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特許7263003ショベル及びショベル用コントロールバルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】ショベル及びショベル用コントロールバルブ
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/042 20060101AFI20230417BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20230417BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F15B11/042
F15B11/00 D
F15B11/16 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018507332
(86)(22)【出願日】2017-03-21
(86)【国際出願番号】 JP2017011208
(87)【国際公開番号】W WO2017164169
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2018-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2016057338
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三崎 陽二
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】窪田 治彦
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-167334(JP,A)
【文献】特開平11-257303(JP,A)
【文献】特開昭56-115434(JP,A)
【文献】特開平8-105404(JP,A)
【文献】特開2000-205426(JP,A)
【文献】特開2015-203426(JP,A)
【文献】特開平11-190304(JP,A)
【文献】特開2014-1768(JP,A)
【文献】特公平2-566(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B11/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体上に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記エンジンに連結された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動されて作業要素を動かす油圧アクチュエータと、
センターバイパス管路に配置され、前記油圧ポンプからブリッジ管路を介して前記油圧アクチュエータに流れる作動油の流量を前記ブリッジ管路と前記油圧アクチュエータへの管路との連通・遮断状態により制御する第1スプール弁と、
前記センターバイパス管路に対して並行するパラレル管路に配置された、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに流れる作動油の流量を制御する第2スプール弁と、
前記第2スプール弁の動きを制御する制御装置と、を有し、
前記第1スプール弁及び前記第2スプール弁はコントロールバルブのバルブブロック内に形成され、
前記第1スプール弁は、戻り油管路と交差するように配置され、
前記第2スプール弁は、前記第2スプール弁により流量が制限される前記第1スプール弁の上流において前記戻り油管路と交差するように配置され且つ前記戻り油管路を遮断しないように溝が形成され
前記第2スプール弁からの作動油は、前記第1スプール弁の前記ブリッジ管路に供給され、
前記第2スプール弁の前記コントロールバルブ内における第2スプールの長さは、前記第1スプール弁の前記コントロールバルブ内における第1スプールの長さよりも短く、前記第1スプールと前記第2スプールとはそれぞれの軸線が平行になるように配置されている、
ショベル。
【請求項2】
前記第1スプール弁は、前記油圧ポンプからブームシリンダに流れる作動油の流量、及び、前記ブームシリンダから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御するブーム用第1スプール弁と、前記油圧ポンプからアームシリンダに流れる作動油の流量、及び、前記アームシリンダから前記作動油タンクに流れる作動油の流量を制御するアーム用第1スプール弁とを含み、
前記第2スプール弁は、前記油圧ポンプから前記アームシリンダに流れる作動油の流量を制御するアーム用第2スプール弁を含み、
前記ブーム用第1スプール弁及び前記アーム用第1スプール弁は、前記戻り油管路と交差するように配置され、
前記アーム用第2スプール弁は、前記バルブブロック内において前記ブーム用第1スプール弁と前記アーム用第1スプール弁との間において前記戻り油管路と交差するように配置され且つ前記戻り油管路を遮断しないように溝が形成されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記アーム用第2スプール弁を流れる作動油は、アーム用ブリッジ管路を通って前記アームシリンダに至り、
前記アーム用ブリッジ管路は、前記パラレル管路とアームボトム管路及びアームロッド管路の一方とを選択的に連通させる、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、アーム及びブームの複合動作が行われているか否かを判定し、複合動作が行われていると判定した場合に前記アーム用第2スプール弁の開口面積を低減させる、
請求項3に記載のショベル。
【請求項5】
前記アーム用ブリッジ管路と前記センターバイパス管路とは非連通である、
請求項3に記載のショベル。
【請求項6】
前記アーム用ブリッジ管路と前記センターバイパス管路との間にはチェック弁が設けられている、
請求項3に記載のショベル。
【請求項7】
