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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】信号色モルホロジー
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/339 20210101AFI20230417BHJP
【FI】
A61B5/339
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019014034
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2019130311
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】15/885,325
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】モシェ・インゲル
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-261583(JP,A)
【文献】特開2002-253515(JP,A)
【文献】米国特許第05782773(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0021936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/318-5/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電計(ECG)装置における複数の測定信号の表示方法であって、
前記複数の信号を監視することと、
ディスプレイ上に信号を表示することであって、前記信号は前記監視された信号の少なくともサブセットである、ことと、
少なくとも1つの表示された測定信号の高さを他の表示された測定信号の高さとは独立して変更するために第1の電圧表示レベルを制御して前記少なくとも1つの表示された測定信号の表示を提供することであって、前記少なくとも1つの表示された測定信号は、前記少なくとも1つの表示された測定信号の詳細を検査するために設計された高さを備える、ことと、
表示された前記複数の信号全体に対して第2のスケールを提供することであって、前記第2のスケールは前記第1の電圧表示レベルに依存しない、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
表示された前記複数の信号全体に対して前記第2のスケールを提供することは、異なる前記第1の電圧表示レベルで前記ディスプレイ上に表示された前記測定信号の信号強度を比較するために、前記表示された前記複数の信号全体に対して前記測定信号の信号強度に基づいた色を適用することであって、前記色は前記ディスプレイ上に表示された前記測定信号の高さに依存しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電圧表示レベルは、前記測定信号のうちの少なくとも1つのために変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電圧表示レベルの変更は前記第2のスケールに影響を与えない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の電圧表示レベルの変更は前記信号の詳細の検査を可能にする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のスケールは、信号電圧レベルの絶対的な解釈を可能にする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
心電計(ECG)における複数の測定信号のためのディスプレイであって、前記ディスプレイは、
少なくとも1つの測定信号の高さを他の測定信号の高さとは独立して変更するために第1の電圧表示レベルを制御して、前記複数の表示された測定信号の少なくとも1つの表示を提供することによって、前記複数の測定信号を前記ECGのディスプレイ上に表示することであって、前記複数の表示された測定信号の前記少なくとも1つは前記複数の表示された測定信号の前記少なくとも1つの詳細を検査するために設計された高さを備える、ことと、
前記第1の電圧表示レベルに依存せずに、前記複数の表示された測定信号全体に対して第2のスケールを提供することと、を含む、ディスプレイ。
【請求項8】
