからワイヤによって吊り下げられた吊具と、前記トロリ及び前記吊具を動かす複数のワイヤが巻かれた複数のドラムとを備える橋形荷役装置であって、
前記ブーム
が起き上がる動作の開始時から前記起き上がる動作の終了時までの期間、あるいは、前記ブームが寝る動作の開始時から前記寝る動作の終了時までの期間に前記複数のドラムを駆動して前記吊具を目標位置へ移動させる処理部を備える橋形荷役装置。
【請求項2】
設定操作に基づき前記目標位置を設定可能な設定処理部を更に備える、
請求項1記載の橋形荷役装置。
【請求項3】
前記設定処理部は、前記吊具との干渉の可能性を有する干渉領域に前記目標位置の設定要求があった場合に、設定不可の警告を出力する、
請求項2記載の橋形荷役装置。
【請求項4】
前記目標位置には、ホッパ内、脚間の地面上方、バックリーチ範囲の地面上方、及び、前記トロリのアンカ固定位置の下方のいずれかが設定可能である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の橋形荷役装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記吊具との干渉の可能性を有する干渉領域を避けて、前記吊具を前記目標位置へ移動させる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の橋形荷役装置。
【請求項6】
前記ブームを起こす要求に基づき前記ブームを起こす起伏処理部を更に備え、
前記処理部は、前記ブームを起こす要求が入力されたときの前記吊具の位置情報に基づき、前記吊具との干渉の可能性を有する干渉領域に前記吊具が干渉すると判断した場合に、前記起伏処理部に前記ブームの起き上がりの中止を要求する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の橋形荷役装置。
【請求項7】
前記トロリが前記桁にアンカ固定されているか否かを識別する識別部を更に備え、
前記処理部は、前記目標位置が前記吊具が着床する位置であり、かつ、前記識別部がアンカ固定を検出した場合に、前記吊具を前記目標位置へ着床させる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の橋形荷役装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記目標位置が前記吊具が着床する位置であり、かつ、前記識別部がアンカ固定されていないと識別した場合に、前記吊具を前記目標位置の着床前の高さへ移動させる、
請求項7記載の橋形荷役装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記吊具を前記目標位置へ着床させる前に、前記吊具を減速させる、請求項7または請求項8に記載の橋形荷役装置。
【請求項10】
前記ブームの海側の端部に配置された海側滑車と、
前記海側滑車と前記トロリとの間で前記桁に沿って移動し、前記複数のワイヤのいずれかを支持する弛み受け台車と、
を更に備え、
前記処理部は、前記目標位置が前記吊具が着床する位置であり、前記識別部がアンカ固定されていないと識別し、かつ、前記弛み受け台車が前記ガーダ上に位置する場合に、前記吊具を前記目標位置へ着床させる、
請求項7記載の橋形荷役装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋形荷役装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、アンローダ又はコンテナクレーンなど、ブームを起伏可能な橋形荷役装置がある。このような橋形荷役装置では、ブームを水平にして荷役作業を行い、荷役作業の終了時あるいは荷役作業の中断時にブームを起こす。
【0003】
特許文献1には、ブームの起伏時にトロリ及び吊具の位置が変化することを抑制するクレーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブームを有する一般的な橋形荷役装置では、ブームを起こすのに長い時間を要する。また、通常、橋形荷役装置のオペレータは、ブームの起伏中、トロリ及び吊具の移動操作を行わない。
【0006】
一方、荷役作業の終了時あるいは中断時には、吊具を所定の位置へ移動させたいという要求がある。従来、この要求に応じるには、オペレータは、ブームを起こす操作を行った後、ブームが起きるまで待機し、その後、運転操作を行って吊具を所定の位置へ移動する必要があった。この場合、オペレータは、長い時間、吊具の操縦のために拘束されるという課題が生じる。
【0007】
本発明は、吊具の操縦のためにオペレータが長い時間拘束されることなく、荷役作業の終了時又は中断時に吊具を所定の位置へ移動できる橋形荷役装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガーダ及びブームを有する桁と、前記桁に沿って横行するトロリと、前記ト
ロリからワイヤによって吊り下げられた吊具と、前記トロリ及び前記吊具を動かす複数の
ワイヤが巻かれた複数のドラムとを備える橋形荷役装置であって、