下部走行体と、前記下部走行体上に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記エンジンに連結された油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動されて作業要素を動かす油圧アクチュエータと、を備えたショベルにおけるショベル用コントロールバルブであって、
前記ショベル用コントロールバルブは、
バルブブロックと、
センターバイパス管路に配置され、前記油圧ポンプからブリッジ管路を介して前記油圧アクチュエータに流れる作動油の流量を前記ブリッジ管路と前記油圧アクチュエータへの管路との連通・遮断状態により制御する第1スプール弁と、
前記センターバイパス管路に対して並行するパラレル管路に配置された、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに流れる作動油の流量を制御する第2スプール弁と、を有し、
前記第1スプール弁及び前記第2スプール弁は、前記ショベル用コントロールバルブの前記バルブブロック内に形成され、前記第1スプール弁は、戻り油管路と交差するように配置され、前記第2スプール弁は、前記第2スプール弁により流量が制限される前記第1スプール弁の上流において戻り油管路と交差するように配置され且つ前記戻り油管路を遮断しないように溝が形成され、前記第2スプール弁からの作動油は、前記第1スプール弁の前記ブリッジ管路に供給され、
前記第2スプール弁の前記ショベル用コントロールバルブ内における第2スプールの長さは、前記第1スプール弁の前記ショベル用コントロールバルブ内における第1スプールの長さよりも短く、前記第1スプールと前記第2スプールとはそれぞれの軸線が平行になるように配置されている、
ショベル用コントロールバルブ。
【請求項8】
前記第1スプール弁は、前記油圧ポンプからブームシリンダに流れる作動油の流量、及び、前記ブームシリンダから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御するブーム用第1スプール弁と、前記油圧ポンプからアームシリンダに流れる作動油の流量、及び、前記アームシリンダから前記作動油タンクに流れる作動油の流量を制御するアーム用第1スプール弁とを含み、
前記第2スプール弁は、前記油圧ポンプから前記アームシリンダに流れる作動油の流量を制御するアーム用第2スプール弁を含み、
前記ブーム用第1スプール弁及び前記アーム用第1スプール弁は、前記戻り油管路と交差するように配置され、
前記アーム用第2スプール弁は、前記バルブブロック内において前記ブーム用第1スプール弁と前記アーム用第1スプール弁との間において前記戻り油管路と交差するように配置され且つ前記戻り油管路を遮断しないように溝が形成されている、
請求項7に記載のショベル用コントロールバルブ。
【請求項9】
前記アーム用第2スプール弁を流れる作動油は、アーム用ブリッジ管路を通って前記アームシリンダに至り、
前記アーム用ブリッジ管路は、前記パラレル管路とアームボトム管路及びアームロッド管路の一方とを選択的に連通させる、
請求項8に記載のショベル用コントロールバルブ。
【請求項10】
前記アーム用ブリッジ管路と前記センターバイパス管路とは非連通である、
請求項9に記載のショベル用コントロールバルブ。
【請求項11】
前記アーム用ブリッジ管路と前記センターバイパス管路との間にはチェック弁が設けられている、
請求項9に記載のショベル用コントロールバルブ。
【請求項12】
前記第1スプール弁は、前記油圧ポンプから一のシリンダに流れる作動油の流量を制御する一の第1スプール弁と、前記油圧ポンプから他の一のシリンダに流れる作動油の流量を制御する他の一の第1スプール弁とを含み、
前記第2スプール弁は、前記バルブブロック内において前記一の第1スプール弁と前記他の一の第1スプール弁との間に配置されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項13】
前記第1スプール弁は、前記油圧ポンプから一のシリンダに流れる作動油の流量を制御する一の第1スプール弁と、前記油圧ポンプから他の一のシリンダに流れる作動油の流量を制御する他の一の第1スプール弁とを含み、
前記第2スプール弁は、前記バルブブロック内において前記一の第1スプール弁と前記他の一の第1スプール弁との間に配置されている、
請求項7に記載のショベル用コントロールバルブ。
【請求項14】
前記第2スプール弁の制御圧を調整する圧力制御弁を更に有し、
前記制御装置は、前記圧力制御弁へ制御指令を出力する、
請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの油圧ポンプが吐出する作動油を複数の油圧アクチュエータに同時に供給可能な油圧システムを備えたショベル及びそのショベルに搭載されるショベル用コントロールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の油圧アクチュエータに作動油を給排する複数のスプール弁を貫通するセンターバイパス管路を備えたショベルが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このショベルは、各油圧アクチュエータに対応するスプール弁で個別にブリードオフ制御を実行する代わりに、センターバイパス管路の最下流に設けられた統一ブリードオフ弁を用いて複数の油圧アクチュエータに関するブリードオフ制御を統一的に実行する。そのため、各スプール弁が中立位置から移動した場合であってもセンターバイパス管路の流路面積が低減しないように構成されている。
【0004】
また、アーム操作レバーが操作されたときにパラレル管路を通ってアームシリンダに流入する作動油の流量を制限できるポペット型制御弁を備えている。
【0005】
この構成により、特許文献1のショベルは、アーム閉じ及びブーム上げを含む複合動作の際に、比較的低い負荷圧のアームシリンダにメインポンプが吐出する作動油の大部分が流入してしまうのを防止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-1769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のショベルは、ポペット型制御弁を用いるため、アームシリンダに流入する作動油の流量を適切に制限できないおそれがある。そのため、複合動作の際に複数の油圧アクチュエータに作動油を適切に分配できないおそれがある。
