(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/06 20060101AFI20230417BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20230417BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
G01R1/06 F
G01R1/073 E
G01R31/28 K
(21)【出願番号】P 2019043733
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】原子 翔
(72)【発明者】
【氏名】小田部 昇
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩
(72)【発明者】
【氏名】深見 美行
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正吾
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249155(JP,A)
【文献】特開2009-295707(JP,A)
【文献】特開平01-221877(JP,A)
【文献】特開平04-127066(JP,A)
【文献】特開平05-203670(JP,A)
【文献】特開平04-095845(JP,A)
【文献】特開昭59-111341(JP,A)
【文献】特開昭53-112484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0193652(US,A1)
【文献】特開2000-036657(JP,A)
【文献】特開昭63-141274(JP,A)
【文献】特開昭61-124071(JP,A)
【文献】特開昭62-295371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06
G01R 1/073
G01R 31/26
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線基板の基板電極と導通可能な第1の凹部に
、融点が常温以下の液体金属を充填させた第1の電極領域と、
前記第1の配線基板に対向する第2の配線基板の基板電極と導通可能な第2の凹部に
、融点が常温以下の液体金属を充填させた第2の電極領域と、
一方の端部を前記第1の電極領域の前記液体金属と接触させ、他方の端部を前記第2の電極領域の前記液体金属と接触させて、前記第1の電極領域と前記第2の電極領域との間を導通させる接続子と
を有することを特徴とする電気的接続装置。
【請求項2】
前記接続子の長さが、前記液体金属が充填されている前記第1の凹部の底部と前記第2の凹部の底部との間の距離長よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項3】
前記液体金属と接触する前記接続子の両端部が浮動していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接続装置。
【請求項4】
前記接続子の両端部若しくはいずれか一方の端部が、前記液体金属との接触性を拡大させる接触拡大形状部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気的接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハ上に形成された集積回路等の被検査体は、所定の電気的特性を有するか否かの電気的検査が行なわれる。このような電気的検査は、被検査体の電極端子と、検査装置の電気回路の接続端子とを電気的に接続するプローブカードを用いて行なわれる。
【0003】
図6に例示するように、従来のプローブカード70は、検査装置(図示省略)に電気的に接続される配線基板72と、配線基板72の下側に配置される電気的接続ユニット73と、電気的接続ユニット73の複数の接続端子731を介して配線基板72と電気的に接続されるプローブ基板74と、プローブ基板74の下面に取り付けられた複数の接触子75とを備える。そして、プローブ基板74の複数の接触子75を被検査体76の電極端子に電気的に接触させて、検査装置による被検査体の検査を行なう。
【0004】
従来、配線基板72とプローブ基板74との間を電気的に接続するため、電気的接続ユニット73には、複数の接続子731が設けられている。各接続子731の上端を配線基板72の下面の電極(以下、「上部電極」とも呼ぶ。)721に電気的に接続させ、各接続子731の下端をプローブ基板74の上面の電極(以下、「下部電極」とも呼ぶ。)741に電気的に接続させている。
【0005】
配線基板72の上部電極721と、プローブ基板74の下部電極741との間の電気的な接続を安定化させるためには、電気的接続ユニット73の各接続子731と上部電極721及び下部電極741との間の電気的な接続性を良好とすることが求められている。
