(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】セリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料および排ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20230417BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20230417BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20230417BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230417BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230417BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C01G25/00
B01J23/63 A ZAB
B01J20/06 B
B01J20/28 Z
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
(21)【出願番号】P 2018206521
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391021765
【氏名又は名称】新日本電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(74)【代理人】
【識別番号】100139240
【氏名又は名称】影山 秀一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】倉地 保幸
(74)【代理人】
【識別番号】100204526
【氏名又は名称】山田 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100208568
【氏名又は名称】木村 孔一
(72)【発明者】
【氏名】山羽 正格
(72)【発明者】
【氏名】北川 恭平
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-042752(JP,A)
【文献】特開2006-256912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
B01J 23/63
B01J 20/06
B01J 20/28
B01D 53/94
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア・ジルコニア複合酸化物は80~120pmイオン半径をもつ希土類元素の少なくとも1種を含有する粒子であって、該粒子表面が還元性化学種の吸着相となる電気陰性度が0.89~1.22の
元素の酸化物で修飾され
、前記電気陰性度が0.89~1.22の元素の酸化物がアルカリ土類金属の酸化物であることを特徴とするセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【請求項2】
前記セリア・ジルコニア複合酸化物のセリウムイオンの含有量がモル比で0.34以下であることを特徴とする請求項1に記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素放出材料。
【請求項3】
前記電気陰性度が0.89~1.22の酸化
物の含有量は全体の2~20質量%であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【請求項4】
前記セリア・ジルコニア系複合酸化物は、80~120pmイオン半径をもつLa、Y、Ndの希土類元素の少なくとも1種を含有し、該希土類元素のイオンをセリア・ジルコニア系複合酸化物におけるカチオン総量に対してモル比で0.5mol%以上22mol%未満含有することを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【請求項5】
400℃の低温領域における酸素吸放出特性(OSC量)が248~361μmol-O
2・g
-1、且つ、CeO
2利用率が48~72%であることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【請求項6】
200℃の低温領域における酸素吸放出特性(OSC量)が194~327μmol-O
2・g
-1、且つ、CeO
2利用率が45~57%であることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料に、貴金属を担持してなることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低温域(200~800℃)で大きい酸素吸放出特性が発現するセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料および排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害な成分が含まれるため、排ガス浄化触媒により浄化し、大気放出する必要がある。
