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特許7263025インピーダンスセンシング及び接触測定を用いた心臓内瘢痕組織の識別
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】インピーダンスセンシング及び接触測定を用いた心臓内瘢痕組織の識別
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20230417BHJP
   A61B 5/25 20210101ALI20230417BHJP
【FI】
A61B5/053
A61B5/25
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019009973
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2019136494
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】15/879,630
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・オサドチー
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0319279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0072774(US,A1)
【文献】特表2012-500657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053
A61B 5/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
遠位端部に複数のアームを備え、前記アームのそれぞれに1つ又は複数の電極が結合されているカテーテルと、
前記カテーテルと通信する電気インターフェースと、
プロセッサであって、
前記電気インターフェースを介して、それぞれの前記電極について、(i)心臓の内部表面上の所与の位置で前記電極によって測定された電気インピーダンスの第1の測定データと、(ii)前記電気インピーダンスの測定の間における前記電極と前記心臓の前記内部表面との機械的接触の性質の第2の測定データと、を受け取り、
前記第1及び第2の測定データに基づいて、前記内部表面との機械的接触の質が十分であり、所与のベースラインインピーダンスより低いインピーダンスを有することを検出することにより、前記所与の位置の組織を瘢痕組織として分類するように構成された、プロセッサと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第2の測定データに基づいて、前記瘢痕組織と血液とを区別するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ベースラインインピーダンス、前記心臓内における測定された血液インピーダンスである、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記ベースラインインピーダンス、前記心臓の前記内部表面の一部分にわたって平均化された、測定された組織インピーダンスである、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記カテーテルの遠位端部に取り付けられた1つ又は複数のセンサから前記第2の測定データを受け取るように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
患者に付される外部電極をさらに備え、
前記プロセッサは、前記心臓内における前記電極のそれぞれの推定位置を、前記外部電極の既知の位置及び前記第1の測定データに基づいて算出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記電極の前記推定位置を前記心臓の少なくとも一部のマップに組み込むことによって、前記マップを更新するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記推定位置における前記測定された電気インピーダンスを用いて前記マップを更新するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、数値及び視覚コーディングの少なくとも一方を用いて、前記マップ上で前記瘢痕組織を健康な組織と区別するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には心臓マッピングに関するものであり、具体的には心臓内瘢痕組織のマッピングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
