(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20230417BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20230417BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230417BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F04B39/00 106A
F04B39/12 J
H02K11/33
H02K7/14 B
(21)【出願番号】P 2018203747
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岡倉 裕暁
(72)【発明者】
【氏名】塚越 貞光
(72)【発明者】
【氏名】井澤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】オーギュスタン ベル
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214340(JP,A)
【文献】特開2009-281250(JP,A)
【文献】特開2010-013979(JP,A)
【文献】特開2005-054716(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0038088(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
H02K 11/33
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構を駆動する電動機を収容するモータハウジングと、このモータハウジングの軸方向の一端側に対峙し、前記電動機に給電するインバータ回路部を備えた制御基板を収容するインバータハウジングと、を備え、それぞれのハウジングは互いに対峙する端部に壁部を有しているとともに、この壁部を対峙させて組付けられる電動圧縮機において、
前記モータハウジングの外部から前記電動機が収容される前記モータハウジングの内部空間への給電を可能とするための中継ターミナルを、前記モータハウジングの前記壁部に固定し、
前記制御基板に接続されるインバータ側コネクタを、前記インバータハウジング内で前記制御基板に電気的に接続させ、前記制御基板とは前記インバータハウジングの壁部を隔てて配置すると共に前記中継ターミナルに対向するように配置したことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記インバータハウジングの前記壁部に凹部を設け、前記インバータ側コネクタは、前記凹部に収容して保持されることを特徴とする請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記インバータ側コネクタは、前記制御基板に電気的に接続可能なバスバーが一体化されると共に
前記中継ターミナルのターミナルピンが圧入可能なレセプタクルを収容ケースに収容して構成され、前記収容ケースを前記インバータハウジングの壁部によって支持し、前記収容ケース及び前記インバータハウジングの壁部から突出させた前記バスバーを前記制御基板に接続させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記インバータ側コネクタは、前記制御基板に電気的に接続可能なバスバーが一体化されると共に
前記中継ターミナルのターミナルピンが圧入可能なレセプタクルによって構成され、このレセプタクルを前記凹部に収容すると共に前記インバータハウジングの壁部によって支持し、前記インバータハウジングの壁部から突出させた前記バスバーを前記制御基板に接続させることを特徴とする請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記インバータ側コネクタは、リード線が一体化されると共に
前記中継ターミナルのターミナルピンが圧入可能なレセプタクルを収容ケースに収容して構成され、前記収容ケースを前記インバータハウジングの壁部によって支持し、前記収容ケース及び前記インバータハウジングの壁部から引き出された前記リード線を前記制御基板に接続させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機構を駆動する電動機を少なくとも収容するモータハウジングと、電動機に給電するインバータ回路部を備えた制御基板を収容するインバータハウジングと、を有し、電動機とインバータ回路部と電気的に接続するに当たり、モータハウジングに固定された中継ターミナルのターミナルピンを、制御基板に接続されたインバータ側コネクタクに圧入するインバータ一体型の電動圧縮機に関し、特に、インバータハウジング内に取り付けられる制御基板の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ一体型の電動圧縮機においては、ハウジング内に、作動流体を圧縮する圧縮機構と、この圧縮機構を駆動させる電動機と、この電動機に給電するインバータ回路部とが収容されている。通常、インバータ回路部は、圧縮機構や電動機を収容するハウジング内の空間とは別の空間に配設され、電力スイッチング素子を制御する制御回路が実装された制御基板を備えている。