前記ブームが起き上がる動作の開始時から前記起き上がる動作の終了時までの期間、あるいは、前記ブームが寝る動作の開始時から前記寝る動作の終了時までの期間に前記複数のドラムを駆動して前記吊具を目標位置へ移動させる処理部を備える構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吊具の操縦のためにオペレータが長い時間拘束されることなく、荷役作業の終了時又は中断時に吊具を所定の位置へ移動できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る橋形荷役装置においてブーム水平時の状態を示す図である。
【
図2】実施形態に係る橋形荷役装置においてブームの格納時の状態を示す図である。
【
図3】実施形態に係る橋形荷役装置の制御系の構成を示す図である。
【
図4】実施形態1の格納時処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】格納時処理の第1例における第1過程(a)から第3過程(c)の動作を示す説明図である。
【
図6】格納時処理の第2例における第1過程(a)から第3過程(c)の動作を示す説明図である。
【
図7】格納時処理の第3例における第1過程(a)から第3過程(c)の動作を示す説明図である。
【
図8】設定処理部により実行される目標位置設定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】目標位置設定処理を説明する図であり、(a)は設定操作の前段、(b)は設定完了時、(c)は設定不可の場合を、それぞれ示す。
【
図10】実施形態2の橋形荷役装置に設定された干渉領域を示す図である。
【
図11】実施形態2の格納時処理の手順の一部を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態2の格納時処理を説明する図であり、(a)は格納時処理の第1パターン、(b)は格納時処理の第2パターン、(c)は格納時処理の第3パターンをそれぞれ示す。
【
図13】実施形態2の格納時処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る橋形荷役装置においてブーム水平時の状態を示す図である。
図2は、実施形態に係る橋形荷役装置においてブームの格納時の状態を示す図である。
図3は、実施形態に係る橋形荷役装置の制御系の構成を示す図である。
【0012】
本実施形態の橋形荷役装置1は、例えば港湾施設で貨物船からバラ積み貨物を陸揚げするアンローダである。橋形荷役装置1は、起伏可能なブーム11及び起伏しないガーダ12を含んだ桁13と、桁13を支持する複数の脚15と、貨物が投入されるホッパ等の荷回収部17と、貨物をつかみ取るグラブバケット等の吊具21と、吊具21を吊って桁13に沿って横行するトロリ23と、オペレータが搭乗する運転室31と、機械室32とを備える。機械室32には、複数のドラム51a~51dと、これらを駆動するモータMa~Md(
図3)とが設けられている。
【0013】
本実施形態では、特に限定されないが、4つのドラム51a~51dを用いて、トロリ23の横行、吊具21の開閉、並びに、吊具21の昇降(「支持」とも言う)を行う駆動方式が採用される。複数のドラム51a~51dは、ワイヤWa~Wdの巻き取りと繰り出しとを行う(
図1及び
図3を参照)。桁13の両端には、ワイヤWa~Wdが掛けられる海側滑車18と陸側滑車19とが設けられ、桁13には、桁13に沿って移動可能な弛み受け台車25、26が組み込まれている。弛み受け台車25、26には、ワイヤWa~Wdを支える滑車が設けられている。2本のワイヤWb、Wcは、海側のドラム51b、51cから、海側滑車18、弛み受け台車25の滑車、及び、トロリ23の滑車を介して吊具21まで張られている。別の2本のワイヤWa、Wdは、陸側のドラム51a、51dから、陸側滑車19、弛み受け台車26の滑車、及び、トロリ23の滑車を介して吊具21まで張られている。各ドラム51a~51dが回転駆動されることで、ワイヤWa~Wdが巻き取り又は繰り出され、巻き取り又は繰り出しの作用と、吊具21の自重でワイヤWa~Wdが引っ張られる作用とが合わさって、トロリ23の横行、吊具21の開閉及び昇降が可能となる。
【0014】
弛み受け台車25、26は、トロリ23と海側滑車18との間、トロリ23と陸側滑車19との間で、複数のワイヤWa~Wdを支持し、複数のワイヤWa~Wdの弛みを少なくする。図示は省略するが、トロリ23と、弛み受け台車25、26とは、桁13及び弛み受け台車25、26に設けられた複数の滑車を介して別のワイヤで接続されている。そして、トロリ23の移動に伴って上記の別のワイヤが引っ張られることで、海側の弛み受け台車25は、トロリ23と海側滑車18との間のほぼ半分の位置に配置され、陸側の弛み受け台車26は、トロリ23と陸側滑車19との間のほぼ半分の位置に配置される。
【0015】
桁13には、トロリ23を固定できる複数のアンカ固定部を有する。オペレータは、トロリ23をアンカ固定部まで移動させ、かつ、ピンなどの固定具を用いてアンカ固定部とトロリ23のアンカ孔23fとを連結することで、トロリ23を桁13に固定できる。固定具を用いたトロリ23の固定をアンカ固定と呼ぶ。トロリ23には、アンカ固定されているか否かを検出するアンカ検出部24(