【0003】
このような排ガスの有害成分を浄化する為に三元触媒がある。前記触媒には酸化物等の担体に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を担持した触媒が広く用いられている。
【0004】
三元触媒において、貴金属の働きを高めるためには、燃料と空気の比(空燃比)を一定に(理論空燃比に)保つのが好ましいが、様々な走行状態に変動するような運転状況に応じて空燃比は大きく変化する。このため、酸素センサーを用いたフィードバック制御によりエンジンの作動条件によって変動する空燃比(A/F)を一定に保つようにしているが、フィードバック時間に応じたA/Fの時間的な変動が発生するため、エンジン制御だけで排ガス雰囲気を理論空燃比あるいはその近傍に保持することは難しい。
【0005】
このため、触媒側で雰囲気を微調整する必要が有る。セリア(酸化セリウムCeO2)は酸素吸放出特性(Oxygen Storage Capacity、以下に「OSC」と称する)を有するため、自動車排ガス浄化用触媒の酸素分圧調製用の助触媒として広く用いられている。これはCe3+/Ce4+のレドックス反応を利用したものである。前記セリアは、一般にその特性を高めるためジルコニア(酸化ジルコニウムZrO2)と固溶させたセリア・ジルコニア系複合酸化物として使用されている。
【0006】
前記セリア・ジルコニア系複合酸化物は、一般にPt、Pd、Rh等といった触媒金属が担持された状態でアルミナを数%ないし数十%の割合で混合され、金属ハニカムまたはセラミックスハニカムの内壁に十数μmないし数百μmの厚さにウォッシュコート(被覆)され、触媒コンバーター(ハニカム触媒構造体)として使用される。
【0007】
近年の排ガス規制の強化に伴い、触媒の高活性や高寿命等の性能を向上すべく、触媒金属及びその担体酸化物についてそれぞれ検討されている。特に200~400℃における低温域下でのより大きいOSCが得られ、還元化学種(たとえば一酸化炭素やプロピレン)を酸化する技術の要求が高い。
【0008】
例えば、セリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料、排ガス浄化触媒、及び排ガス浄化用ハニカム構造体の性能向上に関する従来技術には、以下のようなものがある。特許文献1では、低温で排ガス浄化性能を高めることを目的として、セリア・ジルコニア系複合酸化物相と少なくとも1種の希土類酸化物相が含まれる酸素吸収放出材料であって、前記希土類酸化物相がセリア・ジルコニア系複合酸化物相に直接結合した構造を有し、前記希土類含有量が、希土類酸化物相/(希土類酸化物+セリア・ジルコニア系複合酸化物相)モル比で0を超え0.3以下である酸素吸収放出材料が記載されている。このようにすることで、セリア・ジルコニア系複合酸化物に担持された貴金属触媒の活性を向上し、低温での排ガス浄化性能を向上することができると記されている。しかしながら、200℃近傍の具体的な低温域下でより大きなOSCが得られる粒子構造に特化した事例は報告されていない。
【0009】
特許文献1では、200℃近傍の低温から大きなOSCを示すと記載はあるが、セリウムとジルコニウムの比率がモル比で0.7≦Zr/(Ce/Zr)≦0.85の範囲とCe含有量が低く、1000~1300℃の温度範囲で還元処理された固溶粒子であることが記されている。本発明のような二相が共存しているような粒子構造を取らず、低温OSC発現という記述はない。
【0010】
特許文献2ではCeO2とZrO2を主成分とする複合酸化物を含む担体に貴金属を担持したものが100~500℃の還元性雰囲気化において放出される酸素量が理論限界値の80%であるという特性が記述されているものの、低温領域200℃近傍の酸素放出量の記載はない。且つ、粒子形状による低温時のOSC量改善に関する記述はない。
【0011】
特許文献3で溶融法由来のセリウム-ジルコニウム複合酸化物と湿式法由来の二酸化セリウムを混在させたことを特徴とする酸化セリウム-酸化ジルコニウム系複合酸化物、並びにセリウム含有溶液に溶融法由来のセリウム-ジルコニウム複合酸化物を分散させ、中和した後、熱処理することを特徴とする酸化セリウム-酸化ジルコニウム系複合酸化物であるが、600℃で15μmol-O2・g-1と非常にOSC量は小さい。
【0012】
特許文献4ではAl/(Ce+Zr)が1/20~50/20の範囲であるCeO2-ZrO2-Al2O3複合酸化物であり、酸素放出速度を高めて低温活性が向上させたものである。さらに担体の耐熱性を維持しつつPtの粒成長を抑制することで低温活性を高めている。しかし本発明の様な粒子構造を改良して高いOSC量が得たという記述はない。
