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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】型作製方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/02 20060101AFI20230417BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230417BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20230417BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20230417BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20230417BHJP
   B22C 11/00 20060101ALI20230417BHJP
   B22C 1/00 20060101ALN20230417BHJP
   B22C 1/18 20060101ALN20230417BHJP
   B22C 1/20 20060101ALN20230417BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALN20230417BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALN20230417BHJP
【FI】
B22C9/02 101Z
B33Y10/00
B29C64/165
B29C64/386
B28B1/30
B22C11/00 Z
B22C1/00 B
B22C1/18 Z
B22C1/20 Z
B33Y30/00
B33Y50/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019003454
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020110824
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】扇 嘉史
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/141782(WO,A1)
【文献】特開2015-189035(JP,A)
【文献】特開2017-159556(JP,A)
【文献】特開2017-164813(JP,A)
【文献】特開2003-001368(JP,A)
【文献】特開2016-028872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/02
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
の一部を作製するためのステージを、基準面に対して相対的に低い位置に移動させる昇降手順と、一方側から前記ステージを渡って他方側に移動するリコーターによって、一方側にある粉体材料を、前記基準面から前記ステージに移動させて均す材料充填手順と、前記ステージの前記粉体材料にプリンタヘッドから結合剤を吹き付けることで前記粉体材料を固化させる造形手順と、を含み、前記昇降手順、前記材料充填手順、前記造形手順を繰り返すことで、鋳物の鋳造に用いる前記の一部を作製し、当該型の一部を組み合わせて前記型を作製する型作製方法であって、
前記型の一部のうち、前記鋳物を成形する面が、上面側となる向きで、当該型の一部を作製し、複数の当該型の一部を組み合わせて、前記型を作製する、
ことを特徴とする型作製方法。
【請求項2】
前記型の一部のうち、表面積が最も大きい箇所が、上面側となる向きで、当該型の一部を作製し、複数の当該型の一部を組み合わせて、前記型を作製する、
ことを特徴とする請求項1に記載された型作製方法。
【請求項3】
記鋳物を形成する面で面を形成した前記型を作製して主型とする、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された型作製方法。
【請求項4】
前記鋳物を形成する面で外面を形成した前記型を作製して中子とする、
ことを特徴とする請求項1または請求項に記載された型作製方法。
【請求項5】
前記型を、40度から150度の雰囲気中で乾燥させる手順を経る、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された型作製方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、型作製方法および三次元造形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピューターグラフィックス(CG:computer graphics)などで描かれた三次元の形状を、樹脂材料や粉体材料などで具現化する三次元造形装置として、いわゆる3Dプリンターがある。3Dプリンターによる立体物の作製方法は様々であり、例えば、樹脂材料で造形するものとして材料押出法があり、また、粉体材料で造形するものとして結合剤噴射法(バインダジェット法)がある。
【0003】