図3を参照)が設けられている。アンカ検出部24は、本発明に係る識別部の一例に相当する。
【0016】
複数の脚15は、海側と陸側とで桁13の両側(
図1の紙面垂直方向の両側)に配置されている。陸側の2本の脚15は梁16を介して下部が連結されている。吊具21が梁の高さまで降下すると、吊具21と梁16とが干渉する。複数の脚15には、陸上のレールを走行可能な走行装置が設けられ、これにより橋形荷役装置1を岸壁に沿った方向(
図1の紙面垂直方向)に移動することができる。
【0017】
ブーム11は、ブーム11の起伏専用に設けられたブーム駆動装置53(
図3)によってヒンジ部11hを中心に回動し、起伏される。ブーム11は、荷役作業中には水平にされ、荷役作業の終了時又は中断時には格納位置まで起こされる。ブーム11のヒンジ部11hの周辺には曲げ用滑車Gが設けられ、
図2に示すように、ブーム11が起きたときに曲げ用滑車GにワイヤWb、Wcが掛けられて、ブーム11に沿ったワイヤWb、Wcの経路が維持される。
【0018】
図3に示すように、機械室32には、複数のドラム51a~51d及び複数のモータMa~Mdに加え、モータMa~Mdを駆動する駆動回路52と、ブーム11の起伏するブーム駆動装置53とが設けられる。
【0019】
運転室31には、橋形荷役装置1の駆動制御を行う制御装置60が設けられている。制御装置60は、演算装置71と、オペレータに情報を出力する表示部61と、オペレータが運転操作等を行う操作部62と、各種信号が入出力されるI/O67とを備える。なお、表示部61と操作部62とが運転室31に設けられ、制御装置60の残りの構成要素が機械室32等のその他の部位に設けられていてもよい。
【0020】
操作部62には、吊具21及びトロリ23を操縦するための運転レバー63と、ブーム11を起伏させるブーム起伏スイッチ64と、後述する目標位置の設定に使用される目標設定ボタン65とが含まれる。ブーム起伏スイッチ64及び目標設定ボタン65は、例えば表示パネル上に設けられたタッチパネルにより、表示スイッチ又は表示ボタンとして設けられてもよい。
【0021】
I/O67には、駆動回路52及びブーム駆動装置53が接続されており、制御装置60からの制御信号に基づいてブーム駆動装置53及び駆動回路52を動かすことができる。また、I/O67には、駆動回路52及びブーム駆動装置53から駆動量及び駆動方向を示す信号が入力され、制御装置60はこれらの信号に基づいてブーム11の起伏位置、吊具21及びトロリ23の動作位置を求めることができる。さらに、I/O67には、アンカ検出部24から検出信号が入力され、制御装置60はこの検出信号に基づいて、トロリ23がアンカ固定されているか否かを識別できる。
【0022】
演算装置71は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラム及び制御データを格納した記憶装置、及び、CPUがデータを展開するメモリを備える。演算装置71は、CPUが制御プログラムを実行することで、複数の機能モジュールを実現する。複数の機能モジュールには、運転レバー63の操作に応じて複数のドラム51a~51dを駆動する運転処理部72と、ブーム起伏スイッチ64の操作に応じてブーム駆動装置53を駆動してブーム11を起伏させる起伏処理部73と、ブーム11の格納時に吊具21を所定の目標位置へ移動させる格納時処理部74と、格納時の吊具21の目標位置を設定する設定処理部75と、吊具21の干渉領域R1を記憶する干渉領域記憶部76とが含まれる。格納時処理部74は、本発明に係る処理部の一例に相当する。
【0023】
図1及び
図2に示すように、橋形荷役装置1には、吊具21と干渉の可能性のある干渉領域R1が定められる。
図1及び
図2の干渉領域R1には、例えば、荷回収部17の側面近傍及び底面近傍、荷回収部17の下方、梁16の近傍、及び、地面近傍の各範囲が含まれる。干渉領域記憶部76には、例えば桁13に沿った横行位置及び高さのデータとして、干渉領域R1が記憶されている。
【0024】
上記のように構成された橋形荷役装置1においては、荷役作業を開始する際、オペレータは、運転室31においてブーム起伏スイッチ64を操作して、ブーム11を待機位置から水平位置まで寝かせる。そして、ブーム11が水平位置に寝た状態で、オペレータが運転レバー63を操作して、吊具21の横行、昇降及び開閉を行い、貨物船の船倉から荷を陸揚げすることができる。また、荷役作業の終了時、あるいは、荷役作業の中断時(例えば貨物船内の船倉を変更する際など)には、オペレータは、ブーム起伏スイッチ64を操作して、ブーム11を水平位置から待機位置まで起こす。ブーム11が水平位置から待機位置まで起き上がる際、ブーム11の回動に連動して、格納時処理部74は後述する格納時処理を実行し、吊具21を予め定められた目標位置まで自動的に移動させる。
【0025】