【0008】
上述に鑑み、複合動作の際に複数の油圧アクチュエータに作動油をより適切に分配できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体上に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記エンジンに連結された油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動されて作業要素を動かす油圧アクチュエータと、センターバイパス管路に配置され、前記油圧ポンプからブリッジ管路を介して前記油圧アクチュエータに流れる作動油の流量を前記ブリッジ管路と前記油圧アクチュエータへの管路との連通・遮断状態により制御する第1スプール弁と、前記センターバイパス管路に対して並行するパラレル管路に配置された、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに流れる作動油の流量を制御する第2スプール弁と、前記第2スプール弁の動きを制御する制御装置と、を有し、前記第1スプール弁及び前記第2スプール弁はコントロールバルブのバルブブロック内に形成され、前記第1スプール弁は、戻り油管路と交差するように配置され、前記第2スプール弁は、前記第2スプール弁により流量が制限される前記第1スプール弁の上流において戻り油管路と交差するように配置され且つ前記戻り油管路を遮断しないように溝が形成され、前記第2スプール弁からの作動油は、前記第1スプール弁の前記ブリッジ管路に供給され、前記第2スプール弁の前記コントロールバルブ内における第2スプールの長さは、前記第1スプール弁の前記コントロールバルブ内における第1スプールの長さよりも短く、前記第1スプールと前記第2スプールとはそれぞれの軸線が平行になるように配置されている。
【発明の効果】
【0010】
上述の手段により、複合動作の際に複数の油圧アクチュエータに作動油をより適切に分配できるショベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るショベルの側面図である。
図2図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
図3図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。
図4】コントロールバルブの部分断面図である。
図5】第2スプール弁の部分断面図である。
図6】アーム用第1スプール弁の部分断面図である。
図7】負荷圧調整処理の一例の流れを示すフローチャートである。
図8】負荷圧調整前の状態を示すコントロールバルブの部分断面図である。
図9】負荷圧調整後の状態を示すコントロールバルブの部分断面図である。
図10図1のショベルに搭載される油圧システムの別の構成例を示す概略図である。
図11】アーム用第1スプール弁の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、図1を参照して、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベル(掘削機)について説明する。図1は、ショベルの側面図である。図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、作業要素としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、作業要素としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端に作業要素及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載されている。
【0013】
図2は、図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図であり、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインをそれぞれ二重線、太実線、破線、及び点線で示す。
【0014】
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、圧力センサ29、コントローラ30、及び、圧力制御弁31を含む。
【0015】
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施例では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作する内燃機関としてのディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。
【0016】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。メインポンプ14は、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0017】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施例では、レギュレータ13は、例えば、メインポンプ14の吐出圧、コントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0018】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26及び圧力制御弁31を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
【0019】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14が吐出する作動油の流れを制御する第1スプール弁としての制御弁171~176と第2スプール弁としての制御弁177とを含む。そして、コントロールバルブ17は、それら制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1A、右側走行用油圧モータ1B、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。コントロールバルブ17は、制御弁177を通じ、油圧アクチュエータから流出する作動油を作動油タンクに選択的に流出させる。制御弁177は、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。