前記複数の表示された測定信号全体に対して前記第2のスケールを提供することは、異なる前記第1の電圧表示レベルで前記ディスプレイ上に表示された前記複数の測定信号の信号強度を比較するために、前記複数の表示された測定信号全体に対して前記測定信号の信号強度に基づいた色を適用することであって、前記色は前記ディスプレイ上に表示された前記測定信号の高さに依存しない、請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記第1の電圧表示レベルは、前記測定信号のうちの少なくとも1つに対して変更される、請求項に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記第1の電圧表示レベルの変更は前記第2のスケールに影響を与えない、請求項に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記第1の電圧表示レベルの変更は前記信号の詳細の検査を可能にする、請求項に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記第2のスケールは、信号電圧レベルの絶対的な解釈を可能にする、請求項に記載のディスプレイ。
【請求項13】
対象の信号を測定するための装置であって、
前記装置内で少なくとも1つの信号を監視するための信号モニタと、
ディスプレイ上に信号を表示するためのディスプレイであって、前記信号は前記監視された信号の少なくともサブセットである、ディスプレイと、
少なくとも1つの表示された測定信号の高さを他の表示された測定信号の高さとは独立して変更するために第1の電圧表示レベルを制御して、前記少なくとも1つの表示された測定信号の表示を提供することであって、前記少なくとも1つの表示された測定信号は、前記測定信号の詳細を検査するために設計された高さを備える、ことと、
前記第1の電圧表示レベルに依存せずに、表示された前記信号全体に対する第2のスケールを提供することと、を含む、装置。
【請求項14】
表示された前記複数の信号全体に対して前記第2のスケールを提供することは、異なる前記第1の電圧表示レベルで前記ディスプレイ上に表示された前記測定信号の信号強度を比較するために、前記表示された前記複数の信号全体に対して前記測定信号の信号強度に基づいた色を適用することであって、前記色は前記ディスプレイ上に表示された前記測定信号の高さに依存しない、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の電圧表示レベルの変更は前記第2のスケールに影響を与えない、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記第2のスケールは、信号電圧レベルの絶対的な解釈を可能にする、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解釈のための信号の提示に関し、より詳細には、医療従事者による解釈のための信号の提示に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者は、臓器、組織、又は他の生物学的構造のモルホロジーを理解するために、信号電圧レベルの解釈にしばしば依存する。医療従事者は、相対的高さに基づいて信号電圧を解釈する。現在、各信号電圧はその他の信号電圧に依存せずに変更され得る。その結果、医療従事者はモルホロジーを解釈するために信号の高さに依存することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、信号電圧を相対的高さに基づいて解釈する方法を医師に提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のシステムは、色又は信号高さを超えたその他の二次的機構に絶対的に基づいて信号電圧レベルを解釈する能力を維持しながら、医師が信号の詳細を検査することを可能にするために信号の相対的高さを変更することを可能にする。開示されるシステム及び方法は、信号の色に基づくより高速でより正確な分析を提供する。信号の高さは、信号の詳細の観察、表示、又は検査などのために、ディスプレイの色を変更せずに変更することができる。信号のカラースケールは、表示される高さに関係なく信号の絶対スケーリングを提供する。
【0005】
装置のための測定信号を表示するためのシステム及び方法が開示される。このシステム及び方法は、装置内で信号を監視することと、ディスプレイ上に信号を表示することであって、この信号は監視された信号の少なくともサブセットである、ことと、第1の電圧表示レベルを制御して少なくとも1つの表示された測定信号の表示を提供することとであって、少なくとも1つの表示された測定信号は、測定信号の詳細を検査するために設計された高さを備える、ことと、表示された信号全体に対する第2のスケールを提供することであって、第2のスケールは第1の電圧表示レベルに依存しない、ことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本特許又は出願書類は、少なくとも1枚のカラー印刷図面を収容している。カラー図面を備える、本特許又は特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