【0013】
特許文献5ではセリア・ジルコニア複合酸化物のOSC量が記載されているが、200℃における低温域のOSCから算出されたセリア利用率は10~30%と低い。本発明が開発した前述セリア・ジルコニア粉末の低温域におけるセリア利用率は48%以上であり、それよりも高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2003-275580号公報
【文献】特開2003-265958号公報
【文献】WO2011/108457号公報
【文献】特開2005-104799号公報
【文献】特開2004-339025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、近年、排ガス浄化触媒は、低温域でのOSC量が低く、低温域浄化率が低いことが課題であった。このため、より低温域(200~800℃)での酸素放出能が要求されており、それに対応する開発が継続されている。しかしながら、従来の排ガス浄化触媒では400℃以下の低温使用環境下での酸素放出量は満足できるものとはなっておらず、更なる改良が望まれている。
【0016】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、400℃以下の低温域での比較的低温環境下における使用環境でもより多くの酸素が放出できるセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究し、セリア・ジルコニア系複合酸化物粒子の表層に還元性化学種の吸着相を存在させると、直接還元分子がセリア・ジルコニア複合酸化物粒子表面に吸着することが防ぐことができ、表層の酸素欠陥相形成を防ぐことができる。その結果、400℃以下のOSC量が194~361μmol-O2・g-1の大きなOSC量が得られ、且つ、CeO2利用率が45~72%以上となることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0018】
(1) セリア・ジルコニア複合酸化物は80~120pmイオン半径をもつ希土類元素の少なくとも1種を含有する粒子であって、該粒子表面が還元性化学種の吸着相となる電気陰性度が0.89~1.22の酸化物で修飾されていることを特徴とするセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【0019】
(2) 前記電気陰性度が0.89~1.22の酸化物は、希土類又はアルカリ土類金属の酸化物であり、且つ酸化物の含有量は全体の2~20質量%であることを特徴とする前記(1)に記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【0020】
(3) 前記セリア・ジルコニア系複合酸化物は、80~120pmイオン半径をもつLa、Y、Ndの希土類元素の少なくとも1種を含有し、該希土類元素のイオンをセリア・ジルコニア系複合酸化物におけるカチオン総量に対してモル比で0.5mol%以上22mol%未満含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【0021】
(3) 前記セリア・ジルコニア系複合酸化物は、80~120pmイオン半径をもつLa、Y、Ndの希土類元素の少なくとも1種を含有し、該希土類元素のイオンをセリア・ジルコニア系複合酸化物におけるカチオン総量に対してモル比で0.5mol%以上22mol%未満含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【0022】
(4) 400℃の低温領域における酸素吸放出特性(OSC量)が248~361μmol-O2・g-1、且つ、CeO2利用率が48~72%であることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【0023】
(5) 200℃の低温領域における酸素吸放出特性(OSC量)が194~327μmol-O2・g-1、且つ、CeO2利用率が45~57%であることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料。
【0024】
(6) 前記(1)~(5)のいずれかに記載のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料に、貴金属を担持してなることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、200~800℃の低温領域、特に400℃以下の低温領域でOSC量が194~361μmol-O2・g-1の大きなOSC量を示すセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料とすることができる。すなわち、本発明のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料では、理論OSC量の45~72%が発現し、還元雰囲気時にセリア・ジルコニア表層に酸素欠損濃縮相発現が抑制され、セリア・ジルコニア粒子全体の酸素放出が可能となり、400℃低温領域下で酸素理論容量により近いOSC量発現が可能となった。