結合剤噴射法によれば、例えば、下記特許文献1に記載された結合剤噴射方式付加製造装置用セメント組成物が、粉体材料として用いられ、所望の位置に水性バインダを吹き付けることで粉体材料を固化させて立体物が作製される。立体物は、例えば、鋳物を鋳造する際に、溶融した金属やプラスチックなど(以下、「溶融体」と記す。)が注入される鋳型に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-178671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したような水硬性の粉体材料によって製造された立体物は、立体物に付着した粉体材料を除去する手順(以下、粉体材料を除去する手順を、「デパウダー」と記す。)を経る必要があるところ、仮に粉体材料が付着した状態で、鋳型として用いられると、鋳物の寸法精度が低く、鋳肌も荒くなる。
【0006】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、デパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための型を作製することができる型作製方法および三次元造形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
結合剤噴射法の三次元造形装置によって製造された立体物は、面に応じてデパウダーの容易さ(粉体材料の付着し易さ)が異なる。そこで、この三次元造形装置で鋳型を製造する際、比較的デパウダーが容易である面を、溶融体が流し込まれて鋳物が成形される面(以下、「鋳物成形面」と記す。)とすることで、鋳物成形面のデパウダーが容易となる。デパウダーが適切であれば、鋳造するうえで、鋳肌も滑らかで適切となる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る型作製方法は、型を作製するためのステージを、基準面に対して相対的に低い位置に移動させる昇降手順と、一方側から前記ステージを渡って他方側に移動するリコーターによって、一方側にある粉体材料を、前記基準面から前記ステージに移動させて均す材料充填手順と、前記ステージの前記粉体材料にプリンタヘッドから結合剤を吹き付けることで前記粉体材料を固化させる造形手順と、を含み、前記昇降手順、前記材料充填手順、前記造形手順を繰り返すことで、鋳物の鋳造に用いる型を作製する型作製方法であって、前記型のうち、前記鋳物を成形する面が、上面側となる向きで、当該型を作製する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る型作製方法は、前記型のうち、表面積が最も大きい箇所が、上面側となる向きで、当該型を作製することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る型作製方法は、前記型を組み合わせて、前記鋳物を形成する面で外面を形成した中子を作製する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る型作製方法は、前記型を、40度から150度の温度で乾燥させる手順を経る、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る三次元造形装置は、基準面に対して相対的に低い位置に所定量移動するステージと、一方側から前記ステージを渡って他方側に移動することで、一方側にある粉体材料を、前記基準面から前記ステージに移動させて均すリコーターと、前記ステージの前記粉体材料に結合剤を吹き付けることで前記粉体材料を固化させるプリンタヘッドと、を有し、前記ステージによる昇降手順、前記リコーターによる材料充填手順、前記プリンタヘッドによる造形手順を繰り返すことで、鋳物の鋳造に用いる型を作製する三次元造形装置であって、前記型のうち、前記鋳物を成形する面が、上面側となる当該型の向きを決定する方向決定手段を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る型作製方法は、型のうち、鋳物を成形する面が、上面側となる向きで、当該型を作製するものである。すなわち、作製された型の上面が、鋳物成形面となる。型におけるデパウダーの容易さは、下面と比較して上面が優れていることから、型の上面が鋳物成形面であれば、鋳物成形面のデパウダーが容易であり、鋳物成形面が滑らかで適切となる。したがって、デパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための型を作製することができる。
【0014】
例えば、複数の型が組み合わさって主型が構成される場合、それぞれの型における鋳物成形面が互いに内側において向かい合う。すなわち、主型の鋳物成形面(主型の内側)はすべて、デパウダーの容易さが優れた面である。したがって、デパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための主型を作製することができる。
【0015】
本発明に係る型作製方法は、型のうち、表面積が最も大きい箇所が、上面側となる向きで、当該型を作製するものである。例えば、複雑な形状の鋳物を鋳造する場合、型の鋳物成形面も、当然に鋳物と同形であって複雑である。そのため、複雑な形状の鋳物を適切に鋳造するためには、鋳物成形面を適切とするために、鋳物成形面のデパウダーが容易であることが好ましい。一般的に、複雑な形状は、表面積が比較的大きいことから、表面積が最も大きな鋳物成形面が型の上面となる向きで当該型を製造する。したがって、複雑な鋳物成形面であってもデパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための型を作製することができる。