【0006】
特許文献1には、回路基板の板厚方向に穴部を設け、その穴部に液体金属を配置した回路基板と、液体金属に接触する凸形接触部を有する回路配線部を備える回路装置が開示されている。特許文献1の記載技術によれば、回路基板の穴部に配置されている液体金属に、回路配線部の凸部接触部を接触させることにより、コネクタ領域に対する接触面積を大きくして、安定した電気的接続性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のプローブカードは、接続子の上端及び下端の先端が、例えば円錐形状等であるため、接続子と電極(上部電極及び下部電極)との接触面積が小さく、接触抵抗が大きくなってしまうという課題がある。
【0009】
例えば特許文献1のように、回路基板の穴部に配置させた液体金属に、回路配線部の凸部接触部を接触させることにより、接触面積を大きくすることはできるが、液体金属を配置させる穴部の形状に対応させた凸部接触部を設けることが必要となり、接続子と電極領域との電気的接続構造が複雑になってしまう。
【0010】
また、プローブカードでは、被検査体の電極端子とプローブ基板の各プローブとの安定した接触性を保持するために、プローブカードに取り付けるプローブ基板の平面度を調整することが必要となり、上部電極と下部電極との高さ方向の位置にバラツキが生じ得る。さらに、被検査体の電極端子をプローブに接触させるときには、上下方向の弾性を作用させることが必要となる。このようなことより、電気的接続ユニットの各接続子と、電極(上部電極及び下部電極)との電気的な接続性を安定させることが難しいという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような課題に鑑み、配線基板の電極領域と接続子との接触面積を従来よりも大きくして、接触抵抗を抑えて、安定した電気的接続性を実現することができる電気的接続装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、本発明の電気的接続装置は、(1)第1の配線基板の基板電極と導通可能な第1の凹部に、融点が常温以下の液体金属を充填させた第1の電極領域と、(2)第1の配線基板に対向する第2の配線基板の基板電極と導通可能な第2の凹部に、融点が常温以下の液体金属を充填させた第2の電極領域と、(3)一方の端部を第1の電極領域の液体金属と接触させ、他方の端部を第2の電極領域の液体金属と接触させて、第1の電極領域と第2の電極領域との間を導通させる接続子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配線基板の電極領域と接続子との接触面積を大きくして、接触抵抗を抑えて、安定した電気的接続性を実現することができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る電気的接続装置における配線基板の電極領域間の電気的接続構造を示す構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係るプローブカードの構成を示す構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係る接続子の長さを説明する説明図である。
【
図4】第1の実施形態に係る接続子の形状例を示す図である。
【
図5】変形実施形態に係る電気的接続装置における配線基板の電極領域間の電気的接続構造を示す構成図である。
【
図6】従来の電気的接続装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)基本概念
以下では、本発明に係る電気的接続装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
ここで、電気的接続装置は、第1の配線基板に設けられた電極領域と、第2の配線基板に設けられた電極領域との間を電気的に接続させる装置である。したがって、電気的接続装置は、様々な装置や機器等に適用することができる。例えば、パーソナルコンピュータ等に搭載される回路基板の間を電気的に接続する回路装置や、プローブカードを構成する配線基板間を電気的に接続させるユニットなどに適用することができる。
【0017】
まず、実施形態に係る電気的接続装置における配線基板の電極領域間の電気的接続構造の基本概念を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係る電気的接続装置における配線基板の電極領域間の電気的接続構造を示す構成図である。
図1は、配線基板の電極領域間の断面図である。
【0019】
図1に示すように、電気的接続構造は、第1の配線基板10の電極領域11と、第2の配線基板20の電極領域21との間を、接続子30を用いて電気的に接続させる構造を例示している。