【0020】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施例では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(図示せず。)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0021】
圧力センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する。圧力センサ29は、例えば、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、圧力センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0022】
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータで構成される。コントローラ30は、作業内容判定部300及び負荷圧調整部301のそれぞれに対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、それぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0023】
具体的には、コントローラ30は、各種センサの出力に基づいて作業内容判定部300及び負荷圧調整部301のそれぞれによる処理を実行する。その後、コントローラ30は、作業内容判定部300及び負荷圧調整部301のそれぞれの処理結果に応じた制御信号を適宜にレギュレータ13、圧力制御弁31等に対して出力する。
【0024】
例えば、作業内容判定部300は、各種センサの出力に基づいて不均衡な複合動作が行われているか否かを判定する。本実施例では、作業内容判定部300は、圧力センサ29の出力に基づいてブーム上げ操作及びアーム閉じ操作が行われていると判定し、且つ、アームロッド圧がブームボトム圧未満であると判定した場合に、不均衡な複合動作が行われていると判定する。ブーム4の上げ速度が遅くアーム5の閉じ速度が速いと推定できるためである。アームロッド圧は、アームシリンダ8のロッド側油室の圧力であり、アームロッド圧センサによって検出される。ブームボトム圧は、ブームシリンダ7のボトム側油室の圧力であり、ブームボトム圧センサによって検出される。そして、不均衡な複合動作が行われていると作業内容判定部300が判定した場合、負荷圧調整部301は圧力制御弁31に対して制御指令を出力する。
【0025】
圧力制御弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。本実施例では、圧力制御弁31は、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15からコントロールバルブ17内の制御弁177のパイロットポートに導入される制御圧を調整する電磁弁である。コントローラ30は、例えば、アームシリンダ8に作動油を供給するパラレル管路に設置されている制御弁177を作動させて制御弁177に関する流路の開口面積を低減させる。この構成により、コントローラ30は、アーム閉じ及びブーム上げを含む複合動作の際に、比較的低い負荷圧のアームシリンダ8にメインポンプ14が吐出する作動油の大部分が流入してしまうのを防止できる。制御弁177は、制御弁176とアームシリンダ8のロッド側油室との間に設置されていてもよい。
【0026】
圧力制御弁31は、バケット6の開閉を含む複合動作の際に、比較的低い負荷圧のバケットシリンダ9に作動油の大部分が流入してしまわないよう、バケットシリンダ9に作動油を供給するパラレル管路に設置されている制御弁に関する流路の開口面積を低減させてもよい。同様に、圧力制御弁31は、ブーム4の上げ下げを含む複合動作の際に、比較的低い負荷圧のブームシリンダ7に作動油の大部分が流入してしまわないよう、ブームシリンダ7に作動油を供給するパラレル管路に設置されている制御弁に関する流路の開口面積を低減させてもよい。
【0027】
次に図3を参照し、ショベルに搭載される油圧システムの詳細について説明する。図3は、図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。図3は、図2と同様に、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインを、それぞれ二重線、太実線、破線、及び点線で示す。
【0028】
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。メインポンプ14L、14Rは、図2のメインポンプ14に対応する。
【0029】
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175A及び176Aを通る作動油ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175B及び176Bを通る作動油ラインである。
【0030】
制御弁171は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Aへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0031】
制御弁172は、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Bへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Bが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0032】
制御弁173は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0033】