【0016】
本発明に係る型作製方法は、型を組み合わせて、鋳物を形成する面で外面を形成した中子を作製するものである。すなわち、中子は外周面のすべてが鋳物成形面であるところ、この中子が例えば半分ずつ作成され、デパウダーの容易さが優れた鋳物成形面を有する型が組み合わさって作製されれば、中子の外面はすべて、デパウダーの容易さが優れた面である。したがって、デパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための中子を作製することができる。
【0017】
本発明に係る型作製方法は、40度から150度の温度で乾燥させる手順を経てもよい。すなわち、型を所定の温度で乾燥させることで、デパウダーの容易さが増す。したがって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための型を作製することができる。
【0018】
本発明に係る三次元造形装置は、型のうち、鋳物を成形する面が、上面側となる当該型の向きを決定する方向決定手段を有する。したがって、デパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための型を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る型作製方法に用いられる三次元造形装置の概略が示され、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る型作製方法によって作製された型の外観斜視図である。
図3図3は、比較例に係る型作製方法によって作製された型の外観斜視図である。
図4図4は、参考例に係る型作製方法によって作製された型の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の第一実施形態に係る型作製方法を図面に基づいて説明する。図1は、型作製方法に用いられる三次元造形装置(以下、三次元造形装置を「3Dプリンター」と記す。)の構成の概略が示されている。
【0021】
3Dプリンター1は、三次元で表された鋳型Mのデータに基づいて、結合剤噴射方式で型Mを具現化するものである。はじめに、3Dプリンター1の構成の概略を説明する。
【0022】
図1に示されているとおり、3Dプリンター1は、基準面2に対して昇降するステージ3と、このステージ3の外側であって基準面2上にある材料載置部4と、この材料載置部4に粉体材料5を供給する材料供給部(図示省略)と、粉体材料5を材料載置部4からステージ3に移動させて均すリコーター6と、ステージ3上の粉体材料5に結合剤を吹き付けるプリンタヘッド7と、このプリンタヘッド7を自在に移動させるガイド部8とを有している。なお、以下の説明では、図1に示されているとおり、互いに直交する三軸をX軸、Y軸、Z軸とし、ステージ3に平行で、かつ、ステージ3の横幅方向をX軸、ステージ3に並行で、かつ、ステージ3の奥行方向をY軸、ステージ3が昇降する高さ方向をZ軸とする。X軸において、横幅の一方を右側とし、他方を左側とする。Y軸において、一方側を奥側とし、他方側を手前側とする。
【0023】
ステージ3は、四角形の平板状であり、鋳型Mが作製される場所である。ステージ3は、下面側に昇降機構9が取り付けられ、昇降機構9が作動することによって、Z軸を昇降する。材料載置部4は、ステージ3の外側であって、ステージ3の奥側に配置されている。材料供給部は、ステージ3の外側であって、材料載置部4の上方に配置されている。なお、材料供給部は、ステージ3の外側であって、材料載置部4の奥側に配置されていてもよい。リコーター6は、X軸方向に長手の棒状であり、基準面2上に配置されている。リコーター6は、基準面2上を、ステージ3に対して平行な状態で、Y軸において、材料載置部4の奥側とステージ3の手前側との間を自在に移動する。ガイド部8は、X軸方向に長手であり、ステージ3に対して平行な状態で、Y軸において、ステージ3の奥側と手前側との間を自在に移動する。プリンタヘッド7は、ガイド部8に支持され、X軸において、ガイド部8を自在に移動する。
【0024】
次に、3Dプリンター1を用いた結合剤噴射方式による鋳型Mの作製手順を説明する。3Dプリンター1は、三次元で表された所望の鋳型Mのデータが入力されている。作製手順は、方向決定手順、材料供給手順、材料充填手順、造形手順、乾燥手順、デパウダー手順を含む。各手順は、方向決定手段、材料供給手段、材料充填手段、造形手段、乾燥手段、デパウダー手段として、3Dプリンター1に備えられている。なお、乾燥手順(乾燥手段)およびデパウダー手順(デパウダー手段)は、3Dプリンター1とは別個の装置(図示省略)で実現してもよい。乾燥手順は、必須ではない。
【0025】
方向決定手順では、作製される鋳型Mの向きが決定される。詳説すれば、鋳型Mのうち、鋳物成形面が上面側となるように、鋳型Mの向きが決定される。鋳物成形面の選択は任意であるが、鋳型Mのうち、最も複雑な形状を有する箇所が、鋳物成形面として選択される。例えば、表面積が最も大きな箇所の他、高低差、凹凸、曲線などが最も顕著な箇所が、鋳物成形面として選択される。換言すれば、鋳型Mのうち、溶融体が流し込まれず、鋳物と接触しない面が、下面側や側面側となる。
【0026】
図1において、初期状態では、ステージ3は、基準面2と同一平面上に揃って配置される。昇降手順では、昇降機構9が作動することで、ステージ3がZ軸を下降し、ステージ3は、予め設定された所定量だけ、基準面2に対して相対的に低い位置に移動する。