また、セリア・ジルコニア系複合酸化物からなる酸素吸放出材料を、自動車排ガス浄化触媒に使用すれば、400℃以下の低温領域でも排ガス浄化を良好に行うことができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】セリア・ジルコニア系複合酸化物を基材(母相)とし、その表層に吸着相が修飾された粒子イメージ図である。
【
図2】セリア・ジルコニア系複合酸化物に使用するカチオン種のイオン半径を示す図である。
【
図3】Pd担持有品と担持無品のOSC量の差の原因を示した概念図で、
図3(a)はPd担持有品、
図3(b)はPd担持無品の例を示した概念図である。
【
図4】吸着相を付けた粒子が低温OSC量を発現させる概念図で、
図4(a)はセリア・ジルコニア系複合酸化物(CZ)の基材(母相)にNd
2O
3を吸着相として修飾したセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料の顕微鏡写真であり、
図4(b)は吸着相(Nd
2O
3)を付けた粒子がより大きな低温OSC量を発現できることを説明するための概念図である。
【
図5】OSC量の温度依存性。還元分子吸着相を修飾したセリア・ジルコニア粒子は200℃の低温領域で大きなOSC量を発現した結果・比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
本発明の酸素吸収放出材料は、セリア・ジルコニア系複合酸化物に少なくとも1種の希土類元素イオンを含むセリア・ジルコニア複合酸化物であり、希土類元素イオンが含まれることにより、セリア・ジルコニア系複合酸化物の酸素吸収放出特性、耐久性、耐熱性等を向上させることができる。そして、セリア・ジルコニア系複合酸化物を基材(母相)とし、その粒子表層に還元性化学種の吸着相が修飾された二相が共存しているような粒子構造とすることで、セリア・ジルコニア粒子全体の酸素放出が可能となり、酸素理論容量により近いOSC量発現が可能となった。
【0029】
まず、OSC量発現の理由について
図3を参酌して説明する。
【0030】
図3はPd担持有品と担持無品のOSC発現の差の原因を示した概念図で、
図3(a)はPd担持有品、
図3(b)はPd担持無品の例を示した概念図である。
図3(a)に示すように、酸素吸収放出材料としてのセリア・ジルコニア系複合酸化物(CZ)に触媒貴金属(PGM)としてのPdが担持されていない場合には、CZ基材(母相)1の粒子表面に多くの還元分子、例えば、水素3(H
2)が流れてくると、CZ基材1の粒子ごく表層のCeO
2だけがCeO
1.5(CeO
2⇒CeO
1.5+O
0.5)となり、酸素を取り出し、水4(H
2O)とすることができる。しかし、表層の酸素ばかりが選択的に取り出されることとなり、その結果、CZ基材(母相)1の粒子表面に酸素欠陥層5が発現してしまい、粒子中央部の酸素は、表層まで移動することが出来ない。このことにより酸化物内のO
2-イオンが枯渇し、特に低温域ではそのイオン伝導度が低く乏しい為、粒子中央部から供給される酸素(O
2-イオン)が少なく、比較的取り出せる酸素量が低くなり、O
2-+H
+⇒H
2O+e-
-の還元反応が進まなくなる。その結果、粒子表層に多量の酸素欠陥層5が形成され、高いOSC量が得られない。
【0031】
一方、
図3(b)に示すように、酸素吸収放出材料に触媒貴金属(PGM)としてのPdが担持されている場合には、還元分子である水素3(H
2)が流れてくると、Pd触媒6上でCZ基材(母相)1中からの酸素(O)7により、O
2-+H
+⇒H
2O+e
-反応がスムーズに進行し、CZ基材(母相)1の粒子表面に還元分子3のH
2が吸着せず、粒子表層に多量の酸素欠陥形成部位が発現しにくい。したがって、Pd触媒担持した助触媒ではPd触媒担持無の場合よりもOSC量がより大きく発現しやすい。
【0032】
しかし、反応しなかった一部の還元分子は粒子表層に吸着し、局所的な酸素欠陥部位を形成してしまうという問題がある。この酸素欠陥部位の形成を抑制すれば低温域下でもさらにより大きいOSC量を発現させることができると推察できる。
【0033】
そこで本発明では、局所的な酸素欠陥部位の形成を抑制し、低温域下でより大きいOSC量を得る為に、
図1のセリア・ジルコニア系複合酸化物の粒子イメージ図に示すように、セリア・ジルコニア系複合酸化物の基材(母材)1に還元性化学種を捕集する吸着相2として希土類金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物で修飾された二相共存の粒子構造を設計した。この二相共存の粒子構造とすることで、より低温域下、例えば200℃で大きなOSC量(CeO