【0020】
第1の配線基板10には電気回路13が形成されており、電気回路13と電気的に接続する電極領域(以下、「上部電極領域」とも呼ぶ。)11が、第1の配線基板10の下面12に配置されている。
【0021】
電極領域11は、第1の配線基板10の下面12において、基板の厚さ方向に窪んだ凹部111が形成されており、凹部111の内部には、液体金属5が充填されている。また、電極領域11の凹部111の内面(すなわち凹部111の壁面部及び上底面部)には、例えば、銅、金等の金属材で形成された金属層113が設けられている。
【0022】
また、電極領域11の凹部111の上方には電極部(以下、「上部電極部」とも呼ぶ。)112が設けられている。この上部電極部112は、第1の配線基板10に形成された電気回路13と電気的に接続されている。
【0023】
第2の配線基板20には電気回路23が形成されており、電気回路23と電気的に接続する電極領域(以下、「下部電極領域」とも呼ぶ。)21が、第2の配線基板20の上面22に配置されている。
【0024】
電極領域21は、第2の配線基板20の上面22において、基板の厚さ方向に窪んだ凹部211が形成されており、凹部211の内部には、液体金属5が充填されている。また、電極領域21の凹部211の内面(すなわち凹部211の壁面部及び下底面部)には、例えば、銅、金等の金属材で形成された金属層213が設けられている。
【0025】
また、電極領域21の凹部211の下方には電極部(以下、「下部電極部」とも呼ぶ。)212が設けられている。この下部電極部212は、第2の配線基板20に形成された電気回路23と電気的に接続されている。
【0026】
液体金属5は、回路装置の利用環境温度で液体状態となっていることが好ましく、例えば融点が常温(例えば30℃程度)以下の金属が好ましく、さらには例えば融点が-40℃~-20℃程度の金属を用いることが好ましい。液体金属5は、1つの金属としても良いし、複数の金属液体で組成される合金であってもよい。例えば、液体金属5は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)等の金属又はこれらを金属合金とするものを適用できる。より具体的には、ガリウム、インジウム、スズの共晶金属(例えばガリンスタン(登録商標))を適用できる。なお、複数の金属でなる液体金属の金属組成比は特に限定されるものではなく広く適用できる。
【0027】
第1の配線基板10の電極領域11の凹部111と、第2の配線基板20の電極領域21の凹部211には、同じ金属組成の液体金属5が充填されるようにしても良いし、異なる金属組成の液体金属5が充填されるようにしてもよい。
【0028】
接続子30は、第1の配線基板10の電極領域11と第2の配線基板20の電極領域21との間を電気的に接続する部材である。接続子30は、導電性材料で形成された部材である。
【0029】
接続子30の上部31は、第1の配線基板10の凹部111に充填される液体金属5と電気的に接触し、接続子30の下部32は、第2の配線基板20の凹部211に充填される液体金属5と電気的に接触して、第1の配線基板10の電極領域11と第2の配線基板20の電極領域21との間の電気的な接続を行なう。換言すると、接続子30の一端のみが、液体金属5と接触しているのではなく、接続子30の両端が、各配線基板の電極領域11及び21の液体金属5と接触するようになっている。
【0030】
従来、接続子を用いた電極間の電気的接続構造の一例として、接続子の先端と電極端子とを1点又は多点で電気的に接触させて、電極間の電気的な接続を行なうものがある。このような電気的接続構造は、接続子の先端と電極端子との接触面積が小さく、接触抵抗が増大し、接続子と各電極端子との間の安定した電気的接続性が要求されている。
【0031】
これに対して、この実施形態では、接続子30の両端を、各配線基板の電極領域11及び電極領域21の液体金属5に接触させることにより、液体金属5と接続子30との接触面積を大きくすることができ、接触抵抗を抑えることができる。その結果、接続子30と、電極領域11及び電極領域21との電気的接続性を安定化させることができる。
【0032】
また後述するように、接続子30の形状や長さ等に特徴を持たせることにより、電極領域11及び電極領域21の液体金属5の浮力を受けた状態で、接続子30と液体金属5とを接触させることができる。したがって、電極領域11と電極領域21との間の距離長にバラツキが生じ得る場合でも、安定した電気的接続性を保持することができる。
【0033】
(B)第1の実施形態
次に、本発明に係る電気的接続装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
第1の実施形態では、ウェハ上に形成された集積回路等の被検査体の電気的検査に用いるプローブカードに、上述した電気的接続装置による電極領域間の電気的構造を適用した場合の実施形態を例示する。なお、以下では、