ブーム11が起き上る際、例えば水平位置にあるときと、或る角度θまで起きたときとを比較すると、海側滑車18と曲げ用滑車Gとの間の距離が短くなる。このため、仮に、ドラム51a~51dを静止させたままでブーム11を或る角度θまで起こすと、ブーム11を起こさずに海側のドラム51b、51cからワイヤWb、Wcを或る量Le繰り出すのと同じだけ、トロリ23の横行と吊具21の昇降とが生じる。この繰り出し量Leは、角度θの関数であり、以下では、「仮想繰り出し量Le(θ)」と記す。ブーム11の格納位置を角度θmaxとすれば、ブーム11を水平位置から格納位置まで起こしたときの、仮想繰り出し量の総量は、Le(θmax)となる。このため、ドラム51a~51dを停止したまま、ブーム11を水平位置から格納位置まで起こすと、仮想繰り出し量Le(θmax)の作用により、トロリ23は陸側へ所定の長さ横行し、吊具21は所定の長さ下降する。格納時処理部74は、海側のワイヤWb、Wcの仮想繰り出し量Le(θ)の作用を組み込んだ制御により、ブーム11の回動に連動して、吊具21を目標位置まで移動する。続いて、格納時処理についてフローチャートと説明図とを参照して説明する。
【0026】
<格納時処理1>
図4は、実施形態1の格納時処理の手順を示すフローチャートである。
図5(a)~
図5(c)は、格納時処理の第1例における第1過程から第3過程の動きを示す説明図である。第1例は、荷回収部17の内方に吊具21の目標位置Dが設定され、干渉領域R1の妨げなく、吊具21を目標位置Dまで移動できる場合を示している。
【0027】
格納時処理部74には、上述した仮想繰り出し量Le(θ)を、微小角度Δθごとに分割した補正繰出し量ΔLe(θn)のデータが、予め与えられている。ここで、ΔLe(θn)=Le(θn+Δθ)-Le(θn)、θn=Δθ×n、nは自然数である。格納時処理部74は、ブーム11が起伏角度θiから起伏角度θi+1に移動する間、海側のドラム51b、51cにワイヤWb、Wcを補正繰出し量ΔLe(θi)だけ余分に巻き取る補正処理を行うことで、ブーム11が固定しているときの制御と同等に、吊具21及びトロリ23の位置を制御できる。
【0028】
ブーム11を起こす操作がされて、起伏処理部73によりブーム11の起伏処理が開始されると、これに並行して、格納時処理部74により
図4の格納時処理が開始される。格納時処理が開始されると、先ず、格納時処理部74は、その時点におけるモータMa~Mdの駆動量から現在の吊具21の位置を始端点として求める(ステップS1)。さらに、格納時処理部74は、予め設定されている目標位置D(
図5(a))を吊具21の終端点として読み込む(ステップS2)。そして、格納時処理部74は、吊具21が始端点で何かに干渉する恐れがあるか判別し(ステップS3)、恐れなければ、始端点から終端点までを結ぶ通常経路に、干渉領域R1が重なるか否かを判別する(ステップS4)。ステップS3については格納時処理3で詳述する。ステップS4の通常経路とは、例えば直線、あるいは、ブーム11を起こす際にドラム51a~51dをほぼ等速駆動した場合に吊具21が移動する経路に相当する。
【0029】
その結果、通常経路に干渉領域R1が重ならなければ、格納時処理部74は、吊具21の移動経路として通常経路を採用する(ステップS5)。そして、格納時処理部74は、ブーム11の回動に連動して、採用された移動経路で吊具21を移動させるように、仮想繰り出し量Le(θ)の作用を組み込んで、モータMa~Mdの駆動量を計算する(ステップS7、S8)。
【0030】
モータMa~Mdの駆動量の計算方法としては、特に限定されるものではないが、一例として、次のような方法を採用できる。すなわち、先ず、格納時処理部74は、仮にブーム11が固定のときに、吊具21を始端点から終端点まで移動するのに必要なドラム51a~51dの総合の駆動量を計算し、この総合の駆動量が、ブーム11が水平位置から待機位置へ起き上がる期間に達成されるように、総合の駆動量を所定の制御サイクルごとの駆動量に分割する(ステップS7)。さらに、格納時処理部74は、このように計算された制御サイクル毎の駆動量に、ブーム11の起伏角度に応じた補正繰出し量ΔLe(θ)の駆動量を減じる補正を行う(ステップS8)。ブーム11の回動速度は毎回同じであり、所定の制御サイクルごとのブーム11の起伏角度の変化は既知である。このため、ステップS8では、格納時処理部74は、この起伏角度の変化に対応した補正繰出し量ΔLe(θ)を計算し、これに相当する駆動量を減じればよい。このような計算方法により、モータMa~Mdの制御サイクル毎の駆動量が計算される。
【0031】
続いて、格納時処理部74は、制御サイクル毎に、補正された駆動量で、モータMa~Mdを駆動する(ステップS9)。これにより、
図5(a)、
図5(b)に示すように、ブーム11が水平位置から低速で起き上がるのに伴って、吊具21が荷回収部17の内方へ向かって進む。そして、
図5(c)に示すように、ブーム11が格納位置に到達して停止したときに、吊具21が荷回収部17内の目標位置Dに到達して停止する。
【0032】
<格納時処理2>
図6(a)~
図6(c)は、格納時処理の第2例における第1過程から第3過程の動作を示す説明図である。第2例は、バックリーチの下方位置に吊具21の目標位置Dが設定され、吊具21を通常経路で目標位置Dまで移動すると途中で干渉領域R1が妨げとなる場合を示している。