制御弁174は、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
【0034】
制御弁175A、175Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるブーム用第1スプール弁としてのスプール弁である。本実施例では、制御弁175Aは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
【0035】
制御弁176A、176Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるアーム用第1スプール弁としてのスプール弁である。
【0036】
制御弁177は、パラレル管路42Rを通って制御弁176Bに流れる作動油の流量を制御するアーム用第2スプール弁としてのスプール弁である。制御弁177は、最大開口面積(例えば開度100%)の第1弁位置と最小開口面積(例えば開度10%)の第2弁位置とを有する。制御弁177は、第1弁位置と第2弁位置との間で無段階に移動可能である。制御弁177は、制御弁176Bとアームシリンダ8との間に設置されていてもよい。
【0037】
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Aの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Bの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0038】
レギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。レギュレータ13L、13Rは、図2のレギュレータ13に対応する。具体的には、レギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0039】
アーム操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、アーム5を操作するために用いられる。アーム操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176A、176Bのパイロットポートに導入させる。具体的には、アーム操作レバー26Aは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Aの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Bの左側パイロットポートに作動油を導入させる。アーム操作レバー26Aは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Aの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Bの右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0040】
ブーム操作レバー26Bは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。ブーム操作レバー26Bは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175A、175Bのパイロットポートに導入させる。具体的には、ブーム操作レバー26Bは、ブーム上げ方向に操作された場合に、制御弁175Aの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Bの左側パイロットポートに作動油を導入させる。一方、ブーム操作レバー26Bは、ブーム下げ方向に操作された場合には、制御弁175Aの左側パイロットポートに作動油を導入させることなく、制御弁175Bの右側パイロットポートにのみ作動油を導入させる。
【0041】
圧力センサ29A、29Bは、圧力センサ29の一例であり、アーム操作レバー26A、ブーム操作レバー26Bに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0042】
左右走行レバー(又はペダル)、バケット操作レバー、及び旋回操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、下部走行体1の走行、バケット6の開閉、及び、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、アーム操作レバー26Aと同様に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じた制御圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに導入させる。これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、圧力センサ29Aの場合と同様、対応する圧力センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
【0043】
コントローラ30は、圧力センサ29A等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13L、13Rに対して制御信号を出力し、メインポンプ14L、14Rの吐出量を変化させる。
【0044】
圧力制御弁31は、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15から制御弁177のパイロットポートに導入される制御圧を調整する。圧力制御弁31は、制御弁177を第1弁位置と第2弁位置の間の任意の位置で停止できるように制御圧を調整可能である。
【0045】
ここで、図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御(以下、「ネガコン制御」とする。)について説明する。
【0046】
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある制御弁176A、176Bのそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。