【0007】
より詳細な理解は、添付の図面と併せて実例として示される下記の説明文より得ることができる。
図1】本明細書に記載のシステムと関連して使用されてもよく、又はそのシステムにフィードバックを提供してもよい装置のブロック図を示す。
図2図2の装置の信号電圧のいくつかのプロットを示す。
図3図1の装置のディスプレイ画面を示す。
図4図1の装置に対する表示方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本実施形態の一貫した理解を提供するために、特定の構造、コンポーネント、材料、寸法、処理工程、及び技術などの多数の具体的な詳細が設定される。しかしながら、これら実施形態がこれらの具体的な詳細を伴わずに実施され得ることが、当業者には理解されよう。他の場合において、実施形態が不明瞭になるのを避けるために、周知の構造又は処理工程は詳細には説明されていない。層、領域、又は基材などのある要素が他の要素の「上」又は「上方」にあるといわれるとき、他の要素の上に直接存在し得るか、又は介在する要素も存在し得ることが理解されよう。対照的に、ある要素が他の要素に対して「上に直接」又は「直接に」あるといわれるとき、介在する要素は存在しない。更に、ある要素が他の要素の「下」、「下位」、又は「下方」にあるといわれるとき、他の要素の下若しくは下方に直接存在し得るか、又は介在する要素が存在し得ることが理解されよう。対照的に、ある要素が他の要素に対して「下に直接」又は「直接に」あるといわれるとき、介在する要素は存在しない。
【0009】
下記の発明を実施するための形態において実施形態の提示を曖昧にしないために、当該技術分野で周知の一部の構造、コンポーネント、材料、寸法、処理工程、及び技法が、提示及び説明目的のために組み合わせられていることがあり、場合によってはこれらは詳細に記述されていない場合がある。他の例においては、当該技術分野で周知される一部の構造、コンポーネント、材料、寸法、処理工程、及び技法が全く記述されていない場合がある。以下の記述は、本明細書に記載された様々な実施形態の特有の特徴又は要素に焦点を合わせていることが理解されよう。
【0010】
心臓電気生理学は、心臓の電気的活動を解明、診断、及び治療する科学である。この領域で使用される医療システムの1つにCARTOシステムがある。特定の手技では、心臓電気生理学を用いて、望ましくない拍動の発生源となっているか又は望ましくない信号を伝導する心臓の周囲の組織を焼灼(アブレーション)することによって不整脈を治療することができる。治療後、アブレーションは組織の変性をもたらし、組織が望ましくない信号又は拍動を伝導することを妨げる。
【0011】
本明細書でECGと呼ばれ、EKGと呼ばれる場合もある心電図検査は、皮膚上に配置された電極を使用して所定時間にわたった心臓の電気的活動を、又は特殊なカテーテルを使用して心臓内部の電気的活動(すなわち心内ECG)を記録するプロセスである。これらの電極は、各心拍の間の心筋の脱分極の電気生理理学的パターンから生じるわずかな電気的変化を検出する。ECGは、心臓検査で一般的又は日常的に行われている。検査で使用される機器は心電計であり、初期出力は心電図である。説明を簡単にする目的で、心電図検査、心電計、及び心電図を、本明細書ではいずれもECGと呼び、EKGと呼ぶ場合もある。
【0012】
心内電位図(ICEG)は、何本かの心臓内リード線が追加された(すなわち、心臓内に)ECGである。このようなICEGを、従来の12誘導ECGと組み合わせて、又はこれに代わるものとして用いることができる。従来の12誘導ECGでは、患者の四肢及び胸部の表面に10個の電極が配置される。次に、心臓の電位の全体の大きさが12個の異なる角度(「誘導」)から測定され、所定時間にわたって記録される。この手技の時間の長さは数十分~数時間で異なり得る。各手技では、通常、数十回のアブレーションセッションが行われ、そのそれぞれは例えば、数秒間~約1分持続し得る。例として、従来の12誘導ECGは例えば10秒間といった所定の時間にわたって行うことができる。このようにして、心臓の電気的脱分極の全体の大きさ及び方向が心周期の全体を通じた各瞬間に捕捉される。この医療手技によって得られる時間に対する電圧のグラフは心電図と呼ばれる。
【0013】