2利用率)が得られるセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料を実現できた。
【0034】
すなわち、より大きなOSC量が得られるようにするためには、母材の上に吸着相がある状態のセリア・ジルコニア酸化物で実現できる。この吸着相には低い電気陰性度の金属元素を利用した。金属元素は希土類あるいはアルカリ土類金属元素であり、電気陰性度が0.89~1.22の範囲の金属元素を酸化物としてセリア・ジルコニア複合酸化物の粒子表面に修飾し、それを吸着相として機能させることで酸素吸放出材料とすることができる。さらにその粒子表面に触媒貴金属(PGM)を担持することで排ガス浄化触媒が実現できる。
【0035】
担持される触媒貴金属(PGM)としては、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os等の貴金属が挙げられるが、より好ましいのはAg、Pt、Pd、Rhである。貴金属は、セリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料に担持されているものであり、セリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料の表面に分散して存在する貴金属である。分散している貴金属は、金属又は酸化物で存在して10nm以下のサイズであるのが好ましい。貴金属の担持量(=貴金属/(貴金属+セリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料))は、特に限定はしないが、触媒機能を十分に発揮させるためには0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。
【0036】
そして、排ガス浄化用ハニカム構造体は、上記排ガス浄化触媒を常法通り、アルミナと数%ないし数十%の割合で混合して金属又はセラミックスハニカム内壁に十数μmないし、数百μmの厚さに被覆することで構成される。
【0037】
CZ基材(母相)に還元性化学種を捕集する吸着相で修飾した二相共存の粒子構造とすることで、低温OSCが実現できることを
図4の概念図を参酌して説明する。
図4(a)はセリア・ジルコニア系複合酸化物(CZ)の基材(母相)にNd
2O
3を吸着相として修飾したセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料の顕微鏡写真であり、
図4(b)は吸着相(Nd
2O
3)を付けた粒子がより大きな低温OSCを発現できることを説明するための概念図である。
【0038】
図4(b)に示すように、還元性化学種(H
2を例に説明する)であるH
2(還元分子)3が流れてくると、H
2は担持されたPd(1)やPd(2)のPd6触媒上でO
2-+H
+⇒H
2O+e
-反応がスムーズに進行し、水(H
2O)4が生成するので、粒子表層に多量の酸素欠陥形成部位は発現しない。しかし、Pd(1)やPd(2)で反応できなかった還元分子(H
2)3は局所的な酸素欠陥部位の原因となる。その還元分子3は吸着相であるNd
2O
3相8で捕集して、CZ基材(母相)1に吸着することを防ぐことができる。したがって、吸着相としてNd
2O
3相8を付けたCZ粒子では、粒子表面の局所的な酸素欠陥部位の発現を防止することができる。
【0039】
このように、セリア・ジルコニア複合酸化物の粒子表面を吸着相で修飾することより酸素欠陥相発現を抑制し、粒子全体からPd活性点に酸素を供給し、400℃以下の低温領域でもセリア利用率が高まり(セリア利用率45~72%)、大きなOSC量を発現させることが可能となった。
【0040】
本発明のセリア・ジルコニア系複合酸化物(希土類元素の少なくとも1種を含有する)の基材(母相)に希土類又はアルカリ土類金属の酸化物(吸着相)を修飾した二相共存粒子構造において、基材(母相)は、80~120pmイオン半径をもつ希土類元素の少なくとも1種を含有するセリア・ジルコニア系複合酸化物粒子であって、基材中の希土類元素の酸化物相はセリア・ジルコニア系複合酸化物相に直接結合した構造を有し、希土類含有量が、希土類酸化物相/(希土類酸化物+セリア・ジルコニア系複合酸化物相)モル比で0を超え0.3以下であることが好ましい。
【0041】
また、還元性化学種を捕集する吸着相は、低い電気陰性度の元素の酸化物を利用した。すなわち、希土類あるいはアルカリ土類金属の酸化物を使用する。希土類あるいはアルカリ土類金属の酸化物はセリア・ジルコニア複合酸化物粒子表面を修飾し、且つ吸着相に用いる希土類金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオンの金属元素については、電気陰性度が0.89~1.22の範囲のものを使用し、希土類あるいはアルカリ土類金属の酸化物でセリア・ジルコニア系複合酸化物の表面を修飾してある。
【0042】