図1も参照しながら説明する。
【0035】
(B-1)第1の実施形態の構成
[プローブカード]
図2は、第1の実施形態に係るプローブカードの構成を示す構成図である。
【0036】
図2のプローブカード80は、主要な構成部材を図示しているが、これらの構成部材に限定されるものではなく、実際には
図6に示していない構成部材も有する。また、以下では、
図1中の上下方向に着目して、「上」、「下」を言及するものとする。
【0037】
図2において、この実施形態に係るプローブカード80は、平板状の支持部
材81と、前記支持部材81の下面に保持される平板状の配線基板82と、前記配線基板82と電気的に接続される電気的接続ユニット83と、前記電気的接続ユニット83と電気的に接続すると共に複数の電気的接触子(以下では、「プローブ」とも呼ぶ)85を有するプローブ基板84とを有する。
【0038】
プローブカード80は、支持部材81、配線基板82、電気的接続ユニット83、プローブ基板84を組み立てる際に、多数の固定部材(例えば、ボルト等の螺合部材など)を用いているが、
図2ではこれらの固定部材を図示していない。
【0039】
プローブカード80は、例えばウェハ上に形成された集積回路等を被検査体86とし、被検査体86の電気的な検査を行なうものである。具体的には、被検査体86をプローブ基板84に向けて押圧し、プローブ基板84の下面にある各プローブ85の先端部と被検査体86の電極端子とを電気的に接触させ、検査装置(図示省略)から被検査体86の電極端子に電気信号を供給し、さらに被検査体86の電極端子からの電気信号を検査装置側に与えることにより、被検査体86の電気的な検査を行なう。
【0040】
検査対象である被検査体86はチャックトップ(図示省略)の上面に載置される。チャックトップは、水平方向のX軸方向、水平面上においてX軸方向に対して垂直なY軸方向、水平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸方向に位置調整が可能なものであり、さらに、Z軸回りのθ方向に回転姿勢を調整可能である。
【0041】
被検査体86の電気的検査を実施する際には、上下方向(Z軸方向)に昇降可能なチャックを移動させて、被検査体86の電極端子をプローブ基板84の各プローブ85の先端部に電気的に接触させるため、プローブカード80のプローブ基板84の下面と、チャックトップの上面の被検査体86とが相対的に近づくように移動させる。
【0042】
[支持部材]
支持部材81は、配線基板82の変形(例えば、撓み等)を抑えるものである。例えば、プローブ基板84は多数のプローブ85を有しているため、配線基板82側に取り付けられるプローブ基板84の重量は大きくなっている。また、被検査体86の電気的な検査の行なう際、プローブ基板84が、被検査体86に押し付けられることにより、プローブ基板84の下面に突出しているプローブ85の先端部と被検査体86の電極端子とが接触する。このように、電気的検査の際、下から上に向けて突き上げる反力(コンタクト荷重)が作用し、配線基板82にも大きな荷重が加えられる。支持部材81は、配線基板82の変形(例えば、撓み等)を抑える部材として機能する。
【0043】
また、支持部材81には、上面と下面とを貫通させた複数の貫通孔があり、各貫通孔には、スペーサ(支持部)88が挿通され、スペーサ(支持部)88の下端部と、対応するアンカー87とが固定可能な構成となっている。これにより、プローブ基板84と支持部材81との高さ方向の調整を行なうことができる。
【0044】
[配線基板]
配線基板82は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたものであり、例えば略円形板状に形成されたプリント基板等である。配線基板82の上面の周縁部には、テスタ(検査装置)のテストヘッド(図示しない)と電気的に接続するための多数の電極端子(図示しない)が配置されている。
【0045】
配線基板82には配線パターンが形成されており、配線基板82の下面には、配線パターンと電気的に接続する複数の電極領域(上部電極領域)11が設けられている。
【0046】
配線基板82の下面に形成される各電極領域11は、
図1に例示する上部電極領域11と同じ構成とすることができる。
【0047】
各電極領域(上部電極領域)11は、配線基板82の下面に板厚方向に窪んだ凹部111と、凹部111の内面に金属層113と、凹部111に充填された液体金属5と、凹部111の上底面部の金属層113と電気的に接続する電極部(上部電極部)112とを有する。上部電極部112は、配線基板82に形成される配線パターンと電気的に接続している。
【0048】
電極領域11の凹部111には液体金属5が充填されており、電気的接続ユニット83の各接続子30の上部31は、電極領域11の凹部111に充填されている液体金属5と電気的に接触している。
【0049】