各心拍の間、健康な心臓は通常の規律正しい脱分極の進行過程を経る。この通常の脱分極のパターンは、特徴的なECGトレーシングを生じる。訓練された医師には、ECGは、心臓の構造及びその電気的伝導システムの機能についての大量の情報を伝えるものである。とりわけ、ECGは、心拍の速度及びリズム、心腔の大きさ及び位置、心臓の筋細胞又は伝導システムの損傷の存在、心臓病の薬剤の作用、並びに移植されたペースメーカーの機能を測定するために使用することができる。ECGの解釈は、基本的には心臓の電気的伝導システムを理解することに関する。通常の伝導は、予測可能なパターンで開始及び伝播し、このパターンからの逸脱は通常の変動であるか又は病気によるものであり得る。
【0014】
上記で述べたように、心臓電気生理学は、数ある技法の中でもとりわけECGを用いて心臓の電気的活動を診断及び治療する分野である。この用語は通常、自然活動の侵襲性(心内)カテーテル記録によるこうした現象の検討、及びプログラムされた電気的刺激(PES)に対する心応答の検討を記述するために用いられる。これらの検討は、複雑な不整脈を評価し、症状を解明し、異常な心電図を評価し、将来的に不整脈を発症するリスクを評価し、治療を設計するために行われる。治療法としてはアブレーションが挙げられる。アブレーションとは、一般的に、通常は手術により収縮パターンを変化させることなどを目的として、生物学的組織を除去、死滅、又は瘢痕化させることを指し、低侵襲性手技によって身体の内部から異常組織を焼灼する方法を含み得る。心臓電気生理学的手技では、350~500kHzの範囲の高周波の交流電流から発生する熱を用いて機能不全組織を焼灼することができる。アブレーション手順の一部として、組織のアブレーションに用いられるアブレーション電極の温度が最大又は標的温度と比較して監視されてもよく、また一旦その温度に到達したら、電源が多電極システム内の他の電極に切り換えられてもよい。
【0015】
図1は、本明細書に記載のシステムと関連して使用されてもよく、又はそのシステムにフィードバックを提供してもよい装置100のブロック図を示す。装置100はECGの形態とすることができる。装置100は、単一の多重化入力115にまとめられた複数のリード線110を有している。複数のリード線110は、ヒト被験者105の体表に配置することができる。複数のリード線110に含まれてもよく、又は(図に示されるように)これとは別とすることができる更なるリード線107を、心臓内リード線107とすることができる。
【0016】
心臓内リード線107は、患者105の心臓126内の電位をマッピングするためなど、診断又は治療処置に使用することができる。また、心臓内リード線107は、必要な変更を加えて心臓又は他の体内の臓器において他の治療及び/又は診断目的で使用することもできる。
【0017】
心臓内リード線107は、心臓内リード線107の遠位端132が患者の心臓126の心腔内に入るように患者105の脈管系内に挿入されてもよい。図1は単一の位置センサを有する単一のリード線107を示しているが、本発明の実施形態は、複数の位置センサを有するプローブを利用してもよい。
【0018】
複数のリード線110からの信号は、入力マルチプレクサ120を介してアナログフロントエンド125に入力される。アナログフロントエンド125は、プロセッサ130につながっており、プロセッサ130によって制御される。図に示されるように、プロセッサ130は、ビデオコントローラ135、デジタル信号プロセッサ140、マイクロプロセッサ145、及びマイクロコントローラ150を含むことができる。プロセッサ130は、データ格納部155に接続されている。データポート及びプリンタ160をプロセッサ130に接続することができる。他の入力/出力装置165もプロセッサ130に接続することができる。ディスプレイ170を用いてECGの信号の出力を与えることができる。装置100が動作するための電力を供給するために、電力/電池管理システム175を備えていてもよい。
【0019】
複数のリード線110は、一般的に使用されている形態の電極及び一般的に使用されている形態のリード線の両方を含む。複数のリード線110のうちの1つ以上がアブレーション電極を含んでもよく、その詳細は本明細書でより詳細に説明する。複数のリード線110は、心電計と電気回路を形成する身体105と接触した導電性パッドを有することができる。標準的な12リード線ECGでは、リード線110は10本のみである。複数のリード線110は、四肢、増高肢、及び前胸部の3群に分類され得る。一般に、12誘導ECGは、冠状面(垂直面)内で車輪のスポークのように配置された合計3つの肢誘導及び3つの増高肢誘導、並びに垂直な横断面(水平面)上にある6個の胸部誘導を有する。
【0020】
アナログフロントエンド125は、複数のリード線110からの信号を受信し、信号のフィルタリングなどのアナログ処理を行う。