また、インバータ回路部は、冷却する必要から圧縮機構や電動機を収容するモータハウジングに隣接して設けるようにしている。
【0003】
そして、電動機とインバータ回路部とは、電動機に電気的に接続されると共にモータハウジングに固定された中継ターミナル(ハーメチック端子)のターミナルピンを、制御基板上に設けられたインバータ側コネクタクに接続することで電気的に接続するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第2014-038088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、中継ターミナルは、電動機側コネクタに予め接続した上で、モータハウジングに固定され、インバータを組み付ける際に、中継ターミナルのターミナルピンを制御基板に接続されるインバータ側コネクタに圧入する。中継ターミナルのターミナルピンとインバータ側コネクタとの接続を、制御基板をインバータハウジングに収容する前に行う場合、中継ターミナルをインバータ側コネクタに挿入したのちに、インバータ側コネクタと制御基板を電気的に接続する必要が生じるため、インバータ回路部を内蔵したモジュール部品としてインバータハウジングを取り扱えないという点で不都合がある。
【0006】
一方、制御基板をインバータハウジングに予め組み付けてユニット化した後に、インバータハウジングをモータハウジングに組み付けることで中継ターミナルのターミナルピンをインバータ側コネクタに圧入する場合には、ターミナルピンをインバータ側コネクタに圧入する際の圧入荷重が、既にインバータ側コネクタと接続されている制御基板にも伝わってしまい、制御基板の過度の変形や破損を招く恐れがある。
【0007】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、インバータハウジングをモータハウジングに組み付けることで中継ターミナルのターミナルピンをインバータ側コネクタに圧入する場合に、制御基板の過度の変形や破損を確実に回避することが可能な電動圧縮機を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る電動圧縮機は、圧縮機構を駆動する電動機を収容するモータハウジングと、このモータハウジングの軸方向の一端側に対峙し、前記電動機に給電するインバータ回路部を備えた制御基板を収容するインバータハウジングと、を備え、それぞれのハウジングは互いに対峙する端部に壁部を有しているとともに、この壁部を対峙させて組付けられる電動圧縮機において、前記モータハウジングの外部から前記電動機が収容される前記モータハウジングの内部空間への給電を可能とするための中継ターミナルを、前記モータハウジングの前記壁部に固定し、前記制御基板に接続されるインバータ側コネクタを、前記インバータハウジング内で前記制御基板に電気的に接続させ、前記制御基板とは前記インバータハウジングの壁部を隔てて配置すると共に前記中継ターミナルに対向するように配置したことを特徴としている。
【0009】
したがって、モータハウジングの外部から電動機への給電を可能とするための中継ターミナルを、モータハウジングの壁部に固定し、制御基板に接続されたインバータ側コネクタを、インバータハウジング内で制御基板に電気的に接続させ、制御基板とはインバータハウジングの壁部を隔てて配置すると共に中継ターミナルに対向するように配置したので、インバータハウジングとモータハウジングの互いに対峙する壁部を組み付けることでモータハウジングに固定された中継ターミナルがインバータ側コネクタに接続されるとともに、ターミナルピンをインバータ側コネクタに圧入する際にインバータ側コネクタが受けるターミナルピンの圧入荷重をインバータハウジングの壁部で受けることが可能となり、この圧入荷重が制御基板に直接伝達されることを回避することが可能となる。
【0010】
また、インバータ側コネクタの設置箇所と、制御基板への電気的な接続箇所とが、インバーハウジングの壁部によって隔てられているので、インバータ側コネクタと制御基板との接続部がインバータハウジングの外部に晒されることがなく、インバータハウジング内へ異物混入のリスクを抑えることが可能となる。
【0011】
ここで、インバータハウジングの壁部に凹部を設け、インバータ側コネクタをこの凹部に収容して保持するようにしてもよい。
このような構成によれば、凹部にインバータ側コネクタが収容保持されるので、中継コネクタのターミナルピンの圧入荷重をインバータハウジングで受け止める効果に加え、インバータ側コネクタがインバータハウジグの端面から表出されなくなり、異物混入のリスクをさらに抑えることが可能となる。