希土類酸化物としては、Y2O3、Nd2O3、CeO2、La2O3、Gd2O3、Pr6O11やこれらの複合酸化物、例えばCe1-xNdxO2-0.5x等を用いることができる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO、BaOを用いることができる。
【0043】
表1に希土類金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの電気陰性度および電気陰性度評価(○:優、△:良、×:不良)を示す。
【0044】
金属元素の電気陰性度が0.89未満の金属元素を使用した場合では、電気陰性度が大きくなり、PやSまで引き寄せ、酸化物が被毒され、劣化しやすい。その反面、電気陰性度が1.22を超える場合、電子をひきつける力が小さくなってしまい、効果が薄れる可能性が考えられる。
【0045】
したがって、本発明では電気陰性度が0.89~1.22の範囲の希土類又はアルカリ土類金属イオンを使用した。
【0046】
【0047】
【0048】
前記吸着相に使用している金属酸化物に含まれる酸素原子の負電荷は、前記酸素原子と前記酸素原子に隣接する原子との電気陰性度の差が大きいほど大きくなる。この負電荷が大きくなると前記吸着相の酸化物に含まれる酸素原子と金属イオン間で働く静電気的相互作用が強くなるため、還元分子等の化学種を引き寄せ、吸着相として働く。
【0049】
吸着相がセリア・ジルコニア系複合酸化物相の表層に存在していた場合、直接還元分子がセリア・ジルコニア複合酸化物粒子表面に吸着することが防ぐことができ、表層の酸素欠陥相形成を防ぐことができる。
【0050】
なお、本発明は上記推察によって限定されるものではない。
【0051】
よって、本発明のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸放出材料では、セリア・ジルコニア系複合酸化物に前述吸着相が修飾されていることが重要である。その吸着相には低電気陰性度の金属元素を用い、且つセリア・ジルコニア系複合酸化物に80~120pmイオン半径をもつ希土類元素が含まれていることが重要である。単なるセリア・ジルコニア系複合酸化物では低温域において、大きなOSC量(200℃-OSC量が290μmol-O2・g-1以上)は得ることが出来ない。
【0052】
本発明のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収放出材料とは、セリア・ジルコニア系複合酸化物であって、前記セリア・ジルコニア系複合酸化物において、80~120pmイオン半径をもつLa、Y、Ndの希土類元素が少なくとも1種が含まれることを特徴とする酸素吸放出材料で、少なくとも1種の希土類元素イオンが前記セリア・ジルコニア複合酸化物中に含有されている。イオン半径が80pm未満の場合は結晶格子が小さくなり、セリアの酸化還元反応を阻害する恐れがある。一方、120pmを越えるイオン半径の金属イオンを使用した場合、セリア・ジルコニア複合酸化物と固溶しない恐れがある為、80~120pmのイオン半径の希土類を使用することとした。
図2にセリア・ジルコニア系複合酸化物に使用する希土類及びアルカリ土類金属カチオン種の各金属のイオン半径/pmを示した。使用するに適したイオンは、3価希土類金属イオンのY
3+、Nd
3+、La
3+、4価希土類金属イオンのZr
4+、Ce
4+、及び3価セリウム金属イオンのCe
3+である。
【0053】
セリア・ジルコニア系複合酸化物において、低電気陰性度酸化物は希土類、又は、アルカリ土類金属酸化物であり、且つ修飾されている酸化物の含有量は全体の2~20質量%であることを特徴とするセリア・ジルコニア系複合酸化物である。
【0054】
修飾されている酸化物の含有量が全体の2質量%未満であれば吸着効果が薄れ、局部的酸素欠陥部位が発現して200~400℃のような低温域で大きなOSC量(194~361μmol-O2・g-1且つCeO2利用率が45~72%)発現は期待できない。一方、20質量%を越えると、単位重量当たりの理論OSC量が減少し、OSC量の向上は確認しづらい。
【0055】
したがって、本発明では、修飾されている酸化物の含有量は全体の2~20質量%とした。
【0056】
本発明では、セリア・ジルコニア系複合酸化物のOSC量の発現の効率を示す為、セリア利用率という指標を用いる。セリア・ジルコニア系複合酸化物に含有するセリア(CeO2)がすべて3価のセリア(CeO1.5)に還元された場合、セリア利用率:100%と表現し、その時のOSC量は理論容量に達する(CeO2→CeO1.5+0.25O2)。
【0057】
本発明の200~400℃の低温環境下で大きなOSCを発現するセリア・ジルコニア複合酸化物の酸素吸収放出材料の特徴としては、OSC量が200℃-OSC量が194μmol-O2・g-1以上、好ましくは194~327μmol-O2・g-1、且つCeO2利用率が45~57%、好ましくは47~55%であり、400℃-OSC量が248μmol-O2・g-1以上、好ましくは248~361μmol-O2・g-1且つCeO2利用率が48~72%、好ましくは48~61%の酸素吸収放出材料である。