【0021】
データ格納部155は情報を記録する任意の装置である。データ格納部は、装置100に含まれる信号の記憶媒体及び格納されるプロセッサ130の計算用の場所を与え得る。
【0022】
マイクロプロセッサ145は、コンピュータの中央演算装置(CPU)の機能を1個の集積回路(IC)又は数個の集積回路上に組み込んだコンピュータプロセッサとすることができる。マイクロプロセッサ145は、汎用型のクロック駆動式レジスタベースのプログラム可能な電子装置とすることができ、デジタル又はバイナリデータを入力として受信し、これをメモリ又はデータ格納部155に格納された命令に従って処理し、結果を出力として与える。マイクロプロセッサ145は、組み合わせ論理及び順序デジタル論理の両方を含んでいる。
【0023】
マイクロコントローラ150は、1個の集積回路上の1つ以上の小型コンピュータとすることができる。マイクロコントローラ160は、1以上のCPUとともにメモリ及びプログラム可能な入力/出力周辺機器を有することができる。強誘電性のRAM、NORフラッシュ、又はOTP ROMの形態のプログラムメモリ、及び少量のRAMもチップ上にしばしば含まれる。マイクロコントローラは、パーソナルコンピュータ又は異なる個別のチップで構成された他の汎用用途で使用されるマイクロプロセッサと異なり、組み込み型用途に合わせた設計を有する。
【0024】
デジタル信号プロセッサ(DSP)140は、デジタル信号処理を行って様々な信号処理動作を実行することができる。このようにして処理された信号は、時間、空間、又は周波数などのドメイン内の連続変数のサンプルを表す一連の数値である。デジタル信号処理は、線形又は非線形演算を含み得る。非線形信号処理は、非線形システム識別と密接に関連しており、時間、周波数、及び時空間ドメイン内で実行することができる。デジタルコンピューテーションの信号処理への応用は、送信のエラー検出及び補正、並びにデータ圧縮などの多くの用途でアナログ処理と比較して多くの利点を与えるものである。DSPは、ストリーミングデータ及びスタティック(格納)データの両方に適用することができる。
【0025】
医療従事者は、臓器、組織、又は他の生物学的構造のモルホロジーを理解するために、信号電圧レベルの解釈にしばしば依存する。医療従事者は、相対的高さに基づいて信号電圧を解釈する。現在、各信号電圧はその他の信号電圧に依存せずに変更され得る。信号を検査するため、又は例えば信号の倍率を拡大すると可視となる所望の特徴を観察するために、信号の高さを信号によって変化させる場合がしばしばある。その結果、医療従事者は異なる信号にわたるモルホロジーを解釈するために信号の高さに依存することができない。
【0026】
臓器及び組織モルホロジーの信号電圧レベルの解釈は、信号電圧の相対的高さに基づいた場合はしばしば不正確である。本発明のシステムは、色又は信号高さを超えたその他の二次的機構に絶対的に基づいて信号電圧レベルを解釈する能力を維持しながら、医師が信号の詳細を検査することを可能にするために信号の相対的高さを変更することを可能にする。開示されるシステム及び方法は、信号の色に基づくより高速でより正確な分析を提供する。信号の高さは、信号の詳細の観察、表示、又は検査などのためにディスプレイの色を変更せずに変更することができる。信号のカラースケールは、表示される高さに関係なく信号の絶対スケーリングを提供する。
【0027】
ここで図2を参照すると、図1のディスプレイ170上に提示され得る信号電圧のいくつかのプロット200が示されている。第1のプロット210は、M1~M2にわたる信号電圧を示す。第2のプロット220は、R1~R2にわたる信号電圧を示す。第3のプロット230は、信号電圧V3を示す。プロット200に描かれた特定の信号は例示的なものであるが、RA(右腕)、LA(左腕)、RL(右脚)、LL(左脚)、V1(第4肋間腔)、V2(第4肋間腔)、V3(誘導V2とV4との間)、V4(第5肋間腔)、V5(左前腋窩線)、及びV6(腋窩中線)を含むECG内の電極のいずれが描かれてもよい。信号の指示240が各プロット200に隣接して設けられる。
【0028】
図示されるように、y軸にプロットされた電圧レベルは、信号の特定の態様をハイライトしてディスプレイ上で閲覧可能にするために変化し得る。これはスケール変化260にアクセスすることにより変更され得る。こうした変更により、PQRST信号特性212などの信号特性を高い可視性で検査することが可能となり得る。例えば、心房の脱分極はp波で検査してもよく、心室の充填はPR間隔、QRS群、及び心室の脱分極で、心室再分極の開始はST部分及びT波心室再分極で検査してもよい。
【0029】