なお、配線基板82の内部には、配線回路が形成されており、配線基板82の下面の配線パターンと、配線基板82の上面の電極端子とは、配線基板82内部の配線回路を介して接続可能となっている。したがって、配線基板82内の配線回路を介して、配線基板82の下面の配線パターンの電極領域11の液体金属5に電気的に接続している各接続子30と、配線基板82の上面の電極端子に接続するテストヘッドとの間で電気信号を導通させることができる。配線基板82の上面には、被検査体86の電気的検査に必要な複数の電子部品も配置されている。また、配線基板82には、支持部材81に設けられた各挿通孔の位置と対応する位置に挿通孔が設けられており、各挿通孔にスペーサ88が挿通されことにより、プローブカード80の高さ調整が可能となっている。
【0050】
[プローブ基板]
プローブ基板84は、複数のプローブ85を有する基板であり、略円形若しくは多角形(例えば16角形等)に形成されたものである。例えば、プローブ基板84は、複数の配線基板で形成された多層配線基板を有している。多層配線基板としてのプローブ基板84は、複数の多層基板の間に配線路(図示省略)が形成されている。この配線路の一端は、プローブ基板84の上面の対応する配線パターンの電極(下部電極)212と電気的に接続しており、配線路の他端は、プローブ基板84の下面に設けられている複数のプローブ85の接続端子に電気的に接続している。
【0051】
プローブ基板84の上面には、複数の電極領域21が設けられている。プローブ基板84の上面の各電極領域21は、
図1に例示する下部電極領域21と同じ構成とすることができる。
【0052】
各電極領域(下部電極領域)21は、プローブ基板84の上面において、板厚方向に窪んだ凹部211と、凹部211の内面に金属層213と、凹部211に充填された液体金属5と、凹部211の下底面部の金属層213と電気的に接続する電極部(下部電極部)212とを有する。下部電極部212は、プローブ基板84の配線パターンと電気的に接続している。
【0053】
また、電極領域21の凹部211には液体金属5が充填されており、電気的接続ユニット83の各接続子30の下部32が、電極領域21の凹部211に充填されている液体金属5と電気的に接触している。
【0054】
したがって、プローブ84の下面に設けられている各プローブ85は、プローブ基板84の配線路を通じてプローブ基板84の下部電極212と電気的に接続しており、電気的接続ユニット83の接続子30を介して、配線基板82の対応する電極領域11と電気的に接続している。
【0055】
[電気的接続ユニット]
電気的接続ユニット83は、配線基板82とプローブ基板84との間を電気的に接続する。電気的接続ユニット83には、複数の接続子30が装着されており、各接続子30の上部31を上部電極領域11の液体金属5と電気的に接触させ、各接続子30の下部32を下部電極領域21の液体金属5と電気的に接触させて、上部電極領域11と下部電極領域21との間を電気的に接続させる。
【0056】
[接続子を用いた電極領域間の電気的接続構造]
図1を参照して、配線基板82の電極領域(上部電極領域)11と、プローブ基板84の電極領域(下部電極領域)21との間を、接続子30を用いて電気的に接続する構造を説明する。
【0057】
図1に例示したように、接続子30の両端を、配線基板82の電極領域11に設けられている液体金属5と、プローブ基板84の電極領域21の液体金属5に接触させることにより、液体金属5と接続子30との接触面積を大きくすることができ、接触抵抗を抑えることができる。その結果、接続子30と、電極領域11及び電極領域21との電気的接続性を安定化させることができる。
【0058】
次に、配線基板82の凹部111と、プローブ基板84の凹部211に液体金属5を充填したときの上部電極領域11と下部電極領域21の状態を説明する。
【0059】
以下では、配線基板82の上部電極領域11の状態を説明するが、プローブ基板84の下部電極領域21も、上部電極領域11と同じ状態となり同様の効果が得られる。
【0060】
配線基板82の上部電極領域11の凹部111に液体金属5を充填する際、凹部111の下方開口では、液体金属5と空気とが接触し、液体金属5の表面が酸化し、酸化膜51が形成される。酸化膜51の粘性は高く、凹部111に充填される液体金属5の表面張力の値も大きいので、液体金属5の凹部111から下方への移動(滴下)を抑えられる。
【0061】
配線基板82の凹部111に充填された液体金属5は、酸化膜51により被膜されるので、酸化膜51の内側に存在する液体金属5は、空気との接触が抑えられ、酸化膜51の内側の液体金属5の酸化や気化等を抑えることができる。したがって、酸化膜51の内側の液体金属5と接続子30と接触させることにより、導通性を確保することができる。
【0062】