【0058】
セリア・ジルコニア複合酸化物において、200℃の低温域でCeO2(セリア)利用率が45%以上となり、且つOSC量が194μmol-O2・g-1以上であり、400℃の低温域でCeO2利用率が48%以上となり、且つOSC量が248μmol-O2・g-1以上となることが確認される現象については完全に解明されていないが、希土類元素イオンをセリア・ジルコニア系複合酸化物におけるカチオン総量に対してモル比で0.5mol%以上22mol%未満、好ましくは2.5mol%以上20mol%以下、且つ修飾されている酸化物の含有量(修飾量)は全体の2~20質量%である。
【0059】
本発明のセリア・ジルコニア系複合酸化物酸素吸収材の製造方法は、通常知られているセリア・ジルコニア系複合酸化物を製造する方法を取ることが出来る。
【0060】
本発明での低温域のOSC量は島津社製のASAP(型番:ASAP2020)を使用して測定した。前述のセリア・ジルコニア複合酸化物にPdを0.5質量%担持させ、600℃×1時間焼成し、Pd触媒を担持したサンプルをOSC量測定用サンプルとした。
【0061】
ASAP測定前に予め予備乾燥(減圧下200℃×40分以上保持)したOSC量測定用サンプルをASAPで測定した。
【0062】
ASAP専用ガラス管の底部にガラスウール:0.1gの束を2つ詰め、その上にPd担持した前述セリア・ジルコニア複合酸化物を0.15g詰め、さらにその上から0.1gのガラスウールを置いた。ガラスウールの役割は減圧時に前述セリア・ジルコニア粉末が吹き飛び、発散することを防止するためである。
【0063】
このような設定を施したASAP専用ガラス管をASAPに取り付け、200℃×10分(減圧)した後、200℃×10分(純水素フロー)し、再度減圧状態で保持(10分間保持しリークチェック実施)した後、定量・定圧の純酸素を専用ガラス管に送り、その圧力変動により酸素吸収量を割り出し、OSC量(μmol-O2・g-1)を算出した。
【0064】
OSC理論容量(μmol-O2・g-1)、Ce利用率(%)の算出方法について説明をする。
【0065】
理論OSC量(%)はセリアの価数変動によってもたらされる為、下記式(1)のように示される。
【0066】
4CeO2 ⇔ 2Ce2O3 + O2 ・・・(1)
【0067】
式(1)よりCe 4molに対して、酸素1mol放出される。CZ 1gから放出されるOSC理論容量(μmol-O2・g-1)は下記式(2)のように示される。
【0068】
CCe ÷ (MCe + 2MO)÷ 4 ÷ 100 ・・・(2)
【0069】
ここで上記式(2)の記号説明をする。
CCe:試料内に含有するCe含有量(mass%)、MCe:Ce原子量(140.116g/mol)、MO:O原子量(15.999g/mol)
【0070】
Ce利用率(%)は観測された実測OSC容量(μmol-O2・g-1)を上記式(2)で算出したOSC量(μmol-O2・g-1)で割り、パーセント表記にした値をCe利用率(%)とした。それらをまとめると下記式(3)のようになる。
【0071】
【0072】
ここで上記式(3)についての記号について説明する。
A:試料のOSC量(μmol-O2/%)、CCe:試料内のCe含有量(mass%)
【実施例】
【0073】
以下に本発明の実施例および比較例に基づいて本発明の効果を詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
第一段階塩化セリウム溶液、オキシ塩化ジルコニウム溶液、塩化ランタン溶液と純水を混合し、カチオン比でCe:Zr:La=34.0:60.7:4.6mol/Lとなるような溶液1(リットル)を得た。得られた混合溶液にペルオキソ二硫酸アンモニウムを15g添加し、撹拌しながら95℃まで加熱し、セリウム・ジルコニウム複合硫酸塩を得た。得られた硫酸塩スラリーを60℃まで冷却後、アンモニア水を加えて中和し、水酸化物を含むスラリーを得た。得られたスラリーを濾過-洗浄操作を4回繰り返した後、120℃乾燥、700℃焼成、乳鉢粉砕を行い希土類元素イオンを含むセリア・ジルコニア系複合酸化物(Ce0.34Zr0.607La0.046O1.977)を得た。
【0075】
第二段階として、第一段階で得られた粉末を解砕後、セリア・ジルコニア系酸化物で水系スラリーを作製後、焼成後の表面修飾物が2質量%となるように調整したNd塩溶液を添加し、溶液のpHを変化させて酸化物表面に水酸化物を沈殿させ、夾雑イオンを取り除いたのち加熱焼成し、粒子表面上に酸化ネオジム(Nd2O3)を析出させた。
【0076】