プロット毎のレベルで調整可能なy軸の高さの電圧レベルプロットに加えて、本発明のシステムは、医師が色などの追加的なスケールに基づいて信号電圧を解析するのを可能にする全体値を示すための追加のスケール250を更に含む。信号の高さは、例えばPQRSTなどの特徴の特定の観察を可能にするために様々な設定することができるため、こうしたスケールは、追加のスケールを用いた信号間の比較を可能にすることができる。このスケール250によって、分析をより速くかつより正確に行うことが可能となる。スケール250は、例えば特定のプロット210、220、230間の比較を可能とし、またこれは電圧レベルy軸の構成に依存しない。つまり、スケール250はスケール変化260の影響を受けない。
【0030】
医師又は他のユーザが、その好みに合わせてスケール250の関連閾値を定義してもよい。具体的には、システムは信号強度を色で示して、信号上の色を置き換えることができる。各信号210、220、230は、信号の各セグメントの信号強度を示す色にセグメント分けすることができる。信号の高さは、対応する信号の特徴の一部を観察するため、信号のうちのいくつかの信号高さの変更に対して変化させることができ、表示される色スキーム及び信号の色はより絶対的であり変化しない。これは医師及び他の従事者に、信号を分析し、色によって信号間の比較を行うためのより良好かつ高速な方法を提供する。
【0031】
スケール250を提供する際は、グレイスケール、他の単一カラーシェードスケール、マルチカラースケールなどが挙げられるがこれらに限定されない任意の数のスケーリングシステムを用いてよい。スケール250を提供する際は、正及び負の着色を対称的となるように設計してもよく、色はゼロから外向きに変化する。色は、強度が増すとより明らか/鮮やか/明るくなるように提供することができる。その他の変更によって、ユーザは、色(色相)を変化させたいのか、又は単にその輝度若しくは彩度を変化させたいのかを決定することが可能となり得、また、しばしば輝度/彩度の差を見る場合のある色覚異常のユーザであったとしても、信号の分析をより効率的に行うことが可能となり得る。
【0032】
図3は、本発明のディスプレイ画面300を示す。第1のプロット310は、M1~M2にわたる信号電圧を示す。第2のプロット320は、R1~R2にわたる信号電圧を示す。本発明では他のプロットも想到されており、2つのプロット310、320は例示に過ぎない。図示されるように、y軸にプロットされた電圧レベルは、プロット若しくは特定の態様をハイライトする、又は他の方法でこれらをディスプレイ上で可視化するために変化し得る。スケールはスケール変化360にアクセスすることにより変更され得る。こうした変化により、PQRST信号特性312などの信号特性が可能となり得る。
【0033】
プロットレベル毎に調整可能なy軸の高さの電圧レベルプロットに加えて、本発明のシステムは、信号レベルの全体値を示すための追加のスケール350を更に含む。スケール350は、例えば特定のプロット310、320間の比較を可能とし、また、これはy軸構成の電圧レベルに依存しない。
【0034】
スケール370は、マップに関連付けられた別のカラースケールを表す。このスケール370は、スケール350とは異なる目的のために提供することができる。スケール370は、LAT値に対するスケールを提供する。更に、スケール370は、ディスプレイ380の一部を情報に提供する。心臓の房室壁の三次元描写が表示され、ECG測定値に関連付けられる。この3D描写は、この時点で心腔内にあるカテーテルの表現を含む。この3D描写は、マッピングされた心腔の画像を提供する。この描写は、例えばプロット310、320のコンテキストを提供する。
【0035】
図4は、図1の装置に関する表示方法400を示す。方法400は、工程410で、装置内で信号を監視する工程を含む。工程420では、方法400は、装置を介して得られた信号をディスプレイに表示することを含む。工程430では、方法400は、第1の電圧表示レベルを制御して、測定信号の詳細を検査するために設計された高さを備える少なくとも1つの測定信号の表示を提供することを含む。方法400は、工程440で、第1の電圧表示レベルに依存せずに、ディスプレイ全体に対して第2のスケールを提供することを含む。
【0036】
特徴及び要素が特定の組み合わせで上に記載されるが、当業者であれば、特徴又は要素の各々を単独で又は他の特徴及び要素と組み合わせて、又は組み合わせることなしに、使用できることを理解するであろう。加えて、本明細書に記載される方法は、コンピュータ又はプロセッサで実行するために、コンピュータ可読媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装されてもよい。コンピュータ可読媒体の例には、電子信号(有線又は無線接続を介して送信される)及びコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。コンピュータ可読記憶媒体の例には、読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリ装置、磁気媒体、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