侵襲的心手技は多くの場合、心臓組織の電気解剖学的特性をマッピングするための技術を用いている。例えば、米国特許出願公開第2013/0072774号には、患者の心不整脈の機序を判断するための方法及びシステムが記載されている。その方法は基本的に、心臓組織の等インピーダンスマップをビデオディスプレイ上に生成するために、カテーテルを使用して患者の心臓の一部分の心臓組織のインピーダンスを測定すること、並びに、限局的な発火の境界領域によって引き起こされる限局性の不整脈を区別するために等インピーダンスマップのパターンを解析することを伴う。この方法はまた、心房細動の発生及び継続に関与し得る限局的な「マザーロータ(mother rotor)」を左心房全体にわたって識別すべく、非干渉性でかつ急速伝導性である組織の領域を識別するためにも用いられ得る。
【0003】
別の例として、米国特許第5,673,704号には、拍動する心臓内にある梗塞性の心筋組織を特定する方法が記載されている。その方法は、拍動している心臓の心腔、特に左心室又は右心室にカテーテルのインピーダンス測定チップを挿入することと、拍動する心臓の心腔内の様々な位置で心内膜のインピーダンスを測定することと、を含む。測定された値は、心筋の梗塞性の領域を識別し、正常な心筋からそのような領域を区別するために、所定の範囲の値を有するインピーダンス値と比較される。測定値はまた、梗塞境界ゾーンの値の範囲と比較される。本発明によれば、梗塞境界ゾーンが位置を特定され得る。梗塞境界ゾーンは、不整脈の、特に心室性頻脈の重大な源である。更に、本発明の方法によれば、拍動する心臓における不整脈のリスクは、同じカテーテルチップを利用して梗塞境界ゾーン内の心内膜をアブレーションすることによって、実質的に低減又は排除され得る。インピーダンスの測定値はまた、特に流体を充満された身体器官又は体腔における電極-組織の接触の妥当性を評価するためにも利用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある実施形態は、電気インターフェースとプロセッサとを含んだシステムを提供する。電気インターフェースは、患者の心臓の中に挿入されたプローブと通信するように構成されている。プロセッサは、電気インターフェースを介して、(i)心臓の内部表面上の所与の位置でプローブによって測定された電気インピーダンスの第1の表示と、(ii)電気インピーダンスの測定の間におけるプローブと心臓の内部表面との機械的接触の性質の第2の表示と、を受け取るように構成されている。プロセッサは更に、第1及び第2の表示に基づいて、所与の位置の組織を瘢痕組織として分類するように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、第2の表示に基づいて、瘢痕組織と血液とを区別するように構成されている。いくつかの実施形態では、プロセッサは、組織が所与のベースラインインピーダンスよりも低いインピーダンスを有することを検知することによって、その組織を瘢痕組織として分類するように構成されている。ある実施形態では、ベースラインインピーダンスは、心臓内における測定された血液インピーダンスを含む。別の実施形態では、ベースラインインピーダンスは、心臓の内部表面の一部分にわたって平均化された、測定された組織インピーダンスを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、プローブの遠位端部に取り付けられた1つ又は複数のセンサから第2の表示を受け取るように構成されている。いくつかの実施形態では、プロセッサは、心臓内におけるプローブのそれぞれの推定位置を第1の表示から算出するように構成されている。ある実施形態では、プロセッサは、プローブの推定位置を心臓の少なくとも一部のマップに組み込むことによって、マップを更新するように構成されている。
【0007】
別の実施形態では、プロセッサは、推定位置における測定された電気インピーダンスを用いてマップを更新するように構成されている。いくつかの実施形態では、プロセッサは、数値及び視覚コーディングの少なくとも一方を用いて、マップ上で瘢痕組織を健康な組織と区別するように構成されている。
【0008】
本発明の実施形態によれば、心臓内瘢痕組織を検出するための方法が更に提供される。この方法は、患者の心臓に挿入されたプローブから、(i)心臓の内部表面上の所与の位置でプローブによって測定された電気インピーダンスの第1の表示と、(ii)電気インピーダンスの測定の間におけるプローブと心臓の内部表面との機械的接触の性質の第2の表示と、を受け取ることを含む。第1及び第2の表示に基づいて、所与の位置にある組織を瘢痕組織として分類する。
【0009】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による、電子解剖学的マッピングのためのシステムの模式的な描写図である。
図2】本発明の実施形態による、患者の心臓の一部分の電子解剖学的マップの模式的な描写図である。
図3】本発明の実施形態による、心臓内瘢痕を識別するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概略