【0027】
材料供給手順では、粉体材料5が、材料供給部から材料載置部4に供給される。粉体材料5は、材料載置部4に盛られる。なお、昇降手順と材料供給手順とは、順番に実行されても、同時に実行されてもよい。
【0028】
材料充填手順では、リコーター6が、Y軸において、材料載置部4の奥側からステージ3を渡って手前側に移動することで、粉体材料5が、材料載置部4からステージ3に移させられる。リコーター6が、基準面2に沿ってステージ3上を移動することで、粉体材料5がステージ3上で均される。場合によっては、材料供給手順が複数回繰り返されることで、ステージ3に粉体材料5が充填されて均される。
【0029】
造形手順では、ガイド部8がY軸方向に移動すると共に、プリンタヘッド7がX軸方向に移動しながら、予め設定された位置で、プリンタヘッド7から結合剤が噴射され、結合剤が吹き付けられた箇所で粉体材料5が固化する。ガイド部8およびプリンタヘッド7の動作について詳説すれば、例えば、ガイド部8は、最初に、作製位置における最も手前側に配置される。この位置で、プリンタヘッド7がガイド部8に沿って右側から左側に移動しながら結合剤を噴射する。次に、ガイド部8は、所定量だけ奥側に移動し、この位置で、プリンタヘッド7が右側から左側に移動しながら結合剤を噴射する。この動作が繰り返され、ガイド部7は、鋳型Mにおける最も奥側まで移動する。
【0030】
一巡目の昇降手順、材料供給手順、材料充填手順および造形手順によれば、所望の鋳型Mのうち、ステージ3が下降した所定量に相当する高さの第一積層物が造形される。このように、昇降手順、材料供給手順、材料充填手順および造形手順が複数回繰り返されることで、Z軸方向に連なった第一積層物から第n積層物が、所望の鋳型Mとなってステージ3上に作製される。ここで、第一積層物から上側が鋳物成形面となり、第一積層物の下面は、溶融体や鋳物と接触しない面となる。
【0031】
乾燥手順では、粉体材料5に埋もれた状態、または、粉体材料5が適度に除去された鋳型Mが、3時間以上放置されて乾燥させられる。その際、鋳型Mは、40度から150度の雰囲気中で乾燥させられる。乾燥手順では、温度を高くするにしたがって、時間を短くしてもよい。例えば、150度であれば、5分程度であってもよい。なお、150度を超えると、組織が破壊されて鋳型Mが脆弱となる可能性がある。また、乾燥手順では、常温(例えば約20度の室温)で3時間以上乾燥させてもよい。また、3Dプリンター1以外の他の装置(図示省略。)で実行してもよい。乾燥手順を実行しなくても、鋳型Mの上面側はデパウダーが容易であるし、乾燥手順を実行することで、下面側もデパウダーが容易となる。後述の本発明の第二実施形態である中子を一体物として作製した場合も、複雑な面を上面側として作製し、乾燥手順を実行すれば、比較的美麗な鋳肌で容易にデパウダーが可能な中子となる。
【0032】
デパウダー手順では、鋳型Mに付着した粉体材料5が、例えば、刷毛やエアコンプレッサーのエアーなどによって除去される。なお、デパウダー手順は、3Dプリンター1以外の他の装置(図示省略。)で乾燥手順が実行されてもよい。
【0033】
第一実施形態において作製される鋳型Mの形状は様々である。例えば、単一の鋳型Mで主型が構成される場合や、複数の鋳型Mが組み合わさって主型が構成される場合などがある。前者であれば、主型(単一の鋳型M)における特定の外面が、鋳物成形面となり、後者であれば、主型の内側(複数の鋳型Mで囲まれた内側)が、鋳物成形面となる。後者の場合、例えば、上下に二分される主型のうち、上側の鋳型Mと下側の鋳型Mとが別々に作製された後、各鋳型Mが組み合わせられる。各鋳型Mは、鋳物成形面が上面側となる向きで作製され、各鋳型Mが組み合わせられる際、上側の鋳型Mの鋳物成形面が下側に向けられ、下側の鋳型Mの鋳物成形面が上側に向けられる。完成した主型は、内側のすべてが鋳物成形面となり、主型の内側である中空部分は、鋳物成形面のみで構成される。
【0034】
本発明の第二実施形態に係る型作製方法では、第一実施形態に係る型作製方法によって作製された鋳型Mが組み合わせられて、中子が作製される。中子は、例えば中空状の鋳物を鋳造する際に、中空部分となる箇所の型として用いられる。すなわち、鋳型Mが組み合わさって作製された中子は、外面のすべてが鋳物成形面となる。
【0035】
次に、作製方法に用いられる粉体材料5を説明する。
【0036】
粉体材料5は、セメントや石膏、石灰などの水硬性組成物であり、例えば、カルシウムアルミネートを、特定割合含む結合材100質量部に対し、ポリマーを特定割合含有する。詳説すれば、水硬性組成物は、下記の構成を有する。
【0037】
[1]カルシウムアルミネートを50~100質量%含む結合材100質量部に対し、ポリマーを2~12質量部含有する、水硬性組成物。
[2]前記カルシウムアルミネートが非晶質カルシウムアルミネートである、前記[1]に記載の水硬性組成物。
[3]前記ポリマーがポリビニルアルコールである、前記[1]または[2]に記載の水硬性組成物。
[4]前記ポリビニルアルコールのケン化度が80~90モル%である、前記[3]に記載の水硬性組成物。
[5]前記ポリビニルアルコールの平均粒径が、150μm以下である、前記[3]または[4]に記載の水硬性組成物。
[6]前記結合材が、結合材全体を100質量%として、JIS R 5210に準拠して測定した凝結(始発)が30分以内であるセメントを、0~20質量%含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の水硬性組成物。