【0033】
ブーム11を起こす操作がされて、
図4の格納時処理が開始され、上述したように、ステップS1~S4へと処理が進むと、吊具21の始端点と終端点(目標位置D)とを結ぶ通常経路に干渉領域R1が重なるか否かが判別される。そして、
図6(a)の場合、ステップS4の判別処理で干渉領域R1と重なる(YES)と判別される。
【0034】
ステップS4の判別処理でYESと判別されると、格納時処理部74は、干渉領域R1を避けて目標位置Dまで移動できる経路を作成し、これを吊具21の移動経路として採用する(ステップS6)。例えば、
図6(a)の例では、吊具21が干渉領域R1のうち梁16の部分に干渉するので、格納時処理部74は、吊具21の上昇と、トロリ23の横行と、吊具21の下降とを合わせて、干渉領域R1に重ならない経路P1~P3を作成する。経路P1~P3は、例えば所定の余裕量を持って干渉領域R1と重ならない最短経路として求めることができる。
【0035】
そして、格納時処理部74は、ブーム11の回動に連動して、採用された移動経路で吊具21が移動するように、仮想繰り出し量Le(θ)の作用を組み込んで、モータMa~Mdの駆動量を計算する(ステップS7、S8)。
【0036】
モータMa~Mdの駆動量の計算方法は、特に制限されないが、一例として、次のような方法を採用できる。すなわち、先ず、格納時処理部74は、仮にブーム11が固定のときに、吊具21を各経路P1、P2、P3で移動するのに必要な、経路P1、P2、P3ごとのドラム51a~51dの駆動量を計算し、これらの駆動が、ブーム11が水平位置から待機位置へ起き上がる期間に達成されるように、制御サイクルごとの駆動量を計算する(ステップS7)。さらに、格納時処理部74は、このように計算された制御サイクルごとの駆動量に、ブーム11の起伏角度に応じた補正繰出し量ΔLe(θ)の駆動量を減じる補正を行う(ステップS8)。このような計算方法により、ブーム11の回動に連動して吊具21を経路P1、P2、P3で移動させる制御サイクルごとのモータMa~Mdの駆動量が計算される。
【0037】
続いて、格納時処理部74は、制御サイクル毎に、補正された駆動量で、モータMa~Mdを駆動する(ステップS9)。これにより、
図6(a)、
図6(b)に示すように、ブーム11が水平位置から低速で起き上がるのに伴って、吊具21が干渉領域R1を避けた経路P1、P2、P3に沿って進む。そして、
図6(c)に示すように、ブーム11が格納位置に到達して停止したときに、吊具21がバックリーチ下方の目標位置Dに到達して停止することになる。
【0038】
<格納時処理3>
図7(a)~
図7(c)は、格納時処理の第3例における第1過程から第3過程の動作を示す説明図である。第3例は、ブーム11を起こす操作時に吊具21が何かに干渉する恐れがある場合を示している。
【0039】
ブーム11を起こす操作がされて、
図4の格納時処理が開始され、上述のようにステップS1~S3へと処理が進むと、ステップS3で、格納時処理部74は、吊具21が始端点で何かに干渉する恐れがあるか否かを判別する。そして、
図7(a)に示すように、始端点が干渉の恐れある場合に、ステップS3の判別処理でYESと判別される。
【0040】
吊具21が始端点で何かに干渉する恐れがある場合とは、例えば、始端点の位置情報に基づき、始端点が干渉領域R1と重なる場合、あるいは、始端点が、荷回収部17の下方などの特に干渉の恐れが高い特定領域R2と重なる場合などである。特定領域R2は、予めユーザ又はメーカの設定員が設定し、そのデータを干渉領域記憶部76に記憶しておけばよい。
【0041】
ステップS3の判別処理でYESと判別されると、格納時処理部74は、起伏処理部73にブーム11を起こす駆動を停止するよう要求する(ステップS10)。起伏処理部73は、この要求によりブーム駆動装置53を停止して、ブーム11の駆動が停止される。さらに、格納時処理部74は、
図7(b)に示すように、表示部61から吊具21の干渉の恐れによりブーム11の起伏ができない旨の警告出力を行う(ステップS11)。そして、格納時処理部74は格納時処理を終了し、起伏処理部73はブーム11の駆動制御を終了する。
【0042】
この場合、オペレータは、警告出力により、吊具21の位置が理由で、ブーム11を起こすことができないことを認識できる。そして、オペレータは、
図7(c)に示すように、吊具21を干渉の恐れない位置に移動し、再度、ブーム起伏スイッチ64を操作することで、ブーム11を待機位置まで起こすことが可能となる。
【0043】
<目標位置設定処理>
図8は、設定処理部により実行される目標位置設定処理の手順を示すフローチャートである。
図9(a)~
図9(c)は、目標位置設定処理を説明する図であり、
図9(a)は設定操作の前段、
図9(b)は設定完了時、
図9(c)は設定不可の場合を、それぞれ示す。
【0044】
上述した吊具21の目標位置は、オペレータの操作によって、任意の位置に設定可能である。目標位置を設定するには、先ず、オペレータは、