【0047】
破線で示されるネガコン圧管路41L、41Rは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生させたネガコン圧をレギュレータ13L、13Rに伝達するためのパイロットラインである。
【0048】
レギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。本実施例では、レギュレータ13L、13Rは、導入されるネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、導入されるネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
【0049】
具体的には、図3で示されるように、ショベルにおける油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合(以下、「待機モード」とする。)、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0050】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、低下したネガコン圧を受けるレギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0051】
上述のような構成により、図3の油圧システムは、待機モードにおいては、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。
【0052】
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
【0053】
次に図4図6を参照し、制御弁177の構成について説明する。図4はコントロールバルブ17の部分断面図である。図5図4の一点鎖線で示す線分L1を含む平面を-X側から見た制御弁177の部分断面図である。図6図4の二点鎖線で示す線分L2を含む平面を-X側から見た制御弁176Bの部分断面図である。図4は、図5の一点鎖線で示す線分L3と図6の一点鎖線で示す線分L4とを含む平面を+Z側から見た部分断面図に相当する。図4の太い実線矢印はセンターバイパス管路40Rにおける作動油の流れを示す。
【0054】
本実施例では、制御弁175B、制御弁176B、及び制御弁177はコントロールバルブ17のバルブブロック17B内に形成されている。制御弁177は、制御弁175Bと制御弁176Bとの間に配置されている。すなわち、制御弁177は制御弁175Bの+X側で且つ制御弁176Bの-X側に配置されている。
【0055】
図4に示すように、センターバイパス管路40Rは、制御弁175Bのスプールの下流側で左右2つの管路に分岐し、その後に合流して1つの管路に戻る。そして、1つの管路の状態で次の制御弁176Bに通じている。アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bが何れも中立状態の場合、センターバイパス管路40Rを流れる作動油は、図4の太い実線矢印で示すように、各制御弁のスプールを横切ってその下流側に流れる。
【0056】
制御弁177は、図5に示すように、センターバイパス管路40Rの-Y側に配置されている。図5は、制御弁177が開度100%の第1弁位置にあることを示す。制御弁177は、第1弁位置のときに、ブリッジ管路42Ruとブリッジ管路42Rdとを繋ぐ流路の開口面積を最大にして作動油が最も流れ易い状態を創出する。そして、圧力制御弁31が生成する制御圧の上昇に応じてバネ177sが収縮すると+Y側に移動してブリッジ管路42Ruとブリッジ管路42Rdとを繋ぐ流路の開口面積を低減させて作動油を流れ難くする。ブリッジ管路42Ru及びブリッジ管路42Rdはパラレル管路42Rの一部であり、制御弁177の下流にあるブリッジ管路42Rdにはポペット型チェック弁42Rcが設置されている。ポペット型チェック弁42Rcは、ブリッジ管路42Ruからブリッジ管路42Rdに向かって作動油が逆流するのを防止する。
【0057】
制御弁176Bのスプールは、図6の双方向矢印で示すように、アーム操作レバー26Aが閉じ方向に操作された場合に-Y側に移動し、開き方向に操作された場合に+Y側に移動する。制御弁176Bは、パラレル管路42Rがアーム用ブリッジ管路44Rを介してアームボトム管路47B及びアームロッド管路47Rの何れか一方に選択的に連通可能となるように構成されている。本実施例では、アーム用ブリッジ管路44Rの断面形状(図6参照。)は、ブリッジ管路42Ru及びブリッジ管路42Rdの断面形状を含むように、且つ、Z軸方向における位置(高さ)が同じになるように構成されている。具体的には、スプールが-Y方向に移動すると、センターバイパス管路40Rが遮断される。そして、スプールに形成された溝によってアーム用ブリッジ管路44Rとアームボトム管路47Bとが連通され、且つ、アームロッド管路47Rと戻り油管路49とが連通される。そして、パラレル管路42Rを流れる作動油が接続管路42Ra、アーム用ブリッジ管路44R、及びアームボトム管路47Bを通ってアームシリンダ8のボトム側油室に流入する。また、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油がアームロッド管路47R及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。その結果、アームシリンダ8が伸張してアーム5が閉じられる。或いは、スプールが+Y方向に移動すると、センターバイパス管路40Rが遮断される。そして、スプールに形成された溝によってアーム用ブリッジ管路44Rとアームロッド管路47Rとが連通され、且つ、アームボトム管路47Bと戻り油管路49とが連通される。そして、パラレル管路42Rを流れる作動油が接続管路42Ra、アーム用ブリッジ管路44R、及びアームロッド管路47Rを通ってアームシリンダ8のロッド側油室に流入する。また、アームシリンダ8のボトム側油室から流出する作動油がアームボトム管路47B及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。その結果、アームシリンダ8が収縮してアーム5が開かれる。