[7]前記結合材が、結合材全体を100質量%として、石膏を無水石膏換算で0~5質量%含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0038】
上記した水硬性組成物は、強度発現性と耐熱性が高いため、鋳型Mに用いた場合、鋳造時のガスの発生が少なく、欠陥のない鋳物を製造することができる。
【0039】
水硬性組成物は、カルシウムアルミネートを50~100質量%含む結合材100質量部に対し、ポリマーを2~12質量部含有する。
【0040】
以下、結合材の必須の成分であるカルシウムアルミネートと、任意の成分であるセメント等に分けて詳細に説明する。
【0041】
<カルシウムアルミネート>
該カルシウムアルミネートは、3CaO・Al、2CaO・Al、12CaO・7Al、5CaO・3Al、CaO・Al、3CaO・5Al、またはCaO・2Al等のカルシウムアルミネート;カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶または置換した3CaO・3Al・CaF、および11CaO・7Al・CaF2等のカルシウムフロロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート;8CaO・NaO・3Al、および3CaO・2NaO・5Al等のカルシウムナトリウムアルミネート;カルシウムリチウムアルミネート;アルミナセメント;さらにこれらにNa,K,Li、Ti、Fe、Mg、Cr、P、F、S等の微量元素(酸化物等含む。)が固溶した鉱物から選ばれる1種以上が挙げられる。
非晶質カルシウムアルミネートは、原料を溶融した後、急冷して製造するから、実質的に結晶構造を有せず、通常、そのガラス化率は80%以上であり、ガラス化率が高い程、早期強度発現性は高いため、ガラス化率は好ましくは90%以上である。
カルシウムアルミネートのCaO/Alのモル比は、好ましくは1.5~3.0、より好ましくは1.7~2.4である。該モル比が1.5以上で水硬性組成物の早期強度発現性が高く、3.0以下で水硬性組成物の耐熱性が高い。
また、カルシウムアルミネートと、任意の成分であるセメントおよび石膏等を含む結合材の合計を100質量%として、カルシウムアルミネートの含有率は、好ましくは50~100質量%である。該値が50質量%以上であれば、水硬性組成物の早期強度発現性と耐熱性が高い。なお、該値は、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは80~95質量%である。
また、カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は、充分な早期強度発現性を得るとともに粉塵の発生を抑制するために、好ましくは1000~6000cm/g、より好ましくは1500~5000cm/gである。なお、カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は、付加製造装置での敷きならしが均一で、かつ、鋳型の強度が低下しないためには、さらに好ましくは1000~2500cm/g、特に好ましくは1500~2000cm/gである。
【0042】
<セメント>
セメントは結合材の任意の成分であり、JIS R 5210に準拠して測定した凝結(始発)が3時間30分以内であれば、鋳型Mの製造時から3時間後の早期の強度発現性が高いため好ましく、該凝結(始発)は1時間以内がより好ましい。
結合材中のセメントの含有率は、早期強度発現性の向上のため、結合材全体を100質量%として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
また、セメント中の珪酸カルシウムの含有率は、好ましくは25質量%以上である。該含有率が25質量%以上あれば、材齢1日以後の強度発現性が高く、また長期強度発現性が必要な場合、該含有率は、好ましくは45質量%以上である。
セメントは、速硬セメント、超速硬セメント、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、およびセメントクリンカー粉末から選ばれる1種以上が挙げられる。なお、セメントクリンカー粉末もセメントに含める。
これらの中でも、早期強度発現性が高いため、好ましくは、凝結(始発)が30分以内である速硬性セメント、超速硬セメント、または止水セメントである。なお、速硬性セメント等の市販品は、スーパージェットセメント(SJC:太平洋セメント社製)、ジェットセメント(住友大阪セメント社製)、ライオンシスイ(登録商標、住友大阪セメント社製)、またはデンカスーパーセメント(デンカ社製)が挙げられる。
【0043】
<石膏>
石膏は結合材の任意の成分であり、無水石膏、半水石膏、および二水石膏から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、半水石膏は早期強度発現性がより高いために好ましい。
結合材中の石膏の含有率は、強度の向上や、鋳物の製造時においてガスや黒鉛球状化不良を防止するため、結合材全体を100質量%として、好ましくは無水石膏換算で5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0044】
また、前記石膏はセメント中に含まれる石膏でもよく、セメント中の石膏の含有率が無水石膏換算で5質量%以上含むような超速硬セメント(例えば、太平洋セメント社製スーパージェットセメント)は、カルシウムアルミネートと混合して結合材として用いること