図9(a)に示すように、吊具21及びトロリ23の操縦を行って、予定とする目標位置D0に吊具21を移動する。そして、オペレータは、目標設定ボタン65を操作する。すると、設定処理部75が目標位置設定処理(
図8)を開始する。
【0045】
目標位置設定処理が開始されると、設定処理部75は、その時点におけるモータMa~Mdの駆動量から現在の吊具21の位置を計算する(ステップS21)。続いて、設定処理部75は、計算された吊具21の位置と、干渉領域記憶部76に記憶されている干渉領域R1とが重なるか否かを判別する(ステップS22)。その結果、
図9(b)に示すように、干渉領域R1との重なりがなければ、設定処理部75は、計算された吊具21の位置を、目標位置として設定して、格納時処理部74に目標位置のデータを渡す(ステップS23)。
【0046】
一方、
図9(c)に示すように、吊具21の位置と干渉領域R1との重なりがあれば、設定処理部75は、表示部61から干渉領域R1には目標位置を設定できない旨の警告を出力し(ステップS24)、目標位置の設定を行わずに、目標位置設定処理を終了する。
【0047】
このような目標位置設定処理により、オペレータは、格納時処理で吊具21が移動される目標位置を、干渉領域R1を除く任意の位置に設定することができる。例えば、荷回収部17の側面及び底面、荷回収部17の下方、地面、及び、梁16などに、干渉領域R1が設定されるので、設定処理部75は、荷回収部17内、脚15間の地面上方、バックリーチ範囲の地面上方、トロリ23のアンカ固定部の下方などに、吊具21の目標位置を設定することができる。
【0048】
<実施形態効果>
以上のように、実施形態1の橋形荷役装置1によれば、ブーム11が起き上がる期間に、複数のドラム51a~51dを駆動して、吊具21を目標位置へ移動させる格納時処理部74を備える。したがって、吊具21の操縦のためにオペレータが長い時間拘束されることなく、荷役作業の終了時又は中断時に、ブーム11を待機位置へ移動させる操作を行うだけで、ブーム11の回動に連動させて吊具21を目標位置へ移動できる。
【0049】
さらに、実施形態1の橋形荷役装置1によれば、目標設定ボタン65の操作に基づき吊具21の目標位置を設定可能な設定処理部75を備える。したがって、オペレータは、ブーム11を待機位置へ移動させる際に、吊具21が自動的に移動する目標位置を所望の箇所に設定できる。
【0050】
さらに、実施形態1の橋形荷役装置1によれば、吊具21と干渉する恐れのある干渉領域R1に目標位置の設定要求が合った場合には、設定処理部75が、設定不可の警告を出力する。これにより、吊具21の目標位置として、不適切な位置が設定されてしまうことを抑制できる。
【0051】
さらに、実施形態1の橋形荷役装置1によれば、ブーム11を待機位置へ移動させる際に吊具21が自動的に移動する目標位置として、ホッパなどの荷回収部17内、脚15間の地面上方、バックリーチ範囲の地面上方、及び、トロリ23のアンカ固定位置の下方などを設定できる。これにより、格納時処理において、荷役の終了時又は中断時に適した位置に、吊具21を自動的に移動することができ、荷役の再開時にも速やかに荷役作業を開始できる。
【0052】
さらに、実施形態1の橋形荷役装置1によれば、格納時処理部74は、格納時処理において、通常経路では吊具21が干渉領域R1を通過するような場合に、干渉領域R1を避ける経路で吊具21を目標位置まで移動させる。したがって、格納時処理における吊具21の始端点の位置の制限を少なくできる。
【0053】
さらに、実施形態1の橋形荷役装置1によれば、格納時処理部74は、格納時処理において、ブーム11を起こす際に、吊具21が干渉領域R1又は特定領域R2にあったときに、ブーム駆動装置53にブーム11を起こすことを中止させる。したがって、ブーム11を格納位置へ移動させる際に、吊具21が何かと干渉してしまうことを抑制できる。
【0054】
(実施形態2)
前述の実施形態1では、干渉領域R1に、荷回収部17の底面近傍と地面近傍とが含まれ、吊具21の目標位置が、吊具21が着床しない位置に制限されていた。これは、ブーム11が起き上った状態で、吊具21を着床させると、着床によりワイヤWa~Wdが弛み、桁13に沿ったトロリ23の固定に緩みが生じるためである。トロリ23の固定に緩みが生じると、トロリ23と一緒にブーム11上の弛み受け台車25が移動して、ワイヤWb、Wcが外れてしまう恐れ、あるいは、ブーム11上の弛み受け台車25の自重により、トロリ23と陸側の弛み受け台車26とが桁13に沿って大きく移動してしまう恐れが生じる。
【0055】
一方、トロリ23が桁13にアンカ固定されている場合、吊具21が着床しても、トロリ23は動くことがなく、トロリ23と別のワイヤで接続されている弛み受け台車25、26も、トロリ23が固定されていることで、移動しない。このため、上記のような恐れが生じない。
【0056】
そこで、実施形態2の橋形荷役装置1では、目標位置設定処理と格納時処理とが、トロリ23がアンカ固定されている場合に対応した処理に変更される。続いて、実施形態2の目標位置設定処理と格納時処理について、詳細に説明する。
【0057】
<目標位置設定処理>
図10は、実施形態2の橋形荷役装置1に設定された干渉領域を示す図である。