配線基板82の電極領域11の凹部111に液体金属5を充填する際、凹部111内面の金属層113と液体金属5との接触面で液体金属5の酸化を防止するため、金属層113の表面に対して酸処理を施す。これにより、金属層13と接触する液体金属5の酸化を防止できるので、接続子30と電気的に接触する液体金属5と金属層113との電気的な接続を確保することができる。酸処理は、例えば、酸性溶媒で金属層113の表面を洗浄する方法等を適用することができるが、酸処理の方法はこれに限定されるものではなく、様々な方法を広く適用することができる。
【0063】
[接続子の長さと電極領域間の距離長]
図3は、第1の実施形態に係る接続子30の長さを説明する説明図である。
【0064】
配線基板82の上部電極領域11と、プローブ基板84の下部電極領域21との間を電気的に接続する接続子30の長さは、上部電極領域11と下部電極領域21との間の距離長との関係で定めることができる。
【0065】
図3において、上部電極領域11の凹部111の上底面部113の位置と、下部電極領域21の凹部211の下底面部213の位置との間の距離長(以下、「電極領域間距離長」とも呼ぶ。)を「X」とする。このとき、接続子30の全長を「Y」とすると、接続子30の全長Yは距離長Xより小さく(X>Y)することができる。
【0066】
このように、接続子30の全長を電極領域間の距離長より小さくすることにより、接続子30は、当該接続子30の上部31及び下部32が、酸化膜51に被膜されている内部の液体金属5と接触しながら、各液体金属5から浮力を受けて浮動可能な状態とすることができる。
【0067】
また、接続子30が、上部電極領域11と下部電極領域21の液体金属5の浮力を受けて浮かんだ状態とすると、接続子30が倒れ落ちてしまうことがあるので、接続子30の全長は、上部電極領域11及び下部電極領域21の凹部111と凹部211の内面に支持される長さとすることが望ましい。
【0068】
また
図3に例示するように、上部電極領域11の凹部111と下部電極領域21の凹部211とが同じ形状であり、凹部111と凹部211とが上下方向で対向する位置にある場合、凹部111(又は凹部211)の直径を「a」とし、凹部111の開口部の位置と凹部211の開口部の位置との距離長を「b」としたとき、接続子30の全長Yは、距離長Z(=(a
2+b
2)
1/2)以上(Y≧Z)とすることができる。これにより、接続子30が倒れたときでも、接続子30の端部が凹部111及び凹部211の内面に接触することになるので、接続子30の倒れ落ちを防止することができる。
【0069】
上述したように、少なくとも、接続子30の全長を、電極領域間距離長よりも小さくすることにより、接続子30の両端を各電極領域11及び12の液体金属5と接触させることができ、液体金属5から浮力を受けた状態で接続子30を浮動させることができる。その結果、上部電極領域11及び下部電極領域21の液体金属5と接続子30とを電気的に接触させた状態で、上部電極領域11と下部電極領域21との間の電気的な接続を行なうことができる。
【0070】
なお、上部電極領域11の凹部111と、下部電極領域21の凹部211との形状は、基板の厚さ方向に、円柱状、角柱状、円錐台、角錐台等に窪んだものとしてもよい。また、凹部111及び凹部211の基板の厚さ方向の厚さ長は、運用に応じて適宜定めるようにしてもよい。
【0071】
[接続子の端部形状]
図4は、第1の実施形態に係る接続子30の形状例を示す図である。
【0072】
接続子30の端部は、液体金属5との接触性を拡大させる接触拡大形状部を有するようにしてもよい。この接触拡大形状部とは、接続子30のうち液体金属5と接触する部分について、液体金属5との接触面積を大きくするために加工した形状部であり、例えば
図4(B)~
図4(D)に例示するような形状部とすることができる。
【0073】
なお、接続子30の両端部の形状を加工するようにしても良いし、両端部のうちいずれか一方の端部の形状を加工するようにしても良い。更には、接続子30の両端部の形状を、同じ形状に加工するようにしても良いし、両端部が異なる形状に加工してもよい。
【0074】
接続子30の断面形状は、例えば、円形、楕円形、正方形、多角形等とすることができる。また、接続子30の形状としては、様々な形状を用いることができ、
図3(A)~
図3(D)に例示する形状に限定されるものではない。
【0075】
図4(A)は、接続子30の断面形状が正方形である棒状部材とする場合を例示している。
図4(A)に例示する接続子30によれば、接続子
30の形状を単純化させながら、上部電極領域21と下部電極領域21との間の電気的接続性を安定化させることできる。なお、接続子30の断面形状は、例えば、円形、楕円形、多角形等であってもよい。
【0076】
図4(B)は、接続子30の上部31及び下部32のそれぞれに、スリット部(溝部)311が設けられている場合を例示している。
図4(B)に示すように、接続子30の上部31及び下部32にスリット部311を設けることにより、スリット部311の壁面も液体金属5と接触するので、液体金属5と接続子30との接触面積を更に大きくすることができ、接続子30と液体金属5との電気的な接続性を良好とすることができる。