で、より早期強度発現性が向上する。
【0045】
<ポリマー>
水硬性組成物中のポリマーの含有割合は、水硬性組成物の強度をより高めるために、結合材100質量部に対し固形分換算で2~12質量部が好ましい。ポリマーの含有割合が2質量部未満では、強度の向上効果は低く、にじみが発生して寸法精度が劣る場合があり、また、12質量部を越えると、鋳型Mの収縮により、形状によっては変形やひび割れが生じ、また形状が複雑な鋳型が製造できない場合がある。なお、ポリマーの含有割合は、結合材100質量部に対し、より好ましくは3~12質量部、さらに好ましくは4~10質量部である。
前記ポリマーは、ポリマーの形態で示せば、JIS A 6203に規定するポリマーディスパージョンや再乳化粉末樹脂等であり、また、ポリマーの種類で示せば、ポリアクリル酸エステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル共重合体、酢酸ビニル・バーサチック酸ビニル・アクリル酸エステル3元共重合体、ポリビニルアルコール、マルトデキストリン、エポキシ樹脂、およびウレタン樹脂から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中でも、早期強度発現性が得られるため、好ましくはポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物または完全ケン化物)であり、さらに好ましくはケン化度が85~90モル%のポリビニルアルコールである。
また、早期強度発現性が得られるため、好ましくポリビニルアルコールの平均粒径(メディアン径D50)は、高い強度が得られるため、好ましくは10~150μm、より好ましくは30~90μmである。したがって、ポリビニルアルコールは、結合材のいずれかまたは複数の結合材の原料と混合粉砕して、粒度調整すると、より細粒で均質に混合でき、早期強度発現性を高めることができる。
前記ポリマーは、粉体の状態で結合材や砂と混合して用いるか、または、後述の水に溶解して用いてもよい。
【0046】
<砂>
砂は、耐火砂であれば、特に制限されず、珪砂、オリビン砂、ジルコン砂、クロマイト砂、アルミナ砂、および人工砂等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、砂の配合量は、前記結合材100質量部に対し、好ましくは100~600質量部である。該値が該範囲であれば、耐火性と強度発現性を確保できる。なお、該配合量は、前記結合材100質量部に対し、より好ましくは150~500質量部、さらに好ましくは200~400質量部である。
【0047】
<硬化促進剤>
水硬性組成物は、強度発現性を向上させるため、さらに任意成分として硬化促進剤を含むことができる。該硬化促進剤は、炭酸アルカリ金属塩、乳酸アルカリ金属塩、乳酸アルカリ土類金属塩、およびケイ酸アルカリ金属塩から選ばれる1種以上である。これらの硬化促進剤は、ポリマーの含有割合が、結合材100質量部に対し2~6質量部である水硬性組成物において強度発現性の向上効果が高い。また、これらの硬化促進剤は、後述の養生温度が10~40℃と低い場合において、強度発現性の向上効果が高い。
そして、(i)前記炭酸アルカリ金属塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸リチウムから選ばれる1種以上が挙げられる。また、(ii)前記乳酸アルカリ金属塩は、
乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、および乳酸リチウムから選ばれる1種以上が挙げられる。(iii)前記乳酸アルカリ土類金属塩は、乳酸カルシウム、および乳酸マグネシウムから選ばれる1種以上が挙げられる。また、(vi)前記ケイ酸アルカリ金属塩は、ケイ酸ナト
リウム、ケイ酸カリウム、およびケイ酸リチウムから選ばれる1種以上が挙げられる。
前記硬化促進剤の含有割合は、結合材100質量部に対し、好ましくは3~10質量部である。硬化促進剤の含有割合が該範囲内であれば、迅速な造形のための早期強度発現性と取扱い可能な強度を確保できる。なお、硬化促進剤の含有割合は、結合材100質量部
に対し、より好ましくは4~9質量部、さらに好ましくは5~8質量部である。硬化促進剤は、予め水硬性組成物に混合するほか、付加製造装置から供給される水に溶解して用いることもできる。
【0048】
<その他>
造形後に残った水硬性組成物の未硬化の粉末を、鋳型Mから除去する作業(デパウダー)を容易にするために、水硬性組成物は、さらに、結合材の合計100質量部に対し、任意の成分として疎水性フュームドシリカを0.1~2質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部含むことができる。ここで、疎水性フュームドシリカとは、フュームドシリカの表面をシランまたはシロキサンで処理して、表面を疎水性にしたシリカ粉末である。
また、水硬性組成物の粉末の除去効率をより高めるため、疎水性フュームドシリカのBET比表面積は、好ましくは30~300m/gである。疎水性フュームドシリカのBET比表面積が該範囲内であれば、粉体の流動性が向上し、付加製造装置で敷きならした面が平坦で、かつ強度が低下することなく鋳型Mを軽量化できる。また、鋳型Mの透気性が向上するため鋳物の製造時にガスが発生しても欠陥が生じ難い。また、疎水性フュームドシリカは、粉体の固結の防止や混合性の向上に有効である。
【0049】