【0012】
より具体的な形態としては、前記インバータ側コネクタは、前記制御基板に電気的に接続可能なバスバーが一体化されると共に前記中継ターミナルのターミナルピンが圧入可能なレセプタクルを収容ケースに収容して構成され、前記収容ケースを前記インバータハウジングの壁部によって支持し、前記収容ケース及び前記インバータハウジングの壁部から突出させた前記バスバーを前記制御基板に接続させるようにしてもよい。
このような構成によれば、収容ケースにバスバーが一体化されたレセプタクルが収容されてユニット化されるので、収容ケース単位でインバータハウジングに支持させることが可能となり、特に複数のレセプタクルを同時に支持する場合に有用である。
【0013】
また、インバータ側コネクタは、前記制御基板に電気的に接続可能なバスバーが一体化されると共に前記中継ターミナルのターミナルピンが圧入可能なレセプタクルによって構成され、このレセプタクルを前記凹部に収容すると共に前記インバータハウジングの壁部によって支持し、前記インバータハウジングの壁部から突出させた前記バスバーを前記制御基板に接続させるようにしてもよい。
このような構成においては、インバータハウジングによってバスバーが一体化されたレセプタクルが収容固定されると共に直接支持されるので、部品点数の削減や省スペース化を図ることが可能となる。
【0014】
さらに、インバータ側コネクタは、リード線が一体化されると共に前記中継ターミナルのターミナルピンが圧入可能なレセプタクルを収容ケースに収容して構成され、前記収容ケースを前記インバータハウジングの壁部によって支持し、前記収容ケース及び前記インバータハウジングの壁部から引き出された前記リード線を前記制御基板に接続させるようにしてもよい。
このような構成によれば、ユニット化による前記効果に加え、バスバーに代えてリード線が用いられているので、インバータ側コネクタを介して制御基板に伝達される応力がなくなり、また、インバータ側コネクタの制御基板への取り付け位置を厳格に決める必要もなくなる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、モータハウジングの外部から電動機が収容されるモータハウジングの内部空間への給電を可能とするための中継ターミナルを、モータハウジングの壁部に固定し、制御基板に接続されるインバータ側コネクタを、インバータハウジング内で制御基板に電気的に接続させ、制御基板とはインバータハウジングの壁部を隔てて配置すると共に中継ターミナルに対向するように配置したので、ターミナルピンをインバータ側コネクタに圧入する際に、制御基板の過度の変形や破損を確実に回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る電動圧縮機の全体構成例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、インバータハウジングの壁部に支持されたインバータ側コネクタに中継コネクタが接続されている状態を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、インバータ側コネクタの構成部品を示す図であり、(a)はレセプタクルを示し、(b)はバスバーを示し、(c)は収容ケースを示し、(d)はカバーを示す。
【
図4】
図4は、バスバーが一体化されたレセプタクルと収容ケースとを示す図であり、(a)はバスバーが一体化されたレセプタクルを収容ケースに収容する前の状態を示す斜視図であり、(b)はバスバーが一体化されたレセプタクルを収容ケースに収容した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、インバータハウジングの壁部に凹部を設けた状態を示す斜視図であり、
図5(b)は、前記凹部にインバータ側コネクタを収容した状態を示す斜視図であり、
図5(c)は、インバータ側コネクタを収容した凹部をカバーで閉塞した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、インバータ側コネクタが取り付けられたインバータハウジングを中継コネクタが取り付けられたモータハウジングに組み付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、インバータハウジングの壁部に支持されたインバータ側コネクタに中継コネクタが接続されている他の状態を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、インバータハウジングの壁部に支持されたインバータ側コネクタに中継コネクタが接続されているさらに他の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電動圧縮機として、スクロール型の圧縮機構と電動機とを一体化した電動圧縮機の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1において、電動圧縮機1は、アルミ合金で構成されたハウジング2内に、図中右側において圧縮機構3を配設し、また、図中左側において圧縮機構を駆動する電動機4を配設している。尚、