【0077】
なお、接続子30と液体金属5との接触面積を増大させる構成であれば、複数のスリット部311を、接続子30の上部31及び下部32に設けるようにしても良い。またスリット部311に代えて、1又は複数の貫通孔や、貫通していない1又は複数の穴部(凹部)としても良いし、1又は複数の凸部としてもよい。なお、
図4(B)では、接続子30の断面形状が円形である場合を例示しているが、接続子30の断面形状は、楕円形、正方形、多角形等であってもよい。
【0078】
図4(C)は、接続子30の上部31及び下部32のそれぞれが、先端を平坦とした円錐状若しくは角錐状に形成されている場合を例示している。つまり、接続子30の上部31及び下部3
2が、先端側になるほど径が細くなる先細り形状となっている。
図4(C)のように、接続部30の上部31及び下部32を錘状とすることにより、液体金属5の表面に形成される酸化膜51を破って液体金属5と接触させることできると共に、錘状の先端が平坦となっているので、液体金属5の浮力を受けて接続子30が浮動し易くなる。
【0079】
図4(D)は、接続子30の上部31及び下部32のそれぞれが、先端側になるほど径が大きくなるテーパ形状である場合を例示している。これにより、接続子30の上部31及び下部32は、液体金属5からの浮力を受けやすくなり、また液体金属5の表面張力により、接続子30は安定した姿勢(すなわち、
図1の例の場合、上下方向に起立した姿勢)を保持することができる。また、接続子30と液体金属5との接触面積を大きくすることができる。その結果、上部電極領域11と下部電極領域21との間の電気的な接続性を安定化させることができる。
【0080】
(B-3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、接続子の両端を、配線基板の電極領域とプローブ基板の電極領域との液体金属に接触させることにより、液体金属と接続子との接触面積を大きくすることができ、接触抵抗を抑えることができる。その結果、接続子と、電極領域及び電極領域との電気的接続性を安定化させることができる。
【0081】
また第1の実施形態によれば、接続子の形状や長さ等に特徴を持たせることにより、電極領域及び電極領域の液体金属の浮力を受けた状態で、接続子と液体金属とを接触させることができる。したがって、電極領域と電極領域との間の距離長にバラツキが生じ得る場合でも、安定した電気的接続性を保持することができる。
【0082】
(C)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は以下の変形実施形態にも適用することができる。
【0083】
(C-1)上述した電極領域間の電気的接続構造を、プローブカードに適用する場合を例示したが、基本概念で説明した電極領域間の電気的接続構造は、配線基板の電極領域(電極部)間を電気的に接続させる回路装置に適用することができる。
【0084】
例えば、回路装置は、例えばパーソナルコンピュータ等の装置や機器などに搭載される回路装置に用いることができる。このような回路装置に、基本概念で説明した電極領域間の電気的接続構造を適用した場合でも、接続子との接触面積が大きくなり、接触抵抗を抑えることができるので、安定した電気的接続性を維持できる。また、基本概念で説明した電極領域間の電気的接続構造を回路装置に適用した場合でも、接続子の長さや形状等についても、
図2や
図3で説明したものを適用することができ、同様の効果が得られる。
【0085】
(C-2)上述した基本概念及び第1の実施形態では、接続子を用いて電気的に接続させる電極領域が上下方向に設けられている場合を例示したが、
図5に例示するように、電極領域が左右方向に設けられている場合にも適用できる。その場合、接続子30の形状は、
図3に例示したものとしても良いし、接続子30の両端が2個の電極領域11及び12の液体金属5に浮遊することができる形状としてもよい。例えば、
図5(A)に例示するように、接続子30が、下に凸の円弧状又は略U字状の部材としてもよいし、
図5(B)に例示するように、接続子30が、略V字形状の部材としてもよい。この場合でも、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0086】
1…電気的接続構造、80…プローブカード、81…支持部材、82…配線基板、83…電気的接続ユニット、84…プローブ基板、85…電気的接触子、86…被検査体、
10…第1の配線基板、11…電極領域、12…第1の配線基板の下面、13…電気回路、111…凹部、112…電極部(上部電極部)、113…金属層、
20…第2の配線基板、20の電極領域、22…第2の配線基板の下面、23…電気回路、211…凹部、212…電極部(下部電極部)、213…金属層、
30…接続子。