なお、水硬性組成物は、さらに、強度発現性の調整材等として、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、珪石微粉末、および石灰石粉末等の任意の成分を含んでもよい。
【0050】
<鋳型Mの作製方法>
該型作製方法では、付加製造装置と本発明に用いられる水硬性組成物を用いて、鋳型Mが作製される。付加製造装置は特に限定されず、粉末積層型付加製造装置等の市販品が使用できる。また、水硬性組成物は、前記の成分を市販の混合機または手作業で混合して調製する。なお、結合材として複数の材料を用いる場合、結合材を予め市販の混合機や手作業で混合したり、粉砕機で混合粉砕してもよい。
また、結合剤として、水を用いることができる。前記水は、通常の上水道や井戸水等を用いることができる。前記水硬性組成物は、結合材100質量部に対し、好ましくは、水を28~60質量部、および砂を含む組成物である。水の配合割合が該範囲であれば、強度発現性を確保できる。なお、水の配合割合は、鋳型Mの強度と寸法精度をより高める観点から、好ましくは30~55質量部、より好ましくは32~45質量部である。なお、水は、必要とされる各種の機能を付与するため、増粘剤、潤滑剤、流動化剤、界面活性剤、および表面張力低減剤から選ばれる1種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
鋳型Mの養生方法は、気中養生単独、気中養生した後に続けて水中養生する方法、または、表面含浸剤養生等がある。これらの中でも、早期の強度発現と鋳物の製造時に発生する水蒸気の抑制の点から、気中養生単独が好ましい。また、カルシウムアルミネート、セメント、およびポリマーによる強度増進の点から、気中養生の温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは30~80℃である。また、気中養生の相対湿度は、充分な強度発現と生産効率の点から、好ましくは10~90%、より好ましくは15~80%、さらに好ましくは20~60%である。さらに、気中養生時間は、充分な強度発現と生産効率の点から、好ましくは1時間~1週間、より好ましくは2時間~5日間、さらに好ましくは3時間~4日間である。
【0052】
次に、型作製方法の実施例を説明する。
【0053】
実施例で用いた3Dプリンターは、スリーディシステム社製(ProJet 660Pro)の結合剤噴射方式であり、主な仕様は次のとおりである。
ステージ:254×381×203(mm)
積層ピッチ:100(μm)
積層速度:約28(mm/h)
【0054】
上記した3Dプリンターを用いて、鋳型M、M、Mを作製した。図2ないし図4は、作製された各鋳型M、M、Mが示されている。図2ないし図4に示されているとおり、鋳型M、M、Mは、直方体であり、上面10、側面11、下面12を有している。また、辺A、辺B、辺Cと定義し、鋳型M、M、Mの設計寸法を、次のとおりとした。
辺A=10(mm)
辺B=16(mm)
辺C=80(mm)
【0055】
<使用した材料>
鋳型Mの基となる粉体材料の配合は、非晶質カルシウムアルミネート:スーパージェットセメント:エスパール:セラビーズ=0.9:0.1:1:1
この混合物に、ポリマーを外割で2%混合した。詳細は以下のとおりである。
(1)非晶質カルシウムアルミネート
非晶質のカルシウムアルミネート 試製品、CaO/Alのモル比は2.2、ガラス化率は95%以上、ブレーン比表面積は3490cm/gである。
(2)セメント
スーパージェットセメント、太平洋セメント社製、ケイ酸カルシウムの含有率は47質量%、凝結(始発)は30分、ブレーン比表面積は4700cm/gである。ただし、無水石膏を14質量%含む。
(3)砂
下記2種類の人工鋳物砂の等量を混合して用いた。
砂1 アルミナ系、商品名 エスパール♯180L、山川産業社製
砂2 アルミナ系、商品名 ナイガイセラビーズ♯1450(登録商標)、伊藤忠セラテック社製
(4)ポリマー
ポリビニルアルコール 品番 22-88S1(PVA217SS)、クラレ社製
ケン化度は87~89%、平均粒径(メディアン径D50)は60μm、94μmより大きい粒子の含有率は29質量%、77μmより大きい粒子の含有率は47質量%、10%径(D10)は25μm、90%径(D90)は121μmである。
(5)水
3質量%のグリセロール水溶液(ProJet 660Pro用バインダ液)、スリーディシステム社製。装置の水量設定値は、外部65%、内部90%とし、水/結合材比約30%である。
【0056】
実施例の鋳型Mは、鋳物成形面が上面側となるように作製されたものである。比較例の鋳型Mは、鋳物成形面が下面側となるように作製されたものである。参考例の鋳型Mは、鋳型Mと同様であって、下面が鋳物成形面である。実施例、比較例、参考例ごとに、三つの鋳型M、鋳型M、鋳型Mを作製した。
【0057】
実施例では、鋳型Mを作製後、約20度の室内で3時間放置し、デパウダーを実行した。第一から第三の鋳型Mにおいて、それぞれ下面12および側面11を完全にデパウダーした。次に、それぞれの上面10(鋳物成形面)に、一定の風量のエアーを30秒間吹きかけた後、重量を測定した(実施例第一測定値)。その後、上面10(鋳物成形面)を完全にデパウダーして重量を測定した(実施例第二測定値)。実施例第一測定値と実施例第二測定値との差が、上面10(鋳物成形面)に付着していた粉体材料の量である。結果は、以下のとおりである。
【0058】
第一の鋳型M:実施例第一測定値-実施例第二測定値=0.1g