図1において、図中左側を圧縮機の前方、図中右側を圧縮機の後方としている。
【0019】
ハウジング2は、
(i)圧縮機構3と、電動機4と、これら圧縮機構3及び電動機4をハウジング内で隔てるブロック部材5とを収容する可動機構収容空間6を備え、軸方向の前端部を閉塞する壁部21aが一体に形成されたモータハウジング21と、
(ii)電動機4に給電するインバータ回路部8を備えた制御基板9を収容するインバータ収容空間10を備え、モータハウジング21の壁部21aに付き合わせて組付けられる壁部22aが後端部に一体に形成されたインバータハウジング22と、
(iii)モータハウジング21の可動機構収容空間6の開口側を図示しないガスケットを介して閉塞するように組み付けられるヘッド部材23と、
(iv)インバータハウジング22のインバータ収容空間10の開口側を閉塞する蓋部材24と、
を有して構成されている。
これらモータハウジング21、インバータハウジング22、ヘッド部材23、及び蓋部材24は、図示しないボルト等により軸方向に締結され、特にモータハウジング21とヘッド部材23とは気密に結合されている。
【0020】
可動機構収容空間6には、壁部21a寄りの部分に電動機4のステータ11が配設されている。このステータ11は、円筒状をなす鉄心11aとこれに巻回された励磁コイル11bとを有して構成され、モータハウジング21の内周面に固定されている。
モータハウジング21の壁部21aの略中央には、ステータ側(後方)に向かって膨出する膨出部21bが形成されている。また、ブロック部材5は、ステータ11(前方)に向かって膨出する膨出部5aと、その軸方向後端部から径方向外側へ延設されたフランジ部5bとを備えている。
【0021】
そして、壁部21aに設けられた膨出部21bとブロック部材5の膨出部5aとには、ベアリング12,13を介して駆動軸14が回転可能に支持されており、この駆動軸14には、ステータ11の内側で回転可能にロータ15が固装されている。したがって、このロータ15は、ステータ11によって形成される回転磁力により回転できるようになっており、ステータ11と共にブラシレスモータからなる電動機4を構成している。
【0022】
可動機構収容空間6に臨むモータハウジング21の側面には、冷媒ガスを吸入する図示しない吸入口が形成され、ステータ11とモータハウジング21との間の隙間や、ブロック部材5とモータハウジング21との間の隙間、及び固定スクロール31とモータハウジング21との間に形成される隙間を介して、吸入口から可動機構収容空間6に流入した冷媒を後述する圧縮機構3の吸入室33へ導く吸入経路が形成されている。
【0023】
圧縮機構3は、固定スクロール31とこれに対向配置された旋回スクロール32とを有するスクロールタイプのもので、固定スクロール31は、円板状の端板31aと、この端板31aの外縁に沿って全周に亘って設けられると共に前方に向かって立設された円筒状の外周壁31bと、その外周壁31bの内側において前記端板31aから前方に向かって延設された渦巻状の渦巻壁31cとから構成されている。
【0024】
また、旋回スクロール32は、円板状の端板32aと、この端板32aから後方に向かって立設された渦巻状の渦巻壁32cとから構成されている。この旋回スクロール32は、端板32aの背面に形成されたボス部32bに、駆動軸14の後端部に設けられると共に駆動軸14の軸心に対して偏心した偏心軸14aがブッシュ16及びベアリング17を介して連結され、駆動軸14の軸心を中心として旋回運動可能に支持されている。
【0025】
固定スクロール31と旋回スクロール32とは、それぞれの渦巻壁31c、32cをもって互いに噛み合わされ、それぞれの渦巻壁31c、32cの先端が相手部材の端板31a,32aに近接するようになっており、したがって、固定スクロール31の端板31a及び渦巻壁31cと、旋回スクロール32の端板32a及び渦巻壁32cとによって囲まれた空間に圧縮室34が画成されている。
【0026】
また、前述した固定スクロール31の外周壁31bと旋回スクロール32の渦巻壁32cの最外周部との間には、図示しない吸入口から導入された冷媒を前記吸入経路を介して吸入する吸入室33が形成され、また、ハウジング内の固定スクロール31の背後には、圧縮室34で圧縮された冷媒ガスが固定スクロール31の略中央に形成された吐出孔35を介して吐出される吐出室36がハウジング2のヘッド部材23との間に画成されている。吐出室36に吐出された冷媒ガスは、この圧縮機内に設けられた図示いしないオイル分離器に導入され、ここでガス中のオイルが分離され、図示しない吐出口を介して冷凍サイクルへ送出される。
【0027】