【0058】
実施形態2の干渉領域R11には、荷回収部17の底面、脚15間の地面、バックリーチ範囲の地面など、干渉領域R11に吊具21が着床する高さが含まれない。実施形態2の干渉領域記憶部76(
図3)には、このような干渉領域R11を表わすデータが記憶されている。
【0059】
実施形態2の設定処理部75は、実施形態1と同様の目標位置設定処理(
図8)を実行する。ただし、目標位置が干渉領域と重なるか否かの判別処理(ステップS22)は、実施形態2の干渉領域R11に基づいて行われる。このような目標位置設定処理より、吊具21が着床する高さを含めて、オペレータは、吊具21の目標位置を設定することができる。
【0060】
なお、吊具21が着床する高さを目標位置に設定する場合には、吊具21を実際に着床させた状態で、目標設定ボタン65を操作する方法だけでなく、別の方法を併せて採用してもよい。例えば、吊具21を着床前の位置に移動させた状態で、目標設定ボタン65を操作し、かつ、オペレータが、吊具21が着床する目標高さを数値入力することで、目標位置として吊具21が着床する位置を設定できるように構成してもよい。吊具21を着床する操縦は、単なる横行及び昇降の操縦よりも煩雑であるため、目標高さを数値入力する方法により、目標位置の設定時に煩雑な着床の操縦が不要となるという効果が得られる。
【0061】
<格納時移動処理>
図11は、実施形態2の格納時処理の手順の一部を示すフローチャートである。
図12(a)~
図12(c)は、実施形態2の格納時処理の第1パターン~第3パターンを示す説明図である。
【0062】
実施形態2の格納時処理では、実施形態1の格納時処理(
図4)のステップS3とステップS4との間に、
図11のステップS31~S37が追加されている。続いて、追加されたステップについて詳細に説明する。
【0063】
ブーム起伏スイッチ64により、格納時処理が実行されて、ステップS3の判別処理で、始端位置が干渉の恐れ無しと判別されると、続いて、格納時処理部74は、吊具21の目標位置が、着床する高さであるか否かを判別する(ステップS31)。そして、着床する高さでなければ、そのまま、処理がステップS4に移行され、実施形態1で示した格納時処理が実行される。
【0064】
一方、着床する高さである場合には、格納時処理部74は、トロリ23がアンカ固定されているか否かを判別し(ステップS32)、アンカ固定されていなければ、終端点として目標位置の着床前段の高さを設定する(ステップS33)。そして、終端点が設定されたら、処理がステップS4に移行され、実施形態1で示した格納時処理が実行される。
【0065】
このような制御によれば、
図12(a)に示すように、ブーム11が立ち上がるのに伴って、トロリ23及び吊具21が干渉領域R11に重なることなく移動する。そして、ブーム11が格納位置まで起き上った段階で、吊具21が目標位置の着床の前段の高さで停止する。オペレータは、その後、吊具21を着床させたい場合には、トロリ23をアンカ固定し、運転レバー63を操作して、吊具21を着床させる操縦のみ行うことで、当初の目標位置へ吊具21を着床させることができる。なお、ステップS33において、海側滑車18とトロリ23との間に位置する弛み受け台車25がガーダ12上に位置する場合には、格納時処理部74は、終端点として着床高さの目標位置を設定してもよい。格納時処理部74は、例えば、ブーム11が水平時のトロリ23の横行位置から弛み受け台車25の位置を推定してもよい。また、格納時処理部74は、近接スイッチ等の検出結果から弛み受け台車25の位置を取得してもよい。
【0066】
一方、ステップS32の判別処理でアンカ固定されていると判別された場合、格納時処理部74は、続いて、トロリ23が目標位置の上方にあるか否かを判別し(ステップS34)、YESであれば、終端点として着床高さの目標位置を設定する(ステップS35)。そして、終端点が設定されたら、処理がステップS4に移行され、実施形態1で示した格納時処理が実行される。
【0067】
このような制御によれば、
図12(b)に示すように、ブーム11が立ち上がるのに伴って、トロリ23の位置が保持されたまま、吊具21が下降する。そして、ブーム11が格納位置まで起き上がった段階で、吊具21が目標位置に設定された着床位置で停止する。
【0068】
ステップS34の判別処理で、アンカ固定されたトロリ23が目標位置の上方から外れた位置にあると判別されたら、先ず、格納時処理部74は、起伏処理部73にブーム11を起こす駆動を停止するよう要求する(ステップS36)。さらに、格納時処理部74は、トロリ23が目標位置から外れた位置にアンカ固定されている旨の警告を表示部61から出力する(ステップS37)。そして、格納時処理を終了する。
【0069】
このような制御によれば、
図12(c)に示すように、トロリ23がアンカ固定されていて、吊具21を目標位置に移動できない状態のときは、ブーム起伏スイッチ64が操作されても、ブーム11の回動が制止される。さらに、オペレータは、警告出力により、トロリ23のアンカ固定の位置を修正したり、あるいは、アンカ固定を解除したりして、ブーム11の起伏操作をやり直すことができる。