第二の鋳型M:実施例第一測定値-実施例第二測定値=0.1g
第三の鋳型M:実施例第一測定値-実施例第二測定値=0.1g
【0059】
すなわち、鋳物成形面が上面側となるように作製され、鋳型Mは、鋳物成形面のデパウダーが容易であることが、実施例からわかる。換言すれば、型作製方法において作製された鋳型のデパウダーは、下面12と比較して上面10が容易であることがわかる。
【0060】
比較例では、鋳型Mを作製後、約20度の室内で3時間放置し、デパウダーを実行した。第一から第三の鋳型Mにおいて、それぞれ上面10および側面11を完全にデパウダーした。次に、それぞれの下面12(鋳物成形面)に、一定の風量のエアーを30秒間吹きかけた後、重量を測定した(比較例第一測定値)。その後、下面12(鋳物成形面)を完全にデパウダーして重量を測定した(比較例第二測定値)。比較例第一測定値と比較例第二測定値との差が、下面12(鋳物成形面)に付着していた粉体材料の量である。結果は、以下のとおりである。
【0061】
第一の鋳型M:比較例第一測定値-比較例第二測定値=1.3g
第二の鋳型M:比較例第一測定値-比較例第二測定値=1.4g
第三の鋳型M:比較例第一測定値-比較例第二測定値=1.4g
【0062】
すなわち、鋳物成形面が下面側となるように作製された鋳型Mは、鋳物成形面のデパウダーが困難であることが、比較例からわかる。換言すれば、型作製方法において作製された鋳型のデパウダーは、上面10と比較して下面12が困難であることがわかる。
【0063】
参考例では、約20度の室内で3時間放置した後、乾燥を40度の雰囲気中で3時間実行した。第一から第三の鋳型Mにおいて、それぞれ上面10および側面11を完全にデパウダーした。次に、それぞれの下面12(鋳物成形面)に、一定の風量のエアーを30秒間吹きかけた後、重量を測定した(参考例第一測定値)。その後、下面12(鋳物成形面)を完全にデパウダーして重量を測定した(参考例第二測定値)。参考例第一測定値と参考例第二測定値との差が、下面12(鋳物成形面)に付着していた粉体材料の量である。結果は、以下のとおりである。
【0064】
第一の鋳型M:参考例第一測定値-参考例第二測定値=0.1g
第二の鋳型M:参考例第一測定値-参考例第二測定値=0.1g
第三の鋳型M:参考例第一測定値-参考例第二測定値=0.1g
【0065】
すなわち、鋳物成形面が下面側となるように作製された鋳型Mであっても、40度の雰囲気中で3時間乾燥させることで、鋳物成形面のデパウダーが容易となることが、参考例からわかる。換言すれば、型作製方法において作製された鋳型は、所定の温度で乾燥させることで、デパウダーの容易さが増すことがわかる。
【0066】
次に、型作製方法および3Dプリンター1の効果を説明する。
【0067】
上記したとおり、型作製方法および3Dプリンター1は、方向決定手順(方向決定手段)を有し、この方向決定手順では、鋳型Mのうち、鋳物成形面が上面側となるように、鋳型Mの向きが決定される。この構成により、作製された鋳型Mの上面が、必然的に鋳物成形面となる。実施例などからもわかるとおり、鋳型Mにおけるデパウダーの容易さは、下面と比較して上面が優れていることから、鋳型Mの上面が鋳物成形面であれば、鋳物成形面のデパウダーが容易であり、鋳物成形面が滑らかで適切となる。したがって、デパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための鋳型Mを作製することができる。
【0068】
また、方向決定手順では、鋳型Mのうち、最も複雑な形状を有する箇所が、鋳物成形面として選択される。したがって、複雑な鋳物成形面であってもデパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための鋳型Mを作製することができる。
【0069】
型作製方法および3Dプリンター1は、実施例などからもわかるとおり、鋳型Mを3時間以上乾燥させることで、デパウダーの容易さが増す。したがって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための鋳型Mを作製することができる。
【0070】
また、乾燥手順では、40度から150度の雰囲気中で乾燥させられる。すなわち、参考例からもわかるとおり、鋳型Mを所定の温度で乾燥させることで、デパウダーの容易さが増す。したがって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための鋳型Mを作製することができる。なお、本実施形態の乾燥手順を経ずとも、デパウダーの容易さは、下面と比較して上面が優れていることに変わりはない。
【0071】
第二実施形態に係る型作製方法では、第一実施形態に係る型作製方法によって作製された鋳型Mが組み合わせられて、中子が作製される。すなわち、鋳型Mが組み合わさって作製された中子は、外面のすべてが鋳物成形面となり、中子の外面はすべて、デパウダーの容易さが優れた面となる。したがって、デパウダーが容易であって、高い寸法精度と美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造するための中子を作製することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 3Dプリンター(三次元造形装置)
2 基準面
3 ステージ
4 材料載置部
5 粉体材料
6 リコーター
7 プリンタヘッド
8 ガイド部
9 昇降機構
10 上面
11 側面
12 下面
M,M1~3 鋳型(型)
図1
図2
図3
図4