また、固定スクロール31の外周壁31bとブロック部材5の端面5dとの間には、薄板状の環状のスラストレース18が挟持され、固定スクロール31とブロック部材5とは、このスラストレース18を介して突き合わされている。固定スクロール31、スラストレース18、及びブロック部材5は、図示しない位置決めピンにより、互いに位置決めされている。
【0028】
ブロック部材5は、中央に段階的に径が大きくなる貫通孔5cが形成され、その内周面には、スラストレース18から最も離れた前方側から、前記ベアリング13を収容するベアリング部収容部37、前記ブッシュ16と一体をなして駆動軸14の回転に伴って回転するバランスウエイト19を収容するウエイト収容部38、が少なくとも形成されている。
なお、旋回スクロール32の自転防止機構として、図示しないリングとこれに遊嵌されるピンとが、ブロック部材5及び旋回スクロール32に設けられている。
【0029】
インバータハウジング22内に収容されている制御基板9は、インバータハウジング22の内周面の適所に径方向内側へ膨出させた複数の突き出し部22bに図示しないネジにより固定されており、制御基板9の壁部22a側には、インバータ回路部8のスイッチング素子をモジュール化した駆動回路モジュール25やコンデンサ等の電子部品26が配設されている。ここで、駆動回路モジュール25は、発熱量の多い素子が集積されているため、壁部22aに形成された平坦な当接面に熱伝導材を介して密着され、モータハウジング21の内部を流れる吸入冷媒によって壁部21a,22aを介して冷却されるようになっている。
また、コンデンサ等の大きな電子部品26は、インバータハウジング22の壁部22aを切り欠いた部分を介してモータハウジング21の壁部21aと対峙させている。
【0030】
そして、このようなインバータハウジング22に収容された制御基板9上のインバータ回路部8とモータハウジング21に収容されたステータ11の励磁コイル11bとは、例えばハーメチック端子からなる中継ターミナル40を介して電気的に接続され、電動機4に対してインバータ回路部8から給電するようにしている。
【0031】
この例において中継ターミナル40は、
図2にも示されるように、モータハウジング21の壁部21aの外面(インバータハウジング22の壁部22aと対峙する端面)に凹部45を形成し、この凹部45に収容されている。この凹部45は、壁部21aに設けられた貫通孔46を介して可動機構収容空間6と連通し、中継ターミナル40は、凹部45にターミナル本体41を収容して貫通孔46の周縁に当接させ、ターミナル本体41を挿通するターミナルピン42を貫通孔46を介して可動機構収容空間6に突出させるようにしている。そして、この中継ターミナル40は、可動機構収容空間6に突出させたターミナルピン42をステータ11の励磁コイル11bと電気的に接続されている電動機側コネクタ47に圧入接続させ、その状態を保持するために、ターミナル本体41をねじ44で凹部45(モータハウジング21の壁部21a)に固定させている(
図6参照)。以上のように、モータハウジング21の壁部21aに固定された中継ターミナル40を介して、モータハウジングの外部であるインバータ回路部8から、モータハウジング21の内部空間である可動機構収容空間6への給電が可能となっている。
【0032】
ターミナル本体41と凹部45との当接箇所には図示しないシール部材が設けられ、可動機構収容空間6の冷媒が貫通孔46を介して外部に漏れることが防がれている。なお、中継ターミナル40は、ターミナルピン42がターミナル本体41に対して略垂直に両側へ延びるように取り付けられているもので、このターミナルピン42は、ターミナル本体41に対してガラスシール部材を介して絶縁かつ気密にシールされた状態で固定されていると共に、絶縁距離を確保するために本体部41の両側に設けられたセラミックスからなる絶縁部材43を挿通させて固定されている。
【0033】
ターミナルピン42のターミナル本体41からインバータハウジング22側へ突出した部分は、ターミナル本体41と対向するようにインバータハウジング22の壁部22aに配置されたインバータ側コネクタ50を介して制御基板9に電気的に接続されている。
このインバータ側コネクタ50は、この例においては、
図2乃至
図5にも示されるように、中継ターミナル40のターミナルピン42が圧入されて電気的に接触するレセプタクル51と、このレセプタクル51に係合して電気的に接続するバスバー52と、このバスバー52を一体化したレセプタクル51を収容する絶縁性の収容ケース53とを有して構成されている。
【0034】
レセプタクル51は、導電性金属を加工して形成されているもので、ターミナルピン42を圧入するピン受け部51aと、このピン受け部51aから延設されて断面コの字状に屈曲形成されてバスバー52を係合可能とするバスバー取り付け部51bとが一体化されている。
【0035】