セリア・ジルコニア複合酸化物表面に酸化ネオジム(Nd2O3)を析出させた粒子において、Pdを担持した。ASAPにてOSC量を測定したところ低温域の200℃で278μmol-O2・g-1が実測値として観測された。これは200℃のCeO2利用率が47%であり、低温域(200℃)で比較的大きなOSC量が確認できた。また、低温域の400℃で312μmol-O2・g-1が実測値として観測された。これは400℃のCeO2利用率が52%であり、低温域(200~400℃)で比較的大きなOSC量が確認できた。
【0077】
[実施例2~4]
実施例1の第一段階で示したセリア・ジルコニア複合酸化物に表面修飾物が2質量%の吸着相となる希土類酸化物種類を変えたものである。いずれも低温域の200℃でセリア利用率が45~48%、低温域の400℃でセリア利用率が48~54%の大きなOSC量が確認された。
【0078】
[実施例5、6]
実施例1に示した基材(母相)の組成を変えたものである。いずれも低温域の200℃および400℃でセリア利用率が50%前後の大きなOSC量が確認された。
【0079】
[実施例7~16]
実施例1の第一段階で示したセリア・ジルコニア複合酸化物に表面修飾物を5質量%に増加した吸着相となる希土類酸化物またはアルカリ土類金属酸化物の種類を変えたものである。いずれも低温域の200℃でセリア利用率が51~57%、低温域の400℃でセリア利用率が57~63%の大きなOSC量が確認された。
【0080】
[実施例17、18]
実施例17、18はそれぞれ実施例5、6の組成の複合酸化物に表面修飾物である吸着相の希土類酸化物(Nd2O3)の修飾量を2%から5%に増加させた実施例である。いずれも低温域の200℃および400℃でセリア利用率が50%以上の大きなOSC量が確認された。
【0081】
[実施例19~24]
実施例19~24は、それぞれ実施例1~6の組成のセリア・ジルコニア複合酸化物に表面修飾物である吸着相の希土類酸化物の修飾量を10%に増加させた実施例である。いずれも低温域の200℃および400℃でセリア利用率が47%以上の大きなOSC量が確認された。
【0082】
[実施例25~30]
実施例25~30は、それぞれ実施例19~24の組成の複合酸化物に表面修飾物である吸着相の希土類酸化物の修飾量を20%に増加させた実施例である。いずれも低温域の200℃および400℃でセリア利用率が46%以上の大きなOSC量が確認された。
【0083】
なお、これらの実施例において、表面修飾物である吸着相として、Nd、Y、Ce、La、Gd、Prの各希土類酸化物およびCeとNdとの複合酸化物、または、Ca、Sr、Baの各アルカリ土類金属酸化物を用いる例を示した。これらの吸着相の形成方法は、実施例1のNa2O3を形成した第二段階の工程と同様に各希土類またはアルカリ土類金属の塩溶液を用いることによって形成できる。例えば、実施例14の吸着相にアルカリ土類金属のCaを使用する場合は、第二段階として、第一段階で得られた粉末を解砕後、セリア・ジルコニア系酸化物で水系スラリーを作製後、焼成後の表面修飾物が5質量%となるように調整したCa塩溶液を添加し、溶液のpHを炭酸アンモニウムで酸化物表面に炭酸塩を沈殿させ、粒子表面上を修飾する。この後の焼成工程後、CaOが修飾されたセリア・ジルコニア粒子表面が出来る。
【0084】
[比較例1~5]
比較例1~5では実施例1に示した第一段階のセリア・ジルコニア複合酸化物酸素吸収放出材料において、含有する希土類元素イオンの種類および含有量が異なり、且つ、表面に酸化物修飾をしなかった場合のOSC量の例である。すなわち、比較例1は、実施例1~4、7~16、19~22、25~28に相当する組成のセリア・ジルコニア系酸化物表面に酸化物修飾をしなかった場合の例であり、比較例2は、実施例5、17、23、29に相当する組成のセリア・ジルコニア系酸化物表面に酸化物修飾をしなかった場合の例であり、比較例4は、実施例6、24、30に相当する組成のセリア・ジルコニア系酸化物に表面に酸化物修飾をしなかった場合の例である。
比較例は、低温域(200℃および400℃)では、いずれも実施例で確認されたような大きなOSC量が見受けられなかった。
【0085】
これらの実施例、比較例の結果を表2に纏めて示し、また、
図5に代表例を示した。
【0086】
表3、4に示すように、実施例1~4、7~16、19~22、25~28および実施例5、17、23、29ならびに実施例5、17、23、29は基材(母材)の組成は統一し、吸着相に用いる酸化物種を変え、その効果を検証した例を示した。この目的は吸着相の効果を検証する為であるが、実施例では吸着相に用いる酸化物種および修飾量を変えたが、いずれも低温域(200~400℃)でセリア利用率が45%以上の大きなOSC量が確認された。
なお、比較例では吸着相は付与せず、基材(母材)を変えた場合の結果を示しているが、大きなOSC量が見受けられなかった。
【0087】
【0088】
【符号の説明】
【0089】
1 CZ基材(母相)
2 吸着相(希土類金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物)
3 H2
4 H2O
5 酸素欠陥層
6 Pd
7 O
8 Nd2O3