〔実施の態様〕
(1) 心電計(ECG)装置における複数の測定信号の表示方法であって、
前記複数の信号を監視することと、
ディスプレイ上に信号を表示することであって、前記信号は前記監視された信号の少なくともサブセットである、ことと、
第1の電圧表示レベルを制御して少なくとも1つの表示された測定信号の表示を提供することであって、前記少なくとも1つの表示された測定信号は、前記少なくとも1つの表示された測定信号の詳細を検査するために設計された高さを備える、ことと、
表示された前記複数の信号全体に対して第2のスケールを提供することであって、前記第2のスケールは前記第1の電圧表示レベルに依存しない、ことと、を含む、方法。
(2) 前記第2のスケールは色で提供される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記第1の電圧表示レベルは、前記測定信号のうちの少なくとも1つのために変更される、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記第1の電圧表示レベルの変更は前記第2のスケールに影響を与えない、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記第1の電圧表示レベルの変更は前記信号の詳細の検査を可能にする、実施態様1に記載の方法。
【0038】
(6) 前記第2のスケールは、信号電圧レベルの絶対的な解釈を可能にする、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記第2のスケールは色に基づく、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記第2のスケールは二次的機構に基づく、実施態様6に記載の方法。
(9) 心電計(ECG)における複数の測定信号のためのディスプレイであって、前記ディスプレイは、
第1の電圧表示レベルを制御して、前記複数の表示された測定信号の少なくとも1つの表示を提供することによって、前記複数の測定信号を前記ECGのディスプレイ上に表示することであって、前記複数の表示された測定信号の前記少なくとも1つは前記複数の表示された測定信号の前記少なくとも1つの詳細を検査するために設計された高さを備える、ことと、前記第1の電圧表示レベルに依存せずに、前記複数の表示された測定信号全体に対して第2のスケールを提供することと、を含む、ディスプレイ。
(10) 前記第2のスケールは色で提供される、実施態様9に記載のディスプレイ。
【0039】
(11) 前記第1の電圧表示レベルは、前記測定信号のうちの少なくとも1つに対して変更される、実施態様9に記載のディスプレイ。
(12) 前記第1の電圧表示レベルの変更は前記第2のスケールに影響を与えない、実施態様9に記載のディスプレイ。
(13) 前記第1の電圧表示レベルの変更は前記信号の詳細の検査を可能にする、実施態様9に記載のディスプレイ。
(14) 前記第2のスケールは、信号電圧レベルの絶対的な解釈を可能にする、実施態様9に記載のディスプレイ。
(15) 前記第2のスケールは色に基づく、実施態様14に記載のディスプレイ。
【0040】
(16) 前記第2のスケールは二次的機構に基づく、実施態様14に記載のディスプレイ。
(17) 対象の信号を測定するための装置であって、
前記装置内で少なくとも1つの信号を監視するための信号モニタと、
ディスプレイ上に信号を表示するためのディスプレイであって、前記信号は前記監視された信号の少なくともサブセットである、ディスプレイと、
第1の電圧表示レベルを制御して、少なくとも1つの表示された測定信号の表示を提供することであって、前記少なくとも1つの表示された測定信号は、前記測定信号の詳細を検査するために設計された高さを備える、ことと、
前記第1の電圧表示レベルに依存せずに、表示された前記信号全体に対する第2のスケールを提供することと、を含む、装置。
(18) 前記第1の電圧表示レベルの変更は前記第2のスケールに影響を与えない、実施態様17に記載の装置。
(19) 前記第2のスケールは、信号電圧レベルの絶対的な解釈を可能にする、実施態様17に記載の装置。
(20) 前記第2のスケールは色に基づく、実施態様19に記載の装置。
図1
図2
図3
図4