バスバー52は、伝導性金属を加工して形成されているもので、レセプタクル51のバスバー取り付け部51bに係合可能な断面コの字状に屈曲形成された係合部52aと、この係合部52aからピン状に延設された端子部52bとを有して構成されている。
【0036】
収容ケース53は、合成樹脂等の絶縁性材により有底筒状に形成されているもので、レセプタクル51をバスバー52が取り付けられた状態で収容可能な収容凹部53aと、バスバー52の端子部52bを挿通可能に底部53bから突設された端子保護部53cとを有し、収容ケース53の内部を仕切壁53dにより3つに区画して同一形状の3つの収容凹部53aと3つの端子保護部53cとが一体に設けられている。したがって、収容ケース53は、バスバー52が一体化された3つのレセプタクル51を同時に収容できるようになっている。
なお、ここで「バスバー52が一体化されたリセプタクル51」とは、バスバーとリセプタクルが通電状態にあるように統合部品として機能していることを意味し、それぞれ個別のバスバーとリセプタクルを溶接、カシメ等により接合するものであっても、バスバーとリセプタクルがひとつの連続した部品として形成されるものであってもよい。
【0037】
前記インバータハウジング22の壁部22aの外面(モータハウジング21の壁部21aと対峙する端面)には、前記収容ケース53を収容可能な凹部55が形成され、また、この凹部55に続いてインバータハウジング22の端面より僅かに凹んだ座繰り部56が形成されている。インバータハウジング22の凹部55の底面55aには、前記端子保護部53cがインバータ収容空間10にかけて挿通可能な貫通孔55bが形成され、また、座繰り部56には、ねじ孔56aが形成されている。
【0038】
前記収容ケース53の端子保護部53cは、収容ケース53の底部53bを凹部55の底面55aに当接させた状態において、貫通孔55bを介してインバータ収容空間10に突出させており、この例では、制御基板9の表面に軽く当接させた状態となるように突出させている。
【0039】
なお、この例においては、インバータ側コネクタ50が収容された凹部50は、カバー54によって閉塞されている。このカバー54は、前記凹部55の開口形状のほぼ全体を覆うことが可能な閉塞板部54aと、この閉塞板部54aから延設されて前記座繰り部56に収容可能な固定片54bとを備えており、閉塞板部54aには、ターミナルピン42を挿通させる通孔54cが形成され、固定片54bには、ねじ57を差し入れる通孔54dが形成されている。したがって、このカバー54は、固定片54bを座繰り部56に嵌め入れてネジ57を通孔54dを介してねじ孔56aに羅合させることで、インバータハウジング22に固定される。
【0040】
前記収容ケース53の端子保護部53cは、収容ケース53の底部53bを凹部55の底面55aに当接させた状態において、貫通孔55bを介してインバータ収容空間10に突出させており、この例では、制御基板9の表面に軽く当接させた状態となるように突出させている。
【0041】
制御基板9には、前記バスバー52の端子部52bを挿通させる通孔9aが形成され、端子保護部53cを挿通させたバスバー52を制御基板9の裏側まで突出させ、その状態で制御基板9の所定部位に半田付けによって固定するようにしている。
【0042】
以上の構成において、圧縮機1を組み立てる工程において、中継ターミナル40は、モータハウジング21の凹部45に設置してターミナルピンを電動機側コネクタ47に予め圧入接続させておく。
また、バスバー52を取り付けた3組のレセプタクル51をピン受け部51aの受け口が収容ケース53の開口側に向けられるように凹部53aに収容し、バスバー52の端子部52bを端子保護部53cを挿通させた状態とし(
図4参照)、その後、制御基板9が固定されたインバータハウジング22の壁部22aの凹部55に、バスバー及びレセプタクルが収容された収容ケース53を挿入し、端子保護部53cを貫通孔55bに挿通させると共に端子保護部53cから突出したバスバー52の端子部52bを制御基板9の通孔9aに挿通させ、収容ケース53の底部53bを凹部55の底面55aに接触させるように収容する(
図2,
図5(b)参照)。
【0043】
そして、この状態を保持するために、カバー54の固定片54bを座繰り部56に嵌め入れ、その部分をねじ留めすることでカバー54を壁部22aに固定し、閉塞板部54aによって収容ケースを軽く抑えると共に凹部55の開口部を覆う(
図5(c)参照)。この状態においては、カバー54の貫通孔54cが凹部33(収容ケース53)に収容されたレセプタクル51のピン受け部51aと整合した位置となり、中継ターミナル40のターミナルピン42は、カバー54の貫通孔54cを介してレセプタクル51のピン受け部51aに挿入可能となる。また、この状態においては、端子保護部53cは、制御基板9上に軽く当接した状態にあり、バスバー52の端子部52bが制御基板9の通孔9aを挿通して基板の裏側に突出した状態となる(
図2参照)。
【0044】