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、心臓内瘢痕組織の識別のためのシステム及び方法を提供するものである。いくつかの実施形態では、心臓の内壁の瘢痕及び健康な組織を表示するマップが作成される。このマップは、適当なアブレーション部位を選択すること、及び既にアブレーションされた箇所を除外することなど、瘢痕組織を識別することから利益を得ることができる任意の診断/治療手技に用いられ得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、電位センシング電極を遠位端部に取り付けられた電子解剖学的マッピングカテーテルを使用する電子解剖学的マッピングシステムが提供される。この電子解剖学的マッピングカテーテルは、心臓の内壁組織上の選択された位置の組織インピーダンス測定値を取得するために使用される。
【0013】
健康な心臓組織の測定された電気インピーダンスは通常、測定された血液インピーダンスよりも高いが、このことは、健康な組織における及び/又はその付近における測定される電極インピーダンスの増大として見られる。他方で、瘢痕の測定されたインピーダンスは、典型的には血液のインピーダンスと同等か又はそれよりも低く、このことは、測定される電極インピーダンスの低下として見られる。したがって、瘢痕組織は、電気インピーダンスが特に低い領域として識別され得る。
【0014】
心臓内瘢痕組織を健康な組織及び/又は血液と区別しようとするときの難題は、インピーダンス測定のみを用いて瘢痕組織と血液とを区別することが困難であるということである。例えば、低インピーダンスの読取り値は、瘢痕組織を測定した結果としても、組織と電気センシング電極との良好な機械的接触をなさないで組織を測定した結果としても生じ得る。結果として、例えば、所与の電極の位置、及び/又は電極から受信されたインピーダンス信号によって搬送される任意の情報が、電子解剖学的マップなどの構築中のマップに組み込まれるべきか否が不明確となり得る。
【0015】
この難題に対処するために、いくつかの実施形態において、開示するシステムは、血液と瘢痕組織との区別を可能にするために、組織インピーダンスを測定することと並行して、電極と組織との十分な機械的接触を確かめている。いくつかの実施形態では、組織との機械的接触は、カテーテルの軟質遠位端部が組織と接触するとき、変化する際の軟質遠位端部の形状を追跡することによって確認される。他の実施形態では、電子解剖学的マッピングカテーテルの遠位端部に取り付けられ、接触の測定をもたらす1つ又は複数のセンサによって、組織との十分な接触が確認される。そのようなセンサには、例えば、接触力センサ、圧力センサ、機械的変形検出センサ、又は超音波ベースの接触センサが含まれ得る。組織との電極の接触を確認するために使用されるいかなるタイプのセンサも、本明細書では「接触センサ」と呼ばれる。
【0016】
いくつかの実施形態では、機械的接触が不十分であると仮定すると、システムは、測定された組織インピーダンスをベースラインインピーダンスと比較することによって、瘢痕組織を識別する。可能なベースラインインピーダンスの例が、平均組織インピーダンス及び周囲の血液インピーダンスである。ベースラインインピーダンスを決定するための技法は、例えば、2017年10月19日に出願され、「Baseline Impedance Maps for Tissue Proximity Indications」と題された米国特許出願第15/788,286号に記載されており、この特許出願は本特許出願の譲受人に譲渡されており、またその開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0017】
所与のベースラインインピーダンスは、例えば、測定された接触力が所与の最小値よりも大きいことにより、接触が十分である限り、接触の測定とは独立したものであってもよい。したがって、接触の測定は、心臓組織の全体にわたって一様でなくてもよい。
【0018】
開示する技法は、物理的接触の性質を確認するために電気インピーダンス測定を物理的接触の測定と組み合わせたものであり、またベースラインインピーダンスの基準を用いた解析方法を更に適用するものでもあり、心臓内瘢痕の識別を確実にし得る。心臓内瘢痕を確実に識別することは、診断及び治療の計画、並びに過去の治療結果の診断及び分析において医師を支援し得る。
【0019】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、電子解剖学的マッピングのためのシステム21の模式的な描写図である。
【0020】