【0070】
図13は、実施形態2の格納時処理の変形例を示すフローチャートである。
図13は、実施形態2の格納時処理におけるステップS5、S6(
図4を参照)の後のステップを示している。
【0071】
変形例の格納時処理では、格納時処理部74は、移動経路に合わせた各制御サイクルのモータMa~Mdの駆動量を計算する前に、終端点が着床高さか否かを判別する(ステップS41)。その結果、着床高さであれば、吊具21が着床する際に、吊具21の速度が低くなるように駆動量を計算する(ステップS7a)。一方、着床高さでなければ、実施形態1と同様に駆動量を計算する(ステップS7)。そして、格納時処理部74は、実施形態1で説明したようにステップS8、S9の処理を実行する。
【0072】
変形例の格納時処理により、目標位置が着床の高さであり、ブーム11の回動に併せて吊具21を着床させる場合に、着床時に吊具21を減速し、着床持の衝撃を抑制することができる。
【0073】
なお、ブーム11を格納位置から水平位置へ寝かせる起伏操作の際にも、ブーム11の回動に連動させて吊具21を所定位置へ移動させる制御を行ってもよい。その際、ブーム11の回動開始時に吊具21が着床しており、かつ、トロリ23がアンカ固定されている場合には、ブーム11の回動に連動させて吊具21を地切り(地面から離間させる)させ、吊具21を目的位置まで移動させるように制御してもよい。一方、ブーム11の回動開始時に吊具21が着床しており、かつ、トロリ23がアンカ固定されていない場合には、警告を出力してブーム11の回動を制止するように制御してもよい。また、吊具21を地切りさせる際には、地切り後よりも吊具21を減速させる制御が併用されてもよい。
【0074】
<実施形態効果>
以上のように、実施形態2の橋形荷役装置1によれば、トロリ23がアンカ固定されているか否かを検出するアンカ検出部24(例えば近接センサなど)を備え、格納時処理部74は、目標位置が吊具21の着床高さであり、アンカ検出部24がアンカ固定を検出した場合に、吊具21を目標位置の着床する高さへ移動させる。したがって、格納時処理において、吊具21の目標位置として、吊具21が着床する高さを採用でき、かつ、吊具21の着床により不都合が生じない場合に制限して、吊具21を目標位置に着床することができる。吊具21の着床により生じる不都合には、例えば、着床によりワイヤWa~Wdが緩むことで、弛み受け台車25の自重により、弛み受け台車25、26及び吊具21が大きく移動する恐れ、あるいは、ワイヤWb、Wcが弛み受け台車25から外れてしまう恐れなどが含まれる。
【0075】
さらに、実施形態2の橋形荷役装置1によれば、目標位置が、吊具21が着床する高さに設定されている場合でも、アンカ検出部24がアンカ固定を検出しない場合には、格納時処理部74は、ブーム11が格納位置へ移動するのに連動させて、吊具21を目標位置の着床の前段の高さまで移動させる。したがって、格納時処理において、吊具21が着床することで不都合が生じてしまうことを抑制することができ、かつ、目標位置が着床の高さに設定されている場合に、吊具21を目標位置の近くまで移動させることができる。
【0076】
さらに、実施形態2の変形例の格納時処理(
図13)によれば、格納時処理部74は、吊具21を目標位置へ着床させる場合に、着床の際に吊具21が低速度になるようにドラム51a~51dの駆動量を制御する。これにより、吊具21の着床時に生じる衝撃を小さくできる。
【0077】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、本発明に係る橋形荷役装置は、アンローダに限られず、例えばコンテナクレーンなど、起伏可能なブームを有する橋形の荷役装置であれば、様々な種類の荷役装置が含まれる。同様に、本発明に係る吊具は、グラブバケットに限られず、例えばスプレッダなどの様々な吊具が適用されてもよい。また、上記実施形態では、4つのドラム51a~51dの駆動により、トロリの横行と吊具の昇降及び開閉を行う構成を示したが、4つ以上のドラムの駆動により、トロリの横行と吊具の昇降及び開閉を行う構成が採用されてもよい。また、上記実施形態では、トロリのアンカ固定の有無を識別する識別部として、近接センサなどのアンカ検出部を示したが、本発明に係る識別部としては、例えばオペレータにアンカ固定を確認する処理部など、様々な方法でアンカ固定の有無を識別する手段が採用されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 橋形荷役装置
11 ブーム
12 ガーダ
13 桁
15 脚
16 梁
17 荷回収部
18 海側滑車
19 陸側滑車
21 吊具
23 トロリ
24 アンカ検出部
25、26 弛み受け台車
51a~51d ドラム
52 駆動回路
53 ブーム駆動装置
60 制御装置
61 表示部
62 操作部
63 運転レバー
64 ブーム起伏スイッチ
65 目標設定ボタン
72 運転処理部
73 起伏処理部
74 格納時処理部
75 設定処理部
76 干渉領域記憶部
D 目標位置
G 曲げ用滑車
R1、R11 干渉領域
R2 特定領域
Wa~Wd ワイヤ