【0058】
次に図7図9を参照し、コントローラ30が制御弁177に関する流路の開口面積を低減させて負荷圧の不均衡を調整する処理(以下、「負荷圧調整処理」とする。)について説明する。図7は負荷圧調整処理の流れを示すフローチャートである。ブーム上げ及びアーム閉じの複合動作中、コントローラ30は所定の制御周期で繰り返しこの負荷圧調整処理を実行する。図8及び図9は、図4に対応し、アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bが操作されたときのコントロールバルブ17の状態を示す。そして、図8は負荷圧調整処理を実行していないときの状態を示し、図9は負荷圧調整処理を実行しているときの状態を示す。
【0059】
ブーム操作レバー26Bがブーム上げ方向に操作されると、制御弁175Bは図8及び図9の矢印AR1で示すように-Y方向に移動してセンターバイパス管路40Rを遮断する。これにより、センターバイパス管路40Rの作動油は、制御弁175Bのスプールによって遮断され、その下流側には流れない。また、制御弁175Bのスプールに形成された溝によってブーム用ブリッジ管路43Rとブームボトム管路48Bとが連通され、且つ、ブームロッド管路48Rと戻り油管路49とが連通される。そして、パラレル管路42Rを流れる作動油が接続管路42Ra、ブーム用ブリッジ管路43R、及びブームボトム管路48Bを通ってブームシリンダ7のボトム側油室に流入する。また、ブームシリンダ7のロッド側油室から流出する作動油がブームロッド管路48R及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。その結果、ブームシリンダ7が伸張してブーム4が上げられる。図8及び図9は、パラレル管路42R及びブーム用ブリッジ管路43Rを流れる作動油を細い点線矢印で表す。また、ブーム用ブリッジ管路43Rからブームボトム管路48Bに流れる作動油、及び、ブームロッド管路48Rから戻り油管路49に流れる作動油を細い実線矢印で表す。矢印の太さは作動油の流量を表し、矢印が太いほど流量が大きいことを表す。
【0060】
アーム操作レバー26Aがアーム閉じ方向に操作されると、制御弁176Bは図8及び図9の矢印AR2で示すように-Y方向に移動してセンターバイパス管路40Rを遮断する。これにより、センターバイパス管路40Rの作動油は、制御弁176Bのスプールによって遮断され、その下流側には流れない。また、制御弁176Bのスプールに形成された溝によってアーム用ブリッジ管路44Rとアームボトム管路47Bとが連通され、且つ、アームロッド管路47Rと戻り油管路49とが連通される。そして、パラレル管路42Rを流れる作動油が接続管路42Ra、アーム用ブリッジ管路44R、及びアームボトム管路47Bを通ってアームシリンダ8のボトム側油室に流入する。また、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油がアームロッド管路47R及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。その結果、アームシリンダ8が伸張してアーム5が閉じられる。図8及び図9は、パラレル管路42R及びアーム用ブリッジ管路44Rを流れる作動油を太い点線矢印で表す。また、制御弁177を通過する作動油、アーム用ブリッジ管路44Rからアームボトム管路47Bに流れる作動油、及び、アームロッド管路47Rから戻り油管路49に流れる作動油を太い実線矢印で表す。
【0061】
負荷圧調整処理では、図7に示すようにコントローラ30の作業内容判定部300は不均衡な複合動作が行われているか否かを判定する(ステップS1)。例えば、アームロッド圧がブームボトム圧未満の場合に不均衡な複合動作が行われていると判定する。
【0062】
不均衡な複合動作が行われていると作業内容判定部300が判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30の負荷圧調整部301は、ブリッジ管路42Ruとブリッジ管路42Rdとを繋ぐ流路の開口面積を低減させる(ステップS2)。本実施例では、負荷圧調整部301は、圧力制御弁31に対して電流指令を出力することで、圧力制御弁31が生成する制御圧を上昇させる。制御弁177は、図9の矢印AR3で示すように、制御圧の上昇に応じて+Y側に移動し、ブリッジ管路42Ruとブリッジ管路42Rdとを繋ぐ流路の開口面積を低減させる。その結果、ブリッジ管路42Ruから制御弁177を通ってブリッジ管路42Rdに流れる作動油の流量が制限されてブリッジ管路42Ru内の作動油の圧力がブームボトム圧と同じレベルまで上昇する。この構成により、コントローラ30は、比較的低い負荷圧のアームシリンダ8にメインポンプ14が吐出する作動油の大部分が流入してしまうのを防止できる。すなわち、ブーム4の上げ速度が遅くアーム5の閉じ速度が速い不均衡な複合動作が行われてしまうのを防止できる。
【0063】
不均衡な複合動作が行われていないと作業内容判定部300が判定した場合(ステップS1のNO)、負荷圧調整部301は、ブリッジ管路42Ruとブリッジ管路42Rdとを繋ぐ流路の開口面積を低減させない。
【0064】
なお、作業内容判定部300は、ブーム上げ操作及びアーム閉じ操作が行われていると判定し、且つ、アームロッド圧がブームボトム圧以上であると判定した場合に、不均衡な複合動作が行われていると判定してもよい。ブーム4の上げ速度が速くアーム5の閉じ速度が遅いと推定できるためである。この場合、負荷圧調整部301は、制御弁177に関する流路の開口面積が既に低減されている状態であれば、圧力制御弁31が生成する制御圧を低下させる。制御弁177は、制御圧の低下に応じて-Y側に移動し、ブリッジ管路42Ruとブリッジ管路42Rdとを繋ぐ流路の開口面積を増大させる。その結果、ブリッジ管路42Ruから制御弁177を通ってブリッジ管路42Rdに流れる作動油の流量が増大してブリッジ管路42Ru内の作動油の圧力がブームボトム圧と同じレベルまで低下する。この構成により、コントローラ30は、比較的低い負荷圧のブームシリンダ7にメインポンプ14が吐出する作動油の大部分が流入してしまうのを防止できる。すなわち、ブーム4の上げ速度が速くアーム5の閉じ速度が遅い不均衡な複合動作が行われてしまうのを防止できる。