図1は、被験者25の心臓23の電子解剖学的マッピングを実施するために電子解剖学的カテーテル29を使用している医師27を示す。カテーテル29は、その遠位端部に、機械的に柔軟性であり得る1つ又は複数のアーム20を備え、それらのアームの各々に1つ又は複数の電極22が結合されている。マッピング手技中に、電極22は、心臓23の組織から/組織に信号を取得及び/又は注入する。プロセッサ28は、電気インターフェース35を介してこれらの信号を受信し、これらの信号に含められた情報を用いて電子解剖学的マップ31を構築する。手技中及び/又は手技の後に、プロセッサ28は、ディスプレイ26上に電子解剖学的マップ31を表示してもよい。
【0021】
手技中に、電極22のそれぞれの位置が追跡される。そのような追跡は、例えば、上述のACL技術を使用して行われてもよい。この技法によれば、複数の外部電極24が患者25の身体に結合され、例えば、3つの外部電極24が患者の胸に結合されてもよく、別の3つの外部電極が患者の背中に結合されてもよい。(例示し易いように、1本の外部電極しか図1に示されていない)。電極22が、患者の心臓23の内側に存在している間、電流は、電極22と外部電極24との間を流れる。外部電極24において測定された結果として得られる電流振幅間(又は、これらの振幅により示されるインピーダンス間)の比に基づいて、また患者の身体上の外部電極24の既知の位置を考慮して、プロセッサ28は、患者の心臓内部の電極22の各々の推定位置を算出する。こうして、プロセッサは、電極22から受信した任意の所与のインピーダンス信号と信号が得られた位置とを関係付けることができる。
【0022】
ある実施形態では、プロセッサ28は、測定中の電極22の各々の電極と心臓の内部表面との間の機械的接触の性質を表示するように更に構成される。この表示は、各電極ごとに、電極が組織に押し付けられているか否かを表示する(また場合によっては接触力の程度を推定する)ように、アーム20の柔軟性をモデル化することに基づいている。
【0023】
図1に示されている例となる例示は、概念を明確化する目的のために単に選択されているに過ぎない。Lasso(登録商標)カテーテル(Biosense Webster,Inc.により製造されている)など、他のタイプのセンシング用の幾何学的形状も採用され得る。それに代わってあるいはそれに加えて、接触センサは電子解剖学的カテーテル29の遠位端部に取り付けられてもよい。ある実施形態では、いくつかの電極22の測定値は、その接触性の低さゆえに廃棄され得るが、他の電極の測定値は、その接触性が高いがために有効と見なされ得る。
【0024】
概して、プロセッサ28は、単一のプロセッサとして具現化されてもよく、又は連携してネットワーク化若しくはクラスター化された一組のプロセッサ群として具現化されてもよい。プロセッサ28は、通常、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性の二次記憶装置、例えばハードドライブ若しくはCD ROMドライブ、ネットワークインタフェース、及び/又は周辺デバイスを備えたプログラムされたデジタルコンピューティングデバイスである。ソフトウェアプログラムを含めたプログラムコード、及び/又はデータは、当分野において公知のとおり、CPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信、又は格納のために結果が生成される。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを通じて電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、又は、代替として又は追加として、磁気、光学、又は電子メモリなどの非一過性有形媒体上に提供及び/又は格納されてもよい。このようなプログラムコード及び/又はデータが、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された、機械若しくは専用コンピュータが実現する。
【0025】
心臓内瘢痕組織の識別
図2は、本発明の実施形態による、患者25の心臓23の一部分の電子解剖学的マップ31の模式的な描写図である。
【0026】
図から分かるように、電子解剖学的マップ31は、測定された組織インピーダンスを視覚化するために、グレースケールを用いることによって2つのゾーンを表示しており、ゾーン50は、健康な組織を含むものとして表示され、ゾーン52は瘢痕組織として分類される。そのような視覚化は、更なる説明のためのバー32を伴い得る。バー32では、キャプション36から明らかなように、ライン34が瘢痕を健康な組織から分離している。
【0027】
ある実施形態では、バー32はインピーダンススケールを表し、ライン34は所与のベースラインインピーダンスを表す。それに応じて、所与のベースラインインピーダンスよりも高い組織インピーダンスは、キャプション36によって健康な組織を表示し、所与のベースラインインピーダンスに等しいか又はそれよりも低い組織インピーダンスは、キャプション36によって瘢痕組織を表示している。ライン34によって表される所与のベースラインインピーダンスは、例えば、周囲の血液のインピーダンス又は平均の組織インピーダンスであり得る。典型的な血液インピーダンス値は、90オーム~100オーム程度であり、また正常な組織との接触の間、測定インピーダンスは最大で10パーセント、増加し得る。ただし、それらの数値はあくまで一例として与えられたものである。