そして、制御基板9の裏側からバスバー52の端子部52bを半田付けして制御基板9の所定箇所に電気的に接続させた後に、インバータハウジング22の開口部に蓋部材24を取り付けてインバータ収容空間10を閉塞することで、インバータハウジング22に制御基板9が収容され、インバータ側コネクタ50が、この制御基板9のインバータ回路部8に電気的に接続されると共にインバータハウジング22の壁部22aによって支持されたインバータユニットを形成する。
【0045】
その後、インバータユニット(インバータハウジング22)をモータハウジング21に組み付けて、モータハウジング21に固定された中継ターミナル40をインバータユニット(インバータハウジング22)に固定されたインバータ側コネクタ50に接続する。
この際、中継ターミナル40のターミナルピン42をカバー54の通孔54cを介してインバータ側コネクタ50のレセプタクル51のピン受け部51aに挿着させるよう、モータハウジングの壁部とインバータハウジング22の壁部22aとを位置を合わせて突き合せる必要があるが、作業者は、この突き合せる過程において、中継ターミナル40のターミナルピン42をカバー54の通孔54cに挿入するところまでは目視することができるが、ターミナルピン42をレセプタクル51のピン受け部51aに圧入させる状態を目視することはできない。
【0046】
従来技術の場合は、ターミナルピン42をレセプタクル51のピン受け部51aに圧入した際の制御基板9への影響が懸念されるが、本実施例においては、インバータ側コネクタ50は、インバータハウジング22の壁部22aによってターミナルピンが圧入される側と反対側が支持されているので(レセプタクル51が収容ケース53を介してインバータハウジング22によって支持されているので)、インバータ側コネクタ50にターミナルピン42の圧入荷重は、インバータハウジング22の壁部22aで受け止められ、制御基板9に作用することがない。
以上のように、前記制御基板9に電気的に接続されたインバータ側コネクタ50を、制御基板9とはインバータハウジング22の壁部22aを隔てて配置するとともに、中継ターミナル40と対向するよう配置したので、インバータハウジング22とモータハウジング21の互いに対峙する壁部22a,22aを組み付けることでモータハウジング21に固定された中継ターミナル40がインバータ側コネクタ50に接続され、また、インバータ側コネクタ50へのターミナルピン42の圧入の力が壁部22aで支持されるので、制御基板9に強い力が作用して過度の変形を起こしたり破損したりする不都合を回避することが可能となる。
【0047】
以上の構成においては、中継ターミナル40のターミナルピン42をインバータ側コネクタ50(レセプタクル51)に圧入する際の力をインバータハウジング22の壁部22aで受けることで制御基板9に圧入力が作用しないようにしたものであるが、このような効果を得るためには、上述した構成に限定されるものではなく、例えば、
図7に示されるように収容ケースをなくしてバスバー52が取り付けられたレセプタクル51をインバータハウジング22の壁部22a(凹部55の底面55a)で直接支持するようにしてもよい。
【0048】
また、レセプタクル51への圧入荷重は、バスバー52を介して制御基板9へ作用するので、このバスバー52の代わりに、
図8に示されるように、可撓性のあるリード線59を用いてインバータ側コネクタ50(レセプタクル51)と制御基板9とを電気的に接続してもよい。
【0049】
さらに、ターミナルピン42の50(レセプタクル51)への圧入力をインバータハウジング22の壁部22aによって受ける構造であれば、どのような構造であってもよく、インバータ側コネクタ50の設置スペースが十分に確保できるのであれば、凹部55を形成せずに壁部22aの表面で圧入荷重を受けるようにしてもよい。
【0050】
なお、上述の実施形態においては、インバータハウジング22をモータハウジング21の軸方向に組み付けた例を示したが、インバータハウジング22をモータハウジング21の外周面に組み付ける場合においても同様の構成を採用してもよい。
また、上述の例では、ブロック部材5をハウジング2と別部材とした例について説明したが、ブロック部材5はハウジング2と一体に形成されるものであってもよい。
さらに、上述の例では、モータハウジング21内に圧縮機構3と電動機4とを収容した例を示したが、圧縮機構と電動機4とを別々のハウジングに収容し、モータハウジング21内に電動機4のみを配設させる電動圧縮機においても、同様の構造を採用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 電動圧縮機
2 ハウジング
3 圧縮機構
4 電動機
6 可動機構収容空間
8 インバータ回路部
9 制御基板
10 インバータ収容空間
21 モータハウジング
22 インバータハウジング
42 ターミナルピン
40 中継ターミナル
47 電動機側コネクタ
50 インバータ側コネクタ
51 レセプタクル
52 バスバー
53 収容ケース
54 カバー