【0065】
上述の実施例では、コントローラ30は、ブーム4及びアーム5の不均衡な複合動作が行われていると判定した場合に制御弁177に関する流路の開口面積を増減させることでその不均衡な複合動作が継続されてしまうのを抑制し或いは防止する。この処理は、ブーム4及びバケット6の不均衡な複合動作、アーム5及びバケット6の不均衡な複合動作等の他の不均衡な複合動作が継続されてしまうのを抑制し或いは防止するために実行されてもよい。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に限定されることはない。上述した実施例には、本発明の範囲を逸脱することなしに種々の変形及び置換が適用され得る。
【0067】
例えば、上述の実施例では、制御弁177はコントロールバルブ17のバルブブロック17B内に組み込まれている。そのため、バルブブロック17Bの外部に制御弁177を取り付ける必要がなく、制御弁177を含む低コストでコンパクトな油圧システムを実現できる。但し、本発明は、バルブブロック17Bの外部に制御弁177を取り付ける構成を排除しない。すなわち、制御弁177はバルブブロック17Bの外部に設置されていてもよい。
【0068】
また、上述の実施例では、各油圧アクチュエータに対応する第1スプール弁で個別にブリードオフ制御を実行する構成が採用されているが、センターバイパス管路と作動油タンクとの間に設けられた統一ブリードオフ弁を用いて複数の油圧アクチュエータに関するブリードオフ制御を統一的に実行する構成が採用されてもよい。この場合、各第1スプール弁が中立位置から移動した場合であってもセンターバイパス管路の流路面積が低減しないよう、すなわち、各第1スプール弁がセンターバイパス管路を遮断しないように構成される。この統一ブリードオフ弁が用いられた場合であっても、本願発明の適用に際しては、センターバイパス管路とは別に、パラレル管路が形成される。
【0069】
また、上述の実施例では、図3に示すように、アーム用ブリッジ管路44Rとセンターバイパス管路40Rとは非連通である。しかしながら、アーム用ブリッジ管路44Rとセンターバイパス管路40Rとは、図10に示すように、接続管路45Rを介して接続されていてもよい。この場合、アーム用ブリッジ管路44Rとセンターバイパス管路40Rとの間の接続管路45Rには開弁圧を調整可能な可変チェック弁46Rが設けられる。可変チェック弁46Rは、制御弁177に関する流路の開口面積が低減されたときには、アーム用ブリッジ管路44Rからセンターバイパス管路40Rへの作動油の流ればかりでなく、センターバイパス管路40Rからアーム用ブリッジ管路44Rへの作動油の流れも遮断するように構成される。
【0070】
図11は、アーム用ブリッジ管路44Rとセンターバイパス管路40Rとが接続管路45Rを介して接続された場合の制御弁176Bの部分断面図であり、図6に対応する。図11の破線は、可変チェック弁46Rの移動経路を示す。センターバイパス管路40Rとパラレル管路42Rとを接続する接続管路45Rは、可変チェック弁46Rによって連通・非連通が切り替えられる。アーム5の単独動作の場合には、アームシリンダ8以外のブームシリンダ7等の他の油圧アクチュエータは非操作状態にあり、アーム操作レバー26A以外の操作レバーは中立状態にある。そのため、制御弁176Bの上流側に配置された制御弁172、174、175Bにおいては、センターバイパス管路40Rは、連通状態に維持されている。したがって、メインポンプ14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40Rを通って制御弁176Bに向かう。このとき、コントローラ30は、図11に示すように可変チェック弁46Rを開くことで、接続管路45Rを通じてセンターバイパス管路40Rの作動油をアームシリンダ8に流入させることができる。つまり、制御弁177を通る作動油と、センターバイパス管路40R及び接続管路45Rを通る作動油とを合わせてアームシリンダ8に供給できる。
【0071】
ブーム4とアーム5の複合動作の場合には、コントローラ30は、制御弁177に関する流路の開口面積を低減させてパラレル管路42Rの管路抵抗を増大させる。また、可変チェック弁46Rにより接続管路45Rを遮断する。そのため、アームシリンダ8に流入する作動油の流れを抑制できる。
【0072】
本願は、2016年3月22日に出願した日本国特許出願2016-057338号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0073】
1・・・下部走行体 1A・・・左側走行用油圧モータ 1B・・・右側走行用油圧モータ 2・・・旋回機構 2A・・・旋回用油圧モータ 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 13、13L、13R・・・レギュレータ 14、14L、14R・・・メインポンプ 15・・・パイロットポンプ 17・・・コントロールバルブ 17B・・・バルブブロック 18L、18R・・・ネガティブコントロール絞り 26・・・操作装置 26A・・・アーム操作レバー 26B・・・ブーム操作レバー 29、29A、29B・・・圧力センサ 30・・・コントローラ 31・・・圧力制御弁 40L、40R・・・センターバイパス管路 41L、41R・・・ネガコン圧管路 42L、42R・・・パラレル管路 42Rc・・・ポペット型チェック弁 42Ra・・・接続管路 42Ru、42Rd・・・ブリッジ管路 43R・・・ブーム用ブリッジ管路 44R・・・アーム用ブリッジ管路 45R・・・接続管路 46R・・・可変チェック弁 47B・・・アームボトム管路 47R・・・アームロッド管路 48B・・・ブームボトム管路 48R・・・ブームロッド管路 49・・・戻り油管路 171~174、175A、175B、176A、176B、177・・・制御弁 177s・・・バネ 300・・・作業内容判定部 301・・・負荷圧調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11