【0028】
図2に示されている例示的な図は、単に概念を明確化する目的のために選ばれたものである。測定インピーダンスの連続的なスケーリング及び/又はカラーコーディングなど、他の視覚化方式も考えられる。
【0029】
図3は、本発明の実施形態による、心臓内瘢痕を識別する方法を概略的に示すフローチャートである。この手技は、挿入工程70において、医師27が電子解剖学的カテーテル29を心臓の中に挿入することによって開始され得る。
【0030】
次に、センシング工程72において、医師27は心臓23の組織を所与の位置に配置及び係合させる。システム21は、電極22を通じてインピーダンスをセンシングするが、それと同時に、組織との物理的接触の測定値をも取得する。
【0031】
システム21のプロセッサ28は、任意の適切な方式で、所与の電極22と組織との機械的接触の性質を推定し得る。いくつかの実施形態では、接触力センサ、圧力センサ、及び超音波ベースの接触センサなど、アーム20に取り付けられたセンサが使用される。一実施形態では、アーム20の各アームは、1つ又は複数の歪みセンサを取り付けられるが、それらの歪みセンサは、フレキシブルアームが組織に押し付けられる力を表示するものである。測定された力は、機械的接触の性質を指示する。別の実施形態では、アームが組織に押し付けられる力は、アームの元の形状に対する撓曲を測定することによって表示される。この種の技法は、例えば、2017年6月1日に出願され、「Using a Piecewise-Linear Model of a Catheter Arm to Identify Contact with Tissue」と題された米国特許出願第15/610,865号に記載されており、この特許出願は本特許出願の譲受人に譲渡されており、またその開示は参照によよって本明細書に組み込まれる。例えば、フレキシブルアーム20が、非変動状態から20度を超えて撓曲されている場合、アーム20に取り付けられた遠位電極は接触していると見なされ得る。例えば、撓曲が35度を超えている場合、アーム20上の近位電極もまた接触していると見なされ得る。一般にはしかしながら、任意の好適なタイプの接触センサ又は接触センシング方法が用いられ得る。
【0032】
位置推定工程74において、プロセッサ28は、外部電極24にて測定された1つ又は複数の電流振幅から、センシング電極22のうちの1つ又は複数のセンシング電極の対応する推定位置を算出する。
【0033】
本方法はここで、接触検証工程76に進み、ここで、プロセッサ28は、算出された接触の測定値に基づいて、センシング電極22のうちの1つ又は複数が推定位置において十分に接触しているか否かを判断する。
【0034】
判断工程76における判断が否定である場合、本方法は工程72に戻り、医師27は組織に係合することを再試行してもよい。工程76における判断が肯定である場合、本方法は組織分類工程78に進み、ここで医師27は(又はプロセッサが自動的に)、組織インピーダンスが所与のベースラインインピーダンスよりも低いか否かを判断する。工程76における判断が否定である場合、プロセッサは、組織表示工程80において、当該の位置にある組織を健康として分類する。工程78における判断が肯定である場合、プロセッサは、瘢痕表示工程82において、その組織を瘢痕組織として分類する。
【0035】
本方法はマップ更新工程84に進み、ここでプロセッサ28は、電子解剖学的マップ31の一部を健康な組織か又は瘢痕組織のいずれかを含むものとしてマークする。いくつかの実施形態では、プロセッサ28は、工程74において推定されるような、所与の位置における測定された電気インピーダンスを用いて、電子解剖学的マップ31の一部を更新する。ある実施形態では、プロセッサ28は、推定位置において組織と接触していることが確認された電極のうちの少なくとも1つの電極の推定位置をマップに組み込むことによって、電子解剖学的マップ31の一部を更新する。
【0036】
手技は、カテーテル移動工程86において、組織の全体にわたって別の位置に係合するようにカテーテルを移動させることによって、心臓23の内部表面上の複数の位置に対して繰り返され得る。本方法は次いで、工程72に復帰し得る。
【0037】
図3に示されている例のフローチャートは、概念を明確化する目的のみで選択されているに過ぎない。代替的な実施形態では、接触の性質を評価するために、また組織インピーダンスを解析及び視覚化するために、様々な工程が実施され得る。
【0038】
本明細書に記載した実施形態は、主として肺静脈隔離術を扱うものであるが、本明細書に記載した方法及びシステムは、他の用途でも用いられ得る。
【0039】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
患者の心臓の中に挿入されたプローブと通信する電気インターフェースと、
プロセッサであって、
前記電気インターフェースを介して、(i)前記心臓の内部表面上の所与の位置で前記プローブによって測定された電気インピーダンスの第1の表示と、(ii)前記電気インピーダンスの測定の間における前記プローブと前記心臓の前記内部表面との機械的接触の性質の第2の表示と、を受け取り、
前記第1及び第2の表示に基づいて、前記所与の位置の組織を瘢痕組織として分類するように構成された、プロセッサと、を備えるシステム。
(2) 前記プロセッサは、前記第2の表示に基づいて、前記瘢痕組織と血液とを区別するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記プロセッサは、前記組織が所与のベースラインインピーダンスよりも低いインピーダンスを有することを検知することによって、前記組織を前記瘢痕組織として分類するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記ベースラインインピーダンスは、前記心臓内における測定された血液インピーダンスを含む、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記ベースラインインピーダンスは、前記心臓の前記内部表面の一部分にわたって平均化された、測定された組織インピーダンスを含む、実施態様3に記載のシステム。
【0041】
(6) 前記プロセッサは、前記プローブの遠位端部に取り付けられた1つ又は複数のセンサから前記第2の表示を受け取るように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサは、前記心臓内における前記プローブのそれぞれの推定位置を前記第1の表示から算出するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサは、前記プローブの前記推定位置を前記心臓の少なくとも一部のマップに組み込むことによって、前記マップを更新するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサは、前記推定位置における前記測定された電気インピーダンスを用いて前記マップを更新するように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサは、数値及び視覚コーディングの少なくとも一方を用いて、前記マップ上で前記瘢痕組織を健康な組織と区別するように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
【0042】
(11) 心臓内瘢痕組織を検出するための方法であって、
患者の心臓に挿入されたプローブから、(i)前記心臓の内部表面上の所与の位置で前記プローブによって測定された電気インピーダンスの第1の表示と、(ii)前記電気インピーダンスの測定の間における前記プローブと前記心臓の前記内部表面との機械的接触の性質の第2の表示と、を受け取ることと、
前記第1及び第2の表示に基づいて、前記所与の位置の組織を瘢痕組織として分類することと、を含む方法。
(12) 前記組織を分類することは、前記第2の表示に基づいて、前記瘢痕組織と血液とを区別することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記組織を分類することは、前記組織が所与のベースラインインピーダンスよりも低いインピーダンスを有することを検知することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記ベースラインインピーダンスは、前記心臓内における測定された血液インピーダンスを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記ベースラインインピーダンスは、前記心臓の前記内部表面の一部分にわたって平均化された、測定された組織インピーダンスを含む、実施態様13に記載の方法。
【0043】
(16) 前記第2の表示を受け取ることは、前記プローブの遠位端部に取り付けられた1つ又は複数のセンサから前記第2の表示を受け取ることを含む、実施態様11に記載の方法。
(17) 前記心臓内における前記プローブのそれぞれの推定位置を前記第1の表示から算出することを含む、実施態様11に記載の方法。
(18) 前記プローブの前記推定位置を前記心臓の少なくとも一部のマップに組み込むことによって、前記マップを更新することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記推定位置における前記測定された電気インピーダンスを用いて前記マップを更新することを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 数値及び視覚コーディングの少なくとも一方を用いて、前記マップ上で前記瘢痕組織を健康な組織と区別することを含む、実施態様18に記載の方法。
図1
図2
図3